リンパ浮腫 〜診療ガイドライン

ガイドライン文中の文献番号から,該当する参考文献一覧を参照することができます

目次:


総 論

A.診 断

背 景

リンパ浮腫の実態は,何らかの理由でリンパ管内に回収されなかった,アルブミンなどの蛋白を高濃度に含んだ体液が間質に貯留したものである(図1)。したがって,さまざまな理由で生じる,いわゆる浮腫(水分の貯留)とは異なる病態であることをまず認識し,適切に鑑別診断する必要がある。

リンパ浮腫は原発性(一次性)と続発性(二次性)に大別され,前者は原因が明らかでない特発性(35 歳未満を早発性,35 歳以上を晩発性という)と,遺伝子異常等に伴う先天性に分類される。一方,続発性(二次性)の原因には癌治療に伴うリンパ節郭清や放射線照射に起因するものをはじめ,外傷,フィラリア症(国内では1978 年以降発症者が出ていない)などがあり,全世界的にはフィラリア症の占める割合が大きいが,わが国で最も多くみられるのはリンパ節郭清や術後照射など癌治療に伴う四肢のリンパ浮腫である。

図1 リンパ浮腫の病態
(a) 正常状態 (b) 浮腫 (c) リンパ浮腫
  1. (a)組織間隙からの水分の回収は静脈が約9 割,リンパ管が約1 割を担っている。
  2. (b)さまざまな原因で不要になった水が正常に回収されず,組織間隙にたまっている状態。
  3. (c)組織で不要になった蛋白と水分が正常に回収されず,高蛋白性の体液が組織間隙にたまっている状態。
解 説
1. 医学的アセスメント

医学的アセスメントは,浮腫を生じるすべての疾患から鑑別してリンパ浮腫の確定診断を得るほかに,その原因を特定し,あるいはその他の原因を除外することを目的としている(表1)。ほとんどの場合,病歴(手術・照射の既往や外傷歴など)が大きな手がかりとなり,それに矛盾しない理学所見が伴っているかを精査する。したがって,注意深くきめ細かい病歴の聴取が必須かつ最も重要である。鑑別診断のために行われる検査として,①血液検査,②尿検査,③超音波検査,④胸部X 線,⑤CT/MRI 検査などが挙げられる。リンパ浮腫以外の浮腫を惹起する疾患や癌の転移・再発を除外したのちに,リンパ浮腫の診断・精査へと進む。

表1 リンパ浮腫の鑑別診断

片側性の浮腫

両側性の浮腫

  • 急性深部静脈血栓症
  • うっ血性心不全
  • 静脈血栓症後遺症
  • 慢性静脈機能不全症
  • 関節炎
  • 廃用性浮腫・うっ血性浮腫
  • 癌の存在または再発
  • 肝機能障害
 
  • 腎機能障害
 
  • 低蛋白血症
 
  • 甲状腺機能低下/粘液水腫
 
  • 薬剤の副作用
 
  • 脂肪性浮腫

(Best practice for the management of lymphoedema より)

(1) 原発性リンパ浮腫

原発性リンパ浮腫は一般に小児科領域の疾病であり,その頻度は20 歳未満の人口10 万人に1. 15 人と非常に稀である 1)。診断には,すべての続発性リンパ浮腫の可能性を除外する必要がある。問診などにより家族性発症の疑いがあれば,遺伝子スクリーニング検査や遺伝カウンセリングの適応となる。ちなみに原発性リンパ浮腫に関連する遺伝子の主な変異は,FOXC2(リンパ浮腫・睫毛重生症候群),VEGER-3(Milroy 病),SOX18(貧毛・乏毛・リンパ浮腫・毛細血管拡張症候群)などがあるが,それぞれの詳細については成書に譲る。

(2) リンパ浮腫の診断

リンパシンチグラフィはリンパ浮腫の確定診断を得るために最も有用で,国際リンパ学会でも推奨される診断法である。確定診断を得る目的のほかに外科手術の際の術前後の評価に多用されているが,わが国では保険収載されていない。超音波検査は簡便で非侵襲的に皮下の水分貯留を観察でき,比較的早期の段階から診断が可能である。また,インドシアニングリーン色素(ICG)を用いた蛍光リンパ管造影はphotodynamic eye(PDE)によって,体表から2 cm 程度の深さまでならリンパ管の走行や機能動態を観察することができ,リンパ管の弁逆流に伴うdermal backflow はリンパ浮腫に特有の所見である。近年,生体インピーダンスを応用して開発されたリンパ浮腫診断機器は,米国では片側性乳癌に限りリンパ浮腫の検査手段として保険収載されているが,左右差を評価するため,両側性乳癌や下肢の診断に対する適否など課題も多く,今後の展開が待たれる。現時点では,ここに挙げたいずれの画像検査も,リンパ浮腫の診断方法としての保険収載はなされていないのが現状である。

したがって,日常診療ではリンパ浮腫の診断や治療評価には少なからず四肢周径の測定が用いられており,リンパ浮腫指導管理の際に術前からセルフケアの一環として自己測定の習得を徹底することが肝要である。

2. リンパ浮腫のアセスメント

リンパ浮腫のアセスメントは,専門的な教育を受けた医療者によって診断時より,治療経過を通して定期的に継続されなければならない。

(1) リンパ浮腫の病期分類

リンパ浮腫の病期分類は国によって異なるが,本書ではわが国で広く普及している国際リンパ学会(International Society of Lymphology;ISL)分類を用いる(表2)。0 期は発症していないが,潜在性にリンパ浮腫のリスクを有する状態をいう。

表2 病期分類(国際リンパ学会)
0 期   リンパ液輸送が障害されているが,浮腫が明らかでない潜在性または無症候性の病態。
Ⅰ期   比較的蛋白成分が多い組織間液が貯留しているが,まだ初期であり,四肢を挙げることにより治まる。圧痕がみられることもある。
Ⅱ期   四肢の挙上だけではほとんど組織の腫脹が改善しなくなり,圧痕がはっきりする。
Ⅱ期後期 組織の線維化がみられ,圧痕がみられなくなる。
Ⅲ期   圧痕がみられないリンパ液うっ滞性象皮病のほか,アカントーシス(表皮肥厚),脂肪沈着などの皮膚変化がみられるようになる。
(2) 重症度分類

両側性の上肢・下肢や頭頸部,生殖器,体幹のリンパ浮腫に関する公式の重症度分類は存在しない。片側性四肢のリンパ浮腫に対しては,体積の左右差の程度による分類があるが(表32),患肢の腫大のみが考慮されたものであり,両側例には適用できない。同様に重症度の評価に加味すべき項目を表4 に示す 2)。疾患全般の原則に則り,リンパ浮腫も早期発見,早期介入を目指すためには,これらを含んだ包括的でより繊細な分類が望ましく,かつ両側性の病態に対応するためにも術前後で同側・同部位を比較するという普遍的かつ抜本的な分類の確立が急務である。

表3  片側性リンパ浮腫の重症度分類(国際リンパ学会)

軽 度

20%未満の浮腫

中等度

20 〜40%の浮腫

重 度

40%を超える浮腫
表4 重症度の評価となる指標(国際リンパ学会)
  • 皮下組織の腫れ(軽度,中等度,重度;浮腫の有無)
  • 皮膚の状態(肥厚,疣贅,凹凸,水疱,リンパ管拡張,創傷,潰瘍)
  • 皮下組織の変化(脂肪の増加や線維化,浮腫の有無,硬化の有無)
  • 患肢の形状の変化(局所的な変化あるいは全体的な変化があるか)
  • 炎症・感染(蜂窩織炎)の頻度
  • 内臓の合併症に関連するもの(例えば胸水や乳糜腹水)
  • 運動と機能(上肢・下肢や全身的な機能の悪化)
  • 心理社会的な要因
(3) 測定に関するアセスメント

患部の質量計測は診断や治療効果の判定に必須であるが,頸部や体幹部などは標準化された測定方法がない。四肢については周径や体積の計測が用いられるが,最も簡便かつ経済的な方法は周径計測である。計測時間や計測の際の体位を統一するなど,測定値の再現性を高める工夫をすることによって,早期発見や増悪・改善の一指標となし得る。両側四肢のいずれかの部位で2 cm 以上の左右差が出れば,臨床的に有意だと判断されるという,従来汎用された基準も,①健常人の四肢左右差がいずれの部位でも1 cm 未満であること,②上肢・下肢とも両側にリンパ浮腫が発症した場合,左右差の評価は無意味であること,③早期発見・早期介入により,よりよい治療効果が得られることから,左右差ではなく治療前の周径を把握し,治療後は同側同部位について比較観察を行い,そのカットオフ値を1 cm とすることが望ましい。ちなみに,日本乳癌学会班研究による実態調査では健常人の上下肢における周径の左右差は平均3 〜8 mm であった 3)

①周径の測定

最も簡便かつ経済的な計測方法は周径の測定で,従来さまざまな部位が推奨されていたが,日本人の体格を考慮して本ガイドラインでは初版より,上肢においてはMP 関節,尺側外顆―手関節,肘窩線をはさみ末梢側5 cm,中枢側10 cm を,下肢においては足背(中足骨上の足弓起始部),足関節(外果・内果の上縁),膝窩線をはさみ末梢側5 cm,中枢側10 cm,大腿根部(鼠径部)と規定している(図2)。

図2 四肢における周径の計測部位
②体積の計測

リンパ浮腫の程度,適切な症状管理,治療効果を評価する客観的な方法である。リンパ浮腫に対する多層包帯法(multi-layer lymphedema bandaging;MLLB)による集中治療前後の評価方法として,両側の上肢あるいは下肢体積を測定し,体積はmL,体積の差はmL または%で表す。体積算出ソフトに計測値を入力する方法や,満杯の水槽に患肢を浸し,溢れた水の体積を測定する水中置換法,四肢を直径の異なる円柱と見立てて積算する式があるが 4),いずれも継続して行うには煩雑すぎるため日常診療やセルフケアにおける実用性に乏しい。

③その他

ほかのアセスメント方法には,赤外線を用いて輪郭を描出することにより体積を算出するペロメーター,前述の生体インピーダンス法などがある。

(4) 皮膚のアセスメント

過角化,乳頭状増殖,リンパ小疱,リンパ漏など,皮膚症状を伴うリンパ浮腫はⅢ期である(表55)。軽微な所見も見逃さず早期に治療を行えば,続発する蜂窩織炎の抑止につながる。Ⅲ期のリンパ浮腫はスキンケア指導にも重点を置いた,より包括的な治療が必要である。また白癬菌感染は,蜂窩織炎の原因になりやすく,可能な限り術前から皮膚科医による徹底的な治療を行うよう指導する。

表5 皮膚所見
  • 乾燥
  • 色素沈着
  • 脆弱性
  • 発赤/蒼白/チアノーゼ
  • 局所的熱感/冷感
  • 皮膚炎
  • 蜂窩織炎/丹毒
  • 真菌などの感染
  • 過角化
  • リンパ管拡張
  • リンパ漏
  • 乳頭腫症
  • 瘢痕,創傷と潰瘍
  • 硬化
  • 橙皮様皮膚
  • 深い皺襞
  • Stemmer's sign
(5) 血管のアセスメント

下肢リンパ浮腫の治療にあたっては,血管病変,特に閉塞性動脈疾患を除外しておく必要がある。病変の疑いがあれば,ただちに下肢動脈の状態を評価する。足関節/上腕血圧比(ankle-brachial pressure index;ABPI)によって,下肢の動脈開存を客観的に評価できるが,血管のアセスメントは測定技術と結果の解釈に専門的な知識やスキルを要するので,専門医への円滑なコンサルトが望ましい。通常の圧迫療法を行うためにはABPI が0. 8 以上なければならず,末梢動脈の閉塞症が認められれば圧迫療法は禁忌,もしくは着圧レベルを下げなければならない。

深部静脈血栓症(DVT)についても,特に血流停滞,静脈内皮障害,血管凝固能亢進などの誘発因子をもつ症例はスクリーニングが必要である。Wells スコアのPCP(Pretest Clinical Probability)スコアリング(表66)とD ダイマーの測定が推奨される。Wells スコアはDVT の臨床確率を評価するツールで,陽性所見にそれぞれ1 点を加算し,その合計でDVT 罹患確率を3 つのリスク群に分類するもので,D ダイマーが正常の慢性期DVT を安全に除外できるといわれている(D ダイマーの上昇によって急性期DVT を確定できる)。急性DVT が強く疑われる場合は圧迫療法を行わず,静脈エコー(断層法,あるいは断層法にドプラ法を併用する超音波検査)などの画像検査を行う(ただし,D ダイマーは保険適応外である)。

表6 Wells スコア

次の臨床的な特徴があれば+ 1 点

  • 活動性の癌
  • 麻痺,不全麻痺,下肢のギプス固定
  • 最近(4 週間以内)の手術あるいは長期(3 日を超える)臥床
  • 下肢の圧痛
  • 下肢の腫脹
  • 下肢の左右差が3 cm 以上
  • 下肢の表在静脈(側副血行路の有無)

* DVT 以外の疾患がより疑われる場合は−2 点

高リスク:スコア3 点以上,中リスク:1 または2 点,低リスク:0 点以下

(6) 疼痛のアセスメント

痛みの評価には,原因,実態,頻度,タイミング,部位,程度と影響に注意を払う必要がある。効果的な治療戦略は,①リンパ浮腫治療に伴う痛み,②日々の活動に付随する痛み,③background pain (もともと持っている断続的もしくは連続する安静時痛)など,痛みの種類によって異なる。いずれも患者の伝達能力がその精度に影響を及ぼす可能性があるので,医療者は患者の疼痛体験を正確に吸い上げて,最も効果的な疼痛管理方法を選択する必要がある。疼痛管理とその評価は,緩和ケアチームやペインクリニックの活用も考慮すべきである。

以上のように,より早期に正確な診断を行うことで,より適切なリンパ浮腫治療が行える。

B.予防と治療

背 景

わが国における続発性(二次性)リンパ浮腫の成因は,前述のようにほとんどがリンパ節郭清や放射線治療など,癌治療に関連している。リンパ浮腫を発症する可能性のある悪性腫瘍の手術を受けた患者に対して,予防のための患者指導を行うべく,2008 年度に乳癌,子宮・卵巣癌,前立腺癌など一部の悪性腫瘍を対象としてリンパ浮腫指導管理料が設定された。適正な患者指導がリンパ浮腫の発症を抑止することは臨床的に十分示されており,今後適応癌腫が拡大することが期待されている。

治療は専門の知識や技術を習得した医療者のチームによって集学的かつ包括的アプローチがなされるべきである。具体的には,臨床的に有効性が示されている圧迫(原則として集中治療時には弾性包帯を用いた多層包帯法,維持期もしくは初期の症例に対しては弾性着衣)(表7-28),圧迫下の運動に加え,必要に応じてMLD を併用する。セルフケア指導としては弾性着衣の着用・管理方法,スキンケア,肥満・感染予防などのリスク管理,疼痛管理のほかに,心理社会的介入を伴う。管理プログラムは,病変部位・病期,重症度,合併症の有無,心理社会的状態を考慮し,定期的な治療効果の評価に基づいた治療方針の再構築が必要となる。リンパ浮腫の病期によって治療方針は異なり,同一肢でも部位によって状態が異なる場合が少なくないので,個々の病状に応じたきめ細かなテーラーメード治療を要する。

解 説
1. 予防〜リンパ浮腫指導管理〜

リンパ浮腫は発症すれば完治が困難である一方,適切なリスク管理は有効な発症抑止となることも知られている。リンパ浮腫発症のリスクとなる癌治療を受けた患者に対して設定されているリンパ浮腫指導管理は,①リンパ浮腫の原因と病態,②発症した場合の治療選択肢の概要,③日常生活上の注意,④肥満,感染の予防,などを網羅して個別に指導を行う(手術のための入院時と退院後外来でそれぞれ1 回ずつ100 点の診療加算が認められている)(表7-17)。セルフケア指導では,術前の段階で両側上肢もしくはきるようにすることの重要性を十分説明する。

表7-1 リンパ浮腫指導管理の改定(官報,2008 年,2010 年,2012 年)
2008 年度
保険医療機関に入院中の患者であって,子宮悪性腫瘍,子宮附属器悪性腫瘍,前立腺悪性腫瘍又は腋窩部郭清を伴う乳腺悪性腫瘍に対する手術を行ったものに対して,当該手術を行った日の属する月又はその前月若しくは翌月のいずれかに,医師又は医師の指示に基づき看護師又は理学療法士が,リンパ浮腫の重症化等を抑制するための指導を実施した場合に入院中1 回に限り算定する。
2010 年度
当該保険医療機関入院中にリンパ浮腫指導管理料を算定した患者であって,当該保険医療機関を退院したものに対して,当該保険医療機関において,退院した日の属する月又はその翌月にリンパ浮腫の重症化等を抑制するための指導を再度実施した場合に,1 回に限り算定する。
2012 年度
2008 年度制定記載に基づき当該点数を算定した患者であって当該保険医療機関を退院したものに対して,当該医療機関又は当該患者の退院後において地域連携診療計画に基づいた治療を担う他の保険医療機関(がん治療連携指導料を算定した場合に限る)において,退院した日の属する月又はその翌月に規定する指導を再度実施した場合に,当該指導を実施した,いずれかの保険医療機関において,1 回に限り算定する。

セルフケア上,最も重要なのは感染症(蜂窩織炎)と肥満の予防・改善である。感染症は,リンパ浮腫を増悪させるばかりでなく,リスクのある肢にリンパ浮腫を新たに発症するきっかけとなり得るので,外傷,火傷や虫刺されなどによる皮膚の傷害には十分注意し,受傷時には局所を洗浄し,場合によっては抗生剤を内服する。肥満はリンパ浮腫発症や増悪の一因となるので,標準体重を維持するよう心がける。

なお,発症予防を目的とした用手的リンパドレナージもしくは患者自身が行うセルフリンパドレナージの効果は科学的に証明されていないので,患者の負担をいたずらに増やすような指導は行うべきではない。予防的な弾性着衣の装着も現時点では根拠が示されていないが,装着下に指導・管理の行き届いた計画的な負荷運動を行うことはリンパ浮腫の発症頻度を上げることなく患肢の運動能力を向上させ,QOL に貢献するという複数のランダム化比較試験が,特に上肢で数多く出ており,効果的なプログラムの確立は今後喫緊の課題となるであろう。

表7-2 弾性着衣・包帯の療養費払い(官報,2008 年)

地方社会保険事務局長
地方厚生(支)局長
都道府県民生主管部(局)
 国民健康保険課(部)長
都道府県老人医療主管部(局)
 老人医療主管課(部)長
 

殿

保医発 第0321001 号
平成20 年3 月21 日

厚生労働保険局医療課長

四肢のリンパ浮腫治療のための弾性着衣等に
係る療養費の支給における留意事項について

四肢のリンパ浮腫治療のために使用される弾性ストッキング,弾性スリーブ,弾性グローブ及び弾性包帯(以下「弾性着衣等」と言う。)にかかる療養費の支給については,「四肢のリンパ浮腫治療のための弾性着衣等に係る療養費の支給について」(平成20 年3 月21 日保発第0321002 号)により通知されたところであるが,支給に当たっての留意事項は以下のとおりであるので,周知を図られたい。

1 支給対象となる疾病

リンパ節郭清術を伴う悪性腫瘍(悪性黒色腫,乳腺をはじめとする腋窩部のリンパ節郭清を伴う悪性腫瘍,子宮悪性腫瘍,子宮附属器悪性腫瘍,前立腺悪性腫瘍及び膀胱をはじめとする泌尿器系の骨盤内のリンパ節郭清を伴う悪性腫瘍)の術後に発生する四肢のリンパ浮腫

