診療ガイドライン

Ⅰ.疫学・病理

総論

疫学

1.はじめに

わが国の人口動態を基準とした膀胱癌の年齢調整罹患率(全国推計値。基準人口は1985 年のモデル人口)は,2013 年において6.6(/10 万人/ 年)であり,男女別にみると男性11.5,女性2.6 と男性において約4 倍頻度が高い12)。年齢調整死亡率は,2016 年の集計にて,男女合計で2.1(/10 万人/ 年)で,男女別にみると男性3.7,女性1.0 である。

過去15 年間の推移を粗率でみると罹患率は約1.4 倍,死亡率は2.2 倍に増加しているが,年齢調整罹患率および年齢調整死亡率はほとんど不変であることから,罹患数・死亡数の増加は人口全体の高齢化によるものと考えられる。罹患時の年齢分布としては,95%超が45 歳以上,80%が65 歳以上と高年齢層に発症する。

国際的視点に立って世界人口を基準としたわが国の年齢調整罹患率・死亡率を見てみると,2012 年の罹患率は男女合計で4.9,男性7.7,女性1.8(いずれも/10 万人/ 年)となっている34)。アジア諸国では1.5〜6.6 の範囲で比較的大きなばらつきがあるが,中国・台湾・韓国といった東アジア地域ではおおむね5〜6 となっている。米国では男女合計で11.6 であり,アジア諸国に比べて約2 倍頻度が高い。

死亡率は男女合計で1.4,男性2.4,女性0.7(いずれも/10 万人/ 年)となっており,アジア諸国の0.7〜2.6 の範囲の中間に位置する。死亡率/ 罹患率でみると,アジア諸国の多くが0.3 を超える中,わが国は0.25 程度と比較的低値を示している。

2.人種差・地域差

本ガイドラインで採用されているエビデンスの中には,わが国のデータに基づくものではなく欧米からのデータを基にしたものも多い。それらを正しく解釈し日本人患者を対象としたCQ に答えを与えるためには,膀胱癌の人種差・地域差に関する理解が前提になると考え,本項で採り上げることとした。

(1)人口統計

北米・欧州・西アジアの罹患率は日本に比べ2〜3 倍頻度が高く(男性15〜20,女性3〜4,いずれも/10 万人/ 年で世界人口を基準とした2012 年の年齢調整率),中南米・アフリカ・東南アジアではわが国よりもやや低い傾向(男性2.1〜3.6,女性0.7〜1.4,以下同上)にある45)。同様に死亡率も北米・欧州・西アジアで高い傾向(男性4.0〜8.4,女性3.3〜6.5,以下同上)にある。これらの地域差は一般的に男性においてより顕著で,女性ではその差は小さい。米国内においてはヨーロッパ系人種男性(22.8)における罹患率はアフリカ系人種男性(11.7)のそれに比べて約2 倍高頻度で,死亡率もヨーロッパ系人種男性の方が高い(3.9 対2.8)。しかしこの傾向は女性では認められない。

(2)がん登録データ(レジストリーデータ)

米国において1975 年から2005 年に膀胱癌と診断されSurveillance, Epidemiology, and End Results(SEER)データベースに登録された患者(ヨーロッパ系人種163,973 人,アフリカ系人種7,731 人,ヒスパニック系7,364 人,アジア・太平洋系5,934 人)のデータを基にした解析では,進行した病期で発見される確率がアフリカ系人種(31%)において有意に高く,ヨーロッパ系人種(21%)・ヒスパニック系(24%)アジア・太平洋系(23%)の間には有意差は認められなかった。さらに診断時病期を含めた多変量Cox 比例ハザード解析においてアフリカ系人種の生存率におけるハザード比(hazard ratio:HR)は1.29(95%信頼区間[confidence interval:CI]:1.24〜1.36,対ヨーロッパ系人種)と有意に不良であった。ヒスパニック系(1.03:0.97〜1.10),アジア・太平洋系(0.95:0.89〜1.02)では有意差を認めなかった6)。しかしSEER データベースを用いた別の報告7)では同じアジア・太平洋系の中でも生存率が異なる(日本・中国系はフィリピン・ハワイ系に比べて良好)ことも報告されている。

以上をまとめると膀胱癌の罹患率・死亡率に関しては,日本人は他の東アジア系人種と同様で,ヨーロッパ系人種・アフリカ系人種と比べると低い。診断後の予後はヨーロッパ系人種とほぼ同等で,アフリカ系人種に比べて良好であると考えられる。

3.リスクファクター(環境因子・その他)

喫煙は膀胱癌の最大の危険因子であり,50%までの膀胱癌の原因と推測される8)。メタアナリシスから喫煙者は非喫煙者と比較して2.58 倍の罹患リスクであり,特に現在喫煙している場合は3.47 倍で,以前喫煙していた場合の2.04 倍より高い9)。日本人を対象としたシステマティックレビューからも喫煙者は非喫煙者と比較して2.14 倍の罹患リスクとなる10)。さらに喫煙者は非喫煙者より約6 年早く膀胱癌が発症することが示された11)。1 日の喫煙本数や喫煙年数が増加するほど膀胱癌の罹患リスクは上昇するが,禁煙は罹患リスクを低下させ,10 年間以上の禁煙は罹患リスクを2 倍以下までに低下させる1213)。喫煙によってnitrosoamine やbiphenyl,arylamine などの発癌物質に尿路上皮が暴露されることが膀胱癌発症の原因であり,NAT2 やGSTM1 などの遺伝子多型による発癌物質の解毒機能やDNA 損傷に対する修復機能の違いが罹患率に関与する814)

職業性発癌物質への暴露も重要な危険因子であり,5〜10%の膀胱癌の原因と推測される815)。メタアナリシスからaromatic amine やpolycyclic aromatic hydrocarbon に暴露される仕事の従事者は1.7 倍までの膀胱癌罹患リスクとなる16)。2012 年に国際がん研究機関(International Agency for Research on Cancer:IARC) は新たにortho-toluidine とchloroaniline(MOCA) を発癌物質と認定し, 本邦でもortho-toluidine の暴露に伴う膀胱癌が報告されている17)。職場を含む社会環境の整備により発癌物質への暴露を軽減することで罹患率の低下が期待される。

膀胱癌の発症に影響しうる要因として尿路の慢性炎症があり,ビルハルツ住血吸虫症は中東およびアフリカの広範な地域において扁平上皮癌の原因となっている18)。またヒトパピローマウイルス感染はメタアナリシスからは2.84 倍の膀胱癌罹患リスクとなることが示された19)。その他には,長期間の尿道カテーテル留置20)やシクロフォスファミドの使用21),骨盤内放射線治療による膀胱への被曝22)も膀胱癌の発症要因となりうるので注意が必要である。

