クリニカルクエスチョン・推奨一覧

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No. クリニカルクエスチョン 推奨 エビデンスレベル
CQ1 内視鏡的切除されたpT1 大腸癌の追加治療の適応基準は何か?
  1. 垂直断端陽性の場合は外科的切除を追加することを強く推奨する。(推奨度1)
C
  1. 切除標本の組織学的検索で以下の一因子でも認めれば,追加治療としてリンパ節郭清を伴う腸切除を弱く推奨する。(推奨度2)
    (1)T1b(SM 浸潤度1,000μm 以上)
    (2)脈管侵襲陽性
    (3)低分化腺癌,印環細胞癌,粘液癌319)
    (4)浸潤先進部の簇出(budding)BD2/3319)
  2. 注)
    垂直断端陽性とは,癌が粘膜下層断端に露出しているものである。
    脈管侵襲とは,リンパ管侵襲と静脈侵襲をいう。
B
CQ2 最大径2 cm 以上の腫瘍性病変に対する内視鏡的切除としてESD は推奨されるか? 最大径2 cm 以上の病変に対する内視鏡的切除法にはEMR,分割EMR,ESD がある。
内視鏡的切除にあたっては,正確な術前内視鏡診断が必須条件であり,術者の内視鏡的切除の技量を考慮して切除法を選択する。
癌を疑う病変であれば一括切除が原則であり一括EMR が困難と判断すれば,しかるべき技量をもった内視鏡医によるESD(一括切除)を強く推奨する。(推奨度1)
B
CQ3 早期大腸癌の内視鏡的切除後にサーベイランスは推奨されるか?
  1. 内視鏡切除の結果が一括切除かつ断端陰性の場合には異時性大腸腫瘍の検索を目的として1 年前後の内視鏡検査によるサーベイランスを行うことを弱く推奨する。(推奨度2)
B
  1. 内視鏡切除の結果が分割切除,水平断端陽性の場合には局所再発のリスクが上昇するために,6 カ月前後での内視鏡検査によるサーベイランスを行うことを強く推奨する。(推奨度1)
C
  1. pT1 癌で追加腸切除を行わなかった場合には,リンパ節転移や遠隔転移による再発の検索を目的として,内視鏡検査に加えてCT 検査などの画像診断や腫瘍マーカーなどを用いたサーベイランスを行うことを強く推奨する。(推奨度1)
B
CQ4 大腸癌に対して腹腔鏡下手術は推奨されるか? 腹腔鏡下手術は大腸癌手術の選択肢の1 つとして行うことを弱く推奨する。(推奨度2)ただし,横行結腸癌および直腸癌に対する腹腔鏡下手術の有効性は十分に確立されていないことを患者に説明したうえで実施する。
局所進行癌,肥満や癒着症例は難度が高いので,個々の手術チームの習熟度を十分に考慮して適応を決定する。
B
CQ5 直腸癌に対して側方郭清は推奨されるか? 腫瘍下縁が腹膜反転部より肛門側にあり,壁深達度がcT3 以深の直腸癌には側方郭清を推奨する。側方リンパ節転移の診断基準は確立されておらず,現時点では側方郭清を省略できる症例の基準は明らかではない。
  1. 術前または術中診断にて側方リンパ節転移陽性の場合は,側方郭清を行うことを強く推奨する。(推奨度1)
C
  1. 術前または術中診断にて側方リンパ節転移陰性の場合の側方郭清の生存改善効果は限定的であるが,局所再発の抑制効果が期待できるため行うことを弱く推奨する。(推奨度2)
B
CQ6 切除不能な遠隔転移を有する症例に原発巣切除は推奨されるか? 他の療法では制御困難な原発巣による症状があり,過大侵襲とならない切除であれば,原発巣を切除して全身薬物療法を行うことを強く推奨する。(推奨度1)
原発巣による症状がない場合の原発巣切除の有用性は確立されていない。
C
CQ7 腹膜転移を認めた場合,原発巣と同時に切除することは推奨されるか? 限局性転移(P1,P2)で過大侵襲とならない切除であれば,原発巣と同時に腹膜転移を切除することを強く推奨する。(推奨度1) C
