前立腺がん 〜診療ガイドライン

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目次:

1.疫  学

1.罹患率・死亡率

前立腺癌は他の癌に比べ高齢者に多く,全世界での前立腺癌年齢調整罹患率(年齢調整罹患率:/10 万人/年)は 19.8 であり,肺癌(37.5),胃癌(24.5)に次いで 3 番目である。地域差が大きく,一般的に先進国の罹患率は発展途上国比べ高齢者に多く,全世界での前立腺癌年齢調整罹患率(年齢調整罹患率:/10 万人/年)は 19.8 であり,肺癌(37.に比べ 3 倍以上高い。年齢調整罹患率は,北アメリカが 93.4 と最も高く,西ヨーロッパは 39.6 であるのに対し,日本は 8.5 と低い1)。わが国の男性の年齢調整罹患率(基準人口は昭和 60 年のモデル人口)は,前立腺癌では 19.9 と,胃癌,肺癌,結腸癌,肝臓癌,直腸癌に次いで6 番目に高く,男性癌全部位の 5.3%を占める2)。将来の前立腺癌罹患数の増加に関しては,2020 年には 78,468 人と肺癌に次いで男性癌の 2 番目になると予測されている3)

全世界での年齢調整死亡率は 8.2 であり,肺癌(33.7),胃癌(19.1),肝癌(14.2),大腸・直腸癌(10.7)に次いで 5 番目である。わが国における 2001 年の男性の年齢調整癌死亡率は,前立腺癌は 8.4 であり,肺癌,胃癌,肝臓癌,結腸癌,膵癌,食道癌,直腸癌についで 8 番目に高く,男性における癌死亡原因の 4.2%を占めている4)。今後の死亡率の傾向は,2000 年の前立腺癌死亡率の実測値に対して 2020 年の推定値は 2.8倍になると予測されている5)

2.危険因子

前立腺癌には剖検によって発見されるラテント癌が存在し,加齢にしたがって頻度が高くなる。しかし,上述した臨床癌の罹患率と対照的に地域差が少ない6)。一般的にラテント癌の多くは臨床癌にならずに経過し,一部は緩徐な経過をたどって臨床癌に進展すると考えられている7−9)

前立腺癌と前立腺肥大症は,発症年齢が重なることから,同一個人に同時に発生することがあるが,早期前立腺癌には特有の症状がなく,臨床症状から前立腺肥大症と鑑別することは困難である10)。排尿障害で外来を受診した症例から 4〜7%に前立腺癌が発見されたことが,日本および海外より報告されており11,12),何らかの排尿症状を訴えて外来受診した症例における前立腺癌発見率は,無症状例に対する前立腺癌検診における癌発見率に比べて高く,PSA 値測定,直腸診による前立腺癌の鑑別診断が必要である。

前立腺癌の決定的な危険因子はいまだ不明であるが,いくつかの有力な危険因子は同定されている。現時点で最も確実な危険因子は遺伝的要因であり,家族内における罹患患者数の多さと家族内罹患患者の若年発症性が危険率を高める13)。前立腺癌が男性ホルモン依存性癌であることから男性ホルモンの存在は発生に必須である。外的な要因としては,確実な証拠はないものの,動物性脂肪を摂取する機会の多い欧米国の食生活が前立腺癌の危険性に関与することが示されている14)。食品に関しては,豆類・穀物の摂取は前立腺癌罹患率と負の相関関係があり,砂糖,ミルク,油脂に正の相関が示唆されている15)。化学予防としてセレニウム,βカロチン,ビタミン A,E,D,C,イソフラボン,リコペンなどの成分が前立腺癌の発生を予防する物質として研究されている16−19)

3.前立腺癌検診

二次予防としての前立腺癌検診は,PSA 検査の前立腺癌早期発見における有用性が高いことから,簡便かつ精度の高い一次検診として実施されている。米国癌学会および米国泌尿器科学会のガイドラインでは,検診による利益と不利益を説明し,希望者に対しては 50 歳以上(黒人,前立腺癌の家族歴を有する人には 45 歳あるいは 40 歳)で PSA 値測定および直腸診による検診を推奨している20,21)。一方,米国予防医学研究班やアメリカ内科学会は,現時点では,ルーチンの検診を推奨すべきエビデンスも,また推奨しないエビデンスもないことを理由に,検診とその後の治療に関して受診者に情報提供を行い,受診をするか否かは自己判断すべきとしている22,23)

前立腺癌検診の導入による死亡率減少効果は,アメリカ合衆国,ミネソタ州オルムステッド郡の疫学研究24),カナダにおけるケベック州の疫学データ25),オーストリアのチロル地方における介入研究26)のデータなどから示されている。現在,大規模無作為比較対照試験として,米国の PLCO(Prostate, Lung, Colorectal and Ovarian)Cancer Screening 研究27),ヨーロッパでの ERSPC(European Randomized Study of Screeningfor Prostate Cancer)28)が進行中である。

わが国においては,全国で市町村検診における前立腺癌検診の実施率が増加している。同時に,人間ドックにおいても PSA を中心とした前立腺検診が行われており,施行数が増加している。前立腺癌検診での癌発見率は,PSA 測定のみによる前立腺癌検診では,50〜54 歳では 0.09%,55〜59 歳では 0.22%,60〜64 歳では 0.42%,65〜69歳では 0.83%,70〜74 歳では 1.25%,75〜79 歳では 1.75%と報告されており29),検診導入による,早期癌発見率の上昇も確認されている30)。検診受診間隔についてもPSA 基礎値に基づく設定が可能であり,費用対効果比の改善も検討されている31,32)

前立腺癌検診は,現時点では PSA 検査の偽陰性,偽陽性,前立腺生検による見逃し,検査法の精度上の問題,治療による合併症など,受診者に不利益が生じる可能性もある。しかし,検診の是非に関する見解が学会によって異なる米国において,50 歳以上の男性の約 3/4 が自己の PSA 値をチェックしている現状を考慮した場合,今後罹患率・死亡率の上昇が確実に予測されている本邦でも,前立腺癌検診のメリットとデメリットをパンフレット等で対象住民に広く啓発活動を行い,受診希望者に対して最適な前立腺癌検診システムを提供する体制が整備されることが望ましいと考えられる。

4.前立腺癌全国登録プログラム

最後に,日本泌尿器科学会では前立腺癌全国登録プログラムを前立腺癌取扱い規約第 3 版(2001 年 4 月発行)に CD−ROM 版として添付し,本邦における前立腺癌の疫学から診断,治療および予後に関して広く調査するシステムを立ち上げた。2000 年に診断された 4529 症例の前立腺癌が 173 施設から登録され,その臨床的特徴が 2005 年に報告された33)。今後,登録施設の増加と,登録症例のフォローアップデータの集積により,日本における前立腺癌の正確な動向把握が期待される。

なお,疫学に関する事項は推奨グレードをつけられない部分が多いため,他のパートと異なり各クリニカルクエスチョンに対して,コメントおよび解説,文献の 3 部からなる構成とした。また文献の評価は,それぞれが扱っている対象が日本人か外国人か,community−based か hospital−based かの 2 点を明記した。

【参考文献】

1) Parkin DM, Pisani P, Ferlay J. Global cancerstatistics. CA Cancer J Clin. 1999; 49: 33−64.

2) がんの統計’03: 悪性新生物年齢調整罹患率,主要部位別・年次別(昭和 50 年〜平成 10 年):available at: http://www.ncc.go.jp/jp/: accessed on July 27, 2004.

3) 大野ゆう子,中村 隆,大島 明,他: 日本のがん罹患の将来推計.がん・統計白書―罹患/死亡/予後―2004(大島 明,黒石哲生,田島和雄,編).篠原出版新社; 2004.p.201−17.

4) がんの統計’03: 悪性新生物年齢調整死亡率,主要部位別・年次別(昭和 25 年〜平成 13 年):available at: http://www.ncc.go.jp/jp/: accessed on July 27, 2004.

5) 黒石哲生,広瀬かおる,田島和雄,他: 日本のがん死亡の将来予測.がん・統計白書―罹患/死亡/予後―2004(大島明,黒石哲生,田島和雄,編).篠原出版新社; 2004.p.219−34.

6) Yatani R, Chigusa I, Akazaki K, et al. Geographicpathology of latent prostatic carcinoma. Int JCancer. 1982; 29: 611−6.

7) Etzioni R, Cha R, Feuer EJ, et al. Asymptomaticincidence and duration of prostate cancer. Am JEpidemiol. 1998; 148: 775−85.

8) 白石泰三,他: 前立腺ラテント癌.前立腺癌診療マニュアル,前立腺研究財団,金原出版;1995.p.13−24.

9) 渡辺 泱: 前立腺癌の自然史.前立腺癌診療マニュアル,前立腺研究財団,金原出版,1995.p.1−12.

10) 伊藤一人,山本 巧,大井 勝,他: 前立腺集団検診受診者における国際前立腺症状スコアー(I−PSS)の傾向と QOL index との関係.泌尿器外科.2001; 14: 868−71.

11) 福多史昌,舛森直哉,田中吉則,他: 下部尿路症状を主訴とする受診症例における前立腺癌発見率.臨床泌尿器科.2005; 59: 133−8.

12) Lepor H, Owens RS, Rogenes V, et al. Detectionof prostate cancer in males with prostatism.Prostate. 1994; 25: 132−40.

13) Steinberg GD, Carter BS, Beaty TH, et al. Fam-ily history and the risk of prostate cancer.Prostate. 1990; 17: 337−47.

14) Giovannucci E, Rimm EB, Colditz GA, et al. Aprospective study of dietary fat and risk of pros-tate cancer. J Natl Cancer Inst. 1993; 85: 1571−9.

15) 中田誠司,他: 日本及び世界における前立腺癌死亡と食摂取様式の相関分析.癌の臨床.1994; 40: 831−6.

16) Hebert JR, Hurley TG, Olendzki BC, et al. Nutri-tional and socioeconomic factors in relation toprostate cancer mortality: a cross−national study.J Natl Cancer Inst. 1998; 90: 1637−47.

17) Eichholzer M, Stahelin HB, Ludin E, et al. Smoking, plasma vitamins C, E, retinol, and carotene,and fatal prostate cancer: seventeen−year follow−up of the prospective Basel study. Prostate. 1999;38: 189−98.

18) Clark LC, Dalkin B, Krongrad A, et al.Decreased incidence of prostate cancer with sele-nium supplementation: results of a double−blindcancer prevention trial. Br J Urol. 1998; 81: 730−4.

19) Hartman TJ, Albanes D, Pietinen P, et al. Theassociation between baseline vitamin E, seleni-um, and prostate cancer in the alpha−tocopherol,beta−carotene cancer prevention study. CancerEpidemiol Biomarkers Prev. 1998; 7: 335−40.

20) Smith RA, Cokkinides V, Eyre HJ, et al. Ameri-can Cancer Society guidelines for the early detec-tion of cancer, 2004. CA Cancer J Clin. 2004; 54:41−52.

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22) Recommendations and Rationale. Screening forProstate Cancer: U. S. Preventive Services TaskForce(USPSTF): available at: http://www.ahcpr.gov/:accessed on November 12, 2004.

23) Harris R, Lohr KN.: Screening for prostatecancer: an update of the evidence for the U. S.Preventive Services Task Force. Ann InternMed. 2002; 137: 917−29.

24) Roberts RO, Bergstralh EJ, Katusic SK, et al.Decline in prostate cancer mortality from 1980 to1997, and an update on incidence trends in Olm-sted county, Minnesota. J Urol. 1999; 161: 529−33.

25) Meyer F, Moore L, Bairati I, et al. Downwardtrend in prostate cancer mortality in Quebec andCanada. J Urol. 1999; 161: 1189−91.

26) Bartsch G, Horninger W, Klocker H, et al. Pros-tate cancer mortality after introduction of pros-tate−specific antigen mass screening in the Fed-eral State of Tyrol, Austria. Urology. 2001; 58:417−24.

27) Prorok PC, Andriole GL, Bresalier RS, et al.Design of the Prostate, Lung, Colorectal andOvarian(PLCO)Cancer Screening Trial. ControlClin Trials. 2000: 21(6 Suppl): 273S−309S.

28) Schrö der FH, Denis LJ, Roobol M, et al. Thestory of the European Randomized Study ofScreening for Prostate Cancer. BJU Int. 2003; 92(suppl 2): 1−13.

29) 財団法人 前立腺研究財団,前立腺検診協議会: 人間ドック健診における前立腺検査調査(1989 年〜1999 年)・前立腺集団検診全国集計(1986 年〜1999 年).泌尿器外科.2003; 16:1023−38.

30) Kubota Y, Ito K, Imai K, et al. Effectiveness ofmass screening for the prognosis of prostate can-cer patients in Japanese communities. Prostate.2002; 50: 262−9.

31) Ito K, Yamamoto T, Suzuki K, et al. The risk ofrapid prostate specific antigen increase in menwith baseline prostate specific antigen 2.0 ng/mlor less. J Urol. 2004; 171: 656−60.

32) Ito K, Yamamoto T, Ohi M, et al. Possibility ofre−screening intervals of more than one year inmen with PSA levels of 4.0 ng/ml or less.Prostate. 2003; 57: 8−13.

33) Cancer Registration Committee of the JapaneseUrological Association. Clinicopathological statis-tics on registered prostate cancer patients inJapan: 2000 report from the Japanese UrologicalAssociation. Int J Urol. 2005; 12: 46−61.


CQ 1  
前立腺癌の罹患率はどのくらいか?

全世界では 10 万人あたり 19.8 であり,全癌の中で 3 番目に高く,欧米に多い。日本では,8.5 と低く米国の約 10 分の 1 である。しかし,2020 年には肺癌に次いで 2 番目の罹患数になると予測されている。

全世界での前立腺癌罹患数は,年間約 40 万人と報告され,すべての男性癌の 9.2%を占め,4 番目に多い。世界人口で年齢調整した前立腺癌の罹患率(年齢調整罹患率:/10 万人/年)は 19.8 であり,肺癌(37.5),胃癌(24.5)に次いで 3 番目の高さになる。前立腺癌罹患率は世界の中での地域差が大きく,一般的に先進国の罹患率は発展途上国に比べ 3 倍以上高い。年齢調整罹患率は,北アメリカが 93.4 と最も高く,西ヨーロッパは 39.6 であるのに対し,日本は 8.5 と低い1)

日本国内の調査結果(1998 年)に基づく,わが国の男性の年齢調整罹患率(基準人口は昭和 60 年のモデル人口)は,前立腺癌では 19.9 と,胃癌,肺癌,結腸癌,肝臓癌,直腸癌に次いで 6 番目に高く,男性癌全部位の 5.3%を占める2)

年齢に関しては,他の癌に比べ高齢者に多く,全世界の傾向では前立腺癌罹患者の約 80%は 66 歳以上である。わが国における前立腺癌の年齢階級別罹患率(1998 年)は,40〜44 歳では 0.1 と低いが,45〜49 歳では 0.7,50〜54 歳では 3.0,55〜59 歳では 12.4,60〜64 歳では 35.1,65〜69 歳では 85.5,70〜74 歳では 151.5,75〜79 歳では 193.8,80〜84 歳では 294.2,85 歳以上では 359.1 と加齢にしたがって高くなる3)

わが国での前立腺癌の年齢調整罹患率は,1975 年は 7.1 と低かったが,その後は年々高くなっており,1998 年には 19.9 と約 2.8 倍に増加している2)将来の前立腺癌罹患数の増加に関しては,2020 年には 78,468 人と肺癌に次いで男性癌の 2 番目になると予測されている4)

【参考文献】

1) Parkin DM, Pisani P, Ferlay J. Global cancer statistics. CA Cancer J Clin. 1999; 49: 33−64.

2) がんの統計’03: 悪性新生物年齢調整罹患率,主要部位別・年次別(昭和 50 年〜平成 10 年):available at: http://www.ncc.go.jp/jp/: accessed on July 27, 2004.

3) がんの統計’03: 悪性新生物罹患数,罹患率および年齢階級別罹患率(平成 10 年): available at:http://www.ncc.go.jp/jp/: accessed on July 27, 2004.

4) 大野ゆう子,中村 隆,大島 明,他: 日本のがん罹患の将来推計.がん・統計白書―罹患/死亡/予後―2004(大島明,黒石哲生,田島和雄,編).篠原出版新社; 2004.p201−17.


CQ 2  
前立腺癌の死亡率はどのくらいか?

全世界では 10 万人あたり 8.2 であり,全癌の中で 5 番目に高い。日本では,8.4 であり,男性における癌死亡原因の 4.2%を占め,8 番目に高い。2020 年には 2000 年に比べて 2.8 倍になると予測されている。

全世界での前立腺癌死亡数は,年間 16.5 万人と報告されており,すべての男性癌の中で 5.6%を占め,6 番目の多さである1) 。前立腺癌の年齢調整死亡率は 8.2 であり,肺癌(33.7),胃癌(19.1),肝癌(14.2),大腸・直腸癌(10.7)に次いで 5 番目の高さである1)

わが国における 2001 年の男性の年齢調整癌死亡率は,前立腺癌は 8.4 であり,肺癌,胃癌,肝臓癌,結腸癌,膵癌,食道癌,直腸癌についで 8 番目に高く,男性における癌死亡原因の 4.2%を占めている2)。日本国内における地域差については,1990〜1997年の調査で,北海道,東北地方北部,関東地方北部・西部,中部地方東部,九州地方西部で高いと報告されている3)

前立腺癌の年齢調整死亡率は,1950 年は 0.5 と低かったが,その後年々高くなっており,1975 年は 3.8,1998 年には 8.6 と 1975 年の約 2.3 倍に増加している。その後 2001年までの調査では 8.4〜8.6 の範囲で横ばいになっている2)今後の前立腺癌死亡率の傾向は,2000 年の前立腺癌死亡率の実測値に対して 2020 年の推定値は 2.8 倍になると予測されている4)

【参考文献】

1) Parkin DM, Pisani P, Ferlay J. Global cancer statistics. CA Cancer J Clin. 1999; 49: 33−64.

2) がんの統計’03: 悪性新生物年齢調整死亡率,主要部位別・年次別(昭和 25 年〜平成 13 年):available at: http://www.ncc.go.jp/jp/: accessed on July 27, 2004.

3) Nakata S, Takahashi H, Ohtake N, et al. Trends and characteristics in prostate cancer mortality in Japan. Int J Urol. 2000; 7: 254−7.

4) 黒石哲生,広瀬かおる,田島和雄,他: 日本のがん死亡の将来予測.がん・統計白書―罹患/死亡/予後―2004(大島明,黒石哲生,田島和雄,編).篠原出版新社,2004.p219−234.


CQ 3  
ラテント癌の性質と頻度はどのくらいか?

ラテント癌は加齢に伴い増加し,50 歳以上には約 20−30%に認められる。臨床癌と異なり地域差が少ない。

ラテント癌(何らかの原因で死亡した者への剖検により,はじめて発見される癌)の頻度は加齢にしたがって高くなる。50 歳以上では 13.0−26.5%に認めるとの報告がある1−4)。欧米と日本での剖検例における前立腺ラテント癌の頻度差は,罹患率の相違に比較して小さいことが知られている。アメリカ合衆国の黒人,白人,コロンビア人,ハワイ移住の日本人および日本在住日本人を対象とした同一の検索方法,組織判定基準での比較研究がなされており,50 歳以上における年齢調整(5 地域の全対象症例の年齢分布で調整)後のラテント癌の頻度はそれぞれ,36.9%,34.6%,31.5%,25.6%および 20.5%であった1)

さらにラテント癌をラテント浸潤性型(LIT)とラテント非浸潤型(LNT)に分けた場合,LNT 腫瘍の頻度は各国で有意差はなかったが,LIT 腫瘍の頻度は,日本在住の日本人は,アメリカ合衆国の黒人,白人,コロンビア人より有意に低く,ハワイ在住の日本人と比較しても低い傾向があった。ハワイ在住の日本人は,アメリカ合衆国の黒人とは LIT 腫瘍の頻度に有意な差があったが,白人,コロンビア人とは差がなかった1)。すべての人種において LIT 腫瘍は LNT 腫瘍に比べ腫瘍長が大きかったが,人種間でも差があり,年齢調整後の平均の LIT 腫瘍長はアメリカ合衆国黒人が 15.5 mm,白人が 15.7 mm,コロンビア人が 10.6 mm,ハワイ在住日本人が 9.7 mm,日本在住の日本人が 12.9 mm であり,黒人の LIT 腫瘍長は,コロンビア人とハワイ在住の日本人よりも有意に大きく,白人はコロンビア人,日本在住日本人に比べ有意に大きかった1)

【参考文献】

1) Yatani R, Chigusa I, Akazaki K, et al. Geographicpathology of latent prostatic carcinoma. Int J Cancer. 1982; 29: 611−6.

2) Karube K: Study of latent carcinoma of the prostate in the Japanese based on necropsy material. Tohoku J Exp Med. 1961; 74: 265−85.

3) Akazaki K, Stemmerman GN: Comparative study of latent carcinoma of the prostate among Japanese in Japan and Hawaii. J Natl Cancer Inst. 1973; 50: 1137−44.

4) 和田哲郎: 最近の日本人の前立腺潜伏癌(ラテント癌)の臨床病理学的検討.日泌尿会誌.1987;78: 2065−70.


CQ 4  
ラテント癌が臨床癌に進展することはあるのか?

一部の癌が長い期間を経て臨床癌に進展するが,多くは臨床癌とならずに経過すると考えられている。

前立腺のラテント癌(定義は“剖検により発見される癌”であるが,何らかの原因で死亡し剖検を行った場合,若年齢層の前立腺からも認められることがわかっており,ここでは“現在の臨床的な診断手法では診断できないような小さい癌”をさす)が臨床癌に進展するまでの期間の解明はむずかしい。

若年者の剖検による検討で,微小なラテント癌は 30 歳代から認められると報告されている1)。ラテント癌から臨床癌へ進展する期間は 11〜12 年と推測している報告がある一方で2),発癌から癌死に至るまでの期間は 45 年以上と推測している報告がある3,4)。前立腺癌は比較的ゆっくり増殖するものが多いが,稀に数カ月のうちに急速に進行するものがあり,ラテント癌から臨床癌になるまでの期間は非常に幅が広い。

いずれにせよ,一般的にラテント癌の多くは臨床癌にならずに経過し,一部は緩徐な経過をたどって臨床癌に進展すると考えられている。

【参考文献】

1) Sakr WA, Haas GP, Cassin BF, et al. The frequency of carcinoma and intraepithelial neoplasia of the prostate in young male patients. J Urol.1993; 150: 379−85.

2) Etzioni R, Cha R, Feuer EJ, et al. Asymptomatic incidence and duration of prostate cancer. Am J Epidemiol. 1998; 148: 775−85.

3) 白石泰三,他: 前立腺ラテント癌.前立腺癌診療マニュアル.前立腺研究財団,金原出版;1995.p13−24.

4) 渡辺 泱: 前立腺癌の自然史.前立腺癌診療マニュアル.前立腺研究財団,金原出版,1995.p1−12.


CQ 5  
前立腺肥大症と前立腺癌の関係はどのようになっているのか?

前立腺肥大症と癌が同時に発生することがあるため,排尿症状を訴えて外来受診する症例には前立腺癌の鑑別診断が必要である。

前立腺癌と前立腺肥大症は,発症年齢が重なることから,同一個人に同時に発生することがある。しかし,早期前立腺癌には特有の症状がなく,臨床症状から前立腺肥大症と鑑別することは困難である1)

本邦における,下部尿路症状を主訴に泌尿器科外来を受診した 50〜79 歳の 504 症例における前立腺癌の発見率の調査では,PSA 検査と直腸診によるスクリーニング検査を行い,PSA 値異常は 21%,直腸診のみの異常は 4%の症例で認め,PSA 値あるいは直腸診異常症例の 58%に前立腺生検を行った結果,4.4%で前立腺癌が発見されている2)

海外でも,臨床的に排尿症状を有して外来を受診した症例における前立腺癌発見率は 6.7%と報告されている3)。したがって,何らかの排尿症状を訴えて外来受診した症例における前立腺癌発見率は,無症状例に対する前立腺癌検診における癌発見率に比べて高く,PSA 値測定,直腸診による前立腺癌の鑑別診断が必要である。

【参考文献】

1) 伊藤一人,山本 巧,大井 勝,他: 前立腺集団検診受診者における国際前立腺症状スコアー(I−PSS)の傾向と QOL index との関係.泌尿器外科.2001; 14: 868−71.

2) 福多史昌,舛森直哉,田中吉則,他: 下部尿路症状を主訴とする受診症例における前立腺癌発見率.臨床泌尿器科.2005; 59: 133−8.

3) Lepor H, Owens RS, Rogenes V, et al. Detection of prostate cancer in males with prostatism. Prostate. 1994; 25: 132−40.


CQ 6  
前立腺癌の危険因子はどのようなものがあるか?

遺伝的要因が危険因子として重要であり,第一度近親者の罹患者数とその近親者の癌診断時年齢が若年であることは,発症リスクを高める。その他,食生活の欧米化の関与も指摘されている。

前立腺癌の決定的な危険因子はいまだ不明であるが,いくつかの有力な危険因子が同定されている。現時点で最も確実な危険因子は遺伝的要因であり,第一度近親者に1 人の前立腺癌患者がいた場合,前立腺癌罹患危険率は 2 倍になる。また,第一度近親者に 2 人以上の前立腺癌患者がいた場合,前立腺癌罹患危険率は 5〜11 倍になる1)

遺伝性前立腺癌(Carter らの定義2):一核家族内に 3 人以上の前立腺癌患者がいる,3 世代以上にわたり前立腺癌患者がいる,55 歳以下の前立腺癌患者が 2 人以上いる,のいずれか一つの条件を満たす)の頻度は,わが国では 0.7%,欧米では 5−10%が遺伝性前立腺癌の条件を満たしているとの報告がある2−4)

また,ラテント癌の頻度は人種間でそれほど大きな違いがないにもかかわらず,臨床癌の頻度には大きな違いがある,あるいは,同じ日本人であっても日本在住の場合とハワイ,アメリカ合衆国本土在住の日本人とでは前立腺癌罹患率に差がある5)ことから,外的な要因も前立腺癌の進展に関与していると考えられている。確実な証拠はないものの,動物性脂肪を摂取する機会の多い西洋風の食事様式が前立腺癌の危険性に関与することが示されている6)その他,食品に関しては,豆類・穀物の摂取は前立腺癌罹患率と負の相関関係があり,砂糖,ミルク,油脂に正の相関が示唆されている7)。また,前立腺癌が男性ホルモン依存性であることから,男性ホルモンは癌の発生に必須である。

【参考文献】

1) Steinberg GD, Carter BS, Beaty TH, et al. Family history and the risk of prostate cancer.Prostate. 1990; 17: 337−47.

2) Carter BS, Bova GS, Beaty TH, et al. Hereditaryprostate cancer: epidemiologic and clinical features. J Urol. 1993; 150: 797−802.

3) 大竹伸明,中田誠司,深堀能立,他: 本邦における家族性前立腺癌の最新知見.日本臨床.2002; 60: 469−73.

4) Valeri A, Azzouzi R, Drelon E, et al. Early−onset hereditary prostate cancer is not associated with specific clinical and biological features. Prostate.2000; 45: 66−71.

5) Parkin DM, Whelan SL, Ferlay J, et al. Age−standardized(world)incidence(per 100,000)and cumulative(0−74)incidence(percent)rates and standard errors, Prostate(C61). In: Cancer Incidencein Five Continents Vol[. Lyon: International Agency for Research on Cancer; 2002. p.633−5.

6) Giovannucci E, Rimm EB, Colditz GA, et al. Aprospective study of dietary fat and risk of prostate cancer. J Natl Cancer Inst. 1993; 85: 1571−9.

7) 中田誠司,他: 日本及び世界における前立腺癌死亡と食摂取様式の相関分析.癌の臨床.1994; 40: 831−6.


CQ 7  
前立腺癌の一次予防にはどのようなものがあるか?

