Clinical Question・推奨一覧

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CQ
No.
Clinical Question 推奨 グレード
第1章
予防
1 インターフェロン療法
  1 インターフェロンは, C 型慢性肝疾患からの発癌予防に有効か? C 型慢性肝炎・代償性C 型肝硬変患者の発癌予防には, インターフェロンを中心としたウイルス駆除療法が推奨される。 B
2 肝庇護療法
  2 肝庇護療法は肝細胞癌の発癌予防に有効か?

C 型慢性肝炎患者に対する発癌予防としてグリチルリチン製剤静脈内投与が推奨される。 B
抗ウイルス療法不応・困難な活動性C 型慢性肝炎・線維化進展例では, 瀉血や鉄制限食が発癌予防に有効な場合がある。 C1
3 B 型慢性肝疾患に対する抗ウイルス療法は肝細胞癌の発癌予防に有効か?
HBV-DNA 陽性代償性B 型肝硬変に対する発癌予防として核酸アナログ製剤が推奨される。 A
インターフェロン療法については一部のB 型慢性肝炎で推奨される。 C1
第2章
診断
および
サーベイ
ランス
1 サーベイランス
  4 サーベイランスは, どのような対象に行うか? 肝細胞癌の危険因子は, 肝硬変, C 型慢性肝炎, B 型慢性肝炎, 男性, 高齢, アルコール摂取,喫煙,肥満,糖尿病である。その中でもC 型慢性肝疾患患者, B 型慢性肝疾患患者, および非ウイルス性の肝硬変患者は肝細胞癌の定期的スクリーニングの対象として推奨される。 B
  5 サーベイランスは, 予後を改善するか?
定期的な肝細胞癌に対するスクリーニングによって, 早期に肝細胞癌が検出され,根治的な治療につながる。また,予後改善効果をもたらす可能性がある。 B
  6 サーベイランスは, どのような方法で行うか? 超音波検査を主体とし, 腫瘍マーカー測定も用いた肝細胞癌スクリーニングを軸とし, 肝硬変症例などの超高危険群ではdynamic CT またはdynamic MRI を併用する。 B
3〜6 カ月間隔での超音波検査と腫瘍マーカー測定を軸に, dynamic CT/MRI を併用した定期的スクリーニングを行うと,肝細胞癌が単発の小結節の段階で検出される可能性が高まる。 B
  7 Dynamic CT/MRI で典型的所見を示さない肝結節の精査は, 何cm 以上から行うのが望ましいか? 動脈相で高吸収域として描出される病変に関しては, 1 cm 以上から精査を行うことが望ましい。 B
2 腫瘍マーカー
  8 肝細胞癌の診断において2 種以上の腫瘍マーカーを測定することは有用か?
小肝細胞癌の診断においては2 種以上の腫瘍マーカーを測定することが推奨される。 A
9 腫瘍マーカーの測定は, 肝細胞癌の治療後の指標として有効か?
治療前に腫瘍マーカーが上昇している症例では, 治療後にその腫瘍マーカーを測定することは,治療結果の指標として有効である。 B
3 画像診断
  10 肝硬変患者における早期肝細胞癌の検出において, 診断能が高い検査は何か? 肝硬変患者における早期肝細胞癌の検出において, Gd-EOB-DTPA 造影MRI は高い診断能を有する。 B
11 肝細胞癌の高危険群において,典型的肝細胞癌の診断に診断能が高い検査は何か? 典型的肝細胞癌の診断のためにはdynamic CT, dynamic MRI, 造影超音波検査のいずれか1 つが勧められる。 A
12 肝細胞癌の治療前検査として血管造影は必要か? 肝細胞癌診断のためには血管造影は勧められない。
D
13 肝細胞癌の治療前検査としてCTAP/CTHA は必要か?
