本ガイドラインについて

1.本ガイドラインの目的

膵癌〔『膵癌取扱い規約』(第7 版) 1) (2016 年7 月,日本膵臓学会編)の浸潤性膵管癌を対象〕は21 世紀に残された消化器癌といわれ,近年,増加傾向にあって,その診断法や治療成績の改善が急務とされている。従来,膵癌に対しても種々の診断,治療法が開発されてきたが,その客観的な評価は十分にはなされておらず,診療における標準化はなされていないのが現状である。そこで,日本膵臓学会によりガイドラインが作成されることとなった。

本ガイドラインの目的は,膵癌の診療にあたる臨床医に実際的な診療指針を提供するために,膵癌に関して効果的・効率的な診断・治療法を体系化し,効果的な保険医療を確立し,ひいては豊かな活力ある長寿社会を創造するための一翼を担うことである。わが国には,膵癌診療の全領域を網羅した,evidence based medicine(EBM)に基づいた膵癌診療ガイドラインといった体系化されたものがないのが現状であった。本ガイドラインでは膵癌に対して多方向から,各関係学会や各領域の第一人者によって文献を十分に検討し,体系化されたガイドラインを作成することに努めた。ただし,膵癌治療の現状は非常に厳しく,エビデンスレベルの高い論文は少ないため,エビデンスは現在ないが,将来につながりそうな試みなどを委員会の判断で加えた。

2.改訂の目的

2006 年3 月に初版『科学的根拠に基づく膵癌診療ガイドライン』 2)が出版され,2009 年9 月に第2 版 3)が,2013 年10 月に第3 版 4)が出版された。近年,全世界的にガイドラインはThe Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation(GRADE)システムに基づいて作成される傾向にあり,膵癌に対する新たな化学療法の進歩やborderline resectable 膵癌などの新たな概念の導入,術前補助療法など新たな治療法の試みなどがなされるようになってきている。そうした医療環境の変化や新たな知見の出現などにより,ガイドラインは3,4 年で改訂されないと内容が実地臨床と離れたものになる。そうした事実に鑑み,2013年より3 年を経て,2016 年10 月に第4 版が出版されることとなった。

3.対象

本ガイドラインの対象は,膵癌診療にあたる臨床医である。一般臨床医が膵癌に効率的かつ適切に対処することの一助となりうるよう配慮した。さらに患者,家族をはじめとした一般市民にも膵癌の理解を深めていただき,医療従事者と医療を受ける立場の方々の相互の納得のもとに,より好ましい医療が選択され実行されることをも意図した。ガイドライン作成にあたっては,日本各地より,内科,放射線科,外科,腫瘍内科,緩和療法,精神腫瘍学,がん専門看護師,がん専門薬剤師,医療ソーシャルワーカー(MSW),管理栄養士などの専門家よりなる改訂委員会が設置された。委員一覧は別項に掲載した。膵癌のステージ分類は欧米とわが国で異なる。本ガイドラインでは日本膵臓学会が2016年7月に新たに発表した『膵癌取扱い規約』(第7 版) 1)に準じた。

4.本ガイドラインを使用する場合の注意事項

本ガイドラインはGRADE システムに準じて記載しており,それに基づいて推奨の強さを決定した。膵癌は乳癌,大腸癌,胃癌などのように診断や治療に対するランダム化比較試験(randomized controlled trial;RCT)などの情報が少なく,今後に残された消化器癌である特殊性のため,RCT はないが今後につながりそうな試みや委員の個人的意見などを「明日への提言」として挿入した。また,記載内容が多岐にわたるので読者が利用しやすいように巻末に索引を設けた。

ガイドラインはあくまでも最も標準的な作成時点での指針であり,実際の診療行為を強制するものではなく,最終的には施設の状況(人員,経験,機器など)や個々の患者の個別性を加味して対処法を患者,家族と治療にあたる医師との話し合いで決定すべきである。また,ガイドラインの記述の内容に関しては日本膵臓学会が責任を負うものとするが,治療結果についての責任は直接の治療担当者に帰属すべきもので,日本膵臓学会および本ガイドライン改訂委員会は責任を負わない。なお,本文中の薬剤使用量などは成人を対象としたものである。