2 弾性着衣(弾性ストッキング,弾性スリーブ及び弾性グローブ)の支給

(1) 製品の着圧

30 mmHg 以上の弾性着衣を支給の対象とする。ただし,関節炎や腱鞘炎により強い着圧では明らかに装着に支障をきたす場合など,医師の診断により特別の指示がある場合は20 mmHg 以上の着圧であっても支給して差し支えない。

(2) 支給回数

1 度に購入する弾性着衣は,洗い替えを考慮し,装着部位毎に2 着を限度とする。(パンティストッキングタイプの弾性ストッキングについては,両下肢で1 着となることから,両下肢に必要な場合であっても2 着を限度とする。また,例えば①乳がん,子宮がん等複数部位の手術を受けた者で,上肢及び下肢に必要な場合,②左右の乳がんの手術を受けた者で,左右の上肢に必要な場合及び③右上肢で弾性スリーブと弾性グローブの両方が必要な場合などは,医師による指示があればそれぞれ2 着を限度として支給して差し支えない。)

また,弾性着衣の着圧は経年劣化することから,前回の購入後6 ヶ月経過後において再度購入された場合は,療養費として支給して差し支えない。

(3) 支給申請費用

療養費として支給する額は,1 着あたり弾性ストッキングについては28, 000 円(片足用の場合は25, 000 円),弾性スリーブについては16, 000 円,弾性グローブについては15, 000 円を上限とし,弾性着衣の購入に要した費用の範囲内とすること。

3 弾性包帯の支給

(1) 支給対象

弾性包帯については,医師の判断により弾性着衣を使用できないとの指示がある場合に限り療養費の支給対象とする。

(2) 支給回数

1 度に購入する弾性包帯は,洗い替えを考慮し,装着部位毎に2 組を限度とする。また,弾性包帯は経年劣化することから,前回の購入後6 ヶ月経過後において再度購入された場合は,療養費として支給して差し支えない。

(3) 支給申請費用

療養費として支給する額は,弾性包帯については装着に必要な製品(筒状包帯,パッティング包帯,ガーゼ指包帯,粘着テープ等を含む)1 組がそれぞれ上肢7, 000 円,下肢14, 000 円を上限とし,弾性包帯の購入に要した費用の範囲内とすること。

4 療養費の支給申請書には,次の書類を添付させ,治療用として必要がある旨を確認した上で,適正な療養費の支給に努められたいこと。

(1) 療養担当に当たる医師の弾性着衣等の装着指示書(装着部位,手術日等が明記されていること。別紙様式を参照のこと。)

(2) 弾性着衣等を購入した際の領収書又は費用の額を証する書類。

2. 治 療

リンパ浮腫に対する複合的治療(複合的理学療法に日常生活上の指導やセルフケア指導を加えた包括的な保存的治療)は,障害のあるリンパ経路に起きたうっ滞を解消することによって,組織間隙に貯留する体液をリンパ管に回収することを目的とするもので,これまで臨床的な合意は十分にあるにもかかわらず,科学的根拠が得られていなかった。リンパ浮腫は発症すれば通常根治を期待できないので,継続的な治療と定期的な経過観察が必須である。これをより効果的に実現するためには,患者の治療歴や癌の状態,浮腫の状態とその重症度に加え,患者のライフスタイルや理解力,嗜好,経済状態など種々の因子を考慮して,それぞれの患者の治療法を選択する必要がある。ほかの慢性疾患同様,リンパ浮腫の日常的な管理は患者の適切なセルフケアによるところが大きく,具体的には治療後に改善した状態を維持し,悪化や再燃を最大限抑止できるよう,患者や家族への教育に注力しなければならず,専門の知識や技術を習得した医療者のチームがこれにあたるべきである。

厚生労働省の助成研究として2004 年から開始された患者状態適応型パス(Patient Condition Adaptive Path System: PCAPS)のリンパ浮腫領域で展開している臨床プロセスチャートを図3 に示す 9)。さらに同省が助成するクリニカルパスに関する班研究のリンパ浮腫小班で策定された病期ごとのクリニカルパスは,治療概要を知るうえで有用であるが,リンパ浮腫を発症した患肢では同一肢でも病期が混在している症例がいるので,画一的な治療は控えなければならない 10)表8)。

図3 リンパ浮腫の臨床プロセスチャート

※拡大表示のうえ、ご利用ください

表8 リンパ浮腫保存的治療基本パス(医療者用)(出典:独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センター)
病期

がん治療前

有リスク期(がん治療後予防期)

Ⅰ期

Ⅱ期早期

Ⅱ期晩期

Ⅲ期

症状 還流障害はあるがリンパ浮腫は顕在化していない 夕方になるとむくむ程度,患肢挙上で浮腫改善,部位により圧迫痕が残りやすくなる(圧迫痕は下肢に現れやすいが上肢では現れることが少ない) 安静臥床や患肢挙上でも浮腫改善しない 皮膚は硬くなるが圧迫痕は残る 安静臥床や患肢挙上でも浮腫改善しない 皮膚が硬くなり圧迫痕が残りにくくなる。 皮膚が硬くなり圧迫痕は残らなくなる 乳頭腫,リンパ小疱,リンパ漏,象皮症などの合併症が出現する
目標 リンパ浮腫の病態(リスク)が説明ができる
予防のための日常生活の注意点が説明ができる
ケアの方法が説明ができる
早期発見の方法が説明ができる
リンパ浮腫の病態(リスク)が説明ができる
予防のための日常生活の注意点が説明ができる
セルフケアの方法が説明ができる
早期発見の方法が説明ができる
リンパ浮腫の病態が説明ができる
日常生活の注意点が理解でき実行できるように指導ができる
セルフケアの方法が理解でき実行できるように指導ができる
進行をおさえ浮腫が改善できるように指導ができる
リンパ浮腫の病態が説明ができる
日常生活の注意点が理解でき実行できるように指導ができる
セルフケアの方法が理解でき実行できるように指導ができる
進行をおさえ浮腫が改善できるように指導ができる
弾性包帯の施術と指導ができる
リンパ浮腫の病態が説明ができる
日常生活の注意点が理解でき実行できるように説明ができる
セルフケアの方法が理解でき実行できるように指導ができる
進行をおさえ浮腫が改善できるように指導ができる
弾性包帯の施術と指導ができる
リンパ浮腫の病態が説明ができる
日常生活の注意点が理解でき実行できるように説明ができる
セルフケアの方法が理解でき実行できるように指導ができる
進行をおさえ浮腫が改善できるように指導ができる
弾性包帯の施術と指導ができる
指導
説明
リンパ浮腫指導管理料の算定要件にそった説明指導
  • リンパ浮腫の病因と病態
  • リンパ浮腫の治療方法の概要
  • セルフケアの重要性と局所へのリンパ液の停滞を予防及び改善するための具体的実施方法
  • 生活上の具体的注意事項
  • 感染症の発症等増悪時の対処方法
リンパ浮腫の病態の説明
複合的治療の主に下記について

日常生活上の注意点
スキンケア指導(浮腫の増悪と蜂窩織炎の予防)

早期発見の方法
リンパ浮腫の病態,病期の説明
複合的治療の主に下記について

日常生活上の注意点の説明
スキンケア指導(浮腫の増悪と蜂窩織炎誘発の予防)
セルフリンパドレナージ指導(本人または家族による)
圧迫療法(弾性着衣)の説明
圧迫下の運動療法の説明

弾性着衣などの療養費申請方法(6 ヶ月に一度は可能)
リンパ浮腫の病態,病期の説明
複合的治療の主に下記について

日常生活上の注意点の説明
スキンケア指導(浮腫の増悪と蜂窩織炎誘発の予防)
セルフリンパドレナージ指導(本人または家族による)
圧迫療法(弾性着衣または圧迫包帯)の説明
圧迫下の運動療法の説明

弾性着衣などの療養費申請方法(6 ヶ月に一度は可能)
リンパ浮腫の病態,病期の説明
複合的治療の主に下記について

日常生活上の注意点の説明
スキンケア指導(浮腫の増悪と蜂窩織炎誘発の予防)
セルフリンパドレナージ指導(本人又は家族による)
圧迫療法(弾性着衣または圧迫包帯)の説明
圧迫下の運動療法の説明

弾性着衣などの療養費申請方法(6 ヶ月に一度は可能)
リンパ浮腫の病態,病期の説明
複合的治療の主に下記について

日常生活上の注意点の説明
スキンケア指導(浮腫の増悪と蜂窩織炎誘発の予防)
セルフリンパドレナージ指導(本人又は家族による)
圧迫療法(弾性着衣または圧迫包帯)の説明
圧迫下の運動療法の説明

弾性着衣などの療養費申請方法(6 ヶ月に一度は可能)
合併症の治療の説明
観察
確認
周径計測(左右)術前 術後

上肢(腋窩・上腕・前腕・手首・手部)
下肢(鼠径・大腿・下腿・足首・足部)

体重測定
患者の理解度の確認
周径計測(左右)

上肢(腋窩・上腕・前腕・手首・手部)
下肢(鼠径・大腿・下腿・足首・足部)

浮腫の有無
体重測定(1 回/週)
患者の理解度とセルフケアの実施状況の確認
  • 入院時手術前説明の内容
皮膚を指腹で10 秒程度圧迫することによる圧迫痕の有無
(左右の比較)
周径計測(左右)

上肢(腋窩,上腕,前腕,手首,手部)
下肢(鼠径,大腿,下腿,足首,足部)

表在静脈の見えにくさの確認(健側との比較)
皮膚乾燥の有無
皮膚を指腹で10 秒程度圧迫することによる圧迫痕
の有無(健側との比較)手背,下腿前面など

皮膚がつまみあげにくい部位の確認
炎症症状の有無
体重測定(1 回/週)
患者の理解度とセルフケアの実施状況の確認(2 回 目の受診以降)
周径計測(左右)

上肢(腋窩,上腕,前腕,手首,手部)
下肢(鼠径,大腿,下腿,足首,足部)

表在静脈の見えにくさの確認(健側との比較)
皮膚乾燥の有無
皮膚を指腹で10 秒程度圧迫することによる圧迫痕の有無(健側との比較)手背,下腿前面など

皮膚がつまみあげにくい部位の確認
炎症症状の有無
体重測定(1 回/週)
患者の理解度とセルフケアの実施状況の確認(2 回目の受診以降)
周径計測(左右)

上肢(腋窩,上腕,前腕,手首,手部)
下肢(鼠径,大腿,下腿,足首,足部)

表在静脈の見えにくさの確認(健側との比較)
皮膚乾燥の有無
皮膚を指腹で10 秒程度圧迫することによる圧迫痕の有無(健側との比較)手背,下腿前面など

皮膚がつまみあげにくい部位の確認
炎症症状の有無
皮膚硬化の有無
体重測定(1 回/週)
患者の理解度とセルフケアの実施状況の確認(2 回目の受診以降)
周径計測(左右)

上肢(腋窩,上腕,前腕,手首,手部)
下肢(鼠径,大腿,下腿,足首,足部)

表在静脈の見えにくさの確認(健側との比較)
皮膚乾燥の有無
皮膚を指腹で10 秒程度圧迫することによる圧迫痕の有無(健側との比較)手背,下腿前面など

皮膚がつまみあげにくい部位の確認
炎症症状の有無
皮膚硬化の有無
体重測定(1 回/週)
合併症(乳頭腫,リンパ小疱,リンパ漏)の有無
患者の理解度とセルフケアの実施状況の確認(2 回目の受診以降)
処置
治療
リンパ浮腫指導管理料100 点算定(入院中1 回に限る) リンパ浮腫指導管理料100 点算定(退院後1 回に限る) リンパ浮腫指導管理料100 点算定(退院後1 回に限る)
処置
治療
複合的治療

患肢挙上
スキンケア
セルフリンパドレナージ
弾性着衣の選定と着用指導(必要時)
圧迫下の運動療法(必要時)

複合的治療

患肢挙上
スキンケア
用手的リンパドレナージ
(セルフ+専門的な知識・技術を要する医療者による指導と施術を推奨)
圧迫療法
①弾性着衣の選定と着用指導
②必要に応じて弾性包帯の施術と指導
(専門的な知識・技術を要する医療者による指導と施術を推奨)
圧迫下の運動療法

複合的治療

患肢挙上
スキンケア
用手的リンパドレナージ
(セルフ+専門的な知識・技術を要する医療者による指導と施術を推奨)
圧迫療法
①必要に応じて弾性包帯の施術と指導
②弾性着衣の選定と着用指導
(専門的な知識・技術を要する医療者による指導と施術を推奨)
圧迫下の運動療法

入院治療を推奨(専門的な知識・技術を要する医療者による指導と施術を推奨)

複合的治療

患肢挙上
スキンケア(象皮症には皮膚軟化剤を使用)尿素製剤など?
用手的リンパドレナージ
(セルフ+専門的な知識・技術を要する医療者による指導と施術を推奨)
圧迫療法
①必要に応じて弾性包帯の施術と指導
②弾性着衣の選定と着用指導
(専門的な知識・技術を要する医療者による指導と施術を推奨)
圧迫下の運動療法
合併症の治療
入院治療を推奨(専門的な知識・技術を要する
医療者による指導と施術を推奨)

薬物
治療
  リンパ浮腫単独に対する効果的な薬剤はない リンパ浮腫単独に対する効果的な薬剤はない リンパ浮腫単独に対する効果的な薬剤はない リンパ浮腫単独に対する効果的な薬剤はない リンパ浮腫単独に対する効果的な薬剤はない
検査 特になし 特になし

血液生化学一般検査
胸部エックス線
心電図
超音波

DVTや全身性浮腫との鑑別診断として実施する(必要に応じて実施する)

血管超音波
CT検査
MRI 検査

リンパ浮腫の確定診断として(必要に応じて実施する)

リンパシンチグラフィ
螢光リンパ管造影

考慮されることもある

血液生化学一般検査
胸部エックス線
心電図
超音波

DVTや全身性浮腫との鑑別診断として実施する(必要に応じて実施する)

血管超音波
CT検査
MRI 検査

リンパ浮腫の確定診断として(必要に応じて実施する)

リンパシンチグラフィ
螢光リンパ管造影

考慮されることもある

血液生化学一般検査
胸部エックス線
心電図
超音波

DVTや全身性浮腫との鑑別診断として実施する(必要に応じて実施する)

血管超音波
CT検査
MRI 検査

リンパ浮腫の確定診断として(必要に応じて実施する)

リンパシンチグラフィ
螢光リンパ管造影

考慮されることもある

血液生化学一般検査
胸部エックス線
心電図
超音波

DVTや全身性浮腫との鑑別診断として実施する(必要に応じて実施する)

血管超音波
CT検査
MRI 検査

リンパ浮腫の確定診断として(必要に応じて実施する)

リンパシンチグラフィ
螢光リンパ管造影

考慮されることもある
活動
清潔
食事
  (日常生活上の注意点に則っていれば),特に制限なし (日常生活上の注意点に則っていれば),特に制限なし (日常生活上の注意点に則っていれば),特に制限なし (日常生活上の注意点に則っていれば),特に制限なし (日常生活上の注意点に則っていれば),特に制限なし
受診
時期
と間隔
  症状出現時には早めの受診 セルフケアを習得するまでは頻回(必要により入院) に,習得後は3-6 ヶ月毎(弾性着衣の療養費支給 も考慮)外来初回受診日 セルフケアを習得するまでは頻回(必要により入院)に,習得後は3-6 ヶ月毎(弾性着衣の療養費支給も考慮)
周径差が増大もしくは合併症の悪化時は適宜
セルフケアを習得するまでは頻回(必要により入院)に,習得後は3-6 ヶ月毎(弾性着衣の療養費支給も考慮)
周径差が増大もしくは合併症の悪化時は適宜
セルフケアを習得するまでは頻回(必要により入院)に,習得後は3-6 ヶ月毎(弾性着衣の療養費支給も考慮)
周径差が増大もしくは合併症の悪化時は適宜

<適応基準>腋窩,骨盤内,鼠径部のリンパ節郭清術もしくは,放射線治療を行った乳がん,婦人科がん,消化器がん,膀胱がん,前立腺がん,四肢の皮膚がん症例 とリンパ節転移による浮腫,化学療法施行症例の浮腫
<除外基準>蜂窩織炎などの急性炎症,うっ血性心不全,深部静脈血栓症急性期,重症虚血肢
<注釈> 1.有リスク期でのセルフリンパドレナージはハイリスク症例で行うこともあるが,根拠がないため原則行わない。 2.リンパ浮腫指導管理料100 点(入院中1 回,外来受診時に1 回算定できる)。 3.周径計測の部位は各施設で設定するが毎回同部位を測定する(下記参照)。2008 年度版のリンパ浮腫診療ガイドラインでは,上肢 肘関節上部10cm,肘関節下部5cm,手関節,MP 関節,下肢 鼠径部,膝関節(膝窩)上部10cm,膝関節(膝窩)下部5cm,足関節,足背。 4.検査と処置はあくまでも推奨である。 5.受診間隔はあくまでも目安であり施設により異なる。悪化時は適宜短縮する。 6.弾性包帯・弾性着衣は個別にそして部分的に素材の選定・圧迫方法の工夫などを要する。
※このパスはリンパ浮腫診療の専門施設とがん診療連携拠点病院レベルの病院で使用することを前提とする。複合的治療とは「複合的理学療法」に日常生活指導を加えた保存的治療法のことである。「複合的理学療法」とはスキンケア,用手的リンパドレナージ,圧迫療法,圧迫下の運動療法の4 本柱で行うリンパ浮腫の保存的治療法のことである。

http://ganjoho.jp/data/professional/med_info/path/files/basic_pro_lymphedema01.pdf より)

(1) 複合的治療

複合的治療の初期(集中)治療プログラムは,2 〜4 週間で実施されるが,一部の患者においては,より短期間で最大限の効果が得られる。初期治療が終了したあとも維持治療の効果は継続的に評価する必要があり,治療法の変更に関しては患者のニーズと選択したレジメンの効果をもとに評価する。標準化された複合的治療は弾性着衣・多層包帯法による圧迫,スキンケア,運動療法,MLD で,集中治療の場合は週数回,場合によっては毎日行う。これは患者本人のみならず家族にとっても大きな負担であることから,彼ら自身が治療に専念,協力する強い意志を有していることが前提である。

治療は圧迫療法が基本になるので,末梢動脈の閉塞や虚血性変化の除外にあたっては,積極的にABPI の計測を行い,動脈硬化の有無,程度を確認しておく。ABPI が0. 5 未満ではいかなる圧迫も禁忌,0. 8 未満では着圧を減弱するなどの対応を要する。その他,重症心不全,重症の末梢性ニューロパチー,患肢の急性炎症時なども治療の禁忌となる。

(2) 圧迫療法
①弾性着衣

Ⅰ期リンパ浮腫や四肢形状の歪曲がないⅡ期リンパ浮腫に対しては弾性着衣のよい適用である。着圧は原則として30 mmHg 以上必要だが,患者の状態や耐性によって適宜選択されなければならず,装着指示書に理由を明記すれば20 mmHg 以上の弾性着衣を処方することができる。正しい着脱の指導は非常に重要であり,指導だけにとどまらず実際に患者自身が装着するのを確認,定期的に評価すべきである。

弾性着衣の装着開始後は約4 週間後に評価し,効果が得られた場合は以降3 〜6 ヶ月後に評価する。弾性着衣は経時的に着圧が低くなってくるので,少なくとも6 ヶ月着用したものは交換する必要があり,診察はそれ以上の間隔が空かないようにする。また,着衣の洗濯方法など,扱い方によってはより早く着圧の低下を招くことがあるので,劣化を最大限遅らせるための適切な管理方法についても十分指導しなければならない。

