皮膚悪性腫瘍

 

Ⅰ.原発性皮膚リンパ腫の病型と病期分類

1.原発性皮膚リンパ腫の病型

原発性皮膚リンパ腫の病型

皮膚T 細胞・NK 細胞リンパ腫

菌状息肉症(Mycosis fungoides: MF)
菌状息肉症のバリアントと亜型

毛包向性菌状息肉症(Folliculotropic MF)
パジェット様細網症(Pagetoid reticulosis)
肉芽腫様弛緩皮膚(Granulomatous slack skin)

Sézary 症候群
成人T 細胞白血病・リンパ腫(Adult T-cell leukemia/lymphoma)
原発性皮膚CD30 陽性リンパ増殖症(Primary cutaneous CD30 + T-cell lymphoproliferative disorders)

  • 原発性皮膚未分化大細胞リンパ腫(Primary cutaneous anaplastic large cell lymphoma)
  • リンパ腫様丘疹症(Lymphomatoid papulosis)

皮下脂肪織炎様T 細胞リンパ腫(Subcutaneous panniculitis-like T-cell lymphoma)
節外性NK/T 細胞リンパ腫,鼻型(Extranodal NK/T-cell lymphoma, nasal type)
種痘様水疱症様リンパ腫 (Hydroa vacciniforme-like lymphoma)
原発性皮膚γδT 細胞リンパ腫(Primary cutaneous γδT-cell lymphoma)
原発性皮膚CD8 陽性進行性表皮向性細胞傷害性T 細胞リンパ腫
 (Primary cutaneous CD8 + aggressive epidermotropic cytotoxic T-cell lymphoma)*
原発性皮膚CD4 陽性小・中細胞型T 細胞リンパ腫(Primary cutaneous CD4 + small/medium T-cell lymphoma)*
末梢性T 細胞リンパ腫,非特異(Peripheral T-cell lymphoma, NOS)

皮膚B 細胞リンパ腫

粘膜関連リンパ組織の節外性辺縁帯リンパ腫(MALT リンパ腫)
 (Extranodal marginal zone lymphoma of mucosa-associated lymphoid tissue)
原発性皮膚濾胞中心リンパ腫(Primary cutaneous follicle center lymphoma)
原発性皮膚びまん性大細胞型B 細胞リンパ腫,下肢型#(Primary cutaneous diffuse large B-cell lymphoma, leg type)
血管内大細胞型B 細胞リンパ腫(Intravascular large B-cell lymphoma)

血液前駆細胞腫瘍

芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍(Blastic plasmacytoid dendritic cell neoplasm)


*:暫定的疾患単位,#:新WHO 分類ではびまん性大細胞型B 細胞リンパ腫,非特異に含まれる。

(WHO-EORTC 分類2005 年をもとにWHO 分類2008 年の病名を採用)

解説

2005 年に発表された皮膚悪性リンパ腫のWHO-EORTC 分類(2005 年)1)をもとに,2008 年に造血系腫瘍の新分類が提唱され,皮膚リンパ腫の診断病名が若干変更された2)。リンパ腫分類の変遷はJaffe らの総説に詳しい3)

WHO 分類第4 版(2008 年)では,本邦を含むアジア,メキシコ,ペルーから報告のある種痘様水疱症様リンパ腫が独立疾患として新たに加えられた。B 細胞リンパ腫では,原発性皮膚辺縁帯B 細胞リンパ腫(Primary cutaneous marginal zone B-cell lymphoma)の病名から「primary cutaneous」が削除され,節外性辺縁帯リンパ腫(MALT リンパ腫)(Extranodal marginalzone lymphoma of mucosa-associated lymphoid tissue)にまとめられた。また,これまでCD4 + /CD56 + hematodermic neoplasm (Blastic NK-cell lymphoma)と呼称されてきた腫瘍は,その由来がplasmacytoid dendritic cell 前駆細胞と考えられるため,Blastic plasmacytoid dendritic cell neoplasm と改変された。

文献

1) Willemze R, Jaffe ES, Burg G, et al: WHO-EORTC classification for cutaneous lymphomas, Blood, 2005; 105: 3768-3785.

2) WHO Classification of Tumours of Haematopoietic and Lymphoid Tissues. Ed. Swerdlow, SH, Campo E, Harris NL, Jaffe ES, Pileri SA, Stein H, Thiele J, Vardiman JW. IARC Press, Lyon, 2008.