4.リスクファクター(遺伝学的因子)

膀胱癌の一度近親者(親子兄弟)での罹患リスクは約1.7 倍であり23〜25),スウェーデンの研究では,尿路上皮癌患者の7%に膀胱癌の家族歴が認められた24)。家族性の膀胱癌は,共通した環境因子の可能性も考えられるが,膀胱癌の発症に関与する遺伝学的因子も明らかになりつつある。次世代シークエンス,Genome–wide association studies(GWAS),メタアナリシスなどから同定された膀胱癌の発症に関与する遺伝子(遺伝子座)としては,他癌腫でも多く認められるMYC(8q24.21)やTERT(5p15.33)に加えて, 化学発癌物質の代謝に関与するGSTM1(1p13.3),NAT2(8p22),CYP1A2(15q24),UGT1A(2q37.1) やDNA 修復に関与するXRCC1,ERCC2,XPC,細胞周期に関与するCCNE1(19q12),遺伝子変異を引き起こすAPOBEC3A(22q13.1),他にもTERC(3q26.2),TP63(3q28),FGFR3(4p16.3),PSCA(8q24.3),LSP1(11p15.5),SLC14A1(18q12.3),MCF2L(13q34)などが主に遺伝子多型で報告されている25〜31)。またGWAS を用いたパスウェイ解析からも前述の遺伝子異常による細胞周期や増殖シグナルの異常が膀胱癌の発症に関与することが示されている28)

リンチ症候群は,DNA 複製時のミスマッチ修復異常によって癌の易罹患性に関与する常染色体優性(顕性)の遺伝性疾患であり,ミスマッチ修復関連遺伝子(MLH1,MSH2,MSH6,PMS2)の異常が原因となる。大腸癌や子宮内膜癌の頻度が高く,腎盂尿管癌はリンチ症候群関連癌として知られるが,膀胱癌との関連も示唆されている。カナダやデンマークのリンチ症候群患者の研究では,特にMSH2 に遺伝子変異を認める場合に膀胱癌罹患リスクが高く,若年で膀胱癌が発症する傾向が認められた32〜34)。膀胱癌でのリンチ症候群の頻度は約1%であるが,既往歴や家族歴,発症年齢からのスクリーニングが重要となる35)

病理

膀胱癌のほとんどは尿路上皮癌であり,非尿路上皮癌としては扁平上皮癌,腺癌,小細胞癌等があげられる36)。2016 年度版WHO 分類に準じて,尿路上皮癌は非浸潤性乳頭型尿路上皮癌,尿路上皮内癌,浸潤性尿路上皮癌の3 つに大別される3637)。非浸潤性乳頭型尿路上皮癌は腫瘍細胞が血管結合織を伴って乳頭状に増殖する病態である。腫瘍の構造および細胞異型の程度により,低異型度と高異型度の2 つに大別される。低悪性度乳頭型尿路上皮癌は,本邦では低異型度に包括される37)。欧州では1973 年度版WHO 分類に基づく3 段階評価方法(G1,G2,G3)も用いられており38),本邦でも併記することが望まれている37)。1973 年度と2016 年度版WHO 分類の相関性であるが,G1 はすべて低異型度に,G2 は低異型度もしくは高異型度に,G3 はすべて高異型度に分類される3739)。尿路上皮内癌は明らかに悪性と診断できる腫瘍細胞が平坦状に増殖する病態である。乳頭状と平坦状の鑑別は膀胱鏡所見が最重要視される。浸潤性尿路上皮癌は間質への浸潤を認める病変であり,筋層非浸潤癌の一部も該当する(pT1 病変がこれに相当する)。平坦状尿路上皮内癌および浸潤性尿路上皮癌はほぼすべて高異型度に分類される。3 段階評価法での明確な取り決めはない。低異型度の約半数は再発するが病期の進展はほとんど生じない(< 5%)。それに対し,高異型度,尿路上皮内癌およびpT1 相当の浸潤性尿路上皮内癌は半数以上が再発し,15〜20%の症例においてさらに病期が進展すると報告されている40)

臨床的には,尿路上皮癌は固有筋層に腫瘍が浸潤していない筋層非浸潤癌と浸潤する筋層浸潤癌に大別される。初発時に診断される尿路上皮癌の約75%は筋層非浸潤癌で,25%が筋層浸潤癌である39)。腫瘍の固有筋層浸潤の有無は経尿道的膀胱腫瘍切除術(trans urethral resection of bladder tumor:TURBT)もしくは膀胱全摘除術標本により判定される。腫瘍筋層浸潤の有無の鑑別は重要であり,TURBT 標本において固有筋層採取の有無の記載は必須である3741)

尿路上皮癌には様々な特殊型がある。主な特殊型として,扁平上皮・腺上皮・栄養膜細胞への分化を伴う,胞巣型,微小乳頭型,リンパ上皮腫瘍型,形質細胞様型,肉腫様型などがあげられる3637)。そのほとんどは浸潤癌,特に病期が進行した状態でみられる傾向が強く,手術標本全体の30%に達する42)。特殊型と予後に関する関係には議論があるが,一部の特殊型では予後および治療にも影響を与える可能性が指摘されており,その存在を明記することが望まれる394344)

近年,尿路上皮癌の分子生物学的分類が提唱され,予後および治療予測に大きな影響を及ぼす可能性が指摘されている303945)。しかしながら,現時点では検索方法が高価である点,分類法が統一されていない点,十分な症例数が検証されていない点などから,特定の表現型を限定することは困難な状況である。分子生物学的分類の有用性については,現時点では今後の発展および推移に注目する必要がある。

尿路上皮癌以外の膀胱癌としては扁平上皮癌,腺癌,小細胞癌等があげられる363746)。尿路上皮癌成分を含まない場合のみ扁平上皮癌および腺癌と診断される。扁平上皮癌は尿路上皮の扁平上皮化生を背景に発生すると考えられている。国外症例ではビルハルツ住血吸虫の合併を高率に認める。腺癌は尿膜管から発生する病変とそれ以外とに分類される。いずれの場合も,大腸癌に類似した組織像を呈することが多く,診断および治療時には大腸癌との鑑別が必須である。小細胞癌は非常に予後不良な組織型で,肺の同名の病態と同様の病理像を呈する。小細胞癌のほとんどはすでに存在する尿路上皮癌等から発生すると考えられており,その多くは尿路上皮癌の経過中に生じる。小細胞癌の診断は予後に与える影響が強いことから,腫瘍の背景および成分量の多寡にかかわらず,その存在を明記することが必須である363741)

