甲状腺腫瘍 〜診療ガイドライン

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目次:

1.疫 学

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CQ 1
甲状腺癌の危険因子にはどのようなものが存在するか?
推奨グレード
A 放射線被曝(被曝時年齢19 歳以下,大量)は明らかな危険因子である。
A 一部の甲状腺癌には遺伝が関係する。
B 体重の増加は危険因子である。
これ以外に科学的に立証された危険因子は,今のところ存在しない。
【背 景・目 的】

甲状腺癌の危険因子として,放射線被曝や遺伝などが古くから検討されてきた。ヨード摂取不足地域で甲状腺癌発生が多いといわれていたため,ヨード摂取量も重要な因子と考えられた。また,甲状腺癌は女性に発生しやすいため,女性ホルモンや月経・妊娠の関与も指摘されてきた。これらの危険因子の中には科学的に十分に因果関係を立証されているものもあれば,論文により結論の異なるものも存在する。

甲状腺癌の危険因子を科学的に明らかにしておくことは,甲状腺癌の予防および効果的なスクリーニング方法を考えるうえで,極めて重要である。

【解 説】

放射線被曝が甲状腺癌発生を増加させることは,科学的によく立証されている。

その代表例は広島・長崎の被爆者における甲状腺癌発生の増加であり,甲状腺への被曝量と甲状腺癌発生頻度との間には有意な直線関係が存在すること,被曝時年齢が若いほど甲状腺癌発症リスクは高まり,被曝時年齢が20 歳以上になるとリスクの増加は認められないこと,が明らかにされている 1)2)

もう一つの代表例はチェルノブイリ原発事故後にみられた小児甲状腺癌の増加である。原爆被爆者ではγ線による被曝が中心であったが,チェルノブイリ原発事故被害者ではⅠ-131 をはじめとする放射線降下物(いわゆる死の灰)による被曝が中心であった。チェルノブイリ原発事故の場合,被曝から4 年という短期間に小児甲状腺癌の増加が認められたため 3),当初はスクリーニングを熱心に行った結果によるバイアスではないかという意見もあったが,その後行われた後ろ向きケースコントロール研究 4)および前向きコホート研究 5)により,小児甲状腺癌増加が間違いなく原発事故により引き起こされたことが科学的に証明された。この場合も,甲状腺への被曝量と甲状腺癌発生頻度との間には有意な直線関係が認められた。

医学的な外照射(放射線治療)により甲状腺癌発症リスクが高まることも証明されており,この場合にも,甲状腺への被曝量と甲状腺癌発生頻度との間に有意な直線関係が認められること,被曝時年齢が高くなると甲状腺癌発症リスクは有意に低下し,20 歳以上ではリスクの増加はほとんど認められないこと,が明らかにされている 6)

医学的な放射線被曝としては,これ以外に検査による被曝(X 線,Ⅰ-131 によるRI 検査など)の影響が研究されているが,検査による少量の放射線被曝が甲状腺癌発症リスクを増加させたとする報告は見当たらない 7)

放射線被曝の次に挙げられる危険因子は遺伝である。大半の甲状腺癌は遺伝には関係ないが,ごく一部の甲状腺癌は遺伝により発生することが知られている。詳細については コラム1 をご覧いただきたい。

甲状腺癌以外の甲状腺疾患の存在,特に甲状腺良性腫瘍や腺腫様甲状腺腫の存在により甲状腺癌発症リスクが高まることは,多くの論文に共通する結論である。多数の後ろ向きケースコントロール研究を集積したメタアナリシス8)によると,甲状腺良性腫瘍または腺腫様甲状腺腫と診断された症例では,診断の2〜4年後に甲状腺癌発症リスクが高まる。しかしこの場合,重大な問題は「甲状腺良性腫瘍」または「腺腫様甲状腺腫」という診断の正確性である。手術標本の病理組織検査を行わない限り,良性疾患(甲状腺良性腫瘍,腺腫様甲状腺腫など)と悪性疾患(甲状腺癌)を100%正確に区別することはできないため,どのような方法で診断を行ったかが重要なポイントとなる。「甲状腺良性腫瘍」または「腺腫様甲状腺腫」という診断を触診や超音波検査で行ったとすれば,その中に実は甲状腺癌が紛れ込んでいた可能性は非常に高い。したがって,甲状腺良性腫瘍や腺腫様甲状腺腫の存在が真に甲状腺癌発症を増加させる危険因子であるか否かはかなり疑わしいといわざるを得ない。

体重については,20部位の癌発症リスクについてBMI増加の影響が存在するか否かを多数の論文のメタアナリシスにより解析した論文9)が存在する。それによると,甲状腺癌についてはBMI増加に伴う有意なリスク増加が男女ともにみられており,したがって体重の増加は甲状腺癌発症リスクを増加させると考えられる。しかし,わが国でBMIとの関連を検討した報告がみられないため,推奨グレードはBとする。

甲状腺癌発生に影響を与える因子としてよく挙げられるものに,ヨード摂取量がある。日常的なヨード摂取量は地域によりかなり異なり,わが国はヨード摂取量の多い地域に属する。慢性的なヨード不足地域では,ヨード摂取の不足による甲状腺機能低下症の発生を抑制する目的で国家規模でヨード補充を行うことがしばしばある。ポーランドでは1980年まで食材へのヨード補充が行われていたが,1980年に財政的理由で中断され,その後1997年に再開された。この間,ヨード補充の中止により甲状腺癌発生頻度は上昇し,ヨード補充の再開により甲状腺癌発生頻度は低下した10)。このようにヨード摂取の不足により甲状腺癌発生頻度が増加したという論文は数多く存在するが,他国の報告でヨード補充は甲状腺癌発生頻度と関係なかったとする報告も複数存在し,結論が一致しない。7 つのケースコントロール研究を比較した論文 11)によると,ヨード摂取の不足により甲状腺癌発生頻度が増加するか否かについては,種々の報告の結論が一致せず,はっきりしない。ヨード摂取の過剰により甲状腺癌発生頻度が増加するという可能性も指摘されているが,これについても種々の報告の結論は一致していない。ただ一つ明らかなことは,ヨード摂取量の状況により発生しやすい甲状腺癌の種類が異なることで,ヨード摂取不足地域では濾胞癌および未分化癌が多く,ヨード摂取過剰地域では乳頭癌の発生が多い。

他の危険因子としては,月経(初経年齢,閉経の有無,閉経年齢など) 12)13),妊娠(妊娠回数,分娩回数,流産の回数,初回妊娠年齢,初回分娩年齢など) 12)13),女性ホルモン(経口避妊薬使用の有無,女性ホルモン補充療法の有無,不妊症治療薬使用の有無,乳汁分泌抑制剤使用の有無など) 13)14),魚貝類の摂取量 15),喫煙 13),飲酒 13)などが検討されているが,いずれも甲状腺癌発生頻度に対する明らかな影響は証明されていない。

【検索式・参考にした二次資料】

PubMed,医中誌およびJMEDPlus により別に示す検索式から得られた文献のうち重要なものを選択した。さらに選択された論文からのrelated articlesのハンドサーチから重要な論文を追加した。

【参考文献】

1) Thompson DE, Mabuchi K, Ron E, et al. Cancer incidence in atomic bomb survivors. Part Ⅱ:Solid tumors, 1958-1987. Radiat Res 1994;137(2 Suppl):S17-S67.(PS)

2) Imaizumi M, Usa T, Tominaga T, et al. Radiation dose-response relationships for thyroid nodules and autoimmune thyroid diseases in Hiroshima and Nagasaki atomic bomb survivors 55-58 years after radiation exposure. JAMA 2006;295:1011-1022.(PS)

3) Kazakov VS, Demidchik EP, Astakhova LN. Thyroid cancer after Chernobyl. Nature 1992;359:21.(CaseR)

4) Cardis E, Kesminiene A, Ivanov V, et al. Risk of thyroid cancer after exposure to 131Ⅰ in childhood. J Natl Cancer Inst 2005;97:724-732.(RS)

5) Tronko MD, Howe GR, Bogdanova TI, et al. A cohort study of thyroid cancer and other thyroid diseases after the Chornobyl accident:thyroid cancer in Ukraine detected during first screening. J Natl Cancer Inst 2006;98:897-903.(PS)

6) Ron E, Lubin JH, Shore RE, et al. Thyroid cancer after exposure to external radiation:a pooled analysis of seven studies. Radiat Res 1995;141:259-277.(SR〈RS〉)

7) Dickman PW, Holm LE, Lundell G, et al. Thyroid cancer risk after thyroid examination with131Ⅰ:a population-based cohort study in Sweden. Int J Cancer 2003;106:580-587.(PS)

8) Franceschi S, Preston-Martin S, Dal Maso L, et al. A pooled analysis of case-control studies of thyroid cancer. Ⅳ. Benign thyroid diseases. Cancer Causes Control 1999;10:583-595. (SR〈RS〉)

9) Renehan AG, Tyson M, Egger M, et al. Body-mass index and incidence of cancer: a systematic review and meta-analysis of prospective observational studies. Lancet 2008;371:569-578.(SR〈PS〉)

10) Huszno B, Szybinski Z, Przybylik-Mazurek E, et al. Influence of iodine deficiency and iodine prophylaxis on thyroid cancer histotypes and incidence in endemic goiter area. J Endocrinol Invest 2003;26:71-76.(RS)

11) Franceschi S. Iodine intake and thyroid carcinoma-a potential risk factor. Exp Clin Endocrinol Diabetes 1998;106:S38-S44.(NR)

12) Negri E, Dal Maso L, Ron E, et al. A pooled analysis of case-control studies of thyroid cancer. Ⅱ. Menstrual and reproductive factors. Cancer Causes Control 1999;10:143-155.(SR〈RS〉)

13) Navarro Silvera SA, Miller AB, Rohan TE. Risk factors for thyroid cancer:a prospective cohort study. Int J Cancer 2005;116:433-438.(PS)

14) La Vecchia C, Ron E, Franceschi S, et al. A pooled analysis of case-control studies of thyroidcancer. Ⅲ. Oral contraceptives, menopausal replacement therapy and other female hormones.Cancer Causes Control 1999;10:157-166.(SR〈RS〉)

15) Bosetti C, Kolonel L, Negri E, et al. A pooled analysis of case-control studies of thyroid cancer. Ⅵ.Fish and shellfish consumption. Cancer Causes Control 2001;12:375-382.(SR〈RS〉)


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CQ 2
小児甲状腺癌あるいは小児濾胞癌は成人例に比較して予後に差異が存在するか?
推奨グレード
B 小児甲状腺癌は成人と比較して長期の生命予後は良好である。その中で小児乳頭癌は診断時に進行した癌であるようにみえても,適切な治療によって良好な長期の生命予後が得られる。小児濾胞癌は報告例が極めて少ないが,予後は良好と考えられる。
【背 景・目 的】

ここでの甲状腺癌とは髄様癌以外の高分化癌(non-medullary differentiated thyroidcarcinoma),つまり乳頭癌と濾胞癌とする。また,X 線照射後,チェルノブイリ原発事故後の甲状腺癌,あるいは特別な遺伝性疾患(家族性大腸ポリポーシス,Cowden 病など)による小児期の甲状腺癌は除くことにする。小児甲状腺癌の年齢の上限は報告によりさまざまであり,その定義は明確には定まっていない。10 歳未満の初期の小児期(child, pediatric)における甲状腺癌と後期の小児期,つまり20 歳,あるいは18 歳以下の若年者(adolescent, juvenile)における甲状腺癌を区別することもある。ここでは,厳密な年齢については設定せず,成人期未満の一般の乳頭癌と濾胞癌の症例について言及する。小児甲状腺癌は稀少な疾患で,そのほとんどは乳頭癌である。その臨床的な特徴,治療,予後についての前向きの報告は見当たらず,後ろ向きの報告が存在する 1)〜5)。小児甲状腺癌あるいは小児濾胞癌は成人例に比較して予後に差異があるのか検討した。

【解 説】
1.小児の乳頭癌の特徴

小児の乳頭癌はびまん性硬化型乳頭癌や濾胞型乳頭癌など特殊な組織型を示すものが多い 6)7) 。その臨床的な特徴は成人のそれとかなりの差異を示す。頸部リンパ節転移が激しく,腫瘍の局所浸潤が多く,治療後の再発も多い 1)〜5)。後期の再発は初期治療の20 年後まで起こる 8)。肺への遠隔転移を有する頻度が高く,診断時の肺転移の頻度は25%にまでに達するとする報告 4)もある。小児の乳頭癌は生涯にわたる経過観察を必要とする 1)8)。欧米では,治療として甲状腺全摘か準全摘を行い,術後のRI アブレーションと全身シンチグラフィ,血清サイログロブリン値によるモニター,長期間のTSH 抑制療法が推奨されている 1)3)

2.小児の乳頭癌の予後

小児の乳頭癌は診断時に一見して進行した状態にあり,再発も多いが,適切な初期治療と術後の処置により長期の生命予後は成人に比較すると良好であり,死亡率は低いと報告されている 1)〜5)。したがって,小児の乳頭癌の治療と生命予後は成人とは異なることを考慮する必要がある。

3.小児の濾胞癌の特徴と予後

小児の濾胞癌の報告は極めて少ない 3)〜5)。遠隔転移の頻度は少なく 4)5),乳頭癌よりも悪性度が低く,長期予後は良好とする報告がみられる3)〜5)

4.小児甲状腺癌に対する対応

臨床医にとっては,小児甲状腺癌(乳頭癌)は診断時に進行した癌であるようにみえても,適切な治療によって良好な長期の予後が得られるということを理解することが重要である。

【検索式・参考にした二次資料】

PubMed,医中誌およびJMEDPlus により別に示す検索式から得られた文献のうち重要なものを選択した。さらに選択された論文からのrelated articlesのハンドサーチから重要な論文を追加した。

【参考文献】

1) Hung W, Sarlis NJ. Current controversies in the management of pediatric patients with well-differentiated nonmedullary thyroid cancer:a review. Thyroid 2002;12:683-702.(NR)

2) van Santen HM, Aronson DC, Vulsma T, et al. Frequent adverse events after treatment for childhood-onset differentiated thyroid carcinoma:a single institute experience. Eur J Cancer 2004;40:1743-1751.(RS)

3) Kowalski LP, Goncalves Filho J, Pinto CA, et al. Long-term survival rates in young patients with thyroid carcinoma. Arch Otolaryngol Head Neck Surg 2003;129:746-749.(RS)

4) Giuffrida D, Scollo C, Pellegriti G, et al. Differentiated thyroid cancer in children and adolescents. J Endocrinol Invest 2002;25:18-24.(RS)

5) Farahati J, Bucsky P, Parlowsky T, et al. Characteristics of differentiated thyroid carcinoma in children and adolescents with respect to age, gender, and histology. Cancer 1997;80:2156-2162. (RS)

6) Kamma H, Fujii K, Ogata T. Lymphocytic infiltration in juvenile thyroid carcinoma. Cancer 1988;62:1988-1993.(RS)

7) 菅間 博,藤井啓二,小形岳三郎,他.若年者甲状腺癌の病理組織学的検討.癌の臨 1989;35: 270-274.(RS)

8) Harness JK, McLeod MK, Thompson NW, et al. Deaths due to differentiated thyroid cancer: a 46-year perspective. World J Surg 1988;12:623-629.(RS))


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コラム1 甲状腺癌の遺伝について
要旨

遺伝により発生する甲状腺癌は存在するが,甲状腺癌全体のごく一部に過ぎない。
髄様癌のうち,多発性内分泌腫瘍症2 型に属するものは遺伝により発生する。
髄様癌以外の甲状腺癌では,家族性甲状腺癌が遺伝により発生すると考えられているが,その詳細については不明な点が多い。

【解 説】

一部の甲状腺癌は遺伝により発生することが知られている。

その代表格は髄様癌である。髄様癌のうち,多発性内分泌腫瘍症2 型(multipleendocrine neoplasia type 2)に属するものが遺伝により発生する。多発性内分泌腫瘍症2型は2 A 型,2 B 型,および家族性甲状腺髄様癌(familial medullary thyroid cancer)の3 つに分類される。多発性内分泌腫瘍症2 型の患者ではRET 遺伝子の生殖細胞系列変異が認められ,変異がRET 遺伝子のどの部分に存在するかにより,髄様癌の発症年齢や悪性度をある程度推測することが可能である。そのため,現在ではRET 遺伝子検査の結果に従って,髄様癌の発症前に的確な治療方針を立てることが可能になった 1)

わが国の髄様癌の中で,遺伝に関係する多発性内分泌腫瘍症2 型に属するものは約40%であり 2),それ以外の髄様癌症例は遺伝と関係のない散発性である。

髄様癌以外の甲状腺癌では,その約5%が遺伝性と考えられ,家族性甲状腺癌(familialnonmedullary thyroid cancer)と呼ばれる 3)。家族性甲状腺癌は,①甲状腺以外の病変を含む症候性のものと,②甲状腺以外の病変がない非症候性のものの2 つに大別される 4)

甲状腺以外の病変を含む症候性のものとしては,家族性大腸ポリポーシス 5)6),Cowden 症候群 7),Carney 症候群 8)などが挙げられる。

甲状腺以外の病変がない非症候性のものが狭義の家族性甲状腺癌であり,その定義は「親子兄弟に2 人以上の非髄様癌患者が存在し,かつ明らかな症候群を伴わないもの」とされる。1955 年にRobinson ら 9)が最初の報告をして以来,数多くの報告例が存在し,わが国でも内野ら 10)が258 例,伊藤らが濾胞癌6 例 11)および乳頭癌273 例 12)を報告している。これを発生頻度に置き換えると,内野らは4. 0% 10),伊藤らは濾胞癌1. 9% 11),乳頭癌4. 5% 12)であった。

家族性甲状腺癌の詳細は未だ不明な点が多く,原因遺伝子も(いくつか候補は挙げられているものの)まだ特定されていない 4)。15 の症例報告(178 例)をまとめた論文 13)によると,家族性甲状腺癌の病理組織型は乳頭癌91%,濾胞癌6%,未分化癌2%であった。

家族性甲状腺癌は非家族性のものより悪性度が高く,進行が速いとして,より広範な治療を勧める論文が複数存在するが,悪性度の高さを否定する論文も存在し,結論は一致していない。わが国の報告でも,内野ら 10)は10 年無病生存率が家族性甲状腺癌で88. 8%,非家族性で91.5%であり,家族性のほうが有意に低かったことから(p <0. 0001),家族性甲状腺癌は非家族性に比べて悪性度が高いとしているが,伊藤ら 11)12)は10 年無病生存率が家族性濾胞癌で100%,非家族性濾胞癌で73. 3%,家族性乳頭癌で約90%,非家族性乳頭癌で約90%であり,家族性と非家族性との間に有意差が認められないことから,家族性甲状腺癌の予後は非家族性と同等であるとしており,両者の結論が異なっている。そのため,通常の甲状腺癌より広範な治療が必要か否かについては,現時点ではまだ結論を出すのが難しいと思われる 13)

