本診療ガイドラインについて

目的

がん患者にとって“ がんに対する不安” は大きいが,がんの直接的影響や治療による“ 身体障害に対する不安” も同じように大きい。がん治療の進歩により,がんの治療を終えた,あるいは治療を受けつつあるがんサバイバーが500 万人を超えたと推測される1)現在,がんが“ 不治の病” であった時代から,“ がんと共存” する時代の新しい医療のあり方が求められている。

これまでわが国のがん医療では,身体的ダメージには積極的な対応がなされてこなかった。治癒を目指した治療からQOL(quality of life)を重視したリハビリテーション診療まで,切れ目のない支援ができていないのが現状である。その一因は,がんのリハビリテーション診療に関する包括的な診療ガイドラインが存在しないため,適切なリハビリテーションプログラムが組み立てられないことにある。今後,がんのリハビリテーション診療を普及・啓発していくためには診療ガイドラインの確立が必須である。作成された診療ガイドラインは更新され,全国へ均てん化される必要がある。

本診療ガイドラインの目的は,わが国で行われているがん患者に対するリハビリテーション診療を基礎に,エビデンスに基づいた診療ガイドラインを作成し,現状での標準診療を明らかにするとともに,将来に向けてあるべき理想の診療方法を提示することである。

改訂の目的

2013 年4 月に初版「がんのリハビリテーションガイドライン」2)が出版された。がんのリハビリテーション診療においては,腫瘍の存在する解剖学的部位の障害や治療の有害反応・後遺症に対する問題が主に扱われていたが,近年では,がん患者のQOL 向上を目指すサポーティブケアの一環として,後遺症や合併症の軽減を目的とした治療前(prehabilitation)や治療中の対応,がん治療中や治療後の就労支援,がん関連倦怠感(cancer related fatigue;CRF),がん誘発認知機能障害(cancer-induced cognitive impairment;CICI),がん悪液質(cancer cachexia)および骨転移・骨関連事象(skeletal related event;SRE)のマネジメント,緩和ケアが主体となる時期の症状緩和や在宅での療養生活への支援,高齢者のがん診療における役割など,がん患者に影響を及ぼす幅広い問題に対してもニーズは急速に拡大しつつあり,実地臨床に即した指針の提供のためには,定期的な診療ガイドライン改訂が必要である。今回,2013 年より6 年を経て,2019 年に第2 版が出版されることとなり,日本リハビリテーション医学会より委嘱を受けた各領域の専門家からなる改訂委員およびその作成協力者によって,がんのリハビリテーション診療についての多方面からの文献を十分に検討するとともに,医療側だけでなくがん患者が加わることで,診療の益と害,患者の価値観,コスト・臨床適応性も十分に勘案し,体系化された指針を作成することに努めた。

がんのリハビリテーション診療(cancer rehabilitation)の定義について

日本リハビリテーション医学会では,「がんのリハビリテーション医療とは,がん治療の一環としてリハビリテーション科医,リハビリテーション専門職により提供される医学的ケアであり,がん患者の身体的,認知的,心理的な障害を診断・治療することで自立度を高め,QOL を向上させるものである」と,がんのリハビリテーション医療を定義している3)

がんのリハビリテーション診療は,臨床腫瘍科医,リハビリテーション科医の指示により,医療ソーシャルワーカー,臨床心理士,理学療法士,がん専門看護師,作業療法士のコアメンバーと,その他がん患者特有の問題に対処するさまざまな専門職からなるチームとして提供される4)

改訂委員会では,本定義をがんのリハビリテーションの基本的な考え方とし,診療ガイドライン作成に取り組んだ。

利用にあたっての注意点

本診療ガイドラインは,現時点で利用可能なエビデンスや日本の医療環境の事情に基づいて作成された診療の指針であるが,実際の診療でその指針に従うことを強制するものではない。また,診断・評価や治療について記載されていない管理方針を制限するものでもない。なお,クリニカルクエスチョン(clinical question;CQ)によっては,利用可能なエビデンスが乏しいことも多く,このような事柄については改訂委員会でのコンセンサスを得るように努めた。

