膀胱がん 〜診療ガイドライン

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目次:

Ⅰ.疫学・診断

(京都大学泌尿器科 渡部 淳,西山博之,小川 修)

はじめに

膀胱癌は,膀胱の尿路上皮(移行上皮)粘膜より発生する悪性腫瘍であり,病理組 織学的には,その約90%以上は尿路上皮癌である。その他,扁平上皮癌が数%,腺癌が2%弱を占める1)。膀胱癌の臨床的可視病変の完全特徴として,空間的,時間的多発性があげら れる。すなわち,診断時すでに膀胱内腔において異所性に多発する場合や,内視鏡下 による切除後に膀胱内再発を認める頻度も高い2)。また,膀胱同様尿 路上皮粘膜を有する腎盂・尿管・前立腺部尿道といった他の尿路に病変を合併するこ とも多く,膀胱癌を診断した際には尿路全体をスクリーニングする必要がある3)

1.罹患率・死亡率

わが国の2002年における膀胱癌の年齢調整罹患率(年齢調整罹患率:/10万人/年・基準人口は昭和60年のモデル人口)は,7.6であり,男女別にみると,男性 13.5,女性2.9 と男性において約4倍高頻度に発生している。

年齢調整死亡率(10万人/年,基準人口は昭和60年のモデル人口)は,2005年の集計にて,男女合計で2.2(男性 3.9,女性 1.0)である4)5)

2.危険因子

膀胱発癌の危険因子として,喫煙,職業性発癌物質への暴露,膀胱内の慢性炎症,特定の抗癌剤や放射線治療に伴う二次発癌等の医学的要因があげられている。

(1)喫煙

喫煙は,最も重要な膀胱の発癌因子である。喫煙者は,非喫煙者に比較して2〜4倍, 膀胱癌の発症リスクを高めるとされる6)。しかしながら,喫煙がいかに膀胱発癌に寄与するか,その詳細はいまだ明らかではない。煙草関連の発癌物質として60種類以上の物質が指摘されているが,これらのうち,amino-bipheny などを含むarylamines や活性酸素種が膀胱癌の発生に重要であると考えられている7)。これまでの研究により,喫煙者に発生する膀胱癌は,非喫煙者の場合に比較して,よりサイズが大きく,多発する傾向にあり,また組織学的により高異型度の傾向があることが指摘されている8)。また,日本泌尿器科学会の膀胱癌登録データベースの解析では,喫煙者の膀胱癌の発症は,非喫煙者より約5〜6年早いことが判明した9)

(2)職業性発癌物質への暴露

膀胱癌は,特定の産業従事者が取り扱う化学物質がその発癌に強く寄与することが確認された最初の固形癌である。19世紀,ドイツのRehn により,化学染料中に存在する芳香族アミン類への暴露を原因とする職業性膀胱癌の存在が初めて報告された。現在本邦においても,1972年に施行された労働安全衛生法により,4種類の芳香族アミン類(benzidine,2-naphthylamine,4-aminobiphenyl,4-nitrobiphenyl)の製造,使用,輸入が禁止されている10)。これら4物質のいずれも膀胱発癌の原因となりうることが知られているが,特に benzidineと2-naphtylamine の発癌性が強いとされる10)。これらの2物質は,合成化学染料の原材料であるが,これらの物質を取り扱う染料合成工程に従事した労働者では膀胱発癌のリスクが,一般人口に対して2〜40倍高いと報告されている10)。これら発癌性アミン類により生じる職業性膀胱癌の臨床病理学的特徴として,①若年発生の傾向がある。②high grade,high stageの筋層浸潤癌が多い。③上部尿路再発のリスクが高い。等が指摘されている11)-13)

膀胱発癌リスクが高い染料工業従事者以外の,業種として,皮革工業,ゴム工業などが知られている7)。皮革工業従事者における発癌物質の候補としては,皮革製品の染色や仕上げに用いる工業用染料中に含有される芳香族アミン類が,また,ゴム工業においては,工程で使用される酸化防止剤中に存在する2-naphtylamineが考えられている。

(3)膀胱発癌に影響しうるその他の医学的要因

病理組織学的にみると,膀胱癌の90%は尿路上皮癌(移行上皮癌)であるが,それに扁平上皮癌,腺癌が続く。扁平上皮癌という比較的稀な膀胱癌の原因として,慢性尿路感染症が知られている。エジプト,ナイル川流域の風土病であるビルハルツ住血吸虫症では,骨盤静脈層に寄生した住血吸虫が膀胱壁内に産卵をすることにより慢性炎症を引き起こす。この炎症の持続に伴い,尿路上皮の扁平上皮化生が生じ,扁平上皮癌の発生母地となることが知られている13)14)。この一連の病理学的過程は,膀胱結石や神経因性膀胱に合併した複雑性尿路感染症の症例でも同様に扁平上皮癌の母地になりうる15)

その他,抗癌剤または免疫抑制剤として使用されるシクロフォスファマイドの連用や16),骨盤臓器に対する放射線治療の際に生じる膀胱への被曝が尿路上皮癌の発生要因となりうる17)

3.膀胱癌の診断

(1)症状

膀胱癌が発見される契機となる主な臨床症状は,血尿(無症候性肉眼的血尿,顕微鏡的血尿),膀胱刺激症状(頻尿,排尿時痛,残尿感等)である。特に無症候性肉眼的血尿は,最も頻度の高い症状であり,過去の報告では同症状を主訴とする患者の13〜28%が膀胱癌と診断されている18)19)。一方で,顕微鏡的血尿の背景疾患としての膀胱癌の頻度は高いものではなく,0.4〜6.5%と報告されている20)21)。しかしながら,膀胱癌は高齢者に好発する悪性腫瘍であり,50 歳以上での顕微鏡的血尿症例における膀胱癌の頻度は,若年の症例群に比較して有意に高いとする報告があり注意が必要である 22)。また膀胱刺激症状は,膀胱癌症例の約 3 分の 1 で認められるとされ,膀胱壁内筋層に進展する筋層浸潤癌や,高異型癌細胞が粘膜表層に広がる上皮内癌(CIS)に伴うことが多い 23)。つまり治療に難渋する膀胱炎様症状を有する患者を診た場合,膀胱癌を鑑別診断にあげる必要がある。

(2)初期診断

膀胱癌の確定診断は,膀胱鏡検査や経腹的超音波検査により腫瘍を確認し,後述する経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)により採取した腫瘍組織を病理学的に確認することで確定診断される。

膀胱鏡検査により,腫瘍の肉眼的形態を確認することは,以後の診断治療計画を決定する上で重要な情報をもたらす。内視鏡上,膀胱腫瘍は,腫瘍表面および基部の形態より,乳頭状・非乳頭状,有茎性・広基性に分類される 24)。形態別の頻度は,乳頭状腫瘍約 70%,非乳頭状腫瘍約 20%,平坦型約 4%と報告されている25)。この肉眼的形態は腫瘍の生物学的特性を反映することが多い。例えば乳頭状有茎性腫瘍は粘膜内に限局した高分化癌(筋層非浸潤癌)であることが多く,他方,非乳頭状広基性腫瘍は筋層以上の深部に進展する筋層浸潤癌である頻度が高い 26)

また,超音波検査により膀胱腔内に突出する腫瘤影を確認することも,簡便で有用な検査である。しかし,粘膜面に沿って進展し平坦型の形態をとる上皮内癌(CIS)では有効でなく,さらに膀胱鏡でも非特異的な粘膜発赤を認めるのみであるため,尿細胞診の併施が必須となる 23)

3)病期診断

膀胱癌の存在が確認されれば,引き続き上部尿路腫瘍の有無の評価と病期診断が必要となる。治療方針決定のために,原発巣の膀胱壁内深達度の評価(T staging),リンパ節転移有無の評価(N staging),遠隔転移の有無の評価(M staging)を行う。病期分類としては,UICC による TNM 分類(2002 年)が使用されている 27)。また,わが国においては 2001 年に「膀胱癌取扱い規約第 3 版」が出版されているが,UICCと同じ病期分類を採用している 24)

上部尿路に関しては,経腹的超音波検査,静脈性尿路造影(IVU),腹部 CT により,水腎症の有無や腎盂・尿管における陰影欠損像の有無等の評価が行われる。

T staging において最も重要な点は,膀胱壁内筋層への浸潤の有無である。粘膜下層までの浸潤にとどまる筋層非浸潤癌(Tis,Ta,T1)と,筋層以上まで進展した筋層浸潤癌(T2 -4)では,治療方針が大きく異なるためである。T staging のために有用な検査は,膀胱鏡検査,CT,MRI による画像診断である。膀胱鏡上,乳頭状有茎性の腫瘍は筋層非浸潤癌であることが多く,通常リンパ節や他臓器に転移を認めることは極めて稀である28)。このような腫瘍では,TNM staging のための画像診断は省略することが可能な場合が多い。一方非乳頭状腫瘍,広基性腫瘍の場合筋層浸潤癌である可能性が高く,T staging のためにCT,MRIの施行が必要になり,また転移検索のための精査も施行されるべきである。

T staging のためのCT,MRI検査は膀胱壁外や隣接臓器浸潤の同定に有用であるが,壁内深達度の診断には補助的有用性しかない29)。最終的な T staging のためには,経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)による腫瘍および腫瘍根部を含む膀胱壁の切除と,その壁内進展の病理学的評価が必須であり,診断と治療をかねてほぼ全例に施行される。

膀胱癌の所属リンパ節は,総腸骨動脈分岐部以下の骨盤内リンパ節であり,閉鎖リンパ節,内外腸骨リンパ節が含まれる。所属リンパ節腫大の有無は,膀胱全摘除術に併施されるリンパ節郭清術の範囲の決定や周術期化学療法適応決定に有用な情報であるため,筋層浸潤癌診断時にはCT,MRIによる評価が必要である30)

膀胱癌の他臓器転移の頻度は,剖検例における検討によると,肝臓(38%),肺(36%),骨(27%),副腎(21%),小腸(13%),脳(7%)の順に多い31)32)。M1症例では,根治的膀胱全摘除術の適応外となるため,筋層浸潤癌診断時には,遠隔転移好発臓器における転移の検索が必要である。

【参考文献】

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疫学・診断 CQ

CQ 1  
膀胱癌の一次予防は可能か?
Answer

これまでの疫学的研究からは,禁煙が最も効果のある膀胱癌予防法と考えられる。 乳酸桿菌の一つであるLactobacillus casei strain Shirotaによる再発予防効果が報告されている。その他 ビタミンA,C,E の摂取が予防に有効である可能性があるが,相反する報告もあり今後の追加検証の結果を待つ必要がある。(推奨グレー ドB)

【解 説】

発癌物質への暴露機会を減少させること,あるいは,発癌物質の代謝経路に作用しうる物質を食物として摂取することで,癌の発症を予防する試み(一次予防)が,膀胱癌においてもなされている。すでに臨床レベルで検証が行われているものとして,乳酸桿菌1)2)およびビタミンA,C,E3)-5)の摂取がある。乳酸桿菌の一つであるLactobacillus casei strain Shirotaによる再発予防効果が報告されている1)2)。いずれの物質に関しても,初期の報告では癌の発症頻度,あるいは疾患特異的死亡率を減少させるとする肯定的結果が示されたが,その後の追試において相反する報告が多く5)-7),現在までのところ結論が得られていない。一方,動物実験の結果や症例・対照研究の結果より,膀胱発癌の予防に寄与しうる物質として,イソフラボン,リコペン,セレニウムなどがあげられている8)。また,薬剤としては,フェナセチンを除く非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)摂取が,膀胱発癌の予防に有効である可能性が,いくつかの症例・対照研究において示唆されている9)

後述するように,多くの疫学的研究により喫煙と膀胱発癌の強い因果関係10)が示されているが,禁煙により膀胱発癌リスクを大幅に減少させる可能性が報告11)されている。

【参考文献】

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11) Chen CH, Shun CT, Huang KH, et al. Stopping smoking might reducetumour recurrence in nonmuscle-invasive bladder cancer. BJU Int.2007;100:281-6.


CQ 2  
喫煙と膀胱発癌は関係があるか?
Answer

呼吸器癌ほどではないが,喫煙習慣と膀胱癌罹患率には強い相関が認められることから,喫煙は膀胱癌の一因であると考えられている。(推奨グレー ドA)

【解 説】

喫煙により膀胱癌の罹患リスクは,非喫煙者に対して2〜4倍増加する。また,疾患特異的死亡率においても,喫煙者は非喫煙者に対して約2倍高いとされる。喫煙と膀胱発癌に関して,WHOの国際癌研究機関(IARC)により,欧州における11のcase-control study の meta-analysis が報告されているが,喫煙の期間,一日あたりの喫煙本数と発症リスクの増加は正の相関関係を認めている。この解析では喫煙期間と発症リスクの関係については,男性の場合20年間の喫煙で発症リスクは非喫煙者の約2倍程度であるが,60年間の喫煙により6倍にまで増加すると報告している。また一日あたりの喫煙本数については,15〜20本までは本数の増加に応じて発症リスクは4.5倍程度まで増加するが,それ以上の本数ではリスク増加は認められなかったとしている。一方で,喫煙の停止は有意に発症リスクを低下させ,1〜4年の禁煙により約30%程度,また25年の禁煙により約60%程度の発症リスク低下が観察されたとしている1)2)

2006年には欧州より多施設前向き研究による喫煙と膀胱発癌の検証結果が報告された。これによると喫煙の継続者および喫煙歴のある者の膀胱癌発症率は,非喫煙者に比較して,3.96,2.25倍であった。また,喫煙の開始時期,喫煙期間,一日の喫煙本数いずれにおいても発症率の増加と正の相関を示し,喫煙と膀胱発癌の強い相関が報告されている3)。日本泌尿器科学会の膀胱癌登録のデータ解析では,男女とも喫煙により膀胱癌の発症を約5〜6年早めることが指摘された4)

【参考文献】

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4) Hinotsu S, Akaza H, Miki T, et al.;The Japanese Urological Association.Bladder cancer develops 6 years earlier in current smokers:Analysis ofbladder cancer registry data collected by the cancer registration committee of the Japanese Urological Association. Int J Urol. 2008;Nov 27.


CQ 3  
膀胱癌のスクリーニングに有用な尿中マーカーはあるか?
Answer

膀胱癌の罹患率がそれほど高くないこと等から,一般検診における膀胱癌スクリーニングの有効性については否定的見解が多い。喫煙歴のある高齢者や,職業性発癌物質暴露既往歴を有する人など,いわゆる高リスク群に対象を限定した場合は,検尿および尿細胞診の年一回程度の施行が最も効率がよいスクリーニング法と考えられる。(推奨グレー ドC)

【解 説】

膀胱癌は,その発症頻度が比較的低いこと,前立腺癌におけるPSAのような有効なスクリーニングマーカーがないことなどから,現在のところ一般人口を対象とした検診スクリーニングは施行されていない。これまで,検診スクリーニングにおける有効性が十分に検討されたマーカーは,尿潜血試験紙法のみである。潜血反応検査を単回検査のみ施行した場合,膀胱癌の診断率の増加は認められないものの,複数回検査を施行することで高異型度癌を早期診断しうる可能性が示唆されている1)2)。これは膀胱癌に伴う血尿が持続性であることよりも,間欠性であることが理由であると考えられている。一般人口における尿潜血試験紙法を用いた反復スクリーニングの有用性については,米国および英国より大規模研究の報告がある3)4)。いずれの研究においても,参加者の約20%に血尿が認められ,その血尿陽性患者の6〜8%で膀胱癌が発見されたとしている。米国の研究では9年のフォローアップにて膀胱癌による死亡者を認めなかったことより,本法における膀胱癌スクリーニングは有効であると結論づけている。

尿細胞診検査は,尿中に排出される尿路上皮剥離細胞の異型度を病理学的に診断する方法である。その感度は40〜60%,特異度は90〜100%と報告されているが,高分化な筋層非浸潤癌の検出能の低さがその低感度の要因となっている5)。このため一般人口を対象とした検診の有用性に関する報告はないものの,職業性発癌物質暴露者など,高異型度腫瘍を好発する高リスク集団における検診手段としての有用性が示唆されている6)

近年の分子生物学の進歩に伴い,膀胱癌関連分子に注目した新規分子マーカーの開発が進んでおり,わが国でもNuclear Matrix Protein 22(NMP22)7)8), BladderTumor Antigen test(BTA test)9)などが保険適応内となっている。NMP22は癌細胞でその発現が亢進しているNuclear mitotic apparatus protein の一つであり,細胞死に伴い細胞外に放出される。この蛋白をELISA法で検出するのがNMP22アッセイである。一方BTAは,膀胱癌細胞が上皮基底膜に浸潤する際尿中に放出される基底膜成分複合体を検出する方法である10)。これらの新規分子マーカーの感度は,NMP22 で32〜92%,BTA testでは 53〜89%,また特異度はNMP22で51〜94%,BTAで53〜89% と報告されている。すなわち低異型腫瘍でも尿細胞診に比較して若干高い感度を示すが,肉眼的血尿,尿路結石,尿路感染症を有する症例で偽陽性率が高いという問題も有しており,まだ診断マーカーとして広く普及するには至っていない11)-13)

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CQ 4  
膀胱癌の(病期)診断に有用な画像検査はなにか?
Answer

臨床的に筋層浸潤癌を疑う場合,骨盤部CTやMRI検査はT stagingのために 必要である。膀胱癌の転移好発部位はリンパ節,肝,肺であるため N, M staging のために胸部,上腹部CTは有用である。(推奨グレー ドB)

【解 説】

経腹的超音波検査は初期診断において簡便で有用な検査である。しかしながら,膀胱腔内の観察をするためには,膀胱内に十分蓄尿をさせることが必要であり,また腫瘍の直径や発生部位によっては診断が困難であることがありうる。Ozdenらによると,腫瘍径が5mm以下あるいは膀胱前壁下部に発生した腫瘍の超音波診断は困難であることが多いと報告している1)。一方で経腹的超音波検査は,腫瘍の Tstaging には有効でない。

静脈性尿路造影(IVU)は,膀胱癌診断時に施行される場合が多いが,病期診断における必要性については疑問視する意見も多い2)。上部尿路に発生した尿路上皮癌の合併の除外に有用であるが,膀胱癌診断時における上部尿路腫瘍の合併頻度が0.3〜2.3%程度であることから,全症例に行う必要はないと考えられる3)4)。ただし膀胱鏡上明らかな病変を認めないが,尿細胞診にて陽性を示す症例等においては必須であろう。また,水腎症を呈する症例では,膀胱壁尿管口付近における筋層浸潤を認める頻度が高く,補助的診断法としては有用である。

CTおよび MRIにおける原発巣の病期診断(T staging)における正診率は決して高くはないが,これは主に膀胱壁内浸潤の評価が困難であるためである5)。一方膀胱壁外への浸潤の評価や,リンパ節転移の有無(N staging)の診断において,CT,MRIは有用であり6)筋層浸潤癌を疑う腫瘍を認めた場合はTURBTに先立ち施行される必要がある。またCT,MRI検査時においても超音波検査同様,被験者に膀胱内に蓄尿をさせることがより正確な T staging には必要である。CT検査の際には,膀胱内にオリーブ油を注入した上で撮影を行うことも有用である(筋層浸潤癌の T および N staging に関する画像診断の有用性については,Ⅳ.StageⅡ(T2a,bNOMO)および StageⅢ(T3a,bNOMO)の診断と治療を参照)。

膀胱癌の遠隔転移の好発部位として,遠隔リンパ節,肺,肝臓があげられる。すなわち,筋層浸潤癌における遠隔転移診断(M staging)のためには,胸部・腹部CT,胸部単純X線検査が必要である。

【参考文献】

1) Ozden E, Turgut AT, Turkolmez K, et al. Effect of bladder carcinomalocation on detection rates by ultrasonography and computed tomography. Urology. 2007;69:889-92.

2) Herranz-Amo F, Diez-Cordero JM, Verdu-Tartajo F, et al. Need for intravenous urography in patients with primary transitional xarcinoma of thebladder? Eur urol. 1999;36:221-4.

3) Yousem DM, Gatewood OM, Goldman SM, et al. Synchronous and metachronus transitional cell carcinoma of the urinary tract:prevalence, incidence, and radiographic detection. Radiology. 1998;167:613-8.

4) Goessl C, Knispel HH, Miller K, et al. Is routine excretory urographynecessary at first diagnosis of bladder cancer? J Urol. 1997;157:480-1.

5) Paik ML, Scolieri MJ, Brown SL, et al. Limitations of computerized tomography in staging invasive bladder cancer before radical cystectomy.J Urol. 2000;163:1693-6.

6) Setty BN, Holalkere NS, Sahani DV, et al. State-of-the-art Cross-Sectionalimaging in bladder cancer. Curr Probl Diagn Radiol. 2007;36:83-96.


