はじめに

前付

1.ガイドラインサマリー

  1. CQ 1 高齢がん患者において,高齢者機能評価の実施は,がん薬物療法の適応を判断する方法として推奨されるか?

[推奨]

  1. 高齢がん患者において,がん薬物療法の適応を判断する方法として,高齢者機能評価を実施することを提案する.【推奨の強さ:❷(合意率86%),エビデンスの強さ:C】
  1. CQ 2 高齢者びまん性大細胞型B 細胞リンパ腫の治療方針の判断に高齢者機能評価は有用か?

[推奨]

  1. 高齢者びまん性大細胞型B 細胞リンパ腫(DLBCL)に対して,治療方針の判断には高齢者機能評価を使わないことを提案する.【推奨の強さ:❷(合意率71%),エビデンスの強さ:D】
  1. CQ 3 80 才以上の高齢者びまん性大細胞型B 細胞リンパ腫に対してアントラサイクリン系薬剤を含む薬物療法は推奨されるか?

[推奨]

  1. 慎重な治療選択のもとで,アントラサイクリン系薬剤を含む薬物療法を行うことを提案する.【推奨の強さ:❷(合意率79%),エビデンスの強さ:D】
  1. CQ 4 高齢者では切除不能進行再発胃がんに対して,経口フッ化ピリミジン製剤とシスプラチンまたはオキサリプラチンの併用は推奨されるか?

[推奨]

  1. HER2 陰性切除不能進行再発胃がんの高齢患者ではシスプラチンを使用しないことを提案する.【推奨の強さ:❷(合意率85%),エビデンスの強さ:C】
  2. オキサリプラチンの併用を行うことを提案する.【推奨の強さ:❷(合意率69%),エビデンスの強さ:C】
  1. CQ 5 結腸がん術後(R0 切除,ステージⅢ)の70 才以上の高齢者に対して,術後補助化学療法を行うことは推奨されるか? 行うことが推奨されるとすれば,どのような治療が推奨されるか?

[推奨]

  1. 根治切除されたステージⅢ結腸がん術後の70 才以上の高齢者に対して術後補助化学療法を行うことを提案する.【推奨の強さ:❷(合意率79%),エビデンスの強さ:C】
  2. 補助化学療法を行う場合には,オキサリプラチン併用療法を行わないことを提案する.【推奨の強さ:❷(合意率71%),エビデンスの強さ:C】
  1. CQ 6 切除不能進行再発大腸がんの高齢者の初回化学療法においてベバシズマブの使用は推奨されるか?

[推奨]

  1. 切除不能進行再発大腸がんの高齢患者の初回化学療法においてベバシズマブを使用することを提案する.【推奨の強さ:❷(合意率86%),エビデンスの強さ:C】
  1. CQ 7 一次治療で完全奏効(CR)が得られた高齢者小細胞肺がんに対して,予防的全脳照射(PCI)は推奨されるか?

[推奨]

  1. 一次治療でCR が得られた高齢者小細胞肺がんに対して,予防的全脳照射(PCI)を実施することを提案する.【推奨の強さ:❷(合意率77%),エビデンスの強さ:C】
  1. CQ 8 高齢者では完全切除後の早期肺がんに対してどのような術後補助薬物療法が推奨されるか?

[推奨]

  1. 高齢者において,術後病期ⅠA/ⅠB/ⅡA 期の術後補助化学療法としてテガフール・ウラシル(UFT)の投与を実施することを提案する.【推奨の強さ:❷(合意率79%),エビデンスの強さ:B】
  2. 高齢者において,術後病期Ⅱ~ⅢA 期の術後補助化学療法としてシスプラチン併用化学療法を実施することを明確に推奨することはできない.【推奨の強さ:なし,エビデンスの強さ:B】
  1. CQ 9 高齢者非小細胞肺がんに対して,免疫チェックポイント阻害薬の治療は推奨されるか?

