腎がん 〜治療ガイドライン

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目次:


CQ 1
腎癌の発症について肥満・職業・生活習慣・環境・遺伝因子に注意を喚起することは推奨されるか?

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推奨グレード
B
腎癌患者の肥満,喫煙,高血圧,アルコール摂取などの生活習慣や,患者の職業および環境因子には注意を喚起することが推奨される。これは,肥満が腎癌の発症リスクを最大で4 倍上げ,喫煙,高血圧が腎癌の発症リスクを上げるためである。また,適度のアルコール摂取は腎癌発症のリスクを下げる。また,職業や環境では有機溶媒,カドミウム,アスベストを使用する労働環境は腎癌の発症リスクを上げるためである。

推奨グレード
B
VHL 病やBHD 症候群などの優性遺伝性腫瘍好発疾患は,日本国内に数百人の規模で存在しているため,腎癌発症に特に注意を払い,定期的検査で腫瘍の早期発見を行うことが推奨される。これは,VHL 病やBHD 症候群などの遺伝性腎癌患者の未発症者で遺伝子異常を持つ人は,腎癌発症のリスクが非常に高いため,早期発見と早期治療が予後を改善できると考えられるためである。

根 拠近年の腎癌の年齢調整罹患率は,2002 年の腎癌研究会の調査によると人口10 万人に対して男8.2,女3.7 である。腎癌発症の大きな危険因子として,肥満,高血圧,喫煙などが挙げられる。肥満はBMI>30 kg/m2ではその危険度は4 倍であり,高血圧では2倍とされる1)(3b)2)(1a)3)(1b)4)(3a)5)(2b)

生活習慣としては喫煙が危険因子であり,喫煙本数は発症のリスクと相関する6)(2a)7)(2b)。職業や環境としては石油由来の有機溶媒やカドミウム,アスベストなどへの暴露が発症リスクを上げる8)(3b)9)(2b)10)(3b)。ただし,これらの因子を環境や生活習慣から除外することで腎癌の発症を抑えられるという証拠は,まだ得られていない。また,適度のアルコール摂取,野菜・果物の摂取は腎癌発症のリスクを下げるとされる3)(1b)

遺伝因子としては,中枢神経系血管腫を合併するフォン・ヒッペル・リンドウ(von Hippel-Lindau:VHL)病や,自然気胸や顔面皮膚の小腫瘍を伴うバート・ホッグ・デューベ(Birt-Hogg-Dube:BHD)症候群などの常染色体優性遺伝性の腎癌好発疾患患者とその血縁者であることは,腎癌の発症に関して非常に危険率が高く,VHL 病では血縁者の40%で腎癌が発症すると考えられる11)(1a)12,13)(1b)

一般的に有機溶媒は腎臓の尿細管への障害作用が強いが,トリクロロエチレンはその発癌性により腎癌発症の原因となると考えられる3)(1b)14,15)(2b)

解 説年間約1 万人の発症がある腎癌発症における危険因子は不明であったが,1990 年代になり多くのことが明らかになりつつある。アスベストによる中皮腫発症のような強い発症リスクになる職業や生活習慣,環境因子,遺伝因子を医療関係者,患者に情報提供して早期に注意を喚起することは,発症の予防や検診による癌早期発見から考えると重要なことである。これらにより腎癌発症の危険因子となる職業や生活習慣・環境因子・遺伝因子を文献的に明らかにする必要がある。

検索方法

【PubMed】

kidney neoplasms AND risk factor AND(obesity OR habit OR environment OR genetics)AND 2005/01:2009/09[mhda] AND “humans” [MeSH Terms] AND(English[lang] OR Japanese[lang]) NOT(Editorial[ptyp] OR Letter[ptyp] OR Case Reports[ptyp])

【医中誌】

(腎臓腫瘍/TH or 腎臓腫瘍/AL or 腎癌/AL)AND((肥満/TH or 肥満/AL)or(職業/TH or 職業/AL)or(ライフスタイル/TH or 生活習慣/AL)or(環境/TH or 環境/AL)or(“遺伝的素因(疾患)”/TH or 遺伝因子/AL))AND(LA= 日本語,英語 and PT=会議録除く and IDAT=1995/1/1:2009/9/30)

参考文献

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CQ 2
腎癌の早期発見にどのような検査が推奨されるか?

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推奨グレード
B
腎癌の早期発見に対し腹部超音波検査が有用で,確定診断としてCT 検査を施行する。

推奨グレード
C2
一方,顕微鏡的血尿の有無や静脈性尿路造影は有用でない。

根 拠健康診断にて腹部超音波検査を受けた219,640 人中723 人(0.33%)で悪性腫瘍が発見され,192 例(0.09%)が腎癌であった1)(2b)。ほかにもいくつかの同様の報告があるが,健康診断における腎癌の発見率は約0.04〜0.1%であり,他の悪性腫瘍と比較して発見される頻度は高い2)(2b)。偶然に発見された腎癌におけるStage Ⅰ+Ⅱの割合は74.6%と,症状があって発見された場合の35.8%に比べ有意に高かった3)(4)。一方,確定診断にはCT が有用とされており,特にvon Hippel-Lindau 病等の小径腎癌の描出に関しては腹部超音波検査よりもCT の方が優れていた4,5)(3b)。さらに,超音波検査だけでは血管筋脂肪腫と腎細胞癌とを効率よく鑑別できないとの報告が認められる6)(2b)。したがって,スクリーニング検査として腹部超音波検査とCT のどちらを行うかについては,検出率と費用対効果の観点より,腹部超音波検査を先に行い,確定診断としてCT を行うのがよいとされている7)(2b)

腹部超音波検査の精度を上げる試みがなされている。パワードップラー,カラードップラー(双方とも血流を描出する方法であるが,パワードップラーは血流の向きが反映されないのに対し,カラードップラーでは血流の向きも描出される)と呼ばれるもので,本法を用いることにより腎実質の血流の変化を検出できる。カラードップラーの腎腫瘤性病変に対する正診率は94.6%,感度は93.5%であり31%の症例において従来のB モード超音波検査では得られなかった情報が得られたと報告されている8)(3b)。特に腫瘍塞栓を有する腎癌では,塞栓の頭側端の診断や血流の有無に関してはCT 検査よりも有用である9,10)(3b)。さらに,経静脈性の造影剤を使用することにより造影CT 検査よりも腫瘍血流の描出が良好であったとの報告もある11)(3b)

検尿は腎癌発見の役に立たないとする報告がほとんどである。Emamian らは,尿潜血試験紙によるマススクリーニングを受けた1,775 人中,無作為に抽出した686 人に対し腹部超音波検査を施行した。尿潜血陽性例は30 人(5%)で尿潜血陽性例での腎の形態異常の頻度は10%,一方,尿潜血陰性例での形態異常の頻度は8.4%であり有意差は認められなかった。腎癌は1例で発見されたが尿潜血は陰性であった12)(2b)。Sugimura らも泌尿器癌349 例と無症候性顕微鏡的血尿を有する823 例を解析した結果,検尿は尿路上皮癌においては有用なスクリーニングであるが,腎癌では有用とは言えないと報告している13)(3b)

静脈性尿路造影も腎癌の発見には有用ではない。Dikranian らは無症候性顕微鏡的血尿を認め,静脈性尿路造影および超音波検査の双方を施行した247 例を対象に解析した。腎の腫瘍性病変を指摘されたのは静脈性尿路造影で3 例,超音波検査で5 例であった。このうち2 例が腎癌と診断されたが,いずれも超音波検査で異常所見を指摘された症例であった14)(3b)

解 説腹部超音波検査やCT の普及により偶然に発見される腎癌の頻度が上昇してきている。これら偶発腎癌は一般的にearly stage であり,根治療法を施行することにより長期の生存が期待できる。腎癌は腹部超音波検査で発見される割合が他の癌種と比較して高いため,スクリーニング法として積極的に施行すべきである。確定診断に関してはCT が必要であるが,スクリーニング法としては超音波検査を行い,腫瘤性病変が疑われた症例に関してCT を施行すべきである。超音波検査ではパワードップラーやカラードップラー等の技術や静脈性造影剤が導入されており,こうした方法を用いることにより精度の高い診断が可能である。

一方,古典的なスクリーニング法としての検尿や静脈性尿路造影は,腎癌の診断に役立たないことがいくつかの報告で明らかにされている。

検索方法

【PubMed】

kidney neoplasms AND screening AND(urinalysis OR ultrasonography) AND incident AND 2005/01:2009/09[mhda] AND “humans”[MeSH Terms] AND(English[lang] OR Japanese[lang])

【医中誌】

(腎臓腫瘍/TH or 腎臓腫瘍/AL or 腎癌/AL) AND(遺伝学的スクリーニング/TH or スクリーニング/AL or 集団検診/TH or“ スクリーニング(生化学)”/TH)AND((検尿/TH or 尿検査/AL) or(超音波診断/TH or 超音波診断/AL)) AND(LA= 日本語,英語PT= 会議録除くCK= ヒトand IDAT=1995/1/1:2009/9/30)

参考文献

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CQ 3
透析患者における腎癌のスクリーニングは推奨されるか?

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推奨グレード
B
透析患者における腎癌のスクリーニングは,その発生率の高さから早期発見,治療により予後の改善が期待できるため推奨される。特に若年者,長期透析患者においては腹部超音波検査,CT による定期的スクリーニングが有益である。

根 拠終末期腎疾患患者,透析患者において腎癌は健常人に比較して高率に発生することが知られている。しかし,その正確な発生率およびその予後に関する大規模な報告は多くない。

Denton らは腎移植の際に同時に自己腎摘除を行った260 例についての検討で,11 例(4.2%)に腎癌が発見されたと報告している1)(3b)。またGulanikar らも,腎移植レシピエント候補で精査中の患者206 例中,8 例(3.8%)と高率に腎癌を認めたとしている2)(2b)。透析あるいは腎移植患者28,855 人を対象とした大規模な住民ベースの調査では,腎癌発生率は健常人と比較して約5倍と高率であった3)(3b)。別の報告では,透析患者の腎癌発生率は3.6 倍であり,しかも若年者あるいは女性に発生率が高かったとしている4)(3b)。やはり末期腎不全患者では,以前考えられていた以上に腎癌の有病率が高いようである。

2005 年にSatoh ら5)は本邦の慢性透析患者における腎癌,尿路上皮癌の頻度および予後調査を報告している。それによると6,201 人中,38 人の腎癌,16 人の尿路上皮癌患者がみられた。オーストラリア,ニュージーランドのデータと比較し,わが国では腎癌の発生が多いが,それはわが国では腎移植が少なく,透析が長期にわたるためであろうと考察している(3b)

Ishikawa ら6)わが国の透析施設に対するアンケート調査で,透析腎癌症例の過半数は透析歴が10 年以上であったとしている。さらに透析歴が20 年以上の腎癌症例では10 年以下の症例に比較して平均年齢が低く,腫瘍サイズが大きく,また転移をきたす確率が高かったと報告している。一般に透析患者の腎癌の予後は良好であるといわれているが,20 年以上の長期患者では31.3%の患者に診断時に遠隔転移を認めており,予後は必ずしも良好であるともいえないと述べている(4)。Nouh らの報告でも透析歴が10 年以上のものではACDK 関連腎癌の比率が増加しており,その正確な診断には免疫組織学的検索による詳細な分類が必要で,進行・転移に十分な注意を払う必要があると述べている7)(4)

ACDK の診断と治療に関するレビューで,Levine ら8)は,透析患者の腎癌罹患率は一般人口の57〜134 倍であったと報告している。調査の結果をふまえて,スクリーニングは透析導入の3 年後から開始し,少なくとも年に1 回のCT または腹部超音波検査が推奨され,特に若年者において有益であるとしている。また,腎移植患者に対する年に1 回の固有腎のスクリーニングに関してのエビデンスはないが,移植患者の腎癌罹患率は透析患者のそれと変わらないため,施行した方がいいだろうと述べている(2a)

診断方法に関して,Takebayashi らは腎摘除施行した23 例(26 腎)についてのCT 所見の検討で,透析腎の腎癌検出においてはCT でのearly enhanced が感度,特異度ともにdelayed より優れていたとしている9)(3b)。定期的な腹部超音波検査や単純CT でスクリーニングを行い,疑わしい症例については造影CT で確認するという方法が一般的であると考えられる。

透析腎癌の予後に関しては,Ishikawa ら10)は797 例について,無症状でスクリーニングによって発見されたもの(721 例)と何らかの症状で発見されたもの(76 例)を比較し,スクリーニングで発見された群では,腫瘍が小さく,悪性度も低く,癌死が少なかったとしている。通常の腎癌と同様に透析腎癌においても有症状群では予後不良であり,スクリーニングの有用性を述べている(4)

Sarasin ら11)は,CT あるいは腹部超音波検査のスクリーニングを行った場合の生命予後延長への効果を検討している。10,000 例を想定したレビュー中で,CT および腹部超音波検査とも定期的にスクリーニングを行う場合と臨床症状発現時に検査を行う場合を比較して,若年の透析患者においては癌死を半減することができるとしている(3b)

以上より,透析患者において,定期的なスクリーニングが必要であることは論を待たないが,適切な方法とインターバルについては残念ながらエビデンスはないようである。

解 説一般に慢性透析患者における腎癌の発生率は,健常人より高率であると言われているが,その予後に関してははっきりしていない。そこで,腎癌の発生率がどれくらいであり,またどのような検査をどのようにして行うことが最も有益であるかについて文献的に検討する必要がある。

以上のことより現在では,透析患者の腹部超音波検査あるいはCT による腎癌の定期的スクリーニングは,推奨されるとしてよいであろう。特に,長期透析患者や若年者においてその有用性は期待できる。

検索方法

【PubMed】

kidney neoplasms AND screening AND hemodialysis AND 2005/01:2009/09[mhda]AND “humans” [MeSH Terms] AND(English[lang] OR Japanese[lang]) NOT(Editorial[ptyp] OR Letter[ptyp] OR Case Reports[ptyp])

【医中誌】

(腎臓腫瘍/TH or 腎臓腫瘍/AL or 腎癌/AL) AND(遺伝学的スクリーニング/TH or スクリーニング/AL or 集団検診/TH or“ スクリーニング(生化学)”/TH)AND(血液透析/TH or 透析/AL or(@ 血液透析/TH and @ 腎不全-慢性/TH) or 透析患者/AL)AND(LA= 日本語,英語 and PT=会議録除く and IDAT=1995/1/1:2009/9/30)

参考文献

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CQ 4
検診や人間ドックで腎腫瘤が指摘された場合,次に行う検査は何か?

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推奨グレード
B
腎腫瘤に対する画像診断としては造影CT が最も精度が高く,造影CT が推奨される。

根 拠近年,検診や人間ドックの普及とともに偶然発見される腎腫瘤が増加してきている。これら病変に対する画像診断として,CT,MRI などが広く実施されてきているが,造影CT が最も重要であることは広く知られている。そのため,画像診断に関するこの点に関し,Hilton らは画像診断に関する総説1)において,造影CT で腎癌の診断がなされた場合は,それ以上の検査は不要であると強調している。ただし,造影剤過敏症や腎機能障害のため,造影剤を使用し得ない場合は,MRI の実施が望ましいとしている(3a)。同様の結果は,Zogoria ら2)(3a),Curry ら3)(3a),Rodriguez ら4)(3a)の総説においても述べられている。

しかし,小径の腎腫瘤の鑑別診断には苦慮する場合があることも事実である。その中で,腎血管筋脂肪腫,オンコサイトーマ,複雑性腎嚢胞などが代表的なものである。このため,いろいろな試みがなされている。Garant らは,造影CT を実施した33 例(37 病変)につき,皮質実質相,髄質実質相,腎盂造影相における腎腫瘤の濃染の有無を検討し,皮質実質相における濃染の有無は感度,特異度の面で最も高いと報告し,ヘリカルCTをとる場合は皮質実質相を必ず撮影するべきであると報告している5)(2b)。この結果は,Zagoriaらの総説でも強調されているところである2)(3a)。Song らは,Bosniak 分類Ⅱ,Ⅲ,Ⅳに分類された104 例の腎嚢胞性病変をmultiphase CT により評価し,腎癌と複雑性腎嚢胞が鑑別できるか検討した。その結果,皮質実質相での病変のCT 値(HU 値)と造影前の同病変のCT 値の差を用いることで,腎癌と嚢胞を鑑別できる可能性を指摘している6)(3b)。腎嚢胞との鑑別については,造影超音波検査も有望である。近年,超音波検査装置の進歩に加え,造影剤を用いた検査法が導入され,腎病変の診断精度が向上している。Quaia らは40 例の腎嚢胞性病変を単純超音波,造影超音波,造影CT を用いて評価した結果,複雑性腎嚢胞の評価では造影超音波検査が最も優れていたと報告している7)(4)。また,OutwaterらはGradient-echoMRIを用い,関心領域における脂質,水分の信号を測定,信号強度の比(OIR)を測定することで,腎癌診断の精度が向上するか検討した。その結果,典型的な淡明細胞型腎細胞癌では,腫瘍組織内に脂質を含むため,他の腫瘍と比較してOIRの有意な低下を認めたとしている8)(4)。一方,Li らは,162 例の症例に対し,術前CT を用いた画像診断と病理診断を比較し,診断精度に関する検討を行っている。その結果,直径4 cm 以上の腎腫瘤では95%以上が腎癌であったが,4 cm 以下の病変では腎癌の比率が80%であり,小径腎腫瘤に対する鑑別診断が困難なことを指摘した9)(4)

解 説検診や人間ドックにおける腹部超音波検査の普及,さらに糖尿病や消化器系腫瘍などに対し腹部CT 検査がとられる機会が増加し,腎臓に腫瘤性病変を指摘される患者が増加してきている。各種画像検査をどのように用いて腎癌の確定診断を得るのか,的確な診断手順につき文献的に明らかにする必要がある。

これまでは,腎癌の確定診断を得るための画像診断としては血管造影が用いられてきたが,画像技術の進歩により高解像度CT を用い,造影早期における濃染の有無を検出することが最も重要と考えられている。しかし,嫌色素性腎癌などでは早期濃染等を認めず,注意が必要である。MRI については現状において,造影CT を凌駕するものでないが,小径腫瘍の鑑別,静脈内血栓の診断,さらに造影剤に過敏症を示す症例で適応がある。また造影超音波検査も,嚢胞性病変を中心に今後画像診断の一翼を担う可能性がある。

検索方法

【PubMed】

kidney neoplasms AND(diagnostic imaging OR biopsy) AND diagnosis AND(renal lesions OR renal masses) NOT surgery AND 2005/01:2009/09[mhda] AND “humans”[MeSH Terms] AND(English[lang] OR Japanese[lang]) NOT Letter[ptyp]

【医中誌】

(腎臓腫瘍/TH or 腎臓腫瘍/AL or 腎癌/AL)AND(腎腫瘤/AL or 腫瘤/TH or 腫瘤/AL) AND((画像診断/TH or 画像診断/AL) or 腎生検/AL or(針生検/TH or 針生検/AL)) AND((集団検診/TH or 検診/AL) or(人間ドック/TH or 人間ドック/AL) or 検査/AL) AND(LA= 日本語,英語 and PT= 会議録除く and IDAT=1995/1/1:2009/9/30)

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6) Song C, Min GE, Song K, et al. Differential Diagnosis of Complex Cystic Renal Mass Using Multiphase Computerized Tomography. J Urol. 2009;181(6):2446-50.(3b)

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8) Outwater EK, Bhatia M, Siegelman ES, et al. Lipid in renal clear cell carcinoma:detection on opposed-phase gradient-echo MR images. Radiology. 1997;205(1):103-7.(4)

9) Li G, Cuilleron M, Gentil-Perret A, et al. Characteristics of image-detected solid renal masses:implication for optimal treatment. Int J Urol. 2004;11(2):63-7.(4)


CQ 5
腎癌の病期診断に胸部CT や骨シンチ,PET は推奨されるか?

