診療ガイドライン

1 章 成人膠芽腫

総論

1 本ガイドラインの目的

膠芽腫(glioblastoma)に罹患している個々の成人症例において,適切な治療方針を検討するうえで必要となる重要な臨床事項を臨床的疑問(clinical question:CQ)として提示し,現時点でのエビデンスに基づく推奨事項を述べる。

2 対象患者

膠芽腫に罹患した成人患者。

3 利用対象者

脳腫瘍診療に従事する医師。

4 成人膠芽腫の概括

1.膠芽腫の定義

神経膠腫は神経細胞の支持組織であるグリア細胞から発生すると考えられている原発性脳腫瘍であり,神経膠腫の内訳としては星細胞腫が神経膠腫の約80 %を占める 1)

WHO 分類においては,原発性脳腫瘍はその病理組織学的な悪性度と予後の組合せによって良い方から悪い方へgradeⅠ~gradeⅣに細分類されるが,膠芽腫はgradeⅣの星細胞腫に相当する。膠芽腫は,1931 年にPenfield によって命名された。GradeⅠおよびⅡの星細胞腫はあわせて分化型星細胞腫と呼ばれるのに対し,歴史的にはgradeⅢ(退形成性星細胞腫)およびⅣ(膠芽腫)をあわせて悪性神経膠腫(malignant glioma)と呼ばれることもある。過去の多くの臨床研究においてこのgradeⅣ(膠芽腫)およびⅢ(退形成性星細胞腫),退形成性乏突起膠腫や退形成性乏突起星細胞腫が悪性神経膠腫(malignant glioma)という用語のもとに同時に扱われている 2)

膠芽腫単独では頭蓋内腫瘍の約10 %を占め,多くは成人に発生する。年代別では50~60 歳に多く発生し,やや男性に多い。好発部位は大脳半球で,前頭葉に最も発生しやすい。脳実質への強い浸潤性格を有し,脳梁を介して反対側の大脳白質への進展もある。組織学的には,細胞密度が高く,円形,紡錘形などさまざまな形態を示す細胞がみられる。腫瘍細胞の核には,クロマチンの増量,大小不同,多核,巨核があり,核分裂像も多数認められる。大小の壊死像があり,壊死巣周囲の核の偽柵状配列(pseudopalisading)は特徴的な構造である 2)。その臨床経過によって,前病変なく発生する原発性膠芽腫(primary glioblastoma)とgradeⅡやⅢの神経膠腫から悪性転化する形で膠芽腫と診断される続発性膠芽腫(secondary glioblastoma)に区別され,前者はやや高齢者に多い傾向がある 2)。病理形態学的に両者の鑑別は困難であるが,遺伝子異常のパターンをみるとかなり明確な違いがあり,特にクエン酸回路に関与する酵素であるisocitrate dehydrogenase 1/2(IDH1/2)をコードするIDH1/2 遺伝子の変異は原発性膠芽腫では稀で,続発性膠芽腫の多くでみられることが近年明らかになっている 3,4)

膠芽腫は標準治療が可能な患者においてさえ,生存期間中央値が14.6 カ月であり,ほぼ治癒不能な疾患である 1)。長い間,術後放射線治療が生存期間を有意に延長させる唯一の治療方法であり,化学療法は生存期間延長に寄与しない,あるいはわずかに延長させるだけであるとされてきた 5)。しかし2005 年に発表されたランダム化比較試験において,テモゾロミド(temozolomide)の放射線治療との併用とその後の維持療法の有効性が認められ,テモゾロミド化学療法が広く行われるようになった 6)

2.膠芽腫の予後因子

Report of Brain Tumor Registry of Japan(2001-2004)によれば,膠芽腫の5 年生存割合は10 %程度である 1)。Curran らは,米国Radiation Therapy Oncology Group(RTOG)の臨床試験に登録された1578 例の悪性神経膠腫の背景因子と治療因子をrecursive partitioning analysis(RPA)によって分析した。予後に影響する因子として,組織型(grade),年齢,手術摘出度(亜全摘vs 部分摘出),術前の全身状態(Karnofsky performance status:KPS, mental status, symptomatic time),照射線量,術後の全身状態を挙げている 7)。RTOG はさらに膠芽腫に絞って症例を追跡し,1,672 例について解析した結果を2011 年に発表した 8)。この解析ではoriginal のRPA クラスⅤとⅥを新しいクラスⅤにまとめて単純化した結果,①年齢,②術前の全身状態(KPS),③手術摘出度,④術後の全身状態,の4 項目のみでの分類となっている(図1)。RPA クラスⅢ,Ⅳ,Ⅴの各群における生存期間中央値は,それぞれ17.1 カ月,11.2 カ月,7.5 カ月であり,各群間で生存期間は統計学的有意差がある 8)

図1 膠芽腫に対するRecursive Partitioning Analysis(文献5 より改変)

近年は腫瘍の遺伝子解析による予後因子に関する報告も多く,その代表的なものとしてはDNA 修復酵素O6-methylguanine-DNA methyltransferase(MGMT)をコードするMGMT 遺伝子のプロモーター領域メチル化と予後との相関が挙げられる。MGMT はDNA アルキル化薬(ニトロソウレア系薬剤,DNA メチル化薬)によるDNA 修飾を修復する酵素であるが,その遺伝子のプロモーター領域にCpG-island があり,ここがメチル化されるとタンパク発現が抑制される。Esteller らはカルムスチン(carmustine:BCNU)の治療を受けた神経膠腫患者において腫瘍DNA を解析し,MGMT 遺伝子プロモーター領域のメチル化が化学療法後の腫瘍の縮小と,全生存期間および無増悪生存期間の延長に相関していることを報告し,MGMT 遺伝子プロモーター領域のメチル化が他の影響を受けない独立した予後因子であり,かつ年齢や一般状態(performance status:PS)よりも強い予後因子であることを報告した 9)。現在,膠芽腫治療において広く使用されているテモゾロミドもアルキル化薬であることから,Hegi らは,Stupp らが行った臨床試験においてMGMT 遺伝子プロモーター領域のメチル化を検索した。全登録症例573 例中307 例で検体が集められ,うち206 例でメチル化の有無が検出された(全体の36 %の症例)。206 例中45 %の腫瘍においてMGMT 遺伝子プロモーター領域のメチル化が確認された。メチル化症例のうちテモゾロミド治療群の生存期間中央値は,21.7 カ月であり,放射線治療単独群の同中央値15.3 カ月に比べて統計学的な有意差が証明された 10)。一方,非メチル化症例群では,テモゾロミドの有無による全生存期間の差は小さく,有意差はなかった。

また,Rivera らは,後方視的なデータ解析ではあるが,初発膠芽腫225 例のMGMT 遺伝子プロモーター領域のメチル化を解析した。DNA アルキル化薬以外による治療を受けた症例,つまり,放射線単独治療においてもMGMT 遺伝子プロモーター領域のメチル化の有無が生命予後と関係することを示した 11)。その後も数多くの研究においてMGMT 遺伝子プロモーター領域のメチル化の有無が予後と相関することは示されているが,その機構が本当にMGMT 遺伝子発現の抑制を介するものなのかどうかなど,その詳細は今後の研究結果を待たなければならない。神経膠腫におけるMGMT 遺伝子プロモーター領域のメチル化は,ニムスチン(nimustine:ACNU)やテモゾロミドを含むアルキル化薬に対する腫瘍の治療効果の有用な予測因子のみならず,放射線治療も含めた予測因子もしくは予後因子の一つである可能性も議論となっている。ただしMGMT 遺伝子プロモーター領域のメチル化を判定する方法はさまざまなものが提唱されており,標準化された手段はないことも記憶に留める必要がある。

成人膠芽腫22 例について,2 万個以上の遺伝子が網羅的に解析された結果,先に述べたIDH1 遺伝子変異が膠芽腫の12 %に認められることが発見された。詳細にみると,この遺伝子異常は続発性膠芽腫の大多数に認められるが,原発性膠芽腫にはこの変異はほとんど観察されないことが判明した。また,IDH1 遺伝子変異のある膠芽腫は変異のない膠芽腫に比べて生存期間が有意に長く,IDH1 遺伝子変異も有用な予後因子であることが判明している 3,4)

米国で推進されているThe Cancer Genome Atlas(TCGA)project の一つとしてPhillips らは,260 例の初発膠芽腫について遺伝子発現のプロファイリング解析を施行し,4 つのパターンproneural, neuronal, classical, mesenchymal に分類できることを提唱している。この中で,神経細胞の発生に関わる遺伝子の発現が亢進しているタイプ(proneural)が,より長い生存期間を示すことを報告した 12)

Noushmehr らは,やはりTCGA project の一環として272 例の膠芽腫について,全ゲノムのメチル化の状態を解析し,多数の遺伝子のプロモーター領域においてメチル化が認められる一群があることを示し,これをglioma-CpG island methylator phenotype(G-CIMP)と名付けた。G-CIMP は,遺伝子発現におけるproneural タイプと臨床的な続発性膠芽腫にかなり重複することが見出されており,さらにIDH1 遺伝子変異とも密接に相関していることが示唆されている 13)

文献検索

2013 年7 月の時点までのMEDLINE にて,glioma あるいはglioblastoma をキーワードに文献検索を行った。これら機械的文献検索以外に委員によるハンドサーチでの重要文献の追加も適宜行った。そこから,各CQ に対して,エビデンスのあるまたは臨床上重要な情報を提供すると考えられた論文を抽出した。

文献

1)
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2)
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4)
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5)
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7)
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9)
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11)
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13)
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CQ1
成人初発膠芽腫に対する手術療法はどのような意義があるか?

推奨グレードC1
膠芽腫では,手術後の一般状態が良い場合において,手術による摘出度が高いほど,無増悪生存期間と全生存期間の改善がみられる。

解説

膠芽腫に対する手術摘出度あるいは残存腫瘍量と予後の関係に関しては,古くは術者の感覚によって手術摘出度が決定されていたこともあり,学問的信頼度は低いものであった。

手術摘出度あるいは残存腫瘍量と予後の関係を前方視的試験にて解析した研究は,フィンランドにおいて2003 年に報告された30 例の65 歳以上の悪性神経膠腫症例を,生検と開頭摘出術の2群に振り分けたものしか存在しない 1)(レベルⅡb)。生存期間中央値は生検群が85 日〔95 %信頼区間(confident interval:CI):55-157〕,開頭摘出群が171 日(95 % CI:146-278)で,有意差が確認された〔ハザード比(hazaed ratio:HR)=2.757,95 % CI:1.004-7.568,p=0.049〕が,無増悪生存期間の有意差は認められなかった(p=0.057)。このような手術摘出度をランダムに振り分ける前方視的試験は,倫理的問題から将来的にも行われる可能性はないと考えられている。したがって,膠芽腫に対する手術摘出度あるいは残存腫瘍量と予後の関係解析は,後方視的検討およびそのメタアナリシスか,さまざまな予後に関する要因をできるだけ均等にした非ランダム化前方視的試験のなかで検討するしかない。

2001 年にLacroix ら 2)(レベルⅢ)が,416 例の初発(233 例)および再発膠芽腫を用いて,MRI(magnetic resonance imaging)を用いた術前後の腫瘍容量解析を行い,98 %以上の腫瘍摘出が行われた場合に有意に予後改善が得られると報告した。この論文の与えたインパクトは大きく,MRI 画像上の造影領域を全摘出することが膠芽腫を手術する脳神経外科医の目標となった。初発233 例に限ると,98 %以上摘出された107 例の生存期間中央値は13 カ月,それ未満の126 例では10.1 カ月であり,単変量および多変量解析でも危険率0.02 をもって有意と検定されている。ただし,この報告は単一施設の後方視的検討結果であることに留意する必要がある。

Stummer らによる,5-アミノレブリン酸(5-ALA)蛍光診断を併用した膠芽腫摘出に関する前方視的臨床試験とその追跡報告 3,4)(それぞれレベルⅡb,Ⅰb)は,当初の目的であった蛍光診断を用いることにより摘出度が上昇し,生命予後が改善するという結果は得られなかったものの,副次的に膠芽腫に対するMRI 画像上の造影領域の全摘出の意義を明らかにした。243 例の膠芽腫に対する摘出度と生命予後の検討から,全摘出した場合とそうでない場合の生存期間中央値はそれぞれ16.7 カ月(95 % CI:11.4-14.6)と11.8 カ月(95 % CI:7.2-10.2)であり,全摘出により4.9 カ月の生存期間延長が得られると報告された(HR=1.752,95 % CI:1.258-2.438,p=0.0004)。しかし,年齢(p=0.0123),KPS(p=0.1714),重要な部位(p=0.0231),浸潤度(p=0.1375)と両群の背景に相違があり,結果の解釈には注意が必要である。

2011 年に Sanaiら 5)(レベルⅢ)によって,UCSF において摘出術と標準的放射線化学療法が行われた連続500 例の初発膠芽腫における,手術摘出度と予後との検討が報告された。手術摘出度が78 %以上であれば生命予後は改善し,95~100 %といった高い摘出度になっても摘出度に応じて段階的に予後は良好となるという結果であった 5)(レベルⅢ)。単一施設での後方視的試験という問題は避けられないが,比較的均一な治療が行われ,慎重な統計解析により評価されたこの報告より,膠芽腫では手術摘出度が高いほど良好な治療予後が得られると考えられる。

以上より,膠芽腫に対しては可能であれば腫瘍容量をできる限り少なくすることを目的とした摘出術が推奨される。しかしながら,これは全症例に対して全摘出を目指すべきかどうかの方向性を決定するものではない。前述のLacroix らの検討では,MRI 画像上の壊死の有無・年齢・KPS の各項目にポイントをつけて4 群に分類し,MRI 画像上で壊死がなく,より若年で,KPS の高い群において98 %以上の摘出の意義が有意であったと報告されている 2)(レベルⅡb)。さらに脳のどの領域にどのような浸潤形式で腫瘍が存在するかによって,手術適応は大きく異なり,この点に関する議論は未だ不十分であり,コンセンサスが得られていないことに注意すべきである。また手術によって生ずる神経脱落症状は決して無視できないことも常に留意しなくてはならない。目標とすべきことは,最小限の手術合併症と最大限の摘出率を達成することにある。

文献

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2)
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Stummer W, Reulen HJ, Meinel T, et al. ALA-Glioma Study Group.Extent of resection and survival in glioblastoma multiforme:identification of and adjustment for bias. Neurosurgery. 2008;62(3):564-76;discussion 564-76.(レベルⅠb)
5)
Sanai N, Polley MY, McDermott MW, et al. An extent of resection threshold for newly diagnosed glioblastomas. J Neurosurg. 2011;115(1):3-8.(レベルⅢ)

CQ2
成人初発膠芽腫に対する放射線治療はどのような意義があるか?

推奨1
推奨グレードA
70 歳以下の成人初発膠芽腫に対し,放射線治療を行う。照射方法は総線量60 Gy を6 週間かけて行う(1 日1 回2 Gy,5 日間/1 週間)。
推奨2
推奨グレードC2
成人初発膠芽腫に対する放射線治療として追加および単独での定位放射線照射を行わない。

解説

Anderson らは,1963~1967 年の間に治療された膠芽腫108 例に対して術後放射線治療施行群(51 例,平均照射量45 Gy)と未施行群(57 例)の2 群でランダム化比較試験を行った。その結果,放射線治療未施行群では1 年生存割合が0 %であったが,放射線治療施行群では 19 %であった(p<0.05)1)(レベルⅠb)。Walker らは,悪性神経膠腫 303 例に対して,手術のみ(42 例),カルムスチン(carmustine:BCNU)化学療法のみ(68 例),放射線治療のみ(93 例),放射線治療とカルムスチン化学療法併用(100 例)の4 群のランダム化比較試験を施行した。照射に対するカルムスチンの上乗せ効果は統計学的には示されなかったものの,前述の順に生存割合が改善することを報告した(表12)(レベルⅠb)

表1 Walker らの悪性神経膠腫303 例に対する比較試験(文献2)のp 値

さらに,Walker らは退形成性星細胞腫または膠芽腫の計467 例に対する術後補助療法として,放射線治療(全脳照射60 Gy)+カルムスチン群,放射線治療(全脳照射60 Gy)+セムスチン(semustine:methyl-CCNU)群,放射線治療(全脳照射60 Gy)単独群,セムスチン化学療法単独群の4 群でのランダム化比較試験を行い,セムスチン化学療法単独群に対して他の放射線治療を含む3 群が生存割合にて統計学的に有意差をもって上回っていることを報告した(表23)(レベルⅠb)

表2 Walker らの悪性神経膠腫467 例に対する比較試験(文献3)のp 値

さらに1981 年にはスカンジナビアのグループから興味ある報告がなされている。118 例のテント上星細胞腫gradeⅢ/Ⅳを第1 群(放射線治療45 Gy+プラセボ,45 例),第2 群(放射線治療45 Gy+ブレオマイシン,45 例),第3 群(best supportive care,38 例)の3 群にランダム化し生存期間を比較した。ブレオマイシン投与が生存期間延長に寄与することはなかったが,グループ1,2 の放射線治療群(生存期間中央値10.8 カ月)はグループ3(生存期間中央値5.2 カ月)に比較して有意に生存期間が延長した 4)(レベルⅠb)

これらの臨床研究は照射方法や統計学的デザインが古いものであるため,単純に現在の臨床の場にそのまま外挿できるものではないが,best supportive care に比較して放射線治療の有効性を示す証左と考えることができる。

上述のWalker らの臨床研究やスカンジナビアでの臨床試験では全脳照射が採用されていたが,現在は全脳照射ではなく局所照射が一般的に行われている。局所照射と全脳照射の比較試験は存在しないため,局所照射が優れているとの明確なエビデンスはないが,以下の研究報告から局所照射が標準治療であると総合的に勘案されている。

Hochberg らは,膠芽腫での再発は原発巣から2 cm 以内の局所再発が90 %を占めると報告しており 5)(レベルⅢ),他にも膠芽腫の再発は多くが局所再発であるとするいくつかの同様の研究報告がある 6-8)(いずれもレベルⅢ)。これらの研究報告は,全脳照射が必須ではないことを示唆すると考えられる。また,1973 年には,60 例の膠芽腫治療解析から,43.98~52.72 Gy の幅の照射線量において局所照射された症例の生命予後が良い可能性を示唆する後方視的研究報告 9)(レベルⅢ)や,571 例の悪性神経膠腫に対する臨床試験 Brain Tumor Cooperative Group Trial 8001 の副次解析において,60.2 Gy(35 回/7 週間)の全脳照射群(406 例)と全脳照射43 Gy(25 回/5 週間)に17.2 Gy(10 回/2 週間)の局所照射併用群(155 例)両群間で両群間の生存割合に有意差を認めなかった(p=0.30)10)(レベルⅠb)とする報告から,全脳照射は回避される傾向にある。

照射線量に関して東京大学のグループは,初発悪性神経膠腫(gradeⅢ/Ⅳ)に対して高線量(80~90 Gy)放射線治療の観察研究の結果から生命予後延長の可能性を示唆しているが,同時高線量群では通常照射群に比べて白質障害が高頻度に観察されたとも報告している 11)(レベルⅢ)。一方で,1983 年,Chang らは,悪性神経膠腫626 例を登録した第Ⅲ相ランダム化比較試験〔Radiation Therapy Oncology Group(RTOG)ならびにEastern Cooperative Oncology Group(ECOG)〕において,60 Gy/6~7 週から70 Gy/8~9 週へ総線量の増加に伴い,性格変化(24 % vs 31 %),言語障害(10 % vs 17 %),高次機能障害(25 % vs 48 %)の発症頻度が上昇し,QOL が低下する傾向を示し,かつ生存割合においては,有意な改善はみられなかった 12)(レベルⅠb)。2005年にStuppらの報告 12,13)(いずれもレベルⅠb)において,第Ⅲ相試験としては初めて局所照射単独治療(60 Gy,6 週間)が成人膠芽腫に対する標準治療群(control arm)に採用され,さらにこの標準治療群に対してテモゾロミドの上乗せ効果が示された。よって,現在のところ高齢者と小児を除く初発成人膠芽腫は,1 日1 回照射,1 日線量2 Gy,6 週間で総線量60 Gy の局所照射が世界的に行われている 13)(レベルⅠb)

膠芽腫に関する定位放射線照射に関してRTOG は,長径40 mm 以下のテント上初発膠芽腫203 例に対する定位手術的照射(stereotactic radiosurgery:SRS)の追加の有用性を検証する多施設共同ランダム化比較試験を行っている。BCNU 化学療法(80 mg/m2 3 日間,8 週間ごと,6 サイクル)に通常放射線治療(60 Gy)を施行する群と同様の治療に加えてSRS(15~21 Gy)を追加する2 群を比較検討した。生存期間中央値はそれぞれ13.6カ月(95 % CI:11.0-14.8)と13.5 カ月(95 % CI:11.2-15.2)であり,両群間に統計学的な有意差はなく,通常放射線治療にSRS の上乗せ効果は証明できなかった(p=0.5711)。以上の結果より,初発膠芽腫の治療においては,通常放射線治療にSRS を追加することの有効性がないことが示された 14)(レベルⅠb)

現状では成人初発膠芽腫に対する放射線治療として,追加および単独での定位放射線照射を推奨する積極的なエビデンスは乏しい。

≪注意≫

カルムスチン(carmustine:BCNU):注射薬は国内未承認,徐放性ポリマーは悪性神経膠腫に対して承認
セムスチン(semustine:methyl-CCNU):国内未承認

文献

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CQ3
成人初発膠芽腫に対する化学療法の種類と意義はどのようなものがあるか?

A テモゾロミド

推奨1
推奨グレードA
18 歳以上70 歳以下の成人初発膠芽腫患者に対して,手術後,経口内服薬テモゾロミドを放射線治療期間中,ならびに放射線終了後投与する(Stupp プロトコール)。

解説

テモゾロミド(temozolomide)は経口薬として腸管吸収性にすぐれた第2 世代のアルキル化薬で,さらに血液脳関門を通過しやすいという利点を持つ。2005 年に発表された成人初発膠芽腫に対するランダム化比較試験の結果により,その有効性が証明され,膠芽腫に対する標準治療薬と位置づけられた 1)(レベルⅠb)

上記試験はEuropean Organization for Research and Treatment of Cancer(EORTC)とNational Cancer Institute of Canada(NCIC)両グループを中心とした多施設共同試験であり,18 歳以上70 歳以下の成人初発膠芽腫573 例に対して手術後,放射線単独治療(60 Gy)を標準治療(control arm)とし,放射線治療(60 Gy)+テモゾロミド併用化学療法とそれに続くテモゾロミド補助化学療法を試験治療とするランダム化比較試験である。

テモゾロミドの具体的な投与方法は,

  1. 放射線治療期間中,テモゾロミド75 mg/m2を放射線治療終了日まで49 日間を上限として連日内服(併用化学療法)。
  2. 放射線治療終了日から4 週間の休薬期間を設け,以下の維持化学療法を開始する。
  3. テモゾロミド150~200 mg/m2を5 日間内服・23 日間休薬(5-day on/23-day off)とし,28 日を1 サイクルとした維持化学療法を6 サイクル行う。

維持化学療法中のテモゾロミド投与量は,1 サイクル時は150 mg/m2/日とし,1 サイクル中に血液毒性を認めなかった場合,2 サイクル以降は200 mg/m2/日に増量を行うこととした(Stupp プロトコール)。この結果,放射線単独治療群(286 例)とStupp プロトコール群(287 例)の生存期間中央値はそれぞれ,12.1 カ月(95 % CI:11.3-13.0)と14.6 カ月(95 % CI:13.2-16.8)であり,有意差をもってStupp プロトコール群の全生存期間延長を認めた(HR=0.63,95 % CI:0.52-0.75,p<0.001)。血液毒性は標準治療群と比べると,試験治療群において有害事象共通用語規準(Common Terminology Criteria for Adverse Events:CTCAE)でグレード3 以上の血液毒性の頻度が数 %増える程度であった。非血液毒性のなかでは倦怠感が最も多く観察されたが,その出現頻度は標準治療群26 %,試験治療群33 %と両群で有意差はなかった。その他の非血液毒性においても大きな差を認めなかった。有害事象については両群で特記すべき差異はなく,Stupp プロトコールは安全性の高い治療方法であると考えられた。

この臨床試験に関しては,最近長期経過観察の結果が報告された 2)(レベルⅠb)。放射線単独治療群とStupp プロトコール群の生存割合はそれぞれ,2 年:10.9 % vs 27.2 %,3 年:4.4 % vs 16.0 %,4 年:3.0 % vs 12.1 %。5 年:1.9 % vs 9.8 %であり,Stupp プロトコール群で有意差をもって生存割合が高値であった(HR=0.6,95 % CI:0.5-0.7,p<0.0001)。5 年という長期生存割合においても,初発膠芽腫に対してStupp プロトコール群が放射線単独治療群に比較して有効であることが示された。

その後,日本人においても,テモゾロミドの薬物動態や副作用,治療有効性に人種差がないことが証明されている 3,4)(いずれもレベルⅡa)。

2005 年に発表されたStupp プロトコールでは,テモゾロミド補助化学療法は最高6 サイクルまでの施行が計画された 1)(レベルⅠb)。その後の膠芽腫に対する前方視的な臨床研究では補助化学療法を何サイクル行うべきか,サイクル数を規定するような試みはなされておらず,補助化学療法施行サイクル数の標準化に関する論理的根拠は得られていない。以下に補助化学療法施行サイクル数に参考となる臨床研究を掲げる5,6)(いずれもレベルⅢ)。

1997~2003 年においてドイツの50 施設で,悪性神経膠腫患者(gradeⅢ/Ⅳ)を12 サイクル以上のテモゾロミド5-day on/23-day off での治療(施行サイクル数中間値:13 サイクル)を行った結果を解析した。その結果,無増悪生存期間中央値は,15.5 カ月であり,グレード3 以上の有害事象は,約10 %であった 5)。Stupp プロトコールにおいて,補助化学療法を13 サイクル前後まで延長することは毒性の観点から容認できる治療法であることが示唆された。

Urgiti らは,後方視的研究において52 例の初発膠芽腫を,テモゾロミド(5-day on/23-day off)による補助化学療法を6 サイクルで中止した23 例と7 サイクル以上続けた29 例を比較した。両群間で年齢,KPS や手術摘出度,MGMT 遺伝子プロモーター領域のメチル化などの予後因子は大きな偏りは認められなかったが,生存期間中央値は,それぞれ16.5 カ月と24.6 カ月(p=0.031)であり,6 サイクル以上行った群において,生命予後が延長することを報告した 6)(レベルⅢ)

テモゾロミドの薬理作用はDNA にメチル基を付加することに基づくが,その抗腫瘍活性はDNA のグアニン塩基のO6 位をメチル化することによるものが最も大きい。MGMT はメチル化グアニン塩基からメチル基を除去しDNA のメチル化を修復し,自身はメチル化され不活性体となる。不活性体であるメチル化MGMT は細胞内で分解される。この修復過程は不可逆的であるため,メチル化DNA の部分が多ければ,MGMT により修復反応を促進させれば理論上,MGMT 活性を著明に低下させることが可能になる 7)(レベルⅡb)。即ちテモゾロミドを早急に腫瘍細胞に曝露させ,DNA のメチル化を促進し,MGMT によるDNA 修復過程を活性化させ,MGMT を枯渇化することにより,テモゾロミド耐性を克服できる可能性が提示されてきた 8,9)(いずれもレベルⅡa)。

テモゾロミドの曝露期間を増加させる治療法の代表はテモゾロミド増量療法であるが 10,11)(いずれもレベルⅡa),初発膠芽腫におけるStuppプロトコールの維持化学療法部分のテモゾロミドを増量する治療法は以下の臨床試験の結果,その効果を否定された。

RTOG,EORTC とNorth Central Cancer Treatment Group(NCCTG)によって初発膠芽腫を対象に行われた第Ⅲ相試験(RTOG0525)は,Stupp プロトコールを標準治療として,Stupp プロトコール維持化学療法部分を3-week on/1-week off(75-100 mg/m2/日)とする試験治療を採用した。1,173 例の登録があり,833 例がランダム化割り付けされた。その結果,生存期間中央値(標準治療16.6 カ月,試験治療14.9 カ月,p=0.63,HR=1.03,95 % CI:0.88-1.20)と無増悪生存期間中央値(それぞれ5.5 カ月,6.7 カ月,p=0.06,HR=0.87,95 % CI:0.75-1.00)ともに2 群間で有意差を示すことができなかった。MGMT 遺伝子プロモーター領域のメチル化群は非メチル化群に比べ有意差をもって全生存期間(それぞれ21.2 カ月,14.0 カ月,p<0.01,HR=0.58,95 % CI:0.48-0.69),無増悪生存期間(それぞれ8.7 カ月,5.7 カ月,p<0.01,HR=0.61,95 % CI:0.52-0.73)の延長が示され,治療反応性(p=0.021)も良好であった。放射線併用期の代表的な有害事象はリンパ球減少症(全症例の12 %),好中球減少症(全症例の3.6 %),血小板減少症(全症例の6.8 %)であり,好中球減少症での治療関連死1 例が発生したが,日和見感染症は観察されなかった。維持化学療法期では試験治療群にグレード3 以上の有害事象が有意差をもって高率に認められ(それぞれ 34 %,53 %,p<0.001),多くはリンパ球減少症と疲労であった 12)(レベルⅠb)