【検索式・参考にした二次資料】

PubMed,医中誌およびJMEDPlus により別に示す検索式から得られた文献のうち重要なものを選択した。さらに選択された論文からのrelated articlesのハンドサーチから重要な論文を追加した。

【参考文献】

1) Brandi ML, Gagel RF, Angeli A, et al. Guidelines for diagnosis and therapy of MEN type 1 and type 2. J Clin Endocrinol Metab 2001;86:5658-5671.(Others)

2) Kameyama K, Takami H. Medullary thyroid carcinoma:nationwide Japanese survey of 634 cases in 1996 and 271 cases in 2002. Endocr J 2004;51:453-456. (RS)

3) Sippel RS, Caron NR, Clark OH. An evidence-based approach to familial nonmedullary thyroid cancer:screening, clinical management, and follow-up. World J Surg 2007;31:924-933.(NR)

4) Malchoff CD, Malchoff DM. Familial nonmedullary thyroid carcinoma. Cancer Control 2006;13:106-110.(NR)

5) Perrier ND, van Heerden JA, Goellner JR, et al. Thyroid cancer in patients with familial adenomatous polyposis. World J Surg 1998;22:738-742.(RS)

6) Cetta F, Montalto G, Gori M, et al. Germline mutations of the APC gene in patients with familial adenomatous polyposis-associated thyroid carcinoma:results from a European cooperative study. J Clin Endocrinol Metab 2000;85:286-292.(CaseR)

7) Pilarski R, Eng C. Will the real Cowden syndrome please stand up(again)? Expanding mutational and clinical spectra of the PTEN hamartoma tumour syndrome. J Med Genet 2004;41:323-326.(NR)

8) Stratakis CA, Courcoutsakis NA, Abati A, et al. Thyroid gland abnormalities in patients with the syndrome of spotty skin pigmentation, myxomas, endocrine overactivity, and schwannomas(Carney complex). J Clin Endocrinol Metab 1997;82:2037-2043.(RS)

9) Robinson DW, Orr TG. Carcinoma of the thyroid and other diseases of the thyroid in identical twins. Arch Surg 1955;70:923-928.(CaseR)

10) Uchino S, Noguchi S, Kawamoto H, et al. Familial nonmedullary thyroid carcinoma characterized by multifocality and a high recurrence rate in a large study population. World J Surg 2002;26:897-902.(RS)

11) Ito Y, Fukushima M, Yabuta T, et al. Prevalence and prognosis of familial follicular thyroid carcinoma. Endocr J 2008;55:847-852.(RS)

12) Ito Y, Kakudo K, Hirokawa M, et al. Biological behavior and prognosis of familial papillary thyroid carcinoma. Surgery 2009;145:100-105.(RS)

13) Loh KC. Familial nonmedullary thyroid carcinoma:a meta-review of case series. Thyroid 1997;7:107-113.(SR〈RS〉)


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コラム2 甲状腺癌の組織型の頻度について
要旨

甲状腺癌の組織型をみると,乳頭癌が圧倒的に多く,濾胞癌,髄様癌,未分化癌,悪性リンパ腫,その他の順となる。

【解 説】

甲状腺悪性腫瘍を組織型で分類すると,分化癌(乳頭癌,濾胞癌),低分化癌,未分化癌,髄様癌,悪性リンパ腫となる。低分化癌の概念は導入された年代が新しく(以前は分化癌を高分化型,低分化型に分けていた),今後の報告で新しい疫学的データベースが得られると考えられる。

上記の点を加味しても,従来甲状腺癌は乳頭癌が圧倒的に多く,続いて濾胞癌,髄様癌,未分化癌,悪性リンパ腫,その他の順である。2004 年の統計によると,乳頭癌92. 5%,濾胞癌4. 8%,髄様癌1. 3%,未分化癌1. 4%,その他0. 0%であった。それぞれの組織型の定義の変更などにより乳頭癌の頻度がより高くなり92%以上になっているのが現状である 1)〜3)

甲状腺癌の組織型別男女比についてはいずれも女性の罹患率が高い。組織型別の年齢分布では乳頭癌,濾胞癌は50 歳代がピークで,未分化癌は40 歳未満には発生が極めて稀で,60 歳代がピークである 1)

欧米と比較したわが国の疫学的特徴として,分化癌のうち乳頭癌の頻度が高いことが挙げられるが,これはわが国が従来ヨード摂取量の多い食文化を有することに由来すると考えられる 3)〜5)

甲状腺乳頭癌にしばしば偶発癌が認められるが,この発見には超音波検査が貢献し,機器の精度の上昇,健診受検率の上昇とともに発見頻度が上昇している。これも近年さらに乳頭癌の疫学的頻度が上昇した一因となっている 1)6)

【検索式・参考にした二次資料】

PubMed,医中誌およびJMEDPlusにより別に示す検索式から得られた文献のうち重要なものを選択した。さらに選択された論文からのrelated articlesのハンドサーチから重要な論文を追加した。

【参考文献】

1) 岩崎博幸.甲状腺癌の疫学に関する最新のデータ.臨外 2007;62:39-46.(RS)

2) 岩崎博幸.甲状腺癌の疫学に関する最近のデータ.臨外 2002;57:30-34.(RS)

3) 斉川雅久,海老原敏.甲状腺癌の疫学.JOHNS 1999;15:901-904.(RS)

4) 伊藤國彦.甲状腺癌.代謝 1989;26:271-281.(NR)

5) 藤本吉秀.甲状腺癌 その生物学的特徴ならびに診断・治療.Oncologia 1989;22:62-71.(NR)

6) Kim DL, Song KH, Kim SK. High prevalence of carcinoma in ultrasonography-guided fine needleaspiration cytology of thyroid nodules. Endocr J 2008;55:135-142.(RS)


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コラム3 分化癌の未分化転化について
要旨

急速に増大する硬くて可動性のない甲状腺腫,著明な呼吸困難,嚥下困難を示す場合は分化癌の未分化転化を疑う。未分化転化は転移リンパ節,転移臓器でも起こる。分化癌の未分化転化のメカニズムについての解明はされておらず,疫学的には乳頭癌,濾胞癌いずれからも転化することが示されている。同様に分子生物学的にも乳頭癌,濾胞癌が未分化転化を示す報告がみられる。

【解 説】

急速に増大する硬くて可動性のない甲状腺腫,著明な呼吸困難,嚥下困難を示す場合は甲状腺分化癌の未分化転化を疑う必要がある。特に分化癌の既往を有する高齢者では注意を要する。

病理所見,細胞診所見で乳頭癌,濾胞癌と未分化癌の混在を認め,未分化転化を形態学的に示した報告がある 1)が,分化癌であっても未分化転化を起こした症例の予後は悪い。また,良性病変といわれていても,潜在的に共存する乳頭癌,濾胞癌が未分化転化したと考えられる症例報告もある 2)

甲状腺分化癌の未分化転化は原発巣のみならず転移リンパ節からも起こる。このことを経験的に紹介し,分化癌で転移リンパ節に未分化転化を認めた症例では,予後がよくないことは周知の事実であるが,リンパ節を根治的に切除することにより予後の長期化を期待できるとした報告 3)がある。分化癌の他臓器転移の頻度は低いが,他臓器転移先での未分化転化の報告もあり 4)5),分化癌とは対照的な激烈な臨床像を呈している。

分子生物学的には,未分化転化発症のメカニズムについてBRAF,N-RAS mutationの関与が種々報告されている 6)7)が,いまだ解明に至っていない。

その他,分化癌を伴う未分化癌において,EGFR,Platelet-Derived Growth Factor Receptor(PDGFR)β,HER-2 がoverexpression していることを示し,これらの未分化転化における何らかの役割の可能性,未分化癌患者に対する標的治療への応用を示唆している論文 8)や,分化癌のfocus を有する未分化癌12 症例の組織microarray 構造で63の要素につき検討し,8つの要素,すなわちthyroglobulin,Bcl-2,MIB-1,E-cadherin,p53,β-catenin,topoisomerase Ⅱ-α,VEGF において著明な変化を認め,分子生物学的診断,予後判定の道具,治療上の潜在的な標的の研究の対象候補として有用であることを述べた論文 9)も検索されたが,いずれもspeculation の域を出ない。

【検索式・参考にした二次資料】

PubMed,医中誌およびJMEDPlusにより別に示す検索式から得られた文献のうち重要なものを選択した。さらに選択された論文からのrelated articlesのハンドサーチから重要な論文を追加した。

【参考文献】

1)内藤 聡,松井和夫,大谷尚志,他.甲状腺未分化癌6 症例の検討.耳鼻臨床 2002;補109:148-152.(CaseR)

2) 酒井昭博,杉谷 厳,川端一嘉,他.甲状腺良性結節と診断して保存的に経過観察した症例から未分化癌が生じた3 例.内分泌外科 2007;24:151-155.(CaseR)

3) Ito Y, Higashiyama T, Hirokawa M, et al. Prognosis of patients with papillary carcinoma showinganaplastic transformation in regional lymph nodes that were curatively resected. Endocr J2008;55:985-989.(RS)

4) 犬塚和徳,藤崎真人,戸倉英之,他.穿孔性腹膜炎を契機に発見された甲状腺癌小腸転移の1 例.臨外 2004;59:767-771.(CaseR)

5) 青野秀史,武藤真紀子,朴 貴典,他.甲状腺乳頭癌発症後14 年目に脳転移及び短期間に広範囲な転移を認め未分化転化が考えられた1 症例.京都市病紀 2002;22:53-57.(CaseR)

6) Quiros RM, Ding HG, Gattuso P, et al. Evidence that one subset of anaplastic thyroid carcinomas are derived from papillary carcinomas due to BRAF and p53 mutations. Cancer 2005;103:2261-2268.(RS)

7) Wang HM, Huang YW, Huang JS, et al. Anaplastic carcinoma of the thyroid arising more often from follicular carcinoma than papillary carcinoma. Ann Surg Oncol 2007;14:3011-3018.(RS)

8) Elliott DD, Sherman SI, Busaidy NL, et al. Growth factor receptors expression in anaplastic thyroid carcinoma:potential markers for therapeutic stratification. Hum Pathol 2008;39:15-20.(PS)

9) Wiseman SM, Griffith OL, Deen S, et al. Identification of molecular markers altered during transformation of differentiated into anaplastic thyroid carcinoma. Arch Surg 2007;142:717-729.(PS)


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コラム4 わが国における甲状腺癌の罹患率,有病率,死亡率について
要旨

わが国の2003 年における甲状腺癌推定罹患数は8, 069 例(男性 2, 023 例,女性 6, 046 例)であった。人口10 万人当たりの粗罹患率は男性 3. 25,女性 9. 26,年齢調整罹患率は男性 2. 56,女性 7. 17 であった。

わが国における甲状腺癌の有病率は人口1, 000 人当たり1. 3(男性 0. 6,女性1. 9)と推定される。

わが国の2007 年における甲状腺癌による死亡数は1, 558 例(男性 518 例,女性 1, 040 例)であった。人口10 万人当たりの粗死亡率は男性 0. 84,女性 1. 61,年齢調整死亡率は男性 0. 49,女性 0. 64 であった。

:1985 年モデル人口を基準人口とする。

【解 説】

わが国における甲状腺癌の推定罹患数,および推定罹患率の年次推移を下記に示す(表1図1〜3)。これらの数字は毎年見直しが行われており,そのため当初発表された数字 1)〜3)と現時点で示されている数字との間には若干の違いがみられる。表1 および図1〜3 には,現時点における最新の数字 4)5)を示した。

2003 年における甲状腺癌の推定罹患数は8, 069 例(男性 2, 023 例,女性 6, 046 例)であった。人口10 万人当たりの粗罹患率は男性 3. 25,女性 9. 26,年齢調整罹患率(1985 年モデル人口を基準人口とした場合)は男性 2. 56,女性 7. 17 であった。

表1.甲状腺癌の推定罹患数および推定罹患率の年次推移
罹患数 罹患率(人口10 万対)
粗罹患率 年齢調整罹患率
男性 女性 男性 女性 男性 女性
1975 1,691 288 1,403 0.52 2.47 0.69 2.72
1980 2,996 821 2,175 1.43 3.66 1.65 3.76
1985 5,001 1,108 3,893 1.86 6.32 2.01 6.07
1990 7,685 1,291 6,394 2.13 10.16 2.07 9.27
1995 6,918 1,426 5,492 2.32 8.58 2.08 7.34
2000 7,888 1,642 6,246 2.64 9.64 2.16 7.75
2001 7,857 1,758 6,099 2.82 9.38 2.25 7.51
2002 7,266 1,621 5,645 2.60 8.66 2.07 6.84
2003 8,069 2,023 6,046 3.25 9.26 2.56 7.17

: 1985 年モデル人口を基準人口とする。

図1.甲状腺癌:罹患数の年次推移

図2.甲状腺癌:粗罹患率の年次推移

図3.甲状腺癌:年齢調整罹患率の年次推移

推定罹患数の年次推移をみると,男性では増加傾向が続いているが,女性では1990年以降ほぼ横ばいの状況である。粗罹患率については1959 年から1975 年頃までほぼ横ばいであったが,1975 年以降は増加傾向に転じた 2)。以後男性では増加傾向が続いているが,女性では1990 年頃をピークとしてわずかながら減少傾向が認められる。年齢調整罹患率については1975 年以降増加傾向が続いていたが,男性では1985 年以降ほぼ横ばいないし微増の傾向にあり,女性では1990 年頃をピークとしてその後は明らかな減少傾向が認められる。

わが国で甲状腺癌罹患数および罹患率が最近まで増加傾向にあった主な理由としては,超音波検査など画像診断法の発達により,わが国に多い微小乳頭癌の発見が容易になり,それらに対して手術が多数行われるようになったことが挙げられている 6)

わが国における甲状腺癌の有病率は人口1, 000 人当たり1. 3(男性 0. 6,女性1. 9)と推定される 7)。これは約40 年前のデータであるが,残念ながらわが国では,これ以降全数調査に基づいた有病率の検討は行われていない。

わが国における甲状腺癌による死亡数および死亡率の年次推移を下記に示す(表2図4〜6)。これらの数字についても毎年見直しが行われており,そのため当初発表された数字 1)3)8)と現時点で示されている数字との間には若干の違いがみられる。表2 および図4〜6 には,現時点における最新の数字 9)を示した。

表2.甲状腺癌による死亡数および死亡率の年次推移
死亡数 死亡率(人口10 万対)
粗死亡率 年齢調整罹患率
男性 女性 男性 女性 男性 女性
1960 277 82 195 0.18 0.41 0.32 0.62
1965 362 106 256 0.22 0.51 0.37 0.73
1970 474 142 332 0.28 0.63 0.44 0.81
1975 589 163 426 0.30 0.75 0.42 089
1980 713 222 491 0.39 0.83 0.51 0.85
1985 814 268 546 0.45 0.89 0.53 0.79
1990 994 306 688 0.51 1.10 0.51 0.81
1995 1,131 343 788 0.56 1.24 0.48 0.74
2000 1,298 411 887 0.67 1.38 0.49 0.71
2003 1,427 447 980 0.73 1.52 0.48 0.69
2005 1,470 446 1,024 0.72 1.59 0.44 0.67
2007 1,558 518 1,040 0.84 1.61 0.49 0.64

: 1985 年モデル人口を基準人口とする。

図4.甲状腺癌:死亡数の年次推移

図5.甲状腺癌:粗死亡率の年次推移

わが国の2007 年における甲状腺癌による死亡数は1, 558 例(男性 518 例,女性 1, 040例)であった。人口10 万人当たりの粗死亡率は男性 0. 84,女性 1. 61,年齢調整死亡率(1985 年モデル人口を基準人口とした場合)は男性 0. 49,女性 0. 64 であった。

年次推移をみると,死亡数および粗死亡率については,男女ともに明らかな増加傾向が続いている。年齢調整死亡率については1960 年以降増加傾向が続いていたが,1980年以降は男性ではほぼ横ばいの傾向にあり,女性では明らかな減少傾向が認められる 8)

図6.甲状腺癌:年齢調整死亡率の年次推移

【補足】
年齢調整罹患率・年齢調整死亡率とは?

一般に,癌の罹患率や死亡率は高齢になるほど増加する。罹患率・死亡率の比較を行う場合には,対象集団の年齢構成を考慮に入れないと,思わぬ誤解を生じることがある。

例えば,A 国とB 国の甲状腺癌死亡率を比較してみよう。いずれの粗死亡率も人口10 万対2. 5 人であった。A 国もB 国も粗死亡率は同じで,一見,甲状腺癌に対する医療水準は同じであるようにみえる。しかし,A 国は建国から間もない国で人口に占める若者の割合が非常に多く,B 国は歴史が長く高齢者の占める割合が非常に多かったとしたらどうだろう?甲状腺癌で死亡する可能性は高齢者のほうが圧倒的に高いわけであるから,それならば,甲状腺癌医療はB 国のほうが進んでいるといわざるを得ないだろう。この例のように死亡率を比較する2 つの集団において年齢構成が大きく異なる時,年齢構成を調整して死亡状況の比較をしやすいようにしたものが年齢調整死亡率である。

一般に年齢調整死亡率は以下の式で求められる。

対象集団の年齢調整死亡率

近年のわが国の統計では,基準人口としてわが国の1985 年モデル人口(1985 年の国勢調査人口を元に補正した基準人口)を用いることが多い。

わが国の死亡率を年度別に比較する場合にも,前述のA 国とB 国の場合と同様の問題が生じる。わが国では高齢化が急速に進んでいるため,比較する年度における年齢構成が大きく異なるからである。したがって,わが国における甲状腺癌医療をより客観的にみるのであれば,年齢調整死亡率で判断したほうがよい。

わが国の甲状腺癌死亡率をみると,特に女性では近年粗死亡率が増加しているにもかかわらず,年齢調整死亡率は減少している。この乖離が起こる原因は,わが国の甲状腺癌医療が進歩して各年齢における死亡率が減少している(したがって,年齢調整死亡率も減少している)にもかかわらず,それを上回るペースで高齢化が進行しているため,結局甲状腺癌死亡数(粗死亡率)は増加してしまうからである。

年齢調整罹患率については,以上の説明における「死亡」を「罹患」に置き換えてご理解いただきたい。

【検索式・参考にした二次資料】

PubMed,医中誌およびJMEDPlusにより別に示す検索式から得られた文献のうち重要なものを選択した。さらに選択された論文からのrelated articlesのハンドサーチから重要な論文を追加した。

【参考文献】

1) 岩崎博幸.甲状腺癌の疫学に関する最新のデータ.臨外 2007;62:39-46.(NR)

2) Koike A, Naruse T. Incidence of thyroid cancer in Japan. Semin Surg Oncol 1991;7:107-111.(RS)

3) 北川 亘,清水一雄,赤須東樹,他.内分泌外科シリーズ第9 報:甲状腺癌の疫学に関する最新のデータ.J Nippon Med Sch 2003;70:57-61.(NR)

4) Matsuda T, Marugame T, Kamo K, et al. Cancer incidence and incidence rates in Japan in 2002:based on data from 11 population-based cancer registries. Jpn J Clin Oncol 2008;38:641-648.(RS)