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推奨グレード
A
腎癌の遠隔転移臓器で最も頻度の高い部位は肺であるため,病期診断に胸部CT は必要である。

推奨グレード
C1
骨シンチについては良性骨病変との鑑別が困難で,その特異度の低さからルーチンの病期診断検査としての有用性は低いものと考えられる。

推奨グレード
B
また,近年PET 検査が普及してきており,その有用性の詳細については明らかではないが,今後,遠隔転移の検索,さらに経過観察における再発の診断にその有用性が期待できる。

根 拠

【胸部CT】

腎癌は比較的症状が出現しにくいため,初診時に遠隔転移を有することは少なくない。さらに腎癌の遠隔転移臓器としては肺が最も多いことが知られている。CT は単純写真に比較して診断感度が優れているため,病期診断における胸部CT の有用性については論を待たない1)(3b)

【骨シンチ】

腎癌骨転移の診断においては,骨シンチの診断的価値は一般的に低いと言われている。

Staudenhertz らはCT,MRI,臨床症状などより骨転移が疑われる腎癌患者36 例の検討で,骨シンチは感度のばらつきが大きく,典型的パターンはみいだせなかったと報告している2)(3b)。Kogaらも骨シンチでhot spotがみられた56例のうち,わずか32 例にのみ骨転移を認めたとしている。また骨シンチで異常を認めなかった149 例のうち,2 例がCT で骨転移と診断され,骨シンチは94%の感度と86%の特異度を示したと報告している3)(4)。Levineらも総説で,骨シンチについては骨痛のある症例についてのみ行うべきであるとしている4)(3a)

骨シンチは感度は高いが特異度が低いため,腎癌の病期診断のルーチン検査として施行することは勧められない。したがって,原発巣の進展度が高く転移の可能性が高い患者や,骨痛などの症状があり,骨転移を強く疑うような患者にのみに施行されるべきであると考える。

【PET】

近年,PET 検査の普及に伴い,その有用性についての報告も多くみられるようになってきた5)(3b)。Safaeiら6)は手術で腎癌と確定診断された患者について,術後にFDG-PET を用いてre-staging を試み,その有用性を検討している。20 例,25 カ所のPET で転移が疑われる箇所を生検により組織学的に診断した。その結果,PET による転移巣の診断は89%という高い正確性であったと報告している(4)

Aide ら7)は術前後にFDG-PET を施行してその正診率を検討している。原発巣での診断能は偽陰性率が高く,感度は47%と低かった。一方,遠隔転移巣の検索においてはCT と同等かそれ以上の正診率があったと報告している(4)。Ramdave らも同様に転移巣の評価におけるFDG-PET の有用性を報告している8)(4)。しかし,FDG-PET は1cm 以下の転移巣については偽陰性になることが多いため,他の画像診断と組み合わせて正確な診断を期すべきである9)(4)。Kang らも66例の腎癌において原発巣および転移巣でのFDG-PET とCT の感度,特異度について比較した結果,やはりFDG-PET はCT に比較して感度は低いが,特異度は高いと報告している10)(2b)。その高い特異度にこそPET の有用性があると考えられる。

近年,FDG 以外の核種を用いたPET の有用性が報告されてきている。Divgi らは15 例の淡明細胞癌について,iodine-124-labelled antibody chimeric G250(124I-cG250)を用いたPET を術前に施行しその正確性を検討している11)(4)。その結果,原発巣診断での特異度・陽性的中率いずれも100%であったと報告している。今後,その他の核種についても症例の蓄積が望まれる。

解 説腎癌は比較的原発巣の症状が出現しにくいため,初診時に遠隔転移を有することは少なくない。さらに腎癌の遠隔転移臓器としては肺が最も多いことが知られている。一方,骨シンチはその特異度の低さからルーチンの病期診断検査としての価値は低いと言われている。

最近ではPET も一般的に施行されるようになってきており,それらのモダリティーが病期診断に有用であるかどうか文献的に明らかにする必要がある。

現状では胸部CT については,その必要性は認められているところであるが,骨シンチについては,その特異度の低さから,何らかの骨関連症状を有する症例や原発巣の進展度の高い症例についてのみ施行するという方針でよいだろう。また,近年普及してきているPET については,現在のところ原発巣の質的診断よりもむしろ遠隔転移の検索,さらに経過観察における再発の診断にその有用性が期待できる。

検索方法

【PubMed】

kidney neoplasms AND cancer staging AND(ct OR computer tomography OR computed tomography OR positron emission tomography OR bone scintigraphy) AND 2005/01:2009/09[mhda] AND “humans” [MeSH Terms] AND(English[lang] OR Japanese[lang])

【医中誌】

(腎臓腫瘍/TH or 腎臓腫瘍/AL or 腎癌/AL) AND(腫瘍進行度/TH or 病期/AL)AND(((骨/TH or 骨/AL) and(シンチグラフィー/TH or シンチグラフィー/AL)) or(胸部CT/TH or 胸部CT/AL) or(陽電子放射型断層撮影/TH or pet/AL)) AND(IDAT=1995/1/1:2009/9/30)

参考文献

1) Heidenreich A, Ravery V. European Society of Oncological Urology. Preoperative imaging in renal cell cancer. World J Urol. 2004;22(5):307-15.(3b)

2) Staudenherz A, Steiner B, Puig S, et al. Is there a diagnostic role for bone scanning of patients with a high pretest probability for metastatic renal cell carcinoma? Cancer. 1999;85(1):153-5.(3b)

3) Koga S, Tsuda S, Nishikido M, et al. The diagnostic value of bone scan in patients with renal cell carcinoma. J Urol. 2001;166(6):2126-8.(4)

4) Levine E. Renal cell carcinoma:clinical aspects, imaging diagnosis, and staging Semin Roentgenol. 1995;30(2):128-48.(3a)

5) Powles T, Murray I, Brock C, et al. Molecular positron emission tomography and PET/CT imaging in urological malignancies. Eur Urol. 2007;51(6):1511-20;discussion 1520-1. Epub 2007 Jan 23.(3b)

6) Safaei A, Figlin R, Hoh CK, et al. The usefulness of F-18 deoxyglucose whole-body positron emission tomography(PET)for re-staging of renal cell cancer. Clin Nephrol. 2002;57(1):56-62.(4)

7) Aide N, Cappele O, Bottet P, et al. Efficiency of[(18)F]FDG PET in characterising renal cancer and detecting distant metastases:a comparison with CT. Eur J Nucl Med Mol Imaging. 2003;30(9):1236-45. Epub 2003 Jul 4.(4)

8) Ramdave S, Thomas GW, Berlangieri SU, et al. Clinical role of F-18 fluorodeoxyglucose positron emission tomography for detection and management of renal cell carcinoma. J Urol. 2001;166(3):825-30.(4)

9) Majhail NS, Urbain JL, Albani JM, et al. F-18 fluorodeoxyglucose positron emission tomography in the evaluation of distant metastases from renal cell carcinoma. J Clin Oncol. 2003;21(21):3995-4000.(4)

10) Kang DE, White RL Jr, Zuger JH, et al. Clinical use of fluorodeoxyglucose F 18 positron emission tomography for detection of renal cell carcinoma. J Urol. 2004;171(5):1806-9.(2b)

11) Divgi CR, Pandit-Taskar N, Jungbluth AA, et al. Preoperative characterisation of clearcell renal carcinoma using iodine-124-labelled antibody chimeric G250(124I-cG250)and PET in patients with renal masses:a phase I trial. Lancet Oncol. 2007;8(4):304-10.(4)


CQ 6  
腎癌の予後予測因子として,赤沈,CRP は推奨されるか?

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推奨グレード
B
腎癌の予後因子として赤沈やCRP は重要であるが,近年多くの施設で赤沈が測定されなくなってきており,その点からCRP が治療前検査として推奨される。

根 拠腎癌の予後因子として,赤沈,CRP など炎症反応にかかわる因子が重要であることは,わが国では以前より比較的よく知られていた1)(4)。予後因子に関する前向き研究や均質なRCT(Randomized Controlled Trial)の報告はほとんど存在しないが,近年欧米でも多数例を用いた後ろ向き研究から明らかにされてきている。

Sengupta らは,Mayo Clinic で治療された腎癌1,075 例の癌特異生存率を後ろ向きに検討した。赤沈亢進は男性では1 時間値22 mm 以上,女性では27 mm 以上と定義しているが,対象症例群全体では46.6%で認めた。赤沈を含め,各臨床・病理学的因子を解析した結果,赤沈亢進は単変量解析,多変量解析ともに腎摘除術施行例の有意な予後因子であることが明らかにされた(癌死のリスクは,亢進例で3.6 倍)2)(3a)。Lee らは腎摘除術が施行された355 例を用いた後ろ向き研究から,転移の有無,Stage,腫瘍径,アルカリフォスファターゼに加え,赤沈が無進展生存率に関し独立の予後因子であると報告している。また,転移を有さない例で,赤沈は癌特異生存率について独立した有意な予後因子であった3)(3b)。一方,Ljungbergらも170例の手術が施行された腎癌症例で,赤沈を含む6 種の炎症反応にかかわる因子の予後に対する影響を解析した。その結果6 種すべての因子が予後に関与していたが,多変量解析の結果,赤沈が異型度,Stage とともに有意な予後因子であったと報告している4)(3b)

CRP についても近年広く検討が進められてきている。Lamb らは根治的手術が施行された淡明細胞癌100 例につき癌特異生存率を検討し,CRP 高値(10 mg/L 以上)の症例で有意に生存率が低いという結果を報告している。この結果は多変量解析でも確認されている5)(3b)。術後の予後因子という観点からMatsuda ら6)(4),Ito ら7)(3b),Karakiewicz ら8)(3a)も術前のCRP 高値の予後因子としての重要性を指摘している。Iimura らは,腎摘除術または腎部分切除術が施行された249 例の検討からCRP が有意な予後因子であることを明らかにするとともに,これをTNM 分類に加えることで癌特異生存に関する予後予測モデルを作成している9)(3a)。一方,転移を有する腎癌においてもCRP が重要な予後因子の一つであることが明らかになってきている。Naito らは転移を有する1,463 例の予後を単変量,多変量解析を用い検討した結果,転移診断時点のCRP 値が全生存率に関し有意な予後因子の一つであることを報告している10)(3a)。Tatokoro らは40 例の有転移腎癌症例の腎摘除術前後のCRP 値の変化を検討した結果,術後CRP値が正常化しなかった症例の予後は有意に不良であったとしている11)(3b)。一方,CRP 高値は手術例だけでなく,IFN-α,IL-2 が投与された腎癌症例の生存率にも関連し,Atzpodien らは独自に作成した予後予測システムにこの因子を加えている12)(3b)

解 説一般に腎癌は無症状であることが多い。しかし,一部の症例で発熱等炎症所見を有する例が存在することが知られ,これらの症例の予後は不良であるとする報告が多い。炎症反応のマーカーとされる赤沈,CRP が腎癌の悪性度の指標として有用か文献的に明らかにする。

わが国においては,以前より発熱等炎症反応を有する腎癌の予後は不良であることが知られていた。しかし,欧米ではこの点はあまり注目されていなかった。近年,Mayo Clinic のグループを中心に多数例を用いた予後解析の検討から赤沈,CRP が腎癌患者の予後に強く影響することが示されてきている。またわが国においても,Naito らの多数例を用いた後ろ向き研究から,CRP が高い例は正常例に比べ有意に生存期間が短いことが明らかにされた。このような点から,炎症反応にかかわる各因子(赤沈やCRP)が重要な予後因子であることが明らかである。しかし,赤沈は近年わが国の多くの施設で測定される機会が減少しており,実臨床の観点に立てば,CRP の測定が強く推奨される。

検索方法

【PubMed】

kidney neoplasms AND(blood sedimentation OR c-reactive protein) AND(tumor marker OR prognosis) AND 2005/01:2009/09[mhda] AND “humans” [MeSH Terms]AND(English[lang] OR Japanese[lang])

【医中誌】

(腎臓腫瘍/TH or 腎臓腫瘍/AL or 腎癌/AL) AND((赤血球沈降速度/TH or 赤沈/AL) OR(“C-Reactive Protein”/TH or crp/AL)) AND((腫瘍マーカー/TH or 腫瘍マーカー/AL) OR(予後/TH or 予後/AL)) AND(IDAT=1995/1/1:2009/9/30)

参考文献

1) 里見佳昭.腎癌の予後に関する臨床的研究-特に生体側の因子を中心に-.日泌尿会誌.1973;64(3):195-216.(4)

2) Sengupta S, Lohse CM, Cheville JC, et al. The preoperative erythrocyte sedimentation rate is an independent prognostic factor in renal cell carcinoma. Cancer. 2006;106(2):304-12.(3a)

3) Lee SE, Byun SS, Han JH, et al. Prognostic significance of common preoperative laboratory variables in clear cell renal cell carcinoma. BJU Int. 2006;98(6):1228-32. Epub 2006 Oct 11.(3b)

4) Ljungberg B, Grankvist K, Rasmuson T. Serum acute phase reactants and prognosis in renal cell carcinoma. Cancer. 1995;76(8):1435-9.(3b)

5) Lamb GW, McMillan DC, Ramsey S, et al. The relationship between the preoperative systemic inflammatory response and cause-specific survival in patients undergoing potentially curative resection for renal clear cell cancer. Br J Cancer. 2006;94(6):781-4.(3b)

6) Masuda H, Kurita Y, Fukuta K, et al. Significant prognostic factors for 5-year survival after curative resection of renal cell carcinoma. Int J Urol. 1998;5(5):418-22.(4)

7) Ito K, Asano T, Yoshii H, et al. Impact of thrombocytosis and C-reactive protein elevation on the prognosis for patients with renal cell carcinoma. Int J Urol. 2006;13(11):1365-70.(3b)

8) Karakiewicz PI, Hutterer GC, Trinh QD, et al. C-Reactive Protein Is an Informative Predictor of Renal Cell Carcinoma-Specific Mortality. Cancer. 2007;110(6):1241-7.(3a)

9) Iimura Y, Saito K, Fujii Y, et al. Development and External Validation of a New Outcome Prediction Model for Patients With Clear Cell Renal Cell Carcinoma Treated With Nephrectomy Based on Preoperative Serum C-Reactive Protein and TNM Classification:The TNM-C Score. J Urol. 2009;181(3);1004-12.(3a)

10) Naito S, Yamamoto N, Takayama T, et al. Prognosis of Japanese metastatic renal cell carcinoma patients in the cytokine era:a cooperative group report of 1463 patients. Eur Urol. 2010;57(2):317-25.(3a)

11) Tatokoro M, Saito K, Iimura Y, et al. Prognostic impact of postoperative C-reactive protein level in patients with metastatic renal cell carcinoma undergoing cytoreductive nephrectomy. J Urol. 2008;180(2):515-9.(3b)

12) Atzpodien J, Royston P, Wandert T, et al. Metastatic renal carcinoma comprehensive prognostic system. Br J Cancer. 2003;88(3):348-53.(3b)


CQ 7
転移進行性腎癌の予後予測因子による治療法選択は推奨されるか?

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推奨グレード
B
転移進行性腎癌の予後予測因子に関する報告は多いが,予測因子ごとの治療法選択について言及した報告は少ない。しかし,サイトカイン時代における腎癌の治療成績の後ろ向き研究から作成されたリスク分類に関する報告から考察すると,予後因子による治療法選択は推奨される。

根 拠Motzer やNaito らは分子標的薬が普及する前のサイトカイン時代における,再発・進行腎癌の治療成績を集計し,後ろ向き研究を行うことによって,その予後因子を探索し,予後因子の組み合わせによるリスク分類を作成している1)-3)(4)。病理組織が淡明細胞型で,Motzer らの提唱したMemorial Sloan Kettering Cancer Center(MSKCC)のリスク分類(表1)におけるfavorable risk 症例や,肺のみの転移症例では,サイトカインによる治療効果が期待できる4)(4)。逆に,poor risk 症例に対しては,サイトカインによる治療成績は極めて悪く,サイトカインによる治療が推奨されない5)(1b)。しかし,favorableまたはintermediate risk 症例に対するインターフェロンα(IFN-α)とスニチニブによる1st-line でのhead-to-head の臨床試験では,IFN よりスニチニブの臨床効果が勝ったために,現在では,これらの症例に対する1st-line の治療薬としてはスニチニブが推奨されている5)(1b)

一方,第Ⅲ相試験の結果からは,poor risk 症例にはテムシロリムスの有効性がその他の薬剤に比べて期待できる6)(1b)。この臨床試験に関する報告では,組織型による有効性の比較がなされているが,それによるとテムシロリムスは淡明細胞型以外の組織型の腎癌に対する効果が高く,poor risk の中でも,特に淡明細胞型以外の腎癌に効果が期待できる6)(1b)。また,IFN-α の効果はわが国におけるSNP 研究の結果,特定のgenotype を有する腎癌患者に対して高い有効性が期待できる可能性がある7)(4)。インターロイキン2 の効果に関しては,carbonic anhydrase 9(CA9)の高発現症例で感受性が高く,効果が期待できる8)(4)

現在,多くの臨床試験や報告に基づいて作成されたEAU guidelines に記載されている9),1st-line,2nd-line の推奨される治療薬を,実際にわが国で用いることができるものに限って表2 に掲載した。多くの予後因子に関する報告にもかかわらず,予後因子別の治療法選択に関する報告はほとんどないのが現状であるが,ここに記載したように予後予測因子による治療法の選択は有用であると考えられる。

予後因子として以下の5 項目がある

①Karnofsky Performance Status<80%

②LDH≧正常上限値の1.5 倍

③補正カルシウム値≧10 mg/dL

④Hb<正常下限値

⑤腎癌の診断から治療開始まで1 年未満

表1
  予後因子の数 生存期間の中央値
Favorable risk 0 個 30 カ月
Intermediate risk 1〜2 個 14 カ月
Poor risk 3 個以上 5 カ月
表2
Treatment Risk or prior treatment Recommended agents
1st-line therapy Favorable- or intermediate-risk Sunitinib
    Cytokine
  Poor-risk Temsirolimus
2nd-line therapy Prior cytokine Sorafenib
  Prior tyrosine kinase inhibitor Everolimus

文献9)より改変して引用

解 説腎癌の予後因子に関する報告は多く,臨床病理学的探索,網羅的遺伝子検索,SNP 研究などさまざまである。これらの検索によって予後因子が探索されてはいるが,その予後因子に従った前向き研究はほとんどなく,質の高い後ろ向き研究や一部の前向き研究の結果から,予後因子別の治療法選択が有用であると予想するに過ぎない。今後,エビデンスレベルの高い前向き研究が行われることによって,どのような腎癌にどの治療法が向いているかということが次第に体系化されていくことが予想される。

検索方法

【PubMed】

kidney neoplasms AND(risk classification OR risk stratification) AND prognosis AND 1995/01:2009/09[mhda]

【医中誌】

(腎臓腫瘍/TH or 腎臓腫瘍/AL or 腎癌/AL) AND(予後/TH or 予後/AL) AND(リスク/TH or リスク/AL or 危険因子/TH or 危険因子/AL) AND(IDAT=1995/1/1:2009/9/30)

参考文献

1) Motzer RJ, Mazumdar M, Bacik J, et al. Survival and prognostic stratification of 670 patients with advanced renal cell carcinoma. J Clin Oncol. 1999;17(8):2530-40.(4)

2) Naito S, Yamamoto N, Takayama T, et al. Prognosis of Japanese metastatic renal cell carcinoma patients in the cytokine era:a cooperative group report of 1463 patients. Eur Urol. 2010;57(2):317-25.(4)

3) Motzer RJ, Bacik J, Murphy BA, et al. Interferon-alfa as a comparative treatment for clinical trials of new therapies against advanced renal cell carcinoma. J Clin Oncol. 2002;20(1):289-96.(4)

4) Coppin C, Porzsolt F, Awa A, et al. Immunotherapy for advanced renal cell cancer. Cochrane Database Syst Rev. 2005;(1):CD001425.(4)

5) Motzer RJ, Hutson TE, Tomczak P, et al. Sunitinib versus interferon alfa in metastatic renal-cell carcinoma. N Engl J Med. 2007;356(2):115-24.(1b)

6) Hudes G, Carducci M, Tomczak P, et al. Global ARCC Trial. Temsirolimus, interferon alfa, or both for advanced renal-cell carcinoma. N Engl J Med. 2007;356(22):2271-81.(1b)

7) Ito N, Eto M, Nakamura E, et al. STAT3 polymorphism predicts interferon-alfa response in patients with metastatic renal cell carcinoma. J Clin Oncol. 2007;25(19):2785-91.(4)

8) Bui MH, Seligson D, Han KR, et al. Carbonic anhydrase IX is an independent predictor of survival in advanced renal clear cell carcinoma:implications for prognosis and therapy. Clin Cancer Res. 2003;9(2):802-11.(4)

9) Ljungberg B, Cowan NC, Hanbury DC, et al. EAU Guidelines on Renal Cell Carcinoma:The 2010 Update. Eur Urol. 2010;58:398-406.


