クリニカルクエスチョン・推奨一覧

胸腺腫瘍診療

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総論.胸腺上皮性腫瘍

Ⅰ.診 断

1 臨床症状と血液検査

No. クリニカルクエスチョン 推奨 エビデンスの強さ
CQ1 胸腺上皮性腫瘍が疑われる場合,血清抗アセチルコリン受容体抗体の測定は勧められるか? 血清抗アセチルコリン受容体抗体の測定を行うよう推奨する。〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕 D
CQ2 胸腺上皮性腫瘍が疑われる場合,血球算定は勧められるか? 赤芽球癆の存在の確認のため,血球算定を行うよう推奨する。〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕 D
CQ3 胸腺上皮性腫瘍が疑われる場合,血清γグロブリンの測定は勧められるか? 血清γグロブリンの測定を行うよう提案する。〔推奨の強さ:2,合意率:100%〕 D

2 存在診断と画像的鑑別診断

No. クリニカルクエスチョン 推奨 エビデンスの強さ
CQ4 胸腺上皮性腫瘍の検出に,胸部CT は勧められるか? 胸部CT を行うよう推奨する。〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕 C
CQ5 縦隔病変の鑑別診断に,造影CT は勧められるか? 造影CT を行うよう推奨する。〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕 C
CQ6 胸腺上皮性腫瘍の検出や鑑別診断に,MRI は勧められるか? 造影剤投与不能例,胸腺過形成,嚢胞性病変,その他の腫瘍との鑑別にMRI を行うことを提案する。〔推奨の強さ:2,合意率:100%〕 C

3 確定診断

No. クリニカルクエスチョン 推奨 エビデンスの強さ
CQ7 胸腺上皮性腫瘍が疑われる場合,経皮針生検は勧められるか?
  • a . 切除不能と判断される,術前治療を計画する,および他疾患との鑑別が必要な場合,経皮針生検を行うよう推奨する。〔推奨の強さ:1,合意率:87.5%〕
C
  • b . 切除可能と判断される場合は,経皮針生検は行わないよう推奨する。〔推奨の強さ:1,合意率:62.5%〕
D

4 病期診断

No. クリニカルクエスチョン 推奨 エビデンスの強さ
CQ8 胸腺上皮性腫瘍が疑われる場合,病期診断のために勧められる診断法は何か?

上腹部を含めた胸部造影CT を行うよう推奨する。〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

  • 胸部MRI は,ヨードアレルギーなどのためCT で造影剤が使用できない場合には行うよう提案する。
  • FDG-PET またはPET/CT は,予期せぬ転移の発見の可能性はあるが,術前のリンパ節転移,遠隔転移の評価に用いるよう勧められるだけの根拠が明確ではない。
C

Ⅱ.治 療

1 外科治療

No. クリニカルクエスチョン 推奨 エビデンスの強さ
CQ1 臨床病期Ⅰ-Ⅱ期胸腺上皮性腫瘍に対して,外科切除は勧められるか? 外科切除を行うよう推奨する。〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕 C
CQ2 臨床病期Ⅰ-Ⅱ期胸腺上皮性腫瘍切除手術において,腫瘍の完全切除および胸腺摘出術が勧められるか? 腫瘍の完全切除および胸腺摘出術を行うよう推奨する。〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕 C
CQ3 臨床病期Ⅰ-Ⅱ期胸腺上皮性腫瘍切除手術において,アプローチの選択肢として胸腔鏡補助下あるいはロボット支援の切除は勧められるか? 胸腔鏡補助下あるいはロボット支援の切除をアプローチ法の1 つとして行うよう提案する。〔推奨の強さ:2,合意率:94%〕 C
CQ4 完全切除が困難な臨床病期Ⅲ期胸腺上皮性腫瘍に対して,集学的治療は勧められるか? 集学的治療を行うよう推奨する。〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕 C
CQ5 臨床病期Ⅲ期胸腺上皮性腫瘍に対して,腫瘍の完全切除を伴う胸腺摘出術は勧められるか? 腫瘍の完全切除を伴う胸腺摘出術を行うよう推奨する。〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕 C
CQ6 臨床病期Ⅲ期胸腺腫に横隔神経浸潤が認められる場合,横隔神経を温存することは勧められるか? 片側の横隔神経を温存するよう提案する。〔推奨の強さ:2,合意率:100%〕 D
CQ7 臨床病期Ⅳ期胸腺上皮性腫瘍に対して,集学的治療は勧められるか? 集学的治療を行うよう推奨する。〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕 D
CQ8 肉眼的完全切除が可能な臨床病期Ⅳ期胸腺上皮性腫瘍に対して,外科切除は勧められるか? 外科切除を行うよう提案する。〔推奨の強さ:2,合意率:100%〕 D
CQ9 肉眼的完全切除が困難な臨床病期Ⅳ期胸腺上皮性腫瘍に対して,減量手術は勧められるか? 胸腺腫に対しては減量手術を行うことを提案する。〔推奨の強さ:2,合意率:100%〕 C