5) Matsuda T, Marugame T, Kamo K, et al. Cancer incidence and incidence rates in Japan in 2003:based on data from 13 population-based cancer registries in the monitoring of cancer incidencein Japan(MCIJ) project. Jpn J Clin Oncol 2009;39:850-858.(RS)

6) Suehiro F. Thyroid cancer detected by mass screening over a period of 16 years at a health carecenter in Japan. Surg Today 2006;36:947-953.(RS)

7) Maruchi N, Furihata R, Makiuchi M. Population surveys on the prevalence of thyroid cancer in a non-endemic region, Nagano, Japan. Int J Cancer 1971;7:575-583.(PS)

8) 中村利恵,大野良之,玉腰暁子,他.わが国の甲状腺悪性腫瘍死亡の記述疫学特性.厚生の指標1994;41:24-30.(RS)

9) 厚生労働省大臣官房統計情報部編.平成19年人口動態統計.2009,厚生統計協会,東京.(RS)


2. 診断・非手術的管理

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CQ 3
甲状腺腫瘍における悪性腫瘍の頻度は?(検査前確率として)
推奨グレード
B 甲状腺腫瘍における悪性腫瘍の頻度は,疫学的調査,集団検診,ドック検診,剖検例などによって異なるが,健常人で偶発的に甲状腺結節が発見された場合,悪性腫瘍である確率は3. 7〜15. 9%である。
【背 景・目 的】

甲状腺腫瘍は体表臓器の一つであり,人間ドックなどの健康診断や乳癌検診の際に同時施行される頸部触診や超音波検査さらにCT,MRI,PET 検査などの画像診断で発見される。また,甲状腺癌は進行が緩徐であり,剖検時にも多数発見される(ラテント癌)。

ここでは,これら種々の状況で甲状腺腫瘍を発見した場合に,悪性腫瘍である確率を検討する。

【解 説】

甲状腺悪性腫瘍すなわち甲状腺癌はわが国での疫学的調査では,2003 年の年間罹患数は8, 069 人で,全癌の1. 3%を占め,男性2, 023 人,女性6, 046 人,男女比は1:2. 99 である 1)。一方,甲状腺の結節性病変は一般人口の4〜7%に認められ,女性,特に高齢者,そしてヨード欠乏地域や放射線被曝者ではさらに多く認められる 2)。剖検例では,剖検時まで正常と思われていた甲状腺にも30〜60%に結節を認めている 3)。また,近年,非触知ないし未認識の甲状腺結節が胸部X 線撮影や,CT,MRI,FDG-PET,超音波検査などの画像検査で,偶発的に発見される(以下,偶発腫瘍)こともある。Tan らの135 の文献のレビューによると,4 つのエコー検査による無作為の前向き試験では17〜67%,頸動脈エコーでは13%,副甲状腺エコーの際にも40〜46%に甲状腺結節が偶発的に発見されるとしている 3)。これらの多くは非触診の結節である。また,触診と画像診断の組み合わせでは13〜50%に偶発的に甲状腺結節を認める 3)。無症候性の結節が悪性である確率は,米国では非放射線被曝者の場合,0. 45〜13%(mean ± SD,3. 9 ±4. 1%)であった。一方,わが国で無症候性の甲状腺結節が発見された場合,悪性腫瘍である確率は3. 7〜15. 9%である(表14)〜13)

わが国での集団検診で甲状腺結節を触れる頻度は,1. 1〜8. 3%であり,悪性腫瘍の発生頻度は0. 13〜0. 76%であった 4)5)。前向き試験の結果として,甲状腺結節を触診で発見する頻度は1. 9〜4. 6%,悪性腫瘍の確率は0. 4〜0. 44%としている 6)10)。乳癌検診の際の頸部触診では0. 19%(初診例0. 40%,再診例0. 10%)に癌を認めた 7)。さらに甲状腺超音波検査で検診を施行すると,偶発腫瘍は6. 3%と高率に発見されるが,甲状腺悪性腫瘍は0. 23%に認め,他の検索法に比して高いわけではなかった 9)。那須ら 8)は,人間ドックにおける超音波検診で0. 29%に癌を発見し,そのうちの28. 9%は微小癌であったとしている。偶発腫瘍はその腫瘍径が1. 5 cm より小さいものが多く,臨床的に触知される甲状腺結節を超音波で観察すると,約50%にさらに1 個以上の結節が認められる 3)

最近はCT やFDG-PET でも甲状腺偶発腫瘍が発見される。前者は超音波検査よりも発見率が低いとされている。後者で健常成人を対象とした癌スクリーニング検査の場合1. 2〜2. 3% 11)〜13)に甲状腺偶発腫瘍を認め,そのうちの5. 3〜11. 7% 11)〜13)に甲状腺悪性腫瘍を認めたとの報告がある。Kang ら 14)は健常人の癌スクリーニングと他癌患者の遠隔転移検索にPET を施行した場合の甲状腺癌の発見率を比較したが,両者には差はなく,どちらも約0. 3%に甲状腺癌が発見されたとしている。Wilhelm ら 15)は,他悪性腫瘍既往患者における甲状腺腫瘍の発生率についてCT,超音波検査で検討し,85%に結節を認め,57%に甲状腺結節の切除が必要であり,全体の24%が悪性であった。また偶発腫瘍の28. 6%が悪性であったと報告している(表1)。

表1.無症候性の甲状腺結節中における悪性の頻度
著者 対象数 対象集団 方法 結節の頻度
(%)
悪性の頻度
(%)
結節からみた
悪性の頻度(%)
Maruchi et al 4) 59,106 集団検診 触診 1.1 0.13 12
竹内 他 5) 1,177 集団検診** 触診 8.3 0.76 9.2
Miki et al 7) 18, 619 乳癌検診** 触診 1.2 0.19 15.9
浜田 6) 1,489 一般外来 触診 4.6 0.4 8.8
Suehiro 10) 88,160 施設検診 触診 1.9 0.44 12.4
那須 他 8) 13,009 施設検診 超音波 *** 0.29 ***
高田 他 9) 858 施設検診 超音波 6.3 0.23 3.7
Cohen et al 11) 4,525 施設検診 FDG-PET 2.3 0.15 6.9
Chu et al 12) 6,241 施設検診 FDG-PET 1.2 0.06 5.3
Chen et al 13) 4,803 施設検診 FDG-PET 1.2 0.15 11.7
Kang et al 14) 1,330 健常成人,癌患者 FDG-PET 2.2 0.3 13.8
Wilhelm et al1 15) 41 他悪性腫瘍患者 超音波・CT 85 24 28.6

結節のスクリーニング方法,二次精査に使用したものは除く **女性のみ ***結節例数不明

【検索式・参考にした二次資料】

PubMed,医中誌およびJMEDPlus により別に示す検索式から得られた文献のうち重要なものを選択した。さらに選択された論文からのrelated articles のハンドサーチから重要な論文を追加した。また,二次資料として,財団法人がん研究振興財団編,がんの統計’09 を参考にした。

【参考文献】

1) 財団法人がん研究振興財団編.部位別年齢階級別がん罹患率(2003 年).がんの統計’09.p 70,2009.(RS)

2) Rojeski MT, Gharib H. Nodular thyroid disease. Evaluation and management. N Engl J Med 1985:313:428-436.(NR)

3) Tan G, Gharib H. Thyroid incidentalomas:management approaches to nonpalpable nodules discovered incidentally on thyroid imaging. Ann Int Med 1997;126:226-231.(NR)

4) Maruchi N, Furihata R, Makiuchi M. Population surveys on the prevalence of thyroid cancer in a non-endemic region, Nagano, Japan. Int J Cancer 1971;7:575-583.(PS)

5) 竹内 功,伊藤博之,木村芳雄,他.当施設における甲状腺検診:特に超音波断層法の有用性について.外科診療 1991;33:578-582.(PS)

6) 浜田 昇.一般外来で見逃してはいけない甲状腺疾患の頻度.医事新報 1995;3470:22-26.(PS)

7) Miki H, Inoue H, Komaki K, et al. Value of mass screening for thyroid cancer.World J Surg1998:22:99-102.(PS)

8) 那須 繁,山崎昌典,宋 栄治,他.超音波検査による甲状腺癌検診の成績について.健康医1997;12:61-64.(RS)

9) 高田憲次,藤沢 淳,清原政重,他.当院の人間ドックにおける甲状腺超音波検査の現状について.健康医 1992;7:38-41.(RS)

10) Suehiro F. Thyroid cancer detected by mass screening over a period of 16 years at a health care center in Japan. Surg Today 2006;36:947-953.(PS)

11) Cohen MS, Arslan N, Liien DL, et al. Risk of malignancy in thyroid incidentalomas identified byfluorodeoxyglucose-positron emission tomography. Surgery 2001;130 :941-946.(RS)

12) Chu QD, Connor MS, Liien DL, et al. Positron emission tomography(PET)positive thyroid incidentalomas:the risk of malignancy observed in a tertiary referral centre. Am Surg 2006;72:272-275.(RS)

13) Chen YK, Ding HJ, Chen KT, et al. Prevalence and risk of cancer of focal incidentaloma identified by 18 F-Fluorodeoxyglucose positron emission tomography for cancer screening in healthy subjects. Anticancer Res 2005;25(2 B): 1421-1426.(RS)

14) Kang KW, Kim S, Kang H, et al. Prevalence and risk of cancer of focal incidentaloma identified by 18 F-fluorodeoxyglucose positron emission tomography for metastasis evaluation and cancer screening in healthy subjects. J Clin Endocrinol Metab 2003;88:4100-4104.(RS)

15) Wilhelm SM, Robinson AV, Krishnamurthi SS, et al. Evaluation and management of incidental thyroid nodules in patients with another primary malignancy. Surgery 2007;142:581-587.(RS)


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CQ 4
悪性腫瘍の可能性を高める病歴とそのオッズ比または危険率は?
推奨グレード
A 放射線被曝歴
B 甲状腺腫瘤の合併または既往
B 体重増加
C2 生殖歴
C2 食事/ 嗜好因子
B 甲状腺疾患の家族歴(良性甲状腺腫瘤)
【背 景・目 的】

甲状腺の悪性腫瘍の可能性を考慮すべき,有意な因子となり得る病歴の存在の有無を検討し,あるとすればさらにどういった病歴であるかを検索すること。

【解 説】
1) 放射線被曝

甲状腺悪性腫瘍発生との関連について多くの報告がなされているが 1)〜7),1995 年に発表されたRon ら 1)の7 つの論文のプール解析(被曝者58, 434 名,非被曝者61, 181 名)では,ERR(過剰相対リスク)/Gy とEAR(過剰絶対リスク)/104 PY Gy の結果において15歳以下では7. 7(95% CI:2. 1-28. 7),4. 4(1. 9-10. 1)であったと報告されており,チェルノブイリ原発事故当時に18 歳以下であったウクライナ住民での前向きコホート試験 2)でも過剰相対リスク/Gy は5. 2(95% CI:1. 7-27. 5)と報告があり,若年者への放射線被曝が甲状腺癌発生増加の有意な因子であることを示した。Cardis ら 3)はチェルノブイリ原発事故の際に15 歳以下であった近隣の住民の解析を行っており,1 Gy あたりの推測オッズ比は種々のモデルにおいて5. 5(95% CI:3. 1-9. 5)から8. 4(4. 1-17. 3)と差があったが,発癌との有意な関連は認められた(p < 0. 001)と報告している。Ivanov ら 4)のチェルノブイリ原発事故に従事した103, 427 名を対象にした前向きコホート試験では標準化発生率(SIR)は3. 47(95% CI:2. 8-4. 25)と報告され,頭頸部へ外照射歴を有する人でSIR が9. 8(95% CI:6. 3-14. 6)と報告されている 5)。他のオッズ比の検討では頸部への被曝で2. 33(95% CI:1. 28-4. 23) 6),2. 3(95% CI:0. 97-5. 5) 7)などがある。プール解析を主とした結果から,若年者に対する放射線被曝はグレードA である。

2) 甲状腺疾患

甲状腺機能異常(亢進症,機能低下症)では,有意な関連があるとする報告 8)とないとする報告 6)7)9)があり,結論は出ない。甲状腺腫瘤の存在はFranceschi らが1999 年に発表したプール解析(12 のケースコントロール研究で女性患者2, 094 名,男性患者425 名,コントロールは女性3, 248 名,男性928 名)で良性結節の危険率は女性で29. 9(14. 5-62)で男性は全員結節を有していたと報告されている 8)。他の報告の危険率でも結節・腺腫∞(12. 0-∞) 9),腺腫,腫瘤の既往3. 7(2. 5-5. 6) 7)とされ有意な関係が示されている。甲状腺腫瘤の存在は推奨グレードB とする。

3) Body Mass Index(BMI)

2008 年にRenehan らによりメタ解析と系統的レビューが行われている 10)。対象は5つの甲状腺関係の論文の集積であり,罹患者が男性1, 212 名,女性2, 375 名と全体数が3, 303, 073 名である。結果として男性でBMI;5 kg/m² 増加は危険率1. 33(1. 04-1. 70), 女性は1. 14(1. 06-1. 23)と有意な関係であった。体重増加と発癌との関連性は未だに明らかではないが,3 つのホルモン環境(インスリンおよびIGF,性ステロイド,アディポカイン)はよく研究されている 10)。わが国でBMI との関連を検討した報告がみられないことより推奨グレードはB とする。

4) 生殖歴(女性に限定)

1999 年にNegri らが14 のケースコントロール研究のプール解析(甲状腺癌患者2, 247名,コントロール3, 699 名)を行っているが,その結果では初経13 歳以上1 年ごとに1. 04(1. 0-1. 1),自然閉経1. 3(1. 1-1. 5),人工閉経1. 8(1. 5-2. 1)のオッズ比であり,有意な関係を示す生殖歴の因子が報告されている 11)。しかし,40 歳から59 歳のカナダ人89, 835名に対する前向きコホート試験 12),上海住人への前向きコホート試験 13)(甲状腺癌患者130 名,コントロール3, 187 名)では生殖歴のどの因子も甲状腺癌発生と有意な関係は認めておらず,結論は出ていない。推奨グレードはC2 である。

5) 食事/ 嗜好因子

2009 年にDal Maso ら 14)がレビュー(非系統的)を発表しており,その中で,食事による甲状腺癌への有意な影響因子は認められない。嗜好因子に関して2003 年にMackら 15)は12 のケースコントロール研究のプール解析を行い,その中で嗜好品では飲酒やコーヒー摂取などは関連なしと集計しているが,喫煙は甲状腺癌発生に有意に抑制の関連を報告している〔オッズ比(OR):0. 6,95% CI:0. 6-0. 7〕。しかし,喫煙が発生に影響しない 6)12)との報告もあり,結論は出ていない。推奨グレードはC2 である。

6) 家族歴 (MEN 以外)

遺伝性疾患である多発性内分泌腺腫症2 型は,家族歴の関与が明らかであるので,非遺伝性の甲状腺悪性腫瘍について検討した。甲状腺疾患の家族歴に関しては,疾患の詳細が不明であるが有意な関連があるという報告〔相対リスク(RR):2.18,95% CI:1.17-4. 05〕 6),甲状腺腫大または良性結節でオッズ比:2. 6(95% CI:1. 7-4. 2) 7),女性の第一度近親者の甲状腺良性腫瘤でオッズ比:2. 3(95% CI:1. 3-3. 8) 16),機能異常でオッズ比:1. 5(95% CI:1. 0-2. 3) 7),甲状腺癌でオッズ比:6. 1(95% CI:1. 8-21. 3) 7)とある。両親6, 590, 250 名,出生児6, 994, 345 名の45 年間の観察期間を有する大規模コホート試験がスウェーデンで行われており 17),母が甲状腺癌で標準化発生率(SIR)は4.50(95%CI:2.74-6. 96),姉妹が甲状腺癌で6. 36(95% CI:3. 37-10. 90)と報告されているが,他の小規模スタディでは甲状腺癌の家族歴は関連なし 16)とあり,結論は出ていない。

ただ,甲状腺良性腫瘤の家族歴は有意な報告のみであり,推奨グレードはB とする。

【検索式・参考にした二次資料】

PubMed,医中誌およびJMEDPlus により別に示す検索式から得られた文献のうち重要なものを選択した。さらに選択された論文からのrelated articles のハンドサーチから重要な論文を追加した。

【参考文献】

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CQ 5
悪性腫瘍の可能性を高める理学所見・症状の感度・特異度は?
推奨グレード
B 甲状腺腫瘍における悪性腫瘍の可能性を高める理学所見は,結節の周囲組織への固定,リンパ節腫脹,声帯の麻痺(嗄声),4 cm 以上の結節,呼吸困難,嚥下困難,咳そうなどである。
C1 ある程度悪性を疑うものとして,硬い腫瘤,腫瘍の急激増大がある。
【背 景・目 的】

甲状腺結節の診断において,理学所見は重要であり,多くの報告があるが,実際に個々の因子の確率にまで言及した報告は極めて少ない。甲状腺の診断では悪性の可能性を高めるような理学所見があれば,超音波検査および穿刺吸引細胞診を勧める。したがって,ここでは,これら種々の状況で甲状腺の理学所見で悪性腫瘍である可能性を高める因子について検討する。

【解 説】

甲状腺の診断における理学所見では,第一に触診所見が挙げられる。触診単独での悪性腫瘍の発見率は,超音波検査に比べ明らかに低率である 1)。しかし,触診は患者の体格や年齢によっても異なり,難しい場合がある。嚥下をさせると,よりわかりやすくなる場合もある。多くは1. 5 cm を超える腫瘍の場合に触知が可能である 2)。Takano は78名に自己検診(触診)を指導し,腫瘍径が2 cm 以上では全例自己触診で触知可能であったが,1 cm 以下の結節では14 名中1 名しか触れず,1. 1〜1. 5 cm では16 名中5 名(31%),1. 6〜2 cm では10 名中8 名(80%)に触知が可能であったと述べている 3)。触診の際に結節が周囲組織(前頸筋や気管など)と固定している場合 4)〜7)や頸部リンパ節の腫脹を認めた場合 2)4)〜8),強く悪性を疑う。リンパ節腫脹は,多発で大きく,硬く,周囲との固定などがみられればさらに強く悪性を疑う 8)。触診以外の理学所見では,声帯麻痺(反回神経麻痺)による嗄声を認めた場合にも悪性を強く疑う 2)5)6)8)9)。Ati ら 4)は815 例の甲状腺偶発腫瘍における悪性の危険因子を多変量解析で検討し,腫瘍の固定,頸部リンパ節腫脹が有意な危険因子であったとしている。さらに,Chan らは 9),709 例の外科手術を受けた甲状腺分化癌患者の20 例(2. 8%)が術前に反回神経麻痺を認め,9 例(45%,全体では1. 3%)は臨床的に甲状腺結節を触知せず,嗄声を契機に発見されていると報告している。