化学予防として様々な物質が市販されているが,いずれも十分な確証は得られていない。現在,セレニウム,βカロチン,ビタミン A,E,D,C,イソフラボン,リコペンなどの成分が前立腺癌の発生を予防する物質として研究されている。化学予防については大規模無作為比較試験が現在進行中であるが,有効性に関する最終的な結論がでるまでには長期間の経過観察を要する。

化学予防としては,セレニウム,ビタミン A,E,D,C,イソフラボン,リコペンなどの成分が前立腺癌の発生を予防する物質として研究されている1−4)最近のイタリアでの大規模な症例対照研究では,19 品目の調査結果から乳製品とパンに前立腺癌罹患との正の相関があり,スープと調理された野菜の摂取量との間に負の相関があったと報告された5)。また,世界における前向きのコホート研究の結果と介入研究の結果がまとめられたが,前立腺癌の発生は単一の因子で説明することはむずかしいことから,いまだに前立腺癌罹患と各食品目,成分との間に確実な相関を示す証拠は得られていないのが現状である6)

化学予防の研究としては,テストステロンを活性型のジヒドロテストステロン(DHT)に変換させる 5α還元酵素の阻害剤であるフィナステリドの前立腺癌罹患の予防効果についての大規模な前向き無作為比較対照試験(Prostate Cancer Prevention Trial)の結果が報告された7)7 年間の経過観察中の前立腺癌罹患率を比較したところ,フィナステリド投与群は 18.4%で,プラセボ群は 24.4%であり,フィナステリドの予防投与で 24.8%の前立腺癌罹患率減少効果があった。発見された前立腺癌の悪性度については,Gleason スコア(前立腺癌の組織構築から悪性度を診断する病理組織所見の評価法で,最も有意な組織型と 2 番目に有意な組織型をそれぞれ 1−5 の 5 段階で評価し,その合計点数をスコアとして用いる。一般的に 2−6 は比較的悪性度が低い,7 は中程度,8−10 は悪性度の高い癌として評価される)が 7 以上の癌の割合が,フィナステリド群ではプラセボ群より有意に高かった(37.0% vs. 22.2%)。フィナステリド投与により,前立腺癌罹患率と排尿症状の有症状症例の割合は低くなったものの,悪性度の高い癌の割合が増え,また性機能障害症例の割合も高くなったことから,化学予防投与の前立腺癌死亡率減少効果,QOL 改善に関する有効性については結論がでていない。

【参考文献】

1) Hebert JR, Hurley TG, Olendzki BC, et al.: Nutritional and socioeconomic factors in relation to prostate cancer mortality: a cross−national study.J Natl Cancer Inst. 1998; 90: 1637−47.

2) Eichholzer M, Stahelin HB, Ludin E, et al. Smoking, plasma vitamins C, E, retinol, and carotene,and fatal prostate cancer: seventeen−year follow−up of the prospective Basel study. Prostate. 1999.38: 189−98.

3) Clark LC, Dalkin B, Krongrad A, et al. Decreased incidence of prostate cancer with sele-nium supplementation: results of a double−blind cancer prevention trial. Br J Urol. 1998; 81: 730−4.

4) Hartman TJ, Albanes D, Pietinen P, et al. Theassociation between baseline vitamin E, selenium, and prostate cancer in the alpha−tocopherol,beta−carotene cancer prevention study. Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 1998; 7: 335−40.

5) Bosetti C, Micelotta S, Dal Maso L, et al. Food groups and risk of prostate cancer in Italy. Int J Cancer. 2004; 110: 424−8.

6) Dagnelie PC, Schuurman AG, Goldbohm RA, etal. Diet, anthropometric measures and prostate cancer risk: a review of prospective cohort and intervention studies. BJU Int. 2004; 93: 1139−50.

7) Thompson IM, Goodman PJ, Tangen CM, et al.The influence of finasteride on the development of prostate cancer. N Engl J Med. 2003; 349: 215−24.


CQ 8  
前立腺癌検診は欧米ではどのように評価されているか?

国および学会によって立場が異なるが,多くの国では,検診の利益と不利益を説明した上で,希望者に対して前立腺癌検診を行うべきと考えられている。

米国癌学会のガイドライン1)においては,前立腺癌検診による利益と不利益を説明し,希望者に対しては 50 歳以上での検診を推奨している。検査法は PSA 値測定と直腸診を推奨し,また,年齢上限は平均余命が 10 年以上としている。さらに,前立腺癌罹患率が高い黒人,あるいは,前立腺癌の家族歴を有する人には 45 歳あるいは 40 歳からの検診受診を勧めている。米国泌尿器科学会も米国癌学会のガイドラインと同様の基本方針で,50 歳以上,高危険群では 40 歳以上の毎年の PSA 値測定と直腸診による検診受診を勧めている2)

一方で,米国予防医学研究班ではすべての癌検診の推奨度を考察し公表している3)。前立腺癌検診に関しては,前立腺癌死亡率の低下に関するいくつかの研究があるものの,大規模無作為比較対照試験の結果がでておらず,また検診受診により過剰診断・過剰治療を受ける症例の割合が把握できていない,スクリーニング検査,治療によって引き起こされる QOL 障害の程度が解明されていないことを問題点として指摘している。現時点では,ルーチンの検診を推奨すべきエビデンスも,また推奨しないエビデンスもないことを理由に,検診とその後の治療に関して受診者に情報提供を行い,受診をするか否かは自己判断に委ねるべきとしている。

アメリカ内科学会は,米国予防医学研究班と同様の方針で,検診の利益と不利益について情報提供を行い,検診受診の自己判断を勧めている4)

ヨーロッパでの癌予防勧告委員会においては,無作為比較対照試験の結果が出ていないことを理由に,ルーチン検査の一環としてのインフォームドコンセントなき PSAスクリーニングは,行うべきではないとの見解である5)

現在,米国では州によって検診の方針は違うが,カリフォルニア州のように医師側に前立腺癌検診のメリットとデメリットを説明する義務が課せられている州もある。また,ヨーロッパでは以前よりルクセンブルグ,最近はフランスが国家レベルで前立腺癌検診を推奨している。現時点では,他の多くの国では,検診の利益と不利益を説明した後に,希望者に対して前立腺癌検診を行うべきとの基本方針である。被検者側からの評価といった点では,実際の米国における検診受診率の把握はむずかしいが,約 75%の人が検診受診歴を有し,約 50%の人は毎年 PSA 検査を受けているといわれており,前立腺癌検診の施行に肯定的な意見が多い。

【参考文献】

1) Smith RA, Cokkinides V, Eyre HJ, et al. American Cancer Society guidelines for the early detection of cancer, 2004. CA Cancer J Clin. 2004; 54:41−52.

2) Prostate−specific antigen(PSA)best practice policy. American Urological Association(AUA).Oncology(Huntingt). 2000; 14: 267−72, 277−8,280 passim.

3) Recommendations and Rationale. Screening forProstate Cancer: U. S. Preventive Services Task Force(USPSTF): available at: http://www.ahcpr.gov/:accessed on November 12, 2004.

4) Harris R, Lohr KN. Screening for prostate cancer: an update of the evidence for the U. S. Preventive Services Task Force. Ann Intern Med. 2002; 137: 917−29.

5) Recommendations on cancer screening in the European union. Advisory Committee on Cancer Prevention. Eur J Cancer. 2000; 36: 1473−8.


CQ 9  
前立腺癌検診によって前立腺癌の死亡率減少が可能か?

欧米では PSA スクリーニングの普及に伴い死亡率の減少が報告されており,現在,大規模な無作為比較対象研究が米国およびヨーロッパで進行中である。

カナダのケベック州における 10 万人あたりの前立腺癌死亡数は 1976 年から徐々に上昇し,1991 年が最も高くなったが,その後,1995 年までは徐々に,1996 年には急激に低下しており,1991 年から 1997 年の間で 23%低下した1)。また,ミネソタ州オルムステッド郡における前立腺癌死亡率の変化について,10 万人あたりの年齢調整前立腺癌死亡率は 1984 年以降急激に上昇し,1989 年から 1992 年にはピークを迎え,その後の前立腺癌死亡率は低下に転じている2)。これらの前立腺癌死亡率の低下には,PSA 検診の普及が関与していると推測されている。

また,信頼性の高い研究としては,PSA を用いた検診の死亡率減少効果に関するオーストリアのチロル地方のスクリーニングデータがある3)。チロル地方では,1993年より 45〜75 歳の住民に対し無料での PSA 測定を提供し,その後 5 年間の間に対象住民の 2/3 以上が少なくとも 1 回以上の PSA 測定を受けた。その結果,1998 年の実際の前立腺癌死亡者数は予測値に比べ 42%低下し,チロル地方以外のオーストリア国内の前立腺癌死亡率に比べても有意に低くなった。

また,小規模の無作為比較対照試験はカナダのケベック州で実施され,スクリーニング群に振り分けられた症例の実際のスクリーニング受診率が 23%と低いことが原因で,当初の振り分け群間では統計学的な有意差はなかった4)。しかし,実際のスクリーニング受診者と未受診者間での前立腺癌死亡率の比較では,スクリーニング未受診者は受診者に比べ,前立腺癌死亡率が 10 万人/年あたり,3.25 倍高くなっていた。ケベック州の研究はさらに 11 年間の長期間の経過観察を行っており,スクリーニング受診者群は,非受診者群に比べ前立腺癌死亡率が 62%低下していた5)

また,前立腺癌スクリーニングの有効性に関する大規模な無作為比較対照試験が米国の PLCO(Prostate, Lung, Colorectal and Ovarian)Cancer Screening 研究6),ヨーロッパでの ERSPC(European randomized study of screening for prostate cancer)7)と進行中である。結果が待たれるところであるが,PSA スクリーニングが普及している欧米では,非スクリーニング群へ割付けられた症例のスクリーニング受診(コンタミネーション)が研究を遂行する上での問題点となっている。

【参考文献】

1) Meyer F, Moore L, Bairati I, et al. Downward trend in prostate cancer mortality in Quebec and Canada. J Urol. 1999; 161: 1189−91.

2) Roberts RO, Bergstralh EJ, Katusic SK, et al. Decline in prostate cancer mortality from 1980 to 1997, and an update on incidence trends in Olmsted county, Minnesota. J Urol. 1999; 161: 529−33.

3) Bartsch G, Horninger W, Klocker H, et al. Prostate cancer mortality after introduction of pros- tate−specific antigen mass screening in the Federal State of Tyrol, Austria. Urology. 2001; 58: 417−24.

4) Labrie F, Candas B, Dupont A, et al. Screening decreases prostate cancer death: first analysis of the 1988 Quebec prospective randomized controlled trial. Prostate. 1999; 38: 83−91.

5) Labrie F, Candas B, Cusan L, et al: Screening decreases prostate cancer mortality: 11−year fol- low−up of the 1988 Quebec prospective randomized controlled trial. Prostate. 2004; 59: 311−8.

6) Prorok PC, Andriole GL, Bresalier RS, et al. Design of the Prostate, Lung, Colorectal and Ovarian(PLCO)Cancer Screening Trial. Control Clin Trials. 2000; 21(6 Suppl): 273S−309S.

7) Schröder FH, Denis LJ, Roobol M, et al. The story of the European Randomized Study of Screening for Prostate Cancer. BJU Int. 2003. 92 (suppl 2): 1−13.


CQ 10  
日本において前立腺癌検診はどのように行われているか?

地域住民対象の前立腺癌検診では,PSA 検査のみによる検診実施地区が多く,特に,基本健康診査時の同時実施が検診のシステム上優れている。また,人間ドックでの検診では,PSA と直腸診による検診実施施設が多い。対象年齢は 50 歳以上が一般的である。

日本における前立腺癌検診形態は,実施形態によって①前立腺癌検診単独実施,②他の癌検診との並行実施,③
基本健康診査との並行実施に分けられ,また一次検診の検査法によって①PSA 検査のみ,②PSA 検査と直腸診に分けられる。

前立腺癌検診を地域住民に提供する場合は,基本健康診査と同時施行の PSA 検査による前立腺癌検診が診断精度・処理能力・費用効果を総合して優れている1)。実際に同一市町村でスクリーニング形態を直腸診・PSA 併用の検診から,基本健康診査施行時に行う PSA 単独検査による検診に移行した場合,受診者数の増加から,前立腺癌発見数が約 3 倍になるとの報告がある2)

人間ドックにおける前立腺癌検診方法については,1997〜1999 年度の調査では,直腸診+PSA が施行施設数で 1 番多く,次いで,PSA 検査のみの実施施設が多い。PSAの導入率は 1995 年以降,年々増加し,1995 年の 33%から 1999 年度には 81%になっている3)

対象年齢については,厚生省がん研究助成金「前立腺がんの集団検診の妥当性に関する研究」班では 55 歳以上から行うのが妥当としているが1),50〜54 歳については,前立腺癌発見率が 0.12%と比較的高いことから3),検診対象に入れる必要がある。年齢上限については,罹患率,経済効率,年代別生存率,受診頻度ならびに倫理的な観点,他臓器の検診における対象年齢などから検討した結果,年齢の上限を定める積極的な理由はないとしているが1),米国泌尿器科学会などでは平均余命が 10 年以上を年齢の上限としている4)

【参考文献】

1) わが国に適した前立腺がん検診システム.厚生省がん研究助成金「前立腺がん集団検診の妥当性に関する研究」(主任研究者: 渡邉 泱)平成8,9 年度研究成果報告書.1998.86−7.

2) 山本 巧,伊藤一人,大井 勝,他: 前立腺がん集団検診における PSA 単独検診と PSA・直腸診併用検診の比較.日本がん検診・診断学会誌.2001; 8: 63−6.

3) 財団法人 前立腺研究財団,前立腺検診協議会: 人間ドック健診における前立腺検査調査(1989 年〜1999 年)・前立腺集団検診全国集計(1986 年〜1999 年).泌尿器外科.2003; 16:1023−38.

4) Prostate−specific antigen(PSA)best practice policy. American Urological Association(AUA).Oncology(Huntingt). 2000; 14: 267−72, 277−8, 280 passim.


CQ 11  
前立腺癌検診の受診間隔はどのくらいが適当か?

前立腺癌検診で PSA 値が基準値以下であった場合の再検診の時期は,PSAが 1.1 ng/ml〜基準値以下では毎年,PSA が 1.0 ng/ml 以下では 3 年ごとが推奨される。

初回受診時の PSA 値が 4.0 ng/ml 以下であった受診者に対して,以降の検診受診間隔を適正に設定することは,検診の費用対効果比を改善させる意味からも重要である。PSA 基礎値が 2.1 ng/ml〜基準値以下の症例については,1 年後の前立腺癌罹患危険率の高さから,毎年のスクリーニング受診が推奨される。PSA 基礎値が 0.0−2.0 ng/ml の症例の最適な再スクリーニング間隔の設定はむずかしいが,直腸診を実施しない PSA単独スクリーニングでは,その後の PSA 上昇によって発見される前立腺癌罹患危険率のデータから,PSA 基礎値が 1.1−2.0 ng/ml の症例においては毎年,PSA 基礎値が 0.0−1.0 ng/ml の症例においては 3 年ごとの受診が推奨されている1,2)

【参考文献】

1) Ito K, Yamamoto T, Suzuki K, et al. The risk of rapid prostate specific antigen increase in men with baseline prostate specific antigen 2.0 ng/ml or less. J Urol. 2004; 171: 656−60.

2) Ito K, Yamamoto T, Ohi M, et al. Possibility of re−screening intervals of more than one year in men with PSA levels of 4.0 ng/ml or less. Prostate. 2003; 57: 8−13.


CQ 12  
日本において前立腺癌検診により癌がどのくらい発見されているのか?

前立腺癌検診での癌発見率は検査方法,年齢分布,複数回検診受診者の比率,生検施行率等によって変わるが,1989 年から 1999 年の全国調査では約 0.9%であり,他の癌検診と比較して高い。

(財)前立腺研究財団・前立腺検診協議会が行っている全国集計1)では,1989 年〜1999 年の 197,682 人の集計結果では,1,695 人(0.86%)で癌が発見された。前立腺癌発見率は,PSA 検査が市町村検診で導入され,経直腸的超音波ガイド下の前立腺生検法が行われはじめた 1993 年以降に上昇が認められ,1995 年には 1.29%と高くなった。その後 0.80〜0.93%と低下しているが,複数回検診受診者が増加しているためと考えられる。

年代別の前立腺癌発見率は,1995 年から 1999 年の(財)前立腺研究財団の前立腺集団検診全国集計では,PSA 測定のみによる前立腺癌検診では,50〜54 歳では 0.09%,55〜59 歳では 0.22%,60〜64 歳では 0.42%,65〜69 歳では 0.83%,70〜74 歳では1.25%,75〜79 歳では 1.75%と報告されている。

検査方法別の前立腺癌症例数・発見率は 1995 年〜1999 年の全国集計では,PSA 検査のみを用いた検診では 0.87%,PSA と直腸診の併用検診では 1.25%であった。

前立腺癌検診導入による臨床病期の変遷については,PSA 検査導入前の外来発見癌では,転移癌の比率が約 60%を占めていたが,PSA 検査導入後の検診発見癌では転移癌の割合は約 10%まで低下した2)1995 年〜1999 年の全国集計での発見前立腺癌の臨床病期分布については,病期 B(限局癌)は 64.5%,病期 C(局所浸潤癌)は 24.2%,病期 D(周囲浸潤癌,転移癌)は 11.0%であった1)

【参考文献】

1) 財団法人 前立腺研究財団,前立腺検診協議会 : 人間ドック健診における前立腺検査調査(1989 年〜1999 年)・前立腺集団検診全国集計(1986 年〜1999 年).泌尿器外科.2003; 16:1023−38.

2)Kubota Y, Ito K, Imai K, et al. Effectiveness ofmass screening for the prognosis of prostate cancer patients in Japanese communities. Prostate. 2002; 50: 262−9.


CQ 13  
前立腺癌検診は今後どのようにすすめていくべきか?

前立腺癌は本邦において将来急激な罹患率と死亡率の増加が予測されており,対策は急務である。現時点では,前立腺癌の本邦における現状と将来予測,検診の受診による利益と不利益を広く住民に啓発した上で,受診希望者に対して最適な前立腺癌検診システムを提供する体制が整備されることが望ましい。

欧米諸国で最近認められる前立腺癌死亡率の低下傾向は,前立腺癌検診の普及が一因であると推測されている。しかし,前立腺癌検診の積極的な実施によって死亡率減少効果が得られる過程で,過剰診断・過剰治療を受けた症例の割合が不明であり,また治療により延命効果が得られた症例においても,QOL の障害の程度が不明確であり,この点が,現時点での前立腺癌検診のコントロバーシーのポイントとなっている。

将来の前立腺癌検診は,検診精度を維持しつつ,優れた費用対効果比や,過剰診断を避けるための診断システムが求められる。また,前立腺癌の治療は,年齢・病期にあわせ様々な治療法の選択が可能になりつつあるが,今後さらに,治療効果のみならず,QOL を考慮に入れた非侵襲的な治療方法の確立が重要であることは間違いない。

現時点での前立腺癌検診は,PSA 検査の偽陰性,偽陽性,前立腺生検による見逃しなど,検査法の精度上の問題,治療による合併症など,受診者に不利益をもたらす可能性もある。しかし,検診の是非に関する見解が学会によって異なる米国において,約 50%の男性は毎年 PSA 値をチェックしているといわれている。本邦でも,今後罹患率・死亡率の上昇が確実に予測されていることからも,その対策は急務である。前立腺癌検診は,今後の方向性として,前立腺癌に関する正しい知識と,検診のメリットとデメリットをパンフレット等で対象住民に広く啓発活動を行い,受診希望者に対して最適な前立腺癌検診システムを提供する体制が整備されることが望ましいと考えられる。


2.診  断

前立腺癌のエビデンスを探る診断の手法には直腸診(Digital rectal examination, DRE),血清 PSA,経直腸超音波検査(Transrectal ultrasound, TRUS)がある。その診断には生検による腺癌の証明が必須である。

1.直腸診,PSA,経直腸超音波検査

直腸診による異常所見は,検者の経験によっても左右されるが,全前立腺癌症例の15−40%に認められる。無症状で前立腺癌を疑わせない人々に直腸診を行った場合,癌が発見されるのは 0.1−4%に過ぎない1,2)(Ⅴ)

PSA はもっぱら前立腺腺上皮から分泌されるカリクレイン様セリンプロテアーゼである。臨床的には前立腺特異的ではあるが前立腺癌特異的ではないため,その値は前立腺肥大症や前立腺炎,その他の良性前立腺疾患でも上昇することがある。前立腺癌の独立した予測因子として PSA は直腸診や経直腸超音波検査よりも優れている3)(Ⅲ)

現在多くの PSA 測定キットが市販されているが,国際標準となるものは存在しない。前立腺癌の生検陽性率は PSA が 4−10 ng/ml で 25−30%,10 ng/ml 以上で 50−80%と上昇する4)(Ⅲ)。触知不能前立腺癌の診断に関しては,PSA が 10 ng/ml 以上,おそらく実際には 4.0 ng/ml 以上で生検を行うべきというのが共通認識であろう。

PSA の基準値を低く設定することの注意すべき点は,臨床的に意味のない癌の発見を,いかにして避けるかということである。現時点では,触知不能だが臨床的に意味のある前立腺癌を見つけるのに最適な PSA の値を推奨できるような長期成績はまだ得られていない。

前立腺癌の早期発見のために PSA の特異度を高めるべく次のような PSA の工夫が報告されている。すなわち,PSA density,移行領域での PSA density,年齢階層別 PSA,PSA molecular form,PSA velocity,PSA 倍加時間,などである。ここに述べた PSAの工夫は特に 4−10 ng/ml の間における前立腺癌と前立腺肥大症との鑑別にある程度役立つと思われる。しかしこれらの一般診療への適用については合意が得られていない5,6)(Ⅲ)

このような前立腺の早期診断における PSA の利用拡大は,T1c という新たな臨床病期を生み出した。この T1c とは,直腸診や経直腸超音波検査は正常であるが PSA が高値のために行った生検で発見された癌を指す。臨床病態や病理所見の検討によるとT1c 癌の 11−26%は臨床的に意味のない癌であるが,18−49%は局所浸潤癌であるという7)(Ⅲ)

経直腸超音波検査は,1)癌が疑われる領域の同定,2)前立腺生検の正確さの向上,という点で大きな能力を持つ。直腸診と PSA とが正常であれば経直腸超音波検査だけで癌を見つけるのはほとんど不可能である。カラードプラーもまだ試行段階であり,癌の発見や病期診断におけるルーチン検査とはなっていない。

スクリーニングにおいて,直腸診,PSA,経直腸超音波検査の 3 者の組み合わせにより陽性反応的中率(PPV)が 20−80%になる。この 3 者のうち 1 つの異常だけでは生検陽性率は 6−25%だが,2 つに異常があると 18−60%となり,3 つすべてが異常だと56−72%にまで高まる8)(Ⅱ)9)(Ⅲ)

直系家族(父または兄弟)に前立腺癌患者が 1 人以上存在する場合には PSA 検査を受けることにより早期に前立腺癌を検出する可能性が高まる10)(Ⅱ)。

2.前立腺生検

病理診断には経直腸超音波ガイド下の 18G 針による前立腺生検がスタンダードとなっている11)(Ⅲ)。経直腸生検と経会陰生検とがあるが,麻酔法,生検部位,合併症,などに特徴があり,どちらが優れているとはいえない12)(Ⅱ)13,14)(Ⅲ)。触知可能な結節がある場合,狙撃生検が適応となる。しかし,もし患者が根治的治療の対象候補者で,より診断率を高めるためには系統的生検が勧められる。最近では癌発見率向上の観点から前立腺の外側によりシフトした 6 個所以上の生検へと移行しつつある15,16)(Ⅲ)。このようにして得られた生検検体は早期前立腺癌の最好発部位である辺縁領域の後外側を含んでいる。

1 回目の生検が陰性だが引き続き癌の存在を疑わせる状態が持続する場合,再生検での癌発見率は約 20%と報告されている17,18)(Ⅲ)。しかし,再生検の明確な基準は確立されていない。High grade PIN や atypical small acinar proliferation(ASAP)が検出された場合,50−100%と高率に癌が併存するとされており,再生検が勧められる19,20)

3.病期診断

前立腺癌の初回診断時の病期診断は直腸診と PSA 測定,骨シンチグラムに加えてCT/MRI,特別な場合には胸部レントゲンも行われる。

1)T−病期診断

最初に行うべきは病巣が被膜内にとどまっているか(T1,T2),被膜を越えているか(T3,T4)を見極めることで,これが以後の治療方針の選択に大変重要である。直腸診は局所浸潤を過小評価しがちであり,直腸診と病理学的病期との一致率は 50%以下と報告されている21)(Ⅲ)。しかし,より詳細な原発巣の評価は,それが治療方針の決定に直接影響する場合や根治的治療が予定されている場合に限って推奨される。

PSA は病期が進むに従って上昇する。しかし,個々の PSA の値からその人の最終的な病理学的病期を正確に予測するには限界がある。PSA と生検組織における Gleason スコア,臨床病期の組み合わせは,最終的な病理学的病期を予測するのに有用である22)(Ⅲ)。経直腸超音波検査はルーチンな病期診断法としては腫瘍進展の把握の正確さに問題があり勧められない23)(Ⅲ)。精嚢生検は,もし精嚢に浸潤があった場合に治療内容が変わるかもしれない患者に対しては考慮されるべきである。このほか,多個所生検の結果のより詳細な分析(陽性検体数,グレードと癌病巣の拡がり,被膜穿通)が有用かもしれない。

CT は腫瘍の局所浸潤の評価には信頼性が十分とはいえない24)(Ⅳ)。MRI は被膜外浸潤や精嚢浸潤など局所進行病期の同定に有用性が報告されている25,26)。しかし,術前病期診断における MRI のルーチンな使用については意見が分かれている。

2)N−病期診断

リンパ節の評価は,それが治療方針の決定に直接関わってくる場合にのみ適応があり,これは通常根治的治療を希望している患者が対象となる。PSA 高値,T2b またはT3 例,低分化癌,神経周囲浸潤などを有する場合はリンパ節転移のハイリスク例となる27)(Ⅳ)。PSA 測定だけでは個々の患者のリンパ節転移の有無の予測はむずかしい。リンパ節転移の存在の予測は PSA,直腸診,腫瘍のグレードの組み合わせによって信頼性が高まる27)

このことは逆に,リンパ節転移の低リスク群(10%以下)についても当てはまる。PSA が 20 ng/ml 以下で T2a 以下,かつ Gleason スコアが 6 以下ならば根治治療を行う前のリンパ節の評価を省略してもまず心配はない27)(Ⅳ)。

リンパ節の評価における最適の方法は開放手術または鏡視下手術によるリンパ節郭清術である。CT も MRI もその 0−70%という低い感度のためその利用は限られている25)

3)M−病期診断

前立腺癌死亡例の 85%には椎体転移が認められる28)。骨転移の存在とその進展は個々の患者の予後を的確に反映する。骨シンチグラフィは骨転移を検出する最も感度の良い方法である29)(Ⅲ)。骨シンチグラフィ上の骨病変の半定量的評価は予後と相関するとされている30)(Ⅲ)。骨以外にも前立腺癌は種々の臓器へ転移していく。実際の転移部位は遠隔リンパ節,肝,肺,脳,皮膚等である。軟部組織への転移が疑われた場合には一般診察,胸部レントゲン,超音波検査,CT,MRI などすべての手段が適応となり得る。

治療前の PSA が 100 ng/ml 以上の場合には,それだけでほぼ 100%の確率で転移病巣の存在を意味する31)(Ⅳ)。その一方では,稀ではあるが PSA が低値でありながら骨転移を有する例も存在する。PSA 20 ng/ml 以下では約 99%で骨転移を認めない32)(Ⅲ)。PSA が 10 ng/ml 未満かつ無症状で,高または中分化癌である場合には病期診断目的での骨シンチグラフィは不必要と報告されている33)(Ⅲ)。

【参考文献】

1)Chodak GW: Early detection and screening for prostatic cancer. Urology. 1989; 34: 10.

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21)Spigelman SS, McNeal JE, Freiha FS, et al. Rectal examination in volume determination of carcinoma of the prostate: clinical and anatomical correlations. J Urol. 1986; 136: 1228−30.

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33)Oesterling JE. Using PSA to eliminate the staging radionuclide bone scan. Significant economic implications. Urol Clin North Am. 1993; 20: 705−11.


CQ 1  
直腸診は前立腺癌の診断に有用か?
推奨グレー ド Ⓑ

直腸診単独では有用性に限界がある。直腸診は PSA との組み合わせにおいて前立腺癌の発見に対して有用であり,施行が望まれる。

【背景・目的】

前立腺癌検診や泌尿器科外来において PSA 採血とともに直腸診が行われることが多い。直腸診が前立腺癌の診断に有用であるか検証する。

【解 説】

前立腺癌は前立腺の peripheral zone に発生することが多く,その体積が 0.2 ml を超えれば,その存在部位によっては直腸診で検出可能と言われている1)。検者の経験によっても左右されるが,直腸診による異常所見は全前立腺癌症例の 15−40%に認められる2)(Ⅳ)。これに対して,無症状の男性に対して直腸診を行った場合,0.1−4%に癌が発見される。PSA 正常者に対して,直腸診単独で前立腺癌を発見する場合,1 人の前立腺癌を発見するために 340〜1,900 人の直腸診を行う必要がある3)(Ⅲ)。さらに,PSA の異常値により 90%程度の前立腺癌が発見できるのに対して,直腸診単独では初回生検で 41%の癌が発見される4)(Ⅱ)とされている。PSA 3.0−3.9 ng/ml のレベルでは直腸診を行わなかった場合,9.9%の見逃しがある4)(Ⅱ)とされる。また,PSA と直腸診を組み合わせることにより,早期の前立腺癌の発見率が上昇するとされている5)(Ⅲ)。 

直腸診は PSA との組み合わせにおいて前立腺癌の発見に対して有用であり,施行が望まれる。

【参考文献】

1)Chodak GW. Early detection and screening for prostatic cancer. Urology. 1989; 34: 10−2.