CQ8 肝転移と肺転移の双方を同時に有する症例の転移巣の切除は推奨されるか? 肝転移と肺転移の双方を同時に有する症例に対する切除の有効性が示されており,切除可能な肝肺転移に対しては,切除することを弱く推奨する。(推奨度2) D
CQ9 切除可能肝転移に対する術前補助化学療法は推奨されるか? 切除可能肝転移に対する術前化学療法の有効性と安全性は確立されていない。(推奨度なし) C
CQ10 薬物療法が奏効して切除可能となった肝転移,肺転移に対する切除は推奨されるか? 肝または肺に限局した転移例で薬物療法が奏効して切除可能となった場合には,切除することを弱く推奨する。(推奨度2) C
CQ11 薬物療法が奏効して画像上消失した肝転移巣の切除は推奨されるか? 薬物療法にてCT とMRI 画像上でともに消失した肝転移巣は,切除することを弱く推奨する。(推奨度2) D
CQ12 大腸癌肝転移に対する腹腔鏡下手術は推奨されるか? 大腸癌肝転移に対する腹腔鏡下肝切除は十分に経験を積んだ手術チームが慎重に適応を考慮し行う場合,その安全性は開腹手術とほぼ同等であることが確認されている。ただし,有効性については,十分なエビデンスはなく,大腸癌肝転移に対する標準術式ではない点を留意する必要がある。(推奨度なし) D
CQ13 肝転移巣に対する熱凝固療法は推奨されるか? 熱凝固療法の有効性を示す報告は少なく,局所再発のリスクが高いため,切除可能であれば,まず切除を考慮すべきである。
  1. 切除可能な肝転移巣に対しては肝切除が標準療法であり,熱凝固療法を第一選択療法とはしないことを強く推奨する。(推奨度1)
C
  1. 切除不能な肝転移巣に対しては行わないことを弱く推奨する。(推奨度2)
C
CQ14 直腸癌局所再発の切除は推奨されるか? 直腸癌局所再発でR0 切除が可能と判断した場合に手術を行うことを弱く推奨する。(推奨度2)
ただし,手術侵襲とリスク,術後のQOL を考慮したうえで適応を決定すべきである。骨盤内臓全摘,骨性骨盤壁切除などは高難度であり,個々の手術チームの習熟度を十分に考慮する必要がある。
C
CQ15 Stage Ⅲ結腸癌に術後補助化学療法は推奨されるか?
  1. Stage Ⅲ結腸癌に対してoxaliplatin 併用療法を行うことを強く推奨する。(推奨度1)
A
  1. Stage Ⅲ結腸癌に対してフッ化ピリミジン単独療法を行うことを弱く推奨する。(推奨度2)
A
CQ16 Stage Ⅲ大腸癌術後補助化学療法の治療期間は6 カ月が推奨されるか? 術後補助化学療法の治療期間は6 カ月を強く推奨する。(推奨度1) A
ただし,CAPOX 療法を再発低リスクの結腸癌に用いる場合は,3 カ月行うことを弱く推奨する。(推奨度2) A
CQ17 70 歳以上の高齢者に術後補助化学療法は推奨されるか? PS が良好で主要臓器機能が保たれており,化学療法に対してリスクとなるような基礎疾患や併存症がなければ,70 歳以上の高齢者にも,術後補助化学療法を行うことを強く推奨する。(推奨度1) A
CQ18 Stage Ⅱ大腸癌に術後補助化学療法は推奨されるか? 再発高リスクの場合には補助化学療法を行うことを弱く推奨する。(推奨度2) B
だだし,それ以外は行わないことを弱く推奨する。(推奨度2) B
CQ19 遠隔転移巣切除後の補助化学療法は推奨されるか? 肝転移治癒切除後の術後補助化学療法を行うことを弱く推奨する。(推奨度2) B
肺転移など肝転移以外の遠隔転移巣治癒切除後の術後補助化学療法を行うことを弱く推奨する。(推奨度2) D
CQ20 切除不能大腸癌に対する一次治療として分子標的治療薬の併用は推奨されるか? Bevacizumab,抗EGFR 抗体薬のいずれかを併用することを強く推奨する。(推奨度1) A
CQ21 切除不能大腸癌に対する二次治療として分子標的治療薬の併用は推奨されるか?