なお病理学的病期,尿細胞診については,Ⅱ.診断・総論を参照されたい。

参考文献

1)
国立がん研究センター:統計.がん統計.最新がん統計.Available from:https://ganjoho.jp/reg_stat/index.html, accessed [December 28th, 2018].
2)
国立がん研究センター:統計.報告書・冊子.冊子「がんの統計」.がんの統計’17. Available from:https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/brochure/backnumber/2017_jp.html, accessed [December 28th, 2018].
3)
Nishiyama H:Asia Consensus Statement on NCCN Clinical Practice Guideline for bladder cancer. Jpn J Clin Oncol 48:3-6, 2018
4)
Edited by Bray F, Colombet M, Mery L, et al:Cancer Incidence in Five Continents, Vol. Ⅺ(electronic version). International Agency for Research on Cancer, Lyon, 2017. Available from:http://ci5.iarc.fr, accessed [December 28th, 2018].
5)
Antoni S, Ferlay J, Soerjomataram I, Znaor A, Jemal A and Bray F:Bladder Cancer Incidence and Mortality:A Global Overview and Recent Trends. Eur Urol 71:96-108, 2017
6)
Yee DS, Ishill NM, Lowrance WT, Herr HW and Elkin EB:Ethnic differences in bladder cancer survival. Urology 78:544-549, 2011
7)
Hashibe M, Gao T, Li G, Dalbagni G and Zhang ZF:Comparison of bladder cancer survival among Japanese, Chinese, Filipino, Hawaiian and Caucasian populations in the United States. Asian Pac J Cancer Prev 4:267-273, 2003
8)
Burger M, Catto JW, Dalbagni G, et al:Epidemiology and risk factors of urothelial bladder cancer. Eur Urol 63:234-241, 2013
9)
Cumberbatch MG, Rota M, Catto JW and La Vecchia C:The Role of Tobacco Smoke in Bladder and Kidney Carcinogenesis:A Comparison of Exposures and Meta-analysis of Incidence and Mortality Risks. Eur Urol 70:458-466, 2016
10)
Masaoka H, Matsuo K, Ito H, et al:Cigarette smoking and bladder cancer risk:an evaluation based on a systematic review of epidemiologic evidence in the Japanese population. Jpn J Clin Oncol 46:273-283, 2016
11)
Hinotsu S, Akaza H, Miki T, et al:Bladder cancer develops 6 years earlier in current smokers:analysis of bladder cancer registry data collected by the cancer registration committee of the Japanese Urological Association. Int J Urol 16:64-69, 2009
12)
Freedman ND, Silverman DT, Hollenbeck AR, Schatzkin A and Abnet CC:Association between smoking and risk of bladder cancer among men and women. JAMA 306:737-745, 2011
13)
van Osch FH, Jochems SH, van Schooten FJ, Bryan RT and Zeegers MP:Quantified relations between exposure to tobacco smoking and bladder cancer risk:a meta-analysis of 89 observational studies. Int J Epidemiol 45:857-870, 2016
14)
Cui X, Lu X, Hiura M, Omori H, Miyazaki W and Katoh T:Association of genotypes of carcinogen-metabolizing enzymes and smoking status with bladder cancer in a Japanese population. Environ Health Prev Med 18:136-142, 2013
15)
Rushton L, Bagga S, Bevan R, et al:Occupation and cancer in Britain. Br J Cancer 102:1428-1437, 2010
16)
Cumberbatch MG, Cox A, Teare D and Catto JW:Contemporary Occupational Carcinogen Exposure and Bladder Cancer:A Systematic Review and Meta-analysis. JAMA Oncol 1:1282-1290, 2015
17)
Nakano M, Omae K, Takebayashi T, Tanaka S and Koda S:An epidemic of bladder cancer:ten cases of bladder cancer in male Japanese workers exposed to ortho-toluidine. J Occup Health 60:307-311, 2018
18)
Bedwani R, Renganathan E, El Kwhsky F, et al:Schistosomiasis and the risk of bladder cancer in Alexandria, Egypt. Br J Cancer 77:1186-1189, 1998
19)
Li N, Yang L, Zhang Y, Zhao P, Zheng T and Dai M:Human papillomavirus infection and bladder cancer risk:a meta-analysis. J Infect Dis 204:217-223, 2011
20)
Ho CH, Sung KC, Lim SW, et al:Chronic Indwelling Urinary Catheter Increase the Risk of Bladder Cancer, Even in Patients Without Spinal Cord Injury. Medicine(Baltimore)94:e1736, 2015
21)
Travis LB, Curtis RE, Glimelius B, et al:Bladder and kidney cancer following cyclophosphamide therapy for non-Hodgkin’s lymphoma. J Natl Cancer Inst 87:524-530, 1995
22)
Nieder AM, Porter MP and Soloway MS:Radiation therapy for prostate cancer increases subsequent risk of bladder and rectal cancer:a population based cohort study. J Urol 180:2005-2009;discussion 2009-2010, 2008
23)
Sampson JN, Wheeler WA, Yeager M, et al:Analysis of Heritability and Shared Heritability Based on Genome-Wide Association Studies for Thirteen Cancer Types. J Natl Cancer Inst 107:djv279, 2015
24)
Yu H, Hemminki O, Försti A, Sundquist K and Hemminki K:Familial Urinary Bladder Cancer with Other Cancers. Eur Urol Oncol 1:461-466, 2018
25)
Figueroa JD, Middlebrooks CD, Banday AR, et al:Identification of a novel susceptibility locus at 13q34 and refinement of the 20p12.2 region as a multi-signal locus associated with bladder cancer risk in individuals of European ancestry. Hum Mol Genet 25:1203-1214, 2016
26)
Garcia-Closas M, Ye Y, Rothman N, et al:A genome-wide association study of bladder cancer identifies a new susceptibility locus within SLC14A1, a urea transporter gene on chromosome 18q12.3. Hum Mol Genet 20:4282-4289, 2011
27)
Matsuda K, Takahashi A, Middlebrooks CD, et al:Genome-wide association study identified SNP on 15q24 associated with bladder cancer risk in Japanese population. Hum Mol Genet 24:1177-1184, 2015
28)
Chen M, Rothman N, Ye Y, et al:Pathway analysis of bladder cancer genome-wide association study identifies novel pathways involved in bladder cancer development. Genes Cancer 7:229-239, 2016
29)
de Maturana EL, Rava M, Anumudu C, Sáez O, Alonso D and Malats N:Bladder Cancer Genetic Susceptibility. A Systematic Review. Bladder Cancer 4:215-226, 2018
30)
Robertson AG, Kim J, Al-Ahmadie H, et al:Comprehensive Molecular Characterization of Muscle-Invasive Bladder Cancer. Cell 171:540-556. e525, 2017
31)
Middlebrooks CD, Banday AR, Matsuda K, et al:Association of germline variants in the APOBEC3 region with cancer risk and enrichment with APOBEC-signature mutations in tumors. Nat Genet 48:1330-1338, 2016
32)
Huang D, Matin SF, Lawrentschuk N and Roupret M:Systematic Review:An Update on the Spectrum of Urological Malignancies in Lynch Syndrome. Bladder Cancer 4:261-268, 2018
33)
Skeldon SC, Semotiuk K, Aronson M, et al:Patients with Lynch syndrome mismatch repair gene mutations are at higher risk for not only upper tract urothelial cancer but also bladder cancer. Eur Urol 63:379-385, 2013
34)
Joost P, Therkildsen C, Dominguez-Valentin M, Jönsson M and Nilbert M:Urinary Tract Cancer in Lynch Syndrome; Increased Risk in Carriers of MSH2 Mutations. Urology 86:1212-1217, 2015
35)
Baretti M and Le DT:DNA mismatch repair in cancer. Pharmacol Ther 189:45-62, 2018
36)
Moch H, Humphrey PA, Ulbright TM, Reuter VE:WHO Classification of Tumours of the Urinary System and Male Genital Organs. IARC, Lyon, 2016
37)
日本泌尿器科学会,日本病理学会,日本医学放射線学会:腎盂・尿管・膀胱癌取扱い規約 第1 版.金原出版,東京,2011.
38)
Mostofi FK, Sobin LH and Torloni H:Histological typing of urinary bladder tumours. World Health Organization, Geneva, 1973
39)
Kamat AM, Hahn NM, Efstathiou JA, et al:Bladder cancer. Lancet 388:2796-2810, 2016
40)
Soukup V, Capoun O, Cohen D, et al:Prognostic Performance and Reproducibility of the 1973 and 2004/2016 World Health Organization Grading Classification Systems in Non-muscle-invasive Bladder Cancer:A European Association of Urology Non-muscle Invasive Bladder Cancer Guidelines Panel Systematic Review. Eur Urol 72:801-813, 2017
41)
Amin MB, Smith SC, Reuter VE, et al:Update for the practicing pathologist:The International Consultation On Urologic Disease-European association of urology consultation on bladder cancer. Mod Pathol 28:612-630, 2015
42)
Moschini M, Dell’Oglio P, Luciano R, et al:Incidence and effect of variant histology on oncological outcomes in patients with bladder cancer treated with radical cystectomy. Urol Oncol 35:335-341, 2017
43)
Guo CC, Al-Ahmadie HA, Flaig TW and Kamat AM:Contribution of bladder cancer pathology assessment in planning clinical trials. Urol Oncol 1:30001-30002, 2018
44)
Xylinas E, Rink M, Robinson BD, et al:Impact of histological variants on oncological outcomes of patients with urothelial carcinoma of the bladder treated with radical cystectomy. Eur J Cancer 49:1889-1897, 2013
45)
Hedegaard J, Lamy P, Nordentoft I, et al:Comprehensive Transcriptional Analysis of Early-Stage Urothelial Carcinoma. Cancer Cell 30:27-42, 2016
46)
Willis D and Kamat AM:Nonurothelial bladder cancer and rare variant histologies. Hematol Oncol Clin North Am 29:237-252, 2015