2)Pedersen KV, Carlsson P, Varenhorst E, et al. Screening for carcinoma of the prostate by digital rectal examination in a randomly selected population. BMJ. 1990; 300: 1041−4.

3)Ellis WJ, Chetner MP, Preston SD, et al. Diagnosis of prostatic carcinoma: the yield of serum prostate specific antigen, digital rectal examination and transrectal ultrasonography. J Urol. 1994; 152: 1520−5.

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5)Luboldt HJ, Bex A, Swoboda A, et al. Early detection of prostate cancer in Germany: a study using digital rectal examination and 4.0 ng/ml prostate−specific antigen as cutoff. Eur Urol. 2001; 39: 131−7.


CQ 2  
PSA グレーゾーンの生検絞り込みに% free PSA,complexed PSA などの PSA molecular form は有用か?
推奨グレー ド Ⓒ

% free PSA や complexed PSA は一般臨床への運用を推奨する十分な根拠がない。

【背景・目的】

PSA が 4−10 ng/ml における前立腺癌の陽性反応的中率(PPV)は約 25−30%であるため,この PSA レベルの約 70%の男性は不必要な生検を受けることになる。不必要な生検を回避する目的で PSA molecular form の有用性について研究されてきたが,EAU ガイドライン(2003)ではグレーゾーンにおける前立腺癌と前立腺肥大症の鑑別における有用性が示唆されているものの,一般臨床への適応については合意が得られていない。その後の PSA molecular form に関する研究が,臨床的有用性に関する新たな知見を生み出したか否かを検証する。

【解 説】

無駄な生検を減らすことは重要なことであるが,癌発見率を低下させる(癌を見逃す)のは問題がある。PSA molecular form が癌を見逃すことなく無駄な生検を減らすことができるかについては高いレベルのエビデンスがなく,一定の知見が得られていない。

% free PSA の有用性については,total PSA 4−10 ng/ml では 90%の感度で% freePSA は total PSA よりも特異度が 18%上昇する(カットオフ 17.1%)ことが示されているが1)(Ⅲ),エビデンスレベルは低い。また,前立腺の良性疾患,癌の鑑別に有用であるが,カットオフの基準をどこにするかという問題が残されている2)(Ⅲ)。さらに,測定上の問題(free PSA が測定キット間でばらつきがあり,% free PSA ではもっとばらつきがでる。また,保存状況にかなり影響される)も指摘されている3)(Ⅲ)。したがって,% free PSA の一般臨床への適応についての十分なエビデンスはない。

complexed PSA(cPSA)については,PSA(>4 ng/ml)または DRE 異常所見の患者において,cPSA(カットオフ 3.45 ng/ml)が感度 90%,total PSA(カットオフ 4.0ng/ml)が感度 80%で,統計学的には同等であった4)(Ⅲ)。また,total PSA 2.5−10 ng/ml の患者において% free PSA は cPSA より優れ,% cPSA と% free PSA とは同等であり,cPSA は total PSA や% free PSA を上回るものではなかった4)(Ⅲ)。ただし,cost−benefit の観点からは感度 92%を基準とするならば,cPSA(カットオフ 3.0 ng/ml)は totalPSA(カットオフ 4.0 ng/ml)に取って代わりうるとされている5)(Ⅱ)。total PSA 4.1−20 ng/ml における ROC 解析では,cPSA は total PSA より AUC が大きく,% freePSA と同等であった。cPSA は癌検出に有用であるが,total PSA,% free PSA を超えるものではない6)(Ⅱ)。

【参考文献】

1)Stephan C, Jung K, Cammann H, et al. An aritificial neural network considerably improves the diagnostic power of percent prostate−specific antigen in prostate cancer diagnosis: results of a 5−year investigation. Int J Cancer. 2002 20; 99 (3): 466−73.

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CQ 3  
PSA グレーゾーンの生検絞り込みに PSAD,PSATZ などのPSA volume パラメーターは有用か?
推奨グレー ド Ⓒ

PSAD,PSATZ などの PSA volume パラメーターは一般臨床への運用を推奨 する十分な根拠がない。

【背景・目的】

PSA が 4−10 ng/ml における前立腺癌の陽性的中率は約 25−30%であ るため,この PSA レベルの約 70%の男性は不必要な生検を受けることになる。不必要 な生検を回避する目的で PSA density(PSAD),PSA density of transition zone(PSATZ) などの PSA volume パラメーターの有用性について研究されてきた。EAU ガイドライン (2003)ではグレーゾーンにおける前立腺癌と前立腺肥大症の鑑別におけるこれらのパ ラメーターの有用性が示唆されているものの,一般臨床への適応については合意が得 られていない。その後の PSAD,PSATZ などの PSA volume パラメーターに関する研 究が,臨床的有用性に関する新たな知見を生み出したか否かを検証する。

【解 説】

無駄な生検を減らすことは重要なことであるが,癌発見率を低下さ せる(癌を見逃す)のは問題がある。PSA volume パラメーターが癌を見逃すことなく 無駄な生検を減らすことができるかについては高いレベルのエビデンスがなく,一定 の知見が得られていない。

PSAD は前立腺癌診断時の特異度の改善には有用であるが,臨床上まだ一様に評価 されていない1)(Ⅲ)。グレーゾーンで生検を受けた 1,239 人の男性における多変量解析 における各種パラメーターの癌予測因子は,PSAD>0.27,直腸診で癌が疑われる, PSAD 0.16−0.27,年齢が 75 歳以上,TRUS で低エコー域が認められる,の順であり,こ れらの結果に基づいて Receiver operating curve(ROC)を描いたところ,PSAD の AUC 0.73 であり total PSA のみの 0.63 を上回ったとの報告がある2)(Ⅱ)。しかし,こ の報告のエビデンスレベルは低く,一般的に示唆される PSAD 0.15 でもかなりの癌を 見逃すといわれていることを考慮すると,この論文における PSAD 値を臨床に応用す るのは問題であろう。

【参考文献】

1)Gretzer MB, Partin AW. PSA markers in prostate cancer detection. Urol Clin North Am. 2003; 30 (4): 677−86.

2)Garzotto M, Hudson RG, Peters L, et al. Predictive modeling for the presence of prostate carcinoma using clinical laboratory, and ultrasound parameters in patients with prostate specific antigen levels<or=10 ng/mL. Cancer. 2003; 98(7): 1417−22.


CQ 4  
前立腺癌の診断に年齢階層別 PSA 基準値は有用か?
推奨グレー ド Ⓑ

PSA カットオフ値を年齢階層別基準値とした場合,不必要な生検を回避できるが,感度が低いため癌を見逃す可能性がある。

【背景・目的】

効率の良い前立腺癌検診としては,少しでも不必要な前立腺生検を減らし,治療対象となる臨床上意味のある前立腺癌患者を見逃さない工夫が重要である。年齢階層別 PSA の検討もその工夫の一つとして非常に重要な意義を持つものと考えられる。

【解 説】

Punglia らは後ろ向き調査を行い,前立腺生検を受けるかどうかをPSA 値と年齢,DRE 所見,人種などで ROC 曲線に適合させて検討を行った。その結果,年齢としての因子では,60 歳未満ではカットオフ値を 4.0 ng/ml 以上と設定すると,若年者前立腺癌の多くを見逃す可能性があり,カットオフ値を 2.5 ng/ml とすることを推奨している1)(Ⅱ)

また Ito らは 6,744 人の日本人男性のマススクリーニングのデータを基に解析し,年齢階層別基準値を求めることで,不必要な前立腺癌の生検を減らし,臨床上意味のある前立腺癌を同定することができると結論している。すなわち年齢階層別基準値を用いることは標準的な PSA カットオフ値よりも有用性が高いことを報告している2)(Ⅲ)

しかし,Crawford らは PSA カットオフ値を年齢階層別基準値とした場合は陽性率が高いため不必要な生検を回避できるが,感度が低いため癌を見逃す可能性がある。したがって年齢階層別基準値でなく PSA カットオフ値を 4.0 ng/ml とすることを推奨している3)(Ⅲ)

以上の結果より,確かに年齢階層別 PSA 基準値の設定は意義がありそうであるが,臨床的に意味のある癌の見逃しに関しては,更なる検討が必要かもしれない。

【参考文献】

1)Punglia RS, D’Amico AV, Catalona WJ, et al. Effect of verification bias on screening for prostate cancer by measurement of prostate−specific antigen. N Engl J Med. 2003; 349: 335−42.

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CQ 5  
前立腺癌の家族歴を有する人は積極的に PSA 検査を受けるべきか?
推奨グレー ド Ⓑ

直系家族(父または兄弟)に前立腺癌患者が 1 人以上存在する場合には PSA検査を受けることにより早期に前立腺癌を検出する可能性が高まる。

【背景・目的】

PSA と系統的多所生検の普及により,早期前立腺癌の発見数が増加している。その中には同一家系において複数例の患者が見いだされる例も増加してきている。

【解 説】

前立腺癌に罹患するリスク因子はよくわかっていないが,一部には明らかになったものがある。その一つが遺伝的要因であり,もし当該者の直系家族(父または兄弟)に前立腺癌患者が 1 人いた場合,罹患リスクは 2 倍となる。それが 2 ないし 3 人になった場合は 5〜11 倍に上昇する1,2(Ⅲ)。親族の 3 人が罹患しているか,少なくとも 2 人が早い段階(55 歳以前)に罹患した場合を遺伝性前立腺癌とすると,全前立腺癌患者の約 9%がこれに該当するという報告もある3)(Ⅳ)

一方では,2 万人を超える PSA 測定によるスクリーニングにおいて,前立腺癌の家族歴を有する群と有さない群との間に癌発見率に差はなかったとの報告もある4)(Ⅲ)。しかし,家族歴の有無は有意なリスク因子であるとの報告は多い5)(Ⅱ)直系家族(父または兄弟)に前立腺癌患者が 1 人以上存在する場合には,PSA 検査を受けることにより早期に前立腺癌を検出する可能性が高まると考えられる。

【参考文献】

1)Steinberg GD, Carter BS, Beaty TH, et al. Family history and risk of prostate cancer. Prostate. 1990; 17: 337−47.

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5)Punglia RS, D’Amico AV, Catalona WJ, et al. Effect of verification bias on screening for prostate cancer by measurement of prostate−specific antigen. N Engl J Med. 2003; 349(4): 335−42.


CQ 6  
PSA 4.0 ng/ml 未満では精密検査の対象となるか?
推奨グレー ド Ⓒ

PSA 低値での前立腺癌スクリーニングシステムは確立されていない。

【背景・目的】

触知不能前立腺癌の診断に関しては,PSA が 10 ng/ml 以上,おそらく実際には 4.0 ng/ml 以上で生検を行うべきというのが共通認識である。しかし,最近の一部の報告では PSA が 4.0 ng/ml 未満でも局所限局の前立腺癌が一定数存在するといわれている1)(Ⅰ),2)(Ⅲ)

海外からの報告では,PSA が 2.5−4.0 ng/ml の対象群に 11 個所生検を行ったところ24.5%に癌が発見された2)(Ⅲ)。また,PSA が 3−4 ng/ml の間にある 50〜66 歳という比較的若い年齢層においては前立腺癌の検出率は 13.2%であり,これらの癌の大多数は臨床的に意味のある癌とされている3)(Ⅱ)。これらの報告にみられるように,PSAが 4.0 ng/ml 未満の群に対して積極的に生検を行う意義があるのか検証した。

【解 説】

PSA が 4.0 ng/ml に近づくにつれて陽性反応的中率(PPV)が上昇するという報告は存在する4)(Ⅰ)。また,前立腺癌出現に至る自然史の調査から,PSAが 4.0 ng/ml 未満であっても年齢別の平均値を上回る群では将来的に癌が出現する率が高いことが示されている5)(Ⅲ)

しかし,PSA が 4.0 ng/ml 未満の群に対する生検の陽性反応的中率(PPV)は PSA4−10 ng/ml の対象群の平均に比べて低く,PSA 以外に free to total PSA 比(F/T 比),PSA density,経直腸超音波検査(TRUS),直腸診などのパラメーターを加えても,かなり低いとする報告が多い6,7)(Ⅲ)。これらのパラメーターに加えて,年齢階層別 PSA基準値の扱いや下限値の設定(2 ng/ml〜,2.5 ng/ml〜,3 ng/ml〜など)など,結論の得られていない多くの問題が存在している。現実的にこの対象群に対して介入を行うことは,莫大な生検数の増加をもたらし,その大多数は不必要な生検の転帰に至り,臨床的に意味のない癌の発見数も増加すると考えられる。

欧米と日本の前立腺癌罹患率の差違を考えると,日本ではさらに癌発見率は低いものと予想される。実際,日本での後ろ向き対象症例研究における癌発見率は,PSA 1ng/ml 未満で 0.18%,PSA 1.0−1.9 で 1.0%,PSA 2.0−4.0 で 3.6%であった7)(Ⅲ)

現時点では PSA が 4.0 ng/ml 未満の群に対して積極的に精密検査(生検)を勧めるエビデンスは存在せず,スクリーニング法も確立されていない。

【参考文献】

1)Lujan M, Paez A, Miravalles E, et al. Prostate cancer detection is also relevant in low prostate specific antigen ranges. Eur Urol. 2004; 45(2): 155−9.

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CQ 7  
経直腸前立腺生検で麻酔は必要か?
推奨グレー ド Ⓐ

経直腸前立腺生検において局所麻酔の施行が推奨される。

【背景・目的】

前立腺生検法として経直腸生検が多用されている。経直腸生検は疼痛が少ない生検法とされ,無麻酔にて生検可能とされてきた。しかし,疼痛を伴う場合も多く認められる。経直腸前立腺生検時の局所麻酔の有用性について検証した。

【解 説】

経直腸前立腺生検における不快感として,経直腸エコー(TRUS)プローブを挿入されたための不快感と生検時および生検後の疼痛があるとされる。

TRUS プローブによる不快感については,2%リドカインゲルの注腸1)(Ⅱ)により軽減したとの報告もみられるが,左右の神経血管束への 2%リドカインの注入で軽減したとの報告もみられる2)(Ⅱ)前立腺生検に伴う疼痛については,いずれの論文でも局所麻酔により明らかに疼痛の軽減を認めている1−4)(Ⅱ)。前立腺尖部に局所麻酔を行うことにより,神経血管束に麻酔を行うよりも有意に疼痛が低下したとの報告もみられる4)(Ⅱ)。また,局所麻酔注入自体の疼痛は軽度であり,生検時の疼痛緩和の効果は高く,前立腺生検において,局所麻酔の施行が推奨される。

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1)Stirling BN, Shockley KF, Carothers GG, et al. Comparison of local anesthesia techniques during transrectal ultrasound−guided biopsies. Urology. 2002; 60: 89−92.

2)Berger AP, Frauscher F, Halpern EJ, et al. Periprostatic administration of local anesthesia during transrectal ultrasound−guided biopsy of the prostate: a randomized, double−blind, placebo−controlled study. Urology. 2003; 61: 585.

3)Kaver I, Mabjeesh NJ, Matzkin H. Randomized prospective study of periprostatic local anesthesia during transrectal ultrasound−guided prostate biopsy. Urology. 2002; 59: 405.

4)Schostak M, Christoph F, Muller M, et al. Optimizing local anesthesia during 10−core biopsy of the prostate. Urology. 2002; 60: 253.


CQ 8  
経直腸生検と経会陰生検のどちらが勧められるか?
推奨グレー ド Ⓑ

経直腸生検と経会陰生検はどちらかが優れているとは言えない。

【背景・目的】

前立腺生検における前立腺への到達法には,経直腸超音波プローブのワーキングチャンネルの形状により経直腸的に生検針を刺入するタイプと経会陰的に刺入するタイプの 2 つがある。それぞれの検査法の癌発見率の違い,検査法や合併症の違いなどメリットとデメリットを検討する。

【解 説】

検査経路の違いによる癌の発見率の比較であるが,同一人物に対し経会陰的生検と経直腸的生検とを同時に行った 107 例の検討では,経会陰的生検では38%に癌が発見され,経直腸的生検では 32%に癌が発見された1)(Ⅱ)。診断された癌43 例のうち,41 例(95%)は経会陰式で,34 例(79%)は経直腸式で発見された。生検結果のみの単純な比較であるが癌発見率では経会陰的生検が優れた検出率を示した。これは前向き無作為化比較試験のデータであるが,この報告は 6 個所生検であり十分なサンプル数とは言えない。また前立腺全摘除術後の病理組織標本での癌存在部位との比較検討がなされておらず,臨床的に明らかに有用かはわかっておらず,優位性を判定するエビデンスは得られていない。また最近,前立腺尖部腹側に高頻度に癌病巣が存在することが判明したが2,3)(Ⅲ),経会陰式ではこの部位の生検に非常に有利である。しかし,この点も経直腸的アプローチで決して不可能でなく優位性はわかっていない。

次に検査法や合併症の違いであるが,経会陰的生検では直腸を経由しないことから感染の可能性が低くなるメリットがある一方,仙骨麻酔や会陰部の広い局所麻酔が必要なことから麻酔薬の副作用の危険や検査が簡便でないデメリットがある4)(Ⅲ)。経直腸的生検では,その反対で麻酔に関しては無麻酔あるいは局所麻酔で可能であり非常に簡便に検査ができる反面,直腸を経由する感染のリスクと直腸からの出血の可能性がある5)(Ⅲ)。この点に関してもどちらが優れていると言うエビデンスはない。

【参考文献】

1)Emiliozzi P, Corsetti A, Tassi B, et al. Best approach for prostate cancer detection: a prospective study on transperineal versus transrectal six−core prostate biopsy. Urology. 2003; 61(5): 961−6.

2)Presti JC Jr, O’Dowd GJ, Miller MC, et al. Extended peripheral zone biopsy schemes increase cancer detection rates and minimize variance in prostate specific antigen and age related cancer rates: results of a community multi−practice study. J Urol. 2003; 169(1): 125−9.

3)Takashima R, Egawa S, Kuwao S, et al. Anterior distribution of Stage T1c nonpalpable tumors in radical prostatectomy specimens. Urology. 2002; 59(5): 692−7.

4)Emiliozzi P, Longhi S, Scarpone P, et al. The value of a single biopsy with 12 transperineal cores for detecting prostate cancer in patients with elevated prostate specific antigen. J Urol. 2001; 166(3): 845−50.

5)Raaijmakers R, Kirkels WJ, Roobol MJ, et al. Complication rates and risk factors of 5802 transrectal ultrasound−guided sextant biopsies of the prostate within a population−based screening program. Urology. 2002; 60(5): 826−30.


CQ 9  
前立腺多個所生検が勧められるか? 何個所採取すべきか?
推奨グレー ド Ⓐ

標準的な 6 個所生検に PZ 外側を含む領域を加え,計 10 個所以上の生検が望ましい。

【背景・目的】

前立腺癌の診断において,1989 年,Hodge ら1)(Ⅲ)が経直腸的 6分割生検法を提唱し,以後の 10 余年にわたって,これが標準的な生検法として普及した。PSA 測定の普及に伴い,T1c の前立腺癌が増加していることや,生検で陰性と診断されたあとでも PSA が高値を持続する,あるいは上昇を示す例があることから,通常の 6 個所の針生検では不十分であると考えられ,診断率を高めるために様々なプロトコールが報告されている。本項では,PSA や直腸診で癌が疑われ,患者が根治的治療の対象候補者の場合,診断率を高めるために生検で何個所採取すべきかを検証した。

【解 説】

Hodge ら1)(Ⅲ)が提唱した経直腸的 6 分割生検法は癌好発部位の辺縁領域(PZ)から傍正中で尖部,中間部,基部より左右それぞれ 1 本ずつ採取する方法である。しかし,この方法は外側 PZ からの採取が不十分であるという欠点があり,その後,以下に示すように様々な工夫が報告されており,いずれも 8〜10 個所以上の生検を推奨している。

Eskew ら2)(Ⅱ)は,標準の 6 個所に追加の 3 領域(左右の側方,中央)からの 7〜9 検体を加えた生検を行うことにより癌検出率は,通常の 6 個所生検に比較し 35%増加したとしている。

Babaian ら3)(Ⅲ)は 180 例の前立腺全摘標本の腫瘍存在部位の解析結果から,6 個所生検に加え,左右移行領域(TZ),PZ 正中,左右 PZ 外側の 5 個所を加えた 11 個所生検により癌検出率が 33%増加したとしている。

Presti ら4)(Ⅲ)は 6 個所生検に,さらに外側の PZ の中央部,底部を加えた 10 個所生検が有効で,癌検出率が 20%増加したとしている。また,6 個所生検の底部を除いて 8 個所にしても検出率はさほど変わらず,少なくとも 8 個所の生検は必要であるとしている。

Durcan ら5)(Ⅲ)は 6 個所生検に左右 PZ 外側,左右 TZ の生検を加えることにより癌の検出率が 19%増加し,そのうち 10%は TZ のみ陽性であったとしている。

Tayler ら6)(Ⅲ)は 6 個所生検に PZ 外側を含む 6 個所以上の生検を追加することにより癌の検出率が 24%増加し,臨床的に意義のある癌の発見率が向上したとしている。

前立腺全摘標本を用いた検討でも 2 回の 6 個所生検より 1 回の 10 個所生検が有効である7)(Ⅲ),6 個所生検に背外側の生検を加えることにより癌の検出率が上がる8)(Ⅲ)という報告がなされている。

Presti ら9)(Ⅲ)は年齢や PSA に応じて癌発見率を高めるにはどの部位を何個所生検すればよいかを検討し,60 歳未満,PSA 7 ng/ml 未満の症例では 12 個所生検が,それ以外では 10 個所生検が最適であるが,PSA 20 ng/ml 以上では,6,8,10,12 個所生検で差は認められなかったと報告している。

また,生検本数を増やすことにより生検と全摘標本の Gleason スコアを一致させることができるかどうかを検討した報告10)(Ⅲ)によると,本数を増やすことにより,正診率が上昇し,10 個所以上の生検と 9 個所以下の生検を比較した場合,特に Gleason スコア 7 以下の症例では正確に前立腺全摘標本の Gleason スコアを予測することが可能である,としている。

合併症の点からも,6 個所生検における検査後の合併症の危険因子は前立腺体積,前立腺炎の既往である11)(Ⅲ),生検本数を増やすことで合併症発生率は上がらない12)(Ⅲ),6 個所生検群と 12 個所生検群の比較で痛みの程度に有意差はなく,血便,血精液症の頻度は 12 個所生検群で有意に高かったものの軽度であった13)(Ⅱ),等の報告があり,12 個所生検のデメリットはないと考えられる。

以上より,癌の検出率が高く,合併症に差がなく,術前に正しい Gleason スコアが評価できる可能性が高いと考えられるため,標準的な 6 個所生検に加えて PZ 外側を含むトータルで 10 個所以上の生検が望ましい,と考えられる。

【参考文献】

1)Hodge KK, McNeal JE, Terris MK, et al. Random systemic versus directed ultrasound guided transrectal core biopsies of the prostate. J Urol. 1989; 142: 71−4.

2)Eskew LA, Bare RL, McCullough DL. Systemic 5 region prostate biopsy is superior to sextant method for diagnosing carcinoma of the prostate, J Urol 1997; 157: 199−202.

3)Babaian RJ, Toi A, Kamoi K, et al. A comparative analysis of sextant and an extended 11−core multisite directed biopsy strategy. J Urol. 2000; 163(1); 152−7.

4)Presti JC Jr, Chang JJ, Bhargava V, et al. The optimal systematic prostate biopsy scheme should include 8 rather than 6 biopsies: result of a prospective clinical trial. J Urol. 2000; 163(1): 163−6; discussion 166−7.

5)Durcan GC, Sheikh N, Johnson P, et al. Improving prostate cancer detection with an extended−core transrectal ultrasonography−guided prostate biopsy protocol. BJU Int. 2002; 89(1): 33−9.

6)Taylor JA 3rd, Gancarczyk KJ, Fant GV, et al. Increasing the number of core sample taken at prostate needle biopsy enhances the detection of clinically significant prostate cancer. Urology. 2002; 60(5): 841−5.

7)Fink KG, Hutarew G, Pytel A, et al. One 10−core prostate biopsy is to two sets of sextant protate biopsies. BJU Int. 2002; 92(4): 385−8.

8)Epstein JI, Walsh PC, Carter HB. Importance of posterolateral needle biopsies in the detection of prostate cancer. Urology. 2001; 57(6): 1112−6.

9)Presti JC Jr, O’dowd GJ, Miller MC, et al. Extended peripheral zone biopsy schemes increase cancer detection rates and minimize variance in prostate specific antigen and age related cancer rates: results of a community multi−practice study. J Urol. 2003; 169(1): 125−9.

10)San Francisco IF, DeWolf WC, Rosen S, et al. Extended prostate needle biopsy improves concordance of Gleason grading between prostate needle biopsy and radical prostatectomy. J Urol. 2003; 169(1): 136−40.

11)Raaijmakers R, Kirkels WJ, Roobol MJ, et al. Complication rates and risk factors of 5802 transrectal ultrasound−guided sextant biopsies of the prostate within a population based screening program. Urology. 2002; 60(5): 826−30.

12)Berger AP, Gozzi C, Steiner H, et al. Complication rates of transrectal ultrasound guided prostate biopsy: a comparison among 3 protocols with 6, 10, and 15 cores. J Urol. 2004; 171(4): 1478−80; discussion 1480−1.

13)Naughton CK, Omstein DK, Smith DS, et al. Pain and morbidity of transrectal urltrasound guided prostate biopsy: a prospective randomized trial of 6 versus 12 cores. J Urol. 2000; 163(1): 168−71.


CQ 10  
前立腺移行領域(TZ)のルーチン生検は必要か?
推奨グレー ド Ⓑ

前立腺移行領域(TZ)のルーチン生検は不必要である。

【背景・目的】

一般的に TZ 領域の腫瘍は小さく Gleason スコアも低いとされている。現在,前立腺生検は PZ を中心に 8〜12 個所行われている施設が多いが1−3)(Ⅲ),これに TZ を加えることで癌の発見率が上昇するかどうか,また発見される癌は臨床的に重要なものか検討を加える。

【解 説】

系統的 6 個所生検に TZ から 2 個所 PZ 外側から 4 個所加えることで発見される前立腺癌を検討したところ癌全体の 81%が系統的 6 個所生検のみ陽性で6%が PZ 外側のみ,10%が TZ のみであった。これは TZ を加えることで癌の発見率が上昇することを示している1)(Ⅲ)。しかし問題は,TZ 癌は検索して臨床的価値のあるものかどうかということである。TZ に発生する癌は比較的よく認められ,TURP 切片や cT2 に対する前立腺全摘除術などで偶然に発見される。最近の報告によれば T1c 腫瘍の 14%は TZ にのみ限局している4)(Ⅲ)。しかし,一般的に TZ 領域の腫瘍は小さく,Gleason スコアも低いとされており(通常 6 未満)4)(Ⅲ),これらはその解剖学的位置(被膜から離れたところに存在)および PZ 癌に比べ神経血管束への浸潤が少ないことから TZ 以外の癌に比べ比較的おとなしい傾向にある5)(Ⅳ)

PSA 4.0 ng/ml 以上のルーチンのスクリーニングでは,PZ の従来の 6 個所生検に PZ外側 2〜4 個所の生検を加えることで 40%以上の癌発見率が得られる2)(Ⅲ)。また PZの外側だけでなく前立腺尖部の癌陽性率が高い3)(Ⅲ)。したがって PZ の生検部位や本数の検討がより重要である。

以上の理由により,少なくともルーチン検査の初回生検では,TZ 領域の検索は不要であり,再生検などで検討すべきである6)(Ⅲ)

【参考文献】

1)Durkan GC, Sheikh N, Johnson P, et al. Improving prostate cancer detection with an extended−core transrectal ultrasonography−guided prostate biopsy protocol. BJU Int. 2002; 89(1): 33−9.

2)Presti JC Jr, Chang JJ, Bhargava V, et al. The optimal systematic prostate biopsy scheme should include 8 rather than 6 biopsies: results of a prospective clinical trial. J Urol. 2000; 163(1): 163−6; discussion 166−7.

3)Presti JC Jr, O’Dowd GJ, Miller MC, et al. Extended peripheral zone biopsy schemes increase cancer detection rates and minimize variance in prostate specific antigen and age related cancer rates: results of a community multi−practice study. J Urol. 2003; 169(1): 125−9.