本診療ガイドラインの記述の内容に対しては,日本リハビリテーション医学会が責任を負うものとする。しかし,診療ガイドラインを適用するか否かの最終判断および治療結果に対する責任は治療担当者が負うべきものである。

対象とする患者

本診療ガイドラインの取り扱う疾患・障害は,がん自体もしくはがんの治療によって生じ得る障害を有する患者もしくは有する可能性のある患者とした。がんの原発巣,治療の種類,がんの病期については制限されない。

対象とする利用者

本診療ガイドラインは,その利用者として,がん患者のリハビリテーション診療に携わる多職種の医療従事者(医師,看護師,理学療法士,作業療法士,言語聴覚士,義肢装具士,臨床心理士,管理栄養士,歯科衛生士等)を想定したが,がんのリハビリテーション診療を専門としない医療従事者にも利用可能な診療ガイドラインとすることを心がけた。

さらには,がん患者,家族をはじめとする一般市民,がんのリハビリテーション診療に関心を有する国内外の医療・福祉・教育・保険・出版・報道等の関係者,他分野の診療ガイドライン作成者,一般市民,がん診療に関わる行政・立法・司法機関等においても利用が想定される。本改訂版出版後には,患者・家族・一般市民向けの本診療ガイドラインの解説書を刊行する予定である。

作成過程

(1)作成の主体

本診療ガイドラインの作成は,平成28〜30 年度 国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)革新的がん医療実用化研究事業「外来がんリハビリテーションの効果に関する研究(課題管理番号16ck0106215h0001)(研究開発代表者 辻哲也)」の一環として行われた(別表1)。日本リハビリテーション医学会診療ガイドライン委員会に,がんのリハビリテーション診療ガイドライン改訂委員会が設置され,診療ガイドライン作成作業を実施した(別表2)。

関連・協力学会に関して,日本リハビリテーション医学会は,日本癌治療学会がん診療ガイドライン統括・連絡委員会リハビリテーション分科会に委員を推薦し,診療ガイドラインの作成・改訂の進捗状況について,同学会と情報の共有を行っている。

(2)診療ガイドライン統括委員会

日本リハビリテーション医学会理事,診療ガイドライン委員会委員長等から構成される統括委員会を組織し,診療ガイドラインの作成体制を構築した。診療ガイドライン公開後には,診療ガイドラインの普及や普及状況の評価の役割を継続して担う。

氏名 所属機関
影近 謙治 金沢医科大学医学部 リハビリテーション医学講座
佐浦 隆一 大阪医科大学総合医学講座 リハビリテーション医学教室
佐伯 覚 産業医科大学医学部 リハビリテーション医学講座
下堂薗 恵(2017 年から) 鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 リハビリテーション医学
高岡 徹 社会福祉法人横浜市リハビリテーション事業団
横浜市総合リハビリテーションセンター リハビリテーション科
帖佐 悦男(2016 年まで) 宮崎大学医学部 整形外科・リハビリテーション科
辻 哲也 慶應義塾大学医学部 リハビリテーション医学教室
(3)システマティックレビューチーム

システマティックレビューチームは,リハビリテーション科専門医とともに,さまざまな専門性を有するリハビリテーション診療の専門職から構成され,委員の専門性により分担し,各章を原則2 名で担当した。

2016 年11 月1 日に第1 回委員会を開催し,エビデンスの収集,評価・統合の作業を進め,2017 年9 月19 日の第4 回委員会でガイドラインシステマティックレビューを完成した。

