肝がん 〜診療ガイドライン

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目次:

第4章 穿刺局所療法

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はじめに

肝細胞癌の局所療法として,最近四半世紀の間に種々の治療法が開発されてきた。1979 年に山田らによって肝動脈塞栓療法(transcatheter arterial embolization;TAE)が開発され,これが肝細胞癌の局所療法の有効性を明らかにした最初の治療法といえる。

次に,腹部超音波診断機器の普及と進歩とともに,1983 年に杉浦らにより経皮的エタノール注入(percutaneous ethanol injection;PEI)が開発された。PEI はその後開発された超音波映像下に行われる種々の局所療法の原点といえる治療である。本法は手技が簡便で局注針もエタノールも安価であったため,瞬く間に日本のみならず世界へと広がり,肝細胞癌治療の主役として高い評価を受けるようになった。しかし,PEI はエタノールという液体を注入する治療であるため,エタノールが腫瘍内に均一に拡散せず,隔壁や被膜がある場合は通過できず,腫瘍の残存と局所再発の問題が残った。

こうしたPEI の欠点を克服するべく,挿入した針からマイクロ波やラジオ波を発生させて腫瘍を熱凝固させる治療法が開発された。従来から外科領域で使用されていたマイクロ波を経皮的に応用した経皮的マイクロ波凝固療法(percutaneous microwave coagulation therapy;PMCT)を1994 年に関らが発表した。

また,1993 年,Rossi らが小肝細胞癌に対し経皮的にラジオ波焼灼療法(radiofrequency ablation;RFA)を行い良好な治療効果を得たと報告し,にわかにラジオ波による肝細胞癌治療が注目されるようになった。本邦でも,1999 年以降多くの施設で施行されている。RFA はPMCT より1 回の治療あたりで獲得する壊死範囲が大きいという理由からPMCT を凌駕する勢いで導入されてきた。RFA は本邦では平成16(2004)年4 月からようやく保険適用となった。本ガイドライン初版(2005 年版)の発表に前後してPEI とRFA を比較したランダム化比較試験(RCT)が国の内外から発表され,いずれもRFA がPEI に比較して生命予後を延長するという結果であった。これらのエビデンスにより,現在RFA が穿刺局所療法のなかで標準治療とされるに至っている。

本章では,PEI,PMCT,RFA に関し,2011 年12 月末までの段階のエビデンスをまとめた。

文献の選択

局所療法の分野を,治療法別に以下の区分に分けた。

1)経皮的エタノール注入,2)マイクロ波凝固療法,3)ラジオ波焼灼療法

それぞれに対して,1983 年以降2011 年12 月末までに,MEDLINE および医学中央雑誌に収載されている文献リストを作成し,ガイドラインの策定に有用と思われる文献を抽出した。さらに,それらの文献抄録を読み,原著にさかのぼる必要のある文献をリストアップし,できるだけエビデンスレベルの高いものを選出した。評価は論文形式,症例数,研究デザインを基に選択した。


CQ 32
穿刺局所療法はどのような患者に行うべきか?
推奨

穿刺局所療法の適応は,Child-Pugh 分類のA あるいはB の肝機能の症例で,腫瘍径3 cm 以下,腫瘍数3 個以下である。 (グレードB)

【サイエンティフィックステートメント】

ミラノ基準もしくは腫瘍径3 cm 以下,腫瘍数3 個以下の条件において,外科切除とRFA との治療成績を比較した研究を検索したところ,25 編の論文を抽出した。表2 ではエビデンスレベルⅠの論文2 編を上段に,エビデンスレベルⅡで症例数が400 を超える論文6 編を下段に示す。生存について,エビデンスレベルTの論文2 編のうち1 編では外科切除が有意に良好で,もう1 編では有意差を認めなかった(L3F044141) Level 1b,L3F058462) Level 1b)。また,エビデンスレベルⅡの論文6 編では,3 編の論文において外科切除に優位性が示され,3 編の論文で有意差を認めなかった(L3F058923) Level 2a,L3F058904) Level 2b,L3F033255) Level 2b,L3F058566) Level 2a,L3F017977) Level 2b,L3F058768) Level 2b)。

Murakami らは,3 cm 以下・3 個以下あるいは5 cm 以下単発の肝細胞癌患者のうち,RFA あるいはTACE で加療された連続258 人について局所再発率を検討したところ,有意にRFA がTACE に優っていた(p=0.013)と報告している(LF118409) Level 2b)。また,PEI の局所再発率は腫瘍径3 cm を超えると高くなる(LF0155510) Level 2a)。

表2 肝細胞癌に対するRFAと肝切除の生存率の比較
著者 出版年 研究デザイン 症例数(RFA/肝切除) 条 件 生存率(%)
(RFA vs. 肝切除)
p値

Chen1)

2006

RCT

90/90 5 cm以下,単発 67.9 vs. 64.0
(4年)
NS

Huang2)

2010

RCT

115/115 ミラノ基準 54.78 vs. 75.65
(5年)
0.001

Hasegawa3)

2008

前向きコホート

3,022/2,857 3 cm以下,
3個以下
93.0 vs. 94.5
(2年)
NS

Takayama4)

2010

後ろ向きコホート

1,315/1,235 3 cm以下,
3個以下
95 vs. 94
(2年)
0.28

Liu5)

2010

メタアナリシス

787/735 ミラノ基準 62.5 vs. 63.6
(3年)
NS

Hung6)

2011

後ろ向きコホート

190/229 5 cm以下 67.4 vs. 79.3
(5年)
0.009

Huang7)

2011

後ろ向きコホート

413/648 5 cm以下,
3個以下
53.34 vs. 76.47
(5年)
<0.001

Yun8)

2011

後ろ向きコホート

255/215 3 cm以下 87 vs. 94
(5年)
0.002

NS:not significant

【解 説】

肝切除,穿刺局所療法,TACE のいずれもが施行可能な患者が存在した場合,治療アルゴリズムでは原則として,肝切除,穿刺局所療法,TACE の順に推奨されている。セカンドラインとしての穿刺局所療法の立ち位置は,ファーストラインである肝切除,サードラインであるTACE との推定される予後の差によって決定されるが,その予後の差は肝機能と腫瘍条件によって変化することが推定されている。

穿刺局所療法では,特にChild-Pugh 分類A で単発,2 cm 以下の症例では治療成績が良好とされる(5 年生存率:60〜74%)(LF1094911) Level 2b,LF1044912) Level 2b)。しかし,このように肝予備能が良好で早期の肝細胞癌を対象とした場合でも,穿刺局所療法が外科切除に代わって第一選択の治療となりうるかとの問いの結論は現在も出ていない。そのため,初発肝細胞癌に対する初回治療法選択の根拠となるエビデンス確立の必要性から,2009 年4 月から多施設共同によるSURF 試験*が進行中である。SURF 試験はChild-Pugh score 7 点以下かつ3 cm 以下・3 個以下の腫瘍条件を満たす初発症例を対象として肝切除とRFA の有効性を検証するRCT であり,日本発のエビデンスとしてその結果が待たれる。

外科切除と穿刺局所療法は局所コントロールを得るという目的は基本的に同じである。しかし,穿刺局所療法では腫瘍径が大きいと焼灼マージンを十分確保することが難しくなるため,穿刺局所療法の術者は腫瘍条件と自身の技量,症例背景を考慮して個別に適応を判断するべきであろう。適応を切除不能な患者に限定すると,穿刺局所療法の適応は,サードラインである肝動脈塞栓術との比較で決定される。Murakami らは,3 cm 以下・3 個以下あるいは5 cm 以下単発の肝細胞癌患者のうち,RFA あるいはTACE で加療された連続258 人について局所再発率を検討したところ,有意にRFA がTACE に優っていた(p=0.013)と報告している(LF118409) Level 2b)。この範囲の腫瘍でTACE 単独と局所療法単独の生存率を比較したRCT は存在しないが,このエビデンスをもって3 cm 以下・3 個以下の切除不能肝細胞癌の治療として局所療法を推奨することとする。

3 cm を超える腫瘍に対する局所療法の適応について,PEI を対象とした多くの研究が3 cm 以下・3 個以下をその適応としており,3 cm を超えるとPEI の局所再発率は高くなると報告されている。熱凝固療法であるRFA においては,焼灼範囲は,穿刺回数を増やすことによって原理的には拡大可能であるが,焼灼範囲,穿刺回数の増加は,合併症の増加につながることが予想される。多くのRFA 電極の焼灼範囲が3 cm 程度であることも考慮し,RFA の適応についても3 cm 以下・3 個以下を踏襲する。

*SURF試験:Efficacy of Surgery vs.Radio-frequency ablation on primary hepatocellular carcinoma

【参考文献】

1) L3F04414 Chen MS, Li JQ, Zheng Y, Guo RP, Liang HH, Zhang YQ, et al. A prospective randomized trial comparing percutaneous local ablative therapy and partial hepatectomy for small hepatocellular carcinoma. Ann Surg 2006;243(3):321-8.

2) L3F05846 Huang J, Yan L, Cheng Z, Wu H, Du L, Wang J, et al. A randomized trial comparing radiofrequency ablation and surgical resection for HCC conforming to the Milan criteria. Ann Surg 2010;252(6):903-12.

3) L3F05892 Hasegawa K, Makuuchi M, Takayama T, Kokudo N, Arii S, Okazaki M, et al. Surgical resection vs. percutaneous ablation for hepatocellular carcinoma:a preliminary report of the Japanese nationwide survey. J Hepatol 2008;49(4):589-94.

4) L3F05890 Takayama T, Makuuchi M, Hasegawa K. Single HCC smaller than 2 cm:surgery or ablation?:surgeon’s perspective. J Hepatobiliary Pancreat Sci 2010;17(4):422-4.

5) L3F03325 Liu JG, Wang YJ, Du Z. Radiofrequency ablation in the treatment of small hepatocellular carcinoma:a meta analysis. World J Gastroenterol 2010;16(27):3450-6.

6) L3F05856 Hung HH, Chiou YY, Hsia CY, Su CW, Chou YH, Chiang JH, et al. Survival rates are comparable after radiofrequency ablation or surgery in patients with small hepatocellular carcinomas. Clin Gastroenterol Hepatol 2011;9(1):79-86.

7) L3F01797 Huang J, Hernandez-Alejandro R, Croome KP, Yan L, Wu H, Chen Z, et al. Radiofrequency ablation versus surgical resection for hepatocellular carcinoma in Childs A cirrhotics:a retrospective study of 1,061 cases. J Gastrointest Surg 2011;15(2):311-20.

8) L3F05876 Yun WK, Choi MS, Choi D, Rhim HC, Joh JW, Kim KH, et al. Superior long-term outcomes after surgery in Child-Pugh class a patients with single small hepatocellular carcinoma compared to radiofrequency ablation. Hepatology International 2011;5(2):722-9.

9) LF11840 Murakami T, Ishimaru H, Sakamoto I, Uetani M, Matsuoka Y, Daikoku M, et al. Percutaneous radiofrequency ablation and transcatheter arterial chemoembolization for hypervascular hepatocellular carcinoma:rate and risk factors for local recurrence. Cardiovasc Intervent Radiol 2007;30 (4):696-704.

10) LF01555 Ishii H, Okada S, Nose H, Okusaka T, Yoshimori M, Takayama T, et al. Local recurrence of hepatocellular carcinoma after percutaneous ethanol injection. Cancer 1996;77 (9):1792-6.

11) LF10949 Lencioni R, Cioni D, Crocetti L, Franchini C, Pina CD, Lera J, et al. Early-stage hepatocellular carcinoma in patients with cirrhosis:long-term results of percutaneous image-guided radiofrequency ablation. Radiology 2005;234(3):961-7.

12) LF10449 Omata M, Tateishi R, Yoshida H, Shiina S. Treatment of hepatocellular carcinoma by percutaneous tumor ablation methods:Ethanol injection therapy and radiofrequency ablation. Gastroenterology 2004;127(5 Suppl 1):S159-66.


CQ 33
各穿刺局所療法の選択は,どのように行うべきか?
推奨

穿刺局所療法としてRFA が推奨される。 (グレードA)

消化管穿孔が危惧される場合には,その他の手法(人工腹水下RFA やPEI)は有効な選択である。 (グレードB)

【背 景】

穿刺局所療法は1980 年代のPEI から始まり,経皮的酢酸注入(PAI)やPMCT を経て,現在ではRFA がその代表的治療と位置づけられている。また,これら4 つの治療法に加えて,最近登場した凍結融解壊死療法(cryoablation)を含む穿刺局所療法について文献検索を行った。

【サイエンティフィックステートメント】
局所再発と生存について

2011 年12 月31 日までにRFA とPEI を比較したRCT が計5 編(LF109411) Level 1b,LF104572) Level 1b,LF118693) Level 1b,LF104684) Level 1b,LF121265) Level 1b),それらのメタアナリシスが計4 編(L3F058516) Level 1a,L3F058677) Level 1a,L3F059168) Level 1a,L3F004009) Level 1a)報告されている。メタアナリシスはほぼ同様の結果であるため,表3 にRCT 5 編とメタアナリシスから代表してGermani らの結果を示す。局所再発率に関して記載のないBrunello らの論文を除き,残りの4 編すべてにおいてRFA はPEI よりも優れていた。生存に関しては,有意にRFA がPEI よりも優れているとする報告が3 編,差がないとする報告が2 編であった。これらのメタアナリシスの結果は,局所再発についてはRFA のPEI に対するハザード比(95%信頼区間)が0.27(0.16〜0.45),生存についてはハザード比0.52(0.35〜0.78)と,いずれもRFA がPEI よりも優れているという結果であった。

合併症について

Bertot らが34 編のRFA,PMCT およびPEI の報告からメタアナリシスを行っている(L3F0656510) Level 1a)。穿刺局所療法の死亡率は全体で0.16%(95%信頼区間:0.10〜0.24)であり,治療別ではRFA,PMCT およびPEI について,それぞれ0.16%(0.10〜024),0.15%(0.08〜0.23),0.23%(0.0〜0.58)とされる。また,重篤な合併症の発生リスクは全体で3.29%(2.43〜4.28)であり,その内訳として,播種0.5%,腹腔内出血0.37%,肝膿瘍0.32%,腹水0.27%,治療を要する胸水0.14%,肝梗塞0.13%,肝不全0.11%,消化管穿孔0.11%,血胸0.09%であった。また,治療別における重篤な合併症の頻度はRFA 4.1%(3.3〜5.1),PMCT 4.6%(0.7〜11.8),PEI 2.7%(0.28〜7.4)と報告している。一方で,Germani らのメタアナリシスでは,RFA とPEI の合併症の頻度に差はないとしている(オッズ比:1.21,95%信頼区間:0.89〜1.63,p=0.22)(L3F004009) Level 1a)。

表3 肝細胞癌に対するRFAとPEIの比較
著者 出版年 研究
デザイン
治療法
(症例数)
局所再発 全生存比
ハザード比* p値 ハザード比* p値

Lencioni1)

2003

RCT

RFA(52),PEI(50) 0.17 0.02 0.20 0.138

Lin2)

2004

RCT

RFA(52),
PEI(52),
高用量PEI(53)
0.37
0.49
0.012
0.037
0.34
0.39
0.014
0.023

Shiina3)

2005

RCT

RFA(118),
PEI(114)
0.12 0.006 0.54 0.02

Lin4)

2005

RCT

RFA(62),
PEI(62),
PAI(63)
0.35
0.41§
0.012
0.017§
0.42
0.45§
0.031
0.038§

Brunello5)

2008

RCT

RFA(70),
PEI(69)
ND - 0.88 0.476

Germani9)

2010

メタアナリシス

RFA(356),
PEI(347)
0.27 <0.00001 0.52 0.001

*:PEI に対するRFA のハザード比(低いほうが有利),†:RFA とPEI の比較,‡:RFA と高用量PEI の比較,
§:RFA とPAI の比較,¶:Burunelloらの論文は除く,ND:not described

【解 説】

PEI は技術的に確立された治療法であり,3 年生存率が48〜67%と報告されている(L3F058677) Level 1a)。しかし,腫瘍内の線維性隔壁や被膜がエタノールの拡散を障害することはよく知られており,そのため腫瘍径が大きくなるに従いPEIの根治性が低下する傾向にある。その一方で,RFA では衛星結節が存在する腫瘍周囲を含めて壊死を誘導することが可能であり,RFA の3 年生存率は63〜74%と報告されている(L3F058677) Level 1a)。メタアナリシスからは,局所再発および生存についてRFA の優位性が強く示唆され(L3F058677) Level 1a,L3F058516) Level 1a,L3F004009) Level 1a),さらにサブグループ解析では2 cm 以上の大きさで治療成績の差が大きい(L3F004009) Level 1a)。

合併症について,Bertotらによれば,治療法によって発生頻度に有意差を認めたが(L3F0656510) Level 1a),本邦も含めたアジアからの報告に関しては差がなかったと述べている。また,BouzaらやGermaniらのメタアナリシスからは,RFA とPEI の合併症の頻度に差はないとしている(L3F058516) Level 1a,L3F004009) Level 1a)。合併症の内容や頻度自体は報告により異なるものの,検索した今回の論文からはRFA とPEI では有意差がないとする報告が多い。しかし,肝門部近傍や肝外臓器と接するような部位は一般的に合併症が起こりやすいとされ(L3H0004811) Level 2b),治療針の穿刺や電流出力に注意を要する。特に,消化管穿孔の合併症はRFA の報告に多く,術後の癒着が存在する症例では消化管穿孔の危険性が高い(L3F065659) Level 1a)。そのため,このような条件では人工腹水下RFA(L3H0005612) Level 4)やPEI は有効な選択である。

【参考文献】

1) LF10941 Lencioni RA, Allgaier HP, Cioni D, Olschewski M, Deibert P, Crocetti L, et al. Small hepatocellular carcinoma in cirrhosis:randomized comparison of radio-frequency thermal ablation versus percutaneous ethanol injection. Radiology 2003;228 (1):235-40.

2) LF10457 Lin SM, Lin CJ, Lin CC, Hsu CW, Chen YC. Radiofrequency ablation improves prognosis compared with ethanol injection for hepatocellular carcinoma<or=4 cm. Gastroenterology 2004;127(6):1714-23.

3) LF11869 Shiina S, Teratani T, Obi S, Sato S, Tateishi R, Fujishima T, et al. A randomized controlled trial of radiofrequency ablation with ethanol injection for small hepatocellular carcinoma. Gastroenterology 2005;129 (1):122-30.

4) LF10468 Lin SM, Lin CJ, Lin CC, Hsu CW, Chen YC. Randomised controlled trial comparing percutaneous radiofrequency thermal ablation, percutaneous ethanol injection, and percutaneous acetic acid injection to treat hepatocellular carcinoma of 3 cm or less. Gut 2005;54 (8):1151-6.

5) LF12126 Brunello F, Veltri A, Carucci P, Pagano E, Ciccone G, Moretto P, et al. Radiofrequency ablation versus ethanol injection for early hepatocellular carcinoma:A randomized controlled trial. Scand J Gastroenterol 2008;43(6):727-35.

6) L3F05851 Bouza C, López-Cuadrado T, Alcázar R, Saz-Parkinson Z, Amate JM. Meta-analysis of percutaneous radiofrequency ablation versus ethanol injection in hepatocellular carcinoma. BMC Gastroenterol 2009;9:31.

7) L3F05867 Cho YK, Kim JK, Kim MY, Rhim H, Han JK. Systematic review of randomized trials for hepatocellular carcinoma treated with percutaneous ablation therapies. Hepatology 2009;49(2):453-9.

8) L3F05916 Orlando A, Leandro G, Olivo M, Andriulli A, Cottone M. Radiofrequency thermal ablation vs. percutaneous ethanol injection for small hepatocellular carcinoma in cirrhosis: meta-analysis of randomized controlled trials. Am J Gastroenterol 2009;104 (2):514-24.

9) L3F00400 Germani G, Pleguezuelo M, Gurusamy K, Meyer T, Isgrò G, Burroughs AK. Clinical outcomes of radiofrequency ablation, percutaneous alcohol and acetic acid injection for hepatocellular carcinoma:a meta-analysis. J Hepatol 2010;52(3):380-8.

10) L3F06565 Bertot LC, Sato M, Tateishi R, Yoshida H, Koike K. Mortality and complication rates of percutaneous ablative techniques for the treatment of liver tumors:a systematic review. Eur Radiol 2011;21(12):2584-96.