4)Jack GS, Cookson MS, Coffey CS, et al. Pathological parameters of radical prostatectomy for clinical stages T1c versus T2 prostate adenocarcinoma: decreased pathological stage and increased detection of transition zone tumors. J Urol. 2002; 168(2): 519−24.

5)McNeal JE, Redwine EA, Freiha FS, et al. Zonal distribution of prostatic adenocarcinoma. Correlation with histologic pattern and direction of spread. Am J Surg Pathol. 1988; 12(12): 897−906.

6)Fleshner NE, Fair WR. Indications for transition zone biopsy in the detection of prostatic carcinoma. J Urol. 1997; 157(2): 556−8.


CQ 11  
初回生検で陰性の場合,再生検を勧める有用なパラメーターは何か?
推奨グレー ド Ⓑ

再生検の癌検出率を上げ,同時に不要な生検を減らすため,現在最も推奨されるパラメーターは% free PSA で 25%以下の症例に再生検が推奨される。

【背景・目的】

血清 PSA の測定により前立腺癌の検出数は革命的に増加した1)(Ⅲ)。PSA は前立腺特異的ではあるが,癌特異的ではない。触知不能な前立腺癌がPSA 4.0 ng/ml から 10 ng/ml の症例の 25%において生検により発見されるが,PSA が4.0 ng/ml 未満の症例であっても系統的生検により前立腺癌が発見されるのも決して稀ではなくなった。しかし多くの症例に対し不必要な生検を行っている可能性があり,生検の特異度を上げるために,PSAD,年齢階層別 PSA 基準値,PSA velocity,% free PSA の測定が試みられているが2,3)(Ⅲ),いまだ臨床上統一された基準は存在しない。前立腺全摘除術の対象となる早期前立腺癌の症例のほとんどが PSA 10 ng/ml 以下の症例であることより,このゾーンの症例から前立腺癌検出の感度をいかに上げ,かつ不要な生検を減らして癌検出の特異度を上げるかということがクリニカルクエスチョンの主要なテーマである。

【解 説】

初回生検で陰性だが癌の存在を疑わせる状態があった場合,再生検での癌の発見率は約 20%とされる4,5)(Ⅲ)。系統的 12 個所生検で初回陰性でその後の経過中,% free PSA が 0.15 以下または PSA velocity が 0.75 ng/ml/year 以上の症例に対し,再生検を行った結果 21.2%において癌が検出されたという報告6)(Ⅲ)があるが,それ以外の症例での結果がないため,この再生検の適用条件が妥当かどうかは判断できない。また再生検の適応基準を PSA 高値の持続,高い PSA velocity,直腸診あるいは経直腸超音波検査の異常,初回生検時の Prostatic intraepithelial neoplasia(PIN)の存在とした場合,再生検にて 21.2%で癌が検出されたと報告7)(Ⅲ)されているが,同様にそれ以外の症例での結果が示されていないため,基準の妥当性は不明である。

一方,PSA 高値持続症例,DRE 異常症例で初回 9 個所生検にて陰性で 6 年間追跡調査を行った集団とそれと同じ年代の同じ時期の男性の集団において前立腺癌の発生率に有意差がなく,明らかに癌が疑われる所見が現われるまで再生検を待ってよいとする報告8)(Ⅲ)もあるが,この報告のみで結論を出せるかは疑問である。

先に述べた中で再生検を勧める最も有用なパラメーターとして受け入れられているのは% free PSA あり,そのカットオフ値は 25%とされる9)(Ⅲ)。この論文は PSA が4.0−10.0 ng/ml までの 50 歳から 75 歳までの前立腺癌症例 379 例と前立腺良性疾患 394例を対象とした prospective blinded study で,25% free PSA をカットオフ値とすることにより,95%の癌を検出し 20%の不要な生検を回避できたと報告している。またこの結果は症例の年齢,前立腺サイズに影響されないことより,臨床の現場で利用しやすく,ガイドラインとして有用な指標となりうる。

【参考文献】

1)Oesterling JE. Prostate−specific antigen: a critical assessment of the most useful tumor marker for adenocarcinoma of the prostate. J Urol. 1991; 145: 907−23.

2)Gretzer MB, Partin AW. PSA markers in prostate cancer detection. Urol Clin North Am. 2003; 30: 677−86.

3)Okihara K, Cheli CD, Partin AW, et al. Comparative analysis of complexed prostate specific antigen, free prostate specific antigen and their ratio in detecting prostate cancer. J Urol. 2002; 167: 2017−23.

4)Keetch DW, Catalona WJ, Smith DS. Serial prostate biopsies in men with persistently elevated serum prostate specific antigen levels. J Urol. 1994; 151: 1571−4.

5)Roerhborn CG, Pickers GJ, Sanders JS. Diagnostic yield of repeated ultrasound guided biopsies stratified by specific histopathologic diagnosis and prostate specific antigen levels. Urology. 1996; 47: 347−52.

6)Singh H, Canto EL, Shariat SF, et al. Predictors of prostate cancer after initial negative systematic 12 core biopsy. J Urol. 2004; 171: 1850−4.

7)Park SJ, Miyake H, Hara I, et al. Predictors of prostate cancer on repeat transrectal ultrasound−guided systematic prostate biopsy. Int J Urol. 2003; 10: 68−71.

8)Bill−Axelson A, Holmberg L, Norlen B, et al. No increased prostate cancer incidence after negative transrectal ultrasound guided multiple biopsies in men with increased prostate specific antigen and/or abnormal digital rectal examination. J Urol. 2003; 170: 1180−3.

9)Catalona WJ, Partin AW, Slawin KM, et al. Use of the percentage of free prostate−specific antigen to enhance differentiation of prostate cancer from benign prostatic disease: a prospective multicenter clinical trial. JAMA. 1998; 279: 1542−7.


CQ 12  
2 回目の生検でも陰性の場合,積極的に癌を検索すべきか? もしそうだとしたら,その後の生検で癌が見つかる可能性はどれくらいか?
推奨グレー ド Ⓑ

2 回目の生検でも癌が検出されなかった場合,それ以上の生検はそれでも癌の存在が疑われる場合に推奨される。3 回目および 4 回目の生検で癌が見つかる可能性はそれぞれ 5%および 4%とされる。

【背景・目的】

血清 PSA の測定により前立腺癌の検出数は飛躍的に増加した1)(Ⅲ)。PSA は前立腺特異的ではあるが,癌特異的ではない。触知不能な前立腺癌はPSA 4−10 ng/ml の症例の 25%において生検により発見されるが,PSA が 4.0 ng/ml 未満の症例であっても系統生検により前立腺癌が発見されるのも決して稀ではなくなった。しかし多くの症例に対し無用の生検を行っている可能性があり,生検の特異度を上げるために,PSAD,年齢階層別 PSA 基準値,PSA velocity,% free PSA の測定が試みられているが2,3)(Ⅲ),いまだ臨床上統一された基準は存在しない。前立腺全摘除術の対象となる早期前立腺癌の症例のほとんどが PSA 10 ng/ml 以下の症例であることより,このゾーンの症例から前立腺癌検出の感度をいかに上げ,かつ不要な生検を減らして癌検出の特異度を上げるかということが重要で,再生検の適応におけるさまざまなパラメーターの有用性が検討されている。しかし 2 回目の生検でも癌が検出されなかった場合,さらに生検を追加する必要があるか,および 3 回目以上の生検でどの程度の頻度で癌が発見されているかを問うのがこの頃のテーマである。

【解 説】

現在までの報告の中にはスクリーニングを繰り返して発見された症例ほど臨床病期および悪性度が低いとする報告4)(Ⅱ)があり,長期にわたり PSA スクリーニングを実施して生検を行うことにより,前立腺癌死亡率を低下させる可能性はある。

一方,PSA 高値持続症例,DRE 異常症例で初回 9 個所生検にて陰性で 6 年間追跡調査を行った集団とそれと同じ年代の同じ時期の男性の集団において前立腺癌の発生率に有意差がなく,明らかに癌が疑われる所見が現われるまで再生検を待ってよいとする報告5)(Ⅲ)もある。

また複数回の生検で癌が検出された症例と初回生検で癌が検出された症例で,前立腺全摘標本における腫瘍体積や癌の局在に違いがあるか検討した報告6)(Ⅲ)では,腫瘍体積,前立腺重量に差はなく,癌の検出に複数回の生検を要した症例では有意に前立腺の背側,外側に腫瘍が局在する率が高かったとされる。また他の報告7)(Ⅲ)では再生検で発見された癌は有意に多病巣性が低く,尖部背側に分布したとされている。また60 歳未満または PSA が 7 ng/ml 未満の症例では外側と中央部の 12 個所生検が最適であるが,その他は外側 6 個所と中央部の尖部と基部の 4 個所の 10 個所生検が最適とする報告8)(Ⅲ)もあり,年齢,PSA などの条件により部位を変えて拡大系統的生検とするのが検出率を上げるのに有効かもしれない。

PSA が 4−10 ng/ml の症例において 6〜8 週の間隔をおいて 1〜4 回生検を行って得られた最近の報告として Djavan らの European study9)(Ⅲ)がある。この報告の重要なポイントは 2 回目の生検で陽性になる場合は 1 回目の生検で見逃された癌が 2 回目の生検で検出されるということ,および初回生検で発見される癌に比べ,3〜4 回目で発見される癌はより低い Gleason スコア,小さい腫瘍体積,低い病期であったということである。そして 3,4 回目の生検で癌が見つかる頻度は各々の集団において 5%,4%であった。したがってこれらの癌の生命予後への影響度,またより低い生検感度を考慮した場合,3 回以上の生検を行う意義はもっぱら不明と言わざるを得ず,2 回の生検で陰性でも癌の存在を疑うケースにおいて行うべきであるという回答が妥当であろう。

【参考文献】

1)Oesterling JE. Prostate−specific antigen: a critical assessment of the most useful tumor marker for adenocarcinoma of the prostate. J Urol. 1991; 145: 907−23.

2)Gretzer MB, Partin AW. PSA markers in prostate cancer detection. Urol Clin North Am. 2003; 30: 677−86.

3)Okihara K, Cheli CD, Partin AW, et al. Comparative analysis of complexed prostate specific antigen, free prostate specific antigen and their ratio in detecting prostate cancer. J Urol. 2002; 167: 2017−23.

4)Hugosson J, Aus G, Lija H, et al. Results of a randomized population−based study of biennial screening using serum prostate−specific antigen measurement to detect prostate carcinoma. Cancer. 2004; 100: 1397−405.

5)Bill−Axelson A, Holmberg L, Norlen B, et al. No increased prostate cancer incidence after negative transrectal ultrasound guided multiple biopsies in men with increased prostate specific antigen and/or abnormal digital rectal examination. J Urol. 2003; 170: 1180−3.

6)Epstein JI, Walsh PC, Akingba G, et al. The significance of prior benign needle biopsies in men subsequently diagnosed with prostate cancer. J Urol. 1999; 162: 1649−52.

7)Djavan B, Mazal P, Zlotta A, et al. Pathological features of prostate cancer detected on initial and repeat prostate biopsy: results of the prospective European Prostate Cancer Detection study. Prostate 2001; 47: 111−7.

8)Presti JC Jr, O’Dowd GJ, Miller MC, et al. Extended peripheral zone biopsy schemes increase cancer detection rates and minimize variance in prostate specific antigen and age related cancer rates: results of a community multi−practice study. J Urol. 2003; 169: 125−9.

9)Djavan B, Ravery V, Zlotta A, et al. Prospective evaluation of prostate cancer detected on biopsies 1, 2, 3 and 4: when should we stop? J Urol. 2001; 166: 1679−83.


CQ 13  
初回生検で high grade PIN が認められた場合,即再生検が勧められるか?
推奨グレー ド Ⓑ

初回生検で high grade prostatic intraepithelial neoplasia(HGPIN)を認めた場合,再生検で高率に癌を認めるため,再生検を行うことを推奨する。ただし,再生検を行う時期についてのエビデンスはない。

【背景・目的】

HGPIN は前癌病変と考えられており,前立腺生検で HGPIN が見つかった場合,他部位にすでに癌が存在するか,または将来癌の発生の可能性があることを意味していると考えられる。初回生検で HGPIN を認めた場合,その後の再生検をどのような形で行うのがよいかを検証した。

【解 説】

初回生検で low grade PIN が見つかった場合は,その後に癌が見つかる確率は,生検陰性の場合と同等だが,high grade PIN が見つかった場合は,その後に癌が見つかる可能性は明らかに高率である1,2)初回前立腺針生検において HGPINが見つかる可能性は,0.7−16.5%と報告されている。ただし,年齢,直腸診異常の有無,経直腸超音波検査異常の有無,PSA 値,生検本数,といった生検対象症例の条件によってこの数字は大きく異なる3)(Ⅲ)。例えば,生検本数が多ければ,HGPIN の検出率も高率である4)(Ⅳ)

この初回生検で HGPIN が見つかった場合,前立腺癌の検出率にかなりの開きがあるため,再生検を強く推奨するとは言いにくいが,大多数の論文で再生検は有用と結論している。ただし,再生検での前立腺癌の発見率が低いため,再生検の必要はないとする論文も散見され5)(Ⅳ),今後 HGPIN 症例に対する考え方が変わる可能性は残されている。

再生検の方法については,一定のコンセンサスはない。再生検の時期については,1〜62 カ月後に行われており,特に 3〜9 カ月後に行われている報告が多い。また,再生検までの期間が長くなればなるほど,癌の検出率が高い傾向があり,このことはHGPIN が前立腺癌の前癌病変であるという考え方を支持している。再生検の本数については,2〜15 本で行われており,1990 年代の報告では 2〜6 本が多かったが,2000 年以後では 10〜12 本の報告が多い。再生検部位は,初回生検で HGPIN を認めた部位の狙撃生検ではむしろ癌の見落としが多いため,系統的生検が推奨される6)(Ⅲ)。なお,HGPIN 症例の PSA 値上昇と再生検での癌の発見の関連はなく,PSA の変動を見て再生検の時期を決めることは推奨されない7)(Ⅲ)

初回生検で HGPIN を認めた症例に対し,さらに 2 回の再生検を行っても癌を認めなかった場合,3 回以上の再生検で癌が見つかることはほとんどないとされているが8)(Ⅳ),HGPIN は前癌病変という考え方からすると,2 回の再生検で打ち切っていいかは多少議論のあるところであろう。

なお,HGPIN とは別に,atypical small acinar proliferation(ASAP)(腺癌を疑う小病巣を認めるが,細胞異型や細胞構築などの所見が十分ではなく確定診断に至らない)を認めた場合にも,再生検で 21−51%と高率に癌が見つかることが報告されている5)(Ⅳ),6)(Ⅲ)。したがって ASAP を認めた症例に対しても再生検を行うことが推奨される。

【参考文献】

1)Zlotta AR, Raviv G, Schulman CC. Clinical prognostic criteria for later diagnosis of prostate carcinoma in patients with initial isolated prostatic intraepithelial neoplasia. Eur Urol. 1996; 30(2): 249−55.

2)Haggman MJ, Macoska JA, Wojno KJ, et al. The relationship between prostatic intraepithelial neoplasia and prostate cancer: critical issues. J Urol. 1997; 158(1): 12−22.

3)Hoedemaeker RF, Kranse R, Rietbergen JB, Kruger AE, Schroder FH, van der Kwast TH. Evaluation of prostate needle biopsies in a population−based screening study: the impact of borderline lesions. Cancer. 1999 1; 85(1): 145−52.

4)Rosser CJ, Broberg J, Case D, et al. Detection of high−grade prostatic intraepithelial neoplasia with the five−region biopsy technique. Urology. 1999; 54(5): 853−6.

5)Moore CK, Karikehalli S, Nazeer T, et al. Prognostic significance of high grade prostatic intraepithelial neoplasia and atypical small acinar proliferation in the contemporary era. J Urol. 2005; 173(1): 70−2.

6)Borboroglu PG, Sur RL, Roberts JL, et al. Repeat biopsy strategy in patients with atypical small acinar proliferation or high grade prostatic intraepithelial neoplasia on initial prostate needle biopsy. J Urol. 2001; 166(3): 866−70.

7)Lefkowitz GK, Taneja SS, Brown J, et al. Followup interval prostate biopsy 3 years after diagnosis of high grade prostatic intraepithelial neoplasia is associated with high likelihood of prostate cancer, independent of change in prostate specific antigen levels. J Urol. 2002; 168: 1415−8.

8)Kronz JD, Allan CH, Shaikh AA, et al. Predicting cancer following a diagnosis of high−grade prostatic intraepithelial neoplasia on needle biopsy: data on men with more than one follow−up biopsy. Am J Surg Pathol. 2001; 25(8): 1079−85.


CQ 14  
PSA,臨床病期,生検所見は病期予測に有用か?
推奨グレー ド Ⓑ

PSA と生検組織における Gleason スコア,臨床病期の組み合わせは,それぞれを独立したパラメーターとして扱うよりも最終的な病理学的病期を正確に予測しうる。

【背景・目的】

前立腺癌症例において,癌が前立腺内に限局しているかいないか(T2 であるか T3 であるか)を見極めることはその後の治療方針の選択において大変重要である。PSA は病期が進むに従って上昇するが,各個人の PSA の値からその人の最終的な病理学的病期を正確に予測するには限界がある。それは PSA が良性前立腺組織からも産生されるためで,実際 PSA と臨床的あるいは病理学的病期の間に直接的な関連はないと報告されている1,2)(Ⅲ)。PSA と生検組織における Gleason スコア,臨床病期の組み合わせは,それぞれを独立したパラメーターとして扱うよりも正確に最終的な病理学的病期を予測しうるとして米国を中心に Partin ノモグラム3)に基づいた病期予測が広く行われている。しかし,本邦における validation はいまだ行われていない。わが国の実情に即した日本版ノモグラム作成プロジェクトが現在進行中である。

【解 説】

前立腺癌の場合,経直腸超音波検査や CT,MRI などの画像診断で腫瘍の局所浸潤を正確に予測することが困難なため,最終的な病期の予測には PSA や生検組織における Gleason スコア,直腸診所見なども重要視されてきた。しかし,それらのパラメーター単独では期待したほど正確な病期予測はできなかった。Partin らはPSA と生検組織における Gleason スコア,術前の臨床病期(T 分類)を組み合わせることによって,それぞれを独立したパラメーターとして扱うよりも正確に最終的な病理学的病期を予測しうるとして 1993 年にノモグラムを作成した4)(Ⅳ)。その後,より多数の症例に基づいたバージョンを 1997 年に発表し3),これが北米を中心に広く受け入れられるようになった。このノモグラムは米国の複数の施設で validation を受け,2001 年には up−date されたものが発表されている5)(Ⅲ)。彼らの発表以降多くのノモグラムが提唱されたが,そのすべてに validation study が行われているわけではない6)(Ⅲ)Partin ノモグラムも米国人を対象にしたデータであるためそのまま日本人に適用するにはいくつか問題がある。まず,PSA 値には人種差が存在し,日本人の PSA 値は同年代の西洋人より一般に低いと言われている点7)(Ⅳ),また,米国ではわが国よりも PSAスクリーニングが普及しているため対象全体における早期癌の割合が高いという点などである8)(Ⅱ)。わが国の症例に基づいたパイロット版ノモグラムの作成が 2001 年に行われており9)(Ⅲ),さらに大規模な日本版ノモグラム作成プロジェクトが現在進行中である。また,最近病期予測に PSAD や MRI 所見などのパラメーターを追加したほうがより正確であるという報告10,11)(Ⅲ)や artificial neural network が有用であるといった報告11,12)(Ⅲ)も出てきており,今後エビデンスに基づいたより正確な病期予測システムの確立が期待される。

【参考文献】

1)Hudson MA, Bahnson RR, Catalona WJ. Clinical use of prostate specific antigen in patients with prostate cancer. J Urol. 1989; 142(4): 1011−7.

2)Lange PH, Ercole CJ, Lightner DJ, et al. The value of serum prostate specific antigen determinations before and after radical prostatectomy. J Urol. 1989; 141(4): 873−9.

3)Partin AW, Kattan MW, Subong EN, et al. Combination of prostate−specific antigen, clinical stage , and Gleason score to predict pathological stage of localized prostate cancer. A multi−institutional update. JAMA. 1997; 14; 277(18): 1445−51. Erratum in: JAMA 1997; 9; 278(2): 118.

4)Partin AW, Yoo J, Carter HB, et al. The use of prostate specific antigen, clinical stage and Gleason score to predict pathological stage in men with localized prostate cancer. J Urol. 1993; 150 (1): 110−4.

5)Partin AW, Mangold LA, Lamm DM, et al. Contemporary update of prostate cancer staging nomograms(Partin Tables)for the new millennium. Urology. 2001; 58(6): 843−8.

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8)Oesterling JE, Kumamoto Y, Tsukamoto T, et al. Serum prostate−specific antigen in a community−based population of healthy Japanese men: lower values than for similarly aged white men. Br J Urol. 1995; 75(3): 347−53.

9)Egawa S, Suyama K, Arai Y, et al. A study of pretreatment nomograms to predict pathological stage and biochemical recurrence after radical prostatectomy for clinically resectable prostate cancer in Japanese men. Jpn J Clin Oncol. 2001; 31(2): 74−81.

10)Horiguchi A, Nakashima J, Horiguchi Y, et al. Prediction of extraprostatic cancer by prostate specific antigen density, endorectal MRI, and biopsy Gleason score in clinically localized prostate cancer. Prostate. 2003; 56(1): 23−9.

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12)Matsui Y, Egawa S, Tsukayama C, et al. Artificial neural network analysis for predicting pathological stage of clinically localized prostate cancer in the Japanese population. Jpn J Clin Oncol. 2002; 32(12): 530−5.


CQ 15  
原発巣の病期決定(T−病期診断)にはどのような検査が勧められるか?
推奨グレー ド Ⓑ

原発巣の病期決定(T−病期診断)は直腸診と画像診断による。検討されている種々の非侵襲的な画像診断は顕微鏡的な癌を検出しえないため,病期分類における臨床的有用性は限られる。これに関する更なる情報は陽性生検検体の本数と局在,腫瘍のグレード,PSA 値から得られる。

【背景・目的】

T−病期診断で最も重要なことは,被膜内にとどまっているか(T1,T2),被膜を越えているか(T3,T4)を見極めることで,これが以後の治療方針の選択に大変重要である。T−病期診断において推奨される検査法を検証する。

【解 説】

すべての症例で原発巣の正確な病期決定が必要なわけではない。すなわち,より詳細な原発巣の評価はそれが治療方針の決定に直接影響する場合や根治的治療が予定されている場合に限って推奨される。

直腸診は局所浸潤を過小評価しがちであり,直腸診と病理学的病期との一致率は50%以下と報告されている1)(Ⅲ)。PSA は病期が進むに従って上昇する。しかし,個々人の PSA の値からその人の最終的な病理学的病期を正確に予測するには限界がある。PSA と生検組織における Gleason スコア,臨床病期の組み合わせはそれぞれを独立したパラメーターとして扱うよりもより正確に最終的な病理学的病期を予測し得る2)(Ⅲ)

経直腸超音波検査は予期せぬ被膜外浸潤を明らかにするかもしれないが,ルーチンな病期診断においては腫瘍進展の把握の正確さに問題があり勧められない。pT3 前立腺癌の約 60%は経直腸超音波検査で術前に診断できなかった3)(Ⅲ)。T2 と T3 の鑑別診断は経直腸超音波検査のみでは行うべきでない4)(Ⅲ)

CT は腫瘍の局所浸潤の評価には信頼性が十分とはいえない5)(Ⅳ)。MRI は被膜外浸潤や精嚢浸潤など局所進行病期の同定に有用性が報告されている6,7)。また MRI は神経血管束への浸潤の評価ににおいて有用性が報告されており,神経温存など手術術式を決定する上で参考になる8)(Ⅳ)しかし,病期診断における MRI のルーチンな使用については意見が分かれている。

【参考文献】

1)Spigelman SS, McNeal JE, Freiha FS, et al. Rectal examination in volume determination of carcinoma of the prostate: clinical and anatomical correlations. J Urol. 1986; 136: 1228−30.

2)Partin AW, Mangold LA, Lamm DM, et al. Contemporary update of prostate cancer staging nomograms(Partin Tables)for the new millennium. Urology. 2001; 58: 843−8.

3)Enlund A, Pedersen K, Boeryd B, et al. Transrectal ultrasonography compared to histopathological assessment for local staging of prostatic carcinoma. Acta Radiol. 1990; 31: 597−600.

4)Rorvik J, Halvorsen OJ, Servoll E, et al. Transrectal ultrasonography to assess local extent of prostatic cancer before radical prostatectomy. Br J Urol. 1994; 73: 65−9.

5)Lee N, Newhouse JH, Olsson CA, et al. Which patients with newly diagnosed prostate cancer need a computed tomography scan of the abdomen and pelvis? An analysis based on 588 patients. Urology. 1999; 54: 490−4.

6)Jager GJ, Severens JL, Thornbury JR, et al. Prostate cancer staging: should MR imaging be used? A decision analytic approach. Radiology. 2000; 215: 445−51.

7)Heenan SD. Magnetic resonance imaging in prostate cancer. Prostate Cancer Prostatic Dis. 2004; 7: 282−8.

8)Ogura K, Maekawa S, Okubo K, et al. Dynamic endorectal magnetic resonance imaging for local staging and detection of neurovascular bundle involvement of prostate cancer: correlation with histopathologic results. Urology. 2001; 57: 721−6.


CQ 16  
リンパ節の評価(N−病期診断)にはどのような検査が勧められるか?
推奨グレー ド Ⓑ

リンパ節の評価(N−病期診断)は根治的治療が予定されている場合にのみ重要である。正確なリンパ節の評価は両側リンパ節郭清によってのみなされ,CT や MRI は感度の低さから限界がある。

【背景・目的】

限局性前立腺癌では,リンパ節転移の有無が予後を大きく左右する。どのような症例で N−病期診断が必要であるか,その場合に推奨される検査法があるか検証する。

【解 説】

まず,リンパ節の評価は,それが治療方針の決定に直接関わってくる場合にのみ行うべきである。これは通常根治的治療を希望している患者が対象となる。PSA 高値,T2b または T3 例,低分化癌,神経周囲浸潤などを有する場合はリンパ節転移のハイリスク例となる1)(Ⅳ)。PSA 測定だけでは個々の患者のリンパ節転移の有無の予測はむずかしい。治療前に行われる他の予測因子も同様である。リンパ節転移の存在の予測は PSA,直腸診,腫瘍のグレードの組み合わせによって信頼性が高まる1)(Ⅳ)2)(Ⅲ)

このことは逆に,リンパ節転移の低リスク群(10%)についても当てはまる。PSAが 20 ng/ml 以下で T2a 以下,かつ Gleason スコアが 6 以下ならば根治的治療を行う前のリンパ節の評価を省略してもまず心配はない1)(Ⅳ)。

リンパ節の評価における最適の方法は開放手術または鏡視下手術によるリンパ節郭清術である。CT も MRI もその 0−70%という低い感度のためその利用は限られている3)(Ⅳ)。しかし CT も同定可能な不整リンパ節に対する吸引細胞診を併用することによりその感度が高まる4)(Ⅲ)。CT は特異度が 93−96%と高いため,非常にリンパ節転移のリスクが高い症例には向いている。CT や吸引細胞診で陽性であった場合にはリンパ節郭清術は回避できる5)(Ⅲ)

【参考文献】

1)Partin AW, Yoo J, Carter HB, et al. The use of prostate specific antigen, clinical stage and Gleason score to predict pathological stage in men with localized prostate cancer. J Urol. 1993; 150: 110−4.

2)Partin AW, Mangold LA, Lamm DM, et al. Contemporary update of prostate cancer staging nomograms(Partin Tables)for the new millennium. Urology. 2001; 58: 843−8.

3)Oyen RH. Imaging modalities in diagnosis and staging of carcinoma of the prostate. In: Carcinoma of the Prostate. Innovations in Management. Petrovich Z, Baert L and Brady LW, et al(eds). Berlin: Springer Verlag; 1996.p.65−96.

4)Van Poppel H, Ameye F, Oyen R, et al. Accuracy of combined computerized tomography and fine needle aspiration cytology in lymph node staging of localized prostatic carcinoma. J Urol. 1994; 151: 1310−4.

5)Wolf JS Jr, Cher M, Dall’era M, et al. The use and accuracy of cross−sectional imaging and fine needle aspiration cytology for detection of pelvic lymph node metastases before radical prostatectomy. J Urol. 1995; 153: 993−9.