≪注意≫

テモゾロミドの3-week on/1-week off:添付文書に記載されていない投与方法で,国内では承認されていない。

文献

1)
Stupp R, Mason WP, van den Bent MJ, et al. European Organisation for Research and Treatment of Cancer Brain Tumor and Radiotherapy Groups;National Cancer Institute of Canada Clinical Trials Group. Radiotherapy plus concomitant and adjuvant temozolomide for glioblastoma. N Engl J Med. 2005;352(10):987-96.(レベルⅠb)
2)
Stupp R, Hegi ME, Mason WP, et al. European Organisation for Research and Treatment of Cancer Brain Tumour and Radiation Oncology Groups;National Cancer Institute of Canada Clinical Trials Group. Effects of radiotherapy with concomitant and adjuvant temozolomide versus radiotherapy alone on survival in glioblastoma in a randomised phaseⅢ study:5-year analysis of the EORTC-NCIC trial. Lancet Oncol. 2009;10(5):459-66.(レベルⅠb)
3)
Aoki T, Nishikawa R, Mizutani T, et al. Pharmacokinetic study of temozolomide on a daily-for-5-days schedule in Japanese patients with relapsed malignant gliomas:first study in Asians. Int J Clin Oncol. 2007;12(5):341-9.(レベルⅡa)
4)
西川亮,渋井壮一郎,丸野元彦,他.初回再発の退形成性星細胞腫患者に対するTemozolomide 単剤投与の有効性および安全性の検討 多施設共同第Ⅱ相試験.癌と化学療法.2006;3(9):1279-85(レベルⅡa)
5)
Hau P, Koch D, Hundsberger T, et al. Safety and feasibility of long-term temozolomide treatment in patients with high-grade glioma. Neurology. 2007;68(9):688-90.(レベルⅢ)
6)
Roldán Urgoiti GB, Singh AD, Easaw JC. Extended adjuvant temozolomide for treatment of newly diagnosed glioblastoma multiforme. J Neurooncol. 2012;108(1):173-7.(レベルⅢ)
7)
Tolcher AW, Gerson SL, Denis L, et al. Marked inactivation of O6-alkylguanine-DNA alkyltransferase activity with protracted temozolomide schedules. Br J Cancer. 2003;88(7):1004-11.(レベルⅡb)
8)
Esteller M, Garcia-Foncillas J, Andion E, et al. Inactivation of the DNA-repair gene MGMT and the clinical response of gliomas to alkylating agents. N Engl J Med. 2000;343(19):1350-4.(レベルⅡa)
9)
Hegi ME, Diserens AC, Gorlia T, et al. MGMT gene silencing and benefit from temozolomide in glioblastoma. N Engl J Med. 2005;352(10):997-1003.(レベルⅡa)
10)
Brandes AA, Tosoni A, Cavallo G, et al. Temozolomide 3 weeks on and 1 week off as first-line therapy for recurrent glioblastoma:phaseⅡ study from gruppo italiano cooperativo di neuro-oncologia (GICNO). Br J Cancer. 2006;95(9):1155-60.(レベルⅡa)
11)
Wick A, Felsberg J, Steinbach JP, et al. Efficacy and tolerability of temozolomide in an alternating weekly regimen in patients with recurrent glioma. J Clin Oncol. 2007;25(22):3357-61.(レベルⅡa)
12)
Gilbert MR, Wang M, Aldape KD, et al. Dose-dense temozolomide for newly diagnosed glioblastoma: a randomized phaseⅢ clinical trial. J Clin Oncol. 2013;31(32):4085-91.(レベルⅠb)
推奨2
推奨グレードC1
Stupp プロトコール治療を遂行中,放射線治療終了後に偽増悪(pseudoprogression)が示唆される場合はテモゾロミド維持化学療法を継続する。

解説

Chamberlain らは成人初発膠芽腫に対して,Stupp プロトコールを施行した51 例中,26 例(51 %)で6 カ月以内に臨床症状および画像上の増悪を認め,そのうち15 例(29 %)に腫瘍の再摘出術が行われ,7 例の病理所見において壊死像が大部分であったと報告した。この事実より,初期治療早期での画像上の造影病変の増大のみで病勢進行と判断し治療法を変更してしまうと,Stupp プロトコールの治療効果を正確に判定できなくなる可能性を指摘している 1)(レベルⅢ)。本論文以降,治療早期に造影病変の増大にもかかわらず,臨床症状の悪化に乏しく,摘出組織での組織所見が壊死像主体である病態を偽増悪(pseudoprogression)と呼称することが定着した。

一方,Brandes らは,成人初発膠芽腫に対してStupp プロトコールを行った症例で,MRI 所見の経過から判断したpseudoprogression の有無と,初回摘出組織のMGMT 遺伝子プロモーター領域のメチル化状態との関係について前方視的に検討した。Pseudoprogression の出現と無増悪生存期間・全生存期間の相関についても解析している。103 例中,MGMT 遺伝子プロモーター領域のメチル化を認めた36 例,非メチル化症例は67 例であった。維持化学療法直前に,MRI 上造影病変の増大が観察されたのは103 例中50 例であり,この50 例におけるテモゾロミド(temozolomide)維持化学療法2 サイクル後のMRI 所見は,pseudoprogression(病変縮小または不変)状態32 例,true progression(症状増悪の認められた評価病変増大)状態18 例であった。本50 例のなかでMGMT 遺伝子プロモーター領域のメチル化23 例のうちpseudoprogression が観察されたものは21 例(91 %),非メチル化27 例のうちpseudoprogression が観察されたものは11 例(41 %)であった。以上の結果より,腫瘍のMGMT 遺伝子プロモーター領域のメチル化とpseudoprogression の発現に有意な相関が示された(p=0.0002)。また,MGMT 遺伝子プロモーター領域のメチル化とpseudoprogression の出現は,生存期間延長とそれぞれに有意に相関していることが判明した(それぞれ p=0.001,p=0.045)2)(レベルⅡb)

Pseudoprogression の場合は化学放射線治療後3 カ月以降に腫瘍縮小が観察される傾向が強くなり,真の増悪との鑑別が可能になってくる。逆に3 カ月以内では真の増悪例との鑑別が特に問題となってくる 3)(レベルⅣ)。造影部分の増大にもかかわらず神経症状の悪化のない場合は,pseudoprogression の可能性も考え,さらに数サイクルのテモゾロミドの維持化学療法を追加するのが望ましい。両者の鑑別が困難な場合は,積極的に手術を行い,組織診断を行うことも重要である。今後,さらなる経験の蓄積により,pseudoprogression のより正確な頻度や病態への理解を深めていかなければならない。

文献

1)
Chamberlain MC, Glantz MJ, Chalmers L, et al. Early necrosis following concurrent Temodar and radiotherapy in patients with glioblastoma. J Neurooncol. 2007;82(1):81-3.(レベルⅢ)
2)
Brandes AA, Franceschi E, Tosoni A, et al. MGMT promoter methylation status can predict the incidence and outcome of pseudoprogression after concomitant radiochemotherapy in newly diagnosed glioblastoma patients. J Clin Oncol. 2008;26(13):2192-7.(レベルⅡb)
3)
Brandsma D, Stalpers L, Taal W, et al. Clinical features, mechanisms, and management of pseudoprogression in malignant gliomas. Lancet Oncol. 2008;9(5):453-61.(レベルⅣ)
推奨3
推奨グレードC1
初発または再発悪性神経膠腫に対するテモゾロミド治療において,適宜ニューモシスチス肺炎に対する予防処置を行う。

解説

初発膠芽腫を対象としたテモゾロミド(temozolomide)治療の第Ⅱ相試験の中間解析において15 例中2 例にニューモシスチス(pneumocystis jironecii)肺炎が報告され,その予防処置を講じる必要が緊急に発生した 1)(レベルⅢ)。この際に参考とされたのは human immunodeficiency virus(HIV)感染者に対するニューモシスチス肺炎予防策であり 2)(レベルⅠb),具体的にはスルファメトキサゾール・トリメトプリム(sulfamethoxazole・trimethoprim)合剤(ST 合剤:国内承認薬の倍量力価を含有)の内服,またはペンタミジン(pentamidine)の噴霧吸入であった 3)(レベルⅡa)。この企業主導治験においては,放射線治療時とそれに続く休薬期間4 週間の計10 週間に,このいずれかの処置が義務づけられ,以降,第Ⅱ相試験 1)(レベルⅢ),続く第Ⅲ相試験 4)(レベルⅠb)においていずれもテモゾロミド併用群にニューモシスチス肺炎は観察されなかった。

ニューモシスチス肺炎の罹患はテモゾロミド使用時のリンパ球減少症やCD4 陽性細胞の減少と関連している可能性が示唆されており,テモゾロミド使用にあたっては適宜その予防策を講じる必要がある 5)(レベルⅤ)

上記報告に従って,我が国でのニューモシスチス肺炎の予防対策として

  1. ST 合剤1 錠を隔日あるいは連日内服(4 週間継続を1 サイクルとする)
  2. ペンタミジン300 mg を1 回噴霧吸引(4 週間を1 サイクルとする)

が推奨される。

ST 合剤は安価で,ニューモシスチス肺炎予防の第一選択であるが,皮膚そう痒感,皮疹等の発現頻度が高く,これら症状発現時には速やかに②に変更する。アトバコン(atovaquone)は,2012 年4 月にニューモシスチス肺炎の予防措置として我が国で保険承認されたが,テモゾロミド使用時のニューモシスチス肺炎予防の第一選択薬ではなく,HIV 感染者やニューモシスチス肺炎のリスクを有する患者(目安としてCD4 陽性細胞数が200/mm3 未満,ニューモシスチス肺炎の既往歴がある等)における予防薬という位置づけで使用されている。

そのほかにテモゾロミド使用時に発生しうる感染症としてサイトメガロウイルス(cytemegalovirus)感染症があげられる。特にサイトメガロウイルス肺炎は,ST 合剤等によるニューモシスチス肺炎予防措置を行っている患者で間質性肺炎様所見が観察された場合には第一に疑う必要がある。ニューモシスチス肺炎患者では血清β-D グルカンが高値であるが,サイトメガロウイルス肺炎・感染症では,血清β-D グルカン正常・pp65 抗原(C7-HRP)の高値が診断の補助となる。サイトメガロウイルス感染症にはガンシクロビル(ganciclovir)の投与が有効である 5)(レベルⅤ)

≪注意≫

ペンタミジン(pentamidine):ニューモシスチス肺炎の予防目的で使用する場合は適応外使用

アトバコン(atovaquone):ニューモシスチス肺炎の予防目的で使用する場合は,ニューモシスチス肺炎のリスク(CD4 陽性細胞数が目安として200/mm3 未満,ニューモシスチス肺炎の既往歴がある等)を有する患者を対象とする。

文献

1)
Stupp R, Dietrich PY, Ostermann Kraljevic S, et al. Promising survival for patients with newly diagnosed glioblastoma multiforme treated with concomitant radiation plus temozolomide followed by adjuvant temozolomide. J Clin Oncol. 2002;20(5):1375-82.(レベルⅢ)
2)
Kovacs JA, Masur H. Prophylaxis against opportunistic infections in patients with human immunodeficiency virus infection. N Engl J Med. 2000;342(19):1416-29.(レベルⅢ)
3)
西川亮,渋井壮一郎,丸野元彦,他.初回再発の退形成性星細胞腫患者に対するTemozolomide 単剤投与の有効性および安全性の検討 多施設共同第Ⅱ相試験.癌と化学療法.2006;33(9):1279-85.(レベルⅡa)
4)
Stupp R, Mason WP, van den Bent MJ, et al. European Organisation for Research and Treatment of Cancer Brain Tumor and Radiotherapy Groups;National Cancer Institute of Canada Clinical Trials Group. Radiotherapy plus concomitant and adjuvant temozolomide for glioblastoma. N Engl J Med. 2005;352(10):987-96.(レベルⅠb)
5)
大野誠,沖田典子,成田善孝.テモゾロミドと日和見感染―ニューモシスチス肺炎とサイトメガロウイルス・B 型肝炎ウイルスの活性化について―脳神経外科速報2013;23(3):316-23.(レベルⅤ)
推奨4
推奨グレードC1
初発または再発悪性神経膠腫に対するテモゾロミド治療を行う場合,血清中のHBs抗原,HBc 抗体,HBs 抗体を測定し,肝臓専門医や内科医と相談して,その患者のB 型肝炎状態に応じた対応を適切に行う。

解説

以前よりHBs 抗原陽性のB 型肝炎ウイルス(hepatitis B virus:HBV)キャリアに合併した造血器腫瘍や固形がんの患者において,がん薬物療法によるHBV の急激な増殖,すなわちHBV の再活性化により致死的な重症肝炎が発症することが知られていた。このようなHBV 再活性化は,がん薬物療法を受けるHBV キャリアの24~53 %に発症すると報告されており,劇症化する割合が高く,抗ウイルス薬を投与しても予後不良である 1)(レベルⅤ)。したがって,がん薬物療法を受けるHBV キャリアでは,肝炎が発症する前から抗ウイルス薬の投与を開始することが重要である 1)(レベルⅤ)。一方,HBs 抗原陰性,HBc 抗体ないしHBs 抗体陽性のHBV 既往感染例では,従来は臨床的には疾病の治癒状態と考えられてきたが,肝臓や末梢血単核球内では低レベルながらHBV-DNA の複製が長時間持続し,リツキシマブ(retuximab)などの免疫抑制作用のある薬剤の投与により,HBV の再活性化と重症肝炎が発生することも明らかになっている 1)(レベルⅢ)。このような既往感染例からのHBV 再活性化をde novo B 型肝炎と呼び,その頻度は移植後やリツキシマブを含む併用化学療法などを受けた高リスク群で10~20 %,通常の全身化学療法では1.0~2.7 %と報告されている 1)(レベルⅤ)。HBV 再活性化には不明な点も多いものの,がん化学療法薬や免疫抑制薬の投与によりHBV が免疫系のサーベイランスから逃れ肝細胞内で増殖し,主には治療終了後に生じるcytotoxic T cell のrebound immune response により,広範な感染肝細胞の破壊を伴う重症肝炎が惹起されるものと考えられている。またHBV 遺伝子にはglucocorticoid enhancement element が存在し,ステロイドにより直接的にウイルス複製が助長されることも要因の一つとされている 1)(レベルⅤ)

初発膠芽腫においてStupp プロトコールの放射線化学療法後早期に,HBV の再活性化を来たし,重症肝炎を呈した症例が4 例報告されている 2-5)(いずれもレベルⅣ)。4 例中 3 例で初期治療前のHBs 抗原が陽性,1 例は不明であり,ステロイド使用・不使用,使用状況の詳細も記載されていない。そのためテモゾロミド(temozolomide)によるリンパ球減少,特にCD4 陽性細胞の細胞数低下・機能低下が直接HBV 再活性化に関連しているとは断定できないが,4 例中1 例は重症肝炎により死亡していることや,HBV 再活性化による重症肝炎は致死率が高いことは衆知の事実であるため,テモゾロミド使用に際してはHBV 再活性化について十分な注意喚起が必要である。

我が国におけるHBV 感染者は総人口の0.8 %,約100 万人程度存在すると推定されており,厚生労働省「肝硬変を含めたウイルス性肝疾患の治療の標準化に関する研究班」および「難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究班」の合同ワーキンググループは,「免疫抑制・化学療法により発症するB 型肝炎対策ガイドライン」を策定している 1)(レベルⅢ)。それによれば,免疫抑制・化学療法を受ける全患者に対してHBs 抗原,HBc 抗体,HBs抗体のスクリーニング検査を行い,HBs 抗原陽性例すなわちHBV キャリアでは肝臓専門医と十分な連携を取りながら抗ウイルス薬の投与を行うよう推奨されている。一方,HBs 抗原陰性,HBc 抗体ないしHBs 抗体陽性のHBV 既往感染例については,HBV-DNA 定量の定期的なモニタリングを行うこととしている。すなわち,de novo B 型肝炎ではその発症に先立ってHBV-DNA 量が上昇するため,HBV-DNA 量が検出感度以上になった時点で直ちに抗ウイルス薬投与を開始するとされている。また,de novo B 型肝炎の多くががん薬物療法の終了後に発症しているため,HBV-DNA のモニタリングは治療期間中および終了後も少なくとも12 カ月まで継続するべきとしている。これら記載は臨床試験からの知見の裏打ちには乏しいが,HBV 再活性化による重症肝炎は致死率が高いことからも,上記「免疫抑制・化学療法により発症するB 型肝炎対策ガイドライン」に沿った対応が望ましい 1)

文献

1)
坪内博仁,熊田博光,清澤研道,他.免疫抑制・化学療法により発症するB 型肝炎対策 厚生労働省「難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究」班劇症肝炎分科会および「肝硬変を含めたウイルス性肝疾患の治療の標準化に関する研究」班合同報告.肝臓.2009;50(1):38-42.(レベルⅤ)
2)
Chheda MG, Drappatz J, Greenberger NJ, et al. Hepatitis B reactivation during glioblastoma treatment with temozolomide:a cautionary note. Neurology. 2007;68(12):955-6.(レベルⅣ)
3)
Grewal J, Dellinger CA, Yung WK. Fatal reactivation of hepatitis B with temozolomide. N Engl J Med. 2007;356(15):1591-2.(レベルⅣ)
4)
Fujimoto Y, Hashimoto N, Kinoshita M, et al. Hepatitis B virus reactivation associated with temozolomide for malignant glioma:a case report and recommendation for prophylaxis. Int J Clin Oncol. 2012;17(3):290-3.(レベルⅣ)
5)
Ohno M, Narita Y, Miyakita Y, et al. Reactivation of hepatitis B virus after glioblastoma treatment with temozolomide––case report. Neurol Med Chir(Tokyo). 2011;51(10):728-31.(レベルⅣ)

B ニトロソウレア系薬剤

推奨5
推奨グレードC1
初発成人膠芽腫に対してニムスチン単剤あるいはニムスチンを含む化学療法を用いる。

解説

1980 年のWalker らの報告で,悪性神経膠腫に対してニトロソウレア系薬剤と放射線治療を含む治療法の予後が良好な傾向にあったことから,米国を中心に,神経膠腫に対してはニトロソウレア系薬剤[カルムスチン(carmustine:BCNU),セムスチン(semustine:methyl-CCNU),ロムスチン(lomustine:CCNU)]が中心的な治療薬となった 1)(レベルⅢ)。1993 年,初発退形成星細胞腫(2,362 例),膠芽腫(3,004 例)を対象とした大規模なメタアナリシスが行われ,放射線治療にニトロソウレア系薬剤を併用することにより,1 年生存割合が10.1 %上昇した(95 % CI:6.8-13.3 %)という報告がなされた 2)(レベルⅠa)。以降,ニトロソウレア系薬剤を併用する化学放射線療法が世界的に初発退形成星細胞腫および膠芽腫に対する標準治療であると考えられるようになった。日本では,2006 年にテモゾロミド(temozolomide)が保険適用となるまで放射線治療と国内承認薬であるニムスチン(nimustine:ACNU)の併用療法が膠芽腫において,第Ⅲ相試験はなされてないものの,いわばみなし標準治療として広く行われていた 3-5)(いずれもレベルⅢ)。

ニムスチンを含む化学療法は膠芽腫に対して一定の効果は示しているものの,テモゾロミドとの抗腫瘍効果を比較する第Ⅲ相試験や放射線治療への上乗せ効果を検証する第Ⅲ相試験は行われていない。またニムスチンを含む化学療法はテモゾロミドに比べ有害事象が強い傾向があるという側面もある。以下に,成人初発膠芽腫に対して放射線治療とニムスチン単独,あるいはニムスチンを含む化学療法の効果を評価した臨床研究を紹介する。

京都脳腫瘍グループは,97 例の初発膠芽腫に対して,放射線治療(60 Gy)とニムスチン(60 mg/m2 第1 治療日),カルボプラチン(carboplatine)(110 mg/m2 第1 治療日),ビンクリスチン(vincristine)(0.6 mg/m2 第1・8・15 治療日),インターフェロン-β(interferon-β)(10μg/日,週3 回,第1 週から第7 週まで)併用化学療法の効果と安全性を第Ⅱ相試験で検討した。グレード3 以上の毒性は10~20 %を示した。無増悪生存期間中央値は10 カ月(95 % CI:8-12)であり,生存期間中央値は16 カ月(95 % CI:13-20)であった 6)(レベルⅡa)

ドイツのNeuro-Oncology Working グループ(NOA)は,初発悪性神経膠腫患者に対して標準的放射線療法に併用する化学療法をニムスチン+シタラビン(cytarabine:Ara-C)群とニムスチン+テニポシド(teniposide:VM26)群の2 群にランダム化割り付けする第Ⅲ相試験を計画した(NOA-01)。1994~2000 年まで,375 例の患者が登録され,初発膠芽腫おける生存期間中央値はそれぞれ15.7 カ月と17.3 カ月,2 年生存割合はそれぞれ29 %と25 %であり,両群間に有意差を認めなかった(HR=1.02,p=0.889)7)(レベルⅠb)

また,英国では1988~1997 年の間に15 施設で悪性神経膠腫674 例の患者を対象にランダム化比較試験が行われた。放射線治療単独群と放射線治療に併用してPCV 療法(プロカルバジン(procarbazine)100 mg/m2 第1~10 治療日,ロムスチン100 mg/m2 第1 治療日,ビンクリスチン1.5 mg/m2(最大2 mg)第1・8・15 治療日)を6 週間ごとに施行する2 群を設定し,PCV 療法の上乗せ効果を検証した。放射線単独治療群310 例,PCV 療法併用群307 例が登録され,生存期間中央値は放射線単独治療群9.5 カ月に対してPCV 療法併用群10 カ月であり,両者の間に有意差はなかった(HR=0.95,95 % CI:0.81-1.11,p=0.50)。よって,悪性神経膠腫に対してPCV 療法は有意な上乗せ効果を示すことはできなかった 8)(レベルⅠb)

Japan Clinical Oncology Group(JCOG)は,悪性神経膠腫(星細胞腫gradeⅢ/Ⅳ)に対して放射線治療に加えてニムスチン80 mg/m2を第1 および第36 治療日に投与する対象治療群(A 群)とプロカルバジン80 mg/m2(第1~10 治療日および第36~45 治療日連日投与)+ニムスチン80 mg/m2(第8 および第43 治療日)を投与する試験治療群(B 群)の2 群を比較検討した(JCOG0305)。維持療法として,それぞれの化学療法を56 日ごとに12 サイクル繰り返す予定とした。19 施設より111 例が登録された。膠芽腫に限れば生存期間中央値はA 群(40 例)16.2 カ月,B 群(41 例)18.7 カ月,無増悪生存期間中央値はA 群6.0 カ月,B 群6.3 カ月であった。全生存期間では両群間に有意差は認められなかった。有害事象として,グレード3 以上の白血球減少は,A 群38.9 %,B 群73.2 %,血小板減少はA 群 5.6 %,B 群 50.0 %に観察された 9)(レベルⅡa)

≪注意≫

カルムスチン(carmustine:BCNU):注射薬は国内未承認,徐放性ポリマーは悪性神経膠腫に対して承認
セムスチン(semustine:methyl-CCNU):国内未承認
ロムスチン(lomustine:CCNU):国内未承認
カルボプラチン(carboplatin):膠芽腫に対しては適応外使用
シタラビン(cytarabin:Ara-C):膠芽腫に対しては適応外使用
テニポシド(teniposide:VM26):国内未承認

文献

1)
Walker MD, Green SB, Byar DP, et al. Randomized comparisons of radiotherapy and nitrosoureas for the treatment of malignant glioma after surgery. N Engl J Med. 1980;303(23):1323-9.(レベルⅠb)
2)
Fine HA, Dear KB, Loeffler JS, et al. Meta-analysis of radiation therapy with and without adjuvant chemotherapy for malignant gliomas in adults. Cancer. 1993;71(8):2585-97.(レベルⅠa)
3)
Takakura K, Abe H, Tanaka R, et al. Effects of ACNU and radiotherapy on malignant glioma. J Neurosurg. 1986;64(1):53-7.(レベルⅢ)
4)
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5)
Yoshida J, Kajita Y, Wakabayashi T, et al. Long-term follow-up results of 175 patients with malignant glioma:importance of radical tumour resection and postoperative adjuvant therapy with interferon, ACNU and radiation. Acta Neurochir(Wien). 1994;127(1-2):55-9.(レベルⅢ)
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Aoki T, Takahashi JA, Ueba T, et al. PhaseⅡ study of nimustine, carboplatin, vincristine, and interferon-beta with radiotherapy for glioblastoma multiforme:experience of the Kyoto Neuro-Oncology Group. J Neurosurg. 2006;105(3):385-91.(レベルⅡa)
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8)
Medical Research Council Brain Tumor Working P. Randomized trial of procarbazine, lomustine, and vincristine in the adjuvant treatment of high-grade astrocytoma:a Medical Research Council trial. J Clin Oncol. 2001;19(2):509-18.(レベルⅠb)
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Shibui S, Narita Y, Mizusawa J, et al. Randomized trial of chemoradiotherapy and adjuvant chemotherapy with nimustine(ACNU)versus nimustine plus procarbazine for newly diagnosed anaplastic astrocytoma and glioblastoma(JCOG0305). Cancer Chemother Pharmacol. 2013;71(2):511-21.(レベルⅡa)

C インターフェロン-β

推奨6
推奨グレードC1
初発成人膠芽腫に対して,術後ニムスチンやテモゾロミドの化学療法に併用してインターフェロン‒βを投与する。

解説

永井は,悪性神経膠腫の比較臨床試験試験において,A 群(55 例):放射線治療(50~60 Gy)+ニムスチン(nimustine,ACNU)(80 mg/m2,Day 1 とDay 36)とB 群(55 例):放射線治療(50~60 Gy)+ニムスチン(80 mg/m2,Day 1 とDay 36)+インターフェロン-β(interferon-β)200 万単位/m2(週5 回,8 週間,点滴静注)の2 群を比較検討した。奏効割合はそれぞれ19.6 %と41.2 %で有意差が認められた(p<0.05)が,生存期間や有害事象についての検討は報告されていない 1)(レベルⅡa)。その後,Yoshidaらは,1994 年,過去20 年間において放射線とニムスチンとインターフェロン-βの併用で治療を行った悪性神経膠腫175 例(110 例の膠芽腫と65 例の退形成星状細胞腫)の長期成績を後方視的解析した。十分な統計学的検討はなされていないが,3 年および5 年生存割合はそれぞれ42 %と 24 %であった。さらに問題となる有害事象は観察されなかった 2)(レベルⅢ)

1998~1999 年の間にColmann らは,MD Anderson Cancer Center を中心に,初発膠芽腫109 例に対するインターフェロン-βの補助療法の第Ⅱ相試験の結果を報告した。初発膠芽腫に対して手術後放射線治療を行い,その後インターフェロン-β(600 万単位/body,筋肉内投与)を週3 回に投与した。これら症例の生存期間中央値は13.4 カ月であり,同施設でのhistorical control 1,657 症例に比較して有意差はないものの生存期間が延長する傾向を認めた(HR=1.27,95 % CI:0.94-1.63,p=0.19)3)(レベルⅡa)

これらの臨床試験結果や培養細胞を用いた基礎実験の研究成果を踏まえ,標準治療であるStupp プロトコールにインターフェロン-βを併用することで,さらなる治療効果が得られる事が仮説として提唱され,インターフェロン-βとテモゾロミド(temozolomide)併用療法の第Ⅰ相試験が行われた 4)(レベルⅡb)。悪性神経膠腫(膠芽腫,退形成性星細胞腫,または,退形成性乏突起膠細胞系腫瘍)を対象とした。導入治療部分のStupp プロトコールにインターフェロン-β(300 万単位/回,隔日週3 回点滴静注)を併用,維持治療は,Stupp プロトコールの補助化学療法部分にインターフェロン-β(300 万単位/回/日,28 日間隔)を併用し,6 サイクル以上施行することとした。初発例には導入・維持療法両者が,再発例には維持療法単独治療が行われた。初発例16 例,再発例7 例が登録された。導入療法期の15 例ではグレード3 以上の有害事象は白血球減少(1 例),好中球減少(2 例)が観察された。維持治療期の有害事象は18 例(うち11 例は初期治療から移行例)中,グレード3 白血球減少は1 例のみに観察された。これは日本で実施された32 例の初回再発退形性成星細胞腫を対象にしたテモゾロミド(150~200 mg/m2,5 日間,28 日間隔)の第Ⅱ相試験の有害事象報告と比べても大きな差はなく,同治療の安全性は忍容できるものと考えられた。また,有効性に関しては登録後24 週目までの奏効割合33 %,初発膠芽腫10 例の1 年生存割合は 50 %,生存期間中央値は17 カ月であった 4)(レベルⅡb)

文献

1)
永井政勝.悪性脳腫瘍に対するBRM 療法の進歩.癌と化学療法.1991;18(2):188-94.(レベルⅡa)
2)
Yoshida J, Kajita Y, Wakabayashi T, et al. Long-term follow-up results of 175 patients with malignant glioma:importance of radical tumour resection and postoperative adjuvant therapy with interferon, ACNU and radiation. Acta Neurochir(Wien). 1994;127(1-2):55-9.(レベルⅢ)
3)
Colman H, Berkey BA, Maor MH, et al. PhaseⅡ Radiation Therapy Oncology Group trial of conventional radiation therapy followed by treatment with recombinant interferon-beta for supratentorial glioblastoma:results of RTOG 9710. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2006;66(3):818-24.(レベルⅡa)
4)
Wakabayashi T, Kayama T, Nishikawa R, et al. A multicenter phaseⅠ trial of combination therapy with interferon-beta and temozolomide for high-grade gliomas(INTEGRA study):the final report. J Neurooncol. 2011;104(2):573-7.(レベルⅡb)

D カルムスチン徐放性ポリマー

推奨7
推奨グレードC1
成人初発膠芽腫手術においてカルムスチン徐放性ポリマーを留置する。

解説

悪性神経膠腫の化学療法は,全身毒性などの限界より高濃度薬剤を腫瘍へ十分に到達させることが困難である。Sipos らのグループは,生物分解性ポリマーにがん化学療法薬を包み込んで局所的に徐放する方法を開発した 1)(レベルⅡb)

続いて同薬が初発悪性神経膠腫(gradeⅢ/Ⅳ)患者においても有効なことを検証するためのランダム化比較試験が施行された。同意取得後,手術前にカルムスチン(carmustine:BCNU)徐放性ポリマー処置群とプラセボ群にランダム化割り付けされた患者において,摘出術中の迅速病理診断で悪性神経膠腫の疑いと診断された場合,カルムスチン徐放性ポリマーまたはプラセボが腫瘍摘出腔に留置された。両群で244 例が登録され,全例に手術後60 Gy の放射線治療が行われた。生存期間中央値はカルムスチン徐放性ポリマー群で13.9 カ月,プラセボ群11.6 カ月であり,有意差をもってカルムスチン徐放性ポリマー群が優れていた(HR=0.71,95 % CI:0.52-0.96,p=0.03)。また,有害事象に大きな差は観察されなかった 2)(レベルⅠb)。ただし,膠芽腫に限っての解析(カルムスチン徐放性ポリマー群101 例,プラセボ群106 例)では全生存期間に有意差は認められなかった(HR=0.76,95 % CI:0.55-1.05,p=0.10)。