Ⅱ.筋層非浸潤性膀胱癌の治療

(浜松医科大学泌尿器科 大園誠一郎,古瀬 洋)

総  論

筋層非浸潤性膀胱癌(non-muscle invasive bladder cancer)は,未治療膀胱癌の約70%を占め,基本的に初期治療として経尿道的切除術(Transurethral resectionof the bladder tumor:TURBT)による膀胱温存を目指した治療方針がとられる。しかし,TURBTで完全切除が困難な腫瘍に対する治療(抗腫瘍)目的,あるいは術後の再発予防目的で,種々の抗癌剤やBCGの膀胱内注入療法が行われる。すなわち,筋層非浸潤性膀胱癌の治療上の最大の問題点は,TURBT後に膀胱内への腫瘍再発(recurrence)および再発腫瘍が筋層浸潤性癌になったり上部尿路癌が発生したりするなどの進展(progression)がみられることで,この再発と進展を可能な限り抑制することが重要課題である。

そのためには,まずTURBTで腫瘍の完全切除が要求され,もし腫瘍の残存が疑われる場合には2nd TURBT(re-TURBT)も推奨されている。その上で,腫瘍の臨床的ならびに病理学的因子から,再発と進展を予知し,術後の治療戦略を立てることが必要で,現在,筋層非浸潤性膀胱癌のリスク分類がいくつか試みられている。

1.筋層非浸潤性膀胱癌の深達度と異型度分類

「膀胱癌取扱い規約(第3版)」1)による膀胱癌の深達度は,筋層非浸潤性膀胱癌にはTNM分類のTis(上皮内癌),Ta(浸潤なし)ならびにT1(粘膜下結合組織までの浸潤)が含まれる。通常,筋層非浸潤性癌の場合は,リンパ節および遠隔転移はほとんどみられない。異型度分類は同規約によると,G1(細胞異型度,構造異型度とも1のもの),G2(細胞異型度,構造異型度の少なくとも一方が2であるもの),G3(細胞異型度,構造異型度の少なくとも一方が3であるもの)の3段階に分けられている。しかし,海外における乳頭状病変の異型度は,1973年版のWHOによる異型度分類のG1を新たな概念である低悪性度乳頭状尿路上皮新生物(PUNLMP;PapillaryUrothelial Neoplasm of Low Malignant Potential)とlow grade癌に分割し,G2をlow grade癌とhigh grade癌に,G3をすべてhigh grade癌に分類されている2)。この提唱は,WHO/ISUPによる協議の結果,変遷を経ての結果であり,特に海外のリスク分類をみる場合にはlow grade癌とhigh grade癌の用語が使用されているので注意を要する。しかし,海外でも古い文献は旧異型度分類のG1-G3が用いられており,最近の研究でもPUNLMPとlow gradeがうまく分離できていない問題なども指摘されており,その解釈には病理の分野でも議論が残されているようである。

 EAU ガイドラインの筋層非浸潤性膀胱癌のスコア化
因子   再発スコア 進展スコア
腫瘍数 単発 0 0
  2-7 個 3 3
  8 個以上 6 3
腫瘍サイズ < 3cm 0 0
  ≧ 3cm 3 3
再発歴 初発 0 0
  ≦ 1 再発 / 年 2 2
  > 1 再発 / 年 4 2
T因子 Ta 0 0
  T1 1 4
併発 CIS なし 0 0
  あり 1 6
異型度(1973WHO) G1 0 0
  G2 1 0
  G3 2 5
合計スコア   0-17 0-23

2.筋層非浸潤性膀胱癌のリスク分類と治療指針

筋層非浸潤性膀胱癌の再発と進展のリスク分類に用いられる具体的な因子は,前述の病理学的深達度と異型度ならびに併発 CIS の有無に加えて,臨床的因子である再発頻度(初発・再発と再発間隔),腫瘍数,腫瘍サイズなどが用いられている。EAUのガイドライン 3)によるリスク分類では,上記 6 項目の各因子別に再発スコアと進展スコアが定められており,その合計スコアによってリスクが決定される()。すなわち,再発リスクは再発スコア値 0 が低リスク,スコア値 1-9 が中リスク,スコア値 10-17 が高リスクとされている。一方,進展リスクは進展スコア値 0 が低リスク,スコア値 2-6 が中リスク,スコア値 7-23 が高リスクとされている。また,実際に再発率と進展率を推定するような試みもなされており,このスコア化により,TURBT 後1 〜 5 年間の再発率と進展率が自動計算できるようになっている 4)5)。本システムはEORTC が過去に行った 7 つのトライアルに登録されたデータから作成されたものである。

EAU の本リスク分類に基づく治療指針としては,低再発および低進展リスク群に対しては,TURBT 術後の抗癌剤即時膀胱内単回注入が,中〜高再発および中進展リスク群に対しては,抗癌剤即時膀胱内注入および追加抗癌剤注入あるいは BCG 膀胱内注入(維持注入を少なくとも 1 年)が,高進展リスク群に対しては,BCG 膀胱内注入(維持注入を少なくとも 1 年)あるいは膀胱全摘除術の選択がそれぞれのオプションとして推奨されている。

以上,EAU のガイドライン 5)を要約すると,TURBT 後の抗癌剤即時注入は再発率抑制の観点からすべての再発リスク群に推奨されている。しかし,追加注入についてはリスク群別に述べられており,低リスク群では即時注入のみに留め,中リスク群ではさらなる追加注入が必要とされている。しかし,抗癌剤注入については,その注入薬剤,注入量(注入濃度)と注入期間,回数,維持注入の有無など明確なコンセンサスは得られていない。また,高進展リスク群に対するBCG注入と膀胱全摘除術の治療法選択にあたっては,生命予後に大きく影響することを念頭に置く必要がある反面,その後の患者のQOLが大きく影響されることから,適応に関しては十分な検討を要する。

一方,米国NCCNのガイドライン6)によるリスク分類は,病理学的因子を中心に行われており,Ta/low grade群,Ta/high grade群,T1/low grade群,T1/highgrade群,Tis群に分類されている。

本リスク分類に基づく治療指針は,Ta/low grade群では,TURBTのみによる経過観察あるいは術直後の抗癌剤単回注入が推奨されており,これには免疫療法(BCG)でないことと術後24時間以内と条件付けし,Ta/high grade群では,経過観察,BCG注入療法,抗癌剤(NCCNガイドラインではMMCと規定されている)注入としている。T1/low grade群,T1/high grade群では,まず2nd TURBTを行うか,high grade群には全摘術を推奨し,2nd TURBTにて残存腫瘍がある場合はBCG注入または全摘術,残存腫瘍がない場合はBCG注入またはMMC注入を推奨している。なお,TisにはすべてBCG注入としている。次いで,再発腫瘍にも細かい設定があり,これらの高リスク群にはBCGが優先され,さらに効果が示された場合はBCG維持療法を,無効例には全摘術が推奨されている。

以上,NCCNガイドラインはEAUに比較すると,病理学的因子を重要視して簡単にみえるものの,治療指針が深達度と異型度で細かく細分化されているのが特徴といえる。基本的には,EAUの低リスク群に相当する治療は抗癌剤即時単回注入で同様であるが,中リスク以上はBCG注入あるいは全摘術が行われることと,高リスク群の一部を除けばMMCのオプションも含まれるところが相違点と考えられる。

そこで,日本のガイドラインとして筋層非浸潤性膀胱癌のリスク分類を考える場合,欧米との違いを明確にして独自の考え方を提唱するか,あるいは国際比較の観点からいずれかの一方を踏襲するかについては議論のあるところである。そこで,海外とある程度の整合性を取りながら考えると,低リスク群は,初発,単発,サイズが3cm未満,Ta,low grade,併発CISなしの症例と規定し,逆に高リスク群は,T1,high grade,あるいはCIS(併発CISも含む),多発性,再発性とすることにした。したがって,この両者以外を中リスク群と規定すると,すなわちTa-1,low grade,併発CISがなく,多発性あるいはサイズが3cm以上などとなる。なお,Ta,highgradeがどれにも属さず残る形になるが,実際の臨床上ではごく稀であり,もし遭遇した場合には,その他の臨床的因子の有無を含めて総合的に判断すべきである。

以上のリスク分類案に基づいて,本ガイドラインでは,以下のCQを進めることにするが,海外の文献が多く引用されている以上,若干の差違が生じることはやむを得ない。いずれにせよ,国内で筋層非浸潤性膀胱癌に関する新たなリスク分類を提唱すべきかもしれないが,それにはEAUに準じて過去の国内における多数のRCTの結果から日本人のデータに基づくリスクの設定作業が必要となり,今後の検討課題としたい。

最後に,リスク分類による基本的な治療指針であるが,低リスク群には抗癌剤即時単回注入,中リスク群には抗癌剤あるいはBCGのいずれかの注入,高リスク群にはBCG注入あるいは膀胱全摘除術の選択があげられるが,詳細なオプションは後述のCQを参照されたい。なお,使用薬剤であるが,米国ではMMCが頻用されているのに対し,欧州ではアントラサイクリン系抗癌剤の膀胱内注入の研究が多く実施されており,日本でも欧州と同様に行われていたことが本ガイドラインのエビデンスになっている。一方,BCGについては,海外でエビデンスの豊富なコンノート株とともに,日本独特の日本株も存在し,その使用経験も日本では十分にあるが7)8),海外では必然的に報告がなく,これらの点も日本の特徴である。

【参考文献】

1) 日本泌尿器科学会・日本病理学会編.泌尿器科・病理 膀胱癌取扱い規約.(第3版),金原出版株式会社,東京,2001.

2) Epstein JI, Amin MB, Reuter VR, et al. The World Health Organization/International Society of Urological Pathology consensus classifi cation ofurothelial(transitional cell) neoplasms of the urinary bladder. BladderConsensus Conference Committee. Am J Surg Pathol. 1998;22(12):1435-48.

3) http://www.uroweb.org/fileadmin/tx_eauguidelines/2009/Full/TaT1_BC.pdf

4) http://www.eortc.be/tools/bladdercalculator/

5) Sylvester RJ, Van der Maijden APM, Oosterlinck W, et al. PredictingRecurrence and Progression in Individual Patients with Stage Ta T1Bladder Cancer Using EORTC Risk Tables:A Combined Analysis of2596 Patients from Seven EORTC Trials. Eur Urol. 2006;49:466-77.

6) http://www.nccn.org/index.asp

7) Akaza H, Koiso K, Ozono S, et al. PMCJ-9 Study Group in Japan. A clinical study of PMCJ-9(Bacillus Calmette-Gurin Connaught strain) treatment of superfi cial bladder cancer and carcinoma in situ of the bladder.Jpn J Clin Oncol. 2003;33(8):382-90.

8) Akaza H, Hinotsu S, Aso Y, et al. Bacillus Calmette-Gurin treatment ofexisting papillary bladder cancer and carcinoma in situ of the bladder.Four-year results. The Bladder Cancer BCG Study Group. Cancer. 1995;75(2):552-9.


筋層非浸潤性膀胱癌の治療 CQ

CQ 1  
TURBTはどこまで切除するのがよいか?
Answer

TURBTにおいては,可視的腫瘍を可能な限りすべて切除することが推奨される。切除切片に筋層が含まれ,そこに癌細胞のないことが確認されなければ,筋層非浸潤性膀胱癌と診断できない。また,腫瘍周辺部位の検索も必要である。(推奨グレー ドA)

【解 説】

筋層非浸潤性膀胱癌のTURBTの目標は,正確なstage診断を得るとともに,すべての可視的病変の切除である1)。その達成のため,諸家により種々の切除方法が紹介されているが2)3),基本的には腫瘍の大きさやその発育形態によって適宜切除方法を変える必要がある。

サイズが1cm未満,有茎性で,一見してTa,low gradeと判断される腫瘍では,一塊にして腫瘍切除が可能である。この場合,腫瘍底部の正常組織がサンプリングされていれば病理診断には十分である1) 2)。一方,サイズが大きく,外観も結節状,広基性,潰瘍形成などhigh gradeあるいは浸潤が疑われる腫瘍では,この切除では不十分である。筋層非浸潤性膀胱癌の診断には,筋層組織内に癌の浸潤がないことの確認が必須であり,筋層組織がサンプリングされていない場合,understagingが高率に生じてしまう4)。したがって,可視的病変を切除した後に,筋層および切除領域の周囲組織がサンプリングされるように切除することが重要である1)-3)5)

【参考文献】

1) http://www.uroweb.org/fileadmin/tx_eauguidelines/2009/Full/TaT1_BC.pdf

2) Shelfo SW, Brady JD, Soloway MS. Transurethral resection of bladder cancer. The mainstay of treatment Atlas of the Urologic Clinics of North America. 1997;5 (2):1-14.

3) Ozono S, Hinotsu S, Tabata S, et al.;Nara Uro-Oncology Research Group. Treated natural history of superficial bladder cancer. Jpn J Clin Oncol. 2001;31 (11):536-40.

4) Mehrsai A, Mansoori D, Taheri Mahmoudi M, et al. Comparison between Clinical and Pathologic Staging in Patients with Bladder Cancer. Urol J. 2004;1(2):85-9.

5) http://www.nccn.org/index.asp


CQ 2  
TURBT時に前立腺部尿道を含めたランダム生検は推奨されるか?
Answer

CISの随伴が疑われる場合,TURBT時にランダム生検は推奨される。(推奨グレー ドA)腫瘍が三角部や膀胱頸部にある場合,多発腫瘍の場合などでは,前立腺部尿道の生検も推奨される。(推奨グレー ドB)

【解 説】

TURBT時に正常にみえる粘膜部位から生検を行う,いわゆるランダム生検の意義については以前より議論されている1)-3)。しかし,その是非については,主腫瘍のリスク分類によって異なる。

EAUガイドラインでは,TaT1腫瘍においてルーチンには推奨しない立場を取っている4)。特に,低リスク腫瘍ではランダム生検により悪性所見が検出される頻度は1.5%と極めて低く2),術後膀注療法の薬剤選択がランダム生検結果に影響されないことがその根拠となっている。しかし,中・高リスク腫瘍ではその頻度が11.6%となり2),EAUガイドラインでも尿細胞診陽性例や非乳頭状腫瘍の場合,ランダム生検を行うべきとしている4)。また,NCCNガイドラインでも,CISではランダム生検を推奨する立場を取っている5)

一方,前立腺部尿道に関しては,腫瘍が三角部あるいは膀胱頸部に存在する場合,CISがある場合,多発性腫瘍の場合などで前立腺部尿道に癌が存在する可能性が高くなるとされており,適応と考えられる6)7)。海外においては,このような症例のうち細胞診陽性例や前立腺部尿道が肉眼的に異常を認める例では前立腺部尿道生検を推奨しており4),またCISの場合も推奨している5)。さらに,前立腺部尿道生検の方法に関しては,TURBT生検が推奨されており4)8),生検部位に関しては膀胱尿道全摘術標本の詳細な検索結果から,癌の浸潤が高頻度に認められた精阜脇の5時と7時の部位からの組織採取を奨める報告もある9)

【参考文献】

1) Kiemeney LA, Witjes JA, Heijbroek RP, et al. Should random urothelial biopsies be taken from patients with primary superficial bladder cancer? A decision analysis. Members of the Dutch South-East Co-Operative Urological Group. Br J Urol. 1994;73 (2):164-71.

2) van der Meijden A, Oosterlinck W, Brausi M, et al. Significance of bladder biopsies in Ta,T1 bladder tumors:a report of the EORTC Genito-Urinary Tract Cancer Cooperative Group. EORTC-GU Group Superfi cial Bladder Committee. Eur Urol. 1999;35:267-71.

3) May F, Treiber U, Hartung R, et al. Significance of random bladder biopsies in superfi cial bladder cancer. Eur Urol. 2003;44 (1):47-50.

4) http://www.uroweb.org/fileadmin/tx_eauguidelines/2009/Full/TaT1_BC.pdf

5) http://www.nccn.org/index.asp

6) Matzkin H, Soloway MS, Hardeman S. Transitional cell carcinoma of the prostate. J Urol. 1991;146 (5):1207-12.

7) Mungan MU, Canda AE, Tuzel E, et al. Risk factor for mucosal prostatic urethral involvement in superficial transitional cell carcinoma of the bladder. Eur Urol. 2005;48 (5):760-3.

8) Shelfo SW, Brady JD, Soloway MS. Transurethral resection of bladder cancer. The mainstay of treatment. Atlas of the Urologic Clinics of North America. 1997;5 (2):1-14.

9) Sakamoto N, Tsuneyoshi M, Naito S, et al. An adequate sampling of the prostate to identify prostatic involvement by urothelial carcinoma in bladder cancer patients. J Urol. 1993;149 (2):318-21.


CQ 3  
筋層非浸潤性膀胱癌に対して2nd TURBT(re-TURBT)は推奨されるか?
Answer

初回TURBTでの病理組織所見がT1 high grade症例,あるいは切除切片に筋層成分が含まれていない場合,2nd TURBT(re-TURBT)が推奨される。(推奨グレー ドA)

【解 説】

TaT1腫瘍の初回TURBT後に2nd TURBTを施行した場合,Taでは22〜72%,T1では20〜78%の例で残存癌を認めることが諸家により報告されている1)。さらに,初回の病理結果の2〜28%でT2へのupstagingが認められることも報告されており2)-4),筋層非浸潤性癌のTaT1腫瘍と浸潤性癌のT2腫瘍で治療方針が完全に異なることを考えると,この初回TURBTでのunderstagingは患者の予後を考える上で無視し得ない。一方,残存腫瘍の存在部位は,その80%が初回切除と同一部位であり1)2),特に切除底で最も生じやすいといわれている3)。時期と術式については諸家によりまちまちであるが,時期は初回TURBT後1〜8週後,特に4〜6週後に施行される報告が多い2)-4)。また,切除部位は,すべての可視病変に加え,初回切除部位の底部の瘢痕組織,さらにはその周囲の浮腫性変化の部位などの初回切除部位が中心であり,T2へのupstagingを認める比率も無視できないことから,筋層が必ず含まれるように組織を採取することが重要である1)4)5)

以上,high gradeの筋層非浸潤性膀胱癌あるいはT1膀胱癌が初回TURBTで検出された場合,2nd TURBTが施行されるべきで,これはEAUおよびNCCNのガイドラインでも推奨されている6)7)。一方,初回TURBT検体に筋層が含まれなかった場合,筋層非浸潤性膀胱癌の確定診断はできない。したがって,初回TURBT時に筋層が含まれていない例や,不完全切除になった例でも2nd TURBTが施行されるべきである。

【参考文献】

1) Schwaibold HE, Sivalingam S, May F, et al. The value of a second transurethral resection for T1 bladder cancer. BJU Int. 2006;97(6):1199-201.

2) Sivalingam S, Probert JL, Schwaibold H. The role of repeat transurethralresection in the management of high-risk superficial transitional cellbladder cancer. BJU Int. 2005;96(6):759-62.

3) Jakse G, Algaba F, Malmstrom PU, et al. A second-look TUR in T1 transitional cell carcinoma:why? Eur Urol. 2004;45:539-46.

4) Miladi M, Peyromaure M, Zerbib M, et al. The value of a second transurethral resection in evaluating patients with bladder tumours. Eur Urol.2003;43:241-5.

5) Herr HW. The value of a second transurethral resection in evaluatingpatients with bladder tumors. J Urol. 1999;162(1):74-6.

6) http://www.uroweb.org/fileadmin/t_eauxguidelines/2009/Full/TaT1_BC.pdf

7) http://www.nccn.org/index.asp


CQ 4  
初期治療後の推奨されるfollow-upプロトコールはあるのか?
Answer

初期治療後,通常3カ月後の膀胱鏡検査を行い,その後リスク別に間隔の変更が行われるが,適切なプロトコールに関して結論は得られていない。(推奨グレー ドB)

【解 説】

筋層非浸潤性膀胱癌に対する初期治療後のfollow-upプロトコールは,患者にとって苦痛を伴う膀胱鏡検査がその中心となる。しかし,follow-upの膀胱鏡の回数を安全に減らせる可能性を検討したRCTはなく,最適なプロトコールを構築するためのエビデンスはない。したがって,すべてレトロスペクティブ研究に基づくものとなるが,膀胱鏡の回数や期間については,EAUガイドラインの再発,進展リスクなどに基づく個々の患者の再発と進展の可能性を反映してfollow-upプロトコールを構築するべきである1)

EAUおよびNCCNのガイドラインでも,リスク分類に基づいたfollow-upプロトコールが示されている。どちらもまず行われるのが,TURBT後3カ月の膀胱鏡検査であり,この術後最初の検査結果は,再発,進展を予測する重要な因子とされている2)

EAUガイドラインでは,低再発・進展リスク腫瘍では,術後3カ月で膀胱鏡を行い,陰性所見ならば9カ月後に施行し,以降5年まで年1回行うことが推奨されている。逆に,高進展リスク腫瘍では,3カ月の膀胱鏡が陰性所見ならば,以降2年までは3カ月ごと,3年までは4カ月ごと,5年まで6カ月ごと,その後は年1回膀胱鏡を行い,並行して年1回の上部尿路検索が推奨されている。さらに,中進展リスク腫瘍では,これらのfollow-upプロトコールを参考に,個々の症例に応じて大体中間になるようなプロトコールを計画することが推奨されている3)

一方,NCCNガイドラインでは,Ta low grade腫瘍では,術後3カ月で膀胱鏡を行い,以降は適宜間隔をあけて膀胱鏡を行うことが推奨されており,T1 lowgradeおよびTaT1 high grade腫瘍では,膀胱鏡と尿細胞診を2年までは3カ月ごと,4年までは6カ月ごと,以降は年1回の膀胱鏡を行うことが推奨されている。さらに,high grade腫瘍では1〜2年ごとに上部尿路検索が推奨されており,尿中の尿路上皮腫瘍マーカーなどもオプションに入っている4)

以上より,現時点ではfollow-upスケジュールに関するエビデンスがない状況で あり,これらにならってfollow-upスケジュールを組んでいく必要があると思われる。

【参考文献】

1) Sylvester RJ, van der Meijden AP, Oosterlinck W, et al. Predicting recurrence and progression in individual patients with stage TaT1 bladdercancer using EORTC risk tables:a combined analysis of 2596 patientsfrom seven EORTC trials. Eur Urol. 2006;49(3):466-77.

2) Solsona E, Iborra I, Dumont R, et al. The 3-month clinical response to intravesical therapy as a predictive factor for progression in patients withhigh risk superficial bladder cancer. J Urol. 2000;163(3 pt 1):685-9.

3) http://www.uroweb.org/fileadmin/tx_eauguidelines/2009/Full/TaT1_BC.pdf

4) http://www.nccn.org/index.asp


CQ 5  
TURBT後に膀胱内に所見がなく尿細胞診陽性が持続した場合,どのような追加検査が推奨されるか?
Answer

膀胱内に異常所見がなく尿細胞診陽性が持続した場合,前立腺部尿道のTURBT生検を含むランダム生検および両側上部尿路尿細胞診や必要に応じて尿管鏡検査による上部尿路の検索が推奨される。(推奨グレー ドB)

【解 説】

TURBT後のfollow-up中に,画像診断および膀胱鏡検査で異常を認めないにもかかわらず,尿細胞診が陽性となった場合の評価については,NCCNガイドラインにその推奨検査が記載されているが1),この場合にはCISの存在を意識して精査を進めることが重要である。

まず,前立腺部尿道のTURBT生検を含む膀胱内のランダム生検と,両側上部尿路尿細胞診および尿管鏡検査を行うことが推奨されている。これらの結果がいずれも陰性であった場合は,3カ月ごとに膀胱鏡検査および上部尿路尿細胞診,尿管鏡検査を行うことが推奨されており,これらの結果が膀胱内で陽性となった場合は,BCG膀注療法や投与薬剤の変更および膀胱全摘除術が推奨される。一方,上部尿路検索で陽性となった場合は,腎盂尿管癌のstage診断を行った後,そのstageに準じた手術や全身化学療法を行うことが推奨されている1)

同様に,上部尿路に関して,両側上部尿路尿細胞診や必要に応じて尿管鏡検査による検索を推奨する論文がみられた2)-4)

【参考文献】

1) http://www.nccn.org/index.asp

2) Schwalb DM, Herr HW, Fair WR. The management of clinically unconfi rmed positive urinary cytology. J Urol. 1993;150 (6):1751-6.

3) Donat SM. Evaluation and follow-up strategies for superfi cial bladder cancer. Urol Clin North Am. 2003;30 (4):765-76.

4) 栗村雄一郎,高橋 敦,広部恵美,他.臨床的に腫瘍の存在が認められな い尿細胞診陽性例の臨床的検討.泌尿紀要2007;53:455-8.


CQ 6  
低リスク筋層非浸潤性膀胱癌に対して抗癌剤即時単回注入は推奨されるか?
Answer

低リスク筋層非浸潤性膀胱癌に対するTURBT後の抗癌剤即時単回注入は推奨される。(推奨グレー ドA)

【解 説】

低再発および低進展リスク癌であっても,TURBTのみでは再発率が45%程度にみられると報告されており1),これを予防する対処が必要である。そこで,TURBT後の抗癌剤即時単回注入の有用性がRCTで検証されており,これらのメタ解析でもMMC1),THP-ADM2),epi-ADM3)のいずれも即時単回注入の再発予防効果が確認され,これらの薬剤間での優劣はない4)。さらに,抗癌剤即時単回注入は,昨今の医療事情を考慮して費用対効果の面でも重要であるとされている2)4)5)。しかし,多発性腫瘍では単回注入のみでは不十分であることが示されており,あくまで低リスク腫瘍に対する標準的治療と考えられる4)

薬剤を注入するタイミングは,術後6時間以内とする報告が多いが,EAUおよびNCCNガイドラインではTURBT後24時間以内の注入が推奨されており,TURBT当日の注入でなければ再発の相対危険度が2倍になるといわれている5)6)。また,薬剤の注入時間は,注入後カテーテルを1時間クランプとする報告が多いが1)2),術直後であることを考慮すると,尿量増加に伴い膀胱が過伸展し,再出血や膀胱穿孔などを発症する可能性があることから,注入時間については症例個々で判断すべきである。また,術中に膀胱穿孔を生じたか,疑いがある場合,直後注入により重大な合併症を生じたとする報告もあり避けるべきである5)7)

【参考文献】

1) Solsona E, Iborra I, Ric s JV, et al. Effectiveness of a single immediatemitomycin C instillation in patients with low risk superficial bladder cancer:short and long-term followup. J Urol. 1999;161(4):1120-3.

