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疫学
No. | クリニカルクエスチョン | 推奨 | 推奨の 強さ |
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CQ1 | わが国における甲状腺癌の罹患率,死亡率は? | 推奨なし | |
CQ2 | 甲状腺癌発症の危険因子とリスクの大きさは? | 推奨なし |
診断・非手術的管理
No. | クリニカルクエスチョン | 推奨 | 推奨の 強さ |
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CQ3 | 甲状腺結節における悪性腫瘍の頻度は? | 推奨なし | |
CQ4 | 甲状腺結節患者において甲状腺癌の可能性を高める症状や所見は? | 推奨なし | CQ5 | 甲状腺結節の鑑別診断に超音波検査,CT,MRI,FDG-PET検査は推奨されるか? | 超音波検査を行うよう推奨する(,コンセンサス+++)。 | ◎◎◎ |
CT,MRI,FDG-PET検査は行わないよう推奨する(,コンセンサス+++)。 | ××× | ||
CQ6 | 甲状腺結節の鑑別診断に血液検査は推奨されるか? | 甲状腺結節の鑑別診断における血液検査は,他の臨床所見を考慮して判断する。 | |
機能性結節を疑う場合には,血中TSH測定を推奨する(,コンセンサス++)。 | ◎◎◎ | ||
濾胞性腫瘍を疑う場合には,血中サイログロブリン測定を推奨する(,コンセンサス++)。 | ◎ | ||
髄様癌を疑う場合には,血中カルシトニン測定を推奨する(,コンセンサス++)。 | ◎◎◎ | ||
髄様癌を疑う場合には,血中CEA測定を推奨する(,コンセンサス++)。 | ◎◎◎ | ||
CQ7 | 甲状腺結節の鑑別診断における穿刺吸引細胞診の診断能は? | 推奨なし | |
CQ8 | 甲状腺良性結節の自然史は? | 推奨なし | |
CQ9 | 甲状腺良性結節に対してTSH抑制療法は推奨されるか? | TSH抑制療法を行わないことを推奨する(,コンセンサス++)。 | × |
乳頭癌
No. | クリニカルクエスチョン | 推奨 | 推奨の 強さ |
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CQ10 | 甲状腺乳頭癌のリスク分類 | 推奨なし | |
CQ11 | 甲状腺乳頭癌に対して甲状腺全摘術は推奨されるか? | 超低リスク・低リスク症例(T1N0M0)には全摘術を行わないことを推奨する(,コンセンサス+++)。 | ××× |
高リスク症例には(準)全摘術を推奨する(,コンセンサス+++)。 | ◎◎◎ | ||
中リスク症例では予後因子や患者背景を考慮して全摘術か葉切除術かを決定する(,コンセンサス+++)。 | ◎◎ | ||
CQ12 | 甲状腺乳頭癌に対して予防的リンパ節郭清は推奨されるか? | 術前評価でリンパ節転移を認めない(cN0)乳頭癌症例に対して; | |
中央区域の予防的郭清は行うことを推奨する(,コンセンサス+++)。 | ◎◎ | ||
外側区域の予防的郭清は,低リスク症例には行わないことを推奨する(,コンセンサス+++)。 | × | ||
中・高リスク症例における外側区域予防的郭清の適応は,その他の予後因子や患者背景,意思を考慮のうえ決定することを推奨する(,コンセンサス++)。 | ◎ | ||
CQ13 | 超低リスク乳頭癌(T1aN0M0)に対して非手術・経過観察は推奨されるか? | 転移や浸潤の徴候のない超低リスク乳頭癌患者が,十分な説明を受けたうえで非手術・経過観察を希望する場合には,適切な診療体制のもとで行うことを推奨する(,コンセンサス++)。 | ◎◎ |
濾胞性腫瘍
No. | クリニカルクエスチョン | 推奨 | 推奨の 強さ |
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CQ14 | 広汎浸潤型濾胞癌に甲状腺全摘術は推奨されるか? | 遠隔転移を伴う(M1)広汎浸潤型濾胞癌には甲状腺全摘術とその後の放射性ヨウ素内用療法による治療を推奨する(コンセンサス+++)。 | ◎◎◎ |
遠隔転移を伴わない(M0)広汎浸潤型濾胞癌にも補完甲状腺全摘術を推奨する(,コンセンサス+++)。 | ◎◎◎ | ||
CQ15 | 片葉切除後に微少浸潤型濾胞癌と判明した症例に補完甲状腺全摘術は推奨されるか? | 遠隔転移を伴わない(M0)微少浸潤型濾胞癌に補完甲状腺全摘術は一律には推奨されない(,コンセンサス++)。 | × |
髄様癌
No. | クリニカルクエスチョン | 推奨 | 推奨の 強さ |
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CQ16 | 甲状腺髄様癌で遺伝性を疑う症状・所見は? | 推奨なし | |