CQ 8
Stage Ⅰ,Ⅱの腎癌に対する腎摘除術において腹腔鏡手術は推奨されるか?

アルゴリズムへ


推奨グレード
B
Stage Ⅰの腎癌に対する腹腔鏡下根治的腎摘除術は,標準術式として推奨される。

推奨グレード
C1
腫瘍径の大きな腫瘍では腹腔鏡手術による合併症の頻度が高くなるとの報告もあり,Stage Ⅱの腎癌に対する腹腔鏡手術は症例を選択して行う必要がある。

根 拠臨床病期T1/T2 の腎癌症例に対する腹腔鏡手術と開腹術の手術成績の比較について,Permpongkosol らによるT1/T2 患者121 人に対する開腹術(54 例)と腹腔鏡手術(67 例)の後ろ向き研究では,術後5 年,10 年の生存率,癌特異生存率に差は認められなかった1)(2c)。また,Colombo らによるT1/T2 患者に対する開腹術(53 例)と腹腔鏡手術(63 例)の術後7 年の制癌率と腎機能に関する後ろ向き研究でも,生存率,癌特異生存率,非再発率,腎機能に有意差はなかった2)(2c)

腎癌に対する腹腔鏡手術におけるT1 症例とT2 症例の比較について,Hemal らはT1/T2 患者132 人に対する腹腔鏡手術の非無作為化前向き研究を行い,T2 症例ではT1 に比較して手術時間が長く,出血量,鎮痛剤の使用が多いが,安全に腹腔鏡手術を施行できたと報告している3)(2b)。また,Gong らによるT1/T2 腎癌患者141 人に対する腹腔鏡手術の後ろ向きコホート研究では,T2 のほうが開腹術への移行,合併症の頻度が高いが,術後合併症,入院期間に差は認められていない4)(2b)

腫瘍径の大きな腎癌に対する腹腔鏡手術の有用性について,Hemal らはT2 腎癌112 症例の腹腔鏡手術(41 例)と開腹術(71 例)の非無作為化前向き研究で,手術時間は開腹術のほうが短いものの,出血,鎮痛剤の使用,入院期間,術後回復で腹腔鏡手術が優れており,5 年全生存率,5 年癌特異生存率,5 年非再発率は両術式で差はないことを報告している5)(1b)。Hattoriらは,7 cmを超える腫瘍を有する131症例(pT2 90人,pT3a 28 人)の開腹術(79 人)と腹腔鏡手術(52 人)の後ろ向き研究を行い,腹腔鏡手術のほうが合併症の頻度は高いものの,術中出血量は少なく,術後5 年,10 年の非再発率,癌特異生存率に差はないと報告している6)(2c)。また,Dillenburg による7 cm を超える腫瘍(T2 またはT3a)を有する患者48 人に対する開腹術(25 人)と,経後腹膜的腹腔鏡手術(23 人)の非無作為化前向き研究では,経後腹膜的腹腔鏡手術のほうが出血量,入院期間,術後鎮痛剤の使用が有意に少なく,術後回復(QOL)も良好であった7)(2b)

解 説T1/T2 の腎癌に対する腹腔鏡手術は開腹術と比較して,生存率,再発率に差はなく,術後経過(鎮痛剤の使用・入院期間・術後回復)は腹腔鏡手術の方が低侵襲である。しかし,T2 症例に対する腹腔鏡手術では,T1 症例と比較して出血量や開腹術への移行の頻度が高く,熟練した手技が必要である。腎癌に対する腹腔鏡手術は7 cm を超える腫瘍(T2 またはT3a)でも施行可能であるが,合併症などに関して患者や家族への十分な説明を行う必要がある。

検索方法

【PubMed】

kidney neoplasms AND radical nephrectomy AND laparoscopic radical nephrectomy AND 2005/01:2009/09[mhda] AND “humans”[MeSH Terms] AND(English[lang]OR Japanese[lang]

【医中誌】

(腎臓腫瘍/TH or 腎臓腫瘍/AL or 腎癌/AL) AND(腎摘除術/AL or 腎臓摘出術/TH or 腎臓摘出術/AL) AND(腹腔鏡法/TH or 腹腔鏡手術/AL or 腹腔鏡法/AL or 腹腔鏡/TH or 腹腔鏡/AL) AND(LA= 日本語,英語 PT= 会議録除く IDAT=1995/1/1:2009/9/30)

参考文献

1) Permpongkosol S, Chan DY, Link RE, et al. Long-term survival analysis after laparoscopic radical nephrectomy. J Urol. 2005;174(4 Pt 1):1222-5.(2c)

2) Colombo JR Jr, Haber GP, Jelovsek JE, et al. Seven years after laparoscopic radical nephrectomy:oncologic and renal functional outcomes. Urology. 2008;71(6):1149-54.(2c)

3) Hemal AK, Kumar A, Gupta NP, et al. Oncologic outcome of 132 cases of laparoscopic radical nephrectomy with intact specimen removal for T1-2N0M0 renal cell carcinoma. World J Urol. 2007;25(6):619-26.(2b)

4) Gong EM, Lyon MB, Orvieto MA, et al. Laparoscopic radical nephrectomy:comparison of clinical Stage T1 and T2 renal tumors. Urology. 2006;68(6):1183-7.(2b)

5) Hemal AK, Kumar A, Kumar R, et al. Laparoscopic versus open radical nephrectomy for large renal tumors:a long-term prospective comparison. J Urol. 2007;177(3):862-6.(1b)

6) Hattori R, Osamu K, Yoshino Y, et al. Laparoscopic radical nephrectomy for large renalcell carcinomas. J Endourol. 2009;23(9):1523-6(2c)

7) Dillenburg W, Poulakis V, Skriapas K, et al. Retroperitoneoscopic versus open surgical radical nephrectomy for large renal cell carcinoma in clinical stage cT2 or cT3a:quality of life, pain and reconvalescence. Eur Urol. 2006;49(2):314-22;discussion 322-3.(2b)


CQ 9
腫瘍径4 cm 以下(T1a)の腎癌患者において腎部分切除術は推奨されるか?

アルゴリズムへ


推奨グレード
B
制癌性は根治的腎摘除術と同等で,腎機能保持の面で有用であり,全死亡率,非癌関連死亡率を低下させる可能性があり,腎部分切除術は推奨される。

根 拠単腎症例,腎機能低下症例,両側腎癌症例に対して腎部分切除術は絶対適応であり,対側腎が正常で特に腫瘍径が4 cm 以下の場合は選択的適応と考えられているが,近年,4 cm 以下のT1a 腫瘍に対する腎部分切除術の適応は拡大している。Thompson ら1)(3a)の報告では約90%の症例で腎部分切除術が施行されており,Hollingsworth ら2)(3b)もT1a 症例のほとんどに腎部分切除術が施行されており,T1b 症例においても腎部分切除術が有意に増加していることを報告している。また,Shuch らはT1 腎細胞癌に対しては開腹腎部分切除術が第一選択であるとしている3)(3b)

Joniau ら4)(2a)やMitchell ら5)(2c)は,腫瘍径4 cm以下の腎癌症例に対する腎部分切除術の5 年癌特異的生存率,再発率は根治的腎摘除術と比較して遜色がないとしている。同様にGirbert ら6)(2a)やNovick ら7)(3a)の報告でも,4 cm以下の腎癌症例に対する腎部分切除術と根治的腎摘除術の制癌性に関しては同等であるとしており,Zini ら8)(3b)はT1a-b腎細胞癌においても腎部分切除術と根治的腎摘除術の癌特異的死亡率は同等であるとしている。逆にZini らの報告ではT1a 腎細胞癌において,根治的腎摘除術は腎部分切除術に比べて全死亡率,非癌関連死亡率を有意に上昇させるとしている9)(2a)

腎部分切除術の合併症に関して,Uzzo らは1,129 例の検討で,尿漏7.4%,急性尿細管壊死・腎機能障害6.3%,透析4.9%,感染・膿瘍3.2%,出血2.8%,周術期関連死1.6%,再手術1.9%,脾損傷0.6%が生じたと報告している10)(3a)。またHollingsworth らは,腎部分切除術において根治的腎摘除術と比較して合併症の頻度は変わらないと報告している2)(3b)

Mckiernan らは,術前に腎機能障害の危険因子が同様であった患者に対して根治的腎摘除術と腎部分切除術を施行後,10 年間の腎機能を前向きに比較した結果,根治的腎摘除術で有意に腎機能障害(クレアチニン2.0 mg/dL 以上)を引き起こす危険が高く(P=0.008),腎部分切除術は長期の腎機能保持に有用であったと報告している11)(2c)。またLucas らは対側腎が正常であっても,片側の4 cm 以下の腎腫瘍に対する根治的腎摘除術によって有意な腎機能低下が起こり,RFA・腎部分切除術が腎機能温存に有効であることを報告している12)(3b)

腎部分切除後の腫瘍再発に関して,Uzzo らは腎癌1,180 例において同一腎内に多病巣を有するのは全体の6.5〜28%であり,このうち4 cm 以下の腎癌症例に限っては約5%としている10)(3a)。腎部分切除術の最適な外科的断端に関して,Li らは4 cm以下の腎癌82 例の根治的腎摘除術病理標本の検討の結果,全症例で偽被膜外病変は原発巣から5 mm 以内に位置しており,1 cm を外科的断端とすると術後の腎機能に影響を及ぼす可能性を示唆している13)(2b)

Gilbert らも,これまで1 cm の外科的断端が推奨されていたが根拠がなく,断端陰性であれば予後は良好であるとしている6)(2a)

入院費用について,Mckiernan らは4 cm 以下の腎癌症例に対する腎部分切除術と根治的腎摘除術を施行した症例の比較で同等であったと報告している14)(2c)

開腹腎部分切除術と腹腔鏡下腎部分切除術との比較において,Schiff らは手術時間(平均239 分vs 114 分)のみが腹腔鏡下手術で有意な延長を認めたが,出血量,食事開始時期,退院時期に差は認めなかったと報告している15)(3a)。腫瘍の局在に関しては,特に腹腔鏡下腎部分切除術では,外方突出型や腎洞に浸潤しない型が技術的にも容易で合併症が少ないとされている。また,腹腔鏡下腎部分切除術の長期成績はまだ明らかではない16)(3a)

解 説検診の導入に伴い,超音波検査などにより偶然発見される小径腎癌が増加している。以前はこれらの小径腎癌に対しても対側腎機能に問題がなければ開腹による根治的腎摘除術が行われてきた。しかし,近年,低侵襲手術としての腹腔鏡下腎摘除術が普及してきた。これと並行して腎機能の温存を目的とした開腹腎部分切除術も普及し,特に最近,慢性腎臓病(CKD)の考えが普及したことによって,腎部分切除術の必要性が高まってきた。その結果,腫瘍径4 cm 以下の症例に対する腎部分切除術の頻度はかなり高まっており,腫瘍径4 cm を超える症例まで腎部分切除術の適応が広まっていく傾向にある。また,低侵襲性から腹腔鏡下腎部分切除術も徐々に普及してきており,各手術の適応基準を検討する必要がある。

現状では,腫瘍径4 cm 以下の腎癌症例に対する腎部分切除術は,根治的腎摘除術と比較して制癌性は同等であり,腎機能保持の面では優れた成績を示し,標準的術式として推奨される。しかし,埋没型腫瘍や腎門部に接する腫瘍などに対する腎部分切除術は高い技術を要し,適応の検討は慎重に行われるべきである。また,腫瘍径4 cm 以上の腎癌症例に対する腎温存手術や腹腔鏡下腎部分切除術の制癌性・術後腎機能についての報告はまだ少なく,長期成績も明らかではない。

検索方法

【PubMed】

kidney neoplasms AND T1a AND radical nephrectomy AND partial nephrectomy AND 2005/01:2009/09[mhda] AND “humans”[MeSH Terms] AND(English[lang]OR Japanese[lang])

【医中誌】

(腎臓腫瘍/TH or 腎臓腫瘍/AL or 腎癌/AL) AND(T1a/AL or 小径/AL) AND(腎摘除術/AL or 腎臓摘出術/TH or 腎臓摘出術/AL) AND 腎部分切除/AL AND(LA= 日本語,英語 PT= 会議録除く IDAT=1995/1/1:2009/9/30)

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CQ 10
有転移腎癌患者において腎摘除術は推奨されるか?

アルゴリズムへ


推奨グレード
A
転移巣を有する腎癌患者に対する腎(患側腎)摘除術は,performance status(PS)が良好で,術後インターフェロンによる免疫療法が可能な患者には推奨される。なお,分子標的薬に関しても同様の検討が行われているが,現時点で最終結論は得られていない。

根 拠サイトカイン時代に転移巣を有する腎癌患者に対する腎摘除術の有用性を検討した均質なRCT(Randomized Controlled Trial)は,EORTC ならびにSWOG による大規模な臨床試験として報告されている1,2)(1b)。いずれも,腎摘除術後のインターフェロンα(IFN-α)投与群とIFN-αの単独投与群を比較検討したものである。Mickisch ら(EORTC 30947)は,背景因子に差のない腎摘除術+IFN-α-2b 投与群42 例とIFN-α-2b 投与群42 例の予後を検討し,IFN-α による転移巣の近接効果には差はないものの,平均生存中央値は前者が17 カ月,後者が7 カ月で,非進行生存率,全生存率のいずれにおいても前者が後者に比較して有意に延長していることを報告した1)(1b)

一方,Flanigan ら(SWOG 8949)も,同様に腎摘除術+IFN-α-2b 投与群120 例とIFN-α-2b 投与群121 例の予後を検討し,IFN-α による転移巣の近接効果には差はなかったが,生存中央値が各々11.1 カ月と8.1 カ月,1 年生存率が各々49.7%と36.8%で,やはり前者が後者に比較して有意に予後良好であると報告した2)(1b)。さらに,Flanigan らはこのEORTC ならびにSWOG の両者の研究をまとめたmeta-analysis を行い,performance status(PS),転移部位,測定可能病変の有無には関係なく,腎摘除術施行群が生存率を改善させ,生存期間の差は5.8 カ月であると報告した3)(1a)

上記の2 つの研究以外にサイトカインを用いたRCT の研究報告はみられないが,無作為化されていない研究をみると,インターロイキン2(IL-2)ベースの免疫療法の前に腎摘除術施行群と非施行群を比較して手術施行が生存率改善に寄与したとするもの4)(3b),IFN やIL-2 などのサイトカイン療法をはじめ化学療法,ホルモン療法,放射線療法など種々の治療と手術を組み合わせて検討すると,手術非施行群に比較して施行群が有意に予後延長するとしたもの5)(3b)がみられる。また,対照はないがIFNやIL-2 などのサイトカイン療法を術後行うことで生存率が期待できるとした報告もみられる6-9)(4)。対照をやはり設けていないが,PS の悪い患者でも腎摘除術を推奨しているものもみられる10)(4)一方で,術後に種々の治療を行っても腎摘除術による生存率は期待できないとする報告11)(4)もみられた。これらの無作為化していない論文と前述のEORTC とSWOG による第Ⅲ相試験も含めたレビューでは,腎摘除術が集学的治療の一つとして有用な治療としている12)(3a)

次いで,分子標的薬が承認され,当然のことながら,転移巣を有する腎癌患者を対象に腎摘除術後の分子標的薬投与群と分子標的薬の単独投与群を比較検討する同様の均質なRCT が想定される。現時点で,スニチニブを用いた第Ⅲ相試験(CARMENA 試験)が実施され,全生存率をprimary endpoint に検討されているが,まだ最終結論は得られていない13)。しかし,相次いで新規薬剤として承認された分子標的薬の有効性が示されていることから,本剤を術後に用いることを条件に,サイトカイン同様,腎摘除術の妥当性を強く示唆する論文が多い13,14)。この腎摘除術の位置づけに関する研究に加えて,手術施行時期を検討する研究も行われている。すなわち,転移性腎癌に対してスニチニブを腎摘除術の術前に投与するか,術後に投与するかを検討するEORTC の第Ⅲ相試験が実施されており,本試験の結果が待たれる13)。術前投与に関する非無作為化の検討もあり,分子標的薬投与後も安全に手術が施行できるとされているが,やはりその有意性を示す結果は得られていない15,16)(4)

転移のある腎癌に対する腎摘除術の適応を術前因子で検討した研究があり,Miyao らは,acute phase protein,静脈浸潤,転移巣の数を考慮したリスク評価を提唱した17)(3b)。予後予測因子として,前述のSWOG 8949 試験の9 年間の長期成績からの検討では,PS,ALP 値,肺転移以外の転移巣の有無などがリスク因子として挙げられている18)(2b)。そのほかにもPS を重要とする論文19)(2b)があるが,Leibovich らは,有転移腎癌20)(3b)および淡明細胞型腎細胞癌(淡明細胞癌)のみに限った腎癌21)(3b)の予後予測因子をスコア化したアルゴリズムを提唱している。しかし,その中に術後因子も含まれているため,一部の術前因子が予後予測の参考となるかもしれない。また,有転移腎癌の腎摘除術を淡明細胞癌と非淡明細胞癌で比較した研究があり,前者が有意に予後良好であった22)(4)。最後に術式に関して,腎摘除術と腎部分切除術を比較した研究があるが,症例を選択することにより,部分切除術の適応があるようである23)(4)

解 説転移巣を有する腎癌患者に対して,患側腎を外科的治療することの是非については議論の多いところである。そこで,有転移腎癌患者に対する腎摘除術の適応と予後改善に繋がるか否かについて文献的に明らかにする必要がある。

以上のことより,現在では,腎摘除術が施行できるようなPS の良好な場合で,術後に転移巣に対するIFN などによるサイトカイン治療が可能な患者に対しては積極的に腎摘除術が推奨されると思われる。また,術後に分子標的治療が可能な場合も同様に推奨されるであろうが,現在進行中の臨床試験による最終結論が待たれるところである。

しかし,安易に手術を行うことは慎むべきであり,患者のPS やQOL を考慮して,手術適応を慎重に決めなければならない。今後,手術施行による予後予測因子の解明が期待される。

検索方法

【PubMed】

kidney neoplasms AND(metastasis OR advanced) AND nephrectomy AND 2005/01:2009/09[mhda] AND “humans” [MeSH Terms] AND(English[lang] OR Japanese[lang]) NOT(Editorial[ptyp] OR Letter[ptyp] OR Case Reports[ptyp])

【医中誌】

(腎臓腫瘍/TH or 腎臓腫瘍/AL or 腎癌/AL) AND(転移性/AL or 進行性/AL) AND(腎摘除術/AL or 腎臓摘出術/TH or 腎臓摘出術/AL) AND(LA= 日本語,英語 PT=会議録除く IDAT=1995/1/1:2009/9/30)

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CQ 11
根治的腎摘除術においてリンパ節郭清は推奨されるか?