5.改訂ガイドラインの特徴

目覚ましい進歩を遂げつつある内視鏡的治療や外科手技について診療現場環境に応じた柔軟な選択肢が担保されるようにガイドライン改訂を行った。実地臨床が必ずしも画一的ではない多様性を有することに配慮しつつ,アルゴリズムの形式で診療の手順も提示した。改訂ガイドラインの適切な活用による診療対応が期待される。

6.エビデンス収集

初版で行われた系統的検索によって得られた論文に加え,今回新たに以下の作業を行ってエビデンスを収集した。論文検索については山口直比古先生を中心とする図書館司書の方々にお願いした。今までのガイドラインより継続のクリニカル・クエスチョン(clinical question;CQ)は第3 版での検索以降に報告された2011 年2 月より2014 年8 月までの論文について,今回新規に収載したCQ は1990 年1 月より2014 年8 月までの論文について医学中央雑誌(医中誌)Web,PubMed を検索した。

収集した論文のうち,ヒトに対して行われた臨床研究を採用し,動物実験や遺伝子研究に関する論文は除外した。患者データに基づかない専門家個人の意見は参考にしたが,エビデンスとしては用いなかった。学会発表抄録については,きちんとしたレビューを受けているものは従来通り採用することとした。引用文献はエビデンスレベルの高いものより20 編程度の引用を心がけた。また,改訂委員会委員が担当のCQに対して独自にメタアナリシスを行い,ステートメント,推奨の強さ,解説などに反映させた。

7.エビデンス総体の評価方法

1)各論文の評価:構造化抄録の作成

各論文に対して,研究デザイン(表1)を含め,論文情報を要約した構造化抄録を作成した。さらにRCT や観察研究に対して,Cochrane Handbook 5)やMinds 診療ガイドライン作成の手引き 6)のチェックリストを参考にしてバイアスのリスクを判定した(表2)。総体としてのエビデンス評価は,GRADE システム 7-26)の考え方を参考にして評価し,CQ 各項目に対する総体としてのエビデンスの質を決定し表記した(表3)。

表1 研究デザイン
表1 研究デザイン
表2 バイアスリスク評価項目
表2 バイアスリスク評価項目
表3 エビデンスの質
表3 エビデンスの質
2)アウトカムごと,研究デザインごとの蓄積された複数論文の総合評価

(1)初期評価:各研究デザイン群の評価

○メタ群,ランダム群=「初期評価A」,○非ランダム群,コホート群,ケースコントロール群,横断群=「初期評価C」,○ケースシリーズ群=「初期評価D」

(2)エビデンスレベルを下げる要因の有無の評価

○研究の質にバイアスリスクがある,○結果に非一貫性がある,○エビデンスの非直接性がある,○データが不精確である,○出版バイアスの可能性が高い

(3)エビデンスレベルを上げる要因の有無の評価

○大きな効果があり,交絡因子がない,○用量-反応勾配がある,○可能性のある交絡因子が,真の効果をより弱めている

(4)総合評価

最終的なエビデンスの質「A,B,C,D」を評価判定した。
3)エビデンスの質の定義方法

エビデンスレベルは海外と日本で別の記載とせずに1つとした。またエビデンスは複数文献を統合・作成した統合レベル(body of evidence)とし,表3 のA〜D で表記した。

4)メタアナリシス

システマティックレビューを行い,必要に応じて改訂委員会委員が自らメタアナリシスを行い,本文中に記載した。また,一つひとつのエビデンスに「保険適用あり」の記載はせず,保険適用不可の場合に,解説の中で明記した。

8.推奨の強さの決定

以上の作業によって得られた結果をもとに,ステートメントの案を作成提示した。次に,推奨の強さを決めるためにコンセンサス会議を開催した。

推奨の強さは,①エビデンスの確かさ,②患者の希望,③益と害,④コスト評価,の4 項目を評価項目とした。コンセンサス形成方法は,Delphi 変法,nominal group technique(NGT)法に準じてアンサーパッドによる投票を用い,85%の出席で委員会成立,75%以上の賛成をもって「合意が成立した」と決定した。1 回目で合意が得られないときは,各結果を公表し,日本の医療状況を加味して協議したうえで,2 回まで投票を繰り返した。改訂委員会は,この集計結果を総合して評価し,表4に示す推奨の強さを決定し,ステートメントとともに明瞭に表記した。合意率も掲載した。合意投票の経緯についてはできるだけ「合意投票の経緯」として記載し,委員会の投票過程がわかるように努めた。

