序文—胆道癌診療ガイドライン—

胆道癌診療ガイドラインは2007 年、平成19 年10 月に第1版が出版され、それから7 年を推移した訳であります。第1版を出版した際には5 年後には改訂を要するであろうと予定していたのでありますが、胆道癌領域の新たなエビデンスとなる知見が出される状況をみて2014 年、平成26 年の今回改訂第2版を出版することになりました。初版の時に比して第2版の改訂においてはガイドライン作成委員の構成において大幅に内科医師および病理医・放射線科医を増員してその作成に加わっていただきました。その目的はGRADE システムという新たなガイドライン作製方法の考え方を導入することを目的としたため、様々な領域のエクスパートの意見を十二分に反映できる構成が必須であったからです。確固たるエビデンスが多数存在する場合は別ですが、胆道癌の診療領域では必ずしも充分なエビデンスが得られていないテーマが多々存在しています。しかし、胆道癌の日常臨床においては多くの選択肢が存在してその判断に臨床医が苦慮することも少なくないと判断し、そのようなテーマおよびCQ においての各委員の意見がコンセンサスを得られない場合に、全委員の投票によって70%以上の意見の集約が得られるまで討議を繰り返し行ってコンセンサスを得るようにして今回本ガイドラインを作成して参りました。従って、各委員の先生方には大変に多くの時間をこのガイドライン作成にあたり費やしていただいたことを改めて感謝申しあげたいと思います。臨床医学というジャンルにおいてもその学問は日々進歩していきます。従ってこの本が出版される時にはもうすでにこのガイドラインには掲載されていない一新たな知見が一部には見られてくるかも知れません。これはガイドラインの宿命でもあると思いますし、胆道癌領域に携わる専門医がそのような新たなエビデンスを得るために常に新たな臨床研究を行って結果を出して行き続けることも義務であります。

しかしながら、そのようなことを踏まえても臨床医学における新たなエビデンスの確立には一つの画期的な論文発信のみでは充分とは言えず、その後のvalidationすなわち検証結果が出て始めて多くの患者さんに貢献できうるエビデンスとしての質が高まるものと思われます。本ガイドラインが胆道癌に悩める一人でも多くの患者さんにとって有益なものとなれるよう、その患者さんを診療する臨床医に役立つものになることを強く期待いたします。

最後にこの第2版の胆道癌診療ガイドライン作成に当たりお忙しい中を快くご協力下さった全ての作成委員および協力委員・評価委員の先生方に深謝する共に、特に事務局として多くの時間その作業にあたってくれた吉富秀幸講師、高屋敷吏助教に心より感謝申しあげます。

2014年(平成26年)9月28日

胆道癌診療ガイドライン作成委員長
日本肝胆膵外科学会理事長
千葉大学大学院臓器制御外科学教授
宮崎 勝