上記以外の成人初発膠芽腫に対するカルムスチン徐放性ポリマー留置を含めた治療成績の検討は後方視的なものである。Johns Hopkins Hospital からの報告では初発膠芽腫に対しカルムスチン徐放性ポリマー留置後放射線治療を行った78 例の生存期間中央値12.4 カ月,カルムスチン徐放性ポリマー留置後Stupp プロトコールを施行した30 例の生存期間中央値20.7カ月であった 3)(レベルⅢ)。Göttingen Universityからの報告では44 例の成人初発膠芽腫に対し,カルムスチン徐放性ポリマー留置後Stupp プロトコールを施行した場合,無病生存期間中央値7.0 カ月,生存期間中央値12.7 カ月であった 4)(レベルⅢ)。さらにこれらを含めた臨床研究を総括した報告によれば,成人膠芽腫新規診断例に対してカルムスチン徐放性ポリマー留置を含む化学放射線治療成績は概ね良好であるが,予後因子にばらつきが有り,Stupp プロトコールと前方視的な比較検証はなされておらず,あくまで後方視的研究という制限をもって評価するべき結果となっている 5)(レベルⅢ)

一方で徐放性ポリマー製剤留置後の本剤のCT/MRI 上の特徴的な経時的変化やair 形成 6,7)(いずれもレベルⅢ),摘出腔の進行性増大 8)(レベルⅢ)といった諸現象,本剤留置後,周囲脳実質の浮腫増強,手術創治癒遷延,髄液漏,頭蓋内感染,BCNU 成分の脳室系への拡散等も留意すべき項目である 5,8,9)(いずれもレベルⅢ)。

文献

1)
Sipos EP, Tyler B, Piantadosi S, et al. Optimizing interstitial delivery of BCNU from controlled release polymers for the treatment of brain tumors. Cancer Chemother Pharmacol. 1997;39(5):383-9.(レベルⅡb)
2)
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3)
McGirt MJ, Than KD, Weingart JD, et al. Gliadel(BCNU)wafer plus concomitant temozolomide therapy after primary resection of glioblastoma multiforme. J Neurosurg. 2009;110(3):583-8.(レベルⅢ)
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Gutenberg A, Lumenta CB, Braunsdorf WE, et al. The combination of carmustine wafers and temozolomide for the treatment of malignant gliomas. A comprehensive review of the rationale and clinical experience. J Neurooncol. 2013;113(2):163-74.(レベルⅢ)
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8)
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9)
De Bonis P, Anile C, Pompucci A, et al. Safety and efficacy of Gliadel wafers for newly diagnosed and recurrent glioblastoma. Acta Neurochir(Wien). 2012;154(8):1371-8.(レベルⅢ)
補遺1
ベバシズマブのStupp プロトコールへの上乗せ効果
最近発表された2 つの第III 相試験(AVAGlio 試験,RTOG0825 試験)において,全生存期間に関するベバシズマブのStupp プロトコールへの上乗せ効果は認められなかった。無増悪生存期間,QOL 保持・改善の観点からはベバシズマブの上乗せ効果の評価は両試験が相反する結果となっている。

解説

ベバシズマブ(bevacizumab)は血管上皮成長因子に対するヒト化モノクロナール抗体であり,我が国では大腸がん,肺がん,乳がん,卵巣がんに対する治療薬として承認を得ている薬剤である。成人初発膠芽腫に対するベバシズマブの効果を検証した臨床試験はAVAGlio 試験とRTOG0825 試験の2 つであり,いずれもその結果が2012~2013 年にかけて学会発表された。両試験ともに CQ3 の推奨1で示されているStupp プロトコールを標準治療としてベバシズマブの上乗せ効果を二重盲検法で検討したランダム化第Ⅲ相試験である。AVAGlio 試験は2012 年11 月のSociety of Neuro-oncology 年次総会で中間解析の結果 1)が報告され,生活の質(quality of life:QOL)の評価 2)さらにco-primary endpoints である全生存期間,無増悪生存期間確定値と最終解析結果 3)も2013 年6 月の米国臨床腫瘍学会(American Society of Clinical Oncology:ASCO)年次総会で提示された。RTOG0825 試験は2013 年6 月のASCO 年次総会で主解析 4),QOL と認知機能の評価 5) が発表された。しかし,いずれも抄録,講演,講演後の討論が主な検討材料となっており,今後公開される情報を注意深く見守る必要がある。

AVAGlio 試験ではco-primary endpoints の1 つである施設評価による無増悪生存期間は,中央値でプラセボ群6.2 カ月,ベバシズマブ群10.6 カ月であり,HR 0.64(95 % CI:0.55-0.74,p<0.0001)とベバシズマブ群において有意な延長が認められた。もう1 つのprimary endpoint である全生存期間は,中央値でプラセボ群16.7 カ月,ベバシズマブ群16.8 カ月,HR 0.88(95 % CI:0.76-1.02,p=0.0987)と両群に有意差は認められなかった。Co-primary endpoints の1 項目無増悪生存期間においてベバシズマブの上乗せ効果が確認され,全生存期間では有意差が認められなかったがHR が1 未満であったため,本試験はStupp プロトコールにベバシズマブを上乗せする意味はあると結論している。

一方,RTOG0825 試験では,同様にco-primary endpoints の1 つである無増悪生存期間は,中央値でプラセボ群7.3 カ月,ベバシズマブ群10.3 カ月であり,HR 0.79(95 % CI:0.66-0.94,p=0.007)という結果であった。RTOG0825 試験では無増悪生存期間に関してあらかじめ有意水準を片側検定でp<0.002(両側検定でp<0.004 に相当)と設定しているため,この結果は統計学的に有意水準には達していないと判定された。もう1つのprimary endpoint である全生存期間は,中央値でプラセボ群16.1 カ月,ベバシズマブ群15.7 カ月,HR 1.13(95 % CI:0.97-1.37,p=0.21)と有意差は認められなかった。無増悪生存期間においては,ベバシズマブの延長傾向を示すが設定有意水準には達せず,全生存期間は上乗せ効果が確認できなかったとして,本試験はStupp プロトコールにベバシズマブの上乗せ効果はないと結論している。

このようにAVAGlio 試験とRTOG0825 試験において,無増悪生存期間と全生存期間は数値としてはほぼ一致した結果が得られたが,統計学的判定に相違があるため,全く異なった判断がなされることとなった。Co-primary endpoints のうち,一般により厳密なendpoint とされる全生存期間は,いずれの試験も有意差を認めない結果であったが,クロスオーバーの比率,すなわちプラセボ群において再発時にベバシズマブを使用している症例の割合は,AVAglio 試験では約30 %,またRTOG0825 試験では約40 %でしかないため,これらの試験から再発時にベバシズマブを初めて投与することの全生存期間への影響を判断することは難しい。今後,両試験の詳細な報告やメタアナリシスなどが望まれる。

さらにQOL の検討でもAVAglio 試験とRTOG0825 試験ではその判断は一致していない。AVAGlio 試験では,secondary endpoint の一つとしてQOL 解析を掲げ,health-related QOL に関するEORTC QLQ-C30 と脳腫瘍特異的な指標であるBN20 を評価の指標とした。QLQ-C30 では全般的健康状態,身体機能,社会生活機能を,BN20 では運動機能,コミュニケーション能力を経時的に測定した 2)。質問票のスコアが試験前の状態から10 ポイント以上低下した場合を悪化と定め,悪化までの期間をプラセボ群とベバシズマブ群で比較したところ,上記5 つの項目すべてにおいてベバシズマブ群で悪化までの期間が延長しており,屋内生活の自立が可能の目安とされるKPS 70 以上の状態が3 カ月延長した 1)

一方,RTOG0825 試験では,附随研究として臨床症状評価にMD Anderson 症状評価表-脳腫瘍版(MDASI-BT)を,QOL の評価にEORTC QLQ-C30 を用いて解析を行っている。本試験ではこれらの視標を同一症例で経時的に追跡評価した。PD となった症例はその時点からこの解析から除外されている。その結果,ベバシズマブ群において経時的にこのスコアが低下する傾向が認められた 5)

両試験とも無増悪生存期間はベバシズマブ投与によって延長しているにもかかわらず,QOL 改善・維持の評価において大きな相違が発生した。その原因には,両試験におけるQOL 解析方法の違いが挙げられているが,その他に調査票回収率など調査のコンプライアンスも関与していると考えられる。AVAGlio 試験ではQOL 検査がsecondary endpoint であったため,試験開始後1 年の時点でほぼ8 割の患者で施行されているが,RTOG0825 試験ではQOL 解析は附随研究に位置づけられており,試験開始から34~46 週の時点で検査結果回収率が約5 割に留まっている。これらの詳細は不明であり,結果の解釈には注意を要すると思われる。したがって,現時点では,ベバシズマブの初期治療におけるQOL への影響に関して結論が出ていない状況にある。

有害事象についてAVAGlio 試験では,実薬群において高血圧(グレード3 以上:10.3 %)や蛋白尿(同:3.7 %)感染症(同:12.1 %)がプラセボ群に比べて多く観察された。また動脈血栓症もグレード3 以上の症例が4.1 %とプラセボ群の1.3 %より多かった 1)。RTOG0825 試験では,ベバシズマブ群で多くみられた有害事象として,高血圧(グレード3 以上:4.6 %),深部静脈血栓症・肺血栓塞栓症(同:9.9 %),創傷治癒障害(同:2.3 %),消化管穿孔(同:1.3 %),出血前兆症状(同:1.3 %),好中球減少(同:15.1 %)であり 4),両試験の有害事象プロファイルも類似した結果であった。

本稿は発表された学会抄録,会場における討論,本委員会での検討をもとにしている。これらの臨床試験結果や副次解析結果が明瞭に確定された後,Stupp プロトコール+ベバシズマブ治療に関するCQ とその推奨レベルを本ガイドラインに追加提示する予定である。

文献

1)
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3)
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補遺2
光線力学的療法
悪性神経膠腫(初発・再発)を含めた悪性脳腫瘍に対して,開頭腫瘍摘出術の際にタラポルフィンナトリウムと半導体レーザを用いた光線力学的療法を行うことが可能である。

解説

原発性悪性脳腫瘍に対する術中追加治療として,タラポルフィンナトリウムと半導体レーザを用いた光線力学的療法(photodynamic therapy:PDT)が2013 年9 月に国内で承認された。PDT の作用機序は,光感受性物質が集積した組織にレーザ光を照射することで光化学反応が引き起こされ,発生した一重項酸素が腫瘍組織を変性・壊死させるというものである。早期肺がんに続く治療対象疾患の拡大である。現在は標準治療への上乗せ効果が期待される集学的治療の一つとして位置づけられている。しかし,これまでの結果は限られた症例数から得られたものであり,今後,臨床研究や市販後調査によってより高いエビデンスレベルの効果・安全性に関する検証が必要である。

脳腫瘍に対するPDT の臨床研究では,成人悪性神経膠腫を治療対象の主眼とした単施設での安全性確認を主目的とした前方視的研究報告があり,PDT と因果関係のある有害事象はなかった 1)(レベルⅢ)

その後,国内2 施設(東京女子医科大学ならびに東京医科大学)で第Ⅱ相試験として初発膠芽腫を中心とした悪性脳腫瘍を対象として医師主導治験が実施された 2)(レベルⅡa)。手術の際にPDT を施行した有効性評価対象の22 例(膠芽腫13 例,退形成性神経膠腫7 例,膠肉腫1 例,退形成性変化を伴う毛様性星細胞腫1 例)において,12 カ月生存割合は95.5 %であり,生存期間中央値は27.9 カ月であった。このうち,術後Stupp プロトコールを行った初発膠芽腫13 例の12 カ月生存割合は100 %,生存期間中央値は24.8 カ月であった。タラポルフィンナトリウムの静脈投与を行った安全性評価対象の27 例で,主に認められた有害事象は肝機能検査値異常であったが,グレード3以上のものは観察されなかった。投与後1 週間で全被検者の8 割が,投与後2 週間ですべての被験者の光線過敏反応(日光等強い光に対する発赤等の皮膚反応)は消失した。

文献

1)
Akimoto J, Haraoka J, Aizawa K. Preliminary clinical report on safety and efficacy of photodynamic therapy using talaporfin sodium for malignant gliomas. Photodiagnosis Photodyn Ther. 2012;9:91-9.(レベルⅢ)
2)
Muragaki Y, Akimoto J, Maruyama T, et al. PhaseⅡ clinical study on intraoperative photodynamic therapy with talaporfin sodium and semiconductor laser in patients with malignant brain tumors. J Neurosurg 2013;119:845-52.(レベルⅡa)

CQ4
成人再発膠芽腫に対する治療はどのように行うか?

A 手術

推奨1
推奨グレードC1
症例によっては,再発膠芽腫に対して再手術を考慮してもよい。

解説

再発膠芽腫に対する再摘出術は,腫瘍塊によって生じている症状軽減のみならず,ステロイド投与量の減量や併用する追加療法の効果を高める意義が指摘されている。高い術前PS(KPS 70 以上)・全摘出・若年者(50 歳未満)・初発から再発までの期間が長いこと(6 カ月以上),等を満たす症例が,再手術により生存期間が延長されると報告されてきた 1,2)(いずれもレベルⅢ)。しかし,いずれも初発膠芽腫に比較してさらに不均一な症例群を対象とした後方視的検討であり,再発膠芽腫に対する再手術の意義は確立していない。

Park らはNIH recurrent GBM scale を用いて,再発膠芽腫に対する手術適応を検討した。NIH recurrent GBM scale とは,KPS score が80 %以下・腫瘍容積が50 cm3 以上・MSM(motor-speech-middle cerebral artery)score(推定される運動・言語領域及びM1-M2 segment を含むかどうか)が2 以上という3 項目について,それぞれ1 point を与え,0~3 points まで4 段階に分類する方法である。まずNational Institutes of Health(NIH)における34 例の連続再発膠芽腫症例に関して,このNIH recurrent GBM scale と再発後の生存期間を検討後,Brigham and Women’s Hospital(BWH)における109 例の連続再発膠芽腫症例を用いて検証した3)(レベルⅢ)。その結果,予後良好群(0 point)・予後中間群(1~2 points)・予後不良群(3 points)の間で有意に生命予後が異なり(生存期間中央値はそれぞれ10.8・4.5・1.0 カ月),これはBWH における検証結果でも証明された(生存期間中央値はそれぞれ9.2・6.3・1.9 カ月)。

このように,予後良好群と中間群では再摘出後に比較的長期間生存可能であったという結果から,これらの群に対しては再手術を考慮すべきであると結論づけている 3)(レベルⅢ)。しかし,この解析結果に関しては,予後不良群がNIH,BWH ともに3 例ずつでしかないこと,術後に化学療法を含めた追加治療を行っていないことが問題点として指摘されている。すなわち,化学療法の併用により,再発膠芽腫に対する手術療法はより有意義になり得る可能性が示唆されている。実際に,再発膠芽腫に可及的再摘出術と併用してカルムスチン徐放性ポリマー留置やIL13-PE38QQR のconvection-enhanced delivery が用いられた第Ⅱ,Ⅲ相試験では,生存期間中央値は35.3~50.3 週と比較的良好な結果が得られており,再発膠芽腫に対する手術療法の意義を高める上で総合的な治療の有用性が示唆される 4,5)(それぞれレベルⅡb,Ⅰb)。

North American Brain Tumor Consortium にて行われた再発膠芽腫に対する様々な薬剤を用いた19 の第Ⅱ相試験に対してメタアナリシスが行われ,再発時に再摘出を行った181 例と行わなかった412 例の6 カ月無増悪生存割合と全生存割合が検討された 6)(レベルⅠa)。その結果,両群間には有意差は認められず,再発膠芽腫に対しての新規治療方法を模索するうえで,再摘出の有無により層別化する必要はないと結論づけている。しかし,今回の結果は再摘出術のすべて必要性を否定するものではなく,再発時の頭蓋内圧亢進症状や局所症状を緩和し,追加治療に十分耐えられるようにするために再摘出術は重要である,と考察に記載されている点は注目すべきである。彼らは,再摘出術の意義を,再発時に手術を必要とせず治療可能な症例と,塊として存在する腫瘍により状態が悪化している症例を手術により均衡化(“balance the scales”)することにあると表現している。

再発膠芽腫に対する再摘出術の適応を個々の症例において明確に決定することは困難であるが,再摘出がその予後改善に重要な意義を有する症例は存在し,さらに追加治療を行うことにより膠芽腫全体の予後改善の可能性が示唆されているといえよう。

文献

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B 化学療法

推奨2
推奨グレードC1
成人再発膠芽腫に対して全身・局所化学療法を考慮してもよい。

解説

1.通常量テモゾロミド

欧米での多施設共同臨床試験として,テモゾロミド(temozolomide)未治療の再発膠芽腫に対するテモゾロミドの有効性を検討する比較化第Ⅱ相試験が施行された。1995~1997 年にかけて,225 例の初回再発(前治療としてテモゾロミドは未使用)の膠芽腫に対して,テモゾロミド投与群とプロカルバジン投与群を比較した。テモゾロミドは,一日150~200 mg/m2 を5 日間連続投与し,28 日を1 サイクルとして繰り返し施行した(5-day on/23-day off)。プロカルバジンは一日あたり125~150 mg/m2の同薬を28 日間連続内服し,28 日休薬する(56 日を1 サイクル)投与法を繰り返し行った。6 カ月無増悪生存割合は,テモゾロミドは21 %(95 % CI:13-29)であり,プロカルバジンは8 %(95 % CI:3-14)であり(HR=1.54,p=0.08),無病生存期間中央値はそれぞれ12.4 週と8.32 週であった(HR=1.47,95 % CI:1.11-1.95,p=0.0063)。毒性は許容範囲であった。この結果をもって欧米では再発悪性神経膠腫に対してテモゾロミドの保険適応が認められた 1)(レベルⅠb)

続いて我が国において同薬の有効性を検討するためテモゾモミド未治療の成人退形成性星細胞腫(星細胞腫gradeⅢ)初回再発患者32 例に対して上記投与法による国内第Ⅱ相試験が行われた。6 カ月での無増悪生存割合は40.6 %,無増悪生存期間中央値は4.1 カ月であった。テモゾロミド未治療の再発悪性神経膠腫に対して5-day on/23-day off 投与法は我が国においても安全に遂行可能であり,優れた忍容性を持つことが判明した 2)(レベルⅡa)

2.ニトロソウレア系薬剤

ドイツの研究グループが2003~2008 年における前治療としてテモゾロミド(temozolomide)を使用した再発膠芽腫32 例に対して,ニムスチン(nimustine:ACNU)を含むプロトコールで治療した結果を報告している。単独ニムスチン投与は14 例でテニポシド(teniposide:VM26)との併用は17 例であった。6 カ月無増悪生存期間は,20 %であった。グレード3 以上の有害事象を50 %に認めた。再発膠芽腫に対してのテモゾロミドの成績と比較して副作用は強いが,6 カ月無増悪生存期間は同等であった 3)(レベルⅢ)

海外においては,再発膠芽腫に対して,ロムスチン(lomustine:CCNU)が第Ⅲ相試験のコントロール群として投与され,やはり20 %程度の6 カ月無増悪生存割合が報告されている 4)(レベルⅠb)

≪注意≫

テニポシド(teniposide:VM26):国内未承認
ロムスチン(lomustine:CCNU):国内未承認
3.インターフェロン‒β

再発膠芽腫・退形成性星状細胞腫患者に対するインターフェロン-β(interferon-β)の多施設共同第Ⅰ/Ⅱ試験が,1986~1988 年に米国の6 つの施設で行なわれた。インターフェロン-β(90-540 万単位)が1 週間に3 回点滴静注された。すべての患者は初期治療として放射線療法がなされており,多くの患者は一種類以上の化学療法を受けていた。登録72 例の患者のうち,65 例(膠芽腫41 例,退形成性星細胞腫24 例)が評価可能であり,15 例(23 %)は病変が縮小,18 例(28 %)は変化を認めず,無増悪生存期間中央値は23 週であった 5)(レベルⅡa)

我が国では再発膠芽腫・退形成性星細胞腫に対するテモゾロミド(temozolomide)(5-day on/23-day off 投与)とインターフェロン-β 300 万単位(28 日ごと投与)の併用化学療法の安全性を検討する第Ⅰ相試験が行われ,有害事象は認容できるものであることが確認された 6)(レベルⅡb)

4.カルムスチン徐放性ポリマー

再発悪性神経膠腫に対するカルムスチン(carmustine:BCNU)徐放性ポリマーの効果を評価するために,ランダム化比較試験を施行した。Primary endpoint は試験薬留置後の全生存期間とされた。27 施設において222 人の再発悪性脳腫瘍患者が登録され,カルムスチン徐放性ポリマー留置群110 例,プラセボ留置群112 例にランダム化割り付けされた。カルムスチン徐放性ポリマー留置群の生存期間中央値は31 週,プラセボ留置群のそれは23 週であり,primary endpoint の全生存期間は単変量解析では有意差を認めなかった(HR=0.83,95 % CI:0.63-1.10,p=0.19)。しかし,post-hoc に多変量解析を用いて年齢,人種,摘出量,照射法,化学療法の有無,組織診断の因子で調整すると,カルムスチン徐放性ポリマー留置群はプラセボ留置群に比べて全生存期間は有意に延長した(HR=0.67,95 % CL:0.51-0.90,p=0.006)7)(レベルⅠb)。同試験において,膠芽腫のみを選択し,同様にpost-hoc に多変量解析を用いて因子調整すると,カルムスチン徐放性ポリマー留置群(72 例)はプラセボ留置群(73 例)に比べて有意にHR が低下した(HR=0.67,95 % CL:0.48-0.95,p=0.02)7)(レベルⅠb)

再発膠芽腫に対する本剤の有効性・安全性については成人初発膠芽腫と同様に今後の厳密な検討が必要である 8)(レベルⅢ)(初発膠芽腫に対するカルムスチン徐放性ポリマーの項:CQ3 の推奨7 参照)。

5.ベバシズマブ

膠芽腫は大部分が血管内皮成長因子を発現しているため,血管内皮成長因子に対するヒト化モノクロナール抗体であるベバシズマブ(bevacizumab)は腫瘍血管増殖を選択的に阻害し,膠芽腫の治療薬となる可能性が示されていた 9,10)(いずれもレベルⅡa)。引き続き計画された臨床試験では,再発膠芽腫患者(初回再発患者89 %,第2 回再発11 %)を対象としてベバシズマブの単独投与群とベバシズマブとイリノテカン(irinotecan)併用群の2 群に分け,6 カ月間無増悪生存割合をprimary endpoint として比較,検討している。ベバシズマブ単独群では36 %(85 例中31 例),併用群では51 %(82 例中42 例)が6 カ月間,腫瘍の増大を認めなかった。Historical control において6 カ月間無増悪生存割合は15 %程度と考えられるため,ベバシズマブは,再発膠芽腫の有効な治療薬となる可能性が示された 11)(レベルⅡa)。米国では,これらの結果を受けて再発膠芽腫患者に対するベバシズマブの使用が米国食品医薬品局(FDA)により暫定的に認可された。

我が国では再発悪性神経膠腫に対するベバシズマブ単独療法の有効性・安全性を検討することを目的として,多施設共同第Ⅱ相試験が開始された。Stupp プロトコールでの治療後の初回再発を中心とした悪性神経膠腫を対象として,ベバシズマブ10 mg/kg を2 週間隔で病勢進行まで投与した。Primary endpoint は再発膠芽腫での6 カ月無増悪生存割合,secondary endpoint は再発膠芽腫および全症例に対する6 カ月無増悪生存割合,奏効割合,全生存期間,安全性とした。病変評価はMacdonald 基準を用いた。2009 年8 月から2010 年7 月に31 例(初回病理診断膠芽腫29 例,gradeⅢ神経膠腫2 例)が登録された。膠芽腫患者中初回再発17 例,再々発12 例であった。膠芽腫再発患者29 例の6 カ月無増悪生存割合は33.9 %(90 % CI:19.2-48.5),無増悪生存期間中央値3.3 カ月(95 % CI:2.8-6.0),奏効割合27.6 %,1 年生存割合34.5 %(90 %CI:20.0-49.0),全生存期間10.5 カ月(95 % CI:8.2-12.4)であった。全32 例中7 例(24.1 %)で6 カ月以上の奏効が確認された。ベバシズマブ投与回数中央値は6 回であった。主な有害事象は尿蛋白(41.9 %),高血圧(32.3 %),下痢(25.8 %)であり,グレード3 以上のものは41.9 %に発現した。治療を要した高血圧は6 例(19.4 %)に観察され,ベバシズマブとの因果関係が否定できない重篤な有害事象は4 例(12.9 %,虫垂炎,深部静脈血栓症,心不全,痙攣)に認められた。投与中止に至った有害事象は脳出血(グレード1)と好中球減少(グレード2)の2 例(6.5 %)であった。これらの結果より,ベバシズマブ単独療法は,我が国においても忍容性が高く,膠芽腫再発例を含めた再発悪性神経膠腫に対する有望な治療法の一つであると思われる 12)(レベルⅡa)

ただし,ベバシズマブ投与時には画像検査上の造影剤増強域の縮小,脳浮腫の縮小といった効果,およびこれらに対応する臨床症状の改善は比較的早期に現れるが,画像上の病巣の縮小と病勢の制御が相関しない症例が存在すること,投与後の再発・再増大の際には腫瘍の浸潤域(T2 高信号域)の拡大が著明な傾向があること,造影剤増強域の増大を示さずに臨床症状の悪化がみられること等の問題点が指摘されている 13,14)(いずれもレベルⅢ)。

≪注意≫

イリノテカン(irinotecan):適応外使用
6.テモゾロミド増量法

悪性神経膠腫のテモゾロミド(temozolomide)耐性に関係するDNA 修復酵素O6-methylguanine-DNA methyltransferase(MGMT)は修復反応に伴って不活化された後,再び活性型に戻ることなく分解される。DNA がメチル化されている箇所が多ければ多いほどMGMT がDNA の修復に費やされ,分解・枯渇化することが想定されていた 15)(レベルⅡb)。すなわち腫瘍に対するテモゾロミド露出を増加させることによりMGMT が発現している腫瘍に対してもテモゾロミドの抗腫瘍効果を上げることが理論上可能であり,この仮説に基づいていくつかの,テモゾロミド増量プロトコールが試されている。代表的なプロトコールは,1-week on/1-week off 投与,3-week on/1-week off 投与,連日投与の3 種類である 16-18)(それぞれレベルⅡa,Ⅰb,Ⅱa or Ⅲ)。

ドイツの脳腫瘍グループでは,90 例の再発悪性神経膠腫患者を対象として,一日投与量150 mg/m2とし,1-week on/1-week off 投与で増量化学療法の第Ⅱ相試験を実施した。通常用量の5-day on/23-day off 投与より強い毒性は認められなかった。グレード4 以上の血液毒性は,2.6 %であり,11 例(12 %)にグレード4 以上のリンパ球減少症を認めたが,遷延性リンパ球減少も日和見感染も観察されなかった。6 カ月の無増悪生存割合は,43.8 %,無増悪生存期間中央値は24 週(95 % CI:17-26)であった。生存期間中央値は38 週(95 % CI:30-46),1 年生存割合は23 %であり,一定の安全性と有効性が示唆された 16)(レベルⅡa)

英国脳腫瘍グループでは,447 例の化学療法の前治療歴のない再発悪性神経膠腫に対してPCV〔プロカルバジン(procarbazine),ロムスチン(lomustine:CCNU),ビンクリスチン(vincristine)〕,テモゾロミド5-day on/23-day off 投与とテモゾロミド3-week on/1-week off投与の3群間で比較試験を行っている 17)(レベルⅠb)。9カ月時点での治療完遂率はそれぞれ17 %,26 %,13 %であった。主な有害事象は3 群間で大きな差がなかった。PCV をテモゾロミド全体の治療と比較すると,12 カ月の生存割合においてPCV 群とテモゾロミド群には,有意差は認めなかった(HR=0.91,95 % CI:0.74-1.11,p=0.350)。テモゾロミド投与群では5-day on/23-day off 治療群と3-week on/1-week off 治療群における12 週無増悪生存割合はそれぞれ63.6 %と65.7 %と同程度であった(p=0.745)が,無増悪生存期間(HR=1.38,95 % CI:1.05-1.82,p=0.023),生存割合(HR=1.32,95 % CI:0.99-1.75,p=0.056),QOL(6 カ月間QOL を10 ポイント改善した割合:それぞれ49 %と19 %,p=0.005)と,5-day on/23-day off 投与において良い傾向が示唆された。腫瘍制御,QOL 改善の点で3-week on/1-week off 投与群は5-day on/23-day off 投与群に比べて高い有効性を示すことができなかった。

RESCUE Study と命名されたカナダでの臨床研究ではStupp プロトコールで治療された後に再発を認めた膠芽腫91 例に対して,再増大が観察されるまでテモゾロミド50 mg/m2を毎日連続投与する治療法の有効性が検討された 18)(レベルⅡa or Ⅲ)

この91 例はまず再発様式から
B1:維持治療6 サイクル未満で再発
B2:6 サイクル以上で再発(サイクルの中断なし)
B3:6 サイクル以上施行し,かつ2 カ月以上のテモゾロミド無治療期間の後に再発

の3 群に分類されている。91 例全体の6 カ月の無増悪生存割合は,23.9 %であった(B1:27.3 %,B2:7.4 %,B3:35.7 %)。1 年生存割合はB1,B2,B3 グループそれぞれ27.3 %,14.8 %と28.6 %であった。グレード3 以上の有害事象は悪心・嘔吐(6.7 %),疲労感(5.8 %)が観察された。この結果より再発膠芽腫に対するテモゾロミド50 mg/m2/日の連続投与は,有害事象も限定的であり,維持療法早期の再発例や,テモゾロミドが一度有効性を示し,かつテモゾロミド無治療期間を有する症例では,治療選択肢の一つとなる可能性が示唆された 18)(レベルⅡa)

以上より,テモゾロミドの総投与量を増量する治療法が再発膠芽腫において生存期間を延長させる可能性を期待した臨床研究は現時点では肯定的なもの,否定的なもの,いずれも存在しており,今後の研究の展開が注目される。