甲状腺結節が“硬い” ことも悪性を疑う所見とする場合 5)と,緊満した嚢胞も硬く触れることがあることから,悪性を疑わせる所見に含めない 2)とする意見がある。

硬い腫瘤は悪性を疑う 8)が,腫瘍径単独では4 cm 以上の結節は悪性を疑う有意な独立した因子である 10)。また,腫瘍の急激な増大も悪性を疑う所見である 5)〜7)。未分化癌は特に急激増大を認め,McIver らは50 年の長期観察による134 例の未分化癌症例において,97%に腫瘍の急激増大が認められたとしている 11)。しかし,急激増大も,時間単位で大きくなる場合には,腫瘍内の出血によることが多く注意を要する 7)8)。急激ではなく,腫瘍サイズの増加自体は有意な悪性の可能性を高める因子にはなっていない 12)。触診による甲状腺腫,特に多発性結節の場合は良性の可能性が高いが,その中に最も有意に触知できる結節“dominant swelling” がある場合は14%に悪性を認めたとの報告 13)もあり,注意を要する所見である。びまん性腫脹は慢性甲状腺炎を示唆し,悪性の可能性は低いが,癌の14〜20%には慢性甲状腺炎を合併する 7)。甲状腺悪性リンパ腫やびまん性硬化型乳頭癌もときに認められる。

また,気道などの圧迫症状,すなわち呼吸困難,嚥下困難,嗄声,咳そうなども悪性を強く疑う所見として重要である 5)6)。未分化癌では特に腫瘤の急激増大に伴う,頸部痛,咽頭痛,項部痛,頭痛,嗄声,嚥下困難などが認められる 14)。すなわち急激増大する巨大腫瘤で,周囲に固定している場合に,これらの症状を認めれば未分化癌を疑う。

以上,このような悪性の可能性を高める理学所見を認めた場合には,超音波検査や細胞診を勧める。

【検索式・参考にした二次資料】

PubMed,医中誌およびJMEDPlus により別に示す検索式から得られた文献のうち重要なものを選択した。さらに選択された論文からのrelated articles のハンドサーチから重要な論文を追加した。

【参考文献】

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CQ 6
悪性腫瘍の診断で推奨される画像診断法とその感度・特異度あるいは尤度比は?
推奨グレード
B 悪性腫瘍の診断における画像診断法には超音波検査,シンチグラフィ,CT,FDG-PET などが挙げられる。なかでも超音波検査法は最も有用であり推奨される。その感度は43〜100%,特異度66〜93%,尤度比は2. 76〜13. 8 である。
C1 CT は感度78. 6%,特異度81. 3%,尤度比4. 2 である。
C2 123 Ⅰシンチグラフィは感度92. 3%,特異度17. 2%,尤度比1. 11 である。
C1 201 Tl シンチグラフィは感度65〜100%,特異度71%,尤度比13. 9 である。
C2 FDG-PET は感度60〜100%,特異度61〜65. 8%,尤度比1. 52〜2. 92 である。
【背 景・目 的】

甲状腺悪性腫瘍の診断に用いられる画像診断は超音波検査,CT(MR)検査,シンチグラフィ検査などが挙げられる。当初から良悪性を鑑別するために施行する検査と他の目的で施行され,偶然に甲状腺結節が発見されるものがある。前者の多くは超音波検査であり,最近はB モード画像も高解像度さらにはカラードプラ,パワードプラなどの血流を計測できるドプラモードや,硬さを表示するエラストグラフィまで進歩を遂げてきている。後者の多くはCT やFDG-PET での偶発腫瘍である。これらおよび123 Ⅰ シンチグラフィや201 Tl シンチグラフィを術前の質的診断に用いる場合の有用性につき検討する。

【解 説】

悪性腫瘍の診断で推奨される画像診断法としては,超音波検査,CT,シンチグラフィ,PET 検査などが挙げられる。甲状腺結節の良悪性の診断には第一に超音波検査が考えられる。超音波検査には,最も多く普及しているB モード検査 1)〜4),血流の状態を表現するドプラモード 5)〜7),そして硬さを表現するエラストグラフィ 8)などがある。

B モード検査は感度75. 8〜93. 8%,特異度66〜93. 8%,尤度比2. 7〜13. 8,ドプラモードで感度43. 8〜88. 9%,特異度74. 2〜92%,尤度比2. 98〜10. 9,エラストグラフィでは感度100%,特異度81. 3%,尤度比5. 33 であった(表1 a)。悪性腫瘍の術前診断に超音波検査が有用であることは明白であったが,そのエコー所見としては,石灰化特に微細石灰化 2)9)〜13),境界不整 2)9)11),内部低エコー 2)9)12)14),充実性結節 12)〜14),halo の欠如 9)10),縦横比≧ 1 9)12),さらにドプラエコーでは結節内血流増加 5)〜7)9)〜11)が挙げられる。Fish らの11 文献から検討したレビューでは良悪性の鑑別に関与する超音波検査各所見の感度,特異度は,微細石灰化で52%,83%,halo の欠如で66%,54%,境界不整で55%,79%,内部低エコーで81%,53%,腫瘍内血流増加で67%,81%で,また,縦横比1. 0 以上では感度84%,特異度82%であった(表1 b9)

表1 a.超音波検査における術前診断率(感度・特異度・尤度比)
文献 症例数 方法 感度(%) 特異度(%) 尤度比
1) 30 B モード 85.7 93.8 13.8
2) 191 B モード 75.8 87.3 5.97
3) 145 B モード 92.8 87.4 7.36
4) 155 B モード 93.8 66 2.76
5) 35 ドプラモード 87.5 92 10.9
6) 209 ドプラモード 43.8 85.3 2.98
7) 310 ドプラモード 88.9 74.2 5.15
8) 25 エラストグラフィ 100 81.3 5.33
表1b.甲状腺腫瘍の超音波所見による良悪の鑑別について9)
エコー所見 感度(%) 特異度(%)
微細石灰化 52(26-73) 83(69-96)
halo の欠如 66(46-100) 54(30-72)
境界不整 55(17-77) 79(63-85)
内部低エコー 81(49-90) 53(36-66)
結節内血流増加 67(57-74) 81(49-89)
縦横比≧ 1 84 82

濾胞癌を含む濾胞性腫瘍の術前鑑別では細胞診での診断が困難なため,乳頭癌に比べより画像診断の感度,特異度の高いものが要求される。Kobayashi らは910 例という多数の濾胞性腫瘍(濾胞癌109 例,濾胞腺腫237 例,腺腫様甲状腺腫547 例)の超音波所見を検討し,単結節,充実型,内部低エコー,辺縁不整などの所見が診断に有用であるとしている。感度は単結節64. 2%,充実型79. 8%,低エコー75. 2%と比較的高いものの,特異度はそれぞれ37. 6%,35. 3%,45. 7%と低く,逆に辺縁不整は感度が45. 8%と低いものの,特異度は86. 2%と高いとしている 14)。それぞれのエコー所見の組み合わせが重要となる。

Rogo らは99 mTc シンチグラフィでcold で甲状腺機能が正常な甲状腺結節104 例(悪性30 例,良性74 例)に対し,ドプラエコーを含む超音波検査の有用性について検討した。超音波所見の組み合わせでは,内部低エコー,halo の欠如,微細石灰化の3 所見のうちhalo の欠如かつ微細石灰化が,特異度が最も高い組み合わせであった(特異度 93. 2%,感度 26. 6%,尤度比 3. 95)。ドプラの血流パターンのみでは良悪性の鑑別には有意差を認めなかったが,エコー所見との組み合わせではhalo の欠如かつ腫瘍内血流増加が,特異度 89. 0%,感度 50. 0%,尤度比 6. 17 で,halo の欠如かつ微細石灰化かつ腫瘍内血流増加では,特異度 97. 2%,感度 16. 6%,尤度比 1. 85 とし,エコー所見にドプラ所見を組み合わせることにより感度や特異度を上昇させている 10)

CT,MRI 等は結節の転移浸潤などの病期診断,進行度診断に用いるために,質的診断にはなじまないことが多い。気管食道浸潤などの診断におけるCT,MRI の有用性についてはCQ9 を参照していただきたい。したがって結節自体の良悪性の鑑別にCT,MRI を用いた報告は少ないが,Ishigaki らは,多断面CT と超音波検査とを比較し,良悪性鑑別の感度・特異度・尤度比は超音波:85. 7 %,93. 8 %,13. 8,CT:78. 6%,81. 3%,4. 2 で,良悪性の鑑別には多断面CT より超音波が優れており,断面CT は, 被膜外浸潤が疑われる進行癌症例の評価には有用であったとしている 1)

シンチグラムとしては123 Ⅰ,99 mTc シンチグラフィによる結節の機能性の有無を検討するものと201 Tl シンチグラフィ,67 Ga シンチグラフィなどの腫瘍シンチグラフィがある。201 Tl シンチグラフィは高分化腫瘍に集積し,67 Ga シンチグラフィは未分化癌や悪性リンパ腫などの低分化腫瘍に集積する特徴をもつ。甲状腺結節にヨードシンチグラフィと外科切除を施行した文献22 例のメタアナリシスでは,非機能性結節(cold)4, 457例中悪性は708 例(16%)であった。低(正常)機能結節もしくは機能性結節は,837 例中悪性は59 例(7. 0%)であった。結節がcold であった場合に悪性である感度は92. 3%,特異度は17. 2%,陽性尤度比は1. 11 で,特異度,尤度比ともに高くはなかった 15)201 Tlシンチグラフィの有用性については,わが国やアジアの報告では散見されるものの,欧米での報告は極めて少ない。特に濾胞性腫瘍の鑑別に用いられる。Tamizu らは悪性濾胞性腫瘍に関する術前サイログロブリン(Tg)と201 Tl シンチグラフィの診断率の比較を行い,Tg の感度,正診率は4〜76%,50〜72.5%,201 Tl シンチグラフィの感度,正診率,尤度比は76〜100%,77. 5〜88. 8%,13. 9 であり,甲状腺濾胞癌の定量的診断には,Tg よりも201 Tl シンチグラフィのほうが優れていることを示した。しかし,この検討はTg との比較であり,超音波検査等ではない 16)。岩田らは77 例(良性32 例,悪性45 例)に術前検査として超音波,201 Tl シンチグラフィ,CT につき検討した。良悪性判定の感度,特異度はCT:85%,83%,超音波:97%,83%,Tl シンチグラフィ:65%,71%であり,超音波,CT より低率であった 17)67 Ga シンチグラフィは,結節が未分化癌や悪性リンパ腫を疑った際に有用な検査であるが,他項を参照していただきたい。

最近ではFDG-PET が全身の癌画像診断の一つとして普及してきている。甲状腺結節に対しては,de Geus-Oei らが,FNAC で確定診断がついておらず,触知可能な甲状腺結節に対して甲状腺葉切除を予定している患者44 例につきFDG-PET を術前に施行し,その有用性を検討した 18)。PET の集積の有無での甲状腺良悪鑑別に対する感度100%,特異度65. 8%,尤度比2. 92,NPV(negative predictive value)100%であった。SUV 値は,悪性で6. 2 ± 6. 7,良性疾患で7. 9 ± 8. 9 であり,良悪の鑑別には適していなかった。Mitchell らもFDG-PET が甲状腺結節の術前診断を改善し得るか48 病変(悪性15 例,良性33 例)を検討し,PET 集積による良悪性の感度60%,特異度61%,尤度比1. 52であった 19)。PPV(positive predictive value)は75%,NPV は83%で他の報告と同じく,甲状腺癌ではNPV が高いとの報告であった。また,検診に関しても,迎らは超音波PET 検診1, 717 例中4 例の乳頭癌が発見されたが,これは超音波での発見率より低いと述べている 20)。したがって,FDG-PET は術前の甲状腺結節の良悪性診断には勧められないが,悪性リンパ腫や未分化癌,髄様癌などの遠隔転移状況の把握や分化癌全摘後のヨードシンチグラフィ陰性例での診断など 21)には有用性があると思われる。

【検索式・参考にした二次資料】

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21) Palmedo H, Bucerius J, Joe A, et al. Integrated PET/CT in differentiated thyroid cancer: diagnostic accuracy and impact on patient management. J Nucl Med 2006;47:616-624, 2006(PS)


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CQ 7
悪性腫瘍の可能性を高める血液検査所見とその感度・特異度あるいは尤度比は?
推奨グレード
C1 カルシトニンは甲状腺腫瘍全体における悪性腫瘍のスクリーニングには適さないが,甲状腺髄様癌を予見する腫瘍マーカーとしては有効である。
C2 CEA は甲状腺髄様癌で高値を示し得るが,その特異性は乏しい。また,その他の甲状腺癌のスクリーニングには適さない。
C2 TSH は甲状腺分化癌の増殖因子であるが診断的マーカーとしての位置付けは乏しい。
C2 サイログロブリンは甲状腺分化癌の可能性を高めるが,その特異性は乏しい。
【背 景・目 的】

甲状腺癌の診断マーカーのうち,CEA とカルシトニンは髄様癌における診断マーカーとしてすでに1970 年代に確立されたといえる 1)2)。その他の甲状腺分化癌の診断マーカーとして研究報告のあるTSH とサイログロブリンをこれに加え解説する。

【解 説】

カルシトニンは甲状腺の傍濾胞細胞から生成・分泌され,骨,腎に作用し,破骨細胞の骨吸収を抑制し,骨Ca の含有量を保持し,副甲状腺ホルモンとともに血中カルシウム濃度の調節に重要である。甲状腺傍濾胞細胞から発生する髄様癌でその血中濃度が上昇することが知られている。Pacini らは初診時に甲状腺腫瘍を有する1, 385 症例全例に対しカルシトニン値を測定した前向き症例集積研究を行い,8 例(0. 57%)の症例でカルシトニン基礎値が異常値を示しそれらはすべて髄様癌であったと報告している。さらにそれらは甲状腺癌と診断された51 症例の15. 7%に相当したとの結果であり,従来報告のあった4〜10%よりも高率であったことから,甲状腺腫瘍へのカルシトニン値のルーチン測定の有効性はあると結論付けている 1)。同様にIacobone らは甲状腺疾患で受診した全患者7, 276 名に対しルーチンにカルシトニン値を測定した結果, 異常値を示した66 例(0. 9%)のうち61 例(0. 8%)が髄様癌(C 細胞過形成を含む)と診断され,これらではカルシトニン基礎値30 pg/ml 以上かつカルシトニン刺激値200 pg/ml 以上で感度61. 3 %(95 %CI:0. 42-0. 78), 特異度100 %(95 %CI:0. 8-1. 0),カルシトニン基礎値30 pg/ml 以上あるいはカルシトニン刺激値200 pg/ml 以上で感度80. 6%(95%CI:0. 62-0. 92),特異度90. 5%(95%CI:0. 69-0. 99)であったと報告した 2)。また,Mirallie らも甲状腺疾患で受診した8, 479 名にカルシトニン値を測定,うち71 例(0. 82%)をカルシトニン値異常(刺激試験を含む)で手術した結果,52 例(0. 6%)が髄様癌と診断された(感度100%;95% CI:1. 0-1. 0,PPV 73. 2%)と報告している 3)。以上からカルシトニン値をスクリーニングすることにより,甲状腺疾患で受診したpopulation の1%未満で髄様癌は発見されるが,髄様癌に限定された有効性のためAmerican Thyroid Association(ATA)のガイドラインでは,甲状腺結節を有する症例へのルーチンのカルシトニン測定を特には推奨していない 4)

CEA は大腸癌をはじめ,内胚葉由来腫瘍での腫瘍マーカーとして広く認識されている。甲状腺腫瘍では前述のとおりカルシトニンとともに髄様癌の腫瘍マーカーとして確立されている。最近の論文ではMachens らが髄様癌初回手術症例87 例において54 例(62. 1%)が術前CEA 陽性(4. 6 ng/ml 以上)であったと報告している 5)。しかしながら,その特異性は乏しく,甲状腺癌の中で髄様癌に限り,その治療効果の特定や予後予測因子としての測定は有効であるが,甲状腺癌全体のスクリーニング検査としては適さないと思われる。

甲状腺腫瘍を有する症例に対しTSH を測定する意義は,第一にその腫瘍が機能性を保持するかどうかの評価であり,通常甲状腺ホルモンとともに測定されるべきと考える。一方で腫瘍マーカーとしての意義につき検討した症例集積研究はこれまでに2 つの報告がある。Boelaert らは甲状腺疾患で受診した1, 183 症例に対し,TSH 値(正常0. 4〜5. 5 mIU/l)により5 つの群に分け検討した結果,各群での甲状腺癌の罹患率はTSH0.4mIU/l >で2.8%,0.4〜1.0mIU/l で3.7%,1.0〜1.8mIU/l で8.3%,1.8〜5.5mIU/lで12. 3%,5. 5 mIU/l <で29. 6%であったと報告した。さらにTSH 0. 4 mIU/l >の群での罹患率に対し,オッズ比は0. 4〜1. 0 mIU/l の群で1. 31(95% CI:0. 45-3. 81),1. 0〜1. 8 mIU/l で2. 72(95% CI:1. 02-7. 27),1. 8〜5. 5 mIU/l で3. 88(95% CI:1. 48-10. 19),5. 5 mIU/l <で11. 18(95% CI:3. 23-38. 63)とTSH 値の上昇につれ,甲状腺癌の罹患率が上昇することを示した 6)。またPolyzos らは甲状腺結節を有しかつ明らかな甲状腺機能異常のなかった565 症例に対し同様にTSH 値(正常値0. 4〜4. 0mIU/l)により0. 4 mIU/l >,0. 4 mIU/l〜0. 9 mIU/l,0. 9 mIU/l〜1. 5 mIU/l, 1. 5 mIU/l〜4. 0 mIU/l,4. 0 mIU/l <の5 群に分け検討した結果,各群の甲状腺癌の罹患率は8. 0%,5. 0%, 7. 9%,18. 2%,5. 3%であったと報告した。さらに1.5mIU/l〜4.0 mIU/l の群の甲状腺癌罹患率が0. 4 mIU/l >の群以外の他の群に比べ有意に高いとの結果が得られ,TSH 値が正常範囲内でTSH 値が有効な癌予測因子であると結論付けた 7)。しかし両研究の結果が一致していないこと,そのTSH 値と癌罹患率の間の理論的根拠につき明確な言及がないことから腫瘍マーカーとしての位置付けは確立され得ないと考える。

サイログロブリンは甲状腺全摘後の病勢判断のための腫瘍マーカーとして,その有効性は十分確立されているが,術前の癌予測因子になり得るかは議論が分かれるところである。有効性ありとした論文で,Besic らは濾胞性腫瘍を疑い手術を施行した327 症例に対し術前のサイログロブリン値のROC 曲線からカットオフ値を300 ng/ml として評価したところ,感度は57%,特異度は61%,300 ng/ml より高い症例で尤度比は1. 79(95% CI:1. 10-2. 91,p < 0. 036)との結果であったと報告 8),またHocevar らはサイログロブリン値を500 ng/ml 未満と以上で評価した結果,甲状腺濾胞癌における感度,特異度はそれぞれ71. 8%,80. 4%であったと報告している 9)。また健常人コントロールからカットオフ値を30 ng/dl に設定した橋本らの報告では甲状腺癌患者の111 例中65 例(58. 6%)がサイログロブリン値陽性であった 10)。しかしながらサイログロブリン値は癌特異的でなく甲状腺組織量や活動性に関連するため,バセドウ病や甲状腺良性腫瘍でも甲状腺重量および腫瘍サイズの増大に伴い上昇するためその特異性は低く,ATA のガイドラインでは甲状腺腫瘍への初期評価としては推奨していない 4)