  1. 血管新生阻害薬を併用することを強く推奨する。(推奨度1)
A
  1. 抗EGFR 抗体薬を併用することを弱く推奨する。(推奨度2)
A
CQ22 切除不能大腸癌に対する後方治療としてregorafenib,FTD/TPI は推奨されるか? フッ化ピリミジン,oxaliplatin,irinotecan に不応または不耐(投与不適を含む)となった場合の後方治療として,regorafenib およびFTD/TPI 療法を行うことを強く推奨する。(推奨度1) A
CQ23 大腸癌に免疫チェックポイント阻害薬は推奨されるか? MSI-H 切除不能大腸癌既治療例に,抗PD-1 抗体薬療法を行うことを強く推奨する。(推奨度1) B
CQ24 肝転移に対する肝動注療法は推奨されるか? 全身薬物療法が可能な場合,切除不能肝転移に対して肝動注療法を行わないことを強く推奨する。(推奨度1) C
CQ25 R0 切除可能な直腸癌に対して術前治療は推奨されるか?
  1. 局所再発リスクが高い直腸癌の場合は,術前化学放射線療法を行うことを弱く推奨する。(推奨度2)
B
  1. 術前化学療法(放射線照射なし)の有効性は確立していない。行わないことを弱く推奨する。(推奨度2)
C
CQ26 遠隔転移のない切除不能な局所進行再発直腸癌に対する化学放射線療法は推奨されるか? 腫瘍縮小によりR0 切除が可能になると期待される症例に対しては,切除を指向した化学放射線療法を行うことを弱く推奨する。(推奨度2)
一方,切除が望めない場合には継続的な腫瘍制御という目的で,全身薬物療法を実施することが妥当と考える。局所病変への照射に関しては症状の有無,期待される効果,予測される有害事象を考慮し実施するのが望ましい。
B
CQ27 閉塞性大腸癌にステント治療は推奨されるか?
  1. 薬物療法の適応とならない患者における,症状緩和を目的としたステント治療は,患者の身体的・心理的負担が少なく,治療の選択肢として行うことを弱く推奨する。(推奨度2)
B
  1. 薬物療法の適応となる患者におけるステント治療は,行わないことを弱く推奨する。(推奨度2)
B
  1. 根治的外科的切除を前提とした術前の閉塞解除処置(bridge to surgery:BTS)としてのステント治療は,緊急手術を回避し術後合併症のリスクを軽減するが,穿孔等が長期予後を悪化させる可能性も指摘されている。(推奨度なし)
C
CQ28 大腸癌治癒切除後に多重がん(多発癌および重複がん)のサーベイランスは推奨されるか?
  1. 大腸癌切除症例における異時性大腸癌の発生頻度は一般集団より高く,定期的な大腸内視鏡検査を行うことを強く推奨する。(推奨度1)
B
  1. 重複がんを標的とした術後サーベイランスの有効性は示されていないため,行わないことを弱く推奨する。(推奨度2)がん検診の必要性を啓発し,定期的な検診を勧めるのが妥当である。
C
  1. 遺伝性大腸癌に対しては,適切なカウンセリングのもとに多重がんのサーベイランスを実施する必要がある(『遺伝性大腸癌診療ガイドライン』参照)226)