CTAP/CTHA はdynamic CT やdynamic MRI などの非侵襲的画像検査を上回る病変検出能を有する。微小病変を検出し, より正確なステージングを行いたいときに考慮する。 B
14 腎機能および肝機能低下患者における肝腫瘍の診断には, どの検査法が有用か? 腎機能や肝機能が低下した患者において,拡散強調像を含めた非造影MRI 検査やソナゾイド®造影を含めた超音波検査は, 安全に施行できる有用な検査であり, 推奨できる。 B
腎機能低下患者におけるdynamic CT やdynamic MRI は, eGFR が30〜60 ml/min/1.73 m²ではGd-EOB-DTPA 造影MRI, 30 ml/min/1.73m²未満ではSPIO 造影MRI, 透析患者ではSPIO 造影MRIやdynamic CT の施行を考慮してもよい。 C1
Child 分類C 相当の肝機能低下患者における造影CT/MRI について, 検査や造影剤の適切な選択に関する研究は不十分である。
15 肝細胞癌の画像診断において,どのように造影剤を用いるべきか?
肝細胞癌の多血性の評価には, 造影剤を急速注入し至適タイミングで撮像することが推奨される。
A
乏血性結節の評価には, 肝細胞特異性造影剤の肝細胞相での撮像が推奨される。 A
16 肝細胞癌の病期診断に頭部MRI, 胸部CT, 骨シンチグラフィー, FDG-PET は必要か?
肝外転移の危険因子を有する肝細胞癌患者に対して, 胸部CT, 骨シンチグラフィー, FDG-PET を施行することは推奨できる。 B
神経学的所見や肺転移のある肝細胞癌患者に対して,脳転移検索目的の頭部CT/MRI は,施行することを考慮してもよい。 C1
17 造影超音波は, 肝細胞癌における診断能を改善するか? 造影超音波は,肝腫瘍の鑑別診断や肝細胞癌の分化度診断および存在診断に有用である。 B
18 造影超音波は, 局所療法やTACE の治療効果判定に有用か? 造影超音波は癌遺残部を良好に描出できる点において有用である。 B
第3章
手術
1 手術適応・術式
  19 肝切除術を行う際の術前肝機能評価因子は何を用いるのが適当か?
また肝機能面からみた手術適応は?
術前肝機能評価としては, 一般肝機能検査に加えICG 15 分停滞率を測定することが望ましい。手術適応は,これらの値と予定肝切除量とのバランスから決定するのが妥当である。 B
20 標準的な肝切除術式とは? 小型の肝細胞癌(5 cm 以下)に対しては,小範囲の系統的切除, あるいは縮小手術としての部分切除(特に肝機能不良例)が選択される。大型の肝細胞癌に対しては2 区域以上の拡大切除(片肝切除を含む)が選択される。 C1
21 腫瘍条件からみた肝切除の適応は? 肝切除の適応となる肝細胞癌は, 肝臓に腫瘍が限局しており個数が3 個以下のものである。腫瘍の大きさについての制限はない。門脈侵襲を伴う症例では一次分枝までに進展がとどまるものは手術の適応としてよい。 B
2 予後因子
  22 肝切除後の予後因子は何か? 肝切除後の主な予後因子はStage 分類,脈管侵襲, 肝機能, 腫瘍数である。 B
23 切除断端距離は予後に寄与するか?
肝切除において肝切除断端距離は必要最低限でよい。 B
24 系統的切除は予後に寄与するか? 肝切除は系統的に施行することが推奨される。 B
3 周術期管理
  25 周術期の血液製剤の積極的な投与は推奨されるか? 同種赤血球輸血はできるだけ避ける。 B
凍結血漿は必ずしも必要としない。 B
26 肝流入血流遮断や中心静脈圧低下は, 肝切離中出血量を減少させるか? 肝流入血流遮断は肝切離中出血量減少に有効である。 A
中心静脈圧(CVP)低下は肝切離中出血量減少に有効である。 C1
27 肝切除において腹腔ドレーン留置は必要か? 待機的肝切除において腹腔ドレーンは必ずしも必要としない。 B
4 補助療法
  28 術前補助化学療法は肝切除後の予後を改善するか? 肝細胞癌肝切除後の予後改善を目的とした術前補助化学療法として推奨できるものはない。 C2
