クリニカルクエスチョン・推奨一覧

※CQ No.部分をクリックすると解説へ移動します。

診断

No. クリニカルクエスチョン 推奨 グレード
CQ1-1 頭頸部癌のN 病期診断においてCT は有用か? 頭頸部癌のN 病期診断においてCT は有用である。 B
CQ1-2 頭頸部癌のT 病期診断においてMRI は有用か? 頭頸部癌のT 病期診断においてMRI は有用である。 B
CQ1-3 甲状腺癌の病期診断において超音波検査は有用か? 甲状腺癌の病期診断において超音波検査は有用である。 B
CQ1-4 頭頸部癌において穿刺吸引細胞診は有用か? 高い感度,特異度,正診率からも穿刺吸引細胞診は頭頸部癌のリンパ節転移診断,唾液腺癌,甲状腺癌などに対する原発巣質的診断における必須の評価法として有用である。なお,他の画像診断と組み合わせて診断精度が向上することを同時に理解すべきである。 B
CQ1-5 頭頸部癌治療前における重複癌の検索は必要か? 頭頸部癌治療前には頭頸部領域のみならず,食道を中心とした上部消化管内視鏡検査による重複癌検索が必須である。また,多量飲酒・喫煙歴のある患者は重複癌についてのハイリスク症例と考えられ,肺も含めた検索が推奨される。 A
CQ1-6 頭頸部癌の病期診断においてFDG-PET は有用か? PET は病期診断におけるN・M 因子の診断のみならず,再発診断についても有用である。 B
CQ1-7 頭頸部癌治療後の経過観察に画像検査は有用か? 治療後のベースライン画像(CT/ MRI)は再発腫瘍の検出に役立つため推奨される。 B
化学放射線療法後の治療効果判定にPET-CT は有用である。 B
CQ1-8 頭頸部癌治療後の経過観察に血液検査は有用か? 経過観察における腫瘍マーカー測定の有用性は確立していない。 C1
血中サイログロブリン測定は甲状腺癌全摘後の再発の早期発見に有用である。 A
頸部に対する放射線治療後は長期にわたる甲状腺機能検査が必要である。 B

口腔癌(舌癌)

No. クリニカルクエスチョン 推奨 グレード
CQ2-1 舌癌の深達度をどのようにして測定するべきか? 画像検査ではMRI,US による測定が優れている。またCT や触診の有用性も報告されている。 B
CQ2-2 舌癌に対する密封小線源治療の適応は? 舌癌の密封小線源治療は主として病期Ⅰ・Ⅱに適応される。 C1
CQ2-3 早期舌癌においてセンチネルリンパ節生検は有用か? 信頼性の高い診断ツールとして有用である。 C1
CQ2-4 舌扁平上皮癌病期Ⅰ・Ⅱ症例に対して予防的頸部郭清術を行うことは,経過観察を行い再発時に頸部郭清術を行う場合に比べて,生存率の向上に寄与するか? 寄与する。ハイリスク群に対して予防的頸部郭清術を施行する。 C1
CQ2-5 舌・口腔癌において,肩甲舌骨筋上頸部郭清術はN1 症例(レベルⅠ)への適応は許容されるか? 肩甲舌骨筋上頸部郭清術(supraomohyoid neck dissection:SOHND)はN0 症例に対する予防的頸部郭清術として用いられる。現時点でN+症例に対するSOHND の適応については確立されていない。N1 症例に適用する際にはレベルⅣを含めたExtended SOHND も考慮する。 C2
CQ2-6 局所進行舌癌に対して術前化学療法は有用か? 口腔癌に対する術前化学療法は十分な科学的根拠がなく,行うことは勧められない。 C3
CQ2-7 舌半側切除に対する適切な再建方法は? 舌半側切除程度の切除後の再建では一期縫縮,ないしは薄い皮弁で再建を行い,会話・摂食機能を保持する。 C1
CQ2-8 舌亜全摘出以上の症例において,隆起型の舌の再建は術後機能の保持に有用か? 舌亜全摘出以上の症例において,隆起型の舌の再建は術後の嚥下および構音機能の保持に有用である。 B

上顎洞癌

No. クリニカルクエスチョン 推奨 グレード
CQ3-1 上顎洞扁平上皮癌眼窩壁浸潤症例において,眼球を温存することは生存率を低下させるか? 眼窩骨膜までの浸潤であれば,眼窩内容を温存しても局所制御率や生存率は低下しない。 C1
手術前後の放射線照射は眼窩内容温存に寄与する。 C1
CQ3-2 頭頸部癌に対する超選択的動注化学療法は臓器機能温存に寄与するか? 現在まで超選択的動注化学療法の有用性を明確に示した報告はないが,放射線治療と同時併用療法は,部位・病期によっては臓器機能温存に寄与する可能性がある。 C1

