作成にあたって

日本泌尿器科学会では,これまで膀胱癌取扱い規約は出版し改定を重ねてきたが,診療ガイドラインは,これが初版である。

膀胱癌に関するガイドラインは,国際的には,NCCN, NCI-PDQ, AUA, EAUなど多くが出版されている。日本のこれまでの状況は,取扱い規約に基づき診断・分類し,治療の実践にあたっては,これらの国際的ガイドラインが用いられてきた。しかし,薬剤や治療機器が日本では認可されていなかったり,海外の文献に基づく推奨オプションは,必ずしも日本の臨床現場には適合するものばかりではない,などの問題が指摘されてきたのも事実である。本ガイドラインに引用されている文献リストをご覧いただければご理解いただけると思われるが,膀胱癌の分野においては,日本での臨床試験も比較的多く行われており,日本泌尿器科学会として,ガイドラインを制定する意義は十分にあると考えられた。

一般に,ガイドラインを組み立てる場合,症例のリスク分類に従ってなされるの が通常である。大分類的には,TNM分類やAJCC分類が世界共通で用いられるが, さらに詳細なリスク分類は,国際的に多くが提唱されており,一定のものが無いの が現状である。たとえば,筋層非浸潤癌のリスク分類を考えると,欧米のガイドラ インを参考に独自の分類を提唱するのは,それなりの臨床試験データがない限りあ まり意味を持たない。複数の臨床試験データをメタ解析して新たなリスク分類を作 成するのは今後の課題である。したがって,本ガイドラインのクリニカルクエスチョ ン(CQ)では,そのもととなった文献より多少リスク分類が異なっている。しかし, 大局的には,低リスク群には抗癌剤即時単回注入,中リスク群には抗癌剤,あるい はBCG注入,高リスク群にはBCG注入,あるいは膀胱全摘出術が推奨されると いう国際的コンセンサスは守られている。

本ガイドラインでは,膀胱癌の臨床ステージごとに総論を記載し,その後にCQの形で,日常臨床に頻繁に遭遇する問題を解説した。CQでもなるべく幅広い解説を基本とし,多くの関連事項をも言及するよう努めたが,それでも特殊な事例などのすべてに満足のいく解説をすることは,本ガイドラインの性格上困難である。今後は,現場の専門家の意見を取り入れ,矢継ぎ早に出現する新薬や臨床試験データを鑑み,適時本ガイドラインを改定していくことも,また重要な課題であると認識する。

平成21年3月

膀胱癌診療ガイドライン作成委員会 委員長
筑波大学大学院人間総合科学研究科泌尿器科
赤座 英之