CQ 17  
骨転移の診断(M−病期診断)のための骨シンチグラフィは全例に必要か?
推奨グレー ド Ⓑ

骨転移の診断(M−病期診断)には骨シンチグラフィが最も適している。骨シンチグラフィは PSA が 10 ng/ml 未満かつ無症状で,高または中分化癌である場合には不必要である。

【背景・目的】

前立腺癌死亡例の 85%には椎体転移が認められる1)。骨転移の存在とその進展は個々の患者の予後を的確に反映する。骨転移の早期診断は今後起こり得る骨折などの合併症への警告となってくれる。一方,PSA スクリーニングなどの普及で早期前立腺癌が多く発見されるようになり,骨転移の確率が極めて低い患者群が存在する。すべての症例の M−病期診断に骨シンチグラフィが必要かを検証する。

【解 説】

骨シンチグラフィは骨転移を検出する最も感度の良い方法である2)(Ⅲ)。テクネシウム ジフォスフォネートが骨/軟部組織比が非常に高いことから,よく放射線試薬として用いられている。骨シンチグラフィ上の骨病変の半定量的評価は予後と相関するとされている3)(Ⅲ)

PSA 検査の出現により,前立腺癌の病期診断に骨シンチグラフィをルーチンに使用することが問題視されている。治療前の PSA が 100 ng/ml 以上の場合には,それだけでほぼ 100%の確率で転移病巣の存在を意味する4)(Ⅳ)。その一方では,稀ではあるがPSA が低値でありながら骨転移を有する例も存在する。PSA 20 ng/ml 以下では約 99%で骨転移を認めない5)(Ⅲ)。新規に前立腺癌と診断された未治療群に対して PSA と骨シンチグラフィとの関連についての報告がある。それによると PSA が 10 ng/ml 未満かつ無症状で,高または中分化癌である場合には病期診断目的での骨シンチグラフィは不必要と報告されている6,7)(Ⅳ)。

しかし,骨シンチグラフィの陰性所見は治療前の有用な情報が得られる。第一には,ベースライン評価として後に患者が骨痛を訴えた場合,治療後の評価と比較できる。第二として,上部尿路画像として両側の腎機能を確認できる。PSA 値が低い患者の場合,このような観点から骨シンチグラフィの費用が正当化できるかは議論が分かれる。

【参考文献】

1)Whitmore WF Jr. Natural history and staging of prostate cancer. Urol Clin North Am. 1984; 11: 209−20.

2)Gerber G, Chodak GW. Assessment of value of routine bone scans in patients with newly diagnosed prostate cancer. Urology. 1991; 37: 418−22.

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5)Oesterling JE. Prostate specific antigen: a critical assessment of the most useful tumor marker for adenocarcinoma of the prostate. J Urol. 1991; 145: 907−23.

6)Chybowski FM, Keller JJ, Bergstralh EJ, et al. Predicting radionuclide bone scan findings in patients with newly diagnosed, untreated prostate cancer: prostate specific antigen is superior to all other clinical parameters. J Urol. 1991; 145: 313−8.

7)Wolff JM, Bares R, Jung PK, et al. Prostate−specific antigen as a marker of bone metastasis in patients with prostate cancer. Urol Int. 1996; 56: 169−73.


3.治療総論

1.治療方法の変遷

現在前立腺癌に対して広く施行されている治療法は 1)外科治療,2)放射線療法,3)薬物療法(内分泌療法),4)待機療法の 4 つである。それぞれの治療法の詳細については各項目を参考にしていただくとして,ここでは治療法の概論について述べる。 歴史的には 1941 年に Huggins らが進行性前立腺癌患者に対し去勢術を施行し,自他覚所見の改善を認めたのが最初である。以来,内分泌療法は前立腺癌に対する Goldstandard として広く施行されてきた。しかしながら内分泌療法は長期間施行すると,前立腺癌の内分泌依存性が消失し臨床的に再燃をきたすという欠陥を有していた。従来,前立腺癌は診断時には進行性であることが多かったのであるが,1990 年頃から PSA が前立腺癌の診断に用いられるようになり,限局性の前立腺癌が多く発見されるようになってきた。こうした限局性の前立腺癌に対し,根治を目的として導入されたのが前立腺全摘除術である。今日では限局性前立腺癌に対する標準的な治療法として広く普及している。

また放射線療法の進歩も著しく放射線療法と前立腺全摘除術は並列した標準的治療法として呈示される。

待機療法は癌の診断がついていながら治療の実施を先送りにすることであるが,前立腺癌に固有の治療法と言える。待機療法は前立腺癌の治療が外科治療,放射線療法,内分泌療法いずれの場合においても性機能に大きな影響を与えること,PSA という感度のよい腫瘍マーカーがあるため病勢の判定がしやすいこと,前立腺癌の中には極めて生物学的悪性度の低いものが存在するなどの条件があって初めて可能な治療法と言える。

2.文献評価上の問題点

このガイドラインを作成するにあたり,極力日本で行われた,日本人を対象とした臨床研究の結果を取り入れるように努力した。しかしながら,大部分の臨床研究は海外で行われたもので,それらの結果をもとに推奨するべき治療法や推奨のグレードを決定した。現在のところ,海外で行われた研究結果をそのまま日本人に当てはめることが妥当であるという確証はない。実際日本人の前立腺癌に関しては,いわゆる臨床的意義のある癌の頻度,あるいは潜在癌からの臨床癌への進展速度は異なるとのデータがある。したがって,本ガイドラインで用いた推奨や解釈については,十分注意が必要であることをここに強調しておく。

3.外科治療(この項の文献番号は第4章 外科治療の文献を参照)

(1)外科治療におけるエビデンス

外科治療は前立腺および精嚢を一塊として摘出し膀胱と尿道とを吻合する根治的前立腺全摘除術が標準術式であり,一般に閉鎖リンパ節の郭清術を同時に施行する。到達経路としては恥骨後式が最も一般的であるが,経会陰式や腹腔鏡による前立腺全摘除術も施設によっては施行されている。

外科治療に関しては,無作為臨床試験(RCT)が実施しにくい等の要因により,エビデンスの評価は一般的に低くなる。この点に関しては RCT 以外の比較研究や観察的な疫学研究によっても多くの知見が明らかにされるとは言われているもののやはり十分な検討が必要であろう1)。また本邦の前立腺癌と欧米の前立腺癌が同等の性質を有しているか,という点も考慮する必要がある。

(2)外科治療のエンドポイント

外科治療の対象となる前立腺癌の予後は一般的に良好であるため一般的なエンドポイントである生命予後が指標になりにくい。このため PSA 再発が代替目標として使用されているが,PSA 再発が本当に代替目標として適切かという点については議論の余地がある。PSA 再発が本当に代替目標として適切かという点については high risk では妥当4)),5)),6))と考えられるが,low-intermediate risk では PSA 再発をエンドポイントとして解析しても,生命予後に関係しないとの主張もある7−9)),10))。この点では摘除後に残存腫瘍の増殖スピードを表しているとされる PSA doublingtime(PSADT)の方がより妥当なエンドポイントかもしれない6)),7))。

(3)前立腺全摘除術の根治性

限局性前立腺癌に対する前立腺全摘除術は根治の可能性の高い治療法であり11,12)),現状の前立腺全摘除術の安全性および術後再発に対し放射線療法や内分泌療法を併用できることも考慮すると,本術式は長期生存を期待できる治療法と考えてよい。しかし Gleason スコア 2−4 の症例では,待機遅延内分泌療法と 10 年疾患特異的生存率で差が認められないと報告されている11)),13))。また近年の放射線療法の成績向上からも,最終的に待機遅延内分泌療法,放射線療法と比較して優位であるとの断定的な結論はできない14))。

(4)前立腺全摘除術の適応条件

期待余命が 10 年以上で PSA<10 ng/ml,Gleason スコア 7 以下,かつ T1c−T2b までが,前立腺全摘除術の理想的な適応基準であると考えられ15−19)),この場合にはおおよそ 5 年 PSA 非再発率は 70−80%,10 年 PSA 非再発率は 50−70%程度である20−24))。合併症として問題となるのは術後の尿失禁と性機能不全である。 一方,Gleason スコア 8 以上,あるいは PSA 20 ng/ml 以上,さらには T3 症例に対して,あるいは高齢者の局所前立腺癌を前立腺全摘除術の適応外とする理由は証明できない25−27))。もちろん,それらすべてが本治療の適応とはならないことは明白であるが,期待余命,QOL なども考慮し対応することが肝要である28)),29))。これらの外科的治療にあたっては,合併症の程度を許容範囲内にするために十分な外科的技術が要求される。この手術における経験や慣れは治療成績,術後合併症,後遺症に関与している30)),31))ことを考慮すると,広範な局所切除と外科的合併症のバランスを取ることのできる経験豊富な泌尿器科医が行うべきであろう32))。

(5)ネオアジュバント内分泌療法

3 カ月間のネオアジュバント内分泌療法による治療成績の改善は RCT により否定されており,33−35))推奨されない。しかし,より長期のネオアジュバント内分泌療法ではどうか,あるいは単独治療で限界のある局所進行前立腺癌に適応することで生存率の向上が得られるかなどについては検討の余地がある。

(6)手術手技

現在,主に行われているのは恥骨後式前立腺全摘除術,会陰式前立腺全摘除術,腹腔鏡下前立腺全摘除術であるが,それぞれに短所があり37)),どの方法が最も推奨されるかという点についてはエビデンスが確立していない。 断端陽性率に関しては恥骨後式では尖部に,会陰式では膀胱頸部に,腹腔鏡では側後方に断端陽性がみられることが多いとの報告がある38))。恥骨後式に特有の問題としては出血が多いこと,術後,鼠径ヘルニアの頻度が高いこと39,40)),会陰式では直腸の合併症が特徴的である39−42))。腹腔鏡下前立腺全摘除術は経験が浅い段階では合併症を起こす頻度が比較的高いと報告されている43)),44)),45,46))。 尿禁制は前立腺全摘除術における大きな問題ではあるが,恥骨前立腺靱帯あるいは膀胱頸部温存を推奨するエビデンスはなく,膀胱頸部温存は被膜浸潤陽性のような癌の場合には切除断端陽性の危険が指摘されている47))。大規模な予後調査では医療者側が思っているほど,尿禁制が良くないことが指摘されている48))。 神経温存に関しては安全な適応基準は確立しておらず49)),さらに性機能の温存に関しては予想以上に温存されていない点が明らかにされている50))。 リンパ節郭清に関しては日本人のノモグラムが確立されることで,郭清を省略できる症例が同定可能かもしれない51))。「拡大郭清により予後が向上するか」という点に関しては,そもそも前立腺全摘除術の対象とされた症例の病態により結論が異なる可能性が高い。RCT ではあるが,low grade, low stage の症例が多かった研究では拡大郭清は意味がないとされている52))。一方,high risk の症例が多い研究では拡大リンパ節郭清術に意味があり,外腸骨・内腸骨・閉鎖リンパ節を郭清することが望ましいとの報告もあり53)),結論は導けない。

(7)術後経過観察・再発診断

補助療法を施行していない前立腺全摘除術後においては PSA 再発のカットオフは0.2 ng/ml とすべきであるという意見が多く,現実的と思われる7,9,54))。一般的にはPSA 再発は再発の最初のイベントと解釈される。PSA が検出できないレベルで再発・転移が起こりうることが報告されているが,これは非常に稀で,未分化型の腫瘍にしか起こらないと考えてよい8,55))。したがって PSA 再発が認められない場合には直腸診などの追加検査は不要である8,55−57))。

(8)再発後治療

前立腺全摘除術においてリンパ節が陽性であった場合,臨床的再発(PSA 再発ではない)の段階で内分泌療法を開始した群よりも,即座にアジュバント療法を開始した群の方が予後が良好であったことが RCT で報告されている62))。

pT3(−4)N0 M0 症例に対するアジュバント放射線療法は,PSA 再発のリスクを下げる可能性がある63−65))。しかし pT3 N0 M0 症例でも Gleason スコア 7−10 かつpT3b 症例や術前 PSA 高値(25 ng/ml 以上)であった場合にはアジュバント放射線療法が無効になる可能性が高くなる66))。また切除断端陽性症例でも Gleason スコア≧8 かつ術前 PSA>10.9 ng/ml ではアジュバント放射線療法を行っても再発リスクが高いと報告されている67))。

放射線療法をアジュバントとして行うか,PSA 再発後に救済治療として実施するかについては,アジュバントが良いとする報告68))と,PSA 再発まで待っても結果は同等とする報告69))があり,結論は一定していない。

4.放射線療法(この項の文献番号は第5章 放射線療法の文献を参照)

(1)放射線療法の変遷

放射線療法は照射方法により外照射と内照射に大きく分けられる。前立腺癌に対する放射線療法はコンピュータ技術の長足の進歩とあいまって,革新的変遷をとげてきた。根治術と同様局所療法であるため,最良の適応は局所限局癌であり前立腺全摘除術と同等の成績が得られるとされている1))。しかし,最近では 1980 年代半ばから90 年代にかけて欧米で施行された大規模な無作為割付試験の長期成績に基づき,内分泌療法を併用(ネオアジュバント・アジュバント)することにより局所進行癌ですら全生存率の改善が認められたとの認識から治療戦略の概念が大幅に変化した2−8)),9)),10−12))。適応となる対象および治療オプションが拡大されたことに伴い,最適な治療法を選択するため PSA や Gleason スコアあるいは臨床病期等の因子を用いて個々の症例を「リスク」分類することが提唱されている13)),14)),15))。「リスク」は通常,低,中,高リスクと大きく 3 段階に分類されることが多いが,その定義にコンセンサスがあるわけではなく,個々の検討により詳細は異なることに留意されたい。

また近年では治療成績のみならず,コスト,合併症・副作用,毒性,生活の質も考慮した上で一次治療法を選択する傾向にあり,こうした観点からの検討も重要である。このほか,放射線療法は緩和医療や他の一次療法後の再発に対する治療法として選択される場合も多い。

(2)外照射療法

本邦で可能な外照射療法には通常のリニアック,三次元原体照射(3D−CRT),IMRT(intensity modulated radiation therapy)のほか,粒子線治療があるが施行可能な施設に限りがあり保険適応になっていない。通常の光子線の外照射のみで局所制御を得るためには,分割照射法では 70 Gy 以上の線量が必要となる16))。また,有害事象発現率を抑えつつ十分な線量を有効に投与するための様々な治療技術が開発されている。 照射範囲に関しては,前立腺のみでよいか,全骨盤照射を併用するべきかについては結論をみないものの,Radiation Therapy Oncology Group 9413 の検討では,全骨盤照射にネオアジュバントおよび同時内分泌療法を用いた群での非再発生存率の有意な向上が報告されている11))。

アジュバントとしての内分泌療法の期間については,概して高リスクの症例では長期(>24 カ月)が必要とされる。中リスクの症例では 6 カ月の短期でも効果が得られるとされ,低リスクのものでは不要と考えられている2〜8)),9)),10〜12)),13))。しかし,どのような内分泌療法を用いるべきなのか,至適な治療期間はどれくらいかなどに関しては今後の検討が必要である。

(3)組織内照射療法

現時点で本邦でも可能な内照射療法の代表的なものとして,125I による密封小線源永久挿入治療法,および192Ir による高線量率組織内照射がある。125I による永久挿入密封小線源治療法は放射能を有する金属製のチップを超音波ガイド下に前立腺に埋め込むやりかたでアメリカでは広く施行されている。本邦では 2003 年 3 月に認可された。低リスクでは単独で,中・高リスクでは外照射と併用されることが多い17)),18))。内分泌療法との併用効果については,無作為割付による治療成績の比較検討はいまだ行われていない。これは密封小線源永久挿入治療単独での最良の適応対象は,もともと内分泌療法の併用効果が少ないと考えられている低リスク症例であることなどによる。192Ir による高線量率組織内照射は通常外照射と併用され局所限局性前立腺癌に加え,局所浸潤性前立腺癌を対象としている。内照射,外照射ともに合併症としては直腸障害,排尿障害,性機能障害が挙げられる。

(4)放射線治療後の再発

放射線治療後の臨床的再発,生化学的再発の評価法は多くの議論のあるところである19)),20)),21)),22))。前者では特に治療後の生検の意味合いについて,後者では血清前立腺特異抗原(PSA)測定の間隔・時期,有意変化のとらえ方に多くの議論が集中している。

5.薬物療法(この項の文献番号は第6章 薬物療法の文献を参照)

(1)前立腺癌における内分泌療法

前立腺癌に対し内分泌療法を凌駕する化学療法は現時点では存在しない。各種内分泌療法の近接効果は著明であるが,その効果の持続が進行例では 2〜3 年であること,また,erectile dysfunction(ED)や libido の低下など性関連の副作用1,2))が問題となり,その適応には限界がある。

内分泌療法として最初に行われたのは外科的な去勢術である。その後女性ホルモン製剤が使用されたが,心血管系の副作用のため今日では用いられることは少ない。最も一般的な内分泌治療としては,luteinizing hormone−releasing hormone(LH−RH)アゴニストおよび抗アンドロゲン剤の併用あるいは単独療法が行われる。LH−RH アゴニストとしては,goserelin あるいは leuprorelin の 1 カ月および 3 カ月製剤が使用されている。antiandrogen としてはステロイド性と非ステロイド性が日本で承認されている。LH−RH アゴニスト使用においては,投与初期に起こる一過性のテストステロン値上昇に伴うフレアアップ現象による尿路閉塞,転移巣に由来する骨痛,脊髄圧迫などが懸念される場合は抗アンドロゲン剤の併用を考慮すべきである。LH−RH アゴニストの有効性は去勢術と同等と考えられるが,抗アンドロゲン剤単独療法の有効性は LH−RHアゴニストと比較すると有意差は認めないものの低いとされている。しかしながら非ステロイド性抗アンドロゲン剤は性関連の副作用が少ないため対象によってはこれらの単独療法の有用性が指摘されている。また,局所限局性あるいは浸潤癌において,根治的手術・放射線療法・慎重な経過観察を受けた症例に対する bicalutamide の補助療法としての有用性の検討では有意な PSA doubling time の延長と objective progressionrisk の低下が認められた3,4,5))。生存期間延長の効果については現在大規模な検討が行われている。

化学内分泌療法が StageⅣに対して内分泌単独療法より有効かどうかの検討がなされている。

(2)Maximum androgen blockade(MAB)の妥当性

StageⅢ〜Ⅳに対する内分泌療法の延命効果は証明されている6))。一般には,転移を有する進行性前立腺癌の標準治療は外科的(精巣摘除)または薬物的(LH−RH アゴニスト)去勢によるアンドロゲン遮断療法である。外科的または薬物的去勢では精巣由来のアンドロゲンは抑制可能であるが,前立腺細胞内のアンドロゲンのうち 40%は副腎に由来すると報告されている。そのため去勢と非ステロイド性抗アンドロゲン剤を併用することにより精巣および副腎双方のアンドロゲンを抑制する Maximum andro-gen blockade(MAB)の有用性が示された8))。以後 MAB は進行前立腺癌の治療として一般的な手段となってきたが,去勢単独と比較し長期予後を改善するかどうかが論議の対象となっている。ステロイド性抗アンドロゲン剤を用いたものが含まれている初期のメタアナリシスでは MAB 療法と去勢単独療法で生存期間に有意差なしと報告されたが9)),これらを除外したメタアナリシス(13 試験,2922 症例)では非再発期間,生存期間ともに有意に MAB 療法が優れていることが示された。同様に,最近のメタアナリシス10))でも,非ステロイド系抗アンドロゲン剤では,MAB 群に有意な生存率の上昇が認められた。

一方,SWOG による大規模な RCT11))においては去勢術+flutamide 投与群と去勢術+placebo 投与群との比較が行われ,Overall survival に有意差は認められなかった。以上のすべての RCT を含めた最近のメタアナリシスでは,2 年生存率では MAB療法と去勢単独療法の差はないが,5 年生存率では MAB 療法が有意に優れていることが指摘されている12,13,14))。ただし,生存率の差はわずかであることから臨床的な真の利益は効果,副作用,QOL,医療経済的側面を考慮して決定されるべきであるとされている。最近,抗アンドロゲン剤として bicalutamide を用いて MAB と LH−RHアゴニスト単独の二重盲検試験の結果,Time to progression において明らかな効果が報告された。

(3)再燃癌に対する薬物療法

再燃癌と判断された場合でも抗アンドロゲン剤のみを中止することで一過性に病勢の低下を認めることがある(anti−androgen withdrawal syndrome)。抗アンドロゲン剤のみの中止,あるいは hydrocortisone などの組み合わせにより 14−60%に PSA の低下および 0−25%に臨床的効果が得られる。しかし,PSA 低下効果は通常 2〜4 カ月であると報告されている。

内分泌療法再燃癌に対する抗癌剤単剤あるいは多剤併用療法による化学療法が試みられており,単独療法に用いられる薬剤としては,estramustine phosphate,CPA,fluor−ouracil(FU),ETP,などがある。しかし,今まで無作為化比較試験によって明らかな生存期間の延長が認められたものはなかった。最近,docetaxel(DXL)とステロイド15))あるいは estramustine phosphate との併用療法16))が mitoxantrone とステロイドの併用に比べて有意に生存率が改善したと報告された。なお,現在我国ではestramustine phosphate と FU が前立腺癌に対して保険適応となっているが,他の薬剤は認可されていない。

6.待機療法(この項の文献番号は第7章 待機療法の文献を参照)

(1)待機療法の定義

広義の待機療法とは前立腺癌の確定診断がついている患者に対し,治療が必要になるまで治療を延期することを意味する。この場合二次治療として内分泌療法を想定した待機遅延内分泌療法と,放射線療法や手術療法等の根治療法を二次治療として考える PSA 監視療法(狭義の待機療法)を区別して考える必要がある。本項ではこの待機遅延内分泌療法および PSA 監視療法とを区別して記載するので注意されたい。

(2)進行性前立腺癌に対する待機遅延内分泌療法

進行性前立腺癌に対する待機遅延内分泌療法と即時内分泌療法の優劣についてはいまだ決着を見ていない。ただ転移を有する前立腺癌の約半数は 18〜24 カ月で再燃し,30〜36 カ月で死亡することを考慮すると,転移性前立腺癌において待機遅延内分泌療法を選択しても即時内分泌療法に対しその差はわずかである。National cancer institute(NCI)の前立腺癌に関する Physicians data query(PDQ)や European association ofurology(EAU)の前立腺癌ガイドライン双方とも転移を有する前立腺癌に対して待機遅延内分泌療法を推奨していない。

(3)限局性前立腺癌に対する待機遅延内分泌療法

次に限局性前立腺癌に対する手術療法と待機遅延内分泌療法との比較が検討された。北欧を中心とした限局性前立腺癌に対する前立腺全摘除術と待機遅延内分泌療法の大規模な randomized controlled trial(RCT)の結果が発表された1))。結論として前立腺全摘除術は中〜高分化型限局性前立腺癌患者の疾患特異的生存率を改善したが,全体での生存率に差はなかった。しかし,その後観察期間を延長した成績では全体生存率,疾患特異的生存率ともに前立腺全摘除術群で有意に良好であった2))。

1985 年から 1992 年までに報告された限局性前立腺癌に関する非無作為化臨床試験から待機遅延内分泌療法に関するメタアナリシスの結果が報告された。828 例の症例が集積され,結果は 10 年疾患特異的生存率はグレード 1 とグレード 2 を合わせた場合 87%であったのに対しグレード 3(Gleason スコア 8−10)では 34%と予後不良であった3))。このように限局性前立腺癌に対する待機遅延内分泌療法においては腫瘍のグレードが大きな予後決定因子となっていることが明らかにされた。

(4)限限局性前立腺癌に対する PSA 監視療法

さらに今日では PSA によるモニタリングが一般的となっており,より早期の前立腺癌に対し根治療法を即座に施行した場合,あるいは PSA による経過観察を行い浸潤性前立腺癌になる前に根治療法を施行した場合との比較が検討されている。どのような症例が PSA 監視療法の適応になるかはいまだ一定の見解はないが,Gleason スコアが6 以下で PSA が 20 ng/ml 以下,臨床病期 T1−2 が一つの目安となるだろう。期待余命および針生検における癌の広がりも考慮の対象となる。経過観察項目としては 3〜6 カ月ごとの直腸診と PSA のチェックが必要であり,必要に応じて再生検を施行すべきである。二次治療に移行するタイミングとしては PSA の倍加時間を考慮した報告が多く倍加時間が 2 年以内の症例については二次治療に移行している割合が多いようである4,5))。

PSA テストが普及するにつれ low risk の前立腺癌が多く発見される傾向が報告されている。しかし米国のデータでは PSA 監視療法を選ぶ人はむしろ減少してきている。この PSA 監視療法選択比率が減少した分は小線源治療と内分泌療法選択比率の増加となっている6))。治療法選択の変化の背景には,治療法選択に際しての医療側の要因と患者側の要因があると思われるが,QOL 調査を含めた今後の詳細な解析を待つ必要がある。各種治療法間の QOL の比較に関しての情報はまだ乏しいが,米国での 800 例あまりの横断的解析では,PSA 監視療法群は前立腺全摘除術群にくらべ SF−36 の 8 つの下位尺度のうち身体機能と全体的健康感で有意に低下していた。しかし,放射線外照射や内分泌療法群では 8 つの下位尺度のほとんどで前立腺全摘除術群より有意に低下していた。このことから PSA 監視療法中の健康関連 QOL の低下が,必ずしも PSA監視療法の選択率の低下の直接の原因になっているとは考えにくい7))。癌を告知された状態で,何も治療を開始しない不安感を患者が抱くことが要因の一つとして考えられるが,PSA 監視療法を選択するか否かは医師側の説明に大きく依存するだけに8)),患者へのカウンセリングに有用な科学的情報,特に日本人での情報の蓄積が急務と考えられる。現在日本人患者においても,小病巣・高分化癌と推定される症例に限って,一定の選択規準を設けて,PSA 倍加時間をモニターしながら PSA 監視療法に関する feasibility study が進行中である9))。

7.各治療法の適応基準

(1)T1aN0M0

①T1aN0M0,Gleason≦6

T1a の癌の多くが高分化型で前立腺に限局しており,大半が PSA 監視療法以外に特に治療を必要としない。しかし,このような集団においても患者の年齢が低くなると(50〜60 歳)期待生存期間が長くなるため,前立腺全摘除術や放射線療法等の根治療法を検討する必要がある。

②T1aN0M0,Gleason≧7

PSA 監視療法は選択肢の一つであるが患者の年齢が期待余命で 15 年以上ある場合には根治療法を考慮してもよい。

(2)T1b−2N0M0

①T1b−2N0M0,Gleason≦6,PSA≦20 ng/ml

根治療法(前立腺全摘除術,放射線療法)および PSA 監視療法が選択肢になる。いずれの場合でも治療開始時で期待余命が 10〜15 年以上望める場合には根治療法として前立腺全摘除術もしくは放射線療法が,期待余命が 10 年以下の場合には内分泌療法や放射線療法が選ばれる。

②T1b−2N0M0,Gleason≧7,PSA≦20 ng/ml

Gleason 8 以上の限局性前立腺癌に対して PSA 監視療法は不適である。期待余命が10〜15 年以上望める場合には根治療法(前立腺全摘除術,放射線療法)を考慮した方がよい。ただし低分化型局所前立腺癌において根治療法が生存率に関し有意に良好であることを示した論文はない。

③T1b−2N0M0,PSA≧20 ng/ml

PSA の値のみで治療方針を決めることはできないが 20 ng/ml を超えるとほとんどの論文で PSA 監視療法は対象外である。画像上 T1b−2N0M0 であっても PSA が 20 ng/mlを超える場合にはそれ以上の病期(特に T3)である可能性が高いため手術の適応にあたっては慎重に考慮する。特に PSA が 100 ng/ml を超える場合にはほとんどの症例で遠隔転移が存在すると言われているため根治療法のみで制御することは難しく,かりに根治療法を行ったとしてもその後内分泌療法が必要となる確率は極めて高い。

(3)T3N0M0

画像上,もしくは DRE にて明らかに T3 と診断される場合の前立腺全摘除術の適応は切除断端,リンパ節への微小転移等の観点から一般的には難しく特に T3b(精嚢浸潤)の症例の成績は不良である。しかしながら T3 症例でも手術により根治できる症例があることも事実であることから期待余命が 10 年以上望める場合には選択肢の一つとはなりうる。ただしこれらの症例については近年内分泌療法を併用した放射線治療の良好な成績が報告されているため今後のさらなる検討が期待される。

(4)T4N0M0,もしくは N1 もしくは M1

これらの進行性前立腺癌では局所療法では制御不能であるため期待余命に関わらず内分泌療法の適応となる。

8.外科治療と放射線治療の比較

今まで述べてきたように,限局性前立腺癌に対しては根治療法として前立腺全摘除術と放射線治療の二つが存在し,その優劣が問題となる。それぞれの治療法についてはたくさんの論文が存在するため,比較検討が今までにされてきたが患者背景が異なるうえに評価の方法(PSA 再発ひとつをとっても治療法間での定義はまったく異なる)もまちまちであり,多大な労力をつぎ込んだが結論は得られなかった。また前立腺癌は生物学的な悪性度がそれほど高くないこと,局所療法がうまくいかなかった場合でも後に内分泌療法が施行できることなどから,全生存率で比較するには 10 年以上の経過観察が必要であることも両者の優劣をつけがたい一因である。真の意味での優劣を比較するには大規模な RCT で全生存率をエンドポイントとした長期にわたる観察が必要であるが,現状を考えるとこのような RCT は非現実的であり,また結果の妥当性についても疑問が残る。また海外でこの点について結論が出たとしても,その結果が我々日本人にそのままあてはめることができるかどうかという問題もある。