【検索式・参考にした二次資料】

PubMed,医中誌およびJMEDPlus により別に示す検索式から得られた文献のうち重要なものを選択した。さらに選択された論文からのrelated articles のハンドサーチから重要な論文を追加した。また,二次資料としてAmerican Thyroid Association のガイドライン2006 年版を参考にした。

【参考文献】

1) Pacini F, Fontanelli M, Fugazzola L, et al. Routine measurement of serum calcitonin in nodular thyroid diseases allows the preoperative diagnosis of unsuspected sporadic medullary thyroid carcinoma. J Clin Endocrinol Metab 1994;78:826-829.(PS)

2) Iacobone M, Niccoli-Sire P, Sebag F, et al. Can sporadic medullary thyroid carcinoma be biochemically predicted? Prospective analysis of 66 operated patients with elevated serum calcitonin levels. World J Surg 2002;26:886-890.(PS)

3) Mirallie E, Iacobone M, Sebag F, et al. Results of surgical treatment of sporadic medullary thyroid carcinoma following routine measurement of serum calcitonin. Eur J Surg Oncol. 2004;30:790-795.(PS)

4) Copper DS, Doherty GM, Haugen BR, et al. Management guidelines for patients with thyroid nodules and differentiated thyroid cancer. Thyroid 2006;16:109-142.(SR〈RS〉)

5) Machens A, Ukkat J, Hauptmann S, et al. Abnormal carcinoembryonic antigen levels and medullary thyroid cancer progression:a multivariate analysis. Arch Surg 2007;142:289-293.(RS)

6) Boelaert K, Horacek J, Holder RL, et al. Serum thyrotropin concentration as a novel predictor of malignancy in thyroid nodules investigated by fine-needle aspiration. J Clin Endocrinol Metab2006;91:4295-4301.(PS)

7) Polyzos SA, Kita M, Efstathiadou Z, et al. Serum thyrotropin concentration as a biochemical predictor of thyroid malignancy in patients presenting with thyroid nodules. J Cancer Res Clin Oncol 2008;134:953-960.(RS)

8) Besic N, Sesek M, Peric B, et al. Predictive factors of carcinoma in 327 patients with follicular neoplasm of the thyroid. Med Sci Monit 2008;14:CR459-467.(RS)

9) Hocevar M, Auersperg M. Role of serum thyroglobulin in the pre-operative evaluation of follicular thyroid tumours. Eur J Surg Oncol 1998;24:553-557.(RS)

10) 橋本琢磨,水上勇治,道岸隆敏,他.甲状腺癌の腫瘍マーカーと癌遺伝子,臨病理 1989;37:122-130.(RS)


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CQ 8
細胞診の感度・特異度は?
推奨グレード
A 穿刺吸引細胞診(FNA)は甲状腺腫瘤の術前診断として,その手技の簡便性と感度・特異度の高さより強く推奨される。
【背 景・目 的】

穿刺吸引細胞診(fine needle aspiration;FNA)が始められてから20 年以上経過しているが,合併症やコストの少ない利点より,現在では甲状腺結節の診断に不可欠の手技となっている。その有用性に関する論文は1970 年代からみられる。近年では超音波ガイド下のFNA が行われるようになり,癌の早期発見とともに正診率の向上が期待されている。この項では2000 年代に入ってからの論文より,最近のデータを検討することとする。

【解 説】

FNA の正診率を検討した論文は数多くみられる。感度は65〜98%,特異度は73〜100%とさまざまである 1)〜6)。この差が生じる原因には,細胞診断の用語が世界的に統一されていないため,施設ごとにカテゴリー分類が異なっていることが挙げられる。Papanicolaou Society ではunsatisfactory, benign, cellular follicular lesion, follicular neoplasm, suspicious for malignancy, positive for malignancy の6 つのカテゴリーに分類することを勧めている 7)。一方,日本の甲状腺癌取扱い規約 8)では不適正・正常あるいは良性・鑑別困難・悪性の疑い・悪性の5 段階の判定区分を用いている。この他,不適正・良性・悪性の疑い・悪性の4 段階の分類,また“ 好酸性細胞腫瘍” といったカテゴリーを別に設ける基準など,施設によりさまざまな分類が用いられているのが現状である。加えて,それぞれの施設で“ 鑑別困難” や“ 悪性の疑い” にどのような所見のものを該当させているか(例えば濾胞腺腫と腺腫様甲状腺腫を迷う例や乳頭癌の可能性が完全には否定できない例をどのカテゴリーに含めるか)により偽陰性,偽陽性の割合が変わってくる。

偽陰性の割合は10%未満である 9)〜12)が,この原因の第一は病変部から細胞が確実に得られていないことであろう。その多くは石灰化を生じた微小乳頭癌であると思われるが,超音波ガイド下のFNA の検体を熟練した細胞検査師が鏡検すれば偽陰性の割合を減らすことができる 10)13)。また,主腫瘤の近傍に存在した微小乳頭癌が術後に偶然みつかった場合は偽陰性にしないという立場の施設もあり 2),こうした場合は感度・特異度ともに良好な結果が期待される。

偽陽性の割合も偽陰性同様に10%未満である 9)〜12)。これは多くの場合,濾胞性腫瘍の場合に生じる。小型濾胞の増殖がみられた場合は濾胞腺腫あるいは濾胞癌を疑うが,切除検体は腺腫様甲状腺腫であったという例が多数であると思われる 1)14)

【検索式・参考にした二次資料】

PubMed(キーワード:thyroid, cytology, fine-needle,Publication date from 1988/1/1 to 2009/12/31)で検索し,重要と思われるものを選択した。さらに重要と考えられたサイトと取扱い規約を含めた。

【参考文献】

1) Haberal AN, Toru S, Ozen O, et al. Diagnostic pitfalls in the evaluation of fine needle aspiration cytology of the thyroid:correlation with histopathology in 260 cases. Cytopathology 2009;20: 103-108.(RCT)

2) Amrikachi M, Ramzy I, Rubenfeld S, et al. Accuracy of fine-needle aspiration of thyroid. Arch Pathol Lab Med 2001;125:484-488.(RCT)

3) Sangalli G, Serio G, Zampatti C, et al. Fine needle aspiration cytology of the thyroid:a comparison of 5469 cytological and final histological diagnosis. Cytopathology 2006;17:245-250. (RCT)

4) Yang J, Schnadig V, Logrono R, et al. Fine-needle aspiration of thyroid nodules:a study of 4703 patients with histologic and clinical correlations. Cancer 2007;111:306-315.(RCT)

5) Furlan JC, Bedard YC, Rosen IB. Single versus sequential fine-needle aspiration biopsy in the management of thyroid nodular disease. Can J Surg 2005;48:12-18.(RCT)

6) Amrikachi M, Ponder TB, Wheeler TM, et al. Thyroid fine-needle aspiration biopsy in children and adolescents:experience with 218 aspirates. Diagn Cytopathol 2005;32:189-192.(RCT)

7) Papanicolaou society of cytopathology recommendations for thyroid fine needle aspiration. Available at URL:www.papsociety.org/guidelines.html. Accessed July 27, 2007.(Others)

8) 甲状腺外科研究会編.甲状腺癌取扱い規約 第6 版,金原出版,2005.(Others)

9) Bakhos R, Selvaggi SM, Dejong S, et al. Fine-needle aspiration of the thyroid:rate and causes of cytohistopathologic discordance. Diagn Cytopathol 2000;23:233-237.(RCT)

10) Ylagan LR, Farkas T, Dehner LP. Fine-needle aspiration of the thyroid:a cytohistologic correlation and study of discrepant cases. Thyroid 2004;14:35-41.(RCT)

11) Blansfield JA, Sack MJ, Kukora JS. Recent experience with preoperative fine-needle aspiration biopsy of thyroid nodules in a community hospital. Arch Surg 2002;137:818-821.(RCT)

12) Sclabes GM, Staekel GA, Shapiro SE, et al. Fine-needle aspiration of the thyroid and correlation with histopathology in a contemporary series of 240 patients. Am J Surg 2003;186:702-710.

13) Mittendorf EA, Tamarkin SW, McHenry CR. The results of ultrasound-guided fine-needle aspiration biopsy for evaluation of nodular thyroid disease. Surgery 2002;132:648-654.

14) Ravetto C, Colombo L, Dottorini ME. Usefulness of fine-needle aspiration in the diagnosis of thyroid carcinoma:a retrospective study in 37, 895 patients. Cancer Cytopathol 2000;90:357- 363.(RCT)


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CQ 9
気管・食道・反回神経への浸潤を術前に評価する診断法としての超音波,CT,MRI,喉頭・気管支鏡の感度・特異度は?
推奨グレード
気管・食道・反回神経への浸潤を術前に評価する診断法として,超音波検査,CT,MRI,食道超音波内視鏡検査,気管支鏡検査,喉頭鏡検査が挙げられる。
B 気管浸潤に関しては,超音波検査では感度91〜93%,特異度91〜93%,MRI が感度73〜94%,特異度73〜83%であり気管支内視鏡も感度92%,特異度83%と特に気管粘膜への浸潤の評価に有用である。
B 食道浸潤については,CT の感度90%,特異度90%,MRI の感度67〜82%,特異度94%,食道超音波内視鏡検査では感度82. 9%でいずれも有用である。
B 反回神経に関しては,喉頭鏡検査による声帯の麻痺を検討するのは感度76%,特異度100%と有用である。
C1 CT でも診断方法によっては反回神経浸潤に関して感度87%,特異度90%と高率で有用である。
【背 景・目 的】

甲状腺癌の術前診断に重要な検査であり,複数の検査が挙げられるが,その感度・特異度・正診率を指標として,適切な検査法を選択することができる。参考となった文献はいずれも後ろ向き症例集積研究である。

【解 説】

甲状腺癌の術前診断として,気管浸潤に関しては,超音波検査で感度91〜93%,特異度91〜93%,正診率85%であった 1)〜3)。CT では感度59〜67%,特異度56%であった 4)5)。MRI では感度73〜94%,特異度73〜83%,正診率86%であった 1)3)5)〜8)

気管浸潤における,気管支内視鏡の感度/ 特異度は,92% /83%であり,CT,MRI の,59% /56%,75% /73%に比べ,有意に高かった 5)表1 a)。甲状腺癌気管浸潤の超音波検査での正診率はCT やMRI よりも高率であり,特に外膜浸潤や軟骨輪間までの浸潤において有用であったが,浸潤が気管粘膜にまで及ぶ場合は気管支内視鏡が有用であった 3)。また,Tomoda らは509 例と多数例につき検討し,超音波検査,MRI ともに高い診断率であり,統計学的有意差はないとしている 1)

食道浸潤に関しては,超音波検査では感度28% 2)と低率であるのに対し,CT では感度90%,特異度90%,正診89% 5),MRI では感度67〜82%,特異度94%,正診率63〜94%と高率であった 7)〜10)。食道超音波内視鏡検査では感度82. 9%,正診率が82. 7〜88. 9%で高率であり 10)11),食道造影の正診率66%に比して有意に高率であった 10)表1 b)。MRI よりも有用とする意見もある 11)

反回神経浸潤の診断には,喉頭鏡により声帯麻痺の有無をみることが大変有用であり,その診断能は声の変化をみることやCT よりも優れていた。Randolph らは喉頭鏡での反回神経麻痺診断は感度76%,特異度100%と高率であり,声の変化では反回神経麻痺の1/3 にしかわからず,CT も23%しか術前に診断できなかったとしている 12)。しかし鈴木らは,気管食道溝への癌の進展を診断することによってCT でも感度87%,特異度90%,正診率88%と良好な診断率を得たと報告している 4)表1 c)。岸本らもCT上,輪状軟骨より0. 5〜1. 0 cm 下のスライス面で気管食道溝に腫瘍の進展がある場合,90%の確率で術前から,もしくは術後より反回神経麻痺を認め,同じスライス面で腫瘍の進展がない場合,全例で反回神経麻痺は認められなかったとし,CT は反回神経浸潤の予測に有用であるとしている 13)

表1 a.気管浸潤例に対する術前検査法別診断率
検査法 文献 感度(%) 特異度(%) 正診率(%)
超音波 1) 93 91  
2) 91 93  
3)     85
CT 4) 67    
5) 59 56  
MRT 1) 73 83  
5) 75 73  
6) 94 82  
7) 73 83 86
気管支内視鏡 5) 92 83  
表1 b.食道浸潤例に対する術前検査法別診断率
検査法 文献 感度(%) 特異度(%) 正診率(%)
超音波 2) 28.6    
CT 5) 90 90 89
MRT 7) 82 94  
8)     86
9)     94
10)     63
食道造影 10)     66.7
食道内視鏡 10)     88.9
10)     82.7
表1 c.反回神経浸潤例に対する術前検査法別診断率
検査法 文献 感度(%) 特異度(%) 正診率(%)
CT 4) 87 90 88
12) 23    
喉頭鏡 12) 76 100  
【検索式・参考にした二次資料】

PubMed,医中誌およびJMEDPlus により別に示す検索式から得られた文献のうち重要なものを選択した。さらに選択された論文からのrelated articles のハンドサーチから重要な論文を追加した。

【参考文献】

1) Tomoda C, Uruno T, Takamura Y, et al. Ultrasonography as a method of screening for tracheal invasion by papillary thyroid cancer. Surgery Today 2005;-35:819-822.(RS)

2) Shimamoto K, Satake H, Sawaki A, et al. Preoperative staging of thyroid papillary carcinoma with ultrasonography. Eur J Radiol 1998;29:4-10.(RS)

3) 中尾量保,黒住和史,仲原正明.臓器機能再生と再建のための手術 気道浸潤甲状腺癌に対する手術-喉頭・気管の切除・再建.手術.2001;55:1066-1070.(RS)

4) 鈴木恵子,河野 敦,成松明子,他.甲状腺癌におけるCT の意義 隣接臓器への浸潤について. 日本医放会誌1985;45:600-605.(RS)

5) Wakamatsu T, Tsushima K, Yasuo M, et al. Usefulness of preoperative endobronchial ultrasound for airway invasion around the trachea: esophageal cancer and thyroid cancer. Respiration 2006;73:651-657.(RS)

6) Takashima S, Takayama F, Wang J, et al. Using MR imaging to predict invasion of the recurrent laryngeal nerve by thyroid carcinoma. AJR Am J Roentgenol 2003;180:837-842.(RS)

7) Wang J, Takashima S, Matsushita T, et al. Esophageal invasion by thyroid carcinomas: prediction using magnetic resonance imaging. Comput Assist Tomor 2003;27:18-25.(RS)

8) Takashima S, Takayama F, Wang Q, et al. Differentiated thyroid carcinomas. Prediction of tumor invasion with MR imaging. Acta Radiol 2000;41:377-383.(RS)

9) Takashima S, Matsushita T, Takayama F, et al. Prognostic significance of magnetic resonance findings in advanced papillary thyroid cancer. Thyroid 2001;11:1153-1159.(RS)

10) Ohshima A, Yamashita H, Noguchi S, et al. Usefulness of endoscopic ultrasonography(EUS)in diagnosing esophageal infiltration of thyroid cancer. J Endocrinol Invest 2001;24:564-569.(RS)

11) Koike E, Yamashita H, Noguchi S, et al. Endoscopic ultrasonography in patients with thyroid cancer: its usefulness and limitations for evaluating esophagopharyngeal invasion. Endoscopy 2002;34:457-460.(RS)

12) Randolph GW, Kamani D. The importance of preoperative laryngoscopy in patients undergoing thyroidectomy:voice, vocal cord function, and the preoperative detection of invasive thyroid malignancy. Surgery 2006;139:357-362.(RS)

13) 岸本誠司,竹内俊二,西山正司.甲状腺腫瘍のCT 所見-反回神経麻痺との関連性.耳鼻臨床 1988;81:417-421.(RS)


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CQ 10
良性と診断された腫瘍の自然歴は?(縮小率・増大率)
推奨グレード
B 50%以上の縮小,増大率はそれぞれ0〜20% , 4〜22%と報告されている(詳細は表1 を参照)。
【背 景・目 的】

甲状腺良性腫瘤に対しての治療としては,甲状腺ホルモン剤投与によるTSH 抑制療法や手術治療があるが,こういった医療介入なしの自然史を知ることは治療選択に重要である。

【解 説】

Costante ら 1)は,良性腫瘍で治療群43 例,無治療群の38 例の報告をしており,このうち無治療群の38 例(1 年間の観察期間)で50%の変化で検討し,縮小1 例(2. 6%),不変35 例,増大2 例(5. 2%)であった。Alexander ら 2)は平均観察期間20 カ月,330 腫瘤で検討しているが増大は4%が50%以上の増大で,39%が15%以上の増大であった。Kuma ら 3)は134 例の良性腫瘍の変化を9〜11 年という長期の観察で報告している。増大および縮小の基準の記載がないものの,変化なし,縮小,消失,増大率はそれぞれ単発性では33. 7,12. 8,30. 2,23. 3%であり,多発性では35. 7,28. 6,14. 3,21. 4%で,嚢胞では20. 6,29. 4,50,0%と報告されている。児嶋ら 4)は109 良性結節で検討し,経過観察中の変化を回帰曲線で検討。増大30 結節(27. 5%),不変11 結節(10. 1%),縮小68結節(62. 4%)であったと報告している。Erdogan ら 5)は531 結節の自然史を検討しているが(観察期間の中央値:39. 7 カ月),15%,30%以上の増加はそれぞれ32%,24. 1%であり,減少はそれぞれ33. 1%,20. 7%であった。完全消失は4. 3%であったと報告している。

甲状腺良性腫瘍への甲状腺ホルモン剤投与によるTSH 抑制療法の有効性を検討する前向きランダム化比較試験が多く行われており,今までに2 つのRCT のメタアナリシスが行われている(2002 年 6),2005 年 7))。このメタアナリシスに採用された論文のコントロール群のデータはこのCQ に使用可能と考えられる。2 つのメタアナリシスともに採用論文は50%以上の変化率を有効変化とし,超音波検査での測定を必須にしている。このうち1 編の論文はクロスオーバーの治療を施行しており無治療群がないため除外し,計7 編で検討した。観察期間が6〜12 カ月で縮小例は5/25(20%) 8),3/20(15%) 9),3/50(6%) 10),0/22(0%) 11),2/24(8. 3%) 12),4/30(13. 3%) 13),また観察期間12〜18カ月で10/59(16. 9%) 14)の50%以上縮小例と報告がある。50%以上の増大率は3 編のみに記載があり,11/50(22%) 10),3/22(13. 6%) 11),4/24(16. 7%) 12)と報告されている。

表1.甲状腺良性腫瘍の自然歴(観察期間別の腫瘍径の変化率)
変化
閾値
  変化率
(観察期間)
             