交換時期の診察では,患肢の周径や病期など,状態に変化がなく前回と同じ弾性着衣を選択してよいか否かを必ず再評価する必要がある。

②多層包帯法(multi-layer lymphedema bandaging;MLLB)

四肢の形状に歪曲を生じている,あるいは腫大が著明で市販の弾性着衣装着が困難なⅡ期以降のリンパ浮腫は,多層包帯法による圧迫を中心とした集中治療を開始することが望ましい。MLLB は患者のQOL を著しく低下させるので,その適用には慎重になるべきだが,弾性着衣に比べて短期に結果を出せる利点も忘れてはならない。患者や家族がその利点と欠点について十分に理解ができている場合には積極的に行う価値がある。

※ 圧迫療法の標準的な装着圧

上肢・下肢リンパ浮腫の重症度に応じて弱圧から超高圧まで4 段階のスリーブ圧が経験的に使い分けられている。British Lymphology Society のガイドラインでは,上肢リンパ浮腫を軽度,中等度,重度の浮腫に区分し,おのおのに弱圧(14〜18 mmHg),中圧(20〜25 mmHg),強圧(25〜30 mmHg)の弾性着衣を推奨しており,下肢リンパ浮腫を,早期あるいは軽度,中等度から重度,重度,重度難治性の浮腫に区分し,おのおのに弱圧(14〜21 mmHg),中圧(23〜32 mmHg),強圧(34〜46 mmHg),超強圧(49〜70 mmHg)の弾性着衣を推奨している 5)。処方された圧迫レベルに患者が耐えることができない場合には,低圧の弾性着衣に変更されることもある。

欧米では弾性着衣の標準規格(装着圧:クラスⅠ〜Ⅳ)が決められているが,各国ごとに規格が異なり,ストッキング以外の弾性着衣に関する規格はない(表9)。

一方MLLB は,施術時の患者の症状を考慮しながら熟練者の経験に基づいて行われており,毎回装着圧が測定されるわけではなく,具体的な装着圧にかかわる見解は示されていない。

表9 弾性ストッキングの標準規格 5)
  イギリス
BS6612:1985
フランス
AFNOR G30. 102
ドイツ
RAL-GZ387:2000
アメリカ
クラスⅠ 14 〜17 mmHg 10 〜15 mmHg 18 〜21 mmHg 20 〜30 mmHg
クラスⅡ 18 〜24 mmHg 15 〜20 mmHg 23 〜32 mmHg 30 〜40 mmHg
クラスⅢ 25 〜35 mmHg 20 〜36 mmHg 34 〜46 mmHg 40 〜50 mmHg
クラスⅣ 報告なし > 36 mmHg > 49 mmHg 50 〜60 mmHg
(3)用手的リンパドレナージ(manual lymphatic drainage;MLD)

MLD の目的は,組織間隙に貯留している高蛋白性の体液を起始リンパ管に取り込ませてリンパ液とし,さらにそのリンパ液を標的リンパ節へ向けて排液することである 11)。皮膚浅層に分布する毛細リンパ管を標的としているので,潤滑剤をつけない手掌を患肢の皮膚面に密着させてストレッチするように施術するのが原則である。筋層に働きかけるいわゆるマッサージや,美容目的の「リンパドレナージ(ュ)」などとは目的,標的,手技ともにまったく異なるものであり,リンパ浮腫治療に有効なのは,医療手技として医療施設で提供される用手的リンパドレナージのみである。

(4)運動療法

リンパ浮腫の治療において,運動療法は重要な位置を占めていると考えられているが,その種類,時間,期間など標準化された指針はない。しかし,表層のリンパ管へのアプローチがMLD であるのに対して,弾性着衣や弾性包帯による圧迫下の運動は筋ポンプを利用したリンパドレナージである。さらに関節運動を伴うプログラムは関節可動域の改善,ひいては運動量の増加にもつながり,きめ細かく管理された圧迫下の運動は非常に有用である。

(5)スキンケア

スキンケアの目的は,皮膚の湿潤を維持し健康な組織の状態を保ち,感染の危険性を減少させることである。具体的には,四肢の清潔を保持するとともに,皮膚軟化薬で隣接した部分の湿潤化を図り,良好な状態を保つことをセルフケアとして指導する。また,皮膚の損傷(切傷,火傷,虫刺され,ひび割れなど)を避けることと,日常生活で皮膚を守る方法(患肢を露出しない)などの指導も重要である。

カナダの臨床ガイドラインにおいても,患肢側に予防接種,採血・点滴,血圧測定,鍼術,静脈造影,リンパ管造影などの侵襲を加えるのは避けるべきであると述べられている 12)

(6)外科的治療

発症した四肢リンパ浮腫に対しては,近年リンパ管静脈吻合術が多くの施設で行われるようになった。Ⅰ〜Ⅲ期のリンパ浮腫に対して広く適用され,吻合に用いる静脈や付加的手技の有無などによってさまざまな術式が報告されており,手技の標準化には至っていない。

リンパ管静脈吻合術のほかに,特に海外では重症例,肥満症例に対する姑息的手段として脂肪吸引術や組織切除術などが適用されることがある。ただし,脂肪吸引術や組織切除術は術後に複合的治療の継続が必須である。

※予防的リンパ管静脈吻合術

上肢については,Boccardo らが乳癌に対する腋窩郭清術後の予防的リンパ管静脈吻合術によるリンパ浮腫予防効果におけるランダム化比較試験で,予防群のリンパ浮腫発症率が有意に低く,最大18 ヶ月後までの術前後の体積比較でも予防群の患肢の体積増加が有意に少なかったと報告している 13)。下肢については,Morotti らが外陰部癌に対する鼠径大腿リンパ節郭清を行った症例を対象に,予防的リンパ管静脈吻合術の効果について前向きパイロット試験を報告している 14)。術後に全例リンパシンチグラフィを行ったところ,予防群10 例は正常パターンで,全例で吻合部の開存を認めたのに対し,対照群11 例ではGrade3 の下肢リンパ浮腫発症例2 例でリンパ管の通過障害がみられた。しかし,輸送能の評価においては予防群でやや高い傾向がみられたが有意差はなかった。

このように,上肢においては腋窩郭清術後に予防的リンパ管静脈吻合術を行うとリンパ浮腫の発症率が減少する可能性が示唆されたが,下肢においては有効性を証明する研究はなかった。上肢・下肢いずれも,今後質の高い比較研究の結果が待たれる。

(7)薬物治療

リンパ浮腫に対する薬物治療としては漢方とそれ以外に大別でき,後者はクマリン,フラボンとその誘導体を含むベンゾピロン系薬剤が挙げられるが,いずれも治療効果に関する報告が必ずしも一致しておらず,極めて科学的根拠に乏しい。

3. 治療の変更

いずれの治療方針においても,評価することなく漫然と治療を行ってはならない。複合的治療が,集中治療からセルフケアも含めた維持治療に移行する際はもちろん,長期管理への移行後も,必ずその効果を適切に評価すべきである。周径に加えて,形状,皮膚の状態,柔らかさ,セルフケアの到達度やコンプライアンスなどを客観的かつ多角的に評価し,効果が滞っているか増悪した場合には管理方法を見直し,患者の個別性を十分考慮したうえで,治療方針を変更する必要がある(図45)

図4 治療の変更
4. 長期管理における心理社会的介入

長期管理の目的は,リンパ管の機能を改善し,リンパ浮腫の悪化を抑止することである。長期管理の成否には,患者と介護者のセルフマネジメント,適切で効果的な教育,トレーニング,医学・心理社会的サポートなどが密接に関与する。長期管理においては,圧迫治療(弾性着衣や弾性包帯)の継続がリンパ浮腫の病状安定を実現し得るのであり,専門的な複合的治療と適切な指導の下に行われる長期的なセルフケアとの連動がリンパ浮腫治療の効果を左右すると言っても過言ではない 15)。こうした治療の成功が,ひいては心理社会的利点(ボディイメージの改善と身体的機能の回復)をもたらし,更なるQOL の向上につながる。

文 献

1) Damstra RJ, Mortimer PS. Diagnosis and therapy in children with lymphoedema. Phlebology. 2008;23(6):276-86.

2) International Society of Lymphology. The diagnosis and treatment of peripheral lymphedema. 2009 Concensus Document of the International Society of Lymphology. Lymphology. 2009;42(2):51-60.

3) 北村 薫,赤澤宏平.乳癌術後のリンパ浮腫に関する多施設実態調査と今後の課題.脈管学. 2010;50(6):715-720.

4) Kurz I, Vodder E. Textbook of Dr. Vodder’s manual lymph drainage. Volume 2, Therapy. Harris RS, Eds, Karis Haug Publishers, Heidelberg, 1989.

5) Lymphoedema Framework. Best Practice for the Management of Lymphoedema. International consensus. London:MEP Ltd, 2006.

6) Partsch H, Blättler W. Compression and walking versus bed rest in the treatment of proximal deep venous thrombosis with low molecular weight heparin. J Vasc Surg. 2000 N;32(5):861-9.

7) 厚生労働省官報:診療報酬の算定方法の制定等に伴う実施上の留意事項について.B001-7 リンパ浮腫指導管理料,保医発第0305001 号,2008. 3.5,p70

8) 厚生労働省官報:四肢のリンパ浮腫治療のための弾性着衣等に係る療養費の支給における留意事項について.保医発第0321001 号.2008. 3.21.

9) PCAPS 研究会編著.患者状態適応型パス PCAPS の活用と臨床分析 17. リンパ浮腫領域 2012 年版.日本規格協会.2012;154-165.

10) 河村 進,大西ゆかり,浅野尚美ほか.基礎から最新知識まで 最前線のリンパ浮腫ケア リンパ浮腫のクリニカルパス.臨床看護.2010;36(7):900-6.

11) 北村 薫,大塚俊介:大橋俊夫監修,リンパ浮腫指導技能者養成協会 企画.リンパ浮腫全書-診断・治療と患者指導.2010.へるす出版

12) Harris SR, Hugi MR, Olivotto IA, et al. Clinical practice guidelines for the care and treatment of breast cancer:11. Lymphedema. CMAJ. 2001;164(2):191-9.

13) Boccardo FM, Casabona F, Friedman D, et al. Surgical prevention of arm lymphedema after breast cancer treatment. Ann Surg Oncol. 2011;18(9):2500-5.

14) Morotti M, Menada MV, Boccardo F, et al. Lymphedema microsurgical preventive healing approach for primary prevention of lower limb lymphedema after inguinofemoral lymphadenectomy for vulvar cancer. Int J Gynecol Cancer. 2013;23:769-74.

15) Vignes S, Porcher R, Arrault M, et al. Long-term management of breast cancer-related lymphedema after intensive decongestive physiotherapy. Breast Cancer Res Treat. 2007;101(3):285-90


CQ1

続発性(二次性)リンパ浮腫に対して,弾性着衣は標準治療として勧められるか

推 奨

上肢リンパ浮腫に対して,弾性着衣は維持期の標準治療として勧められる。
下肢については根拠を示すデータが乏しい。

上肢:グレードA3  下肢:グレードD1
背景・目的

弾性着衣(スリーブ,グローブ,ストッキングなど)はリンパ浮腫患者に対する圧迫療法の一方法として用いられ,重力に抗して浮腫の増悪を抑止し,患肢の状態をより良好に保持するために着用する。弾性着衣は主として,圧迫療法導入期の集中治療の後,リンパ浮腫の長期管理を目的に用いられることが多く,弾性着衣単独で用いる場合もあるが,複合的治療の一つとして用いられることが多い。維持期の治療は長期に及ぶため,患者の生活パターンに合わせて一日中着用する場合もあれば,運動時に着用することもあり,患者の身体的・社会心理的な必要性に応じた対応がなされている。弾性着衣には弱圧から超強圧まで4 段階の規格があり,リンパ浮腫の重症度に合わせて選択されている。弾性着衣のサイズ選択のための患肢の計測部位は,既製品,オーダーメイドともに厳格に決められており,サイズの合わないものや誤った着用方法は症状悪化の原因となるため,専門家の指導が必須となる。本項では弾性着衣の有効性について検討した。

解 説

Badger らが行った上肢・下肢のリンパ浮腫患者に対する多層包帯法(multi-layer lymphedema bandaging;MLLB)と弾性着衣を用いた圧迫療法の治療研究では,下肢の浮腫の全縮小率の中央値は,18 日間のMLLB 施術後に弾性ストッキングを24 週間着用した群で31%,弾性ストッキングのみ24 週間着用した群で15. 8%であった 1)

Hornsby らは,25 例の乳癌術後上肢リンパ浮腫症例を対象として,スリーブを用いる群と用いない群にランダム化して弾性着衣の有効性を検討した。両群に運動療法とシンプルリンパドレナージ(simple lymphatic drainage;SLD)とスキンケアの指導も行い,4 週間毎に患肢の体積の変化を評価した。4 週間後,スリーブ着用群では14 例中12 例に患肢の体積の減少を認め,着用しなかった群では11 例中4 例に体積減少を認めた 2)

Bertelli らは,乳癌術後上肢リンパ浮腫症例120 例に6 ヶ月間のスリーブ着用を行い,その有効性を検討した。患肢と健肢の7 カ所での外径の差を合計したものをデルタ値とし,変化を比較した。デルタ値は着用前19. 7 cm に比べ,着用後2 ヶ月で16. 8 cm,着用後6 ヶ月で17. 2 cm と有意に減少していた(p < 0. 0001)。付加治療の有無や患者因子とデルタ値の変化との関連をみると,体重増加が浮腫増悪因子であった。体重増加のあった群では2 ヶ月間でデルタ値は13%減少し,体重増加のなかった患者群では25%減少したと報告している 3)

King らは,乳癌術後上肢リンパ浮腫症例21 例を対象として,圧迫療法の効果を検討した。MLLB を施術する群(M 群)とスリーブとグローブの弾性着衣を着用する群(G群)に分け,2 週間の複合的治療を行い,その後両群とも3 ヶ月間の弾性着衣の着用を行った。10 日目でM 群では70 mL,G 群では5 mL,3 ヶ月目でM 群では97. 5 mL,G群では50 mL 体積が減少していた。また,M 群に比べG 群のほうが圧迫療法に対する患者の許容率が高い傾向があった 4)

その他,複数のレビュー論文でもリンパ浮腫に対する維持療法に弾性着衣が有効であると述べている 5)6)

一方で,Maher らは,30 例の乳癌術後上肢リンパ浮腫症例に対し60 分間の用手的リンパドレナージを行い,その後の30 分間の安静時に弾性着衣を着用する群と着用しない群に分けて比較したが,浮腫の体積減少率は2%以下で両群間に差がなかったと報告している 7)

以上のことから,短時間の弾性着衣の着用による浮腫軽減効果はないものの,維持期における長期間の着用により浮腫軽減効果があると考えられ,弾性着衣は上肢リンパ浮腫に対する標準治療として勧められる。なお,文献1,2,4 はランダム化試験による報告であるが,文献2 では統計学的検討がなく,文献1,4 では弾性着衣に関しては前後比較のデータを採用したため,推奨グレードをA3 とした。下肢の続発性リンパ浮腫に対しては,弾性着衣による圧迫療法が日常臨床で広く行われているが,根拠を示す文献が少ないため推奨グレードD1 とした。

検索式・参考にした二次資料

文献の検索は,CQ に含まれる用語および関連用語をキーワードとして,1)〜2)の手続きで行った。

1) 2008 年4 月から2013 年1 月までに出版された英語の医学論文をPubMed によって検索した。検索語は,「lymphedema AND(compression OR garment OR sleeve)」とした。該当した238 編のうち,以下の基準に当てはまる論文を抽出した。

【適格基準】

①リンパ浮腫患者における診断・治療に関する原著論文,臨床試験,メタアナリシス,ランダム化比較試験

②Primary endpoint がQOL,身体的苦痛,精神的苦痛,生活への影響,あるいは実態調査

【除外基準】

①対象が小児に限定されているもの

②Primary endpoint が非臨床的指標のもの(サイトカイン,免疫学的指標など)

③対象が終末期患者(例えば,生命予後が6 ヶ月以下など)に限定されているもの

④Full-length paper のある同一著者による短報

2) 二次資料として,Cochrane Library, UpToDate, Clinical Evidence および本ガイドライン2008 年度版を参照した。システマティック・レビュー論文も二次資料として用いた。

以上の手順で,本CQ に関係する文献7 編を得た。

文 献

1) Badger CM, Peacock JL, Mortimer PS. A randomized, controlled, parallel-group clinical trial comparing multilayer bandaging followed by hosiery versus hosiery alone in the treatment of patients with lymphedema of the limb. Cancer. 2000;88(12):2832-7.

2) Hornsby R. The use of compression to treat lymphoedema. Prof Nurse. 1995;11(2):127-8.

3) Bertelli G, Venturini M, Forno G, et al. An analysis of prognostic factors in response to conservative treatment of postmastectomy lymphedema. Surg Gynecol Obstet. 1992;175(5):455-60.

4) King M, Deveaux A, White H, et al. Compression garments versus compression bandaging in decongestive lymphatic therapy for breast cancer-related lymphedema:a randomized controlled trial. Support Care Cancer. 2012;20(5):1031-6.

5) Brennan MJ, DePompolo RW, Garden FH. Focused review:postmastectomy lymphedema. Arch Phys Med Rehabil. 1996;77(3 Suppl):S74-80.

6) Lasinski BB, McKillip Thrift K, Squire D, et al. A systematic review of the evidence for complete decongestive therapy in the treatment of lymphedema from 2004 to 2011. PM R. 2012;4(8):580-601.

7) Maher J, Refshauge K, Ward L, et al. Change in extracellular fluid and arm volumes as a consequence of a single session of lymphatic massage followed by rest with or without compression. Support Care Cancer. 2012;20(12):3079-86.