2 放射線治療

No. クリニカルクエスチョン 推奨 エビデンスの強さ
CQ10 完全切除された胸腺腫に対して,術後放射線治療は勧められるか?
  • a . 完全切除されたⅠ,Ⅱ期胸腺腫に対しては,術後放射線治療を行わないよう推奨する。〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕
C
  • b . 完全切除されたⅢ期胸腺腫に対しては,術後放射線治療を行うよう勧められるだけの根拠が明確でない。〔推奨度決定不能〕
 
CQ11 完全切除された胸腺癌に対して,術後放射線治療は勧められるか?
  • a . 完全切除されたⅠ期胸腺癌に対しては,術後放射線治療を行わないよう提案する。〔推奨の強さ:2,合意率:94%〕
C
  • b . 完全切除されたⅡ-Ⅲ期胸腺癌に対しては,術後放射線治療を行うよう提案する。〔推奨の強さ:2,合意率:100%〕
C
CQ12 顕微鏡的または肉眼的不完全切除となった胸腺上皮性腫瘍に対して,術後放射線治療は勧められるか? 術後放射線治療または術後化学放射線療法を行うよう推奨する。〔推奨の強さ:1,合意率:81%〕 D
CQ13 切除不能胸腺上皮性腫瘍に対して,放射線治療は勧められるか? 根治照射可能な切除不能胸腺上皮性腫瘍に対しては,放射線治療または化学放射線療法を行うよう推奨する。〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕 D
胸腺上皮性腫瘍に対する放射線治療の基本事項
  • a . 放射線治療は,少なくとも3 次元放射線治療(3D-CRT)で,照射標的体積は腫瘍床および残存病巣として行うよう勧められる。
  • b . 予防的縦隔鎖骨上リンパ節領域照射は,行うよう勧められるだけの科学的根拠が明確ではない。
  • c . 線量分割は1 回1.8~2 Gy の通常分割法で,術後放射線治療は完全切除例では40~50 Gy,顕微鏡的不完全切除例では50~54 Gy 程度,肉眼的不完全切除症例では54~60 Gy 程度行うよう勧められる。
  • d . 局所進行切除不能胸腺腫に対する放射線治療の総線量は,通常分割で少なくとも50Gy,可能であれば54~60 Gy 程度行うよう勧められる。
  • 正常組織への線量制約は肺癌に準ずるが,より若年者・長期生存者が多いため,特に心臓への線量に配慮することが勧められる。