推奨の強さは「1:強い推奨」,「2:弱い推奨」の2通りであるが,「強く推奨する」や「弱く推奨する」という文言は馴染まないため,表4の通りに表記した。また,投票結果を「合意率」として推奨の強さとともに記載した。推奨の強さを決定できなかった場合や,疫学・病態などの,ステートメント内容が推奨の文章ではない場合は,推奨の強さを「なし」と記載した。

表4 推奨の強さ
表4 推奨の強さ

9.ガイドライン作成法

以下のように5 回の膵癌診療ガイドライン改訂委員会チーフ会議(以下,チーフ会議),7 回の膵癌診療ガイドライン改訂委員会(以下,改訂委員会),2 回の公聴会,2 回のパブリックコメント,外部評価委員会による外部評価(AGREE Ⅱ)を経て本ガイドラインは作成された。

第1 回チーフ会議(2013年12 月6 日,東京,八重洲ホール)

基本方針について話し合った。メディカルスタッフの参加,文献検索方法,GRADE システムの導入,改訂中の膵癌取扱い規約への準拠(borderline resectable 膵癌の導入など),CQ の見直し,緩和療法部門の追加,コラムの追加,治療アルゴリズムの見直し,委員の選定段階からの利益相反確認などが取り上げられた。

第1 回改訂委員会(2014年4月26日,第100回日本消化器病学会大会,東京,国際フォーラム)

新委員も議論に加わり,次回改訂委員会までに各部門のCQ の見直し,作成を行うこととした。新設CQ は家族性膵癌,resectabilityの診断,重粒子線治療,外科的切除後の栄養療法,緩和療法など。ステントは術前と非切除膵癌に分けて記述することとした。治療アルゴリズムは膵癌取扱い規約でのborderline resectable 膵癌の記載に合わせて作成する。Minds吉田雅博先生にはGRADE システムを用いたガイドライン作成について説明していただいた。

第2 回改訂委員会(2014 年7 月12 日,大阪,リーガロイヤルホテル)

CQ について討論し,CQ の設定については7 月末までに各部門で検討することとした。Minds 畠山洋輔様よりガイドライン作成支援ツール「GUIDE」について説明していただいた。論文検索は引き続き元東邦大学メディアセンターの山口直比古先生とそのグループの図書館司書の方に依頼することとした。Borderline resectable 膵癌については,定義や取り扱いの問題などでいくつかの意見が出た。

第2 回チーフ会議(2014年7月26 日,東京,コンベンションルーム・AP 品川)

診断アルゴリズム案,治療アルゴリズム案,CQ案について検討した。

第1 回パブリックコメント公募(2014 年8 月6 日〜25 日)

CQ,アルゴリズムの改訂委員会案を作成し,日本膵臓学会ホームページに公開し,パブリックコメントを求めた。特に意見はなかった。

第3 回改訂委員会(2014 年8 月30 日,横浜・桜木町,貸し会議室シアル)

CQ 案,アルゴリズム案に対しパブリックコメントでの意見はなかったため改訂委員会で承認された。論文の検索範囲が山口直比古先生から報告された。本ガイドラインがMinds ガイドライン作成ツールGUIDE のトライアルガイドラインに採用され,今後GUIDE を使って論文評価(介入研究・観察研究),エビデンス総体の作成,推奨草案の作成を行うこととなり,GUIDE の使い方についてMinds 畠山洋輔様より説明があった。

第4回改訂委員会(2014 年10 月25 日,第22回日本消化器関連学会週間,神戸,ポートピアホテル)

Minds 畠山洋輔様より主にシステマティックレビューについて説明していただいた。Minds 吉田雅博先生,論文検索の山口直比古先生とともにCQ の疑問点,問題点を議論した。コラムはCQ とは異なり,通常の「総説書き」のように書くこととした。

第3 回チーフ会議(2015 年2 月8 日,東京,アットビジネスセンター東京駅)

CQ のステートメント,解説,引用文献などについて検討した。ステートメントなどを決定する改訂委員会での投票はアンサーパッドで行うこととした。

第4 回チーフ会議(2015 年3 月28 日,東京,アットビジネスセンター東京駅)

全CQ の見直しを行い,一部のCQ を削除することとした。

第5回改訂委員会(2015年4月25日,第101回日本消化器病学会総会,仙台,仙台国際センター)

