クリニカルクエスチョン・推奨一覧

※CQ No.部分をクリックすると解説へ移動します。

Ⅰ.疫学

No. クリニカルクエスチョン 推奨 グレード
総論
CQ1 膀胱癌の一次予防は可能か? 疫学的観察研究の結果から,禁煙が最も効果のある膀胱癌予防方法と考えられる。 A
乳酸桿菌の1 つであるLactobacillus casei strain Shirota による再発予防効果が本邦で報告されている。 B
その他食物摂取や生活習慣病との関連も指摘されているが,現時点では断定的結論を出すまでには至っていない。 C1
CQ2 喫煙と膀胱癌は関係があるか? 喫煙習慣と膀胱癌の罹患率には強い相関が認められることから喫煙は膀胱癌のリスクファクターの1 つであると考えられている。 A

Ⅱ.診断

No. クリニカルクエスチョン 推奨 グレード
総論
CQ3 膀胱癌のスクリーニングに有用な尿中マーカーはあるか? 喫煙歴のある高齢者や,職業性発癌物質曝露既往歴を有する人などいわゆる高リスク群に対象を限定した場合は,検尿および尿細胞診の年一回程度の施行が最も効率がよいスクリーニング法と考えられる。 C1
CQ4 膀胱癌の診断に膀胱鏡は有用か? 膀胱鏡検査は膀胱癌を疑う症状を示す全ての患者において推奨される。 A
CQ5 臨床病期T 診断の適切な方法は? 筋層浸潤を確実に診断するためにはTURBT が必要である。さらに,T1 high grade 癌などの場合には2nd TUR も推奨される。 A
画像診断としては主にMRI で評価する。 B
CQ6 リンパ節転移あるいは遠隔転移を検出する最良の方法は? リンパ節転移の診断には,主にCT が用いられる。 A
肺・肝転移の診断には,CT が用いられる。 A
骨転移が疑われる場合,骨シンチグラフィーが用いられる。 B

Ⅲ.治療学

No. クリニカルクエスチョン 推奨 グレード
総論

Ⅳ.筋層非浸潤性膀胱癌の治療

No. クリニカルクエスチョン 推奨 グレード
総論
CQ7 TURBT はどこまで切除するのがよいか? TURBT においては,可視的腫瘍を可能な限りすべて切除することが推奨される。切除切片に筋層が含まれ,そこに癌細胞のないことが確認されなければ,筋層非浸潤性膀胱癌と診断できない。また,腫瘍周辺部位の検索も必要である。 A
CQ8 TURBT 時に前立腺部尿道を含めたランダム生検は推奨されるか? CIS の併発が疑われる場合,TURBT 時にランダム生検は推奨される。 A
腫瘍が三角部や膀胱頸部にある場合,多発腫瘍の場合などでは,前立腺部尿道のTUR 生検も推奨される。 B
CQ9 筋層非浸潤性膀胱癌に対して2nd TUR は推奨されるか? 初回TURBT での病理組織所見がT1 high grade 症例,あるいは切除切片に筋層成分が含まれていない場合,2nd TUR が推奨される。 A
CQ10 初期治療後の推奨されるfollow-up プロトコールはあるのか? 初期治療後,通常3 ヵ月後の膀胱鏡検査,尿細胞診検査を行い,その後リスク別に間隔の変更が行われるが,適切なプロトコールに関して結論は得られていない。 B
CQ11 TURBT 後に膀胱内に所見がなく尿細胞診陽性が持続した場合,どのような追加検査が推奨されるか? 膀胱内に異常所見がなく尿細胞診陽性が持続した場合,前立腺部尿道のTUR 生検を含むランダム生検および両側上部尿路尿細胞診や必要に応じて尿管鏡検査による上部尿路の検索が推奨される。 B
CQ12 低リスク筋層非浸潤性膀胱癌に対して抗癌剤即時単回注入は推奨されるか? 低リスク筋層非浸潤性膀胱癌に対するTURBT 後の抗癌剤即時単回注入は推奨される。 A
CQ13 中リスク筋層非浸潤性膀胱癌に対して抗癌剤維持投与は推奨されるか? 中リスク筋層非浸潤性膀胱癌に対するTURBT 後の補助療法は,抗癌剤即時注入に続いて維持投与が推奨される。しかし,維持投与の用量やスケジュールについては現時点で結論が得られていない。 A
CQ14 中・高リスク筋層非浸潤性膀胱癌に対するBCG の推奨される注入レジメンはあるのか? 中・高リスク筋層非浸潤性膀胱癌に対するTURBT 後の術後補助治療としてのBCG 膀注療法は推奨されるが,注入レジメンについては結論が得られていない。 B
CQ15 中・高リスク筋層非浸潤性膀胱癌に対してBCG 維持療法は推奨されるか? 中・高リスク筋層非浸潤性膀胱癌に対するBCG 膀注維持療法は推奨される。 B
CQ16 BCG failure をきたしたTa,T1 膀胱癌に対してどのような治療が推奨されるか? BCG failure 症例のうちBCG-refractory 症例に対しては膀胱全摘が推奨される。 B
CQ17 BCG 治療後に再発をきたしたTa,T1 膀胱癌に対して2nd line BCG 膀胱内注入療法は推奨されるか? BCG 膀胱内注入療法後の再発症例に対しては2nd line BCG 膀胱内注入療法は行ってもよいが,必要に応じて膀胱全摘を考慮すべきである。 C1
CQ18 高リスク筋層非浸潤性膀胱癌に対する膀胱全摘除術の推奨されるタイミングはあるのか? 高リスク筋層非浸潤性膀胱癌で進展リスクの高い症例,BCG-refractory 症例に対しては膀胱全摘除術が推奨される。 B