≪注意≫

テモゾロミド1-week on/1-week off 投与,3-week on/1-week off 投与,連日投与:添付文書に記載された投与法・投与量以外の投与方法
7.プラチナ製剤

Yung らは,1991 年に再発悪性神経膠腫に対してカルボプラチン(carboplatin)単剤の治療の有効性を報告した。30 例の再発悪性神経膠腫患者に対して,カルボプラチン400~450 mg/m2を4 週おきに投与した。奏効割合は14 %,無増悪生存期間中央値は26 週であった。軽微な血小板減少と顆粒球減少は観察されたが,重篤な合併症はなかった。グレード3 以上の骨髄抑制は約10 %程度であった 19)(レベルⅡa)

再発悪性神経膠腫に対するカルボプラチンとエトポシド(etoposide)による併用化学療法を使用した第Ⅱ相試験には2 つの報告がある。Jeremic らは38 例の再発悪性神経膠腫患者に対してカルボプラチン300 mg/m2(3 日間),エトポシド100 mg/m2(5 日間)を4 週間ごとに投与した。奏効割合21 %,無増悪生存期間中央値は42.5 週であった。グレード3 以上の白血球減少は 37 %,血小板減少は42 %に観察された 20)(レベルⅡa)。また,Franceschi らは再発膠芽腫25 例と再発退形成性星細胞腫5 例,計30 例に対して,放射線治療後に4 週ごとに,3 日間連続して一日あたりカルボプラチン100 mg/m2とエトポシド120 mg/m2を投与した。6 カ月無増悪生存割合が33.3 %,無増悪生存期間中央値は4 カ月,生存期間中央値は10 カ月であった。グレード3/4 の好中球減少を30 例中13 例(32.5 %)に認めた 21)(レベルⅡa)

我が国でもAoki らにより,低用量のイホスファミド(ifosphamide),カルボプラチン,エトポシド(ICE)療法の第Ⅱ相試験が行われている。1999 年7 月~2005 年3 月までの39 例の再発膠芽腫が登録された。イホスファミド(1000 g/m2/日,第1,2,3 治療日),カルボプラチン(110 mg/m2/日,第1 治療日),エトポシド(100 mg/m2/日,第1,2,3 治療日)を6 週間ごとに投与する化学療法を行った。グレード3/4 の血液学的毒性は8 %。臨床検査値の異常は12 %に出現した。奏効割合25 %,無増悪生存期間中央値は17 週,6 カ月,12 カ月無増悪生存割合はそれぞれ39 %と11 %であった 22)(レベルⅡa)

プラチナ製剤を含んだ化学療法は再発悪性膠芽腫,再発悪性神経膠腫に一定の治療効果を示しているが,プロトコール構成薬剤が我が国では神経膠腫に対して適応がないこと,入院治療が必要になる場合が稀ならず存在すること等が,今後の対応課題である。

≪注意≫

カルボプラチン(carboplatin):適応外使用
エトポシド(etoposide):適応外使用
イホスファミド(ifosphamide):適応外使用

文献

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C 定位放射線照射

推奨3
推奨グレードC1
成人再発膠芽腫治療において局在した病変の制御を目的として,定位放射線照射を考慮してもよい。

解説

Combs らは,再発膠芽腫患者に対して定位放射線照射を行った結果を報告した 1)(レベルⅡb)。初期診断時32 例の患者の年齢中央値は56 歳(33~76 歳)であった。初回照射と定位放射線照射までの期間中央値は10カ月で,定位放射線照射として行われた線量中央値は,80 %の等線量で15 Gy(10~20 Gy)であった。化学療法の併用はなかった。グレード2 以上の急性毒性はなく,放射線壊死を含む重篤な晩期毒性は,観察されなかった。定位放射線照射後の生存期間中央値は10 カ月,無増悪生存期間中央値は7 カ月であった 1)(レベルⅡb)

膠芽腫患者において,標準的放射線治療(60 Gy)が過去に施行されていたとしても,再発時には種々の放射線照射装置を用いた追加照射は可能である。しかし,再発膠芽腫に対する定位手術的照射あるいは定位放射線治療の前方視的なランダム化比較試験はこれまでに施行されておらず,大多数のデータは後方視的研究であり,さらにその適応が全身状態の良い患者,かつ小さな腫瘍径である場合に限定されているため 2)(レベルⅢ),今後のランダム化比較試験を含めた詳細な検討が待たれるところである。

文献

1)
Combs SE, Widmer V, Thilmann C, et al. Stereotactic radiosurgery(SRS):treatment option for recurrent glioblastoma multiforme(GBM). Cancer. 2005;104(10):2168-73.(レベルⅡb)
2)
Romanelli P, Conti A, Pontoriero A, et al. Role of stereotactic radiosurgery and fractionated stereotactic radiotherapy for the treatment of recurrent glioblastoma multiforme. Neurosurg Focus. 2009;27(6):E8.(レベルⅢ)

CQ5
高齢者初発膠芽腫に対して手術後どのような治療が推奨されるか?

推奨1
推奨グレードB
高齢者においてもまず放射線治療を考慮する。
推奨2
推奨グレードB
高齢者においては,線量の減量と照射期間の短縮を考慮してもよい。
推奨3
推奨グレードC1
高齢者において,MGMT 遺伝子プロモーター領域メチル化症例はテモゾロミド単独療法も治療選択肢として考慮してもよい。
推奨4
推奨グレードC1
高齢者において,放射線治療後にテモゾロミド補助化学療法を考慮してもよい。

解説

膠芽腫において単独で最も検出力の高い予後因子は年齢である。カナダOntario 州でのpopulation-based の調査では,1982~1994 年の3,298 例の膠芽腫患者における生存期間中央値は高齢になるにつれて悪化が著しく,特に70 歳を超える患者では生存期間中央値は4~5カ月であった 1)(レベルⅢ)。加えて,70 歳以下の成人膠芽腫に対する標準治療を確立したStupp らの第Ⅲ相試験における副次的解析では,患者が高齢になるほどハザード比が上昇する,すなわちテモゾロミドの上乗せ効果が薄れることが示されている 2,3)(いずれもレベルⅠb)。

これらの状況を踏まえ,高齢者初発膠芽腫・悪性神経膠腫の治療を考えるうえで示唆に富む臨床研究がなされている。

70 歳以上の初発退形成性星細胞腫または膠芽腫で70 以上のKPS スコアを有する85 例の患者において放射線治療(50 Gy,1.8 Gy/日)治療とbest supportive care を比較する第Ⅲ相試験が行われている。85 例の対象者の年齢中央値は73 歳(70~85 歳)であった。中間解析において放射線治療群の優越性が明らかとなったため,試験が中止となった。生存期間中央値はそれぞれbest supportive care 群16.9 週,放射線治療群が29.1 週であった(HR=0.47,95 % CI:0.29-0.76,p=0.002)4)(レベルⅠb)。また,60歳以上の初発膠芽腫患者100 例を対象とした標準照射法60 Gy/30 fr に対する短期照射法40 Gy/15 fr の非劣性を検討するランダム化比較試験では,6 カ月生存割合,全生存期間ともに短期照射法の標準照射法に対する非劣性が証明された(HR=0.89,95 % CI:0.59-1.36,p=0.57)。生存期間中央値はそれぞれ5.1 カ月と5.6 カ月,6 カ月生存割合はそれぞれ44.7 %,41.7 %であった 5)(レベルⅠb)

Brandes らは,65 歳以上の初発膠芽腫患者75 例に対して放射線単独治療(59.44 Gy/33 回,1.8 Gy/日)(1993~1995 年),同放射線治療後PCV〔プロカルバジン(procarbazine),ロムスチン(lomustine:CCNU),ビンクリスチン(vincristine)〕維持化学療法(1995~1997 年),および同放射線治療後テモゾロミド維持化学療法(150 mg/m2/日,5-day on/23-day off)(1997~2000 年)の3 群を行い,3 群の治療成績を比較する第Ⅱ相試験を行っている 6)(レベルⅡb)。この研究の結果,3 群の生存期間中央値はそれぞれ11.2 カ月(95 % CI:9.43-13.35),12.7 カ月(95 % CI:11.2-18.74)そして14.9 カ月(95 % CI:13.37-24.35)となり,放射線治療後テモゾロミド維持化学療法群は放射線単独治療群と比較して有意な優越性が認められた。通常放射線治療後にテモゾロミド維持化学療法を行うことが高齢者において有効である可能性が示された。

ドイツのNeurooncology Working Group によるNOA-08 試験は,2005~2009 年の期間において,KPS スコアが60 以上で,65 歳以上の退形成性星細胞腫または膠芽腫患者406 例(膠芽腫患者が約9 割を占める)に対して,放射線治療(54~60 Gy)群に対する増量テモゾロミド(1 日投与量100 mg/m2,1-week on/1-week off)群の非劣勢を検証する第Ⅲ相ランダム化比較試験である。Primary endpoint は全生存期間とし,非劣勢マージンは25 %とした。生存期間中央値は,放射線治療群9.6 カ月(95 % CI:8.2-10.8),テモゾロミド群8.6 カ月(95 % CI:7.3-10.2)(HR=1.09,95 % CI:0.84-1.41,p=0.033)で,有害事象も容認できる範囲であったため,テモゾロミド単独投与治療の非劣勢が示された 7)(レベルⅠb)。さらにはMGMT 遺伝子プロモーター領域のメチル化症例においてテモゾロミド単独投与治療は選択肢の一つとなり得ることが示された。

しかし,逆にMGMT 遺伝子プロモーター領域非メチル化症例においてテモゾロミド単独投与治療は放射線単独治療より全生存期間,無増悪生存期間が有意に短縮する傾向になることも判明し,採取組織のMGMT 遺伝子プロモーター領域のメチル化測定を行わない場合には,放射線治療を第一治療選択とすべきである 7)(レベルⅠb)。なお,MGMT 遺伝子プロモーター領域のメチル化測定は保険承認・償還されていない検査である。

Nordic 研究は,60 歳以上の初発膠芽腫342 例に対して,放射線治療(60 Gy,1 日2 Gy,6 週間)群(100 例)を標準治療とし,短期放射線治療(34 Gy,1 日3.4 Gy,2 週間)群(123 例),テモゾロミド(200 mg/m2/日,5-day on/23-day off)による6 サイクルの化学療法群(119 例)の試験治療,それぞれの優越性を検証するランダム化第Ⅲ相試験である 8)(レベルⅠb)。全生存期間をprimary endpoint とした。3 群の生存期間中央値は,それぞれ6 カ月(95 % CI:5.1-6.8),7.5 カ月(95 % CI:6.5-8.6),8.3 カ月(95 % CI:7.1-9.5)であり,テモゾロミド群は標準放射線治療群に対して有意な生存期間の延長を示したが(HR=0.70,95 % CI:0.52-0.93,p=0.01),短期放射線治療群は標準的放射線治療群に比較して有意な生存期間延長を示すことはできなかった(HR=0.85,95 % CI:0.64-1.12,p=0.24)。70 歳以上の患者に限定すれば標準放射線治療群に比べて短期放射線治療群,テモゾロミド群はそれぞれ有意に生存期間の延長が認められた(短期放射線治療群 HR=0.59,95 % CI:0.37-0.93,p=0.02,テモゾロミド群 HR=0.35,95 % CI:0.21-0.56,p<0.0001)。また70 歳以上の患者において短期放射線治療群とテモゾロミド群の間には全生存割合において有意差は観察されなかった(HR=0.72,95 % CI:0.50-1.05,p=0.09)。テモゾロミド群においてMGMT 遺伝子プロモーター領域メチル化症例は非メチル化症例に比べて生存期間の延長が観察されたが(HR=0.56,95 % CI:0.34-0.93,p=0.02),標準あるいは短期照射群全体の中ではMGMT 遺伝子プロモーター領域メチル化は生命予後に影響を与えなかった。テモゾロミド群ではグレード3/4 の好中球減少(12 例),血小板減少(18 例)が観察されており,高齢者ではよりきめ細かい治療管理が要求されることを示唆している。

現在までに高齢者初発膠芽腫に対して6 週間60 Gy 照射,あるいは短期間照射に併用して連日テモゾロミドを投与する治療に関する前方視的試験は報告されていない。後方視的解析として,Memorial Sloan Kettering Cancer Center から1987~2008 年までに同病院で経験した65 歳以上の膠芽腫 291 例を治療法別に比較検討した報告がある 9)(レベルⅢ)。65~70 歳まで146 例,71 歳以上145 例,放射線治療法として二次元照射48 例,三次元原体照射132 例,強度変調放射線治療(intensity-modulated radiotherapy:IMRT)111 例で,これらのなかには短期間照射例(症例数は不明)も含まれている。291 例中,照射時期にテモゾロミド連日投与を併用した症例は115 例(40 %)であった。多変量解析により予後に好影響を及ぼした因子は71 歳未満,RTOG RPA クラスⅣ,亜全摘以上の摘出術,テモゾロミドを放射線治療に併用すること,の4 因子であった。しかし,テモゾロミドを放射線治療に併用していない症例は2002 年以前の症例,かつ二次元照射例が大多数であり,また,併用群の中には短期照射とテモゾロミドの併用例も含まれていることなど,大きな選択バイアスが包含されている可能性のある検討といえる。現在NCIC とEORTC の共同研究で短期照射を標準治療群として短期照射時の連日テモゾロミド併用に加えて終了後6 サイクルのテモゾロミド維持化学療法を行う治療群のランダム化第Ⅲ相試験が進行中である。

以上の試験を総括すると,高齢者の初発膠芽腫患者においては,生存期間延長の観点からは術後放射線治療を考慮することが重要であり,放射線治療後の化学療法も一つの選択肢である。放射線治療は60 Gy/6 週間の通常照射に比べて短期照射(34 Gy/2 週間,40 Gy/3 週間など)が有望である。手術後,採取組織のMGMT 遺伝子プロモーター領域のメチル化を検討し,メチル化症例においてはテモゾロミド単独治療も選択肢となり得ることが示されている。一方で放射線とテモゾロミド同時併用の有効性・安全性については今後の検討課題となっている 8)(レベルⅠb)

≪注意≫

テモゾロミド1-week on/1-week off 投与:添付文書に記載された投与法・投与量以外の投与方法MGMT 遺伝子プロモーター領域のメチル化測定:保険承認,保険償還されていない検査法

文献

1)
Paszat L, Laperriere N, Groome P, et al. A population-based study of glioblastoma multiforme. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2001;51(1):100-7.(レベルⅢ)
2)
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3)
Stupp R, Hegi ME, Mason WP, et al. European Organisation for Research and Treatment of Cancer Brain Tumour and Radiation Oncology Groups;National Cancer Institute of Canada Clinical Trials Group. Effects of radiotherapy with concomitant and adjuvant temozolomide versus radiotherapy alone on survival in glioblastoma in a randomised phaseⅢ study:5-year analysis of the EORTC-NCIC trial. Lancet Oncol. 2009;10(5):459-66.(レベルⅠb)
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Keime-Guibert F, Chinot O, Taillandier L, et al. Radiotherapy for glioblastoma in the elderly. N Engl J Med. 2007;356(15):1527-35.(レベルⅠb)
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Brandes AA, Vastola F, Basso U, et al. A prospective study on glioblastoma in the elderly. Cancer. 2003;97(3):657-62.(レベルⅡb)
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Wick W, Platten M, Meisner C, et al. Temozolomide chemotherapy alone versus radiotherapy alone for malignant astrocytoma in the elderly:the NOA-08 randomised, phase 3 trial. The Lancet Oncology. 2012;13(7):707-15.(レベルⅠb)
8
Malmström A, Grnberg BH, Marosi C, et al. Temozolomide versus standard 6-week radiotherapy versus hypofractionated radiotherapy in patients older than 60 years with glioblastoma:the Nordic randomised, phase 3 trial. The Lancet Oncology. 2012;13(9):916-26.(レベルⅠb)
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Barker CA, Chang M, Chou JF, et al. Radiotherapy and concomitant temozolomide may improve survival of elderly patients with glioblastoma. J Neurooncol. 2012;109(2):391-7.(レベルⅢ)

2 章 成人転移性脳腫瘍

総論

1 本ガイドラインの目的

固形がんの転移性脳腫瘍,髄膜がん腫症,頭蓋骨転移に罹患している個々の成人症例において,適切な治療方針を検討するうえで必要となる重要な臨床事項を臨床的疑問(clinical question:CQ)として提示し,現時点でのエビデンスに基づく推奨事項を述べる。

2 対象患者

固形がんの転移性脳腫瘍,髄膜がん腫症,頭蓋骨転移に罹患した成人患者。

3 利用対象者

脳腫瘍診療に従事する医師。

4 成人転移性脳腫瘍の概括

1.成人転移性脳腫瘍の現状

症候性の転移性脳腫瘍はがん患者の8~10 %に発生すると報告され 1,2),剖検データによる頭蓋内転移の頻度は16~26 %である 3-5)。日本における罹患者数について正確なデータはないが,年間数万人以上と推計されており,原発性の中枢神経系腫瘍よりもはるかに多いと見積もられている 5-7)

転移性脳腫瘍は全人的な生活の質(quality of life:QOL)と生存期間に強い影響を与える 8,9)。臨床腫瘍学の目覚ましい進歩により患者の生存期間が延長するにつれ,遅発性合併症としての転移性脳腫瘍の罹患率は増大している 10)。一方では,MRI など診断技術の開発や定位放射線照射(stereotactic irradiation:STI)など治療法の進歩が広く普及しつつある。このような背景とともに,転移性脳腫瘍の治療方針は放射線治療を基盤とするものから,最近では集学的治療の視点から広く考察されるようになり,予後分類システム,外科的摘出術とSTI の比較,治療の伴う認知機能の低下など,さらに多くの臨床課題が検討されるようになっている。

転移性脳腫瘍の治療方針は,脳転移の数や大きさ,がん種ごとの生物学的特徴,全身状態や治療歴など多様な患者背景と,各施設で適用できる治療手段などを考慮する必要がある。個々の患者情報を整理し,またバイアスを最小とするために,複数の診療科や多職種によるカンファレンス(キャンサー・ボード)など,少なくとも脳神経外科,原発巣を担当する診療科,放射線治療科の合議による治療方針の決定が望ましい。本ガイドラインは,成人の固形がんの転移性脳腫瘍,髄膜がん腫症,頭蓋骨転移について,これらの治療方針の議論の出発点となり,より適切な判断を行うために臨床医と患者を支援するものである。なお,脊髄転移,脊椎転移,造血器腫瘍の脳転移は除いている。

転移性脳腫瘍の77~87 %は天幕上,15~25 %は天幕下に発生する 5,11,12)。血行性に転移するため,とくに小動脈にがん細胞が塞栓して転移が始まると考えられている 5)。剖検と画像診断の結果などから,単発は32~53 %,多発は47~68 %と報告されている 4,5,11,12)。転移の個数が治療成績に影響することから,治療戦略を検討する研究では転移の個数が重要な因子となり,転移の個数によって対象を限定して研究が実施されてきた。少数個では,1990 年のPatchell らのランダム化比較試験から始まり,それ以降もエビデンスレベルが高い研究が単発で4 件,1~3 個で2 件,1~4 個で1 件報告されている 13-19)。一方,多数個の転移については,後方視的な研究が多い。また,STI を受けた患者の追跡調査によると,単発では13 %,2~3 個では34 %,4~5 個では100 %に新規病変が出現したという報告がある 20)。また,定位手術的照射(stereotactic radiosurgery:SRS)で治療された117 例の前方視的研究では,新規病変が出現するまでの中央値は転移の個数が1~2 個では14.3 カ月,3 個以上では4.3 カ月であったと報告されている 21)。ただし,これらの研究では,画像診断による個数の評価の限界 22),個数の評価にCT のみも容認する場合があるなどさまざまな条件下で実施されていること,またそれらの条件に変遷があることに注意が必要である。

本ガイドラインでは,治療方針の検討にあたっては単発と多発と二分するよりも,単発,少数個,多発個の3 群に分けたうえでエビデンスを整理することが妥当と考えた。最近の臨床研究の傾向も踏まえ,1~2 個の間,および4~5 個の間に暫定的な2 カ所の境界を採用し,表1 のマトリックスに示される推奨を解説する。

表1 本ガイドラインで採用した転移の個数による各治療法の推奨グレード

2.神経学的機能障害および症状と生命予後への影響

転移性脳腫瘍や髄膜がん腫症によって出現する神経学的障害には,巣症状,てんかん発作,頭蓋内圧亢進症状,高次機能障害と精神症状がある。髄膜がん腫症では,これらに加えて髄膜刺激症状,脳神経症状,肩/後頸部/背部痛,頭痛を呈する。これらはいずれも患者の一般状態(performance status:PS)を著しく低下させる。一般に,転移性脳腫瘍や髄膜がん腫症は,診断後の生存期間中央値はおよそ3 カ月程度である 23,24)

このように転移性脳腫瘍や髄膜がん腫症は,神経学的機能障害による全人的機能の低下,ときに原発巣に対する治療の中断を余儀なくさせるため,他の臓器への転移とは異なる対応が必要である 25)。原発巣および脳病変以外の遠隔転移に対する治療の必要性と切迫性,転移性脳腫瘍を除いた状況を仮定して予想される余命,転移性脳腫瘍による神経症状のQOL への影響と進行の予測,重要臓器の機能障害などについて,速やかな情報収集とともに,原発巣を担当する診療科との協議が必須である。これらの総合的な検討をもとに,転移性脳腫瘍による生命予後への影響がそれ以外による影響と比較して同等以上であれば,原則として転移性脳腫瘍の治療が優先する。これは,転移性脳腫瘍の治療が,人格の保護,不可逆的な脳機能障害の回避,PS の改善につながることを前提としているからに他ならない。転移性脳腫瘍を持つ患者の死因は,中枢神経死,他臓器病変の進行,または治療関連死に分けられる。したがって,転移性脳腫瘍に対する治療の重要な目的は,中枢神経死と神経学的機能障害を減らすあるいは遅らせることである。臨床研究においてはこれらを評価項目とすべきであるが,実際の臨床では中枢神経死と他臓器病変の進行による死亡を鑑別することはしばしば困難である。

3.原発巣の違いによる病態の差異
(1)転移性脳腫瘍の頻度

転移性脳腫瘍の半数は肺がんから,二番目に乳がんから発生するとされる。がん種別には,小細胞肺癌の40 %以上,非小細胞肺癌の17~25 %,乳がんの1.4~5 %の患者に転移性脳腫瘍を認める 1)。また,悪性黒色腫から発生する転移性脳腫瘍の頻度も高く,進行例では30 %以上と報告されている 26)。臨床的には単発は前立腺がん,消化器がん,腎細胞がんに多く,多発は小細胞肺癌,乳がん,悪性黒色腫,非小細胞肺癌の順に多く発見される 12)。がんの既往を持たない患者に症候性の転移性脳腫瘍が発見される頻度は5~40 %までさまざまであり,転移性腫瘍の3~15 %では,詳細な全身検索を実施しても原発巣が不明であったと報告されている 12)

転移性脳腫瘍発生のリスク因子は,原発巣によって異なる。肺がんでは小細胞肺癌,乳がんではサブタイプの一つであるトリプルネガティブ乳がん(ホルモン受容体およびHER2 がともに陰性),悪性黒色腫では頭頸部発生と原発部の潰瘍形成が有意なリスク因子とされ,これらについては全身的には進行がんではなくとも脳転移が発生することがある 5,27-29)〔註釈:乳がんのサブタイプとは,エストロゲン受容体(estrogen receptor:ER)とプロゲステロン受容体(progesterone receptor:PgR),HER2,Ki-67 などによって定義された分類である〕。

転移性脳腫瘍による症状は,がん種や組織型による違いよりも,転移部位と周囲の脳浮腫の程度に依存する。肺がん,悪性黒色腫,乳がん,腎細胞がん,甲状腺がん,絨毛がん,肝細胞がんは,脳内出血をきたしやすく卒中様の発症もみられる 30,31)

(2)髄膜がん腫症の頻度

髄膜がん腫症は,がん細胞が軟膜やくも膜に広がりをもって浸潤あるいは播種をきたした病態であり,がん患者の4~15 %に発生するとされ,最近は増加傾向にある 32)。患者数では,肺がんと乳がんが多くを占めており,次に欧米では悪性黒色腫が多く,日本では消化器がんが多い 32,33)。がん種別の発生では,悪性黒色腫からが最も頻度が高い。髄膜がん腫症を発症してからの生存期間は乳がんが最も長く,悪性黒色腫が最も短い 34)。髄膜への転移は血行性,リンパ行性,あるいは直接的に波及して浸潤する。転移性脳腫瘍の治療中に髄膜がん腫症を発症することがあり,悪性黒色腫や後頭蓋窩の転移の場合に多いとされる 35)

(3)治療の概要とがん種別の感受性
①腫瘍摘出術

術前画像診断や術中モニタリングの発達,低侵襲手術の普及によって,腫瘍摘出術が原因となる死亡は減少している。ただし,腫瘍摘出術の成績をがん種別に比較した報告はない。ピースミールの摘出法は,一括切除(en-block 摘出)またはSRS と比較して,術後の髄膜がん腫症が多い 35,36)。悪性黒色腫,肺がん,乳がんでは術後に播種を起こしやすく,特に悪性黒色腫は術後早期に播種をきたす危険性が高い 35)

②放射線治療

STI が発達したことによって,手術侵襲を避け,短期間で完遂する放射線治療が普及した。歴史的には,全脳照射は50 年以上にわたって中心的治療であり,エビデンスレベルの高い研究も多い。全脳照射の適応は,腫瘍摘出術またはSTI の適応がない場合,腫瘍摘出術またはSTI 治療後の補助治療(アジュバント),5 個以上の多発腫瘍の場合などである。副作用は数週間程度で発症する急性反応,1~6 カ月の早期反応,6 カ月以降の晩期障害に分けられ,長期の経過観察では白質障害が50~90 %に出現するという報告がある 37)。この白質障害がすべて認知機能障害,QOL の低下と結びつくわけではないが,海馬に従属する認知機能障害の他に,脳組織の炎症による認知機能の障害とその予防法に関する知見が蓄積されつつある 38)。また,転移性脳腫瘍患者の認知機能障害には多数の因子が関与しており,腫瘍,治療(放射線,抗がん薬,抗てんかん薬など),患者(年齢・糖尿病の合併など)の条件に影響される 39)。Meyers らは,ランダム化比較試験のsecondary endpoint としての解析により,認知機能の低下は転移性脳腫瘍の大きさに比例するとした 40)。また,別のランダム化比較試験のsecondary endpoint の報告では,被検者の減少により12 カ月までの分析に留まるが,腫瘍摘出術またはSRS 後に補助療法として全脳照射を受けた群では複数の健康関連QOL 指標の一時的な低下が認められている 41)。このように転移性脳腫瘍の患者の認知機能障害・QOL に関する研究は,生命予後や全身状態による制約を受ける。

放射線壊死はSRS 後の数カ月~3 年間に7~50 %に出現すると報告されている 42)。臨床的に問題となる症例は1~6 %とされ,一般にはステロイドの投与が行われるが,外科的治療が必要になる場合もある 42-44)。放射線感受性は腎細胞がん,悪性黒色腫,肉腫では低く,小細胞肺癌,胚細胞腫では高い,その他のがん種は中間と考えられている(表245,46)。なお,放射線感受性が低いがん種に対しても,STI が有効な場合がある 45)。予防的全脳照射の有効性が証明されているのは小細胞肺癌のみである 47)

表2 がん腫による放射線感受性

③薬物療法

一般に中枢神経系は血液脳関門によって守られているため,水溶性薬剤や分子量の大きい抗体薬などはこれを通過しにくい。また,転移性脳腫瘍そのものによる薬剤耐性も重要な問題である 48)。しかし,分子標的治療薬の開発をはじめとして,がんの全身薬物療法が急速に進歩しているなか,転移性脳腫瘍を対象とする新たな薬物療法への期待も高い。中枢神経症状の有無,それぞれの腫瘍の薬物療法への感受性,薬剤の血液脳関門通過性などを総合的に判断し,有効な治療法の一つとして選択される機会が増えている 48)。一方,全身投与された薬物による中枢神経毒性については,放射線障害と同様に急性期および慢性期の障害がそれぞれ認識されており,病態とリスク因子の研究が行われている 49)

④ベストサポーティブケア

腫瘍摘出術,放射線治療,薬物療法は,ある程度のリスクを受け入れながら積極的な治療的介入を行うことにより,根治,延命,症状緩和や機能の改善を目指すものである。これに対して,ベストサポーティブケア(best supportive care:BSC)では,病変に対する直接の治療は終了して,症状緩和と看取りなどにケアと支援の重点を置く。ときに患者の家族もBSC の対象となる。キャンサーボードなどで原発巣と中枢神経系の病変,全身状態を正確に評価したうえで,積極的治療のリスクが期待される効果を上回ると判断される場合,中枢神経の病態がすでに不可逆的で重篤な状態であると判断される場合,また患者自身の希望も考慮して選択される。神経学的症状の緩和方法には,ステロイド薬や抗てんかん薬などの投薬,多職種による神経学機能障害の援助が含まれる 25)

4.リスク因子と生存期間の予測

放射線治療や外科的治療の技術革新,そして薬物療法の進歩により,転移性脳腫瘍の治療を原発巣の特性や患者の臨床的な背景に基づいて個別化すべきであるという認識が広まっている。同時に,転移性脳腫瘍の患者の予後因子は非常に多岐にわたり,単純な方針では個々の適応判断には対応できないことも認識されている。さらに,治療方針の決定には,患者の将来の生存期間,生活像,全身治療の可能性,施設ごとに選択可能な治療モダリティを十分に把握する必要がある。

このような背景をもとに,1997 年Gaspar らは,Radiation Therapy Oncology Group(RTOG)臨床試験に登録された1,200 例のデータの後方視的解析をもとに,予後因子としてrecursive partition analysis(RPA)指標を発表した 9)。その後,この指標は多数の患者群で検証され,臨床研究における層別化因子として使用されてきた(表39,50)。しかし,RTOG-RPA 指標には,原発巣による分類がない,転移の個数が考慮されていない,最近の分子標的治療薬をはじめとする全身薬物療法の進歩に対応していないという弱点があった。

表3 Recursive Partitioning Analysis(RPA)9,50)