11) L3H00048 Teratani T, Yoshida H, Shiina S, Obi S, Sato S, Tateishi R, et al. Radiofrequency ablation for hepatocellular carcinoma in so-called high-risk locations. Hepatology 2006;43(5):1101-8.

12) L3H00056 Kondo Y, Yoshida H, Shiina S, Tateishi R, Teratani T, Omata M. Artificial ascites technique for percutaneous radiofrequency ablation of liver cancer adjacent to the gastrointestinal tract. Br J Surg 2006;93(10):1277-82.


CQ 34
穿刺局所療法にTACE を併用することで予後を改善できるか?
推奨

TACE を先行したRFA では壊死範囲が拡大する。 (グレードA)

局所コントロールが得られれば良好な予後が期待できるが,先行するTACE によってRFA の予後向上に寄与するかについて十分なエビデンスはない。 (グレードC1)

【サイエンティフィックステートメント】
焼灼範囲について

Kitamoto らの報告では,肝動脈化学塞栓療法(TACE)+RFA 群がRFA 単独群と比べて有意に広く壊死を誘導できた(TACE+RFA 群,RFA 単独群の焼灼範囲の長径と短径平均値:39.9 mm,32.3 mm vs. 34.6 mm,26.0 mm;p<0.05)(LF100321) Level 2b)。

Morimoto らによれば,TACE+RFA 群およびRFA 単独群で焼灼範囲の長径と短径の平均値がそれぞれ50 mm,41 mmと58 mm,50 mm であった(p=0.012)と報告している(L3F043252) Level 1b)。

生存について

TACE+RFA 治療とRFA 単独治療とを比較した研究を表4 に示す(L3F043252) Level 1b,L3F043313) Level 2a,L3F002294) Level 2b)。条件が異なるものの,TACE+RFA 治療がRFA 単独治療と比べて生存率が良好であったとする報告が1 編と,差を認めなかったとする報告が2 編であった。

表4 肝細胞癌に対するTACE+RFA 治療とRFA 単独治療の比較(2009 年以降)
著者
/出版年
研究
デザイン
症例数
(TACE+RFA
/RFA)
条 件 生存率(%)
(TACE+RFA vs. RFA)
p値
1年 3年 5年

Morimoto2)
/2010

RCT 19/18

・単発,3.1〜5 cm

100 vs. 89 93 vs. 80 -
-
0.369

Shibata3)
/2009

NRCT 46/43

・1〜2個,3 cm以下

100 vs. 100 84.5 vs. 84.5 74.0 vs. 72.7
(4年)
0.515

Peng4)
/2010

NRCT 120/120

・単発,7 cm以下
・2〜3個,3 cm以下

93 vs. 89 75 vs. 64 50 vs. 42 0.045
【解 説】

今回の検討では,穿刺局所療法としてRFAを取り上げている研究を対象とした。また,肝動脈バルーン閉塞下RFA は生存について比較検討した報告が見当たらないため今回の対象に含めていない。

RFA にTACE を先行することで焼灼範囲の拡大がもたらされることは各報告の一致した見解であり,その焼灼範囲の拡大によって治療回数や局所再発の減少に寄与するとされる。特にMorimoto らの報告によると,治療セッション(TACE+RFA vs. RFA:1.1 vs. 1.4,p<0.01)と局所再発(TACE+RFA vs. RFA:6% vs. 39%,p=0.012)が有意に少なかった(L3F043252) Level 1b)。また,合併症について差がないとする報告が多い。TACE の先行施行時期については同日から2 カ月以内とさまざまであるが,日本からの報告では1 カ月以内とするものが多い。

穿刺局所療法でも,特にPEI にTACE を先行した場合に予後の改善傾向がみられたとのメタアナリシスが報告されているが(L3F003105) Level 1a),RFA にTACE を先行することで予後を改善できるかについては議論が分かれる。Peng らは,サブグループ解析において,5 cm以上の単発例(p=0.031)および多発例(p=0.032)において有意に予後が改善されたと報告している(L3F002294) Level 2b)が,引き続き検討課題と思われる。

【参考文献】

1) LF10032 Kitamoto M, Imagawa M, Yamada H, Watanabe C, Sumioka M, Satoh O, et al. Radiofrequency ablation in the treatment of small hepatocellular carcinomas:comparison of the radiofrequency effect with and without chemoembolization. AJR Am J Roentgenol 2003;181(4):997-1003.

2) L3F04325 Morimoto M, Numata K, Kondou M, Nozaki A, Morita S, Tanaka K. Midterm outcomes in patients with intermediate-sized hepatocellular carcinoma:a randomized controlled trial for determining the efficacy of radiofrequency ablation combined with transcatheter arterial chemoembolization. Cancer 2010;116(23):5452-60.

3) L3F04331 Shibata T, Isoda H, Hirokawa Y, Arizono S, Shimada K, Togashi K. Small hepatocellular carcinoma:is radiofrequency ablation combined with transcatheter arterial chemoembolization more effective than radiofrequency ablation alone for treatment? Radiology 2009;252(3):905-13.

4) L3F00229 Peng ZW, Chen MS, Liang HH, Gao HJ, Zhang YJ, Li JQ, et al. A case-control study comparing percutaneous radiofrequency ablation alone or combined with transcatheter arterial chemoembolization for hepatocellular carcinoma. Eur J Surg Oncol 2010;36(3):257-63.

5) L3F00310 Wang W, Shi J, Xie WF. Transarterial chemoembolization in combination with percutaneous ablation therapy in unresectable hepatocellular carcinoma:a meta-analysis. Liver Int 2010;30(5):741-9.


CQ 35
造影超音波,CT やMRI とのfusion image は局所療法の治療ガイドとして有用か?
推奨

造影超音波やfusion image は,B モードで描出が困難な肝細胞癌に対する治療ガイドとして有用である。 (グレードB)

【背 景】

超音波ガイドで行われる穿刺局所療法では,B モードで肝細胞癌を明瞭に描出できることが治療成功を左右する。しかしながら,①被膜形成が不十分などで腫瘍自体の境界が不明瞭,②複数の大きな再生結節に小肝癌が紛れている,③局所再発病変が前回治療による壊死領域と同様のエコー像を呈する,などによりB モードでの描出が困難な場合がある。Minami らの報告によれば,RFA を行った肝細胞癌485 結節について5.2%がB モードで不明瞭であった(L3H000491) Level 2b)。

【サイエンティフィックステートメント】
造影超音波:

Maruyama らは,B モードで描出困難な多血性肝腫瘍55結節(平均腫瘍径:1.3±0.5 cm)において53 結節(96%)がソナゾイド®造影超音波にて検出可能であり,そのうちの肝細胞癌42 結節について造影超音波ガイドで効果的に穿刺治療できたと報告している(L3F039052) Level 4)。

Minami らは,B モードで描出不良な肝細胞癌108 結節について,ソナゾイド®造影超音波ガイドにてRFA を行ったところ,平均治療セッションは1.1±0.3であったと報告している(L3F039103) Level 4)。

Masuzaki ら(L3F013874) Level 2b)の報告では,ソナゾイド®造影超音波ガイドでRFA を行った291 例について類似対照群2,261 例と比較したところ,治療セッションが有意に少なかった(1.33 vs. 1.49,p=0.0019)。

Fusion image:

Fusion image とは,あらかじめ取得されたCT やMRI のボリュームデータについて磁気センサーを装着した超音波プローブと位置情報を同期することで,B モード画像と近似のmulti planar reconstruction(MPR)画像をリアルタイムに表示するシステムである。超音波と他のモダリティとの相互補完から治療支援画像としての有用性が報告されている(L3F035175) Level 2b,L3F059056) Level 4,LF117917) Level 4)。B モードで描出不良な肝細胞癌について,Real-time Virtual Sonography(RVS)®ガイドでのRFA がB モードガイドと比べてより効果的に治療できた(平均治療セッション:1.1 vs. 1.3,p=0.021)(L3F035175) Level 2b)との報告がある。

【解 説】

超音波造影剤がレボビスト®からソナゾイド®へ進歩したことから,①どの時相でも連続観察ができるため安定的に病変の描出が可能,②post vascular phase での欠損像をターゲットにすることで病変の視認性が向上,③Defect Re-perfusion ImagingによってB モードで描出不良な肝細胞癌について局在および質的診断が可能,などがもたらされた。そのため,レボビスト®使用では煩雑であった造影超音波ガイドのRFA 手技がより簡便に改善された。しかし,深部病変や硬変肝の進行した症例では,病変の描出が難しい場合があるので注意が必要である。また,fusion image を用いることでも効果的な穿刺局所療法が可能であり,特に造影超音波では難しい上記のような条件でも参照画像を表示できることはメリットの一つである。ただし,fusion image もB モード画像と必ずしも完全に一致するわけではなく,特に肝右葉に腫瘍が存在する場合には画像のズレが大きくなる傾向にある。しかし,両者を併用した治療も可能であることから,造影超音波とfusion imageは競合するものでなく,状況にあわせて選択もしくは併用することで局所コントロールを目指すことが治療において肝心である。

【参考文献】

1) L3H00049 Minami Y, Kudo M, Kawasaki T, Chung H, Ogawa C, Shiozaki H. Treatment of hepatocellular carcinoma with percutaneous radiofrequency ablation:usefulness of contrast harmonic sonography for lesions poorly defined with B-mode sonography. AJR Am J Roentgenol 2004;183(1):153-6.

2) L3F03905 Maruyama H, Takahashi M, Ishibashi H, Okugawa H, Okabe S, Yoshikawa M, et al. Ultrasound-guided treatments under low acoustic power contrast harmonic imaging for hepatocellular carcinomas undetected by B-mode ultrasonography. Liver Int 2009;29(5):708-14.

3) L3F03910 Minami Y, Kudo M, Hatanaka K, Kitai S, Inoue T, Hagiwara S, et al. Radiofrequency ablation guided by contrast harmonic sonography using perfluorocarbon microbubbles(Sonazoid)for hepatic malignancies:an initial experience. Liver Int 2010;30(5):759-64.

4) L3F01387 Masuzaki R, Shiina S, Tateishi R, Yoshida H, Goto E, Sugioka Y, et al. Utility of contrast-enhanced ultrasonography with Sonazoid in radiofrequency ablation for hepatocellular carcinoma. J Gastroenterol Hepatol 2011;26(4):759-64.

5) L3F03517 Minami Y, Chung H, Kudo M, Kitai S, Takahashi S, Inoue T, et al. Radiofrequency ablation of hepatocellular carcinoma:value of virtual CT sonography with magnetic navigation. AJR Am J Roentgenol 2008;190(6):W335-41.

6) L3F05905 Minami Y, Kudo M, Chung H, Inoue T, Takahashi S, Hatanaka K, et al. Percutaneous radiofrequency ablation of sonographically unidentifiable liver tumors. Feasibility and usefulness of a novel guiding technique with an integrated system of computed tomography and sonographic images. Oncology 2007;72(Suppl 1):111-6.

7) LF11791 Hirooka M, Iuchi H, Kumagi T, Shigematsu S, Hiraoka A, Uehara T, et al. Virtual sonographic radiofrequency ablation of hepatocellular carcinoma visualized on CT but not on conventional sonography. AJR Am J Roentgenol 2006;186(5 Suppl):S255-60.


CQ 36
局所療法の効果判定に有用な画像診断は何か?
推奨

局所療法の効果判定は,dynamic CT/MRI を基本とする。造影剤アレルギー,腎機能低下例などでは,造影超音波によって代替できる可能性がある。 (グレードA)

【背 景】

肝切除と異なり,局所療法においては,治療範囲が目的とした腫瘍全体を覆っているかを病理学的に判定することは困難である。よって治療効果判定は治療前後の画像を比較することで行われるが,どの画像検査を用いるのが適切かについて検討した。

【サイエンティフィックステートメント】

肝細胞癌の診断は,dynamic CT/MRI で行われるため,必然的に治療効果判定もこれらの画像検査を用いて行われる。なかでも,可用性の高さからdynamic CT が用いられることが多く,事実上のstandard となっている。Gd-EOB-DTPA 造影MRI は,CT と比較してマージン評価の正確さ(感度・特異度)において優れている可能性がある(L3F019631) Level 1,L3F032852) Level 1)。ソナゾイド®を用いた造影超音波は,dynamic CT と比較して,感度で劣るが,特異度で勝る(L3F017253) Level 1)。

【解 説】

局所療法の効果判定にどの画像検査を用いるかを検討するにあたり,理想的なgold standard は外科切除による病理学的評価であるが,倫理的に困難であり,次善のgold standard は経過観察による局所再発の発生である。しかし多くの場合,明らかな残存が疑われる病変は追加治療の対象となるため,マージンの有無の評価のしやすさがend-point に採用される傾向がある。今回検討した多くの研究でdynamic CT がgold standard として用いられており,可用性の点からもdynamic CT を標準と推奨することとした。Gd-EOB-DTPA 造影MRI は,マージン評価のしやすさの点においてCT を凌駕している可能性があり,今後のエビデンスの集積によっては,第一に推奨される可能性がある。造影超音波を対象とした研究の多くが第一世代のレボビスト®を用いており,CT と同等であるという報告も散見されるものの,実際には欠点も多く,現在国内では使用できないため採用しなかった。第2 世代超音波造影剤であるソナゾイド®は,レボビスト®と比較して長時間の観察が可能であり,より治療効果判定に適しているということができる。

【参考文献】

1) L3F01963 Yoon JH, Lee EJ, Cha SS, Han SS, Choi SJ, Juhn JR, et al. Comparison of gadoxetic acid-enhanced MR imaging versus four-phase multi-detector row computed tomography in assessing tumor regression after radiofrequency ablation in subjects with hepatocellular carcinomas. J Vasc Interv Radiol 2010;21(3):348-56.

2) L3F03285 Hwang J, Kim SH, Kim YS, Lee MW, Woo JY, Lee WJ, et al. Gadoxetic acid-enhanced MRI versus multiphase multidetector row computed tomography for evaluating the viable tumor of hepatocellular carcinomas treated with image-guided tumor therapy. J Magn Reson Imaging 2010;32(3):629-38.

3) L3F01725 Shiozawa K, Watanabe M, Takayama R, Takahashi M, Wakui N, Iida K, et al. Evaluation of local recurrence after treatment for hepatocellular carcinoma by contrast-enhanced ultrasonography using Sonazoid:comparison with dynamic computed tomography. J Clin Ultrasound 2010;38(4):182-9.


第5章 肝動脈化学塞栓療法(TACE)

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はじめに

いわゆる典型的な多血性肝細胞癌は動脈血で栄養されている。そのため腫瘍を栄養する肝動脈内に経カテーテル的に塞栓物質を注入し,栄養動脈を塞栓することで腫瘍を阻血壊死に陥らせる肝動脈塞栓療法(transcatheter arterial embolization;TAE)が有用な治療法として施行されてきた。

1990 年代初期までは,抗癌剤を動注後,塞栓物質を注入する方法や塞栓物質と抗癌剤の混合液を注入する方法が行われていた。その後,油性造影剤(イオダイズドオイル:リピオドール®)が腫瘍内に停滞することを利用し,リピオドール®と抗癌剤の混合液(リピオドールエマルジョン)の注入後に塞栓物質を注入する肝動脈化学塞栓療法(transcatheter arterial chemoembolization;TACE)が施行されるようになってきた。

1990 年代中頃までは,切除不能と判断された多血性肝細胞癌の大多数に対してTACE/TAE 療法が施行されていた。現在では,ラジオ波焼灼療法(RFA)に代表される穿刺局所療法の導入に伴い,切除不能肝細胞癌でかつ穿刺局所療法の対象外とされた多血性肝細胞癌がTACE/TAE の適応となっている。

2000 年代に入り,2 編のランダム化比較試験(RCT)とメタアナリシスでリピオドール®を使用したTACE/TAE(Lip-TACE/TAE)は切除不能肝細胞癌の予後向上に寄与することが証明されている。

なお,TACE/TAE 等の経カテーテル的動脈内治療法の定義は世界中で一定しておらず,論文の成績比較に難渋することも多い。そこで本項では,以下のように経カテーテル的動脈内治療を『原発性肝癌取扱い規約(第5版補訂版)』に基づいて記載する。

  1. 肝動脈化学療法(TAI):抗癌剤の肝動注療法であり塞栓物質は使わない。リピオドール®の併用,リザーバー使用の有無を記載する。リピオドールエマルジョンのみ注入はLip-TAI と記す。なお,本法をchemoembolization やTACE と記載している論文も多い点に留意すべきである。
  2. 肝動脈塞栓療法(TAE):ゼラチンスポンジ,多孔性ゼラチン粒,アイバロンやその他の球状塞栓物質等の固形塞栓物質を用いて動脈内を塞栓する方法で,抗癌剤は使用しない。
  3. 肝動脈化学塞栓療法(TACE):抗癌剤と固形塞栓物質〔ゼラチンスポンジ,多孔性ゼラチン粒,アイバロン,最近開発された薬剤溶出性ビーズ(drug-eluting beads;DEB)等〕を用いて行う化学塞栓療法。特に,リピオドールエマルジョン注入後,ゼラチンスポンジや多孔性ゼラチン粒で塞栓するLip-TACE は世界中で最も多く施行されてきた術式である。

CQ 37
どのような症例がTACE/TAE のよい適応か??
推奨

TACE/TAE は肝障害度A,B(またはChild分類A,B)の,手術不能でかつ穿刺局所療法の対象とならない多血性肝細胞癌に対する治療法として推奨される。化学塞栓される非癌部肝容積の非癌部全肝容積に占める割合と残肝予備能を考慮した選択的TACE/TAE が推奨される。 (グレードA)

肝外転移のない脈管内腫瘍栓(特に門脈内腫瘍栓)症例に対するTACE/TAE の有用性の報告はあるが,十分なエビデンスに乏しい。 (グレードC1)

【サイエンティフィックステートメント】

TACE/TAE が治療対象となりうる肝細胞癌は,肝動脈造影像で腫瘍濃染像を有する,いわゆる多血性肝細胞癌であり(LF066871) Level 4,LF104512)),本邦では切除不能と判断された肝細胞癌の大多数はTACE/TAE 療法が施行されていた。ただし,TACE/TAE 療法の予後への寄与についてのRCTの手法を用いた科学的にエビデンスレベルの高い報告は存在せず,手技の統一化も図られていなかった。

そういった状況のなかで,1990 年代後半を中心に海外から進行肝細胞癌に対するTACE/TAE と対症療法群を比較したRCT が5 編報告された(LF023133) Level 1b,LF023324) Level 1b,LF027455) Level 1b,LF029596) Level 1b,LF037347) Level 1b)。いずれも抗腫瘍効果(腫瘍縮小,AFP 低下,門脈腫瘍栓の出現頻度低下など)は認めるも予後向上には寄与しないとの報告であったが,2000 年代初頭に報告されたRCT 2 編では,TACE/TAE が対症療法に比し前述の抗腫瘍効果および生存率向上に寄与すると述べられている(LF018998) Level 1b,LF062839) Level 1b)。

2008 年の切除不能進行肝細胞癌を対象とした大規模なSHARP 試験(LF1205410) Level 1b)の結果を受け,ソラフェニブが進行肝細胞癌に対する標準的治療として位置づけられたため,TACE/TAE の適応は,腫瘍個数4個以上,Child分類のA〜B,PS 0〜2のStage B(intermediate stage)のみとされた(L3H0001811))。ゆえに,肝障害度A,B(またはChild分類A,B)の進行肝細胞癌で,手術不能かつ穿刺局所療法の対象とならない症例(肝外転移,高度の脈管侵襲例を含む)がTACE/TAE の適応と考えられる。