3) Jaffe ES, Harris NL, Stein H, Isaacson PG: Classification of lymphoid neoplasms:the microscope as a tool for disease discovery, Blood, 2008; 112: 4384-4399.



2.用語の定義

菌状息肉症やSézary 症候群を代表とする皮膚リンパ腫の皮膚病変を記載する用語にはコンセンサスが必要とされてきた。統一された用語を用いなければ,正確な病期を決定することはできず,予後解析にもばらつきを生じる。ISCL を中心にして以下のように用語を定義した。本ガイドラインにもこの用語定義を採用した。

菌状息肉症の紅斑(patch)と局面(plaque)は,隆起あるいは浸潤の有無によって区別される。注意すべきは,皮膚病変の大きさや,組織所見は判定材料に加えていないこと,毛包一致性皮疹が主体であれば局面と考える点である1)

菌状息肉症の「腫瘤」性病変の定義は,1 cm 以上の腫瘤性病変,あるいは潰瘍を伴う局面で深達性または垂直方向への増殖を示すものと定義された。消退を繰り返すようなリンパ腫様丘疹症のような丘疹性病変は腫瘤から除外されることになる。

紅皮症は,本来は100%の皮膚病変を意味するが,リンパ腫症例では必ずしも100%の病変でなくても白血化を示す症例がみられるため,体表面積の80%以上の病変をもって紅皮症と定義された。

Sézary 症候群は,紅皮症と明らかな白血化を有するT 細胞リンパ腫であるが,「明らかな」白血病については,最近の診断技術をとりいれて,B0, B1, B2 基準を採用して,後述(病期分類を参照)のように再定義された2)

早期の菌状息肉症の診断基準については,局面状類乾癬との異同が議論されている。予後を重視して「類乾癬」という病名を残すか,あるいは臨床・病理組織学的に区別がつかない点を考慮して「菌状息肉症」の進行が極めて緩徐か,消退する例ととらえる見解がある。Retrospective にしか判断できないのでは臨床において実用的ではないため,早期菌状息肉症の診断基準が提唱された3)

菌状息肉症に large cell transformation(用語定義の表を参照)をきたすことがあり,予後不良のサインとされている。正常リンパ球の4 倍以上の大きさの腫瘍細胞が,浸潤細胞の25%以上の場合や,顕微鏡的に結節性増殖を示すとき場合と定義され4),CD30 陽性になることが多いが必ずしも陽性である必要はない。菌状息肉症にみられるリンパ腫様丘疹症様皮疹にみられるCD30 陽性の大型細胞出現とlarge cell transformation を同義に扱ってよいかどうかは明確にされていない。

皮膚T 細胞リンパ腫の用語定義

病 変

定 義

紅斑(Patch) 明らかな盛り上がりや浸潤のない病変で,大きさは問わない。色素異常,鱗屑,痂皮や皺襞を伴うことがある。
局面(Plaque) 盛り上がりや浸潤のある病変で,大きさは問わない。色素異常,鱗屑,痂皮や毛包性病変を伴うことがある。
腫瘤(Tumor) 1 cm 以上の孤立性ないし結節性病変か,潰瘍形成した局面で,深達性または垂直方向への増殖を示す。
紅皮症 体表面積の80%以上の融合した紅斑性病変
紅皮症型
菌状息肉症
明らかな血液学的異常を伴わない紅皮症
Sézary 症候群 臨床的に明らかな血液学的異常を伴う紅皮症
(以上,ISCL: International Society for Cutaneous Lymphoma の提唱)
(補足説明)
Large cell
transformation
小リンパ球の4 倍以上の大型リンパ球が,浸潤細胞の25%以上にみられるか,顕微鏡的に小結節状に増殖している状態。CD30 陽性になることが多いが,陰性例もみられる。

(Diamandidou E et al, Blood, 1998 の定義)

文献

1) Kim EJ, Hess S, Richardson SK, et al: Immunopathogenesis and therapy of cutaneous T cell lymphoma, J Clin Invest, 2005; 115: 789-812.

2) Vonderheid EC, Bernengo MG, Burg G, et al: Update on erythrodermic cutaneous T-cell lymphoma: Report of the International Society for Cutaneous Lymphomas, J Am Acad Dermatol, 2002; 46: 95-106.