第1 回投票を行った。26CQ に対してステートメント,推奨の強さ,エビデンスレベルについてアンサーパッドを用いて投票し,23CQ で出席者(37 名)の75%以上の合意を得た。75%以上の合意の得られなかった3CQ に関して,賛成,反対などの意見を述べていただいた。意見を参考に修正し,次回の改訂委員会で第2 回の投票を行うこととなった。残りのCQ についても次回の改訂委員会に投票を予定した。

改訂委員会投票の取り決め
  1. 改訂委員会の成立について

    改訂委員の出席85%(40 名×85%= 34 名)以上の出席で改訂委員会が成立する。
    委員が欠席の場合,委員の協力者の代理出席を認め,代理投票も認める。

  2. 合意の成立について

    改訂委員会出席者の75%以上〔今回は37×75%= 27. 8(28 名以上)〕の賛成で「合意を得た」とし,合意率をガイドラインに記載する。第一回の投票で合意を得られない場合,委員会で協議して修正を図り,再度,投票する。それでも合意を得られなければ,もう一度まで修正を行い,投票する。2回の修正,3回の投票でも合意を得られない場合は合意率だけ示して,合意を得られなかったことをガイドラインに記載する。また,その経緯もガイドラインへ記載する。

  3. 投票について

    投票はアンサーパッドを用いて投票し,即座に集計し,発表する。アンサーパッドが故障した場合は,投票は挙手で行う。

  4. 資料の事前配付について

    資料は1週間前をめどにPDFでメールにて配布し,各自,事前に検討しておく。当日,紙ベースでの資料配付は行わない。

第5 回チーフ会議(2015 年5 月11 日,東京,アットビジネスセンター東京駅)

前回の改訂委員会で再投票となったCQ の修正案,および原案が確定していないCQ の最終案の審議を行った。前回の投票について,ステートメントと推奨の強さが全体に強すぎると思われ,ガイドラインの社会的影響に鑑み,再度検討してはどうかとの意見があり,投票済みを含む全CQ を見直すことになった。6 月20 日の改訂委員会での投票に向け,予備回答調査による事前調査を行い,CQ 担当者や部門チーフで討論し,事前に修正を図ることとした。画像診断の推奨の強さは,いくつかのCQ で不統一があるため,これを統一した。また,ガイドラインのタイトルから「科学的根拠に基づく」を外し,「診療ガイドライン」とすることとした。

第6 回改訂委員会(2015 年6 月20 日,第46 回日本膵臓学会大会,名古屋,名古屋国際会議場)

予備回答調査の結果,全CQ のステートメント,推奨の強さ,エビデンスレベルの見直しが行われ,アンサーパッドによる投票と討論を行った(出席38名)。DC 1〜3,D 1〜7,RS 1〜11,RA 1〜4,LA,LAR 1〜3 について議論し,投票した。LAR 4〜5,LAC 1〜4,MC 1〜4,MR 1,ST 1〜4,PM 1〜3 については次回の検討となった。アルゴリズムについても討論を行った。また,前版と同様に全委員の利益相反提出を行うこととなった。

第7 回改訂委員会(2015年10月11日,第23回日本消化器関連学会週間,東京,AP品川アネックス)

LAR 4 以降の全CQ についてアンサーパッドによるステートメント,推奨の強さの投票と討論を行った(出席40 名)。また,診断・治療・化学療法のアルゴリズムについても討論が行われた。利益相反公表については,全委員が日本膵臓学会理事長に対して改訂期間中の利益相反の自己申告(日本膵臓学会「医学研究の利益相反(COI)に関する指針」および同細則に従って)を行い,2013 年版に準じて記載することとした。

第1 回公聴会(2015 年10 月31 日,第53 回日本癌治療学会学術集会,京都,京都国際会議場)

Resectability 診断について「腎機能が悪く造影CT が施行できない場合に単純CT で局所浸潤が明らかな場合には単純CTでもよいのではないか」との意見があり,診断部門で検討し,本文で触れることとなった。

第2回公聴会(2016 年4 月22 日,第102 回日本消化器病学会総会,東京,コンベンションセンターAP 西新宿)

術前胆道ステントのCQ の「明日への提言」において術前減黄の必要性を問うRCT の必要性の記載について意見があり,意見に沿う形で修正することとした。

第2 回パブリックコメント公募(2016 年5 月2 日〜5 月23 日)