アルゴリズムへ


推奨グレード
C2
遠隔転移がなくリンパ節腫大が認められない場合,リンパ節転移の可能性は非常に低くリンパ節郭清による生存率向上に寄与しないため推奨されない。

推奨グレード
B
遠隔転移がなくリンパ節転移が疑われる場合は,リンパ節郭清により正確な診断および生存率の向上が期待されるため推奨される。遠隔転移がある場合もリンパ節転移巣の摘除と薬物療法により予後改善の可能性がある。

根 拠Blom らは転移のない腎癌患者(cT1-3N0M0)に対するリンパ節郭清術の有用性を検討した唯一の前向き無作為化試験(Prospective Randomized Controlled Trial:RCT)の結果を報告した。リンパ節郭清術が完遂された336 例で,術中に腫大リンパ節を触知した43 例中7 例(16%)にリンパ節転移を認め,腫大リンパ節を触知しない229 例中4 例(1%)にリンパ節転移を認めた。一方,リンパ節郭清術を施行しなかった346 例中29 例で触知可能なリンパ節を認め,そのうち6 例に転移を認めた。術前診断が適切であればリンパ節転移の頻度は非常に低く,リンパ節郭清術の有用性は確認できていない1)(2b)。最近,この研究の最終報告があり,経過観察期間中央値12.6 年で,リンパ節郭清は無増悪生存期間・全生存期間の延長に寄与しないと報告している2)(1b)。Pantuck らは腎摘除術を施行した900 例の検討では,7 cm 未満で臨床的に腎に限局しリンパ節転移が疑われない場合,リンパ節転移を認めたのは0.5%未満であるとし3)(3b),Minerviniらはリンパ節転移の疑いのない症例で,根治的腎摘除術のみを施行した108 例の5 年生存率が79%,リンパ節郭清術を施行した49 例の5 年生存率が78%と差を認めなかった4)(3b)。さらに,遠隔転移のない腎癌患者1,035例の後ろ向き評価では,系統的リンパ節郭清術を施行した症例の生存率が高かったが,年齢補正すると差を認めなかった5)(3b)。その他,腫瘍径とリンパ節転移に関連があり,リンパ節郭清術により予後に関する情報は得られるが生存率向上には寄与しないという報告がみられる6)(2c)78)(3b)。このように,遠隔転移がなくリンパ節転移が疑われない場合はリンパ節転移の可能性は低く,リンパ節郭清術により予後に関する情報は得られるが,生存率向上への寄与は確認されていない9-11)(3a)

一方,遠隔転移がなくリンパ節転移が疑われる場合はリンパ節郭清術と術後補助療法により長期生存例があり,予後の改善が期待できるとする報告がある12)(3b)1314)(4)。Canfield らは,遠隔転移がなくリンパ節転移のある40 例では,リンパ節郭清術により平均生存期間は20.3 カ月で30%は再発しておらず,リンパ節転移のある場合はリンパ節郭清術と補助療法を選択するべきであるとしているが12),Lam らはRCT のない現状では強く推奨することはできないとしている9)。現状においては,リンパ節腫大を認める場合には正確な診断が可能であり,リンパ節郭清により予後改善が期待できるため推奨されるとの意見が多い9-11)(3a)。最近,Whitsonらは遠隔転移がなくリンパ節転移がある場合,摘除リンパ節数が多いほど予後改善が期待できるとし,リンパ節転移の可能性が高い場合には所属リンパ節または拡大リンパ節郭清を考慮すべきであると報告している15)(2b)。なお,腫大したリンパ節で組織学的に転移を認めるのは約30%であり,術中迅速病理により不必要なリンパ節郭清を避けることができるとの報告もある17)(2b)

遠隔転移のある場合においても,Pantuck らは根治的腎摘除術とリンパ節郭清術を施行した328 例の検討から免疫療法の効果および予後予測に有用であり,予後の改善が期待できるためリンパ節郭清術を推奨している316)(3b)。遠隔転移のある場合も,リンパ節転移を認めた場合にはリンパ節郭清を含むcytoreductive surgery により予後改善が期待できるが9-11)(3a),分子標的薬導入後のエビデンスはまだない。

解 説従来,根治的腎摘除術におけるリンパ節郭清は予後を改善しないとされ,根治的腎摘除術には含まれず,一般的には行われていない場合が多い。またリンパ節の腫大がある場合も,腫大したリンパ節の摘除のみで良いのか郭清すべきかは明確ではない。リンパ節郭清術の意義について文献的に検索し,リンパ節郭清が推奨されるか否か,明らかにする必要がある。

遠隔転移がなく画像上リンパ節腫大が認められない場合(T1-3N0M0),リンパ節転移の可能性は非常に低く,リンパ節郭清術による無増悪生存期間・全生存期間の延長は認められず,推奨されない。一方,遠隔転移がなくリンパ節転移が疑われた場合は,リンパ節郭清術により正確な診断および生存率向上が期待される。また,遠隔転移のある場合にも原発巣およびリンパ節転移を完全摘除することにより薬物療法による予後改善の可能性があるが,分子標的薬導入後のエビデンスはない。

検索方法

【PubMed】

kidney neoplasms AND nephrectomy AND(lymphadenectomy OR lymph node excision)AND 2005/01:2009/09[mhda] AND “humans”[MeSH Terms] and(English [lang] or Japanese[lang])

【医中誌】

(腎臓腫瘍/TH or 腎臓腫瘍/AL or 腎癌/AL) AND(腎摘除術/AL or 腎臓摘出術/TH or 腎臓摘出術/AL) AND(リンパ節郭清/TH or リンパ節郭清/AL) AND(LA= 日本語,英語 PT= 会議録除く IDAT=1995/1/1:2009/9/30)

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9) Lam JS, Shvarts O, Pantuck AJ. Changing concepts in the surgical management of renal cell carcinoma. Eur Urol. 2004;45(6):692-705.(3a)

10) Kim HL, Lam JS, Belldegrun AS. The role of lymphadenectomy in renal cell carcinoma. Curr Urol Rep.2004;5(1):25-9.(3a)

11) Leibovich BC, Blute ML. Lymph node dissection in the management of renal cell carcinoma. Urol Clin North Am. 2008;35(4):673-8.(3a)

12) Canfield SE, Kamat AM, Sanchez-Ortiz RF, et al. Renal cell carcinoma with nodal metastases in the absence of distant metastatic disease(clinical stage TxN1-2M0):the impact of aggressive surgical resection on patient outcome. J Urol. 2006;175(3 Pt 1):864-9.(3b)

13) Katagiri A, Tomita Y, Takahashi K. Significance of lymphadenectomy in renal cancer. Nippon Hinyokika Gakkai Zasshi. 1998;89(8):721-5.(4)

14) Hashimoto K, Hisasue S, Yanase M, et al. Tumor size and regional lymph node metastasis in patients with M0 renal cell carcinoma:analysis in those having regional lymph node dissection. Hinyokika Kiyo. 2005;51(9):621-5.(4)

15) Whitson JM, Harris CR, Reese AC, et al. Lymphadenectomy improve survival of patients with renal cell carcinoma and nodal metastases. J Urol. 2011;185(5):1615-20(2b)

16) Pantuck AJ, Zisman A, Dorey F, et al. Renal cell carcinoma with retroperitoneal lymph nodes. Impact on survival and benefits of immunotherapy. Cancer. 2003;97(12):2995-3002.(3b)

17) Ming X, Ningshu L, Hanzhong L, et al. Value of frozen section analysis of enlarged lymph nodes during radical nephrectomy for renal cell carcinoma. Urology. 2009;74(2):364-8.(2b)


CQ 12
腎癌に対する腎摘除術において患側の副腎摘除は推奨されるか?

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推奨グレード
C1
画像上,副腎転移や副腎への直接浸潤が疑われる場合には副腎摘除が推奨される。

根 拠Bahrami らによる腎癌患者の副腎病変の調査では,副腎摘除を伴う腎摘除術を行った550 例のうち80 例に副腎の腫瘤が存在し,56%が良性腫瘍,43%が腎癌の転移であった1)(3a)。また,Ito らによる同側副腎転移を有する30例と同側副腎転移のない926 例についての解析では,副腎転移のリスクファクターは,腫瘍径(5.5cm 以上),T3 以上,リンパ節転移,副腎以外の遠隔転移の存在であり,術前のCT によって83.3%(20/24)の症例で同側副腎転移が診断可能であったと報告している2)(3a)

腎癌の副腎転移が予後に影響するかについて,Alamdari らの調査では,腎癌で副腎摘除を伴う腎摘除術を行った321 例のうち17 例(5.3%)に同側の副腎の転移が存在し,副腎転移を有する患者では転移を有さない患者と比較して癌特異生存率が有意に低かった3)(2c)。また,Kuczyk らは,副腎のみに転移を有し副腎摘除を行った患者と転移を有さない患者の長期予後はほぼ同じであり,副腎のみに転移を有する患者に対する副腎摘除は有効な治療であると報告している4)(2c)。しかし,von Knobloch らは,腎癌患者で副腎摘除を伴う腎摘除術を行った617 例のうち,副腎転移が認められた23 例(3.7%)を調査し,副腎摘除を行った患者の全生存期間の中央値は41.7 カ月,無増悪期間の中央値は34.2 カ月であり,根治的腎摘除術の際にルーチンで副腎摘除を行っても予後に影響しないため,慣例的な副腎摘除は避けるべきであると結論づけている5)(2c)。Yokoyama らは,副腎摘除による副腎機能の問題について示唆し,副腎摘除によって副腎機能が低下する可能性があるため,術前のCT などによる副腎転移の評価が重要であると報告している6)(2b)

解 説腎癌患者に対する副腎摘除の有用性を検討した均質なRCT の報告はない。腎摘除術に伴う患側副腎摘除については,画像上の副腎病変がある場合や直接浸潤が疑われる場合は予後を改善する可能性があり,腫瘍減量術(cytoreductive surgery)の観点からも副腎摘除を考慮すべきである。また,副腎転移のリスクファクターに関する報告は症例数が少なく,今後の更なる調査が必要であるが,腫瘍径が5.5 cm を超える腫瘍やT3 以上の腫瘍では,患側副腎転移のリスクのために副腎摘除を考慮する必要がある。

検索方法

【PubMed】

kidney neoplasms AND nephrectomy AND adrenalectomy AND 2005/01:2009/09[mhda] AND “humans”[MeSH Terms] AND(English[lang] OR Japanese[lang])

【医中誌】

(腎臓腫瘍/TH or 腎臓腫瘍/AL or 腎癌/AL) AND(腎摘除術/AL or 腎臓摘出術/TH or 腎臓摘出術/AL) AND(副腎摘出術/TH or 副腎摘出/AL or 副腎摘除/AL or 副腎温存/AL) AND(LA= 日本語,英語 PT=会議録除く IDAT=1995/1/1:2009/9/30)

参考文献

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6) Yokoyama H, Tanaka M. Incidence of adrenal involvement and assessing adrenal function in patients with renal cell carcinoma:is ipsilateral adrenalectomy indispensable during radical nephrectomy? BJU Int. 2005;95(4):526-9.(2b)


CQ 13
下大静脈腫瘍栓を有する腎癌患者に対する腫瘍栓摘除術は推奨されるか?

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推奨グレード
B
下大静脈腫瘍栓を有する腎癌患者のうち,所属リンパ節転移や遠隔転移を認めない局所腎癌患者において腫瘍栓摘除術は推奨される。

根 拠下大静脈腫瘍栓を有する腎癌患者に対する腫瘍栓摘除術の有用性を検討した均質なRCT(Randomized Controlled Trial)の報告はほとんどない。

ヨーロッパ13 施設における静脈内腫瘍栓を有する腎癌1,192 症例に対する手術成績,ならびに予後因子の解析結果が報告1)されている。その結果,腎静脈内腫瘍栓(Group 1)が933 人(78.3%),横隔膜下腫瘍栓(Group 2)が196 人(16.4%),横隔膜上腫瘍栓(Group 3)が63 人(5.3%)であった。平均生存期間はGroup 1,Group 2,Group3 でそれぞれ52 カ月,25.8 カ月,18 カ月である。多変量解析により独立した予後予測因子として腫瘍サイズ(p=0.013),腎周囲脂肪織浸潤(p=0.003),リンパ節転移(p<0.001),遠隔転移(p<0.001),IVC 進展(p=0.008)が同定された(3a)。また,Bluteらはリンパ節転移および遠隔転移を認めない群(332 例)の癌特異的5 年生存率は59.1%で,リンパ節転移や遠隔転移を認める群(171 例)では5.8〜17.2%と明らかに有意差を認めている2)(3b)。さらにリンパ節転移陽性例は陰性例に比べ有意に生存率が低下しているとした報告が多い34)(3b)

腫瘍栓レベル(腎静脈内,横隔膜以上および以下,心房内)が予後に影響を及ぼすか否かについては,腫瘍栓が腎静脈内か下大静脈内かで有意差を認めるとされる報告が多い。前述の報告12)では腫瘍栓が腎静脈内か下大静脈内かでのみ生存率に有意差を認めており,下大静脈内から心房内の腫瘍栓レベルでは有意差を認めていない。Kim らによる報告でも,腎静脈内(5 年生存率;81.3%)と下大静脈内(5 年生存率;52.7%)でのみ有意差を認めている5)(4)。一方,腫瘍栓レベルにより周術期の合併症が増加するとされる6)(3b)。また,腫瘍栓摘除術には一定の周術期死亡率(約2%)が存在するのも事実であり78)(4),特に心房内腫瘍栓例では高いとされるため9)(4),その適応については注意を要する。

解 説腎癌は容易に静脈内に浸潤し,腎静脈を経て下大静脈内に腫瘍栓を形成するという特性を有する。手術適応症例を明確にしたうえ,実際に腎摘除ならびに腫瘍栓摘除により生存率を有意に改善するかどうかについて文献的に明らかにする必要がある。

現状では,腫瘍栓が腎静脈内のみにある腎癌症例において,腫瘍栓摘除術は生存率の延長が期待される。下大静脈腫瘍栓を有する患者においてはリンパ節転移や遠隔転移を認めない症例が手術適応と判断され,腫瘍栓摘除術により生存率の向上に寄与すると考えられる。しかし,腫瘍栓摘除術には一定の治療関連死が存在するため,手術適応については患者および家族の意向を十分に取り入れることが重要である。

検索方法

【PubMed】

kidney neoplasms AND inferior vena cava AND(tumor thrombus OR tumor thrombectomy OR tumor thrombosis) AND 2005/01:2009/09[mhda] AND “humans” [MeSH Terms] AND(English[lang] OR Japanese[lang])

【医中誌】

(腎臓腫瘍/TH or 腎臓腫瘍/AL or 腎癌/AL) AND(下大静脈/TH or 下大静脈/AL)AND((血栓症/TH or 血栓/AL) or(流血中腫瘍細胞/TH or 腫瘍血栓/AL) or(血栓摘出術/TH or 血栓摘出/AL or 血栓摘除/AL) or(静脈血栓症/TH or 静脈血栓/AL) or(塞栓摘出術/TH or 塞栓摘出/AL or 塞栓摘除/AL)) AND(LA= 日本語,英語 and PT= 会議録除く and IDAT=1995/1/1:2009/9/30)

参考文献

1) Wagner B, Patard JJ, Mejean A, et al. Prognostic value of renal vein and inferior vena cava involvement in renal cell carcinoma. Eur Urol. 2009;55(2):452-9.(3a)

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CQ 14
転移巣に対する外科的治療は推奨されるか?

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推奨グレード
B
転移巣を有する腎癌患者のうち,PS が良好で転移巣が切除可能な場合は,転移巣に対する外科的治療が推奨される。

根 拠転移巣を有する腎癌患者に対する転移巣の外科的治療の有用性を検討した均質なRCT(Randomized Controlled Trial)の報告はない。無作為化されていない研究において,有転移腎癌患者の転移巣に対する外科的治療は,performance status(PS)が良好で,転移巣が肺・副腎などでは生存率の延長が期待されている1)(3b)。また,原発巣摘除から転移出現までの期間が2 年以上の場合は,転移巣切除後の生存率が延長したと報告されている2)(3b)

主要臓器の転移巣別にみると,Piltz らは,腎癌肺転移105 例に対する肺切除術の治療成績を後ろ向きに検討した結果,5 年,10 年生存率は各々40%,33%で,転移巣の大きさ,転移巣の完全切除および腎摘除術時のリンパ節転移の有無が重要な予後因子であったと報告している3)(4)。Pfannschmidtらは肺切除術を191例に施行し,治癒切除例(149 例)と非治癒切除例の5 年生存率は各々41.5%,22.1%で,転移巣が7 個未満では有意に長期生存が認められたと報告している4)(4)。Murthyらも同様に肺切除術を92例に施行し,完全切除例(63 例)と不完全切除例の5 年生存率は各々45%,8%で,転移巣の完全切除,転移巣の大きさ,リンパ節転移の個数,術前の1 秒量(FEV1.0)を予後因子として報告している5)(4)

Althausen らは腎癌骨転移38 例に対する骨切除術の治療成績を後ろ向きに検討した結果,5 年,10 年生存率は各々55%,39%で,転移出現の時期と転移巣(部位と個数)が予後因子であったと報告している6)(4)。Durrらも骨切除術を45例に施行し,5年生存率は15%で,同様に骨転移出現までの期間と転移巣の範囲を予後因子として報告している7)(4)。Lin らは腎癌骨転移295 例に対して骨切除術(117 例)を含む外科的治療を施行し,5 年生存率は11%で,淡明細胞型腎細胞癌,骨単独転移,孤立性骨転移の生存率が高かったと報告している8)(4)

Stief らは腎癌肝転移13 例に対して肝切除術を施行した結果,4 例が手術関連死しており,症例の選択を慎重に行うべきであると報告している9)(4)。Thelenらは31例に肝切除術を施行し,5 年生存率は38.9%で,1 例が周術期に死亡しており,切除断端陰性が最も重要な予後決定因子であったと報告している10)(4)

膵転移は稀であるが,腎癌膵転移に対する膵切除術の治療成績をsystematic reviewした結果,切除例(321 例)と非切除例(73 例)の5 年生存率は各々72.6%,14%と報告されている11)(3b)。Zerbi らも膵切除例(23 例)と非切除例(13 例)の5年生存率は各々88%,47%で,MSKCC リスク分類のfavorable 群に属する患者が膵切除術の候補者であると報告している12)(4)。また,Reddyらは,種々の臓器癌からの孤立性の膵転移をきたした症例に対して少なくとも5 例以上手術している報告から計243 例を横断的にレビューしているが,原発巣の最多は腎癌(62%)であり,長期成績の明らかな腎癌の報告7 件の5年生存率が66%で,ほかと比較して最も高かったとしている13)(3a)

Leibovich らは予後因子として,症状の有無,転移出現の時期,転移巣(部位と個数),腫瘍血栓の進展度,原発巣の核異型,腫瘍壊死,転移巣の完全切除などがあり,スコア化することにより予後予測可能であると報告している14)(2b)。転移巣が単発で完全切除は良好因子としているが,肝転移や腎摘除術後2 年以内の転移出現は不良因子としている14)

解 説転移巣に対する外科的治療が生存率に寄与するかは議論の多いところである。そこで転移巣に対する外科的治療の手術適応と予後改善につながるか否かについて文献的に明らかにする必要がある。

以上のことより,現在ではPS が良好で転移巣が切除可能な場合で,転移巣に対する外科的治療は生存率の延長が期待され,推奨されると思われる。また,治癒切除可能な肺転移や副腎転移が最も適した手術適応と判断される。しかし,安易に手術を行うことは慎むべきであり,患者のPS やQOL を考慮して,手術適応を慎重に決めなければならない。なお,現時点において転移巣に対するサイトカインあるいは分子標的治療と外科的治療の組み合わせに関する均質なRCT の報告はない。今後,薬物治療と手術療法による予後予測因子の解明が期待される。