なお,肝細胞癌破裂症例に対する緊急的なTAEは止血効果も高く,手術療法と比べ侵襲の面からも有用な治療法である(LF0678312) Level 4)。

【解 説】

手術不能かつ穿刺局所療法の対象とならない進行肝細胞癌,特に肝動脈造影像で腫瘍濃染像を有する,いわゆる多血性肝細胞癌に対するTACE/TAE は必要不可欠で,特に本邦では標準的な治療法となっている(LF066871)Level 4,LF104512))。前述のように1990 年代に,抗腫瘍効果は認めるものの,生存率に寄与しないとのRCT(LF023133) Level 1b,LF023324) Level 1b,LF027455) Level 1b,LF029596) Level 1b,LF037347) Level 1b)が相次いで報告されたが,2000 年代に入り,進行肝細胞癌に対するTACE/TAEは予後向上に寄与するとのRCT が2 編報告された(LF018998) Level 1b,LF062839) Level 1b)。いずれもOkuda 分類Ⅲ,Child 分類C は対象外とした論文であり,1990 年代のRCT に比して2000 年代のRCT のほうがより選択的カテーテル挿入下に,非癌部肝組織の障害の少ない化学塞栓が施行されている。Cammàらの18 編のメタアナリシスでも,全体の2 年死亡率は無治療群と比べ有意にTACE/TAE 群のほうが少ない(オッズ比:0.54,95%信頼区間:0.33,0.89,p=0.015)と報告されている。ただし,TACE のほうがTAE に比して,より治療効果が高いという証拠は認められていない(LF0192013) Level 1a)。さらにCammàらは,RCT においては可能な範囲でTACE/TAE の方法(定期的か否か,カテーテルの選択性,使用薬剤)や腫瘍進展度(腫瘍数と腫瘍径等)を統一して行うべきであるとも述べている。2005 年以降も均質な対象症例に対して行われた適応基準に関するエビデンスレベルの高い論文は出ていないため,前述の進行肝細胞癌に対するTACE/TAE は予後向上に寄与するとのRCT の除外基準からも,Okuda 分類Ⅲ,Child 分類C といった肝機能不良例や非選択的TACE/TAE は避けることが推奨される。BCLC group による初期のStaging(LF104512))においては,①Stage B(intermediate stage),4 個以上,Child 分類A〜B,Okuda 分類Ⅰ〜Ⅱ,PS 0〜2,または,②Stage C(advanced stage),PS 1〜2,門脈浸潤(-),N1(-),M1(-)と述べられており,これは日本の2005 年版および2009 年版のガイドライン(LJ1000114),LJ2000115))において肝障害度A もしくはB(Child分類に対応)で3 cmを超えた2〜3個の肝細胞癌および4 個以上(大きさを問わない)の多発肝細胞癌とほぼ同様であった(LF104512),LF1068616) Level 6)。その後,2008 年の切除不能進行肝細胞癌を対象とした大規模なSHARP 試験(LF1205410) Level 1b)の結果を受け,ソラフェニブが進行肝細胞癌に対する標準的治療として位置づけられたため,米国のInterventional Radiology 学会(SIR)のガイドラインや改訂されたBCLC group によるAASLD のガイドラインにおいてTACE/TAE の適応は,腫瘍数4 個以上,Child 分類A〜B,PS 0〜2のStage B(intermediate stage)のみとされた(L3H0001811))。

脈管内腫瘍栓(特に門脈内腫瘍栓)を有する症例は禁忌とする報告が多い(LF104512))ものの,肝機能障害が軽度の高度進行症例(脈管内腫瘍栓を有する症例や10 cm 以上の巨大肝細胞癌症例)でもTACE/TAE を中心とした他治療法との併用療法で長期生存可能症例も存在する(LF1026217) Level 2a)。また,前述の進行肝細胞癌に対するTACE/TAE は予後向上に寄与するとしたRCT のうち1 編は門脈内腫瘍栓を有する症例がLip-TACE 群40 例中9 例,コントロール群39 例中1 2例に含まれた論文であり,Stage C(advanced stage)でも肝外転移のない脈管内腫瘍栓(特に門脈内腫瘍栓)症例に対するTACE/TAE の有用性は否定できない。しかしながら,標準的治療とされるソラフェニブとの比較でエビデンスレベルの高い論文は存在せず,現状では脈管内腫瘍栓に対するTACE/TAE の有用性は不明確と言わざるを得ない。

前述のRCT での進行肝細胞癌に対するTACE/TAE 禁忌の病態としては,PS 3 以上,高齢者(75〜80 歳以上),非代償性肝硬変合併(消化管出血,難治性腹水,肝性脳症,細菌感染),高度血液凝固系障害,腎障害,などを有する症例があげられている(LF023133) Level 1b,LF023324) Level 1b)。最近のレビュー(L3F0010118) Level 6)では,門脈閉塞,遠肝性門脈血流,脳症,最近の食道静脈瘤出血,治療不応性腹水,門脈大循環短絡,肝外病変などもあげられている。

Takayasu らにより,肝切除不能肝細胞癌に対するLip-TACE(リピオドールエマルジョンとゼラチンスポンジ使用)の予後向上に寄与する因子に関する,日本肝癌研究会全国集計の大規模な前向きコホート研究が2 編報告されている(LF1046219) Level 2a,L3H0002120) Level 2a)。1994〜2001 年の8,510 症例の検討が行われた論文では,①本法は切除不能肝細胞癌に対する安全な治療法であり,5 年生存率は25%である,②同治療法による独立した予後因子は,)肝障害度,)Stage 分類,)AFP値(401 ng/ml 以上or 未満)であることが判明した。最近の2000〜2005 年の4,966 症例の検討が行われた論文では,①5 年生存率は34%と上昇した,②同治療法による独立した予後因子は肝障害度,Stage 分類,AFP 値に加え,PIVKA-Ⅱが加わった。この報告では,肝癌診療ガイドライン2005 年版の治療選択肢におけるTACE の治療成績が明らかとなり,TACE 群と非TACE 群(外科切除や局所療法)で有意な治療成績の差を認め,ガイドラインのTACE 推奨群が妥当な治療アルゴリズムであることが示された。

進行肝細胞癌に対するTACE/TAE の今後の課題としては,前述したように,BCLC staging におけるStage C(advanced stage)でも肝外転移のない脈管内腫瘍栓(特に門脈内腫瘍栓)症例に対するTACE/TA の有用性の検討を含め,ソラフェニブを中心とした分子標的治療薬との併用療法の有用性の検討が必要であるが,いくつかの臨床試験が現在進行中であり,結論は出ていない。また今後,本邦でも使用可能となるdrug-eluting beads(DEB)により新たな局面が生まれる可能性がある。DEB に関してはDEB-TACE とLip-TACE を比較したランダム化第Ⅱ相試験(PRECISION V)が報告されており(L3F0006421) Level 2a),DEB-TACE の有用性が示され欧米ではDEB-TACE が普及しているが,現段階では第Ⅱ相であり,Lip-TACE に代わる標準的治療となるか,また,その使い分けなど,今後のさらなる展開が期待される。

【参考文献】

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3) LF02313 Bruix J, Llovet JM, Castells A, Montañá X, Brú C, Ayuso MC, et al. Transarterial embolization versus symptomatic treatment in patients with advanced hepatocellular carcinoma:results of a randomized, controlled trial in a single institution. Hepatology 1998;27(6):1578-83.

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11) L3H00018 Bruix J, Sherman M;American Association for the Study of Liver Diseases. Management of hepatocellular carcinoma:an update. Hepatology 2011;53(3):1020-2.

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14) LJ10001 科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン作成に関する研究班.科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン.2005.

15) LJ20001 科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン作成に関する研究班.科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン.2009.

16) LF10686 Llovet JM. Updated treatment approach to hepatocellular carcinoma. J Gastroenterol 2005;40(3):225-35.

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18) L3F00101 Raoul JL, Sangro B, Forner A, Mazzaferro V, Piscaglia F, Bolondi L, et al. Evolving strategies for the management of intermediate-stage hepatocellular carcinoma:available evidence and expert opinion on the use of transarterial chemoembolization. Cancer Treat Rev 2011;37(3):212-20.

19) LF10462 Takayasu K, Arii S, Ikai I, Omata M, Okita K, Ichida T, et al. Prospective cohort study of transarterial chemoembolization for unresectable hepatocellular carcinoma in 8510 patients. Gastroenterology 2006;131(2):461-9.

20) L3H00021 Takayasu K, Arii S, Kudo M, Ichida T, Matsui O, Izumi N, et al. Superselective transarterial chemoembolization for hepatocellular carcinoma. Validation of treatment algorithm proposed by Japanese guidelines. J Hepatol 2012;56(4):886-92.

21) L3F00064 Lammer J, Malagari K, Vogl T, Pilleul F, Denys A, Watkinson A, et al;PRECISION V Investigators. Prospective randomized study of doxorubicin-eluting-bead embolization in the treatment of hepatocellular carcinoma:results of the PRECISION V study. Cardiovasc Intervent Radiol 2010;33(1):41-52.


CQ 38
TACE/TAE において塞栓物質や抗癌剤は何を用いるべきか?
推奨

TACE/TAE の際は,リピオドール®を使用したリピオドールTACE(Lip-TACE)が推奨される。症例により抗癌剤の感受性が異なる感もあり,リピオドール®とのエマルジョンに使用する抗癌剤として特定の有効な薬剤は見出せない。塞栓物質として球状(粒子径1 mmと2 mm)の多孔性ゼラチン粒(ジェルパート®)が本邦では使用可能である。 (グレードC1)

【サイエンティフィックステートメント】

イオダイズドオイル(リピオドール®)は,腫瘍血管および類洞にトラップされ停滞する性質がある。同剤と抗癌剤を混合したリピオドールエマルジョンを肝動脈内に注入することで,腫瘍内に貯留したエマルジョンからの抗癌剤の徐放効果を可能にし,ドラッグデリバリーの役目を果たす(LF066871) Level 4,LF068812) Level 2a)。

国内17 施設で2002 年から2004 年の間に施行された平均年4,774 回の肝癌治療のアンケート結果では,リピオドール®はTACE 例の90%以上で使用されており,本邦ではTACE 時にリピオドール®を使用するのが一般的であるといえる(L3F002373) Level 6)。TACE に際し,リピオドールエマルジョンとして使用される抗癌剤はエピルビシン,ドキソルビシン,マイトマイシンC,シスプラチン,ネオカルチノスタチンなどがある(LF026514) Level 4,LF036535) Level 1b,LF037566) Level 2a,LF040417) Level 4,LF062998) Level 4,LF068819) Level 2a)。これらの抗癌剤の組み合わせによる多剤併用施設が多いが,特定の薬剤の優位性を証明した報告はない。

切除不能進行肝細胞癌に対する水溶性を高めたシスプラチン製剤(アイエーコール®)を用いたCDDP・リピオドールサスペンジョンの肝動注化学療法の有用性に関する報告も多いがエビデンスレベルの高いものはない(L3F0018810) Level 4,L3F0017811) Level 4)。

CDDP・リピオドールサスペンジョンに多孔性ゼラチン粒などによる塞栓を追加したTACE では,塞栓なしの肝動注化学療法の場合に比べて治療効果が優れるという報告がある(L3F0026512) Level 2a)。また,CDDP・リピオドールサスペンジョンによるTACE とドキソルビシン・リピオドールサスペンジョンによるTACE の比較では,CDDP の治療効果が有意に良いとする報告(L3F0018613) Level 2b,L3F0026714) Level 2b)と有意差はないとする報告(L3F0023515) Level 1b)がある。

最近,使用可能となった親油性でリピオドール®に懸濁しやすいプラチナ製剤であるミリプラチン(ミリプラ®)の有用性に関する報告(L3F0022316) Level 2b,L3F0017717) Level 4)もみられ始め,今後の検討が期待される。

従来,肝細胞癌に対するTACE/TAE に使用されてきた塞栓物質はゼラチンスポンジ細片であった(LF0308018) Level 1b)。平成18(2006)年には,無菌で規格化された球状塞栓物質である多孔性ゼラチン粒(粒子経1 mm と2 mm:ジェルパート®)が本邦では保険適用となり,ゼラチンスポンジ(スポンゼル)の血管内投与は同年10月に禁忌とされた。なお,多孔性ゼラチン粒は肝細胞癌に対するTACE/TAE には使用してよいが,他臓器や肝細胞癌以外の他疾患に対するTACE/TAE には使用してはならない(LJ1000219) ,LJ1000420) Level 4)。また,現在本邦では,前述の多孔性ゼラチン粒以外の球状塞栓物質の肝動脈内投与は許可されていない。

リピオドール®とゼラチンスポンジ細片を併用したTACE と,リピオドール®を用いるがゼラチンスポンジ細片を使用しない肝動注化学療法の比較では,TACE の生存率が有意に向上させるという報告(L3F0025021) Level 2a),生存率を向上させないという報告(L3F0022422) Level 1b)があり意見が分かれる。

【解 説】

近年のカテーテル,ガイドワイヤーシステムやアンギオCTなどの撮影機器の進歩により,腫瘍を栄養する動脈枝の同定および超選択的カテーテル挿入が可能となった。その結果,超選択的に大量の化学塞栓物質を肝動脈のみならず門脈枝へも注入することが可能となった(LF066871) Level 4,LF1029123) Level 4)。これらのカテーテル挿入技術の進歩は腫瘍部への高濃度の抗癌剤の注入と動脈・門脈の両方の阻血を可能とした。その結果,抗腫瘍効果の向上と,非癌部肝組織の機能温存をもたらし,TACE/TAE による予後向上は著しいものがある(LF062998) Level 4,LF066871) Level 4,L3F0028124) Level 3,L3F0014425) Level 3)。しかしながら,肝区域間や肝表面に位置する肝細胞癌では,肝外からの側副血行路を含めた複数の栄養血管が存在し,局所再発する頻度も高い(LF1029123) Level 4,LF1083026) Level 2b)。超選択的カテーテル挿入下TACE/TAE の生存率は良好な成績が多数報告されているが,エビデンスレベルの高い論文は認められない(LF1080427) Level 6,LF1045128) Level 6)。

肝機能の良い進行肝細胞癌や小型肝細胞癌症例でのLip-TACE 施行後の予後は良好で,同法施行後切除標本の病理学的検討では抗腫瘍効果も高い(LF0295929) Level 1b,LF0660430) Level 2a)。Cox’s proportional hazard model を用いた生存率では,Lip-TACE とTACE 間に有意差を認めている(p<0.01)(LF0660430) Level 2a)。メタアナリシスでは,進行肝細胞癌に対するTACE がTAE に比して生存率が良好であるとの成績は得られていない(LF0192031) Level 1a)。その原因として,RCT のLip-TACE は,ほぼ全肝に施行されており,非癌部肝組織の障害が生存率低下の一大原因となっている可能性もあると推察されている(LF0192031) Level 1a)。

2 種類の異なる抗癌剤(エピルビシンvs. ドキソルビシン)を使用したリピオドールエマルジョン注入後,ゼラチンスポンジ細片でLip-TACE した生存率のRCT では(LF036535) Level 1b),両者間に副作用の差は認めず,低リスク群では後者の生存率が良好であった(p=0.018)が全体では両者間に差は認めていない。Low dose シスプラチンとドキソルビシンを用いたリピオドールエマルジョン注入後,塞栓(ゼラチンスポンジ細片使用,前者31%,後者50%)した症例での生存率比較では,前者が後者に比して有意に良好であった(p<0.05)(LF0632432) Level 2b)。

TACE/TAE の塞栓物質として平成18(2006)年8 月から球状の多孔性ゼラチン粒(粒子経1 mmと2 mm:ジェルパート®)が本邦では保険適用となった。その結果,本邦では現在,肝細胞癌に対するTACE/TAE の大多数は多孔性ゼラチン粒を使用して施行されている。その治療効果や副作用の発現率はかつて使用されてきたゼラチンスポンジ細片を用いたTACE/TAEと大差がないという短期間での成績が報告されている(LJ1000420) Level 4)。

近年,海外を中心にアクリル,ポリビニルアルコール(PVA),ゼラチン等,各種の素材からなる球状塞栓物質が多種類開発されている(L3F0007733) Level 2b,L3F0012634) Level 1b,L3F0022635) Level 4)。現在,球状塞栓物質には血管を塞栓するだけではなく,塞栓物質に薬剤のロード・徐放を容易にするdrug-eluting beads(DEB)が開発され,肝細胞癌の臨床にも導入されてきた。DEB はロードされた抗癌剤(ドキソルビシン)が腫瘍内に高濃度に残り,末梢血に流出しないことが薬物動態学的にも証明されている。したがって,副作用が少なく治療効果の高い治療法であるとの短期成績が出ている(L3F0012634) Level 1b)。リピオドールエマルジョン(ドキソルビシン)を用いたLip-TACE とDEB を用いたTACE の比較ではLip-TACE と比較し良好だが有意差は得られなかった(L3F0006436) Level 1b,L3F0023337) Level 1b)。肝細胞癌に対する肝移植後の摘出標本の検討では,bland TAE と比較してDEB では有意に腫瘍壊死率が高かった(L3F0008638) Level 3)。

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CQ 39  
再TACE/TAEの時期の選択は?
推奨

血流豊富な腫瘍出現,腫瘍マーカーの上昇あるいは腫瘍径が増大した時点で再TACE/TAEは施行されるべきである。 (グレードB)

【サイエンティフィックステートメント】

1991 年,3 カ月に1 回の定期的TAEが有効で,繰り返しTAE を続行することで完全壊死症例が出現することをIkeda らが報告した(LF067511) Level 4)。その後,進行肝細胞癌に対する2〜3 カ月毎の定期的TACE/TAE と対症療法のRCT が数編,有名誌に掲載され話題となった(LF023132)) Level 1b,LF023323))Level 1b,LF027454))Level 1b,LF029595))Level 1b,LF037346))Level 1b)。これら5 編のRCT 成績では,前述したように抗腫瘍効果は認めるも,生命予後の向上には何ら寄与しないという結論であった。一方,腫瘍増大時の超選択的再TACE の最近の成績では,3 年生存率78%,77.1%の報告も認められる(LF062997))Level 4,LF066878))Level 4)。治療後の再発腫瘍に対しての検討でも繰り返しTACE が生存期間延長をもたらすとされている(L3F003069))Level 4)。また,肝予備能が保たれた門脈腫瘍栓例に対する放射線併用繰り返しTACEが生存期間延長をもたらすという報告もある(L3F0005410))Level 4)。

【解 説】

腫瘍増大もしくは腫瘍マーカー上昇時に再TACE/TAE を施行した施設の生存率が良好な報告が多い(LF0581811))Level 2b,LF1080412))Level 6)。しかしながら,2〜3 カ月毎短期間での定期的再TACE/TAE と腫瘍増大時での再TACE/TAE 間のRCT 成績は認めない(LF1068613))Level 6)。Ernst らは,2 カ月に1 回少なくとも3 回の定期的Lip-TACE と腫瘍が増大した時点での再Lip-TACE を遡及的に比較検討した(LF0581811))Level 2b)。前者は後者に比して合併症が多く(p<0.001),累積生存率が悪い(p<0.001)との成績を得ている。著者らはできるだけ腫瘍増大時に超選択的再Lip-TACE を施行することが重要であると述べている。2002 年以降のreview 論文では,腫瘍増大時の再TACE/TAE を推奨する意見が多かった(LF1029514))Level 6,LF1045115))Level 6,LF1068613))Level 6,LF1080412))Level 6,L3F0010116))Level 6)。なお,繰り返しTACE 時のリスクファクターから予後推定スコアリングシステムを作成し繰り返し,TACE の可否を判断する試みもある(L3F0028317))Level 4)。

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CQ 40
TACEの効果判定に有用な画像診断は何か?
推奨

Dynamic CT もしくはdynamic MRI が推奨される。 (グレードB)

【サイエンティフィックステートメント】

CT がTACE の効果判定の第一選択であることは,国内および海外において一般的な見解である。リピオドール® CT において病変に完全にリピオドール®が集積した場合は病変の98%,集積が不完全な場合は病変内の64%に壊死がみられ,集積パターンにより治療効果判定が可能である(LF067431) Level 3)。Dynamic CT で病変部の血流の評価を行うことにより,病変の残存や再発の判定が行える。腫瘍内のリピオドール®集積が不完全であると,造影剤による濃染と不均一なリピオドール®集積の区別が困難になり,また,リピオドール®集積が病変部の血流動態に影響を与えると腫瘍濃染の判定が難しくなるが(LF109372) Level 1),これらはCTによるTACE治療効果判定の限界といえる。

Dynamic MRI のTACE 後治療効果判定における有用性については1990 年代より報告されている(LF065723) Level 3,LF059324) Level 3)。Dynamic CT とdynamic MRI の比較において,残存病変を過小評価する傾向がCT にみられ(L3F001955) Level 1),移植肝を用いた検討ではMRI はCT よりも高い感度および特異度を示している(L3F019946) Level 2a)。リピオドールCT,パワードプラー超音波,dynamic MRI の比較においてはMRI が感度,特異度,正診率において優れていた(LF019327) Level 1)。TACE 施行1カ 月後のdynamic MRI においてみられる腫瘍濃染がTACE 施行6 カ月後の再発巣と高い一致を示し,再発予測の可能性も示されている(L3F000508) Level 3)。

近年,躯幹部において有用性が示されているMRIの拡散強調画像による報告が散見されるが,肝移植での検討で病変部の完全な壊死の評価においてdynamic MRI のほうが優れており(L3F002129) Level 1),TACE後の再発予測の検討ではリピオドールCTと有意差はみられなかった(L3F0029010) Level 1)。Dynamic MRI に拡散強調画像を付加することによりTACE施行後の再発病変の検索において感度は上昇するが,特異度は低下して正診率は変わらないと報告されており(L3F0342611) Level 3),現時点では拡散強調画像の顕著な有用性は示されていない。

【解 説】

TACE の治療効果判定は,病変の治療に対する反応の評価のみならず,治療方針の決定にも関わる。血中AFP は肝細胞癌のマーカーであるが,TACE 後の再発において異常値とならない症例もしばしばあり,画像による評価が治療効果判定において重要である。

TACE の治療効果判定としてdynamic CT が一般的に用いられているが,前述の理由に加えリピオドール®集積そのものの高い吸収値やビームハードニング効果などにより局所再発の評価が困難な場合がある。

MRI ではリピオドール®による病変描出の妨げはなく,造影剤を用いることにより残存病変を濃染像として描出することが可能である。また,近年広く行うことが可能になった高速3D dynamic 撮影法によりCT にも匹敵する薄いスライスでの撮影が可能になり,部分容積効果の影響を受けることなく,微小な濃染を捉えることが可能になった。電離放射線被曝がないことも利点の一つである。拡散強調画像については現時点では際立った有用性はみられないものの,技術進歩が顕著な撮影法であり,造影剤が必要ないという利点もあるので,今後も検討が加えられる方向にあると考えられる。

検査費用や検査時間の観点より,すべての症例の治療効果判定にMRI を利用することは現実的ではなく,またCT を用いた治療効果判定も臨床的には十分な有用性がある。よってdynamic CT とdynamic MRI の双方を本ガイドラインでは推奨する。

【参考文献】

1) LF06743 Choi BI, Kim HC, Han JK, Park JH, Kim YI, Kim ST, et al. Therapeutic effect of transcatheter oily chemoembolization therapy for encapsulated nodular hepatocellular carcinoma:CT and pathologic findings. Radiology 1992;182(3):709-13.