29 術後補助化学療法は肝切除後の予後を改善するか? 肝細胞癌肝切除後の予後改善を目的とした術後補助化学療法として推奨できるものはない。 C2
5 肝移植
  30 肝移植前のダウンステージングは肝移植の予後を改善するか? 肝移植前の肝細胞癌に対するダウンステージングが予後を改善する十分な科学的根拠はない。 C1
31 肝細胞癌に対する肝移植の適応基準は何か? 非代償性肝硬変を伴い, 他治療で制御不能な肝細胞癌に対し, 肝移植が考慮される。腫瘍条件としては, 腫瘍径や腫瘍数, 腫瘍マーカー, 脈管侵襲, 腫瘍の分化度が強い再発予知因子であり, 術前に評価できる因子は腫瘍径と腫瘍数, 腫瘍マーカーである。ミラノ基準を超えた拡大適応も多く提唱されているが, 現時点ではミラノ基準が妥当である。 B
第4章
穿刺局所療法
  32 穿刺局所療法はどのような患者に行うべきか? 穿刺局所療法の適応は, Child-Pugh 分類のA あるいはB の肝機能の症例で, 腫瘍径3cm 以下, 腫瘍数3 個以下である。 B
33 各穿刺局所療法の選択は,どのように行うべきか? 穿刺局所療法としてRFA が推奨される。 A
消化管穿孔が危惧される場合には, その他の手法(人工腹水下RFA やPEI)は有効な選択である。 B
34 穿刺局所療法にTACEを併用することで予後を改善できるか? TACE を先行したRFA では壊死範囲が拡大する。 A
局所コントロールが得られれば良好な予後が期待できるが, 先行するTACE によってRFA の予後向上に寄与するかについて十分なエビデンスはない。 C1
35 造影超音波, CT やMRI とのfusion image は局所療法の治療ガイドとして有用か? 造影超音波やfusion image は, B モードで描出が困難な肝細胞癌に対する治療ガイドとして有用である。 B
36 局所療法の効果判定に有用な画像診断は何か? 局所療法の効果判定は, dynamic CT/MRI を基本とする。造影剤アレルギー, 腎機能低下例などでは, 造影超音波によって代替できる可能性がある。 A
第5章
肝動脈化学塞栓療法
(TACE)
  37 どのような症例がTACE/TAE のよい適応か? TACE/TAE は肝障害度A, B(またはChild分類A, B)の, 手術不能でかつ穿刺局所療法の対象とならない多血性肝細胞癌に対する治療法として推奨される。化学塞栓される非癌部肝容積の非癌部全肝容積に占める割合と残肝予備能を考慮した選択的TACE/TAE が推奨される。 A
肝外転移のない脈管内腫瘍栓(特に門脈内腫瘍栓)症例に対するTACE/TAE の有用性の報告はあるが, 十分なエビデンスに乏しい。 C1
38 TACE/TAE において塞栓物質や抗癌剤は何を用いるべきか? TACE/TAE の際は, リピオドール®を使用したリピオドールTACE(Lip-TACE)が推奨される。症例により抗癌剤の感受性が異なる感もあり, リピオドール®とのエマルジョンに使用する抗癌剤として特定の有効な薬剤は見出せない。塞栓物質として球状(粒子径1 mmと2 mm)の多孔性ゼラチン粒(ジェルパート®)が本邦では使用可能である。 C1
39 再TACE/TAE の時期の選択は? 血流豊富な腫瘍出現, 腫瘍マーカーの上昇あるいは腫瘍径が増大した時点で再TACE/TAE は施行されるべきである。 B
40 TACE の効果判定に有用な画像診断は何か? Dynamic CT もしくはdynamic MRI が推奨される。 B
第6章
化学療法
  41 全身化学療法はどのような症例に行われるか? 全身化学療法は外科切除や肝移植, 局所療法, TACE が適応とならない症例が対象となる。特に, ソラフェニブはPS が良好なChild-Pugh 分類A の症例が対象である。 A
42 肝動注化学療法は予後を改善するか? 肝動注化学療法は予後を改善する可能性はあるが十分な科学的根拠がない。 C1
43 化学療法(薬物療法)で有効な治療は何か? Child-Pugh 分類A の切除不能肝細胞癌に対する全身化学療法にはソラフェニブが推奨される。 A
44 ホルモン療法は有効か?