上咽頭癌

No. クリニカルクエスチョン 推奨 グレード
CQ4-1 局所進行上咽頭癌において,放射線治療に化学療法を同時併用することは生存率の向上に寄与するか? 病期Ⅱ〜ⅣB の上咽頭癌の放射線治療においては,化学療法の同時併用が生存率の向上に寄与する。 B
CQ4-2 上咽頭癌において導入化学療法は有効か? 上咽頭癌に対する導入化学療法は一定の有効性の報告がみられるが,適応は慎重な判断を要する。 C2
CQ4-3 早期上咽頭癌(病期Ⅱ)に化学放射線療法は有用か? 早期上咽頭癌(病期Ⅱ)に対して化学放射線療法を行うことを考慮してよい。 C1
CQ4-4 上咽頭癌の化学放射線療法後に追加化学療法を行うことは推奨されるか? 科学的根拠は不十分であるが,追加化学療法を行うよう勧められる。 C1

中咽頭癌

No. クリニカルクエスチョン 推奨 グレード
CQ5-1-1 中咽頭癌においてヒトパピローマウイルス(HPV)感染の検査(p16 免疫染色)は必要か? p16 免疫染色検査は中咽頭癌のTNM 分類の決定のために必要な検査である。 A
CQ5-1-2 中咽頭癌においてHPV 感染の有無は予後予測因子となるか? HPV 感染の有無は中咽頭癌の治療感受性や予後の予測に有用である。 C1
CQ5-1-3 中咽頭癌においてHPV 感染の有無で治療強度を変更することは推奨されるか? HPV感染の有無により中咽頭癌の治療方法を選択することの有用性は確立していない。 C3

下咽頭癌

No. クリニカルクエスチョン 推奨 グレード
CQ6-1 早期下咽頭癌において喉頭を温存する治療方針は推奨されるか? 喉頭温存を目指し,根治照射あるいは喉頭温存手術(経口的切除,外切開による切除)のいずれかを個々の症例に応じて選択することが推奨される。 B
CQ6-2 下咽頭喉頭全摘出術後の再建方法として遊離空腸移植は有用か? 実臨床において,術後機能や術後合併症などの観点から安全で確立された方法であり,有用である。 B

喉頭癌

No. クリニカルクエスチョン 推奨 グレード
CQ7-1 早期喉頭癌に対して喉頭を温存する治療方針は推奨されるか? 喉頭温存を目指し,根治照射あるいは喉頭温存手術(経口的切除,外切開による切除)を症例に応じて選択することが推奨される。 A
CQ7-2 早期喉頭癌の放射線治療後再発に対して喉頭温存手術は適応となるか? 腫瘍の進展範囲,全身状態などを十分考慮する必要はあるが,早期声門癌では喉頭温存手術(経口的切除,外切開による切除)の高い有効性・安全性から適応となる。 B
CQ7-3 早期喉頭癌(声門癌)に対して加速照射法(寡分割照射)は有用か? 1 回線量が2. 25〜2. 4 Gy の加速照射法(寡分割照射)は早期喉頭癌(声門癌)の治療オプションの一つと考えられる。 C1

甲状腺癌

No. クリニカルクエスチョン 推奨 グレード
CQ8-1 甲状腺微小癌(1cm 以下)に対する治療方針として,経過観察は許容されるか? 甲状腺微小癌でも高リスク因子を持つものは積極的治療が推奨され,無症候性の微小癌については一般には甲状腺葉(峡部)切除が適用される。ただし,超音波検査をはじめとする定期的なactive surveillance が可能な施設に限り,十分な説明と同意の下で経過観察が許容される場合がある。 C1
CQ8-2 甲状腺乳頭癌における気管周囲郭清術は推奨されるか? 気管傍リンパ節転移が疑われる症例では,気管周囲郭清術(central neck dissection:CND)が推奨される。一方で予防的CND については,生存率の向上に寄与するとするエビデンスは低いが,後発リンパ節転移に対する再手術後合併症のリスクを合わせて考慮する必要がある。 B
CQ8-3 甲状腺乳頭癌に対して甲状腺全摘術を行うことは,甲状腺葉切除術に比べて生存率の向上に寄与するか? 高リスク因子を持つ甲状腺乳頭癌に対しては全摘術が推奨される。 B
CQ8-4 甲状腺分化癌において術後アブレーションは生存率の向上に寄与するか? 再発転移高リスク群において術後アブレーションは局所再発の抑制と生存率の向上に寄与するとされる。 B
再発転移中間リスク群の一部については術後アブレーションが生存率の向上に有用とする報告もあるが,意見は定まっていない。 C2
再発転移低リスク群においては術後アブレーションが生存率の向上に寄与するエビデンスに乏しく,適用は推奨されない。 C3
CQ8-5 甲状腺癌に対する分子標的薬は有用か? 放射性ヨウ素不応分化型甲状腺癌に対する分子標的薬は有効であり,その使用を考慮してよい。 C1
切除不能転移再発甲状腺髄様癌に対する分子標的薬は有用であり,その使用を考慮してよい。 C1
甲状腺未分化癌に対する分子標的薬の使用については十分なコンセンサスは得られていない。 C2