2) Okamura K, Ono Y, Kinukawa T, et al.;Nagoya University UrologicalOncology Group. Randomized study of single early instillation of(2"R)-4'-O-tetrahydropyranyl-doxorubicin for a single superfi cial bladder carcinoma. Cancer. 2002;94(9):2363-8.

3) Rajala P, Kaasinen E, Raitanen M, et al.;Finnbladder Group. Perioperative single dose instillation of epirubicin or interferon-alpha after transurethral resection for the prophylaxis of primary superficial bladdercancer recurrence:a prospective randomized multicenter study--FinnBladder Ⅲ long-term results. J Urol. 2002;168(3):981-5.

4) Sylvester RJ, Oosterlinck W, van der Meijden APM. A single immediatepostoperative instillation of chemotherapy decreases the risk of recurrence in patients with stage Ta T1 bladder cancer:a meta-analysis ofpublished results of randomized clinical trials. J Urol. 2004;171:2186-90.

5) http://www.uroweb.org/fileadmin/tx_eauguidelines/2009/Full/TaT1_BC.pdf

6) http://www.nccn.org/index.asp

7) Oddens JR, van der Meijden AP, Sylvester R. One immediate postoperative instillation of chemotherapy in low risk Ta, T1 bladder carcinomapatients. Is it always safe? Eur Urol. 2004;46(3):336-8.


CQ 7  
中リスク筋層非浸潤性膀胱癌に対して抗癌剤維持投与は推奨されるか?
Answer

中リスク筋層非浸潤性膀胱癌に対するTURBT後の補助療法は,抗癌剤即時注入に続いて維持療法が推奨されるが(推奨グレー ドA),維持投与のスケジュールについては結論が得られていない。

【解 説】

中リスク癌に対しても,低リスク癌と同様,まずはTURBT後の抗癌剤即時注入が推奨されるが,再発および進展のリスクが高くなることから即時単回注入のみでは不十分であり,引き続いて抗癌剤の膀注療法が必要となる。

本邦でも,アントラサイクリン系抗癌剤を用いた膀注療法の有用性を検証する大規模RCTが行われ,TURBTのみの群と比較して膀注療法群で有意に再発率が抑えられることが確認されており1)2),維持投与の有用性については一定のコンセンサスが得られている。しかし,薬剤の種類,薬液の濃度,膀注の回数や継続期間などについては,注入濃度や注入回数の異なるレジメ間でのRCTは散見され注入期間より注入濃度が重要であることが示されている3)。しかし,これらのレジメも考えようによってはいくつもの組み合わせが可能であり,何がゴールドスタンダードかを見極めるのは困難といえる。現時点では,過去に行われたRCTで有用性が検証されたレジメに基づいたり,それを経験的にアレンジしたりする等の維持投与が行われているのが現状である。

一方,抗癌剤の維持投与による再発予防効果の持続期間は500日以内といわれており4),また海外のRCTのメタ解析でも抗癌剤の維持投与が初発および再発例に対する再発抑制効果はあるが,進展リスクは減少させないことが示されており5),一定の再発予防効果は認められているが解決されねばならない問題が併存している。

【参考文献】

1) Akaza H, Isaka S, Koiso K, et al. and the Japanese Urological Cancer Research Group for Adriamycin. Comparative analysis of short-term andlong-term prophylactic intravesical chemotherapy of superfi cial bladdercancer. Prospective, randomized, controlled studies of the Japanese Urological Cancer Research Group. Cancer Chemother Pharmacol. 1987;20(Suppl):S91-6.

2) Akaza H, Koiso K, Kotake T, et al. and the Japanese Urological CancerResearch Group for Adriamycin. Long-term results of intravesical chemoprophylaxis of superficial bladder cancer:experience of the JapaneseUrological Cancer Research Group for Adriamycin. Cancer ChemotherPharmacol. 1992;30(Suppl):S15-20.

3) Kuroda M, Niijima T, Kotake T, et al. Effect of prophylactic treatmentwith intravesical epirubicin on recurrence of superficial bladder cancer--The 6th Trial of the Japanese Urological Cancer Research Group(JUCRG):a randomized trial of intravesical epirubicin at dose of 20mg/40ml, 30mg/40ml, 40mg/40ml. Eur Urol. 2004;45(5):600-5.

4) Hinotsu S, Akaza H, Ohashi Y, et al. Intravesical chemotherapy for maximum prophylaxis of new early phase superfi cial bladder carcinomatreated by transurethral resection:a combined analysis of trials by theJapanese Urological Cancer Research Group using smoothed hazardfunction. Cancer. 1999;86(9):1818-26.

5) Witjes JA, Hendricksen K. Intravesical pharmacotherapy for non-muscleinvasive bladder cancer:A critical analysis of currently available drugs,treatment schedules, and long-term results. Eur Urol. 2008;53:45-52.


CQ 8  
高リスク筋層非浸潤性膀胱癌に対するBCGの推奨される注入レジメはあるのか?
Answer

高リスク筋層非浸潤性膀胱癌に対するTURBT後の補助療法としてのBCG注入は推奨されるが(推奨グレー ドA),注入レジメについては結論が得られていない。

【解 説】

BCG膀注療法の有用性を検証するためのメタ解析により,TURBT後のBCG膀注療法は高リスク癌に対して再発のみならず進展も抑制することが確認されている1)。本邦における基本的な導入治療レジメは,投与量が日本株で1回80mg2),コンノート株で1回81mg3),投与回数および期間は週1回,6〜8週投与が一般的である2)-4)。しかし,問題はその副作用であり,強い副作用のため1コース完遂できない例もしばしば遭遇する。そのためにBCGの低用量注入に関する検討が以前より行われてきたが,近年それをランダム化比較試験により検証しようとする試みが数多く行われている。また,海外ではコンノート株を用いて,高リスク癌に対し標準的投与量81mg注入とその1/3量である27mg注入を比較したところ,両群で同等の進展抑止効果があり,低用量群で有意に副作用が少ないと報告されている5)。高リスク癌に対するBCG膀注療法は,術後再発および進展予防効果の点から推奨されるが,レジメに関しては,副作用を減らす目的で低用量化に向けての検証が本邦および海外で進行中であり,まだ結論は出ていないのが現状である。

【参考文献】

1) Sylvester RJ, van der Meijden AP, Lamm D. Intravesical bacillusCalmette-Guerin reduces the risk of progression in patients with superficial bladder cancer:a meta-analysis of the published results of randomized clinical trials. J Urol. 2002;168(5):1964-70.

2) Akaza H, Hinotsu S, Aso Y, et al. the bladder cancer BCG study group.Bacillus Calmette-Gurin treatment of existing papillary bladder cancerand carcinoma in situ of the bladder. Four-year results. Cancer. 1995;75(2):552-9.

3) Akaza H, Koiso K, Ozono S, et al.;PMCJ-9 Study Group in Japan. Aclinical study of PMCJ-9(Bacillus Calmette-Gurin Connaught strain)treatment of superfi cial bladder cancer and carcinoma in situ of thebladder. Jpn J Clin Oncol. 2003;33(8):382-90.

4) Hinotsu S, Akaza H, Isaka S, et al.;BCG Tokyo 172 Strain Study Group.Sustained prophylactic effect of intravesical bacille Calmette-Gurin forsuperficial bladder cancer:a smoothed hazard analysis in a randomizedprospective study. Urology. 2006;67(3):545-9.

5) Martinez-Pineiro JA, Martinez-Pineiro L, Solsona E, et al.;Club Urologico Espanol de Tratamiento Oncologico(CUETO). Has a 3-fold decreaseddose of bacillus Calmette-Guerin the same efficacy against recurrences and progression of T1G3 and Tis bladder tumors than the standarddose? Results of a prospective randomized trial. J Urol. 2005;174:1242-7.


CQ 9  
高リスク筋層非浸潤性膀胱癌に対してBCG維持注入療法は推奨されるか?
Answer

高リスク筋層非浸潤性膀胱癌に対するBCG維持注入療法は推奨される。(推奨グレー ドB)

【解 説】

高リスク筋層非浸潤性膀胱癌に対するBCG膀注療法は術後再発および進展予防効果の点から推奨される治療である1)2)

SWOGのRCTでは,高リスク癌に対して6回のBCG導入療法後に,維持注入療法なし群と3カ月ごとに3週間の維持注入療法を3年間行う群にランダム化し,その治療成績を比較検討している3)。その結果,維持注入療法群では,なし群に比べて,無再発生存率,無増悪生存率とも有意に延長した。しかし,維持注入療法群の完遂率はわずか16%であったことから,有効性は確認されたものの副作用が大きな問題として残る結果となった。これはEORTCの維持注入療法の第V相試験の副作用の検討でも同様で,中〜高リスク癌に対して前述のSWOGのRCTと同じレジメで維持注入を行っているが,レジメの完遂率は33%でBCGに関連した副作用で治療中止となった例が20%あり,その2/3が最初の6カ月以内に中止となっていた4)

一方,BCG維持注入療法に関するRCTのメタ解析でも,何らかの維持注入療法を施行した20の臨床試験では,その注入レジメがさまざまであるにもかかわらず,進展が27%阻止される結果となった2)。これらの結果から,高リスク癌に対する維持注入療法は,進展の阻止のためには推奨される。事実,EAUガイドラインでは,中〜高再発リスク群かつ中進展リスク群で,抗癌剤の即時単回注入の後に抗癌剤の維持注入もしくは少なくとも1年間のBCG注入を推奨し,高進展リスク群では少なくとも1年間のBCG注入を推奨している5)が,副作用の出現には十分留意する必要がある。最近,本邦でもコンノート株を用いてSWOGより短期間のスケジュールによる維持注入療法の有用性を検証するRCTが進行中である。その中間報告によれば維持療法の有用性が示唆されている6)。推奨される注入濃度や注入スケジュールについては現時点では結論が得られておらず,今後の検討が待たれる。

【参考文献】

1) Bohle A, Jocham D, Bock PR. Intravesical bacillus Calmette-Guerin versus mitomycin C for superfi cial bladder cancer:a formal meta-analysis of comparative studies on recurrence and toxicity. J Urol. 2003;169(1):90-5.

2) Sylvester RJ, van der Meijden AP, Lamm D. Intravesical bacillusCalmette-Guerin reduces the risk of progression in patients with superficial bladder cancer:a meta-analysis of the published results of randomized clinical trials. J Urol. 2002;168(5):1964-70.

3) Lamm DL, Blumenstein BA, Crissman JD, et al. Maintenance bacillusCalmette-Guerin immunotherapy for recurrent TA, T1 and carcinoma insitu transitional cell carcinoma of the bladder:a randomized SouthwestOncology Group Study. J Urol. 2000;163(4):1124-9.

4) van der Meijden AP, Sylvester RJ, Oosterlinck W, et al.;EORTC Genito-Urinary Tract Cancer Group. Maintenance Bacillus Calmette-Guerinfor Ta T1 bladder tumors is not associated with increased toxicity:results from a European Organisation for Research and Treatment of Cancer Genito-Urinary Group Phase Ⅲ Trial. Eur Urol. 2003;44(4):429-34.

5) http://www.uroweb.org/fileadmin/tx_eauguidelines/2009/Full/TaT1_BC.pdf

6) Hinotsu S, Naito S, Ozono S, et al. Prophylactic effect of 1.5-year maintenance PMCJ-9(BCG Connaught strain) therapy for non-muscle invasiveurothelial carcinoma of the bladder(NMIBC):Results of interim analysis of prospective randomized phase Ⅲ trial in Japan. 2009 GenitourinaryCancers Symposium. Abstract No. 251


CQ 10  
低・中リスク筋層非浸潤性膀胱癌再発例に対してどんな治療が推奨されるか?
Answer

低・中リスク筋層非浸潤性膀胱癌再発例に対しては,BCG注入療法ならびに必要に応じて膀胱全摘除術が推奨される。(推奨グレー ドB)

【解 説】

低・中リスク筋層非浸潤性膀胱癌の再発例では,膀胱鏡で腫瘍が明らかな場合はまずTURBTを行い,再発時の腫瘍の再発,進展のリスクに基づいて後の治療を考える必要がある1)。特に,直近の腫瘍が中リスク腫瘍で,TURBT後にBCGあるいはMMCの膀注療法後の再発例では,再発時のTURBTの結果でたとえ悪性所見が認められなくても,BCG維持注入がオプションに入り,TisあるいはTa腫瘍では,膀注薬剤の変更あるいは膀胱全摘除術が,T1 high grade腫瘍では膀胱全摘除術が推奨されている1)。また,低リスク症例で,直近のTURBT後の経過観察中に,画像および膀胱鏡検査で病変が指摘できないにもかかわらず,尿細胞診が陽性となる場合は,前立腺部尿道を含めた膀胱粘膜生検を行い,膀胱内が陽性であればBCG注入療法が推奨され,必要に応じてBCGの維持注入がオプションに入る。さらに,前立腺部尿道が陽性となり間質や腺管に浸潤している場合は,膀胱前立腺尿道全摘術が推奨される場合もある1)

以上,低・中リスク筋層非浸潤性膀胱癌再発例においても,その再発時の臨床病理学的所見に基づいて治療方針を決めていく必要がある。

【参考文献】

1) http://www.nccn.org/index.asp


CQ 11  
高リスク筋層非浸潤性膀胱癌再発例に対して2nd line BCG注入療法は推奨されるか?
Answer

高リスク筋層非浸潤性膀胱癌再発例に対しては副作用に注意しながら2nd line BCG注入療法までは行ってよいが,必要に応じて膀胱全摘除術を施行する。(推奨グレー ドB)

【解 説】

NCCNのガイドラインでは,2コースまでのBCGあるいはMMCの膀注療法を行ってTURBTを行い,腫瘍がなければオプションとしてBCG維持注入療法,TisあるいはTa腫瘍の場合は膀注薬剤の変更もしくは膀胱全摘除術,T1 highgrade腫瘍の場合は膀胱全摘除術を推奨している1)

EAUガイドラインでは,BCG 1コース注入後3カ月での精査で腫瘍を認めた場合,乳頭状腫瘍,CISにかかわらず50%以上の症例で2コース目のBCG注入によりCRが得られる場合があるとしているが,BCG注入中に再発したり,深達度や異型度が悪化したり,もしくはCISを認める例では筋層浸潤性癌に進展するリスクが高いため,即時膀胱全摘除術を強く推奨するとしており,2nd line BCG注入療法に対しても警鐘を鳴らしている2)

一方で,1コースのBCG注入後の高リスク癌に対する膀胱全摘除術と2nd lineBCG注入の治療成績を比較するRCTがなく,BCGに抵抗性の高リスク症例に対しては早期の膀胱全摘除術が生命予後を改善するとの報告があることから3),膀胱全摘除術が標準的治療であるとする報告もある4)。さらに,BCG維持注入療法では副作用の出現に注意する必要があり,前述のごとくその完遂率が低いという問題もある。

以上,高リスク癌再発例に対する2nd line BCG注入療法は,推奨されないとは言い難いが,十分な注意を払う必要があり,患者の生命予後を悪くするような状況は避けねばならない。

【参考文献】

1) http://www.nccn.org/index.asp

2) http://www.uroweb.org/fileadmin/tx_eauguidelines/2009/Full/TaT1_BC.pdf

3) Herr HW, Sogani PC. Does early cystectomy improve the survival of patients with high risk superfi cial bladder tumors? J Urol. 2001;166(4)1296-9.

4) Joudi FN, O’Donnell MA. Second-line intravesical therapy versus cystectomy for bacille Calmette-Gurin(BCG) failures. Curr Opin Urol.2004;14(5):271-5.


CQ 12  
高リスク筋層非浸潤性膀胱癌に対する膀胱全摘除術の推奨されるタイミングはあるのか?
Answer

高リスク筋層非浸潤性膀胱癌で進展リスクの高い症例,2nd line BCG注入療法後の評価で残存腫瘍が疑われる症例などは膀胱全摘除術が推奨される。(推奨グレー ドB)

【解 説】

高リスク癌に対する膀胱全摘除術は,結果的に適切な治療と判断される場合もある反面,摘出がover treatmentと判断される例もある。したがって,高リスク癌の中でも高進展リスクをいかに見分けるかが,この適応を判断する際に最も重要である。また,当然のことながら,手術施行時期のみならず,適応についていくつかの病理学的因子や臨床経過などを盛り込んだ上で,即時的もしくは待機的かについて述べられることが多い。

EAUおよびNCCNのガイドラインでも筋層非浸潤性膀胱癌に対する膀胱全摘除術の適応については以下のとおり述べられている。EAUガイドラインでは,再発・進展のリスク表に基づいて,高進展リスクとされる多発・再発性のhigh grade腫瘍,T1 high grade腫瘍,随伴性CISを伴ったhigh grade腫瘍などの高リスク例に対しては,膀胱全摘除術を推奨している1)。さらに,BCG 膀注療法後に病変の残存や進展を認める,いわゆるBCGに抵抗性の症例に対しても,膀胱全摘除術が推奨されている1)。NCCNのガイドラインでも同様のことが述べられているが,後者の場合においては膀注薬がBCGだけでなくMMCも選択肢に入っていること,および膀注療法を2コース行った後に判断を行う点が若干異なっている2)

また,待機的全摘術の場合,そのタイミングは,TURBT後3カ月の時点および膀注療法を1もしくは2コース行った時点がポイントとなる。この場合のTURBT後3カ月の時点と膀注療法を1コース行った時点とはほぼ同義語と思われる。すなわち,高リスク癌に対して,TURBT後にまずBCG膀注療法を1コース行ったとしても,3カ月後の膀胱鏡検査で前述のような高リスク腫瘍を認めた場合には,その時点で膀胱全摘除術が推奨されることになる。特に,随伴性CISや前立腺浸潤を伴っている場合は,BCG膀注療法2コース後での膀胱全摘除術では遅いという報告もあり3),この時点での膀胱全摘除術が奨められる。しかし,そのような病理組織学的所見を伴っていなければ,NCCNガイドラインでは膀注療法2コース後のTURBTで判断することを推奨し2),EAUガイドラインでもBCG膀注療法1コース後のTURBTから3カ月の時点で,乳頭状もしくはCISの腫瘍の残存があったとしても,2コース目のBCGで50%以上がCRとなり得るとも述べられていることより1),2コース後の時点で判断してよいと思われる。

一方,即時膀胱全摘除術についてはガイドラインでのリスク分類と違う観点から,膀胱全摘除術の適応を述べている報告もある。すなわち,標準的治療となったT1腫瘍に対する2nd TURBTで再びT1腫瘍を認めた場合,その後筋層浸潤性癌に進展する可能性が高く,この時点での膀胱全摘除術を奨める報告や4),病理組織学的にmicropapillary尿路上皮癌を認める場合にも,BCGに効果が期待できないため,早期の膀胱全摘除術を奨める報告などがある5)

【参考文献】

1) http://www.uroweb.org/fileadmin/tx_eauguidelines/2009/Full/TaT1_BC.pdf

2) http://www.nccn.org/index.asp

3) Solsona E, Iborra I, Rubio J, et al. The optimum timing of radical cystectomy for patients with recurrent high-risk superfi cial bladder tumour.BJU Int. 2004;94(9):1258-62.

4) Herr HW, Donat SM, Dalbagni G. Can restaging transurethral resectionof T1 bladder cancer select patients for immediate cystectomy? J Urol.2007;177(1):75-9.

5) Kamat AM, Gee JR, Dinney CP, et al. The case for early cystectomy inthe treatment of nonmuscle invasive micropapillary bladder carcinoma.J Urol. 2006;175(3 Pt 1):881-5.


Ⅲ.CISの治療

(京都府立医科大学泌尿器科 三木恒治,水谷陽一)

CISの治療 CQ

CQ 1  
CISに対するBCGの推奨されるレジメはあるのか?
Answer

CISに対するBCG膀胱内注入療法の推奨されるレジメは,週1回,6〜8週間投与である。(推奨グレー ドA)

【解 説】

CISに対する1st line therapyとして一般にBCG膀胱内注入療法が行われているが,このBCG膀胱内注入療法の推奨されるレジメに関して文献的に明らかにする必要がある。

CISに対するBCG膀胱内注入療法のレジメを検討したエビデンスの高いrandomized controlled study(RCT)はない。筋層非浸潤性膀胱癌に対して初めて施行したBCG膀胱内注入療法のレジメは,週1回,6〜8週間投与であった1)。後述する維持療法や,2nd line療法は別として,最新のNational ComprehensiveCancer Network(NCCN),European Association of Urology(EAU)のガイドライン,National Cancer Institute(NCI)のPhysician Data Query(PDQ)によると,BCG膀胱内注入療法の推奨されるレジメは,週1回,6週間投与である2)-4)。また,投与するBCG株によってその投与量は異なるが,ほとんどの報告ではBCG膀胱内注入療法のレジメは,週1回,6週間投与である5)-7)。日本で用いられているBCG株は東京株とコンノート株であるが,それぞれの1回投与量は80mgと81mgである。しかし,投与回数は8回を基本とするものであった8)9)。したがって現時点では,CISに対するBCG膀胱内注入療法の推奨されるレジメは,週1回,6〜8週間投与である。

【参考文献】

1) Herr HW, Morales A. History of bacillus Calmette-Guerin and bladdercancer:An Immunotherapy success story. J Urol. 2008;179:53-6.

2) NCCN Clinical Practice Guideline in Oncology, Bladder Cancer. MS-4,www.nccn.org, 2008.

3) van der Meijden APM, Sylvester R, Oosterlinck W, et al. EAU guidelineson the diagnosis and treatment of urpthelial carcinoma in situ. Eur Urol.2005;48:363-71.

4) Bladder Cancer Treatment. Stage 0 Bladder Cancer. http://www.cancer.gov/cancertopics/pdq/treatment/bladder/HealthProfessional/page5

5) Kim JC, Steinberg GD. The limits of bacillus Calmette-Guerin for carcinoma in situ of the bladder. J Urol. 2001;165:745-56.

6) Jakse G, Hall R, Bono A, et al., Members of the EORTC GU Group:In-travesical BCG in patients with carcinoma in situ of the urinary blad-der:Long-term results of EORTC GU Group phase Ⅱ protocol 30861.Eur Urol. 2001;40:144-50.

7) Herr HW, Pinsky CM, Whitmore WF Jr, et al. Long-term effect of intravesical bacillus Calmette-Guerin on flat carcinoma in situ of the bladder.J Urol. 1986;135:265-7.