Ⅱ.診断

総論

1.初期診断

膀胱癌の初期診断では症状が重要である。膀胱癌の発見の契機となる主な症状としては,血尿(肉眼的血尿,顕微鏡的血尿)と膀胱刺激症状(頻尿,排尿時痛,残尿感等)である。特に肉眼的血尿は高頻度にみられる症状であり,膀胱癌患者(40 歳以上)の64%に認められたと報告されている12)。また肉眼的血尿での膀胱癌の陽性診断的中率は15 歳以上の女性が3.4%であるのに対し,70 歳以上の高度喫煙者では12.5%に上昇すると報告されている1)。一方,顕微鏡的血尿は膀胱癌患者の6.4%にみられている1)。また血尿の患者が3 年以内に尿路上皮癌に罹患する確率は男性が7.4%,女性が3.4%と報告され3),膀胱癌の検出率は肉眼的血尿で17%,顕微鏡的血尿では4%と報告されている4)

膀胱癌の早期診断には,無症状の段階で一般検診を行うことが想定されるが,罹患率が高くないこと,検診方法が確立していないこと,偽陽性により不必要な検査の可能性があること,検診で予後を改善するというエビデンスが得られていないことからまだ推奨されるに至っていない56)。一方で,ハイリスクの患者,すなわち喫煙歴のある高齢者や職業上発癌物質に暴露された既往のある人等については年1 回の検尿や尿細胞診の検査が推奨されている7)

腫瘍マーカーとしては,これまで尿検査による2 種類の尿中腫瘍マーカー(NMP22,BTA テスト)が保険適応となっており,診断の補助として用いられている。これらの感度と特異度はNMP22 が58〜69%,77〜88%,BTA が64〜65%,74〜77%と報告されている8)。また2019 年1 月より膀胱癌既往患者の尿中細胞の3 番,7 番および17 番染色体の異数倍数体,ならびに9p21 遺伝子座の欠失を検出するDNA FISH 検査(ウロビジョン)も再発の診断補助として保険承認された。ウロビジョンの感度は69〜87%,特異度は89〜96%と報告されている910)。その他の分子マーカーについては,尿中,血液中のマイクロRNA やcell-free DNA の変異解析等の報告があるがまだ実用化されていない10)

尿細胞診は膀胱癌の診断および治療後の監視に用いられる。尿路上皮癌において,尿細胞診の特異度は非常に高いが感度は低い。特に生命予後の良好な低異型度尿路上皮癌に対する感度は非常に低い。このことから,2016 年に発表された国際標準の尿細胞報告様式であるパリシステムでは,生命予後に関係する高異型度尿路上皮癌の検出を中心にした診断基準を設定している11)。パリシステムによる診断の対象は中リスク以上の非筋層浸潤性膀胱癌が対象であり,その主眼は膀胱鏡を行うべきかどうかの判断根拠を提示することである。上述のウロビジョンは尿細胞診の診断補助として,本邦では膀胱上皮内癌(carcinoma in situ:CIS)患者の再発が疑われる症例に対してのみ使用が可能である。尿細胞診と比較して,ウロビジョンは感度が向上するも特異度が低下することが報告されており,診断時には尿細胞診の併用が必要である12)

