刊行にあたって

日本癌治療学会はがんに関する診療ガイドラインを多数作成していますが,臓器・領域横断的な学会として,特にがんの支持療法に関するガイドラインに力を入れています。その代表的なものが「G‒CSF 適正使用ガイドライン」です。

「G‒CSF 適正使用ガイドライン」をたどると,1994 年にASCO(American Society of Clinical Oncology)においてG‒CSF 使用に関するガイドライン(1996 年改訂)が出されたことを受け,当学会では1998 年にG‒CSF 適正使用ガイドライン作成小委員会が設置され,2001 年に初版のガイドラインが本会機関誌IJCO に論文として掲載されています。その後,間をおいて2011 年からG‒CSF 適正使用ガイドライン改訂ワーキンググループが中心となって改訂作業を進め,「G‒CSF 適正使用ガイドライン2013 年版」が第1 版として刊行となりました。ガイドライン2013 年版は,その後,毎年部分改訂を重ね2018 年のversion 5 まで第1 版として発行されています。そして今回,4 年の間隔をおいて全面的な改訂となり,「G‒CSF 適正使用ガイドライン2022 年10 月改訂第2 版」として刊行されるに至りました。

今回の改訂の最大の特徴は「Minds 診療ガイドライン作成の手引き2014」「Minds 診療ガイドライン作成マニュアル2017」に準拠して科学的なエビデンスのもとに作成されたということです。この手法では膨大な資料を適切に整理し,システマティックレビューを行い,科学的なエビデンスをまとめることが必要になります。高野利実委員長をはじめとするG‒CSF 適正使用ガイドライン改訂ワーキンググループの先生方,そしてそれを支えたシステマティックレビューチームの先生方には大変なご苦労であったと思います。ここに深く感謝を申し上げます。

近年は分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬など,それぞれに特異的な有害事象を見かけることも増えましたが,やはり,従来通り薬物療法の中心は殺細胞性抗がん薬であり,最も懸念すべき有害事象は骨髄抑制であることは変わらないと思います。さらに高齢の患者が急速に増えている現況を考えると,骨髄抑制への対応策としてのG‒CSF の使用は現場で増えていると実感しています。幅広い医療従事者に本ガイドラインが活用され,安全かつ有効にがん薬物療法が実施されることを期待しています。

2022 年10 月

一般社団法人日本癌治療学会
理事長 土岐 祐一郎