照射技術が発達していない時代においては,照射線量は 60−70 Gy が主体をしめており,この時代においては局所前立腺癌に対する治療成績は外科治療の方が予後は有意に良好であった。前述したごとく照射技術の発達に伴い 70 Gy 以上の照射が可能である近年の外照射,あるいは内照射療法の成績は手術療法とほぼ同等と言われている。ただ手術療法後の PSA 再発に対し放射線療法を適応できるが,放射線療法後の PSA 再発に対し手術療法を選ぶのは困難である。

放射線治療と手術療法のどちらを選択するかはむしろ副作用の問題が多くなる。手術療法においては尿失禁と性機能障害が問題となり,放射線療法では直腸障害,排尿障害,性機能障害が問題となる。放射線治療では晩発性の障害や 2 次発癌のリスクも若年者においては考慮されるべきである。

9.緩和医療(この項の文献番号は第8章 緩和医療の文献を参照)

(1)前立腺癌における緩和医療

進行性前立腺癌でもホルモン療法等が奏効している場合には排尿困難,血尿や骨転移巣の痛み等癌に基づく症状も緩和されていることが多い。問題は再燃した場合であり,抗癌剤等の追加治療を行ってみても最終的にはほとんどの症例が緩和医療の対象となる。前立腺癌の緩和医療として重要な点は,①骨転移巣の疼痛対策,②脊椎転移による脊髄麻痺,③排尿困難および血尿,④尿管の閉塞に伴う腎後性腎不全などがあげられる1)

(2)疼痛対策

疼痛性骨転移は,前立腺癌の大きな問題となりうる。鎮痛薬,放射線,ステロイド,骨親和性放射性核種,硝酸ガリウムおよびビスフォスフォネートといった緩和治療のための多くの治療手段が実施されている2)。鎮痛薬が果たす役割は大きく適切な薬剤の選択が必要である。一般的には WHO が提唱する 3 段階のアプローチが広く行われている。簡単に解説すると第 1 段階としては非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)を使用する。第 2 段階としては弱オピオイドと NSAID を併用する。それでも疼痛の緩和が十分でない時は第 3 段階としてモルヒネ散あるいはモルヒネ徐放製剤を副作用対策を講じながら漸増する。癌性疼痛の管理については日本緩和医療学会から Evidence−Based Medicine に則ったがん疼痛治療ガイドライン(2000)が出版されているので参照されたい3)

痛みを訴える骨転移巣が比較的限局している時には骨痛緩和のための外部照射療法は,極めて有用である4))。多発性骨転移により痛みを訴える場合に,以前は全身あるいは半身照射が用いられることがあったが,前立腺癌のような造骨性転移をきたす場合,ストロンチウム 89 のような放射性同位元素を用いることの有効性が報告されている。しかしながら本薬剤は日本では認可されていない。外照射とストロンチウム 89の randomized controlled trial(RCT)によると,疼痛緩和効果については局所または半身照射した場合の効果とほぼ同じであったが,ストロンチウム 89 は局所照射と比較すると新たな骨転移による疼痛を有意に抑制した5,6))。

前立腺癌の骨転移巣は造骨性であることが多く骨代謝および骨吸収能は亢進している。ビスフォスフォネート製剤は破骨細胞の骨吸収能を抑制することにより疼痛の緩和や病的骨折の予防に役立つ。1 つの RCT ではビスフォスファネート製剤の静脈内投与により病的骨折等の合併症の発生頻度が有意に減少し,疼痛緩和にも有用であったと報告された7))。Systematic review によれば骨転移を有する前立腺癌では,診断された時点で本剤の投与を開始し継続して投与することにより,生存率には寄与しないが骨転移に関連する合併症の頻度を有意に減少するとしている。またビスフォスフォネート製剤は腸管から吸収されにくいため経口投与よりも静脈内投与の方が良いと報告されている8))。日本ではビスフォスフォネート経口剤は骨粗鬆症にしか適応がとれていないが,注射製剤は悪性腫瘍による高 Ca 血症に対して適応がある。

(3)脊髄麻痺

脊椎転移による脊髄麻痺に対する治療法としてはステロイド投与,放射線療法,手術療法があげられる。ステロイド投与は放射線あるいは手術の補助療法として用いられ,その効用は RCT にて検証されている9))。しかしながら無視できない副作用も認められており,大量あるいは常用量のステロイドを投与するかはいまだ議論の分かれるところである。放射線療法としては 30 Gy/10 fractions を照射することが多い。手術療法としては前立腺癌の脊椎転移による脊髄圧迫の場合,骨の脆弱性がないため椎弓切除術が主になる。放射線療法単独と椎弓切除術との RCT があるが有効率については有意差が認められなかった10))。

(4)局所症状

排尿困難を有している進行性前立腺癌患者に対する姑息的な意味での経尿道的前立腺切除術(TURP)に関しては,最近の報告によれば前立腺肥大症に対する TURP に比べ術後再度尿閉になったり再手術を必要とする頻度は高いものの症状の改善には十分役立っていたということであり,一考の余地はあるものと思われる11))。タンポナーデとなるような高度の血尿に対し姑息的な放射線療法が有効であったと報告されている12))。

(5)水腎症に対する対策

前立腺癌の進展に伴い尿路閉塞が出現する頻度は 3.3−16%と報告されており,尿路閉塞症状を伴わない前立腺癌に比較してその予後は有意に不良である13))。前立腺癌の腫大による下部尿路閉塞から水腎症をきたしている場合にはカテーテル留置あるいは前項であげた TURP が適応となる。前立腺癌が直接膀胱に浸潤することから尿管口の狭窄をきたす場合や,リンパ節転移による尿管の圧迫から水腎症をきたす場合には,尿管ステント,尿管皮膚瘻,経皮的腎瘻(percutaneous nephrostomy, PNS)が治療手段として考えられる。前立腺癌が初発でこれから内分泌療法を考慮している場合,一時的にせよ病状が好転することが期待できるため積極的な治療を試みるべきである。しかしながら,内分泌療法を含めた種々の治療法に対し抵抗性となった前立腺癌で,水腎症をきたした場合の予後は極めて不良であるため,PNS の造設に関しては慎重に考慮すべきである14))。尿管ステント,尿管皮膚瘻,PNS 等の治療手段の優劣を比較検討した RCT はないが,尿管ステントもしくは PNS が尿管皮膚瘻に比べ低侵襲である。特に超音波ガイド下の PNS 留置術は侵襲も少なく手技が簡便な上,長期にわたる留置も可能であるため第一選択として考えるべきである。尿管ステントは体内に留置するため患者の利便性は高いが悪性腫瘍による尿管閉塞では再狭窄をきたしやすい15))。


4.外科治療

1.外科治療のエビデンス

前立腺癌に対する外科治療を標準化するため,データのエビデンスの評価を試みたとき,特有の難しさがあることを認識することになる。これはなにも前立腺癌のみの問題ではなく,外科治療に関しては RCT が施行しにくく,NCI の前立腺癌ガイドラインでは外科治療の解析に関して,

  • *Age difference among the populations 年齢構成の違い
  • *Surgical expertise at the major reporting centers 主な施設における手術技術
  • *Selection factors 選択因子
  • *Publication bias of favorable series 都合のよい症例を公表するというバイアス
  • *Different methods of collecting information from patients 患者からの情報収集の方法の違い
により得られる結論が一定ではない(http://www.nci.nih.gov/cancertopics/pdq/treatment/prostate/healthprofessional),と記載している。

2.外科治療では EBM の確立は困難か?

外科治療に関しては RCT の欠如からエビデンスが得られないか,という点に関しては「科学的妥当性は劣るとしても無作為割付を行わない比較試験,施設単位の比較や同一施設内の過去の症例との比較,さらに症例登録と丁寧な追跡に基づくコホート研究などの観察的な疫学研究によっても多くの知見が明らかにされる」「ただ本当に外科領域で必要とされるエビデンスは,多施設共同無作為化試験でしか得られないのか,その一歩手前で,きちんとした症例登録に基づく観察研究によってどれだけの知見が得られるのか,十分検討される必要がある」とされている1)

3.前立腺癌の外科治療特有の問題

本邦で外科治療のエビデンスに基づくガイドラインを作成する際,果たして本邦の前立腺癌と欧米の前立腺癌が同等の性質を有しているか,という点も問題を複雑にしている。一般に日本人の前立腺癌に関しては,いわゆる臨床的に重要な癌(clinically sig-nificant cancer)の頻度2)(Ⅲ),あるいは潜在癌からの進展スピードは異なる3)(Ⅲ)とのデータがある。欧米で報告された内容をそのまま流用してよいかという点に関しても validation の検討が乏しいという状況にある。

4.外科治療のエンドポイントと PSA 再発

外科治療のデータを評価する上で,どうしても明らかにすべき点は PSA 再発は癌治療アウトカムのエンドポイントとして適切かという問題である。NCI の Physicians Data Query(PDQ)によると癌治療の Strength of Endpoint として

  • 1)Total mortality(or overall survival from a defined time).
  • 2)Cause−specific mortality(or cause−specific mortality from a defined time).
  • 3)Carefully assessed quality of life.
  • 4)Indirect surrogates.
    (1)Disease−free survival.
    (2)Progression−free survival.
    (3)Tumor response rate.
の順に強さがあるとされている(http://www.nci.nih.gov/cancertopics/pdq/levels-evidence-adult-treatment/HealthProfessional/page3)。外科治療の対象となる前立腺癌の予後は良好であり,癌治療の一般的なエンドポイントである生命予後(上記 1,2)がイベントになりにくい。このため前立腺癌に対する外科治療のアウトカム評価として,その多くが PSA 再発を代替のエンドポイント(surrogate endpoint)として使用されることは理解できる。しかし PSA 再発が本当に surrogate endpoint として適切かという点については high risk では妥当4)(Ⅳ)5)(Ⅲ)6)(Ⅳ)と考えられるが,low−intermediaterisk では PSA 再発をエンドポイントとして解析しても,生命予後に関係しないとの主張もある7−9)(Ⅲ)10)(Ⅳ)。また論文により PSA 再発の定義もまちまちである。つまり癌治療の surrogate endpoint としての PSA 再発の妥当性に関して,エビデンスが曖昧であると言わざる得ない。この点では摘除後に残存腫瘍の増殖スピードを表しているとされる PSA doubling time(PSADT)の方がより妥当なエンドポイントかもしれない6)(Ⅳ)7)(Ⅲ)

5.限局性前立腺癌に対する前立腺全摘除術の根治性

限局性前立腺癌に対する前立腺全摘除術は最も根治の可能性を有し11,12)(Ⅱ),現状の手術療法における morbidity,mortality 率を考慮すると,他の治療法と比較して手術療法を施行することで著しく生命予後が低下することはないと思われ,前立腺全摘除術の後にも放射線治療あるいは内分泌療法を併用できることが可能であることも相まって,長期生存を期待できる治療法と考えてよい。しかし Gleason スコア 2−4 の症例では,待期遅延内分泌療法と 10 年疾患特異的生存率で差が認められず11)(Ⅱ)13)(Ⅲ),近年の放射線治療の成績向上と相まって必ずしも手術療法によらなくても同等の成績を得られる可能性がある。手術療法は病態によっては不必要あるいは無駄な治療となる危険性を有しており,最終的に待期遅延内分泌療法,放射線治療と比較して優位であるとの断定的な結論はできない14)(Ⅱ)

6.前立腺全摘除術の適応条件

PSA 再発をきたしにくいという条件では PSA<10 ng/ml,Gleason スコア 7 以下,かつ T1c−T2b までが前立腺全摘除術の理想的な適応基準であると考えられる15−19) (Ⅲ)。この場合にはおおよそ 5 年 PSA 非再発率は 70−80%,10 年非再発率は 50−70%程度と考えてよい20−24)(Ⅲ)

一方,Gleason スコア 8 以上,あるいは PSA 20 ng/ml 以上,さらには T3 症例に対して,あるいは高齢者の局所前立腺癌を前立腺全摘除術の適応外とする理由は証明できない25−27)(Ⅲ)。もちろん,それらすべてが本治療の適応とはならないことは明確であるが,期待余命,QOL なども考慮し対応することが肝要である28)(Ⅳ)29)(Ⅲ)。これらの外科的治療にあたっては,合併症の程度を許容範囲内にするために十分な外科的技術が要求され,この手術における経験,慣れは治療成績,術後合併症,後遺症に関与している30)(Ⅱ)31)(Ⅲ)ことを考慮すると,広範な局所切除と外科的合併症のバランスを取ることのできる経験のある泌尿器科医が行うべきである32)(Ⅱ)と考えられる。

7.ネオアジュバント内分泌療法

3 カ月間のネオアジュバント内分泌療法を施行後,前立腺全摘除術を行うことにより,PSA 再発を指標とする治療成績が向上するか否かについては RCT により否定されており,33−35)(Ⅱ)推奨されない。しかし,内分泌療法の期間に関する検討は少なく,より長期のネオアジュバント内分泌療法ではどうか,あるいは単独治療で限界のある局所進行前立腺癌に適応することで生存率の向上が得られるかなどの問題がある。一例として,T3/T4 前立腺癌に対して生存率の改善が認められた SWOG スタディ36)(Ⅲ)などは関心が持たれる。

8.手術手技

現在,主に行われているのは恥骨後式前立腺全摘除術,会陰式前立腺全摘除術,腹腔鏡下前立腺全摘除術であるが,それぞれに短所があり37)(Ⅲ),どの方法が最も推奨されるかという点についてはエビデンスが確立していない。

断端陽性率に関しては恥骨後式では尖部に,会陰式では膀胱頸部に,腹腔鏡では側後方に断端陽性がみられることが多いとの報告がある38)(Ⅲ)。恥骨後式に特有の問題としては出血が多いこと,術後,鼠径ヘルニアの頻度が高いこと39,40)(Ⅲ),会陰式では直腸の合併症が特徴的である39−42)(Ⅲ)。腹腔鏡下前立腺全摘除術は経験が浅い段階では合併症を起こす頻度が比較的高い術式である43)(Ⅲ)44)(Ⅱ)45)(Ⅲ)と認識すべきであり,経験が必要と指摘されている46)(Ⅲ)

尿禁制は前立腺全摘除術における大きな問題ではあるが,恥骨前立腺靱帯あるいは膀胱頸部温存を推奨するエビデンスはなく,膀胱頸部温存は被膜浸潤陽性のような癌の場合には切除断端陽性の危険が指摘されている47)(Ⅲ)。大規模な予後調査では医療者側が思っているほど,尿禁制が良くないことが指摘されている48)(Ⅲ)

神経温存に関しては安全な適応基準は確立しておらず49)(Ⅳ),さらに性機能の温存に関してはメタアナリシス,コホート研究ともその機能が予想以上に温存されていない点を明らかにしている50)(Ⅰ)

リンパ節郭清に関しては日本人のノモグラムが確立されることで,郭清を省略できる症例が同定可能51)(Ⅲ)と期待される。「拡大郭清により予後が向上するか」という点に関しては,そもそも前立腺全摘除術の対象とされた症例の病態により結論が異なる可能性が高い。RCT ではあるが,low grade , low stage の症例が多かった研究では拡大郭清は意味がないとされている52)(Ⅱ)。一方,high risk の症例が多い研究では拡大リンパ節郭清術に意味があり,外腸骨・内腸骨・閉鎖リンパ節を郭清することが望ましいとしており53)(Ⅲ),結論は導けない。

9.術後経過観察・再発診断

術後 PSA 再発の基準について,EAU のガイドラインでは「PSA のカットオフ値は0.2 ng/ml より低くすべきではない」「PSA 再発症例に対して,より早期に補助療法を追加することにより有益な結果が得られるという証拠はない。したがって,超高感度PSA をルーチンのフォローに用いることの妥当性はない」としている。現状では補助療法を施行していない前立腺全摘除術後においては PSA 再発のカットオフは 0.2 ng/mlとすべきであるという意見が多く,現実的と思われる7,9,54)(Ⅲ)。しかし,何を判定するための PSA 再発かによりその解釈・定義が変わる可能性があることに注意しなければならない。この点は「4.外科治療のエンドポイントと PSA 再発」も参照されたい。

補助療法を施行していない状況では一般的には PSA 再発は再発の最初のイベントと解釈される。PSA が検出できないレベルで再発・転移が起こりうることが報告されているが,これは非常に稀で,未分化型の腫瘍にしか起こらないと考えてよい8,55)(Ⅲ)とされている。したがって PSA 再発が認められない場合には直腸診などの追加の検査は不要である8,55−57)(Ⅲ)。PSA 再発が認められた場合には直腸診,経直腸超音波などで異常が認められれば有用な情報が得られるが感度は低い58)(Ⅳ)59)(Ⅲ)。MRI に関しては比較的有用とされるが,ルーチン化する妥当性には疑問視する意見がある60)(Ⅳ)61)(Ⅲ)

10.再発後治療

術後補助療法の是非に関しては,補助療法により癌の悪性度が高まることがない限り,何らかの治療を加味すると予後の向上が期待できることは当然である。逆にそのような治療を受けなくとも予後には影響がなかった,つまり補助療法が不要な症例が存在するはずであり,このことに関する信頼できる試験が実施されていないことがその解釈を困難にする原因である。 前立腺全摘除術におけるリンパ節郭清の結果,リンパ節陽性であった場合には臨床的再発まで待って内分泌療法を施行することは,アジュバント療法に比して有意に予後を悪化させることが RCT で報告されている62)(Ⅱ)。PSA 再発を開始時点とする内分泌療法とアジュバント療法との RCT によるエビデンスはない。

pT3(−4)N0 M0 症例に対するアジュバント放射線治療は,PSA 再発のリスクを下げる可能性がある63−65)(Ⅲ)。pT3 N0 M0 症例のなかでアジュバント放射線治療の適応に疑問のある病態としては Gleason スコア 7−10 かつ pT3b 症例,あるいは術前 PSA高値(25 ng/ml 以上)であったと報告されている66)(Ⅲ)。また切除断端陽性症例に対するアジュバント放射線治療に関しては Gleason スコア≧8 かつ術前 PSA>10.9 ng/mlでは,放射線療法を行っても再発リスクが高いと報告されている67)(Ⅲ)

放射線治療をアジュバントとして行うか,PSA 再発後に救済治療として実施するかについては,アジュバントが良いとする報告68)(Ⅲ)と,PSA 再発まで待っても結果は同等とする報告69)(Ⅱ)があり,結論は一定していない。

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CQ 1  
前立腺全摘除術において PSA 再発を治療成績のエンドポイントの一つとすべきである。
推奨グレー ド Ⓒ

外科治療において PSA 再発を治療成績のエンドポイントとする論文が多いが,かならずしも適切なエンドポイントに相当しない病態もある。最近の論調ではむしろ PSA 倍加時間(PSADT)が重要との指摘もある。

【背景・目的】

外科治療の治療成績は,PSA 再発を surrogate endpoint として多くのデータで解析されているが,strength of endpoint としては NCI PDQ のなかの第 4の強さしかもたない disease−free survival の surrogate endpoint かもしれない(「4.外科治療のエンドポイントと PSA 再発」参照)。

術後 PSA 値そのものは腫瘍の悪性度を必ず反映しているか,ガイドラインの作成のために,まずこの点を検討した。

【解 説】

前立腺全摘除術により癌が根治していると術後 3 週以内に PSA は検出限界以下になるはずであり1)(Ⅲ),この場合には治療効果の判定は容易である。しかし問題は測定限界以下にならない病態が本当に治療の不成功と判断すべきか,あるいは不成功になったとしても果たして生命予後に関与するかというところである。前立腺全摘除術後に PSA 値が 0.1 から 0.2 の間の患者で,何ら臨床的再発やそれ以上のPSA 値の上昇が認められないことがあることが示されている2)(Ⅲ)。また術後に PSA値が高値または上昇している患者の大部分は,かなりの期間,臨床症状を発症しない3)(Ⅲ)。平均 5.3 年追跡調査された約 2000 例の前立腺全摘除術症例の検討によると生化学的再発から臨床的転移の発現までの平均期間は 8 年であった。また転移をきたしてから死亡までの平均期間は 5 年間であったと報告されており4)(Ⅲ),手術後の PSA上昇は必ずしもすべてが癌再発ではないとする主張もある5)(Ⅳ)

実際,PSA 再発をきたした症例で,前立腺癌再発が死亡原因になりうるかという点に関しては,PSADT が 3 カ月未満なら,癌死と関連があり,PSA 再発は surrogate endpoint となるとしている6)(Ⅲ)7)(Ⅳ)8)(Ⅲ)。つまり PSA 再発は surrogate endpointとなりうるが,その場合は腫瘍の悪性度が高い場合に,という解釈になる。そもそも予後は腫瘍そのものの悪性度に起因するわけであるから,悪性度を反映する指標としては Gleason スコアなどの腫瘍本体の悪性度と癌細胞の増殖に関連すると想定されるPSADT などの因子により予想することが妥当であろう。

PSA 再発をきたした場合,患者にとっては大きな関心事となりその点では patientsoriented outcome と言えるかもしれない。しかし PSA 再発の病態の幅は広く,悪性度の低い状況ではエンドポイントとならない可能性を認識することが必要と思われる。

【参考文献】

1)Stamey TA, Kabalin JN, McNeal JE, et al. Prostate specific antigen in the diagnosis and treatment of adenocarcinoma of the prostate. Ⅱ. Radical prostatectomy treated patients. J Urol. 1989; 141(5): 1076−83.

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8)Iselin CE, Robertson JE, Paulson DF. Radical perineal prostatectomy: oncological outcome during a 20−year period. J Urol. 1999; 161(1): 163−8.


CQ 2  
限局性前立腺癌に対する前立腺全摘除術は最も根治の可能性が高く,長期予後が期待できる治療法である。
推奨グレー ド Ⓑ

完全に切除できれば,根治できる可能性を最も秘めた治療法である。また完全切除できなくても前立腺全摘除術後に放射線治療あるいは内分泌療法を追加でき予後が最も期待できる治療の一つである。

【背景・目的】

多くの専門家は,前立腺全摘除術が早期癌の局所根治を得るための第 1 選択の治療法であると考えている1)(Ⅱ)。完全に切除できれば根治が可能であることは当然である。前立腺全摘除術が生存率を高く保障できる治療法の一つであることに疑念はない2)(Ⅲ)3)(Ⅱ)4−6)(Ⅲ)。しかし他の治療法でも同様の根治性と生存率が期待できることが想定され,この点を検討した。

【解 説】

臨床的限局性前立腺癌において前立腺全摘除術,根治的放射線治療,待期遅延内分泌療法の 3 種類の主要な治療方法を比較する目的で,いろいろな研究が行われているが,それぞれ評価法,評価時期,症例選択のバイアスなどの関係で結果はまちまちであり一概に結論できない7)(Ⅱ)8)(Ⅳ)。治療法の差を解析するためのよくデザインされた臨床試験が何よりも必要である。

待期遅延内分泌療法との関連では,大規模なデータベースによる後ろ向き分析により,Gleason スコアが 2−4 である癌の待期遅延内分泌療法における 10 年疾患特異的生存率は 94%,Gleason スコアが 5−7 である癌では 75%であると報告された9)(Ⅲ)。これは約 6 万人の population based study の結果とほぼ同等であった1)(Ⅱ)。臨床病期 T1b,T1c,T2,75 歳以下,期待余命 10 年以上,高分化から中分化腺癌を選択基準にした前立腺全摘除術と待期遅延内分泌療法を比較した無作為化試験では,全死亡率では認められなかったが,前立腺癌特異的死亡率において統計学的有意差が認められ,追跡調査期間の中央値である 6.2 年後には前立腺摘除術が優位であった10)(Ⅱ)。現在米国で前立腺全摘除術と待期遅延内分泌療法を比較する無作為化試験(PIVOT:Prostate Inter-vention Versus Observation Trial)が進行中である。PIVOT では粗死亡率を主要エンドポイントとしているが,結果は報告されていない11)(不明)

根治的放射線治療との比較では PSA 再発の定義が同等でなく,また近年 dose esca-lation により放射線治療の成績が向上しており12)(Ⅲ),過去の成績の比較もあまり参考にならない。本邦で施行された B2−CN0 M0 症例に対する無作為化試験の結果13)(Ⅱ),手術療法に 10%の survival benefit があるとされたが,放射線治療は 64 Gy 程度で施行されており,このような条件では手術療法が有利であるという結果にすぎない。

このような現状では治療選択に関して,治療後の副作用,後遺症についても十分考慮する必要がある。限局性前立腺癌における前立腺全摘除術と待期遅延内分泌療法との比較で合併症および QOL,精神面に関しては両群間に合併症の差を認めたが,QOLや精神面では特に差は認めなかったとされている14)(Ⅱ)。前立腺全摘除術と放射線治療との比較では,治療後の QOL に差はないが各治療に特有の合併症がある15)(Ⅲ)。尿失禁と勃起障害は有意に前立腺全摘除術群で高く,消化器症状は放射線療法群で有意に高いとされている16)(Ⅲ)。特に dose escalation による放射線治療では晩期有害反応の懸念があり,局所前立腺癌の予後が良好であることを考えると,若年者に適応する場合には治療に伴う安全性に関してエビデンスがまだ確立していないことを考慮する必要がある。前立腺全摘除術後の性機能については近年の長期観察では,機能が温存されていないことを指摘する報告が散見されてきている。両側の神経血管束を温存した場合でも 56.0%が ED となっており17)(Ⅲ),大多数は,性機能が保持されておらず,何らかの術後サポートが必要との指摘がある18)(Ⅲ)

現状では手術療法は長期生存が期待できる治療法の一つである。少なくとも手術療法を施行することで,現在の手術療法における morbidity,mortality 率を考慮すると,他の治療法と比較して著しく生命予後が低下することはないと思われる。前立腺全摘除術後にも放射線,あるいは内分泌療法を施行することが可能であり,その意味では他の治療法と比較すると長期生存が最も期待できる治療法ではあるが,不必要あるいは無駄な治療におわる危険性があり,最終的には待期遅延内分泌療法,放射線治療と比較して,その優位性に関して断定的な結論はできない10)(Ⅱ)

補足

臨床病期 T1b,T1c,T2 において前立腺全摘除術と待期遅延内分泌療法を比較した無作為化試験10)に関しては N Engl J Med 352. 19 1977−84, 2005 に 10 年での結果が発表されており(Ⅱ),前立腺全摘除術は待期遅延内分泌療法と比較して疾患特異生存率,全生存率とも優れており,転移あるいは局所進行の危険を回避することができる治療法であると結論づけている(Bill−Axelson, Anna;Holmberg, Lars;Ruutu, Mirja;Haggman,Michael;Andersson, Swen−Olof;Bratell, Stefan;Spangberg, Anders;Busch, Christer;Nordling,Stig;Garmo, Hans;Palmgren, Juni;Adami, Hans−Olov;Norlen, Bo Johan;Johansson, Jan−Erik.Radical Prostatectomy versus Watchful Waiting in Early Prostate Cancer. N Engl J Med. 352(19):1977−84, May 12, 2005.)。

【参考文献】

1)Lu−Yao GL, Yao SL. Population−based study of long−term survival in patients with clinically localised prostate cancer. Lancet. 1997; 349 (9056): 906−10.

2)Elgamal AA, Van Poppel HP, Van de Voorde WM, et al. Impalpable invisible stage T1c prostate cancer: characteristics and clinical relevance in 100 radical prostatectomy specimens ― a different view. J Urol. 1997; 157(1): 244−50.

3)Graversen PH, Nielsen KT, Gasser TC, et al. Radical prostatectomy versus expectant primary treatment in stagesⅠ and Ⅱ prostatic cancer. A fifteen−year follow−up. Urology. 1990; 36(6): 493−8.

4)Gibbons RP. Total prostatectomy for clinically localized prostate cancer: long−term surgical results and current morbidity. NCI Monogr. 1988 (7): 123−6.

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11)Wilt TJ, Brawer M. The Prostate Cancer Intervention Versus Observation Trial(PIVOT). Oncology(Huntington). 1997; 11(8): 1133−9.

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13)Akakura K, Isaka S, Akimoto S, et al. Long−term results of a randomized trial for the treatment of Stages B2 and C prostate cancer: radical prostatectomy versus external beam radiation therapy with a common endocrine therapy in both modalities. Urology. 1999; 54(2): 313−8.

14)Steineck G, Helgesen F, Adolfsson J, et al. Quality of life after radical prostatectomy or watchful waiting. N Engl J Med. 2002 12; 347(11): 790−6.