膀胱鏡検査は膀胱癌の診断と治療方針決定に必須であるが通常の白色光源による膀胱内観察で微小病変や平坦病変が10〜30%見逃されていると推測される。これらの病変をより的確に把握できる腫瘍可視化技術として蛍光膀胱鏡を用いた光力学診断(photodynamic diagnosis:PDD)や狭帯域光観察(narrow band imaging:NBI)がある。PDD では,光感受性物質である5-アミノレブリン酸(5-aminolevulinic acid:5-ALA)やヘキシルアミノレブリン酸(hexylaminolevulinic acid:HAL)を投与後,蛍光膀胱鏡で観察すると腫瘍細胞が赤色蛍光発光を示す。PDD により白色光源では視認困難であった微小病変や平坦病変の検出が可能となりPDD による追加腫瘍発見率は10〜30%であり1314),特にCIS 検出率については著明な改善を認める14)。これまで実施された多くのランダム化比較試験(randomized controlled trial:RCT)やメタアナリシスにより,PDD によって検出感度は93%で,CIS 検出率は38.3%改善すると報告されている1314)。しかし特異度の改善は認められず65%にとどまる13〜15)。この原因としては,慢性炎症等による影響や接線効果による偽陽性所見が指摘されている。一方,NBI は,光の波長を青色(415nm)と緑色(540nm)の2 つのバンドに狭帯域化することで,おのおのの光の伝播深度の違いを利用して血管と組織のコントラストを強調させて微細な構造を増強させるイメージング技術である。多数のランダム比較試験を集計したメタアナリシスにより,検出感度94.3%,追加腫瘍発見率18.6%と白色光源に比べ改善すると報告されている1617)

2019 年のEAU ガイドラインにおいて,乳頭状病変を認めない尿細胞診陽性例や高リスク非乳頭状病変例では可能ならPDD を用いた生検が強く推奨されている。一方,NBI を用いた膀胱生検は弱い推奨となっている18)。本邦での使用においては,PDD は“経尿道的膀胱腫瘍切除時における筋層非浸潤性膀胱癌の可視化”,NBI は“上皮内癌の患者に対し,治療方針の決定を目的に実施する”と保険上規定されている。

一方,超音波検査は外来で膀胱内の隆起性病変を描出できる簡便な手法として用いられる。しかし,その診断精度には限界があり,腫瘍径が5mm 以下や恥骨干渉を受ける膀胱前壁下部の腫瘍,さらにCIS のような平坦な腫瘍の診断は困難である。近年,3 次元超音波検査や微小気泡造影剤を用いた超音波検査も試行されているが,T stage 診断は困難である19)

2.病期診断

膀胱癌の診断が確定すると,治療方針決定のために病期診断を決定する必要がある。これには原発巣の膀胱壁内深達度の評価,リンパ節転移の有無の評価,遠隔転移の有無の評価が必要である。病期分類としては,UICC/AJCC の TNM 分類が用いられるが,これまで2009 年版TNM 分類(第7 版)が使用されてきたが20),2016 年にTNM 分類(第8 版),2018 年にアップデート版へ改訂が行われた(表121)。主な変更点は,StageⅢおよびⅣがⅢA,ⅢB,ⅣA,ⅣB のように細分類されたことである。すなわち,従来のT3-4aN0M0 とT1-4aN1M0 がⅢA となり,T1-4aN2-3M0 がⅢB となった。また,M 分類に関して,M0 とM1a(領域外の遠隔リンパ節転移)がⅣA に,M1b(他臓器転移)がⅣB に新たに細分類された。

表1 TNM 分類(第7 版)とTNM 分類(第8 版)の比較
表1 TNM 分類(第7 版)とTNM 分類(第8 版)の比較

従来,CT やMRI を中心にT stage 診断が行われてきた。CT の正診率は肉眼的な膀胱壁外浸潤でMRI と同等とされる。しかし,筋層と腫瘍を明瞭に区別できないので筋層内浸潤に関してはCT による鑑別は困難である。CT はその撮像範囲の広さから,主にリンパ節転移,遠隔転移の診断に用いられる。近年,膀胱癌の筋層浸潤のリスクを評価する目的で,multiparametric MRI を用いて膀胱癌の大きさ,局在,腫瘍数,形態をもとに,読影方式や報告書の統一化が提唱された22)。すなわちVesical Imaging-Reporting And Data System(VI-RADS) である。VI-RADS は,T2 強調画像においてfirst pass 画像,拡散強調画像,dynamic contrast enhanced(DCE)画像の3 種類の画像をもとに筋層浸潤のリスクを5 段階評価によりスコア化するものである。この評価法の導入により,特に膀胱筋層非浸潤癌の治療方針決定に有益な情報が提供されることが期待される。

PET は小病変でも代謝亢進組織があると検出できることから,CT では捉えきれない癌組織の検出に有用と考えられた。しかし膀胱においては,尿中に18F-FDG が排泄されるため,膀胱癌のT stage 診断には不向きとされている。そこで18F-FDG 以外のtracer として,尿中に排泄されない11C-choline や11C-methionine が検討されたがCT と比較して優位性を示すに至っていない19)。Goodfellow らは233 名の膀胱癌患者でFDG-PET による癌検出をCT と比較したところ,骨盤外病変の検出率(感度)および特異度は,それぞれPET が54%と97%,CT が41%と98%であり,ややPET が優れていたが,CT で検出できなかった病変をPET が診断できたのは3%のみでPET の費用を考えると膀胱癌の診断には単独使用は推奨されないと報告している23)。ただし,PET とCT を組み合わせるとリンパ節転移検出率は,CT 単独が45%であったのに対し69%に上昇することから,一部の選択された患者においてのPET-CTの利用は推奨できると報告している。

上述のように画像診断の進歩は著しいが,最終的な病期診断のためには,TURBT による腫瘍切除による壁内深達度の検討が必須であり筋層を含めた腫瘍切除が必要である。仮に筋層が含まれていない場合は病期診断の過小評価の危険性のみならず残存腫瘍,早期再発のリスクが高まることが報告されている24)。初回のTURBT でT1 腫瘍が認められた場合や筋層が含まれていない場合は2nd TUR が必要となる18)。また,CIS を合併する場合はランダム生検が必要となる。2nd TUR の内容はⅢ.筋層非浸潤性膀胱癌の治療・総論と重複するのでそちらを参照されたい。