2008 年Sperduto らにより,4 件のRTOG 臨床研究データの多変量解析の結果から,graded prognostic assessment(GPA)が発表された(表451)。これは有意なリスク因子の重要度によって点数化し,合計点グループごとに生存期間を提示する方法である。その後,GPA は転移性脳腫瘍の個数を加味し,原発巣ごとに分けた診断別指標に発展した。診断別GPA では,乳がん,肺がん(小細胞および非小細胞),消化器がん,悪性黒色腫,腎細胞がんの各疾患別に評価因子とスコアの割り付けが決められており,それぞれ生存期間を予測できる(表552)。GPA の他にも複数の予後予測スコアが提唱され,現在も検証が続けられるとともに,臨床試験の患者層別化因子として使用されている。各指標に用いられるKarnofsky performance status(KPS)については表6 を参照いただきたい。

表4 オリジナルのGraded Prognostic
Assessment(GPA)のスコア因子51)

表5 診断別GPA のスコア因子52)

表6 Karnofsky performance status(KPS)

さらに,上記の群間比較から,患者ごとの生命予後を算出する方法として,リスク因子の合計点をノモグラムでプロットし,推定余命へ換算する方式が種々提案されている 53,54)。複数のがん種を含む場合と,原発がんに特異的なノモグラムを作成する場合がある(註釈:ノモグラムとは二次元の図表であり,既知のスコアから作成した直線上の目盛りを結ぶことにより,関数計算の解を求めることができる)。

前記のRTOG-RPA とGPA は,RTOG による臨床試験の多数のデータの後方視的解析に基づいてリスク因子と生存期間を推定したものである。対象は全脳照射を受けた肺がんや乳がんの症例が多く,したがってあくまで全脳照射を前提とした臨床の参考とすべきであり,STI が普及した日本の実情とは異なる可能性を念頭に置く必要がある。また,GPA のスコアと腫瘍摘出術後の生存期間とは関連したが,3 カ月後の生存割合,合併症やPS の改善とは関連しなかったとの報告もある 55)。同様にノモグラムも後方視的に解析された評価であり,その治療体系はデータを収集した時期によって異なることにも注意が必要である。がんの全身療法や医療技術の急速な進歩を踏まえて,これらの予後予測は常に改訂されなければならない。

髄膜がん腫症にはこのような多数症例のデータを解析した指標は発表されていない。生存期間の延長に寄与する因子は,乳がんであること,PS が良好であること,原病の診断から髄膜がん腫症の診断まで1 年以上経過していること,髄注化学療法などの報告がある 33)

5.治療前評価と治療効果判定
(1)治療前画像診断

神経学的症状が急激に発生した場合,緊急の単純CT で頭蓋内出血,急性水頭症,脳ヘルニアなどの正確な状況を把握しなければならない。鑑別診断,治療適応の判断,またSTI の標的同定には,腫瘍自体の数や性質について,脳CT よりも脳MRI の感度が優れている 56)。特に後頭蓋窩病変や髄膜がん腫症では脳MRI による診断が望ましい。日本医学放射線学会/日本放射線科専門医会・医会編による「画像診断ガイドライン2013 年版」によると,造影MRI による画像診断を推奨している 57)。通常量の造影剤では不明確な症例や単発の転移では造影剤を2 倍量使用することが望ましいとされるが,他の撮像条件には規定はない。米国神経放射線学会の「MRI 画像診断ガイドライン」では,脳病変には切片厚5 mm 以下,切片間2.5 mm 以下,必要に応じてより薄いスライス厚にしてもよいとされている 58)

一方,STI の際には,頭部を固定後に,より薄いスライス厚(1~3 mm 厚)で3D 撮影を行う。SRS 単独では脳内の遠隔再発のリスクが高いことが明らかとなり,そのため可能な限り小病変を検出して治療標的とする試みがなされている。ただし,STI では腫瘍体積の合計が生命予後や局所コントロールにおける有意な因子であるものの,転移の個数は重要な因子ではないとの報告がある 59)

通常の診断用MRI 画像と高分解能MRI で高用量の造影剤を用いた画像を比較した研究では,40 %で新たに病変が発見されており,初回の病変数が多いほど新病変の頻度も高かった 22)。一方,転移性脳腫瘍の検出を目的として1.5 テスラMRI 画像を用いた136 例の前方視的研究では,造影剤の3 倍量投与は偽陽性が増加するため,すべての症例に有用ではなく,通常量の造影剤では診断が未確定の症例や単発と診断された症例に限って推奨している 60)。このように,小さい病変や造影されにくい病変は,MRI でも検出しきれない可能性を念頭に置くことが必要である。

2-[18F]-fluoro-2-deoxy-D-glucose positron emission tomography(FDG ポジトロン断層法:FDG-PET 検査)は,転移性脳腫瘍と脳とのコントラストが得られないため,転移性脳腫瘍の診断には適していない 61)。また,播種性病変を疑う症例では,造影前後のFLAIR 画像とT1 強調画像で小脳の矢状断および大脳の冠状断に注目すると,造影FLAIR で脳溝内の造影病変が明らかになる場合がある 62)

(2)治療前全身評価

原発巣がコントロールされているか,頭蓋外の重要臓器への転移の有無,その他の背景を確認するために,腫瘍マーカーを含む血液検査,循環器系検査,および一般的な身体所見による評価を行う。原発巣や他臓器への転移の評価にはFDG-PET 検査が勧められ,それが実施困難な場合には体幹部の造影CT および骨シンチグラフィーが勧められる 63)。ただし,原発巣のステージによってはFDG-PET 検査が不要とされる 63)。治療方針の決定には,転移性脳腫瘍が制御されたと仮定して,その他の臓器,全身病態の評価による予後の推定が必須である。

(3)治療効果判定

従来は生存期間と画像上の局所・脳内遠隔の制御が治療効果の判定指標とされることが多かったが,近年では神経学的症候,認知機能を含む高次機能,PS,QOL も治療効果の指標として重視される傾向にある 41)。手術摘出度の評価には,組織炎症と残存腫瘍の見極めのため,術後72 時間以内の造影検査が推奨される。CT よりも造影MRI が空間分解能において優れている 57,58)

①画像評価

局所の再発,遠隔再発,治療による浮腫などを観察するため,治療直後,1 カ月後,その後は3 カ月ごとに1 年間後まで神経学的診察とMRI 診断の継続が行われることが多いが,必要に応じて間隔を短縮する。1 年後からは,脳を含む全身の状態を参考に間隔を判断する。

効果判定にはResponse Evaluation Criteria in Solid Tumors(RECIST)評価法,WHO 評価法,Macdonald 評価法,体積測定その他が用いられてきた 64-66)。なかでもRECIST 法は,固形がんの治療効果を評価するために開発され,腫瘍医にはなじみのある評価法である。主な判定基準は,完全奏効(complete response:CR)=画像上で全標的病変の消失,部分奏効(partial response:PR)=長径の和が30 %以上減少,進行(progressive disease:PD)=最小の長径の和と比較して20 %以上増加,安定(stable disease:SD)=PR には縮小が不十分かつPD には増大が不十分である。より客観的にCR,PR を評価確定するには4 週間以上の間隔で,またSD の確定には6~8 週以上の間隔で再検査する。一方,髄膜がん腫症の画像評価は困難なことがあり,髄液所見,神経学的臨床所見を総合して判断する。

②放射線壊死の診断

STI 後の数カ月から約1 年後に出現する放射線壊死と局所再発との鑑別は重要な課題である。出現時期,神経症状,通常の造影MRI の所見などからは鑑別困難である。CT 灌流画像,MRI 灌流画像,MR スペクトロスコピー,拡散係数画像(apparent diffusion coefficient map:ADC map),単フォトン放射断層撮影装置(single photon emission computed tomography:SPECT),陽電子放射断層撮影(PET)などが用いられるが,いずれも感度と特異性をさらに向上させる必要がある 67)

③生存期間

転移性脳腫瘍の診断後から,死亡までの生存期間をデータとすることが多い。前述のように,中枢神経死と他臓器障害による死亡とを分けることが理想であるが,がん末期の場合には,その鑑別はしばしば困難である。

文献検索

1990 年から2013 年7 月時点までの,MEDLINE,The Cochrane Library にて渉猟しえた,転移性脳腫瘍に関する論文の中で,各臨床的疑問(clinical question:CQ)に対してエビデンスのある,または臨床上重要な情報を提供すると考えられた論文を抽出した。

検索語:転移性脳腫瘍(brain metastasis),転移性頭蓋骨腫瘍(skull metastasis),髄膜がん腫症(leptomeningeal metastasis,neoplastic meningitis,leptomeningeal dissemination とも称され,特に固形がんではleptomeningeal carcinomatosis,meningeal carcinomatossis,carcinomatous meningitis とも呼ばれる),化学療法(chemotherapy),放射線治療(radiation therapy,irradiation,radiotherapy),外科治療(surgery,surgical)。治療関連EBM フィルターで絞り込みを行った。

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CQ1-a
単発あるいは少数個の転移性脳腫瘍の治療はどう選択するのか?

推奨1
推奨グレードB
全脳照射を行う。
推奨2
推奨グレードB・C1
KPS の良い症例で全摘出可能な腫瘍では腫瘍摘出術+全脳照射を行う。
 ・単発の場合(推奨グレードB)
 ・少数個の場合(推奨グレードC1)
推奨3
推奨グレードB・C1
3 cm 以下の腫瘍に対しては全脳照射に加えて定位放射線照射(STI)を行う。
 ・単発の場合(推奨グレードB)
 ・少数個の場合(推奨グレードC1)
推奨4
推奨グレードC1
薬物療法に高感受性とされる腫瘍(小細胞肺癌など)を除き,厳重なフォローアップを前提にSTI 単独治療を行ってもよい。
推奨5
推奨グレードC1
腫瘍の薬物療法感受性によっては薬物療法を行ってもよい。(本章CQ2 参照)
推奨6
推奨グレードC1
機能予後あるいは生命予後の改善が期待される場合には摘出術を行ってもよい。

CQ1-b
多数個の転移性脳腫瘍の治療はどう選択するのか?

推奨1
推奨グレードA
全脳照射を行う。
推奨2
推奨グレードC1
全脳照射にSTI を加えても良い。
推奨3
推奨グレードC1
腫瘍の薬物療法感受性によっては薬物療法を行ってもよい。(本章CQ2 参照)
推奨4
推奨グレードC1
機能予後あるいは生命予後の改善が期待される場合には腫瘍摘出術を行ってもよい。

解説

定位放射線照射(STI)の普及に伴い,転移性脳腫瘍の臨床研究は,単発もしくは少数個(2~4 個)と多数個(5 個以上)に分けて行われるようになった。しかしながら,MRI 撮像方法(スライス厚,造影剤の使用量)によって,転移個数の判定が異なる場合がある点に注意が必要である。

転移性脳腫瘍の治療において全脳照射は歴史的に標準治療として確立されたものである。2000 年代前半までは,主に全脳照射に腫瘍摘出術やSTI などの局所照射を加える意義を検証するという観点でランダム化比較試験が行われてきた 1-4)(いずれもレベルⅠb)。2006 年に日本から4 個以下(3 cm 以下)で全身状態が良好な症例を対象としたSTI 単独治療とSTI+全脳照射の併用治療のランダム化比較試験が報告され,全脳照射を加えなくても生存期間に差は認めないことが証明された5)(レベルⅠb)。一方,STI が行われた場合には,局所の腫瘍制御率や頭蓋内の遠隔部再発が全脳照射を省くことで有意に上昇することも示された。さらに,2011 年にはEORTC から,局所治療としてSTI だけではなく完全腫瘍摘出術が行われた症例も加えた3 個以下の脳転移を対象とする同様なデザインの研究結果が報告されており,その結果も日本で行われたものと同様であり,局所治療後の全脳照射の追加による生存期間の延長は認められていない 6)(レベルⅠb)

全脳照射を省くことの患者のQOL や認知機能に与える影響については一定の見解は出されていない。日本とEORTC の研究では,KPS を指標としたQOL を維持する期間には差がなかった 5,6)(いずれもレベルⅠb)。認知機能については,4 カ月の時点での記銘力が全脳照射群で有意に低下したとする報告と,逆に照射後2 年頃までは全脳照射による腫瘍再発予防効果によって認知機能が維持されるとする報告がある 7,8)(いずれもレベルⅠb)。これは腫瘍制御率と認知機能温存率の相関性を示した別の報告からも理解される 9)(レベルⅠb)。前述のEORTC の研究では,自己記入式QOL 調査において,わずかではあるが全脳照射群の方が低下する傾向にあることが示された。ただし,認知機能検査や自己記入式QOL 調査は欠測例が多いことから,転移性脳腫瘍の研究のendpoint としては現時点において確立されたものではない点に注意する必要がある。

これらのことを踏まえ,以下にこれまで論文報告されたランダム化比較試験の結果をもとに各治療法を概説する。なお,以下の研究はいずれも放射線治療の感受性が小細胞肺癌や悪性リンパ腫,胚細胞腫瘍からの脳転移,また小児例が除外された研究である点にも注意されたい。

1.単数あるいは少数(2~4 個)の転移性脳腫瘍
(1)全脳照射単独群と腫瘍摘出術+全脳照射群の比較

単発の転移性脳腫瘍を対象とした全脳照射単独群と腫瘍摘出術+全脳照射群のランダム化比較試験は3 つある。

1990 年にPatchell らは,KPS 70 以上の48 例に対して全脳照射単独群(36 Gy/12 分割)と腫瘍摘出術+全脳照射群の比較試験を行った 1)(レベルⅠb)。その結果,生存期間中央値は腫瘍摘出術+全脳照射群の40 週に対して全脳照射単独群では15 週であり,腫瘍摘出術+全脳照射群で有意に生存期間中央値の延長を認めた。また,局所再発割合は全脳照射単独群の52 %に対して腫瘍摘出術+全脳照射群では20 %と優れており,治療後のKPS も腫瘍摘出術+全脳照射群で優っていた。

続いて,1993 年にVecht らも,WHO スケール2(日中の50 %以上離床している)よりも状態の良い63 例を対象とする全脳照射単独群と腫瘍摘出術+全脳照射群の試験結果を報告した 2)(レベルⅠb)。その結果,生存期間中央値は全脳照射単独群の6 カ月に対して腫瘍摘出術+全脳照射群では10 カ月であり,腫瘍摘出術+全脳照射群が生存期間で有意に上回っていた。また,原発巣がコントロールされている場合の腫瘍摘出術+全脳照射群の生存期間は12カ月であることから,腫瘍摘出術を加えることの有効性は原発巣がコントロールされている場合にとくに顕著であった。

これに対して,1996 年に米国のMintz らはKPS 50 以上の84 例を対象とした同様の試験を報告した 3)(レベルⅠb)。生存期間中央値は全脳照射単独群6.3 カ月,腫瘍摘出術+全脳照射群5.6 カ月であり,生存期間の延長は示されなかった。その理由として,対象集団のKPS が低かったこと,原発巣がコントロールされていない患者が多く含まれていたために頭蓋外病変が重要な予後因子であったことが考えられている。

(2)腫瘍摘出術単独群と腫瘍摘出術+全脳照射群の比較

単発の転移性脳腫瘍を対象とした腫瘍摘出術単独群と腫瘍摘出術+全脳照射群のランダム化比較試験は2 つある。

1998 年にPatchell らは腫瘍摘出術単独群と腫瘍摘出術+全脳照射群(50.4 Gy/28 分割)を比較した95例の試験結果を報告している 10)(レベルⅠb)。全生存期間に有意差は認められなかったが,脳内の局所再発率が腫瘍摘出術+全脳照射群の18 %に対して,腫瘍摘出術単独群では70 %と有意に多かった。

また,2011 年に報告されたEORTC22952-26001 試験では,1~3 個の転移性脳腫瘍を有する症例を対象に,STI 単独群もしくは腫瘍摘出術単独群に対して,それらに全脳照射を追加した群の比較を行っている 6)(レベルⅠb)。全体347 例のうち 279 例(81 %)は単発の転移性脳腫瘍であった。その結果,STI 単独群もしくは腫瘍摘出術単独群と比較して,全脳照射の追加により術後2 年時の局所再発率は59 %から27 %,新規病変の出現は42 %から23 %にいずれも有意に減少していた。しかしながら,全脳照射の追加による全生存期間の延長効果は認められなかった。また,試験登録時の転移個数別のサブグループ解析は示されていない。2013 年に本試験のhealth-related quality of life(HRQOL)に関する研究結果が報告されており,STI 単独群もしくは腫瘍摘出術単独群と比較して,それらに全脳照射を追加した群ではHRQOL の複数の指標で一時的な低下が認められていた 11)(レベルⅠb)

単施設の後方視的研究ではあるが,Bindal らが3 個までの転移性脳腫瘍の全摘出術を受けた患者と,リスク因子を対応させた単発の転移性脳腫瘍の患者をそれぞれ26 例抽出して比較した 12)(レベルⅢ)。全例で摘出術後に全脳照射(30 Gy/10 分割)が行われていた。全症例の46 %が悪性黒色腫であった点に注意が必要であるが,生存期間と局所コントロールには有意差がなかった。

(3)全脳照射単独群とSTI+全脳照射併用群の比較

少数個の転移性脳腫瘍を対象とした全脳照射単独群とSTI+全脳照射併用群のランダム化比較試験は2 つある。そのうち1 つは患者集積が不良であり結論を得るに至らなかった。

RTOG によって行われた研究(RTOG9508)では,総登録数331 例のうち,186 例(56 %)が単発性であった。全331 例を用いた両治療群間の生存期間に有意差は認めなかったが,単発のみを扱ったサブグループ解析において,生存期間中央値は全脳照射単独群とSTI+全脳照射併用群でそれぞれ4.9 カ月,6.5 カ月であり,STI+全脳照射併用群で有意に良好であった 13)(レベルⅠb)

(4)STI 単独群とSTI+全脳照射併用群の比較

単発もしくは少数個の転移性脳腫瘍を対象としたSTI 単独群とSTI+全脳照射併用群を比較したランダム化比較試験は3 つある。

このうち4 個以下の転移性脳腫瘍を対象として日本で行われた研究(JROSG99-1)では,総登録数132 例のうち単発の転移性脳腫瘍は68 例であったが,単発例のみのサブグループ解析は行われていない 5)(レベルⅠb)。全体の生存期間はSTI 単独群で 8.0 カ月,STI+全脳照射併用群で7.5 カ月であり有意差は認められなかった。

前述のEORTC22952-26001 試験では,脳腫瘍摘出術もしくはSTI ののち,全脳照射と経過観察が比較されている 6)(レベルⅠb)。単発の転移性脳腫瘍のみのサブグループ解析は示されていないが,局所治療(脳腫瘍摘出術もしくはSTI)のみの群とそれに全脳照射を加えた群の生存期間中央値はそれぞれ10.7 カ月と10.9 カ月であり,やはり両群間に有意差を認めなかった。しかし,転移性脳腫瘍が死因となった割合は局所治療のみの群では44 %であり,全脳照射併用群の28 %よりも有意に高かった。

一方,MD Anderson Cancer Center で行われた試験は3 個以下の転移性脳腫瘍を対象としており,総登録数58 例のうち単発の転移性脳腫瘍は33 例であった。しかし,STI+全脳照射併用群で認知機能低下が認められたため途中で中止となっており,単発例のみの解析も行われていない 7)(レベルⅠb)

また,頭蓋内の腫瘍制御については,3 つの試験すべてにおいて,STI(あるいは腫瘍摘出術)を行った局所および頭蓋内遠隔部再発が全脳照射併用群で有意に優れていたと報告されている。これらの結果から厳重なフォローアップが行える場合には,STI 単独治療を行ってもよいと結論づけられる。

(5)STI 単独群と腫瘍摘出術+全脳照射群の比較

2008 年にMuacevic らが報告したSTI 単独群と腫瘍摘出術+全脳照射群のランダム化比較試験は,患者登録が進まず途中で中止となっている 14)(レベルⅠb)。STI 単独群31 例と腫瘍摘出術+全脳照射群33 例の解析では,生存期間,中枢神経病変による死亡に差は認められなかった。STI は低侵襲であり治療期間も短いこと,局所制御率も高いことから,遠隔部の再発に対する救済的なSTI の効果についてさらに評価が必要としている。

(6)STI+全脳照射併用群と腫瘍摘出術+全脳照射群の比較

STI+全脳照射併用群と腫瘍摘出術+全脳照射群のランダム化比較試験については,2011 年にRoos らより報告されているが,この試験も患者登録が進まず途中で中止となっている 15)(レベルⅠb)。一方,後方視的研究では,STI+全脳照射併用群と腫瘍摘出術+全脳照射群に生存期間の差が認められていない。Rades らは,1~3 個の転移性脳腫瘍に対して52 例ずつのマッチドペア分析を報告している。その結果,単変量解析ではSTI+全脳照射併用群が1 年後の生存割合,頭蓋内および局所の制御割合において腫瘍摘出術+全脳照射群よりも優れていたが,多変量解析では生存割合に有意差は認められなかった 16)(レベルⅢ)

このほかにも,腫瘍摘出術+全脳照射群と腫瘍摘出術+STI 群のランダム化比較試験が日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)で進行中である(JCOG0504)。

2.多数個の転移性脳腫瘍

多発性の転移性脳腫瘍に対する標準治療は歴史的に全脳照射である。放射線治療と対症療法(ステロイド内服)を比較したランダム化比較試験は,1971 年のHorton らの報告のみである 17)(レベルⅠb)。本試験の結果,対症療法(ステロイド内服)のみの群と全脳照射群の生存期間中央値はそれぞれ10 週と14 週であった。これ以降,標準治療を全脳照射と据えてさまざまな臨床試験が行われてきた。

全脳照射のスケジュールが治療成績に及ぼす影響については,複数のランダム化比較試験で検討されてきた。それらのスケジュールには,20 Gy/4~5 分割,30 Gy/15 分割,30 Gy/10分割,40 Gy/20分割などが含まれる 4,18-21)(いずれもレベルⅠb)。スケジュール間で生存期間の有意差は示されていないが,頭蓋内腫瘍制御は20 Gy/4~5 分割と40 Gy/20 分割を比較した2つのランダム化比較試験において40 Gy/20分割が有意に優れていた 4,18)(いずれもレベルⅠb)。神経機能障害については,加速過分割54.4 Gy/34 分割と30 Gy/10 分割では差はなかったと報告されている 22)(レベルⅠb)

4 または5 個以上の転移性脳腫瘍を対象として腫瘍摘出術の意義を検証した研究は報告されておらず,単施設の後方視的研究が数件報告されているのみである。単発・多発の転移性脳腫瘍に対する腫瘍摘出術の効果を後方視的に検討したPaek らの報告では,多発転移か単発転移であるかは手術後の生存期間に有意な影響を与えず,RPA クラスⅠ のみが有意な因子であった 23)(レベルⅢ)。この研究では,76 例が多発の転移性脳腫瘍であったが転移個数は記載されていない。また,Iwadate らの単発・多発の転移性脳腫瘍138 例の解析では,全摘・亜全摘以上の症例において単発転移と多発転移の間に生存期間の有意差は認められなかった 24)(レベルⅢ)

最近,一部の施設では5 個以上の多発性の転移性脳腫瘍に対しても,全身状態が良好で転移病巣が小さい場合などでは,全脳照射を行わずにSTI のみが行われている 25)(レベルⅢ)

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CQ2
転移性脳腫瘍の治療において薬物療法(分子標的治療薬を含む)はどう選択するのか?

推奨1
推奨グレードA
症候性または近い将来に脳局所治療を必要とする転移性脳腫瘍では,原則として放射線治療または腫瘍摘出術を優先する。
推奨2
推奨グレードB
薬物療法に高感受性とされる腫瘍では,全身薬物療法を単独または転移性脳腫瘍への局所治療と並行して行う。
推奨3
推奨グレードC1
推奨2 に該当しない固形腫瘍では,頭蓋外に明らかながん病変があり,かつ転移性脳腫瘍による症状がない場合には,転移性脳腫瘍および頭蓋外病変への効果を期待して全身薬物療法を優先してもよい。
推奨4
推奨グレードC1
髄膜がん腫症では,それぞれの腫瘍の薬物療法感受性を根拠として全身薬物療法または抗がん薬の髄腔内投与を行ってもよい。

解説

一般に薬物療法の転移性脳腫瘍に対する局所効果は放射線治療や腫瘍摘出術と比較して劣るため,症状を有する転移性脳腫瘍では原則として放射線治療または腫瘍摘出術を優先する。

がん薬物療法の進歩による予後の改善とともに,転移性脳腫瘍が特に無症状で発見される機会が増えている。これら転移性脳腫瘍に対する全身薬物療法の適応は,血液脳関門による薬物分布の制限を考慮しつつも,それぞれの腫瘍の薬物療法に対する感受性を根拠として判断する。特に良好な予後が期待できる場合には,全脳照射による晩期障害の回避を目的に薬物療法を優先してもよい。

1. 脳転移を有する,薬物療法に高感受性とされる腫瘍(頭蓋内原発を除く胚細胞腫瘍,絨毛がんあるいは中枢神経原発を除く悪性リンパ腫など)

転移性脳腫瘍に対しても全身薬物療法は有効な治療手段であるため,全身薬物療法を単独,または転移性脳腫瘍への局所治療と並行して行う。

中枢神経系原発を除く非ホジキンリンパ腫の中枢神経系への転移はほとんどが髄膜がん腫症である。中枢神経系への移行が良好であるメトトレキサート(methotrexate:MTX)の高用量全身投与(3 g/m2以上)を含む薬物療法を行う。髄膜がん腫症では抗がん薬の髄腔内投与を考慮するが,MTX やシタラビンが使用される。脳転移または髄膜がん腫症を有する20 例の後方視的検討では,高用量MTX とイホスファミドの全身投与により12 例の完全奏効(CR)と 6例の部分奏効を認めた 1)(レベルⅢ)。中枢神経病変に対するリツキシマブの全身投与の意義は明らかではない。

非ホジキンリンパ腫のうち,特に中枢神経再発のリスクが高い場合には,予防的に高用量MTX の全身投与または抗がん薬の髄腔内投与を行う。標準治療であるR-CHOP(抗CD20 モノクローナル抗体リツキシマブ,シクロホスファミド,ビンクリスチン,ドキソルビシン,プレドニゾロン)に高用量MTX を併用した65 例の後方視的解析によると,中枢神経系の再発は2 例(3 %)に認めた 2)(レベルⅢ)。また,全身薬物療法によりCR が得られた68 例のうち,髄腔内投与を行わなかった39 例では中枢神経系の再発を6 例(15 %)に認めたが,予防的にMTX とヒドロコルチゾンの髄腔内投与を行った29 例では中枢神経系の再発を認めなかった 3)(レベルⅡa)

頭蓋内原発を除く胚細胞腫瘍の転移性脳腫瘍患者では,全身薬物療法を初回治療として単独,または脳局所の放射線治療もしくは腫瘍摘出術と併用して行う 4)(レベルⅢ)。薬物療法未実施の小細胞肺癌の転移性脳腫瘍患者では,転移性脳腫瘍に対する腫瘍縮小効果は頭蓋外病変と同等という報告と頭蓋外病変と比較して低いという報告がある 5)(レベルⅢ)

2.無症状の脳転移を有する,薬物療法に高感受性とはされない固形腫瘍

頭蓋外に明らかながん病変があり,かつ転移性脳腫瘍による症状がない,または近い将来において脳局所治療を必要としない場合には,それぞれの腫瘍の薬物療法に対する感受性を根拠として全身薬物療法を行ってもよい。全身薬物療法によって転移性脳腫瘍および頭蓋外病変への効果が期待できるため,頭蓋外病変のコントロールによる予後の改善,全脳照射を遅らせることによる晩期障害の回避が期待できる可能性がある。髄膜がん腫症に対するMTX の髄腔内投与の有用性は十分には確立されておらず,血液毒性や薬剤性白質脳症などの副作用が問題になる。乳がん,肺がん,悪性リンパ腫を含む髄膜がん腫症52 例に対してMTX またはチオテパ(国内販売中止)の髄腔内投与を比較した試験では,16 例(31 %)で髄液細胞診は陰性となったが,いずれにおいても神経症状の改善は得られず,39 例(75 %)は 8週以内に神経症状が増悪した 6)(レベルⅠb)

乳がんの転移性脳腫瘍患者または髄膜がん腫症に対して,経口フッ化ピリミジン薬であるカペシタビンの有効性を示す症例報告がある 7)(レベルⅣ)。ヒト上皮成長因子受容体HER2/neu 陽性乳がんでは,抗HER2 モノクローナル抗体であるトラスツズマブによる予後の改善と,トラスツズマブの脳内移行が血液脳関門のために不良であることから,これらの結果として転移性脳腫瘍をきたす症例が増加している。脳転移による症状がないHER2 陽性乳がんの転移性脳腫瘍患者では,HER2 およびEGFR の2 つのチロシンキナーゼ受容体を阻害する経口の低分子化合物ラパチニブとカペシタビンの併用療法を行ってもよい。フランスで行われた第Ⅱ相試験(LANDSCAPE 試験)では,44 例のうち29 例(66 %)で転移性脳腫瘍の縮小が認められ,病勢進行までの期間中央値は5.5 カ月であった 8)(レベルⅡb)。この試験には頭痛などの軽度の神経症状を有する患者が含まれており,そのうち6 割で症状の改善を認めた。乳がんの髄膜がん腫症に対してMTX の髄腔内投与が行われることがあるが,小規模の比較試験によると全身投与のみと比較して髄腔内投与を併用する意義は認められていない 9)(レベルⅡa)

非小細胞肺癌では無症状の転移性脳腫瘍を有する患者に対する初回治療としての全身薬物療法の有用性を示す報告がある。全身薬物療法を行った群と全脳照射後に全身薬物療法を行った群を比較した試験では,薬物療法による頭蓋内外の腫瘍縮小効果はほぼ同等であり,また両群間の生存期間に差を認めなかった 10)(レベルⅠb)。また,無症状の転移性脳腫瘍を有する43 例に対して,初回治療としてシスプラチンとペメトレキセドの併用療法を行った第Ⅱ相試験では,転移性脳腫瘍の縮小を18 例(42 %)に認めた 11)(レベルⅡb)。一方,上皮成長因子受容体(EGFR)変異を有する非小細胞肺癌では,EGFR チロシンキナーゼ阻害薬ゲフィチニブやエルロチニブによる転移性脳腫瘍や髄膜がん腫症に対する効果が報告されている 12)(レベルⅠa)

腎がんでは,スニチニブを中心とするチロシンキナーゼ阻害薬など分子標的治療薬により治療効果が飛躍的に向上しており,転移性脳腫瘍を有する場合の安全性について報告されている。スニチニブの拡大アクセス(患者救済のために未承認薬の使用を認める制度)の対象となった患者の後方視的解析では,転移性脳腫瘍を有する213 例のうち26 例(12 %)に腫瘍縮小を認めた 13)(レベルⅢ)。一方,ソラフェニブの欧州における拡大アクセスの解析では,転移性脳腫瘍を有する28 例の安全性と無増悪生存期間は全体1,150 例と同等であった 14)(レベルⅢ)。アキシチニブ,mTOR阻害薬テムシロリムスやエベロリムスによる腎がんの転移性脳腫瘍に対する効果は明らかではない。

悪性黒色腫では,従来の殺細胞性抗がん薬の有効性は確立しておらず,腫瘍摘出術と放射線治療が主体である。しかし,細胞障害性T リンパ球抗原4(CTLA-4)に対するモノクローナル抗体イピリムマブ 15)(レベルⅡa),BRAF 遺伝子変異(主に V600E)を有する悪性黒色腫ではBRAF キナーゼ阻害薬ベムラフェニブやダブラフェニブの転移性脳腫瘍に対する有効性が報告されており 16,17)(それぞれレベルⅣ,Ⅲ),近い将来に治療戦略が大きく変貌すると予想される。

高分子化合物であるモノクローナル抗体薬は血液脳関門を通過しないため,通常は全身投与による転移性脳腫瘍への効果は期待できない。血管内皮細胞増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)に対するモノクローナル抗体であるベバシズマブは大腸がん,肺がん,乳がんに対して殺細胞性抗がん薬と併用で用いられるが,転移性脳腫瘍からの出血のリスクについては慎重に判断する。しかし,転移性脳腫瘍があるという理由のみで一律に投与回避する必要はなく,非小細胞肺癌では転移性脳腫瘍に対する有効性を示唆する報告がある 18,19)(それぞれレベルⅠa,Ⅱb)。

放射線増感作用を期待して,あるいは全身薬物療法として抗がん薬を放射線治療に同時併用する治療法の有用性は確立してない。非小細胞肺癌では,全脳照射とエルロチニブの併用によって中枢神経系病変に高い奏効割合が認められたという報告と,全脳照射+定位放射線照射とエルロチニブまたはテモゾロミドの併用によって副作用が増強し生存期間が短縮する傾向にあったという報告があり,日常臨床で放射線治療にエルロチニブを併用するだけの十分なエビデンスはない 20,21)(それぞれレベルⅡb,Ⅰb)。

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CQ3
再発の転移性脳腫瘍の治療はどう選択するのか?