2) LF10937 Kim HC, Kim AY, Han JK, Chung JW, Lee JY, Park JH, et al. Hepatic arterial and portal venous phase helical CT in patients treated with transcatheter arterial chemoembolization for hepatocellular carcinoma:added value of unenhanced images. Radiology 2002;225(3):773-80.

3) LF06572 Ito K, Honjo K, Fujita T, Matsui M, Awaya H, Matsumoto T, et al. Therapeutic efficacy of transcatheter arterial chemoembolization for hepatocellular carcinoma:MRI and pathology. J Comput Assist Tomogr 1995;19(2):198-203.

4) LF05932 Castrucci M, Sironi S, De Cobelli F, Salvioni M, Del Maschio A. Plain and gadolinium-DTPA-enhanced MR imaging of hepatocellular carcinoma treated with transarterial chemoembolization. Abdom Imaging 1996;21(6):488-94.

5) L3F00195 Kloeckner R, Otto G, Biesterfeld S, Oberholzer K, Dueber C, Pitton MB. MDCT versus MRI assessment of tumor response after transarterial chemoembolization for the treatment of hepatocellular carcinoma. Cardiovasc Intervent Radiol 2010;33(3):532-40.

6) L3F01994 Hunt SJ, Yu W, Weintraub J, Prince MR, Kothary N. Radiologic monitoring of hepatocellular carcinoma tumor viability after transhepatic arterial chemoembolization:estimating the accuracy of contrast-enhanced cross-sectional imaging with histopathologic correlation. J Vasc Interv Radiol 2009;20(1):30-8.

7) LF01932 Kubota K, Hisa N, Nishikawa T, Fujiwara Y, Murata Y, Itoh S, et al. Evaluation of hepatocellular carcinoma after treatment with transcatheter arterial chemoembolization:comparison of Lipiodol-CT, power Doppler sonography, and dynamic MRI. Abdom Imaging 2001;26(2):184-90.

8) L3F00050 Kalb B, Chamsuddin A, Nazzal L, Sharma P, Martin DR. Chemoembolization follow-up of hepatocellular carcinoma with MR imaging:usefulness of evaluating enhancement features on one-month posttherapy MR imaging for predicting residual disease. J Vasc Interv Radiol 2010;21(9):1396-404.

9) L3F00212 Mannelli L, Kim S, Hajdu CH, Babb JS, Clark TW, Taouli B. Assessment of tumor necrosis of hepatocellular carcinoma after chemoembolization:diffusion-weighted and contrast-enhanced MRI with histopathologic correlation of the explanted liver. AJR Am J Roentgenol 2009;193(4):1044-52.

10) L3F00290 Kubota K, Yamanishi T, Itoh S, Murata Y, Miyatake K, Yasunami H, et al. Role of diffusion-weighted imaging in evaluating therapeutic efficacy after transcatheter arterial chemoembolization for hepatocellular carcinoma. Oncol Rep 2010;24(3):727-32.

11) L3F03426 Yu JS, Kim JH, Chung JJ, Kim KW. Added value of diffusion-weighted imaging in the MRI assessment of perilesional tumor recurrence after chemoembolization of hepatocellular carcinomas. J Magn Reson Imaging 2009;30(1):153-60.


第6章 化学療法

Clinical Question・推奨一覧へ


はじめに

肝細胞癌に関しても,他の癌種と同じように分子標的治療薬が用いられるようになった。化学療法については,分子標的治療薬を従来の殺細胞性抗癌剤と分けて取り扱うこともあるが,この章では,これらを分けずに化学療法として取り扱う。

肝細胞癌に対する化学療法に関する論文は,これまでは対照群を伴わない臨床第Ⅰ相または第Ⅱ相相当の研究がほとんどであり,大規模なランダム化比較試験(RCT)はなかった。今回の改訂では,進行肝細胞癌に対してソラフェニブとプラセボを比較した二重盲検RCT の報告が2 つあり,ソラフェニブ群での生命予後改善効果が示された。これらの報告はプラセボを対照に比較しており,化学療法が進行肝細胞癌症例の生命予後を改善することを高いエビデンスで証明した初めての報告である。このエビデンスより,ソラフェニブが進行肝細胞癌に対する化学療法の標準的治療となった。

一方,本邦では,以前から肝内進行例に対して肝動注化学療法が積極的に行われており,プラセボと比較ができなかったためにエビデンスレベルは高くないものの,肝動注化学療法の報告はソラフェニブと比べて奏効率も高く,生存期間も遜色ない報告がほとんどである。

ソラフェニブは平成21(2009)年5月に本邦にても使用可能となったが,この肝動注化学療法との位置づけをはじめ,治療対象(腫瘍進展度,肝予備能),開始用量,効果判定と治療終了のタイミングなどが課題となっている。

現在,ソラフェニブを対照とした新たな分子標的治療薬の開発,ソラフェニブ治療後の二次化学療法,根治治療後補助化学療法,肝動脈塞栓療法(TAE)や他の治療との併用化学療法などの開発が盛んに行われており,将来ソラフェニブ以外の有用な薬剤の登場が期待されている。

文献の選択

今回の改訂では,2011 年12 月までの英文論文に対して,各CQ に設定した検索式により該当した論文についてAbstract を評価し,論文形式,症例数,研究デザインを基に選択した。塞栓を含む治療,手術前後の化学療法,開発中の薬剤や使用されなくなった薬剤を用いたものは除外し,さらに抗腫瘍効果判定があいまいなものも除外した。


CQ 41
全身化学療法はどのような症例に行われるか?
推奨

全身化学療法は外科切除や肝移植,局所療法,TACE が適応とならない症例が対象となる。特に,ソラフェニブはP Sが良好なChild-Pugh 分類A の症例が対象である。 (グレードA)

【サイエンティフィックステートメント】

肝細胞癌におけるソラフェニブの有効性を証明したRCT では,外科切除や肝移植,局所療法,肝動脈化学塞栓療法(TACE)が適応とならない症例を対象としていた(LF120541) Level 1b,L3F003532) Level 1b)。また,その他の肝細胞癌に対する化学療法の報告でも同じように,外科切除,TACE,ラジオ波焼灼療法(RFA)など,既存の治療法の適応外の症例を対象に行われていた。

肝細胞癌の進行度に関しては,門脈本幹やその一次分枝に腫瘍栓を有する症例,肝内多発例,遠隔転移を有する例を対象としていることが多かった。

肝予備能に関しては,ソラフェニブの有用性が示されたプラセボとのRCT では,performance status(PS)が良好で,肝機能がChild-Pugh 分類A の症例を対象としており,現時点でソラフェニブの有用性が証明されているのはChild-Pugh 分類A の症例のみである(LF120541) Level 1b,L3F003532) Level 1b)。

全身化学療法の効果因子を検討した報告で,PS 2〜3,腹水あり,腫瘍の肝占有率50%以上,門脈本幹腫瘍塞栓,血清ビリルビン値2.0 mg/dl以上に該当する症例では奏効例がないため,高度進行肝細胞癌,高度肝機能低下例では全身化学療法は推奨されないと結論していた(LF024403) Level 4)。

補助化学療法としてのソラフェニブの使用や,他の治療法とソラフェニブの併用についてはその有用性は示されていない。TACE 後のソラフェニブ投与についてのRCT の結果が報告されているが,有効性は証明されなかった(L3F000604) Level 1b)。

【解 説】

肝予備能が低下したChild-Pugh 分類B の症例に対するソラフェニブの投与に関しては,薬物動態に差はないが,ビリルビン上昇,腹水,脳症など肝予備能が増悪する頻度が高く,無増悪期間中央値や生存期間中央値もChild-Pugh 分類A の症例と比べて短い傾向がみられたという報告(L3F003185) Level 2a)や,副作用や中止の頻度はChild-Pugh スコアで変わらないものの,無増悪期間や予後は短いため,ソラフェニブ投与は慎重にならなければならないという報告がある(L3F004186) Level 2b)。

ソラフェニブの有用性を証明した2 つのRCT の対象症例は,Child-Pugh 分類A 症例であったことより,現時点では,Child-Pugh 分類B 症例に対するソラフェニブの安全性や有効性は証明されていないために投与は推奨できない。

【参考文献】

1) LF12054 Llovet JM, Ricci S, Mazzaferro V, Hilgard P, Gane E, Blanc JF, et al;SHARP Investigators Study Group. Sorafenib in advanced hepatocellular carcinoma. N Engl J Med 2008;359(4):378-90.

2) L3F00353 Cheng AL, Kang YK, Chen Z, Tsao CJ, Qin S, Kim JS, et al. Efficacy and safety of sorafenib in patients in the Asia-Pacific region with advanced hepatocellular carcinoma:a phase Ⅲ randomised, double-blind, placebo-controlled trial. Lancet Oncol 2009;10(1):25-34.

3) LF02440 Nagahama H, Okada S, Okusaka T, Ishii H, Ikeda M, Nakasuka H, et al. Predictive factors for tumor response to systemic chemotherapy in patients with hepatocellular carcinoma. Jpn J Clin Oncol 1997;27(5):321-4.

4) L3F00060 Kudo M, Imanaka K, Chida N, Nakachi K, Tak WY, Takayama T, et al. Phase Ⅲ study of sorafenib after transarterial chemoembolisation in Japanese and Korean patients with unresectable hepatocellular carcinoma. Eur J Cancer 2011;47(14):2117-27.

5) L3F00318 Abou-Alfa GK, Amadori D, Santoro A, Figer A, De Greve J, Lathia C, et al. Safety and efficacy of sorafenib in patients with hepatocellular carcinoma(HCC)and Child-Pugh A versus B cirrhosis. Gastrointest Cancer Res 2011;4(2):40-4.

6) L3F00418 Hollebecque A, Cattan S, Romano O, Sergent G, Mourad A, Louvet A, et al. Safety and efficacy of sorafenib in hepatocellular carcinoma:the impact of the Child-Pugh score. Aliment Pharmacol Ther 2011;34(10):1193-201.


CQ 42  
肝動注化学療法は予後を改善するか?
推奨

肝動注化学療法は予後を改善する可能性はあるが十分な科学的根拠がない。 (グレードC1)

【サイエンティフィックステートメント】

インターフェロン全身投与とシスプラチン肝動注を併用したインターフェロン・シスプラチン併用肝動注群を,シスプラチン単独肝動注群,best supportive care(BSC)群と比較した小規模のRCTで,インターフェロン・シスプラチン併用肝動注群で生存期間中央値はシスプラチン単独肝動注群,BSC に比較して有意に延長がみられた(LF020891) Level 1b)。

インターフェロン併用5-FU 肝動注化学療法の成績をヒストリカルコントロールと比較した報告では,生存率の有意な改善がみられた(LF102442) Level 2b)。

肝細胞癌に対する肝動注化学療法をBSC と比較し,予後改善を証明した大規模比較試験はなかった。

【解 説】

肝動注化学療法は,その手技の特殊性はあるものの国内では多数例を対象に実施されてきた。高濃度の抗癌剤を肝細胞癌に直接投与することが可能であり,また全身の抗癌剤の濃度も低く抑えられ,全身への副作用の頻度は低くなると考えられている。

肝動注化学療法の奏効率は14〜71%と腫瘍縮小効果はみられるものの,生存期間延長を十分に証明した報告はない(付表)。上記のインターフェロン・シスプラチン併用肝動注化学療法の報告はRCT であるが,症例数などの設定根拠は記載されずRCT としてのデザインに問題がある。肝動注化学療法の生存期間については,生存期間中央値で2.6〜17.6 カ月と報告されており,ばらつきがみられる(付表)。これは対象症例の腫瘍進展度や肝予備能の違いによるものと考えられる。ヒストリカルコントロールと比較し予後改善があったという報告があることから,予後改善の可能性があると考えられるが十分なエビデンスはないとした。今後,肝動注化学療法の予後改善を証明するにはソラフェニブとの比較試験が必要となる。

【参考文献】

1) LF02089 Chung YH, Song IH, Song BC, Lee GC, Koh MS, Yoon HK, et al. Combined therapy consisting of intraarterial cisplatin infusion and systemic interferon-alpha for hepatocellular carcinoma patients with major portal vein thrombosis or distant metastasis. Cancer 2000;88(9):1986-91.

2) LF10244 Obi S, Yoshida H, Toune R, Unuma T, Kanda M, Sato S, et al. Combination therapy of intraarterial 5-fluorouracil and systemic interferon-alpha for advanced hepatocellular carcinoma with portal venous invasion. Cancer 2006;106(9):1990-7.


CQ 43
化学療法(薬物療法)で有効な治療は何か?
推奨

Child-Pugh 分類A の切除不能肝細胞癌に対する全身化学療法にはソラフェニブが推奨される。 (グレードA)

【サイエンティフィックステートメント】

肝細胞癌に対して予後改善を証明した薬剤はソラフェニブのみである。ソラフェニブは肝細胞癌の増殖シグナルであるMAP キナーゼにおけるRaf や,血管内皮細胞,周皮細胞におけるVEGFR,PDGFR のキナーゼ活性を阻害することで腫瘍増殖を抑制するマルチキナーゼ阻害薬である。本邦においては,2009 年5 月に保険適用となっている。

進行肝細胞癌に対するソラフェニブ単剤の効果を検証したRCT は2 つ存在する(LF120541) Level 1b,L3F003532) Level 1b)。いずれも,Child-Pugh 分類A で化学療法による前治療歴のない切除不能肝細胞癌を対象とした大規模RCT であり,プラセボ群に対して全生存期間,無増悪生存期間を有意に延長することが証明された。日本と韓国においてはTACE 後の再発予防の効果をみるRCT が行われたが(L3F000603) Level 1b),再発予防に有効であるというエビデンスは得られなかった。ただし,国別に効果をみたサブグループ解析では,投与期間が長い韓国において再発予防効果が認められたことから,長期継続的に内服可能であれば再発予防効果がある可能性がある。

本剤は,Child-Pugh 分類A の肝機能良好例に対する安全性,有効性しか証明されていない。Child-Pugh 分類B 以下の肝機能不良例に対する安全性,有効性については,いくつかの後ろ向きコホート研究による報告が散見されるのみであり(L3F004184) Level 2a,L3F004265) Level 2b,L3F005546) Level 2b,L3F006427) Level 4,L3F003188) Level 2b),Child-Pugh 分類A の肝機能良好例に限って投与されるべきである。

他の抗癌剤との併用,あるいは根治治療,TAE の補助療法に関する報告は散見されるが,いずれも第T相あるいは第Ⅱ相相当のものであり,大規模な第Ⅲ相試験の報告はない。したがって,他の抗癌剤の併用や,局所療法との併用については有効性,安全性は証明されていないため,単剤による治療が推奨される(L3F003209) Level 1b,L3F0042010) Level 4,L3F0022811) Level 4,L3F0056012) Level 4,L3F0056713) Level 4,L3F0427314) Level 4,L3F0045915) Level 4)。

【解 説】

現在,進行肝細胞癌に対して,ソラフェニブが標準治療薬となっている。本邦におけるソラフェニブの保険適用は切除不能肝細胞癌である。しかしながら本邦では,RFAやTACE,動注化学療法などさまざまな局所療法が広く普及しており,これらによる直接的な治療がまず行われる。したがって実際は,Child-Pugh 分類A で,①TACE 不応,不能症例,②脈管侵襲症例,③遠隔転移症例,に対してソラフェニブの使用はコンセンサスが得られている。局所療法に対する補助療法や他の抗癌剤との併用については,安全性,有効性が確認されておらず,施行されるべきではない。

【参考文献】

1) LF12054 Llovet JM, Ricci S, Mazzaferro V, Hilgard P, Gane E, Blanc JF, et al;SHARP Investigators Study Group. Sorafenib in advanced hepatocellular carcinoma. N Engl J Med 2008;359(4):378-90.

2) L3F00353 Cheng AL, Kang YK, Chen Z, Tsao CJ, Qin S, Kim JS, et al. Efficacy and safety of sorafenib in patients in the Asia-Pacific region with advanced hepatocellular carcinoma:a phase Ⅲ randomised, double-blind, placebo-controlled trial. Lancet Oncol 2009;10(1):25-34.

3) L3F00060 Kudo M, Imanaka K, Chida N, Nakachi K, Tak WY, Takayama T, et al. Phase Ⅲ study of sorafenib after transarterial chemoembolisation in Japanese and Korean patients with unresectable hepatocellular carcinoma. Eur J Cancer 2011;47(14):2117-27.

4) L3F00418 Hollebecque A, Cattan S, Romano O, Sergent G, Mourad A, Louvet A, et al. Safety and efficacy of sorafenib in hepatocellular carcinoma:the impact of the Child-Pugh score. Aliment Pharmacol Ther 2011;34(10):1193-201.

5) L3F00426 Iavarone M, Cabibbo G, Piscaglia F, Zavaglia C, Grieco A, Villa E, et al;SOFIA(SOraFenib Italian Assessment)study group. Field-practice study of sorafenib therapy for hepatocellular carcinoma:a prospective multicenter study in Italy. Hepatology 2011;54(6):2055-63.

6) L3F00554 Pinter M, Sieghart W, Graziadei I, Vogel W, Maieron A, Konigsberg R, et al. Sorafenib in unresectable hepatocellular carcinoma from mild to advanced stage liver cirrhosis. Oncologist 2009;14(1):70-6.

7) L3F00642 Wörns MA, Weinmann A, Pfingst K, Schulte-Sasse C, Messow CM, Schulze-Bergkamen H, et al. Safety and efficacy of sorafenib in patients with advanced hepatocellular carcinoma in consideration of concomitant stage of liver cirrhosis. J Clin Gastroenterol 2009;43(5):489-95.

8) L3F00318 Abou-Alfa GK, Amadori D, Santoro A, Figer A, De Greve J, Lathia C, et al. Safety and Efficacy of Sorafenib in Patients with Hepatocellular Carcinoma(HCC)and Child-Pugh A versus B Cirrhosis. Gastrointest Cancer Res 2011;4(2):40-4.