CQ2

続発性リンパ浮腫に対して,弾性包帯は標準治療として勧められるか

推 奨

弾性包帯はリンパ浮腫に対する標準治療として勧められる。

上肢:グレードA3  下肢:グレードA4
背景・目的

弾性包帯は主に多層包帯法(MLLB)としてリンパ浮腫に対する圧迫療法に用いられている。中等症(Ⅱ期早期),重症(Ⅱ期晩期,Ⅲ期)のリンパ浮腫患者の治療導入期において,浮腫の速やかな軽減を図るために用いられ,また維持期においては,リンパ浮腫増悪予防のために患者自身による自宅でのMLLB 施術も行われている。通常,MLLB にはリンパ浮腫専用の弾性包帯を使用し,一日中包帯を装着することが勧められている。MLLB 施術開始時は,リンパ浮腫の軽減による装着圧の低下がみられるため,適宜包帯の巻き直しが必要とされている。重篤な合併症を回避するため,治療開始時には専門家による施術が必須となるが,十分な指導により患者自身による自宅での施術も可能となる。本項ではリンパ浮腫治療におけるMLLB の有効性を検討した。

解 説

McNeely らは,乳癌術後上肢リンパ浮腫症例50 例において用手的リンパドレナージ(manual lymphatic drainage;MLD)+ MLLB 併用とMLLB 単独による体積減少量を検討した。4 週間の治療にて患肢の体積は,併用群260 mL(46. 1%),単独群246 mL(38. 1%)と両群とも有意に減少した(p = 0. 001) 1)

King らは,乳癌術後上肢リンパ浮腫症例21 例を対象として圧迫療法のランダム化比較試験を行った。MLLB を施術する群(M 群)とスリーブとグローブの弾性着衣を着用する群(G 群)に分け,2 週間の複合的治療を行い,その後両群とも3 ヶ月間の弾性着衣の着用を行った。開始より10 日目(M 群70 mL,G 群5 mL,p = 0. 387),3 ヶ月目(M群97. 5 mL,G 群50 mL,p = 0. 182)ともにM 群にて患肢の体積減少が多かった 2)

Vignes らは,乳癌術後上肢リンパ浮腫症例537 例にMLLB を含む複合的治療を11日間行い,1, 054 ± 633 mL だった患肢の体積が647 ± 351 mL に減少した(p < 0. 0001)。また,12 ヶ月間の維持療法中に患肢の体積は平均84 mL 増加し,52%の患者にて10%以上の体積増加率を認めた。維持期に自己MLLB の施術を行っていた患者群では,行わなかった患者群に比べ,10%以上の患肢体積の増加を認めた患者の割合が有意に少なかった(p < 0. 0001)。維持期の弾性着衣着用の有無でも同様の結果がみられた(p <0. 0001) 3)

Badger らは上肢・下肢リンパ浮腫症例90 例に対する圧迫療法のランダム化比較試験で,18 日間のMLLB 施術+ 24 週間の弾性着衣着用群と24 週間の弾性着衣単独着用群を比較し,24 週間後の体積減少率がMLLB 併用群にて有意に高かった(31 % vs15. 8% , p < 0. 001)と報告している 4)

その他,複数のシステマティック・レビューにより,上肢,下肢ともにMLLB 施術によるリンパ浮腫の軽減効果が示されている 5)〜7)

なお,重症動脈閉塞〔ankle-brachial pressure index( ABPI) 0.5未満,また足尖の動脈圧30 mmHg 未満〕の状態は圧迫療法の禁忌となる 8)。また,バンデージによる上肢の末梢神経麻痺の報告もあり,注意が必要である 9)

以上より,MLLB は治療導入期における着用によりリンパ浮腫軽減があると考えられ,中等度(Ⅱ期早期)以上のリンパ浮腫に対する標準治療として勧められる。

検索式・参考にした二次資料

文献の検索は,CQ に含まれる用語および関連用語をキーワードとして,1)〜2)の手続きで行った。

1) 2008 年4 月から2013 年1 月までに出版された英語の医学論文をPubMed によって検索した。検索語は,「lymphedema AND(compression OR MLLB OR multilayerbandaging OR bandage)」とした。該当した314 編のうち,以下の基準に当てはまる論文を抽出した。

【適格基準】

①リンパ浮腫患者における診断・治療に関する原著論文,臨床試験,メタアナリシス,ランダム化比較試験

②Primary endpoint がQOL,身体的苦痛,精神的苦痛,生活への影響,あるいは実態調査

【除外基準】

①対象が小児に限定されているもの

②Primary endpoint が非臨床的指標のもの(サイトカイン,免疫学的指標など)

③対象が終末期患者(例えば,生命予後が6 ヶ月以下など)に限定されているもの

④Full-length paper のある同一著者による短報

2) 二次資料として,Cochrane Library, UpToDate, Clinical Evidence および本ガイドライン2008 年度版を参照した。システマティック・レビュー論文も二次資料として用いた。

以上の手順で,本CQ に関係する文献9 編を得た。

文 献

1) McNeely ML, Magee DJ, Lees AW, et al. The addition of manual lymph drainage to compression therapy for breast cancer related lymphedema:a randomized controlled trial. Breast Cancer Res Treat. 2004;86(2):95-106.

2) King M, Deveaux A, White H, et al. Compression garments versus compression bandaging in decongestive lymphatic therapy for breast cancer-related lymphedema:a randomized controlled trial. Support Care Cancer. 2012;20(5):1031-6.

3) Vignes S, Porcher R, Arrault M, et al. Long-term management of breast cancer-related lymphedema after intensive decongestive physiotherapy. Breast Cancer Res Treat. 2007;101(3):285-90.

4) Badger CM, Peacock JL, Mortimer PS. A randomized, controlled, parallel-group clinical trial comparing multilayer bandaging followed by hosiery versus hosiery alone in the treatment of patients with lymphedema of the limb. Cancer. 2000;88(12):2832-7.

5) Kärki A, Anttila H, Tasmuth T, et al. Lymphoedema therapy in breast cancer patients:a systematic review on effectiveness and a survey of current practices and costs in Finland. Acta Oncol. 2009;48(6):850-9.

6) Devoogdt N, Van Kampen M, Geraerts I, et al. Different physical treatment modalities for lymphoedema developing after axillary lymph node dissection for breast cancer:a review. Eur J Obstet Gynecol Reprod Biol. 2010;149(1):3-9.

7) Lasinski BB, McKillip Thrift K, Squire D, et al. A systematic review of the evidence for complete decongestive therapy in the treatment of lymphedema from 2004 to 2011. PM R. 2012;4(8):580-601.

8) Flour M, Clark M, Partsch H, et al. Dogmas and controversies in compression therapy:Report of an International Compression Club(ICC)meeting, Brussels, May 2011. Int Wound J. 2012 .

9) Kara M, Ozçakar L, Malas FU, et al. Median, ulnar, and radial nerve entrapments in a patient with breast cancer after treatment for lymphedema. Am Surg. 2011;77(2):248-9.


CQ3

スキンケアは続発性リンパ浮腫の発症・増悪の予防に有効か

推 奨

リンパ浮腫の増悪因子である皮膚合併症の予防にスキンケアは有効である。

グレードB2
背景・目的

高蛋白質含有の細胞外液が皮下間質組織に貯留することにより,リンパ浮腫患者の患肢の皮膚にはさまざまな変化が生じ,細菌感染への抵抗性が低下するとされている。蜂窩織炎をはじめとする感染症はリンパ浮腫の増悪因子とされているため,リンパ浮腫患者の皮膚障害を注意深く管理することは重要である。スキンケアは,皮膚の衛生と保湿を保つことにより皮膚のバリア機能を保持することを目的とした手技であり,リンパ浮腫に対する複合的治療の一環として広く行われている。

スキンケアの方法と用いる材料についての統一された見解はなく,使用する保湿剤の含有成分により稀にアレルギー感作を受ける危険性も指摘されているため,専門家の十分な指導の下に行われるべきとされている。本項ではスキンケアの有効性について検討した。

解 説

Dupuy らは,多変量解析により下肢蜂窩織炎の危険因子として,リンパ浮腫(オッズ比:71. 2),下肢潰瘍や趾間擦疹など皮膚防御機構の破綻(オッズ比:23. 8)を挙げている 1)。Vignes らは,807 例の乳癌術後上肢リンパ浮腫症例の検討で,単変量(p <0. 0001),多変量解析(p = 0. 011)ともに蜂窩織炎の既往がリンパ浮腫の増悪に関与していることを示した 2)。Ko らは,229 例の上肢・下肢リンパ浮腫症例にて,スキンケアを含む複合的治療とその後の維持療法を行うことで,蜂窩織炎の発症率が1 年に1 例あたり1. 1 回から0. 65 回に減少したと報告している 3)

スキンケアは皮膚の衛生状態を保ち,保湿することにより皮膚の状態を良好に保つことができるが,個々の方法や使用する保湿剤については統一されていない 4)〜6)。複数のコンセンサスやガイドラインは感染予防のためのスキンケアの重要性を述べ,リンパ浮腫に対する複合的治療の一つの構成因子として重要視しているものの,スキンケア単独の有効性を示す根拠は乏しいことも明記している 7)〜9)

以上より,リンパ浮腫に対するスキンケアは広く行われており,リンパ浮腫増悪予防に対する有効性に臨床的合意はあるものの,増悪予防に対するスキンケア単独での有効性を検討した報告は少ないため,推奨グレードB2 とした。

検索式・参考にした二次資料

文献の検索は,CQ に含まれる用語および関連用語をキーワードとして,1)〜2)の手続きで行った。

1) 1980 年1 月から2013 年1 月までに出版された英語の医学論文をPubMed によって検索した。検索語は,「lymphedema AND skin care」とした。該当した202 編のうち,以下の基準に当てはまる論文を抽出した。

【適格基準】

①リンパ浮腫患者における診断・治療に関する原著論文,臨床試験,メタアナリシス,ランダム化比較試験

②Primary endpoint がQOL,身体的苦痛,精神的苦痛,生活への影響,あるいは実態調査

【除外基準】

①対象が小児に限定されているもの

②Primary endpoint が非臨床的指標のもの(サイトカイン,免疫学的指標など)

③対象が終末期患者(例えば,生命予後が6 ヶ月以下など)に限定されているもの

④Full-length paper のある同一著者による短報

2) 二次資料として,Cochrane Library, UpToDate, Clinical Evidence および本ガイドライン2008 年度版を参照した。システマティック・レビュー論文も二次資料として用いた。

以上の手順で,本CQ に関係する文献9 編を得た。

文 献

1) Dupuy A, Benchikhi H, Roujeau JC, et al. Risk factors for erysipelas of the leg(cellulitis):case-control study. BMJ. 1999;318(7198):1591-4.

2) Vignes S, Arrault M, Dupuy A. Factors associated with increased breast cancer-related lymphedema volume. Acta Oncol. 2007;46(8):1138-42.

3) Ko DS, Lerner R, Klose G, et al. Effective treatment of lymphedema of the extremities. Arch Surg. 1998;133(4):452-8.

4) MacLaren JA. Skin changes in lymphoedema:pathophysiology and management options. Int J Palliat Nurs. 2001;7(8):381-8.

5) Williams A, Venables J. Skin care in patients with uncomplicated lymphoedema. J Wound Care. 1996;5(5):223-6.

6) Cheville AL, McGarvey CL, Petrek JA, et al. Lymphedema management. Semin Radiat Oncol. 2003;13(3):290-301.

7) Kerchner K, Fleischer A, Yosipovitch G. Lower extremity lymphedema update:pathophysiology, diagnosis, and treatment guidelines. J Am Acad Dermatol. 2008;59(2):324-31.

8) Devoogdt N, Van Kampen M, Geraerts I, et al. Different physical treatment modalities for lymphoedema developing after axillary lymph node dissection for breast cancer:a review. Eur J Obstet Gynecol Reprod Biol. 2010;149(1):3-9.

9) Vojáčková N, Fialová J, Hercogová J. Management of lymphedema. Dermatol Ther. 2012;25(4):352-7.


CQ4

続発性リンパ浮腫に対して,

a. 用手的リンパドレナージ(MLD)は予防の一環として勧められるか

b. 用手的リンパドレナージ(MLD)は標準治療として勧められるか

c. シンプルリンパドレナージ(SLD)は予防の一環として勧められるか

d. シンプルリンパドレナージ(SLD)は標準治療として勧められるか

推 奨

リンパ浮腫に対するリンパドレナージの有効性やリンパ浮腫の発症を予防する質の高い根拠は示されておらず,症例の選択は慎重に行われるべきである。

MLD 予 防 上肢:グレードD1 下肢:推奨度評価なし
標準治療 上肢:グレードC2 下肢:グレードD1
SLD 予 防 上肢:推奨度評価なし 下肢:推奨度評価なし
標準治療 上肢:グレードC2 下肢:グレードD1
背景・目的

リンパ浮腫に対するリンパドレナージについては数多くの報告がなされており,種類(または分類)は用手的リンパドレナージ(MLD)とシンプルリンパドレナージ(SLD)がある。MLD は,施術者の手の皮膚が患者の皮膚表面をストレッチすることによって,皮膚浅層の毛細リンパ管に付着した繋留フィラメント(アンカーフィラメント)が引っ張られた際,内皮細胞の間隙が広がるので,そのすき間に貯留している高蛋白性の組織液を流入させる,という原理であり,さらにSLD はより簡便で患者および家族が自宅で適切に行える方法である。しかしながら,SLD の適切な回数や方法が確立されていないのが実状である。本項ではMLD とSLD の治療効果および浮腫予防効果について検討した。

解 説

MLD は,乳癌術後上肢のリンパ浮腫の治療として以前より数多く報告されてきた。

Williams らは,乳癌に伴うリンパ浮腫を有する女性症例31 例に対し,MLD 治療を3週間毎日行い,無治療期間6 週間を経て,3 週間のSLD 治療を毎日行う群と,SLD 治療を3 週間毎日行い,無治療期間6 週間を経て,3 週間のMLD 治療を毎日行う群にランダム化して分け,浮腫の改善率をみた。結果としてMLD とSLD の統計的有意差はみられなかったが,ともに介入前に比べ有意にリンパ浮腫の改善はみられた 1)

Andersen らは,乳癌に伴うリンパ浮腫を有する女性症例42 例を2 群に分けた。標準療法群は弾性スリーブ,スキンケア,運動療法,治療群は標準療法にドレナージを追加する(2 週間に8 回MLD を受け,自宅で毎日SLD を行う)群とし,ドレナージの効果を検討した。結果は両治療群ともに浮腫の軽減はみられたが,治療群間には有意差はなかった 2)

Zimmermann らは,乳癌手術を受ける67 例に対しMLD 施行群33 例と対照群34 例にランダム化し,手術前,術後2 日目,7 日目,14 日目,3 ヶ月目,6 ヶ月目に健側と患側の浮腫を測定した。結果として術後6 ヶ月目にMLD による介入によってリンパ浮腫の発症が有意に抑制された。ただし,肘から上の浮腫の改善はなかった 3)

2013 年にHuang らは,PubMed, EMBASE, CINAHL, PEDro(Physiotherapy Evidence Database), SCOPUS, Cochrane Central Register of Controlled Trials, and the Clinical-Trials.gov registry(http://clinicaltrials.gov/)からシステマティック・レビューを行った。MLD というキーワードで過去から2012 年に抽出した170 論文中,評価し得る10論文のべ566 例について検討した。MLD の予防に関する論文は2 編,治療に関する論文は8 編あった。結果は統計学的にはMLD の予防効果や治療効果に有意差は認められなかった 4)

一方,乳癌術後リンパ浮腫発症に対する予防として,MLD やSLD の効果も長く不明であったが,近年,いくつかの論文として報告されている。

Devoogdt らは,腋窩リンパ節郭清を受けた乳癌症例337 例に対し同意が得られた160 例で検討を行った。対照群として術後早期からの30 分間の運動療法のみ(肩の運動,大胸筋のストレッチ,創部のマッサージ),治療群として術後早期からの30 分間の運動療法(肩の運動,大胸筋のストレッチ,創部のマッサージ)+週1 〜3 回程度40 項目のMLD 治療を行う群に分けた〔その際,BMI(25 以上と25 未満)と腋窩の放射線治療の有無が層別化因子であった〕。その結果,術後12 ヶ月でもリンパ浮腫が対照群で19%に,治療群で24%に発症し,リンパ浮腫の発症率と発症期間に有意差はなかった。さらにQOL(mental health とphysical health)にも差はなかった 5)

また,Lacomba らは,2005 〜2007 年に乳癌手術を受けた120 例に対しMLD および自宅でSLD を行う群と対照群に分け,リンパ浮腫の発症頻度を比較した。結果として,術後1 年時点でMLD および自宅でSLD を行うことにより有意に浮腫の発症を予防した 6)

以上より,上肢に対するMLD およびSLD 併用による浮腫予防効果は,有効性を示すものとそうでないものとがあり,一定の見解が得られていない。その結果,推奨としてはMLD およびSLD 併用は患者の意向に一致し,効果が期待される場合にのみ行うこととし,主治医の判断にゆだねられる。また,SLD 単独による予防効果は報告がないため推奨されない。

次に,下肢に対するMLD とSLD の治療効果の検証を目的として,Szuba らは四肢リンパ浮腫に対する複合的治療(MLD と弾性包帯による圧迫)について前向き試験を行った。治療は四肢リンパ浮腫症例79 例に対してMLD を30 〜60 分間行い,治療3 日目からSLD を開始した。MLD 後は弾性包帯による圧迫を行った。結果として,浮腫の減少は上肢が38%± 56%,下肢が41%± 27%であった 7)

また,Liao らは,四肢リンパ浮腫に対する複合的治療(MLD と弾性包帯による圧迫)について前向き試験を行った。四肢リンパ浮腫症例30 例に対して複合的治療を行い,治療前と後では有意に改善を認めた 8)

このように下肢に対する浮腫の予防効果の報告例は少なく,MLD とSLD の浮腫予防の有効性を証明するエビデンスは存在しない。よって,リンパドレナージの予防的施行は患者の意向を十分に検討し,かつ効果がはっきりと評価される場合に限り行うことを推奨する。

検索式・参考にした二次資料

文献の検索は,CQ に含まれる用語および関連用語をキーワードとして,1)〜2)の手続きで行った。

1) 1980 年から2013 年3 月までに出版された英語の医学論文をPubMed によって検索した。検索語は,「lymphedema AND(manual drainage OR MLD OR SLD)」とした。該当した3, 995 編のうち,以下の基準に当てはまる論文を抽出した。

【適格基準】

①リンパ浮腫患者における診断・治療に関する原著論文,臨床試験,メタアナリシス,ランダム化比較試験

②Primary endpoint がQOL,身体的苦痛,精神的苦痛,生活への影響,あるいは実態調査

【除外基準】

①対象が小児に限定されているもの

②薬物療法・予防

③Primary endpoint が非臨床的指標のもの(サイトカイン,栄養学的指標,免疫学的指標など)

④対象が終末期患者(例えば,生命予後が6 ヶ月以下など)に限定されているもの

⑤Full-length paper のある同一著者による短報

⑥ガイドライン・レビュー論文

2) 二次資料として,Cochrane Library,UpToDate,Clinical Evidence を参照した。

以上の手順で,本CQ に関係する文献8 編を得た。

文 献

1) Williams AF, Vadgama A, Franks PJ, et al. A randomized controlled crossover study of manual lymphatic drainage therapy in women with breast cancer-related lymphoedema. Eur J Cancer Care(Engl). 2002;11(4):254-61.

2) Andersen L, Højris I, Erlandsen M, et al. Treatment of breast-cancer-related lymphedema with or without manual lymphatic drainage-a randomized study. Acta Oncol. 2000;39(3):399-405.

3) Zimmermann A, Wozniewski M, Szklarska A, et al. Efficacy of manual lymphatic drainage in preventing secondary lymphedema after breast cancer surgery. Lymphology. 2012;45(3):103-12.

4) Huang TW, Tseng SH, Lin CC, et al. Effects of manual lymphatic drainage on breast cancer-related lymphedema:a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. World J Surg Oncol. 2013;11:15.

5) Devoogdt N, Christiaens MR, Geraerts I, et al. Effect of manual lymph drainage in addition to guidelines and exercise therapy on arm lymphoedema related to breast cancer:randomised controlled trial. BMJ. 2011;343:d5326.

6) Torres Lacomba M, Yuste Sánchez MJ, Zapico Goñi A, et al. Effectiveness of early physiotherapy to prevent lymphoedema after surgery for breast cancer:randomised, single blinded, clinical trial. BMJ. 2010;340:b5396.

7) Szuba A, Cooke JP, Yousuf S, et al. Decongestive lymphatic therapy for patients with cancer-related or primary lymphedema. Am J Med. 2000;109(4):296-300.

8) Liao SF, Huang MS, Li SH, et al. Complex decongestive physiotherapy for patients with chronic cancer-associated lymphedema. J Formos Med Assoc. 2004;103(5):344-8.