唾液腺癌(耳下腺癌)

No. クリニカルクエスチョン 推奨 グレード
CQ9-1 耳下腺癌手術症例における推奨される顔面神経再建の方法は? 自家遊離神経移植により顔面神経断端同士を吻合する再建方法は,顔面神経の再建に有用である。 B
舌下神経や副神経に供給源を求め神経移植により顔面神経断端と吻合する再建方法(神経移行術)は,顔面神経の再建に有用である。 B
血管柄付自家神経移植により顔面神経断端同士を吻合する再建方法は,顔面神経の再建に有用である。 C1
CQ9-2 耳下腺癌で顔面神経麻痺がない場合,顔面神経の温存は推奨されるか? 術前に顔面神経麻痺が認められない場合で,腫瘍が顔面神経に直接浸潤しておらず,癒着が認められない場合には神経を温存できる。 B
CQ9-3 唾液腺癌に対して予防的頸部郭清は有効か? 唾液腺癌の予防的頸部郭清の有効性については科学的に結論が出ていない。 C2
CQ9-4 再発・転移唾液腺癌に対して薬物療法は有効か? 再発・転移唾液腺癌における薬物療法の有効性は確立していないが,行うことを考慮してもよい。 C1

原発不明頸部転移癌

No. クリニカルクエスチョン 推奨 グレード
CQ10-1 原発不明頸部転移癌に対して口蓋扁桃摘出術は原発巣検索に有用か? 口蓋扁桃は原発不明頸部転移癌の潜在的な原発巣として高率で,生検では不十分な場合があるため,積極的に口蓋扁桃摘出術を行うべきである。 B
CQ10-2 原発部位の検索にp16 免疫染色とEBER-ISH は有用か? 2017 年UICC の新分類では,原発巣検索の過程でp16 免疫染色が陽性の場合はHPV 関連性中咽頭癌として,EBV が検出された場合は上咽頭癌として分類されることとなったため,p16 免疫染色検査やEBER-ISH 法は原発不明頸部転移癌の検査として必須である。 A
CQ10-3 原発不明頸部転移癌に対して頸部郭清術を行うことは推奨されるか? 頸部郭清術は原発不明頸部転移癌の治療として推奨される。 B
CQ10-4 原発不明頸部転移癌に対して頸部郭清術後に放射線治療を行うことは,生存率の向上に寄与するか? 多発頸部リンパ節転移症例や節外浸潤を認める例では,生存率の向上に寄与する。 B