9) L3F00320 Abou-Alfa GK, Johnson P, Knox JJ, Capanu M, Davidenko I, Lacava J, et al. Doxorubicin plus sorafenib vs doxorubicin alone in patients with advanced hepatocellular carcinoma:a randomized trial. JAMA 2010;304(19):2154-60.

10) L3F00420 Hsu CH, Shen YC, Lin ZZ, Chen PJ, Shao YY, Ding YH, et al. Phase Ⅱ study of combining sorafenib with metronomic tegafur/uracil for advanced hepatocellular carcinoma. J Hepatol 2010;53(1):126-31.

11) L3F00228 Pawlik TM, Reyes DK, Cosgrove D, Kamel IR, Bhagat N, Geschwind JF. Phase Ⅱ trial of sorafenib combined with concurrent transarterial chemoembolization with drug-eluting beads for hepatocellular carcinoma. J Clin Oncol 2011;29(30):3960-7.

12) L3F00560 Prete SD, Montella L, Caraglia M, Maiorino L, Cennamo G, Montesarchio V, et al. Sorafenib plus octreotide is an effective and safe treatment in advanced hepatocellular carcinoma:multicenter phase Ⅱ So. LAR. study. Cancer Chemother Pharmacol 2010;66(5):837-44.

13) L3F00567 Richly H, Schultheis B, Adamietz IA, Kupsch P, Grubert M, Hilger RA, et al. Combination of sorafenib and doxorubicin in patients with advanced hepatocellular carcinoma:results from a phase I extension trial. Eur J Cancer 2009;45(4):579-87.

14) L3F04273 Gomez-Martin C, Bustamante J, Castroagudin JF, Salcedo M, Garralda E, Testillano M, et al. Efficacy and safety of sorafenib in combination with mammalian target of rapamycin inhibitors for recurrent hepatocellular carcinoma after liver transplantation. Liver Transpl 2012;18(1):45-52.

15) L3F00459 Kim R, El-Gazzaz G, Tan A, Elson P, Byrne M, Chang YD, et al. Safety and feasibility of using sorafenib in recurrent hepatocellular carcinoma after orthotopic liver transplantation. Oncology 2010;79(1-2):62-6.


CQ 44
ホルモン療法は有効か?
推奨

進行肝細胞癌に対してホルモン療法は無効であり,行わないよう勧められる。 (グレードD)

【サイエンティフィックステートメント】

3 件の大規模RCT にてタモキシフェンは肝細胞癌症例の予後を改善しなかった(LF023441) Level 1b,LF106472) Level 1b,LF071433) Level 1b)。高用量では生存期間の延長はなく,死亡率が増加し,QOL の改善も認めなかった(LF071433) Level 1b)。2 つのメタアナリシスにより肝細胞癌に対するタモキシフェンの使用は否定された(LF103434) Level 1a,LF101935) Level 1a)。

抗アンドロゲン療法も2件の200例以上を対象としたRCT にて効果が否定された(LF023226) Level 1b,LF105517) Level 1b)。

【解 説】

ホルモン療法については大規模RCT が行われており,効果がないという十分なエビデンスがあると判断し,推奨の強さはグレードD とした。

【参考文献】

1) LF02344 Tamoxifen in treatment of hepatocellular carcinoma:a randomised controlled trial. CLIP Group(Cancer of the Liver Italian Programme). Lancet 1998;352(9121):17-20.

2) LF10647 Barbare JC, Bouché O, Bonnetain F, Raoul JL, Rougier P, Abergel A, et al. Randomized controlled trial of tamoxifen in advanced hepatocellular carcinoma. J Clin Oncol 2005;23(19):4338-46.

3) LF07143 Chow PK, Tai BC, Tan CK, Machin D, Win KM, Johnson PJ, et al. High-dose tamoxifen in the treatment of inoperable hepatocellular carcinoma:A multicenter randomized controlled trial. Hepatology 2002;36(5):1221-6.

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5) LF10193 Gallo C, De Maio E, Di Maio M, Signoriello G, Daniele B, Pignata S, et al;CLIP(Cancer of the Liver Italian Programme)Investigators. Tamoxifen is not effective in good prognosis patients with hepatocellular carcinoma. BMC Cancer 2006;6:196.

6) LF02322 Grimaldi C, Bleiberg H, Gay F, Messner M, Rougier P, Kok TC, et al. Evaluation of antiandrogen therapy in unresectable hepatocellular carcinoma:results of a European Organization for Research and Treatment of Cancer multicentric double-blind trial. J Clin Oncol 1998;16(2):411-7.

7) LF10551 Groupe d’Etude et de Traitement du Carcinome Hépatocellulaire. Randomized trial of leuprorelin and flutamide in male patients with hepatocellular carcinoma treated with tamoxifen. Hepatology 2004;40(6):1361-9.


CQ 45
化学療法(薬物療法)の治療効果予測因子・予後因子は何か?
推奨

化学療法(薬物療法)において,科学的根拠のある治療効果予測因子・予後因子はない。 (グレードC1)

【サイエンティフィックステートメント】

肝細胞癌の標準治療薬であるソラフェニブを用いた治療効果予測因子・予後因子について検討した報告は5 件あった。治療効果予測として皮膚毒性(L3F006251) Level 2a),AFP の低下(L3F006582) Level 3,L3F042793) Level 3)が示されている。また,複数の血清マーカーの組み合わせによる効果予測も報告されている(L3F008344) Level 2a)。一方,予後不良因子として肺転移の存在が示されている(L3F006545) Level 2a)。

【解 説】

ソラフェニブは代表的なマルチキナーゼ阻害薬であり,その標的分子は多岐にわたる。このためゲフィチニブにおけるEGFR status,トラスツズマブにおけるHER2 status など単一分子を標的とした分子標的治療薬のような明確なマーカーを見出すことは難しい可能性がある。臨床的な指標としてAFPやPIVKA-Ⅱなどの腫瘍マーカーの変化や,腫瘍因子による予測などの検討がなされているが,これらも必ずしも特異的な予測因子とはなり得ない。

さらに,ソラフェニブの治療効果予測因子・予後因子については,前向きに検討した報告がないことから,科学的根拠のある因子はないと判断した。このため推奨の強さはグレードC1 とした

【参考文献】

1) L3F00625 Vincenzi B, Santini D, Russo A, Addeo R, Giuliani F, Montella L, et al. Early skin toxicity as a predictive factor for tumor control in hepatocellular carcinoma patients treated with sorafenib. Oncologist 2010;15(1):85-92.

2) L3F00658 Yau T, Yao TJ, Chan P, Wong H, Pang R, Fan ST, et al. The significance of early alpha-fetoprotein level changes in predicting clinical and survival benefits in advanced hepatocellular carcinoma patients receiving sorafenib. Oncologist 2011;16(9):1270-9.

3) L3F04279 Kuzuya T, Asahina Y, Tsuchiya K, Tanaka K, Suzuki Y, Hoshioka T, et al. Early decrease in alpha-fetoprotein, but not des-gamma-carboxy prothrombin, predicts sorafenib efficacy in patients with advanced hepatocellular carcinoma. Oncology 2011;81(3-4):251-8.

4) L3F00834 Miyahara K, Nouso K, Tomoda T, Kobayashi S, Hagihara H, Kuwaki K, et al. Predicting the treatment effect of sorafenib using serum angiogenesis markers in patients with hepatocellular carcinoma. J Gastroenterol Hepatol 2011;26(11):1604-11.

5) L3F00654 Yau T, Chan P, Ng KK, Chok SH, Cheung TT, Fan ST, et al. Phase 2 open-label study of single-agent sorafenib in treating advanced hepatocellular carcinoma in a hepatitis B-endemic Asian population:presence of lung metastasis predicts poor response. Cancer 2009;115(2):428-36.


CQ 46
化学療法の治療効果判定はどのようにするか?
推奨

肝細胞癌治療の治療効果判定においては,壊死部分,生存腫瘍部分を正しく評価する必要があるため,これらを考慮に入れたmodified RECIST,RECICL,EASL 基準が有用である。 (グレードC1)

【サイエンティフィックステートメント】

WHO 基準(L3H000451))に始まる各種治療効果判定基準は,臨床試験,治験を行う場合の共通言語として設定された判定基準である。RECIST は世界的に広く普及しており,現在はRECIST1.1 が用いられている。RECIST は種々のデータベースを用いてWHO 基準と比較し妥当性が検討されている(LF108202),L3F042783),L3H000444))。

【解 説】

肝細胞癌治療においては,通常の殺細胞性抗癌剤を用いた化学療法とは異なり,焼灼療法,塞栓療法など,必ずしも腫瘍の縮小を伴わない治療が行われる。また,ソラフェニブに代表される血管新生抑制作用をもった分子標的治療薬の場合も,腫瘍縮小を伴わない腫瘍壊死がみられることが多いことから,生存腫瘍部位と壊死部位を判定項目に入れた効果判定基準が提唱されている。すなわちmodified RECIST(mRECIST)(L3F004875))や日本肝癌研究会の直接効果判定基準であるRECICL2009(L3H000286)),欧州肝臓学会の基準であるEASL基準(L3F008127))がより肝細胞癌治療に特化した効果判定方法として有用である可能性がある。

判定に際しての問題点としては,いずれの判定基準においても壊死部分の客観的判断が難しい場合があることがあげられる。また,RECICL については,肝内病変の効果判定についてはより正確に判定可能であるが,肝外転移についての基準がないことが問題である。これら判定基準は,専門家の意見を集約し,作成されたものであり,妥当性の検証が必要であり,エビデンスに乏しい。このため推奨の強さについてはグレードC1 とした。

【参考文献】

1)L3H00045 World Health Organization. WHO Handbook for Reporting Results of Cancer Treatment, Geneva, World Health Organization Offset Publication No. 48, 1979.

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CQ 47
化学療法の副作用とその対策は何か?
推奨

肝硬変を合併し,治療前から汎血球減少がみられることが多いため,血液毒性に十分注意する必要がある。 (グレードC1)

ソラフェニブでは,手足症候群,皮疹,下痢,高血圧症といった特徴的な副作用の頻度が高く,治療開始後早期に起こることが多いため,慎重に経過観察し対処する必要がある。 (グレードC1)

【サイエンティフィックステートメント】

肝細胞癌のほとんどが慢性肝炎や肝硬変などの慢性肝疾患を背景に有するため,治療前から白血球,赤血球,血小板などの血球減少がみられることが多い。ほとんどの抗癌剤には副作用として骨髄抑制があるので,血液毒性に十分注意する必要がある。

ソラフェニブによる治療では,約80%程度に何らかの副作用がみられ,頻度の高いものは,手足症候群,皮疹・落屑,下痢,食欲不振,高血圧症,疲労,脱毛,悪心であった(LF120541) Level 1b,L3F003532) Level 1b)。手足症候群,皮疹・落屑,高血圧症は従来の抗癌剤(殺細胞性抗癌剤)ではみられない副作用である。手足症候群は治療継続に関わる重要な副作用で治療開始後早期にみられることが多い(L3F004843) Level 2b)。

【解 説】

ソラフェニブ治療において肝予備能の低下したChild-Pugh 分類B 症例では,高ビリルビン血症,腹水,肝性脳症の頻度がChild-Pugh 分類A 症例に比較して多いという報告(L3F003184) Level 2a)や,年齢と性別,腫瘍進展度をマッチさせて比較すると副作用は差がなったという報告があった(L3F004185) Level 2b)。

また,本邦では既報と比べ,手足症候群,皮疹,肝不全の副作用が多く,治療中は副作用の管理に注意を払う必要がある(L3F008366) Level 2b)。手足症候群を含めた皮膚毒性を認めた群では皮膚毒性がなかった群と比較して生存期間が長い傾向があり,副作用が治療効果の代替指標となる可能性も報告されていた(L3F006257) Level 2b)。

肝細胞癌化学療法に抗癌剤を使用する場合の副作用は,それぞれの薬剤にて異なってくる。以下に,抗癌剤の副作用を示す。

5-FU系(5-FUなど)

食欲不振,悪心・嘔吐などの消化器症状,下痢,全身倦怠感,消化性潰瘍,口腔内潰瘍,好中球減少,血小板減少などの骨髄抑制,高ビリルビン血症など

白金製剤系(シスプラチン,オキサリプラチン)

好中球減少,血小板減少などの骨髄抑制,食欲不振,悪心・嘔吐などの消化器症状,腎障害,高ビリルビン血症など

アントラサイクリン系(ドキソルビシン,エピルビシン,ミトキサントロン)

脱毛,好中球減少,血小板減少などの骨髄抑制,食欲不振,悪心・嘔吐などの消化器症状,粘膜炎,敗血症,心機能低下など

エトポシド

脱毛,食欲不振,悪心・嘔吐などの消化器症状,好中球減少,血小板減少などの骨髄抑制など

イリノテカン

食欲不振,悪心・嘔吐などの消化器症状,粘膜炎,好中球減少,血小板減少などの骨髄抑制,貧血,全身倦怠感,高ビリルビン血症など

ゲムシタビン

好中球減少,血小板減少などの骨髄抑制,貧血,肝障害,皮疹など

パクリタキセル

好中球減少,血小板減少などの骨髄抑制,感染,アレルギーなど

ソラフェニブ

手足症候群,発疹,食欲不振,悪心・嘔吐などの消化器症状,下痢,全身倦怠感,脱毛,高血圧症,膵酵素上昇など

【参考文献】

1)LF12054 Llovet JM, Ricci S, Mazzaferro V, Hilgard P, Gane E, Blanc JF, et al;SHARP Investigators Study Group. Sorafenib in advanced hepatocellular carcinoma. N Engl J Med 2008;359(4):378-90.

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7) L3F00625 Vincenzi B, Santini D, Russo A, Addeo R, Giuliani F, Montella L, et al. Early skin toxicity as a predictive factor for tumor control in hepatocellular carcinoma patients treated with sorafenib. Oncologist 2010;15(1):85-92.


付表 肝動注化学療法・薬剤別奏効率・生存期間(50 例以上)
薬 剤 症例数 奏効率
(%)
生存期間
中央値(月)
文献ID 研究
デザイン
EV
レベル
単剤 Doxorubicin(肝動注) 72 60 7 LF022151) RCT 1b
Doxorubicin(全身) 44.1 6.5      
CDDP 67 37 10.7 LF018852) cohort study 4
DDP-H 80 33.8 ND L3F006663) cohort study 4
DDP-H 84 3.6 7.0 L3F001784) cohort study 4
多剤 CDDP, 5-FU(low FP) 52 71 ND LF003195) cohort study 2b
CDDP, 5-FU(low FP),
+/-LV
53 24.5 ND L3F004416) cohort study 3
CDDP, 5-FU(low FP) 52 38.5 15.9 L3F006177) cohort study 4
CDDP, 5-FU(low FP) 68 0 5.0 L3F006398) RCT 1b
CDDP, 5-FU   16.7 6.3      
CDDP, mitomycin C, 5-FU, LV 53 28.3 13.2 LF120769) cohort study 4
IFN, CDDP 68 33 4.4 LF0208910) RCT 1b
CDDP   14 2.6      
BSC     1.2      
IFN, 5-FU 116 52 6.9 LF1024411) cohort study 2b
BSC(historical control)     ND      
IFN, 5-FU 55 29.1 9.0 L3F0062112) cohort study 4
IFN, 5-FU 102 39.2 9.0 L3F0072213) cohort study 4
IFN, 5-FU 104 24.6 10.5 L3H0002214) RCT 1b
IFN, 5-FU, CDDP   45.6 17.6      

CDDP:cisplatin, DDP-H:diamminedichloroplatinum(CDDP powder), 5-FU:fluorouracil, low FP:fluorouracil+cisplatin,
LV:leucovorin, IFN:interferon, BSC:best supportive care, ND:not described

【参考文献】

1) LF02215 Tzoracoleftherakis EE, Spiliotis JD, Kyriakopoulou T, Kakkos SK. Intra-arterial versus systemic chemotherapy for non-operable hepatocellular carcinoma. Hepatogastroenterology 1999;46(26):1122-5.

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第7章 放射線治療

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はじめに

CT 放射線治療計画に基づく,3 次元原体照射法による放射線治療が普及していない1970 年代頃までは,肝細胞癌に対する放射線治療はほとんど行われてこなかった。かつては,放射線治療室でのセットアップ位置で肝内腫瘍の正確な局在を明確にすることが難しかったので,ある程度の抗腫瘍効果を上げるためには,放射線に比較的感受性の高い肝臓に障害を生じる可能性が高かったのがその理由である。3 次元原体照射法が普及したことによって,不必要に照射される正常肝組織容積が減少可能になったと同時に,線量容積ヒストグラム(dose-volume histogram;DVH)を用いた肝障害リスクの定量的な評価・予測が可能となった。また,肝細胞癌に対する3 次元原体照射法による放射線治療では,肝内の腫瘍占拠部位による治療適応制限はほとんどないことから,門脈腫瘍栓など,他の治療選択肢が適応困難な症例を主な対象として1980年代頃から放射線治療が行われるようになった。

現在では,体幹部定位放射線治療や粒子線治療といった,線量集中性の点で3 次元原体照射法をはるかに上回る技術も出現し,初期治療に用いる局所療法としても検討しうるようになってきた。ただし,粒子線を含む放射線治療の適応を判断するためのエビデンスレベルの高い報告は多くなく,他の局所療法と比較するランダム化比較試験(RCT)を実施するのは今後も難しいと考えられる。また,肝細胞癌に対する放射線治療の歴史は実質的には20 年余りとまだ短いこともあり,その効果や安全性はもちろん,治療適応基準や治療方法についても十分なコンセンサスはできてはいない。その一方で,手術適応がありながら,体幹部定位放射線治療や粒子線治療による加療を希望して受診してくる患者も徐々に増加する傾向にあるのが放射線治療診療現場の実情である。

今回の改訂では,このような現状をふまえ,前版(2009 年版)から引き続く3 次元原体照射法と遠隔転移についてのCQ に加えて,体幹部定位放射線治療と粒子線治療〔陽子線治療,重粒子(炭素イオン)線治療〕についてのCQ を新たに設定し,放射線治療における多様な選択肢をエビデンスに基づいて検討できるようにした。


CQ 48
肝細胞癌に対する,3 次元原体照射法による放射線治療は有用か?
推奨

門脈腫瘍栓症例や切除不能症例,内科的合併症などの理由で,他の標準的な治療法が適応とならない病態に対しては,3 次元原体照射法による放射線治療を検討してよい。 (グレードC1)

放射線治療単独による生存期間延長の効果を示す十分な科学的根拠はないが,切除不能症例に対してはTACE に放射線治療を併用することによって生存期間の延長が期待できる。 (グレードC1)

また,放射線治療の分割方法や総線量,治療適応可能な肝機能の基準について科学的根拠がある推奨はない。

【サイエンティフィックステートメント】

放射線治療の適応そのものを検討する報告はなかったため,肝細胞癌に対する3次元放射線治療を検討した論文における対象症例選択から検討を行った。これらの報告における対象症例の選択基準は大きく2 つに分けられた。1 つ は門脈腫瘍栓もしくは下大静脈腫瘍栓症例を対象とした報告,もう1 つは切除不能症例を対象とした報告であり,後者の一部では切除不能の理由に脈管への腫瘍栓形成が含まれているものもあった。肝細胞癌の進行度や肝機能,他治療の併用の有無などに関する症例の組み込み基準が報告によって異なっていた。さらには,放射線治療の分割方法や総線量も報告ごとに異なっていた。前向き研究として行われた門脈腫瘍栓もしくは下大静脈腫瘍栓症例に対する治療成績の8 報告では,奏効率は30〜80.5%,1 年生存率は25〜47.4%と報告されている(LF105841) Level 4,LF108242) Level 4,LF111003) Level 4,LF117084) Level 4,L3F004095) Level 4,L3F009666) Level 2b,L3F010127) Level 4,L3F010138) Level 4)。報告によっては,奏効例では非奏効例と比較して生存率に有意な改善がみられたと結論づけている(LF108242)Level 4,L3F004095)Level 4,L3F010138)Level 4,LF114029) Level 4,LF1170710) Level 4)。全身状態の悪化により予定していた治療が完遂できず,脱落例の多い報告がみられた(LF1170710) Level 4,LF111003) Level 4)。腫瘍の増大や全身状態の悪化が脱落原因として記載されていたが,放射線治療の有害事象による可能性も否定はできない。ただし,これらも含めたいずれの報告でも,放射線治療は安全に行えると結論している。

