クリニカルクエスチョン・推奨一覧

※CQ No.部分をクリックすると解説へ移動します。

1.乳房再建の必要性と許容性

No. クリニカルクエスチョン 推奨 グレード
CQ1 患者の満足度を上げるか? 乳房再建術そのものに対する患者の満足度は高い。 B
CQ2 局所再発の発見を遅らせることはないか? 局所再発の発見の妨げとはならない。 B
CQ3 シリコーンインプラントによる乳房再建後の患者は,再建しない患者と比べて癌の再発率に差があるか? シリコーンインプラントによる再建は,乳癌の再発率に悪影響を及ぼすとはいえない。 B

2.再建手術の適応

No. クリニカルクエスチョン 推奨 グレード
CQ4 喫煙歴のある患者に勧められるか? 喫煙歴がある患者に対する乳房再建術は,合併症の頻度が高いので適応を十分に吟味して行うことが望ましい。 C1
CQ5 肥満患者には勧められるか? 肥満患者に対する乳房再建術は,術後合併症の頻度が高いので適応を十分に吟味して行うことが勧められる。 B
CQ6 高齢患者に勧められるか? 行ってもよい。 C1
CQ7 胸壁への放射線治療歴のある患者に勧められるか? 胸壁への放射線治療歴のある患者に対する乳房再建術は行ってもよい。ただし,術後合併症の危険性を考慮し,その適応には十分な注意が必要である。 C1
CQ8 胸壁への術後照射が予定されている患者に一次再建術は勧められるか? 胸壁への放射線治療予定のある患者に対する乳房一次再建術を回避する強い根拠はないが,行う場合には,合併症,整容的結果に対する十分な注意が必要である。 C1
CQ9 乳癌の家族歴がある患者に勧められるか? 乳癌家族歴があっても乳房再建術は行ってよい。ただし,強い家族歴を有する患者では対側乳癌の発生率が高いので,慎重な再建計画が望まれる。 C1

3.再建手術の至適時期

No. クリニカルクエスチョン 推奨 グレード
CQ10 乳房温存手術後の一次再建は二次再建より望ましいか? 乳房温存手術後に再建を行う場合,一次再建は二次再建より望ましい。 C1
CQ11 Skin(Nipple)-sparing mastectomy 術後の一次再建は二次再建より望ましいか? Skin (Nipple) -sparing mastectomy は一次再建を前提とした乳癌術式であり,一次再建のほうが望ましいが,二次再建がすべて整容的に劣るわけではない。 C1
CQ12 進行乳癌術後患者の二次再建は一次再建より望ましいか? 進行乳癌術後患者に対する乳房一次再建と二次再建の優劣を示すエビデンスはない。したがって,二次再建が一次再建より望ましいとはいえない。 C2

4.合併症

No. クリニカルクエスチョン 推奨 グレード
CQ13 化学療法は乳房再建術後合併症の発生を増加させるか? 化学療法が乳房再建術後の合併症を増加させるとするエビデンスはないので,化学療法を要する患者に対する乳房再建術は行ってよい。ただし,人工物を用いる場合には合併症に十分な注意が必要である。 C1
CQ14 放射線照射後に人工物を用いた乳房再建術を行った場合,自家組織による再建術と比べて合併症の発生率に差はあるか? 放射線照射後のインプラントを用いた乳房再建術は,インプラントの露出,被膜拘縮などの合併症発生率が高くなるため,推奨されない。ただし,危険性を理解したうえでなら,再建を行ってもよい。 C2
自家組織による再建術は,放射線照射後でも皮弁の生着に影響を与えないが,整容上は非照射群に劣 る。 C1