3) Pimpinelli N, Olsen EA, Santucci M, et al: Defining early mycosis fungoides, J Am Acad Dermatol, 2005; 53: 1053-1061.

4) Diamandidou E, Colome-Grimmer M, Fayad L, et al: Transformation of Mycosis fungoides/Sezary syndrome: Clinical characteristics and prognosis, Blood, 1998; 92: 1150-1159.

菌状息肉症・Sézary 症候群のTNMB 分類


T1

体表面積の<10%

T1a(patch だけ),T1b(plaque + patch)

T2

体表面積の≥10%

T2a(patch だけ),T2b(plaque + patch)

T3

腫瘤形成  1 病変またはそれ以上 

T4

紅皮症   体表面積の80%以上の融合する紅斑


N0

臨床的に異常リンパ節なし。生検不要 

N1

臨床的に異常リンパ節あり。

組織学的にDutch Gr1, or NCI LN0-2 に相当*

N1a:クローン性増殖なし N1b:クローン性増殖あり

N2

臨床的に異常リンパ節あり。

組織学的にDutch Gr 2, or NCI LN3 に相当*

N2a:クローン性増殖なし N2b: クローン性増殖あり

N3

臨床的に異常リンパ節あり。

組織学的にDutch Gr 3〜4, or NCI LN4 に相当*

Nx

臨床的に異常リンパ節あるが,組織的確認ないか,完全なN 分類ができない。


M0

内臓病変なし M1: 内臓病変あり


B0

異型リンパ球が末梢血リンパ球の5% 以下

B0a:クローン性増殖陰性,B0b:クローン性増殖陽性

B1

異型リンパ球が末梢血リンパ球の5% を超えるが,B2基準を満たさない。

B1a:クローン性増殖陰性,B1b:クローン性増殖陽性

B2

Sézary 細胞(クローン性増殖あり) が末梢血中に1000 個/uL 以上。Sézary 細胞が以下の項目の1 項目を満たす:CD4/CD8≥10, CD4 + CD7- 細胞 ≥ 40%,またはCD4 + CD26- 細胞 ≥ 30%。

病期 T N M B
ⅠA 1 0 0 0,1
ⅠB 2 0 0 0,1
ⅡA 1〜2 1,2, X 0 0,1
ⅡB 3 0〜2, X 0 0,1
ⅢA 4 0〜2, X 0 0
ⅢB 4 0〜2, X 0 1
ⅣA1 1〜4 0〜2, X 0 2
ⅣA2 1〜4 3 0 0〜2
ⅣB 1〜4 0〜3, X 1 0〜2

X:

臨床的に異常なリンパ節腫大が,組織学的に確認されていないか,完全なN 分類ができない。


*リンパ節のNCI 分類(旧分類基準)

NCI LN0
リンパ節に異型リンパ球なし。 
NCI LN1
所々,孤立性異型リンパ球(集塊を作らない) 
NCI LN2
多数の異型リンパ球または3〜6 細胞の小集塊 
NCI LN3
異型リンパ球の大きな集塊あるが,リンパ節の基本構造は保たれる。 
NCI LN4
リンパ節構造が異型リンパ球または腫瘍細胞によって部分的あるいは完全に置換される。

3.病期分類

1)菌状息肉症・Sézary 症候群の病期分類(ISCL/EORTC 2007 年, 改訂2011 年)

菌状息肉症・Sézary 症候群の病期は,Bunn ら1),Sausville ら2)の分類が用いられてきたが,2007 年にISCL/EORTC 分類が示され3),2011 年に修正された4)

従来の分類からの大きな変更点は,1)血液所見の扱いと,2)リンパ節病変の扱いである。末梢血の異型リンパ球を表のようにB0(末梢血リンパ球の5%以下),B1(末梢血リンパ球の5%を超えるが末梢血中に1,000/ μ L 未満),B2(末梢血中に1,000/ μ L 以上)と区別し,紅皮症に加えてB2 基準を満たすものをSézary 症候群とした。B2 基準には,flow cytometry(FACS 解析)にて,CD4/8 比:> 10,CD4 + CD7-:> 40%,CD4 + CD26-:> 30%のいずれかを満たすものとされた5, 6)