日本膵臓学会とMindsホームページに膵癌診療ガイドライン第4版(案)を掲載し,意見を求めた。GRADE システムによるガイドラインの作成の専門の方(MA氏)よりGRADE システム本来のガイドラインの作成法やパブリックコメントやAGREE Ⅱによる外部評価の意味合いなどについて貴重な意見をいただいた。今回の改訂作業ではすでに行った作業なども含まれており,次回の改訂の参考にすることをお返事した。

10.文献検索

ガイドライン作成班より示された7 分野,51 のCQ について文献検索を行った。検索は分野ごとに一名の医学図書館員が担当し,初版のための文献検索以降すなわち1990 年1 月から2014 年8 月末までを検索対象期間とした。ただし,新規CQ や,キーワードの追加などもあったため,検索年限が異なる場合があった。検索したデータベースは,医中誌Web とPubMed である。言語は英語および日本語に限定したほか,研究デザインを考慮した場合もある。担当した医学図書館司書は巻頭に記した。検索したデータベース,検索期間,検索日,検索式,検索結果については別項に記載した。

11.本ガイドラインの構成

アルゴリズムは診断,治療,化学療法の3つよりなる。7つの「分野」に分け,それぞれ3〜11の「CQ」を設定した。そして各CQ に従って,「ステートメント」「合意投票の経緯」(必要ならば)「解説」「明日への提言」「引用文献」を記載した。「ステートメント」においては勧告事項をその「推奨の強さ」「エビデンスレベル」「合意率」とともに示した。エビデンスレベルと推奨の強さは前述のように決定した。また,「ステートメント」の科学的根拠を「解説」として示した。膵癌は乳癌や胃癌などのように診断や治療に対するRCT などの情報が少なく,今後に残された消化器癌である特殊性のため,RCT はないが今後につながりそうな試みや作成者の個人的意見などを「明日への提言」として挿入した。

「検索式一覧」では文献検索のデータベース,検索期間,検索日,CQ ごとに検索式と検索件数の記載をした。

12.今後の改訂

今後も医学の進歩とともに膵癌に対する診療内容も変化しうるので,このガイドラインも定期的な再検討を要すると考えられる。必要に応じて,ステートメント,推奨の強さ,エビデンスレベルの変更や新たな情報については公聴会を経て追加・改訂し,日本膵臓学会のホームページに提示していく予定である。このガイドラインは3,4 年後をめどに改訂を予定している。

13.出版後のガイドラインのモニタリング・監査

発刊後,アンケート調査で本ガイドラインの普及度,診療内容の変化を検討し,さらに膵癌全国集計やNational Clinical Database(NCD)を使って予後の変化などについても検討したい。

14.資金

このガイドライン作成に要した資金はすべて日本膵臓学会が負担し,一部,平成25 年厚生労働科学研究費補助金がん臨床研究事業「がん登録からみた診療ガイドラインの普及効果に関する研究-診療動向と治療成績の変化-」(研究代表者:平田公一)および平成26 年厚生労働科学研究費補助金がん臨床研究事業「がん診療ガイドライン普及促進とその効果に関する研究及び同ガイドライン事業の在り方に関する研究」(研究代表者:平田公一)より助成を受けた。

15.利益相反に関して

1)利益相反の申告

日本膵臓学会では,本ガイドラインの作成に携わった委員などに対して本ガイドラインの内容・記載と関連する企業との経済的利害関係につき,下記の基準で利益相反状況の申告を求めた。

申告された企業名を日本膵臓学会「医学研究の利益相反(COI)に関する指針」および同細則に従い,以下のように開示する(対象期間は2013 年1 月1 日から2015 年12 月31 日)。非営利団体は含まれない。