50%

増大 4% 2)
(20ヵ月)
5. 2% 1)
(12ヵ月)
13. 6% 11)
(12ヵ月)
16. 7% 12)
(12ヵ月)
22% 10)
(12ヵ月)
     
縮小 0 11)
(6〜12ヵ月)
2.6% 1)
(12ヵ月)
6% 10)
(12ヵ月)
8.3% 12)
(12ヵ月)
13.3% 13)
(12ヵ月)
15% 9)
(10.6ヵ月)
16.9% 14)
(18ヵ月)
20% 9)
(10.6ヵ月)

30%

増大 24.1% 5)
(39.7ヵ月)
             
縮小 20.7% 5)
(39.7ヵ月)
             

15%

増大 32% 5)
(39.7ヵ月)
39% 2)
(20ヵ月)
           
縮小 33.1% 5)
(39.7ヵ月)
             
【検索式・参考にした二次資料】

PubMed,医中誌およびJMEDPlus により別に示す検索式から得られた文献のうち重要なものを選択した。さらに選択された論文からのrelated articles のハンドサーチから重要な論文を追加した。

【参考文献】

1) Costante G, Crocetti U, Schifino E, et al. Slow growth of benign thyroid nodules after menopause:no need for long-term thyroxine suppressive therapy in post-menopausal women. J Endocrinol Invest 2004;27:31-36.(RS)

2) Alexander EK, Hurwitz S, Heering JP, et al. Natural history of benign solid and cystic thyroid nodules. Ann Intern Med 2003;138:315-318.(RS)

3) Kuma K, Matsuzuka F, Yokozawa T, et al. Fate of untreated benign thyroid nodules:results of long-term follow-up. World J Surg 1994;18:495-498.(RS)

4) 児嶋 剛,高橋淳人,岸本 曜,他.甲状腺良性結節超音波所見の推移.耳鼻臨床 2005;98:151-155.(RS)

5) Erdogan MF, Gursoy A, Erdogan G. Natural course of benign thyroid nodules in a moderately iodine-deficient area. Clin Endocrino(l Oxf)2006;65:767-771.(RS)

6) Castro MR, Caraballo PJ, Morris JC. Effectiveness of thyroid hormone suppressive therapy in benign solitary thyroid nodules:a meta-analysis. J Clin Endocrinol Metab 2002;87:4154-4159. (SR〈RCT〉)

7) Sdano MT, Falciglia M, Welge JA, et al. Efficacy of thyroid hormone suppression for benign thyroid nodules:meta-analysis of randomized trials. Otolaryngol Head Neck Surg 2005;133: 391-396.(SR〈RCT〉)

8) Gharib H, James EM, Charboneau JW, et al. Suppressive therapy with levothyroxine for solitary thyroid nodules. N Engl J Med 1987;317:70-75.(RCT)

9) Reverter JL, Lucas A, Salinas I, et al. Suppressive therapy with levothyroxine for solitary thyroid nodules. Clin Endocrinol 1992;36:25-28.(RCT)

10) Papini E, Bacci V, Panunzi C, et al. A prospective randomized trial of levothyroxine suppressive therapy for solitary thyroid nodules. Clin Endocrinol 1993;38:507-513.(RCT)

11) La Rosa GL, Lupo L, Giuffrida D, et al. Levothyroxine and potassium iodide are both effective in treating benign solitary solid cold nodules of the thyroid. Ann Intern Med 1995;122:1-8. (RCT)

12) Zelmanovitz F, Genro S, Gross JL. Suppressive therapy with levothyroxine for solitary thyroid nodules:a double-blind controlled clinical study and cumulative meta-analyses. J Clin Endocrinol Metab 1998;83:3881-3885.(RCT)

13) Larijani B, Pajouhi M, Bastanhagh M, et al. Evaluation of suppressive therapy for cold thyroid nodules with levothyroxine:double blind placebo-controlled clinical trial. Endocr Pract 1999; 5:251-256.(RCT)

14) Wemeau JL, Caron P, Schvartz C, et al. Effects of thyroid-stimulating hormone suppression with levothyroxine in reducing the volume of solitary thyroid nodules and improving extranodular nonpalpable changes:a randomized, double-blind, placebo-controlled trial by the French Thyroid research group. J Clin Endocrinol Metab 2002;87:4928-4934.(RCT)


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CQ 11
良性と診断された腫瘍に対するTSH 抑制療法の実施は非実施に比べて腫瘍を縮小させるか?
推奨グレード
C2 甲状腺良性結節に対する甲状腺ホルモン剤投与によるTSH 抑制療法は,1 年以内の短期では有意な縮小が得られるとの報告が多いが,長期的にはその有効性は少なく,甲状腺ホルモン剤投与による心血管系や骨粗鬆症の合併症を考慮すると,甲状腺ホルモンによるTSH 抑制療法は積極的に推奨できない。
【背 景・目 的】

甲状腺の結節性病変は一般人口の4〜7%で認められ,ヨード欠乏地域ではさらに多くみられる。剖検例では正常とされる甲状腺組織内にも50%以上の高頻度で結節を認めるとされている。臨床の画像検査で偶発的に発見される甲状腺結節すなわちインシデンタローマ(偶発腫瘍)は13〜67%と高頻度であることも知られている 1)。これらの結果は,近年高分解能の超音波機器をはじめとする種々の画像検査を施行する頻度が増加したことやドックなどの検診受診率の増加などが大きく影響しているといえる。

これらの結節性病変に対して臨床的に良性と診断された場合どういう対処が適切であるか,また積極的に治療する場合,このTSH 抑制療法の有効性に対してはリスクの問題も含めていまだ賛否両論ある。甲状腺ホルモン剤によるTSH 抑制療法の理論的根拠は,TSH が甲状腺機能や甲状腺増殖の主たる刺激物質であるという事実に基づいている。はたして甲状腺ホルモン剤を投与してどの程度のTSH 抑制を長期にわたり行うことが推奨されているのか,あるいは良性甲状腺結節の自然経過を長期でみると,自然に縮小あるいは消失する場合がかなりあることを考え合せるとTSH 抑制療法は本当に必要な治療法であるのか,これらの論点を中心に文献的考察を述べる。

【解 説】

Gharib ら 2)は2008 年に甲状腺結節に対する各国の学会のガイドラインについてレビューをしている。その中で2006 年に発表されたATA(American Thyroid Association) 3)では甲状腺ホルモン剤投与を勧めていない(grade F)のに対して,AACE/AME(the American Association of Clinical Endocrinologists/Associazione Medici Endocrinologi)4)のガイドラインでは,甲状腺結節の縮小目的に甲状腺ホルモン剤投与によるTSH 抑制療法は推奨されないが,ヨード欠乏地域の限られた患者,あるいは若い女性,非機能性の結節では考慮されるとされている(grade C)。またETA(European Thyroid Association)のconsensus statement 5)ではこのことについては言及していない。しかしながら,ATA とAACE/AME のガイドラインの中では共通した3 つのメタアナリシスの参考文献を挙げて言及しており 6)〜8),臨床的エビデンスの構築方法は共通であったことは注目に値する。

図1 にこの中のCastro の文献 7)(JCEM2002)で示されたTSH 抑制療法のまとめを示す(文献9〜11 を含む) 9)〜11)。6 つのRCT のメタアナリシスの結果,プラセボに比べて甲状腺ホルモン剤投与によるTSH 抑制療法は,50%以上の症例で結節の縮小を認めているが,全体としては統計学的には有意ではなかったとしている(RR:1. 9,95% CI:0. 95-3. 81)。2002 年にはRichter ら 12)が9 つの論文のメタアナリシスを行い,596 人中結節が有意に縮小したのは全体の20%以下であり,甲状腺ホルモン剤治療で50%以下の縮小を得るのにはRR:1. 89,95% CI:0.9-3.73 であったとしている。同様に,表1に示すように,Gharib & Mazzaferri 13)は1995 年までの8 つのランダム化比較試験を検討し,平均治療期間12 カ月でコントロール群と比べて甲状腺ホルモン剤治療群で有意な(p <0. 05)結節の縮小をみたのは8 つの中の4 つの論文だけであったと報告しており,結節の縮小率も平均で41%であり,ほとんどの良性結節は甲状腺ホルモン剤治療をせず経過観察のみでよいと結論している。逆に最近Sdano ら 14)が2005 年に9 個のRCT(609 症例)を検証し,プラセボあるいは無治療に比べて甲状腺ホルモン剤治療では88%の症例で50%以上の結節の縮小を認めたと報告している(RR:1. 88,95% CI:1. 18-3. 01,p =0. 008)しかし5 年以上の長期での結果ではプラセボ群との差はなかったことや,治療中止後は再び結節が再増大する点,また心血管や骨への副作用が出た症例が8 例いたことから,結論としてはTSH 抑制療法は通常の治療としては勧められないとしている。またTSH の抑制の程度については,Koc 15)らがTSH 0. 1 mIU/ml 以下の群とTSH 0. 4〜0. 6 mIU/ml の軽度抑制群とで比較しており,結節の縮小の程度には差がなかったと報告している。しかしながらPapini ら 16)は,5 年間での治療成績で甲状腺ホルモン剤治療群全体では有意な縮小はみられなかったが,TSH 0. 1 mIU/ml 以下の群では有意にサイズが縮小したと報告している。また5 年間で新たにできる結節の頻度が,コントロール群では28. 5%に対して甲状腺ホルモン剤を投与することで7. 5%に減らすことができたとしており,TSH 抑制療法の有用性はあるが,できるだけ閉経前の女性に限るとしている。

9) 10) 11) 8)

図1.TSH 抑制療法のまとめ(文献7. より一部改変)

Bennedbek ら 17)は2000 年にATA とETA のメンバーに質問表を送り,178 人の専門家の意見をまとめている。設定は『42 歳女性で2〜3 cm の良性の充実性甲状腺結節を認めた場合のmanagement』である。全員が細胞診を行い良性と確定診断するとしており,良性結節で甲状腺機能が正常であれば甲状腺ホルモン剤治療を行うとしたメンバーはATA では52%いたのに対して,ETA では30%と少なく,逆に手術を選択するとしたのがATA の場合は1%に対してETA では23%もいた(p < 0. 0001)。これらの結果からはTSH 抑制療法に関しては実際は,ヨード充足と欠乏の地域差,また医療対費用の捉え方など国によっても異なるといえる。

実際の治療には合成T4 製剤であるlevothyroxine(チラーヂンS)を用いる。チラーヂンS は半減期が7 日と長く,一部はT4 からT3 へ変換されることから比較的安全に一定の血中濃度を保つことができる。しかし,ときにホルモン値が高くなると動悸,頻脈など甲状腺中毒症状が出現するので注意が必要である。特に,高齢者や心疾患の既往がある患者では,長期にわたりL-T4 でTSH が0. 1 mU/l 以下に抑制された状態が続くと,心房細動のリスクが増加するという報告や男女ともに虚血性心疾患のリスクが有意に増加するとされており 18),十分な注意が必要である。また甲状腺ホルモンは骨代謝回転を促進することから,特に閉経後の女性においては骨吸収が骨形成を上回り骨粗鬆症が起こりやすいともいわれている。甲状腺ホルモン剤を長期にわたり投与した場合の骨への影響についても詳しいメタアナリシスがなされており 18),TSH 抑制を目的とした甲状腺ホルモン剤の長期投与により閉経後の女性では腰椎でも大腿骨頚部でも有意な骨量の減少がみられたと報告している。骨折のリスクは血中TSH < 0. 05 mU/l のグループとTSH が0. 05 mU/l〜4. 0 mU/l のグループでみると,65 歳以上で血中TSH が0. 05 mU/l 以下だと骨折のリスクが2〜3 倍に増加するとの報告もある 19)。最近ではsubclinical hyperthyroidism と骨粗鬆症について21 個の論文のメタアナリシスが行われ,閉経後の女性においてはハイリスクといえるが,閉経前の女性や男性においてはリスクの増加はないと結論している 20)。したがってこれらの結果から,閉経後の女性については治療前に骨密度や骨代謝マーカーを測定し,治療後はできれば6 カ月から1 年ごとに腰椎骨密度を測定し,骨粗鬆症の発症,進展に十分注意し,場合によっては骨粗鬆症の治療を併用していくことが望ましい。

表1.TSH 抑制療法の治療成績(文献13. より一部改変)
報告者,報告年,
単発性,
多発性
T4 投与群 コントロール群 腫瘍縮小率 平均腫瘍縮小率 治療期間
    T4 投与群 コントロール群 P 値    
    n     mo
Gharib et al, 1987,
United States
Single 28 25f 50 60 > 0. 2 50 6
Cheung et al, 1989,
Hong Kong
Single and multiple 37 37 38 35 > 0. 2 50 18
Berghout et al, 1990,
Netherlands
Multipe 26 26f 58 5 0.001 13 9
Diacinti et al, 1992,
Italy
Single and multiple 16 19 30.7 0 0.01 25 9
Reverter et al, 1992,
Spain
Single 20 20 20 15 NS 50 11
Papini et al, 1993,
Italy
Single 51 50f 45 26 0.05 50 12
La Rosa et al, 1995,
Italy
Single 23 22f 39 0 0.004 40 12
Mainini et al, 1995,
Italy
Single 45 10 17.8 0 NS 50 21

NS = not significant
f Controls received placebo.

【検索式・参考にした二次資料】

PubMed,医中誌およびJMEDPlus により別に示す検索式から得られた文献のうち重要なものを選択した。さらに選択された論文からのrelated articles のハンドサーチから重要な論文を追加した。

【参考文献】

1) Ezzat S, Sarti DA, Cain DR, et al. Thyroid incidentalomas. Prevalence by palpation and ultrasonography. Arch Intern Med 1994;154:1838-1840.(NR)

2) Gharib H, Papini E, Paschke R. Thyroid nodules:a review of current guidelines, practices and prospects. Eur J Endocrinol 2008;159:493-505.(SR)

3) Cooper DS, Doherty GM, Haugen BR, et al. Management guidelines for patients with thyroid nodules and differentiated thyroid cancer. Thyroid 2006;16:109-142.(SR)

4) Gharib H, Papini E, Valcavi R, et al. American Association of Clinical Endocrinologists and Associazione Medici Endocrinologi medical guidelines for clinical practice for the diagnosis and management of thyroid nodules. Endocrine Practice 2006;12:63-103.(SR)

5) Pacini F, Schlumberger M, Dralle H, et al. European consensus for the management of patients with differentiated thyroid carcinoma of the follicular epithelium. Eur J Endocrinol 2006;154: 787-803.(SR)

6) Wemeau JL, Caron P, Schvartz C, et al. Effects of thyroid-stimulating hormone suppression with levothyroxine in reducing the volume of solitary thyroid nodules and improving extranodular nonpalpable changes:a randomized, double-blind, placebo-controlled trial by the French Thyroid Research Group. J Clin Endocrinol Metab 2002;87:4928-4934.(RCT)

7) Castro MR, Caraballo PJ, Morris JC. Effectiveness of thyroid hormone suppressive therapy in benign solitary thyroid nodules:a meta-analysis. J Clin Endocrinol Metab 2002;87:4154-4159. (SR〈RCT〉)

8) Zelmanovitz F, Genro S, Gross JL. Suppressive therapy with levothyroxine for solitary thyroid nodules:a double-blind controlled clinical study and cumulative meta-analyses. J Clin Endocrinol Metab 1998;83:3881-3885.(RCT)

9) Reverter JL, Lucas A, Salinas I, et al. Suppressive therapy with levothyroxine for solitary thyroid nodules. Clin Endocrino(l Oxf)1992;36:25-28.(RCT)

10) Papini E, Bacci V, Panunzi C, et al. A prospective randomized trial of levothyroxine suppressive therapy for solitary thyroid nodules. Clin Endocrinol(Oxf)1993;38:507-513.(RCT)

11) LaRosa GL, Lupo L, Giuffrida D, et al. Levothyroxine and potassium iodide are both effective in treating benign solitary solid cold nodules of the thyroid. Ann Intern Med 1995;122:1-8.(RCT)

12) Richter B, Neises G, Clar C, et al. Pharmacotherapy for thyroid nodules. A systematic review and meta-analysis. Endocrinol Metab Clinics of North America 2002;31:699-722.(SR〈RCT〉)

13) Gharib H, Mazzaferri EL. Thyroxine suppressive therapy in patients with nodular thyroid disease. Ann Intern Med 1998;128:386-394.(SR〈RCT〉)

14) Sdano MT, Falciglia M, Welge JA, et al. Efficacy of thyroid hormone suppression for benign thyroid nodules:meta-analysis of randomized trials. Otolaryngol Head Neck Surg 2005;133:391-396.(SR〈RCT〉)

15) Koc M, Ersoz HO, Akipinar I, et al. Effects of low-and high-dose levothyroxine on thyroid nodule volume:a crossover placebo-controlled trial. Clin Endocrinol(Oxf)2002;57:621-628.(RCT)

16) Papini E, Petrucci L, Guglielmi R, et al. Long-term changes in nodular goiter:a 5-year prospective randomized trial of levothyroxine suppressive therapy for benign cold thyroid nodules. J Clin Endocrinol Metab 1998;83:780-783.(RCT)

17) Bennedbek FN, Hegedus L. Management of the solitary thyroid nodule:results of a North American survey. J Clin Endocrinol Metab 2000;85:2493-2498.(NR)

18) Biondi B, Palmieri EA, Klain M, et al. Subclinical hyperthyroidism: clinical features and treatment opinions. Eur J Endocrinol 2005;152:1-9.(SR〈PS, RCT〉)

19) Bauer DC, Ettinger B, Nevitt MC, et al. Risk for fracture in women with low serum levels of thyroid-stimulating hormone. Ann Intern Med 2001;134:561-568.(RCT)

20) Vestergaard P, Mosekilde L. Hypothyroidism, bone mineral, and fracture risk-A meta-analysis. Thyroid 2003;13:585-593.(SR〈PS〉)


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CQ 12
濾胞癌の病理組織学的診断における再現性は?(interobserver variation)
推奨グレード
C1 甲状腺腫瘍のうち,濾胞性腫瘍の病理診断は最も難しい領域の一つであり,甲状腺病理を専門とする病理医間でも濾胞性腫瘍の病理診断が一致する率は必ずしも高くない。
【背 景・目 的】

濾胞癌は濾胞構造を基本とする濾胞上皮由来の悪性腫瘍である。濾胞腺腫との鑑別は腫瘍細胞の被膜浸潤,脈管侵襲,甲状腺外への転移のいずれか少なくとも一つを組織学的に確認することによる。被膜浸潤および脈管侵襲の判断は病理医により(甲状腺病理のエキスパートの間でも)しばしば異なり,施設ごとに濾胞癌の頻度の差となって現れる。また,腺腫様甲状腺腫と濾胞癌(あるいは濾胞腺腫)の線引きも難しく,観察者間の相違が生じやすい。さらに,乳頭癌はその特徴的な核所見により診断が容易であるように思われるが,実際は濾胞性腫瘍と乳頭癌の中間的な核所見を有する腫瘍も少なからず存在する。これにより濾胞癌(あるいは濾胞腺腫)と濾胞型乳頭癌の診断が分かれる例もみられる。このように濾胞性腫瘍の診断に病理医間で相違があることは知られているが,実際に検証した論文はとても少ない。

