口腔癌診療ガイドライン2013 年版
作成の手順に関して

1.作成の手順

「科学的根拠に基づく口腔癌診療ガイドライン 2009 年度版」の改訂に際して,第1 回日本口腔腫瘍学会ならびに日本口腔外科学会合同委員会が2011 年1 月27 日に開催された。そこで各委員の担当ならびに役割分担が決められ,以後12 回の委員会の開催によって改訂原案が作成された。作成においては,2009 年度版と同様に日本癌治療学会がん診療ガイドライン委員会編集の「がん診療ガイドライン作成の手引き」およびMinds の診療ガイドライン作成マニュアルに基づいて行われた。

2.Clinical Questionの設定

CQ の設定は2009 年度版の文言の改訂と審査をまず行い,よく似た内容のCQ については1 つにまとめ整理を行った。また,補綴関連についてはより詳しく検討記載されているガイドラインに譲ったため一部削除した。その後2009 年度版では掲載していなかったものの臨床上重要なCQ を委員会で検討し,追加CQ として新たに加え評価を行った。基本的にはMinds のマニュアルに従い,PICO(Patient,Intervention,Comparison,Outcome:どのような対象に,どのような治療を行ったら,治療を行わない場合に比べて,どれだけ結果が違うか)形式のCQ を検討し作成したが,論文を検索してみると比較研究の論文がなく,その答えが出ないCQ も多く,単純な疑問・質問形式となったものもあった。最終的に46 のCQ となった。

3.文献検索方法

文献検索は,CQ ごとに日本語と英語のキーワードを基に検索式を設定した。設定された検索式により,医学中央雑誌(医中誌)とPudMed を用いて検索を行った。各CQ の検索式は,それぞれCQ の解説の後に示した。また,キーワードで検索されなかったものの,その項目やCQ に有用と思われた論文をCQ 解説作成担当者の判断で追加した。追加された論文が総説やCQ 解説で引用された場合には,参考文献の最後に(追加論文)と記載し,追加論文であることを明示した。

4.文献の評価(エビデンスレベル)と推奨グレード

a.エビデンスレベルの分類

日本癌治療学会より示された「がん診療ガイドライン作成の手引き」をもとに行った。

各疑問点について「エビデンスレベル」を分類した(表1)。特定の疑問点について複数の文献(エビデンス)がある場合には原則的には最も高いエビデンスを採用した。

表1 エビデンスレベルの分類
エビデンスのレベル 内 容
システマティック・レビュー /メタ・アナリシス
1つ以上のランダム化比較試験による
非ランダム化比較試験による
分析疫学的研究(コホート研究や症例対照研究)による
記述研究(症例報告やケースシリーズ)による
患者データに基づかない,専門委員会や専門家個人の意見
(福井次矢:診療ガイドラインの作成の手順 Ver.4.3より引用)

b.推奨グレード(表2)

ガイドラインには短時間で推奨診療内容を把握できるように,Clinical Question に対する答えとして,推奨される診療行為を「推奨文」として記載し,さらに,推奨の強さを推奨グレードとして提示した。

表2 推奨グレードの分類
推奨グレード 内 容
A 行うよう強く勧められる
強い根拠があり,明らかな臨床上の有効性が期待できる。
B 行うよう勧められる
中等度の根拠がある,または強い根拠があるが臨床の有効性がわずか。
C1 十分な科学的根拠がないが,行うことを考慮しても良い
有効性が期待できる可能性がある。
C2 十分な科学的根拠がないので,推奨ができない
有効性が期待できない可能性がある。
D 行わないよう勧められる
有効性を否定する(害を示す)中等度の根拠がある。
I 行うよう,または行わないように勧めるだけの根拠が明確でない

口腔癌の治療,特に外科療法においては十分なエビデンスが得られないため,グレードC(行うことを勧めるだけの科学的根拠が明確でない)が多くなることを考慮し,グレードC を臨床的な適応性や有用性を加味してC1,C2 に分けた脳卒中の推奨グレード分類を採用した。これはMinds の推奨グレード案のグレードE(行わないことを強く勧める)を削除したものであり,さらにABCDI の推奨分類(U.S. Preventive Services Task Force)に従い,グレードⅠを追加した。