推奨1
推奨グレードC1
全脳照射が行われていない症例に関しては全脳照射を追加するように勧められる。
推奨2
推奨グレードC1
定位放射線照射(STI)後の長径3 cm 以下の新規脳内病変にはSTI を考慮してもよい。
推奨3
推奨グレードC1
全脳照射後の長径3 cm 以下の再発にはSTI を行うよう勧められる。
推奨4
推奨グレードC1
腫瘍の種類によっては薬物療法を考慮してもよい。(本章CQ2 参照)
推奨5
推奨グレードC1
機能予後あるいは生命予後の改善が期待される場合には摘出術を考慮してもよい。

解説

1.定位放射線照射(STI)後の再発

STI 後の再発に対するSTI 再照射は,新規脳内病変(遠隔部位への再発)と局所再発に分けて考える必要がある。Hanssens らは定位手術的照射(SRS)後の患者の前方視的観察にもとづき,新規の脳内病変に対してSRSを再度行った251例について解析した 1)(レベルⅢ)。SRS 再照射後の生存期間中央値は9.6 カ月であり,新病変の出現までの中央値は7.5 カ月であった。生存期間は年齢,性別,がんの種類,全脳照射の有無とは関係がなかった。単発転移は多発転移より生存期間が長く(それぞれ16 カ月と8.3 カ月),転移数が2~4 個の患者では5 個以上の患者よりも長期に生存した(それぞれ10 カ月と5.8 カ月)。一方,局所再発の場合の再照射についての報告は少なく 2,3)(いずれもレベルⅢ),放射線性壊死との鑑別や,再照射による壊死のリスクを低減するために線量の減量や分割が必要である。

全体としてSTI による再治療後の生存期間中央値は7.5~9.6 カ月,1 年間の局所制御割合57~95 %であり,70 %以上で1 年以内に新規に脳内病変が出現する 1-3)(いずれもレベルⅢ)。KPS, RPA クラス,全身のがんの状況,多発かどうかが予後関連因子として報告されている。このようにSTI は再発時の治療としての高いエビデンスはないものの,比較的低いリスクで有効な治療効果が得られること,全脳照射を回避できることから腫瘍径が小さい新規の脳内病変には考慮すべき治療である。どのような症例が局所再発時にサルベージのSTI の適応になるかについては今後症例の蓄積が必要であるが,当面は全脳照射や腫瘍摘出術などが治療として適当ではない比較的小さい病変に限られるべきであろう。

STI 後の再発はしばしば全脳照射で治療される。初回治療としてSTI 単独での治療群と全脳照射を加えた群とを比較した臨床研究では,STI 単独群の70 %以上で1 年以内に脳内再発を認め,その約1/3 に全脳照射が行われている 4,5)(いずれもレベルⅠb)。Sneed らの多施設共同試験でもSRS 単独での治療を受けた患者268 例中98 例に救済治療が行われ,そのうち63 例は全脳照射を含んだ治療を受けている 6)(レベルⅢ)。このように全脳照射は比較的高頻度に行われているにもかかわらず,その治療成績の記載は少ない。前述のHanssens らの研究ではSTI 後の再発に対してサルベージの全脳照射を行った75 例の平均生存は3.8 カ月にすぎなかったと述べられているが,対象がより状態の悪い患者に偏っていた可能性があるとしている。

STI 後のサルベージの全脳照射の治療成績や有害事象については不明な点が多く,再発時に全脳照射で治療するかSTI で再治療するかの明確な指針はない。全脳照射がよいと考えられる場合としては,腫瘍の数が多いか腫瘍体積が大きい場合,または髄腔内播種を伴う場合である。さらに患者の年齢と期待できる余命なども勘案して決めるべきである。STI の良い適応でそれが比較的容易に実施できる施設ではSTI が好まれる傾向にある。局所再発の場合には腫瘍摘出術も考慮する必要がある(後述)。一般に薬物療法の転移性脳腫瘍に対する局所効果は放射線治療や腫瘍摘出術と比較して劣るため,症状を有する転移性脳腫瘍では原則として放射線治療または腫瘍摘出術を優先する。

2.全脳照射後の再発

全脳照射後の再発時のSTI については,多数の症例報告によりその有効性が示されており,生存中央値7.8~10.0 カ月,1 年の局所制御率57~91.3 %,1 年での遠隔転移出現率14~58 %と報告されている 7-12)(いずれもレベルⅢ)。SRS では線量の減量が必要であり,腫瘍径20 mm 以下で24 Gy,21~30 mm で18 Gy,31~40 mm で15 Gy が推奨されている(RTOG90-05)13)(レベルⅡb)。Cabello らは多施設共同研究で全脳照射併用治療後の再発にSRS(15~20 Gy)を行った310 例の結果から,がん種により予後因子が異なることを報告した 7)(レベルⅢ)。乳がんでは年齢(50 歳未満),腫瘍の合計の大きさ,全脳照射からSRS までの期間が有意に生存期間と関係した。非小細胞肺癌では転移の数,KPS(>60),原発巣のコントロールが関係し,悪性黒色腫では腫瘍体積の合計が関係した。STI からの生存期間中央値は全体で8.4 カ月であり,単発の場合では多発より長かったが,多発の場合は個数とは関係がなかった。これら以外に,乳がんではHER2 陽性患者の予後が良いことが報告されている 10)(レベルⅢ)。以上の結果より,全脳照射後の 3 cm 以下の再発に関してはSTI による治療が推奨され,がん種により違いはあるがKPS 70 以上で全身のコントロールができており,転移の数が少数あるいは腫瘍体積の合計が小さいものが良い適応と考えられる。

全脳照射後の再発時の全脳再照射の有効性については議論が分かれている。一般に,再照射からの生存中央値は2~5.2 カ月と短い 14-18)(いずれもレベルⅢ)。放射線治療の追加による合併症が問題になるが,10~30 Gy の照射では比較的少なく症状の改善が期待できるため,有用性とする意見も多い 14,16-18)(いずれもレベルⅢ)。Son らの報告では,全脳照射を行った380 例のうちSTI の対象とならない多数の再発を有する患者17 例に再照射を行い,そのうち 80 %では症状が改善している 17)(レベルⅢ)。生存中央値は全体で 5.2 カ月であり,全身コントロールが良好な患者では19.8 カ月,良好ではない患者では2.5 カ月であった。合併症は軽微であり,症例を選択したうえでの再照射は有効であると結論している。なお,これらの症例には小細胞肺癌が6 例含まれており,悪性黒色腫のような放射線抵抗性の腫瘍は含まれていない点に注意が必要である。

一方,Hazuka らは全脳照射後の転移性脳腫瘍455 例のうち44 例に全脳再照射を行ったが,有効例は稀であったと報告している 15)(レベルⅢ)。1 例は再治療から 1 年以上生存したが,全体の生存期間中央値は8 週であり,症状の改善も27 %で認められたにすぎなかった。放射線壊死は剖検を行った8 例中3 例で認められており,そのうち2 例では死亡原因と推定されている。Akiba らの報告では奏効割合(完全奏効+部分奏効)は55 %であったが,認知機能障害が32 %に認められている 14)(レベルⅢ)。全脳再照射は,STI などの他の方法の適応とならない患者において一時的な改善を得るための姑息的治療としては有用かもしれない。しかし,放射線壊死,認知機能障害,下垂体機能低下等の合併症のリスクがあるため,年齢,全身の状態,腫瘍の放射線感受性などを含めて考慮する必要がある。

3.腫瘍摘出術

再発の転移性脳腫瘍に対する大規模な研究やエビデンスの高い報告はない。Kano らはSRS 後の再発58 例に腫瘍摘出術を行い,生存中央値は7.7 カ月であったと報告している 19)(レベルⅢ)。このうち術後6,12,24 カ月後の生存はそれぞれ65,30,16 %,局所制御割合はそれぞれ71,62,43 %であった。単変量解析ではRPA クラス,KPS,全身のがんの状態,STI からの期間が生存に関連した。病理学的には55 %が腫瘍の再発,残りが再発と放射線壊死の混合であった。腫瘍摘出術による死亡率は1.7 %であり,重篤な合併症を6.9 %に認めた。KPS 中央値は術前80,術後1 カ月では90 であった。SRS から腫瘍摘出術までの期間は悪性黒色腫で短く,乳がんでは長い傾向があったが,がん種による全生存期間に差は認めなかった。STI 後の再増大病変には放射線壊死の場合があり,多くの場合これらの術前診断は困難である 20)(レベルⅢ)。放射線壊死の場合は,一般的に摘出後の治療成績は良好である 20,21)(いずれもレベルⅢ)。

Bindal らは初回治療として腫瘍摘出術を受けた後に再発した48 例(うち31 例は初回治療として全脳照射も併用)に対して再手術を行い,生存中央値は11.5 カ月であったと報告している 22)(レベルⅢ)。全身のがんの広がり,4 カ月未満の再発,40 歳以上,乳がん,悪性黒色腫が予後不良因子であった。術後死亡はなく,5 例で一過性の神経症状の悪化を認めたが,いずれも30 日以内に回復している。KPS は33 例に改善を認めており,11 例では不変であった。

全体としてKPS やRPA クラス,全身のコントロールが良好であることが予後因子として重要であり,さらに前治療からの期間が関連するという報告もある 19,20,23,24)(いずれもレベルⅢ)。年齢や組織型に関しては一致がみられない。また,再手術後の生存中央値は10 カ月前後である 19-25)(いずれもレベルⅢ)。術後死亡は1~2 %前後,KPSは改善または不変であったという報告がある 21-25)(いずれもレベルⅢ)。術後合併症の発生率は初回手術と大きく変わらず,軽度のものを含めて20 %前後である。神経学的な悪化は0~6.9 %と報告されており,運動野,言語野などの症候発現域で高い。

このように,STI 後の局所症候性進行病変やSTI の適応とならない再発病変では,KPS が70 以上で原発巣がコントロールされている場合には脳内の他病変の有無を考慮しながら摘出術を行うことで生命予後が改善する可能性があり,しばしばQOL の改善も期待できる。

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CQ4
髄膜がん腫症に対する治療はどう選択するのか?

推奨1
推奨グレードC1
腫瘍の広がりおよび粗大病変の存在に応じて放射線治療を行うことが勧められる。
推奨2
推奨グレードC1
腫瘍の種類によって薬物療法を行ってもよい。
推奨3
推奨グレードC1
髄膜がん腫症に伴う水頭症には髄液シャントあるいはドレナージを行ってもよい。

解説

固形がんの髄腔内播種病変に対する放射線治療の有効性に関しては一致した意見がない 1-6)(いずれもレベルⅢ)。いずれも後方視的な研究であるが,肺がん,乳がん,胃がんによる髄膜がん腫症に対して全脳照射を追加した群と無施行群の比較では生存期間に差はなかったと報告されている 1-3)(いずれもレベルⅢ)。一方,Gani らは肺がんおよび乳がん患者に対して全脳照射単独で治療を行い,生存期間中央値は8.1 週,6 カ月および12 カ月での生存割合はそれぞれ26 %,15 %であったことより,髄注化学療法を行えないような患者では放射線治療は有用だろうと結論している 4)(レベルⅢ)。脳病変には一般的に全脳照射が行われることが多いが,全脊髄照射にまで無条件に照射野を広げることには反対意見が強い。全脊髄照射は骨髄機能を低下させることにより,全身薬物療法の実施を困難にする点にも留意しなければならない。一方,占拠性病変では髄腔内投与の抗がん薬は腫瘍内に十分に浸透しないと考えられ,放射線治療はそのような病変部位局所に用いられることがある。脊髄の症候性病変への照射は,痛みなどの症状緩和に有用なことがある。また,髄液灌流のブロックを起こしている部位への照射では,約半数において髄液灌流の回復が認められたという報告がある 7)(レベルⅢ)。最近,上皮成長因子受容体(EGFR)変異を有する非小細胞肺癌による髄膜がん腫症に対してEGFR チロシンキナーゼ阻害薬(エルロチニブやゲフィチニブ)と放射線治療の併用が有効であるとする報告が散見されるようになっている 5)(レベルⅢ)。また,非小細胞肺癌の脳実質内転移では放射線治療にEGFR 変異の有無にかかわらずエルロチニブを上乗せした群ではむしろ生存中央値が短くなる傾向があり,副作用の増強が関連している可能性も指摘されている点には注意が必要である(RTOG0320)8)(レベルⅡa)。今後の分子標的治療の発展により治療法が変わる可能性があるが,現時点では固形がんの髄膜がん腫症に対する姑息的な治療として全脳照射,粗大病変部や髄液灌流のブロックを起こしている部位に対して症状緩和を目的とした局所照射を考慮することが推奨される。

髄膜がん腫症に伴う水頭症は頭痛や嘔吐,認知機能障害をきたしてQOL を悪化させる。脳室腹腔シャント術やドレナージ術等により,これらの症状の8 割前後は改善する 9-11)(いずれもレベルⅢ)。これらの報告では脳室腹腔シャント術後の生存期間中央値は2~3 カ月であるが,シャント術後に何らかの治療を追加した群での生存期間はさらに長くなる傾向にある。問題点としては,シャント術等により髄注化学療法の実施が困難となる点が挙げられる。しかし,Lin らはon-off valve(シャントの流れを一時的に止めることのできるバルブ)を備えた脳室腹腔シャントシステムは,リザーバー設置による髄注化学療法より全生存期間の有意な延長があり,症状緩和が得られると報告している 10)(レベルⅢ)。また,Zaga らは圧可変式バルブの圧設定を高くすることによって髄腔内の抗がん薬濃度を維持できる可能性を示したが,多数例での検討は行われていない 12)(レベルⅣ)。合併症には,圧設定不全等のシャント機能不全が10 %程度で認められることや感染,稀ではあるが硬膜下血腫,脳内血腫,腹膜播種などの報告がある。

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CQ5
頭蓋骨転移に対する治療はどう選択するのか?

推奨1
推奨グレードB
症候性または近い将来に局所治療を必要とする頭蓋骨転移には放射線治療を行う。
推奨2
推奨グレードC1
薬物療法に高感受性とされる腫瘍では,薬物療法を単独あるいは放射線治療と組み合わせて行うよう勧められる。
推奨3
推奨グレードB
全身の転移性骨腫瘍を有する患者に対して,あるいは骨関連事象のリスクが高い頭蓋骨転移の場合,骨関連事象の発現を軽減するために,ビスホスホネート製剤(ゾレドロン酸)またはヒト型抗RANKL(NFκB 活性化受容体リガンド)モノクローナル抗体薬(デノスマブ)を投与する。
推奨4
推奨グレードC1
外科治療は,脳神経症状の早急な解除,静脈洞閉塞の回避,整容,または病理診断を目的に,厳格な適応判断のもとに行うよう勧められる。

解説

骨転移は,進行前立腺がんの90 %,進行乳がんの70~80 %,進行非小細胞肺癌の30~40 %に発生する 1)(レベルⅢ)。一般に,頭蓋骨転移は全身の骨転移に伴って出現する。特に頭蓋底への転移は,Laigle-Donadey の279 例の報告によると,前立腺がん(38.5 %),次いで乳がん(20.5 %)に多く,他にもさまざまながん種から転移する 2)(レベルⅢ)

頭蓋円蓋部の転移は必ずしもQOL を低下させることはないが,骨からの硬膜への浸潤,上矢状・横静脈洞の閉塞の回避,ときに整容を目的として治療方針を検討する。一方,頭蓋底への転移は,脳神経障害,疼痛,頭蓋内圧亢進などによりQOL を低下させることが多く,迅速な診断と治療が必要である。頭蓋底転移の発見と診断には,Greenberg による5 症候群の分類が有用である(表13)(レベルⅣ)。特に嚥下困難,複視,三叉神経痛や後頭後頸部の激痛は患者にとって重大な障害になる。これらの症状が出現したときは,MRI によって造影前T1 強調画像と造影脂肪抑制T1 強調画像とを比較して診断する 4)(レベルⅢ)。X 線撮影,骨条件CT,骨シンチグラフィーも有用である。また,画像診断が困難な場合でも,上記のような症状が出現している場合には放射線治療を勧めてもよいとする意見もある 2)

表1 頭蓋骨転移における腫瘍局在と臨床症候群(文献3 より作成)

症候性の骨転移に対する放射線治療の有効率は一般に50~80 %と高く,特に疼痛の緩和に有効である 5)(レベルⅠa)。また,症状の出現から速やかに開始されるほど効果は高い。症状出現から1 カ月以内に放射線治療を開始した場合には87 %の患者で症状が改善したが,3 カ月を超えると25 %にすぎなかったという報告がある 6)(レベルⅣ)。定位放射線照射の適応は3 cm 以下の病変,初期治療および術後残存病変や再発病変であり,奏効割合は65~90 %と報告されている 7)(レベルⅣ)。また,症状がない場合であっても静脈洞閉塞のリスクがある場合,急速に増大する病変によって重篤な症状が出現する可能性がある場合には,それらを回避するために放射線治療が勧められる。

頭蓋骨転移は,全身の骨転移の一部と捉え,それがQOL を低下させる場合には,それぞれの腫瘍の薬物療法感受性を根拠として,全身薬物療法すなわち化学療法や内分泌療法を行う。さらに,骨転移に特異的な薬物療法として,ビスホスホネート製剤(ゾレドロン酸)またはヒト型抗RANKL(NFκB 活性化受容体リガンド)モノクローナル抗体薬(デノスマブ)の投与が行われる。前立腺がんと乳がんを除いた固形がんの患者を対象に,骨関連事象(skeletal related events:SRE)発生率と発生までの時間を指標として,ゾレドロン酸とプラセボの比較試験が行われている 8)(レベルⅠb)。9 カ月目までのSRE出現率はゾレドロン酸投与群で35~38 %,プラセボ群では44 %であり,SRE 発生までの期間はゾレドロン酸によって有意に延長した。ゾレドロン酸とデノスマブを比較した3 つのランダム化比較試験を統合した解析によると,ゾレドロン酸と比較してデノスマブはSRE を17 %減少させたと報告されている 9)(レベルⅠb)。また,両薬剤のSRE 予防効果には,過去のSRE の有無,年齢を含む患者側の因子は関与していなかった。これらの結果より,転移性骨腫瘍を有する患者に対しては,骨転移による症状の有無に関わらず,SRE を予防する目的でゾレドロン酸またはデノスマブを投与するよう勧められる。

ゾレドロン酸をはじめとするビスホスホネート製剤に共通する副作用として,顎骨壊死と腎障害が知られている。顎骨壊死のリスク因子は,口腔内の感染症,直近の歯科的処置,長期間の投与などである。また,腎機能障害患者では血漿中濃度が増加するため,クレアチニンクリアランスに基づいて投与量を調整する。一方,デノスマブによる顎骨壊死の頻度も,ゾレドロン酸との比較試験の結果より,ゾレドロン酸と同程度と報告されている 10)(レベルⅠa)。デノスマブは腎機能による投与量調整は不要であるが,臨床試験では重度の腎障害の患者は除外されており,腎障害患者への適応は慎重に判断する。さらに,低カルシウム血症予防のためにカルシウムとビタミンD の経口補充,カルシウム値のモニタリングが必須である 11)(レベルⅠb)。ゾレドロン酸は点滴投与,デノスマブは皮下投与の違いがある。処方例として,①ゾレドロン酸4 mg 3~4 週ごと点滴投与,②デノスマブ120 mg 4 週ごと皮下投与,などが考えられる。

外科治療の適応は,期待できる治療効果,侵襲性,予後などを慎重に検討して決定する。腫瘍摘出の際には,十分なサージカルマージン(安全域)を確保したうえで,また硬膜や皮膚に浸潤する場合は同時に切除する。円蓋部の転移に対する外科治療の適応には,神経学的な異常を伴う,大きな骨破壊や硬膜への浸潤がある,腫瘤が疼痛を伴う,転移が単発である,病理診断の必要があるときなどが挙げられる 12)(レベルⅢ)。一方,特にQOL を低下させることの多い頭蓋底への転移では,原発がんの組織型,頭蓋内への進展度,サージカルマージンの状況が治療成績に影響したと報告されている 13)(レベルⅢ)。Chamoun らは,頭蓋底への転移に対して外科治療を行った27 例のうち全摘出が可能であった症例は59 %に留まったことから,外科治療による根治は困難であり,その適応は少数例にすぎないため,より厳格な適応判断が必要であるとしている 14)(レベルⅢ)。高齢者における外科治療の安全性については,悪性腫瘍の治療目的で頭蓋顔面手術を受けた症例の解析において,70 歳以上の170 例では70 歳未満の1,096 例と比較して,外科治療に関係した死亡率(それぞれ9 %と3 %)および合併症発生率(それぞれ42 %と32 %)は有意に高かった 15)(レベルⅢ)。以上より,外科治療は,比較的若年であり,他に放射線治療や薬物療法によって治療目的を達成できない場合に限り,厳格な適応判断のもとに行うべきであろう。

文献

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CQ6
転移性脳腫瘍に対するステロイドや浸透圧利尿薬はどう使用するのか?

推奨グレードB
神経症状を呈する腫瘍周辺の浮腫に対しては,ステロイドや浸透圧利尿薬を使用する。

解説

転移性脳腫瘍では,腫瘍周辺の高度な浮腫のために神経症状を呈することがある。脳浮腫に対しては,鉱質コルチコイド作用の少ないデキサメタゾン,ベタメタゾンが一般的に使用され,さらに緊急時には浸透圧利尿薬も用いられる 1)(レベルⅤ)。ステロイドの使用に際しては,消化管出血や糖尿病,易感染性などの合併症に注意しつつ,長期に使用することは避け,経過をみながら適宜漸減・中止を検討する。また,中枢神経系原発悪性リンパ腫が疑われる場合には病理診断前のステロイドの使用は勧められない(3 章CQ2‒a 参照)。一方,明らかな頭蓋内圧亢進や神経症状がない状態では,ステロイドや浸透圧利尿薬の使用は勧められない。

デキサメタゾンの投与量について明確なコンセンサスはないが,一般的には4~8 mg/日で開始されることが多い。頭蓋内圧亢進や意識障害を呈する場合には16 mg/日あるいはそれ以上の投与量も考慮する 2)(レベルⅤ)。Vechtらは,KPS 80 以下の転移性脳腫瘍患者に対してデキサメタゾンを4,8,16 mg/日で開始してそれぞれ漸減しつつ7 日あるいは28 日間投与したところ,4 mg/日とそれ以上の投与量では効果に差がみられず,投与量が増えるにつれ副作用が増加したと報告している 3)(レベルⅠb)

転移性脳腫瘍の脳浮腫や頭蓋内圧亢進に対して浸透圧利尿薬が一般に使用されるが,その有用性を検討した臨床試験はない。浸透圧利尿薬の使用に際しては,濃グリセリン・果糖注射液やD‒マンニトールの使用による電解質異常,利尿による脱水と腎機能障害,中止後の反跳現象に注意する。また,漫然と長期に使用することは避ける。

ステロイド,特にデキサメタゾンなどの糖質コルチコイドの使用に際しては,cytochrome P450 の酵素誘導によりフェニトイン,フェノバルビタール,カルバマゼピンなどの血中薬物濃度が低下することがある点に注意する。逆に,これらの抗てんかん薬によっても酵素誘導され,ステロイドの効果が減弱することがある(本章CQ7 参照)。

文献

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CQ7
転移性脳腫瘍に対する抗てんかん薬はどう使用するのか?