氏名 職種 所属機関/担当分野
飯野 由恵 言語聴覚士 国立研究開発法人国立がん研究センター東病院 骨軟部腫瘍・リハビリテーション科/第5 章:頭頸部がん
井上 順一朗 理学療法士 神戸大学医学部附属病院 リハビリテーション部/第9 章:血液腫瘍・造血幹細胞移植,第10 章:化学療法・放射線療法
影近 謙治 医師
(リハビリテーション科)
金沢医科大学医学部 リハビリテーション医学講座/第2 章:肺がん,第3 章:消化器がん,第4 章:前立腺がん
片桐 浩久 医師
(整形外科)
静岡県立静岡がんセンター 整形外科/第7 章:骨軟部腫瘍
神里 みどり 看護師 沖縄県立看護大学大学院保健看護学研究科 生涯発達保健看護分野/第11 章:進行がん・末期がん
佐浦 隆一 医師
(リハビリテーション科)
大阪医科大学総合医学講座 リハビリテーション医学教室/第9 章:血液腫瘍・造血幹細胞移植,第10 章:化学療法・放射線療法
辻 哲也 医師
(リハビリテーション科)
慶應義塾大学医学部 リハビリテーション医学教室/第1 章:総論・評価,第8 章:脳腫瘍
鶴川 俊洋 医師
(リハビリテーション科)
医療法人青仁会池田病院 リハビリテーション科/第5 章:頭頸部がん
藤井 美希 作業療法士 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター リハビリテーション科/第6 章:乳がん・婦人科がん
宮越 浩一 医師
(リハビリテーション科)
医療法人鉄蕉会亀田総合病院 リハビリテーション科/第7 章:骨軟部腫瘍
宮田 知恵子 医師
(リハビリテーション科/緩和医療科)
独立行政法人国立病院機構東京医療センター 緩和ケア内科/第11 章:進行がん・末期がん
村岡 香織 医師
(リハビリテーション科)
慶應義塾大学医学部 リハビリテーション医学教室/第2 章:肺がん,第3 章:消化器がん,第4 章:前立腺がん,第6 章:乳がん・婦人科がん
(4)診療ガイドライン作成グループ

診療ガイドライン作成グループには,システマティックレビューチームの委員のほか,がん患者の立場からの意見を診療ガイドラインに反映させるために,がん患者団体代表のがんサバイバーも含む委員で構成された。

2017 年11 月16 日に第1 回委員会を開催し,2018 年10 月16 日の第7 回委員会で推奨案・診療ガイドライン草案が完成した。その後,2018 年10 月23 日に第1 回推奨決定会議が開催され半分のCQ について投票を実施,2018 年11 月13 日に第2 回推奨決定会議が開催され,残りの半分のCQ について投票を実施した。投票結果をもとに内容を修正し,2019 年1 月に診療ガイドラインの草案を完成した。

氏名 職種 所属機関/担当分野
飯野 由恵 言語聴覚士 国立研究開発法人国立がん研究センター東病院 骨軟部腫瘍・リハビリテーション科
井上 順一朗 理学療法士 神戸大学医学部附属病院 リハビリテーション部
影近 謙治 医師
(リハビリテーション科)
金沢医科大学医学部 リハビリテーション医学講座
片桐 浩久 医師
(整形外科)
静岡県立静岡がんセンター 整形外科
神里 みどり 看護師 沖縄県立看護大学大学院保健看護学研究科 生涯発達保健看護分野
佐伯 覚 医師
(リハビリテーション科)
産業医科大学医学部 リハビリテーション医学講座
佐浦 隆一 医師
(リハビリテーション科)
大阪医科大学総合医学講座 リハビリテーション医学教室
全田 貞幹 医師
(放射線治療科)
国立研究開発法人国立がん研究センター東病院 放射線治療科
辻 哲也 医師
(リハビリテーション科)
慶應義塾大学医学部 リハビリテーション医学教室
鶴川 俊洋 医師
(リハビリテーション科)
医療法人青仁会池田病院 リハビリテーション科
藤井 美希 作業療法士 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター リハビリテーション科
古澤 義人 医師
(リハビリテーション科)
東北大学院医学系研究科 肢体不自由学分野
宮越 浩一 医師
(リハビリテーション科)
医療法人鉄蕉会亀田総合病院 リハビリテーション科
宮田 知恵子 医師
(リハビリテーション科/緩和医療科)
独立行政法人国立病院機構東京医療センター 緩和ケア内科
村岡 香織 医師
(リハビリテーション科)
慶應義塾大学医学部 リハビリテーション医学教室
広瀬 眞奈美 患者団体
(代表理事)
一般社団法人キャンサーフィットネス
(5)作成の方法

