がん診療ガイドラインについて

良質な診療ガイドラインの条件

近年,様々な分野の疾患等に対し診療ガイドラインが作られ,日常診療で広く利用されるようになった。診療ガイドラインの背景にあるのは根拠に基づく医療(Evidence-based Medicine)の考え方であり,EBM の実践に役立つように様々な配慮がなされた上で作られている。診療ガイドラインが世の中に与える影響は大きく,提供される医療の質の向上に寄与することが知られている。良質な診療ガイドラインが求められていることは言うまでもないが,“良質”な診療ガイドラインとはどのようなものか,どのようにして作られるべきか,その条件について検討したい。

作成の全ての手順において,透明性が確立され,作成方法が明示されていること

診療ガイドラインを作成する上で,科学性と客観性が重視される。

系統的な文献検索を行っていること

再現性を持った一定のルールに基づきエビデンスは検索され,恣意的に取捨選択されたものではない。

エビデンスの強さや推奨度を判定する方法について,はっきりとした手順が示されていること

科学としてのEBM の考え方に基づき,客観性を担保した上でエビデンスの評価が行われ,推奨度合いが決定されている。

CQ(Clinical Question)や推奨文が,明確に書かれていること

診療現場で利用されるため,CQや推奨文が,曖昧ではなく明確にわかりやすく書かれている。またより使いやすくするために,図表などの補助的なツールもあるとよい。

外部評価がなされていること

作成にかかわった関係者以外の第三者が,作られた診療ガイドラインの評価を行い,作成者へフィードバックを行い,その検討の後に公表されることが望ましい。

改訂の計画について示されていること

医学は日進月歩であり,一般的にガイドラインの寿命は5年程度といわれている。作成には大きな労力を要するが,予め明示された計画に基づき,新たなエビデンスを加味して定期的に改訂をする必要がある。

作成グループに様々な背景の人が含まれること

診療ガイドラインの作成には,様々な分野の医療の専門家が参加し,それぞれの視点からの意見を述べて討議を行う。EBM の理論や考え方に基づいて作成されるものであり,方法論の専門家から適宜,アドバイスを得て作られるべきである。またEBMの実践には患者の嗜好も考慮することが言われているが,診療ガイドライン作成に当たっても同様に,項目によっては患者やその家族から意見を求めることが望ましい。

作成に関わった人たちの様々な種類の利益相反について明示された上で,その対応が示されていること

診療ガイドラインの作成に,専門家はそれぞれの立場や考え方があって参加しているのが普通である。利益相反には,単に研究費等の金銭的な問題だけではなく学問的な考え方や特定の意見など,様々な種類がある。診療ガイドラインの作成に参加するにあたり,それらの有無を確認し,問題があると判断された場合,どのように対処したかということを明示する。ガイドラインの利用者は,それらの状況を知った上で,書かれている内容を解釈することになる。

診療ガイドラインの良質さを示すためには,その内容自体の妥当性,例えば個々のCQにおける推奨度の適切さについて評価や検討を行うことも,本来は望ましいと考えられる。しかしながらそれは容易でなく,今後の課題であろう。診療ガイドラインの質を評価するツールとして知られているAGREE(Appraisal of Guidelines for Research and Evaluation)やその改訂版であるAGREE IIでも,その作成過程において,科学性や客観性を最大限に担保するための様々な要件が示され,それらがどの程度守られているかが内容の中心となっている。まずは科学性と客観性こそが,診療ガイドラインの良質さを示す鍵であると思われる。

日本治療学会 がん診療ガイドライン統括・連絡委員会幹事委員会