また,放射線治療の役割をRCT で直接示した報告はみられないが,複数の前向き研究および後ろ向き研究が肝動脈化学塞栓療法(TACE)に放射線治療を追加することによる予後の改善を示唆するデータを報告している。Meng らは,切除不能肝細胞癌に対するTACE+放射線治療の有効性と安全性をメタアナリシスによって評価している(L3F0098511) Level 2a)。5 つのRCT と12 の比較臨床研究(CCT)で合計1,476 例のデータに基づき,TACE+放射線治療例ではTACE 単独治療例と比較して奏効率および1 年・2 年・3 年・5 年生存率が有意に高かったと報告している。有害事象に関しては,TACE+放射線治療例でTACE 単独治療例と比較して総ビリルビン値上昇が有意に高頻度であったが,嘔気嘔吐・白血球減少症・ALT 値上昇の有害事象については有意な差はみられなかったと報告している。ただし,このメタアナリシスはランダム割付されていないCCT が多数含まれた解析であり,この報告の結果を解釈するにあたっては注意を要する。

また,動注化学療法併用(LF1064912) Level 4,LF1138413) Level 4),TACE 併用(LF1117814) Level 4,L3F0013215) Level 5,LF1103216) Level 5),放射線治療単独(LF1110117) Level 4,L3F0101018) Level 5,L3F0101419) Level 5,L3F0102320) Level 5)で放射線治療を行った報告で,放射線の総線量が生存に対する予後因子であったと報告されている。門脈腫瘍栓もしくは切除不能の症例に対する放射線単独治療の報告でも,予後が放射線の投与線量に依存していることが示されている(LF1170710) Level 4,LF1135421) Level 4,LF1082222) Level 4)。ただし,動注化学療法併用放射線治療の2 報告(LF1064912) Level 4,LF1138413) Level 4)は,いずれも胆管癌および大腸癌肝転移を対象に含んだ研究であり,肝細胞癌にあてはまるか否かは示されていないため,解釈には注意を要する。

以上より,TACE 単独治療よりも放射線治療を併用したほうが予後が改善する可能性があると考えられる。

【解 説】

エビデンスレベルの高い報告は少なく,対照群を伴わない第Ⅰ相/Ⅱ相相当の前向き研究もしくは後ろ向き研究の結果が大半であった。放射線治療領域における近年の放射線集中技術の進歩により,従来は行われなかった肝臓への放射線照射が行われるようになっており,適切に症例選択をすれば比較的安全に放射線治療が可能であると考えられるようになっている。高度肝機能低下例に対する肝臓への照射は危険であるという共通認識はあるものの,安全に治療可能な症例の選択基準や肝臓の耐容線量についてのデータは十分な蓄積がなく,長期成績の蓄積もまだ十分とはいえない。

【参考文献】

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CQ 49
肝細胞癌に対する,体幹部定位放射線治療は有用か?
推奨

他の局所療法の適応困難な肝細胞癌(直径5 cm 以下で転移病巣のないもの)に対して,体幹部定位放射線治療を行うことを検討してよい。ただし,体幹部定位放射線治療による生存期間延長の効果を示す十分な科学的根拠はない。 (グレードC1)

また,放射線治療の分割方法や総線量,治療適応可能な肝機能の基準について科学的根拠がある推奨はない。

【サイエンティフィックステートメント】

RCT をはじめとするエビデンスレベルの高い報告はなく,体幹部定位放射線治療の適応を検討する報告もない。このため,肝細胞癌に対する体幹部定位放射線治療の成績を報告した,第Ⅰ/Ⅱ相試験相当の前向き研究および遡及的研究の結果から,その意義を検討した。

ほとんどの報告では,他の治療手段もしくは,他の局所療法の適応が困難なものを治療対象としていた。肝機能の点では,第T相試験の報告ではChild-Pugh 分類A の症例に限定している報告がいくつかみられたが(L3F010101) Level 4,L3F010272) Level 2b,L3F009463) Level 2b),第Ⅰ/Ⅱ相試験および遡及的研究の報告ではChild-Pugh 分類A またはB を治療対象としている(L3F010834) Level 2b,L3F010975) Level 4,LF114706) Level 4,L3F009707) Level 4,L3F001128) Level 4,L3F000159) Level 4,L3F0011810) Level 4)。初期の報告では有害事象の頻度が高いものもみられたが,正常肝に対する線量制約を規定している最近の報告では,放射線治療による重篤な肝障害の発生頻度は比較的少ないと報告されている。治療に用いられる線量および正常肝に対する線量制約基準は報告によって異なるため,科学的根拠をもって推奨可能な放射線の分割方法や総線量,肝機能基準は定まっていない。

治療成績では,奏効率49〜86%,1 年局所制御率65〜100%,1 年生存率51〜92.2%と報告されている(L3F010101) Level 4,L3F010272) Level 2b,L3F009463) Level 2b,L3F010834) Level 2b,L3F010975) Level 4,LF114706) Level 4,L3F009707) Level 4,L3F001128) Level 4,L3F000159) Level 4,L3F0011810) Level 4)。いずれも対照群のない報告であるため,科学的根拠をもって体幹部定位放射線治療による生存期間延長の有無を示すことは困難であるが,2 年局所制御率で90〜95%(L3F010834) Level 2b,L3F010975) Level 4),3 年生存率で42.1〜58.6%(L3F009707) Level 4,L3F001128) Level 4)と比較的良い成績も報告されていることから,他の局所療法が適応困難な症例に対して,体幹部定位放射線治療を検討してよいと考えられる。

【解 説】

体幹部定位放射線治療は1990 年代より行われるようになった,局所制御が期待できるような高線量を腫瘍に投与する比較的新しい放射線治療技術であるが,十分な長期成績が明らかになってはいない。また,体幹部定位放射線治療の技術や設備には施設差が存在し,施設によって治療適応症例基準が異なるのが実情である。このため,放射線の分割方法や総線量,治療適応可能な肝機能の基準などは,科学的根拠をもってガイドラインに規定することは困難である。ただし,上記に引用した報告などに基づき,適切な線量制約が守られていれば,Child-Pugh 分類でA またはB の症例に対する体幹部定位放射線治療は,おおよそ安全に施行可能であるとの一般認識が形成されていると思われる。

なお,肝細胞癌に対して2013 年時点の本邦で保険適用になるのは「原発病巣の直径5 cm 以下で転移病巣のない原発性肝癌」とされており,これに該当しない肝細胞癌症例に放射線治療を行う場合には,CQ48 に示した,3 次元原体照射法による放射線治療または粒子線治療を検討することになる。

【参考文献】

1) L3F01010 Seong J, Lee IJ, Shim SJ, Lim do H, Kim TH, Kim JH, et al. A multicenter retrospective cohort study of practice patterns and clinical outcome on radiotherapy for hepatocellular carcinoma in Korea. Liver Int 2009;29(2):147-52.

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CQ 50
肝細胞癌に対する,粒子線治療〔陽子線治療,重粒子(炭素イオン)線治療〕は有用か?
推奨

他の局所療法の適応困難な肝細胞癌に対して,粒子線治療〔陽子線治療,重粒子(炭素イオン)線治療〕を行うことを検討してよい。特に門脈腫瘍栓や下大静脈腫瘍栓,巨大肝細胞癌など,治療に難渋する腫瘍に対して行うことが考慮できる。 (グレードC1)

【サイエンティフィックステートメント】

肝細胞癌に対する現在の標準的治療と粒子線治療を比較したRCT はない。このため,肝細胞癌に対する粒子線治療を報告した第Ⅰ/Ⅱ相試験相当の前向き研究および遡及的研究の結果から,その意義を検討した。

多くの報告では,他の局所療法の適応が困難なものを治療対象とし,肝機能の点ではChild-Pugh 分類A またはB の症例を対象としていた。陽子線治療および重粒子(炭素イオン)線治療に関するそれぞれ2 つの前向き研究により有効性が報告され,局所制御率として80%以上の良好な効果が示されている(LF106461) Level 2b,L3F009262) Level 2b,LF113533) Level 2b,L3F009554) Level 2b)。また,これらの報告では,有害事象に関しても極めて低率であり,粒子線治療は安全に施行できると報告している。治療に用いられる線量は,X 線による放射線治療に比べておおむね高線量が投与されていたが,報告により異なるため,科学的根拠をもって推奨可能な放射線の分割方法や総線量は定まっていない。

肝細胞癌はその局在により肝門部や消化管に近接し,照射による有害事象が懸念されることがあるが,陽子線治療では線量や照射範囲を調整することにより,これらの病変に対しても有効であることが報告されている(L3F010725) Level 4,L3F009926) Level 4,L3F009917) Level 4,L3F009438) Level 4,L3F009879) Level 2b)。また,門脈腫瘍栓や下大静脈腫瘍栓を伴う腫瘍や巨大肝細胞癌に対する良好な成績が示されている(L3F0106210) Level 4,L3F0101811) Level 4,LF1121312) Level 4,L3F0101913) Level 4)。これらはすべて後ろ向きな解析であるものの一定の役割が期待され,他の治療法の選択に難渋する病態に対しては,粒子線治療を検討してよいと考えられる。

【解 説】

1980 年代より肝細胞癌に対する粒子線治療が行われるようになった。粒子線治療はBragg-peak とよばれる急峻なエネルギーのピークを有するため,X 線による放射線治療に比べて,正常肝の線量増加を伴わずに病巣への線量を増加させることが可能である。近年,粒子線治療の普及とともに,前向き研究においても良好な結果が報告されている。門脈塞栓症,巨大腫瘍,高齢者や合併症を有する肝細胞癌症例に対して期待される治療であるが,粒子線治療施設が限定されていること,現在のところ先進医療として提供されているという問題点もある。

今後,粒子線治療を用いた高いエビデンスレベルの研究が必要であるが,現時点では,肝細胞癌の治療において粒子線治療はおおよそ有効で安全に施行可能で,他の治療法の適応が困難な病態に対しては治療手段の選択肢となり得ると考えられる。

【参考文献】

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4) L3F00955 Imada H, Kato H, Yasuda S, Yamada S, Yanagi T, Kishimoto R, et al. Comparison of efficacy and toxicity of short-course carbon ion radiotherapy for hepatocellular carcinoma depending on their proximity to the porta hepatis. Radiother Oncol 2010;96(2):231-5.

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8) L3F00943 Fukumitsu N, Sugahara S, Nakayama H, Fukuda K, Mizumoto M, Abei M, et al. A prospective study of hypofractionated proton beam therapy for patients with hepatocellular carcinoma. Int J Radiat Oncol Biol Phys 2009;74(3):831-6.

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10) L3F01062 Komatsu S, Fukumoto T, Demizu Y, Miyawaki D, Terashima K, Niwa Y, et al. The effectiveness of particle radiotherapy for hepatocellular carcinoma associated with inferior vena cava tumor thrombus. J Gastroenterol 2011;46(7):913-20.

11) L3F01018 Sugahara S, Nakayama H, Fukuda K, Mizumoto M, Tokita M, Abei M, et al. Proton-beam therapy for hepatocellular carcinoma associated with portal vein tumor thrombosis. Strahlenther Onkol 2009;185(12):782-8.

12) LF11213 Hata M, Tokuuye K, Sugahara S, Kagei K, Igaki H, Hashimoto T, et al. Proton beam therapy for hepatocellular carcinoma with portal vein tumor thrombus. Cancer 2005;104(4):794-801.

13) L3F01019 Sugahara S, Oshiro Y, Nakayama H, Fukuda K, Mizumoto M, Abei M, et al. Proton beam therapy for large hepatocellular carcinoma. Int J Radiat Oncol Biol Phys 2010;76(2):460-6.


CQ 51
肝細胞癌の遠隔転移に対しては,放射線治療が適応となるか?
推奨

骨転移による疼痛の緩和には,放射線治療は一般に有用であり,治療を行うよう勧められる。 (グレードB)

脳転移を有する症例に対しては,生存期間延長を目的として全脳照射と定位放射線照射を適切に組み合わせて,あるいは,いずれか一方を用いて治療を行うよう勧められる。 (グレードB)

【サイエンティフィックステートメント】

肝細胞癌のみの遠隔転移を対象としたエビデンスレベルの高い臨床試験は行われていない。そのため,現時点で得られるエビデンスレベルの高い報告として,原発臓器を特定せずに検索して得られた研究のデータを基に記載をした。

有痛性骨転移に対する放射線治療の除痛率は50〜90%と高く(LF117321) Level 1a,LF117212) Level 1a),無治療の場合と直接比較したRCT は存在しないものの,疼痛緩和を目的として標準的な治療として行われている。線量分割方法を比較するRadiation Therapy Oncology Group の多施設共同研究では,孤発性転移に対しては40.5 Gy/3 週と20 Gy/1 週を,多発性転移に対しては15 Gy/1 週〜30 Gy/2 週の4 種類の分割法を比較した。孤発性転移での部分寛解率は85%と82%,多発性転移での部分寛解率は78〜87%で,分割方法の差による寛解率の有意な差はみられなかった。寛解までの期間や寛解維持期間も両群に有意差はなかった(LF117303) Level 1b)。この結果を基に,短期間で低線量の治療は,長期間の治療と同等の有効性があると考えられるようになった。メタアナリシスでもこの結論は支持され(LF117321) Level 1a),疼痛緩和を治療の目的とする場合には単回照射が適切であると考えられる。ただし,単回照射群では再照射率が高いことから,分割照射による治療も検討する必要があるものの,American Society for Radiation Oncology によるガイドラインでも,分割方法による疼痛緩和の有効性の差はないとされ,単回照射を積極的に考慮すべきであることが記載されている(L3F012054) )。

脳転移については,Horton らが1971 年に報告したECOG のRCT の結果により,全脳照射が生存期間を延長させ,全身状態も改善することが明らかとなった(LF117455) Level 1b)。全脳照射についても,20 Gy/1 週・30 Gy/2 週・40 Gy/4 週など,現在でもしばしば用いられる線量分割方法を比較するRCT が報告され,いずれの報告でも,生存期間・症状の改善率・全身状態保持期間などを指標として,特に有効な線量分割方法を特定することはできていない。また,近年は定位放射線照射の技術が進歩し,広く行われるようになっている。最大径2.5 cm 以下で2〜4 病変を有する脳転移症例に対しては,標準治療である全脳照射に定位放射線照射を追加することにより,有意な生存期間の改善はみられないものの,脳内病変制御率を有意に向上させることをKondziolka らが単施設でのRCTによって示した(LF117466) Level 1b)。また,Andrews らは,最大径4 cm 以下で1〜3 病変を有する脳転移症例に対する全脳照射に定位放射線照射を追加する意義を多施設共同RCT によって調べ,単発性脳転移症例については定位放射線照射が有意に生存期間を延長させることを示した(LF117347) Level 1b)。これら2 つのRCT を解析対象としたメタアナリシスでも,全脳照射に定位放射線照射を加えることによって全身状態の維持および局所制御が改善し,recursive partitioning analysis(RPA)クラスT〔Karnofsky performance status(KPS)70 以上,原発巣制御,年齢65 歳未満,頭蓋外遠隔転移なし,をすべて満たす症例〕と単発性脳転移の症例には全生存期間延長効果があることも示されている(L3F012318) Level 1a)。一方,病変数の少ない脳転移症例に対する治療選択肢として,全脳照射を省略して定位放射線照射単独治療を行うことの妥当性をJROSG99-1 のRCT が調べている(LF117359) Level 1b)。1〜4 病変を有する脳転移症例では全脳照射の省略による生存期間の短縮はみられないものの,全脳照射を併用することで脳内再発率が有意に低下することが示された。以上より,4 個以下の病変に対しては定位放射線照射単独治療も治療選択肢の一つとなるが,現在でも標準治療として全脳照射は重要であると考えられる。

なお,これらの報告はいずれも肝細胞癌症例はほとんど組み込んでいないが,Gaspar らのガイドラインでは,systematic review に基づいて,全脳照射で治療する場合に病理組織型によって治療成績が異なる可能性については極めて限られたデータしかないが,病理組織型によって異なった線量分割スケジュールを採用することは支持されないと結論づけている(L3F0116510))。したがって,肝細胞癌の治療成績が他の原発臓器・病理組織型の癌と異なるとする積極的な根拠はないが,原則として上記の報告で得られたエビデンスに基づいて治療方針を決めるのが望ましい。

【解 説】

遠隔転移に対する治療に際して重要な点は,腫瘍による症状の緩和および予防である。特に,脳転移例では腫瘍制御が生存に直結することとなるため,適切な治療方針の選択は極めて重要である。原発臓器を限定することなく骨転移・脳転移を組み込んだ放射線治療についてのRCT は多数行われており,それらの結果は概して一貫している。その点では,治療方針に関してのエビデンスは十分に確立していると考えられる。ただし前述のとおり,肝細胞癌の遠隔転移例を多く組み込んで行われている研究は少ないため,肝細胞癌の遠隔転移に対してこれらの記載が当てはまるかどうかについてのエビデンスは限られている。本CQ における記載を適応するに際しては,この点に注意が必要である。

【参考文献】

1) LF11732 Wu JS, Wong R, Johnston M, Bezjak A, Whelan T;Cancer Care Ontario Practice Guidelines Initiative Supportive Care Group. Meta-analysis of dose-fractionation radiotherapy trials for the palliation of painful bone metastases. Int J Radiat Oncol Biol Phys 2003;55(3):594-605.

2) LF11721 McQuay HJ, Collins SL, Carroll D, Moore RA. Radiotherapy for the palliation of painful bone metastases. Cochrane Database Syst Rev 2000;(2):CD001793.

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7) LF11734 Andrews DW, Scott CB, Sperduto PW, Flanders AE, Gaspar LE, Schell MC, et al. Whole brain radiation therapy with or without stereotactic radiosurgery boost for patients with one to three brain metastases:phase Ⅲ results of the RTOG 9508 randomised trial. Lancet 2004;363(9422):1665-72.

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9) LF11735 Aoyama H, Shirato H, Tago M, Nakagawa K, Toyoda T, Hatano K, et al. Stereotactic radiosurgery plus whole-brain radiation therapy vs stereotactic radiosurgery alone for treatment of brain metastases:a randomized controlled trial. JAMA 2006;295(21):2483-91.