CQ5

続発性リンパ浮腫に対して,

a. 圧迫療法や用手的リンパドレナージ(MLD)に間歇的空気圧迫療法(IPC)を加えることは予防の一環として勧められるか

b. 圧迫療法や用手的リンパドレナージ(MLD)に間歇的空気圧迫療法(IPC)を加えることは標準治療として勧められるか

推 奨

リンパ浮腫に対する間歇的空気圧迫療法(IPC)の単独の有効性やリンパ浮腫の発症の予防を検証したエビデンスはなく,唯一,圧迫療法にIPC を加えることで上肢の浮腫軽減にある一定の効果が得られる。ただし,質の高い根拠は示されておらず,症例の選択は慎重に行われるべきである。

予 防 上肢:推奨度評価なし 下肢:推奨度評価なし
標準治療 上肢:グレードD1 下肢:推奨度評価なし
背景・目的

間歇的空気圧迫療法(intermittent pneumatic compression;IPC)はバッグに包まれた四肢に空気圧を加えるもので,空気圧によってリンパ管の流れを促し,浮腫治療に貢献するとされてきた。通常,1 サイクル30 分,30 〜40 mmHg で行われ,末梢側から中枢側に向かって圧をかける。しかしながら,IPC の有効性やその適切な回数や方法は確立されていないのが実状である。本項ではIPC の治療効果および浮腫予防効果について検討した。

解 説

IPC は,乳癌術後リンパ浮腫の治療として以前より数多く報告されてきた。

Haghighat らは,乳癌術後上肢リンパ浮腫患者に対するIPC について,圧迫療法単独と,圧迫療法とIPC とを併用した場合を比較し,その安全性と効力について調査するためランダム化前向き試験を行った。リンパ浮腫になった112 例の乳癌術後症例をランダム化し,グループ1 は圧迫療法のみ,グループ2 は圧迫療法と圧迫施術の間にIPC を毎日行った。結果として各群ともに治療前より浮腫は軽減していたが,IPC を併用するほうが圧迫療法単独より改善率は低かった(43. 1% vs. 37. 5%,p = 0. 036) 1)

Szolnoky らは,乳癌術後上肢リンパ浮腫症例に対して,MLD 単独療法とMLD とIPC とを併用した場合を比較し,その安全性と効力について調査するためランダム化前向き試験を行った。リンパ浮腫になった27 例の乳癌術後症例を2 群に分けた。グループ1 はMLD 60 分1 日1 回のみ,グループ2 ではMLD 30 分とIPC 30 分1 日1 回を毎日行った。結果として各群ともに治療前より浮腫は軽減し,IPC を併用するほうがMLD 単独より14 日目から有意に改善した 2)

Fife らは,乳癌術後上肢リンパ浮腫症例に対して,通常のIPC(SPCD)とプログラム化できるIPC(APCD)とを比較し,その安全性と効力について調査するためランダム化前向き試験を行った。リンパ浮腫になった36 例の乳癌術後症例を2 群に分けた。グループ1 はSPCD〔SPCD(Bio Compression 2004 Sequential Circulator PCD, Bio Compression Systems, Moonachie NJ, USA)〕1日1回1時間のみ,グループ2はAPCD〔APCD(Flexitouch system, Tactile Systems Technology, Inc., Minneapolis MN, USA)〕で1 時間を12 週間毎日行った。結果は各群ともに治療前より浮腫は軽減し,SPCD では16%,APCD では29%改善した 3)

Feldman らは,乳癌術後のリンパ浮腫におけるIPC についてレビューし検討した。IPC というキーワードで2004 〜2011 年の期間の論文を抽出した。最終的に評価し得る13 論文について検討を行った結果,エビデンスレベルⅠが2 編,Ⅱが3 編,Ⅲが5 編,Xが3 編であった。単独ではないが,MLD もしくは圧迫療法と併用することで一定の効果があったのは11 編,効果なしは2 編であった 4)

以上より,最近ではIPC 単独のエビデンスはないものの,圧迫療法にIPC を付加することで有効性を示すものが報告されてきているが,依然有効性がないという報告もあり,一定の見解が得られていない。その結果,推奨グレードD1 として,患者の意向に一致し,効果が期待される場合にのみ行うことが推奨され,主治医の判断にゆだねられる。

検索式・参考にした二次資料

文献の検索は,CQ に含まれる用語および関連用語をキーワードとして,1)〜2)の手続きで行った。

1) 1980 年から2013 年3 月までに出版された英語の医学論文をPubMed によって検索した。検索語は,「lymphedema AND intermittent pneumatic compression」とした。該当した3, 995 編のうち,以下の基準に当てはまる論文を抽出した。

【適格基準】

①リンパ浮腫患者における診断・治療に関する原著論文,臨床試験,メタアナリシス,ランダム化比較試験

②Primary endpoint がQOL,身体的苦痛,精神的苦痛,生活への影響,あるいは実態調査

【除外基準】

①対象が小児に限定されているもの

②薬物療法・予防

③Primary endpoint が非臨床的指標のもの(サイトカイン,栄養学的指標,免疫学的指標など)

④対象が終末期患者(例えば,生命予後が6 ヶ月以下など)に限定されているもの

⑤Full-length paper のある同一著者による短報

⑥ガイドライン・レビュー論文

2) 二次資料として,Cochrane Library,UpToDate,Clinical Evidence を参照した。

以上の手順で,本CQ に関係する文献4 編を得た。

文 献

1) Haghighat S, Lotfi-Tokaldany M, Yunesian M, et al. Comparing two treatment methods for post mastectomy lymphedema:complex decongestive therapy alone and in combination with intermittent pneumatic compression. Lymphology. 2010;43(1):25-33.

2) Szolnoky G, Lakatos B, Keskeny T, et al. Intermittent pneumatic compression acts synergistically with manual lymphatic drainage in complex decongestive physiotherapy for breast cancer treatment-related lymphedema. Lymphology. 2009;42(4):188-94.

3) Fife CE, Davey S, Maus EA, et al. A randomized controlled trial comparing two types of pneumatic compression for breast cancer-related lymphedema treatment in the home. Support Care Cancer. 2012;20(12):3279-86.

4) Feldman JL, Stout NL, Wanchai A, et al. Intermittent pneumatic compression therapy:a systematic review. Lymphology. 2012;45(1):13-25.


CQ6

肥満は続発性リンパ浮腫発症の危険因子か

推 奨

肥満は,乳癌あるいはその治療によって起こる上肢リンパ浮腫の危険因子と考えられる。
下肢リンパ浮腫については,肥満とリンパ浮腫が関連するとの論文は得られなかった。したがって,エビデンスがないため推奨度評価なしとした。

上肢:グレードB2  下肢:推奨度評価なし
背景・目的

肥満はリンパ浮腫の発症と関連しているとされ,乳癌術後患者指導の項目にも必ず含まれている。しかしながら,これまで肥満が術後リンパ浮腫とどの程度かかわっているのか,きちんとした検証はなされてこなかった。

本CQ は初版時,質の高い臨床研究が非常に少なくグレードC にとどまっていたが,上肢に関しては近年,非ランダム化比較試験やコホート研究が増加し,一致した結果が得られてきている。本項では肥満と二次性リンパ浮腫に関する最近の知見を検証した。

解 説

Ridner らは乳癌症例38 例について,BMI とリンパ浮腫の関連を調べた。乳癌診断後6 ヶ月以降におけるリンパ浮腫の割合が,BMI 30 以上は30 未満の3. 6 倍であった(95%CI:1. 42-9. 04, p = 0. 007) 1)。Kwan らは乳癌997 例の検討を行った。133 例(13. 3%)がリンパ浮腫を有しており,乳癌診断時の肥満はリンパ浮腫の危険因子(HR = 1. 43:95% CI:0. 88-2. 31)とした 2)。Swenson らは乳癌術後でリンパ浮腫のある94 例とリンパ浮腫のない94 例を比較したところ,単変量解析ではBMI > 25(p = 0. 009),腋窩照射(p = 0. 011),乳房切除(p = 0. 008),化学療法(p = 0. 033),転移リンパ節数(p =0. 009),術後リンパ液吸引(p = 0. 005),癌の増殖汚性(p = 0. 008)で有意差があった。多変量解析では肥満のみリンパ浮腫と関連していた(p = 0. 022) 3)。腋窩郭清を伴う治療を受けた乳癌症例を検討したJohansson らによると,リンパ浮腫群で手術時(p = 0. 03)および試験登録時(p = 0. 04)のBMI が有意に高かった 4)。Helyer らは137 例の乳癌症例で,診断されてから腕の体積を3 ヶ月毎に追跡した。24 ヶ月時点で16 例(11. 6%)にリンパ浮腫がみられた。単変量解析でリンパ浮腫のリスクはBMI に有意に関連していた(p = 0. 003)。多変量解析では,BMI > 30 とBMI < 25 の患者を比較するとオッズ比2. 93(95% CI:1. 03-8. 31)であった 5)。その他,BMI 高値がリンパ浮腫の高リスクである,とする報告が多数みられる 6)〜10)

センチネルリンパ節生検(sentinel lymph node biopsy;SLNB)は乳癌女性のリンパ浮腫を減少させることが期待される。これに関しては,臨床的リンパ節転移陰性乳癌症例で,SLNB を行った600 例(SLNB 群)とSLNB 後に腋窩リンパ節郭清(axillary lymph node dissection;AXLD)を行った336 例(SLNB/ AXLD 群)について,リンパ浮腫のフォローを行った結果がMcLaughlin らによって示されている。術後上肢の周径測定でSLNB 単独の5%,SLNB/ AXLD の16%にリンパ浮腫がみられた(p < 0. 0001)。リンパ浮腫の危険因子は体重(p < 0. 0001),BMI 高値(p < 0. 0001),手術以降の患側上肢の感染(p < 0. 0001)および外傷(p < 0. 0001)であった 11)。同じ対象を腕の腫脹の診療録記載の有無で解析した場合も同様の結果であった 12)

以上のように,上肢リンパ浮腫に関しては,多くの後ろ向き研究や症例集積研究で肥満との相関がみられている。また,小規模の前向き研究でも同様の結果が確認されている。肥満がリンパ浮腫の危険因子であることはほぼ確実と考えられる。

一方,下肢リンパ浮腫と肥満の関連については論文(英文)がみられず,今後の研究が待たれる。

検索式・参考にした二次資料

文献の検索は,CQ に含まれる用語および関連用語をキーワードとして,1)〜3)の手続きで行った。

1) 2002 年から2013 年3 月までに出版された英語の医学論文をPubMed によって検索した。検索語は,「lymphedema AND(obesity OR body weight)」とした。該当した314 編のうち,以下の基準に当てはまる論文を抽出した。

【適格基準】

①リンパ浮腫患者における診断・治療に関する原著論文,臨床試験,メタアナリシス,ランダム化比較試験

②Primary endpoint がQOL,身体的苦痛,精神的苦痛,生活への影響,あるいは実態調査

【除外基準】

①対象が小児に限定されているもの

②薬物療法・手術

③Primary endpoint が非臨床的指標のもの(サイトカイン,栄養学的指標,免疫学的指標など)

④対象が終末期患者(例えば,生命予後が6ヶ月以下など)に限定されているもの

⑤Full-length paper のある同一著者による短報

⑥ガイドライン,レビュー論文

2) Best practice for the management of lymphoedema 誌からハンドサーチを行った。検索語は,「lymphedema AND(obesity OR body weight)」とした。

3) 二次資料として,Cochrane Library,UpToDate,Clinical Evidence を参照した。

以上の手順で,本CQ に関係する文献12 編を得た。

文 献

1) Ridner SH, Dietrich MS, Stewart BR, et al. Body mass index and breast cancer treatment-related lymphedema. Support Care Cancer. 2011;19(6):853-7.

2) Kwan ML, Darbinian J, Schmitz KH, et al. Risk factors of lymphedema in a prospective breast cancer survivorship study:the Pathways Study. Arch Surg. 2010;145(11):1055-63.

3) Swenson KK, Nissen MJ, Leach JW, et al. Case-control study to evaluate predictors of lymphedema after breast cancer surgery. Oncol Nurs Forum. 2009;36(2):185-93.

4) Johansson K, Ohlsson K, Ingvar C, et al. Factors associated with the development of arm lymphedema following breast cancer treatment:a match pair case-control study. Lymphology. 2002;35(2):59-71.

5) Helyer LK, Varnic M, Le LW, et al. Obesity is a risk factor for developing postoperative lymphedema in breast cancer patients. Breast J. 2010;16(1):48-54.

6) Ahmed RL, Schmitz KH, Prizment AE, et al. Risk factors for lymphedema in breast cancer survivors, the Iowa Women’s Health Study. Breast Cancer Res Treat. 2011;130(3):981-91.

7) Clark B, Sitzia J, Harlow W. Incidence and risk of arm oedema following treatment for breast cancer:a three-year follow-up study. QJM. 2005;98(5):343-8.

8) Dominick SA, Madlensky L, Natarajan L, et al. Risk factors associated with breast cancer-related lymphedema in the WHEL Study. J Cancer Surviv. 2013;7(1):115-23.

9) van der Veen P, De Voogdt N, Lievens P, et al. Lymphedema development following breast cancer surgery with full axillary resection. Lymphology. 2004;37(4):206-8.

10) Vignes S, Arrault M, Dupuy A. Factors associated with increased breast cancer-related lymphedema volume. Acta Oncol. 2007;46(8):1138-42.

11) McLaughlin SA, Wright MJ, Morris KT, et al. Prevalence of lymphedema in women with breast cancer 5 years after sentinel lymph node biopsy or axillary dissection:objective measurements. J Clin Oncol. 2008;26(32):5213-9.

12) McLaughlin SA, Wright MJ, Morris KT, et al. Prevalence of lymphedema in women with breast cancer 5 years after sentinel lymph node biopsy or axillary dissection:patient perceptions and precautionary behaviors. J Clin Oncol. 2008;26(32):5220-6.


CQ7

続発性リンパ浮腫患者に対して体重管理指導を行った場合,行わなかった場合と比べてリンパ浮腫は軽減するか

推 奨

乳癌関連上肢リンパ浮腫患者に対する体重管理指導は,リンパ浮腫による腕の体積増加を抑制し,浮腫を軽減する。
下肢リンパ浮腫については,体重管理指導とリンパ浮腫についての論文が得られなかったため,推奨度評価なしとした。

上肢:グレードA1  下肢:推奨度評価なし
背景・目的

肥満が続発性リンパ浮腫の危険因子であることはCQ6 で既に述べた。したがって,体重を減らし,肥満を改善することによってリンパ浮腫が減少することが期待される。これについての報告を調査した。

解 説

乳癌関連リンパ浮腫患者について,Shaw らがランダム化比較試験を行った。21 例の乳癌関連リンパ浮腫患者を,体重減少の食事指導を受ける群(体重減少群)と一般的な食事指導を受ける群(対照群)の2 群に分け,12 週間後の腕の体積を測定した。体重減少群において腕の腫脹は有意に減少した(p = 0. 003) 1)

Shaw らは別の研究で,乳癌治療を受け,腕にリンパ浮腫のある女性64 例を,摂取カロリー減少による体重減少群(減量食群),低脂肪食であるが摂取カロリーは減らさない群(低脂肪群),食生活をまったく変えない群(対照群)の3 群に分け,24 週後に腕の体積を測定した。対照群に対して減量食群,低脂肪群では,体重(p = 0. 006),BMI(p = 0. 008),皮膚厚(p = 0. 044)が有意に減少した。体重減少と浮腫の改善についての相関関係は有意であること(r:0. 423,p = 0. 002)が示された 2)

Vignes らは,乳癌関連リンパ浮腫患者807 例について,種々の因子とリンパ浮腫の程度との関連について解析を行った。多変量解析の結果,リンパ浮腫の期間(p < 0.001),BMI(p < 0. 001),癌の診断からリンパ浮腫発症までの期間が長い(p = 0. 002),乳房切除(p = 0. 02),蜂窩織炎の既往(p = 0. 011)で有意差があった 3)

上肢リンパ浮腫に関しては,症例数や観察期間が十分とはいえないものの,複数のランダム化比較試験で体重管理を目的とした食事指導によって有意に浮腫の軽減がみられていることや,大規模な後ろ向き研究でBMI はリンパ浮腫の程度と有意な相関がみられている。また,その他の小規模な後ろ向き研究でもおおむね同様の結果を示しており,リンパ浮腫改善のために体重管理指導は重要であり,有効であると考えられる。

下肢に関しては,体重管理とリンパ浮腫の関係を調査した論文(英語)はみつけられなかった。肥満とリンパ浮腫の関連と同様に,下肢については今後の研究が待たれる。

検索式・参考にした二次資料

文献の検索は,CQ に含まれる用語および関連用語をキーワードとして,1)〜3)の手続きで行った。

1) 2002 年から2013 年3 月までに出版された英語の医学論文をPubMed によって検索した。検索語は,「lymphedema AND(weight reduction OR weight control)」とした。該当した146 編のうち,以下の基準に当てはまる論文を抽出した。

【適格基準】

①リンパ浮腫患者における診断・治療に関する原著論文,臨床試験,メタアナリシス,ランダム化比較試験

②Primary endpoint がQOL,身体的苦痛,精神的苦痛,生活への影響,あるいは実態調査

【除外基準】

①対象が小児に限定されているもの

②薬物療法・予防・手術

③Primary endpoint が非臨床的指標のもの(サイトカイン,栄養学的指標,免疫学的指標など)

④対象が終末期患者(例えば,生命予後が6ヶ月以下など)に限定されているもの

⑤Full-length paper のある同一著者による短報

⑥ガイドライン,レビュー論文

2) Best practice for the management of lymphoedema 誌からハンドサーチを行った。検索語は,「lymphedema AND( weight reduction OR weight control )」とした。

3) 二次資料として,Cochrane Library,UpToDate,Clinical Evidence を参照した。

以上の手順で,本CQ に関係する文献3 編を得た。

文 献

1) Shaw C, Mortimer P, Judd PA. A randomized controlled trial of weight reduction as a treatment for breast cancer-related lymphedema. Cancer. 2007;110(8):1868-74.

2) Shaw C, Mortimer P, Judd PA. Randomized controlled trial comparing a low-fat diet with a weight-reduction diet in breast cancer-related lymphedema. Cancer. 2007;109(10):1949-56.

3) Vignes S, Arrault M, Dupuy A. Factors associated with increased breast cancer-related lymphedema volume. Acta Oncol. 2007;46(8):1138-42.