がん薬物療法

No. クリニカルクエスチョン 推奨 グレード
CQ11-1 根治切除不能な局所進行頭頸部扁平上皮癌に対して放射線治療を行う場合に,化学療法を同時併用することは生存率の向上に寄与するか? 根治切除不能な局所進行頭頸部扁平上皮癌に対して放射線治療を行う場合に,化学療法を同時併用することは生存率の向上に寄与する。 A
CQ11-2 切除可能局所進行頭頸部扁平上皮癌に対して放射線治療を行う場合に,化学療法を併用することは喉頭温存率の向上に寄与するか? 切除可能局所進行頭頸部扁平上皮癌に対して放射線治療を行う場合に,化学療法を併用することは喉頭温存率の向上に寄与する。 A
CQ11-3 切除不能局所進行頭頸部扁平上皮癌に対する導入化学療法において,TPF 療法(TXT+CDDP+5-FU)は生存率を向上させるか? 導入化学療法としてTPF を化学放射線療法に加えることで生存率を向上させるという報告は乏しく,慎重に適応を判断する必要がある。 C2
CQ11-4 喉頭全摘が適応となる切除可能喉頭癌・下咽頭癌に対する導入化学療法は,喉頭温存療法として有用か? 喉頭全摘が適応となる切除可能喉頭癌・下咽頭癌に対する喉頭温存を目的とした導入化学療法は,化学放射線療法と同様に推奨される。 B
CQ11-5 局所進行頭頸部癌に対する放射線治療においてセツキシマブ(Cmab)の併用は有用か? 放射線治療単独と比較して,放射線治療とCmab の併用は生存への追加効果を認めており行うことを勧めるが,毒性の管理と適応の判断等注意すべき点がある。 B
導入化学療法後における放射線治療とCmab の併用において,生存への追加効果は不明であるが,喉頭温存療法としては有望な可能性がある。 C1
化学放射線療法におけるCmab の併用は生存への寄与は示さず,毒性の増強が認められており,推奨されない。 D
CQ11-6 再発・転移頭頸部癌に対する初回化学療法においてセツキシマブの併用は有用か? 再発・転移頭頸部癌扁平上皮癌に対する初回化学療法としてCDDP+5-FU にCmab を併用することは,生存率の向上が認められており行うよう勧められる。 B
CDDP+5-FU 以外のレジメンにおけるCmab の併用については,患者の状況と有効性と安全性の報告を考慮して選択してもよい。 C2
CQ11-7 再発・転移頭頸部悪性黒色腫に対する免疫チェックポイント阻害薬は有用か? 鼻腔,副鼻腔,口腔粘膜を原発とする粘膜型悪性黒色腫に対しては,免疫チェックポイント阻害薬の治療報告は少ないものの,後方視的報告にて他の悪性黒色腫亜型と同様に一定の効果が期待される。このため,再発・転移頭頸部悪性黒色腫に対して免疫チェックポイント阻害薬を行うことを考慮してよい。 C1
CQ11-8 切除不能再発・転移頭頸部癌に対して抗PD-1 抗体は有用か? 抗PD-1 抗体であるニボルマブはプラチナ抵抗性頭頸部扁平上皮癌に対して有用であり,その使用が勧められる。 B

放射線治療

No. クリニカルクエスチョン 推奨 グレード
CQ12-1 頭頸部扁平上皮癌術後再発高リスク患者に対する術後化学放射線療法は有用か? 顕微鏡的断端陽性もしくは節外浸潤陽性の頭頸部扁平上皮癌術後再発高リスク患者に対して,シスプラチン併用術後化学放射線療法を行うことが勧められる。 A
シスプラチン以外の抗がん薬を併用する術後化学放射線療法は,行わないことを勧める。 D
CQ12-2 進行頭頸部癌に対して,強度変調放射線治療を適応することにより晩期有害事象が減少するか? 強度変調放射線治療の適応で晩期唾液腺障害は軽減する。 A
強度変調放射線治療の適応で唾液腺以外の晩期有害事象の軽減も期待できる。 B
CQ12-3 化学放射線療法後の救済手術の適応は? 切除可能であれば救済手術が最も長期生存を期待できる治療であるが,救済率は決して高くはなく,患者の全身状態,予想される手術の合併症,後遺症から総合的に手術適応を判断する。原発が喉頭の場合,p16 陽性腫瘍の場合,頸部のみの再発の場合は救済率は高く,手術を行うことが推奨される。 C1
CQ12-4 頭頸部癌(上咽頭癌を含む)へのCRT 後の局所再発に対する再照射は有用か? 十分な根拠がなく慎重な判断の上での治療オプションと考えられる。 C2
CQ12-5 小児の頭頸部腫瘍(上咽頭癌を除く)に対して陽子線治療は有用か? 放射線治療が適応となる疾患に対しては成長障害などの晩期有害事象の軽減,および2 次癌発生率の低下が期待できる陽子線治療が推奨される。 B
CQ12-6 頭頸部非扁平上皮癌に対して粒子線治療は有用か?

【陽子線治療】

放射線治療が適応となる状況においては組織型に関わらず,脳壊死,視神経障害などの重篤な晩期有害事象が予測される場合,放射線治療に比べてそれらを軽減することが期待されるため勧められる。

C1

【重粒子線治療】

放射線治療抵抗性を持つ非扁平上皮癌に対して重粒子線治療を用いることは,効果の面で期待できる。ただし,長期の晩期有害事象の点においてまだデータが成熟していない。

C1
CQ12-7 頭頸部(頭蓋底を含む)の肉腫に対して重粒子線治療は有用か? 切除不能例または不完全切除例に対する治療選択肢となり得る。 C1