Ⅴ.CIS の治療

No. クリニカルクエスチョン 推奨 グレード
総論
CQ19 CIS に対するBCG の推奨されるレジメンはあるのか? 標準量BCG を用いた導入療法(週1 回80 ~ 81mg×6 ~ 8 回)に1 年間以上の維持療法が推奨されるレジメンである。 B
CQ20 CIS に対するBCG 維持注入療法は推奨されるか? CIS に対するBCG 維持注入療法は推奨される。 A
CQ21 BCG 治療後に再発したCIS 症例に対する2nd line BCG 注入療法は推奨されるか? BCG 治療後に再発したCIS 症例に対する推奨治療は膀胱全摘であるが,膀胱全摘が困難な症例や再発までの期間が1 年以上経過した症例では2nd line BCG 注入療法も選択のオプションとなりうる。 C1
CQ22 CIS に対する膀胱全摘除術の推奨されるタイミングはあるのか? CIS に対する膀胱全摘除術の推奨されるタイミングは2nd line 注入療法を含めBCG 注入治療失敗と判断した時点である。また前立腺部尿道にCIS が存在する症例は即時膀胱全摘を考慮すべきである。 B

Ⅵ.Stage ⅡおよびStage Ⅲの治療

No. クリニカルクエスチョン 推奨 グレード
総論
CQ23 Stage Ⅱ,Stage Ⅲに対する標準治療は何か? StageⅡ,StageⅢの筋層浸潤性膀胱癌に対する標準治療は膀胱全摘除術+骨盤リンパ節郭清術+尿路変向術である。 A
CQ24 周術期化学療法の利点と欠点は? 筋層浸潤性膀胱癌に対する術前および術後化学療法にはそれぞれ様々な利点と欠点があるが,生存率改善に寄与するのはcisplatin を含む術前化学療法である。 A
CQ25 根治手術後の再発の様式は? 膀胱全摘除術後の再発は局所再発が5 ~ 15%で,遠隔転移が20 ~ 50%と遠隔転移の場合が多い。局所再発,遠隔転移共に術後2 年以内に起こることが多い。尿道再発の頻度は1.5 ~ 9.0%であり,上部尿路再発の頻度は0.75 ~ 6.4%である。
CQ26 術後再発の危険因子は何か? 局所再発,上部尿路再発,尿道再発,遠隔転移に関しては摘出標本の病理組織学的検索によって得られる所見が最も信頼できる危険因子である。また,診断から膀胱全摘除術までの期間も予後と関連する。
CQ27 Stage Ⅱ, Stage Ⅲに対する膀胱全摘除術後の経過観察方法は? 筋層浸潤性膀胱癌に対する膀胱全摘除術後の経過では,①癌の再発(局所,尿道,上部尿路,遠隔転移),②尿路変向に関連した上部尿路変化,③腎機能,および④代謝異常が観察項目となる。各検査の実施間隔には確立されたものはないが,術後2 年以内は少なくとも3 ~ 6 ヵ月ごと,その後は1 年ごとの検査が推奨される。これらの間隔の設定には癌の悪性度および進展度も考慮しなければならない。 C1
CQ28 尿道摘除の適応症例は? CA1:前部尿道に腫瘍がある場合や,吻合する尿道断端に腫瘍が存在する場合には尿道摘除の適応であり,自排尿型代用膀胱形成術(自排尿型尿路再建)は行うべきではない。 B
CA2:自排尿型代用膀胱形成術(自排尿型尿路再建)を考慮しない場合,上記要因に加え,膀胱上皮内癌,多発腫瘍などの存在は根治が可能な症例においては尿道摘除を考慮すべきである。 C1