リンパ節病変についても統一された。リンパ節の大部分あるいは全体が腫瘍細胞で置き換えられた場合に,N3 と診断され,stage Ⅳに分類される。リンパ節に異型細胞浸潤があっても小病巣や部分的浸潤の場合にはN3 とは診断しない7)

ISCL/EORTC が推奨する病期診断のための検査


  1. 完全な既往歴聴取と理学的診察
  2. 臨床検査
    末梢血球数, 血清生化学検査, 血清 LDH
    適応があれば末梢血flow cytometry 検査
  3. 画像検査*
    胸部,腹部,骨盤の造影CT 検査,またはFDG を用いた全身PET
    臨床的適応があればCT 検査あるいは超音波検査
    標準的造影CT に代わる検査としてPET/CT
  4. 骨髄生検と穿刺
    WHO-EORTC 分類のintermediate からaggressive に分類される病型に適応
    Indolent の皮膚リンパ腫にも考慮すべきだが,他の病期診断で適応がなければ不要
  5. 臨床的適応に応じて追加検査

*  短径で1cm を超えるリンパ節や,明らかにPET 検査で活動性があるリンパ節は組織検査のために採取すべき(可能な限り摘出生検が好ましい)。

菌状息肉症・Sézary 症候群以外の皮膚リンパ腫のTNM 分類


T:T1

単発の皮膚病変

T1a:単発の病変  < 直径5 cm
T1b:単発の病変  > 直径5 cm

T2

限局性皮膚病変: 多発性病変が1 つないし連続した2 つの身体部位* に限局

T2a:すべての病変部位が直径15 cm 未満の円形領域に含まれる
T2b:すべての病変部位が直径15 cm 超で30 cm 未満の円形領域に含まれる
T2c:すべての病変部位が直径30 cm の円形領域を超える

T3

汎発性皮膚病変

T3a:多発性病変が非連続性の2 身体領域にみられる
T3b:多発性病変が3 身体領域にみられる

N:N0

臨床的および病理学的にリンパ節病変なし 

N1

現在あるいは以前の皮膚病変の1 つの所属リンパ節領域の病変 

N2

現在あるいは以前の皮膚病変の2 つないしそれ以上の末梢リンパ節領域病変 

N3

中枢性(深在性)リンパ節病変 

M:M0

皮膚外に非リンパ節病変を認めない 

M1

皮膚外に非リンパ節病変を有する 

*  人形図参照

T 分類のための人形図
2)菌状息肉症・Sézary症候群以外の皮膚リンパ腫のTNM 分類(ISCL/EORTC 2007 年)

菌状息肉症・Sézary 症候群以外の原発性皮膚リンパ腫には,皮膚病変を評価するのに適したTNM 分類がなかったが,2007 年にISCL とEORTC は,新たなTNM 分類を発表した8)。この分類は病変の拡がりを示すことはできても,さまざまな病型が含まれているために,病期分類は示されておらず,各病型の予後を反映していない。最近,データの集積が進められているが9),今後,臨床症例を積み上げて各病型での予後解析を施行し,病期分類を決定する必要がある。

*その他の皮膚リンパ腫・造血系腫瘍の病期分類

節外型NK/T 細胞リンパ腫,鼻型と 芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍もKim YH らのTNM 分類8)が適応可能だが,本邦では両疾患とも,Ann Arbor 分類(その修正版のCotswolds 分類)()を便宜上用いて解析が進められてきたので,別項として取り上げた。節外型NK/T 細胞リンパ腫,鼻型は,鼻性リンパ腫と鼻以外のリンパ腫に分類されてきたが,予後因子と治療適応を考慮する意味で,局在型と汎発型に分けられる10)

成人T 細胞白血病・リンパ腫(ATLL)については,下山らの分類(急性,リンパ腫,慢性,くすぶり型の4 分類)11)が広く用いられているが,皮膚のみに病変を形成する「皮膚型」ATLL の定義と病期の定説はないが, 皮膚病変の性状が予後因子になり得るとの報告12)があり,皮膚病変の広がりだけではなく,皮膚所見の正確な記載が重要である。

悪性リンパ腫の病期分類 (Cotswolds 分類 1989 年)


Ⅰ 期

単一のリンパ節領域,単一のリンパ組織(Waldeyer 輪など)(Ⅰ)
または単一のリンパ節外病変(IE)のいずれかに限局

Ⅱ期

横隔膜の同じ側で2 つ以上のリンパ節領域,リンパ組織の病変(Ⅱ)
または横隔膜の同側でひとつのリンパ節とそれに接するひとつの節外病変(ⅡE)