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第8章 治療後のサーベイランス,再発予防,再発治療

Clinical Question・推奨一覧へ


はじめに

周知のとおり,肝細胞癌は根治的に治療が行われた後であっても,再発率が高く,いまだ解決されぬ問題点となっている。一方,再発しても,初発と同様の治療法選択が可能であり,治療効果も一定以上期待できる点が他の癌種にはない特徴といえる。すなわち,肝細胞癌の治療を考えるうえで,再発に対する治療戦略は初発同様に重要である。

本ガイドライン初版(2005 年版)および第2版(2009 年版)は,再発治療に関するエビデンスが十分でなかったため,基本的に初発肝細胞癌を対象に策定されてきた。再発治療に関するClinical Question(以下CQ,初版ではResearch Question に相当)は,手術を扱う第3 章における「再発肝細胞癌に対する有効な治療は?」のみで,これに対する推奨(第2 版)は「再発肝細胞癌に対しては,初回肝細胞癌に対するのと同じ基準で治療方針を決定することが推奨される。すなわち肝切除が標準治療であり,特に肝機能良好例(非硬変肝症例またはChild 分類のA 症例)における単発症例では再切除が推奨される」(推奨グレードB)となっていた。

しかし,昨今の手術以外の治療法の進歩や各種診断法のエビデンスの蓄積を受け,初回根治治療後の対応についても,ガイドラインとしてまとめようということになり,第3 版ではこれらを一括して「第8 章 治療後のサーベイランス,再発予防,再発治療」として扱うこととした。根治治療法として,肝切除,局所療法,肝移植を選び,それぞれ治療後のフォローアップ(再発を拾い上げるサーベイランス),再発予防法,再発時の治療法選択の3 つの命題をかかげた。すなわち,計9 つのCQ を新設し,いずれも2007 年6 月以前の論文まで対象を広げて検討した。検討の過程でいくつかの理由により,これら9 つのCQ は統廃合され,最終的に6 つとなった。たとえば,治療後のサーベイランスと再発予防については多くの論文が肝切除と局所療法を同時に対象としているため,両者をエビデンスとして分けがたいことが判明した。よって,おのおの1 つのCQ として扱われている。肝移植後のサーベイランスについては,肝細胞癌再発を主眼にした報告がないため,CQ そのものを廃止した。また,化学療法による再発予防を目指した補助療法については,第2 版までと同様,「第3 章 手術」のなかの「補助療法」のCQ で扱い,第8 章ではそれ以外の対応について扱った。

本章で扱った6 つのCQ は,いずれもいまだエビデンスが十分とはいえない状況である。今後のさらなるエビデンスの蓄積を待って,次回改訂につなげたい。


CQ 52
肝切除後や穿刺局所療法後,どのようにフォローアップするか?
推奨

肝切除後や穿刺局所療法後には,初発時の超高危険群に対するサーベイランスに準じ,腫瘍マーカーと画像検査の併用による厳密なフォローアップが推奨される。 (グレードC1)

【サイエンティフィックステートメント】

初発時の肝細胞癌サーベイランスと異なり,肝切除後や穿刺局所療法後の適切なフォローアップ法を確立する検査方法や間隔を比較検討した論文は存在しなかった。したがって,十分なエビデンスに基づくフォローアップ法の推奨はできなかった。

【解 説】

肝細胞癌発症の超高危険群であるC 型肝硬変患者の発癌率が年率約8%(LF021901) Level 2a)であるのに対し,肝細胞癌の肝切除後の再発率は年率10%以上で5 年後には70〜80%に達する。また,穿刺局所療法後,超音波検査とdynamic CT を4 カ月間隔で行った報告(LF119062) Level 4)では,肝細胞癌累積再発率は1 年18.6%,5年72.0%である。肝切除後ならびに穿刺局所療法後の再発の早期発見が予後を改善するというエビデンスは十分ではないが,肝切除あるいは穿刺局所療法の長期予後を報告した論文では,再発に対する再肝切除,繰り返す穿刺局所療法の施行が通常記載されていることを考慮すると,根治治療の機会をもたらす点では,治療後のサーベイランスは初発同様に重要であると考えられる。したがって,治療後には最低でも超高危険群に準じた厳密なサーベイランスが必要である。

本ガイドラインのサーベイランスアルゴリズムでは,肝細胞癌発症の超高危険群に対して3〜4 カ月毎の超音波検査と腫瘍マーカー測定を軸に,dynamic CT/MRI を併用した定期的スクリーニングを推奨した。ラジオ波焼灼療法(RFA)3,6,12,24 カ月後に超音波検査を用いたフォローアップ法(L3H000233) Level 3)では,肝細胞癌再発の78%が検出可能であったとの報告がある。しかし肝切除後症例では,手術創や癒着のため超音波検査での評価が困難な場合があること,穿刺局所療法後でも治療後変化と局所再発病変の鑑別が困難な場合があることを勘案し,治療後のフォローアップ法の一案として3〜4 カ月毎の腫瘍マーカー測定,ならびに超音波検査のみならずdynamic CT,dynamic MRI(Gd-EOB-DTPA 造影MRI 含む)による画像検査を提案する。初発時の肝細胞癌のStageや背景肝の線維化により術後再発率の上昇が予測されるが,検査コストや放射線被曝の観点から,これ以上に厳密なスクリーニングは非現実的と考える。

肝外再発も早期発見により治療の選択肢を拡大し予後を改善する可能性を有するが,臨床症状を認めない場合,肝臓以外の再発に対しどのような画像検査を行うかの推奨はない。実際に,四肢の疼痛や神経症状などの臨床症状を認めた場合,また腫瘍マーカーが再上昇したにもかかわらず肝臓に再発を認めない場合は肝外転移を疑い,CT/MRI や骨シンチグラフィー等を考慮する。

なお,AASLD,EASL のガイドラインでも,局所療法後の再発に対するサーベイランス法に関する記載があるが,その根拠となる論文は示されていない。AASLD のガイドラインでは,3〜4 カ月間隔でのdynamic CT またはMRI でのフォローアップが一案として提示され,2 年無再発ならば検査間隔の延長も検討するとしている。またEASL では,超音波検査を3〜4 カ月間隔で行う案が提案されている。

【参考文献】

1) LF02190 Yoshida H, Shiratori Y, Moriyama M, Arakawa Y, Ide T, Sata M, et al. Interferon therapy reduces the risk for hepatocellular carcinoma:national surveillance program of cirrhotic and noncirrhotic patients with chronic hepatitis C in Japan. IHIT Study Group. Inhibition of Hepatocarcinogenesis by Interferon Therapy. Ann Intern Med 1999;131(3):174-81.

2) LF11906 Tateishi R, Shiina S, Yoshida H, Teratani T, Obi S, Yamashiki N, et al. Prediction of recurrence of hepatocellular carcinoma after curative ablation using three tumor markers. Hepatology 2006;44(6):1518-27.

3) L3H00023 Eisele RM, Schumacher G, Lopez-Hänninen E, Neuhaus P. Role of B-mode ultrasound screening in detection of local tumor recurrence in the first year after radiofrequency ablation in the liver. Cancer Detect Prev 2007;31(4):316-22.


CQ 53
肝切除後や穿刺局所療法後の有効な再発予防法は何か?
推奨

肝炎ウイルス陽性肝細胞癌において,肝切除後や穿刺局所療法後のインターフェロン療法は再発抑制や生存率の向上に寄与する可能性があり,有害事象に配慮しながら行ってよい。 (グレードC1)

その他にも有効と報告されている再発予防法はあるが,推奨するまでには至っていない。 (グレードC1)

【サイエンティフィックステートメント】

インターフェロン療法(αもしくはβ)は,B 型肝炎ウイルス(HBV)陽性やC 型肝炎ウイルス(HCV)陽性肝細胞癌の肝切除や穿刺局所療法後の補助療法として,再発抑制や生存率の改善がいくつかのランダム化比較試験(RCT)によって示されてきた(LF106261) Level 1b,LF1176462) Level 1b,L3F0546863) Level 1b)。一方,生存率の改善や再発抑制効果が一定のサブグループのみにとどまったとの報告もある(LF1013764) Level 1b,LF1055665) Level 1b)。最近,少数例の過去のRCT の結果を統合するメタアナリシスの結果が3 編報告されており(L3F0558066) Level 1a,L3F0059267) Level 1a,L3F0563068) Level 1a),いずれもインターフェロンαの有効性を支持している。

術後再発予防としての養子免疫療法(LF0185569) Level 1b)により再発が抑制されたとの報告があるが,生存率を有意に改善するまでには至っていない。また,acyclic retinoid(LF01582610) Level 1b)により再発が抑制され,生存率が改善したとの報告がある。しかし,それぞれ少数例の比較試験であり,現段階では治療後補助療法として推奨するまでには至っていない。ビタミンK については3 件のRCT があるが,有効性は否定的である(L3F01663611) Level 1b,LF10719612) Level 1b,L3F01766613) Level 1b)。ビタミンアナログ製剤として,acyclic retinoid とビタミンK の有効性を統合解析したメタアナリシスが1編あるが,前者で有効,後者で無効という結果であった(L3F05447614) Level 1a)。分枝鎖アミノ酸単独の長期投与の生存率の改善効果は明らかではない(LF00440615) Level 1b)。分枝鎖アミノ酸+ACE 阻害薬併用療法の有効性を示唆するRCT の結果が報告されたが,少数例の単報であり推奨には至らない(L3F00664616) Level 1b)。

【解 説】

肝細胞癌に対し,治癒的に切除あるいは穿刺局所療法を行えた場合でも再発率は極めて高く,再発予防が長期生存には重要である。以前より,B 型やC 型肝炎ウイルス関連の肝細胞癌では抗ウイルス療法が再発予防に寄与する可能性が示唆されており,RCT の結果を含め,エビデンスが示されつつある。本CQ では,根治治療法とみなしうる肝切除と穿刺局所療法後の再発抑制療法のうち,直接抗腫瘍効果を期待した治療法(CQ29 参照)を除き,検討した。

術後インターフェロン療法は,HBV 陽性肝細胞癌,HCV 陽性肝細胞癌において,おのおの1 件のRCT で生存率の改善が報告されている。しかし,他の2 件のRCT では生存率の改善は認められず,HBV陽性肝細胞癌のRCT では進行肝細胞癌でのみ生存率の改善が,HCV 陽性肝細胞癌では比較的早期の肝細胞癌で再発抑制が認められたとする報告であった。前2 件のRCT の症例数が不十分であること,後2 件のRCT ではインターフェロンの有効性を支持するのがサブグループ解析の結果だけだったことより,第2 版(2009 年版)まで推奨度はグレードC1 にとどまっていた。最近発表されたメタアナリシスの結果は本療法の有効性を強く示唆すると考えられるが,うち2 件はRCT と前向きコホート研究の結果を統合しており(L3F0059267) Level 1a,L3F0563068) Level 1a),その解釈には注意を要する。RCT のみを扱ったメタアナリシス(L3F0558066) Level 1a)も対象例の多数がChild-Pugh 分類A であるにもかかわらず,1 年生存率ですでに差が出ており,違和感がある。形式的にメタアナリシスの結果はLevel 1a だが,きちんとデザインされたRCT のデータだけを対象とし,厳密な統計手法を用いて統合したものだけがそのように扱われるべきであり,論文タイトルでメタアナリシスと称しても,それにふさわしいかどうかは,その都度きちんと評価するべきである。これら3 編については,Level 1a とみなすべきではないと考え,推奨グレードはC1 とした。これまでの報告はいずれも非ペグ化製剤を用いて,ウイルス排除を目指した投与法を比較検討したものだが,最近ペグ化製剤(L3F05582617) Level 2b)や少量長期投与法(L3F05680618) Level 3)の有効性を示唆する報告もみられる。エビデンスレベルは十分ではないため,今後のさらなる検討が必要である。

他に,これまで養子免疫療法,acyclic retinoid について,各1 編のRCT で有効との報告があり期待される治療法である。しかし,それぞれが少数例のRCT の単報であり,今後これらの報告に基づき大規模な比較試験による検討が必要と考えられる。ビタミンK について,1 編少数例のRCT で無再発生存での有意差が示されたが,多変量解析では有意な因子として残らず,結果としてはnegative study と捉えるべきであろう(LF10719612) Level 1b)。十分な症例数を登録したRCT の結果を重視し,ビタミンK 単独療法の有効性は否定されたと考える(L3F01766613) Level 1b)。

HBV-DNA 陽性肝細胞癌において,治療後核酸アナログ投与の直接的な再発抑制効果については,文献検索期間内には確立されたエビデンスはなかった。一方,治療後生存に関しては,核酸アナログ内服群のほうが良好との報告が複数存在し,核酸アナログの肝予備能改善・維持効果が間接的に生存率に反映されている可能性がある(L3F01644619) Level 2b,L3F01308620) Level 2b,L3F01752621) Level 1a)。ただし,これらの報告には1 つのメタアナリシスも含まれるが,コホート研究の統合解析に過ぎず,RCT によるエビデンスはない。今後のさらなる検討が必要である。

【参考文献】

1) LF10626 Sun HC, Tang ZY, Wang L, Qin LX, Ma ZC, Ye QH, et al. Postoperative interferon alpha treatment postponed recurrence and improved overall survival in patients after curative resection of HBV-related hepatocellular carcinoma:a randomized clinical trial. J Cancer Res Clin Oncol 2006;132(7):458-65.

2) LF11764 Kubo S, Nishiguchi S, Hirohashi K, Tanaka H, Shuto T, Kinoshita H. Randomized clinical trial of long-term outcome after resection of hepatitis C virus-related hepatocellular carcinoma by postoperative interferon therapy. Br J Surg 2002;89(4):418-22.

3) L3F05468 Lin SM, Lin CJ, Hsu CW, Tai DI, Sheen IS, Lin DY, et al. Prospective randomized controlled study of interferon-alpha in preventing hepatocellular carcinoma recurrence after medical ablation therapy for primary tumors. Cancer 2004;100(2):376-82.

4) LF10137 Lo CM, Liu CL, Chan SC, Lam CM, Poon RT, Ng IO, et al. A randomized, controlled trial of postoperative adjuvant interferon therapy after resection of hepatocellular carcinoma. Ann Surg 2007;245(6):831-42.

5) LF10556 Mazzaferro V, Romito R, Schiavo M, Mariani L, Camerini T, Bhoori S, et al. Prevention of hepatocellular carcinoma recurrence with alpha-interferon after liver resection in HCV cirrhosis. Hepatology 2006;44(6):1543-54.

6) L3F05580 Zhang CH, Xu GL, Jia WD, Ge YS. Effects of interferon alpha treatment on recurrence and survival after complete resection or ablation of hepatocellular carcinoma:a meta-analysis of randomized controlled trials. Int J Cancer 2009;124(12):2982-8.

7) L3F00592 Singal AK, Freeman DH Jr, Anand BS. Meta-analysis:interferon improves outcomes following ablation or resection of hepatocellular carcinoma. Aliment Pharmacol Ther 2010;32(7):851-8.

8) L3F05630 Shen YC, Hsu C, Chen LT, Cheng CC, Hu FC, Cheng AL. Adjuvant interferon therapy after curative therapy for hepatocellular carcinoma(HCC):a meta-regression approach. J Hepatol 2010;52(6):889-94.

9) LF01855 Takayama T, Sekine T, Makuuchi M, Yamasaki S, Kosuge T, Yamamoto J, et al. Adoptive immunotherapy to lower postsurgical recurrence rates of hepatocellular carcinoma:a randomised trial. Lancet 2000;356(9232):802-7.

10) LF01582 Muto Y, Moriwaki H, Ninomiya M, Adachi S, Saito A, Takasaki KT, et al. Prevention of second primary tumors by an acyclic retinoid, polyprenoic acid, in patients with hepatocellular carcinoma. Hepatoma Prevention Study Group. N Engl J Med 1996;334(24):1561-7.

11) L3F01663 Hotta N, Ayada M, Sato K, Ishikawa T, Okumura A, Matsumoto E, et al. Effect of vitamin K2 on the recurrence in patients with hepatocellular carcinoma. Hepatogastroenterology 2007;54(79):2073-7.

12) LF10719 Kakizaki S, Sohara N, Sato K, Suzuki H, Yanagisawa M, Nakajima H, et al. Preventive effects of vitamin K on recurrent disease in patients with hepatocellular carcinoma arising from hepatitis C viral infection. J Gastroenterol Hepatol 2007;22(4):518-22.

13) L3F01766 Yoshida H, Shiratori Y, Kudo M, Shiina S, Mizuta T, Kojiro M, et al. Effect of vitamin K2 on the recurrence of hepatocellular carcinoma. Hepatology 2011;54(2):532-40.

14) L3F05447 Chu KJ, Lai EC, Yao XP, Zhang HW, Lau WY, Fu XH, et al. Vitamin analogues in chemoprevention of hepatocellular carcinoma after resection or ablation-a systematic review and meta-analysis. Asian J Surg 2010;33(3):120-6.

15) LF00440 The San-in Group of Liver Surgery. Long-term oral administration of branched chain amino acids after curative resection of hepatocellular carcinoma:a prospective randomized trial. Br J Surg 1997;84(11):1525-31.

16) L3F00664 Yoshiji H, Noguchi R, Ikenaka Y, Kaji K, Aihara Y, Yamazaki M, et al. Combination of branched-chain amino acids and angiotensin-converting enzyme inhibitor suppresses the cumulative recurrence of hepatocellular carcinoma:a randomized control trial. Oncol Rep 2011;26(6):1547-53.

17) L3F05582 Hagihara H, Nouso K, Kobayashi Y, Iwasaki Y, Nakamura S, Kuwaki K, et al. Effect of pegylated interferon therapy on intrahepatic recurrence after curative treatment of hepatitis C virus-related hepatocellular carcinoma. Int J Clin Oncol 2011;16(3):210-20.

18) L3F05680 Kudo M, Sakaguchi Y, Chung H, Hatanaka K, Hagiwara S, Ishikawa E, et al. Long-term interferon maintenance therapy improves survival in patients with HCV-related hepatocellular carcinoma after curative radiofrequency ablation. A matched case-control study. Oncology 2007;72(Suppl 1):132-8.

19) L3F01644 Chuma M, Hige S, Kamiyama T, Meguro T, Nagasaka A, Nakanishi K, et al. The influence of hepatitis B DNA level and antiviral therapy on recurrence after initial curative treatment in patients with hepatocellular carcinoma. J Gastroenterol 2009;44(9):991-9.

20) L3F01308 Chan AC, Chok KS, Yuen WK, Chan SC, Poon RT, Lo CM, et al. Impact of antiviral therapy on the survival of patients after major hepatectomy for hepatitis B virus-related hepatocellular carcinoma. Arch Surg 2011;146(6):675-81.

21) L3F01752 Wong JS, Wong GL, Tsoi KK, Wong VW, Cheung SY, Chong CN, et al. Meta-analysis:the efficacy of anti-viral therapy in prevention of recurrence after curative treatment of chronic hepatitis B-related hepatocellular carcinoma. Aliment Pharmacol Ther 2011;33(10):1104-12.


CQ 54
肝移植後の有効な再発予防法は何か?
推奨

免疫抑制剤の選択や投与量の調節が,肝移植後の再発予防法に寄与するとの報告がある。 (グレードC1)

【サイエンティフィックステートメント】

免疫抑制と腫瘍の進展の関連は古くより示唆されてきた。Pinna らは,シクロスポリン(CyA)を基にした免疫抑制を行った脳死肝移植70 例(7 例にて再発)について後ろ向きに検討を加え,ミラノ基準内外,病理学的脈管侵襲の有無,肝細胞癌の組織学的分化度などの因子を含めて検討を行ったところ,多変量解析にてCyA に対する曝露が高い場合,再発の可能性が上昇すると報告した。曝露量は,測定ポイントにおけるCyA の血中濃度と結果時間から台形公式(trapezoidal rule)により,血中濃度の時間曲線下面積(area under the blood concentration time curve;AUC)を求め,経過観察時間で除したものと本報告中では定義されている(L3F063491) Level 2b)。同グループは,CyA(79 例)とタクロリムス(Tac)(60 例)をあわせた後報にて,CyA 220 ng/mlそしてTac 10 ng/mlを閾値とした同様の解析を行い,カルシニューリン阻害薬に対する過度の曝露が再発率と関連があるとしている(L3F017442) Level 2b)。血中濃度の測定方法は統一され,諸因子を含めた多変量解析がなされているものの他病死は除外されており,拒絶反応に関する詳述はない。

欧米では,in vitro での抗腫瘍効果が知られているmTOR(mammalian target of rapamycin)阻害薬の使用の報告も蓄積されつつある。Toso らは,脳死肝移植70 例に対し,シロリムス(SRL)を使用し,ミラノ基準外の34例と同基準外の36 例で4 年無再発生存率がそれぞれ73%,75%と差がないことを示し,また,副作用の観点からもSRL は肝移植において有用である可能性を報告した(LF110133) Level 2b)。Vivarelli らの,SRL の使用の有無によるそれぞれ31 例のmatched cohort study では,SRL 使用群の3 年無再発生存率86%に対し,SRL 未使用群では56%であり,再発率の低下にSRL の使用が優位に寄与する可能性を示した(L3F006284) Level 2b)。米国の大規模なデータベースを用いた肝細胞癌に対する肝移植単独症例2,491 例を含む解析では,SRL を使用した109 例の5 年生存率83.1%に対し,使用していない2,382 例の5 年生存率は68.7%であり,多変量解析では,抗CD25モノクローナル抗体を用いた抗体導入療法とともに再発抑制に対し好ましい影響をもつ独立した因子であることが示されている(L3F051685) Level 2b)。

また,上記を含むメタアナリシスでは,mTOR 阻害薬使用症例は非使用例に比べ,1年(オッズ比:4.53,95%信頼区間:2.31〜8.89),3 年(オッズ比:1.97,95%信頼区間:1.29〜3.00),5年(オッズ比:2.47,95%信頼区間:1.72〜3.55)の生存率が改善され,さらにmTOR 阻害薬使用症例では,非使用例に比べ,再発率が減じられる(オッズ比:0.42,95%信頼区間:0.21〜0.83)としている(L3F052296) Level 2b)。

さらに,免疫抑制剤の工夫に加え,分子標的治療薬を追加する新たな試みがなされつつある。スペインの多施設共同研究による31 例の報告では,肝移植後の肝細胞癌再発症例に対するmTOR 阻害薬とソラフェニブ併用の安全性確認試験が行われ,再発後の生存期間中央値は19.3 カ月(95%信頼区間:13.4〜25.1 カ月),そして,progression までの期間中央値は6.8 カ月(95%信頼区間:2.3〜11.1 カ月)であり,重篤な毒性なく併用可能であったとしている(L3F042737) Level 2b)。

【解 説】

免疫抑制剤は移植後の拒絶反応を抑制するために必須である。免疫抑制剤の種類の選択,維持レベルの血中濃度の調整は病態に応じて行われている。また,終生におよぶ免疫抑制による感染症のリスクや,腎機能障害などの副作用の蓄積を極力避けるため,過度の投与は回避するのが通常である。再発を抑制する意図で過度に低用量での投与を試み,拒絶反応により移植片を失ってしまっては元も子もないため,特定の免疫抑制剤の濃度の調節のみに再発抑制効果を期待する戦略は好ましいとはいえない。mTOR 阻害薬など,本邦では使用経験が極めて限られるものの,異なる作用をもつ薬剤の使用あるいは併用による再発抑制の可能性は大いに期待されるところである。今後の大規模な多施設研究による成果が待たれる(L3F005758))。mTOR 阻害薬は肝移植に対しては,本邦では保険適用がないため,可能な範囲でのCyA やTac の調整を念頭に置き,推奨グレードはC1 とした。

【参考文献】

1) L3F06349 Vivarelli M, Cucchetti A, Piscaglia F, La Barba G, Bolondi L, Cavallari A, et al. Analysis of risk factors for tumor recurrence after liver transplantation for hepatocellular carcinoma:key role of immunosuppression. Liver Transpl 2005;11(5):497-503.