推奨文および推奨グレードの作成にあたっては,エビデンスのみでなく臨床医療を十分考慮する必要があり,推奨の強さは次の要素を勘案して総合的に判断した。

  1. (1)エビデンスレベル
  2. (2)エビデンスの数と結論のばらつき
    (同じ結論のエビデンスが多いほど,そして結論のばらつきが小さいほど推奨は強いものとなる)
  3. (3)臨床的有効性の大きさ
  4. (4)臨床上の適応性(医師の能力,地域性,医療資源,保険制度)
  5. (5)害やコストに関するエビデンス

5.構造化抄録の作成

構造化抄録は,診療ガイドライン作成時に執筆の基礎となるだけでなく,各論文を批判的吟味しながら読んだという証拠となるもので,エビデンスデータベースに保存されるものである。構造化抄録は検索式により検索された論文のうち,その項目やCQ と全く関連のない論文を不適当論文として削除を行った残りの論文に対して作成した。構造化抄録のフォームは前版にしたがった。

各項目の総説やCQ 解説に引用した論文に対しては,執筆者が直接作成した。その他の選択された論文で引用されなかった論文は,2009 年度版では日本口腔腫瘍学会と日本口腔外科学会の評議員および合同委員会委員で,口腔癌の治療を専門に行っている施設に構造化抄録作成の協力依頼を行い,作成した。2013 年度では改訂版であることから,合同委員会の施設のみで行った。協力をしていただいた施設(2009 年度版に掲載)には,改めて感謝申し上げます。作成された構造化抄録は,総説やCQ 解説のため行った文献検索式ごとにファイルにまとめCD-ROM に収録した。

6.口腔癌診療ガイドライン外部評価

「口腔癌診療ガイドライン 2013 年版」の作成過程の妥当性や臨床現場で適用可能かどうかを客観的に評価するために,2009 年度版と同様に日本口腔外科学会および日本口腔腫瘍学会のそれぞれにおいて外部評価委員会が設置され,評価を受けた。評価委員は本ガイドラインの作成に直接かかわっていない9 名の医師,歯科医師(口腔外科専門医,歯科放射線科医,口腔病理医)によって構成されていた。

日本口腔外科学会評価委員会では,AGREE(Appraisal of Guidelines for Research and Evaluation)による評価法により,主にガイドラインの作成課程と構成の妥当性についての評価を受けた。一方,日本口腔腫瘍学会評価委員会ではガイドラインの内容,すなわち「口腔癌診療現場での臨床上の疑問点を的確にピックアップしているか,さらに,その疑問点に対して科学的根拠に基づいた解答を与えているか」についての評価を受けた。その結果,いずれの評価委員会からも高い評価を受け,本ガイドラインを「推奨する」あるいは「強く推奨する」の評価であった。各項目やCQ ごとの細かな指摘事項については,ガイドライン合同委員会にて審議を行い,修正が必要かつ可能と判断された事項の修正を行った。

7.改訂

医学の進歩とともに口腔癌の治療内容も変化するので,このガイドラインも定期的な再検討を行う必要がある。また,各方面からの建設的な批判や種々の意見を集積して内容を再吟味し,今回作成上生じた問題点を解決しながら適時ガイドラインの改訂を行っていく予定である。さしあたり今回の合同委員会で,原則として3 年ごとの見直しを行い,評価委員会による検証を繰り返していく予定である。

8.利益相反

日本口腔腫瘍学会,日本口腔外科学会共編「科学的根拠に基づく口腔癌診療ガイドライン2013 年版」の作成に関わった日本口腔腫瘍学会学術委員会口腔癌治療ガイドライン改訂委員会ならびに日本口腔外科学会学術委員会口腔癌診療ガイドライン策定委員会では,各委員と口腔癌および関連疾患に関与する企業との間の経済的関係につき,「一般社団法人日本口腔腫瘍学会口腔腫瘍臨床研究の利益相反に関する指針」および「口腔腫瘍臨床研究の利益相反に関する指針運用規則」の基準により利益相反状況について申告を得た。

委員はすべて,「科学的根拠に基づく口腔癌診療ガイドライン2013 年版」の内容に関して,口腔癌および関連疾患の医療・医学の専門家あるいは専門医として,科学的および医学的公正さと妥当性を担保し,対象となる疾患の診療レベルの向上,対象患者の健康寿命の延伸,QOL の向上を旨として編集作業を行った。対象期間は, 本ガイドライン作成が開始された2011 年1 月から2013 年3 月までとした。

申告結果は,委員全員とも開示すべきCOI は認めなかった。