本診療ガイドラインは2017 年12 月27 日に改訂された「Minds 診療ガイドライン作成マニュアル2017」5)に準じて作成しており,それに基づいて診療ガイドラインの構成や推奨の強さを決定した。本診療ガイドラインの作成に際しては,Minds(公益財団法人日本医療機能評価機構)から講師を招聘し,診療ガイドラインの作成方法についての講義や,改訂委員会においての詳細な相談等の支援を受けた。

①クリニカルクエスチョン(clinical question;CQ)

前版と同様に,がん患者のリハビリテーション診療に関する臨床上の問題を,総論・評価および原発巣・治療目的・病期別に8 領域(消化器がん・肺がん・前立腺がん,頭頸部がん,乳がん・婦人科がん,骨軟部腫瘍・骨転移,原発性・転移性脳腫瘍,血液腫瘍(造血幹細胞移植),化学療法・放射線療法,進行がん・末期がん)に分けた。

平成22 年度診療報酬改定で新設された「がん患者リハビリテーション料」に記載されている8 項目の内容をすべて含むとともに,「周術期の前立腺がんや婦人科がん」や「外来でのリハビリテーション診療」など算定要件に記載されていない事項や,最近のトピックスとして,社会復帰(就労と治療の両立),がん誘発認知機能障害(cancer-induced cognitive impairment;CICI),がん悪液質,骨転移・骨関連事象(skeletal-related events;SRE)のマネジメント,高齢者のがん診療,手術前からのリハビリテーションや栄養サポートについても,エビデンスを収集するように留意した。

②網羅的文献検索

CQ の設定に際しては,その構成要素〔PICO(P:patients, problem, population,I:interventions,C:comparisons, controls, comparators,O:outcomes)〕を検討し,PICO に基づく包括的な文献検索を実施した。各CQ の文献検索は日本医学図書館協会に一括依頼した。検索データベース(検索対象期間)として,MEDLINE(1950 年1 月1 日〜2017 年6 月30 日),医学中央雑誌(1983 年1 月1 日〜2017 年6 月30 日),Cochrane(1993 年1 月1 日〜2017 年6 月30 日)を用いた。検索式,検索結果についてはホームページ(日本リハビリテーション医学会)上に掲載される。各委員はこの検索結果を参照し,さらに各自が二次情報源も含めたハンドサーチにてこの期間の文献を追加して文献検索を終了した。

システマティックレビューの方法

本診療ガイドラインでは,「Minds 診療ガイドライン作成マニュアル2017」5)に準拠し,「エビデンスの強さ」を「治療による影響がどれくらいかを推定したときの確実さ・確信の程度」と定義した。

(1)個々の文献に対する評価(STEP 1)

アウトカムごとにまとめられた文献集合の個々の論文について,研究デザイン(介入研究,観察研究)ごとにバイアスリスク(選択バイアス,実行バイアス,検出バイアス,症例減少バイアス,その他のバイアス),非直接性(研究対象集団の違い,介入の違い,比較の違い,アウトカム測定の違い)を評価し,その結果をまとめたもの(=エビデンス総体;body of evidence)を作成した。

(2)エビデンス総体の総括(STEP 2)

エビデンス総体をアウトカム横断的に質的に統合した全体〔=エビデンス総体の総括(アウトカム全般のエビデンスの強さ)〕に関する評価を行い,エビデンスの確実性(強さ)を1 つに決定した。エビデンスの確実性(強さ)は表1 の通りに分類した。なお,研究デザインが同じで,PICO の各項目の類似性が高い場合には,効果指標を量的に統合するメタアナリシスを適宜行い,エビデンス総体の強さを検討する1 項目として考慮した。以上の結果を推奨作成の資料とした。