  1. 委員または委員の配偶者,一親等内の,または収入・財産を共有する者が個人として何らかの報酬を得た企業・団体
    役員・顧問職(100 万円以上),株(100 万円以上または当該株式の5%以上保有),特許権使用料(100 万円以上)
  2. 委員が個人として何らかの報酬を得た企業・団体
    講演料(50 万円以上),原稿料(50 万円以上),その他の報酬(5 万円以上)
  3. 委員の所属部門と産学連携を行っている企業・団体
    研究費(100 万円以上),奨学寄付金(100 万円以上),寄付講座,寄付金(200 万円以上)
[作成関係者と企業との経済的な関係(五十音順)]
  1. なし
  2. 旭化成株式会社,エーザイ株式会社,小野薬品工業株式会社,協和発酵キリン株式会社,ゼリア新薬工業株式会社,大日本住友製薬株式会社,大鵬薬品工業株式会社,中外製薬株式会社,日本イーライリリー株式会社,バイエル薬品株式会社,富士フイルム株式会社,メルクセローノ株式会社,株式会社ヤクルト本社
  3. 味の素株式会社,アステラス製薬株式会社,アストラゼネカ株式会社,エーザイ株式会社,MSD 株式会社,大塚製薬株式会社,株式会社大塚製薬工場,小野薬品工業株式会社,オンコセラピー・サイエンス株式会社,協和発酵キリン株式会社,グラクソ・スミスクライン株式会社,コヴィディエンジャパン株式会社,興和株式会社,サノフィ株式会社,ジェイファーマ株式会社,塩野義製薬株式会社,JUNKEN MEDICAL株式会社,ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社,ゼリア新薬工業株式会社,センチュリーメディカル株式会社,第一三共株式会社,大正富山医薬品株式会社,大日本住友製薬株式会社,大鵬薬品工業株式会社,武田バイオ開発センター株式会社,武田薬品工業株式会社,中外製薬株式会社,株式会社ツムラ,帝人ファーマ株式会社,鳥居薬品株式会社,ナノキャリア株式会社,日本イーライリリー株式会社,日本化薬株式会社,日本ゼオン株式会社,日本臓器製薬株式会社,日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社,ノバルティス ファーマ株式会社,バイエル薬品株式会社,株式会社パイオラックスメディカルデバイス,株式会社日立メディコ,ファイザー株式会社,富士フイルム株式会社,ブリストル・マイヤーズ株式会社,ボストン・サイエンティフィック ジャパン株式会社,メルクセローノ株式会社,持田製薬株式会社,株式会社ヤクルト本社,ヤンセンファーマ株式会社

なお,利益相反の扱いは,国内外で議論が進行中であり,今後,適宜,方針・様式を見直すものである。

2)利益相反への対応,対策

本ガイドラインでは,利益相反への対応として,委員を内科・外科・放射線科医師のみでなく,緩和医療や腫瘍精神学の医師も加え,また,がん看護専門看護師,がん専門薬剤師,管理栄養士,MSW に加え,患者代表にも加わっていただいた。さらに,合意投票にも加わっていただき,公平性を担保するように努めた。また,公聴会・パブリックコメントを学会員や一般から受け付けることで幅広い意見を収集した。

16.ガイドライン普及と活用促進のための工夫

  1. (1)アルゴリズムを提示して,利用者の利便性を高めた。
  2. (2)書籍として出版するとともに,インターネットでも掲載する予定である。
    ・日本膵臓学会ホームページ
    ・Mindsホームページ
    ・日本癌治療学会ホームページ
  3. (3)第2版,第3 版と同様に,アルゴリズム,CQ,ステートメントを英文化し,国際誌へ掲載する予定である。
  4. (4)アルゴリズム,CQ,ステートメントを第3版同様にMindsモバイルル(http://minds4.jcqhc.or.jp/resource/mindsmobile.html)よりダウンロード可能とし,モバイル端末からも利用できるように工夫する予定である。

17.一般向け解説書

一般人が膵癌診療の理解を深めること,患者・医師の相互理解や信頼が深まることを期待して,2015 年6 月に『患者さんのための膵がん診療ガイドラインの解説』を出版し,日本膵臓学会ホームページとMinds のホームページで公開中である。『膵癌診療ガイドライン2016 年版』を基にして『患者さんのための膵がん診療ガイドラインの解説』を改訂し,「膵がん診療ガイドライン2016 年版:市民向け解説書(仮)」を2017 年春に発刊する予定である。また,日本膵癌学会ホームページとMinds のホームページでも公開予定である。

18.協力者

本ガイドラインは巻頭に挙げた委員の他にも,下記の協力者の援助によって作成された。

[DC 1,2]

高山敬子(東京女子医科大学消化器内科)

[DC 3]

廣野誠子(和歌山県立医科大学外科学第2講座)

[D 1]

重川 稔(大阪大学大学院医学系研究科消化器内科学)