8) Akaza H, Hinotsu S, Aso Y, et al. Bacillus Calmette-Gurin treatment ofexisting papillary bladder cancer and carcinoma in situ of the bladder.Four-year results. The Bladder Cancer BCG Study Group. Cancer. 1995;75(2):552-9.

9) Akaza H, Koiso K, Ozono S, et al. ;PMCJ-9 Study Group in Japan. Aclinical study of PMCJ-9(Bacillus Calmette-Gurin Connaught strain)treatment of superfi cial bladder cancer and carcinoma in situ of thebladder. Jpn J Clin Oncol. 2003; 33(8):382-90.


CQ 2  
CISに対するBCG維持注入療法は推奨されるか?
Answer

CISに対するBCG維持注入療法は推奨される。(推奨グレー ドB)

【解 説】

CQ1で述べられているように,CISに対する1st line therapyとしてBCG膀胱内注入療法(週1回,6〜8週間投与)が行われている。この初期治療後,BCG維持膀胱内注入療法が推奨されるかどうかに関して文献的に明らかにする必要がある。

最新のAmerican Urological Association(AUA),NCCN,NCIのPDQによると,CISに対するBCG初期治療後のBCG維持膀胱内注入療法は推奨されている1)-3)。2000年にLammらは,384症例をBCG維持膀胱内注入療法を施行した群と施行しなかった群に分けたRCTを報告している4)。その結果,BCG維持注入療法を施行した群が施行しなかった群に比較して有意に再発率が減少したとしている。また,Sylvesterらは5論文のメタアナリシスを行い,mitomycin C(MMC)膀胱内注入療法とBCG膀胱内注入療法(週1回,6週間投与)とのCISに対する効果を比較すると,有意差が認められなかったとしている。しかし,BCG膀胱内注入療法(週1回,6週間投与)にBCG維持膀胱内注入療法を加えることにより,MMC膀胱内注入療法より有意に効果が良好であり,BCG維持療法の有用性を示している5)。ただ,BCG維持膀胱内注入療法のレジメは,その報告によって少しずつ異なっている6)-8)。多くの報告は,通常のBCG膀胱内注入療法(週1回,6週間投与)後,3,6, 12, 18, 24, 30, 36カ月目にBCG膀胱内注入療法(週1回,3週間投与)を施行している。したがって現時点では,CISに対するBCG維持注入療法は推奨される。ただし,特に進展予防については必ずしも有効とはいえないという意見9)もあることを付記しておく。またこの項については筋層非浸潤性膀胱癌の治療 CQ9の記載も併せて考慮されたい。

【参考文献】

1) Hall CG, Chang SS, Dalbagni G, et al. Guideline for the management ofnonmuscle invasive bladder cancer(Stage Ta, T1, and Tis):2007 update. J Urol. 2007;178:2314-30.

2) NCCN Clinical Practice Guideline in Oncology, Bladder Cancer. MS-4,www.nccn.org, 2008.

3) Bladder Cancer Treatment. Stage 0 Bladder Cancer. http://www.cancer.gov/cancertopics/pdq/treatment/bladder/HealthProfessional/page5

4) Lamm DL, Blumenstein BA, Crissman JD, et al. Maintenance bacillusCalmette-Guerin immunotherapy for recurrent Ta, T1 and carcinoma insitu transitional cell carcinoma of the bladder:a randomized SouthwestOncology Group Study. J Urol. 2000;163:1124-9.

5) Sylvester RJ, van der Meijden APM, Witjes JA, et al. Bacillus Calmette-Guerin versus chemotherapy for the intravesical treatment of patientswith carcinoma in situ of the bladder:a meta-analysis of the publishedresults of randomized clinical trials. J Urol. 2005;174:86-9.

6) De Jager R, Williams B, Guinan P, et al. Long-term complete remission inbladder carcinoma in situ with intravesical TICE bacillus Calmette-Guerin. Overview analysis of six phase Ⅱ clinical trials. Urology. 1991;38:507-13.

7) De Reijke TM, Kurth KH, Sylvester RJ, et al. Members of the EuropeanOrganization for the Research and treatment of Cancer-Genito-UrinaryGroup. Bacillus Calmette-Guerin versus epirubicin for primary, secondary or concurrent carcinoma in situ of the bladder:Results of a European Organization for the Research and Treatment of Cancer-Genito-Urinary Group phase Ⅲ trial. J Urol. 2005;173:405-9.

8) Lamm DL, Blumenstein BA, Crawford ED, et al. A randomized trial ofintravesical doxorubicin and immunotherapy with bacille Calmette-Guerin for transitional-cell carcinoma of the bladder. N Engl J Med.1991;325:1205-9.

9) Herr HW. Is maintenance Bacillus Calmette-Gurin really necessary?Eur Urol. 2008;54(5):971-3.


CQ 3  
CISに対するBCG注入抵抗例あるいは再発例に対する2nd line BCG注入療法は推奨されるか?
Answer

CISに対するBCG注入抵抗例あるいは再発例に対する2nd line BCG注入療法は推奨される。(推奨グレー ドB)

【解 説】

CISに対する1st line therapyとしてBCG膀胱内注入療法が一般に行われているが,この初期治療に対する抵抗例あるいは再発例に対して,2nd line BCG注入療法が推奨されるかどうかに関して文献的に明らかにする必要がある。

CISに対するBCG注入抵抗例あるいは再発例に対する2nd line BCG注入療法を検討したエビデンスの高いRCTはない。最新のNCCN,EAUのガイドラインによると,CISに対するBCG注入抵抗例あるいは再発例に対する2nd line BCG注入療法は推奨されている1)2)。AUAのガイドラインではオプションとして2nd lineBCG注入療法が推奨されている3)。また,CISに対するBCG注入抵抗例あるいは再発例に対する2nd line BCG注入療法の有用性を示す論文が多く報告されている4)-8)。その2nd line BCG注入療法のレジメは,週1回,6週間投与である。Jakseらは評価可能な93例のCIS症例において,1st line BCG膀胱内注入療法のcomplete response(CR)率が76%であったのに対して,そのBCG注入抵抗例あるいは再発例10症例に対する2nd line BCG注入療法のCR率が60%であったと報告している4)。また,Harlandらは53例のCIS症例において,1st line BCG膀胱内注入療法のCR率が36%であったのに対して,そのBCG注入抵抗例あるいは再発例22症例に対する2nd line BCG注入療法のCR率が41%であったと報告している5)。Catalonaらは22例のCIS症例において,1st line BCG膀胱内注入療法におけるCR率が70%,1st line BCG注入抵抗例あるいは再発例に対する2ndline BCG注入療法におけるCR率が50%,2nd line BCG注入抵抗例あるいは再発例に対する3rd line以降のBCG注入療法におけるCR率が20%であったと報告している8)。ただ,3rd line以降のBCG注入療法を行う時点では,筋層浸潤性膀胱癌が20%の症例に,転移を有する膀胱癌が50%の症例に認められることから,CISに対するBCG膀胱内注入療法は2nd lineまでを推奨している。現時点では,RCTはなく,2nd line BCG注入療法の奏効率は低いが,他に有効な薬剤がないので,CISに対するBCG注入抵抗例あるいは再発例に対する2nd line BCG注入療法は推奨される。ただし,BCG-refractory症例9)に対しては,2nd line BCGの効果は期待できない。

【参考文献】

1) NCCN Clinical Practice Guideline in Oncology, Bladder Cancer. MS-4, www.nccn.org, 2008.

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CQ 4  
CISに対する膀胱全摘除術の推奨されるタイミングはあるのか?
Answer

CISに対する膀胱全摘除術の推奨されるタイミングは,2nd line BCG膀胱内注入療法が無効であった時点である。(推奨グレー ドB)

【解 説】

CISに対するBCG膀胱内注入療法が行われる以前では1st line therapyが膀胱全摘除術であったが,BCG膀胱内注入療法が1st line therapyとして一般に行われている現時点における膀胱全摘除術の推奨されるタイミングに関して文献的に明らかにする必要がある。

CISに対する膀胱全摘除術の推奨されるタイミングを検討したエビデンスの高いRCTはない。最新のNCCN,NCIのPDQによると,CISに対する2nd line BCG注入療法抵抗例あるいは再発例に膀胱全摘除術が推奨されている1)2)。AUAのガイドライン,EAUのガイドラインでは選択肢のひとつとしてBCG注入療法抵抗例あるいは再発例に膀胱全摘除術を推奨している3)4)。その根拠として,CQ3でも述べたように,3rd line以降のBCG注入療法を行う時点では,筋層浸潤性膀胱癌や転移を有する膀胱癌に進展している症例が多く認められるためである5)6)。Amlingらは,2nd line BCG膀胱内注入療法後に膀胱全摘除術を施行し,5年生存率が100%,10年生存率が92%と良好であることを示している7)。Herrらは,BCG膀胱内注入療法後の再発症例に対して膀胱全摘除術を2年以内に施行した群と2年以降に施行した群を比較した場合,膀胱全摘除術を2年以内に施行した群の方が有意に予後が良好であったと報告している8)。そこで,少なくとも2nd lineBCG注入療法を施行し,その抵抗例あるいは再発例にBCG注入療法後1年以内の膀胱全摘除術を推奨している。したがって現時点では,CISに対する膀胱全摘除術の推奨されるタイミングは,初期治療でBCG-refractory症例9)と判断された場合および2nd line BCG膀胱内注入療法が無効であった時点である。この項については筋層非浸潤性膀胱癌の治療 CQ11の記載を考慮されたい。

【参考文献】

1) NCCN Clinical Practice Guideline in Oncology, Bladder Cancer. MS-4,www.nccn.org, 2008.

2) Bladder Cancer Treatment. Stage 0 Bladder Cancer. http://www.cancer.gov/cancertopics/pdq/treatment/bladder/HealthProfessional/page5

3) Hall CG, Chang SS, Dalbagni G, et al. Guideline for the management ofnonmuscle invasive bladder cancer(Stage Ta, T1, and Tis):2007 update. J Urol. 2007;178:2314-30.

4) van der Meijden APM, Sylvester R, Oosterlinck W, et al. EAU guidelineson the diagnosis and treatment of urpthelial carcinoma in situ. Eur Urol.2005;48:363-71.

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6) Catalona WJ, Hudson MA, Gillen DP, et al. Risks and benefi ts of repeated courses of intravesical bacillus Calmette-Guerin therapy for superficial bladder cancer. J Urol. 1987;137:220-4.

7) Amling CL, Thrasher JB, Frazier HA, et al. Radical cystectomy for stageTa, Tis and T1 transitional cell carcinoma of the bladder. J Urol. 1994;151:31-5.

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9) Persad R, Lamm D, Brausi M, et al. Current approaches to the management of Non-muscle invasive bladder cancer:Comparison of currentguidelines and recommendations. Eur Urol. 2008;7(Suppl):637-50.


Ⅳ.Stage Ⅱ(T2a,bNOMO)および Stage Ⅲ(T3a,bNOMO)の診断と治療

(札幌医科大学泌尿器科 塚本泰司,舛森直哉)
(岩手医科大学泌尿器科 藤岡知昭,小原 航)

総  論

泌尿器科を受診する未治療膀胱癌の約 30%は筋層浸潤膀胱癌かあるいはそれ以上に進展した進行癌である。これら以外に,筋層非浸潤癌から筋層進展をきたした癌がこの群に含まれる。

筋層浸潤(stage Ⅱ)あるいは局所浸潤癌(stage Ⅲ)の診断(臨床病期診断)には膀胱鏡,画像診断,経尿道的膀胱腫瘍切除(TURBT)が用いられる。なお,特に断りのない限り筋層浸潤あるいは局所浸潤癌をまとめて筋層浸潤癌と表現する。それぞれの検査の有用性,限界については後述するが,ここでは診断までの流れを概説する。

通常,膀胱鏡では筋層浸潤癌は非乳頭状広基性腫瘍として認められる。腫瘍径が1cm 以上で非乳頭状広基性腫瘍の 74%は筋層浸潤癌であった 1)。腫瘍の形態,大きさなどから筋層浸潤膀胱癌が疑われた場合には,TURBT 前に画像診断を行うべきである 2)。TURBT 後の画像診断では,この手術の影響が膀胱筋層に残る。画像診断としては静脈性尿路造影,CT,MRI が癌の臨床病期診断に用いられる。静脈性尿路造影の病期診断への貢献は限られているが,上部尿路閉塞は予後不良因子である。癌の膀胱筋層への浸潤あるいは筋層外への浸潤の診断には CT,MRI が利用されているが,CT および MRI における原発巣の病期診断(T staging)における正診率は,CT で40-97%(平均 74%),MRI で 73-96%(平均 85%)と報告されている 3)。したがって,20-30%程度の症例では病理学的病期との不一致は避けられず,多くは understagingである。 

一方,リンパ節転移の有無(N staging)の診断において,CT,MRI は有効であり,リンパ節転移診断の正診率は CT にて 83-97 %(平均 89 %),MRI で 73-98 %(平均89%)と報告されている 4)。結局,顕微鏡的転移は当然検出できないので,偽陰性の確率が高くなる。

癌の筋層への浸潤を正確に診断するためには TURBT が不可欠である。膀胱鏡の所見などから筋層浸潤癌が疑われる場合には,筋層を含む切除が必要である。男性では前立腺部尿道の,女性では膀胱頸部の生検も必要である。さらに,初回の TURBTで pT1 の筋層非浸潤癌でも grade 3 などの high grade cancer では,re-TURBT により高率に筋層浸潤癌が検出されるため,re-TURBT が推奨されている 5)

なお,TURBT 前後には双手診を行い,腫瘍の触知あるいは周囲臓器への浸潤の程度を,大まかに評価する。

筋層浸潤癌の標準治療は,根治的膀胱摘除術+骨盤リンパ節郭清術(+尿路変向)である。男性では膀胱,前立腺,精嚢を一塊として摘出する。尿道再発のリスクが高いと予測される時には尿道も同時に摘出する。女性では,膀胱,尿道,子宮,膣前壁を摘出する。郭清すべきリンパ節の範囲は明確には規定されていないが,通常,骨盤リンパ節(左右の内および外腸骨リンパ節,閉鎖リンパ)を摘出する。リンパ節郭清の範囲を大動脈分岐部までに拡大する報告もあるが,郭清範囲を拡大することによるリンパ節転移の診断率の向上,治療成績の向上などに関しては確立されていない6)

これらの標準治療を主体とした治療による5年生存率はpT2:65-75%,pT3:40-55%,pT4:35-45%である7)。周術期化学療法を追加することによる手術単独の治療成績の向上が検討されてきた。術前化学療法の検討では,併用なしを対照とする無作為化比較試験でCMV(cisplatin,methotrexate,vinblastine)併用による5年(44%vs. 55%)および8年(37% vs. 43%)生存率の向上が認められた8)。また,MVAC(methotrexate,vinblastine,adriamycin,cisplatin)を用いた臨床試験では,この併用により死亡率の25%低下と生存期間の延長(77カ月 vs. 46カ月)が観察されている9)。一方,術後補助療法としての化学療法の併用は現時点ではその有効性が十分には証明されていない10)

筋層浸潤癌に対する膀胱温存治療に関して,化学療法と放射線治療の併用が主に行われてきた。最近の検討では,筋層浸潤癌の一部では生存率を低下させることなく膀胱温存が可能であるとされている11)-15)。本療法は,TURBTによる可能な限りの腫瘍切除の後,化学療法と放射線療法を併用して行われる。これにより70-80%の完全奏効率,50-70%の5年生存率,60-80%の5年癌特異的生存率が得られている11)-15)。化学療法にはcisplatinを中心とした多剤併用化学療法が用いられている。わが国では,動注化学療法を用いることが多い。筋層浸潤癌での膀胱温存の理想的な適応は,臨床病期がT2あるいはT3の単発腫瘍で腫瘍径が小さな(3cmまたは5cm未満)症例である12)15)

【参考文献】

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StageⅡ,StageⅢの診断と治療 CQ

CQ 1  
臨床病期T診断の適切な方法は?
Answer

T診断にはMRIとCTが用いられているが,どちらも筋層内浸潤の正診率は低い。筋層浸潤を確実に診断するためにはTURBTが必要である。しかも,T1G3などのhigh grade癌の場合にはre-TURBTも推奨されている。筋層外浸潤の正診率は筋層浸潤癌よりも高いが,いずれの場合もunderstagingの傾向が強い。(推奨グレー ドB)

【解 説】

筋層浸潤の確実な診断方法はTURBTである。臨床病期T診断にはMRIとCTが用いられている。超音波断層法あるいは静脈性尿路造影はこの目的のために使用されることは少ない。T診断に関しては総じてMRIのほうが正診率は高い1)。筋層非浸潤癌と筋層浸潤癌とをCTで確実に鑑別することはできない。MRIの正診率もこの点に関しては基本的に同様ではあるが,有茎性腫瘍の場合には筋層への浸潤を除外できる可能性もある2)。結局,筋層浸潤を正確に診断するためにはTURBTが最も優れた診断方法であり,そのためには筋層まで十分に切除することが不可欠である3)

一方,筋層外への浸潤の正診率はCT,MRIとも筋層浸潤のそれよりも優れている。一般的には,筋層外浸潤の診断はCTとMRIはほぼ同等で正確であるが,周囲臓器浸潤の診断に関してはMRIが優れている2)

臨床的にCTとMRIのいずれが臨床病期T診断に優れているのかは明確にされ てはいないが,いずれを用いても一定程度の病理学的病期との不一致は避けられな い。しかし,現時点では臨床病期診断のための手段はこれらの画像診断以上のもの はない。

【参考文献】

1) Barentsz JO, Witjes JA, Ruijs JH. What new in bladder cancer imaging.Urol Clin N Am. 1997;24:583-602.

2) Schrier BPH, Witjes JA, Narumi Y, et al. Imaging in the assessment ofurinary bladder carcinoma. In:Lerner SP, Schoenberg MP, SternbergCN, eds. Textbook of Bladder Cancer, Taylor & Francis/Abington,2006;191-205.

3) Herr HA. The values of a second transurethral resection in evaluatingpatients with bladder tumors. J Urol. 1999;162:74-6.


CQ 2  
リンパ節転移あるいは遠隔転移を検出する最良の検査方法は?
Answer

リンパ節転移の診断にはMRIの方がCTより優れているが,いずれもリンパ節の腫大の程度に左右される。肺転移の診断にはCTが用いられる。骨転移の診断には骨シンチグラフィーが用いられるが,筋層浸潤癌の全ての患者に必要かどうかは確立されていない。(推奨グレー ドB)

【解 説】

リンパ節転移を検出する方法として現在主に用いられているものはCTおよびMRIである。2つの検査法ともリンパ節の腫大の程度と形態の異常によりリンパ節転移を検出するので,基本的には正診率はリンパ節の腫大の程度(通常は1cm)に左右される。そのため,検討により正診率が50-90%と大きく異なる。CTのリンパ節転移の正診率は50%以下であるとする報告1)もあるが,2次元の評価であれば両者には差がない2)。3次元の評価を用いればMRIの優位性が明らかになり,正診率は90%に達する3)。Positron emission tomographyに関しては,現時点ではCTあるいはMRIを上回る検出能力はない4)。結局,現時点では骨盤リンパ節郭清に勝る方法はない5)。問題は標準的な郭清の範囲が確立されていないことにある。

遠隔転移部位として頻度の高い肺の評価には胸部単純X線,CTが日常的に用いられている。筋層浸潤癌では治療前に施行しておくことが必要である。腹部臓器の評価としてのCTの必要性に関しては,これを支持する意見ばかりではないが6),わが国の現状では施行することが多い。これにより肝の評価も可能である。

筋層浸潤癌の全ての患者で治療前の骨転移の評価が必要か否かについては,確立した見解はない。Alkaline phosphataseの上昇,骨の痛みがある場合に骨シンチグラフィーを施行するが,ルーチン検査ではない7)。骨シンチグラフィーの陽性部位はMRIによる確認が不可欠である8)

【参考文献】

1) Paik ML, Scolieri MJ, Brown SL, et al. Limitations of computed tomography in staging invasive bladder cancer before radical cystectomy. J Urol.2000;163:1693-6.

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CQ 3  
StageⅡ, StageⅢに対する膀胱全摘除術後の経過観察方法は?
画像診断はどのくらいの頻度で必要か?
Answer

筋層浸潤癌治療後の経過では,①癌の再発(局所,遠隔臓器および尿道断端),②上部尿路癌の発生,③尿路変向に関連した上部尿路変化,代謝異常,が観察項目となる。各検査の実施間隔には確立されたものはないが,術後2年以内は少なくとも3-6カ月ごと,その後は1年ごとの検査が必要である。これらの間隔の設定には癌の悪性度および進展度も考慮しなければならない。(推奨グレー ドB)

【解 説】

筋層浸潤癌治療後の経過観察では,①局所再発:骨盤内および尿道断端,②遠隔転移,③上部尿路癌の発生,④尿路変向に関連した代謝性変化,上部尿路の形態学的変化/腎機能の保持,などが経過観察のポイントとなる。

骨盤内の局所再発は根治的膀胱摘除術を受けた患者の約20%に出現する1)。このうち,単独の局所再発が10%程度に,遠隔転移を伴った局所再発が10%程度に認められる。多くは術後2年以内に出現するが,術後5年以降に出現することもある2)。CT,MRIが局所再発の診断に有用であるが,MRIのほうが軟部組織の描出に優れている3)

尿道断端の再発は,根治的膀胱摘除術の10-15%に認められる4)。自排尿型の回腸新膀胱などでは10%以下である5)6)。多くは術後3年以内に出現する。自排尿型以外の尿路変向で尿道が摘除されなかった場合には,尿道の洗浄細胞診が早期診断に有用であるとされている7)。自排尿型の回腸新膀胱などにおける尿細胞診の有用性に関しては明らかではない6)8)。洗浄細胞診で尿道断端の再発が疑われた場合には内視鏡により確認する。

遠隔転移の評価は肺を中心に行う。胸部X線写真あるいはCTが用いられるが,わが国では後者が多い。多くの遠隔転移は術後2-3年以内に発生する。

筋層浸潤癌における上部尿路癌の累積発生率は3年で4%,5年で7%とされ,その後も同程度の発生率を維持するとされている9)。この診断のためには従来から静脈性尿路造影(IVU)が行われてきたが,正診率は低く他の方法が必要である10)。しかし,現時点ではこの方法を凌駕する検査はない。将来的にはマルチスライスCT尿路造影(CT urography)に期待が寄せられている11)。尿細胞診は有用ではあるが検出感度は低いので,尿路造影あるいはCTと併用する。

これら上記の検査間隔には確立されたものはないが,原則的には以下のスケジュールで行う3)

①身体所見の把握および一般血液検査,血液生化学検査:3,6,12,18カ月,2年,3年,4年,5年以降は2年に1回。

②腹部および骨盤CTあるいはMRI:①に同じ。

③胸部X線写真あるいは胸部CT:①に同じ。

④IVU(CTで代用できる可能性あり):3カ月,12カ月,2年,3年,4年,5年以降は2年に1回。

⑤尿道洗浄細胞診:①に同じ。

⑥尿細胞診:①に同じ。

なお,上記の検査スケジュールの決定には病理学的病期を考慮する。

【参考文献】

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CQ 4  
StageⅡ, StageⅢに対する標準治療は何か?
Answer

筋層浸潤癌(局所浸潤癌も含めて)の標準治療は根治的膀胱摘除術+骨盤リンパ 節郭清術(+尿路変向)である。リンパ節郭清の範囲を拡大することの利点は完全 には検証されていない。(推奨グレー ドA)

周術期の化学療法として術前のMVAC療法などcisplatinを中心とした多剤併用 療法の有効性が指摘されている。(推奨グレー ドB)ただし,日常臨床で標準的に 使用されているというわけではない。

【解 説】

筋層浸潤癌(局所浸潤癌も含めて)の標準治療は根治的膀胱摘除術+骨盤リンパ節郭清術(+尿路変向)である。この標準治療に際して重要なのは正確な病期診断と適切な患者選択である。病期診断ではTURBTによる生検で筋層組織を十分に切除する。その上で,筋層浸潤を確認する。しばしば筋層浸潤を見逃しunderstagingする。患者選択に当たっては合併症,臓器機能のみならず自己管理能力にも注意を向ける必要がある。また,家族を含め周囲からどの程度の援助が得られるかも確認しておく。年齢は必ずしもこの標準治療を行う上での妨げにはならないが1),performance status,アメリカ麻酔科学会身体所見分類などによる評価が不可欠である2)

根治的膀胱摘除術は男性では膀胱,前立腺,精嚢を摘出する。尿道摘除は尿道再発のリスクの高い場合には行う(CQ11参照)。女性では,膀胱,子宮,膣前壁,尿道を摘出する。

リンパ節郭清に関しては,膀胱癌の所属リンパ節が内・外腸骨リンパ節,閉鎖リンパ節からなる骨盤リンパ節であることから,骨盤リンパ節を郭清することが一般的である。さらに,総腸骨リンパ節あるいは仙骨正中リンパ節を郭清範囲に含める報告もある3)。しかし郭清の範囲,摘出リンパ節数に関する標準化はされてはいない4)。一般に所属リンパ節郭清では15個前後5)6),大動脈分岐部までの郭清では20-30個7),下腸間膜動脈のレベルまでの郭清では30-40個3)8)のリンパ節が摘出される。一方,摘出リンパ節数は生存率に影響する可能性がある5)6)9)が,全ての病期でその可能性があるかは現時点では不明である。

周術期の化学療法の効果に関しては,術前のMVAC療法などcisplatinを中心とした多剤併用療法の有効性が指摘されている10)11)。術後補助化学療法で明らかにその可能性を示したものはない12)

【参考文献】

1) Clark PE, Stein JP, Groshen SG, et al. Radical cystectomy in the elderly. Cancer. 2005;104:36-43.