本診療ガイドラインでは,原則,ランダム化比較試験では初期評価「A(強)」から,観察研究では初期評価「C(弱)」から開始し,評価を下げる項目(バイアスリスク・非直接性・非一貫性・不正確・出版バイアス,など)と評価を上げる項目(介入による効果が大きい・容量−反応勾配あり・可能性のある交絡因子が提示された効果を減弱させている,など)について評価検討し,強さを決定した。

表1 エビデンス総体のエビデンスの確実性(強さ)

推奨決定の方法

(1)作成グループ内での検討

各章の担当委員は推奨案と診療ガイドライン草案を作成して,推奨決定会議に提出した。

本診療ガイドラインでは,「推奨の強さ」を,「推奨に従って治療を行った場合に患者の受ける益が害や負担を上回ると考えられる確実さの程度」と定義した。推奨は,エビデンスの確実性(強さ)をもとに,推奨した治療によって得られると見込まれる益の大きさ(望ましい効果)と,害(望ましくない効果)のバランスとともに,患者の価値観・好み,コスト(患者の負担)や臨床適応性(日本全国で実施可能か)も加味して,総合的に推奨の強さと向きを勘案して判断した。

推奨の強さは,「1:強く推奨する」,「2:弱く推奨する(提案する)」の2 通りとした(表2)。「強い推奨」とは,得られているエビデンスの強さと臨床経験から判断して,推奨した治療によって得られる益が大きく,かつ,治療によって生じ得る害や負担を上回ることが確実と考えられる場合と定義される。この場合,患者の価値観や好み(患者の多くが推奨された治療を希望するかどうか),コスト(患者の負担)や臨床適応性(全国で実施可能か)など,わが国の医療事情も考慮する必要がある。

表2 推奨の強さ

なお,本診療ガイドラインでは,各CQ ごとに,推奨の強さとエビデンスの強さを併記し,以下のように記載した。

例)・患者P に対して治療I を行うことを推奨する(1A)=(強い推奨,強い根拠に基づく)
・患者P に対して治療I を行うことを提案する(2C)=(弱い推奨,弱い根拠に基づく)
・患者P に対して治療I を行わないことを推奨する(2D)=(弱い推奨,とても弱い根拠に基づく)
・患者P に対して治療I を行わないことを推奨する(1B)=(強い推奨,中程度の根拠に基づく)
(2)推奨決定会議

推奨決定会議を開催し,各章の担当委員から提出された資料(エビデンス総体,エビデンス総体の統括,推奨案と診療ガイドライン草案)をもとに各委員の意見を述べた。その後,推奨についての議論を綿密に行い,推奨決定のための投票を行った。

投票に際して以下の推奨決定方法を事前に決定した。

  1. 投票が成立するためには,推奨決定会議に改訂委員の3 分の2 以上(15 名中10 名以上)が参加していることを条件とする。
  2. 投票を行うCQ に関連して,経済的利益相反(COI)または学術的COI を有する委員は,投票を棄権し,棄権申告書により申告する。
  3. 委員が欠席する場合,事前に電子投票をすることができる。その場合,委員はCOI 申告書を事前に提出し,COI のあるCQ に関しては投票を棄権する
  4. 以下のいずれかの選択肢の一つに投票を行う(アンサーパットによる無記名投票)
    □ 行うことを推奨する(強い推奨)
    □ 行うことを提案する(弱い推奨)
    □ 行わないことを提案する(弱い推奨)
    □ 行わないことを推奨する(強い推奨)
    □ 推奨なし
  5. 推奨の向きと強さの決定には以下の方法を採用する。
    □ 半数以上が片方の向き(行う/行わない)に投票し,
    反対の向きに投票するのが20%未満であった場合は,半数以上が投票した向きを推奨することとする。
    □ さらには70%が「強く推奨する」と投票した場合には,強い推奨とする。
    □ 上記の得票分布が得られなかった場合は,再度討議を行い,再投票を実施する。