  • 病変のあるリンパ節領域数を記載(例:Ⅱ2)
  • 縦隔の片側肺門リンパ節はそれぞれひとつのリンパ節領域とする
Ⅲ期

横隔膜の両側におけるリンパ節領域,リンパ組織の病変
1:横隔膜下は上腹部に限局(脾臓,脾門部,腹腔,門脈リンパ節)
2:横隔膜下は上腹部におよぶ(傍大動脈,腸骨,腸管膜リンパ節)

  • 脾病変,節外病変,両者はそれぞれⅢs,ⅢE,ⅢsE のように記載
W期

リンパ節以外の組織,臓器(脾臓と胸腺はリンパ組織であり,ここでは除外される)へのびまん性ないし播種性浸潤がある場合で,リンパ節病変の有無は問わない

  • 各病期に全身症状の有無を付記

    A:全身症状がない場合(例:TA)

    B: 全身症状がある場合(例:WB)
    全身症状:①発病前6 カ月間に10%以上の原因不明の体重減少,②38℃以上の原因不明の発熱,③盗汗

  • bulky 病変(胸郭内径のl/3 以上の縦隔腫瘤,その他の部位の10cm 以上の腫瘤)にはX をつける(例:ⅡX)
  • 節外性病変にはE をつける(例:ⅡE)
文献

1) Bunn PA Jr, Lamberg SI: Report of the Committee on Staging and Classification of Cutaneous T-cell Lymphomas, Cancer Treat Rep, 1979; 63: 725-728.

2) Sausville EA, Eddy JL, Makuch RW, et al: Histopathologic staging at initial diagnosis of mycosis fungoides and Sezary syndrome. Definition of three distinctive prognostic groups, Ann Intern Med, 1988; 109: 372-382.

3) Olsen E, Vonderheid E, Pimpinelli N, et al: Revisions to the staging and classification of mycosis fungoides and Sezary syndrome: a proposal of the International Society for Cutaneous Lymphomas (ISCL) and the Cutaneous Lymphoma Task Force of the European Organization of Research and Treatment of Cancer (EORTC), Blood, 2007;110:1713-1722.

4) Olsen EA, Whittaker S, Kim YH, et al: Clinical End Points and Response Criteria in Mycosis Fungoides and Sezary Syndrome: A Consensus Statement of the International Society for Cutaneous Lymphomas, the United States Cutaneous Lymphoma Consortium, and the Cutaneous Lymphoma Task Force of the European Organisation for Research and Treatment of Cancer, J Clin Oncol, 2011; 29: 2598-2607.

5) Vonderheid EC, Bernengo MG, Burg G, et al: Update on erythrodermic cutaneous T-cell lymphoma: Report of the International Society for Cutaneous Lymphomas, J Am Acad Dermatol, 2002; 46: 95-106.

6) Olsen EA, Whittaker S, Kim YH, et al: Clinical End Points and Response Criteria in Mycosis Fungoides and Sezary Syndrome: A Consensus Statement of the International Society for Cutaneous Lymphomas, the United States Cutaneous Lymphoma Consortium, and the Cutaneous Lymphoma Task Force of the European Organisation for Research and Treatment of Cancer, J Clin Oncol. 2011; 29: 2598-2607.

7) 浅越健治:皮膚リンパ腫の診断的検査の進め方: リンパ節生検とその取り扱い,日皮会誌 2007; 117:2169-2172.

8) Kim YH, Willemze R, Pimpinelli N, et al: TNM classification system for primary cutaneous lymphomas other than mycosis fungoides and Sezary syndrome: a proposal of the International Society for Cutaneous Lymphomas (ISCL) and the Cutaneous Lymphoma Task Force of the European Organization of Research and Treatment of Cancer(EORTC), Blood, 2007 ; 110: 479-484.

9) Senff NJ, Willemze R: The applicability and prognostic value of the new TNM classification system for primary cutaneous lymphomas other than mycosis fungoides and Sezary syndrome: results and comparison with the system used by the Dutch Cutaneous Lymphoma Group, Br J Dermatol, 2007; 157: 1205-1211.