2) Chang SS, Alberts G, Cookson MS, et al. Radical cystectomy is safe in elderly patients at high risk. J Urol. 2001;166:938-41.

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11) Advanced Bladder Cancer (ABC) meta-analysis collaboration. Neoadjuvant chemotherapy in invasive bladder cancer:updated of a systemic review and meta-analysis of individual patient data. Eur Urol. 2005;48: 202-6.

12) Advanced Bladder Cancer (ABC) meta-analysis collaboration. Adjuvant chemotherapy in invasive bladder cancer:updated of a systemic review and meta-analysis of individual patient data. Eur Urol. 2005;48:189-201.


CQ 5  
根治手術と姑息的手術(TURBT単独あるいは膀胱部分切除単独)の治療効果の比較は?
Answer

膀胱部分切除単独あるいはTURBT単独による膀胱温存は,筋層浸潤癌に対する標準治療ではない。根治的膀胱摘除術などの根治治療が適応にならない患者が対象である。積極的に温存を図る場合には,これらの治療と化学療法あるいは放射線療法(あるいは両者の併用)の併用による集学的治療が不可欠である。(推奨グレー ドB)

【解 説】

筋層浸潤癌に対しては膀胱温存も可能であるが全ての患者が対象になるわけではない 1)。しかも,通常は化学療法と放射線療法の併用が行われる 1)2)。したがって,TURBT 単独あるいは膀胱部分切除が積極的に適応になる筋層浸潤癌患者は少数である。このような治療が適応になるのは,筋層浸潤癌のうち比較的早期の筋層浸潤のみの患者,あるいは根治的膀胱摘除術あるいは集学的膀胱温存治療が種々の理由で適応にならない患者である。

膀胱部分切除に関する最近の報告は少ないが,2cm 以上の外科的切除縁の確保が可能な孤立性腫瘍で,随伴する上皮内癌がないなどの条件を満たした 37 例のpT2/pT3 の膀胱癌に対する膀胱部分切除と骨盤リンパ節郭清による治療成績が報告されている 3)。それによれば,5 年全生存率,癌特異生存率は,それぞれ 67%,87%で,膀胱温存率は 53 カ月で 67%であった。一方,high-risk 筋層非浸潤癌も含むが 58 例に膀胱部分切除を行った検討では,5 年全生存率,非進展率,膀胱温存率はそれぞれ 69%,69%,74%であった 4)。膀胱上皮内癌の随伴は進展率上昇に関しての危険因子であった。

筋層浸潤癌に対する TURBT 単独の治療成績についても,これが標準治療ではないために検討報告は少ない。筋層浸潤癌が証明されたが,その腫瘍底をさらに生検し筋層浸潤の残存がなかった 133 例の患者を 5 年以上観察した検討では,5 年および 10 年疾患特異生存率はそれぞれ 80.5%,74.5%であり,膀胱温存率はそれぞれ 82.7%,79.6%であった 5)。進展に関与する有意な要因は上皮内癌の随伴であった。筋層浸潤癌 432 例のうち,re-TURBT で T0 あるいは T1 であった 99 例の転帰を検討した報告では,10 年疾患特異生存率は 76%で,57%はこの時点で生存しかつ膀胱温存が可能であった 6)。癌が筋層の表層に限局し,re-TURBT で周囲の粘膜および筋層に残存癌がないような場合には,TURBT 単独も治療のオプションにはなるが,生涯にわたる経過観察と 20%弱の進展の確立を考慮する必要がある。

筋層浸潤癌に対する膀胱部分切除単独あるいは TURBT 単独による膀胱温存は,現時点では標準治療とはいえない。根治的膀胱摘除術などの根治治療が適応にならない患者が対象となることを十分に認識する。最近は,膀胱温存の際には,これらの外科的治療と化学療法および放射線療法の 3 者併用による集学的治療が用いられる。

【参考文献】

1) Rodel C, Grabenbauer GG, Kuhn R, et al. Combined-modality treatmentans selective organ preservation in invasive bladder cancer:long-termresults. J Clin Oncol. 2002;20:3061-71.

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CQ 6  
膀胱温存治療の適応症例は?
CQ 7  
膀胱温存に用いられる治療と治療成績は?
Answer(CQ6, CQ7)

筋層浸潤膀胱癌の一部では,TURBT,化学療法,放射線療法の3者併用による 膀胱温存が可能である。適応症例は,臨床病期がT2あるいはT3で,腫瘍数が少 なく腫瘍径も小さな症例であるが,厳密な適応は確立されていない。治療法につい ても前述の3者併用療法の範囲内でさまざまなレジメが存在する。(推奨グレー ドB)

【解 説】

TURBT,膀胱部分切除術などの外科的治療の筋層浸潤癌に対する効果は限定的であり,標準治療とはみなされていない。一方,化学療法単独あるいは外照射単独の効果も十分ではない。したがって,これらの単独療法のみでは膀胱温存は可能であっても,癌の制御という点ではその効果は不十分である1)。筋層浸潤癌に対する膀胱温存はそれぞれの治療を組み合わせる集学的治療として行う必要がある。TURBTにより可能な限り腫瘍を切除し,その後に化学療法および放射線療法を追加する。さらに,再度TURBTを行い腫瘍の残存および病期を評価する。治療効果向上のポイントの一つは腫瘍の可及的切除であるとされている2)3)。また,治療後に腫瘍が残存していないpT0の患者の予後が良いとされている。化学療法には,cisplatinなど放射線増感作用を持つものを中心とした単剤あるいは多剤併用が行われている2)-4)

一方,抗癌剤の投与方法に関しては,欧米とわが国では明らかに異なる。欧米の多くの報告では静脈内投与が用いられているが,わが国での報告は動脈内投与が多い。動脈内投与は,first pass effectによる膀胱腫瘍自体や局所リンパ節に対する効果の増強を狙ったものである。放射線の照射線量も一定してはいないが,60-70Gyの線量が用いられていることが多い。Rödel らは,T1-4の400例を対象とした臨床試験でTURBT後に化学・放射線療法を行うことで,5年および10年生存率はそれぞれ50%,32%で,その80%以上で膀胱温存が可能であったとしている2)。わが国では2-3コースの動注化学療法が用いられ,線量も50Gy程度であるが,治療でCRが得られた症例では5年膀胱温存生存率は70%以上と良好であるとされている3)

筋層浸潤癌における膀胱温存治療の理想的な適応について,Rödel ら2)は孤立性で比較的浅い筋層浸潤癌で,初回のTURBTで完全切除が可能と思われる患者としている。一方,Miyanagaら4)は臨床病理学的因子をスコア化し膀胱温存により適した患者の選択を検討しているが,それによれば筋層浸潤癌ではT2N0M0の60%,T3N0M0の33%の症例で膀胱温存が可能であるとしている。 筋層浸潤膀胱癌で膀胱温存が可能と思われる患者の特徴をより明確にし,最も効果的な化学療法と放射線照射の併用レジメを確立する必要がある。

【参考文献】

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4) Miyanaga N, Akaza H, Hinotsu S, et al. Background Variables for Patients with Invasive Bladder Cancer Suitable for Bladder-preservingTherapy. Jpn J Clin Oncol. 2007;37(11):852-7.


CQ 8  
根治的膀胱摘除術+リンパ節郭清術による治療成績は?
Answer

根治的膀胱摘除術+リンパ節郭清術は,臨床的にリンパ節転移を認めない筋層浸潤膀胱癌に対する標準治療であり,原発巣のコントロールに関して,現時点ではこれ以上の治療効果を保証する治療法はない。(推奨グレー ドA)

また,リンパ節転移に関しても,pN1 であればこの標準治療で治癒することもある。しかし,pT3-4 あるいは pN+の症例に対する治療成績は一般的には満足すべきものではない。(推奨グレー ドB)

【解 説】

2001 年以降に報告された最近の多数例(466 例から 1,113 例)での 6 つ検討(わが国の 2 つの報告を含めた)をまとめてみると,根治的膀胱摘除術+リンパ節郭清術(術前 / 術後化学療法施行例も含む)による 5 年生存率は pT2pN0:62-84%(pT2a:77-84%,pT2b:66-69%),pT3pN0:31-59%,pT4pN0:30-49%,pN+:21-35%である 1)- 7)。このような結果からは,pT3 以上の局所進行癌に対する新しい治療戦略の構築が必須である。周術期の化学療法,特に現時点では術前化学療法の効果に期待が寄せられている 8)。しかし,pN+の場合の補助化学療法に関しては十分な知見がない。

根治的膀胱摘除術+リンパ節郭清術を行った 4,110 例を集計した検討(8 つの報告)では,リンパ節転移は 24%に認められ,原発巣の深達度との関係では pT2a:9%(9-18%), pT2b:30%(22-41%),pT3:46%(41-50%),pT4:49%(41-63%)であった 9)。リンパ節転移自体は筋層浸潤膀胱癌の予後予測因子でもあるが,転移リンパ節個数 10)- 12)あるいは転移リンパ節の割合:lymph node density 10)- 13),摘出リンパ節数 10)12)14)15)なども治療成績に影響を与える因子である。しかし,臨床経過を予測する上で最も適切な lymph node density および摘出リンパ節数は明らかとなっていない。

根治的膀胱摘除術+リンパ節郭清術(尿路変向も含む)の合併症に関しては,手術に伴う死亡率は時代とともに減少し,最近の報告では 4%以下である 16)。早期合併症(術後 1 カ月以内)の頻度に関しては,30-40%と報告されているが,重篤なものは 10%以下である 16)。その結果,適切な症例選択は重要ではあるが,75 歳以上の高齢者に関しても安全に施行できることが示されている 17)

なお,リンパ節郭清に関しても,骨盤リンパ節郭清のみならず郭清の範囲を大動脈分岐部まで拡大するような拡大リンパ節郭清を行っても,1 時間程度の手術時間の延長はあるが合併症の頻度は増加しない 18)19)

【参考文献】

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12) Wright JL, Lin DW, Porter DP. The association between extent oflymphadenectomy and survival among patients with lymph node metastases undergoing radical cystectomy. Cancer. 2008;112:2401-8.

13) Herr HW. Superiority of ratio based lymph node staging for bladdercancer. 2003;169:943-5.

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18) Leissner J, Ghoneim MA, Abol-Enein H, et al. Extended radical lymphadenectomy in patients with urothelial bladder cancer:results of a prospective multicenter study. J Urol. 2004;171:139-44.

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CQ 9  
術後再発の危険因子は何か?
CQ 10  
根治手術後の再発の様式は?
Answer(CQ9, CQ10)

根治的膀胱摘除術後の局所再発は,単独と遠隔転移併存とそれぞれ10%にみられる。単独の再発は術後2年以内が多いが,5年経過後も出現する。摘出リンパ節個数,範囲との関係は明確ではない。局所再発に対しては集学的治療が必要であるが,その効果は不良である。

【解 説】

根治手術後の局所再発は20%に認められるが,局所再発単独の場合と遠隔転移とほぼ同時に出現する場合とがそれぞれ約半数である。局所再発が単独で出現する頻度は3,989例の検討では12.5%(5.0-33.8%)である1)-10)。多くは術後2年以内であるが,5年以上経過後に出現する晩期再発もある。局所再発の危険因子としては,病理学的病期3)5)7)9),リンパ節転移3)5)9),摘出標本の外科的切除縁の状態7),原発巣の組織学的所見8)11)などが指摘されている。病理学的病理の関与に関しては,pT2N0以下の場合の局所再発率は3-6%であるが,pT3N0以上では11-16%である 3)5)9)。リンパ節転移を認めた場合には13-20%に上昇する。

リンパ節郭清の範囲あるいは摘出リンパ節数の局所再発率への影響に関しては明らかではない。Herrら7)は摘出リンパ節数が局所再発に関与する有意な要因であるとしているが,特定の病期でのみ認められるという指摘もある8)12)。また,リンパ節郭清の範囲が局所再発率に影響するとする意見13)もあるが,今後の検討課題である。

局所再発をきたした場合,化学療法と外科治療あるいは放射線治療の併用による集学的治療が適応になるが,その治療成績は不良である14)

遠隔転移出現の危険因子はこれまでも指摘されているように,原発巣の病理学的病期,リンパ節転移,外科的切除縁などであり,摘出リンパ節数などもその出現に関与している3)5)7)

【参考文献】

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7) Herr HW, Faulkner JR, Grossman HB, et al. Surgical factors infl uencebladder cancer outcomes;a cooperative group report. J Clin Oncol.2004;22:2781-9.

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CQ 11  
尿道摘除の適応症例は?
Answer

回腸新膀胱などの自排尿型の尿路再建を考慮した場合の尿道摘除の絶対適応は,前部尿道に腫瘍がある場合と根治的膀胱摘除術の際の迅速病理検査で尿道切除縁に腫瘍性病変が存在する場合である。(推奨グレー ドB)

ただし,このような尿路再建を行わないような場合には,上記要因以外にも膀胱上皮内癌,多発腫瘍などの存在は尿道摘除を考慮すべき要因である。(推奨グレー ドB)

【解 説】

1990 年以降の 3,165 例の検討では 8.1%に根治的膀胱摘除術後の尿道再発が認められている 1)。Stein ら 2)の検討では,根治的膀胱摘除術を行った 768 例の 5 年および 10 年尿道再発率はそれぞれ 7%,9%であったとされている。一般に,尿道再発の危険因子としては,多発腫瘍,上皮内癌の随伴,膀胱頸部あるいは前立腺部尿道における腫瘍性変化などがあげられている 3)4)。再発危険因子の多変量解析を行った Stein ら 2)の 768 例の検討では,前立腺部尿道における腫瘍性変化(筋層非浸潤性および筋層浸潤性)と尿路変向法(自排尿型あるいは非自排尿型)が独立した危険因子であった。一方,729 例を対象とした他の検討では,摘出原発巣の病理学的深達度,前立腺部尿道における腫瘍性変化(筋層非浸潤),筋層非浸潤癌の既往などが危険因子であった 5)。男性においては,前立腺部尿道の病変の存在が尿道再発の危険因子であることには異論がない。しかし,筋層非浸潤あるいは筋層浸潤性腫瘍のいずれがより再発に影響するかに関しては異なった結果が報告されている 2)5)。一方,尿路変向法が尿道再発の頻度にどのように影響するかも,現時点では明らかではない。尿路変向法の再発への影響に関しては相反する結果が報告されているが,その影響を確定できるほど十分な知見はない。

現在のところ,回腸新膀胱などの自排尿型の尿路再建を考慮した場合の尿道摘除の絶対適応は,前部尿道に腫瘍がある場合と根治的膀胱摘除術の際の迅速病理検査で尿道切除縁に腫瘍性病変が存在する場合である 2)3)。ただし,後者の場合には術前に十分に患者と相談しておく必要がある。術中の迅速病理検査は無駄な TURBTを避けるという意味では正しい 2)3)し,さらに術前の TURBT による前立腺部尿道の所見と摘出標本における前立腺部尿道断端の病理検査の所見との一致率は,術前の所見と術中の迅速病理検査とのそれより低いという検討結果もあり,尿道を用いることをはじめから除外すべきではない,という意見にも正当性がある 6)。しかし,根治手術前に時間をかけて患者と尿路変向法を相談できるという点では,TURBT の際に前立腺部尿道の生検を行い腫瘍性病変の有無を確認することにも意味がある 7)。わが国ではこの方法をとるほうが実際的であろう。また,回腸導管など自排尿型尿路再建以外の尿路変向を行う場合には,膀胱上皮内癌,多発腫瘍などの存在は尿道再発と関連する傾向があるので 2),これらの要因も考慮し尿道摘除の適応を決定する必要がある。

【参考文献】

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CQ 12  
根治手術における神経温存の適応症例と機能的結果は?
Answer

神経温存手術の厳密な適応基準は設定されていないが,神経温存で根治性が損なわれないと判断される場合には適応がある。神経温存により術後の尿禁制(自排尿型の尿路再建の場合),勃起機能が維持されやすくなる。(推奨グレー ドB)

【解 説】

根治的膀胱摘除術における神経温存手術の目的は,癌に対する手術の根治性を損 なうことなく,術後の尿禁制(従って腸管利用の自排尿型尿路再建を施行する症例) および勃起機能(女性では性機能)の速やかな改善を促進し,QOLの向上に資す ることである。したがって,根治的摘除が担保されれば神経温存手術が適応になる と考えられる。

Schoenberg ら1)は,T1-T3bで側方靱帯に肉眼的な浸潤がない101例の患者に 神経温存を行ったが,5年局所再発率は5%,5年および10年全生存率はそれぞれ 67%,54%と,非温存手術の場合とは遜色がないことから,癌治療の結果としても 問題ないとしている。一方,Kesslerら2)は根治性を損なわなければ適応があるとし, 両側の神経温存は膀胱癌が頂部,前壁あるいは筋層非浸潤癌の多発の患者でのみ施行し,片側に癌が認められる場合には対側の神経温存のみを行った。局所再発率は ≦ pT2N0 では 3%,pT3-4N0 で 11%,pN+で 13%とこれまでの非温存と違いが ないことを示している。

術後の尿禁制,勃起機能改善に関して,Kessler ら 2)は神経温存により術後の昼 間の尿禁制はより短期間に出現し,勃起機能の回復もより短期間で出現しかつ回復 の割合が高かったとしている。また,女性での自排尿型尿路再建例では,神経温存 により正常の排尿状態がより得られやすくなり,非神経温存では自己導尿の症例の 割合が明らかに増加すると報告されている 3)

勃起機能の改善については,Kessler ら 2)の成績では両側神経温存例>片側温存 例>非神経温存の順で回復時期および割合ともにより良好であった。ただし,2 年 回復率は 31%と満足すべきものではなかった。Schoenberg ら 1)は,神経温存例の うち術後の勃起機能を評価できた 47%で勃起機能が回復(性交可能)したとして いる。

なお,比較的若年者で T2 以下癌であれば精嚢あるいは前立腺温存手術(精嚢, 精管,前立腺温存)が適応になり,この手術でより確実な尿禁制(昼間の尿禁制: 97%,夜間の尿禁制:95%)と勃起機能(勃起能の維持:82%)の術後の回復が得 られるとする報告もある 4)。しかし,癌治療としての長期経過観察の結果は得られ ていない。

【参考文献】

1) Schoenberg MP, Walsh PC, Breazeale DR, et al. Local recurrence andsurvival following nerve sparing radical cystoprostatectomy for bladdercancer:10-year followup. J Urol. 1996;155:490-4.

2) Kessler TM, Burkhard FC, Perimenis P, et al. Attemted nerve sparingsurgery and age have a significant effect on urinary continence anderectile function after radical cystoprostatectomy and ileal orthotopicbladder substitution. J Urol. 2004;172:1323-7.

3) Stenzl A, Jarolin L, Coloby P, et al. Urethra-sparing cystectomy and orthotopic urinary diversion in women with malignant pelvic tumors. Can-cer. 2001;92:1864-71.

4) Vallancien G, Fettouh HAE, Cathelineau X, et al. Cystectomy with prostate sparing for bladder cancer in 100 patients:10-year experience. JUrol. 2002;168:2413-7.


CQ 13  
各種尿路変向あるいは尿路再建の適応は?
Answer

尿路変向あるいは再建術が癌の制御に影響することはない。したがって,その選択は患者と十分に相談した上で決定されるべきである。患者の社会的背景,医学的背景(合併症,performance status,など)を考慮する必要がある。回腸導管造設術は現時点でも標準的な尿路変向法であるが,尿道に腫瘍性病変がない場合には自排尿型の腸管利用新膀胱造設術の可能性も追求すべきである。(推奨グレー ドB)

【解 説】

現在わが国で繁用されている尿路変向あるいは再建術には,非禁制型尿路変向術と禁制型尿路変向あるいは再建術とがある。前者の代表的な術式は,尿管皮膚瘻術,回腸(結腸)導管造設術であり,後者では尿禁制代用膀胱造設術,腸管利用新膀胱造設術である。

尿管皮膚瘻術は,短時間で施行でき簡便で,腸管利用尿路変向がリスクを伴う患者や合併症を持つ患者に適応になる 1)。最近では,鏡視下手術としての尿管皮膚瘻術も行われている 2)

非禁制型尿路変向術では回腸導管造設術が標準術式である。回腸導管造設術の適応範囲は広い。根治的膀胱摘除術が可能な全ての患者に適応がある。しかし,早期の合併症では,重篤なものは少ないが,その頻度は決して低くはない 3)。晩期合併の出現内容も多岐にわたり,長期の経過観察が強調されている 4)。禁制型尿路変向には禁制型代用膀胱造設が,禁制型再建術には腸管利用新膀胱造設術があるが,最近は後者の方が圧倒的に多い。腸管利用新膀胱造設術では利用する腸管の違い,術式の違いなどがあるが,回腸新膀胱造設術が一般的であり,Studer 法,Hautmann 法が代表的な術式である 5)。自排尿可能である点が大きな利点であることはいうまでもなく,したがって,自己管理が十分可能な患者ではその意義は大きい。回腸新膀胱造設術は以下の患者以外であれば全て適応になる。

  • 腹圧性尿失禁
  • 腎機能低下(血清クレアチニン 1.5mg/dl 以上)
  • クローン病などの消化器疾患
  • 男性での前立腺部尿道の癌,女性での膀胱頸部の癌

健康関連 QOL の向上が他の尿路変向術と比較して回腸新膀胱でより明らかであるかどうかに関しては現時点では不明である 6)7)。このこともあり,尿路変向あるいは再建の術式に関して患者と十分に話し合う必要性がある。

【参考文献】

1) Deliveliotis C, Paratsoris A, Chrisofos M, et al. Urinary diversion in highrisk elerly patients:modified cutaneous ureterostomy or ileal conduit?Urology. 2005;66:299-304.