CQ17 | 甲状腺髄様癌患者に対してRET 遺伝学的検査は推奨されるか? | すべての髄様癌患者にRET 遺伝学的検査を行うことを推奨する(,コンセンサス+++)。 | ◎◎◎ |
CQ18 | 未発症RET 変異保有者に対して予防的甲状腺全摘は推奨されるか? | 未発症変異キャリアに対して一律に予防的甲状腺全摘を行うことは推奨しない(,コンセンサス+++)。 | × |
CQ19 | 髄様癌に対して甲状腺全摘は推奨されるか? | 遺伝性髄様癌は両側のC細胞領域に発生するため,たとえ臨床的に片側葉の病変であっても甲状腺全摘を推奨する(,コンセンサス+++)。 | ◎◎◎ |
片葉に限局した散発性髄様癌では非全摘(片葉切除)を推奨する(,コンセンサス+++)。 | ◎◎ | ||
CQ20 | 髄様癌に対する予防的リンパ節郭清は推奨されるか? | 中央区域の予防的郭清を推奨する(,コンセンサス+++)。 | ◎◎◎ |
患側あるいは対側外側区域の予防的郭清については,個々のカルシトニン値や予後因子を踏まえて決定することを推奨する(,コンセンサス+++)。 | ◎ |
低分化癌
No. | クリニカルクエスチョン | 推奨 | 推奨の 強さ |
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CQ21 | 低分化癌はどのように定義されているか?その頻度,予後はどれくらいか? | 推奨なし | |
CQ22 | 低分化癌は術前に診断可能であるか? | 推奨なし | |
CQ23 | 低分化癌に対して甲状腺全摘術,(予防的)リンパ節郭清,放射性ヨウ素内用療法は推奨されるか? | 低分化癌に対しては甲状腺全摘術,(予防的)リンパ節郭清,放射性ヨウ素内用療法を推奨する(エビデンスなし,コンセンサス++)。 | ◎ |
未分化癌
No. | クリニカルクエスチョン | 推奨 | 推奨の 強さ |
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CQ24 | 甲状腺未分化癌の予後,およびその予測因子は? | 推奨なし | |
CQ25 | 根治手術を施行しえた未分化癌に対する術後補助療法は推奨されるか? | 根治手術を施行しえた未分化癌に対して術後補助療法を推奨する(,コンセンサス++)。 | ◎◎ |
CQ26 | 切除不能甲状腺未分化癌に対する集学的治療は推奨されるか? | 切除不能甲状腺未分化癌に対して集学的治療を推奨する(,コンセンサス++)。 | ◎◎ |
CQ27 | 分化癌再発時に未分化癌と診断された場合,未分化癌として治療することが推奨されるか? | 分化癌再発時に未分化癌と診断された場合,未分化癌として治療することを推奨する(,コンセンサス+++)。 | ◎◎◎ |
CQ28 | 甲状腺未分化癌治療に際して緩和ケアの介入は推奨されるか? | 緩和ケアの介入を推奨する(,コンセンサス+++)。 | ◎◎◎ |
放射線治療
No. | クリニカルクエスチョン | 推奨 | 推奨の 強さ |
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CQ29 | 甲状腺分化癌の術後に放射性ヨウ素内用療法は推奨されるか? | 高リスク乳頭癌には推奨する(,コンセンサス+++)。 | ◎◎◎ |
中リスク乳頭癌には予後因子を考慮したうえで推奨する(,コンセンサス++)。 | ◎ | ||
低リスク乳頭癌には推奨しない(,コンセンサス+++)。 | ××× | ||
広範浸潤型濾胞癌には推奨する(,コンセンサス+++) | ◎◎◎ | ||
微少浸潤型濾胞癌には推奨しない(,コンセンサス++)。 | ×× | ||
CQ30 | 術後放射性ヨウ素内用療法施行前にヨウ素制限は推奨されるか? | 残存正常あるいは悪性甲状腺組織への放射性ヨウ素の集積を向上させるため,ヨウ素制限を推奨する(,コンセンサス+++)。 | ◎◎◎ |
CQ31 | 術後放射性ヨウ素内用療法に用いる放射性ヨウ素の投与量は? | 推奨なし | |
CQ32 | 分化型甲状腺癌の再発(局所,リンパ節転移,遠隔)に対して放射性ヨウ素内用療法は推奨されるか? | 病変の部位,数,大きさ,全体の進行度を考慮して判断することを推奨する(,コンセンサス+++)。 | ◎◎◎ |
肺転移には強く推奨する(,コンセンサス+++)。 | ◎◎◎ | ||
骨転移には強く推奨する(,コンセンサス+++)。 | ◎◎◎ | ||
手術適応外だが治療を要する局所再発,リンパ節転移には弱く推奨する(,コンセンサス++)。 | ◎ | ||
脳転移には推奨しない(,コンセンサス+++)。 | ××× | ||
その他の臓器転移には推奨しない(,コンセンサス+++)。 | ××× | ||
転移部位が明らかでないサイログロブリン髙値症例には推奨しない(,コンセンサス+++)。 | ××× | ||