検索方法

【PubMed】

(kidney neoplasms AND(metastasis OR metastases OR metastasectomy) AND surgery AND secondary AND 2005/01:2009/09[mhda] AND “humans”[MeSH Terms]AND(English[lang] OR Japanese[lang])) NOT(Editorial[ptyp] OR Letter[ptyp])

【医中誌】

(腎臓腫瘍/TH or 腎臓腫瘍/AL or 腎癌/AL) AND 転移巣/AL AND(外科手術/TH or 外科手術/AL or 外科的治療/AL) AND(LA= 日本語,英語 and PT= 会議録除く and IDAT=1995/1/1:2009/9/30)

参考文献

1) Antonelli A, Zani D, Cozzoli A, et al. Surgical treatment of metastases from renal cell carcinoma. Arch Ital Urol Androl. 2005;77(2):125-8.(3b)

2) van der Poel HG, Roukema JA, Horenblas S, et al. Metastasectomy in renal cell carcinoma:A multicenter retrospective analysis. Eur Urol. 1999;35(3):197-203.(3b)

3) Piltz S, Meimarakis G, Wichmann MW, et al. Long-term results after pulmonary resection of renal cell carcinoma metastases. Ann Thorac Surg. 2002;73(4):1082-7.(4)

4) Pfannschmidt J, Hoffmann H, Muley T, et al. Prognostic factors for survival after pulmonary resection of metastatic renal cell carcinoma. Ann Thorac Surg. 2002;74(5):1653-7.(4)

5) Murthy SC, Kim K, Rice TW, et al. Can we predict long-term survival after pulmonary metastasectomy for renal cell carcinoma? Ann Thorac Surg. 2005;79(3):996-1003.(4)

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7) Dürr HR, Maier M, Pfahler M, et al. Surgical treayment of osseous metastases in patients with renal cell carcinoma. Clin Orthop Relat Res. 1999;(367):283-90.(4)

8) Lin PP, Mirza AN, Lewis VO, et al. Patient survival after surgery for osseous metastases from renal cell carcinoma. J Bone Joint Surg Am. 2007;89(8):1794-801.(4)

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10) Thelen A, Jonas S, Benckert C, et al. Liver resection for metastases from renal cell carcinoma. World J Surg. 2007;31(4):802-7.(4)

11) Tanis PJ, van der Gaag NA, Busch OR, et al. Systematic review of pancreatic surgery for metastatic renal cell carcinoma. Br J Surg. 2009;96(6):579-92.(3b)

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13) Reddy S, Wolfgang CL. The role of surgery in the management of isolated metastases to the pancreas. Lancet Oncol. 2009;10(3):287-93.(3a)

14) Leibovich BC, Cheville JC, Lohse CM, et al. A scoring algorithm to predict survival for patients with metastatic clear cell renal cell carcinoma:a stratification tool for prospective clinical trials. J Urol. 2005;174(5):1759-63.(2b)


CQ 15
小さな腎癌に対する経皮的局所療法は推奨されるか?

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推奨グレード
C1
小さな腎癌に対する経皮的局所療法としてのラジオ波焼灼術(RFA:Radiofrequency ablation)および凍結療法(Cryoablation)は,全身状態や合併症のため根治的な治療が困難な場合に推奨される。

根 拠RFA はエコガイド下,CT ガイド下,MRI ガイド下に行われ,治療効果の評価は造影CT やMRI により行われる。Matsumoto らは60 例64 腫瘍に対してRFA 後の変化を造影CT で評価し,焼灼が完全に行えた腫瘍は造影CT で造影効果が消失するが腫瘍は縮小しないと報告している1)(4)。Gervais らの報告では85例100腫瘍に対してRFA を施行し,90 腫瘍が完全壊死となり,3 cm 未満の52 腫瘍,外方突出型の68 腫瘍はすべて壊死となったが,5.5 cm 以上は全例完全壊死とならず,3 cm 未満・外方突出型は壊死の予測因子であった2)(4)。McDougal らは,合併症がある症例・手術を拒否した症例に対してRFA を施行し,4 年以上経過した20 腫瘍では5 cm 未満で突出型の腫瘍に対する経皮的RFA は効果的であり,合併症も特にないと報告している3)(4)。Varkarakis らの報告では,4 cm以下の全身状態不良な46 例56 腫瘍に対してRFA を施行し,95%でコントロールでき合併症も少ないが,3 cm 以上で中心型の腫瘍は再発しやすく技術的にもやや困難とのことであった4)(4)。Guptaらは,151 例163 腫瘍に全身麻酔・造影CT ガイド下にRFA を行い,高い有効率・有用性を示したが,中心性・内向性では再発率が高いと報告した5)(3b)。Sternらは63例の健康成人のcT1腫瘍に対して施行し,健康成人にも妥当な治療法と報告している6)(3b)。なお,治療後の経過観察にはCT・MRI が有用である7)(4)

経皮的凍結療法(Cryoablation)もCT ガイド下,MRI ガイド下に行われる。Gupta らは1 カ月以上経過観察できた16 腫瘍中15 腫瘍で造影が消失したが,5 cm の中心部腫瘍で腎周囲出血にて入院・輸血したと報告している8)(4)。Shingleton らの報告では20 例22 腫瘍に施行し,1 例で術後創部膿瘍を認め,平均観察期間9.1 カ月で再発・進展なしだった9)(4)。Silverman らは23 例26腫瘍に施行し,24 腫瘍で治療成功,不成功は最初の2 例,合併症は輸血が1 例,膿瘍1 例,平均観察期間14 カ月で再発・進展なしと報告している10)(4)。一方,凍結療法は鏡視下にも行われ,Nisbet らの報告では腹腔鏡下凍結療法22 例の検討で,選択基準として70 歳以上,多くの合併症あり,腫瘍が3.5 cm 以下,多発性,充実性腫瘍としたアルゴリズムが有用であり,治療方針決定の手助けとなるとされている11)(3b)。また,Berger らはメタアナリシスの結果,経皮的・鏡視下ともにRFAより治療成績が優れていると報告している12)(3a)

最近の報告をまとめると,RFA,凍結療法ともに有用性は確認されつつあるが,腎部分切除術との前向き比較試験のデータがなく,長期予後,合併症の比較はできない13)(3a)。なお,RFA は主に経皮的に施行されるが,凍結療法の半数以上が腹腔鏡下で施行されている。

解 説小径腎癌に対する治療が大きく変わりつつある。低侵襲治療として経皮的RFA および凍結療法が行われるようになってきた。

近年画像診断の進歩に伴い小さな腎癌の発見が増加し,腎機能温存療法として腎部分切除術が選択されることが多くなってきた。しかし,全身状態が不良な症例や高齢者では,経皮的RFA や経皮的凍結療法など低侵襲治療が選択される症例が増加している。このような小さな腎癌に対する経皮的局所療法が本当に有効であるのかどうか文献的に明らかにする必要がある。

腎癌に対する経皮的局所治療法としてのRFA は合併症も少なく,小さな腎癌に対する代替療法となり得る。腫瘍が小さく外方に突出する場合は完全壊死が期待できるが,腫瘍が大きく中心部にある場合は再発の危険性が高い。凍結療法についても同等・やや良好な成績である。全身状態が不良な場合や腎摘除術・腎部分切除術を拒否する場合,経皮的RFA および凍結療法は選択可能であるが,長期成績については不明である。

なお,凍結療法は鏡視下でも行われる。現在日本ではRFA,凍結療法ともに保険適用されていない。

検索方法

【PubMed】

(kidney neoplasms AND(Catheter Ablation OR “radio frequency ablation” OR “radiofrequency ablation” OR cryotherapy OR cryosurgery OR cryoablation) AND 2005/01:2009/09[mhda] AND “humans” [MeSH Terms] AND(English[lang] OR Japanese[lang])) NOT(Editorial[ptyp] OR Letter[ptyp])

【医中誌】

(腎臓腫瘍/TH or 腎臓腫瘍/AL or 腎癌/AL) AND((高周波/TH or radiofrequency/AL) and ablation/AL) OR(ラジオ波焼灼術/TH or ラジオ波焼灼術/AL) OR(カテーテル切除術/TH or 高周波アブレーション/AL or カテーテル切除術/AL or カテーテルアブレーション/AL) OR 経皮的局所療法/AL OR(凍結外科/TH or 凍結外科/AL or 寒冷療法/TH or 寒冷療法/AL or cryotherapy/AL or cryosurgery/AL or cryoablation/AL)) AND(LA= 日本語,英語 and PT=会議録除く and IDAT=1995/1/1:2009/9/30)

参考文献

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13) Kutikov A, Kunkle DA, Uzzo RG. Focal therapy for kidney cancer:a systematic review. Curr Opin Urol. 2009;19(2):148-53.(3a)


CQ 16
腎癌転移巣に対する放射線治療は推奨されるか?

アルゴリズムへ


推奨グレード
B
腎癌の脳転移に対して,ガンマナイフ,X 線による定位放射線治療が有効な場合がある。

推奨グレード
B
腎癌の骨転移に対する外照射放射線治療は,疼痛の改善とQOL の改善が認められる。

根 拠腎癌の転移巣に対する放射線治療の有用性を検討した均質なRCT(Randomized Controlled Trial)の報告はない。以下にそれぞれの腎癌の転移巣に対する放射線治療に関して解説する。

Wowra らやShuto らは腎癌の脳転移に対してガンマナイフの有用性を報告している。Wowra らは160 症例の腎癌脳転移症例を対象に合計350 病変に対してガンマナイフを施行し,外来通院で繰り返し行うことが可能で,72%の症例に神経学的な症状の改善が認められ,腎癌脳転移の局所制御率は95%と良好であったとしている1)(3b)。また,Shuto らは69 症例の腎癌脳転移症例を対象に合計314 病変に対してガンマナイフを施行し,腎癌脳転移の局所制御率は83%と良好であったとしている2)(3b)。このことから腎癌の脳転移に対するガンマナイフは,腎癌の脳転移に対する治療戦略の一つと考えられる。しかし,均質なRCT の報告はなく,生存期間の延長への効果は不明である。

腎癌の脳転移に対するX 線による定位放射線治療の有用性も報告されている。Hara ら3)(3b)は18 症例の腎癌脳転移症例に対して,Samlowski ら4)(3b)は32 症例の腎癌脳転移症例71 病変に対してX 線による定位放射線治療を施行し,局所制御は良好(それぞれ局所制御率85%以上)であったと報告している。しかし,いずれもRCT ではなく,エビデンスレベルは高くはない。またTeh らは,腎癌脳転移症例に対し,X 線による定位放射線治療を施行し,その6 カ月後に照射した腫瘍を摘出した病理標本に癌細胞は認められなかったと報告している5)(4)。これも,症例報告であり,エビデンスレベルは低い。腎癌の脳転移に対する全脳照射に関して,Wronskiら6)(3b)は119 症例に対して,Cannadyら7)(3b)は46 症例に対して施行したが,いずれも明らかな有用性は認められなかった。

Lee らやBrinkmann らは腎癌の骨転移に対する放射線治療(外照射)の症状緩和に関する有用性を報告している。24 症例の腎癌骨転移症例を対象に30 Gy/10 fr の外照射放射線治療を施行し,83%の症例に部位特異的な疼痛の改善が,33%の症例にQOL の改善が認められた8)(3b)。Brinkmannらは15 症例の腎癌骨転移症例に対し,免疫化学療法と45〜50 Gyの放射線治療を行い,全例除痛効果が得られたとしている9)(3b)。また,Gerszten らは,38 例の腎癌の有痛性脊椎転移に対しX 線による定位放射線治療を施行し89%に除痛効果が得られたと報告している10)(3b)。また,Kijima らは,腎癌骨転移症例にビスホスホネート製剤であるゾレドロネートと放射線治療を併用することで,放射線治療単独群よりも高い有効率が得られたと報告している11)(3b)

解 説腎癌は通常の放射線治療に対しては感受性が抵いとされている。しかし,1 回線量を増加させれば効果は上がり,特に骨転移などの有症状の転移巣に対しては,QOL の改善を主たる目的として放射線治療が選択されることがある。また,脳転移には,ガンマナイフやX 線による定位放射線治療も行われるようになってきた。そこで,腎癌転移巣に対する放射線治療の有効性・安全性や,QOL を改善し得るかどうかについて明らかにする必要がある。

腎癌転移巣に対する放射線治療に関してはエビデンスレベルは低いが,腎癌の脳転移に対するガンマナイフ,X 線による定位放射線治療など有効な場合があると考えられる。また,腎癌の骨転移に対する外照射放射線治療はQOL の改善に有用であり,免疫療法,ビスホスホネート製剤などとの併用でさらなるQOL の改善が期待できるが,有効性,安全性についてエビデンスレベルの高い研究が必要である。近年では体幹部に対する定位放射線治療も行われるようになり,肺転移などにも定位放射線治療を行い有効であったという報告がある。その他の腎癌転移巣に対する放射線治療に関しても有効であったという報告は散見されるが,エビデンスレベルは低く,今後の研究が待たれる。

検索方法

【PubMed】

kidney neoplasms AND(metastasis OR metastases) AND((gamma knife OR radiosurgery)OR(radiation therapy OR radiotherapy)) AND 2005/01:2009/09[mhda]AND “humans”[MeSH Terms] AND(English[lang] OR Japanese[lang])

【医中誌】

(腎臓腫瘍/TH or 腎臓腫瘍/AL or 腎癌/AL) AND(腫瘍転移/TH or 転移巣/AL or 転 移/AL) AND((放射線療法/TH or 放射線治療/AL or 放射線療法/AL or radiotherapy/AL) OR(放射線外科/TH or 放射線外科/AL or radiosurgery/AL or ガンマナイフ/AL or γナイフ/AL or “gamma knife”/AL)) AND(LA=日本語,英語 and PT=会議録除く and IDAT=1995/1/1:2009/9/30)

参考文献

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CQ 17
進行腎癌に対するインターフェロンα,インターロイキン2 などのサイトカイン単独療法は推奨されるか?

アルゴリズムへ


推奨グレード
B
進行腎癌に対するインターフェロンα単独療法は推奨される。

推奨グレード
B
進行腎癌に対するインターロイキン2 単独療法は推奨される。

根 拠腎癌の転移巣に対するインターフェロンα(IFN-α),インターフェロンγ(IFN-γ)の有用性を検討した均質なRCT(Randomized Controlled Trial)の報告はあるが,インターロイキン2(IL-2)など他のサイトカイン単独療法に関しては均質なRCT の報告はない。以下にそれぞれのサイトカイン単独療法に関して解説する。

腎癌の転移巣に対するIFN-α 単独療法に関する均質なRCT の報告は2 つある12)。1 つはMedical Research Council Renal Cancer Collaborators の報告で,350 症例を対象にIFN-α投与群とメドロキシプロゲステロン投与群の2 群に分けている。近接効果,非進行生存率,全生存率のすべてに関してIFN-α 投与群が有効であった1)(1b)

もう1 つはPyrhonen らの報告で,160 症例を対象にIFN-α,ビンブラスチン(VBL)併用投与群とVBL 単独投与群の2 群に分けている。近接効果,非進行生存率,全生存率のすべてに関してIFN-α,VBL併用投与群が有効であった2)(1b)。以上のことから,進行腎癌に対するIFN-α 単独療法は有効であることが証明された。さらに,これら2 つのRCT を含めたレビューによりIFN-α 単独療法の有効性が示されている3)(2a)。日本においてはNaito らが転移性腎癌と診断された1,463 例を対象として予後因子の検討を行い,IFN-α やIL-2 といった免疫療法が予後改善に寄与していると述べている4)(2b)

腎癌の転移巣に対するIFN-γ 単独療法に関する均質なRCT はGleave らが報告している5)(1b)。197 症例を対象にIFN-γ 投与群とプラセボ投与群の2群に無作為化している。しかし,IFN-γは,近接効果,非進行生存率,全生存率のすべてに関して無効であった。

IL-2 に関しては均質なRCT が行われていないが,第Ⅱ相試験での奏効率は14%で5%のCR があり,CR となった患者および治療後の腫瘍切除によってCR となった患者は長期生存が得られ,治癒の可能性が示唆された6)(4)。このデータによりFDA はIL-2 を承認した。また,Klapper ら7)(4)は高用量IL-2 の奏効率が20%であることを示し,Bukowski ら8)(2c)は,腎癌の転移巣に対するIL-2 単独療法に関する多くの論文をレビューし,その奏効率は約15%であることを示している。ただ,これらの臨床研究で用いられているIL-2 の用量に比較し,日本での保険適用は低用量であり,その有用性のエビデンスレベルは低い。一方,IL-2 の用量に関する均質なRCT も行われ,近接効果に関しては高用量のIL-2 が有用であるが,非進行生存率と全生存率に関しては同等であるとしている910)(1b)

ほかに腎癌の転移巣に対するサイトカイン単独療法としてgranulocyte-macrophage colony-stimulating factor 単独療法の第Ⅱ相試験の報告もあるが,その奏効率は8%と低いものであった11)(4)。また,上記薬剤の中でFDAが承認しているのはIL-2 のみである(http://www.accessdata.fda.gov/scripts/cder/ob/default.cfm)。

解 説これまで日本においては,腎癌の転移巣に対してIFN-α,IL-2 を中心としたサイトカイン療法が一般的に行われてきた。これらのサイトカイン療法が実際に進行腎癌に対して生存率を優位に改善するかどうかについて,文献的に明らかにする必要がある。

腎癌の転移巣に対するIFN-α は,近接効果,非進行生存率,全生存率すべてに関して有効である。しかし,IFN-γは,近接効果,非進行生存率,全生存率すべてに関して無効である。IL-2 に関しては均質なRCT が行われていないが,第Ⅱ相試験での奏効率は14%であった。しかし,日本で保険適用となっている低用量IL-2 のエビデンスレベルは低い。

IFN-α 療法は一部の分子標的薬との比較であるが,CQ21 で記載されているように1st-line therapy において奏効率や非進行生存率で劣るというデータも出てきている。したがって,分子標的治療が広がりつつある現在,IFN-α やIL-2 が奏効する患者背景を明らかにしたうえで,サイトカイン単独療法の今後の位置づけを再検討していく必要がある。

検索方法

【PubMed】

kidney neoplasms AND(interferon OR interleukin) AND(immunotherapy OR immunotherap)AND 2005/01:2009/09[mhda] AND “humans”[MeSH Terms] AND(English[lang] OR Japanese[lang])

【医中誌】

(腎臓腫瘍/TH or 腎臓腫瘍/AL or 腎癌/AL) AND((Interferons/TH or インターフェロン/AL) OR(Interleukins/TH or インターロイキン/AL) OR(Cytokines/TH or サイトカイン/AL)) AND(免疫療法/TH or 免疫療法/AL) AND(LA= 日本語,英語PT= 会議録除く IDAT=1995/1/1:2009/9/30)

参考文献

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CQ 18
進行腎癌に対するサイトカインの併用あるいはサイトカインと分子標的薬との併用は推奨されるか?