[推奨]

  1. 高齢者非小細胞肺がんに対して免疫チェックポイント阻害薬の治療を実施することを提案する.【推奨の強さ:❷(合意率86%),エビデンスの強さ:B】
  1. CQ 10 高齢者ホルモン受容体陽性,HER2 陰性乳がんの術後化学療法でアントラサイクリン系抗がん薬を投与すべきか?

[推奨]

  1. 化学療法を必要とするベースラインリスクの場合,アントラサイクリン系抗がん薬を含む治療を行うことを提案する.【推奨の強さ:❷(合意率86%),エビデンスの強さ:B】
  1. CQ 11 高齢者トリプルネガティブ乳がんの術後化学療法でアントラサイクリン系抗がん薬の省略は可能か?

[推奨]

  1. アントラサイクリン系抗がん薬を省略しないことを提案する.【推奨の強さ:❷(合意率71%),エビデンスの強さ:B】
  1. CQ 12 高齢者HER2 陽性乳がん術後に対して,術後薬物療法にはどのような治療が推奨されるか?

[推奨]

  1. トラスツズマブと化学療法の併用治療は,化学療法のみと比べ,推奨される.【推奨の強さ:❶(合意率92%),エビデンスの強さ:B】

2.診療アルゴリズム

CQ01 CQ02 CQ03〜CQ12

3.重要用語の定義

①「高齢者」の定義

本ガイドラインでは,一部のCQ を除いて高齢者を暦年齢で具体的に示さず,エビデンスの評価や推奨決定の過程である程度の年齢幅を持たせて高齢者を定義した.治療の目的や内容によって「高齢であること」の臨床的な意義は異なり,さらに研究ごとに層別化やサブ解析の方法も異なるからである.

②「高齢者機能評価」と「高齢者総合機能評価」

老年医学では見つかった問題に対する介入を含めて高齢者総合機能評価(Comprehensive Geriatric Assessment:CGA)が用いられるが,臨床腫瘍学では老年医学のCGA の考え方を基本にしながらも,一般には介入を前提としていないことから,CGA と区別して高齢者機能評価(Geriatric Assessment:GA)が用いられる.したがって,本ガイドラインではGA を用いた.

(Ⅰ)作成組織・作成方針

1.作成組織

2.作成経過

2.1.作成方針

高齢者は多様な臨床背景を持ち,臨床試験に登録される割合も少なく臨床試験のエビデンスをそのまま参考にできないため,高齢者のがん薬物療法では標準治療の実施が時に困難となる.高齢化が進む日本において,患者・家族,医師や医療従事者にとって実地診療に有用となる診療ガイドラインが必要である.このような背景のもと,Minds2014 に準拠して,臨床試験のエビデンスとともに,益と害のバランス,高齢者特有の価値観など多面的な要因に基づいて治療方針を判断する道筋を具体的に示す目的で本ガイドラインを作成した.クリニカルクエスチョン(CQ)は,実際の診療で遭遇する,判断に迷う,そして臨床アウトカムの改善が見込まれるものを設定した.推奨は,意思決定にかかわる様々な立場のメンバーで構成された推奨パネルによって決定した.本ガイドラインは作成過程全体を通して不偏性と透明性を確保しながら作成された.

2.2.使用上の注意

本ガイドラインが想定する利用者は,日本国内において高齢がん患者のがん薬物療法に従事する医師,薬剤師,看護師,そして患者・家族である.

2.3.利益相反

公益社団法人日本臨床腫瘍学会の定める利益相反管理指針および管理規程に基づき,利益相反の自己申告を行っている.利益相反の自己申告は日本臨床腫瘍学会利益相反委員会により審議され,すべての委員・協力委員の本ガイドライン作成における適格性に問題のないことが確認されている.

2.4.作成資金

日本臨床腫瘍学会および日本癌治療学会より拠出した.

2.5.組織編成

ガイドライン作成委員に加えて,独立したシステマティックレビュー(SR)チーム,看護師・薬剤師の協力委員,Minds アドバイザーから構成された.