2) Yoshimura K, Ichioka K, Terada N, et al. Retroperitoneoscopic tubulesscutaneous ureterostomy. BJU Int. 2002;89:946-66.

3) Nieuwenhuijzen JA, deVries RR, Bex A, et al. Urinary diversion aftercystectomy:the association of clinical factors, complications and functional results of four different diversions. Eur Urol. 2008;53:834-44.

4) Madersbacher S, Schmidt J, Eberle JM, et al. Long-term outcome of ilealconduit diversion. J Urol. 2003;169:985-90.

5) Hautmann RE, Volkmer BG, Schumacher MC, et al. Long-term results ofstandard procedures in urology:the ileal neobladder. World J Urol.2006;24:305-14.

6) Porter MP, Penson DF. Health related quality of life after radical cystectomy and urinary diversion for bladder cancer:a systematic reviewand critical analysis of the literature. J Urol. 2005;173:1318-22.

7) Gerharz EW, Mansson A, Hunt S, et al. Quality of life after cystectomyand urinary diversion:an evidence based analysis. J Urol. 2005;174;1729-36.


CQ 14  
自排尿型尿路再建の利点と問題点は?
Answer

自排尿型尿路再建には回腸が用いられることが多いが,回腸新膀胱ではほぼ正常に近い尿禁制あるいは排尿状態が得られる可能性が利点である。この再建が癌の制御に影響することはないが,良好な長期成績を得るためには周到な経過観察が必要となる。(推奨グレー ドB)

【解 説】

自排尿型尿路再建には回腸が用いられることが多いが,結腸が利用されることもある。回腸を用いた自排尿型尿路再建(回腸新膀胱)では,ほぼ正常に近い尿禁制あるいは排尿状態が得られる可能性があること,良好なボディイメージとなることなどが利点としてあげられている1)。さらには尿道再発のリスクも軽減する可能性も指摘されている。しかし,これらの良好な長期成績を得るためには周到な経過観察が必要となる2)

癌の制御:癌の尿道再発と局所(骨盤内)再発が問題となる。尿道温存の適応は以前と比較すると広がっており,その適応下での尿道再発率はHautmann法では1.5%,Studer法では5.0%とされており,これらの頻度は非禁制型の尿路変向の場合よりも低いとされている2)-4)。尿道再発の早期発見の方法,経過観察間隔などは確立されていないが,Hautmann2)は顕微鏡的血尿あるいは尿流の変化が初発症状であるとしている。Hautmann法を行った患者での局所再発率は10%であり,回腸新膀胱の機能へ影響を及ぼしたのは1.4%のみであったと報告されている2)

回腸新膀胱の機能:昼間の尿禁制に関しては90%以上の患者で確保されるが,夜間の禁制の割合は70%程度に低下する。その理由の一つとしては,夜間における尿道外括約筋の緊張低下が指摘されている3)。長期経過では排尿困難も出現する。男性では5-10%に排尿困難(尿閉)が認められるが2)5)6),経過とともに増加の傾向が指摘されている2) 6)。特に,女性患者での排尿困難の割合が経過とともに増加し,5年ではその割合が50%に達するとの指摘もある2)。手術手技の改善がその割合を軽減する可能性もあるが,現時点ではその機序は完全には解明されていない。

水腎症:水腎症などの上部尿路の障害は最近の患者では3%以下である2)3)。逆流防止手術は,尿管腸管吻合部狭窄の割合を増加させるので必要がないとされている。ただし,新膀胱のコンプライアンスが十分でない術後早期では急性腎盂腎炎が起きやすい傾向もある。

代謝異常:代謝異常に関しては,電解質異常,代謝性アシドーシスが術直後では時々見られるが,晩期合併症として出現する時には何らかの腎機能異常を合併している。治療を必要とする高クロール性アシドーシスが晩期合併症として出現する割合は低い2)3)。ただし,骨密度への影響が懸念されるが,その検討結果は一致していない。VB12は経過観察とともに低下する傾向があるが,これが貧血の原因となったとする報告はない。

QOL:Hautmann法,Studer法などの回腸新膀胱に代表される自排尿型尿路再建が,本当に患者のQOL向上に寄与しているのかについては異なる見解がある。1つの尿路変向/尿路再建法が,他の尿路変向/尿路再建法をQOLの面で明らかに優れているということを証明した研究はない7)8)。その大きな理由の一つは,妥当性の認められた質問票を用いた良質な前向き研究がないからである7)8)。この点の検討が今後に向けて欠かせない。

【参考文献】

1) Meyer JP, Fawcett D, Gillatt D, et al. Orthotopic neobladder reconstruction--what are the option. BJU Int. 2005;96:493-7.

2) Hautmann RE, Volkmer BG, Schumacher MC, et al. Long-term results ofstandard procedures in urology:the ileal neobladder. World J Urol.2006;24:305-14.

3) Studer UE, Burkhard FC, Schumacher M, et al. Twenty years experience with an ileal orthotopic low pressure bladder substitute-lessons tobe learned. J Urol. 2006;176:161-6.

4) Stein JP, Clark P, Miranda G, et al. Urethral tumor recurrence followingcystectomy and urinary diversion:clinical and pathological characteristics in 768 male patients. J Urol. 2005;173:1163-8.

5) Tanaka T, Kitamura H, Takahashi A, et al. Long-term functional outcome and late complications of Studer’s neobladder. Jpn J Clin Oncol.2005;35:391-4.

6) Arai Y, Takeda A, Taki Y, et al. and the Tohoku-Kyoto Urinary Reconstruction Study Group. 5-year interval change in voiding function of orthotopic ileal neobladder. Int J Urol. 2006;13:703-6.

7) Porter MP, Penson DF. Health related quality of life after radical cystectomy and urinary diversion for bladder cancer:a systematic reviewand critical analysis of the literature. J Urol. 2005;173:1318-22.

8) Gerharz EW, Mansson A, Hunt S, et al. Quality of life after cystectomyand urinary diversion:an evidence based analysis. J Urol. 2005;174;1729-36.


CQ 15  
周術期化学療法の利点と欠点は?
Answer

周術期化学療法が筋層浸潤性膀胱癌の治療成績を向上させる可能性がある。術前あるいは術後化学療法にはそれぞれ利点,欠点があるが,現時点で明らかに生存率向上の効果が示されているのはcisplatinを含む多剤併用術前化学療法である。(推奨グレー ドA)ただし,日常臨床で標準的に使用されているというわけではない。

【解 説】

既述のように,筋層浸潤性膀胱癌に対する根治的膀胱摘除術の治療成績では,pT2であれば70-80%以上の5年生存率が報告されているが,pT3以上の局所進行癌では生存率が明らかに低下する。筋層浸潤性膀胱癌の治療成績の向上の主役は周術期の化学療法であることに異論はない。実際,EORTC/MRCの検討では根治的膀胱摘除術単独(あるいは放射線療法単独)よりもCMV療法(cisplatin,methotrexate,vinblastine)併用のほうが5年生存率が向上した1)。また,SWOGIntergroupの臨床試験でも根治的膀胱摘除術にMVAC療法(cisplatin,methotrexate,doxorubicin,vinblastine)を併用したほうが,手術単独より生存期間が延長した2)。これらの報告はいずれも術前化学療法であるが,周術期の化学療法のうち術前化学療法と術後化学療法のいずれがより効果的かについては決定されていない。

術前化学療法の利点として,①原発巣の化学療法に対する反応を臨床経過の予測因子とすることが可能である,②必要な化学療法の遅延がない,③化学療法に反応する癌では顕微鏡的転移に対する効果が期待できる,④化学療法に効果がある場合には膀胱温存の可能性がある,⑤化学療法の忍容性と遂行率が高い,などがある3)。一方,術後化学療法の利点としては,①正確な病理学的病期が得られる,②化学療法を必要としない再発のリスクの低い患者を見出せる,③外科的治療の遅れがない,④化学療法に反応性が乏しい癌に対しても手術という効果的な治療を先行できる, などがある3)

これまでの周術期化学療法を検討したメタ・アナリシスでは,cisplatin を含む多剤併用術前化学療法は標準治療のみより有意に全生存率,無再発生存率を向上させることが示された 4)。その効果によりそれぞれの生存率が 5%,9%向上すると考えられている。一方,cisplatin を含む多剤併用術後化学療法の効果は推測されるものの,適切な臨床試験が少ないため結論を引き出すには至っていない 5)

術前化学療法の有用性がある程度示されたとしても,cisplatin を含む多剤併用化学療法のうちどのような抗癌剤の組み合わせが術前化学療法として最も有効なのかは明らかではない。尿路上皮癌に対する標準化学療法は M-VAC 療法であるが,転移巣のある進行性尿路上皮癌で示された GC 療法(gemcitabine,cisplatin)の効果が術前化学療法の効果として再現できるかどうかは明らかではない 6)。また,特に術前化学療法では,有害事象の可能性を最小限に抑えてかつ抗腫瘍効果を最大限に発揮させ,さらに手術の合併症発生に影響しないような術前化学療法の施行回数の確立も必要であるが,現時点では不明である。なによりも,周術期化学療法により最も利益が得られる患者集団を明らかにする必要がある。

【参考文献】

1) International collaboration of Trialists. Neoadjuvant cisplatin, methotrexate, and vinblastine chemotherapy for muscle-invasive bladder cancer: a randomized controlled trial. Lancet. 1999;354:533-40.

2) Grossman HB, Natale RB, Tangen CM, et al. Neoadjuvant chemotherapy plus cystectomy compared with cystectomy alone for locally advanced bladder cancer. N Engl J Med. 2003;349:859-66.

3) Jeff HG, Moore MJ, Tannock IF. The role of systemic chemotherapy in the management of muscle-invasive bladder cancer. Lancet Oncol. 2002; 3:738-47.

4) Advanced Bladder Cancer (ABC) Meta-Analysis Collaboration. Neoadjuvant chemotherapy in invasive bladder cancer:update of a systematic review and meta-analysis of individual patient data. Eur Urol. 2005;48: 202-6.

5) Advanced Bladder Cancer (ABC) Meta-analysis Collaboration. Adjuvant chemotherapy in invasive-bladder cancer:update of a systemic review and meta-analysis of individual patient data. Eur Urol. 2005;48:189-201.

6) von der Maase H, Sengelov L, Roberts JT, et al. Long-term survival results of randomized trial comparing gemcitabine plus cisplatin, with methotrexate, vinblastine, doxorubicin, plus cisplatin in patients with bladder cancer. J Clin Oncol. 2005;23:4602-8.


CQ 16  
根治手術+尿路変向に伴う合併症は?
Answer

尿路変向の術式によりさまざまな合併症が存在するため,短期間のみならず長期間の観察が必要である。

【解 説】

尿管皮膚瘻は術式が単純で手術侵襲の少ない尿路変向術である。一旦,チューブレス化に成功すれば,その後にカテーテル留置が必要になる症例はほとんどない。一方,頻度の高い合併症はストーマ狭窄で 50%以上とされる 1)。他にはストーマ周囲の皮膚炎があり,重篤な合併症として反復する尿路感染に伴う腎機能の低下や結石の形成がある。豊田法 2)と広川法 3)による術式では 80-90%の症例でチューブレス化が達成されている。尿管皮膚瘻は,術後の QOL も考慮すると,高齢者,ハイリスク,進行病期など症例を選択して行うほうが望ましいと考えられる。

標準的な尿路変向術として広く普及している回腸導管造設術も,長期観察例が多くなるにつれ合併症に関する報告が散見される。Maderbacher らは,少なくとも5 年間の追跡調査が可能であった 131 名の合併症を報告 4)しており,87 名(66%)で 192 件の合併症が認められた。その内訳は腎機能低下もしくは形態異常(27%),ストーマ関連(24%),消化管関連(24%),有症状の尿路感染症(23%),尿管導管吻合狭窄(14%),尿路結石(9%)であった。なお,吻合狭窄に対しては内視鏡的に拡張する方法や尿路結石に対しては必要に応じて ESWL などが考慮される。

回腸利用の新膀胱造設術の代表的な術式として Hautmann 法 5)と Studer 法 6)があげられる。新膀胱造設術の合併症は術後早期(3 カ月以内)と晩期(3 カ月以上)のものに大きく分けられる。術後早期では新膀胱からの尿漏れがあげられる。他に創部感染(1.9-5.8%),イレウス(3.9-10.6%),急性腎盂腎炎(3-7.4%)などがある。晩期合併症には尿管新膀胱吻合狭窄が 2-9.3%に,VUR が 3.3%に認められる。他に腹壁瘢痕ヘルニア(3.8-4.6%),リンパ嚢腫(2-2.7%),アシドーシス(1.1-4.4%)があげられる。また,回腸が切除されることにより 13.6-16.6%でビタミン B12 欠乏が起こると報告されている。

【参考文献】

1) MacGregor PS, Montie JE, Straffon RA. Cutaneous ureterostomy as pal-liative diversion in adults with malignancy. Urology. 1987;30:31-4.

2) Toyoda H:A new technique for catheterless cutaneous ureterostomy. JUrol. 1977;117:276-8.

3) Hirokawa M, Iwasaki A, Yamazaki A, et al. Improved technique of tube-less cutaneous ureterostomy and results of permanent urinary diversion.Eur Urol. 1989;16:125-32.

4) Madersbacher S, Schmidt J, Eberle JM, et al. Long-term outcome of ilealconduit diversion. J Urol. 2003;169:985-90.

5) Hautmann RE, de Petriconi R, Gottfried HW, et al. The ileal neobladder:complications and functional results in 363 patients after 11 years of fol-lowup. J Urol. 1999;161;422-7.

6) Studer UE, Burkhard FC, Schumacher M, et al. Twenty years experi-ence with an ileal orthotopic low pressure bladder substitue--lessons tobe learned. J Urol. 2006;176:161-6.


CQ 17  
高齢者に対する根治手術は可能か?
Answer

PS が良好で重篤な既往症のない高齢者に対する膀胱全摘除術は推奨される。(推奨グレー ドB)

【解 説】

手術法や麻酔法の進歩により年齢による周術期の死亡率に差は認められなくなってきており,根治性と QOL のバランスが重要と考えられる。多数例の高齢者で検討した報告は少ないが,Souli ら 1)は 75 歳以上の 73 名に施行された根治的膀胱全摘除術の検討で,早期合併症で多いのは遷延するイレウス(12.3 %),腎盂腎炎(12.3%),せん妄(10.9%),肺炎(8.2%)であるとし,高齢者の特有の合併症を示している。Clark ら 2)は回腸導管または新膀胱形成術が施行された 70 歳以上の患者 364 名(50 名は 80 歳以上)で,尿路変向法による周術期(術後 30 日以内)死亡率,早期(術後 90 日以内)および晩期(術後 90 日以降)合併症,尿路変向に関連した合併症に差はなかったとしている。また,Malavaud ら 3)は合併症の発生は年齢よりも既往症に影響を受けるとしている。前述の Souli ら 1)は多専門チームが診療することで周術期の合併症には対応可能としている。

Deliveliotis ら 4) は ASA(American Society of Anesthesiologists)スコアの高い 75 歳以上の高齢者に対する尿管皮膚瘻(n=29)と回腸導管(n=25)の検討で,周術期,早期,後期の合併症はそれぞれ 13.7% vs. 40%, 24.1% vs. 60%, 17.2% vs. 56%と全てにおいて回腸導管での頻度が高かったとしており,ハイリスク高齢患者への尿管皮膚瘻の利点を報告している。

【参考文献】

1) Souli M, Straub M, Gam X, et al. A multicenter study of the morbidity of radical cystectomy in select elderly patients with bladder cancer. JUrol. 2002 Mar;167(3):1325-8.

2) Clark PE, Stein JP, Groshen SG, et al. Radical cystectomy in the elderly:comparison of clincal outcomes between younger and older patients. Cancer. 2005 Jul 1;104(1):36-43. PMID:15912515[PubMed-indexedfor MEDLINE]

3) Malavaud B, Vaessen C, Mouzin M, et al. Complications for radical cystectomy:impact of the American Society of Anesthesiologists score.Eur Urol. 2001;39:79-84.

4) Deliveliotis C, Papatsoris A, Chrisofos M, et al. Urinary diversion in highrisk elderly patients:modifi ed cutaneous ureterostomy or ileal conduit?Urology. 2005 Aug;66(2):299-304.


Ⅴ.Stage W(T4bN0M0,anyTN1-3M0,anyT anyNM1)の診断と治療

(静岡県立静岡がんセンター泌尿器科 鳶巣賢一)

総  論
1.StageⅣの診断と治療

StageⅣ膀胱癌は,転移病巣はないが骨盤壁あるいは腹壁まで浸潤したとき(T4bN0M0),あるいはT分類に関係なくリンパ節転移か遠隔臓器転移が存在している場合(anyTN1-3M0あるいはanyT anyNM1)と定義される。局所浸潤や転移病巣の有無は,胸・腹部,骨盤部CTスキャンあるいはMRI検査,骨シンチグラフィーなどで確定診断される。

通常,この状態においては根治を期待することは困難で,何らかの併用療法を駆使し,日常生活上のQOLを維持した延命あるいは症状緩和が主目的となることが多い。腫瘍が骨盤壁まで進展した事例では,単独療法として膀胱全摘除術が選択されることはなく,化学療法単独あるいは化学療法と放射線治療の併用が積極的な延命をめざした治療法として推奨される1)2)。化学療法のレジメとしては,StageⅡ,Ⅲの項で記述されたM-VAC療法あるいはGC療法などが有力な選択肢となる。しかし,T4bN0-1M0 あるいはanyTN1M0の場合,術前の化学療法±放射線治療でPR以上の腫瘍縮小が得られたとき,その後に膀胱全摘除術の追加が考慮されることがある3)。またanyTN1M0に対する膀胱全摘除術後に化学療法が追加されることで,より良好な生存期間が得られたという報告がある4)-7)。他方,最初の化学療法±放射線治療で有意な効果が得られなかった時には,全身状態を評価して,新しい薬剤を用いた化学療法が考慮されるか,あるいは症状緩和の方針(Best supportivecare:BSC)への移行を考えることになる8)9)

ただし,これらの積極的な治療は,十分な腎機能,心・肺機能,良好なPSが保持され,患者が治療に同意されたときに実施されるべきである。これらの条件が整わない状況になったときにはBSCへと移行することになる。

すでに遠隔臓器転移を有するanyTN2-3M0あるいはanyT anyNM1に対する治療としては,腎・心・肺機能が許容するならば,M-VAC療法やGC療法による全身的化学療法が第一優先となる10)-12)。もし,骨転移による疼痛,局所再発,その進展による骨盤痛などがあるときには症状緩和の目的で局所的な放射線治療の追加を考慮する。これらの治療による有効性は,stageⅡ,Ⅲに対するものと同じで,根治は実現しがたいが,延命効果は期待できる。もし,このような化学療法が実施できないか,たとえ実施しても無効,あるいは病巣の再増大がみられたときには,Taxane系やgemcitabineなどの新しい試験的な薬剤の投与を選択するか,あるいはBSCへ移行する8)9)-14)

2.治療抵抗性の進行膀胱癌に対する症状緩和

あらゆる臨床病期において,手術療法,化学療法,放射線治療が駆使され,もし,根治が得られないときには,やがて積極的治療を断念し,症状緩和を目標とする段階に至る。その場合,病巣の進展とともに,さまざまな症状が出現するため,状況に合せた症状緩和対策が考えられなければならない 15)16)

膀胱が温存された状態で,骨盤底において局所進展が見られたとき,①蓄尿・排尿などの膀胱機能障害(血尿,頻尿,排尿痛,膀胱テネスムス,膀胱タンポナーゼなど),②尿管閉塞による水腎症,腎後性腎不全が重要な問題になる。さらには膀胱温存の有無にかかわらず,③骨盤内での局所進展による骨盤・会陰部痛,排便障害,下肢浮腫などが出現する。さらに,④肺・骨・肝などの遠隔臓器への転移病巣が増大すると,それぞれの臓器機能障害を惹起する。

①に対する症状緩和は,膀胱への尿流入と出血が続く限り,その対応は困難である。腫瘍と血餅で充満した膀胱に尿が流入すると,膀胱容量の低下による頻尿や頻回の尿閉,尿失禁がみられる。炎症を伴うことが多いので,排尿時痛,さらに強烈な尿意があるにもかかわらず少量の血尿が出るだけとなり,極めて強いテネスムスの症状を惹起することがある。膀胱動脈の塞栓術,あるいは保存的に頻回の排尿,膀胱内カテーテル留置,閉塞時の洗浄・持続還流を繰り返すしかなくなる 17)18)。あまりに膀胱刺激症状が強いときには,仙骨硬膜外カテーテルより持続的に局所麻酔薬を注入し苦痛を緩和することさえある。また,外科的に尿管を結紮し,人工的に水腎症として腎瘻術で対応することもある 19)- 21)

②局所の病巣がさらに増大すると,下部尿管を閉塞させ水尿管・水腎症になる。その場合の対策としては,全体としての生命予後,全身状態をみながら腎瘻術,尿管皮膚瘻,まれには回腸導管などの尿路変向術が考慮される 19)- 21)。膀胱機能が期待できないので内瘻術は不適である。

③骨盤内における局所進展が惹起する骨盤・会陰部の疼痛,下肢浮腫に対する症状緩和として,放射線治療の既往がないときには,外照射も有望な選択肢となる 22)23)。しかし,すでに化学療法,放射線治療の既往がある場合には,薬物による全身的な症状緩和が開始される。

④遠隔臓器への転移による症状緩和は,それぞれの事例で個別に考えられる 24)25)。肺転移は通常は多発性で,初期には無症状だが,いずれ血痰が出現し,進行すると息切れの症状がみられるようになる。癌性リンパ管症という状態になると,呼吸困難から体動制限がみられるようになる。酸素療法が第一選択となるが,それでも呼吸困難が除かれないときには,モルヒネ・抗不安薬・コルチコステロイドなどが考慮される 25)

骨転移の場合,通常は多発性で早期から疼痛の訴えがみられる。もし,少数箇所ならば疼痛緩和のための放射線治療が考慮されるが,どちらかといえば全身的な疼痛管理が必要なことが多い。その場合,NSAIDs からオピオイドに至る WHO 方式の疼痛治療法に従うことになる24)

【参考文献】

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4) Lehmann J, Retz M, Wiemers C, et al. AUO-AB 05/95. Adjuvant cisplatin plus methotrexate versus methotrexate, vinblastine, epirubicin, andcisplatin in locally advanced bladder cancer:results of a randomized,multicenter, phase V trial(AUO-AB 05/95). J Clin Oncol. 2005;23(22):4963-74.