参考文献

1)
Price SJ, Shephard EA, Stapley SA, Barraclough K and Hamilton WT:Non-visible versus visible haematuria and bladder cancer risk. Brit J Gen Prac 64:e584-e589, 2014
2)
Schmidt-Hansen M, Berendse S and Hamilton W:The association between symptoms and bladder or renal tract cancer in primary care. Brit J Gen Prac 65:e769-e775, 2015
3)
Jones R, Latinovic R, Charlton J and Gulliford MC:Alarm symptoms in early diagnosis of cancer in primary care:cohort study using General Practice Research Database. BMJ 334:1040, 2007
4)
Edwards TJ, Dickinson AJ, Natale S, Gosling J and McGrath JS:A prospective analysis of the diagnostic yield resulting from the attendance of 4020 patients at a protocol-driven haematuria clinic. BJU Int 97:301-305, 2006
5)
Moyer VA:Screening for bladder cancer:U.S.Preventive Services Task Force Recommendation Statement. Ann Intern Med 155:246-251, 2011
6)
Bangma CH, Loeb S, Busstra M, et al:Outcomes of a bladder cancer screening program using home hematuria testing and molecular markers. Eur Urol 64:41-47, 2013
7)
Kamat AM, Hegarty PK, Gee JR, et al:ICUD-EAU international consultation on bladder cancer 2012:screening, diagnosis, and molecular markers. Eur Urol 63:4-15, 2013
8)
Chou R, Gore JL, Buckley D, et al:Urinary biomarkers for diagnosis of bladder cancer. Ann Intern Med 163:922-931, 2015
9)
Hajdinjak T:UroVysion FISH test for detecting urothelial cancers:meta-analysis of diagnostic accuracy and comparison with urinary cytology testing. Urol Oncol 26:646-651, 2006
10)
KojimaT, Kawai K, Miyazaki J, et al:Biomarkers for precision medicine in bladder cancer. Int J Clin Oncol 22:207-213, 2017
11)
Rosenthal DL, Wojcik EM and Kurtycz DFI:The Paris System for Reporting Urinary Cytology. Springer, New York, 2016
12)
Dimashkieh H, Wolff DJ, Smith TM, Houser PM, Nietert PJ and Yang J:Evaluation of urovysion and cytology for bladder cancer detection:a study of 1835 paired urine samples with clinical and histologic correlation. Cancer Cytopathol 121:591-597, 2013
13)
Inoue K, Fukuhara H, Shimamoto T, et al:Comparison between intravesical and oral administration of 5-aminolevulinic acid in the clinical benefit of photodynamic diagnosis for nonmuscle invasive bladder cancer. Cancer 118:1062-1074, 2012
14)
Denzinger S, Burger M, Walter B, et al:Clinically relevant reduction in risk of recurrence of superficial bladder cancer using 5-aminolevulinic acid-induced fluorescence diagnosis:8-year results of prospective randomized study. Urology 69:675–679, 2007
15)
Mowatt G, N’Dow J, Vale L, et al:Photodynamic diagnosis of bladder cancer compared with white light cystoscopy:systematic review and meta-analysis. Int J Technol Assess Health Care 27:3–10, 2011
16)
Zheng C, Lv Y, Zhong Q, Wang R and Jiang Q:Narrow band imaging diagnosis of bladder cancer:systematic review and meta-analysis. BJU Int 110:E680-687, 2012
17)
Xiong Y, Li J, Ma S, et al:A meta-analysis of narrow band imaging for the diagnosis and therapeutic outcome of non-muscle invasive bladder cancer. PLoS One 12:e0170819, 2017
18)
Babjuk M, Burger M, Compérat E, et al:non-muscle invasive bladder cancer. 5. Diagnosis. 5.14. Summary of evidence and guidelines for transurethral resection of the bladder, biopsies and pathology report(https://uroweb.org/guideline/non-muscle-invasive-bladder-cancer/#5). EAU Guideline, 2019
19)
McKibben MJ and Woods ME:Preoperative imaging for staging bladder cancer. Curr Urol Rep 16:22, 2015
20)
UICC 日本委員会TNM 委員会:TNM 悪性腫瘍の分類(第7 版).金原出版,東京,pp. 247-250,2010
21)
Abdel-Rahman O:Validation of the eighth AJCC new substages for bladder cancer among different staging contexts. Clin Genitourin Cancer 15:e1095-e1106, 2017
22)
Panebianco V, Narumi Y, Altun E, et al:Multiparametric magnetic resonance imaging for bladder cancer:Development of VI-RADS(vesical imaging-reporting and data system). Eur Urol 74:294-306, 2018
23)
Goodfellow H, Viney Z, Hughes P, et al:Role of fluorodeoxyglucose positron emission tomography(FDG PET)-computed tomography(CT)in the staging of bladder cancer. BJU Int 114:389-395, 2014
24)
Mariappan P, Zachou A and Grigor KM:Detrusor muscle in the first, apparently complete transurethral resection of bladder tumour specimen is a surrogate marker of resection quality, predicts risk of early recurrence, and is dependent on operator experience. Eur Urol 57:843-849, 2010

CQ1
膀胱癌の診断に腫瘍可視化技術(photodynamic diagnosis:PDD,narrow band imaging:NBI)は推奨されるか?

エビデンスの確実性A
膀胱癌の診断において,腫瘍可視化技術を用いることは,癌検出感度が改善されることから推奨される(PDD:推奨の強さ1)
エビデンスの確実性B
膀胱癌の診断において,腫瘍可視化技術を用いることは,癌検出感度が改善されることから推奨される(NBI:推奨の強さ1)

解 説

膀胱鏡検査により膀胱癌の形態的特徴を正確に把握することは,以降の治療方針決定に必須である。しかし通常の白色光源による膀胱内観察で微小病変や平坦病変が10〜30%見逃されていると推測される。これらの病変を的確に把握できる腫瘍可視化技術は,正確な膀胱癌診断に必須である。このようなイメージング技術として蛍光膀胱鏡を用いたPDD やNBI がある。

PDD では,光感受性物質である5-ALA やHAL を投与し,蛍光膀胱鏡で観察すると腫瘍細胞が赤色蛍光発光を示す。PDD により白色光源では視認困難であった微小病変や平坦病変の検出が可能となり,検出感度の改善を認める1〜7)。PDD による追加腫瘍発見率は10〜30%であり,特にCIS 検出率については著明な改善を認める48〜16)。これまで実施された多くのRCT やメタアナリシスにより,PDD によって検出感度は93%,CIS 検出率は38.3%改善すると報告されている1〜13)。しかし特異度の改善は認められず65%にとどまる12467)。この原因として,慢性炎症等による影響や接線効果による偽陽性所見などが報告されている。本邦で実施された国内第Ⅱ/Ⅲ相試験における有害事象は,グレード4 以上の重篤なものはなく,グレード3 以下の一過性の肝関連酵素の上昇,嘔吐等が報告されている27)