2.6.作成工程

2016 年4 月にガイドライン作成グループが発足,7 月初会合,8 月SR 委員および協力委員を決定,11 月スコープ初版,協力委員のコメントを反映させたうえで,2017 年3 月にスコープ最終版が完成した.2017 年5 月文献検索およびSR 開始,12 月SR 終了,2018 年1 月に推奨パネルを開催した.2018 年5 月に草案について作成委員による相互査読を行い,12 月に草案が完成した.外部評価とパブリックコメント(2018 年12 月15 日から2018 年12 月28 日)を反映させたうえで,2019 年2 月に最終化,7 月に公開した.

(Ⅱ)スコープ

1.高齢者のがん薬物療法の基本的特徴

1.1.臨床的特徴

前期高齢者は65~74 才,後期高齢では75 才以上といった規定が本邦には存在するが,実地診療においては暦年齢を参考にしたうえで全身状態を評価して治療方針を提案することになる.高齢者では,発がん率が高く高齢者特有のがん種が存在する,臓器機能障害や併存症を有している割合が高く多剤内服も多く薬物有害反応が生じやすい,軽度とされる薬物有害反応であっても身体機能低下などの機能障害に結びつきやすいなど,高齢者特有の問題が存在する.

また,このような高齢者特有の問題を内包していることから,適格規準に年齢上限の規定がない場合であっても結果的に臨床試験の対象から高齢者は除外されることが多い.つまり,臨床試験の対象と,実地診療で経験する多くの高齢者では,その背景が大きく異なる可能性があり,実地診療における高齢者では全身状態の評価が極めて重要である.

疾患の評価に加え,身体機能(ADL やIADL),認知機能,社会的要素,家庭環境などを確立した一定の評価手技に則って測定することを高齢者機能評価(geriatric assessment:GA)と呼び,一般高齢者の診療において老年医学の基本的考え方として確立している.一方,がん患者では,全身状態が急激に悪化することや,術後の影響が長期間にわたり続くことなど腫瘍学に特徴的な項目が存在するため,老年医学の考え方に加えて腫瘍学の考え方を反映して応用することが望まれる.

1.2.疫学的特徴

平成28 年度版「高齢社会白書」によると,わが国における65 才以上の高齢者人口は過去最高の3,392 万人に達し,総人口の26.7%を占め,さらに75 才以上の高齢者は12.9%と,わが国は超高齢社会を迎えている.国立がん研究センターがん情報サービスによると2014 年度のがん死亡者数は約37 万人,そのうちの83.7%が65 才以上,58.2%が75 才以上であり,高齢者の死亡原因として「がん」が40%を占めている.

1.3.診療の全体的な流れ

一般に,臨床試験においては暦年齢やPS,臓器機能が適格規準に含まれていることが多く,実地診療においてもこれらを用いて治療適応を判断することが行われている.しかしながら,高齢者においては,生理学的な変化による臓器・身体機能低下,多病・多剤内服,社会的機能低下など非高齢者とは異なった多様な患者背景が生じており,これらのリスクを見極めたうえで標準治療,何らかの減量治療,対症療法など,最善と思われる治療法を提案する必要がある.

国際老年腫瘍学会(International Society of Geriatric Oncology:SIOG)では,多様な背景を持つがん患者において,GA を行うことを推奨している.具体的な評価項目として,身体機能,認知機能,精神機能,多病(多剤内服),栄養,社会状況,老年症候群などである.これらを実施することで,通常の診察で把握できなかった問題の発見,有害事象の予測,予後予測の補助などにつながることが報告されている.

NCCN ガイドラインの2016 Older Adult Oncology にて,これらの多様性も考慮した高齢者における治療法決定のプロセスの考え方を参照できる.治療予定の患者ごとに,余命,意思決定能力,治療目標と価値観,リスクの評価を行ったうえで適切な治療法を提案することがポイントである.このプロセスにおいて,老年医学の専門家をはじめとする多職種が協力して対応する集学的なチーム医療の重要性が認識されているが,本邦においてはまだこの工夫は構築の途上にある.

