最近は「診療ガイドライン」ばやりである。確かに,テーマごとに研究論文をみつけ,その信憑性を評価し,その点に基づいて診療方針(推奨)を決める「根拠に基づいた診療ガイドライン」は必要である。

「甲状腺腫瘍診療ガイドライン」は多くの臨床家が待ち望んでいたものではある。一方,放射性アイソトープが日本では使用が制限されていること,比較的頻度の高い疾患であり,専門家の間でもその診療のばらつきが大きいこと,などの理由で刊行の可否についてはいろいろと検討がなされてきた。

しかし,エビデンスに基づいた日本型のガイドラインを作るという機運が高まり,「日本内分泌外科学会」と「日本甲状腺外科学会」が共同作業に入った。作成委員会の委員長および副委員長を吉田明先生と岡本高宏先生にお願いし,作成委員会顧問を日本医療機能評価機構の吉田雅博先生に依頼し,この4人で2 年前の夏の夕方に熱い討論を交わした。その後,31 名からなる作成委員会が作られ,彼らのご尽力と熱意により約2 年間という短い歳月で上梓されるに至った。ここで改めて厚く御礼申し上げる。この間,網羅的文献検索にご協力いただいた日本医学図書協会の方々にも厚く御礼を申し上げたい。

また,ガイドラインは大別して,エビデンスベースのものとコンセンサスベースのものとがある。本ガイドラインは両者が混在しているが,基本的にエビデンスベースのガイドラインであり,一部コンセンサスベースのものが含まれる。エビデンスベースのほうが正確であり,極めて網羅的に記述されている。

このガイドラインが甲状腺腫瘍を取り扱う多くの臨床家に利用され,診療水準を高め,より高い治療成績を収めていただければ最大の喜びである。その結果,多くの臨床家からご意見をいただき,それをフィードバックすることも重要である。今後は定期的な改訂が必要であり,ダイジェスト版,ホームページなどでのガイドラインの普及,世界へ向けての情報発信と交換を行わなければならない。

最後に金原出版の佐々木瞳氏の献身的なサポートに心より敬意を表したい。

2010年10月

日本内分泌外科学会理事長
日本甲状腺外科学会理事長
高見 博