目的・対象

1.本ガイドラインの目的

胆道癌はいまだ予後不良の疾患であるが,これまで診療の指針となるガイドラインは見られていない.しかし、その治療成績の向上には多くの課題が診断の面からも治療の面からも残されている。ことに胆道癌の診断,治療にはしばしば十分に経験を積んだ医師による高度な技術が求められることに注目し,ここに胆道癌診療ガイドラインの作成を行った。

今回の改訂に際し、特に以下の2 点が大きな変更点である。まず、作成委員の構成であるが、初版においては外科系専門医の割合が多いとの指摘があった。加えて、化学療法や内視鏡的手技の広がりから内科系医師の割合を増やした。また、放射線治療、病理、ガイドライン作成専門委員も新たに参加してもらうことで多分野の専門家による討議により内容に片寄りがないように努力した。また、推奨が曖昧でわかりにくいとの批判もあった。そこで、Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation(GRADE)(Atkins D, Guyatt GH, Oxman AD et al. BMJ 2004, 328:1490)の考え方を参考にして、エビデンスを研究形式のみでなく、内容にまで踏み込みそのレベルを決定した。これに加えて、利益と害・負担のバランスに関する確実性、患者の嗜好性、資源の影響を加味し、できるだけ推奨を明確にするようにすることで、本ガイドラインを参考とする医療従事者がより使いやすくなるようにこころがけた。

2.本ガイドラインの対象

診療対象

成人の胆道癌患者を診療対象とし,小児患者を除いた.本文中の薬剤使用量などは成人を対象としたものである。

使用対象

胆道癌診療に当たる臨床医を使用対象とし、本疾患の専門医のみならず、一般臨床医が胆道癌に効率的かつ適切に対応できるように配慮した。

3.本ガイドラインの使用法

本ガイドラインの全内容に関してはガイドライン作成委員全員による討論の上,承認されたものである。本ガイドラインの構成はまず,診断,治療に関するアルゴリズムを掲載した。ガイドライン本体は、7 分野に分け、本疾患に携わる医療従事者が抱くことが多いと考えられる臨床上の疑問点をクリニカルクエスチョンとしてとりあげ、これに対する推奨,その度合い(推奨度),推奨に至る解説を記載することとした。これらの推奨,解説はエビデンスに基づき作成,記載しており,それに基づいて各クリニカルクエスチョンに対する推奨度を決定した(詳細は「エビデンスに基づいた胆道癌診療ガイドライン」 医学図書出版 を参照のこと)。また,本ガイドラインにおける記載法は原則として胆道癌取り扱い規約第5 版に準じている。

4.診療ガイドラインの位置づけ

あらためて,診療ガイドラインの位置づけを示すと,これはあくまでも現時点でもっとも標準的な診療指針であり,実際の診療行為を強制するものではなく,各施設の状況(人員,診療経験,診療機器等)や個々の患者の個別性を加味して最終的に対処法を決定するべきである。また,ガイドラインの記述に関してはその責を日本肝胆膵外科学会(旧日本胆道外科研究会を含む)が負うものとするが,治療結果についての責任は直接の治療担当者に帰属するべきものであり,学会,ガイドライン作成委員はこの責を負わない。

5.資金、利益相反

資金、利益相反の詳細については「エビデンスに基づいた 胆道癌診療ガイドライン 改訂第2 版」(医学図書出版梶jを参照されたい。