CA3:前立腺部尿道に腫瘍性変化がある場合には自排尿型代用膀胱形成術(自排尿型尿路再建)の適応は慎重に行うべきである。 C1
CQ29 根治手術における神経温存の適応症例は? 神経温存により根治を損なわないとする明確な適応基準は確立していない。性機能温存を望む症例では総合的に判断し神経温存を検討すべきである。 C1
CQ30 各種尿路変向あるいは尿路再建の適応は? CA1:尿管皮膚瘻術は,腸管利用尿路変向がリスクを伴う患者や合併症を持つ患者に適応になる。 B
CA2:回腸導管造設術の適応範囲は広く,根治的膀胱摘除術が可能な全ての患者に適応がある。 B
CA3:前部尿道に腫瘍がある場合や,吻合する尿道断端に腫瘍が存在する場合には自排尿型代用膀胱形成術(自排尿型尿路再建)は行うべきではない。 B
CQ31 自排尿型尿路再建の利点と問題点は? CA1:自排尿型尿路再建は良好なボディイメージ(整容性)となる。 B
CA2:ある程度の尿禁制あるいは排尿状態が得られる可能性があるが,QOL の面で他の尿路変向/ 再建法より優れているかについては不明である。 C1
CQ32 膀胱全摘除術における拡大リンパ節郭清術の臨床的意義はあるか? リンパ節郭清範囲の拡大は筋層浸潤性膀胱癌の予後を改善する可能性がある。 C1
CQ33 高齢者に対する膀胱全摘除術は推奨できるか? 合併症のない全身状態良好な高齢者に対し,経験の多い施設での膀胱全摘除術は推奨される。 B
CQ34 膀胱温存療法の対象症例,および,適応は? CA1:標準治療外であることを了承した上で膀胱温存を希望される症例が対象症例である。 C1
CA2:深達度T3a 以下の限局癌,腫瘍径3cm 以下,そしてCIS や水腎症のない症例がよい適応とされている。 B
CQ35 膀胱温存に用いられる治療と治療成績は? CA1:経尿道的手術(TURBT),cisplatin を中心とした化学療法,および,放射線療法(50-60Gy)を併用する集学的治療が推奨される。 B
CA2:これまで多くの臨床試験が施行されたが,5 年膀胱温存生存率はいずれも60%以下であった。

Ⅶ.Stage Ⅳの治療

No. クリニカルクエスチョン 推奨 グレード
総論
CQ36 Stage Ⅳ膀胱癌に対する膀胱全摘除術の適応はあるか? 病巣が骨盤内に限局し,かつ化学療法で著明な腫瘍の縮小が得られた場合には,骨盤リンパ節郭清を加えた膀胱全摘除術により予後の改善が期待できる可能性がある。 C1
CQ37 進行膀胱癌に対する尿路変向術の適応はあるか? 癌浸潤による尿管閉塞をきたしている場合に,生命予後の延長や救済療法を可能にする目的で経皮的腎瘻造設が適応となる。長期予後が期待できる場合には尿管皮膚瘻も選択肢となる。また,症状緩和を目的とした経皮的腎瘻や尿管皮膚瘻も考慮される。 C1
CQ38 Stage Ⅳ膀胱癌の転移巣に対する手術療法の適応はあるか? 症例を選べば膀胱癌に対する転移巣摘除は長期生存も得られる可能性がある。
適応としては,病巣が単発で完全切除が可能,病巣が小さい,急速な進行のない緩徐な再発例,化学療法に対し感受性がある例などがあげられる。
C1