CQ8

続発性リンパ浮腫に対して運動療法を行った場合,行わなかった場合と比べて

a. 発症率は減少するか

b. リンパ浮腫の治療に有効か

推 奨

乳癌術後上肢リンパ浮腫のリスクを有する患者に対する負荷を伴う運動療法はリンパ浮腫の発症率を下げ,筋力を向上させる。また,乳癌術後の上肢リンパ浮腫に対する従来の複合的治療と負荷を伴う運動療法(弾性着衣の装着下での十分に吟味された運動プログラム)は,患肢の増悪を招くことなく筋力を向上させ,心身の生活の質を改善する。
一方,下肢リンパ浮腫については,予防・治療ともランダム化比較試験はないが,治療については有効性を示す症例集積研究が存在する。したがってエビデンスの質は低く,日常診療では効果が評価できる場合に限って慎重に実施されるべきである。

予 防 上肢:グレードA2  下肢:推奨度評価なし
標準治療 上肢:グレードA2  下肢:グレードD1
背景・目的

リンパ浮腫の予防・治療において,正常な四肢の運動機能と活動性を維持・改善するためには,理学療法士など専門知識を有する介助者による受動運動も含めて術後早期からの運動療法が効果的であるといわれる一方で,術後早期の運動は体液貯留などの合併症が増えるとの懸念が根強く残っている 1)。特に上肢では肩関節拘縮が術後のQOL 低下を招くことが知られているにもかかわらず,術後は患側肢で重いものを持たず酷使せぬようにという指導が普及しており,これが筋力低下や拘縮を助長する場合も少なくない。

本CQ は初版作成時,質の高い臨床研究がなかったが,特に上肢に関しては予防・治療のそれぞれにおいて近年ランダム化比較試験が増加し,運動内容についても具体的に提案し得る材料が揃ってきた。上肢における論文数のほうが多いが,下肢対象の研究も症例報告,症例集積レベルで同様の結果が得られている。本項では具体的なレジメンを含めて最近の知見を検証した。

解 説

Anderson らは,乳癌術後の中等度の運動プログラムがQOL や身体機能,リンパ浮腫発症に及ぼす影響を1 群52 例のランダム化比較試験によって検証した 2)。術後4 〜12 週間経過した患者に対して,一般的な予防指導や食事指導に運動療法による介入を加えた群と指導のみの群で比較した結果,18 ヶ月以降の評価で介入群のほうが6 分間で歩行できた距離と身体機能が有意に優れており,リンパ浮腫の発症率には両群間で差がなかった。Lacomba らは,術後4 週目からのストレッチや肩関節運動などによる介入がリンパ浮腫発症率に及ぼす影響を,介入のない対照群と比較した 3)。リンパ浮腫の発症は術後1 年の時点で介入群59 例中7%に対して,対照群57 例では25%と有意に高く(p = 0. 001),発症例における浮腫の程度も対照群のほうが重症だった(体積:p =0. 0065,周径:p = 0. 0207)。Schmitz らは術後1 〜5 年経過した乳癌術後患者に対してベンチプレス,フットプレスをインストラクターの指導下に13 週間,自己実施で39 週間,一定のプログラムで実施した結果,1 年後の発症率は介入群11% vs. 対照群17%,さらに郭清個数5 個以上の症例ではそれぞれ7% vs.22%(p < 0. 04,p < 0. 003)で,術後早期のウェイトリフティングは少なくとも1 年後のリンパ浮腫発症を予防すると報告した 4)。これは2006 年にAhmed らがランダム化比較試験を報告した研究 5)の続報で,症例数を増やし,介入期間と観察期間をそれぞれ半年から1 年に延ばしても初報同様の結果であった。Sagen らは,患側上肢の運動制限をせず,負荷運動を週2,3 回加えた介入群における上肢リンパ浮腫の発症率を対照群とともに2 年後まで追跡したところ,いずれも有意差がなかったと報告している 6)。このほか,予防についてはChan らがランダム化比較試験7 論文のデータを補正したうえで,早期の運動介入はリンパ浮腫を惹起しないという共通の結果を得ている 1)。下肢リンパ浮腫の予防については論文がなかった。

治療に関しても圧倒的に上肢に関する論文が多く,Schmitz らが予防と同一のプログラムで行ったランダム化比較試験で,介入終了1 年後のリンパ浮腫増悪は介入群11%vs. 対照群12%,他覚的増悪所見はそれぞれ14% vs. 29%と,負荷を漸増させていくウェイトリフティングはリンパ浮腫の増悪頻度を減らし,症状軽減と筋力向上に寄与したと報告した 7)。ほかにも症例数は少ないが自宅でのエクササイズや負荷運動による介入のランダム化比較試験で,介入群の上肢体積が有意に減少したという結果が得られていた 8)9)

以上より,術後の負荷運動は上肢リンパ浮腫の予防と発症に対しおおむね有効性を示す報告が出ているが,同様の介入で有意差が出ていない論文もあるので推奨グレードはA2 とした。一方,下肢リンパ浮腫に対する運動療法についての治療研究は症例報告と症例集積のみであった 10)11)。Katz らは10 例の症例集積研究で,週2 回8 週間のウェイトトレーニングによりリンパ浮腫が増悪することなく,筋力と歩行テストに有意な向上が認められたと報告している 10)

検索式・参考にした二次資料

文献の検索は,CQ に含まれる用語および関連用語をキーワードとして,1)〜3)の手続きで行った。

1) 2003 年から2013 年3 月までに出版された英語の医学論文をPubMed によって検索した。検索語は,「lymphedema AND(extremities OR arms OR legs)AND exercise」とした。該当した9, 032 編のうち,原発性とフィラリア症関連を削除して以下の基準に当てはまる論文を抽出した。

【適格基準】

①リンパ浮腫患者における診断・治療に関する原著論文,臨床試験,メタアナリシス,ランダム化比較試験

②Primary endpoint がQOL,身体的苦痛,精神的苦痛,生活への影響,あるいは実態調査

【除外基準】

①対象が小児に限定されているもの

②薬物療法・予防・手術

③Primary endpoint が非臨床的指標のもの(サイトカイン,栄養学的指標,免疫学的指標など)

④対象が終末期患者(例えば,生命予後が6 ヶ月以下など)に限定されているもの

⑤Full-length paper のある同一著者による短報

2) Best practice for the management of lymphoedema 誌からハンドサーチを行った。検索語は,「lymphedema AND(exercise OR movement OR elevation)」とした。

3) 二次資料として,Cochrane Library,UpToDate,Clinical Evidence,ガイドライン,レビュー,コンセンサス論文を参照した。

以上の手順で,本CQ に関係する文献11 編を得た。

文 献

1) Chan DN, Lui LY, So WK. Effectiveness of exercise programmes on shoulder mobility and lymphoedema after axillary lymph node dissection for breast cancer:systematic review. J Adv Nurs. 2010;66(9):1902-14.

2) Anderson RT, Kimmick GG, McCoy TP, et al. A randomized trial of exercise on well-being and function following breast cancer surgery:the RESTORE trial. J Cancer Surviv. 2012;6(2):172-81.

3) Torres Lacomba M, Yuste Sánchez MJ, Zapico Goñi A, et al. Effectiveness of early physiotherapy to prevent lymphoedema after surgery for breast cancer:randomised, single blinded, clinical trial. BMJ. 2010;340:b5396.

4) Schmitz KH, Ahmed RL, Troxel AB, et al. Weight lifting for women at risk for breast cancer-related lymphedema:a randomized trial. JAMA. 2010;304(24):2699-705.

5) Ahmed RL, Thomas W, Yee D, et al. Randomized controlled trial of weight training and lymphedema in breast cancer survivors. J Clin Oncol. 2006;24(18):2765-72.

6) Sagen A, Kåresen R, Risberg MA. Physical activity for the affected limb and arm lymphedema after breast cancer surgery. A prospective, randomized controlled trial with two years follow-up. Acta Oncol. 2009;48(8):1102-10.

7) Schmitz KH, Ahmed RL, Troxel A, et al. Weight lifting in women with breast-cancer-related lymphedema. N Engl J Med. 2009;361(7):664-73.

8) Jeffs E, Wiseman T. Randomised controlled trial to determine the benefit of daily home-based exercise in addition to self-care in the management of breast cancer-related lymphoedema:a feasibility study. Support Care Cancer. 2013;21(4):1013-23.

9) Kim do S, Sim YJ, Jeong HJ, et al. Effect of active resistive exercise on breast cancer-related lymphedema:a randomized controlled trial. Arch Phys Med Rehabil. 2010;91(12):1844-8.

10) Katz E, Dugan NL, Cohn JC, et al. Weight lifting in patients with lower-extremity lymphedema secondary to cancer:a pilot and feasibility study. Arch Phys Med Rehabil. 2010;91(7):1070-6.

11) Holtgrefe KM. Twice-weekly complete decongestive physical therapy in the management of secondary lymphedema of the lower extremities. Phys Ther. 2006;86(8):1128-36.


CQ9

原発性(一次性)リンパ浮腫に対して続発性(二次性)リンパ浮腫と同様の複合的治療を行った場合,行わなかった場合と比べてリンパ浮腫は軽減するか

推 奨

原発性(一次性)リンパ浮腫に対しても複合的治療が有効であることは臨床上のコンセンサスが得られているが,原発性患者を対象としたランダム化比較試験はなされておらず,実際に効果が得られる場合に限って慎重に行われるべきである。

グレードD1
背景・目的

原発性リンパ浮腫の標準的な治療選択肢が複合的治療である点は続発性リンパ浮腫と同じであるが,原発性患者の多くが小児〜思春期であることから,患者,両親と医療施設との連携がより重要になってくる。現時点では対象を原発性患者に限定した質の高い治療研究はない。

解 説

小児に発症するリンパ浮腫はほとんどが原発性であり,20 歳未満の原発性リンパ浮腫の頻度は10 万人に1. 15 人の割合である 1)。小児リンパ浮腫についてのレビューによれば,Klinefelter 症候群児の500 例に1 例,新生児6, 000 人に1 人の割合で発症しており,男女比はおよそ1:3 で女性に多い。続発性に比べて頻度が圧倒的に少ないことから原発性リンパ浮腫に関する報告は非常に少なく,治療に関するランダム化比較試験は皆無である。その中で,Schook らによる症例集積研究は,1999 年から2010 年に21 歳以前に発症した138 例の原発性リンパ浮腫症例について詳細な報告をしており,臨床報告の中では最も症例数が多い 2)。発症年齢は49. 2%が乳児期,9. 5%が幼児期,41. 3%が思春期で,男子の68%が幼少時に発症しているのに対して,女子の発症は55. 3%が思春期であった。病変部位は四肢が81. 9%(うち下肢が91. 7%),性器が4. 3%,四肢と性器が13. 8%で,全体の11%が家族性か症候群性であった。治療法は弾性着衣単独が75. 4%,弾性着衣と間歇的空気圧迫療法の併用が19. 6%で,外科療法が行われたのは全体の13. 0%であった。用手的リンパドレナージ(MLD)は単独では軽症例に最小限の効果が得られるのみで,圧迫と運動との併用によって初めて治療効果は向上した。全体の57. 9%で病状の進行はみられたものの,ほとんどの症例は弾性着衣の装着によって病状を良好にコントロールすることができ,リンパ管静脈吻合などの外科的治療は不要であったと報告している。ほかにも,症例報告ながら同様の結論を示す論文はある 3)〜5)

International Union of Phlebology(IUP)のコンセンサスドキュメント2009 年版によれば,早発性リンパ浮腫患者はその70%に両側性のリンパ系異常が認められるにもかかわらず,実際の両側発症はわずか30%であったのに対して,晩発性リンパ浮腫はほとんどの場合が両側発症である 6)。原発性リンパ浮腫治療のゴールはよりよい社会適応,機能の向上,心理的適応にあり,原発性,続発性を問わずその標準治療は圧迫,MLD,圧迫下の運動などを含む複合的治療である。中でも弾性包帯による圧迫と運動の併用は最も効果的である。疼痛管理や心理社会的介入も包括的に行うことが望ましい。治療には在宅管理が必須であり,患者自身が自己管理の重要性を正しく認識し,継続的に実施することが重要である。小児症例については,圧迫,運動,MLD,スキンケアを控えめに活用しなければならない。新生児は観察しているうちにリンパ管の発達によって浮腫が改善してくることがある。適切な作業療法は選択的な筋力回復に役立つがしばしば患者,特に子供や家族はそれを忘れるので,心理的なサポートはそのコンプライアンスを維持するのに非常に重要である。

事実に基づいたいわゆる臨床的なデータはあり,最も効果的なのは圧迫(包帯法)+MLD ±間歇的空気圧迫療法の併用であり,慢性疾患であるリンパ浮腫は原則としてこれらの治療を生涯継続しなければならない。MLD は複合的治療の重要な選択肢にとどまっているものの,その効用については科学的に立証されていない。そうであるにもかかわらず不可欠の選択肢となっているのは,リンパ管のうっ滞を減らし,側副路を通じてリンパ輸送系に刺激を与え,治療中と治療直後はリンパ動態を改善すると考えられているからである。ちなみにIUP のガイドラインにおいては,弾性着衣の効果と蜂窩織炎に対する抗生剤投与が,6 段階のうち最上位のコンセンサスが得られている。

癌や腫瘍塞栓の危険がある場合のMLD,心不全や高度の末梢動脈虚血を持つ患者に対する複合的治療は,併存疾患に悪影響を与えるおそれがあるので安全を確保した実施が必須である。それぞれの治療法の禁忌としてMLD については静脈内の転移,間歇的空気圧迫療法については塞栓,圧迫(特に多層包帯法)については心不全,末梢動脈の虚血性病変などが挙げられる 6)

外科的治療は複合的治療が無効な場合の選択肢にとどめておくべきである。2 年以上適切な複合的治療を続けているにもかかわらず病状が悪化する場合には外科的治療の付加を考慮する。バイパスや脂肪吸引などによって浮腫や形状の飛躍的な改善も望めるが,これは術後も適切な複合的治療を継続することが前提である。

以上のように,原発性リンパ浮腫に対する複合的治療は,続発性リンパ浮腫に対するそれと同様に有効であるとする報告はあるが,質の高い治療研究がなく,症例報告や小規模な症例集積研究で有効性が示されるにとどまっているので推奨グレードはD1 とした。

検索式・参考にした二次資料

文献の検索は,CQ に含まれる用語および関連用語をキーワードとして,下記の手続きで行った。

1) 2003 年1 月から2013 年3 月までに出版された英語の医学論文をPubMed によって検索した。検索語は,「(primary lymphedema OR idiopathic lymphedema)AND management NOT filariasis NOT breast cancer NOT gynecological cancer」とした。該当した301 編のうち,以下の基準に当てはまる論文を抽出した。

【適格基準】

①原発性リンパ浮腫患者に対する診断・治療についての原著論文,臨床試験,メタアナリシス,ランダム化比較試験,ガイドライン,レビュー論文

②Primary endpoint が治療の効果,QOL,身体的苦痛,精神的苦痛あるいは実態調査

【除外基準】

①Primary endpoint が非臨床的指標のもの(サイトカイン,栄養学的指標,免疫学的指標など)

②Full-length paper のある同一著者による短報

③キーワード以外の悪性腫瘍の治療あるいはその他の原因が明らかな続発性リンパ浮腫

以上の手順で,本CQ に関係する文献6 編を得た。

文 献

1) Damstra RJ, Mortimer PS. Diagnosis and therapy in children with lymphoedema. Phlebology. 2008;23(6):276-86.

2) Schook CC, Mulliken JB, Fishman SJ, et al. Primary lymphedema:clinical features and management in 138 pediatric patients. Plast Reconstr Surg. 2011;127(6):2419-31.

3) Espinosa-de-Los-Monteros A, Hinojosa CA, Abarca L, et al. Compression therapy and liposuction of lower legs for bilateral hereditary primary lymphedema praecox. J Vasc Surg. 2009;49(1):222-4.

4) Greene R, Fowler R. Physical therapy management of primary lymphedema in the lower extremities:A case report. Physiother Theory Pract. 2010;26(1):62-8.

5) Shinawi M. Lymphedema of the lower extremity: is it genetic or nongenetic? Clin Pediatr(Phila). 2007;46(9):835-41.

6) Lee B, Andrade M, Bergan J;International Union of Phlebology. Diagnosis and treatment of primary lymphedema. Consensus document of the International Union of Phlebology(IUP)-2009. Int Angiol. 2010;29(5):454-70.


CQ10

続発性リンパ浮腫に対して心理社会的介入をした場合,介入しなかった場合と比べてQOL は改善されるか

推 奨

リンパ浮腫患者に対する心理社会的介入が,リンパ浮腫の軽減につながる明確な根拠はない。また,QOL改善を示した質の高いエビデンスはない。しかし,リンパ浮腫患者はさまざまな心理社会的問題を抱えていることは明らかであり,それに対する心理社会的支援は好ましいものと考えられる。したがって,患者の意向を十分に考慮し,何らかの有効性が評価できる場合には介入を考慮してよいと考えられる。

グレードE2
背景・目的

リンパ浮腫は,未治療の場合や治療が不適切な場合,患者の心理的負担,抑うつ,社会的抑制,性生活上の問題の原因となるなど,全般的なQOL の低下につながる。そのことが患者のリンパ浮腫に対する治療意欲の低下や障害となり,ひいてはリンパ浮腫の増悪につながる可能性がある。本項ではリンパ浮腫治療における心理社会的介入の効果を検討した。

解 説

リンパ浮腫による心理的影響は,浮腫の程度と期間によるところが大きい。Maunsell らは,223 例の乳癌術後症例を対象に,手術が与えた影響と心理的ストレスの履歴について調査を行った。術後3 ヶ月で82%の症例が患肢に一つ以上の問題を認めた(浮腫24%,脱力26%,可動制限32%,硬直40%,痛み55%,しびれ58%)。患肢に問題がないとした症例に対し,3 ヶ月後の心理的ストレスが出現する頻度のオッズ比は,患肢に抱える問題の数とともに上昇した(抱える問題数1 〜2:オッズ比 1. 2,3 〜4:オッズ比 2. 3,5 〜6:オッズ比 3. 1)。また術式に関係なく,郭清例では患肢の問題をより多く訴えた 1)

Tobin らは,乳癌術後リンパ浮腫症例50 例と対照群50 例に対し,精神医学的面接を行い,心理的ストレスの程度を比較検討した。その結果,リンパ浮腫症例は,より多くの不安,抑うつ,適応障害,職業上の困難,家庭・社会・性生活上の問題を抱えていることが示された 2)

Sitzia らは,リンパ浮腫に対する保存的治療がhealth-related QOL(HRQOL)に及ぼす変化について,34 例に対しNottingham Health Profi1e Part 1(NHP-1)を用いて,治療前と4 週間後で比較した。全体的なNHP スコアは,4 週間後に有意に低下しており(p < 0. 01),HRQOL の改善がみられたものの,改善された項目は身体的可動性であり(p < 0. 01),浮腫の変化(体積)はNHP スコアのいずれとも相関はなく,有意に相関があった項目は皮膚の状態と痛みの程度であった(p < 0. 01) 3)

Mirolo らは,術後の中等度または重度のリンパ浮腫症例に対して,4 週間の複合的治療〔用手的リンパドナレージ(MLD),弾性包帯,シンプル(セルフ)リンパドレナージ(SLD),弾性着衣,運動療法など総合的なセルフケア教育〕を行い,腕の周径と体積を測定して,Functional Living Index-Cancer(FLIC)とWesley Clinic Lymphoedema Scale(WCLS)を用いてQOL を調査した。その結果,治療後には上肢の周径と体積は有意に減少し,1 ヶ月後に40%,それ以降50%まで減少した。FLIC のスコアは治療前86%であったが,12 ヶ月後には91%に増加した。一方,WCLS は,治療前の78. 5%から治療直後には66. 7%に減少したが,1 ヶ月後に治療前のスコアに戻り,6 ヶ月と12 ヶ月後に増加した 4)

Beaulac らは,乳癌術後のリンパ浮腫症例とリンパ浮腫を認めない症例を対象に,後ろ向きコホート研究を行い,QOL の変化を検討した。早期乳癌151 例が対象となり,上肢の体積と,Functional Assessment of Cancer Therapy-Breast(FACT-B)によるQOL の項目と,身体面,活動面,心理面,社会面,乳癌関連満足度の5 項目を検討した。その結果,42 例(27. 8%)に患肢体積の減少(> 200 cm3)がみられた。リンパ浮腫群は,リンパ浮腫を認めない群に比べ,FACT-B 全体(109. 1 ± 2. 9 vs. 122. 7 ± 1. 4,p < 0. 001)と5 項目のうち4 項目(身体面,活動面,心理面,乳癌関連満足度)で有意にスコアが低く,QOL が低下していた 5)

一方,Lee らは乳癌術後1 年以上の生存者104 例を対象に前向き研究を行い,SF36 で評価した患者のQOL は,リンパ浮腫を発症した群と発症しなかった群とで有意差がなかったとしている 6)

Cemal らは,下肢リンパ浮腫患者のQOL を評価した6 つの試験から,リンパ浮腫患者は種々のQOL を低下させる問題を持っているものの,その評価を定量することが難しく,今後この分野での客観的なQOL 評価法の開発や,前向き研究が必要であるとした 7)

Memorial Sloan-Kettering Cancer Center のPassik らは,乳癌患者の心理相談を行っているが,主な内容は,抑うつ,不安,心理社会的,性生活上の問題であり,リンパ浮腫患者で心理社会的介入が必要な患者に対しては,個人的またはグループに有効とされる認知行動療法,支持的あるいは洞察指向的な精神療法を組み合わせたアプローチを用いている 8)。Towers らが行ったリンパ浮腫患者に対するインタビューでは,経済的サポートの欠如した社会体制や,医療従事者や社会のリンパ浮腫に対する意識が低いことについてストレスを感じているという結果であり,今後,癌リハビリプログラムにこのような問題に対する教育を組み込むべきとしている 9)

これら多くの研究において,リンパ浮腫は,心理社会的問題を増加させることを示唆しているが,そのリスクを軽減させるための介入方法については,まだ科学的な知見は得られていない。そして,心理社会的介入がリンパ浮腫の軽減につながるエビデンスは現時点では示されていない。人的資源の問題,費用対効果の問題を含めて考えると,リンパ浮腫に対する心理社会的介入は,有効性が評価できる場合において考慮すべきであると考えられる。

リンパ浮腫患者に対する心理社会的支援は,患者にとっては好ましいものと考えられるため,今後この分野において,正確なQOL 評価や介入に関する質の高い研究の実施が望まれる。

検索式・参考にした二次資料

文献の検索は,CQ に含まれる用語および関連用語をキーワードとして,1)〜2)の手続きで行った。

1) 1980 年から2013 年7 月までに出版された英語の医学論文をPubMed によって検索した。検索語は,「lymphedema AND(psychosocial support OR psychotherapy OR psychological treatment OR social support OR psychosocial problems)」とした。該当した199 編のうち,以下の基準に当てはまる論文を抽出した。

【適格基準】

①リンパ浮腫患者における診断・治療に関する原著論文,臨床試験,メタアナリシス

②Primary endpoint がQOL,身体的苦痛,精神的苦痛,生活への影響,あるいは実態調査

【除外基準】

①対象が小児に限定されているもの

②Primary endpoint が非臨床的指標のもの(サイトカイン,栄養学的指標,免疫学的指標など)

③対象が終末期患者(例えば,生命予後が6 ヶ月以下など)に限定されているもの

④Full-length paper のある同一著者による短報

⑤ガイドライン,レビュー論文

2) 二次資料として,CochraneLibrary,UpToDate,Clinical Evidence を参照した。

以上の手順で,本CQ に関係する文献9 編を得た。

文 献

1) Maunsell E, Brisson J, Deschênes L. Arm problems and psychological distress after surgery for breast cancer. Can J Surg. 1993;36(4):315-20.