【解 説】

21 例の被包型濾胞性病変につき,8 人の甲状腺専門病理医(日本4 人,米国4 人)が組織のレビューを行った。濾胞癌,濾胞腺腫,乳頭癌,濾胞型乳頭癌,腺腫様甲状腺腫といった診断が下されたが,診断が全員一致したのは10%,7 人が一致したのが29%であり,エキスパート間でも診断の一致率は決して高いとはいえない。特徴的な結果として,日本の病理医は腺腫様甲状腺腫と診断する頻度が高く,米国の病理医は乳頭癌と診断する頻度が高い傾向にあった 1)。この傾向は,日米病理医(日本3 人,米国3 人)におけるほかの症例での検討でも同様に認められた 2)

フランスの甲状腺専門病理医間で行われた濾胞性腫瘍の5 人の病理医間の診断の相違についての検討では,コンセンサスを得た診断との一致率はそれぞれ0. 69,0. 41,0. 35,0. 28,0. 11 と,診断にかなりのばらつきが認められた 3)

初回の病理診断が濾胞型乳頭癌とされた15 例につき,米国,カナダ,香港の8 人の甲状腺専門病理医でレビューを行った検討では,全員一致で濾胞型乳頭癌の診断が下されたのは2 例(13%)のみであり,濾胞癌,濾胞腺腫,腺腫様甲状腺腫と診断されたものも多々認められた。また同一標本を10〜15 カ月後に再検したところ,前回との診断の一致率は17〜100%であり,interobserver のみならずintraobserver variation が存在することが確認された 4)

同様に濾胞型乳頭癌87 例を米国,カナダ,日本,香港,ポルトガル,イタリア,アルゼンチンの10 人の甲状腺専門病理医がレビューを行った検討では,10 人全員が濾胞型乳頭癌としたのは34 例(39. 1%)で,他に濾胞癌,濾胞腺腫などの診断がみられた 5)

文献に登場する病理医はいずれもよく知られた甲状腺病理医であるが,彼らの間でも決して低くない頻度で診断の相違が生じている。これを解決するためにはWilliams が提案するようなwell-differentiated carcinoma, not otherwise specified(濾胞癌,乳頭癌の鑑別も難しいもの),well-differentiated tumor of uncertain malignant potential(濾胞性腫瘍,乳頭癌の鑑別が難しいもの), follicular tumor of uncertain malignant potential(濾胞癌,濾胞腺腫の鑑別が難しいもの)といった疾患概念 6)を採用する手段もあるが,未だ検証は十分ではない。

濾胞性腫瘍の病理診断基準は未だ発展途上であり,現時点では病理医間で意見の統一を図ることは難しい。

【検索式・参考にした二次資料】

PubMed(キーワード:thyroid, observer variation,Publication date from 1988/1/1 to 2009/12/31)で検索し,重要と思われるものを選択した。二次資料はない。

【参考文献】

1) Hirokawa M, Carney JA, Goellner JR, et al. Observer variation of encapsulated follicular lesions of the thyroid gland. Am J Surg Pathol 2002;26:1508-1514.(RS)

2) Kakudo K, Katoh R, Sakamoto A, et al. Thyroid gland: international case conference. Endocr Pathol 2002;13:131-134.(RS)

3) Franc B, de la Salmoniere P, Lange F, et al. Interobserver and intraobserver reproducibility in the histopathology of follicular thyroid carcinoma. Hum Pathol 2003;34:1092-1100.(RS)

4) Elsheikh TM, Asa SL, Chan JK, et al. Interobserver and intraobserver variation among experts in the diagnosis of thyroid follicular lesions with borderline nuclear features of papillary carcinoma. Am J Clin Pathol 2008;130:736-744.(RS)

5) Lloyd RV, Erickson LA, Casey MB, et al. Observer variation in the diagnosis of follicular variant of papillary thyroid carcinoma. Am J Surg Pathol 2004;28:1336-1340.(RS)

6) Williams ED. Guest editorial: two proposals regarding the terminology of thyroid tumors. Int J Surg Pathol 2000;8:181-183.(NR)


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CQ 13
自律性機能性結節(AFTN)に対するエタノール注入療法(PEIT)の効果は?
推奨グレード
B AFTN に対するPEITの効果としては,甲状腺ホルモンの正常化とシンチグラフィでの正常甲状腺組織への取り込みがみられた例を治癒例TC(total cure)とすると,pretoxic adenoma(甲状腺シンチグラフィで結節内への取り込みがあるが,甲状腺機能は正常範囲である)の場合は60〜100%で平均81. 3%と良好な結果であり,toxic adenoma(甲状腺シンチグラフィで結節への取り込みがあり,甲状腺ホルモンも高値)の場合は35. 3〜92. 7%(平均68. 0%)であった。甲状腺ホルモンは正常化したが甲状腺シンチグラフィでは正常甲状腺組織への取り込みの回復がないPC(partial cure)のケースまでを含めると,pretoxic adenoma では100 %,toxicadenoma でも93%と非常によい成績が得られている。また結節のサイズでみても,全体での結節縮小率は65. 6%と良好な結果が得られている。PEITは外来で短時間で施行でき,医療費も安価で,また安全性,治療後の合併症がほとんどない点から,自律性機能性結節に対しては治療の選択の一つになり得ると考えられる。
【背 景・目 的】

自律性機能性結節(autonomously functioning thyroid nodule;AFTN)は,従来手術かアイソトープ治療が主体であったが,1990 年代になり超音波下で経皮的エタノール注入療法(percutaneous ethanol injection therapy;PEIT)での成績が多く報告されるようになった。PEITに使用するエタノールは蛋白凝固作用により直接組織の壊死をもたらし,一部は細血管の血栓形成により二次的に組織の破壊をもたらすことで,結節のサイズの縮小をもたらし,甲状腺機能も正常化するとされている。

【解 説】

表1 に1990〜2008 年のAFTN 症例でのPEITの成績をまとめて示した 1)〜15)。PEITの方法や観察期間がさまざまであるが,甲状腺ホルモンの正常化とシンチグラフィでの正常甲状腺組織への取り込みがみられた例を治癒例TC(total cure)とすると,pretoxicadenoma の場合は治癒例は60〜100 % で平均81.3 % と良好な結果であり,toxicadenoma の場合は35. 3〜92. 7%(平均68. 0%)であった。甲状腺ホルモンは正常化したが甲状腺シンチグラフィでは正常甲状腺組織への取り込みの回復がないPC(partial cure)のケースまでを含めると,pretoxic adenoma では100%,toxic adenoma でも93%と非常によい成績が得られている。また結節のサイズが大きいと治療成績が悪くなっているが,全体での結節縮小率は65. 6%とほとんどで50%以上の縮小が得られている。

その中で最近の2008 年にTarantino らが122 例という多くの症例で平均5 年間の長期間でみたAFTN のPEIT症例を報告している 15)。その結果93%が甲状腺機能正常となり,結節の体積も平均で66%縮小したという良好な結果が得られている。特に結節の体積で治療成績をみると,10 ml 以下で94 %,10〜30 ml で91. 4 %,30〜60 ml でも89. 5%で有効であったとしており,他の論文と異なりサイズの大きい結節でも有効であったという結果であった。超音波上のカラードプラでPEIT後に結節の血流が消失することでも治療の有効性を確認しており,PEITは安全で有効な治療法であると結論している。

またGuglielmi ら 14)は2004 年に95 例のAFTN に対して平均6. 9 年と長期にわたる観察でPEITの有効率は60%とやや低い結果であるが,治療が有効となる予測因子をロジスティック解析し,治療前の結節の体積が5. 0 ml 以下であること(OR:6. 1)と 嚢胞成分が30%以上混在していること(OR:3. 3)が統計学的に有意な因子であると述べている。さらに,費用対効果の点で比較してみると,PEITは手術での治療の1/10 のコストで済み,放射性ヨード内用療法と比べるとやや高いという結果であった(by Guglielmi 2004 Italian National Health Service reimbursement schedule により算出)。Zingrilloらは放射性ヨード内用療法とPEITとの比較を行った2000 年の報告ではPEITよりも放射性ヨード内用療法のほうが有効であったとしているが 11),その後2003 年に放射性ヨード内用療法単独よりもPEITを行った2 カ月後に放射性ヨード内用療法を行うことで腫瘍縮小効果も甲状腺機能正常化も有意に(p < 0. 01)高かったと報告している 16)

PEITの副作用の頻度については,Del Prete 13)らは局所の痛み(59%),発熱(6%),嚥下困難(3%),出血(3%)を挙げている。他の論文でも局所の痛み,嚥下困難,一過性の反回神経麻痺などがあるが,ほとんどの症例で一過性であり,PEITは安全な治療としてその有効性は確立しているといえる。AFTN の場合はPEIT治療中のthyrotoxic crisis を防ぐ目的で高齢者では治療前にmethimazole あるいはpropranolol を前投与している論文もある。

以上より,AFTN に対するPEITは,有効性,安全性,簡便性,さらに安価である点より,治療の選択の一つと考えられる。しかしながら,反復治療が必要である点やPEITの合併症などを考慮すると,PEITは十分に経験を積んだ医師が行うべきであり,専門医がいない施設では外科治療を選択すべきと考える。

表1.自律性機能性結節に対するエタノール注入療法の報告例
        成功率(%)  
報告者 報告年 患者数
(n/PTA/TA)
観察
期間
(月)
治療
回数
非中毒性腺腫(PTA) 中毒性腺腫(TA) 腫瘤
縮小率
(%)
CC PC NC CC PC NC
Livraghi 1) 1990 8/0/8 2-10 3-6       88 22 0 33
Goletli 1992 25/15/10 3 4-7 73 27 0 50 50 0 76-82
Paracchi 2) 1992 28/6/22 12-32 4-9 60 36 4(PTA+TA)       21
Martino 3) 1992 37/18/19 6 2-23 89 11 0 68 11 21 ▶▶▶
Monzani 4) 1992 56/30/26 6 3-5 80 20 0 62 38 (PC+NC) 87-88
Papini 5) 1993 20/0/20 12 3-8       85 15 (PC+NC) 75
Mazzeo 6) 1993 32/25/7 3-30 3-10 81 16 3(PTA+TA)       >50
Livraghi 7) 1994 101/29/72 6-48 4-8 68 32 0 50 39 11 73-83
Ozdemir 1994 16/7/9 18-24 4-8 100 0 0 89 11 0 ▶▶▶
Di Lelio 8) 1995 31/16/15 36 3-7 100 0 0 69 31 (PC+NC) 58-59
Pacella 1995 40/0/40 12 4-10       85 10 5 47
Lippi 9) 1996 429/187/242 12 2-12 83.4 16.6 0 66.5 33.5 0 85
Monzani 10) 1997 117/40/77 30 5.5-8.1 100 0 0 77.9 9.1 13 64-65
Zingrillo 11) 2000 22/0/22 36 5-9       81.8 13.6 4.6 78.4
Brkjacic 12) 2001 42/0/42 12 multiple       52 24 9 ▶▶▶
Del Prete 13) 2001 34/0/34 36 1-11       35.3 52.9 11.8 62.9-69.7
Guglielmi 14) 2004 112/95/17 83 3-7 60     35.3     >75
Tarantino 15) 2008 122/0/122 60 3.9       92.7 7.4 0 66
mean     44.2   81.3 15.9   68.0 24.5 = 65.6

n = total number, PTA = pretoxic thyroid adenoma, TA = toxic thyroid adenoma
CC = complete cure(normalization of total thyroxine(TT)and total tri-iodothyronine(TT)and TSH and scintigraphic reactivation of extranodular tissue),
PC = partial cure(normalization of TT and TT detectables TSH and partial reactivation of extranodular tissue),
NC = no cure
▶▶▶ Marked reduction, not specified.

【検索式・参考にした二次資料】

PubMed,医中誌およびJMEDPlus により別に示す検索式から得られた文献のうち重要なものを選択した。さらに選択された論文からのrelated articles のハンドサーチから重要な論文を追加した。

【参考文献】

1) Livraghi T, Paracchi A, Ferrari C, et al. Treatment of autonomous thyroid nodules with percutaneous ethanol injection:preliminary results. Radiology 1990;175:827-829.(PS)

2) Paracchi A, Ferrari C, Livraghi T, et al. Percutaneous intranodular ethanol injection:a new treatment for autonomous thyroid adenoma. J Endocrinol Invest 1992;15:353-362.(PS)

3) Martino E, Murtas ML, Loviselli A, et al. Percutaneous intranodular ethanol injection for treatment of autonomously functioning thyroid nodules. Surgery 1992;112:1161-1165.(PS)

4) Monzani F, Goletti O, Caraccio N, et al. Percutaneous ethanol injection treatment of autonomous thyroid adenoma:hormonal and clinical evaluation. Clin Endocrinol(Oxf)1992;36:491-497. (PS)

5) Papini E, Panunzi C, Pacella CM, et al. Percutaneous ultrasound-guided ethanol injection:a new treatment of toxic autonomously functioning thyroid nodules? J Clin Endocrinol Metab 1993;76:411-416.(PS)

6) Mazzeo S, Toni MG, De Gaudio C, et al. Percutaneous injection of ethanol to treat autonomous thyroid nodules. Am J Roentgenol 1993;161:871-876.(PS)

7) Livraghi T, Paracchi A, Ferrari C, et al. Treatment of autonomous thyroid nodules with percutaneous ethanol injection:4-year experience. Radiology 1994;190:529-533.(PS)

8) Di Lelio A, Rivolta M, Casati M, et al. Treatment of autonomous thyroid nodules: value of percutaneous ethanol injection. AJR 1995;164:207-213.(PS)

9) Lippi F, Ferrari C, Manetti L, et al. Treatment of solitary autonomous thyroid nodules by percutaneous ethanol injection:results of an Itarian multicenter study. The Multicenter Study Group. J Clinical Endocrinol Metab 1996;81:3261-3264.(PS)

10) Monzani F, Caraccio N, Goletti O, et al. Five-year follow-up of percutaneous ethanol injection for the treatment of hyperfunctioning thyroid nodules:a study of 117 patients. Clin Endocrinol (Oxf)1997;46:9-15.(PS)

11) Zingrillo M, Torlontano M, Ghiggi MR, et al. Radioiodine and percutaneous ethanol injection in the treatment of large toxic thyroid nodule:a long-term study. Thyroid 2000;10:985-989. (PS)

12) Brkljacic B, Sucic M, Bozikov V, et al. Treatment of autonomous and toxic thyroid adenoma by percutaneous ultrasound-guided ethanol injection. Acta Radiol 2001;42:477-481.(PS)

13) Del Prete S, Russo D, Caraglia M, et al. Percutaneous ethanol injection of autonomous thyroid nodules with a volume larger than 40 ml:three years of follow-up. Clin Radiol 2001;56:895- 901.(PS)

14) Guglielmi R, Pacella CM, Bianchini A, et al. Percutaneous ethanol injection treatment in benign thyroid lesions: role and efficacy. Thyroid 2004;14:125-131.(PS)

15) Tarantino L, Francica G, Sordelli I, et al. Percutaneous ethanol injection of hyperfunctioning thyroid nodules:long-term follow-up in 125 patients. AJR 2008;190:800-808.(PS)

16) Zingrillo M, Modoni S, Conte M, et al. Percutaneous ethanol injection plus radioiodine versus radioiodine alone in the treatment of large toxic thyroid nodules. J Nucl Med 2003;44:207-210. (PS)


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CQ 14
嚢胞性腫瘤に対する内容液の穿刺吸引およびエタノール注入療法(PEIT)で腫瘤は縮小するか?
推奨グレード
B 嚢胞性腫瘤に対して内容液を穿刺吸引することはある程度有効であるが再発例も多い点で問題が残る。一方,経皮的エタノール注入療法(percutaneous ethanol injection therapy;PEIT)は多数の報告例にあるようにその有効率(体積が50%以下に縮小したもの)は30〜95%で平均で74. 4%と良好であり,有効な治療法であるといえる。
【背 景・目 的】

甲状腺結節は一般人口の4〜7%で認められ,その中で15〜25%は嚢胞性病変といわれている 1)。嚢胞性病変の場合,甲状腺ホルモン剤投与によるTSH 抑制療法は無効であり,1970 年代までは穿刺排液のみで縮小しない場合は手術を行っていたが,1990 年代になりPEITでの成績が多く報告されるようになった。エタノールは蛋白凝固作用により直接組織の壊死をもたらし,一部は細血管の血栓形成により二次的に組織の破壊をもたらす。

【解 説】

良性の嚢胞性病変に対して,単に嚢胞液を穿刺吸引することは古くから行われていた治療の一つであるが,完全治癒例が20%と少なく,再発率が10〜80%と高いことが問題であった 2)。その後1989 年より穿刺排液した後にPEITを施行することが報告されはじめ,その有用性が次第に確立してきた。

表1 に2003 年のBennedbek ら 3)の論文の中でまとめられた他の報告例(345 例)の成績を示す。ここには1989〜2002 年の9 つの論文の成績が示してある 4)〜10)。各論文でPEIT後の観察期間はさまざまであるが,嚢胞性病変が50%以上縮小あるいは消失したものを有効ととると,PEITでの有効率は30〜95%という結果で,平均でみると74. 4%と比較的よい成績が出ている。この中で特に,Zingrillo 8),Del Prete ら 10)は,30〜40 ml の大きな結節に対してそれぞれ40 例,100 例近くの症例で2 年,10 年と長期にわたり検討しており,縮小率はそれぞれ93%,94%と良好な成績を得ている。Bennedbekら 3)はエタノール群(33 例)と生食群(33 例)とでランダム化二重盲検比較試験を行い,嚢胞液が1 ml 以下になったものを治癒例とすると,PEIT群では27/33(82%)が治癒したのに対して生食群では16/33(48%)しか治癒せず,また1 回のPEIT治療でも64%が治癒したのに対して生食群では18%のみしか治癒しなかったとしている(p = 0. 0006)。またGuglielmi ら 11)は,5 年間にわたり58 例の嚢胞性病変での検討をしており,結節の縮小率でみても86. 6%と良い結果を得ており,PEITでの治療効果の有効な予測因子としては,結節のサイズが5 ml 以下であること(OR:6. 1)と30%以上の嚢胞成分が混在していること(OR:3. 3)を挙げている。Lee ら 12)は2005 年に432 例と最も多い報告をしており,PEITの有効性に関してもpartial cure(volume reduction > 50%)まで含めるとcomplex cyst で79. 6%とよい成績を出している。