Ⅷ.全身化学療法

No. クリニカルクエスチョン 推奨 グレード
総論
CQ39 転移性,再発性膀胱癌に対して,M-VAC 療法とGC 療法はどちらが有用か? 全生存期間をエンドポイントとしたランダム化比較試験において,両者とも治療効果は同等であることが報告された。毒性プロファイルはM-VAC 療法と比べてGC 療法で良好であり,現在GC 療法が1st line 治療となっている。 A
CQ40 新規薬剤による化学療法にはどのようなものがあるのか? Cisplatin,taxan 系抗癌剤(paclitaxel,docetaxel またはlarotaxel),gemcitabine,ifosfamide などを用いた多剤併用化学療法の1st line または2nd line 治療としての臨床試験が行われている。現時点では大規模ランダム化比較試験で明らかにM-VAC またはGC の治療成績を凌駕するものはない。 C1
CQ41 心・肺・腎機能に問題があるときの化学療法は? 標準治療であるGC 療法(gemcitabine とcisplatin)の組み合わせのうち,cisplatin をcarboplatin やタキサン系抗癌剤に変更するか,cisplatin の投与量を分割するか,あるいはPaclitaxel 単剤で治療が実施されているが,それらの効果はGC 療法に比べ劣っている。しかしこれらの検討は少数例での検討であり推奨レベルは低い。 C1
CQ42 再発・転移症例の予後と予後因子は? 化学療法の奏効率と生存率に影響する予後因子として,Performance status(Karnofsky performance status(KPS)<80%)と臓器転移(肺,肝,骨など)をあげる報告が多い。その他の因子としては,ヘモグロビン値,アルカリフォスファターゼ値,転移巣の数などがある。

Ⅸ.放射線療法

No. クリニカルクエスチョン 推奨 グレード
総論
CQ43 膀胱癌の治療における放射線療法の位置づけは? 筋層浸潤性膀胱癌に対する膀胱温存を目的とした根治的放射線療法および骨転移や局所浸潤に伴う痛みや血尿などの症状改善を目的とした対症的放射線療法として行われる。 B
CQ44 Stage Ⅱ,Stage Ⅲの膀胱温存療法を目的とした化学放射線療法の適応,至適線量および分割方法は? 筋層浸潤性膀胱癌のうち,臨床病期がT2 あるいはT3 で,腫瘍数が少なく腫瘍径も小さな症例においては,TURBT,化学療法,放射線療法の3 者併用による膀胱温存が可能である。放射線療法の分割,総線量および照射方法は,40~50Gy まで骨盤リンパ節領域を含め前後左右の4 門で行い,その後に膀胱に限局して60 ~ 70Gy まで治療を行う方法が標準的であるが,膀胱のみの照射も選択肢としてとり得る。分割線量は1.8 または2.0Gy/ 日の通常分割照射法が標準である。 B
CQ45 膀胱温存療法を目的としたStage Ⅱ,Ⅲに対し化学療法を併用した放射線療法は推奨されるか? 放射線単独療法に対して化学放射線療法の治療成績は良好であり,腎機能低下症例や高齢者で化学療法が併用できない症例を除き,化学放射線療法を施行することが勧められる。 A
CQ46 Stage Ⅱ,Stage Ⅲの根治的放射線単独療法の適応,至適線量,線量分割は? 放射線治療単独療法は腎機能低下症例や高齢者で化学療法が行えない症例に対して施行される。1 回線量2Gy,総線量60 ~ 66Gy の通常分割法が標準的であり,T1:60 ~ 80%,T2:30 ~ 60%およびT4:20 ~ 40%の5 年生存率が得られている。 B
CQ47 緩和療法において放射線療法が有効な場合は? 放射線療法は根治療法としてだけでなく,症状緩和を目的とした治療としても有効である。筋層浸潤性膀胱癌における症状緩和には,①膀胱癌の局所進展による痛みや血尿,②骨やリンパ節などの遠隔転移による症状の改善を目的とする場合が考えられるが,放射線療法はいずれの場合にも適応となり効果が期待できる。 B
CQ48 骨転移に対する放射線療法の適応,線量および効果は? 骨転移に対する放射線療法はその原発部位を問わず幅広く行われ,症状緩和効果は高い。1 回照射などの短期照射も行われ,通常分割照射法と疼痛緩和効果に差がないことが確認されている。また,骨親和性のあるRI 製剤を用いた内照射療法も多発性転移においては治療選択の1 つである。 B