アルゴリズムへ


推奨グレード
B
進行腎癌患者に対するインターフェロンα(IFN-α)とインターロイキン2(IL-2)の併用療法は生存期間に差は認められていないが,日本での低用量のIL-2 とIFN-α の併用により原発巣摘除術後の肺転移に対しては高い奏効率が認められ,この範囲においては推奨するに値する。

推奨グレード
B
IFN-αとbevacizumab の併用は奏効率の向上,無増悪生存期間の改善が認められ推奨されるが日本では承認されていない。

推奨グレード
C2
サイトカインと他の分子標的薬との併用については確立したエビデンスはなく,推奨されない。

根 拠進行腎癌患者に対してインターフェロンα(IFN-α),インターロイキン2(IL-2)を中心としたサイトカイン併用療法の有用性について,結論は得られていない。オープン第Ⅱ相試験または症例研究においてIFN-α+IL-2 併用療法により比較的良好な奏効率あるいは生存率が得られた(奏効率20%1)(2b),2年生存率45%,無増悪生存期間中間値6カ月2)(2b),奏効率50%3)(2b))と報告されている。大規模比較試験においては,単独療法に比較してIFN-αとIL-2 併用療法により奏効率の向上(単独6.5%,7.8% vs 併用18.6%)と1 年無病生存率の改善(15%,12% vs 20%)が認められたが生存期間は改善しなかった4)(1b)。一方,同じグループがIntermediate prognosis group にMPA,IL-2,IFN-α,IL-2+IFN-αを比較した比較試験においては奏効率,生存期間共に有意差は認められなかった5)(1b)。また,少数例のRCT(Randomized Controlled Trial)ではIL-2 単独の方が併用療法より奏効率が良好だった(23%vs 9%)6)(1b)。高用量IL-2(60万単位/kg/8 hrs)と低用量IL-2(500万単位/m2/8hrs)+IFN-αの比較試験においては高用量IL-2 単独の奏効率が良好だった(23.2% vs 9.9%)7)(1b)。ただし,日本でのIL-2 の標準投与量は海外に比べて10〜100 分の1 と低用量であることに注意が必要である。わが国では低用量IL-2(70 万単位)皮下注とIFN-α 併用療法により奏効率21.6%,腎摘除術後の肺転移のみの患者では38.7%が報告されている8)(2b)。この試験結果をもとにわが国にて原発巣摘除後の肺転移巣に限った臨床試験が行われ,同様の高い奏効率が検証された9)(2b)。低用量IL-2 は,日本独自の推奨投与量であるが,その副作用の低さは特記すべきであり,IFN-α との併用でも安全性は確認されている。

Cochrane のメタアナリシスではIFN-α+IL-2 併用療法による生存の改善は認められていない10)(1a)。また,2006年のレビュー(日本の試験結果は含まれていない)ではIFN-α,高用量IL-2,低用量IL-2,IL-2+IFN-α の奏効率中央値は9%,21%,9.5%,9.9%であった11)(1a)

IFN-α とIFN-γ の併用についてはわが国にて少数例で奏効率20%程度12,13)(2b)が報告されているが,EORTC で行われた102 例のRCT においてはIFN-α とIFN-γ の併用の方が奏効率4%(IFN-αのみ13%)と低かった14)(1b)

主に血管新生を標的とした分子標的薬剤が腎癌の治療に導入され,サイトカインと分子標的薬剤の併用が試みられている。IFN-α 単独とIFN-α+bevacizumab 併用について2つのRCTが行われている(AVOREN,CALGB90206)15,16)(1b)。結果は両者同様で奏効率,無増悪生存期間の改善が認められたが,生存期間の改善は認められなかった。一方,IFN-α 単独,テムシロリムス単独,IFN-α+テムシロリムスの3 者のRCT においては,奏効率,無増悪生存期間はテムシロリムス単独と併用療法は同等であったが,生存期間については併用療法とIFN-α 単独は同等で,テムシロリムス単独の方が優れていた17)(1b)。IFN-α+ソラフェニブ併用については第Ⅱ相試験にて比較的高い奏効率,無増悪生存期間が報告されているが18,19)(2b),80 例のRCT ではソラフェニブ単独と差はなかった20)(1b)。IFN-α+スニチニブ併用については有害事象のため十分な効果が得られていない21)(2b)。また,IL-2 と分子標的薬の併用については有効な組み合わせは報告されていない。

解 説進行腎癌に対するIFN-α,IL-2 を用いたサイトカイン療法の奏効率は10〜15%程度であるが,この2 剤あるいは他のサイトカイン・分子標的薬との併用療法が試みられている。ここでは併用療法がその奏効率を上げるのか,さらに生存率に寄与する効果が得られるのかを文献的に解説する。

現状では,進行腎癌の治療としてIFN-α とIL-2 をベースとした併用療法は有効性の改善の可能性はあるが,無増悪生存期間,全生存期間への意義のエビデンスはない。その原因として予後因子が関与している可能性があり,腎摘除術後でperformance status が良く,転移部位が肺で数が少なく,かつ転移出現までの期間が長い患者などのサイトカイン療法が効果を示しやすい症例群を選択していくことが必要かもしれない5)(1b)。原発巣摘除術後の肺転移巣に限れば,低用量IL-2 とIFN-α の併用効果は存在するといえる8,9)(2b)。また,欧米の報告はIL-2 の用量が異なる点でそのまま日本のエビデンスにはなりにくいという問題があり注意を要する。

他のサイトカイン併用のエビデンスは乏しい。分子標的薬とサイトカインの併用で効果が改善することが明らかなのはIFN-α とbevacizumab の併用のみであるが,生存期間の延長は証明されず,またbevacizumab 単独との比較はなく,今のところbevacizumab が日本で腎細胞癌に対して承認される見込みはない。なお,抗癌剤の併用については明らかなエビデンスはない。以上よりこれらの併用療法は全体として有効性向上の可能性があるが,有害事象の増加の危険もあり現状ではクリニカルプラクティスで使用すべきとの根拠はない。

検索方法

【PubMed】

kidney neoplasms AND(interferon OR interleukin OR cytokines OR cytokine OR immunotherapy OR immunotherap) AND(combination OR combine OR combination therapy OR combination drug therapy) AND 2005/01:2009/09[mhda] AND“humans” [MeSH Terms] AND(English[lang] OR Japanese[lang]) NOT(Editorial[ptyp] OR Letter[ptyp] OR Case Reports[ptyp])

【医中誌】

(腎臓腫瘍/TH or 腎臓腫瘍/AL or 腎癌/AL) AND(併用/AL or 多剤併用療法/TH or 多剤併用療法/AL) AND((Interferons/TH or インターフェロン/AL) OR(Interleukins/TH or インターロイキン/AL) OR(Cytokines/TH or サイトカイン/AL) OR(免疫療法/TH or 免疫療法/AL)) AND(LA= 日本語, 英語 PT= 会議録除く IDAT=1995/1/1:2009/9/30)

参考文献

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19) Ryan CW, Goldman BH, Lara PN Jr, et al. Sorafenib with interferon alfa-2b as first-line treatment of advanced renal carcinoma:a phaseⅡ study of the Southwest Oncology Group. J Clin Oncol. 2007;25(22):3296-301.(2b)

20) Jonasch E, Corn P, Pagliaro LC, et al. Upfront, randomized, phase 2 trial of sorafenib versus sorafenib and low-dose interferon alfa in patients with advanced renal cell carcinoma:clinical and biomarker analysis. Cancer. 2010;116(1):57-65.(1b)

21) Motzer RJ, Hudes G, Wilding G, et al. PhaseT trial of sunitinib malate plus interferon-alpha for patients with metastatic renal cell carcinoma. Clin Genitourin Cancer. 2009;7(1):28-33.(2b)


CQ 19
腎癌に対する分子標的薬による術前補助療法は推奨されるか?

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推奨グレード
C1
腎癌の原発巣に対する外科的治療を想定した分子標的薬による術前補助療法は安全かつ有効である可能性がある。

根 拠腎癌に対する術前補助療法の有効性・安全性について検討した均質なRCT(Randomized Controlled Trial)はない。以下,腎癌に対する術前補助療法に関して解説する。なお,腎細胞癌は遠隔転移があっても原発巣摘除の適応があるため,他癌種の早期癌における根治を目的とした,いわゆる「ネオアジュバント療法」とは異なる場合が多いことに留意する必要がある。

Jonasch らは淡明細胞型腎細胞癌(淡明細胞癌)と新規に診断され,原発巣が切除可能と判断された転移性腎細胞癌患者50 例に,bevacizumab とelrotinib(23 例)とbevacizumab 単独(27 例)を8 週間投与した。CR+PR は6 例だが23 例で原発巣の縮小を認め,PD となった症例やperformance status(PS)が低下した症例を除いた42例に,腎摘除術を施行した。無増悪生存期間の中央値は11.0 カ月(95%CI:5.6〜15.6 カ月)であった。周術期死亡が2 例あったが分子標的薬との関連は認めず,3 例で創離開を認めたと報告している1)(4)

Cowey らはStage Ⅱ以上の患者30 例(限局性17 例,転移性13 例)に対しソラフェニブの術前投与を行い,中央値33 日間(8〜59 日)投与後,原発巣の縮小(中央値9.6%)と放射線学的な腫瘍内造影効果の減弱(中央値13%)を認めた。RECIST では,2 人がPR,26 人がSD で,PD となった患者はいなかった。ソラフェニブの毒性は予想されたものと同様で,全員が腎摘術施行可能であり,ソラフェニブ投与による手術関連合併症は認められなかった2)(4)

Thomas らは原発巣切除不能腎細胞癌患者あるいは腎部分切除術が不可能な両側腎細胞癌患者19 例に対し,原発巣に対するスニチニブ50 mg/日の術前投与の効果と安全性を評価した。CR 症例はなく,原発巣ではPR3 例(16%),SD7 例(37%),PD9 例(47%),全体の奏効率はPR2 例(11%),SD7 例(37%),PD10 例(53%)であった。観察期間中央値6 カ月(1〜15 カ月)において4 例(21%)が腎摘除術を施行され,5 例が疾患の進行のために死亡した。予期せぬ手術の合併症は認めなかった3)(4)

Hellenthal らは生検により淡明細胞癌と診断された患者20 例に対し,腎摘除術施行前にスニチニブ37.5 mg/日を3 カ月間投与し,20 例中17 例(85%)の患者で腫瘍径が縮小し(中央値-27.9%,-43%〜+23%),15 例でCT 上の腫瘍造影効果が減弱した(HU 変化の中央値-22%,-74%〜+29%)。腫瘍縮小後,cT1b の8 例の患者に対し腹腔鏡下腎摘除術が施行された。スニチニブに関連していると考えられる手術合併症はなかった。また,出血,輸血率,手術時間,合併症などの手術関連パラメーターは同時期にこの試験に参加せずに手術を施行された患者と同等であったと報告している4)(2b)

Powles らは転移性淡明細胞腎癌患者に対し,腎摘除術前にスニチニブを2 コース(19 例),3 コース(37 例)投与する第Ⅱ相試験を行った。RECIST による奏効率は5%,腫瘍縮小率中央値は17%(+14〜-54%)で,局所進行のために手術不能となった症例はなかったが,20%の症例がPD であった。40 例(71%)で腎摘除術が施行され,死亡1 例を含めて手術による合併症は8 例(20%)に認められた。無増悪生存期間中央値は9カ月(95%CI:5〜15カ月)であった5)(4)

Margulis らは腎摘除術あるいは後腹膜再発腎細胞癌切除術施行前に分子標的薬治療を施行した患者44 例(bevacizumab 17 例,ソラフェニブ12 例,スニチニブ15 例)と,術前治療なしで即時切除を行ったmatched control 58 例の安全性につき比較し,術前分子標的薬投与により周術期合併症が増加することはないと報告している6)(2a)

Thomas らは19 例(局所進行癌8 例,局所再発癌6 例,転移性癌3 例,両側腎細胞癌2 例)の患者に対し分子標的薬〔スニチニブ,ソラフェニブ,bevacizumab+インターロイキン-2(IL-2)〕による治療後に腫瘍切除術を施行し,後ろ向きに安全性を評価した。開腹手術18 件,腹腔鏡手術3 件を施行し,周術期合併症発生率は16%であった。1 例で術中出血と肝切除術によるDIC をきたした。後腹膜再発癌と結腸を一塊として切除した1 例で吻合部からの腸内容漏出と膿瘍を認めた。2 例で創部合併症(創部漿液腫,腹壁ヘルニア)を認めたと報告し,腎細胞癌に対する分子標的治療後の腫瘍切除術は,合併症発現率は低いが,重大な合併症が発現する場合もあると述べている7)(4)

サイトカイン療法による術前補助療法の有効性についての報告は少数であるが,Bex らは転移性腎細胞癌患者16 例に対し8 週間インターフェロンα(IFN-α)を投与し,PR3 例,SD5 例に対して腎摘除術を施行し,術後もIFN-αによる維持療法を施行した結果,1 年生存率50%,PFS の中央値は6 カ月であったと報告している。さらにPR だった3 例のうち2 例はCR になった8)(4)。また,Klatte らは術前IL-2投与群および非投与群を比較検討し,癌特異的生存率および無増悪生存率がIL-2 投与群で有意に延長していたと報告している9)(4)

解 説腎癌に対する分子標的治療は原発巣に対しても腫瘍縮小効果が認められることから,術前補助療法による切除不能例の手術適応拡大や単腎症例などに対する腎温存手術の可能性が期待される。しかし,腎細胞癌患者に対する術前補助療法の有効性に関しての報告は,いずれも検討症例数が少なく,エビデンスレベルは低い。その安全性についても,周術期合併症に関しては分子標的薬による術前補助療法未施行例と比べてほとんど差がないとする報告が多いが,創傷治癒遅延や重篤な合併症を認めたとする報告もあり,一定しない。術前補助療法施行中にPD となる症例も存在するため,慎重な患者選択が必要である。現段階において,各々の薬剤で,どのような症例で術前補助療法が有用なのか明確でなく,薬剤の投与量や投与期間,術前休薬期間など検討すべき項目は多い。今後,多数症例での前向き無作為化試験が必要であり,わが国での検証も必要であると考えられる。

検索方法

【PubMed】

kidney neoplasms AND(neoadjuvant OR preoperative chemotherapy OR preoperative immunotherapy OR induction chemotherapy OR induction immunotherapy) AND nephrectomy AND 1995/01:2009/09[mhda] AND “humans”[MeSH Terms] AND(English[lang] OR Japanese[lang]) NOT(Editorial[ptyp] OR Letter[ptyp] OR Case Reports[ptyp])

【医中誌】

(腎臓腫瘍/TH or 腎臓腫瘍/AL or 腎癌/AL) AND(ネオアジュバント/AL or ネオアジュバント療法/TH or ネオアジュバント療法/AL or 術前投与/AL or 術前化学療法/AL or 術前免疫療法/AL or 術前免疫化学療法/AL or 術前インターフェロン/AL or 術前インターロイキン/AL or 術前サイトカイン/AL or 術前IFN/AL or 術前IL/AL)AND(LA= 日本語,英語 PT= 会議録除く IDAT=1995/1/1:2009/9/30)

参考文献

1) Jonasch E, Wood CG, Matin SF, et al. PhaseⅡ presurgical feasibility study of bevacizumab in untreated patients with metastatic renal cell carcinoma. J Clin Oncol. 2009;27(25):4076-81. Epub 2009 Jul 27.(4)

2) Cowey CL, Amin C, Pruthi RS, et al. Neoadjuvant clinical trial with sorafenib for patietnts with stageⅡ or higher renal cell carcinoma. J Clin Oncol. 2010;28(9):1502-7. Epub 2010 Feb 16.(4)

3) Thomas AA, Rini BI, Lane BR, et al. Response of the primary tumor to neoadjuvant sunitinib in patients with advanced renal cell carcinoma. J Urol. 2009;181(2):518-23;discussion 523. Epub 2008 Dec 18.(4)

4) Hellenthal NJ, Underwood W, Penetrante R, et al. Prospective clinical trial of preoperative sunitinib in patients with renal cell carcinoma. J Urol. 2010;184(3):859-64.(2b)

5) Powls T, Kayani I, Blank CU, et al. The safety and efficacy of sunitinib prior to planned nephrectomy in metastatic clear cell renal cancer. J Clin Oncol. 2010;28:15s(suppl;abstr 4603).(4)

6) Margulis V, Matin SF, Tannir N, et al. Surgical morbidity associated with administration of targeted molecular therapies before cytoreductive nephrectomy or resection of locally recurrent renal cell carcinoma. J Urol. 2008 Jul;180(1):94-8. Epub 2008 May 15.(2a)

7) Thomas AA, Rini BI, Stephanson AJ, et al. Surgical resection of renal cell carcinoma after targeted therapy. J Urol. 2009;182(3):881-6. Epub 2009 Jul 17.(4)

8) Bex A, Kerst M, Mallo H, et al. Interferon alfa 2b as medical selection for nephrectomy in patients with synchronous metastatic renal cell carcinoma:a consecutive study. Eur Urol. 2006;49(1):76-81. Epub 2005 Nov 2.(4)

9) Klatte T, Ittenson A, Rohl FW, et al. Preoperative immunomodulation with interleukin-2 in patients with renal cell carcinoma:results of a controlled phase Ⅱ trial. Br J Cancer. 2006;95(9):1167-73. Epub 2006 Oct 10.(4)


CQ 20
StageⅠ,Ⅱの腎癌に対する根治的腎摘除術後の再発予防のために補助サイトカイン療法は推奨されるか?

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推奨グレード
C2
Stage Ⅰ,Ⅱの腎癌に対する腎摘除術後の再発予防のための補助療法として,サイトカイン療法は推奨されない。なぜなら,インターフェロンα(IFN-α),インターロイキン2(IL-2)またはその併用療法,さらにIFN-α+IL-2+5-FU の3 剤併用療法による腎摘除術後の再発予防効果についてはRCT で証明されていないからである1)-3)

根 拠Messing らはpT3-4 またはN+の腎癌に対して,根治的腎摘除術後に補助療法としてインターフェロンα(IFN-α)の3 週間筋肉注射を12 コース(計36 週間)間投与した群と投与せずに経過観察した群あわせて283 例をRandomized Controlled Trial(RCT)にてその再発予防効果を検討したが,再発までの期間および生存期間に関して両群間に有意差を認めなかった1)(1b)。また,PizzocaroらはStage Ⅱ,Ⅲの腎癌患者に対して術後の補助療法としてIFN-α 600 万単位を週3 回計6 カ月間投与した群(123 例)と非投与群(124 例)の5 年全生存率,非再発生存率をRCT にて検討した。その結果,5 年生存率,5 年非再発生存率は,IFN-α 投与群ではそれぞれ66.0%,56.7%であったのに対して,非投与群ではそれぞれ66.5%,67.1%であり,いずれも有意差を認めなかった。pT 別,pN 別にみると,pT 別の5 年全生存率,非再発生存率とIFN-α 投与の有無には相関がなかった。ただし,pN 別における予後をみると,pN2-3 群において投与群が非投与群より予後良好であった2)(1b)。したがって,Stage Ⅰ,Ⅱの腎癌に限っていうと,腎摘除術後の再発予防のための補助療法としてのIFN-α 投与については推奨できない。

Stage Ⅰ,Ⅱの腎癌に対して根治的腎摘除術後の再発予防のためのインターロイキン2(IL-2)投与の有効性を検討したRCT はない。Clark らは全69 例をT3b またはN1,T3c-T4 例,N2-3,M1 症例の4 群に層別化して,IL-2 投与群と非投与群での5 年生存率,5 年非再発生存率を検討したが両者間で有意差を認めなかった3)(2b)。ここでは,投与期間がわずか19 日で1 サイクルのみであったため,有意差を出すには観察期間が短かすぎた可能性がある。

Atzpodien らは術後補助療法として,IFN-α,IL-2,5-FU の3 剤併用療法を行った場合の有効性についてRCT による検討を203 例に対して行っているが,その有用性は認められなかった。すなわち彼らは,pT3b-4N0,pN+,再発巣あるいは転移巣の完全摘除例のいずれかに属する203 例を対象に腎摘除術後のIFN-α,IL-2,5-FU の3 剤併用療法の有効性についてRCT を施行し,2 年,5 年,8 年生存率および非再発生存率を検討した。治療群の2 年,5 年,8 年生存率はそれぞれ81%,58%,58%であったのに対して,非治療群におけるそれは91%,42%,39%であり有意差を認めなかった。また2 年,5 年,8 年の非再発生存率についても治療群で54%,42%,39%であったのに対して,非治療群では62%,49%,49%で有意差を認めなかったとしている4)(1b)。これに対して,Stage Ⅰ,Ⅱの腎癌に対する術後補助療法としてこれら3 剤の併用療法が有効か否かを検討したRCT はない。