15)Davis JW, Kuban DA, Lynch DF, et al. Quality of life after treatment for localized prostate cancer: differences based on treatment modality. J Urol. 2001; 166(3): 947−52.

16)Madalinska JB, Essink−Bot ML, de Koning HJ, et al. Health−related quality−of−life effects of radical prostatectomy and primary radiotherapy for screen−detected or clinically diagnosed localized prostate cancer. J Clin Oncol. 2001 15; 19(6): 1619−28.

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18)Schover LR, Fouladi RT, Warneke CL, et al. Defining sexual outcomes after treatment for localized prostate carcinoma. Cancer. 2002 15; 95 (8): 1773−85.


CQ 3  
前立腺全摘除術において PSA 再発をきたしにくいという条件では PSA<10 ng/ml,Gleason スコア 7 以下,T1c−T2bが推奨される。
推奨グレー ド Ⓑ

米国を中心に膨大なデータが発表されており,上記の様な条件を有する前立腺癌は前立腺全摘除術において PSA 再発をきたしにくい予後因子として理解されている。

【背景・目的】

前立腺全摘除術後,PSA 再発は外科治療が不成功におわったらしいという証拠にはなるが,そのことが最終的な生存予後と直接関係するかどうかに議論があることはすでに解説した。逆に PSA 再発をきたさない場合には外科治療が成功という証拠になりうるため,PSA 再発をきたさないための予後因子が解析されている。

【解 説】

大規模な症例数による PSA 再発のデータを以下にまとめた。ただし PSA 再発の定義は様々である。これらの結果はすべてエビデンスのレベルは1−5)(Ⅲ)である。おおよそ 5 年 PSA 非再発率は 70−80%,10 年 PSA 非再発率は 50−70%程度と理解できる。

報告 症例数 対象症例条件 平均観察期間(月) 5 年 PSA
非再発率
10 年 PSA
非再発率
Catalona et al, 19941) 925 T1−2 28 78 65
Trapasso et al. 19942) 601 T1−2 34 69 47
Zinke et al, 19943) 3170 T1−2 60 70 52
Han et al, 20014) 2404 T1−3 75 84 74
Hull et al. 20025) 1000 T1−2 53 75

以上の大規模な症例報告の解析などから,PSA<10 ng/dl,Gleason スコア 7 以下,T1c−T2b が前立腺全摘除術の推奨される病態とされている。

EUA のガイドラインによると「T1c 癌に対しては,そのほとんどは臨床的に意義のある癌である」ことが強調されており,「無治療で放置すべきではない」としている。T1c癌の 30%は局所進行癌であり,このような状況から一般的には,T1c の症例に対しては前立腺全摘除術を勧めるべきと考えられる6−8)(Ⅲ)。一方,T2 癌で期待生存期間が10 年を超えるような症例に対する前立腺全摘除術は推奨できる標準的な治療の 1 つであり,病理学的にも癌が前立腺内に限局しており,切除断端が陰性であれば,PSA 非再発率は良好である9,10)(Ⅲ)。低分化癌の多くは前立腺外に進展している危険があり適応には注意を要するが,前立腺内に限局している場合には低分化癌でも PSA 非再発率は良好である11,12)(Ⅲ)としている。

手術の適応の是非に関して,癌が前立腺の被膜内にとどまっているかどうかの判断が重要であるが,臨床病期診断については,ある程度の頻度で understaging, overstagingが起こりうる12)(Ⅲ)。または Gleason スコアは癌の進行に大きな影響を持つが11)(Ⅲ),生検標本と摘出標本との間で常に信頼できる相関があるというわけではない。

いずれにしても前立腺全摘除術において PSA 再発をきたしにくい条件として PSA<10 ng/ml Gleason スコア 7 以下,T1c−T2b を適応とすることがよいとする主張は理解できる。

【参考文献】

1)Catalona WJ, Smith DS. 5−year tumor recurrence rates after anatomical radical retropubic prostatectomy for prostate cancer. J Urol. 1994; 152: 1837−42.

2)Trapasso JG, deKernion JB, Smith RB, et al. The incidence and significance of detectable levels of serum prostate specific antigen after radical prostatectomy. J Urol. 1994; 152: 1821−5.

3)Zincke H, Oesterling JE, Blute ML. Long−term (15 years)results after radical prostatectomy for clinically localized(stage T2c or lower)prostate cancer. J Urol. 1994; 152: 1850−7.

4)Han M, Partin AW, Pound CR, et al. Long−term biochemical disease−free and cancer−specific survival following anatomic radical retropubic prostatectomy. The 15−year Johns Hopkins experience. Urol Clin North Am. 2001; 28(3): 555−65.

5)Hull GW, Rabbani F, Abbas F, et al. Cancer control with radical prostatectomy alone in 1,000 consecutive patients. J Urol. 2002; 167: 528−34.

6)Elgamal AA, Van Poppel HP, Van de Voorde WM, et al. Impalpable invisible stage T1c prostate cancer: characteristics and clinical relevance in 100 radical prostatectomy specimens ― a different view. J Urol. 1997; 157(1): 244−50.

7)Oesterling JE, Suman VJ, Zincke H, et al. PSA−detected(clinical stage T1c or B0)prostate cancer. Pathologically significant tumors. Urol Clin North Am. 1993; 20(4): 687−93.

8)Epstein JI, Walsh PC, Brendler CB. Radical prostatectomy for impalpable prostate cancer: the Johns Hopkins experience with tumors found on transurethral resection(stages T1A and T1B)and on needle biopsy(stage T1C). J Urol. 1994; 152: 1721−9.

9)Gibbons RP. Total prostatectomy for clinically localized prostate cancer: long−term surgical results and current morbidity. NCI Monogr. 1988; (7): 123−6.

10)Pound CR, Partin AW, Epstein JI, Walsh PC. Prostate−specific antigen after anatomic radical retropubic prostatectomy. Patterns of recurrence and cancer control. Urol Clin North Am. 1997; 24(2): 395−406.

11)Ohori M, Goad JR, Wheeler TM, et al. Can radical prostatectomy alter the progression of poorly differentiated prostate cancer? J Urol. 1994; 152: 1843−9.

12)Lerner SE, Blute ML, Zincke H. Extended experience with radical prostatectomy for clinical stage T3 prostate cancer: outcome and contemporary morbidity. J Urol. 1995; 154(4): 1447−52.


CQ 4  
Gleason スコア 8 以上あるいは PSA 20 ng/ml 以上に対する症例に対しても前立腺全摘除術の適応がある。
推奨グレー ド Ⓑ

Gleason スコア 8 以上あるいは PSA 20 ng/ml 以上という理由で前立腺全摘除術による根治の可能性がないと判断するべきでない。

【背景・目的】

National Comprehensive Cancer Network のガイドラインによると(http://www.nccn.org/professionals/physician_gls/default.asp)切除標本により pT3 以上,pN positive,Gleason スコア 8 以上において癌はすでに広がっており,根治は望めないとされており,生命予後にかかわらず局所治療単独による利益はないと記載されている。この点を検討した。

【解 説】

現在,PSA 再発をきたしにくい前立腺癌を前立腺全摘除術の適応とすべきであるとの主張が優勢であることは周知の事実である。具体的には low Gleason,low PSA,low tumor volume などの条件を満たす場合が良いとされている。しかしこのような症例に対しては待期遅延内分泌療法も含めて他の治療法によっても十分,良好な予後が期待できることも事実であり,この点がジレンマとなっている。腫瘍外科の観点からは,むしろ手術療法によってのみ根治の可能性がある病態が本来の適応となるのではという考え方もあり得ると思われる。

前立腺全摘除術の適応と考えられた 1000 例の T1−T2 症例の解析では 75%で前立腺全摘除術により,長期に癌がコントロールされており,Gleason スコア 8−10,PSA が20 ng/ml 以上を含む,ハイリスク癌の大多数でも良好な成績であった1)(Ⅲ)と逆説的な報告があり,他にも同様の報告もある2)(Ⅲ)。さらに危険因子が存在しても切除が完全であれば前立腺全摘除術により高い非再発率が示されている3)(Ⅲ)

また最終的な生命予後に関しても,病理学的に限局した症例では,Gleason スコア 8以上でも前立腺全摘除術によって 10 年の疾患特異生存率は 96%と報告されている4)(Ⅲ)。また合併症のない,あるいは軽い患者では,Gleason スコア(低くても高くても)あるいは,年齢にかかわらず外科治療における最終的な死亡率は同じであったという報告もある5)(Ⅲ)

したがって Gleason スコア 8 以上あるいは PSA 20 ng/dl 以上のすべてを前立腺全摘除術の禁忌とする理由はなく,予後因子を考慮して症例を選択すればよい6)(Ⅲ)という主張はもっともであると判断されるが,当然 PSA 再発をきたしやすく,次の T3 前立腺癌に対する適応の項目でも記載したように,この病態に対する外科治療にあたっては合併症の程度を許容範囲内にするために十分な外科的技術が要求され,局所切除と外科的合併症のバランスを取ることのできる経験のある泌尿器科医が行うべきであると考えられる。

【参考文献】

1)Hull GW, Rabbani F, Abbas F, et al. Cancer control with radical prostatectomy alone in 1,000 consecutive patients. J Urol. 2002; 167: 528−34.

2)Brandli DW, Koch MO, Foster RS, et al. Biochemical disease−free survival in patients with a high prostate−specific antigen level(20−100 ng/mL)and clinically localized prostate cancer after radical prostatectomy. BJU Int. 2003; 92(1): 19−22.

3)Mian BM, Troncoso P, Okihara K, et al. Outcome of patients with 8 or higher prostate cancer following radical prostatectomy alone. J Urol. 2002; 167(4): 1675−80.

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6)Manoharan M, Bird VG, Kim SS, et al. Outcome after radical prostatectomy with a pretreatment prostate biopsy Gleason score of >/=8. BJU Int. 2003; 92(6): 539−44.


CQ 5  
T3(stage C)前立腺癌に対して前立腺全摘除術の適応がある。
推奨グレー ド Ⓒ

T3 前立腺癌に対する前立腺全摘除術は PSA 再発をきたしやすいが生存率,QOL などの観点からこれを禁忌とする理由はない。しかし単独治療の効果には限界もある。

【背景・目的】

前立腺癌の最も良い適応は T1c−T2 であることが一般となっているが,ハイリスク群に対する問題点は前の項目で概説した。同様に T3 前立腺癌に対して同様の疑問がある。この点を検討した。

【解 説】

T3 癌を前立腺全摘除術の適応とすべきかどうかに関しては疑問視されている。T3 癌症例の治療結果についての報告は少ない1−6)(Ⅲ)。前立腺内に限局した癌と比較すると,局所再発の危険も高いとされている。T3 癌に対する前立腺全摘除術の効果に限界があるのは7)(Ⅳ),リンパ節転移の頻度が増加すること,局所再発あるいは遠隔転移の出現がその主な理由である8)(Ⅳ)。このため T3 癌に対しては内分泌療法と放射線療法の併用が一般的になってきている7,8)(Ⅳ)が,この病期に対する治療法を比較した十分なエビデンスはない。

まずこの病態で問題になるのが病期診断の正しさである。多くの研究は臨床病期 T3癌の約 15%が overstaging されているとしている(cT3,pT2)。一方,understaging は約 10%であると報告されている(cT3,pT4)2)(Ⅲ)。Overstage された症例の経過は良好であり,cT3 の中にも治癒の可能性がある症例が存在することを認識すべきであろう。

前立腺全摘除術は PSA が 25 ng/ml 未満の臨床病期 T3a 症例に対する治療のオプションの 1 つであるという報告がある5)(Ⅲ)。別の報告では臨床病期 T3 症例では,治癒可能な症例もあるが,術前にリンパ節転移や精嚢浸潤のある症例を除外することが重要であり,精嚢浸潤をきたした pT3b 癌の多くは早期に進行する危険性がある6)(Ⅲ)としている。

この病期の前立腺癌は癌死の危険性を有しており,生存率がエンドポイントとなるとともに,治療法の選択によっては大きく QOL が低下する危険性もある病態である。この病期に対する前立腺全摘除術は,生存率の改善がなければ意味がないかという点に関して,たとえ PSA 再発をきたしたとしても,遠隔転移のリスクを下げ,内分泌療法による QOL 低下や医療費経済面での負担を軽減する恩恵9)(Ⅳ),あるいは局所の尿路閉塞症状,出血タンポナーデなどに対する治療の点でも有益であるという主張もある10)(Ⅲ)

T3 症例の中にも,前立腺全摘除術のみで治癒が期待できる症例があることから,すべての臨床病期 T3 症例に対しこの治療を拒否することはできない。すでに前項目で記述したように,臨床病期 T3 に対する外科的治療にあたっては,合併症の程度を許容範囲内にするために十分な外科的技術が要求される。多数例の手術経験により,臨床病期 T3 に対する手術の合併症が軽減させられることから,広範な局所切除と外科的合併症のバランスを取ることのできる,経験のある泌尿器科医が行うべきであると考えられる11)(Ⅱ)。

【参考文献】

1)van den Ouden D, Davidson PJ, Hop W, et al. Radical prostatectomy as a monotherapy for locally advanced(stage T3)prostate cancer. J Urol. 1994; 151(3): 646−51.

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CQ 6  
高齢者の前立腺癌に対して前立腺全摘除術の適応がある。
推奨グレー ド Ⓒ

高齢者でも期待余命,病態により考慮すべきであり,年齢のみから適応を考慮すべきではない。

【背景・目的】

現在,多くの泌尿器科医は手術療法を適応する際に生存率,期待余命との関係から年齢も考慮に入れて選択している。これは正しい選択であるかを検討した。

【解 説】

生存率,期待余命との関係から,前立腺全摘除術は治癒の確率が高く,この治療から利益を受けると想定される期待生存期間が長い症例に対して行われるべきであるとされている。一般的には期待余命 10 年以上の,健康状態の良い患者が適応とされる1−3)(Ⅲ)。だが実際の手術適応に当たっては,前立腺全摘除術に年齢の制限はなく,年齢のみをもとに手術適応の可能性を否定すべきではない2)(Ⅲ)。65 歳以上の限局性前立腺癌の成績を有する論文を対象とした系統的な文献のレビュー4)(Ⅲ)では,High grade cancer の場合,年齢は考慮せず何らかの積極的な治療がなされるべきであるとの意見もあり,年齢のみにとどまらず,健康状態,期待余命,腫瘍の悪性度なども考慮して対応すればよいと思われる。

【参考文献】

1)Catalona WJ, Bigg SW. Nerve−sparing radical prostatectomy: evaluation of results after 250 patients. J Urol. 1990; 143(3): 538−43; discussion 544.

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CQ 7  
前立腺全摘除術において病態の判断のため米国で発表されたノモグラムを適応すべきである。
推奨グレー ド Ⓓ

米国で発表されたノモグラムについては本邦での validation の検討がなされておらず,現状では,そのまま使用することは危険である。

【背景・目的】

現在の前立腺癌の病期診断においては,米国を中心に病期あるいは治療成績予想のノモグラムが提唱,使用され,その有用性が示されているが,それをそのまま本邦で利用してよいか検討した。

【解 説】

現在の前立腺癌の病期診断は画像所見,触診所見から想定されるわけであるが,信頼性が乏しい1)(Ⅲ)ことは周知の事実である。または Gleason スコアは癌の進行に大きな影響を持つが2)(Ⅲ),生検標本と摘出標本との間で常に信頼できる相関があるというわけではない。

このため米国から膨大なデータに基づくノモグラム3)(Ⅱ)4)(Ⅲ)あるいはニューラルネットワーク5)(Ⅲ)による病期予想について,その有用性が報告されている。病期予想にとどまらず,前立腺全摘除術における PSA 再発のリスクを評価するノモグラム6−8)(Ⅲ)も作成・検証されており,臨床上,非常に有用と考えられる。膨大なデータから作成されているが,前立腺全摘除術が施行された症例群での解析であり,ノモグラムを適応する際には対象とする症例群のバイアスに対する注意が必要とされてきている9)(Ⅲ)

本邦の前立腺癌症例にそのまま適応できるかどうかについては,その validation が検討されておらず,また罹患率,腫瘍の悪性度が欧米と異なる可能性が指摘されており10,11)(Ⅲ),現状ではそのまま本邦で使用することは危険である。本邦の前立腺癌症例にも同様のノモグラム作成の可能性が指摘されており12)(Ⅲ),日本人のノモグラムの完成が待たれる。

【参考文献】

1)Epstein JI, Steinberg GD. The significance of low−grade prostate cancer on needle biopsy. A radical prostatectomy study of tumor grade , volume, and stage of the biopsied and multifocal tumor. Cancer. 1990; 66(9): 1927−32.

2)Ohori M, Goad JR, Wheeler TM, et al. Can radical prostatectomy alter the progression of poorly differentiated prostate cancer? J Urol. 1994; 152 (5 Pt 2): 1843−9.

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CQ 8  
前立腺全摘除術は症例数の多い施設で受けるべきである。
推奨グレー ド Ⓑ

単純に数の問題だけではないが,この手術はある程度の経験と熟練を要する手術である。

【背景・目的】

前立腺全摘除術は解剖学的に境界がはっきりしない尿道と前立腺を離断する必要がある手術法であり,また狭い骨盤内で出血しやすい静脈叢の処理が必要である。かねてからこの技術的な問題と症例数との関係が指摘されており,この点を検証した。

【解 説】

前立腺全摘除術の症例数と合併症,治療成績の関係が指摘されている。1993 年の報告ではあるが,症例の少ない施設では,多くの症例を手術する施設に比較して,入院が長期であり,かつ合併症は患者の年齢が高いほど多くなり,75 歳以上で顕著であったと報告された1)(Ⅱ)。経験を積んだ泌尿器科医の管理下で手術が施行され,手術件数が多い病院では術後合併症が少なく,在院日数が短く,低コストになり医療費の削減につながると指摘している2,3)(Ⅲ)

根治性との関連では,たとえば「術者」は切除断端陽性を規定する因子となり得るか? という疑問に対して Memorial Sloan−Kettering Cancer Center での 4600 症例の分析では,術者の手術手技は,これを規定する因子の一つであるとの結論を導いている4)(Ⅲ)。同様の傾向は腹腔鏡下手術における Senior surgeon,Junior surgeon の間でも同様の傾向が認められているが5)(Ⅲ),腹腔鏡の場合にはモニタリングやビデオレビューにより改善の可能性が指摘されている。

したがってこの手術における経験,慣れは治療成績,術後合併症,後遺症に関与しているといわざるを得ない。この手術を実施するすべての泌尿器科医は技術を高める努力をすべきであると考えられる。

【参考文献】

1)Lu−Yao GL, McLerran D, Wasson J, et al. An assessment of radical prostatectomy. Time trends, geographic variation, and outcomes. The Prostate Patient Outcomes Research Team. JAMA. 1993; 269(20): 2633−6.

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CQ 9  
局所前立腺癌に対して 3 カ月間ネオアジュバント内分泌療法を施行すべきである。
推奨グレー ド Ⓓ

治療成績の向上を期待して 3 カ月程度のネオアジュバント内分泌療法を施行することは効果が期待できず実施すべきでない。

推奨グレー ド Ⓒ

3 カ月以上のネオアジュバント内分泌療法施行の是非に関するエビデンスはない。他のモダリティと比較して生存率に貢献する可能性はあるかもしれない。

【背景・目的】

局所前立腺癌の診断ではどうしても understaging が起こりうる。ネオアジュバント内分泌療法(NHT)により down staging が起こることにより,治療成績の向上が期待されたが,3 カ月程度のネオアジュバント内分泌療法による治療効果はどうか,また長期観察による最終的な予後の向上が認められるか? この点に関して検証した。

【解 説】

臨床病期 T1 から T3 を対象とした無作為化した NHT に関する前向き研究で,十分な症例数を対象とした研究の成績として,その多くが切除断端陽性率を低下させ,downstage が得られる,しかし手術時間,出血に関しては優位差がないと報告された1−3)(Ⅱ)4)(不明)5)(Ⅱ)

報告者 症例数 病期 治療内容 断端陽性率:NHT vs
control
他の病理結果:NHT vs
control
Labrie 1994 161 B−C LHRHa+Antiandrogen 3 カ月 7.8% vs 33.8%
(p<0.01)
downstage 率
50.0% vs 21.1%
Van Poppel 1995 130 T2b−T3 Estramustine 6 週間 T2:27.3% vs 43.3%
T3 66.6% vs 33.3%
 
Soloway 1995 303 T2b LHRHa+Antiandrogen 3 カ月 18% vs 48%(p<0.001) 被膜外浸潤率
47% vs 78%,p<0.001
Hugosson 1996 126 T1b−T3a LHRHa 3 カ月+
CPA 3 週間
23% vs 41%(p=0.013)  
Goldenberg 1996 213 T1b−T2c CPA 3 カ月 27.7% vs 64.8%
(p=0.001)
限局性癌である率
41.6% vs 19.8%

上記の試験に対するメタアナリシスでも NHT は切除断端陽性率を低下させ,down-stage が得られることが確認されている6)(Ⅰ)

NHT による良好な病理結果が得られることが確認され,この治療により治療成績の向上が期待された。文献 3−5)の研究に関しては 5 年以上の長期観察が施行され,その結果が報告されている。しかし,いずれの研究も最終的な PSA 再発率の低下にはつながっていないことが確認されている7−9)(Ⅱ)

本邦からの報告でも同様の結論となっており10)(Ⅲ)少なくとも 3 カ月の NHT は施行する意味はない。ただし現在まで,生存率に関するデータは得られていない11)(Ⅳ)

報告者 前述の研究との関係 PSA 非再発率 NHT vs control
Soloway 20027) 文献 3)の 5 年経過観察の結果 64.8% vs 67.6%(p=0.663)
Aus G 20028) 文献 4)の 7 年経過観察の結果 51.5% vs 49.8%(p=0.588)
Klotz 20039) 文献 5)の 6 年経過観察の結果 62.5.% vs 66.4%(p=0.732)

ネオアジュバント内分泌療法の期間の違いにより治療効果が異なる可能性があるが,その点に関しては十分検討されていない。この点ではカナダで施行された 3 カ月と 8カ月のネオアジュバント内分泌療法による無作為化試験12)(Ⅱ)の結果を待つ必要がある。このスタディのコンセプトとして 3 カ月の NHT は不十分であり,4 カ月以上の内分泌療法が必要であるとして 8 カ月との比較をしている点が注目される。また NHT 期間が長い方が,PSA 再発を減らす傾向にあるという報告もあり13)(Ⅲ),治療期間に対するエビデンスが確立していない。

またそもそも本治療を外科治療単独では限界があると考えられる局所進行癌(T3/T4)に適応し,生存率の改善が期待できるかどうかという癌治療本来の目的に関してはどうであろうか? SWOG9109 試験で NHT 施行後,手術を施行した症例の生存率ではT3 症例の放射線治療グループより良好な成績であったことが報告されており,PSA 再発ではなく,癌治療のエンドポイントである生存率の向上について可能性を示した点は注目に値すると考えられる14)(Ⅲ)

したがって局所進行癌に対する NHT に関しては単に PSA 再発の有無のみではなく,治療による生存率の向上が,単独治療あるいは,他のモダリティーと比較して得られるのかという視点も必要ではと思われる。

【参考文献】

1)Labrie F, Cusan L, Gomez J−L, et al. Down−staging of early stage prostate cancer before radical prostatectomy: the first randomized trial of neoadjuvant combination therapy with flutamide and a luteinizing hormone−releasing hormone agonist. Urology Symposium. 1994; 44(6A): 29−37.

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5)Goldenberg SL, Klotz LH, Srigley J, et al. Randomized, prospective, controlled study comparing radical prostatectomy alone and neoadjuvant androgen withdrawal in the treatment of localized prostate cancer. Canadian Urologic Oncology Group . J Urol. 156(3): 873−7, 1996.

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10)Hara I, Miyake H, Hara S, et al. Long−term results of neoadjuvant hormonal therapy prior to radical prostatectomy in patients with clinically localized prostate cancer: biochemical and pathological effects. 泌尿器紀要. 2001; 47(7): 453−8.

11)Gomella LG, Zeltser I, Valicenti RK. Use of neoadjuvant and adjuvant therapy to prevent or delay recurrence of prostate cancer in patients undergoing surgical treatment for prostate cancer. Urology. 2003 29; 62 Suppl 1: 46−54.

12)Gleave ME, Goldenberg SL, Chin JL, et al. Randomized comparative study of 3 versus 8−month neoadjuvant hormonal therapy before radical prostatectomy: biochemical and pathological effects. J Urol. 2001; 166(2): 500−6.

13)Meyer F, Moore L, Bairati I, et al. Neoadjuvant hormonal therapy before radical prostatectomy and risk of prostate specific antigen failure. J Urol. 1999; 162(6): 2024−8.

14)Powell IJ, Tangen CM, Miller GJ, et al. Neoadjuvant therapy before radical prostatectomy for clinical T3/T4 carcinoma of the prostate: 5−year followup, PhaseU Southwest Oncology Group Study 9109. J Urol. 2002; 168(5): 2016−9.


CQ 10  
恥骨後式前立腺全摘除術は経会陰式,腹腔鏡下手術より推奨される手術法である。
推奨グレー ド Ⓒ

それぞれ手技に特有の弱点がある。

【背景・目的】

一般的には恥骨後式前立腺全摘除術がよく施行されているが,フランスを中心に広まった腹腔鏡下手術が本邦でも導入されつつある。また会陰式前立腺全摘除術が施行される場合もある。どの手術手技が本当に良好な治療成績と低侵襲性を兼ね備えているかを検討した。

【解 説】

現在,前立腺を摘出するアプローチとして恥骨後式前立腺全摘除術と会陰式前立腺全摘除術,腹腔鏡下手術がある。開腹手術では一般的に恥骨後式到達法が行われているが,これは会陰式では骨盤リンパ節郭清ができない点と,外科的切除断端陽性となる危険性が高いという理由によるとされているが1,2)(Ⅲ),リンパ節郭清に関しては会陰式でも機器や術式の工夫で克服可能であると報告されている3)(Ⅲ)

各手術法の優位性を強調する多くの報告は何らかの症例選択の上に,施行された結果であり,たとえば断端陽性率が他の手術により低い結果がでたとしても確実なエビデンスにはなり得ない。なぜなら,症例選択のバイアスが介在しており,各々の手技についての弱点,合併症についてはある程度の普遍性があると思われるが,優位性については無作為化試験でなければ結論できない。どの方法が本当に低侵襲で,高い治療成績を達成することが可能かについてのエビデンスはない。

現在ある程度のエビデンスのあると思われる各手術法における弱点,特徴的な合併症について以下にまとめた。 切除断端陽性率に差があるかという検討では各術式において部位に差があり,術式間で弱点がみられると報告されている4)(Ⅲ)。具体的には恥骨後式前立腺全摘除術では尖部に,会陰式前立腺全摘除術では膀胱頸部に,腹腔鏡下手術では側後方に断端陽性が多い傾向があることである5)(Ⅲ)

恥骨後式前立腺全摘除術に特有の問題としては出血が多いこと,術後鼠径ヘルニアの頻度が高いこと6,7)(Ⅲ)があり,また年齢別に検討したコホート研究では呼吸器系,循環器系の合併症が多いとされている8)(Ⅲ) 会陰式前立腺全摘除術では直腸損傷7)や便失禁などの直腸の合併症8)が特徴的である9)(Ⅲ)

腹腔鏡下手術は,経験の浅い段階では合併症を起こす頻度が高い方法である10)(Ⅲ)11)(Ⅱ)12)(Ⅲ)とされている。英国での腹腔鏡下前立腺全摘除術初期 100 例の報告では膀胱頸部狭窄 2 例,直腸損傷,出血にて開腹,尿漏による腹膜炎,尺骨神経障害,ポート部ヘルニア,麻痺性イレウスの各 1 例が報告されており13)(Ⅲ),腹膜炎やイレウスは開腹手術ではあまり経験しない合併症である。またイタリアからの報告でも合併症が少ないとは言えず初期のデータにおいては失禁率か高いと結論している5)(Ⅲ)。この手術は経験が浅い場合は合併症を起こす頻度が高く経験が必要と指摘されている5)(Ⅲ)。技術の習得・改良と知識の普及により,ラーニングカーブを改善させることが可能であり,このことにより本術式の安全性・有用性を改善させると考えられる14)(Ⅲ)ことが指摘されている。

【参考文献】

1)Boccon−Gibod L, Ravery V, Vordos D, et al. Radical prostatectomy for prostate cancer: the perineal approach increases the risk of surgically induced positive margins and capsular incisions. J Urol. 1998; 160(4): 1383−5.

2)Weldon VE, Tavel FR, Neuwirth H, et al. Patterns of positive specimen margins and detectable prostate specific antigen after radical perineal prostatectomy. J Urol. 1995; 153(5): 1565−9.