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19) Ubrig B, Lazica M, Waldner M, et al. Extraperitoneal bilateral cutaneousureterostomy with midline stoma for palliation of pelvic cancer. Urology.2004;63(5):973-5.

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Stage Ⅳの診断と治療 CQ

CQ 1  
StageⅣ膀胱癌に対する膀胱全摘除術や転移病巣に対する手術療法の適応はあるか?
Answer

病巣が骨盤内に限局し,化学療法±放射線治療によりきわめて良好な腫瘍縮小効果が期待できるときには根治的膀胱全摘除術の併用も考慮できる。(推奨グレー ドB)

【解 説】

T4bN0M0,あるいはanyTN1M0において,先に化学療法±放射線治療を実施し,膀胱外の病巣がほとんど確認できないほどに縮小したときには,リンパ節郭清術を伴う膀胱全摘除術が予後改善に寄与することが期待できる1)。ただし,このような症例を保存的に観察したときと比べて,本当により長期の生命予後が期待できるかどうかは不明である。

同様に,anyTN1M0症例で,リンパ節郭清術と膀胱全摘除術で切除断端陰性の状態で手術が実施できると判断されたときには,根治的膀胱全摘除術を先行し,術後化学療法で長期の生命予後を期待できる2)-6)。このような併用療法による恩恵を受ける患者とそうでない患者を事前に判断することは重要なことであるが,現時点ではそのような基準は確立していない。

他方,肝転移あるいは肺転移などが存在し(anyT anyNM1),最初の化学療法によりCRが得られたとしても,転移病巣を外科的に切除するという選択肢は,基本的には推奨できない。すでに顕微鏡的な腫瘍細胞の全身播種が起こっていると考えるからである。

【参考文献】

1) Grossman HB, Natale RB, Tangen CM, et al. Neoadjuvant chemotherapyplus cystectomy compared with cystectomy alone for locally advancedbladder cancer. N Engl J Med. 2003;349(9):859-66.

2) Lehmann J, Retz M, Wiemers C, et al. AUO-AB 05/95. Adjuvant cisplatin plus methotrexate versus methotrexate, vinblastine, epirubicin, andcisplatin in locally advanced bladder cancer:results of a randomized,multicenter, phase Ⅲ trial(AUO-AB 05/95). J Clin Oncol. 2005;23(22):4963-74.

3) Stöckle M, Meyenburg W, Wellek S, et al. Advanced bladder cancer(stages pT3b, pT4a, pN1 and pN2):improved survival after radicalcystectomy and 3 adjuvant cycles of chemotherapy. Results of a controlled prospective study. J Urol. 1992;148(2 Pt 1):302-6; discussion306-7.

4) Stöckle M, Wellek S, Meyenburg W, et al. Radical cystectomy with orwithout adjuvant polychemotherapy for non-organ-confined transitionalcell carcinoma of the urinary bladder:prognostic impact of lymph nodeinvolvement. Urology. 1996;48(6):868-75.

5) Lehmann J, Franzaring L, Throff J, et al. Complete long-term survivaldata from a trial of adjuvant chemotherapy vs control after radical cystectomy for locally advanced bladder cancer. BJU Int. 2006;97(1):42-7.

6) Nagele U, Anastasiadis AG, Merseburger AS, et al. The rationale forradical cystectomy as primary therapy for T4 bladder cancer. World JUrol. 2007;25(4):401-5.


CQ 2  
進行膀胱癌に対する尿路変向術の適応はあるか?
Answer

全体としての病巣の制御が期待され,水腎症による腎後性腎不全が最もQOLと生命予後を決定する重要な課題である時,尿管皮膚瘻術,まれには回腸導管術のみを実施することもありうる。(推奨グレー ドB)

【解 説】

進行膀胱癌に対する積極的治療を断念したとき,次は,より良好なQOLを確保した生存期間を延長できる方策を考えることになる

骨盤内の局所進展により下部尿管以遠の尿路閉塞がおこり,化学療法±放射線治療などの効果が期待できないとき,尿管皮膚瘻術などの尿路再建術のみを実施するという選択肢もありうる1)-3)。腎後性腎不全による早期の死亡を回避することが目的である。たとえ,遠隔臓器転移があっても,化学療法などによる増殖の制御が期待され,生命予後が比較的長いと推定されたときに積極的に考慮される。

とくに,腫瘍再増殖時の膀胱機能障害による苦痛を回避する意味でも,重要な選択肢になることがある。

【参考文献】

1) Ubrig B, Lazica M, Waldner M, et al. Extraperitoneal bilateral cutaneousureterostomy with midline stoma for palliation of pelvic cancer. Urology.2004;63(5):973-5.

2) Puppo P, Perachino M, Ricciotti G, et al. Laparoscopic bilateral cutaneousureterostomy for palliation of ureteral obstruction caused by advancedpelvic cancer. J Endourol. 1994;8(6):425-8.

3) El-Tabey NA, Osman Y, Mosbah A, et al. Bladder cancer with obstructive uremia:oncologic outcome after defi nitive surgical management.Urology. 2005;66(3):531-5.


Ⅵ.全身化学療法

(九州大学泌尿器科 横溝 晃,内藤誠二)

総  論
1.M-VAC化学療法の適応,レジメ,治療効果,有害事象

転移性または再発性膀胱癌に対するM-VAC療法(methotrexate:MTX,vinblastine:VLB, doxorubicin:ADM, cisplatin:CDDP)の有効性は,Sternbergら1)2)によって最初に報告された。このM-VAC療法は,1990年に発表されたCISCA(cisplatin, cyclophosphamide, adriamycin)との無作為化比較試験(randomizedcontrol trial:RCT)3)で,奏功率がそれぞれ65%対46%(p<0.05),生存期間中央値がそれぞれ48.3週対36.1週(p<0.05)と,CISCAより有効であることが証明された。さらに1992年のcisplatin単剤とのRCTの結果4),奏効率がそれぞれ,39%対12%(p<0.0001)、生存期間中央値がそれぞれ12.5カ月対8.2カ月(p<0.05)であり,M-VAC療法の有効性が確立され,今日まで,尿路上皮癌の化学療法のgoldstandardとなってきた。M-VAC療法のレジメを表に示す。しかし,その治療効果に関して,奏効率(response rate:RR)は50-70%前後と比較的高いものの,3年生存率は20-25%,生存期間は中央値13カ月と報告され,奏効期間が短期間であり,長期の生存が期待できないことが大きな問題となっている2)5)。また,有害事象も比較的多く,グレード3-4の嘔気嘔吐が20.8%,グレード4の好中球減少症が65.2%,グレード2-3の口内炎が49%,化学療法による死亡率が最大3%と報告され,投与量の減量を行わずに施行できるのはわずか37%と報告されている6)7)。そのため,治療レジメの改善,もしくは新しい治療レジメの開発が望まれてきた。その一つとして,G-CSFを用いた2週ごとのHigh dose M-VAC(HD M-VAC)療法がEORTC(European Organization for Research and Treatment of Cancer) のProtocol ID30924として試みられた8)9)。これは,HD M-VAC療法と標準治療のM-VAC療法とのRCTである。その結果,HD M-VAC療法と通常のM-VAC療法の奏効率(CR+PR)はそれぞれ64% 対50%(p=0.06),経過観察期間の中央値7.3年での生存率はそれぞれ24.6% 対13.2%(p=0.042),無増悪生存期間は9.5カ月対8.1カ月(p=0.017),5年生存率は21.8% 対13.5%(p=0.042)と報告され8)9),ともにHDM-VAC群が良好であったが,統計的には有意差を認める境界域であり,HD M-VACによる著明な治療成績の改善は認められなかった。

2.GC化学療法の適応,レジメ,治療効果,有害事象

まず,cisplatinはgemcitabineに対して,in vivo, in vitroともに相乗効果があることが示された10)。これを受けて,複数の施設からgemcitabineとcisplatinの2剤によるphase Ⅱ studyの結果が発表され,その比較的良好な有効性と安全性が確認された。そして,GC治療と標準的M-VAC治療を比較する大規模RCT(phaseⅢ study)が行われ,CQ1に示すように,治療成績はM-VACと全く同等で,有害事象が比較的軽微であることが示された6)7)。その治療レジメを表に示す。GC療法の有害事象をM-VAC療法と比較すると,貧血と血小板減少症がM-VACより高頻度と報告されたが,輸血を行った頻度は両者とも同等であった6)。一方,好中球減少症や口内炎,脱毛がGC療法で有意に少なかった。このRCTの長期経過観察後の追加報告でM-VACと同等の治療効果が確認されている7)。2009年のNCCNガイドラインではM-VAC療法に替わりGC療法が第一選択の化学療法となっている。

 M-VAC療法とGC療法の治療レジメ
  Day 1 Day 2 Day 8 Day 15 Day 22
M-VAC MTX (30 mg/m2    
  VLB (3 mg/m2    
  ADM (30 mg/m2        
  CDDP (70 mg/m2        
GC GEM(1,000 mg/m2    
  CDDP (70 mg/m2        

3.neoadjuvant, adjuvant 化学療法の定義,意義,治療効果

筋層浸潤性膀胱癌の治療成績が不十分であるため,膀胱全摘除術または根治的放射線照射という主治療を補助し,治療成績を向上するための化学療法が試みられてきた。主治療の前に行う補助化学療法をneoadjuvant化学療法,後に行うものをadjuvant化学療法と定義されている。neoadjuvant化学療法を行う意義としては,micrometastasisの治療と原発巣のdown stagingにより膀胱全摘除術による癌細胞の摘出効果を高める目的があると考えられている。一方,adjuvant 化学療法は,比較的ステージングエラーが起こりやすい臨床病期ではなく,摘出標本の病理病期による患者選択基準を用いることで,micrometastasisをきたしている可能性の高いハイリスク群を選択して補助治療を行えるという意義がある。

これら2つの補助療法が本当に生存率延長効果を有しているのか,長期間議論されてきた。その中で,最も重要な研究は2003年にSouthwestern Oncology Group(SWOG) から発表された,M-VAC 3コースのneoadjuvant化学療法を行うか否かの大規模RCTである14)。その結果,生存期間の中央値はneoadjuvant群で77カ月であるのに対し,対照群で46カ月であり,数値そのものでは生存の延長が認められたが,両側検定でのp値は0.06であり,統計学的には有意差を認めなかった。さらに白金製剤を基本とするneoadjuvant化学療法を行った複数の臨床研究のメタアナリシス15)では,neoadjuvant群の5年全生存期間が50%であるのに対して,対照群は45%であり,両群間に有意な5%の差がみられている(p=0.016)。2005年に報告された追加データ解析16)でも,5年全生存期間が5%改善し(p=0.003), 疾病特異的生存率が9%改善していた(p<0.0001)。さらに別のメタアナリシス研究ではneoadjuvant群の5年全生存率は56.5%であるのに対して,対照群は50.0%であった(p=0.006)17)。SWOGによるRCTとこれらのメタアナリシスの結果を踏まえ,現状ではneoadjuvant化学療法が好まれる風潮にはなってきているが,一般的にその有用性が確立されたという認識にはまだ至っていない。

一方,adjuvant化学療法については,1991年にSkinnerら18)が前向きRCTでCAP療法(cyclophosphamide, doxorubicin,cisplatin) の有用性を検討し,増悪までの期間と全生存率での有用性を発表した。しかし,この研究は割り付け後の治療法の変更や逸脱例が多く,研究方法に問題があると考えられている。一方,Studerら19)も,cisplatin単剤でのadjuvant 化学療法群を施行するか否かの前向きRCTを行っているが,adjuvant 化学療法群と対照群の5年生存率はそれぞれ54%と57%で,有意差は認められなかった。またStockleらの報告20)21)によると,adjuvant 化学療法としてM-VACまたはM-VEC(M-VEC :methotrexate, vinblastine, epirubicin, cisplatin)を行うかどうかの前向きRCTで,癌の進行率が治療群で27%であったのに対し,対照群では82%であり,5年全生存率もそれぞれ,59%と13%で,有意差を認めている。しかしながらこの研究も,ほとんどがT4で60%の症例はリンパ節転移を伴う進行癌であること,中間解析で治療群の一部にしか有用性がないとの判断で早期に研究が中止されたこと,対照群では再発後に化学療法を勧めていないことなど問題も多く,この結果にもバイアスが多く含まれていると考えられている。以上のように,adjuvant化学療法の有用性についてはまだきちんと評価された大規模RCTがなく,その有用性についてはまだ一定の見解が得られていない。

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2) Sternberg CN, Yagoda A, Scher HI, et al. M-VAC(methotrexate, vinblastine, doxorubicin and cisplatin) for advanced transitional cell carcinoma of the urothelium. J Urol. 1988;139:461-9.

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全身化学療法 CQ

CQ 1  
転移性,再発性膀胱癌に対して,M-VAC療法とGC療法はどちらが有用か?
Answer

全生存期間をエンドポイントとした無作為化比較試験において,両者とも治療効果は同等であることが報告された。有害事象は,好中球減少症,口内炎,脱毛などであり,GC療法の方がより軽微である。(推奨グレー ドA)

【解 説】

M-VAC療法とGC療法を比較した無作為化比較試験の結果,全生存期間,進行までの期間,治療失敗までの期間,奏効率,全てにおいて両者は同等であった1)。その後の長期追跡調査でも同じ結果であり,両者の治療効果に差はないことが明らかとなった2)。有害事象は,GC療法ではグレード3,4の好中球減少症,口内炎,脱毛が少なく,生活の質についても,体重,PS,倦怠感においてGC療法が優れていた1)。欧米においては,GC療法がM-VAC療法に代わって1st line 治療となりつつある。本邦においても,第Ⅱ相試験が施行され3),2008年11月にgemcitabineが保険収載となったので,1st line 治療は従来のM-VAC療法からGC療法へ交代する可能性が高い。2009年のNCCNガイドラインではGC療法が第一選択肢となっている。

【参考文献】

1) Von der Maase H, Hansen SW, Roberts JT et al. Gemcitabine and cispla-tin versus methotrexate, vinblastine, doxorubicin and cisplatin in ad-vanced or metastatic bladder cancer:results of a large, randomized,multinational, multicenter, phase Ⅲ study. J Clin Oncol. 2000;17:3068-77.

2) von der Maase H, Sengelov L, Roberts JT, et al. Long-term survival results of a randomized trial comparing gemcitabine plus cisplatin, withmethotrexate, vinblastine, doxorubicin, plus cisplatin in patients with bladder cancer. J Clin Oncol. 2005;23:4602-8.

3) Akaza H, Naito S, Usami M, et al.;Japanese Gemcitabine Study Group.Effi cacy and safety of gemcitabine monotherapy in patients with transitional cell carcinoma after Cisplatin-containing therapy:a Japanese experience. Jpn J Clin Oncol. 2007;37(3):201-6.


CQ 2  
新規薬剤による化学療法にはどのようなものがあるのか?
Answer

cisplatin,taxan 系抗癌剤(paclitaxel または docetaxel),gemcitabine,ifosfamideなどを用いた多剤併用化学療法の臨床試験が活発に行われている。

現時点では大規模 RCT で M-VAC または GC の治療成績を凌駕するものはないが,今後の検討が期待される。さらに今後は分子標的治療薬を用いた臨床試験の結果にも注目する必要がある。(推奨グレー ドC)

【解 説】

キードラッグといわれる白金製剤に paclitaxel または docetaxel,gemcitabine,ifosfamide など,新しい抗癌剤を組み合わせたさまざまなレジメの治療成績が発表されている。一般的にはより多くの種類の抗癌剤を組み合わせた方が良好な治療成績が期待できると考えられている。GC 療法の抗腫瘍効果を高める目的で,paclitaxel を併用した PCG 療法と GC 療法を比較した大規模 RCT が EORTC30987として進められているが,これまでの報告 1) では,奏効率で PCG 療法が 57 %,GC 療法が 46%と有意差を認めたが(p = 0.02),無増悪生存期間はそれぞれ 8.4 カ月と 7.7 カ月(p = 0.10),全生存期間は 15.7 カ月と 12.8 カ月(p = 0.12)で,いずれも有意差を認めていない。

また,最近,分子標的治療薬を用いた試験も進行中である。例えば,HER2/neu は,尿路上皮癌で過剰発現が見られる分子であるが,HER2/neu に対するモノクローナル抗体である trastuzumab と paclitaxel , carboplatin , gemcitabine を用いた phaseⅡ試験では,HER2 陽性者(52.3%)に対する奏効率が 70%,全生存期間の中央値14.1 カ月と良好な治療成績であった 2)。他にも bevacizumab や sunitinib, sorafenibなどを用いた試験が進行中であり,その結果が待たれる。

【参考文献】

1) Bellmunt J, von der Maase H, Mead GM, et al. Randomized phase Ⅲstudy comparing paclitaxel/cisplatin, /gemcitabine(PCG)and gemcitabine,/cisplatin(GC) in patients with locally advanced(LA) or metastatic(M) urothelial cancer without prior sysemict herapy;EORTC30987/Intersroup Study. ASCO Meeting Abstracts 2007.

2) Hussain MH, MacVicar GR, Petrylak DP, et al. Trastuzumab, paclitaxel,carboplatin, and gemcitabine in advanced human epidermal growth factor receptor-2/neu-positive urothelial carcinoma:results of a multicenter phase Ⅱ National Cancer Institute trial. J Clin Oncol. 2007;25:2218-24.


CQ 3  
心,肺,腎機能に問題があるときの化学療法は?
Answer

cisplatinをcarboplatinへ変更したり,肝代謝のtaxan系抗癌剤やgemcitabinを併用したりするレジメが行われているが,症例数が少なく,評価は未定である。(推奨グレー ドC)

【解 説】

cisplatinを基本とした化学療法が尿路上皮癌に対する標準的な化学療法とされているが,その腎毒性などの有害事象のため,少なくとも3分の1以上の患者がこの治療を受けることができないという現状がある1)。carboplatin はcisplatinに比べ,腎毒性などの有害事象が少なく,cisplatinをcarboplatinに置換できるかどうか検討する小規模研究が1990年代に行われた。carboplatin ,methotrexate,vinblastineによる3剤療法を行ったCAMV療法2)とM-CAVI療法3)の結果では,奏効率はそれぞれ39.4%,48%,生存期間の中央値も6カ月,8カ月であり,M-VACと比べ劣っていると考えられた。さらに,carboplatin とcisplatinのそれぞれを基本とした化学療法を比較する小規模のphase Ⅱ RCTの結果でも,cisplatinを基本とした化学療法群の治療成績の方が良好であった4)5)。また,carboplatinにgemcitabine またはpaclitaxel を加えた2剤併用療法の生存期間は,M-VAC療法やGC療法と比べ劣っており6),carboplatinはcisplatinに比べ,腎毒性や神経毒性の有害事象は少ないものの,抗腫瘍効果も劣っていると考えられている。ただし,上記臨床試験は,腎機能障害を有する患者,高齢者,PSの低下した患者などcisplatinを基本とした化学療法が施行できなかった患者が多数含まれており,M-VAC療法と比較する際にはこの患者背景の相違に留意する必要がある。現在,cisplatinを基本とした化学療法が施行できない患者を対象としたcarboplatin+gemcitabineとM-CAVIのRCT試験がEORTC30986として進行中であり,その結果も待たれる。

【参考文献】

1) Lorusso V, Crucitta E, Silvestris N, et al. Italian Bladder Cancer Group.Randomised, open-label, phase Ⅱ trial of paclitaxel, gemcitabine and cisplatin versus gemcitabine and cisplatin as first-line chemotherapy in advanced transitional cell carcinoma of the urothelium. Oncol Rep. 2005;13:283-7.

2) Boccardo F, Pace M, Guarneri D, et al. Carboplatin, methotrexate andvinblastine in the treatment of patients with advanced urothelial cancer. Cancer. 1994;73:1932-6.

3) Bellmunt J, Albanell J, Gallego OS, et al. Carboplatin, methotrexate, andvinblastine in patients with bladder cancer who were ineligible for cisplatin-based chemotherapy. Cancer. 1992;70:1974-9.

4) Bellmunt J, Ribas A, Eres N, et al. Carboplatin-based versus cisplatinbased chemotherapy in the treatment of surgically incurable advancedbladder carcinoma. Cancer. 1997;80:1966-72.

5) Petriolo R, Frediani B, Manganelli A, et al. Comparison between a cisplatincontaining regimen and a carboplatin-containing regimen for recur-rent or metastatic bladder cancer patients. A randomized phase Ⅱstudy. Cancer. 1996;77:344-51.

6) Vaughn DJ. Moving forward in advanced bladder cancer. J Clin Oncol.2007;25:2162-3.


CQ 4  
再発,転移症例の予後と予後因子は?
Answer

化学療法の奏効率と生存率に影響する予後因子として,performance status(Karnofsky performance status(KPS) 80%>)と臓器転移(肺,肝,骨など)をあげる報告が多い。その他の予後因子としては,ヘモグロビン値,アルカリフォスファターゼ値,転移巣の数などがある。(推奨グレー ドB)

【解 説】

切除不能または転移を有する尿路上皮癌患者203人を対象とした研究で,予後に影響する因子はKPS 80%未満と肺,肝,骨など臓器転移であることが判明した1)。KPSが80%以上の患者と80%未満の患者の生存期間の中央値はそれぞれ18.5カ月と10.5カ月であり,臓器転移がない患者とある患者の生存期間の中央値はそれぞれ22.3カ月と11.1カ月であった1)。この二つの因子について,二つとも有する,一つのみ有する,有しない群の生存期間の中央値はそれぞれ9.3カ月,13.4カ月,33カ月である1)。前出のGC療法とM-VAC療法を比較した試験でも,KPS 70%以上,臓器転移なしという因子が両群において有意に予後と相関すると報告している1)。また,121例に対してGC療法を行ったphase Ⅱ試験では,臓器転移のないことが唯一の予後因子であり,臓器転移のある群とない群の生存期間の中央値はそれぞれ9.9カ月と16.9カ月であった(p=0.0007)2)。さらに,56例に対しpaclitaxel,gemcitabine,cisplatinの3剤併用療法を行ったphase Ⅰ/Ⅱ試験でも,performance status(p=0.044) と臓器転移(p=0.008) は有意に生存に関与する独立した予後因子であることが明らかとなった3)。これらの報告から,切除不能または転移を有する尿路上皮癌に対する化学療法の予後因子は,治療レジメにかかわらず,共通したある一定の傾向がうかがえる。その他の予後因子としては,ヘモグロビン値4),アルカリフォスファターゼ値5)6),転移数5)などが報告されている。

【参考文献】

1) Bajorin DF, Dodd PM, Mazumdar M, et al. Long-term survival in metastatic transitional-cell carcinoma and prognostic factors predicting outcome of therapy. J Clin Oncol. 1999;17:3173-81.