5.再建術式

No. クリニカルクエスチョン 推奨 グレード
CQ15 両側乳房切除後の一次再建では,人工物による再建が勧められるか? 両側乳房切除後の一次再建では人工物による再建がよく行われるが,他の方法による再建を行ってもよい。 C1
CQ16 シリコーンジェルインプラントによる乳房再建後の患者において,インプラント破損率と被膜拘縮発生率が予想されるか? シリコーンインプラントの破損率について,2000 年以降報告の文献では約0~26%,1990 年代報告の文献では約0~71%である。2 者の破損率の差は,インプラントの種類・世代や挿入期間の違いが関係しているが,インプラント挿入年数が長くなると破損率が増加するという点は多くの文献で一致している。また,被膜拘縮発生率(Baker Grade Ⅲ or Ⅳ)は,約5~15%と報告されている。 C1
CQ17 シリコーンジェルインプラントによる乳房再建後の患者において,マッサージは被膜拘縮予防に対して有効か? マッサージによる被膜拘縮の予防に関しては,大規模な研究はないが有害である報告もない。スムーズタイプのインプラントを使用した場合においては,マッサージが有効であるとの意見が多いので行ってもよい。 C1
CQ18 テクスチャードタイプのインプラントはスムーズタイプのインプラントと比較した場合,被膜拘縮の発生率が低くなるか? スムーズタイプのインプラントに比べ,テクスチャードタイプのインプラントによる被膜拘縮の発生頻度は減少する。 B
CQ19 インプラントを大胸筋下に挿入する場合と大胸筋上に挿入する場合で,術後の質感と合併症に差はあるか? 血腫発生率と乳房の対称性に関しては,大胸筋上挿入の方が優れている。被膜拘縮と乳頭知覚障害に関しては,大胸筋下の方が優れている。感染と波打ち(Rippling)に関しては差がない。 C1
CQ20 再建術にエキスパンダーの使用は有効か? 乳房再建術にエキスパンダーの使用は有効であるが,放射線治療や術前術後の化学療法を行う患者には注意が必要である。 C1
CQ21 エキスパンダーを使用する場合,テクスチャードタイプのエキスパンダーの方がスムーズタイプのエキスパンダーと比較して被膜形成の程度は軽度か? 乳房再建にインプラントを用いる場合,被膜形成の面からは,スムーズタイプよりもテクスチャードタイプのエキスパンダーを使用することが勧められる。 C1
CQ22 乳房全摘術後の患者に対して腹直筋皮弁は有効か? 腹直筋皮弁による再建は適応となる。 B
CQ23 腹直筋皮弁による乳房再建術後の患者は出産が可能か? 腹直筋皮弁による乳房再建術後に経腟分娩による出産は可能であるとされるが,十分な根拠はない。 C1
CQ24 腹部手術の既往歴がある患者に対して,腹直筋皮弁による乳房再建術は可能か? 瘢痕の部位に応じて皮弁のデザインを工夫することや,皮弁血流量を増強させる手技により,安全に移植することが可能である。 C1
CQ25 遊離TRAM 皮弁(DIEP を含める)は,有茎TRAM 皮弁に比べて合併症の点において優れているか? 遊離TRAM 皮弁は有茎TRAM 皮弁に比べ,皮弁合併症ならびに腹壁合併症の発生率は低く,推奨される。 C1
CQ26 広背筋皮弁は勧められるか? 広背筋皮弁による乳房再建は選択肢の1 つとして勧められる。 B
CQ27 拡大広背筋皮弁による乳房再建術は勧められるか? 中等度までの大きさの乳房であれば,拡大広背筋皮弁による乳房再建術を行ってもよいが,合併症に注意を要する。 C1
CQ28 広背筋皮弁で再建する場合,胸背神経を温存するか切断するかにより,再建乳房の状態に差を生じるか? 広背筋皮弁の挙上時には,胸背神経は温存されることが多く,通常,胸背神経を切断する必要はないと考えられる(グレードC 1)。ただし,神経を温存した場合,筋の不随意収縮が生じる可能性がある。 C1
CQ29 乳癌全摘後の患者に対して穿通枝皮弁は有効か? 穿通枝皮弁は,取り扱う血管径が細いため合併症が多く,安全とはいえない。しかし,筋および主要血管を犠牲にしない低侵襲皮弁であり,皮弁採取部の合併症が少ないという点では有効といえる。 C1
CQ30 遊離DIEP 皮弁は遊離TRAM 皮弁(muscle sparing flap:筋体温存腹直筋皮弁を含む)と比較して術後合併症が少ないか? 遊離DIEP 皮弁は遊離TRAM 皮弁(筋体温存腹直筋皮弁:muscle sparing flap を含む)と比較して皮弁の虚血性合併症は増加するが,腹壁の合併症は少ない傾向がある。 B
CQ31 遊離皮弁の移植床血管の選択によって手術結果に差が出るか? 遊離皮弁の移植床血管の選択による手術結果に差はない。 B
CQ32 自家脂肪注入法を行った場合,長期的に術後形態は保持されるか? 自家脂肪注入のみによって,長期形状維持を可能とする十分な量の脂肪組織を再生する技術はいまだに開発されておらず,現段階では術後形態が保持されるとはいえない。 C2
CQ33 自家真皮脂肪移植は推奨されるか? 生着に関する科学的根拠が乏しく,推奨されない。 C2
CQ34 乳輪乳頭形成は勧められるか? 乳頭再建は,健側からの乳頭半切移植法または局所皮弁法としてStar flap,Skate flap,Doubleopposingtab flap などが代表的な方法である。乳輪再建は,健側乳輪または大腿内側基部からの植皮または刺青法が代表的な方法である。いずれの方法も優劣があり,患者の状態に合わせて選択する必要がある。 C1