10) Suzuki R, Suzumiya J, Yamaguchi M, et al: Prognostic factors for mature natural killer(NK) cell neoplasms: aggressive NK cell leukemia and extranodal NK cell lymphoma, nasal type, Ann Oncol, 2010; 21: 1032-1040.

11) Shimoyama M: Diagnostic criteria and classification of clinical subtypes of adult T-cell leukemia-lymphoma. A report from the Lymphoma Study Group(1984-87), Br J Haematol, 1991; 79: 428-437.

12) Sawada Y, Hino R, Hama K, et al: Type of skin eruption is an independent prognostic indicator for adult T-cell leukemia/lymphoma, Blood, 2011; 117: 3961-3967.

4.予後解析

1)菌状息肉症・Sézary 症候群

菌状息肉症・Sézary 症候群の病期分類と予後解析が,これまで多くの研究者によって成されてきた。前述の新病期分類(2007 年)が提唱された後,本邦と英国から予後解析の報告がなされている(図121, 2)本邦ではstage IIIA の予後が極めてよいが,英国の解析ではstage IIB と同じような予後となっている。紅皮症型のリンパ腫の診断はしばしば困難であり,両解析における患者群の性質が異なっている可能性がある。それ以外の病期の生存率はよく一致している。英国の詳細な予後解析結果を以下に示す(表12)。早期菌状息肉症(stage IA)の10 年生存率は90%近くであり,疾患特異的生存率は95%である。10 年の観察で約10%の例が進行するが,残りは進行がない。Stage IB でも,毛包性皮疹は多変量解析で有意な予後悪化因子である。リンパ節病変もしくは内臓病変を有するsatgeIV 症例では5 年生存率18%である。

図1 本邦における菌状息肉症・Sézary 症候群の病期別生存率 (n=100)(Suzuki SY ら1)
図2 菌状息肉症・Sézary 症候群の病期別疾患特異的生存率 (n=1502)(Agar NS ら2)
表1 菌状息肉症・Sézary 症候群の病期別予後(Agar NS ら2)
病期

ⅠA

ⅠB

ⅡA

ⅡB

ⅢA

ⅢB

ⅣA1

ⅣA2

ⅣB

生存期間中央値(年) 35.5 21.5 15.8 04.7 04.7 03.4 03.8 02.1 01.4
5 年生存率(%) 94 84 78 47 47 40 37 18 18
10 年生存率 88 70 52 34 37 25 18 15 NR *
20 年生存率 73 52 47 21 25 NR * 15 03 NR *
疾患特異的5 年生存率(%) 98 89 89 56 54 48 41 23 18
疾患特異的10 年生存率 95 77 67 42 45 45 20 20 NR *
疾患特異的20 年生存率 90 67 60 29 31 NR * 17 06 NR *
病状進行率(5 年) 8 21 17 48 53 82 62 77 82
病状進行率(10 年) 12 38 33 58 62 73 83 80 NR *
病状進行率(20 年) 18 47 41 71 74 NR * 86 94 NR *
NR *:not reached              
2)菌状息肉症・Sézary 症候群以外の原発性皮膚T/NK リンパ腫

菌状息肉症・Sézary 症候群以外の皮膚リンパ腫については,2007 年にはじめて病変の拡がりを定義するための病期分類が発表されたが3),もともと多種の病型の集団であり,病期分類と予後とは必ずしも関連せず,5 年生存率は各病型で大きく異なるので(表24),個々の病型で予後解析 を行っていく必要がある。

最近,原発性皮膚B 細胞リンパ腫において,新しい病期分類と予後との関連の解析結果が報告され,原発性皮膚濾胞辺縁帯B 細胞リンパ腫と原発性皮膚濾胞細胞リンパ腫では,あまり相関がないが,原発性皮膚大細胞型B 細胞リンパ腫(下肢型)では相関が認められるという報告がなされた5)

また,2005 年のWHO/EORTC 分類では,「原発性皮膚」の定義が,「診断時に適切な診断法によっても皮膚外に病変がない」とされ,従来のように「6 カ月の観察で皮膚外に病変がない」という制限が削除されている。この変更も,今後の予後解析に影響を与える。

表2 皮膚リンパ腫の病型別予後(Willemze R ら4)

皮膚T 細胞・NK 細胞リンパ腫

5 年生存率

菌状息肉症(Mycosis fungoides)