CQ33 | 放射性ヨウ素を投与する際にTSHを上昇させる手段として遺伝子組換えヒト型甲状腺刺激ホルモン製剤(recombinant human Thyroid Stimulating Hormone, rhTSH)は推奨されるか? | 放射性ヨウ素全身シンチグラフィ(I-131 Whole Body Scan;WBS)や血清サイログロブリン(Thyroglobulin;Tg)試験を行う際に,あるいはアブレーションを行う際に,甲状腺ホルモンの投与を中止する従来法に代わって,rhTSHの使用を推奨する(,コンセンサス+++)。 | ◎◎◎ |
CQ34 | 進行再発甲状腺分化癌に対して放射線外照射は推奨されるか? | 腫瘍による症状があり,かつ外科治療や放射性ヨウ素内用療法あるいは分子標的治療薬治療の適応がない症例においては,その緩和を目的として,放射線外照射による治療を推奨する(,コンセンサス+)。 | ◎ |
分化癌進行例
No. | クリニカルクエスチョン | 推奨 | 推奨の 強さ |
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CQ35 | 反回神経浸潤例に神経合併切除は推奨されるか? | 術前から反回神経麻痺の症状や所見を認める場合には神経合併切除を行うことを推奨する(,コンセンサス+++)。(CQ36 を参照)。 | ◎◎◎ |
術前に反回神経麻痺の症状や所見を認めない場合には癌を遺残させないよう神経から鋭的に剥離し(いわゆるシェービング),神経を温存することを推奨する(,コンセンサス+++)。 | ◎◎ | ||
CQ36 | 反回神経合併切除例で反回神経再建は推奨されるか? | 切除と同時に再建することを推奨する(,コンセンサス+++) | ◎◎◎ |
CQ37 | 気管浸潤例に対して気管合併切除は推奨されるか? | 気管合併切除を推奨する。ただし,その適応と方法は病期,腫瘍の広がり,手術合併症の危険,術後のQOL,予測される予後,治療チームの技量を十分に考慮して決定する(,コンセンサス+++)。 | ◎◎ |
CQ38 | 気管内腔に達する明らかな浸潤に対して,気管部分切除(楔型切除や窓状切除)よりも気管管状切除・再建が推奨されるか? | 気管管状切除・再建は患者の疾患状況(腫瘍の解剖学的位置,病期,併存症,耐術能,予測される予後)と手術合併症の危険,術後のQOL,そして担当医療チームの技量を十分に踏まえ,患者や家族の意向を勘案したうえで実施することを推奨する(,コンセンサス+++)。 | ◎ |
術後治療(再発・転移を含む)
No. | クリニカルクエスチョン | 推奨 | 推奨の 強さ |
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CQ39 | 甲状腺分化癌に対する術後補助療法としてTSH抑制療法は推奨されるか? | 乳頭癌の超低リスク・低リスク症例に対してはTSH抑制療法を行わないことを推奨する(,コンセンサス++)。 | ××× |
乳頭癌の中リスク症例に対しては術中所見と病理診断に基づいてTSH抑制療法の適応を決定することを推奨する(,コンセンサス+++)。 | ◎◎ | ||
乳頭癌の高リスク症例に対してはTSH抑制療法を行うことを推奨する(,コンセンサス+++)。 | ◎◎ | ||
濾胞癌では広汎浸潤型症例に対してTSH抑制療法を行うことを推奨する(,コンセンサス+++)。 | ◎◎ | ||
CQ40 | 進行・再発甲状腺癌分化癌に対して,化学療法は推奨されるか? | 進行・再発甲状腺分化癌に対して殺細胞性抗癌薬による化学療法は行わないことを推奨する(,コンセンサス++)。 | × |
CQ41 | 甲状腺癌治療として補完代替治療法は推奨されるか? | 甲状腺癌の進行抑制や延命効果が確認できる補完代替治療法は存在せず,行わないことを強く推奨する(,コンセンサス+++) | ××× |
分子標的薬治療
No. | クリニカルクエスチョン | 推奨 | 推奨の 強さ |
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CQ42 | 進行・再発甲状腺分化癌に対して,分子標的薬の使用は推奨されるか? | 病勢進行が明らかな放射性ヨウ素内用療法不応性の進行・再発甲状腺分化癌に対して分子標的薬の使用を推奨する(,コンセンサス+++)。 | ◎◎◎ |
CQ43 | 進行・再発甲状腺髄様癌に対して,分子標的薬の使用は推奨されるか? | 病勢進行が明らかな進行・再発甲状腺髄様癌に対して分子標的薬(バンデタニブ)の使用を推奨する(,コンセンサス+++)。 | ◎◎◎ |
病勢進行が明らかな進行・再発甲状腺髄様癌に対して分子標的薬(ソラフェニブまたはレンバチニブ)の使用を推奨する(,コンセンサス+++)。 | ◎◎ | ||
CQ44 | 進行・再発甲状腺未分化癌に対して,分子標的薬の使用は推奨されるか? | 根治切除不能の進行・再発甲状腺未分化癌に対する分子標的薬(レンバチニブ)は,特に期待される効果と予想される危険を十分に評価したうえでの使用を推奨する(,コンセンサス++)。 | ◎◎ |