今後,本邦で構築すべきことは,多様な背景を持つ患者に対して(認知機能や意思決定能力の低下を認める場合も含めて),有用と思われる意思決定支援を実施できる医療体制を工夫することであろう.患者にとって「最善の医療」は,本人の意思決定能力に配慮して,本人の治療希望を把握し,「最善の医療」について様々なレベルで相談する場を持ちながら支援を継続することで達成可能である.腫瘍学の考え方のみならず,老年医学の考え方を広く理解して,協力する体制を構築することが重要である.

2.診療ガイドラインがカバーする内容に関する事項

2.1.タイトル

高齢者のがん薬物療法ガイドライン

2.2.目的

生命予後の延長,副作用の軽減,QOL の維持

2.3.トピック

高齢がん患者のがん薬物療法

2.4.想定利用者・施設

がん診療を行う施設の医師,薬剤師,看護師,患者・家族

2.5.ガイドラインがカバーする範囲

がん薬物療法を受ける高齢者であるが,一部のCQ を除いて高齢者を暦年齢で具体的に示さず,エビデンスの評価や推奨決定の過程である程度の年齢幅を持たせて高齢者を定義した.また,薬物療法の適応になる基本的な条件を満たしており,PS 0 または1,明らかな認知障害を認めず,主な臓器に機能異常を認めない患者を想定した.なお,小細胞肺がんの予防的全脳放射線照射(PCI)は,薬物療法に深く関連する臨床的に重要なCQ として選択した(CQ 7).

本ガイドラインが対象とする疾患は呼吸器,消化器,乳腺,血液の主要臓器を原発とする悪性腫瘍に限られているが,作成組織の経験やスキル,作成にかけられる時間やコストを考慮して,とくに日常臨床で遭遇する機会の多い領域のがん薬物療法に焦点を当てた.

2.6.重要臨床課題
  1. どのような高齢患者ががん薬物療法の適応となるか?
  2. 高齢者の悪性リンパ腫にはどのような薬物療法が適切か?
  3. 高齢者の胃がんにはどのような薬物療法が適切か?
  4. 高齢者の大腸がんにはどのような薬物療法が適切か?
  5. 高齢者の小細胞肺がんにはどのような薬物療法が適切か?
  6. 高齢者の非小細胞肺がんにはどのような薬物療法が適切か?
  7. 高齢者の乳がんにはどのような薬物療法が適切か?
2.7.既存ガイドラインとの関係

国内には高齢者のがん薬物療法について臓器横断的な視点をもって作成された診療ガイドラインはない.海外には高齢者のがん薬物療法に関する総論的なガイドラインがあるが,本ガイドラインのようにエビデンス総体,益と害のバランス,患者の価値観など多面的な評価と,意思決定にかかわる様々な立場のメンバーで構成される推奨パネルによって推奨を決定した診療ガイドラインではない.

既存の臓器別ガイドラインの一部には高齢者のがん薬物療法について記載がある.本ガイドラインの作成メンバーは限られており,採用される考え方も限定的にならざるを得ないため,本ガイドラインと既存の臓器別ガイドラインの間にある程度の重複や相違があることは避けられない.しかし,診療ガイドラインの目的が患者や医療者の意思決定の支援であることを考えれば,多様な考え方を提示できるという意味で,いずれのガイドラインも重要である.

2.8.CQ リスト

課題1.どのような高齢患者ががん薬物療法の適応となるか?

  1. CQ1.高齢がん患者において,高齢者機能評価の実施は,がん薬物療法の適応を判断する方法として推奨されるか?

課題2.高齢者の悪性リンパ腫にはどのような薬物療法が適切か?

  1. CQ2.高齢者びまん性大細胞型B 細胞リンパ腫の治療方針の判断に高齢者機能評価は有用か?
  2. CQ3.80 才以上の高齢者びまん性大細胞型B 細胞リンパ腫に対してアントラサイクリン系薬剤を含む薬物療法は推奨されるか?

課題3.高齢者の胃がんにはどのような薬物療法が適切か?