2) Tobin MB, Lacey HJ, Meyer L, et al. The psychological morbidity of breast cancer-related arm swelling. Psychological morbidity of lymphoedema. Cancer. 1993;72(11):3248-52.

3) Sitzia J, Sobrido L. Measurement of health-related quality of life of patients receiving conservative treatment for limb lymphoedema using the Nottingham Health Profile. Qual Life Res. 1997;6(5):373-84.

4) Mirolo BR, Bunce IH, Chapman M, et al. Psychosocial benefits of postmastectomy lymphedema therapy. Cancer Nurs. 1995;18(3):197-205.

5) Beaulac SM, McNair LA, Scott TE, et al. Lymphedema and quality of life in survivors of early-stage breast cancer. Arch Surg. 2002;137(11):1253-7.

6) Lee SH, Min YS, Park HY, et al. Health-related quality of life in breast cancer patients with lymphedema who survived more than one year after surgery. J Breast Cancer. 2012;15(4):449-53.

7) Cemal Y, Jewell S, Albornoz CR, et al. Systematic review of quality of life and patient reported outcomes in patients with oncologic related lower extremity lymphedema. Lymphat Res Biol. 2013;11(1):14-9.

8) Passik S, Newman M, Brennan M, et al. Psychiatric consultation for women undergoing rehabilitation for upper-extremity lymphedema following breast cancer treatment. J Pain Symptom Manage. 1993;8(4):226-33.

9) Towers A, Carnevale FA, Baker ME. The psychosocial effects of cancer-related lymphedema. J Palliat Care. 2008;24(3):134-43.


CQ11

続発性リンパ浮腫に対してリンパ管静脈吻合術を行った場合,行わなかった場合と比べてリンパ浮腫は軽減するか

推 奨

続発性四肢リンパ浮腫へのリンパ管静脈吻合術の有効性を示す前後比較試験がいくつか存在するが,その有効性を示す質の高い根拠は示されていない。したがって,手術の実施において症例の選択は慎重に行われるべきである。

上肢:グレードD1  下肢:グレードD1
背景・目的

リンパ浮腫を発症した四肢の機能や外見を改善するための外科的治療を確立するためにさまざまな試みが行われている。以前は比較的径の大きな静脈(直径1 〜2 mm)でのリンパ管静脈吻合や静脈へリンパ管を数本差し込む方法が行われていた。しかし,血管径の太い静脈との吻合では吻合部血栓などで閉塞することがあり,その後術式が改良され,より小さな血管径(直径0. 3 〜0. 8 mm)の静脈へ直接吻合するリンパ管静脈吻合術が開発された。今回この術式の有効性を検討した。

解 説

0. 5 mm 未満の血管吻合によるリンパ浮腫治療の試みは,1990 年代の半ばから始められ,多くの症例集積研究と前後比較研究が報告されている。下記に最近のリンパ管静脈吻合術の報告の要約を示す。

Auba らは,リンパ管細脈吻合術を行い,術後18 ヶ月まで経過を追うことができた10 例中8 例に統計的に有意な周径の改善を認め(上肢下肢混在),7 例が皮膚硬化,5 例が腫脹感,4 例が夏季の悪化の軽減,3 例が圧迫着衣の必要性が少なくなったと記している 1)

Damstra らは,放射線療法と化学療法による乳癌治療後のリンパ浮腫症例10 例にリンパ管細脈吻合術を施行したが,術後1 年で統計学的に改善を認めなかったことを報告している。しかし,決定的な結論を出すことはできないと言及している 2)

Demirtas らの結果では,下肢原発性リンパ浮腫症例80 例で56%,続発性リンパ浮腫症例18 例で60%の体積低下(平均13. 2 ヶ月のフォローアップ)がみられた。リンパ浮腫早期の症例においては高い効果が得られ,進行したステージの症例に対して行った手術では,シャントを発達させるために術後の圧迫療法が必要であると述べている 3)

Maegawa らは,上肢・下肢リンパ浮腫患者に施行したステントを用いるリンパ管静脈吻合術の累積開存率は,術後12 ヶ月で75%,術後24 ヶ月で36%であり,患肢の体積変化の差は,吻合症例34 例(600 ± 969 mL)と吻合なし24 例(420 ± 874 mL)の間で見出せなかったと述べている 4)

Narushima は,リンパ管細静脈吻合術を行った上肢2 例,下肢12 例のリンパ浮腫症例について平均追跡期間8. 9 ヶ月で,四肢周径が平均3. 6 cm,平均11. 3%減少したと報告している。側端・側々吻合などを用いて多様な吻合を行い,可能な限り中枢と末梢の両方へのバイパスを形成することでより効果が得られるだろうと述べている 5)

Chang は乳癌術後症例20 例にリンパ管静脈吻合術を施行した。平均18 ヶ月のフォローアップ期間で19 例に症状の改善,13 例に量的改善を認め,1 年目には35%の量的縮小がみられたことを報告している。しかし,効果のない症例も報告している 6)

以上のように,リンパ浮腫に対するリンパ管静脈吻合術については種々の試みがなされているが,いずれの研究も限られた施設における前後比較研究で上質のエビデンスとは言い難い。しかし,いくつかの研究ではリンパ浮腫の容積を減少させる効果と症状の改善効果を認めている 1)3)5)6)。一方,有効性を疑問視する論文も認める 2)4)。リンパ管静脈吻合術は単独で行われることはなく,術前後の圧迫療法が行われるため手術単独の治療効果を客観的に評価することは困難である。リンパ管静脈吻合術は低侵襲の術式であり,外来で局所麻酔下に行うことも可能であるが,本術式には特に高度な技術が要求され,高性能の手術顕微鏡や精密な手術器械も必要である。適応に関しては病期早期の症例に有効例が多いとされる。また,専門的な技術と知識を持ったメディカルスタッフによって術前術後のケアを行う必要もある。そのため,これらの条件が満たされる限られた施設でしか行えず,標準手術としてのコンセンサスは得られない。したがって,保存的治療に抵抗する症例に対し,ほかに選択肢がなく上記の諸条件が整った場合に限り本術式を慎重に実施することを検討してもよい。患者への説明においては,効果が不確実であることを説明する必要がある。今後は客観的な評価基準の設定などを含めてさらなる研究が望まれる。

検索式・参考にした二次資料

文献の検索は,CQ に含まれる用語および関連用語をキーワードとして,1)〜2)の手続きで行った。

1) 2008 年4 月から2013 年3 月までに出版された英語の医学論文をPubMed によって検索した。検索語は,「lymphedema AND(surgery OR operation OR surgical treatment)」とした。該当した738 編のうち,以下の基準に当てはまる論文を抽出した。

【適格基準】

①リンパ浮腫患者における診断・治療に関する原著論文,臨床試験,メタアナリシス,ランダム化比較試験

②Primary endpoint がQOL,身体的苦痛,精神的苦痛,生活への影響,あるいは実態調査

【除外基準】

①対象が小児に限定されているもの

②薬物療法・予防

③Primary endpoint が非臨床的指標のもの(サイトカイン,栄養学的指標,免疫学的指標など)

④対象が終末期患者(例えば,生命予後が6 ヶ月以下など)に限定されているもの

⑤Full-length paper のある同一著者による短報

⑥ガイドライン,レビュー論文

2) 二次資料として,Cochrane Library,UpToDate,Clinical Evidence を参照した。

以上の手順で,本CQ に関係する文献6 編を得た。

文 献

1) Auba C, Marre D, Rodríguez-Losada G, et al. Lymphaticovenular anastomoses for lymphedema treatment:18 months postoperative outcomes. Microsurgery. 2012;32(4):261-8.

2) Damstra RJ, Voesten HG, van Schelven WD, et al. Lymphatic venous anastomosis(LVA)for treatment of secondary arm lymphedema. A prospective study of 11 LVA procedures in 10 patients with breast cancer related lymphedema and a critical review of the literature. Breast Cancer Res Treat. 2009;113(2):199-206.

3) Demirtas Y, Ozturk N, Yapici O, et al. Supermicrosurgical lymphaticovenular anastomosis and lymphaticovenous implantation for treatment of unilateral lower extremity lymphedema. Microsurgery. 2009;29(8):609-18.

4) Maegawa J, Yabuki Y, Tomoeda H, et al. Outcomes of lymphaticovenous side-to-end anastomosis in peripheral lymphedema. J Vasc Surg. 2012;55(3):753-60.

5) Narushima M, Mihara M, Yamamoto Y, et al. The intravascular stenting method for treatment of extremity lymphedema with multiconfiguration lymphaticovenous anastomoses. Plast Reconstr Surg. 2010;125(3):935-43.

6) Chang DW. Lymphaticovenular bypass for lymphedema management in breast cancer patients:a prospective study. Plast Reconstr Surg. 2010;126(3):752-8.


CQ12

続発性リンパ浮腫に対してリンパ節移植術を行った場合,行わなかった場合と比べてリンパ浮腫の改善に有効か

推 奨

リンパ浮腫に対するリンパ節移植術の有効性を示す質の高い根拠は示されておらず,手術の実施において症例の選択は慎重に行われるべきである。

グレードD1
背景・目的

四肢リンパ浮腫に対する外科的治療の一つとしてリンパ節移植術が報告されている。本項ではマイクロサージャリーを用いた血管柄付きリンパ節移植の治療効果を検討した。

解 説

リンパ節移植術は主に悪性腫瘍切除に伴うリンパ流の途絶をバイパスするために開発された手術である。この手術は移植片と周囲組織との間で起こるリンパ管新生により周囲組織からリンパ液を集め,このリンパ液を吻合した静脈にドレナージすることで浮腫の軽減を図る。

Lin らは,乳癌手術の際の腋窩リンパ節郭清術後の上肢リンパ浮腫13 例に対して,手関節部に血管柄付き鼠径リンパ節移植を行った 1)。その結果,患肢周径の減少を12例(92. 3%)に認め,その減少率は平均50. 55 ± 19. 26%であったとしている。また,Saaristo らは,9 例に乳房再建術と同時に腹壁皮弁にリンパ節を含めて挙上する方法でリンパ節移植術を行った 2)。この報告では9 例中7 例において術後3 ヶ月,6 ヶ月で上肢周径の改善を認め,追跡し得た6 例中5 例ではリンパ管シンチグラフィ所見でリンパ流の改善を認めたと報告している。リンパ節の採取部位として,鼠径部のほかにオトガイ下リンパ節を用いた方法も報告されている。Cheng らは子宮全摘,骨盤リンパ節切除,放射線治療後で,かつ保存的治療に抵抗性の慢性下肢リンパ浮腫症例6 例に対してオトガイ下動脈周囲のリンパ節をオトガイ下動脈付きで足関節部に移植した 3)。この結果,術後の下肢周径減少率はそれぞれ膝近位で平均64. 0 ± 11. 5%,膝遠位で平均63. 7 ±34. 3%,足関節近位で67. 3 ± 19. 2%であり,全例で弾性着衣による圧迫療法を含む理学療法を常時用いる必要がなくなったとしている。一方で,Gharb らは,Ⅱ期の早期の上肢リンパ浮腫症例21 例を対象に,鼠径皮弁にリンパ節を含んで移植する方法と,リンパ節とそれを栄養する穿通枝のみを移植する方法についての非ランダム化比較試験を報告している 4)。この結果,術後の上肢周径の減少は穿通枝のみで移植した群でのみ統計学的に有意に減少したとしている。

リンパ節採取のドナー肢への影響に関して,Vignesらは自家リンパ節移植を行った四肢リンパ浮腫症例26 例で調査し報告している 5)。この結果,10 例(38%)にドナー肢の合併症を認め,6 例に慢性的リンパ浮腫(4 例が上肢,2 例が下肢)を認めたとしている。一方,Viitanen らは上肢リンパ浮腫に対して鼠径部リンパ節移植を施行した13 例のドナー肢のリンパ流および周径を調査している 6)。この結果として,リンパ管シンチグラフィを施行し得た10 例中6 例でリンパ流の微細な変化を認めたものの,統計学的に有意な変化は認めなかったとしている。

以上のように,リンパ浮腫に対する外科的治療としてのリンパ節移植について,有効であったとする報告が多いが,1 編の非ランダム化比較試験を除いては,限定された施設における症例集積研究と前後比較研究であり,エビデンスレベルが高い報告とはいえない。術式も一定しておらず,またその合併症についても統一された見解がなく議論の対象となっている。したがって,リンパ節移植術の実施において症例の選択は慎重に行われるべきである。

検索式・参考にした二次資料

文献の検索は,CQ に含まれる用語および関連用語をキーワードとして,1)〜2)の手続きで行った。

1) 2008 年4 月から2013 年3 月までに出版された英語の医学論文をPubMed によって検索した。検索語は,「lymphedema AND (surgery OR operation OR surgical treatment)」とした。該当した738 編のうち,以下の基準に当てはまる論文を抽出した。

【適格基準】

①リンパ浮腫患者における診断・治療に関する原著論文,臨床試験,メタアナリシス,ランダム化比較試験

②Primary endpoint がQOL,身体的苦痛,精神的苦痛,生活への影響,あるいは実態調査

【除外基準】

①対象が小児に限定されているもの

②薬物療法・予防

③Primary endpoint が非臨床的指標のもの(サイトカイン,栄養学的指標,免疫学的指標など)

④対象が終末期患者(例えば,生命予後が6 ヶ月以下など)に限定されているもの

⑤Full-length paper のある同一著者による短報

⑥ガイドライン,レビュー論文

2) 二次資料として,Cochrane Library,UpToDate,Clinical Evidence を参照した。

以上の手順で,本CQ に関係する文献6 編を得た。

文 献

1) Lin CH, Ali R, Chen SC, et al. Vascularized groin lymph node transfer using the wrist as a recipient site for management of postmastectomy upper extremity lymphedema. Plast Reconstr Surg. 2009;123(4):1265-75.

2) Saaristo AM, Niemi TS, Viitanen TP, et al. Microvascular breast reconstruction and lymph node transfer for postmastectomy lymphedema patients. Ann Surg. 2012;255(3):468-73.

3) Cheng MH, Huang JJ, Nguyen DH, et al. A novel approach to the treatment of lower extremity lymphedema by transferring a vascularized submental lymph node flap to the ankle. Gynecol Oncol. 2012;126(1):93-8.

4) Gharb BB, Rampazzo A, Spanio di Spilimbergo S, et al. Vascularized lymph node transfer based on the hilar perforators improves the outcome in upper limb lymphedema. Ann Plast Surg. 2011;67(6):589-93.

5) Vignes S, Blanchard M, Yannoutsos A, et al. Complications of autologous lymph-node transplantation for limb lymphoedema. Eur J Vasc Endovasc Surg. 2013;45(5):516-20.

6) Viitanen TP, Mäki MT, Seppänen MP, et al. Donor-site lymphatic function after microvascular lymph node transfer. Plast Reconstr Surg. 2012;130(6):1246-53.


CQ13

続発性リンパ浮腫に対して脂肪吸引術を行った場合,行わなかった場合と比べてリンパ浮腫の改善に有効か

推 奨

続発性リンパ浮腫に対する脂肪吸引術の有効性を示す質の高い根拠は示されておらず,その手術の実施において症例の選択は慎重に行われるべきである。

グレードD1
背景・目的

リンパ浮腫の外科的治療方法として,リンパ管静脈吻合術,リンパ節移植術,脂肪切除術,脂肪吸引術などが報告されているが,どの術式も標準治療としては受け入れられていない。本項では脂肪吸引術の有効性を検討する。

解 説

現在,さまざまな研究者によって脂肪吸引についての報告がなされているが,ほとんどが非圧痕浮腫の患者に施行されている。Brorson らは2008 年に発表した論文で,保存的治療により圧痕性浮腫を非圧痕性浮腫に移行したうえで,残留する過剰な脂肪組織を吸引除去すれば完全なボリュームの減少ができるとしている 1)。また,リンパ浮腫の初期はリンパ液の貯留が主であるが,進行するにつれて脂肪組織量が増加すると報告している 2)

従来,脂肪吸引術はアドレナリンと麻酔薬を注射しないdry 法が使用され,大量出血が問題とされていたが,その後改良が行われ,Klein によりアドレナリン・麻酔薬含有食塩水と吸引液の比率を2 〜3:1 にするtumescent 法が開発された。これにより,脂肪を大量に吸引することができるようになった。さらに止血帯とtumescent 法を併用することで出血を最小限に抑える方法が報告された。

一般的な脂肪吸引術の適応基準は,保存的治療に抵抗する非圧痕浮腫症例,ボリューム差が600mL 以上の症例,活動性癌や開放創がない症例,血液凝固に作用する薬剤の使用がない症例,感染症のない症例に加え,圧迫治療が継続できることとされている 1)3)4)

Brorson らは,手術直後から圧迫療法を継続した症例では11 年目の追跡調査において,浮腫の再発を認めなかったと報告し,リンパ輸送能に関しては,リンパシンチグラフィ検査を施行できた20 例で,脂肪吸引前,3 ヶ月後,12 ヶ月後でTI(transport index)が減少したことを示している。蜂巣炎(蜂窩織炎)の年間発症率については,吸引前が0. 4,吸引後が0. 1 と低下を認め,合併症としての皮膚のしびれは3 〜6 ヶ月後に消退したと報告している 1)2)。Damstra らは,12 ヶ月後の量的減少は手術前の過剰量に相関しており,リンパ浮腫罹患期間や手術を施行した外科医師の経験年数に関連はなかったと報告している 3)。Schaverien らは,12 例の症例で最長5 年の追跡調査を行い,機能の改善,整容面の改善,減量により普通の衣類が着られるようになったこと,不安や抑うつなどの心理的健康面が改善したことを示し,有効性,再現性のある安定した減少が得られる術式であると報告している 4)

以上のように,続発性リンパ浮腫の外科的治療としての脂肪吸引術は,保存的治療による減量不足がある非圧痕浮腫患者に対して有効性のある治療法として報告されているが,いずれの研究も限られた施設における症例集積研究と前後比較研究であり,エビデンスレベルは低い。したがって,脂肪吸引術の実施においては症例の選択を慎重に行うべきである。また,実施後は圧迫衣類の継続的な使用が必要である。今後,多施設での研究が進み評価されることが求められる。

検索式・参考にした二次資料

文献の検索は,CQ に含まれる用語および関連用語をキーワードとして,1)〜2)の手続きで行った。

1) 2008 年4 月から2013 年3 月までに出版された英語の医学論文をPubMed によって検索した。検索語は,「lymphedema AND liposuction」とした。該当した27 編のうち,以下の基準に当てはまる論文を抽出した。

【適格基準】

①リンパ浮腫患者における診断・治療に関する原著論文,臨床試験,メタアナリシス,ランダム化比較試験

②Primary endpoint がQOL,身体的苦痛,精神的苦痛,生活への影響,あるいは実態調査

【除外基準】

①対象が小児に限定されているもの

②薬物療法・予防

③Primary endpoint が非臨床的指標のもの(サイトカイン,栄養学的指標,免疫学的指標など)

④対象が終末期患者(例えば,生命予後が6 ヶ月以下など)に限定されているもの

⑤Full-length paper のある同一著者による短報

⑥ガイドライン,レビュー論文

2) 二次資料として,Cochrane Library,UpToDate,Clinical Evidence を参照した。

以上の手順で,本CQ に関係する文献4 編を得た。

文 献

1) Brorson H, Ohlin K, Olsson G, et al. Controlled compression and liposuction treatment for lower extremity lymphedema. Lymphology. 2008;41(2):52-63.