[D 2-1]

祖父尼淳(東京医科大学消化器内科)

[D 2-2,3-1]

鎌田 研(近畿大学医学部消化器内科)

[D 3-2,3-3]

今岡 大(愛知県がんセンター中央病院消化器内科部)

[D 4,5,6]

田原純子(東京女子医科大学消化器内科)

[D 7]

芹川正浩(広島大学大学院消化器・代謝内科学)

[RS 1,2]

畠 達夫(東北大学大学院消化器外科)

[RS 3]

川井 学(和歌山県立医科大学外科学第2講座)

[RS 7]

山口淳平(名古屋大学医学部腫瘍外科)

[RS 8,10]

木村英世(九州大学臨床・腫瘍外科)

[RS 9]

松山隆生(横浜市立大学医学部消化器・腫瘍外科学)

[RS 11]

中多靖幸(近畿大学医学部附属病院外科 肝胆膵部門)

[RA 1]

友國 晃(大阪府立成人病センター消化器外科)

[RA 2]

古川大輔(東海大学医学部消化器外科)

[RA 3]

濱田 晋(東北大学大学院消化器病態学分野)

[RA 4]

杉浦禎一(静岡県立静岡がんセンター肝胆膵外科)

[LAR 1,3]

高橋昌太郎(山口大学大学院医学系研究科放射線腫瘍学講座)

[LAR 2]

中村 晶(京都大学医学部附属病院放射線治療科)

[LAR 4,5]

堀 正和(札幌医科大学放射線科)

[LAC 1,LAC(MC)3]

戸高明子(静岡県立静岡がんセンター消化器内科)

[LAC(MC)2,4]

尾阪将人(がん研有明病院消化器内科)

[MC 1]

高田良司(大阪府立成人病センター肝胆膵内科)

[MR 1]

中村 晶(京都大学医学部附属病院放射線治療科)

[ST 1]

粂 潔(東北大学大学院消化器病態学分野)

[ST 2]

祖父尼淳(東京医科大学消化器内科)

[ST 3-1]

岩野博俊(埼玉医科大学国際医療センター消化器内科(消化器内視鏡科))

[ST 3-2]

中井陽介(東京大学医学部消化器内科)

[ST 4]

佐々木民人(県立広島病院消化器内科)

[PM 1]

野畑宏之(国立がん研究センター先端医療開発センター精神腫瘍学開発分野)

[PM 2]

中西京子(JA 北海道厚生連旭川厚生病院緩和ケア科)

[コラム4]

横川貴志(がん研有明病院薬剤部)

19.参考文献

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日本膵臓学会 編.膵癌取扱い規約第7 版.東京,金原出版,2016.
2)
日本膵臓学会膵癌診療ガイドライン作成小委員会 編.科学的根拠に基づく膵癌診療ガイドライン2006年版.東京,金原出版,2006.
3)
日本膵臓学会膵癌診療ガイドライン改訂委員会 編.科学的根拠に基づく膵癌診療ガイドライン2009年版.東京,金原出版,2009.
4)
日本膵臓学会膵癌診療ガイドライン改訂委員会 編.科学的根拠に基づく膵癌診療ガイドライン2013年版.東京,金原出版,2013.
5)
Higgins JPT, Green S(ed). Cochrane Handbook for Systematic Reviews of Interventions. Wiley, 2008.
6)
福井次矢,山口直人(監),森實敏夫,吉田雅博,小島原典子(編).Minds診療ガイドライン作成の手引き2014.東京,医学書院,2014.
7)
相原守夫,三原華子,村山隆之,他.診療ガイドラインのためのGRADEシステム.弘前,凸版メディア,2010.
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9)
Guyatt GH, Oxman AD, Vist G, et al. GRADE Working Group: Rating quality of evidence and strength of recommendations. GRADE: an emerging consensus on rating quality of evidence and strength of recommendations. BMJ 2008; 336: 924-6.
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Guyatt GH, Oxman AD, Kunz R, et al. GRADE Working Group: Rating quality of evidence and strength of recommendations: What is “quality of evidence” and why is it important to clinicians? BMJ 2008; 336: 995-8.
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Schünemann HJ, Oxman AD, Brozek J, et al. GRADE Working Group: Grading quality of evidence and strength of recommendations for diagnostic tests and strategies. BMJ 2008; 336: 1106-10.
12)
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