  1. CQ4.高齢者では切除不能進行再発胃がんに対して,経口フッ化ピリミジン製剤とシスプラチンまたはオキサリプラチンの併用は推奨されるか?

課題4.高齢者の大腸がんにはどのような薬物療法が適切か?

  1. CQ5.結腸がん術後(R0 切除,ステージⅢ)の70 才以上の高齢者に対して,術後補助化学療法を行うことは推奨されるか? 行うことが推奨されるとすれば,どのような治療が推奨されるか?
  2. CQ6.切除不能進行再発大腸がんの高齢者の初回化学療法においてベバシズマブの使用は推奨されるか?

課題5.高齢者の小細胞肺がんにはどのような薬物療法が適切か?

  1. CQ7.一次治療で完全奏効(CR)が得られた高齢者小細胞肺がんに対して,予防的全脳照射(PCI)は推奨されるか?

課題6.高齢者の非小細胞肺がんにはどのような薬物療法が適切か?

  1. CQ8.高齢者では完全切除後の早期肺がんに対してどのような術後補助薬物療法が推奨されるか?
  2. CQ9.高齢者非小細胞肺がんに対して,免疫チェックポイント阻害薬の治療は推奨されるか?

課題7.高齢者の乳がんにはどのような薬物療法が適切か?

  1. CQ10.高齢者ホルモン受容体陽性,HER2 陰性乳がんの術後化学療法でアントラサイクリン系抗がん薬を投与すべきか?
  2. CQ11.高齢者トリプルネガティブ乳がんの術後化学療法でアントラサイクリン系抗がん薬の省略は可能か?
  3. CQ12.高齢者HER2 陽性乳がん術後に対して,術後薬物療法にはどのような治療が推奨されるか?

3.システマティックレビューに関する事項

3.1.実施スケジュール
スコープ作成:7 ヵ月
文献検索とシステマティックレビュー:7 ヵ月
推奨決定から最終化:1 年1 ヵ月
3.2.エビデンスの検索

①エビデンスタイプ

個別研究論文:ランダム化比較試験,非ランダム化比較試験,観察研究.

既存の臓器別ガイドライン:スコープ作成およびクリニカルクエスチョン設定では,造血器腫瘍診療ガイドライン(2013 年10 月),胃癌治療ガイドライン(2014 年5 月),大腸癌治療ガイドライン(2016 年11 月),EBM の手法による肺癌診療ガイドライン(2016 年12 月),科学的根拠に基づく乳癌診療ガイドライン(2015 年7 月)を参考にした.一方,システマティックレビューでは,これら既存のガイドラインの結果をそのまま利用せず,すべて新たにシステマティックレビューを行った.

②データベース

PubMed,The Cochrane Library,医中誌

③検索方法

介入の検索に関してはPICO フォーマットを用いた.

④検索対象期間

すべてのデータベースで1990 年から2017 年3 月まで

3.3.文献の選択基準,除外基準

本ガイドラインと同じクリニカルクエスチョンに対応する既存の診療ガイドラインまたはシステマティックレビュー論文のうち,Minds2014 に準拠して作成されたものは存在しなかったため,すべて新たにシステマティックレビューを行った.システマティックレビューは,採用条件を満たすランダム化比較試験を優先したが,採用条件を満たすランダム化比較試験が十分に存在しない場合には観察研究も対象とした.採択条件を満たす観察研究も存在しない場合は,ガイドライン作成委員とシステマティックレビューチームの協議により,クリニカルクエスチョンの解釈に変更を加えた(CQ 10 およびCQ 12).

3.4.エビデンスの評価と統合の方法

エビデンス総体の評価方法,エビデンス総体の示す強さの表現方法はすべてMinds2014 に準拠した.質的統合を基本としたが,CQ 11 についてはデザインの類似する介入研究が複数存在したため量的統合(メタアナリシス)を実施した.