3 化学療法

No. クリニカルクエスチョン 推奨 エビデンスの強さ
CQ14 臨床病期Ⅳ期または再発胸腺腫に対して,化学療法は勧められるか? 化学療法を行うよう推奨する。〔推奨の強さ:1,合意率:87.5%〕 D
CQ15 臨床病期Ⅳ期または再発胸腺腫に対して,シスプラチンおよびアンスラサイクリン系抗癌剤の併用療法は勧められるか? シスプラチンおよびアンスラサイクリン系抗癌剤の併用療法を行うことを推奨する。〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕 D
CQ16 一次治療に不応となった胸腺腫に対して,化学療法は勧められるか? 化学療法は,行うよう勧められるだけの根拠が明確ではない。〔推奨度決定不能〕  
CQ17 局所進行胸腺腫に対して,術前化学療法は勧められるか? 術前化学療法を行うよう提案する。〔推奨の強さ:2,合意率:100%〕 D
CQ18 臨床病期Ⅳ期または再発胸腺癌に対して,化学療法は勧められるか? 化学療法を行うよう推奨する。〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕 D
CQ19 臨床病期Ⅳ期または再発胸腺癌に対して,カルボプラチンとパクリタキセルまたはアムルビシンの併用療法は勧められるか? カルボプラチンとパクリタキセルまたはアムルビシンの併用療法を行うよう提案する。〔推奨の強さ:2,合意率:75%〕 D
CQ20 臨床病期Ⅳ期または再発胸腺癌に対して,分子標的薬は勧められるか? 分子標的薬を行わないよう推奨する。〔推奨の強さ:1,合意率:80%〕 D
CQ21 一次治療に不応となった胸腺癌に対して,化学療法は勧められるか? 化学療法は,行うよう勧められるだけの根拠が明確ではない。〔推奨度決定不能〕  
CQ22 局所進行胸腺癌に対して,術前化学療法は勧められるか? 化学療法または化学放射線療法を術前治療として行うよう提案する。〔推奨の強さ:2,合意率:100%〕 D

4 治療後の経過観察

No. クリニカルクエスチョン 推奨 エビデンスの強さ
CQ23 胸腺上皮性腫瘍に対し根治的治療が行われた場合,定期的な経過観察は行うべきか? 胸腺腫の場合10 年以上,胸腺癌の場合5 年以上の経過観察を行うよう提案する。〔推奨の強さ:2,合意率:75%〕 C

5 再発腫瘍の治療

No. クリニカルクエスチョン 推奨 エビデンスの強さ
CQ24 切除可能な再発胸腺上皮性腫瘍に対して,外科切除を含めた集学的治療は勧められるか? 外科切除を含めた集学的治療を行うよう推奨する。〔推奨の強さ:1,合意率:94%〕 D
CQ25 切除可能な再発胸腺上皮性腫瘍に対して,外科切除は勧められるか? 外科切除は行うよう提案する。〔推奨の強さ:2,合意率:75%〕 C

Ⅲ.病理診断

1 病理診断

No. クリニカルクエスチョン 推奨 エビデンスの強さ
病理診断 病理診断には細胞診,生検,外科治療による切除検体が含まれる。細胞診の有用性については報告が少なく不明である。
  • a . 切除検体の処理:外科医が胸腺腫瘍と周囲臓器との位置関係を明確にするために印を付
    けたのち,台板上で伸展し,速やかに十分量の固定液で固定する。腫瘍にCT 断最大面で割を入れ,それに平行して厚さ3~5 mm 間隔で割を加える。肉眼所見が異なる部位は必ず標本にし,浸潤部位は周囲組織との関係がわかるように標本にする。最低5 切片を作成し,最大径5 cm 以上の腫瘍では1 cm あたり1 切片を標本とする。
  • b . 病理組織分類:世界的に使用されているWHO 分類を用いて組織分類を行う。鑑別診断には免疫染色も有用である。
  • c . 病理診断報告:最終的な病理報告書には,術式,肉眼所見,腫瘍の大きさ,組織分類,浸潤の程度,切除断端,病期分類,術前治療が行われた場合の治療効果の程度を記載する。
  • d . 生検による病理診断:術前診断が必要な場合や完全切除が不可能な場合,生検で病理診断を行うことができる。ただし,検体採取や病理学的評価にはある程度の熟練を要することから慎重に取り扱う。
  • e . 術中迅速診断:縦隔腫瘍の術中迅速診断は非常に難しく,その有用性は限られている。