88%

菌状息肉症のバリアントと亜型

 

・毛包向性菌状息肉症

80%

・パジェット様細網症

100%

・肉芽腫様弛緩皮膚

100%

Sézary 症候群

24%

成人T 細胞白血病・リンパ腫

NR

原発性皮膚CD30 陽性リンパ増殖症

 

・原発性皮膚未分化大細胞リンパ腫

95%

・リンパ腫様丘疹症

100%

皮下脂肪織炎様T 細胞リンパ腫

82%

節外性NK/T 細胞リンパ腫,鼻型

NR

原発性皮膚末梢性T 細胞リンパ腫,非特定

16%

・原発性皮膚進行性表皮向性CD8 陽性細胞傷害性T 細胞リンパ腫

18%

・皮膚γδT 細胞リンパ腫

NR

・原発性皮膚CD4 陽性小・中細胞多型性T 細胞リンパ腫

75%

皮膚B 細胞リンパ腫

 

原発性皮膚辺縁帯B 細胞リンパ腫 *

99%

原発性皮膚濾胞中心リンパ腫

95%

原発性皮膚びまん性大細胞型B 細胞リンパ腫,下肢型

50%

原発性皮膚びまん性大細胞型B 細胞リンパ腫,その他

65%

・血管内大細胞型B 細胞リンパ腫

 

血液前駆細胞腫瘍

 

CD4 + CD56 + hematodermic neoplasm **

NR

*節外性辺縁帯リンパ腫(MALT リンパ腫)  **芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍(WHO 分類2008)  
2)-a 成人T 細胞白血病・リンパ腫

成人T 細胞白血病・リンパ腫(ATLL)は,本邦や南米,中央アフリカからカリブ海沿岸諸国に多いため,欧米の予後解析データは乏しく,本邦やブラジルで症例集積が進められている(図36〜8)。皮膚病変を有するATLL 患者と皮膚病変のないATLL 患者を比較した場合,くすぶり型,慢性型,急性型において,皮膚病変ある患者で有意に予後不良であった8)。ATLL の皮疹は特殊な皮疹型を除き,斑型,局面型,多発丘疹型,結節腫瘤型,紅皮症型,紫斑型に分けることができるが,それぞれの生存期間中央値(MST)は,188.4 カ月,114.9 カ月,17.3 カ月,17.3 カ月,3.0 カ月,4.4 カ月で有意に異なっていた8)。ブラジルから発表された解析もほぼ同様の傾向であった7)。ATLL の特異疹を,MF/SS のT stage を踏襲して検討すると,その生存期間中央値は,T1 192.6 カ月(MST 算定不能のため生存期間平均値),T2 47.9 カ月,T3 17.3 カ月,T4 3.0 カ月であり,MF/SS よりも予後不良であることを示した8)。皮疹を有するATLL 患者の予後を各予後関連因子で多変量解析すると,臨床型ではくすぶり型が独立した予後良好因子であり,皮疹型では 結節腫瘤型と紅皮症型が独立した予後不良因子であることが明らかになっている(表38)

図3 成人T 細胞白血病・リンパ腫の生命予後
表3 ATLL 患者Cox の比例ハザードモデル単変量及び多変量解析
  単変量解析   多変量解析  
  HR(95% Cl) P HR(95% Cl) P
臨床型        
急性型 1   1  
リンパ腫型 0.5(0.1-0.8)

0.013

0.9(0.3-2.5) 0.852
慢性型 0.1(0.3-1.1)

0.082

0.4(0.1-1.4) 0.167
くすぶり型 0.1(0.1-0.2) <0.001 0.2(0.8-0.6) 0.002
皮疹型        
斑型 1   1  
局面型 2.2(0.5-10.9)

0.321

1.4(0.3-8.0) 0.680
結節腫瘤型 12.5(2.7-57.1)

0.001

8.8(1.6-48.0) 0.012
紅皮症型 68.4(11.5-405.9)

<0.001

21.2(3.0-150.3) 0.002
多発丘疹型 4.8(1.0-22.6)

0.045

3.5(0.6-20.1) 0.159
紫班型 7.1(1.1-45.7)

0.039

6.8(0.9-53.7) 0.071

Sawada Y ら8)