進行肝細胞癌に対してホルモン療法は無効であり, 行わないよう勧められる。 D
45 化学療法(薬物療法)の治療効果予測因子・予後因子は何か? 化学療法(薬物療法)において, 科学的根拠のある治療効果予測因子・予後因子はない。 C1
46 化学療法の治療効果判定はどのようにするか? 肝細胞癌治療の治療効果判定においては, 壊死部分, 生存腫瘍部分を正しく評価する必要があるため, これらを考慮に入れたmodified RECIST, RECICL, EASL 基準が有用である。 C1
47 化学療法の副作用とその対策は何か? 肝硬変を合併し, 治療前から汎血球減少がみられることが多いため, 血液毒性に十分注意する必要がある。 C1
ソラフェニブでは, 手足症候群, 皮疹, 下痢, 高血圧症といった特徴的な副作用の頻度が高く, 治療開始後早期に起こることが多いため, 慎重に経過観察し対処する必要がある。 C1
第7章
放射線治療
  48 肝細胞癌に対する, 3 次元原体照射法による放射線治療は有用か? 門脈腫瘍栓症例や切除不能症例, 内科的合併症などの理由で, 他の標準的な治療法が適応とならない病態に対しては, 3 次元原体照射法による放射線治療を検討してよい。
C1
放射線治療単独による生存期間延長の効果を示す十分な科学的根拠はないが, 切除不能症例に対してはTACE に放射線治療を併用することによって生存期間の延長が期待できる。 C1
また, 放射線治療の分割方法や総線量,治療適応可能な肝機能の基準について科学的根拠がある推奨はない。
49 肝細胞癌に対する,体幹部定位放射線治療は有用か? 他の局所療法の適応困難な肝細胞癌(直径5 cm 以下で転移病巣のないもの)に対して, 体幹部定位放射線治療を行うことを検討してよい。ただし, 体幹部定位放射線治療による生存期間延長の効果を示す十分な科学的根拠はない。 C1
また, 放射線治療の分割方法や総線量,治療適応可能な肝機能の基準について科学的根拠がある推奨はない。
50 肝細胞癌に対する, 粒子線治療〔陽子線治療, 重粒子(炭素イオン)線治療〕は有用か? 他の局所療法の適応困難な肝細胞癌に対して, 粒子線治療〔陽子線治療,重粒子(炭素イオン)線治療〕を行うことを検討してよい。特に門脈腫瘍栓や下大静脈腫瘍栓, 巨大肝細胞癌など, 治療に難渋する腫瘍に対して行うことが考慮できる。 C1
51 肝細胞癌の遠隔転移に対しては,放射線治療が適応となるか? 骨転移による疼痛の緩和には, 放射線治療は一般に有用であり, 治療を行うよう勧められる。 B
脳転移を有する症例に対しては, 生存期間延長を目的として全脳照射と定位放射線照射を適切に組み合わせて, あるいは, いずれか一方を用いて治療を行うよう勧められる。 B
第8章
治療後のサーベイランス,
再発予防,
再発治療
  52 肝切除後や穿刺局所療法後, どのようにフォローアップするか? 肝切除後や穿刺局所療法後には, 初発時の超高危険群に対するサーベイランスに準じ, 腫瘍マーカーと画像検査の併用による厳密なフォローアップが推奨される。
C1
53 肝切除後や穿刺局所療法後の有効な再発予防法は何か? 肝炎ウイルス陽性肝細胞癌において, 肝切除後や穿刺局所療法後のインターフェロン療法は再発抑制や生存率の向上に寄与する可能性があり, 有害事象に配慮しながら行ってよい。 C1
その他にも有効と報告されている再発予防法はあるが, 推奨するまでには至っていない。 C1
54 肝移植後の有効な再発予防法は何か? 免疫抑制剤の選択や投与量の調節が,肝移植後の再発予防法に寄与するとの報告がある。 C1
55 肝切除後の再発に対する有効な治療は何か? 肝切除後の再発に対しては, 初回肝細胞癌と同じ基準で治療方針を決定することが推奨され, 肝機能良好例における単発症例では再切除が推奨される。 B
56 穿刺局所療法後の再発に対する有効な治療法は何か? 穿刺局所療法後の再発に対しては, 初回治療と同様に根治性と肝予備能を考慮して治療法を決定することが推奨される。 B
57 肝移植後の再発に対する有効な治療法は何か? 肝移植後の再発に対しては, 可能であれば再発病巣の切除を考慮してもよい。 C1