はじめに

甲状腺腫瘍のガイドラインとして欧米ではいくつかのものが存在し,日常臨床に定着し改訂を重ねている。しかし,RI の利用可能な施設が限られているわが国では甲状腺分化癌に対する治療方針が諸外国とは異なり,これらのガイドラインをそのまま使用することはできない。また,甲状腺腫瘍は非常に多い内分泌疾患であり,その取扱いは専門家の間でも必ずしも一定でない。こうした理由からわが国独自のガイドラインが必要であるとの認識が広まった。また,甲状腺外科を取り巻く環境は「内分泌・甲状腺外科専門医」の誕生とともに整備されつつあり,専門医制度と車の両輪ともいうべきガイドラインの作成は急務であった。このような状勢のもと2008 年10 月「甲状腺腫瘍診療ガイドライン」作成委員会が結成され実質的な活動を開始した。この会の目的はエビデンスに基づいた「日本型」のガイドラインを作成し,これを広く内外に示すことである。作成委員には内分泌外科学会や甲状腺外科学会で活躍中の外科,耳鼻(頭頚)科の医師を中心に放射線科,病理,内科など幅広い分野の医師に参加していただいた。また顧問として日本医療機能評価機構の吉田雅博先生に参加していただき,さまざまな助言を頂戴した。作成委員会が結成されて以来,約一年半の短期間に7 回に渡る作成会議が開催され,原案が完成した。以下にその軌跡を記す。

  • 第1 回作成委員会(08 年10 月15 日):全体構成を決定し,各班でCQ(クリニカルクエスチョン)の立案を開始。
  • 第2 回作成委員会(09 年1 月24 日):CQ,コラムの選定。各CQの文献検索を日本医学図書館協会に一括依頼。文献検索の結果を各班に配布。各班にて文献批判的吟味および構造化抄録の作成を開始。
  • 第3 回作成委員会(09 年6 月27 日):各班における構造化抄録作成の進捗状況を確認。ガイドライン作成上のさまざまな問題を討議。構造化抄録に基づいてCQ に対する要旨/解説文を作成。
  • 第4 回作成委員会(09 年9 月26日):できあがった推奨文/解説文の審査(全体の約半数)。委員会全体のコンセンサスが必要な問題を検討。
  • 第5 回作成委員会(09 年12 月12 日)第4 回以降に提出された推奨文/解説文の審査。さらにコンセンサスが必要な問題を検討。
  • 第6 回作成委員会(10 年2 月13 日):推奨グレードを6 段階にすることを決定。各CQ 要旨の推奨グレードを検討・承認。診断と治療アルゴリズムを検討。
  • 第7 回作成委員会(10 年4 月11 日):遅れて提出されたCQ 要旨/解説文の承認と全体の見直し。診断と治療アルゴリズムを承認。原案完成。

十分なエビデンスがない事柄については作成委員会でのコンセンサスを得るように努め,できるだけ完成度の高いものを目指した。しかし作成委員会内でも十分なコンセンサスが得られたとは言い難い部分もあり,将来の改訂に向けて継続的に検討していくことが必要であろう。このような短期間で初版のガイドラインを完成させることができたのは,各委員がその必要性を強く認識し,努力を厭わなかった結果であろう。ご協力いただいた方々に深く感謝する次第である。

2010年10月

甲状腺腫瘍診療ガイドライン作成委員会
委員長 吉田 明
副委員長 岡本高宏