2)-b 原発性皮膚未分化大細胞リンパ腫

原発性皮膚未分化大細胞リンパ腫の5 年生存率は90%以上とする報告が多く,生命予後良好な病型である。2007 年に提唱された菌状息肉症・Sézary 症候群以外の皮膚リンパ腫についての病期分類を用いた解析が,近年オランダより報告された(図49)。それによると疾患特異的5 年生存率はT1,T2 で93%,T3 で77%であった。また,下肢に病変を有する症例の疾患特異的5 年生存率(76%)は,下肢に病変のない症例(96%)と比べて有意に低かった。本邦ではCHOP 療法後再発例に第三世代化学療法を要した例や,リンパ節および内臓浸潤を生じた予後不良症例などが報告されており,欧米よりも生存率が低い可能性がある。

図4 原発性皮膚未分化大細胞リンパ腫の生命予後(Benner MF ら9)
2)-c 皮下脂肪織炎様T 細胞リンパ腫

WHO-EORTC 分類ではSPTCL をαβT 細胞の表面形質を有する細胞傷害性T 細胞によるリンパ腫と定義しており,5 年生存率は約80%でindolent 群に分類されている4)。欧州の多施設によるαβT 細胞の表面形質を有する症例63 例の解析では,5 年生存率82%,疾患特異的5 年生存率は85%であった(図510)。血球貪食症候群(hemophagocytic syndrome: HPS)を生じた症例の5 年生存率は46%であり,伴わない症例(91%)と比べて予後不良例が多い。

図5 皮下脂肪織炎様T 細胞リンパ腫の生命予後(Willemze R ら10)
2)-d 節外性NK/T 細胞リンパ腫,鼻型

EB ウイルス関連T/NK 細胞リンパ腫,鼻型は,本邦を含めたアジアに多いため,欧米の予後解析データは乏しく,本邦での症例集積が進められている。全国レベルの調査が実施され,その予後解析が公表された(図611, 12)。2 年以内に不幸な転帰をとる症例が過半数を占めるが,その後は生存曲線がフラットになり,治療が奏効して良好な経過をとる群が存在することは注目に値する。そのような症例が,限局型なのか,治療の成功例かは今後の解析が待たれる。海外からの報告では13),皮膚だけに病変が限局している症例は,皮膚およびその他の臓器に病変が存在する群や,鼻性NK/T 細胞リンパ腫よりも良好な経過を示している。海外の例ではEB ウイルス陽性例が68%と低く,T 細胞由来が14%含まれており,本邦例とは患者背景が異なることに留意すべきである。

図6 節外性NK/T 細胞リンパ腫の生命予後(Suzuki R ら12)
2)-e 芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍(Blastic plasmacytoid dendritic cell neoplasm)

腫瘍細胞は,CD123(IL-3R α鎖)とTCL1(lymphoid protooncogene)が陽性で,plasmacytoid dendritic cell 由来と考えられ,リンパ腫のカテゴリーから外れるために上記の呼称となった。本症は稀であり,十分な予後解析が成されていないが,図7 に示すように平均生存期間は17 カ月で,3 年生存率をとれないほどに予後の悪い疾患である14)

Bekkenk らの63 症例の解析では,男性に約2 倍多く,平均発症年齢は67 歳(8〜89 歳)である14)。診断時にすでに46%の例で骨髄浸潤を認め,経過中に72%で骨髄浸潤が生じる。CHOP 療法が用いられることが多いが,治療効果は乏しく,平均生存期間は皮膚病変の症例では約25 カ月であり,皮膚外病変を有する場合はさらに短い。

図7 芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍の生命予後(Suzuki R ら14)
2)-f 原発性皮膚B 細胞リンパ腫

B 細胞リンパ腫の診断基準が確定し,それに準拠した予後解析が報告されている(表4)。大きくindolent とintermediate 群に分けることが可能で,前者にはfollicle center lymphoma とmarginal zone B-cell lymphoma が含まれ,後者にはdiffuse large B-cell lymphoma が入る4, 16)

表4 原発性皮膚B 細胞リンパ腫の病型と予後(Senff NJ ら16)
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16) Senff NJ, Hoefnagel JJ, Jansen PM, et al: Reclassification of 300 primary cutaneous B-cell lymphomas according to the new WHO-EORTC classification for cutaneous lymphomas: Comparison with previous classifications and identification of prognostic markers. J Clin Oncol, 2007; 25: 1581-1587.