2) Stadler WM, Hayden A, von der Maase H, et al. Long-term survival inphase Ⅱ trials of gemcitabine plus cisplatin for advanced transitionalcell cancer. Urol Oncol. 2002; 7:153-7.

3) Bellmunt J, Albanell J, Paz-Ares L, et al. Spanish Oncology GenitourinaryGroup. Pretreatment prognostic factors for survival in patients with advanced urothelial tumors treated in a phase Ⅰ/Ⅱ trial with paclitaxel,cisplatin, and gemcitabine. Cancer. 2002;95:751-7.

4) Vaughn DJ. Moving forward in advanced bladder cancer. J Clin Oncol.2007;25:2162-3.

5) von der Maase H, Sengelov L, Roberts JT, et al. Long-term survival results of a randomized trial comparing gemcitabine plus cisplatin, withmethotrexate, vinblastine, doxorubicin, plus cisplatin in patients withbladder cancer. J Clin Oncol. 2005;23:4602-8.

6) Geller NL, Sternberg CN, Penenberg D, et al. Prognostic factors for survival of patients with advanced urothelial tumours treated with methotrexate, vinblastine, doxorubicin, and cisplatin chemotherapy. Cancer.1991;67:1525-31.


Ⅶ.放射線療法

(東京女子医科大学放射線科 秋元哲夫)

放射線療法 CQ

CQ 1  
膀胱癌の治療における放射線治療の位置づけは?
Answer

筋層浸潤性膀胱癌に対する膀胱温存を目的とした根治的放射線治療および骨転移や局所浸潤に伴う痛みや血尿などの症状改善を目的とした対症的放射線治療として行われる。(推奨グレー ドB)

【解 説】

筋層非浸潤性膀胱癌の標準治療は,経尿道膀胱腫瘍切除術(TURBT)とその後の抗癌剤およびBCGの膀胱内注入の有効性が確立されており,放射線治療が標準治療として行われることはない。しかし,T1筋層非浸潤癌のうちgrade 3などhigh grade症例はBCG膀胱内注入療法でも再発率が高いため,化学放射線療法が試みられ良好な結果が報告1)されている。有効性については今後の比較試験での検証が必要である。

一方,筋層浸潤性膀胱癌の標準治療は膀胱全摘除術である。しかし,筋層浸潤性膀胱癌であっても,一部の症例ではTURBT,化学療法,放射線療法の3者併用により生存率を低下させることなく膀胱温存が可能であるとされている2)-9)。膀胱温存療法は,TURBTによる可能な限りの腫瘍切除の後,化学療法と放射線療法を併用して行われる。これにより70-80%の完全奏効率,50-70%の5年生存率,60-80%の5年癌特異的生存率が得られている2)-9)

化学療法にはcisplatinなど放射線増感作用を持つものを中心とした多剤併用化学療法が用いられている。抗癌剤の投与方法は,欧米の多くの報告では静脈内投与が用いられているが,わが国では動脈内投与が多い。放射線治療の総線量は60-66Gyが用いられていることが多い。

筋層浸潤癌での膀胱温存の理想的な適応は,臨床病期がT2あるいはT3の単発腫瘍で腫瘍径が小さな症例である3)4)8)9)。しかし,これまでに厳密な適応は確立されておらず,治療法についても前述の3者併用療法の範囲内でさまざまなレジメが存在する。

腎機能低下症例や高齢者で化学療法が行えない症例では,効果は必ずしも十分ではないが,放射線治療単独も治療選択肢のひとつである10)

【参考文献】

1) Weiss C, Wolze C, Engehausen DG, et al. Radiochemotherapy after transurethral resection for high-risk T1 bladder cancer:an alternative to intravesical therapy or early cystectomy? J Clin Oncol. 2006;24 (15): 2318-24.

2) Hagan MP, Winter KA, Kaufman DS, et al. RTOG 97-06:initial report ofa phase Ⅰ-Ⅱ trial of selective bladder conservation using TURBT,twice-daily accelerated irradiation sensitized with cisplatin, and adjuvantMCV combination chemotherapy. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2003;57(3):665-72.

3) Shipley WU, Kaufman DS, Tester WJ, et al.;Radiation Therapy Oncology Group. Overview of bladder cancer trials in the Radiation TherapyOncology Group. Cancer. 2003;97(8 Suppl):2115-9.

4) Rödel C, Grabenbauer GG, Khn R, et al. Combined-modality treatmentand selective organ preservation in invasive bladder cancer:long-termresults. J Clin Oncol. 2002;20(14):3061-71.

5) Hall RR for the International Collaboration of Bladder Trials:Neoadjuvant cisplatin, methotraxate, and vinblastine chemotherapy for muscleinvading bladder cancer:A randomized controlled trial. Lancet. 1999;354:533-40.

6) Shipley WU, Winter KA, Kaufman DS, et al. Phase Ⅲ trial of neoadjuvant chemotherapy in patients with invasive bladder cancer treatedwith selective bladder preservation by combined radiation therapy andchemotherapy:Initial results of Radiation Therapy Oncology Group89-03. J Clin Oncol. 1998;16:3576-83.

7) Tester W, Caplan R, Heaney J, et al. Neoadjuvant combined modalityprogram with selective organ preservation for invasive bladder cancer:Results of Radiation Therapy Oncology Group phase Ⅱ trial 8802. J ClinOncol. 1996;14:119-26.

8) Miyanaga N, Akaza H, Hinotsu S, et al. Background Variables for Patients with Invasive Bladder Cancer Suitable for Bladder-preservingTherapy. Jpn J Clin Oncol. 2007;37(11):852-7.

9) Sumiyoshi Y. Chemoradiotherapy as a bladder-preserving approach formuscle-invasive bladder cancer:current status and perspectives. Int JClin Oncol. 2004;9:484-90.

10) Duncan W, Quilty PM. The results of a series of 963 patients with transitional cell carcinoma of the urinary bladder primarily treated by radical megavoltage X-ray therapy. Radiother Oncol. 1986;7:299-310.


CQ 2  
Stage Ⅱ,Ⅲにおいて放射線治療と化学療法の併用の至適なタイミングと効果は?
Answer

Stage Ⅱ,Ⅲで腫瘍数が少なく腫瘍径も小さな症例においては,放射線治療の効果を増強する増感作用を期待した放射線治療と化学療法の同時併用療法により膀胱温存療法が可能である。ただし,放射線治療と化学療法の併用の至適なタイミングについては明確な結論は出ていない。

【解 説】

Stage Ⅱ,Ⅲで腫瘍数が少なく腫瘍径も小さな症例においては,放射線治療と化学療法の同時併用療法により膀胱温存療法が可能である1)-7)。放射線治療と化学療法の併用のタイミングについて,現状ではcisplatinを中心とする化学療法の併用で放射線治療の局所効果増強とともに遠隔転移の抑制効果が期待できるといえるが,放射線治療と化学療法併用について至適なタイミングを結論づける段階には至っていない。

一般的に,膀胱温存療法では,TURBTにより可能な限り腫瘍を切除し,その後に化学療法および放射線療法を追加する。さらに,再度TURBTを行い腫瘍の残存および病期を評価する。化学療法には,cisplatinなど放射線増感作用を持つものを中心とした単剤あるいは多剤併用が行われている。膀胱癌の放射線照射は,1回線量2Gyの通常分割照射法が一般的に行われ,膀胱全体の耐容線量から60-66Gyが標準的な線量である。これらの集学的治療によって,70-80%の完全奏効率,50-70%の5年生存率,60-80%の5年癌特異的生存率が得られている1)-7)

【参考文献】

1) Widmark A, Flodgren P, Damber JE, et al. A systematic overview of radiation therapy effects in urinary bladder cancer. Acta Oncol. 2003;42(5-6):567-81.

2) Shipley WU, Winter KA, Kaufman DS, et al. Phase V trial of neoadjuvant chemotherapy in patients with invasive bladder cancer treatedwith selective bladder preservation by combined radiation therapy andchemotherapy:initial results of Radiation Therapy Oncology Group89-03. J Clin Oncol. 1998;16(11):3576-83.

3) Tester W, Caplan R, Heaney J, et al. Neoadjuvant combined modalityprogram with selective organ preservation for invasive bladder cancer:Results of Radiation Therapy Oncology Group phase Ⅱ trial 8802. J ClinOncol. 1996;14:119-26.

4) Coppin CM, Gospodarowicz MK, James K, et al. Improved local controlof invasive bladder cancer by concurrent cisplatin and preoperative ordefi nitive radiation. The National Cancer Institute of Canada Clinical Trials Group. J Clin Oncol. 1996;14(11):2901-7.

5) Rödel C, Grabenbauer GG, Khn R, et al. Combined-modality treatmentand selective organ preservation in invasive bladder cancer:long-termresults. J Clin Oncol. 2002;20:3061-71.

6) Miyanaga N, Akaza H, Hinotsu S, et al. Background Variables for Patients with Invasive Bladder Cancer Suitable for Bladder-preservingTherapy. Jpn J Clin Oncol. 2007;37(11):852-7.

7) Sumiyoshi Y. Chemoradiotherapy as a bladder-preserving approach for muscle-invasive bladder cancer:current status and perspectives. Int JClin Oncol. 2004;9:484-90.


CQ 3  
Stage Ⅱ,Ⅲの膀胱温存療法を目的とした放射線治療の適応,至適線量および分割方法は?
Answer

筋層浸潤性膀胱癌のうち,臨床病期がT2あるいはT3で,腫瘍数が少なく腫瘍径も小さな症例においては,TURBT,化学療法,放射線療法の3者併用による膀胱温存が可能である。放射線治療の分割,総線量およびその方法は,40-50Gyまで骨盤リンパ節領域を含め前後左右の4門で行い,その後に膀胱に限局して60-70Gyまで治療を行う方法が標準的である。分割線量は1.8または2.0Gy/日の通常分割照射法が標準である。(推奨グレー ドB)

【解 説】

Stage Ⅱ,Ⅲで根治的な化学放射線療法が施行可能な症例は,膀胱温存療法の適応と考えられる。膀胱温存療法はTURBTにて可能な限り腫瘍の切除を行い,引き続き化学療法を放射線治療と同時併用する化学放射線療法を行う1)。根治的膀胱全摘除術との比較試験はなされていないものの,手術療法に匹敵する高い治療成績が得られている。膀胱温存療法の際の放射線治療の分割,総線量およびその方法については,40-50Gyまで骨盤リンパ節領域を含め前後左右の4門で行い,その後に膀胱に限局して60-70Gyまで治療を行うプロトコールが一般的である1)-12)。分割線量は1.8または2.0Gy/日の通常分割照射法が標準である。しかし,膀胱癌では通常分割法と他の分割方法(過分割照射法,寡分割照射法)を比較した第Ⅲ相試験がこれまでに行われていないため,分割方法が治療成績に与える影響は明確にはなっていない。放射線治療の総線量と局所制御率の関係については,組織内照射法を含めた異なる分割照射法の臨床試験結果を対象としたメタアナリシス2)で,膀胱癌でも線量効果関係が成り立つことが示され,10Gyの増加で3年局所制御率が1.44-1.47の割合で増加すると報告されている。線量増加の方法として,強度変調放射線治療や陽子線治療を初めとする粒子線治療も膀胱癌の治療として試みられ,陽子線では5年全生存率が66%と報告12)されているが,高エネルギーX線による2次元または3次元治療計画による放射線治療に対する優位性については,今後の課題である。

【参考文献】

1) Rödel C, Weiss C, Sauer R. Trimodality treatment and selective organpreservation for bladder cancer. J Clin Oncol. 2006;24(35):5536-44.

2) Pos FJ, Hart G, Schneider C, et al. Radical radiotherapy for invasive bladder cancer:What dose and fractionation schedule to choose? Int JRadiat Oncol Biol Phys. 2006;64(4):1168-73.

3) Hata M, Miyanaga N, Tokuuye K, et al. Proton beam therapy for invasive bladder cancer:a prospective study of bladder-preserving therapywith combined radiotherapy and intra-arterial chemotherapy. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2006;64(5):1371-9.

4) Horwich A, Dearnaley D, Huddart R, et al. A randomised trial of accelerated radiotherapy for localised invasive bladder cancer. Radiother Oncol. 2005;75:34-43.

5) Hagan MP, Winter KA, Kaufman DS, et al. RTOG 97-06:Initial report ofa phase Ⅰ-Ⅱ trial of selective bladder conservation using TURBT, twicedaily accelerated irradiation sensitized with cisplatin, and adjuvant MCVcombination chemotherapy. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2003;57:665-72.

6) Kaufman DS, Winter KA, Shipley WU, et al. The initial results in muscle-invading bladder cancer of RTOG 95-06:phase Ⅰ/Ⅱ trial of transurethral surgery plus radiation therapy with concurrent cisplatin and5-fluorouracil followed by selective bladder preservation or cystectomydepending on the initial response. Oncologist. 2000;5:471-6.

7) Shipley WU, Winter KA, Kaufman DS, et al. Phase Ⅲ trial of neoadjuvant chemotherapy in patients with invasive bladder cancer treatedwith selective bladder preservation by combined radiation therapy andchemotherapy:Initial results of Radiation Therapy Oncology Group89-03. J Clin Oncol. 1998;16:3576-83.

8) Zietman AL, Shipley WU, Kaufman DS, et al. A phase Ⅰ/Ⅱ trial oftransurethral surgery combined with concurrent cisplatin, 5-fl uorouraciland twice daily radiation followed by selective bladder preservation inoperable patients with muscle invading bladder cancer. J Urol. 1998;160:1673-7.

9) Stuschke M, Thames HD:Hyperfractionated radiotherapy of human tumors:Overview of the randomized clinical trials. Int J Radiat Oncol BiolPhys. 1997;37:259-67.

10) Tester W, Caplan R, Heaney J, et al. Neoadjuvant combined modalityprogram with selective organ preservation for invasive bladder cancer:Results of Radiation Therapy Oncology Group phase Ⅱ trial 8802. J ClinOncol. 1996;14:119-26.

11) Tester W, Porter A, Asbell S, et al. Combined modality program withpossible organ preservation for invasive bladder carcinoma:results ofRTOG protocol 85-12. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 1993;25(5):783-90.

12) Miyanaga N, Akaza H, Hinotsu S, et al. Background Variables for Patients with Invasive Bladder Cancer Suitable for Bladder-preservingTherapy. Jpn J Clin Oncol. 2007; 37(11):852-7.


CQ 4  
Stage Ⅱ,Ⅲの根治的放射線治療の適応,至適線量,線量分割および成績は?
Answer

根治的放射線治療には膀胱温存を目的としたTURBT後の化学放射線療法と放射線治療単独の両者が含まれる。放射線治療単独療法は腎機能低下症例や高齢者で化学療法が行えない症例では施行されることがある。1回線量2Gy,総線量60-66Gyの通常分割法の放射線治療単独で,T1:60-80%,T2:30-60%およびT4:20-40% の5年生存率が得られている。(推奨グレー ドB)

【解 説】

Stage Ⅱ,Ⅲ の標準治療は膀胱全摘除術であるが,腫瘍数が少なく腫瘍径も小さな症例においては,放射線治療を化学療法と併用することによって膀胱温存が可能である1)。これに対し,放射線治療単独での治療は効果が不十分であるため,腎機能低下症例や高齢者で化学療法が行えない症例に限って適応することが望ましい。

根治的放射線治療は,1回線量2Gyの通常分割照射法が一般的に行われ,膀胱全体の耐容線量から60-66Gyが標準的な線量である2)-5)。1日に2〜3回の放射線治療を行う多分割照射法の有効性を通常分割照射法と比較した臨床試験6)も行われており,メタアナリシスでは多分割照射法が生存率,局所制御率向上に有効であるとの結果が得られている。しかし,根拠となる臨床試験は2つと少なく,また症例数も決して十分ではない。加速過分割照射と通常分割照射を比較した第Ⅲ相試験の結果でも,多分割照射による治療成績の向上は認められていない。これらの結果から,現状では膀胱癌の放射線治療の分割方法としては通常分割照射法が標準といえる。根治的放射線治療単独での5年生存率は,T1:60-80%,T2:30-60%およびT4:20-40%であり,化学療法との併用に比べて効果は劣る7)-9)

【参考文献】

1) Miyanaga N, Akaza H, Hinotsu S, et al. Background Variables for Patients with Invasive Bladder Cancer Suitable for Bladder-preservingTherapy. Jpn J Clin Oncol. 2007;37(11):852-7.

2) Horwich A, Dearnaley D, Huddart R, et al. A randomised trial of accelerated radiotherapy for localised invasive bladder cancer. Radiother Oncol.2005;75(1):34-43.

3) Sauer R, Birkenhake S, K hn R, et al. Efficacy of radiochemotherapywith platin derivatives compared to radiotherapy alone in organ-sparingtreatment of bladder cancer. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 1998;40:121-7.

4) Shipley WU, Winter KA, Kaufman DS, et al. Phase Ⅲ trial of neoadjuvant chemotherapy in patients with invasive bladder cancer treatedwith selective bladder preservation by combined radiation therapy andchemotherapy:initial results of Radiation Therapy Oncology Group 89-03. J Clin Oncol. 1998;16(11):3576-83.

5) Stuschke M, Thames H. Hyperfractionated radiotherapy of human tumors:overview of the randomized clinical trials. Int J Radiat Oncol BiolPhys. 1997;37(2):259-67.

6) Naslund I, Nilsson B, Littbrand B. Hyperfractionated radiotherapy ofbladder cancer. A ten-year follow-up of a randomized clinical trial. ActaOncol. 1994;33:397-402.

7) Fossa SD, Waehre H, Aass N, et al. Bladder cancer definitive radiationtherapy of muscle-invasive bladder cancer. Cancer. 1993;15:3036-3042.

8) Gospodarowicz MK, Hawkins NV, Rawlings GA, et al. Radical radiotherapy for muscle invasive transitional cell carcinoma of the bladder:failure analysis. J Urol. 1989;142:1448-54.

9) Duncan W, Quilty PM. The results of a series of 963 patients with transitional cell carcinoma of the urinary bladder primarily treated by radical megavoltage X-ray therapy. Radiother Oncol. 1986;7:299-310.


CQ 5  
緩和療法において放射線治療が有効な場合は?
Answer

放射線治療は根治療法としてだけでなく,症状緩和を目的とした治療としても有効である。筋層浸潤性膀胱癌における症状緩和には,①膀胱癌の局所進展による痛みや血尿,②骨やリンパ節などの遠隔転移による症状の改善を目的とする場合が考えられるが,放射線治療はいずれの場合にも適応となり効果が期待できる。(推奨グレー ドB)

【解 説】

放射線治療は筋層浸潤性膀胱癌の根治療法としてだけでなく,症状緩和を目的とした治療としても有効である1)-10)。症状緩和には,①膀胱癌の局所進展による症状,②骨やリンパ節などの遠隔転移による症状の改善を目的とする場合が考えられるが,放射線治療はいずれの場合にも適応となりうる。前者では,手術不能や高度の局所進展病巣で腫瘍全体を治療範囲にカバーできない,または根治的な線量が照射できなくとも病勢の進行抑制に有効である。また病巣に起因する痛みや圧迫による症状ならびに腫瘍からの出血による血尿のコントロールなどで効果が期待できる。後者では,有痛性骨転移の症状緩和や脊髄圧迫による脊髄横断症状に対する緊急照射で有効2)である。また,膀胱癌では比較的頻度が低いが脳転移に対しても有効であり,特に脳転移病巣が単発で他の遠隔転移病巣がない場合には長期生存が得られることが報告9)されている。緩和療法としての放射線治療では,根治目的の放射線治療と異なり全身状態や予後を考慮して1回線量を大きくして短期間に治療を終了する寡分割照射法が膀胱癌でも行われている5)。骨転移だけでなく膀胱局所の病巣に対して8.5Gy×2回/3日から3Gy×10回/2週間などの寡分割照射法4)-6)が試みられており,通常分割照射法と同様の効果が短期間に得られるとされているが,膀胱炎や消化器系の急性反応を増加させるとの報告7)があり注意を要する。

【参考文献】

1) Yi SK, Yoder M, Zaner K, et al. Palliative radiation therapy of symptom-atic recurrent bladder cancer. Pain Physician. 2007;10(2):285-90.

2) Lutz ST, Chow EL, Hartsell WF, et al. A review of hypofractionated pal-liative radiotherapy. Cancer. 2007;109(8):1462-70.

3) Coen JJ, Zietman AL, Kaufman DS, et al. Benchmarks achieved in thedelivery of radiation therapy for muscle-invasive bladder cancer. UrolOncol. 2007;25(1):76-84.

4) Widmark A, Flodgren P, Damber JE, et al. A systematic overview of ra-diation therapy effects in urinary bladder cancer. Acta Oncol. 2003;42(5-6):567-81.

5) Duchesne GM, Bolger JJ, Griffi ths GO, et al. A randomized trial of hypo-fractionated schedules of palliative radiotherapy in the management ofbladder carcinoma:results of medical research council trial BA09. Int JRadiat Oncol Biol Phys. 2000;47(2):379-88.

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CQ 6  
骨転移に対する放射線治療の適応,線量および効果は?
Answer

骨転移に対する放射線治療はその原発部位を問わず幅広く行われ,症状緩和の有効性は高い。1回照射などの短期照射が行われ,通常分割照射法と効果に差がないことが確認されている。しかし,疼痛の再増悪による再治療の頻度と治療後の病的骨折は1回照射で有意に多いことが報告されているため,長期生存が期待できる場合には,通常分割照射を適応することが望ましい。(推奨グレー ドB)

【解 説】

骨転移に対する放射線治療はその原発部位を問わず幅広く行われ,症状緩和の有効性は高い1)。鎮痛剤による疼痛コントロールが不良な有痛性の骨転移はもちろん転移病巣による神経症状や脊髄圧迫による横断症状の改善に対しても放射線治療は重要な治療方法のひとつである2)-7)。放射線治療の方法は他の癌の骨転移と同様で,膀胱癌に固有の方法はない。一般的には30Gy/10回/2 週間が標準的であるが,治療期間の短縮の有効性を評価した比較試験で,20Gy/5回/1 週間と8Gyの1回照射の間に疼痛軽減効果に差がないことが示され2),30Gy/10回/2 週間の標準治療と8Gyの1回照射を比較した第Ⅲ相試験でもその効果に差がないことが報告3)されている。しかし,骨転移に対する1回照射と通常分割照射を比較した臨床試験の結果を解析したシステマティックレビュー4)5)では,疼痛緩和効果には両者に差がないが疼痛の再増悪による再治療の頻度と治療後の病的骨折は1回照射で有意に多いことが報告されている。そのため,骨以外に活動性の転移病巣がなく比較的長期生存が期待できる場合には,通常分割照射を適応することが望ましい8)。多発性骨転移で,疼痛の原因となる病巣が複数ある場合には,半身照射の試みがなされ,90%以上の高い疼痛緩和率が報告6)されている。この場合にも15 Gy/5 回/5 日や12 Gy/4 回/2 日の短期照射が有効とされている。

【参考文献】

1) Dy SM, Asch SM, Naeim A, et al. Evidence-based standards for cancerpain management. J Clin Oncol. 2008;26(23):3879-85.

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