3)Saito S, Murakami G. Radical perineal prostatectomy: a novel approach for lymphadenectomy from perineal incision. J Urol. 2003; 170: 1298−300.

4)Salomon L, Anastasiadis AG, Levrel O, et al. Location of positive surgical margins after retropubic, perineal, and laparoscopic radical prostatectomy for organ−confined prostate cancer. Urology. 2003; 61(2): 386−90.

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11)Guillonneau B, el−Fettouh H, Baumert H, Cathelineau X, Doublet JD, Fromont G, Vallancien G: Laparoscopic radical prostatectomy: oncological evaluation after 1,000 cases a Montsouris Institute. J Urol. 2003; 169(4): 1261−6.

12)Rassweiler J, Sentker L, Seemann O, et al. Laparoscopic radical prostatectomy with the Heilbronn technique: an analysis of the first 180 cases. J Urol. 2001; 166(6): 2101−8.

13)Eden CG, Cahill D, Vass JA, et al. Laparoscopic radical prostatectomy: the initial UK series. BJU Int. 2002; 90(9): 876−82.

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CQ 11  
立腺全摘除術において尿禁制を確保するため恥骨前立腺靱帯,膀胱頸部温存をするべきである。
推奨グレー ド Ⓒ

尿禁制を確保するため恥骨前立腺靱帯,膀胱頸部温存を推奨する理由はない。

【背景・目的】

術後尿失禁は前立腺全摘除術における後遺症として大きな問題であり,この点を改善するために恥骨前立腺靱帯を温存した方が術後の尿禁制を改善する,あるいは膀胱頸部温存を取り入れることにより尿禁制が改善するのではという議論がある。この点に関して検討した。

【解 説】

RCT ではないが,ある程度の数が検討された研究としては膀胱頸部温存,テニスラケット縫縮再建(“tennis racket”reconstruction),膀胱縫縮再建(anteriorbladder tube reconstruction)を施行して,1 年後の評価を行い,尿禁制には有意差がなく,膀胱頸部硬化症は,再建の方が多く認められたと報告されている1)(Ⅲ)。他の報告2)(Ⅲ)では膀胱頸部温存とテニスラケット縫縮再建は早期の尿禁制に役立つという結果ではあったが,別の報告3)(Ⅲ)では膀胱頸部と恥骨前立腺靱帯の温存は尿失禁期間を短縮しないとしている。このような臨床研究は RCT でないため早急な結論はできないが,必ずしも膀胱頸部の温存を行わなくても再建を行うことで十分早期に尿禁制を回復させることが可能であることを示唆していると思われる。

一方,膀胱頸部温存を行う場合には切除断端陽性率の上昇を伴う可能性が示唆される。もちろん,low PSA,low Gleason スコア,low tumor volume の症例を手術の適応としている場合4,5)(Ⅲ)には独立した危険因子にならないことは明らかであるが,被膜浸潤陽性の癌の場合には膀胱頸部温存は切除断端陽性の危険を伴うことが指摘されている2)(Ⅲ)。ただしそのことが生命予後に関与するかどうか検討された報告はない。

一方,長期にわたる大規模な予後調査では医療者側が思っているほど,尿禁制が良くないことが指摘されている。報告によると前立腺全摘除術が施行された 39 歳から79 歳の男性 1291 例の,地域住民を対象にした長期にわたる大規模調査(前立腺癌予後調査)では,8.4%では術後 18 カ月の時点で尿失禁または排尿コントロール不能の状態であった。39%の症例では完全に尿禁制が保たれたが,残りの症例では様々な程度の尿失禁がみられたとされている6)(Ⅲ)。したがって術後尿失禁に関する評価は注意深い観察が必要であると思われる。

【参考文献】

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6)Stanford JL, Feng Z, Hamilton AS, et al. Urinary and sexual function after radical prostatectomy for clinically localized prostate cancer: the Prostate Cancer Outcomes Study. JAMA. 2000; 283 (3): 354−60.


CQ 12  
前立腺全摘除術において神経温存手術の適応はどのように決定すべきか。
推奨グレー ド Ⓒ

神経温存適応に関する適切な基準は確立していない。また予想以上に勃起機能に関する長期成績は不良である。

【背景・目的】

術後,勃起機能不全は尿失禁とともに前立腺全摘除術の術後後遺症の一つであるが,神経温存の安全な適応に関してはエビデンスが確立しているか,さらに性機能温存に関してはその機能が本当に温存されているか検証した。

【解 説】

早期癌には神経温存手術により勃起機能を温存することが可能である1)(Ⅲ)と考えられている。初期のデータでは神経温存手術を施行した場合,術前に性機能のあった症例の 40−65%が術後に膣挿入・性交が可能であり,性交可能な勃起が得られない症例は約 60%と報告されている2)(Ⅲ)。 神経温存に関してはいくつかの観点から検討,検証する必要がある。

  • 1 )明確な適応の基準が存在するのか
  • 2 )神経温存を行って切除断端陽性となった場合に,そのことが予後を左右するのか
  • 3 )神経温存を行った場合,勃起機能は本当に温存されているのか
という点である。

(1)神経温存に対する適切な適応基準は確立しているか? 確立していない。

適応に関して低分化癌,前立腺尖部に広がる癌,術中に触知可能な癌などは神経温存手術に適していないと報告されているが3)(Ⅲ),術中の前立腺触診所見で神経温存の適否の判断が可能かという点については術中の触診所見では判断できない,との報告もある4)(Ⅲ)

予測因子との関係では,生検により得られる Gleason スコア,percent tumor volume,perineural invasion の有無の 3 つの因子を評価することにより,神経血管束(NVB)を温存する際に,切除断端陽性率を減少させうるとの報告5)(Ⅲ)があるが,そもそもこの報告の症例群は T1c がほとんどであり,したがって T1c 癌に対してはこのような要因で選択できるかもしれないという結論になる。また生検時標本で癌ありとなった同側NVB を温存することは,全摘標本で切除断端陽性となるリスクが大きいので,広範囲な切除が望ましいという検討結果がある6)(Ⅲ)。MRI は NVB への浸潤の評価においても優れており,神経温存術式を決定する上で参考になるとの報告がある7)(Ⅲ)。以上の点は現状では実践的な基準ではあると考えられるが,神経温存の明確な適応基準は確立していない8)(Ⅳ)

(2)温存による切除断端陽性は予後に関係しているのか? エビデンスが乏し い。

神経を温存することによるデメリットは切除断端陽性の危険性を有している点であるが,このことが予後に関して危険因子となるかの検討は少ない。神経を温存することが PSA 再発の危険因子となるかという点をよくデザインされた研究方法で検討した論文はない。多くの論文は症例選択にバイアスがあり,結果の解釈を困難にしている。たとえばある研究では神経温存症例と非温存症例の比較で温存例の断端陽性率は 24%(n=58)で,非温存が 31%(n=152)と有意差を認めず,また,術後 3 年目,5 年目での PSA 再燃は神経温存群で各々 9.7%,14.4%,非温存群は 17.1%,21.1%であり,神経温存術は危険因子ではなかったと結論づけている9)(Ⅲ)が,無作為化試験ではなく,非温存例で 31%の断端陽性は高すぎる印象があり,結論の解釈は困難である。

(3)実際に機能は温存されているか? 予想以上に機能は温存されていない。

医療者側の評価に反して尿失禁の長期結果が予想外に悪いことは前述したが,同様の傾向が神経温存後の性機能についても認められている。術後 2 年以上経過すると,驚くことに神経温存根治的前立腺全摘除術と非温存術との間に勃起機能保持率に差がなくなることが報告されている10)(Ⅰ)。同様の結果は population−based longitudinal cohortstudy でも認められており,術後 18 カ月以上の経過観察で術前勃起機能のあったもので,術後 ED となった率は神経温存なし:65.6%,片側温存:58%,両側温存でも56.0%であった11)(Ⅲ)と報告されている。多くの症例で勃起機能が保持されておらず,何らかの術後サポートの必要性が強調されている12)(Ⅲ)。同様の結果は本邦の報告でも認められており,前立腺全摘除術を受けて 12 カ月以上たった患者では,性機能の減退に大きな不満があったと報告されている13)(Ⅲ)したがって神経温存手術においても性機能障害が起こる危険性を考慮するべきである。

【参考文献】

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CQ 13  
前立腺全摘除術におけるリンパ節郭清に意義はあるか。
推奨グレー ド Ⓑ

診断的な意味合いとして施行されている。

【背景・目的】

前立腺全摘除術においてリンパ節郭清は診断的な意味と理解されている。リンパ節郭清においては,より広汎な郭清を行うべきか,適切な郭清範囲はどこか,郭清を省略できるか,というような点がかねてから論点になっておりその点を検証した。

【解 説】

骨盤リンパ節郭清を行う意義は,治療的なものではなく,むしろ診断的な意味合いと理解されてきた。これはリンパ節に転移している症例は長期間の経過観察では最終的には外科的治療が不成功に終わることが多く,前立腺全摘除術を施行する意義がないと考えられているからである。

しかし所属リンパ節転移のある症例に対する前立腺全摘除術の意義がないかについて,なにをもって「意義がない」とするかエビデンスに乏しいように思われる。「PSA再発をきたさないために」という点に関しては当然,所属リンパ節転移が関連することは容易に理解できる。予後という面では所属リンパ節に転移があっても前立腺全摘除術と同時に内分泌療法を行うことで,80%の 10 年癌特異的生存率を得ることができるとされる報告1)(Ⅲ)をはじめ,N positive 症例に対しても前立腺全摘除術の意義があるとする報告2−4)(Ⅲ)がある。ただしこのような病態に対して,無条件に前立腺全摘除術を推奨するわけではなく,high risk あるいは T3 前立腺癌に対する前立腺全摘除術の項目で記載したのと同様,その施行にあたっては注意が必要であり,該当項目を参照されたい。内分泌療法単独でこのような治療効果が得られるかどうかに関するエビデンスはない。

郭清についてはすべての症例に必要でなく,症例を選んで行うべきであるという主張がある5)(Ⅳ)。具体的にはどのような症例に対して省略が可能かという点に関しては,拡大郭清と標準郭清の比較試験で PSA 10.5 未満で Gleason スコア 6 以下の症例で6)(Ⅱ),小さな高分化では,骨盤リンパ節が陽性である率は 20%未満であり,骨盤リンパ節の郭清は省略可能7)(Ⅲ)とされており,条件によってはリンパ節郭清を省略することは可能であろう8)(Ⅲ)と考えられる。しかし日本人に即したノモグラムが確立していない現状では省略する明確な基準は示せない。

郭清の範囲についても議論のあるところである。広汎なリンパ節郭清の有用性を検討した研究ではそもそも前立腺全摘除術の適応に関するバイアスが存在することを常に留意しなければならない。たとえば広範囲リンパ節郭清術は有用か否かを検討したRCT では,広範囲郭清と限局性郭清の間にはリンパ節転移発見率に差はなく,広範囲郭清術のほうが合併症を起こすリスクが高い傾向にあった9)(Ⅱ)と結論づけているが,そもそもこの研究の対象症例には low−grade,low−stage が多く,このような症例群では広範な郭清は当然,無意味という結論になると考えられる。一方,臨床的限局癌に対して,標準的リンパ節郭清術と比べて拡大リンパ節郭清術に意味があり,外腸骨・内腸骨・閉鎖リンパ節を郭清することが望ましい,とする報告の対象は,PSA の平均値は 59.9 ng/dl でリンパ節転移のリスクの高い症例が多く含まれており,このようなhigh PSA 症例では拡大リンパ節郭清をすることで転移リンパ節の発見頻度が高まるという当然の結論が導けるにすぎない6)(Ⅱ)。このように対象とする症例群により結論が異なる結果となり,いまだ結論は導けない。さらにリンパ節郭清をすることで予後が向上するかどうかの明確なエビデンスはない。

リンパ節に対する術中迅速病理診断をすべきかという点に関しては,その有用性は限られるとされている。肉眼的に明らかな転移がある症例以外では,術中迅速病理診断を省略して前立腺全摘除術を行って問題はないと報告されている10)(Ⅲ)。リンパ節に対する術中迅速病理診断の必要性は限られており high risk グループの症例においては必要かもしれないが,Partin らのノモグラムを用いた方が sensitivity はよい11)(Ⅲ)との報告もあり,最終的には日本でのノモグラムの確立が待たれる。

【参考文献】

1)Myers RP, Larson−Keller JJ, Bergstralh EJ, et al. Hormonal treatment at time of radical retropubic prostatectomy for stage D1 prostate cancer: results of long−term followup. J Urol. 1992; 147: 910−5.

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11)Beissner RS, Stricker JB, Speights VO, et al. Frozen section diagnosis of metastatic prostate adenocarcinoma in pelvic lymphadenectomy compared with nomogram prediction of metastasis. Urology. 2002; 59(5): 721−5.


CQ 14  
局所前立腺癌に対する HIFU 治療は治療成績の期待できる治療法である。
推奨グレー ド Ⓒ

可能性を秘めた治療法の一つであるが,現状では長期成績,治療の評価方法などのエビデンスが不足している。

【背景・目的】

局所前立腺癌に対する高密度焦点式超音波(HIFU:High IntensityFocused Ultrasound)を利用する治療法は再治療が可能であり,他の局所治療と異なる特徴を有している。治療成績における現在のエビデンスを検討した。

【解 説】

強力超音波を集束させることで,その焦点部にさらに強力なエネルギーを集めることができる。これを高密度焦点式超音波(HIFU:High Intensity FocusedUltrasound)と呼び,周辺組織にほとんど影響を与えることなくその焦点となる部位にのみ超音波発生熱を生じさせる特性がある。この新しい技術を前立腺癌に適応しようという試みが 1994 年にオーストリアで実施された。前立腺全摘除術の前に HIFU の試験治療に同意した 38 人の限局性前立腺癌患者に対し行われ,コンピュータで設定された部位は確実に凝固壊死されていることが確認された1)(Ⅲ)。その後,本治療が局所前立腺癌に対して施行されているが,現在まで報告されている結果は以下の通りである2−5)(Ⅲ)

HIFU と系統的前立腺生検,PSA 値との関係
報告者 症例数   CR PR   Failure
生検 陰性   陰性 陽性   陽性
治療後 PSA <4.0 ng/ml >4.0 ng/ml <4.0 ng/ml >4.0 ng/ml
Beerlage 49   25%   3% 37%   35%
  62** 60% 8% 26% 6%
Gelet 50 56% 6% 18% 20%
Chaussy 73% 10% 2% 15%
Uchida 20 100% 0% 0% 0%
*: 腫瘤側のみ治療,**: 前立腺全体を治療

長期成績に関しては,平均 17.6 カ月の経過観察で CR 率 62%,failure 率 38%2)(Ⅲ),5 年の成績では CR 率は 54.0%程度と報告されており6)(Ⅲ),局所前立腺癌の他の根治的治療と比較すると癌制御率には疑問が残る。また PSA 再発の定義そのものも検討されていない。

本治療には侵襲が小さいことと他の限局性治療と異なり再治療が可能という特徴があるが,排尿障害が他の治療より強くでる危険性がある7)(Ⅲ)。このため HIFU とTURP を併用することにより,副作用を軽減させることができるとの報告もある7)(Ⅲ)

本治療に関してはまだ観察期間が短く,各種のエビデンスが不足している。

【参考文献】

1)Madersbacher S. Pedevilla M. Vingers L. et al. Effect of high−intensity focused ultrasound on human prostate cancer in vivo. Cancer Research. 1995; 55(15): 3346−51.

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3)Gelet A, Chapelon JY, Bouvier R, et al. Transrectal High−Intesity Focused Ultrasound: Minimally Invasive Therapy of Localized Prostate Cancer. J Endourol. 2000; 14: 519−28.

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CQ 15  
術後再発診断における PSA 再発の診断基準は?
推奨グレー ド Ⓑ

一般的にはカットオフは 0.2 ng/ml とすべきであり,術後再発診断において高感度 PSA を使用すべきではないという意見が多い。ただし何を判定するための PSA 再発かによって定義・解釈は異なる可能性がある。この点はクエスチョン 1 も参照されたい。

【背景・目的】

PSA は前立腺癌の早期発見に寄与したが,根治手術後の再発判定における PSA に関してはいくつかの問題をはらんでいる。これは CQ 1 で概説したとおりであるが,現状ではどのような解釈が一般的か,この点を検討した。

【解 説】

前立腺全摘除術により癌が根治していると術後 3 週以内に PSA は検出限界以下になるとされている1)(Ⅲ)。PSA 値が高ければどこかに PSA を産生している組織があることを示しており,検出不可能な微小転移巣,あるいは断端陽性による骨盤内の残存病変が存在する可能性があると考えられる。今回のガイドライン作成のために約 240 件の文献がレビューされたが,PSA 再発を検討した約 120 の文献で,その半数に PSA 再発の定義の記載があった。そのうち約半数は 0.2 ng/ml を PSA 再発の定義としていたが,他は測定可能,0.2 ng/ml かつ連続上昇,あるいは 3 ポイント連続上昇としており,その定義は様々であり一定のコンセンサスが確立していないことをうかがわせた。

EAU のガイドラインでは「PSA のカットオフ値は 0.2 ng/ml より低くすべきではない」「PSA 再発症例に対して,より早期に補助療法を追加することにより有益な結果が得られるという証拠はない。したがって,超高感度 PSA をルーチンの経過観察に用いることの妥当性はない」としている。手術が成功したかどうかの判定には高感度測定は「水面下」の状況を早期に判定できる可能性があり,結果的に手術が不成功に終わったかもしれないという点が,より早くわかることである。しかし上記の EUA のガイドラインでも指摘されているように,そのことにより術後の補助療法を早期に開始することで生命予後が向上するという保障はなく,仮に PSA 再発をきたした症例であっても生命予後には関わらない病態であった場合には,「水面下」の動きを早期に知ることのメリットには大きな疑問が残る。したがって現状では補助療法を施行していない前立腺全摘除術後においては PSA 再発のカットオフは 0.2 ng/ml とすべきであるという意見が多く,現実的と思われる2−4)(Ⅲ)。

【参考文献】

1)Stamey TA, Kabalin JN, McNeal JE, et al. Prostate specific antigen in the diagnosis and treatment of adenocarcinoma of the prostate. Ⅱ. Radical prostatectomy treated patients. J Urol. 1989; 141(5): 1076−83.

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CQ 16  
術後経過観察において PSA 以外にどのような診断法が勧められるか?
推奨グレー ド Ⓓ

PSA 再発がなければ直腸診,MRI,CT,骨シンチは不要である。

推奨グレー ド Ⓒ

PSA 再発が認められた場合,経直腸超音波で病変が認められれば有用であるが,感度が低い。MRI の有用性も早期発見という意味では限られる。

【背景・目的】

前立腺全摘除術後における経過観察には定期的な PSA 測定が必要で有用であることに異論はないが,それ以上の検査を施行すべきか,また再発が疑われた場合に施行する必要がある検査は何か,この点を検討した。

【解 説】

局所再発も遠隔転移も PSA が検出できないレベルで起こりうることが示されているが,これは非常に稀で,未分化型の腫瘍にしか起こらないと考えてよいとされている1,2)(Ⅲ)。したがって,比較的良好な病理学的所見(pT3 未満,pN0,Gleason スコアが 8 未満)を有する症例では,前立腺全摘除術後の経過観察では病歴聴取とあわせて PSA 測定が唯一の検査項目であり,触診,画像診断については PSA 値が測定限界以下では何の意味もないとされている1−4)(Ⅲ)

次に PSA 再発を認めた場合には,その後の治療のためにも残存腫瘍の局在が判明すれば有益な情報となるが,現在局在診断の決定的な検査法はない。局所再発の確認のために経直腸超音波で可視病変あるいは直腸診で触知可能な病変であれば有用な情報が得られるとの報告がある5)(Ⅳ)6)(Ⅲ)が感度は低い。一方,MRI は比較的有用であるとの報告が散見されるが,これをルーチン化する有用性は疑問視されている7)(Ⅳ)8)(Ⅲ)。CT,骨シンチグラフィの有用性は限られている9)(Ⅲ)

【参考文献】

1)Oefelein MG, Smith N, Carter M, et al. The incidence of prostate cancer progression with undetectable serum prostate specific antigen in a series of 394 radical prostatectomies. J Urol. 1995; 154(6): 2128−31.

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CQ 17  
危険因子を有する症例に対してはアジュバント治療が推奨される。
推奨グレー ド Ⓑ

pN positive 症例に対する,アジュバント内分泌療法と臨床的再発まで待機することに関する RCT で,臨床的再発まで待機することは有意に予後を低下させることが示されている。

推奨グレー ド Ⓒ

しかし,その他の PSA 再発に関する不利な予後因子(切除断端陽性,精嚢浸潤陽性)を持つ症例に対してアジュバント放射線治療,あるいは内分泌治療を追加することにより予後が改善するかどうかについての明確なエビデンスはない。

【背景・目的】

切除の結果,外科治療が不成功になる確率が高いことが危惧される場合には当然,術後補助療法を併用することにより予後の改善を期待する訳であるが,限局性前立腺癌の最終的な生命予後は長期にわたることもあり,補助療法を適応することによるメリット,デメリットを証明しにくい状況にある。術後補助療法については①その適応,②時期,つまりアジュバントか救済か,③さらにはその治療が最終的な予後の改善につながるかという問題がある。またそもそも推奨される治療法として放射線治療か内分泌療法かという問題もある。この点を検討した。

【解 説】
(1)アジュバント内分泌療法

術後内分泌療法は PSA 再発率を改善するという論文は多数散見される。これは十分予想できることであり,内分泌療法により PSA 値が低下して PSA 再発の時期を遅らせることは理論的にも当然である1)(Ⅳ)。重要なことは最終的な予後を改善させるかという点につきる。たとえば切除断端陽性などの直接には癌の悪性度とは相関しない病態に対するアジュバント療法の意義を認めないことは十分理解できる2,3)(Ⅲ)。本治療を適応することが有用と考えられるのは,やはり高い悪性度を有した症例と考えられる。具体的には pN positive4)(Ⅱ)あるいは pT3b5)(Ⅲ)症例であり,clinical progressionまでの期間延長は期待できるとされている。

ではアジュバントとして治療を開始することと救済として施行することではどちらが推奨されるかという点に関する検討では,切除の結果,リンパ節転移陽性例に対してアジュバント治療と臨床的再発まで待機する RCT で,アジュバント内分泌療法が有意に予後を改善していた4)(Ⅱ)。しかしこの論文で筆者らが指摘しているように,近年では PSA により再発の判定が可能であり,臨床的再発まで待つことは稀となっており,現状には即さなくなっている。PSA 再発あるいは PSADT などを治療開始のポイントとして,アジュバント療法と救済療法の優劣を検討した RCT スタディはない。

(2)アジュバント放射線治療

仮に手術を行ったにもかかわらず,何らかの理由で局所に癌細胞が残存したとすると,理論的には局所治療である放射線治療を追加することにより根治が得られる可能性がある。アジュバント放射線治療に関する問題点も前述したのと同じである。

アジュバント放射線治療を併用するべき病態としては再発の危険因子を有する症例となる。N positive 症例はすでに全身転移とも考えられ,本治療の適応にはならないと考えるのが一般的である。したがって一般的には切除の結果 pT3 あるいは切除断端陽性であった症例に対して適応を考慮すべきとされている。 無作為化されていないが pT3(−4)N0 M0 症例に対しては,アジュバント放射線療法を施行することで PSA 再発のリスクを下げる可能性があることが報告されている6−8)(Ⅲ)。この中で適応に疑問のある病態としては Gleason スコア 7−10 かつ pT3b症例,あるいは術前 PSA 高値(25 ng/ml 以上)以上であったと報告している9)(Ⅲ)。 切除断端陽性症例に対するアジュバント放射線治療に関しては Gleason スコア≧8 かつ術前 PSA>10.9 ng/ml では,放射線療法を行っても再発リスクが高いと報告されている10)(Ⅲ)。これらの病態はすでに細胞学的には遠隔転移をきたしているか,そもそも放射線治療の効果が乏しいのかという可能性が考えられるがおそらく前者ではないかと想定される。

上記の検討はアジュバント放射線治療を施行しても「無益」な症例を同定しているが,逆にアジュバント放射線治療が不要な症例も当然あると思われる。この問題に関してはアジュバント治療と救済療法についての RCT を考慮する必要があるが,RCT は実施されておらず結論も一定していない。たとえば pT3N0 M0 または切除断端陽性の場合,5 年 PSA 非再燃率は,アジュバント放射線治療を行うと 81%であり,PSA 再燃時に救済放射線治療を行うと 19%という報告11)(Ⅲ)もあれば,pT3−pT4N0 M0 症例で,アジュバント放射線治療を行うと 5 年 PSA 非再燃率は 90%ではあるが,PSA<1.1 ng/dlの PSA 再燃時に救済として 64 Gy 以上の放射線治療を行った時の,5 年 PSA 非再燃率は 79%となり 5 年 PSA 非再燃率に差はないという報告12)(Ⅱ)もあり,結論は一定していない。最終的な生存率への寄与については現在まで文献上証明されたものはない。

一方,中等線量の体外照射は,術後 4 カ月頃に,一時的に尿失禁や便失禁・排便症状に影響するが,12 カ月を目安に照射なし群と同程度に軽快する13)(Ⅲ)とされている。

いずれにしても,おそらく現時点では PSA 再発あるいは PSADT を確認してから術後治療を選択,開始することが最も現実的ではと考えられる。

本内容に関しては次の救済治療の検討また放射線治療の項目も参照されたい。

【参考文献】

1)Gomella LG, Zeltser I, Valicenti RK. Use of neoadjuvant and adjuvant therapy to prevent or delay recurrence of prostate cancer in patients undergoing surgical treatment for prostate cancer. Urology. 2003 29; 62 Suppl 1: 46−54.

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CQ 18  
術後 PSA 再発症例に推奨される救済治療は何か?
推奨グレー ド Ⓒ

Low risk 群では経過観察もあり得る。PSADT が早い状態では内分泌療法が,その中間的な病態では放射線治療が推奨されるが断定的ではない。

【背景・目的】

PSA 再発を認めた場合,転移性であれば内分泌療法が第 1 の治療法であることには異存がない。もし局所にとどまっていることがはっきりしていれば,局所療法である放射線治療により予後が改善するはずである。しかし腫瘍の局在がはっきりする前に PSA 再発は起こることが一般的である。この段階でどのような治療が最も生存期間を長く保障できるかについて,検討した。

【解 説】

PSA 再発を認めた場合,そもそも治療すべきかという問題がある。これは前立腺全摘除術の適応となった病態に依存しており,経過観察も妥当であるという主張もある1)(Ⅲ)ことは当然である。

悪性度が高いと考えられる Gleason スコア 7 以上かつ PSADT:12 カ月未満2)(Ⅲ)の場合,さらに PSADT が術後 3 カ月未満の時3)(Ⅲ),骨転移病変の発症を回避し最終的な予後の改善のために,PSA 再発を認めた段階で早期の内分泌療法開始が望ましいとしている。また精嚢浸潤陽性症例は悪性度が高いと判断されるべきであり,救済放射線治療での効果は疑問が大きい4)(Ⅲ)とされており,このよう病態では内分泌療法が一般的に推奨される。

一方,救済放射線治療も,病態によっては効果が期待できることは当然である5,6)(Ⅲ)。Gleason スコア<8 の症例では PSA 再発後 PSA 値が低い(PSA1.0 以下7)(Ⅲ),あるいは 0.68)(Ⅲ))状態で早期に,高線量(64.8 Gy)の照射を行えば,救済治療としての良好な結果が得られるとしており,PSA 再発を確認した場合,PSA 値があまり上昇する前に対応したほうが良い成績が期待できる。ただし高線量の放射線照射を行った場合の合併症に関しては注意が必要である(放射線治療の項目も参照されたい)。

救済放射線治療に内分泌療法を併用するかどうかも問題である。内分泌療法併用により予後が短縮する危険がなければ当然,併用療法は単独治療より予後の改善が認められる可能性が大きいと考えられる。局所前立腺癌に対する根治的放射線治療においては近年盛んに内分泌療法の併用が検討されているが,前立腺全摘除術後 PSA 再発に対する救済治療に関して,どのような症例がその適応になるかについての RCT はない。非無作為化試験であるが,PSA 再発に対して,放射線療法(66 Gy)単独,および放射線療法+MAB 療法との比較で,切除断端陽性,被膜外浸潤陽性,精嚢浸潤陽性は放射線療法単独での危険因子であり,このような危険因子がなければ MAB 併用群の有無による PSA 再発に差を認めないが,上記の危険因子が一つでもあれば MAB 併用例が良いとしている報告9)(Ⅲ)もあるが RCT でなく,効果を確定するには限界がある。

どのような症例に対してどのような救済療法を選択することが最終的な予後を最も長く保障できるかについてはいまだ controversial である。

【参考文献】

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