頭頸部癌診療ガイドライン 2009 年版【第1 版】発刊に際して

刊行に寄せて

この度,頭頸部癌治療を担当する医療従事者が長い間待ち望んでいた頭頸部癌診療ガイドラインが上梓されることとなった。

本ガイドラインは平成 13 ─ 17 年度厚労省がん研究助成金海老原班,吉田班「がん専門施設を活用したがん診療の標準化に関する共同研究」において原案が作成され,それを引き継いで日本頭頸部癌学会診療ガイドライン検討委員会でさらに討議され,まとめられたものである。しかし,本ガイドライン作成にあたっては他領域の癌と異なるさまざまな問題点があった。

(1)頭頸部癌は発症数が少ないため,治療に関するレベルの高いエビデンスが乏しい
頭頸部癌の発症数が全癌の約 5%と少なく,日本では年間の頭頸部癌罹患率は 10 万人比 8人と推測されている(1998 年地域癌登録に基づく推定)。さらに,頭頸部は多くの原発部位に分かれているため,各原発部位の発症数はさらに少なくなり,多数例の集積によるレベルの高いエビデンスを出しにくいのが現状である。

(2)多くの原発部位別にガイドラインを作成する必要があり,コンパクトにまとめなければならない
UICC 分類では,頭頸部は口唇・口腔,鼻腔・副鼻腔,上咽頭,中咽頭,下咽頭,喉頭,唾液腺,甲状腺に分類されている。各部位の癌の性格や治療法がまったく異なるため,原発部位ごとにガイドライン作成が必要であり,それぞれコンパクトにまとめられた。

(3)頭頸部癌の治療法は多岐にわたる
現在,頭頸部癌に対しては手術,化学療法,放射線治療およびそれらを組み合わせたさまざまな集学的治療が行われており,その治療手段は非常に多岐にわたっている。その多くは否定するエビデンスもなく,現時点では容認せざるを得ないため,治療選択肢の多いガイドラインとせざるを得なかった。

以上のさまざまな制約から,ガイドライン作成に際して関係者は非常に努力を要したと想像される。その労苦に深く感謝する。しかし,このガイドラインが多くの医療従事者に有効に活用していただければ,その労苦も報われるものと思われる。

本ガイドラインは初版であり,まだまだ不備な点も多いが,読者諸氏の助言を受けながら改訂作業を続け,より充実した内容のガイドラインとしていきたいと願っている。

2009 年 2 月

日本頭頸部癌学会理事長

岸本 誠司