第4 版 序

この度,『GIST 診療ガイドライン2022 年4 月改訂第4 版』を刊行する運びとなりました。初めての『Minds 診療ガイドライン作成の手引き2014』『Minds 診療ガイドライン作成マニュアル2017』(Minds2014/2017)準拠だったこともあり,何もかも手探りでの改訂作業となりましたが,何度となく皆で議論を重ね,ようやく第4 版刊行にこぎつけることができました。この場をお借りして,改訂にご尽力くださった全ての皆様に,心より御礼申し上げます。

GIST の診療は有効な分子標的薬開発を機に,大きな転換点を迎えました。その一方で,本邦と海外では医療状況が異なる部分があり,わが国の実臨床に即したガイドラインが求められていました。本ガイドライン初版は2008 年3 月に刊行され,その後,分子標的薬の適応拡大や新たな分子標的薬の開発に伴って改訂を重ね,第3 版が2014 年4 月に刊行されました。

そして,3~5 年を目途に最新の知見に基づいた内容に改訂するという方針を踏まえて,新たな知見の反映および改善の必要性が指摘されていた箇所を変更すべく,2017 年から第4 版作成作業を開始しました。第4 版はより信頼性の高い診療ガイドラインを目指して,すでに本邦診療ガイドライン作成手法の標準となりつつあったMinds2014/2017 に準拠することとなりました。これに際し,改訂の中核を担う改訂ワーキンググループとは別に,独立したシステマティックレビューチーム(SR チーム),さらに,GIST 診療の専門家4 名からなる外部評価のための評価ワーキンググループが設置されました。

Minds2014/2017 において,診療ガイドラインは「診療上の重要度の高い医療行為について,エビデンスのシステマティックレビューとその総体評価,益と害のバランスなどを考慮して,患者と医療者の意思決定を支援するために最適と考えられる推奨を提示する文書」と定義されています。このことから,第4 版では患者の価値観や希望を取り入れ,医療従事者のみならず,患者・家族にとっても適切でわかりやすい情報提供を行うべく,委員には画像診断・病理診断・外科治療・内科治療の4 領域の医師に加えて,多職種の専門家(統計・薬学・看護),GIST 患者・家族の代表者にも参加していただいています。

本ガイドラインにおけるClinical Question(CQ)は,極力明快なClosed Question 形式とし,推奨決定会議の結果を開示することで,作成過程の透明性を確保しています。推奨決定に際してはGIST が稀少腫瘍であることを鑑みて,できるだけエビデンスは重視しつつも,益と害のバランスのみならず,患者の希望,医療経済的観点などを総合的に考慮しています。そのため,エビデンスが限定的であっても,専門家によるコンセンサスの下で「強い推奨」をつけたCQ もあります。

独特な手法によるシステマティックレビュー作業に不慣れなこともあり,エビデンスの評価・統合過程で多くの時間を費やしたため,当初予定よりも改訂完了が遅れましたが,本ガイドラインがGIST 診療に関わる医療従事者と患者の共同意思決定および最適な医療提供のための道標となることを心から願っています。また,患者代表として本ガイドライン作成に携わり,発刊を間近に控えながら,GIST の病魔との戦いを終えられた故・荒木 美奈子委員のご冥福をお祈りするとともに,第4 版改訂への貢献に対し敬意を表します。

2022 年2 月

がん診療ガイドライン作成・改訂委員会
GIST 診療ガイドライン改訂ワーキンググループ
委員長 廣田 誠一