したがって,Stage Ⅰ,Ⅱの腎癌に対する腎摘除術後の,サイトカイン療法による再発予防目的のための補助療法は推奨できない。

解 説現在,進行腎癌に対しては抗癌剤の投与は無効で,免疫療法が主に行われてきた。その有効率も20%足らずと決して高いとはいえないため,術後に再発を予防できれば生命予後の改善に寄与できるのではないかと考えられる。したがって,再発予防のためにこれらの免疫療法が有効か否かを明らかにする必要がある。わが国においては,現在腎癌に対して用いられる免疫療法剤としてはIFN とIL-2 があるが,いずれも単独での再発予防効果をRCT によって証明した報告はない。また,これらの薬剤は抗癌剤である5-FU としばしば併用されるが,これら3 剤を併用してのRCT もその有効性を証明することができなかった。したがって,現時点では,限局性腎癌術後の再発予防のためのサイトカイン療法は推奨できない。

検索方法

【PubMed】

kidney neoplasms AND nephrectomy AND(“Chemotherapy, Adjuvant”[Mesh] OR adjuvant therapy OR immunotherapy) AND 2005/01:2009/09[mhda] AND “humans”[MeSH Terms] AND(English[lang] OR Japanese[lang]) NOT(Editorial[ptyp] OR Letter[ptyp] OR Case Reports[ptyp])

【医中誌】

(腎臓腫瘍/TH or 腎臓腫瘍/AL or 腎癌/AL) AND(腎臓摘出術/TH or 腎摘除術/AL or 腎摘出術/AL or 腎臓摘出術/AL) AND(アジュバント/AL or アジュバント化学療法/TH or アジュバント化学療法/AL or 免疫アジュバント/TH or 免疫アジュバント/AL or 補助サイトカイン療法/AL or 補助化学療法/AL or 補助免疫療法/AL) AND(LA= 日本語,英語 PT= 会議録除く IDAT=1995/1/1: 2009/9/30)

参考文献

1) Messing EM, Manola J, Wilding G, et al. Phase Ⅲ study of interferon alfa-NL as adjuvant treatment for resectable renal cell carcinoma:An Eastern Cooperative Oncology Group/Intergroup Trial. J Clin Oncol. 2003;21(7):1214-22.(1b)

2) Pizzocaro G, Piva L, Colavita M, et al. Interferon adjuvant to radical nephrectomy in Robson stage Ⅱ and Ⅲ renal cell carcinoma:A multicentric randomized study. J Clin Oncol. 2001;19(2):425-31.(1b)

3) Clark JI, Atkins MB, Urba WJ, et al. Adjuvant high-dose bolus interleukin-2 for patients with high-risk renal cell carcinoma:a cytokine working group randomized trial. J Clin Oncol. 2003;21(16):3133-40. Epub 2003 Jun 16.(2b)

4) Atzpodien J, Schmitt E, Gertenbach U, et al. Adjuvant treatment with interleukin-2 and interferon-alpha-2a based chemoimmunotherapy in renal cell carcinoma post tumour nephrectomy:results of a prospectively randomised trial of the German Cooperative Renal Carcinoma Chemoimmunotherapy Group(DGCIN). Br J Cancer. 2005;92(5):843-6.(1b)


CQ 21
進行腎癌患者に対する分子標的治療は推奨されるか?

アルゴリズムへ


推奨グレード
B
進行腎細胞癌患者に対して分子標的薬による治療は腫瘍縮小効果,生存期間の延長が期待され,治療法として推奨される。

根 拠腎細胞癌進行症例に対しては,これまでインターフェロンα(IFN-α)やインターロイキン-2(IL-2)を中心としたサイトカイン療法が行われてきたが,腎細胞癌発癌のメカニズムの解明に基づき,多数の分子標的薬が開発され臨床応用されている。ここでは,これら分子標的薬について概説する。

抗Vascular Endothelial Growth Factor(VEGF)抗体であるbevacizumab(国内保険適用外)を用いた,IL-2 投与後に進行した症例を対象とした前向き無作為化試験(高用量,低用量,プラセボの3 群間比較)が行われた。治療開始後4 カ月の無増悪率は,それぞれ,64%,39%,20%であり,高用量群でプラセボに比較して有意差が認められ病勢の進行を抑制することが示された1)(1b)。未治療症例に対するbevacizumabとIFN-αの併用療法は,IFN-α 単独療法を比較した2 つの前向き無作為化試験では併用療法の無増悪生存期間が,それぞれ10.2 カ月(IFN-α 5.4 カ月)2)(1b),8.5 カ月(IFN-α 5.2 カ月)3)(1b)と有意な延長を認めた。

受容体型チロシンキナーゼ阻害薬(receptor-type tyrosin kinase inhibitor:RTK)であるスニチニブは主にVEGF receptor(VEGFR)やPlatelet Derived Growth Factor receptor(PDGFR)を阻害し,血管新生に抑制的に働く。サイトカイン療法後に進行した63 例中PR を25 例に認め,平均無増悪期間は8.7 カ月であった4)(2b)。未治療症例に対するスニチニブのIFN-α との前向き無作為化試験では,PR 以上の効果がIFN-α群6%に比し,スニチニブ群は31%と有意に高かった。また,非進行生存期間はスニチニブ11 カ月,IFN-α 群5カ月と優位な延長を認めた5)(1b)。さらに,全生存期間もスニチニブ26.4カ月,IFN-α群21.8カ月と有意差はないものの延長していた6)(1b)。また,わが国で行われた第Ⅱ相臨床試験は,サイトカイン治療後,進行症例および未治療例に対して行われ,無増悪生存期間の中央値は未治療群12.2 カ月,既治療群10.6 カ月,全生存期間の中央値は未治療群33.1 カ月,既治療群32.5 カ月であった7,8)(2b)

raf-1 およびVEGFR に対する阻害薬であるソラフェニブは,サイトカイン治療後進行症例に対して第Ⅱ相placebo-controlled randomized discontinuation trial(無作為化プラセボ非継続試験)の結果,ソラフェニブでの治療開始12 週後にSD であった症例をソラフェニブとプラセボにランダム化したところ,24 週目の無増悪率が,それぞれ50%と18%とソラフェニブの方が高率であった9)(2b)。また,同じくサイトカイン治療後,進行症例に対して,ソラフェニブとプラセボの前向き無作為化試験では無増悪生存期間が,ソラフェニブとプラセボで,それぞれ5.5 カ月と2.8 カ月と,ソラフェニブの方が良好であった10)(1b)。しかし,未治療群に対するIFN-αとの前向き無作為化試験では,無増悪生存期間は,それぞれ,5.7 カ月と5.6 カ月と有意差を認めなかった11)(2b)。また,わが国で行われた第Ⅱ相臨床試験は,サイトカイン治療後,進行症例に対して行われ,無増悪生存期間の中央値は7.5 カ月であった12)(2b)

mammalian target of rapamycin(mTOR)阻害薬のテムシロリムスについては,Motzer のrisk factor2 つ以上の臓器転移に加えた6 個のrisk factor の内3 つ以上有する,いわゆる未治療の予後不良症例でIFN-αとテムシロリムスの併用,および,それぞれの単独療法群の前向き無作為化試験が行われた。IFN-α単独群,テムシロリムス群,IFN-α およびテムシロリムス併用群の平均生存期間はそれぞれ7.3 カ月,10.9 カ月,8.4 カ月でテムシロリムス単独群で有意に長い生存期間を示した13)(1b)

pazopanib(国内未承認)はスニチニブと同様RTK 阻害薬であるが,未治療症例およびサイトカイン既治療例に対するプラセボと比較した前向き無作為化試験では,無増悪生存期間がpazopanib とプラセボで,それぞれ9.2 カ月と4.2 カ月と延長し,有用性が確認された14)(1b)

このほか,第Ⅱ相臨床試験でエベロリムスでは無増悪生存期間が11カ月15)(2b),axitinib(国内未承認)ではPR 以上の効果が44.2%にみられ,無増悪生存期間が15.7 カ月16)(2b),tivozanib(国内未承認)ではPR以上の効果が25.4%にみられ,第Ⅱ相試験部分淡明細胞癌で腎摘除術を施行した症例では無増悪生存期間が14.8 カ月であった17)(2b)

解 説腎細胞癌の発癌,進展に重要な役割を果たす分子を標的にした分子標的薬は,無増悪生存期間や全生存期間の延長を認めており,臨床的有用性は明らかである。ただし,これらの臨床試験,特に前向き無作為化試験では,無増悪生存期間で対照薬あるいはプラセボとの有意差を認めるものの,全生存期間では差を認めないとの報告が少なくない。また,その有害事象や有用性に関して人種差の存在も示唆されており,安全性,有用性についてわが国での検証が必要である。

検索方法

【PubMed】

kidney neoplasms AND(metastatic OR advanced) AND(molecular target OR sunitinib OR sorafenib OR temsirolimus OR pazopanib OR bevacizumab) AND 2005/01:2009/09[mhda] AND “humans”[MeSH Terms] AND(English[lang] OR Japanese[lang]) NOT(Editorial[ptyp] OR Letter[ptyp] OR Case Reports[ptyp])

【医中誌】

(腎臓腫瘍/TH or 腎臓腫瘍/AL or 腎癌/AL) AND((分子標的治療/TH or 分子標的治療/AL or 分子標的薬/AL) OR(Sunitinib/TH or sunitinib/AL or Sorafenib/TH or sorafenib/AL or Temsirolimus/TH or temsirolimus/AL or Pazopanib/TH or pazopanib/AL or Bevacizumab/TH or bevacizumab/AL)) AND(LA= 日本語,英語 PT= 会議録除く IDAT=1995/1/1: 2009/9/30)

参考文献

1) Yang JC, Haworth L, Sherry RM, et al. A randomized trial of bevacizumab, an anti-vascular endothelial growth factor antibody, for metastatic renal cancer. N Engl J Med. 2003;349(5):427-34.(1b)

2) Escudier B, Pluzanska A, Koralewski P, et al. Bevacizumab plus interferon alfa-2a for treatment of metastatic renal cell carcinoma:a randomised, double-blind phase Ⅲ trial. Lancet. 2007;370(9605):2103-11.(1b)

3) Rini BI, Halabi S, Rosenberg JE, et al. Bevacizumab plus interferon alfa compared with interferon alfa monotherapy in patients with metastatic renal cell carcinoma:CALGB 90206. J Clin Oncol. 2008;26(33):5422-8. Epub 2008 Oct 20.(1b)

4) Motzer RJ, Michaelson MD, Redman BG, et al. Activity of SU11248, a multitargeted inhibitor of vascular endothelial growth factor receptor and platelet-derived growth factor receptor, in patients with metastatic renal cell carcinoma. J Clin Oncol. 2006;24(1):16-24. Epub 2005 Dec 5.(2b)

5) Motzer RJ, Hutson TE, Tomczak P, et al. Sunitinib versus interferon alfa in metastatic renal-cell carcinoma. N Engl J Med. 2007;356(2):115-24.(1b)

6) Motzer RJ, Hutson TE, Tomczak P, et al. Overall survival and updated results for sunitinib compared with interferon alfa in patients with metastatic renal cell carcinoma. J Clin Oncol. 2009;27(22):3584-90.(1b)

7) Uemura H, Shinohara N, Yuasa T, et al. A Phase Ⅱ Study of Sunitinib in Japanese Patients with Metastatic Renal Cell Carcinoma:Insights into the Treatment, Efficacy and Safety. Jpn J Clin Oncol. 2010;40(3):194-202.(2b)

8) Tomita Y, Shinohara N, Yuasa T, et al. Overall Survival and Updated Results from a Phase Ⅱ Study of Sunitinib in Japanese Patients with Metastatic Renal Cell Carcinoma. Jpn J Clin Oncol. 2010;40(12):1166-72.(2b)

9) Ratain MJ, Eisen T, Stadler WM, et al. Phase Ⅱ placebo-controlled randomized discontinuation trial of sorafenib in patients with metastatic renal cell carcinoma. J Clin Oncol. 2006;24(16):2505-12. Epub 2006 Apr 24.(2b)

10) Escudier B, Eisen T, Stadler WM, et al. Sorafenib in advanced clear-cell renal-cell carcinoma. N Engl J Med. 2007;356(2):125-34.(1b)

11) Escudier B, Szczylik C, Hutson TE, et al. Randomized phase Ⅱ trial of first-line treatment with sorafenib versus interferon Alfa-2a in patients with metastatic renal cell carcinoma. J Clin Oncol. 2009;27(8):1280-9.(2b)

12) Akaza H, Tsukamoto T, Murai M, et al. Phase Ⅱ study to investigate the efficacy, safety, and pharmacokinetics of sorafenib in Japanese patients with advanced renal cell carcinoma. Jpn J Clin Oncol. 2007;37(10):755-62.(2b)

13) Hudes G, Carducci M, Tomczak P, et al. Temsirolimus, interferon alfa, or both for advanced renal-cell carcinoma. N Engl J Med. 2007;356(22):2271-81.(1b)

14) Sternberg CN, Davis ID, Mardiak J, et al. Pazopanib in locally advanced or metastatic renal cell carcinoma:results of a randomized phase Ⅲ trial. J Clin Oncol. 2010;28(6):1061-8.(1b)

15) Amato RJ, Jac J, Giessinger S, et al. A phase 2 study with a daily regimen of the oral mTOR inhibitor RAD001(everolimus)in patients with metastatic clear cell renal cell cancer. Cancer. 2009;115(11):2438-46.(2b)

16) Rixe O, Bukowski RM, Michaelson MD, et al. Axitinib treatment in patients with cytokine-refractory metastatic renal-cell cancer:a phase Ⅱ study. Lancet Oncol. 2007;8(11):975-84. Epub 2007 Oct 23.(2b)

17) Bhargava P, Esteves B, Al-Adhami M, et al. Activity of tivozanib(AV-951)in patients with renal cell carcinoma(RCC):Subgroup analysis from a phase Ⅱ randomized discontinuation trial(RDT). J Clin Oncol. 2010;28:15s(suppl;abstr 4599).(2b)


CQ 22
進行腎癌でサイトカイン療法無効例に対し分子標的治療は推奨されるか?

アルゴリズムへ


推奨グレード
A
サイトカイン療法無効例に対して,分子標的治療により無増悪生存期間の延長が期待でき,分子標的薬の投与が推奨される。

根 拠2010 年9 月現在,厚生労働省で認可された分子標的薬は,血管新生阻害薬であるソラフェニブ,スニチニブと,mTOR(mammalian Target of Rapamycin)阻害薬のエベロリムス,テムシロリムスの4 剤である。また,第2 世代の血管新生阻害薬とされるpazopanib とaxitinib が現在,わが国で臨床試験を行っている。

サイトカイン療法不応性腎細胞癌903 例に対してソラフェニブの第Ⅲ相臨床試験(TARGET 試験:Treatment Approaches in Renal cancer Global Evaluation Trial)が行われた1)。無増悪生存期間中央値はソラフェニブ群(400 mg×2 回/日:451 例)が5.5 カ月,プラセボ群(452 例)は2.8 カ月で,ソラフェニブ投与で有意に延長を認めた(P<0.001)1)。10%が副作用により中止となり,13%が投与量の減量となったが,治療の忍容性は概ね良好とされた1)(1b)。わが国で行われた第Ⅱ相臨床試験は,サイトカイン療法不応129 症例に対して行われ,無増悪生存期間の中央値は7.5 カ月であったと報告されている2)(2b)

スニチニブについてはサイトカイン療法不応106 症例に対して第Ⅱ相臨床試験が行われ,36 例(34%)にpartial response(PR)を認め,無増悪生存期間中央値は8.3 カ月であったと報告されている3)(2b)。FDA 承認後に行われたスニチニブの拡大試験は52 カ国,4,564 例に対して行われた4)(2b)。2,974 例(68%)がサイトカイン療法不応であり,321 例(7%)が脳転移を認め,582 例(13%)がPS2 以上,588 例(13%)が非淡明細胞型腎細胞癌,141 例(32%)が65 歳以上といった構成であった。結果は全体での無増悪生存期間中央値は10.9 カ月,全生存期間中央値は18.4 カ月で,初期治療症例とサイトカイン療法不応例での全生存期間もそれぞれ18.4 カ月と18.1 カ月で,ほぼ同等であった4)(2b)。スニチニブのわが国で行われた第Ⅱ相臨床試験は,未治療群25例,サイトカイン療法既治療群26 例の計51 例を対象として行われた5)。無増悪生存期間の中央値は未治療群12.2 カ月,既治療群10.6 カ月,全生存期間の中央値は未治療群33.1 カ月,既治療群32.5カ月であった5,6)(2b)

他にもエベロリムス7)(2b)やテムシロリムス8)(2b),さらに日本で現在臨床試験が進んでいるpazopanib9)(1b)やaxitinib10)(2b)11)(1b),そして欧米ではbevacizumabのサイトカイン無効症例に対する臨床試験12)(1b)も施行され,良好な治療成績と忍容性が報告されている。欧米におけるpazopanib の無作為化二重盲検第Ⅲ相臨床試験では,サイトカイン治療歴のある進行性腎細胞癌症例202 例に対してpazopanib はプラセボと比較して奏効率(CR+PR)が29%vs 3%であり,無増悪生存期間は7.4 カ月vs 4.2 カ月と有意に延長していた9)。サイトカイン抵抗性転移性腎細胞癌患者52 例を対象としたaxitinib の第Ⅱ相臨床試験では,奏効率(CR+PR)が44.2%と高く,効果持続期間中央値23 カ月,無増悪期間中央値15.7 カ月,全生存期間中央値29.9 カ月と高い有効性を示した10)(2b)。続いて,サイトカインを含む一次治療抵抗性腎細胞癌患者723 例(サイトカイン療法後251 例)におけるaxitinib とソラフェニブの第Ⅲ相臨床試験において,axitinib はソラフェニブと比較して無増悪生存期間を6.7 カ月 vs 4.7 カ月(サイトカイン療法後:12.1 カ月 vs 6.5 カ月)と有意に延長した11)(1b)

また化学療法剤の中で経口フッ化ピリミジン剤であるS-1 について,わが国でサイトカイン抵抗性あるいは不耐性の転移性腎細胞癌42 例における第Ⅱ相臨床試験が行われ,奏効率24.4%,無増悪生存期間9.2 カ月という良好な成績が報告されている13)(2b)

解 説いずれの分子標的薬もサイトカイン療法無効例を中心とした対象症例に対する臨床試験から導入され,ある程度の忍容性と一定の無増悪生存期間を示し,次の段階へと進んでおり,サイトカイン療法無効例に対して,治療継続可能な症例には,分子標的薬の導入が推奨される。副作用の忍容性は高く,QOL スコアも上記のすべての薬剤でサイトカイン治療例と比較し,高かったとされたと報告されている。

わが国では2008 年から実臨床にこれらの分子標的薬が導入されてきたが,実際には血液毒性,高血圧,甲状腺機能低下症,心不全,手足皮膚反応,間質性肺炎など,副作用や癌の進行に伴う多彩な症状が観察される。このことを常に念頭に置いて患者を観察し,呼吸器科や循環器科,皮膚科など他科との連携や看護師,薬剤師と綿密に連携・相談しながらチーム医療を構築・実践していくことが肝要である。

また,インターフェロンαやインターロイキン2などサイトカイン療法の位置づけや,転移性腎細胞癌症例において,どの症例に,どの薬剤を,どの順番で使用するのがより理想的なのかについてのエビデンスはなく,今後明らかにして行く必要がある。

