巻頭言

リンパ浮腫診療ガイドラインの初版(2008 年度版)が出版されて早5 年の月日が流れたが,この間にリンパ浮腫を取り巻く環境は大きく変わった。転換の契機はなんといっても2008 年4 月より「リンパ浮腫指導管理料」として予防のための個別指導に加算がつき,発症者に対する治療の第一選択肢となる圧迫療法に用いる弾性着衣や弾性包帯が療養費扱いとなったことである。これを機に,リンパ浮腫はようやく「疾患」として市民権を得るに至ったといっても過言ではないだろう。

その後,リンパ浮腫への注目度は急上昇し,医療施設内外で多数の講習会が開催されるようになったのは周知の通りである。かつての癌拡大手術全盛時代以降,癌治療は副次的に多くのリンパ浮腫難民を生み出したが,近年リンパ浮腫診療はチーム医療として新たな局面を迎えようとしている。

厚生労働省委託事業「がんのリハビリテーション研修」の関連部会として2009 年に発足した「リンパ浮腫研修委員会」では,チーム医療の核となる医師,看護師,理学療法士,作業療法士の知識のボトムアップを目的としたリンパ浮腫研修を定期的に開催し,日本における共通のカリキュラムや教育プログラムを策定してその普及を目指してきた。さらに,2013 年には同委員会が民間の育成施設へ連携を呼びかけ,リンパ浮腫診療に必須とされる国際推奨時間(135 時限)を両者のリレーによって座学・実技ともに完遂でき,その合格証を以て知識とスキルを担保するようなシステムの確立に向け模索中である。こうした流れを反映してか,推薦いただいた学協会数も8 学協会と大幅に増え,多領域にわたる疾患のガイドライン情報を共有する日本癌治療学会のガイドライン委員会への参画も果たした。

科学的根拠に基づいた診療の標準化と,それを実施する医療者の育成は並列して前進しなければならず,双方の実現の先にこそリンパ浮腫診療全般の保険収載がみえてくるものと確信している。そのために必要なパズルのピースは今,概ねそろったところである。本書がリンパ浮腫のチーム医療における質向上の一助となることを,委員一同切に願うものである。

2013 年12 月

日本リンパ浮腫研究会

代表世話人 北村 薫