投票分布の結果については,各CQ の解説文中に示した(投票分布を百分率で記載したが,小数第1 位以下を四捨五入しているため,比率の合計が100%にならない場合がある)。

第4 章CQ6,第8 章CQ7 において,各々1 名の棄権があった。全員,日本医学会「診療ガイドライン策定参加資格基準ガイダンス」6)に準拠したCOI 申告書を日本リハビリテーション医学会COI 委員会へ事前に提出した。開示すべきCOI はなかった。

(3)解説文の作成

上記の推奨決定会議での議論および投票の結果を踏まえて,各章の分担委員は推奨案と診療ガイドライン草案を修正し,最終版とした。

診療ガイドラインの妥当性に対する作成委員会外部からの評価

日本リハビリテーション医学会web サイトの掲示板機能やメール機能を利用して,本診療ガイドライン草案を公開し,同医学会会員約1 万人を対象に2019 年2 月22 日〜3 月1 日の期間,パブリックコメントの募集を行い,その結果を考慮のうえ,最終的な推奨を決定し,診療ガイドラインを完成させた。

さらに,診療ガイドライン出版後には,日本癌治療学会がん診療ガイドライン評価委員会による外部評価も受け,次回以降の改訂に役立てる予定である。

今後の改訂

今後も医学の進歩や社会の変化とともに,がんのリハビリテーション診療は大きく変化すると予想されるため,診療ガイドラインも定期的な改訂作業が必要になると考えられる。5〜6 年ごとをめどに改訂するとともに,必要に応じて,それ以前にも臨時改訂を行い,日本リハビリテーション医学会web サイトに提示していく予定である。

出版後の診療ガイドラインの普及状況のモニタリング

発刊後,web アンケートによる調査で,本診療ガイドラインの普及度,診療内容の変化を検討する予定である。

資金

本診療ガイドライン作成に要した資金は,平成28〜30 年度 国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)革新的がん医療実用化研究事業「外来がんリハビリテーションの効果に関する研究(課題管理番号16ck0106215h0001)(研究開発代表者 辻哲也)」の負担によるものである。

利益相反

2017 年3 月に日本医学会より公表された「診療ガイドライン策定参加資格基準ガイダンス」(以下,参加基準ガイダンス)6)に従い,日本リハビリテーション医学会診療ガイドライン委員会の担当理事,コア委員会委員長,本診療ガイドライン改訂委員会委員が,就任時から診療ガイドライン公表までの1 年ごとの利益相反(COI)の開示を行った。

申告に際しては,①委員本人のCOI,委員の配偶者のCOI,② 1 親等親族または収入・財産的利益を共有する者のCOI,③委員が所属する組織・部門にかかる組織COI を,参加基準ガイダンスの定めるCOI 自己申告書にて金額区分とともに,日本リハビリテーション医学会COI 委員会へ申告した。

協力者

本診療ガイドラインは作成協力者の援助によって作成された(別表3)。

参考文献

1)
山口建,新海哲,森文子,他.厚生労働省がん研究助成金による研究報告書 がん生存者の社会的適応に関する研究.2002.
2)
日本リハビリテーション医学会 がんのリハビリテーション策定委員会(編著).がんのリハビリテーションガイドライン.金原出版,2013.
3)
辻哲也.がんに対するリハビリテーション医療の意義.日本リハビリテーション医学会(監).リハビリテーション医学・医療コアテキスト.pp248-51,医学書院,2018.
4)
Fialka-Moser V, Crevenna R, Korpan M, et al. Cancer rehabilitation: particularly with aspects on physical impairments. J Rehabil Med. 2003;35:153-62.
5)
Minds 診療ガイドライン作成マニュアル2017.https://minds.jcqhc.or.jp/s/guidance_2017(最終アクセス日:2019 年2 月22 日)
6)
日本医学会診療ガイドライン策定参加資格基準ガイダンス.2017.https://jams.med.or.jp/guideline/clinical_guidance.pdf(最終アクセス日:2019 年2 月22 日)