検索方法

【PubMed】

kidney neoplasms AND(targeted therapy OR molecular target OR sunitinib OR sorafenib OR temsirolimus OR pazopanib OR bevacizumab) AND(interferon OR interleukin OR cytokines OR cytokine OR immunotherapy OR immunotherap) AND(resistance OR resistant OR refractory) AND 2005/01:2009/09[mhda] AND“humans”[MeSH Terms] AND(English[lang] OR Japanese[lang])

【医中誌】

(腎臓腫瘍/TH or 腎臓腫瘍/AL or 腎癌/AL) AND((Cytokines/TH or サイトカイン/AL) or(Interferons/TH or インターフェロン/AL) or(Interleukins/TH or インターロイキン/AL) or(免疫療法/TH or 免疫療法/AL) or 免疫化学療法/AL) AND((分子標的薬/AL or 分子標的治療/TH or 分子標的治療/AL) OR(Sorafenib/TH or sorafenib/AL or Sunitinib/TH or sunitinib/AL or Pazopanib/TH or pazopanib/AL or Temsirolimus/TH or temsirolimus/AL or Bevacizumab/TH or bevacizumab/AL)) AND(LA= 日本語,英語 PT= 会議録除く IDAT =1995/1/1:2009/9/30)

参考文献

1) Escudier B, Eisen T, Stadler WM, et al; TARGET Study Group. Sorafenib in advanced clear-cell renal-cell carcinoma. N Engl J Med. 2007;356(2):125-34.(1b)

2) Akaza H, Tsukamoto T, Murai M, et al. Phase Ⅱ study to investigate the efficacy, safety, and pharmacokinetics of sorafenib in Japanese patients with advanced renal cell carcinoma. Jpn J Clin Oncol. 2007;37(10):755-62.(2b)

3) Motzer RJ, Rini BI, Bukowski RM, et al. Sunitinib in patients with metastatic renal cell carcinoma. JAMA. 2006;295(21):2516-24.(2b)

4) Gore ME, Szczylik C, Porta C, et al. Safety and efficacy of sunitinib for metastatic renal cell carcinoma:an expanded-access trial. Lancet Oncol. 2009;10(8):757-63.(2b)

5) Uemura H, Shinohara N, Yuasa T, et al. A Phase Ⅱ Study of Sunitinib in Japanese Patients with Metastatic Renal Cell Carcinoma:Insights into the Treatment, Efficacy and Safety. Jpn J Clin Oncol. 2010;40(3):194-202.(2b)

6) Tomita Y, Shinohara N, Yuasa T, et al. Overall survival and updated results from a phase Ⅱ study of sunitinib in Japanese patients with metastatic renal cell carcinoma. Jpn J Clin Oncol. 2010;40(12):1166-72.(2b)

7) Amato RJ, Jac J, Giessinger S, et al. A phase 2 study with a daily regimen of the oral mTOR inhibitor RAD001(everolimus)in patients with metastatic clear cell renal cell cancer. Cancer. 2009;115(11):2438-46.(2b)

8) Atkins MB, Hidalgo M, Stadler WM, et al. Randomized phase Ⅱ study of multiple dose levels of CCI-779, a novel mammalian target of rapamycin kinase inhibitor, in patients with advanced refractory renal cell carcinoma. J Clin Oncol. 2004;22(5):909-18.(2b)

9) Sternberg CN, Davis ID, Mardiak J, et al. Pazopanib in locally advanced or metastatic renal cell carcinoma:results of a randomized phase Ⅲ trial. J Clin Oncol. 2010;28(6):1061-8.(1b)

10) Rixe O, Bukowski RM, Michaelson MD, et al. Axitinib treatment in patients with cytokine-refractory metastatic renal-cell cancer:a phase Ⅱ study. Lancet Oncol. 2007;8(11):975-84. Epub 2007 Oct 23.(2b)

11) Rini BI, Escudier B, Tomczak P, et al. Axitinib versus sorafenib as second-line therapy for metastatic renal cell carcinoma(mRCC):Results of phase Ⅲ AXIS trial. J Clin Oncol 29:2011(suppl;abstr 4503)(1b)

12) Yang JC, Haworth L, Sherry RM, et al. A randomized trial of bevacizumab, an anti-vascular endothelial growth factor antibody, for metastatic renal cancer. N Engl J Med. 2003;349(5):427-34.(1b)

13) Naito S, Eto M, Shinohara N, et al. Multicenter phase Ⅱ trial of S-1 in patients with cytokine-refractory metastatic renal cell carcinoma. J Clin Oncol. 2010;28(34):5022-9.(2b)


CQ 23
進行腎癌で分子標的治療無効例に対し期待される治療はあるのか?

アルゴリズムへ


推奨グレード
B
血管新生阻害薬無効例に対して,mTOR 阻害薬による二次治療で無増悪生存期間延長が期待でき,推奨される。

推奨グレード
C1
他の血管新生阻害薬への変更でも奏効がみられ,推奨される。

根 拠分子標的治療無効例に対する治療については,現時点ではエビデンスレベル1 の報告はエベロリムスのRECORD-1 第Ⅲ相臨床試験のみであり,axitinib の第Ⅱ相臨床試験とスニチニブの小規模な前向き試験,および実臨床からのソラフェニブ/スニチニブの交替療法の後ろ向き試験結果が数件報告されている。

転移性腎細胞癌患者に対する経口mTOR 阻害薬エベロリムスの第Ⅲ相臨床試験は,スニチニブ,ソラフェニブまたは両者による分子標的治療後に進行した転移性腎細胞癌患者410 例がエベロリムス群272 例,プラセボ群138 例と2:1 の割合で割り当てられ,また前々治療としておよそ半数の症例でインターフェロン治療の既往があった1)。結果は,無増悪生存期間の中央値がプラセボ群1.9 カ月に対し,エベロリムス群4.9 カ月で有意に延長された(odds ratio:0.30,P<0.0001)。進行確認時には非盲検化し,crossoverを認めたため,全生存期間の中央値はエベロリムス投与群で14.8 カ月,プラセボ群14.4 カ月で有意差は認めず(P=0.162),QOL についても試験期間を通じて差はなかった(1b)。なお,本臨床試験において本邦からエベロリムス投与群15 例,プラセボ群9 例の計24 例がエントリーされ,サブ解析の結果,無増悪生存期間の中央値はエベロリムス投与群5.75 カ月,プラセボ群3.61 カ月であった2)(2b)

現在,わが国でも臨床試験が行われているaxitinib はソラフェニブ無効転移性腎細胞癌患者62 例に対して第Ⅱ相臨床試験が行われている。前治療としてソラフェニブが全例投与され,さらに38 例(61%)がサイトカイン療法,14 例でスニチニブ投与もされている3)。14 例(23%)にpartial response(PR)を認め,無増悪生存期間の中央値は7.4 カ月,全生存期間の中央値は13.6 カ月と報告されている(2b)。続いて,スニチニブ・テムシロリムス・bevacizumab を含む一次治療抵抗性腎細胞癌患者723 例(スニチニブ後389 例,テムシロリムス後24 例,bevacizumab 後59 例)におけるaxitinib とソラフェニブの第Ⅲ相臨床試験において,axitinib はソラフェニブと比較して無増悪生存期間を6.7 カ月 vs 4.7 カ月(スニチニブ後:4.8 カ月 vs 3.4 カ月)と有意に延長した4)(1b)

スニチニブに関してはbevacizumab 無効,およびソラフェニブ無効例に対する前向き第Ⅱ相試験の報告がされている。bevacizumab 無効61 症例でスニチニブの効果は14 例(23%)がPR,非進行生存期間および全生存期間の中央値はそれぞれ,7.1 カ月と11.0カ月であった5)(2b)。また,ソラフェニブ治療時の効果は7 例(32%)がPR,15 例(68%)がSD でその後PD となった22 症例に対してスニチニブ投与を行い,4 例(18%)のPR を認め,12 例(55%)でSD を認めた。無増悪生存期間および全生存期間の中央値はそれぞれ,5.0 カ月とnot reached,1 年無増悪生存率および全生存率はそれぞれ31%と60%と報告されている6)(2b)。その他のいくつかの後ろ向き研究のソラフェニブとスニチニブの遂次投与の報告でも,ソラフェニブ後のスニチニブは概ね良好な治療成績のようである7-9)(3b)

解 説転移性腎細胞癌患者に対する分子標的治療薬は血管新生阻害薬(multi-kinase inhibitor)とmTOR 阻害薬の2 つに大きく分けられる。さらに前者も個々の阻害受容体のプロフィールが薬剤により特性が異なっていることから,1 つの分子標的治療無効例に対し,次の分子標的治療が期待できることは想像しやすい。この命題に関しては今後も臨床試験として,あるいは実臨床からのさまざまな報告が集積されることが予想される。副作用をマネージメントし,これらの薬剤を用いてQOL を保ち生存期間の延長に寄与できるように,薬剤の選択,順序,変更のタイミングなど,多くのことを明らかにする必要がある。

検索方法

【PubMed】

kidney neoplasms AND(molecular target OR sunitinib OR sorafenib OR temsirolimus OR pazopanib OR bevacizumab OR targeted therapy OR everolimus OR axitinib)AND(resistance OR resistant OR refractory) AND 1995/01:2010/11[mhda] AND“humans”[MeSH Terms] AND(English[lang] OR Japanese[lang])

【医中誌】

(腎臓腫瘍/TH or 腎臓腫瘍/AL or 腎癌/AL) AND((分子標的薬/AL or 分子標的治療/TH or 分子標的治療/AL) OR(Sorafenib/TH or sorafenib/AL or Sunitinib/TH or sunitinib/AL or Everolimus/TH or everolimus/AL or Axitinib/TH or axitinib/AL or Pazopanib/TH or pazopanib/AL or Temsirolimus/TH or temsirolimus/AL or Bevacizumab/TH or bevacizumab/AL)) AND(LA= 日本語,英語 PT= 会議録除く IDAT=1999/1/1:2009/9/30)

参考文献

1) Motzer RJ, Escudier B, Oudard S, et al. RECORD-1 Study Group. Efficacy of everolimus in advanced renal cell carcinoma:a double-blind, randomised, placebo-controlled phase Ⅲ trial. Lancet. 2008;372(9637):449-56.(1b)

2) Tsukamoto T, Shinohara N, Tsuchiya N, et al. Phase Ⅲ trial of everolimus in metastatic renal cell carcinoma:subgroup analysis of Japanese patients from RECORD-1. Jpn J Clin Oncol. 2011;41(1):17-24.(2b)

3) Rini BI, Wilding G, Hudes G, et al. Phase Ⅱ study of axitinib in sorafenib-refractory metastatic renal cell carcinoma. J Clin Oncol. 2009;27(27):4462-8.(2b)

4) Rini BI, Escudier, B, Tomczak P, et al. Axitinib versus sorafenib as second-line therapy for metastatic renal cell carcinoma(mRCC):Results of phase Ⅲ AXIS trial. J Clin Oncol 29:2011(suppl;abstr 4503)(1b)

5) Rini BI, Michaelson MD, Rosenberg JE, et al. Antitumor activity and biomarker analysis of sunitinib in patients with bevacizumab-refractory metastatic renal cell carcinoma. J Clin Oncol. 2008;26(22):3743-8.(2b)

6) Zimmermann K, Schmittel A, Steiner U, et al. Sunitinib treatment for patients with advanced clear-cell renal-cell carcinoma after progression on sorafenib. Oncology. 2009;76(5):350-4.(2b)

7) Eichelberg C, Heuer R, Chun FK, et al. Sequential use of the tyrosine kinase inhibitors sorafenib and sunitinib in metastatic renal cell carcinoma:a retrospective outcome analysis. Eur Urol. 2008;54(6):1373-8.(3b)

8) Sablin MP, Negrier S, Ravaud A, et al. Sequential sorafenib and sunitinib for renal cell carcinoma. J Urol. 2009;182(1):29-34.(3b)

9) Dudek AZ, Zolnierek J, Dham A, et al. Sequential therapy with sorafenib and sunitinib in renal cell carcinoma. Cancer. 2009;115:61-7.(3b)


CQ 24
根治的腎摘除術後のフォローアップの際に推奨されるプロトコールはあるのか?

アルゴリズムへ


推奨グレード
C1
根治的腎摘除術後の再発リスクに応じた適切なフォローアップの検査項目ならびに時期を決定すべきである。

根 拠腎癌に特異的でフォローアップに有効な腫瘍マーカーは現時点で知られていない。そのため腎癌のフォローアップの中心は画像検査ということになる。さらに,根治的腎摘除術後のフォローアップについての検査項目や検査時期に対する検討を行ったRCT(Randomized Control Trial)の報告はない。以下に比較的推奨されるべき根治的腎摘除術後のフォローアッププロトコールに関して概説する。

根治的腎摘除術後のフォローアップを行う主な目的は早期の再発,転移を検出することにある。早期に再発,転移を発見することで例えば再発巣や転移巣に対する摘出手術が可能になったり,免疫療法などの治療効率が上がる可能性もある1)(3a)

フォローアップの頻度を上げることによる生存率への影響に関する報告や,推奨グレードの高い根治的腎摘除術後のフォローアッププロトコールに関する報告はない。

実際の根治的腎摘除術後のフォローアップに関しては,純粋に医学的見地からみた再発,転移のリスクに依存した検査が必要になるが,その検査項目や検査時期に関してはそれに要する費用などの患者負担にも影響される1)(3a)2)(2b)

再発,転移のリスクが低い症例に対しては,診察や一般検査で十分でありCT は基本的に必要ではないとする報告やヨーロッパ泌尿器科学会のガイドラインでは胸部X 線,超音波検査で十分であり,CT は基本的に必要ではないとしている3)(3b)。また,再発,転移のリスクが中程度,または高い症例に対しては,胸部や腹部のCT が必要である。

National Comprehensive Cancer Network(NCCN)のガイドラインによると,根治的腎摘除術後4〜6 カ月目に胸部・腹部のCT 検査を行い,その後は適宜施行する(www.nccn.org)。また,診察,血液生化学検査は術後最初の2 年は6 カ月ごと,術後5 年までは1 年ごとに施行する。

最近のレビューでは以下のように報告されている。腎癌手術後の経過観察は術式に関わらず必要であり,またT ステージに応じて計画されるべきであるがすべてのステージで,問診,理学所見,血液生化学検査,胸部X 線撮影を術後3 年間は半年に1 度,その後は1 年に1 度行う必要がある。それに加え,pT3 の患者では,術後2〜3 年は半年に1 度,それ以降は2〜3 年に1 度ごとに腹部CT を撮影する必要がある。経過観察は生涯行われるべきであり,このためT ステージに加え,予後因子もふまえた経過観察のプロトコールの検討が必要である4)(3a)

Antonelli らは以下に示すUISS(the University of California Los Angeles Integrated Staging System)リスク分類にそった定期経過観察が,局所再発および遠隔転移の検出に有用であるとしている5)(2b)

Low Risk: pT1, G1-2, PS(ECOG)=0
Intermediate Risk: pT1, G1-2, PS(ECOG)>0 or pT1, G3-4, PS(ECOG)=0
pT2, any G, any PS(ECOG)
pT3, G1, PS(ECOG)>0 or pT3, G>1, PS(ECOG)=0
High Risk: pT3, G>1, PS(ECOG)>0
pT4, any G, any PS(ECOG)

UISS リスク分類に応じた術後のフォロー期間を術後0〜5 年・6〜10 年・10 年以上に分け,以下のようなフォローアッププロトコールを推奨している。

Low Risk 群:術後0〜5 年は30 カ月ごとに胸部X 線撮影と1 年ごとに腹部超音波検査を行う。術後6〜10 年は30 カ月ごとに胸部X 線撮影と腹部超音波検査を行う。術後10 年以上は5 年ごとに腹部超音波検査を行う。Intermediate Risk 群:術後0〜5 年は6 カ月ごとに胸腹部CT を行う。術後6〜10 年は1 年ごとに胸部X 線撮影と30 カ月ごとに腹部超音波検査を行う。術後6〜10 年は5 年ごとに腹部超音波検査を行う。
High Risk 群:術後0〜5 年は胸腹部評価を6 カ月ごとに胸腹部CT を行う。術後6〜10 年は1 年ごとに胸部X 線撮影と腹部超音波検査を行う。術後10 年以上は5 年ごとに腹部超音波検査を行う。

以上のように,根治的腎摘除術後の適切なフォローアッププロトコールの詳細については,それぞれの報告者によって再発,転移のリスク分類も含め,少しずつ異なっている3)(3b)4)(3a)5)(2b)6)(3b)7)(2a)

将来的には腫瘍因子,宿主側因子,遺伝子発現も含め,個別化された根治的腎摘除術後のフォローアッププロトコールが必要になると考えられる3)(3b)6)(3b)7)(2a)

解 説再発,転移のリスク分類やそれを応用した根治的腎摘除術後のフォローアッププロトコール作成に関する報告も増加しているが,実際にはその検査項目や検査時期に関して統一されたプロトコールはないのが現状である。このことに関しては今後も文献的に明らかにしていく必要がある。

TNM Staging System は現在も最良の予後予測因子であり,臨床病期を中心とした再発,転移のリスクに合わせた適切なフォローアッププロトコールを決定すべきである7)(2a)

検索方法

【PubMed】

kidney neoplasms AND nephrectomy AND(survival rate OR treatment outcome OR recurrence OR metastasis OR postoperative complications) AND(“follow up” OR follow-up OR followup OR following OR Follow-Up Studies) AND(protocol OR procedure OR guideline OR schedule) AND 2005/01:2009/09[mhda] AND “humans”[MeSH Terms] AND(English[lang] OR Japanese[lang])

【医中誌】

(腎臓腫瘍/TH or 腎臓腫瘍/AL or 腎癌/AL) AND(腎臓摘出術/TH or 腎摘除術/AL or 腎摘出術/AL or 腎臓摘出術/AL) AND(追跡研究/TH or “follow-up studies”/AL or フォローアップ/AL or “follow up”/AL or “follow-up”/AL or 経過観察/AL or 術後管理/TH or 術後管理/AL) AND((生存率/TH or “survival rate”/AL or 生存率/AL or 治療成績/TH or “treatment outcome”/AL or 治療成績/AL) OR(再発/TH or 再発/AL or 腫瘍再発/TH or 腫瘍再発/AL or 転移/AL or 腫瘍転移/TH or 腫瘍転移/AL)OR(術後合併症/TH or 術後合併症/AL)) AND(LA= 日本語,英語 PT= 会議録除く IDAT=1995/1/1: 2009/9/30)

参考文献

1) Liungberg B, Hanbury DC, Kuczyk MA, et al. Guidelines on renal cell carcinoma. In:European Association of Urology Guidelines 2006 edition. Edited by the EAU Guidelines Office. Drukkerij Gelderland, the Netherlands. 2006;23-6.(3a)

2) Siddiqui SA, Frank I, Cheville JC, et al. Postoperative surveillance for renal cell carcinoma:a multifactorial histological subtype specific protocol. BJU Int. 2009;104(6):778-85.(2b)

3) Hafez KS, Novick AC, Campbell SC. Patterns of tumor recurrence and guidelines for followup after nephron sparing surgery for sporadic renal cell carcinoma. J Urol. 1997;157(6):2067-70.(3b)

4) Skolarikos A, Alivizatos G, Laguna P, et al. A review on follow-up strategies for renal cell carcinoma after nephrectomy. Eur Urol. 2007;51(6):1490-500.(3a)

5) Antonelli A, Cozzoli A, Zani D, et al. The follow-up management of non-metastatic renal cell carcinoma:definition of a surveillance protocol. BJU Int. 2007;99(2):296-300.(2b)

6) Dall’Oglio MF, Ribeiro-Filho LA, Antunes AA, et al. Microvascular tumor invasion, tumor size and Fuhrman grade:a pathological triad for prognostic evaluation of renal cell carcinoma. J Urol. 2007;178(2):425-28.(3b)

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