4.推奨決定から最終化,公開に関する事項

4.1.推奨作成の基本方針

推奨作成の基本方針は,Minds2014 に準拠するとともに,とくに推奨パネルの構成員に看護師,薬剤師,患者の意見を代表する委員を加えることによって,医師以外の視点を取り入れるよう配慮した.推奨パネルの構成員は総論,造血器,消化管,呼吸器,乳腺の各領域で計10 名以上14 名以内とした.内訳は,作成グループから当該領域の2 名以上を含む7 名以上,協力委員から看護師または薬剤師合わせて2 名以上,一般2 名とした.推奨決定は修正デルファイ法に従い,領域サブリーダーが作成した推奨文案に対して,推奨パネルにおいて3 回まで投票を行い,3 分の2 以上の賛成により決定した.投票によって決定できない場合は「推奨なし」とした.なお,医療費や資源の利用についてはアウトカムに含めず推奨決定の段階で評価した.システマティックレビューチームは陪席して,パネル委員からの質問に対してのみ回答した.2018 年1 月8 日および14 日の2 回に分けて推奨パネルを開催した.

推奨パネルでは,アウトカム全般のエビデンスの強さ(表1),益と害のバランスを中心に,患者の価値観や好み,負担,医療コストや資源などを加味して総合的に勘案して決定した.推奨の強さは,1:強く推奨する,2:弱く推奨する(提案する)として,エビデンスの強さを併記した(表2).明確な推奨ができない場合は「なし」とした.

4.2.最終化

2018 年5 月に草案初稿に対して作成委員間で相互査読を行った.12 月に外部評価とパブリックコメントを反映させたうえで,2019 年2 月に最終化,7 月に公開した.

表1 推奨決定のための,アウトカム全般のエビデンスの強さ
表2 推奨の強さ,および,推奨文の記載方法
4.3.外部評価の具体的な方法

外部評価は,日本老年医学会,日本癌治療学会,日本臨床腫瘍学会の会員であり,本ガイドラインの作成から独立した有識者に依頼した.パブリックコメントは,日本臨床腫瘍学会および日本癌治療学会会員にメールで周知するとともに各学会ホームページ上に公開した(2018 年12 月15 日から2018 年12 月28 日).診療ガイドライン作成グループは外部評価の結果を吟味し,その結果を踏まえて内容の修正を行い,2019 年2 月にメール会議にて合意に至った.

4.4.公開

外部評価,パブリックコメントへの対応が終了した後,ガイドライン統括委員会が公開の最終決定を行った.

(Ⅲ)公開後の取り組み

1.公開後の組織体制

ガイドライン公開後も統括委員会および作成委員会は活動を継続し,診療ガイドラインの導入促進,有効性評価,診療ガイドラインの推奨に影響を及ぼす新たな研究の出現チェックなどを行う.システマティックレビューチームおよび協力委員は解散する.

2.導入

印刷版および電子版によって公開する.印刷版は書籍として,電子版は日本臨床腫瘍学会および日本癌治療学会ホームページ上で公開する.ガイドラインの活用を促進するために,学術集会等で周知を図る.本ガイドラインには一般向けサマリーが掲載されている.

3.有効性評価

本ガイドラインの有効性の評価のために,診療ガイドラインの導入によって患者アウトカムが改善したかどうかを,クオリティーインディケータ(QI)により評価することを検討する.また,本ガイドラインに対する患者と医療者の満足度の評価を予定する.

4.改訂

本ガイドラインは,新しいエビデンスや医療情勢の変化によって定期的な改訂が必要である.およそ3 から4 年を目途に改訂を検討する.本ガイドラインが対象とする疾患は呼吸器,消化器,乳腺,血液の主要臓器を原発とする悪性腫瘍に限られているが,今後対象とすべき重要な課題には,その他の臓器を原発とする悪性腫瘍,支持療法,フォローアップ(サバイバーシップ),患者指導も含まれる.