表1.嚢胞性甲状腺腫瘤に対するエタノール注入療法の治療成績(文献3. より一部改変)
報告者 報告年 患者数 観察期間
(月)
研究デザイン 治療回数 成功率a(%)
Rozman 1989 13 8 Open 1 77
Yasuda 4) 1992 61 6 Open 1-4 72
Monzani 5) 1994 20 12 Open 1-2 95
Verde 6) 1994 10 1 } Randomized 1 80
    10b 1   1 30
    32 12 Open 1 80
Antonelli 1994 26 12 } Open 1-5 77
    44c 12   1 36
Zingrillo 7) 1996 20 6 Open 1-4 95
Zingrillo 8) 1999 43 24 Open 1-4 93
Cho 9) 2000 22 1-10 Open 1-6 64
Del Prete 10) 2002 98 115 Open 1-4 94

a ほとんど消失あるいは50%以上の縮小
b 穿刺のみで治療
c 生食水でのコントロール群

嚢胞の中でもwatery cyst の場合は穿刺吸引のみ,あるいはPEITの併用で縮小する場合が多いが,viscous cyst の場合は液がなかなか吸引できず治療困難である。このようなlarge viscous cystic nodule に対してもSung ら 13),Zingrillo ら 7)はPEITの有効性について成績を出している。手技としてはSung ら 13)は16 ゲージ針あるいは8. 5-French catheter を用いて穿刺し吸引ポンプで粘調な嚢胞液を排液した後,排液量の半分の無水エタノールを注入して10 分間留置した後に再度吸引ポンプでいったん全部エタノールを排液して終了するという方法で縮小率94%と良好な成績を出している。Zingrillo ら 7)は18 ゲージ針を用いて10〜20 ml の嚢胞では2 ml,20〜30 ml では3 ml,30 ml 以上は4 ml のエタノールを注入し2 分間留置した後,嚢胞液を希釈した後3〜4 週間して2 回目のPEITをする方法で,85%の症例で90%の縮小という成績を出している。

以上より,PEITは外来で短時間で施行でき,医療費も安く済み,嚢胞性甲状腺結節に対しては第一選択の治療であると考えられる。実際にPEITを行う時は必ず超音波下で熟練した医師によって行うことが原則であり,慎重なインフォームドコンセントが必要である。施行する際は,詳細なPEITの手技に関して日本甲状腺PEIT研究会がガイドラインを出しているのでそれを参考にしていただきたい。

【検索式・参考にした二次資料】

PubMed,医中誌およびJMEDPlus により別に示す検索式から得られた文献のうち重要なものを選択した。さらに選択された論文からのrelated articles のハンドサーチから重要な論文を追加した。

【参考文献】

1) Mazzaferri EL. Management of a solitary thyroid nodule. N Engl J Med 1993;328:553-559.(SR)

2) Jensen F, Rassussen SN. The treatment of thyroid cysts by ultrasonically guided fine needle aspiration. Acta Chir Scand 1976;142:209-211.(PS)

3) Bennedbek FN, Hegedus L. Treatment of recurrent thyroid cysts with ethanol:a randomized double-blind controlled trial. J Clin Endocrinol Metab 2003;88:5773-5777.(RCT)

4) Yasuda K, Ozaki O, Sugino K, et al. Treatment of cystic lesions of the thyroid by ethanol instillation. World J Surg 1992;16:958-961.(PS)

5) Monzani F, Lippi F, Goletti O, et al. Percutaneous aspiration and ethanol sclerotherapy for thyroid cysts. J Clin Endocrinol Metab 1994;78:800-802.(PS)

6) Verde G, Papini E, Pacella C, et al. Ultrasound guided ethanol injection in the treatment of cystic thyroid nodules. Clin Endocrinol 1994;41:719-725.(RCT)

7) Zingrillo M, Torlontano M, Ghiggi MR, et al. Percutaneous ethanol injection of large thyroid cystic nodules. Thyroid 1996;6:403-408.(PS)

8) Zingrillo M, Torlontano M, Chiarella R, et al. Percutaneous ethanol injection may be a definitive treatment for symptomatic thyroid cystic nodules not treatable by surgery: five-year follow-up study. Thyroid 1999;9:763-767.(PS)

9) Cho YS, Lee HK, Ahn IM, et al. Sonographically guided ethanol sclerotherapy for benign thyroid cysts:results for 22 patients. Am J Roentgen 2000;174:213-216.(PS)

10) Del Prete S, Caraglia M, Russo D, et al. Percutaneous ethanol injection efficacy in the treatment of large symptomatic thyroid cystic nodules:ten-year follow-up of a large series. Thyroid 2002;12:815-821.(PS)

11) Guglielmi R, Pacella CM, Bianchini A, et al. Percutaneous ethanol injection treatment in benign thyroid lesions:role and efficacy. Thyroid 2004;14:125-131.(PS)

12) Lee SJ, Ahn IM. Effectiveness of percutaneous ethanol injection therapy in benign nodular and cystic thyroid diseases:long-term follow-up experience. Endocr J 2005;52:455-462.(PS)

13) Sung JY, Baek JH, Kim YS, et al. One-step ethanol ablation of viscous cystic thyroid nodules. AJR 2008;191:1730-1733.(PS)


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CQ 15
多発結節症例が経過観察中に手術になる可能性はどのくらいか?
推奨グレード
C2 非機能性多発甲状腺腫と診断された症例が経過観察中の要因の変化(経過観察中に穿刺吸引細胞診の再検で癌と判明,増大傾向,機能性の獲得など)について,それぞれ個々に検討した研究はあるが,手術に至る頻度については統括的に検討した研究が存在しないため,算定困難である。
【背 景・目 的】

多発結節性甲状腺腫(multinodular goiter)は日常よく遭遇する甲状腺疾患であるが,その多くはいわゆる腺腫様甲状腺腫と呼ばれている過形成病変であり,原則的には臨床症状が前面に出なければ放置は可能である。しかしながら実際には個々の結節は腫瘍性病変である濾胞性腫瘍との鑑別が困難であり,また乳頭癌合併の症例も散見される。多くの専門施設では,最大結節や悪性が疑われる結節へ穿刺吸引細胞診が施行されるが,その結果が陰性となった場合でも経過観察は継続し行うことが多い。そこで多発結節性甲状腺腫と診断された症例で,経過観察中に手術になる可能性はどのくらいかを検討する。

【解 説】

多発結節性甲状腺腫の手術適応は,悪性腫瘍が存在もしくは疑われる場合,機能性結節である場合や,結節による症状を有する場合などである。初回受診時にこれらを認めず経過観察後に手術に至る頻度について,過去の論文をレビューした。

対象を非機能性多発結節性甲状腺腫に限定し,癌の発生について長期経過観察した文献は少ないが,15 年間のフォローアップ期間で非機能性多発結節性甲状腺腫症例53 例を経過観察した結果,一人も癌の発生がなかったとの1960 年代の報告がある 1)。しかしながら超音波検査の精度が向上した近年では,超音波ガイド下穿刺吸引細胞診を主として経過観察を行ってきた症例の後ろ向き研究報告はいくつかなされており,それらによると多発結節性甲状腺腫症例で,初回受診時に甲状腺癌がみつかる確率は9. 7〜14. 9% 2)〜4)である一方で,単発性結節を含めた結節性甲状腺腫症例において,初回の穿刺吸引細胞診で良性と診断されたものの2 回目以降の穿刺吸引細胞診で癌と診断される頻度は0〜1. 5% 5)〜7)との結果が報告されている。ただしこれらの文献の間で,多発症例で数ある結節からどの結節を選択し穿刺吸引細胞診を行うかの基準についてはばらつきがみられた。

穿刺吸引細胞診の再検で癌と診断される以外では,サイズの増大,機能性を獲得したケース,TSH 抑制療法の無効例が経過観察中に手術に至ると考えられる。Kuma らは多発結節性甲状腺腫症例で,経過観察中に結節のサイズ増大が認められた例は21. 4%であったと報告したが,それらが手術に至ったかどうかは記載がなかった 8)。さらにMerchant らは結節性甲状腺腫症例45 例中(多発例は存在するが何例かは不明)23 例で,平均18. 3 カ月の経過観察期間中に結節サイズが増大し,そのうち7 例(15. 6%)で手術を施行したが1 例もその中に悪性例はなく 5),同様の検討でOrlandi らは2〜12 年間の経過観察期間で結節性甲状腺腫症例306 例中(多発例は存在するが何例かは不明)6 例(2. 0%)に,結節サイズ増大のため手術を施行したがやはりその中に悪性例はなかったと報告した 6)。また結節の機能性獲得という点ではElte らは非機能性多発結節性甲状腺結節が機能性結節に変化する可能性を平均5. 0 年の経過観察期間で6. 7%の頻度と報告しているが 9),もともと機能性多発結節症例の発生頻度が低いとされるわが国ではその頻度はさらに低いと考えられる。

欧米では非機能性多発結節性甲状腺腫に対しては手術か内科的治療かを迷うケースではT4 製剤投与によるTSH 抑制療法が初期治療として広く支持されている 10)11)。しかしながらAmerican Thyroid Association(ATA)のガイドラインでは,良性結節に対するTSH 抑制療は,治療効果の点でそのルーチンの施行を推奨せず,さらにはわが国のようなヨード摂取が充足している地域ではその治療効果はかなり乏しいとしている 12)。そのような状況ではあるが,患者の希望により当初TSH 抑制療法を施行し経過観察したものの,それが奏効せず手術に至る症例があると思われるが,その頻度を明確に示した文献は存在しなかった。

以上から多発結節症例が経過観察中に手術になる可能性につき,その頻度を算定することは困難で,その算定には手術に至る要因を統括的に検討した前向き研究が望まれる。

【検索式・参考にした二次資料】

PubMed,医中誌およびJMEDPlus により別に示す検索式から得られた文献のうち重要なものを選択した。さらに選択された論文からのrelated articles のハンドサーチから重要な論文を追加した。また,二次資料としてAmerican Thyroid Association のガイドライン2006 年版を参考にした。

【参考文献】

1) Vander JB, Gaston EA, Dawber TR. The significance of nontoxic thyroid nodules. Final report of a 15-year study of the incidence of thyroid malignancy.Ann Intern Med 1968;69:537-540.(PS)

2) Frates MC, Benson CB, Doubilet PM, et al. Prevalence and distribution of carcinoma in patientswith solitary and multiple thyroid nodules on sonography. J Clin Endocrinol Metab 2006;91:3411-3417.(RS)

3) Rios A, Rodriguez JM, Galindo PJ, et al. Utility of fine-needle aspiration for diagnosis of carcinoma associated with multinodular goitre. Clin Endocrino(l Oxf)2004;61:732-737.(RS)

4) Tollin SR, Mery GM, Jelveh N, et al. The use of fine needle aspiration biopsy under ultrasound guidance to assess the risk of malignancy. Thyroid 2000;10:235-241.(RS)

5) Merchant SH, Izquierdo R, Khurana KK. Is repeated fine-needle aspiration cytology useful in the management of patients with benign nodular thyroid disease ? Thyroid 2000;10:489-92.(RS)

6) Orlandi A, Puscar A, Capriata E, et al. Repeated fine-needle aspiration of the thyroid in benign nodular thyroid disease:critical evaluation of long-term follow-up. Thyroid 2005;15:274-278. (RS)

7) Liel Y, Ariad S, Barchana M. Long-term follow-up of patients with initially benign thyroid fine- needle aspirations. Thyroid 2001;11:775-778.(RS)

8) Kuma K, Matsuzuka F, Yokozawa T et al. Fate of untreated benign thyroid nodules:results of long-term follow-up. World J Surg 1994;18:495-498.(PS)

9) Elte JW, Bussemaker JK, Haak A. The natural history of euthyroid mulinodular goitre. Postgrad Med J 1990;66:186-190.(RS)

10) Bonnema SJ, Bennedbaek FN, Ladenson PW, et al. Management of the Nontoxic Multinodular goiter;A North American Survey. J Clin Endocrinol Metab 2002;87:112-117.(Others)

11) Bonnema SJ, Bennedbaek FN, Wiersinga WM, et al. Management of the nontoxic multinodular goitre;a European questionnaire study. Clin Endocrino(l Oxf) 2000;53:5-12.(Others)

12) Copper DS, Doherty GM, Haugen BR et al. Management guidelines for patients with thyroid nodules and differentiated thyroid cancer. Thyroid 2006;16:109-142.(SR〈RS〉)


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コラム5 結節性甲状腺腫の手術適応
【解 説】

結節性甲状腺腫は正常な甲状腺実質内に認められる単数もしくは複数の結節により甲状腺が腫大したものである。定義としてはそれら結節が悪性腫瘍である場合も含まれるが,そのほとんどが良性,もしくは良悪性の診断の困難な結節である。その手術適応はテキストや総説でさまざまなものが提示されてはいるものの明らかなエビデンスに基づくものではない。濾胞性腫瘍や腺腫様甲状腺腫による単発性結節性甲状腺腫は日常診療でよく遭遇するが,手術適応については各施設で判断されているのが現状である。そこでガイドライン作成委員会で,外科以外の医師が手術治療の適応を外科医師にコンサルトする基準につき以下の項目を満たすものが提案され,コンセンサスが得られた。ただし最終的な手術適応は,1 項目を満たすだけで決まるものではなく,総合的な判断が必要である。

1. 大きな腫瘤を形成している
2. 増大傾向あり
3. 圧迫またはその他の症状
4. 整容性に問題がある
5. 超音波検査で癌が否定しきれない
6. 細胞診断で癌が否定しきれない
7. 縦隔内へ結節が進展している
8. 機能性結節である
9. サイログロブリン(Tg)値が異常高値である

具体的な腫瘤の大きさ, サイログロブリンの測定値については各委員間で調査を行い検討したが合意に至らなかった。その調査結果は以下の人数分布であった。

腫瘍最大径が何cm 以上で手術適応とするか?

Tg 値が何ng/dl 以上で手術適応とするか?


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コラム6 未分化癌の診断
【解 説】

甲状腺未分化癌(anaplastic thyroid carcinoma;ATC)は,極めて予後不良のため,現時点では集学的治療を行う。未分化癌の診断には,未分化癌を疑い確定診断に至るまでの質的診断と,集学的治療の戦略を確立するための診断,すなわち量的診断がある 1)

未分化癌の診断は,急速増大をきたすことから,すみやかに診断しなければならない。

術前の臨床症状の中心は急激に増大した頸部腫瘤(甲状腺腫)である。腫瘤の急激増大に伴う,頸部痛,咽頭痛,項部痛,頭痛,嗄声,嚥下困難などが認められる 1)。また,80%以上で触知が容易な大きなリンパ節転移をすでに認めるものが多い 2)3)。腫瘍は巨大であることが多く5 cm 以上で,甲状腺全体が腫瘍に置換され,一見びまん性甲状腺腫や多結節性の巨大甲状腺腫にみえる場合もある 1)。前者は橋本病,後者は腺腫様甲状腺腫と診断され,経過することもある。触診上,腫瘤は極めて硬く可動性は不良である。周囲臓器,すなわち前頸筋,胸鎖乳突筋への浸潤や気管圧排,浸潤,閉塞,反回神経浸潤による嗄声,頸部食道への浸潤,頸部動静脈の浸潤閉塞,頸部から上縦隔へのリンパ節の腫大を認める。

検査所見としては,37 度台の軽度の発熱,軽度の白血球の上昇,CRP 上昇,血沈亢進などが認められる。

臨床診断としては,上記のような症状および臨床検査から未分化癌を疑う。白血球増加は甲状腺腫瘍では未分化癌か甲状腺悪性リンパ腫による急激腫瘤増大でのみ認められる。未分化の診断としては,質的診断と病期ないし進行度診断が考えられる。質的診断としては局所の腫瘤を穿刺吸引細胞診(fine needle aspiration;FNA)や太針生検(coreneedle biopsy;CNB)ないし切開生検(incisional biopsy)で確認することである。手術以外の治療を行う場合には,CNB 以上の組織診までは必要である。

staging を行い,治療方針を決定するためにも画像診断による診断は重要であるが,未分化癌の全身画像診断については他項を参照していただきたい。

局所の画像診断としては甲状腺超音波診断が最も有用であるが,まず,探触子で腫瘍の全景が入り切らないため,その特徴を捉えるのが難しい場合もある。以下のような点が特徴である 4)。内部エコーの不均一,びまん性低エコー像,近接リンパ節の腫大と壊死,周囲臓器(甲状腺外特に前頸筋,胸鎖乳突筋や近接血管)への浸潤,さらにカラーフロー情報としてhypervascular な部分と壊死部のhypovascular 部分が混在するなどの所見である。

UICC 6th edition ではATC のstaging を以前のようにすべてStage Ⅳではなく,新たにStage ⅣA,ⅣB,ⅣC に分類した(未分化癌の項を参照)。未分化癌であれば少なくともStage ⅣA であり,局所浸潤が強ければStage ⅣB で,遠隔転移を認めればStage ⅣC となる。ATC の場合,初診時で50%に遠隔転移を認め(Stage ⅣC),残りの半数も経過中に転移陽性となる。転移臓器としては肺が圧倒的に多く80%を占め,他は骨,脳,副腎,腹腔内結節に33〜15%に認められる 2)3)

鑑別疾患として,第一に挙げられるのが甲状腺悪性リンパ腫である。急激に増大した頸部腫瘤をはじめ未分化癌の臨床症状とほぼ一致する 5)。しかし,鑑別点として挙げるならば,未分化癌は甲状腺腫瘍や分化癌が長期間存在した後に発生しやすく,一部に粗大な石灰化病変を認めることが多いのに比して,リンパ腫ではほとんど認められない 5)。さらに甲状腺悪性リンパ腫は慢性甲状腺炎,いわゆる橋本病を前駆に発症するとされており,最近の自己抗体精密測定(TgAb,TPOAb)では高率に陽性となっており 5),参考所見となる。

また,前述のように一見,腺腫様甲状腺腫や橋本病と誤認されている場合も少なくないが,未分化癌はすでに甲状腺外に浸潤しているものが大半であり,可動性が極めて不良であることと,大半がリンパ節も触知されることが多いことから鑑別可能である 2)3)

また,以前には小細胞性未分化癌は比較的予後がよいことが知られていたが,leucocyto-common antigen(LCA)やカルシトニン染色で悪性リンパ腫や低分化型髄様癌であったことが判明しており,FNA,CNB ないし切開生検で得られた標本を免疫染色することで鑑別が可能になった。したがって,診断には十分な量の検体が必要であり,本疾患の場合,腫瘍やリンパ節が大きいが,壊死部分も多く,診断不良の検体も多い。標本の診断不良を防ぐためには,超音波特にドプラエコーで十分に血流の多いところからの検体を採取することが重要である 4)

【参考文献】

1) 鈴木眞一.甲状腺未分化癌.外科治療 2007;96:733-739.(NR)

2) Venkatesh YS, Ordonez NG, Schultz PN, et al. Anaplastic carcinoma of the thyroid. A clinicopathologic study of 121 cases. Cancer 1990;66:321-330.(RS)

3) Tan RK, Finley RK 3 rd, Driscoll D, et al. Anaplastic carcinoma of the thyroid:a 24-year experience. Head Neck 1995;17:41-47.(RS)

4) 鈴木眞一.未分化癌における超音波像.甲状腺超音波ガイドブック(日本乳腺甲状腺超音波会議編), 南江堂,2007.(NR)

5) 鈴木眞一,竹之下誠一.新たな知見に基づく治療戦略,甲状腺悪性リンパ腫の診断と治療,外科治 療 2005;93:182-187.(NR)