PDD は検出感度の改善にとどまらず経尿道的膀胱腫瘍切除後の無再発生存率が向上する治療的効果も報告されており,詳細は治療の項に譲る。

NBI は,狭帯域化した光を利用したイメージング技術であり,光感受性物質の投与を必要としない。光の波長を青色(415nm)と緑色(540nm)の2 つのバンドに狭帯域化することで,おのおのの光の伝播深度の違いを利用して血管と組織のコントラストを強調させて微細な構造を増強させることが可能である。多数のランダム比較試験を集計したメタアナリシスにより,診断精度の改善を認めることが検証されてきた。NBI のよる検出感度94.3%,追加腫瘍発見率18.6%であり,白色光源に対する優位性が報告されている1718)

2019 年のEAU ガイドライン(web 版)において,乳頭状病変を認めない尿細胞診陽性例でPDD を用いた選択的な生検が推奨されている(エビデンスレベル;1a/ 推奨度;強い推奨)。NBI を用いた膀胱生検は,白色光源に比べ検出感度の改善を認めると記載されている(エビデンスレベル;3b/ 推奨度;弱い推奨)19)。本邦での使用においては,PDD は“経尿道的膀胱腫瘍切除時における筋層非浸潤性膀胱癌の可視化”,NBI は“上皮内癌の患者に対し,治療方針の決定を目的に実施する”と保険上規定されている。

参考文献

1)
Inoue K, Fukuhara H, Shimamoto T, et al:Comparison between intravesical and oral administration of 5-aminolevulinic acid in the clinical benefit of photodynamic diagnosis for nonmuscle invasive bladder cancer. Cancer 118:1062-1074, 2012
2)
Inoue K, Anai S, Fujimoto K, et al:Oral 5-aminolevulinic acid mediated photodynamic diagnosis using fluorescence cystoscopy for non-muscle-invasive bladder cancer:a randomized, double-blind, multicentre phase Ⅱ / Ⅲ study. Photodiagn Photodyn Ther 12:193–200, 2015
3)
Hungerhuber E, Stepp H, Kriegmair M, et al:Seven years’ experience with 5-aminolevulinic acid in detection of transitional cell carcinoma of the bladder. Urology 69:260–264, 2007
4)
Denzinger S, Burger M, Walter B, et al:Clinically relevant reduction in risk of recurrence of superficial bladder cancer using 5-aminolevulinic acid-induced fluorescence diagnosis:8-year results of prospective randomized study. Urology 69:675–679, 2007
5)
Karl A, Tritschler S, Stanislaus P, et al:Positive urine cytology but negative white-light cystoscopy:an indication for fluorescence cystoscopy? BJU Int 103:484–487, 2009
6)
Mowatt G, N’Dow J, Vale L, et al:Aberdeen Technology Assessment Review(TAR) Group. Photodynamic diagnosis of bladder cancer compared with white light cystoscopy:systematic review and meta-analysis. Int J Technol Assess Health Care 27:3–10, 2011
7)
Nakai Y, Inoue K, Tsuzuki T, et al:Oral 5-aminolevulinic acid-mediated photodynamic diagnosis using fluorescence cystoscopy for non-muscle-invasive bladder cancer:A multicenter phase Ⅲ study. Int J Urol 8:723-729, 2018
8)
Denzinger S, Wieland WF, Otto W, Filbeck T, Knuechel R and Burger M:Does photodynamic transurethral resection of bladder tumour improve the outcome of initial T1 high-grade bladder cancer? A long-term follow-up of a randomized study. BJU Int 101:566–569, 2008
9)
Geavlete B, Jecu M, Multescu R, Georgescu D and Geavlete P:HAL bluelight cystoscopy in high-risk nonmuscle-invasive bladder cancer—re-TURBT recurrence rates in a prospective, randomized study. Urology 76:664–669, 2010
10)
Geavlete B, Multescu R, Georgescu D, Jecu M, Stanescu F and Geavlete P:Treatment changes and long-term recurrence rates after hexaminolevulinate(HAL)fluorescence cystoscopy:does it really make a difference in patients with non-muscleinvasive bladder cancer(NMIBC)? BJU Int 109:549-556, 2012
11)
Grossman HB, Gomella L, Fradet Y, et al:A phase Ⅲ , multicenter comparison of hexaminolevulinate fluorescence cystoscopy and white light cystoscopy for the detection of superficial papillary lesions in patients with bladder cancer. J Urol 178:62–67, 2007
12)
Stenzl A, Burger M, Fradet Y, et al:Hexaminolevulinate guided fluorescence cystoscopy reduces recurrence in patients with nonmuscle invasive bladder cancer. J Urol 184:1907–1913, 2010
13)
Shen P, Yang J, Wei W, et al:Effects of fluorescent light-guided transurethral resection on non–muscle-invasive bladder cancer:a systematic review and meta-analysis. BJU Int 110:E209–215, 2012
14)
O’Brien TS, Ray E, Chatterton K, Khan MS, Chandra A and Thomas K:Prospective randomized trial of hexylaminolevulinate photodynamic-assisted transurethral resection of bladder tumor(TURBT)plus single-shot intravesical mitomycin C vs conventional white-light TURBT plus mitomycinC in newly presenting non-muscle-invasive. BJU Int 112:1096-1104, 2013
15)
Fradet Y, Grossman HB, Gomella L, et al:A comparison of hexaminolevulinate fluorescence cystoscopy and white light cystoscopy for the detection of carcinoma in situ in patients with bladder cancer:a phase Ⅲ , multicenter study. J Urol 178:68–73, 2007
16)
Schumacher MC, Holmang S, Davidsson T, Friedrich B, Pedersen J and Wiklund NP:Transurethral resection of non–muscle-invasive bladder transitional cell cancers with or without 5-aminolevulinic acid under visible and fluorescent light:results of a prospective, randomised, multicentre study. Eur Urol 57:293–299, 2010
17)
Zheng C, Lv Y, Zhong Q, Wang R and Jiang Q:Narrow band imaging diagnosis of bladder cancer:systematic review and meta-analysis. BJU Int 110:E680-687, 2012
18)
Xiong Y, Li J, Ma S, et al:A meta-analysis of narrow band imaging for the diagnosis and therapeutic outcome of non-muscle invasive bladder cancer. PLoS One 12:e0170819, 2017
19)
Babjuk M, Burger M, Compérat E, et al:EAU Guideline 2019. Non-muscle-invasive Bladder Cancer. 5. Diagnosis. 5.11. New methods of visualization, 5.14. Summary of evidence and guidelines for transurethral resection of the bladder, biopsies and pathology report.(https://uroweb.org/guideline/non-muscle-invasive-bladder-cancer/#5

CQ2
膀胱癌の局所病期診断にマルチパラメトリックMRI は推奨されるか?