推奨1
推奨グレードC1

てんかん発作の既往がある場合に使用することが勧められる。
推奨2
推奨グレードC2
てんかん発作の既往のない場合は,腫瘍摘出術および定位放射線照射の周術期などを除き,予防的な抗てんかん薬は使用しない。
推奨3
推奨グレードC1
抗てんかん薬を使用する場合は,抗がん薬を含めた他剤との薬物相互作用に注意する。

解説

てんかん発作の既往がある転移性脳腫瘍に対しては抗てんかん薬を使用することが勧められる。しかし,てんかん発作の既往のない場合,予防的な抗てんかん薬の使用が有効であるという十分なエビデンスはなく,一般には抗てんかん薬の投与は行わない 1)(レベルⅤ)。ただし,広範な浮腫を伴うテント上病変など,てんかん発作を伴うことが強く予想される場合には予防的な抗てんかん薬が用いられることもある。Forsyth らは,原発性40 例および転移性60 例の計100例の脳腫瘍患者を対象に抗てんかん薬の発作抑制効果についてランダム化比較試験を行ったが,全体および転移性だけのサブグループ解析のいずれにおいても有意差は認められなかった 2)(レベルⅠb)。米国神経学会(American Academy of Neurology)は,4 つのランダム化比較試験のメタアナリシスにおいても抗てんかん薬による発作抑制効果は認められていないことから,抗てんかん薬の予防的使用は推奨していない 3)(レベルⅠa)。さらに,2008 年のThe Cochrane Database of Systematic Review によっても脳腫瘍患者に対する予防的な抗てんかん薬の使用による発作抑制効果は示されておらず,一方,副作用は有意に増加していた 4)(レベルⅠa)。ただし,これらの結果は,抗てんかん薬としてフェニトイン,フェノバルビタール,バルプロ酸を使用した臨床試験である点に注意が必要である。

抗てんかん薬を使用する場合には,薬物相互作用,特に薬物代謝酵素であるcytochrome P450 の酵素誘導に注意が必要である(表15,6,7)(いずれもレベルⅤ)。すなわち,フェノバルビタールやカルバマゼピン,フェニトインなど一部の抗てんかん薬を長期間使用すると酵素誘導によってcytochrome 活性が増強するため,cytochrome による薬物代謝を受けるパクリタキセルや塩酸イリノテカンなどの殺細胞性抗がん薬,あるいはイマチニブ,ゲフィチニブ,テムシロリムスなどの分子標的治療薬の血中薬物濃度が低下して,ときに薬物効果にも影響することがある。また,デキサメタゾンの長期使用によってもcytochrome P3A4(CYP3A4)の酵素誘導が起こることが知られている。新規の抗てんかん薬であるレベチラセタムやガバペンチンは,薬物代謝酵素の誘導が少なく,臨床において問題となるような薬物相互作用が少ないという特徴を持つが,薬物療法時の相互作用のデータは乏しい。またこれら新規薬の単剤での使用は未承認である。

表1 抗てんかん薬のcytochrome P450 への影響

文献7 より改変)

文献

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3 章 中枢神経系原発悪性リンパ腫

総論

1 本ガイドラインの目的

中枢神経系原発悪性リンパ腫(primary central nervous system lymphoma:PCNSL)に罹患している個々の症例において,適切な治療方針を検討する上で必要となる重要な臨床的事項を臨床的疑問(clinical question:CQ)として提示し,現時点でのエビデンスに基づく推奨事項を述べる。

2 対象患者

PCNSL に罹患した成人患者。

3 利用対象者

脳腫瘍診療に従事する医師。

4 中枢神経系原発悪性リンパ腫の概括

1. 中枢神経系原発悪性リンパ腫の定義

PCNSL は,診断時に中枢神経系外に他の病巣を認めない中枢神経系に限局した節外性リンパ腫を指し,他臓器リンパ腫由来の二次性中枢神経系リンパ腫は含まない。PCNSL は近年増加傾向にあり,Report of Brain Tumor Registry of Japan (1984‒2000) 12th Edition によると全脳腫瘍の3.1 %を占める 1)。欧米ではAIDS に関連して発症する率が高くなっているが,我が国では少なく,ほとんどが免疫不全を合併しない症例である。50~70 歳代の高齢者に高頻度でみられ(60 歳以上が62 %),95 %以上のPCNSL は非ホジキンリンパ腫(non-Hodgkin lymphoma:NHL)でB 細胞由来(ほとんどが,びまん性大細胞型B 細胞リンパ腫,diffuse large B-cell lymphoma:DLBCL)である。

2. 予後規定因子

PCNSL における予後規定因子としては,これまで年齢と一般状態(performance status:PS)の重要性が指摘されてきている。Radiation Therapy Oncology Group(RTOG)による最初の前方視的臨床試験(RTOG83‒15)において,年齢とKarnofsky performance status(KPS) が独立した予後因子として報告された 2)。その後,前方視的第Ⅱ相試験で,これらの因子は常に予後因子として抽出されている 3‒5)。またCorry らも,62 例の免疫不全のないPCNSL 症例に対する後方視的解析で,年齢60 歳未満,WHO PS 1 以下のみが独立した有意な予後因子であったと報告している 6)

Ferreri らは,多国48 施設から378 例のHIV 陰性PCNSL 症例を集積し,解析データが揃う105 例をもとに予後因子解析を行った。その結果,①年齢(60 歳より高齢)〔p=0.0001,オッズ比(odds ratio:OR)1.02〕,②PS(WHO PS2 以上)(p=0.001, OR 1.64),③血清LDH 値(高値)(p=0.05, OR 1.41),④髄液蛋白濃度(高値)(p=0.03, OR 1.71),⑤深部脳病巣(脳室周囲,大脳基底核,脳幹,小脳)(p=0.007, OR 1.45)の5 項目が独立した有意な予後不良因子として抽出された 7, 8)。さらに,これら5 項目を陽性の場合に各1 点として合計した総点数を0~1 点の群(予後良好群),2~3 点の群(予後中間群),4~5 点の群(予後不良群)の3 群に分類するInternational Extranodal Lymphoma Study Group(IELSG)scoring system を提唱した。2 年生存割合は,順に80 % ±8 %,48 % ±7 %,15 % ±7 %(p=0.00001)と有意に差が認められた 7)

その後,Memorial Sloan-Kettering Cancer Center(MSKCC)のAbrey らがより簡便な予後分類システムとして,年齢とPS のみからなるrecursive partitioning analysis(RPA)scoring system を提唱しており,338 例の連続PCNSL 症例中282 例のデータを用いて予後因子を解析し,クラス1(50 歳未満),クラス2(50 歳以上かつKPS 70 以上),クラス3(50 歳以上かつKPS 70 未満)の3 群に分類した 9)。生存期間中央値(median survival time:MST)はクラス1,2,3 で各8.5 年,3.2 年,1.1 年(p<0.001),治療成功生存期間は各2.0 年, 1.8 年, 0.6 年(p<0.001)と群間で有意な差が認められた。RTOG による前方視的臨床試験の152 例の治療データを用いた検証的解析でも,同様にp<0.001 の有意水準で予後との相関が示された。一方,同じ症例を上記IELSG scoring system を用いて分類し,予後との相関を解析すると,0~1 点群と2~5 点群間のみ有意差が認められたp=0.006)。IELSG scoring system では一部の症例で髄液所見や血清LDH のデータが欠損しており,十分な解析ができなかった点と,観察期間の中央値が2 年と短かった点が影響している可能性が指摘された 9)

今後は,このような予後因子スコアを使用することで,より均てん化した臨床試験をデザインすることが望ましい。

3. PCNSL の治療前評価と治療効果判定

治療開始前にPCNSL の進行度や進達度を評価し,また治療後にその治療効果を判定するためには,国際的な基準を用いることが望ましい。International PCNSL Collaborative Group(IPCG)が2005 年に取りまとめたPCNSL に対する神経所見を基にした治療前評価には,以下の項目が含まれる(表1)。①眼科的精査(スリットランプ検査含む),②gadolinium 造影脳MRI および安全に施行できる際に腰椎穿刺による脳脊髄液(CSF)採取(悪性細胞の検出),③脊髄症状のある症例に対しての脊髄MRI,④全身性悪性リンパ腫の除外のための臨床諸検査(リンパ節,体幹・骨盤CT,骨髄検査,精巣検査),⑤HIV 感染の有無 10)。適切な治療方針の選択,治療効果の判定や臨床試験の登録には,これらの腫瘍関連因子の精査・記録が科学的な解析には必須であり,日常診療においても,可能な限り施行すべきである。全身性NHL に対する病期分類法とは異なることに留意する必要がある。なお,治療効果判定は原則としてgadolinium 造影脳MRI にて行う。

表1 IPCG によるPCNSL 治療効果判定(評価)基準

PCNSL の治療経過上重要な晩発性認知機能障害を評価するうえで,治療前の認知機能の客観的な評価が必須であり,治療前のPS と神経症状・認知機能を記録することが必要である。PS の評価基準としては,通常KPS が使用される(表2)。また,認知機能評価の基準としては,IPCG でも推奨されているMini Mental Status Examination(MMSE)を使用することが望ましいが,長谷川式スケール(HDS)を代替スケールとして用いてもよい。

表2 Karnofsky performance status(KPS)

4. 治療法

PCNSL の治療の原則は,生検術による腫瘍組織からの病理診断確定の後,大量メトトレキサート(high dose methotrexate:HD‒MTX)療法を基盤とする化学療法と,それに続く全脳照射を主体とする放射線治療である。しかし,初期治療における奏効率は比較的良好であるのに対し,再発率は依然高く,最終的に腫瘍死あるいは遅発性中枢神経障害を余儀なくされることも多く,未だ機能を維持しつつ治癒に至る割合は満足できるレベルには達していない。

5. 遅発性中枢神経障害

PCNSL 症例の半数は60 歳以上であり,高次脳機能障害や遅発性治療関連神経毒性(白質脳症)の影響を極めて受けやすい対象である。特に,60 歳以上のHD‒MTX 療法と全脳照射を施行した症例群は最もハイリスク群とみなされている。Abrey らはHD‒MTX 療法+MTX 髄注+全脳照射40Gy+局所照射14.4Gy+大量シタラビン(high dose cytarabine:HD‒AraC)療法を行ったPCNSL 症例のうち,60 歳以上の症例で有意に遅発性神経毒性の発生リスクが高かった(p<0.0001)と報告している 11)。したがって,遅発性中枢神経障害の有無や程度の評価は極めて重要で,克服しなくてはならない課題である。

一方で,高い総放射線線量,MTX 髄注治療の併用,HD‒MTX 療法そのものや,照射後の化学療法の追加などのいずれも神経障害を惹起しうる治療法であり,遅発性神経毒性の原因検索とその回避については慎重な考察を要する。ハイリスクの高齢者の定義としては,60 歳以上あるいは70 歳以上など,各報告で統一されていない。また,高齢者に遅発性神経毒性の発生リスクが高いとしても,高齢者の治療成績が十分ではなく,頭蓋内病変の制御が悪ければ,必然的に認知機能や生活の質(quality of life:QOL)も低下するという面も,考慮する必要がある。

神経毒性の症状は,主として急速に進行する皮質下認知障害で,精神運動障害,遂行・記銘力障害,行動異常,歩行失調,失禁などが含まれる 12)。このような症状や障害を科学的に評価していくためには,系統的認知機能評価法の導入が必須であり,Correa らは認知機能の4 つの主領域(注意,遂行機能,記銘力,精神運動速度)を含む5 つの標準化された神経精神テストとQOL 質問票を提唱している 13)。今後の臨床試験のみならず,日常診療においても可能な範囲でこのような評価法を我が国でも進めて行くことが望ましい。

文献検索

2011 年3 月の時点までのMEDLINE にて,PCNSL あるいはlymphoma and (brain or central nervous system)をキーワードに文献検索を行った。これら機械的文献検索以外に委員によるハンドサーチでの重要文献の追加も適宜行った。そこから,各CQ に対して,エビデンスのあるまたは臨床上重要な情報を提供すると考えられた論文を抽出した。

文献

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CQ1
PCNSL の診療における手術療法の位置づけは?

推奨1
推奨グレードA
PCNSL に対しては,原則として手術による組織診断が必要である。
推奨2
推奨グレードC1
手術法としては,組織診断を目的とした生検術が推奨される。

解説

MRI・CT による画像診断により,PCNSL 典型例では高い診断率が得られる。しかし組織型の確定(殆どがDLBCL であるが,T-cell lymphoma やその他の組織型も存在する)や,悪性神経膠腫その他の疾患との組織学的鑑別は必要であり,PCNSL の診断を確定するためには組織診断が必須である。

手術法としては原則的に定位的もしくは開頭による生検術が施行される。PCNSL は多発性に発生することが多く,くも膜下腔や血管周囲腔・脳実質内への浸潤性進展性格が極めて強い。切迫脳ヘルニアをきたしている症例での減圧効果以外には,肉眼的全摘や部分摘出は予後に影響せず,画像上の全摘,あるいは生検でも治療成績は変わらないと報告されている 1)(レベルⅢ)

ただし,脳深部病巣や高齢者等患者背景因子によっては生検術施行のリスクが高いと判断される場合には,手術施行が困難であることもありえる。

文献

1)
Reni M, Ferreri AJ, Garancini MP, et al. Therapeutic management of primary central nervous system lymphoma in immunocompetent patients:results of a critical review of the literature. Ann Oncol.
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CQ2-a
PCNSL に対して診断確定前にステロイド療法は施行すべきか?

推奨グレードC2
生検術前のステロイド使用は,ステロイドによる標的病変の縮小が高頻度に生じるため,手術時に生検的中率が低下するリスクがあり,可能な限り投与を控える。

CQ2-b
PCNSL に対する診断確定後のステロイド療法の位置づけは?

推奨1
推奨グレードC1
PCNSL に対するステロイド療法は,一過性の腫瘍縮小効果が認められることが多く,また,症状緩和目的に使用されることも多い。
推奨2
推奨グレードC2
ステロイドは治癒的効果に乏しいため,治癒目的の単独使用は推奨されない。

解説

糖質コルチコイドの主たる作用機序は,核内受容体を介した腫瘍細胞への直接的細胞融解効果であり,血液脳関門の再構築効果も併せて,半数近くの症例で投与後急速な腫瘍縮小がみられる[完全奏効(complete response:CR)15 %,部分奏効(partial response:PR)25 %]1)(レベルⅢ)。しかし,この治療効果は一過性であり 2)(レベルⅣ),一般に数週から数カ月で腫瘍は再燃し,根治性に乏しい。

術前のステロイド投与は,標的病巣の急速な縮小により生検による腫瘍細胞検出が困難となることがあり,術前にはできるだけステロイド投与を控えることが肝要である 3)(レベルⅤ)。ただし,強い脳浮腫や腫瘍のmass effect を伴うような場合など,臨床上必要と考えられる場合は,治療開始前の病状安定化目的のためステロイド使用もやむを得ない。

なお,初発PCNSL で,ステロイドに対する治療反応を示した症例と反応がみられなかった症例との比較では,前者で生存期間中央値が17.9 カ月であったのに対し,後者では5.5 カ月に過ぎなかったとの報告もあり,初発時のステロイド反応性は予後良好因子である可能性が指摘されている 4)(レベルⅤ)

文献

1)
DeAngelis LM, Yahalom J, Heinemann MH, et al. Primary CNS lymphoma:combined treatment with chemotherapy and radiotherapy. Neurology. 1990;40(1):80-6.(レベルⅢ)
2)
Pirotte B, Levivier M, Goldman S, et al. Glucocorticoid-induced long-term remission in primary cerebral lymphoma:case report and review of the literature. J Neurooncol. 1997;32(1):63-9.(レベルⅣ)
3)
Weller M. Glucocorticoid treatment of primary CNS lymphoma. J Neurooncol. 1999;43(3):237-9.(レベルⅤ)
4)
Mathew BS, Carson KA, Grossman SA. Initial response to glucocorticoids. Cancer. 2006;106(2):383-7(レベルⅤ)

CQ3
PCNSL に対してどのような治療が推奨されるか?

推奨グレードA
HD‒MTX療法を基盤とする化学療法を先行し,引き続き全脳照射による放射線治療を行うことが望ましい。

註1:高齢者では,全脳照射による遅発性中枢神経障害のリスクがあり,注意を要する(本章CQ4 参照)。(推奨グレードC1)

註2:化学療法が不適切な症例では,病勢制御のため全脳照射単独療法を行う場合がある。

解説

PCNSL は放射線感受性が高い腫瘍であるが,照射後早期に再発する傾向にある。全脳照射単独療法による生存期間中央値(MST)は,これまでの報告をまとめると12~18 カ月程度で,5 年生存割合も5 %足らずと,単独療法の治療効果は不十分である。すなわち,PCNSL に対する放射線単独療法は,奏効割合は高いものの早期に再発する傾向が高く,長期予後は不良である。RTOG による報告では,全脳40 Gy に局所20 Gy の追加照射を施行した結果,腫瘍縮小効果は81 %で得られたが,MST は12.2 カ月に留まった(RTOG83-15)1)(レベルⅡb)。芝本らによる1990~1999 年までの我が国での放射線治療の成績は5年生存割合が18 %であった 2)(レベルⅢ)。したがって,術後の放射線単独療法は化学療法施行困難例に限られる。

PCNSL に対する放射線単独療法の治療成績には限界があるため,化学療法と全脳照射の併用療法が検討された。全脳照射と全身性節外性NHL の標準治療法であるCHOP(D)療法(シクロホスファミド,ドキソルビシン,ビンクリスチン,デキサメタゾン)の併用は奏効割合67 %,MST 16 カ月であり,全脳照射単独治療成績を上回れず,有効性が証明されなかった(RTOG88-06)3)(レベルⅡb)。この結果は,シクロホスファミドとドキソルビシンが血液脳関門を透過しない非透過型薬剤であったことに主として起因すると考えられている4)

メトトレキサート(MTX)は大量に急速点滴静注投与することで血液脳関門を透過し,引き続きのロイコボリン投与により正常細胞を救済することが可能とされている。HD-MTX 療法は単剤あるいは他剤との併用療法とその後の全脳照射併用によって,MST が有意に延長する結果が得られている。HD-MTX 単独と全脳照射併用療法では,Glass らは25 例に対し,客観的奏効割合(objective response rate:ORR)88 %,MST 33 カ月 5)(レベルⅢ),Trans-Tasman Radiation Oncology Group は46 例に対し照射後ORR 95 %,MST36 カ月 6)(レベルⅡb),Hiraga らは28 例に対しORR 78.6 %,MST 39.3カ月 7)(レベルⅡb)と,放射線治療単独に比べ良好な治療成績が報告されている。本療法での神経毒性発生率は10~15 %であった。我が国でのPCNSL 研究会による第Ⅱ相試験では,同様にHD-MTX 単独療法の後,全脳照射を55 例に施行し,照射後のORR 85 %,MST 44 カ月と中間報告されている 8)(レベルⅡb)

また,具体的な検証試験は行われていないが,標準治療であるHD-MTX 療法との放射線治療の併用療法では,HD-MTX 療法を先行し,その後に全脳照射を施行するほうが,MTX の治療効果の判定が可能となり,遅発性中枢神経障害の発生リスクを軽減すると考えられている 9)(レベルⅢ)

MTX の用量および投与時間についてはさまざまな報告があり,それぞれの投与方法を比較した試験はない。メタアナリシスでは,3 g/m2以上で効果が高いとの報告がある 10)(レベルⅢ)。十分な中枢神経系移行のためには短時間(通常3~6 時間)での投与を行い,規定どおりのロイコボリンレスキューを行う(MTX を含む化学療法単独治療については,本章CQ7 参照)。

文献

1)
Nelson DF, Martz KL, Bonner H, et al. Non-Hodgkin’s lymphoma of the brain:can high dose, large volume radiation therapy improve survival? Report on a prospective trial by the Radiation Therapy Oncology Group(RTOG):RTOG 8315. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 1992;23(1):9-17.(レベルⅡb)
2)
Shibamoto Y, Ogino H, Hasegawa M, et al. Results of radiation monotherapy for primary central nervous system lymphoma in the 1990 s. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2005;62(3):809-13.(レベルⅢ)
3)
Schultz C, Scott C, Sherman W, et al. Preirradiation chemotherapy with cyclophosphamide, doxorubicin, vincristine, and dexamethasone for primary CNS lymphomas:initial report of radiation therapy oncology group protocol 88-06. J Clin Oncol. 1996;14(2):556-64.(レベルⅡb)
4)
Ott RJ, Brada M, Flower MA, et al. Measurements of blood-brain barrier permeability in patients undergoing radiotherapy and chemotherapy for primary cerebral lymphoma. Eur J Cancer. 1991;27(11):1356-61.

5)
Glass J, Gruber ML, Cher L, et al. Preirradiation methotrexate chemotherapy of primary central nervous system lymphoma:long-term outcome. J Neurosurg. 1994;81(2):188-95.(レベルⅢ)
6)
O’Brien PC, Roos DE, Pratt G, et al. Trans-Tasman Radiation Oncology Group. Combined-modality therapy for primary central nervous system lymphoma:long-term data from a PhaseⅡ multicenter study(Trans-Tasman Radiation Oncology Group). Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2006;64(2):408-13.(レベルⅡb)
7)
Hiraga S, Arita N, Ohnishi T, et al. Rapid infusion of high-dose methotrexate resulting in enhanced penetration into cerebrospinal fluid and intensified tumor response in primary central nervous system lymphomas. J Neurosurg. 1999;91(2):221-30.(レベルⅡb)
8)
泉本修一,森鑑二,有田憲生.中枢神経系悪性リンパ腫研究会.悪性リンパ腫に対するHD-MTX 療法の長期成績と問題点―多施設共同研究から.第26 回日本脳腫瘍学会抄録集.2008:130.(レベルⅡb)
9)
DeAngelis LM, Yahalom J, Heinemann MH, et al. Primary CNS lymphoma:combined treatment with chemotherapy and radiotherapy. Neurology. 1990;40(1):80-6.(レベルⅢ)
10)
Reni M, Ferreri AJ, Guha-Thakurta N, et al. Clinical relevance of consolidation radiotherapy and other main therapeutic issues in primary central nervous system lymphomas treated with upfront high-dose methotrexate. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2001;51(2):419-25.(レベルⅢ)

CQ4
高齢者PCNSL に対してどのような治療が推奨されるか?

推奨グレードC1
遅発性中枢神経障害の発生を軽減するため,高齢者における初発時の治療として,導入化学療法後CR となった症例については,全脳照射を減量ないし待機とした治療法を考慮する。

解説

60 歳以上あるいは70 歳以上の高齢者PCNSL に対しての治療は,高率に遅発性中枢神経障害の出現が生じるなど,未だ確立していない。

治療後の遅発性神経毒性(delayed neurotoxicity)は,進行性の認知障害など,腫瘍の再発がなくとも急速に患者のQOL を低下させる主因となり,その原因の一つに全脳照射が挙げられている。全脳照射後の神経認知機能障害の発症リスクは,高齢者(特に60 歳以上),総照射線量,化学療法の併用,化学療法と全脳照射の順序(特に同時ないし全脳照射後の化学療法)で増加することが知られている。Abrey らはHD-MTX 療法+MTX 髄注+全脳照射40 Gy+局所照射14.4 Gy+HD-AraC 療法を行ったPCNSL 症例のうち,60 歳以上の症例で有意に遅発性神経毒性の発生リスクが高かった(p<0.0001)と報告しており 1)(レベルⅢ),60 歳以上の高齢者に対しては初期治療での全脳照射を回避し,化学療法単独治療を推奨している。しかし,この試験治療では脳実質を直接障害するリスクのあるMTX 髄注治療が含まれていること,HD-MTX 療法自体が脳実質への浸透性が高く,神経障害を惹起する治療法であることから,全脳照射のみが遅発性神経毒性の原因との結論には注意を要する。

Zhu らはMassachusetts General Hospital での70 歳以上初発PCNSL 31 例に対し,HD-MTX 単独で治療を行い,有害事象共通用語規準(Common Terminology Criteria for Adverse Events:CTCAE)でグレード3/4 の有害事象は3~7 %と少なく,生存期間中央値(MST)37 カ月と良好な治療成績を報告した 2)(レベルⅢ)。高齢者では HD-MTX 療法による毒性が強く出ることが懸念されるが,Jahnke らの報告では60 歳を超える患者を89 %含む対象に対して,4 g/m2のHD-MTX 療法を含む治療を報告しているが,グレード3 以上の毒性は10 %未満であった 3)(レベルⅢ)。よって,高齢者でも腎機能・MTX 血中濃度にあわせた管理を行えば,HD-MTX 療法が可能と考えられている。Omuro らは,60 歳を越える初発PCNSL 23 例に対し,HD-MTX 療法とテモゾロミド(TMZ)(悪性リンパ腫には保険適応外)を併用した初期治療を施行し,画像上の奏効割合が55 %,MST が35 カ月であったと報告している 4)(レベルⅢ)

高齢者PCNSL に対する治療の問題点は,全脳照射を待機した場合,これら化学療法単独ではCR を獲得できる割合は高くなく,disease-free の状態に持ち込める割合が低いことにある。すなわち,照射を回避した化学療法単独療法による有意に優れた治療成績は得られていないのが現状であり,生命予後が不良となる可能性がある。Omuro らの報告ではORR が55 %に過ぎず,無増悪生存期間の中央値も8 カ月に留まっていた。Zhu らの報告ではORR 97 %と高率で縮小は認めたが,無増悪生存期間の中央値は7 カ月であった。高齢者では自家幹細胞移植による大量化学療法などの強力な化学療法における全身合併症のリスクも高くなり,初期化学療法でCR とならない症例に二次治療でさらに骨髄抑制の強い治療レジメンを追加することは通常困難である。

これらの現状からは,高齢者においては,全脳照射を省略した場合,生命予後が不良となる可能性があるが,神経毒性を回避する目的で全脳照射なしの初期治療を行い,再発時に全脳照射で救済する方法や,初期治療で低線量(24 Gy 程度)全脳照射を行う方法も考慮してよいと考えられる。

文献

1)
Abrey LE, DeAngelis LM, Yahalom J. Long-term survival in primary CNS lymphoma. J Clin Oncol. 1998;16(3):859-63.(レベルⅢ)
2)
Zhu JJ, Gerstner ER, Engler DA, et al. High-dose methotrexate for elderly patients with primary CNS lymphoma. Neuro Oncol. 2009;11(2):211-5.(レベルⅢ)
3)
Jahnke K, Korfel A, Martus P, et al. German Primary Central Nervous System Lymphoma Study Group(G-PCNSL-SG). High-dose methotrexate toxicity in elderly patients with primary central nervous system lymphoma. Ann Oncol. 2005;16(3):445-49.(レベルⅢ)
4)
Omuro AM, Taillandier L, Chinot O, et al. Temozolomide and methotrexate for primary central nervous system lymphoma in the elderly. J Neurooncol. 2007;85(2):207-11.(レベルⅢ)

CQ5
PCNSL に対する放射線治療ではどのような照射野と照射線量が推奨されるか?

推奨1
推奨グレードC1
照射野は全脳が推奨される。
推奨2
推奨グレードB
照射線量は,全脳に30~40 Gy(1 回線量1.8~2.0 Gy)が推奨される。

解説

PCNSL に対する放射線治療においては,極めて高い浸潤性増殖性格のため,照射野は全脳照射が経験的に推奨されてきた。照射野を限局する試みでは,4 cm 以上の腫瘍辺縁域を含めた広範囲照射群で明らかに再発が少なく,生存期間の延長が認められた 1)(レベルⅣ)。したがって,病巣に限局した局所照射では腫瘍制御は不十分と考えられる。

照射線量に関しては,文献上報告されていた全脳照射単独が施行された188 例のデータの解析で,50 Gy 以上の照射線量で治療された症例で有意に予後が良好であったとの報告が最初になされた 2)(レベルⅢ)。次いで,PCNSL における世界初の前方視的臨床試験であったRTOG83-15 試験では,全脳40 Gy 照射後に20 Gy の局所追加照射が行われたが,生存期間中央値(MST)は11.6 カ月に留まり,追加照射による腫瘍制御や生存期間延長効果は認められなかった 3)(レベルⅡb)。RTOG93-10 試験では初期化学療法後 CR の症例で多分割照射36 Gy(1.2 Gy×2 回/日)を行い,通常の45 Gy 照射群と同様の治療結果が得られた。しかし,多分割照射により神経毒性の軽減が試みられたが,通常の分割(45 Gy/25 fr)と比べグレード5 の神経毒性出現までの期間は遅延するものの,発生率に有意差は認められなかった 4)(レベルⅡb)

全脳照射線量減量の試みとして,対照の全脳45 Gy に対し,化学療法でCR となった症例では30.6 Gy とする臨床試験が行われたが,3 年生存割合が前者で92 %,後者で60 %と有意に30.6 Gy 群が不良との結果であった。特に,60 歳未満の若年症例で有意に再発率増大,生存割合低下が認められた 5)(レベルⅡb)。この結果は,この試験で使用された化学療法[CHOD/BVAM:シクロホスファミド,ドキソルビシン,ビンクリスチン,デキサメタゾン(CHOD)/カルムスチン,ビンクリスチン,メトトレキサート,シタラビン(BVAM)]との併用の際には,最低30.6 Gy 以上の全脳照射が必要であることを示唆している。これに対して,MSKCC のグループは化学療法[HD-MTX,プロカルバジン(procarbazine:PCZ),ビンクリスチン(vincristine:VCR),リツキシマブ]でCR となった症例群に対しては全脳23.4 Gy の照射に留め,照射後にHD-AraC 療法を地固め療法として追加する臨床試験を施行中であり,17 例の化学療法CR 例において,PFS が45 Gy 全脳照射治療を行った過去の治療成績に劣らなかったと報告している 6)(レベルⅡb)。本療法の長期観察結果は,2012 年の米国臨床腫瘍学会(American Society of Clinical Oncology:ASCO)にて発表された。また,この減量放射線療法によって認知機能低下が軽減したという少数例での前方視的研究の結果が報告されている 7)(レベルⅡb)。我が国での PCNSL 研究会では,化学療法後に全脳30 Gy を行い,残存腫瘍があれば局所10 Gy のboost 照射を行う臨床試験が行われており,MSTは44 カ月であった 8)(レベルⅡb)。Ferreriらは,HD-MTX 基盤による初期化学療法によりCR を達成したPCNSL 症例で,地固め照射として全脳照射を40 Gy 以上施行した群と,30~36 Gy を施行した群について,後方視的解析を行った。再発率(前者46 %,後者30 %),5 年無再発率(同51 % vs. 50 %;p=0.26)ともに有意差はなく,全脳照射線量は 36 Gy が望ましいと報告している 9)(レベルⅢ)。以上より,現時点では全脳照射30~45 Gy の範囲が推奨される照射線量と考えられる。

文献

1)
Shibamoto Y, Hayabuchi N, Hiratsuka J, et al. Is whole-brain irradiation necessary for primary central nervous system lymphoma? Patterns of recurrence after partial-brain irradiation. Cancer. 2003;97(1):128-33.(レベルⅣ)
2)
Murray K, Kun L, Cox J. Primary malignant lymphoma of the central nervous system. Results of treatment of 11 cases and review of the literature. J Neurosurg. 1986;65(5):600-7.(レベルⅢ)
3)
Nelson DF, Martz KL, Bonner H, et al. Non-Hodgkin’s lymphoma of the brain:can high dose, large volume radiation therapy improve survival? Report on a prospective trial by the Radiation Therapy Oncology Group(RTOG):RTOG 8315. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 1992;23(1):9-17.(レベルⅡb)
4)
Fisher B, Seiferheld W, Schultz C, et al. Secondary analysis of Radiation Therapy Oncology Group study(RTOG)9310:an intergroup phaseⅡ combined modality treatment of primary central nervous system lymphoma. J Neurooncol. 2005;74(2):201-5.(レベルⅡb)
5)
Bessell EM, Lopez-Guillermo A, Villa S, et al. Importance of radiotherapy in the outcome of patients with primary CNS lymphoma:an analysis of the CHOD/BVAM regimen followed by two different radiotherapy treatments. J Clin Oncol. 2002;20(1):231-6.(レベルⅡb)
6)
Shah GD, Yahalom J, Correa DD, et al. Combined immunochemotherapy with reduced whole-brain radiotherapy for newly diagnosed primary CNS lymphoma. J Clin Oncol. 2007;25(30):4730-5.(レベルⅡb)
7)
Correa DD, Rocco-Donovan M, DeAngelis LM, et al. Prospective cognitive follow-up in primary CNS lymphoma patients treated with chemotherapy and reduced-dose radiotherapy. J Neurooncol. 2009;91(3):315-21.(レベルⅡb)
8)
泉本修一,森鑑二,有田憲生.中枢神経系悪性リンパ腫研究会:悪性リンパ腫に対するHD-MTX 療法の長期成績と問題点―多施設共同研究から.第26 回日本脳腫瘍学会抄録集.2008:130.(レベルⅡb)
9)
Ferreri AJ, Verona C, Politi LS, et al. Consolidation radiotherapy in primary central nervous system lymphomas:impact on outcome of different fields and doses in patients in complete remission after upfront chemotherapy. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2011;80(1):169-75.(レベルⅢ)

CQ6
PCNSL に対してどのような化学療法が推奨されるか?