2) Brorson H. From lymph to fat:complete reduction of lymphoedema. Phlebology. 2010;25 Suppl 1:52-63.

3) Damstra RJ, Voesten HG, Klinkert P, et al. Circumferential suction-assisted lipectomy for lymphoedema after surgery for breast cancer. Br J Surg. 2009;96(8):859-64.

4) Schaverien MV, Munro KJ, Baker PA, et al. Liposuction for chronic lymphoedema of the upper limb:5 years of experience. J Plast Reconstr Aesthet Surg. 2012;65(7):935-42.


CQ14

続発性リンパ浮腫に対して漢方薬を使用した場合,使用しなかった場合と比べてリンパ浮腫は軽減するか

推 奨

続発性リンパ浮腫に対する漢方治療(柴苓湯,五苓散など)は,有効であるとする報告はいずれも小規模の後ろ向き症例集積であり,質の高いエビデンスが不足している。したがって,治療に難渋するリンパ浮腫に対して,複合的治療による効果が不十分な場合に限り,効果および有害事象に注意して,行うことを考慮できる。

グレードE1
背景・目的

リンパ浮腫に対する治療は非薬物的な複合的治療が一般的であるが,その効果は必ずしも十分ではなく,治療に難渋する場合もしばしばある。利水作用のある漢方薬について,リンパ浮腫に対する有効性を示した報告が散見される。これら漢方がリンパ浮腫に対して有効であるかどうかを検討した。柴苓湯やその他の漢方が四肢のリンパ浮腫に有効であるとして,臨床現場では使用されることがある。しかし,依然その機序や効果については不明な点が多い。

解 説

水帯・浮腫に対して効果が認められる漢方はいくつかあり,フロセミドなどの抗利尿薬と比べて,間質の水分の除去に有効とされ,より生理的な作用を示すとされる。

柴苓湯は利水作用をもつ漢方の一つで,同時に消炎作用をもち,蜂窩織炎を伴う場合や,術後の浮腫の減少に対して有効性を示した論文がいくつかある。Nagai らは放射線治療後のリンパ浮腫症例4 例に対して柴苓湯の効果を検証した症例報告を行った。4 例中2 例に,臨床的に明らかなリンパ浮腫の軽減がみられたとしている。一方,1 例は咳嗽・発熱の出現のため投与中止となった。同報告では,副作用に注意しつつ,前向きランダム化比較試験が必要と述べている 1)。浦山らは,四肢リンパ浮腫症例10 例11 肢(乳癌術後5 例,動脈バイパス術後2 例,子宮癌術後1 例,特発性2 例)に対して柴苓湯の投与前後の患肢の周径差を測定し,周径の平均が上肢では27. 9 cm から27. 1 cm(n = 5)へ,下肢では35. 7 cm から33. 9 cm(n = 6)へと減少したことを報告した 2)。長期投与に伴う有害事象はみられず,柴苓湯単独投与でも,9 肢中7 肢に効果がみられたとしている。これらの報告はいずれも少数の症例集積であり,また他の治療も併用されており,漢方の有効性を直接示したものではない。そのほか,柴苓湯の臨床的効果を示した報告として,Kishida らは,関節リウマチの患者で,股関節全置換術を受けた18 例に対して,柴苓湯効果を検証したランダム化比較試験を行った 3)。術後3 週間までの早期の治療効果を調査し,介入群の周径差が小さかったが統計的に有意差は認めなかった。また,自覚症状の改善も介入群と非介入群とで有意差は認めなかった。CRP は介入群では全例陰性化しており,抗炎症作用は非介入群と比べ有意に良好であった。この結果より,柴苓湯は術後早期のリンパ浮腫の改善に有効である可能性があり,より多数・長期の試験で検証する価値があるとしている。本試験は術後の一過性の浮腫が対象であることや抗炎症作用が主と考えられるため,続発性リンパ浮腫に対する有効性を直接示したものではない。

その他の漢方薬剤では,五苓散,牛車腎気丸などが,リンパ浮腫に対して有効であったとする邦文の症例報告がある 4)5)

リンパ浮腫に対する漢方の投与は,症例報告,症例集積は散見されるものの,他の治療が併用されているものがほとんどであり,漢方の有効性を直接的に証明していない。また,peer review を受けた英文論文の多くは基礎的研究で,リンパ浮腫に対する臨床的有効性を示したものはほとんど見当たらない。

以上より,リンパ浮腫に対する漢方の効果は十分に立証されていないため,まずは複合的治療が優先される。複合的治療の効果が不十分な場合に限り,その効果や有害事象に細心の注意を払って投与を考慮すべきである。

検索式・参考にした二次資料

文献の検索は,CQ に含まれる用語および関連用語をキーワードとして,1)〜2)の 手続きで行った。

1) 2013 年7 月までに出版された文献をPubMed および医学中央雑誌によって検索した。検索語は,「lymphedema AND kampo」「lymphedema AND herbal medicine」,「lymphedema AND Chinese medicine」「リンパ浮腫,漢方」とした。該当した論文から以下の基準に当てはまる論文を抽出した。

【適格基準】

①リンパ浮腫患者における診断・治療に関する原著論文,臨床試験,メタアナリシス,ランダム化比較試験

②Primary endpoint がQOL,身体的苦痛,精神的苦痛,生活への影響,あるいは実態調査

【除外基準】

①対象が小児に限定されているもの

②Primary endpoint が非臨床的指標のもの(サイトカイン,栄養学的指標,免疫学的指標など)

③対象が終末期患者(例えば,生命予後が6 ヶ月以下など)に限定されているもの

④Full-length paper のある同一著者による短報

⑤ガイドライン,レビュー論文

2) 二次資料として,Cochrane Library, UpToDate, Clinical Evidence を参照した。

以上の手順で21 編の論文を抽出し,本CQ に関係する文献5 編を得た。

文 献

1) Nagai A, Shibamoto Y, Ogawa K. Therapeutic effects of saireito(chai-ling-tang), a traditional Japanese herbal medicine, on lymphedema caused by radiotherapy:a case series study. Evid Based Complement Alternat Med. 2013;2013:241629.

2) 浦山博,大村健二,松智彦,他.四肢のリンパ浮腫に対するツムラ柴苓湯の使用経験.漢方医学. 1993;17(4):135-7.

3) Kishida Y, Miki H, Nishii T, et al. Therapeutic effects of Saireito(TJ-114), a traditional Japanese herbal medicine, on postoperative edema and inflammation after total hip arthroplasty. Phytomedicine. 2007;14(9):581-6.

4) 阿部吉伸,小杉郁子,笠島史成,他.リンパ浮腫と漢方.Prog Med. 2003;23(5):1538-9.

5) 前川二郎,吉田豊一,西条正城.四肢慢性リンパ浮腫に対するツムラ五苓散及び柴苓湯投与例の検討.漢方医学.1991;15(1):21-4.


CQ15

続発性リンパ浮腫に対して漢方薬以外の薬物を使用した場合,使用しなかった場合と比べてリンパ浮腫は軽減するか

推 奨

リンパ浮腫に対する漢方薬以外の薬物療法の効果に一貫した根拠はなく,重篤な副作用の報告もあることから,行わないことを推奨する。

グレードF
背景・目的

リンパ浮腫に対する治療は,非薬物的な複合的治療が一般的であるが,クマリン,フラボンとその誘導体を含むベンゾピロン類の投与による臨床試験が報告されている。また,実臨床ではフロセミドなどの利尿薬が使用されることも少なくないようである。クマリンはリンパ浮腫治療に効果があるとして研究されている栄養補助食品であるが,肝臓に障害を与えることが明らかとなり,食品および医薬品にクマリンを用いることは,米国など複数の国で禁止されている。本項ではリンパ浮腫に対する漢方以外の薬物療法の妥当性について検討した。

解 説

クマリンおよび関連薬がリンパ浮腫を軽減するなど複数の報告がなされている。1999 年にBurgos らは,6 施設の乳癌術後リンパ浮腫症例77 例に対しランダム化二重盲検試験を施行し,グループA(クマリン+ troxerutin 90 mg)とグループB(クマリン+ troxerutin 135 mg)における12 ヶ月後の四肢体積の変化を比較した。その結果,グループA で14. 9%,グループB で13. 2%と,両群で浮腫の軽減がみられ,臨床的有効性を示すoverall clinical score が増加したと報告した。治療群間に有意差はみられなかった 1)

1993 年にCasley-Smith らはインドで,216 例の下肢リンパ浮腫症例に対しクマリンとジエチルカルバマジン(DEC)の浮腫軽減効果を比較したランダム化二重盲検試験を行った。介入群は①プラセボ+プラセボ,②プラセボ+クマリン,③DEC +プラセボ,④DEC +クマリンであった。2 年間の経過観察期間で,クマリンは緩徐ではあるがすべての重症度のリンパ浮腫を有意に軽減したと報告した(p < 0. 0001)。DEC の効果はクマリンに比して低かったが,併用により浮腫,痛み,真菌症感染,リンパ管炎,リンパ腺症の罹患を減少させると報告した 2)。また,Casley-Smith らは別のコホートで,104 例のリンパ浮腫症例に対して中国でランダム化二重盲検試験を行い,クマリン200 mg × 2 とプラセボ群で,3 ヶ月毎に下肢の体積を比較した。その結果,クマリンはすべてのステージのリンパ浮腫を減少させ(p = 0. 001),その効果は経過観察後も持続した(p = 0. 026) 3)。Casley-Smith らは,さらに別の研究で63 例の乳癌術後のリンパ浮腫症例に対し,クマリン投与群とプラセボ群にランダムに割り付けし,患肢体積の変化を比較した。6 ヶ月後にクマリン群とプラセボ群とをクロスオーバーした結果,プラセボ投与の時期にリンパ浮腫が悪化したことが示され,それは特に上肢症例に顕著であった。クマリンは上肢体積を46%減少させ,下肢では25%減少させた 4)。これに対して,Loprinzi らは,乳癌術後リンパ浮腫症例140 例に対しCasley-Smith らと同様に,クマリンとプラセボのランダム化クロスオーバー試験を行った。その結果,6 ヶ月後に患肢体積が,プラセボ群で21 mL,クマリン群で58 mL 増加した(p = 0. 80)。さらに,質問表の回答も2 群間で差はなく,6 ヶ月後の治療効果はクマリン群で15%,プラセボ群で10%であったため,乳癌術後リンパ浮腫に対してクマリンは有効でないと結論付けられた。また,クマリンによる肝毒性の影響は6%と過去の報告(1%以下)より多くみられた 8)

1996 年にChang らは,60 例のリンパ浮腫症例に対しクマリンとプラセボのランダム化比較試験を行った。それぞれの投薬治療を6 ヶ月行った後,スリーブによる圧迫を6 ヶ月行った。ベンゾピロン群は20%の体積減少がみられ,周径とトノメトリーが改善した。スリーブを用いた後半の6 ヶ月は,プラセボ群で有意な改善がみられ(p = 0. 03),ベンゾピロン群ではやや改善した 5)

1996 年にCluzan らは,57 例の乳癌術後症例に対し,Ruscus + Hesperidin Methyl Chalcone(CYCLO3FORT)とプラセボのクロスオーバー試験を実施した。全症例に対し用手的リンパドレナージ(MLD)を週2 回施行した。その結果,3 ヶ月後にCYCLO3FORT はプラセボに比べ,浮腫を12. 9%軽減したと報告した(p = 0. 009) 6)

1989 年にJamal らは,169 例のリンパ浮腫症例に対して,ベンゾピロンとDEC の比較試験を行った。その結果,ベンゾピロン群で有意に浮腫が減少し,2 年で四肢体積が40%から25%に減少したと報告した。一方でDEC 群では有意差はみられなかった 7)

1997 年にPecking らは,乳癌術後リンパ浮腫症例104 例に対し,flavonoidi sfraction(Dios;Dafion500 mg)とプラセボのランダム化二重盲検定を実施した。6 ヶ月の治療中,2 ヶ月毎に効果を判定したが,両群間で有意差はなかった。24 例の重症リンパ浮腫症例では,リンパシンチグラフィ所見においてDios 群がプラセボ群に比べて改善した 8)

1988 年にPiller らは,26 例の乳房全摘術後リンパ浮腫症例と14 例の下肢リンパ浮腫症例に対し,ヒドロキシエチルベンゾピロン群とプラセボ群に分けランダム化二重盲検定を行った。6 ヶ月後にクロスオーバーし,四肢体積,周径,トノメトリーと上肢皮膚温を測定した。その結果,ヒドロキシエチルベンゾピロン群は体積(p < 0. 05-0. 01)と周径(p < 0. 01-0. 001)が減少し,上肢皮膚温も減少(p < 0. 05-0. 01)したと報告した。また,上肢可動性の改善と,痛み・重圧感の減少を認めた 9)

このようにベンゾピロン類の報告は多くなされているが,2009 年のコクランレビューでは,これらの研究を含む15 のトライアルのシステマティック・レビューが行われ,クマリンは複数のランダム化比較試験によってリンパ浮腫に対する有効性が示されているが,一方で無効である結果も報告されており,有効であると結論付けるのに不十分とされた 10)。また,レビューされたランダム化試験も質の低いものが多いため,定量的なメタアナリシスが行われるに至らなかった。現在クマリンは,副作用のため米国では使用が禁止されている。

また,リンパ浮腫に対して利尿薬が有効であるとの専門家グループからの指摘があり,実臨床では少なからず使用されている。Kligman らのレビューでは,リンパ浮腫に対する利尿薬の有効性を示す根拠は示されていない 11)

線維化を伴ったリンパ浮腫に対してビタミンE が有効であるとの報告があるが,Gothard らが行ったランダム化比較試験ではプラセボ群と比較して有効性が示せなかった 12)。サプリメントではANTISTAX やwobenzyme の浮腫軽減効果が検討されているが,リンパ浮腫に対する明確なエビデンスは見当たらなかった。

検索式・参考にした二次資料

文献の検索は,CQ に含まれる用語および関連用語をキーワードとして,1)〜2)の手続きで行った。

1) 1980年から2013年7月までに出版された英語の医学論文をPubMedによって検索した。検索語は,「lymphedema AND drug treatment」「lymphedema AND diuretics」「lymphedema AND furosemide」とした。

【適格基準】

①リンパ浮腫患者における診断・治療に関する原著論文,臨床試験,メタアナリシス,ランダム化比較試験

②Primary endpoint がQOL,身体的苦痛,精神的苦痛,生活への影響,あるいは実態調査

【除外基準】

①対象が小児に限定されているもの

②Primary endpoint が非臨床的指標のもの(サイトカイン,栄養学的指標,免疫学的指標など)

③対象が終末期患者(例えば,生命予後が6 ヶ月以下など)に限定されているもの

④Full-length paper のある同一著者による短報

⑤ガイドライン,レビュー論文

2) 二次資料として,Cochrane Library,UpToDate,Clinical Evidence を参照した。

以上の手順で,本CQ に関係する文献12 編を得た。

文 献

1) Burgos A, Alcaide A, Alcoba C, et al. Comparative study of the clinical efficacy of two different coumarin dosages in the management of arm lymphedema after treatment for breast cancer. Lymphology. 1999;32(1):3-10.

2) Casley-Smith JR, Jamal S, Casley-Smith J. Reduction of filaritic lymphoedema and elephantiasis by 5, 6 benzo-alpha-pyrone(coumarin), and the effects of diethylcarbamazine(DEC). Ann Trop Med Parasitol. 1993;87(3):247-58.

3) Casley-Smith JR, Wang CT, Casley-Smith JR, et al. Treatment of filarial lymphoedema and elephantiasis with 5, 6-benzo-alpha-pyrone(coumarin). BMJ. 1993;307(6911):1037-41.

4) Casley-Smith JR, Morgan RG, Piller NB. Treatment of lymphedema of the arms and legs with 5,6-benzo-[alpha]-pyrone. N Engl J Med. 1993;329(16):1158-63.

5) Chang TS, Gan JL, Fu KD, et al. The use of 5, 6 benzo-[alpha]-pyrone(coumarin)and heating by microwaves in the treatment of chronic lymphedema of the legs. Lymphology. 1996;29(3):106-11.

6) Cluzan RV, Alliot F, Ghabboun S, et al. Treatment of secondary lymphedema of the upper limb with CYCLO 3 FORT. Lymphology. 1996;29(1):29-35.

7) Jamal S, Casley-Smith JR, Casley-Smith JR. The effects of 5, 6 benzo-[a]-pyrone(coumarin)and DEC on filaritic lymphoedema and elephantiasis in India. Preliminary results. Ann Trop Med Parasitol. 1989;83(3):287-90.

8) Pecking AP, Fávrier B, Wargon C, et al. Efficacy of Daflon 500 mg in the treatment of lymphedema(secondary to conventional therapy of breast cancer). Angiology. 1997;48(1):93-8.

9) Piller NB, Morgan RG, Casley-Smith JR. A double-blind, cross-over trial of O-(beta-hydroxyethyl)-rutosides(benzo-pyrones)in the treatment of lymphoedema of the arms and legs. Br J Plast Surg. 1988;41(1):20-7.

10) Badger C, Preston N, Seers K, et al. Benzo-pyrones for reducing and controlling lymphoedema of the limbs. Cochrane review;2009.

11) Kligman L, Wong RK, Johnston M, et al. The treatment of lymphedema related to breast cancer:a systematic review and evidence summary. Support Care Cancer. 2004;12(6):421-31.

12) Gothard L, Cornes P, Earl J, et al. Double-blind placebo-controlled randomised trial of vitamin E and pentoxifylline in patients with chronic arm lymphoedema and fibrosis after surgery and radiotherapy for breast cancer. Radiother Oncol. 2004;73(2):133-9.