将来計画について

我が国で癌診療ガイドライン作りが始まってほぼ10年が経過しようとしているが、その間の発展は目覚ましく、どの領域でもガイドラインを備えるのが当然のごとくなってきた。ガイドラインの意義は、いうまでもなく日常診療の支援をなすものであり、二次的な効果として標準治療の普及、ミスの低減、診断・治療の効率化などがあげられる。我が国のガイドラインは大部分がエビデンスに基づいたものであり、作成に多大の労力を要する。したがって、このように作成されたガイドラインも多くの人に活用されなくては意義がない。ガイドラインを使用するのは専門医に限らず、専門外の医師、研修医、看護師、薬剤師などの医療従事者、行政、患者など多岐にわたる。これらの人々が共通の認識に立ち癌と立ち向かうようにすることにガイドラインの意義がある。したがって、各種ガイドラインは専門の学会によって作成されることが多いが、公開は癌治療学会のような横断的な学会が窓口となって理解しやすく行い、専門的なレベルは各学会のコンテンツにあたっていただくのが効率的と考えられる。また、がん治療の総論的な部分は当学会が担当すべきと思っている。公開の手段としては冊子、パンフレットなどの紙媒体、インターネット、教育セミナーなどの方法があるが、インターネットが速報性、マスコミュニケーション、コストなど種々の点で優れている。

したがって、癌治療学会としては今後も以上のようなスタンスを継続して癌診療ガイドライン作成、公開事業を継続していく計画である。具体的には現在公開中のガイドラインに関してはさらに改訂を重ね、未公開のガイドラインに関してはなるべく多くのガイドラインを公開していくよう努める所存である。さらに総論的な部分に関してはガイドラインの作成も行う必要がある。公開体制に関しては、独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センター、MINDSなどとも共同して効率的に行う方向で考えている。また、そろそろガイドラインの評価を検討すべき時期と考えているが、幸い癌治療学会ガイドライン委員会には評価委員会が設置されており、ガイドライン成果物に関しては従来より評価を行っている。今後はさらに診療動向の変化をQuality Indicatorを用いて評価する試みを行っていきたいと考えている。ただ、事業規模が大きくなると体制がついていかない危惧があり、いかに効率よく国民に役立つ情報を発信できるかを考えていく必要がある。