2011 年版 序

癌の診断や治療は,今日の泌尿器科診療において資源をもっとも必要とする分野のひとつです。すなわち,疾患が深刻であり,患者の数も多く,また診断や治療が多様であるということです。このような事態に対しては,診療ガイドラインが有効な武器となります。泌尿器科領域で出版されているガイドラインの多くが,癌に関連しているものであることは偶然ではありません。この度,改訂して発刊される『腎癌診療ガイドライン』は,泌尿器科癌の領域でももっとも利用されているもののひとつで,2007 年に発刊された初版は約6,000 部が販売されました。この度は,この2007 年版を改訂した2011 年版の発刊の運びとなります。

この僅か4 年の間に腎癌の診療は大きく様変わりしました。もっとも大きな変化は分子標的治療薬の登場です。特定の分子に特異的に作用する治療は,これまた特定の分子異常をともなう癌に有効です。腎癌には特定の分子異常が関与していることが古くから知られており,このような作用機序を有する薬剤の格好の適応となるでしょう。一方,その作用の新規性から,多様な新たな副作用も持ち合わせています。これらの危険な要素も含む治療手段を扱うにあたっては,知識と細心さとが求められます。勘と経験に拠るのではなく,科学的な手法に基づいて実行され評価された研究成果を踏まえた診療が必要になるでしょう。それがこのガイドラインの目指すところであることは,言うまでもありません。改訂版では,この新規治療について大幅な加筆がなされました。また,それ以外の部分でも多数の改訂がなされ,より今日的な診療の手引書となっています。

藤岡知昭教授を始め,作成に当たられた多数の委員の先生方のご努力に敬意を払うとともに,このガイドラインが泌尿器科医をはじめとする癌診療に携わる多くの医療職の皆様のお役に立つことを期待致します。

平成23 年10 月

社団法人日本泌尿器科学会
理事長 本間 之夫