2) L3F01744 Vivarelli M, Cucchetti A, La Barba G, Ravaioli M, Del Gaudio M, Lauro A, et al. Liver transplantation for hepatocellular carcinoma under calcineurin inhibitors:reassessment of risk factors for tumor recurrence. Ann Surg 2008;248(5):857-62.

3) LF11013 Toso C, Meeberg GA, Bigam DL, Oberholzer J, Shapiro AM, Gutfreund K, et al. De novo sirolimus-based immunosuppression after liver transplantation for hepatocellular carcinoma:long-term outcomes and side effects. Transplantation 2007;83(9):1162-8.

4) L3F00628 Vivarelli M, Dazzi A, Zanello M, Cucchetti A, Cescon M, Ravaioli M, et al. Effect of different immunosuppressive schedules on recurrence-free survival after liver transplantation for hepatocellular carcinoma. Transplantation 2010;89(2):227-31.

5) L3F05168 Toso C, Merani S, Bigam DL, Shapiro AM, Kneteman NM. Sirolimus-based immunosuppression is associated with increased survival after liver transplantation for hepatocellular carcinoma. Hepatology 2010;51(4):1237-43.

6) L3F05229 Liang W, Wang D, Ling X, Kao AA, Kong Y, Shang Y, et al. Sirolimus-based immunosuppression in liver transplantation for hepatocellular carcinoma:a meta-analysis. Liver Transpl 2012;18(1):62-9.

7) L3F04273 Gomez-Martin C, Bustamante J, Castroagudin JF, Salcedo M, Garralda E, Testillano M, et al. Efficacy and safety of sorafenib in combination with mammalian target of rapamycin inhibitors for recurrent hepatocellular carcinoma after liver transplantation. Liver Transpl 2012;18(1):45-52.

8) L3F00575 Schnitzbauer AA, Zuelke C, Graeb C, Rochon J, Bilbao I, Burra P, et al. A prospective randomised, open-labeled, trial comparing sirolimus-containing versus mTOR-inhibitor-free immunosuppression in patients undergoing liver transplantation for hepatocellular carcinoma. BMC Cancer 2010;10:190.


CQ 55
肝切除後の再発に対する有効な治療は何か?
推奨

肝切除後の再発に対しては,初回肝細胞癌と同じ基準で治療方針を決定することが推奨され,肝機能良好例における単発症例では再切除が推奨される。 (グレードB)

【サイエンティフィックステートメント】

肝切除後の再発肝細胞癌(肝単独再発)に対する再切除例と非切除治療例の成績の比較では,切除群が予後良好と報告されている(LF002431) Level 2b,LF112692) Level 2b)。ただし,再発例のうち実際に切除の適応となった症例は11〜30%程度にとどまる。再肝切除後の予後因子としては初回肝切除時と同様に,脈管侵襲,残肝機能,腫瘍数があげられているが(LF002431) Level 2b,LF112692) Level 2b,LF003433) Level 2b,LF117994) Level 2b,L3F017165) Level 2b),さらに再発までの期間が短いと予後不良であると一貫して報告されている(LF002431) Level 2b,LF112692) Level 2b,LF117994) Level 2b,L3F017165) Level 2b)。再発肝細胞癌に対する穿刺局所療法については,Level 4 の報告があるのみである(LF118146) Level 4)。また,再発肝細胞癌に対して肝切除と局所療法を比較したエビデンスレベルの高い報告はない。TACE についてもLevel 4 の報告があるのみであるが(L3F001507) Level 4),切除不能の初発肝細胞癌に対するTACE のLevel 1b のエビデンスを演繹して,再発が肝に限局しているときにはTACE は生存延長に寄与するとしてよい。切除後の再発肝細胞癌に対する肝移植の是非については,初回治療時に切除と移植のいずれの治療を選択すべきであるかという問題に帰着するので他項に譲る。肝外再発または肝外病変を伴う再発に対しては,初回治療時と同様の方針を採用すればよいと考えられるが,単独肺転移病変に対しては,症例を選択すれば切除の適応となる可能性がある(LF100998) Level 2b)。

【解 説】

肝細胞癌に対する肝切除後,おおよそ2 年で50%,5 年で80%の症例に再発を認めるとされている。肝細胞癌に対する肝切除後再発の特徴は肝内再発の頻度が高いことであり,初回再発の90%以上が肝内再発で,またそのほとんどが肝単独再発であるとされる。肝切除後の肝再発については,転移によるものに加え,切除後の残存肝からの新しい肝細胞癌の発生(異時多中心性再発)が寄与するとされている。異時多中心性再発に対する治療方針は,理論的には初発時のそれと同じになる(背景肝の発癌リスクの経時的な変化がないと仮定した場合)。しかし,日常の臨床病理学的な検討からは,これらと肝内転移による再発の鑑別は困難であるため,初発の肝細胞癌に対する治療方針とどのように異なる態度をとるべきかが問題となる。

肝単独再発に対して治療群と未治療群,あるいは肝切除と他の治療を比較した検討はLevel 2b のものにとどまり,したがって各治療の適応症例の選択というバイアスがかかっている。これらの背景因子を考慮して多変量解析を行った報告はいくつかあり,いずれも再切除が非切除に対する独立した予後良好因子であったとしている(LF002431) Level 2b,LF112692) Level 2b)が,publication bias の可能性については考慮が必要である。再発肝細胞癌に対する再肝切除症例の予後因子の検討については,40〜80 例程度のLevel 2b および4 の報告がある。これらの報告では,再肝切除後の生存予後は,同じ施設の初発肝細胞癌に対する切除後のそれとほぼ同等である。初回切除から再肝切除までの期間がこれらの比較では無視されていることを考慮すると,再肝切除後の良好な結果は再切除症例の選択バイアスを反映したものと考えられる。おそらく,初発時と同様の適応基準により症例選択をすることにより,事実上,異時多中心性発生による再発症例に対して選択的に切除を施行していると考えられる。切除後の予後因子としては,初回切除時と同様に脈管侵襲の有無が共通してあげられており,また初回切除から再発までの期間(1 年未満と以上で区分)が予後因子となっているとする報告が多いのも,前述の推測の傍証と考えられる。以上より,再発肝細胞癌に対する治療方針としては,初発肝細胞癌と同様の基準を用いて決定すべきであると記載した。ただし,切除後に短期間で再発した場合は,初回時とは異なる治療方針で臨むのが妥当であるかもしれない。なお,再発肝細胞癌に対する再肝切除の報告はこれまでほとんどが日本をはじめとするアジアからのものであり,最近になって欧米からも追随した報告がみられるようになったが(L3F017165) Level 2b),症例数からみた規模は遙かに少ない。

初回切除後の再発肝細胞癌に対する穿刺局所療法の検討はLevel 4 の報告がいくつかあり,予後因子の検討では腫瘍径やAFP 値,また再肝切除症例と同様に初回切除から再発までの期間により予後が左右されるとするものが多い(LF117939) Level 4)。再発肝細胞癌に対する切除と局所療法を比較したエビデンスレベルの高い論文はない。切除後再発に対する種々の治療を比較した検討では,両者さらにはTACE 群との間に予後の差はなく,むしろ治療回数により予後に差が出たと報告されており(L3F0028910) Level 2b),再発に対して積極的な介入を行うことが予後の向上につながる可能性を示唆している。再発肝細胞癌に対するTACEの検討は,Level 4 のものにとどまるが(L3F001507) Level 4),後者では再発までの期間が予後因子であったと報告している。切除不能の肝細胞癌に対するTACEの有効性については,Level 1b の複数個のエビデンスがあり,再発症例の過半数を占めると考えられる切除適応外の再発肝細胞癌に対しては,TACE が第一選択の治療法と記載した。分子標的治療薬による治療との比較は今後の検討課題である。

肝移植における脳死肝ドナーの圧倒的な不足という事情を鑑みて,初発肝細胞癌に対しては肝切除を行い,その後の経過中に再発を認め腫瘍が移植の適応基準内(ミラノ基準)の場合に移植を行うという方針も主張されており,salvage transplantation とよばれている。しかし,この方針の是非は,初発の肝細胞癌に対して切除と肝移植の双方が適応であった場合に,最初から肝移植を行うか,初回は肝切除を行うかという議論であり,他項に譲った。一方,初回肝切除時には肝移植の適応外であったが,再発時の腫瘍条件が適応基準内であった症例に対しての肝移植の是非は議論すべき問題である。これについては1編の報告があり,5 例に肝移植を行い18 カ月の追跡期間で,全員生存(4 例無再発,1 例16 カ月後に再発)していると報告している(L3F0148511) Level 2b)。今後の検討課題である。

切除後の再発部位として肝臓の次に多いのが肺である。肝外病変を伴う再発肝細胞癌に対しては,原則として根治治療は期待できず,治療方針は初発時のそれと変わるものではないが,少数個の単独肺再発に対して切除を行った報告で切除が有効であったと主張されている(LF100998) Level 2b)。分子標的治療薬による治療との比較は今後の検討課題である。

【参考文献】

1) LF00243 Poon RT, Fan ST, Lo CM, Liu CL, Wong J. Intrahepatic recurrence after curative resection of hepatocellular carcinoma:long-term results of treatment and prognostic factors. Ann Surg 1999;229(2):216-22.

2) LF11269 Chen WT, Chau GY, Lui WY, Tsay SH, King KL, Loong CC, et al. Recurrent hepatocellular carcinoma after hepatic resection:prognostic factors and long-term outcome. Eur J Surg Oncol 2004;30(4):414-20.

3) LF00343 Shimada M, Takenaka K, Taguchi K, Fujiwara Y, Gion T, Kajiyama K, et al. Prognostic factors after repeat hepatectomy for recurrent hepatocellular carcinoma. Ann Surg 1998;227(1):80-5.

4) LF11799 Minagawa M, Makuuchi M, Takayama T, Kokudo N. Selection criteria for repeat hepatectomy in patients with recurrent hepatocellular carcinoma. Ann Surg 2003;238(5):703-10.

5) L3F01716 Roayaie S, Bassi D, Tarchi P, Labow D, Schwartz M. Second hepatic resection for recurrent hepatocellular cancer:a Western experience. J Hepatol 2011;55(2):346-50.

6) LF11814 Choi D, Lim HK, Rhim H, Kim YS, Yoo BC, Paik SW, et al. Percutaneous radiofrequency ablation for recurrent hepatocellular carcinoma after hepatectomy:long-term results and prognostic factors. Ann Surg Oncol 2007;14(8):2319-29.

7) L3F00150 Choi JW, Park JY, Ahn SH, Yoon KT, Ko HK, Lee do Y, et al. Efficacy and safety of transarterial chemoembolization in recurrent hepatocellular carcinoma after curative surgical resection. Am J Clin Oncol 2009;32(6):564-9.

8) LF10099 Tomimaru Y, Sasaki Y, Yamada T, Eguchi H, Takami K, Ohigashi H, et al. The significance of surgical resection for pulmonary metastasis from hepatocellular carcinoma. Am J Surg 2006;192(1):46-51.

9) LF11793 Yang W, Chen MH, Yin SS, Yan K, Gao W, Wang YB, et al. Radiofrequency ablation of recurrent hepatocellular carcinoma after hepatectomy:therapeutic efficacy on early- and late-phase recurrence. AJR Am J Roentgenol 2006;186(5 Suppl):S275-83.

10) L3F00289 Kishi Y, Saiura A, Yamamoto J, Koga R, Seki M, Morimura R, et al. Repeat treatment for recurrent hepatocellular carcinoma:is it validated? Langenbecks Arch Surg 2011;396(7):1093-100.

11) L3F01485 Facciuto ME, Koneru B, Rocca JP, Wolf DC, Kim-Schluger L, Visintainer P, et al. Surgical treatment of hepatocellular carcinoma beyond Milan criteria. Results of liver resection, salvage transplantation, and primary liver transplantation. Ann Surg Oncol 2008;15(5):1383-91.


CQ 56
穿刺局所療法後の再発に対する有効な治療法は何か?
推奨

穿刺局所療法後の再発に対しては,初回治療と同様に根治性と肝予備能を考慮して治療法を決定することが推奨される。 (グレードB)

【サイエンティフィックステートメント】

Rossi らが,肝細胞癌にRFA を繰り返した696 例について検討したところ,初回治療の3 年および5 年再発率は70.8%,81.7%(年率について,局所再発6.2%,他部位再発35%)であった。3年および5年の全生存率と無病生存率は,それぞれ67.0%,40.1%および68.0%,38.0%であった(L3F058701) Level 2a)。

Portolani らが,Group 1:穿刺局所療法(PEI 24 例,RFA 12 例)後再発に肝切除(36 例),Group 2:肝切除後再発で再切除(26 例),Group 3:肝切除後再発で穿刺局所療法(31 例)について検討したところ,1・3・5 年生存率についてグループ間で有意差はなかった(Group 1:92%,73%,43%,Group 2:95%,73%,31%,Group 3:96%,78%,41%)(L3F056382) Level 2b)。

Okuwaki らによると,肝細胞癌にRFA を行った115 例の他部位再発は59 例(51.3%)に認め,他部位再発後における1・3・5 年生存率はそれぞれ92.7%,55.4%,43.7%であった。また,他部位再発に対してRFA を行った群ではTACE を行った群に比べて有意に生存率が高かった(3 年生存率:77.2% vs 28.5%)(L3F000933) Level 2b)。

【解 説】

RFA を含めた穿刺局所療法は肝硬変を有する肝機能不良症例にも安全に施行できる治療法である。そのため,肝切除が適応とならない症例において穿刺局所療法は肝細胞癌再発のコントロールに役立つことができる。しかし,穿刺局所療法後の再発に対する治療法として肝切除および穿刺局所療法が十分に比較検討された研究は現時点ではみあたらない。そのため,初回治療と同様に治療法選択については根治性と肝予備能を考慮して検討するべきである。

【参考文献】

1) L3F05870 Rossi S, Ravetta V, Rosa L, Ghittoni G, Viera FT, Garbagnati F, et al. Repeated radiofrequency ablation for management of patients with cirrhosis with small hepatocellular carcinomas:a long-term cohort study. Hepatology(Baltimore, Md)2011;53(1):136-47.

2) L3F05638 Portolani N, Baiocchi GL, Coniglio A, Grazioli L, Frassi E, Gheza F, et al. Sequential multidisciplinary treatment of hepatocellular carcinoma:the role of surgery as rescue therapy for failure of percutaneous ablation therapies. J Surg Oncol 2009;100(7):580-4.

3) L3F00093 Okuwaki Y, Nakazawa T, Kokubu S, Hidaka H, Tanaka Y, Takada J, et al. Repeat radiofrequency ablation provides survival benefit in patients with intrahepatic distant recurrence of hepatocellular carcinoma. Am J Gastroenterol 2009;104(11):2747-53.


CQ 57
移植後の再発に対する有効な治療法は何か?
推奨

肝移植後の再発に対しては,可能であれば再発病巣の切除を考慮してもよい。 (グレードC1)

【サイエンティフィックステートメント】

肝移植後の再発は全身播種性病変の一環である。治療が極めて困難であることは非移植例の全身播種性病変と同様である。有効な全身療法の報告はない。稀ではあるが,切除症例の報告がなされている。

米国のSchwartz らは,311 例の肝細胞癌に対する肝移植症例のなかで57 例に再発を認めた経験をまとめ,そのうち18 例における切除(うち5 例が肝切除)の報告をしている。また,多変量解析にて,切除が再発後の生存期間を改善する独立因子であることを示した(LF114931) Level 2b)。英国のHeaton らのグループは,3,017 例の肝移植中,さまざまな要因に対して施行した移植肝切除の11 例中,4 例が肝細胞癌の肝再発に対するものであったと報告している。再発病巣の切除後,2 例はさらなる再発のため術後9 カ月と30 カ月後に死亡し,1 例はlost to follow up となり,1 例が切除後1 年の段階で生存中と記述している(L3F020982) Level 5)。同様にCatalano らは,367 例の肝移植中12 例において移植肝切除を経験し,そのうち2例が再発病巣に対するものであったと報告している。切除後18 カ月,20 カ月でさらなる再発のため死亡している(LF115983) Level 2b)。Bates らは,肺転移切除例5 例を報告している。肝移植後平均500 日で肺転移が指摘され,切除後1 例は38 カ月後にさらなる再発で死亡,4 例はそれぞれ12 カ月,38 カ月,54 カ月,そして80カ月経過観察の時点で生存中であるとしている(L3F039484) Level 5)。本邦で主に行われている生体肝移植においても,再発病巣の切除により長期生存が得られている報告もなされている。Taketomi らは,肝移植後の肝細胞癌再発症例17 例のうち,切除を9 例に施行し,1・3・5 年無再発生存率が55.6%,11%,11%である一方で,切除しえなかった症例の1・3・5 年無再発生存率は12.5%,0%,0%であったと報告している(L3F017315) Level 2b)。

【解 説】

肝移植は,究極の肝切除である。通常の肝切除では,肝細胞癌発生の母地である肝組織を生存のための肝機能温存の観点から残肝として残さざるを得ないのに対し,肝移植では癌発生の母地を含め,いっさいを摘出した後に移植片を同所性に移植する。そのような経過の後に認められる再発病巣は,したがって肝に認められたとしても,がん診療上は播種性の全身病変の一環であると受け止められる。また,免疫抑制下の悪性腫瘍の進展が早いことも相まって,局所療法の効果は極めて限られる。文献検索期間の範囲から外れるが,近年,再発症例に対するmTOR 阻害薬の使用,そして非移植症例にならった分子標的治療薬の使用経験も蓄積しつつある。今後の報告が待たれる。

【参考文献】

1) LF11493 Roayaie S, Schwartz JD, Sung MW, Emre SH, Miller CM, Gondolesi GE, et al. Recurrence of hepatocellular carcinoma after liver transplant:patterns and prognosis. Liver Transpl 2004;10(4):534-40.

2) L3F02098 Marangoni G, Faraj W, Sethi H, Rela M, Muiesan P, Heaton N. Liver resection in liver transplant recipients. Hepatobiliary Pancreat Dis Int 2008;7(6):590-4.

3) LF11598 Catalano G, Urbani L, Biancofiore G, Bindi L, Boldrini A, Consani G, et al. Hepatic resection after liver transplantation as a graft-saving procedure:indication criteria, timing and outcome. Transplant Proc 2004;36(3):545-6.

4) L3F03948 Bates MJ, Farkas E, Taylor D, McFadden PM. Pulmonary resection of metastatic hepatocellular carcinoma after liver transplantation. Ann Thorac Surg 2008;85(2):412-5.

5) L3F01731 Taketomi A, Fukuhara T, Morita K, Kayashima H, Ninomiya M, Yamashita Y, et al. Improved results of a surgical resection for the recurrence of hepatocellular carcinoma after living donor liver transplantation. Ann Surg Oncol 2010;17(9):2283-9.

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