推奨1
推奨グレードC1
HD‒MTX 療法との併用薬剤としては,プロカルバジン(PCZ),シクロホスファミド(CPA),ビンクリスチン(VCR),チオテパ(国内販売中止),HD‒AraC 療法が推奨される。
推奨2
推奨グレードC1
HD‒MTX 療法とHD‒AraC 療法の併用療法+全脳照射は,HD‒MTX 単独療法+全脳照射より予後が改善する可能性があるが,骨髄抑制やそれに伴う感染症などの有害事象発生率は高い。HD‒MTX 療法とHD‒AraC 療法との同時併用療法か,逐次療法のいずれでもよい。

解説

HD-MTX 単独療法+全脳照射により,PCNSL の治療成績は生存期間中央値(MST)が33~44 カ月と放射線治療単独に比べ改善したが,依然長期の寛解や治癒に至る症例は少ない。より治療成績の向上を目的として,HD-MTX 療法に他剤を併用する多剤併用HD-MTX 療法+全脳照射が試みられている。

併用薬としては,PCZ,CPA,VCR,チオテパ(国内販売中止),AraC,カルムスチン(carmustine:BCNU)(国内未承認)などが使用されているが,MSKCC で行われた第Ⅱ相試験(52 例)では,5 サイクルのHD-MTX(3.5 g/m2),PCZ,VCR 併用療法後に全脳照射を施行し,さらにHD-AraC による地固め療法が施行された(MPV-A 療法)。60 歳以上では全脳照射が待機される症例も含まれたが,MST が51 カ月とHD-MTX 単独療法の治療成績を上回る成績が報告され,無増悪生存期間の中央値も129 カ月と極めて良好であった 1)(レベルⅡb)。しかし,一方で治療関連神経毒性は最終的には30 %に発生し,初期治療で全脳照射を行った60 歳以上の症例では75 %と高頻度で出現している。RTOG(RTOG93-10)では同様にHD-MTX 療法にPCZ,VCR およびMTX 髄注,照射後AraC を加えた治療を102 例に施行したが,MST は37 カ月に留まり,15 %に重篤な神経障害を認めている 2)(レベルⅡb)。European Organisation for Research and Treatment of Cancer(EORTC)では,HD-MTX 療法にテニポシド(teniposide:VM26)(国内未承認),BCNU(国内未承認),MTX/AraC 髄注, 照射後AraC を投与する第Ⅱ相試験(EORTC20962)を52 例に施行し,MST 46 カ月の成績が得られたが,毒性が強く治療関連死が10 %に発生した 3)(レベルⅡb)。その他,HD-MTX 療法と多剤併用/放射線治療を行った報告は2000 年以降に散見されるが,MST はいずれも30~40 カ月台に留まっており,HD-MTX 単独療法+全脳照射の成績を大きく凌駕するところには至っていない。

PCNSL に対するHD-MTX 療法を行った19 の前方視的臨床試験の結果を解析したメタアナリシスが2001 年に報告され,有意に予後良好であった3 g/m2以上のMTX 投与量の症例に限ると,AraC の追加が多変量解析にて生存期間の延長効果が認められた 4)(レベルⅢ)。この結果を受けて,2009 年にIELSG はHD-MTX 療法+全脳照射群と,HD-AraC 療法をHD-MTX 療法に追加する併用群を比較するランダム化第Ⅱ相試験の治療成績を報告した 5)(レベルⅠb)。79 例を2 群に分け,ORR はHD-MTX 群で40 %,併用群で 69 %(p=0.009),3 年治療成功生存割合は単独群で21 %,併用群で38 %(p=0.01)(HR 0.54),3 年生存割合は単独群32 %,併用群46 %(p=0.07)(HR 0.65)と,AraC 併用群で治療反応性と無増悪生存期間の延長効果が認められた。しかし毒性はAraC 併用群で明らかに強く,グレード3/4 の高度血液毒性がMTX 単独群では15 %に留まったのに対し,AraC 併用群では92 %にみられ,また治療関連死も8 %(MTX 単独群では3 %)に出現した。HD-AraC 療法併用はG-CSF などの予防的治療を必要とし,75 歳以上の高齢者には推奨できないとしている。また,本試験でのMTX 単独群での治療間隔は3 週間ごとであり,通常の2 週間ごとの治療間隔に比べ長いことから,投与量強度(dose intensity)が相対的には低く,全体の奏効割合も低めであることなど,本試験結果の今後の検証が必要と考えられる。

≪注意≫

カルムスチン(carmustin:BCNU):注射薬は国内未承認,徐放性ポリマーは悪性神経膠腫に対して承認
テニポシド(teniposide:VM26):国内未承認
チオテパ(thiotepa):国内販売中止

文献

1)
Gavrilovic IT, Hormigo A, Yahalom J, et al. Long-term follow-up of high-dose methotrexate-based therapy with and without whole brain irradiation for newly diagnosed primary CNS lymphoma. J Clin Oncol. 2006;24(28):4570-4.(レベルⅡb)
2)
DeAngelis LM, Seiferheld W, Schold SC, et al. Radiation Therapy Oncology Group Study 93-10. Combination chemotherapy and radiotherapy for primary central nervous system lymphoma:Radiation Therapy Oncology Group Study 93-110. J Clin Oncol. 2002;20(24):4643-8.(レベルⅡb)
3)
Poortmans PM, Kluin-Nelemans HC, Haaxma-Reiche H, et al. European Organization for Research and Treatment of Cancer Lymphoma Group. High-dose methotrexate-based chemotherapy followed by consolidating radiotherapy in non-AIDS-related primary central nervous system lymphoma:European Organization for Research and Treatment of Cancer Lymphoma Group PhaseⅡ Trial 20962. J Clin Oncol. 2003;21(24):4483-8.(レベルⅡb)
4)
Reni M, Ferreri AJ, Guha-Thakurta N, et al. Clinical relevance of consolidation radiotherapy and other main therapeutic issues in primary central nervous system lymphomas treated with upfront high-dose methotrexate. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2001;51(2):419-25.(レベルⅢ)
5)
Ferreri AJ, Reni M, Foppoli M, et al. International Extranodal Lymphoma Study Group(IELSG). High-dose cytarabine plus high-dose methotrexate versus high-dose methotrexate alone in patients with primary CNS lymphoma:a randomised phase 2 trial. Lancet. 2009;374(9700):1512-20.(レベルⅠb)

CQ7
初発PCNSL に対して全脳照射を省略した化学療法単独療法は推奨されるか?

推奨グレードC2
初発PCNSL では化学療法単独療法によってCR が得られた場合,全脳照射併用療法を省略することは治療選択肢の一つではあるが,無増悪生存期間が短くなる可能性がある。

註:高齢者初発PCNSL に対しての推奨については,本章CQ4 を参照のこと。

解説

全脳照射と化学療法併用による神経毒性発生の軽減を目的に,一般成人症例に対する化学療法のみでの初期治療も試みられている。

BONN プロトコールによる第Ⅱ相試験では,高用量のMTX(5 g/m2),VCR,イホスファミド,デキサメタゾン,CPA,ビンデシン,MTX/AraC/プレドニゾロン髄注による治療を行い,72 %の奏効割合と生存期間中央値(MST)50 カ月,無増悪生存期間の中央値21カ月との成績が報告された 1)(レベルⅡb)。認知障害は3 %にしか認められなかったが,治療関連死が9 %と高く,高齢者ではMST は34 カ月に留まった。

超大量MTX 単独(8 g/m2)療法を行った試験(NOA-03,NABTT96-07)では,神経毒性が軽減されたものの,早期に再発する傾向があり,無増悪生存期間の中央値が12.8 カ月にすぎず,再発後に全脳照射を施行する症例が多く認められた 2,3)(レベルⅡb)。このような症例では再発後の全脳照射による白質脳症の有意な増加がみられている。しかし,長期観察報告ではこれらの症例のMST は55.4 カ月に達し,特にdisease-specific survival は72.3 カ月間の観察期間時点で未だ中央値に達していないと報告された 4)(レベルⅡb)。Ekenel(MSKCC)らの後方視的研究の報告ではHD-MTX 療法を含む寛解導入療法後に全脳照射とHD-AraC 療法からなる地固め療法を行った方が治療成功生存期間が良好であった。ただし全生存期間には差がみられなかった 5)(レベルⅢ)

2010 年には,ドイツのグループによる世界初の大規模な多施設共同ランダム化第Ⅲ相試験(G-PCNSL-SG-1試験)の結果が報告された 6)(レベルⅠb)。初期治療としてHD-MTX 基盤療法+全脳照射群に対し,全脳照射をHD-AraC 療法により代替する照射回避群の比較検討を実際に治療された318 例で解析した。MST は全脳照射群で32.4 カ月,非照射群で37.1 カ月,無増悪生存期間の中央値は全脳照射群で18.3 カ月,非照射群で11.9 カ月であり,全脳照射を回避することで早期に再発する傾向を認めた。統計学的には,照射を回避しても生存が短縮しないとの非劣性の臨床試験のprimary endpoint であった仮説は検証できなかった。また,初期治療後CR を維持できた症例群での治療関連神経毒性の検討も行われた。全脳照射群では症状出現割合49 %,画像上の異常出現割合71 %であったのに対し,非照射群では各26 %,46 %に留まり,照射回避による神経毒性の軽減化の可能性が示唆される結果であった。ただし,全症例における初期治療中の死亡率は13 %であり,比較的高い全身性のリスクが認められている。

したがって,初期治療から全脳照射を省き,再発時に照射を含めたサルベージ治療を行う治療戦略では無増悪生存期間が短縮傾向を示し,遅発性神経障害発生の低下と生存期間では有意な低下は認めなかったものの,現状では初期治療での地固め全脳照射は推奨されるものと考えられる。ただし,高齢者PCNSL に対する照射に関しては,本章CQ4 を参照のこと。

文献

1)
Pels H, Schmidt-Wolf IG, Glasmacher A, et al. Primary central nervous system lymphoma:results of a pilot and phaseⅡ study of systemic and intraventricular chemotherapy with deferred radiotherapy. J Clin Oncol. 2003;21(24):4489-95.(レベルⅡb)
2)
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3)
Herrlinger U, Kuker W, Uhl M, et al. NOA-03 trial of high-dose methotrexate in primary central nervous system lymphoma:final report. Ann Neurol. 2005;57(6):843-7.(レベルⅡb)
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Gerstner ER, Carson KA, Grossman SA, et al. Long-term outcome in PCNSL patients treated with high-dose methotrexate and deferred radiation. Neurology. 2008;70(5):401-2.(レベルⅡb)
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Ekenel M, Iwamoto FM, Ben-Porat LS, et al. Primary central nervous system lymphoma:the role of consolidation treatment after a complete response to high-dose methotrexate-based chemotherapy. Cancer. 2008;113(5):1025-31.(レベルⅢ)
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Thiel E, Korfel A, Martus P, et al. High-dose methotrexate with or without whole brain radiotherapy for primary CNS lymphoma(G-PCNSL-SG-1):a phase 3, randomised, non-inferiority trial. Lancet Oncol. 2010;11(11):1036-47.(レベルⅠb)

CQ8
PCNSL に対する抗がん薬の髄注療法は推奨されるか?

推奨グレードC2
抗がん薬の髄注による有意な生存期間延長効果は検証されておらず,診断時髄液細胞診陰性例では髄注は推奨されない。

解説

PCNSL はしばしばくも膜下腔浸潤をきたすため,HD-MTX 療法にMTX を主とする髄注療法の併用が予防的治療として臨床試験でも施行されることが多い。髄注のルートとしては,脳室内Ommaya reservoir,腰椎穿刺などが挙げられる。しかし,症例対照比較後方視的研究では,MTX 髄注による生存期間延長,腫瘍制御,神経毒性に関する効果は認められなかった 1,2)(それぞれレベルⅢ,Ⅳ)。その他,AraC やヒドロコルチゾンも髄注に使用されるが,明らかな治療効果の検証はされていない。

さらに,髄注に伴う合併症としてOmmaya reservoir 感染,くも膜炎,白質脳症などが指摘されている。40 例以上の髄腔内播種陽性症例を検討した複数の報告(陽性率は10~20 %程度が主)からも,播種陽性による生命予後への影響は否定的な結果が多く 3)(レベルⅢ),またHD-MTX 療法やHD-AraC 療法により通常殺腫瘍細胞効果に足る髄液内濃度が得られるため,現在進行中の臨床試験では,予防的抗がん薬髄注は含まれないことが一般的となっている。しかし,初期導入療法に髄注を行わない治療法では,同じ化学療法に髄注を加えた場合と比べ,早期にかつ高率に再発を認めたとする小規模の非比較試験の報告もある 4,5)(レベルⅡb)。髄液細胞診陽性のPCNSL に対しては,MTX を主とする抗がん薬髄注療法が行われることもあるのが実情である。

文献

1)
Ferreri AJ, Reni M, Pasini F, et al. A multicenter study of treatment of primary CNS lymphoma. Neurology. 2002;58(10):1513-20.(レベルⅢ)
2)
Khan RB, Shi W, Thaler HT, et al. Is intrathecal methotrexate necessary in the treatment of primary CNS lymphoma? J Neurooncol. 2002;58(2):175-8.(レベルⅣ)
3)
Kiewe P, Fischer L, Martus P, et al. Meningeal dissemination in primary CNS lymphoma:diagnosis, treatment, and survival in a large monocenter cohort. Neuro Oncol. 2010;12(4):409-17.(レベルⅢ)
4)
Pels H, Juergens A, Glasmacher A, et al. Early relapses in primary CNS lymphoma after response to polychemotherapy without intraventricular treatment:results of a phaseⅡ study. J Neurooncol. 2009;91(3):299-305.(レベルⅡb)
5)
Pels H, Schmidt-Wolf IG, Glasmacher A, et al. Primary central nervous system lymphoma:results of a pilot and phaseⅡ study of systemic and intraventricular chemotherapy with deferred radiotherapy. J Clin Oncol. 2003;21(24):4489-95.(レベルⅡb)

CQ9
PCNSL に対して自家幹細胞移植を伴う大量化学療法は推奨されるか?

推奨グレードC2
初発PCNSL に対する自家幹細胞移植(ASCT)併用大量化学療法(HDC)(主にチオテパを含むレジメン)は,現段階では一般臨床としては推奨されない。

解説

自家幹細胞移植(autologous stem cell transplantation:ASCT)を併用した大量化学療法(high-dose chemotherapy:HDC)がPCNSL の初発,再発ともに試みられている。

The Groupe Ouest Est d’Etude des Leucemies et Autres Maladies du Sang(GOELAMS)は,初発PCNSL に対し,初期治療〔MBVP 療法:MTX,BCNU(国内未承認),VP16,メチルプレドニゾロン〕+全脳照射30 Gy の後,地固め療法としてBEAM レジメン(BCNU,エトポシド,AraC,メルファラン)による骨髄破壊性大量化学療法(myeloablative HDC)の第Ⅱ相試験を60 歳未満症例に施行し,4 年無増悪生存割合および全生存割合が各46 %,64 %であったと報告した 1)(レベルⅡb)

また,Ilerhaus らは,65 歳未満の初発症例に対し,同様に初期化学療法(HD-MTX),強化療法(AraC+チオテパ:国内販売中止)に続き地固め療法としてBCNU/チオテパによるmyeloablative HDC を施行した。5 年生存割合は69 %を予測しているが,地固めの後に全脳照射45 Gy を追加している 2)(レベルⅡb)。IlerhausらはさらにASCT 併用HDC でCR 非到達例にのみ全脳照射を追加する方式で13 例を治療し,3 年無増悪生存割合と3 年生存割合は77 %に達したと報告している 3)(レベルⅢ)

これらの報告では,生存割合は比較的良好な結果がみられているが,通常60 歳未満の若年症例のみが対象になり,PCNSL でしばしば経験する治療前のPS が低い症例や半数以上を占める60 歳以上の高齢者は通常治療対象とならないという選択バイアスが大きい結果であることに留意が必要である。また,全脳照射を併用した試験が多いこと,ときに10 %を越える治療関連死がみられることなど,現時点ではまだ試験的治療の段階にあるといえる。

Abrey らはBEAM(BCNU,エトポシド,AraC,メルファラン)による大量化学療法・自家移植を含む初発PCNSL に対する治療プロトコールの結果を報告しているが,無イベント生存期間の中央値5.6 カ月と予後は不良であった 4)(レベルⅡb)。よって,自家移植の成績は大量化学療法の内容に大きく依存しているといえる。これまで,PCNSL に対して良好な治療成績が報告されている大量化学療法レジメンの多くはチオテパを含んでいるが,日本国内では発売中止となっている。

以上より,ASCT 併用HDC は,若年者など条件の良い症例で生命予後の延長効果が期待されるが,治療関連死率も高く,現状は依然試験的治療である。

ASCT 併用HDC は確立されたエビデンスがなく,現段階での実施は臨床試験に限られる。

≪注意≫

チオテパ(thiotepa):国内販売中止

文献

1)
Colombat P, Lemevel A, Bertrand P, et al. High-dose chemotherapy with autologous stem cell transplantation as first-line therapy for primary CNS lymphoma in patients younger than 60 years:a multicenter phaseⅡ study of the GOELAMS group. Bone Marrow Transplant. 2006;38(6):417-20.(レベルⅡb)
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Illerhaus G, Marks R, Ihorst G, et al. High-dose chemotherapy with autologous stem-cell transplantation and hyperfractionated radiotherapy as first-line treatment of primary CNS lymphoma. J Clin Oncol. 2006;24(24):3865-70.(レベルⅡb)
3)
Illerhaus G, Muller F, Feuerhake F, et al. High-dose chemotherapy and autologous stem-cell transplantation without consolidating radiotherapy as first-line treatment for primary lymphoma of the central nervous system. Haematologica. 2008;93(1):147-8.(レベルⅢ)
4)
Abrey LE, Moskowitz CH, Mason WP, et al. Intensive methotrexate and cytarabine followed by high-dose chemotherapy with autologous stem-cell rescue in patients with newly diagnosed primary CNS lymphoma:an intent-to-treat analysis. J Clin Oncol. 2003;21(22):4151-6.(レベルⅡb)

CQ10
PCNSL に対してリツキシマブによる免疫(抗体)療法は推奨されるか?

推奨グレードC2
B‒cell マーカーのCD20 に対するモノクローナル抗体のリツキシマブは,血液脳関門透過性に欠き,PCNSL に対するリツキシマブの単独,併用療法ともに,現段階では一般臨床としては推奨されない。

解説

B-cell マーカーであるCD20 を標的とした抗CD20 モノクローナル抗体のリツキシマブは,全身性悪性リンパ腫ではCHOP 療法に上乗せするR-CHOP 療法がすでに標準治療法となっている。PCNSL においては,血液脳関門を透過しにくいなどの問題点があるものの,近年リツキシマブ併用化学療法の臨床試験がRTOG,Cancer and Leukemia Group B(CALGB),Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)などの臨床試験グループにより試みられてきている。

MSKCC のグループは,MTX 基盤化学療法にリツキシマブを併用した治療レジメンで,G-CSF による支持療法を要する好中球減少リスクが増大するものの,初期解析においてPCNSL の腫瘍制御と生存期間について良好な成績を報告している 1)(レベルⅡb)。リツキシマブの使用に関しては,エビデンスが未確立であり,使用に際しては臨床試験として実施することが望まれる。

リツキシマブ髄注の第Ⅰ相試験では,10 例の再発PCNSL症例に対しOmmaya reservoir 経由脳室内髄注のdose escalation が施行され,6 例で細胞診上改善が,4 例で消失が認められた。うち1 例では脳実質内再発病巣の消失もみられた 2)(レベルⅡb)。現在,リツキシマブ髄注とMTX 髄注を併用する試験が施行されている。

文献

1)
Shah GD, Yahalom J, Correa DD, et al. Combined immunochemotherapy with reduced whole-brain radiotherapy for newly diagnosed primary CNS lymphoma. J Clin Oncol. 2007;25(30):4730-5.(レベルⅡb)
2)
Rubenstein JL, Fridlyand J, Abrey L, et al. PhaseⅠ study of intraventricular administration of rituximab in patients with recurrent CNS and intraocular lymphoma. J Clin Oncol. 2007;25(11):1350-6.(レベルⅡb)

CQ11
PCNSL に対して血液脳関門破綻療法を併用した化学療法は推奨されるか?

推奨グレードC2
PCNSL に対する血液脳関門破綻療法(BBBD)併用化学療法は,血管内治療などの特殊な治療技術を要し,現状では試験的治療の段階にある。

解説

血液脳関門を開放し,薬剤の脳実質内到達度を亢進する目的で血液脳関門破綻療法(blood-brain barrier disruption:BBBD)を併用した化学療法が試みられてきている 1,2)(レベルⅡb,Ⅳ)。近年の主たる薬剤はD-マンニトールを用いた治療法であるが,MTX を動注する治療経験が最近報告された。149 症例での成績は,CR が57.8 %,生存期間中央値が3.1 年であった 3)(レベルⅢ)。BBBD は治療方法が複雑であり,特殊な専門治療チームの存在が欠かせないことから,一般化は難しいと考えられる。

文献

1)
Neuwelt EA, Goldman DL, Dahlborg SA, et al. Primary CNS lymphoma treated with osmotic blood-brain barrier disruption:prolonged survival and preservation of cognitive function. J Clin Oncol. 1991;9(9):1580-90.(レベルⅡb)
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Neuwelt EA, Diehl JT, Vu LH, et al. Monitoring of methotrexate delivery in patients with malignant brain tumors after osmotic blood-brain barrier disruption. Ann Intern Med. 1981;94(4 pt 1):449-54.(レベルⅣ)
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Angelov L, Doolittle ND, Kraemer DF, et al. Blood-brain barrier disruption and intra-arterial methotrexate-based therapy for newly diagnosed primary CNS lymphoma:a multi-institutional experience. J Clin Oncol. 2009;27(21):3503-9.(レベルⅢ)

CQ12
再発PCNSL に対してどのような治療が推奨されるか?

推奨グレードC1
再発PCNSL に対する標準治療は確立していないが,初期治療でHD‒MTX 療法反応症例では,HD‒MTX 療法の再投与を試みてもよい。

解説

PCNSL の多くは初期治療後のCR にもかかわらず再発を余儀なくされる。また10 %に近い症例では,全身性の再発をきたす。再発時のPCNSL に対する有効な標準治療は未だ確立していない。

初発時にHD-MTX 療法が奏効し,CR となった症例では,再発時にHD-MTX 療法の再投与が有効であることが多い。Plotkin らは後方視的解析で,初回の再治療での奏効割合は91 %(22 例中20 例が奏効),2 回目の再治療では100 %(4 例中4 例)であり,生存期間中央値(MST)も初回再発後61.9 カ月と良好であったことを報告した。有害事象は主として血液毒性であり,全延べ566 回の治療サイクルで,計10 回のグレード3 以上の有害事象が認められたに留まった 1)(レベルⅢ)。全脳照射単独は再発あるいは治療抵抗性PCNSL に対し画像上の奏効割合が74~79 %と報告されており,照射後のMST は10.9~16 カ月である 2-4)(レベルⅣ)

最近の再発時治療として注目される治療法には,以下の方法がある。
1)テモゾロミド(temozolomide:TMZ)(現在悪性リンパ腫には保険適応外)単独療法は25 %の奏効割合を示した 5)(レベルⅡb)。リツキシマブ+TMZ の第Ⅱ相試験も報告されており,奏効割合53 %,MST 14 カ月であった 6)(レベルⅢ)。TMZ は PCNSL には適応はないものの,期待される治療薬の一つである 7)(レベルⅢ)
2)リツキシマブの点滴静注あるいは髄注を,単独あるいは他剤との併用で行うプロトコールも最近検討されている。点滴静注では再発予防効果は明確ではなく,治療効果の確立には至っていない 8-10)(それぞれレベルⅣ,Ⅱb,Ⅳ)。リツキシマブ髄注の第Ⅰ相試験では,10 例の再発PCNSL に対しOmmaya reservoir 経由脳室内髄注のdose escalation が施行され,6 例で細胞診上改善が,4 例で消失が認められた。うち1 例では脳実質内再発病巣の消失もみられた 9)(レベルⅡb)

文献

1)
Plotkin SR, Betensky RA, Hochberg FH, et al. Treatment of relapsed central nervous system lymphoma with high-dose methotrexate. Clin Cancer Res. 2004;10(17):5643-6.(レベルⅢ)
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Rubenstein JL, Fridlyand J, Abrey L, et al. PhaseⅠ study of intraventricular administration of rituximab in patients with recurrent CNS and intraocular lymphoma. J Clin Oncol. 2007;25(11):1350-6.(レベルⅡb)
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Santisteban M, Nieto Y, De la Cruz S, et al. Primary central nervous system lymphoma treated with rituximab plus temozolomide in a second line schedule. Clin Transl Oncol. 2007;9(7):465-7.(レベルⅣ)
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Voloschin AD, Betensky R, Wen PY, et al. Topotecan as salvage therapy for relapsed or refractory primary central nervous system lymphoma. J Neurooncol. 2008;86(2):211-5.(レベルⅢ)

CQ13
PCNSL に対して眼科的検査,全身精査は必要か?

推奨グレードB
PCNSL では,眼球内リンパ腫や全身性悪性リンパ腫を合併することがあり,その有無を精査することが望ましい。

解説

眼科的検査が必要である理由は,PCNSL ではしばしば(約10~20 %)眼球内リンパ腫を認めることにある。眼球内リンパ腫単独症例は,脳やCSF への浸潤をきたすハイリスク群であり,未治療の場合,脳内への再発の根源となりやすい。したがって,PCNSL 患者に対しては眼科的精査(スリットランプ検査含め)が必須であり,IPCG によるステージング精査 1)(レベルⅤ),National Eye Instituteの診断指針にも含められている 2)(レベルⅤ)

また,全身性悪性リンパ腫の精査は,もし検出された場合に中枢神経系リンパ腫が転移性腫瘍である可能性が生じる点,中枢神経系以外の病巣を標的とする治療レジメンの検討が必要となってくる点など,治療上極めて重要である。全身精査の方法として,PET 検査の有用性も報告されている。MSKCC における小規模の後方視的研究で,166 例のPCNSL 疑い症例のうち,49 例で全身FDG-PET 検査が施行された。このうちの11 %の症例で全身FDG-PET 検査により全身性の悪性リンパ腫が検出され,8 %の症例では全身FDG-PET が唯一の全身病変を示す検査であった 3)(レベルⅣ)。この結果は,全身 FDG-PET 検査がCT で検出できない病巣を捉えることのできる可能性を示唆するもので,PCNSL のステージングにおける有用性を示している。

HIV 陽性の免疫不全症例では,PCNSL を発症するリスクが高いことが知られており,感染の有無をスクリーニングすることが望ましい。

文献

1)
Abrey LE, Batchelor TT, Ferreri AJ, et al. International Primary CNS Lymphoma Collaborative Group. Report of an international workshop to standardize baseline evaluation and response criteria for primary CNS lymphoma. J Clin Oncol. 2005;23(22):5034-43.(レベルⅤ)
2)
Nussenblatt RB, Chan CC, Wilson WH, et al. CNS and Ocular Lymphoma Workshop Group. International Central Nervous System and Ocular Lymphoma Workshop:recommendations for the future. Ocul Immunol Inflamm. 2006;14(3):139-44.(レベルⅤ)
3)
Mohile NA, Deangelis LM, Abrey LE. The utility of body FDG PET in staging primary central nervous system lymphoma. Neuro Oncol. 2008;10(2):223-8.(レベルⅣ)

CQ14
眼球内リンパ腫にはどのような治療があるか?

推奨グレードC1
眼球内リンパ腫に対しての標準的治療法は確立していないが,病状に応じ,MTX やAraC の全身投与,MTX の硝子体局注療法,眼球照射などが行われることがある。

解説

PCNSL ではしばしば眼球内リンパ腫を認める(約10~20 %)。腫瘍細胞浸潤は硝子体,網膜,脈絡膜,視神経のいずれにも生じうる。約半数の症例で霧視感,視野・視覚障害を訴える。したがって,PCNSL 患者に対しては眼科的精査(スリットランプ検査含め)が必須であり,IPCG によるステージング精査に含められている 1)(レベルⅤ)。また,National Eye Institute の診断指針にも述べられている 2)(レベルⅤ)。脳病変を伴わない眼球内リンパ腫単独の症例もあるが,ぶどう膜炎との鑑別がしばしば困難である。眼球内リンパ腫単独症例は,脳やCSF への浸潤をきたすハイリスク群であり,未治療の場合,脳内への再発の根源となりやすい。

治療法としては,眼球への放射線照射も有効であり,病巣の制御としては優れているとの意見もある 3)(レベルⅢ)。MTX やAraC の全身投与(大量療法)により眼球内にも薬剤は到達するが,至適濃度の獲得は不確定であり,再発も多いとされる 4)(レベルⅢ)。MTX の硝子体内局注療法は,ほぼ100 %奏効という有効性を示すが,生存期間の延長効果はみられず,高率で眼合併症をきたし(73 %),かつ視力障害も27 %で認められるとの報告がある 5,6)(レベルⅢ)。また最近ではリツキシマブの硝子体内局注療法も試みられている 7)(レベルⅣ)

予後に関しては,最近の報告で眼球内リンパ腫を合併するPCNSL の最大のシリーズ(221 例の解析)では,眼球内リンパ腫を認めないPCNSL 症例群の予後と同様であったと報告されている 8)(レベルⅢ)。また,IPCGによる眼球内リンパ腫のシリーズでは,83 例での治療内容(全身化学療法か全脳照射・硝子体注射などの局所療法)による中枢神経系への再発率や予後の差は明らかではなかったとしている 9)(レベルⅢ)。したがって,現状では,眼球内リンパ腫に対しての標準治療は確立しておらず,脳病変との合併である場合や眼球単独病巣の場合などの病状を考慮して,症例により全身化学療法,または照射や局注などの局所療法を行うことが多い。

文献

1)
Abrey LE, Batchelor TT, Ferreri AJ, et al. International Primary CNS Lymphoma Collaborative Group. Report of an international workshop to standardize baseline evaluation and response criteria for primary CNS lymphoma. J Clin Oncol. 2005;23(22):5034-43.(レベルⅤ)
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Nussenblatt RB, Chan CC, Wilson WH, et al. CNS and Ocular Lymphoma Workshop Group. International Central Nervous System and Ocular Lymphoma Workshop:recommendations for the future. Ocul Immunol Inflamm. 2006;14(3):139-44.(レベルⅤ)
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Ferreri AJ, Blay JY, Reni M, et al. International Extranodal Lymphoma Study Group(IELSG). Relevance of intraocular involvement in the management of primary central nervous system lymphomas. Ann Oncol. 2002;13(4):531-8.(レベルⅢ)
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Itty S, Pulido JS. Rituximab for intraocular lymphoma. Retina. 2009;29(2):129-32.(レベルⅣ)
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Grimm SA, McCannel CA, Omuro AM, et al. Primary CNS lymphoma with intraocular involvement: International PCNSL Collaborative Group Report. Neurology. 2008;71(17):1355-60.(レベルⅢ)
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Grimm SA, Pulido JS, Jahnke K, et al. Primary intraocular lymphoma:an International Primary Central Nervous System Lymphoma Collaborative Group Report. Ann Oncol. 2007;18(11):1851-5.(レベルⅢ)