エビデンスの確実性A
膀胱癌の筋層浸潤が疑われる場合は,拡散強調画像を含むマルチパラメトリック(mp)-MRI や超高磁場(3T)MRI 等の活用により,筋層浸潤の診断精度が向上することから推奨される(推奨の強さ1)

解 説

膀胱癌の局所病期診断に関する画像診断方法の検討は,MRI が多くを占めるが,CT の正診率は肉眼的な膀胱壁外浸潤についてはMRI と同等とされる。しかし,筋層内浸潤に関しては筋層と腫瘍を明瞭に区別できないため,CT による鑑別は困難である。CT はその撮像範囲の広さから,主にリンパ節転移,遠隔転移の診断に用いられる。

膀胱癌の筋層浸潤のMRI 診断において,拡散強調画像による腫瘍茎の有無,造影ダイナミックMRI による粘膜下層の濃染の有無により筋層浸潤の過剰診断が低下し,特異度の向上に貢献している1〜5)。拡散強調画像による深達度診断は,TUR 生検に代用できないが6),TURBT 後の再発腫瘍については有用である78)

MRI の筋層浸潤に関しては,泌尿器科と放射線科から合計3 本のメタアナリシスが報告されている9〜11)。いずれも過去の多数の文献からシステマティックレビューの一定の基準を満たし,厳選された論文による詳細な検討であり,エビデンスレベルもA ないしB と高い信頼性を持つ論文である。これらの論文をまとめたサマリーを表1 に提示する。感度は87〜92% , 特異度は87〜88%でいずれのメタアナリシスも筋層浸潤の特異度は感度より低いが,エビデンスレベルの高い2 論文910)から,拡散強調画像と超高磁場(3T)MRI の出現により偽陽性が減少し,特異度が上昇しmp-MRI の深達度診断における信頼性が向上する可能性が示されている。すなわち拡散強調画像を活用したmp-MRI により,従来のT2 強調画像による筋層浸潤の過剰診断が防げることを示している。

表1 メタアナリシス3 文献のサマリー
表1 メタアナリシス3 文献のサマリー

9) 10) 11)

参考文献

1)
Rabie E, Faeghi F, Izadpanahi MH and Dayani MA:Role of Dynamic Contrast-Enhanced Magnetic Resonance Imaging in Staging of Bladder Cancer. J Clin Diagn Res 10:TC01-05, 2016
2)
Wang HJ, Pui MH, Guan J, et al:Comparison of early submucosal enhancement and tumor stalk in staging bladder urothelial carcinoma. AJR Am J Roentgenol 207:797-803, 2016
3)
Gupta N, Sureka B, Kumar MM, Malik A, Bhushan TB and Mohanty NK:Comparison of dynamic contras-enhanced and DWI MRI in staging and grading od carcinoma bladder with histopathologic correlation. Urol Ann 7:199-204, 2015
4)
Wang Y, Li Z, Meng X, et al:Nonmuscle-invasive and Muscle-invasive Urinary Bladder Cancer Image Quality and Clinical Value of Reduced Field-of-view Versus Conventional Single-shot Echo-planar Imaging DWI. Medicine(Baltimore)95:e2951, 2016
5)
Razik A, Das CJ, Sharma S, et al:Diagnostic performance of diffusion-weighted MR imaging at 3.0T in predicting muscle invasion in urinary bladder cancer:utility of evaluating the morphology of the reactive tumor stalk. Abdom Radiol(NY)43:2431-2441, 2018
6)
Al Johi RS, Seifeldein GS, Moeen AM, et al:Diffusion weighted magnetic resonance imaging in bladder cancer, is it time to replace biopsy? Cent European J Urol 71:31-37, 2018
7)
Rosenkrantz AB, Ego-Osuala IO, Khalef V, Deng FM, Taneja SS and Huang WC:Investigation of Multisequence Magnetic Resonance Imaging for Detection of Recurrent Tumor After Transurethral Resection for Bladder Cancer. J Comput Assist Tomogr 40:201-205, 2016
8)
van der Pol CB, Shinagare AB, Tirumani SH, Preston MA, Vangel MG and Silverman SG:Bladder cancer local staging:multiparametric MRI performance following transurethral resection. Abdom Radiol(NY)43:2412-2423, 2018
9)
Woo S, Suh CH, Kim SY, Cho JY and Kim SH:Diagnostic performance of MRI for prediction of muscle-invasiveness of bladder cancer:A systematic review and meta-analysis. Eur J Radiol 95:46-55, 2017
10)
Huang L, Kong Q, Liu Z, Wang J, Kang Z and Zhu Y:The Diagnostic Value of MR Imaging in Differentiating T Staging of Bladder Cancer:A Meta-Analysis. Radiology 286:502-511, 2018
11)
Gandhi N, Krishna S, Booth CM, et al:Diagnostic accuracy of magnetic resonance imaging for tumour staging of bladder cancer:systematic review and meta-analysis. BJU Int 122:744-753, 2018

Ⅲ.筋層非浸潤性膀胱癌(NMIBC)の治療

総論

1.はじめに

筋層非浸潤性膀胱癌(non-muscle invasive bladder cancer:NMIBC)は未治療膀胱癌全体の約70%を占める。NMIBC 患者のほとんどは膀胱温存を目指してTURBT による初期治療を受ける。さらに得られた病理組織診断をもとに術後治療が考慮され,TURBT による完全切除が困難な症例や再発・進展リスクの高い症例に対しては,抗腫瘍効果あるいは再発予防効果を期待して抗癌剤やbacillus Calmette-Guérin(BCG)の膀胱内注入療法が選択される。

NMIBC の臨床的特徴は,TURBT による治療後も高率かつ頻回に膀胱内再発がみられることであり,これは残存腫瘍や新たに発生する腫瘍が原因となっており,引き続き一部の症例では筋層浸潤や所属リンパ節転移などの進展をみることになる。したがって,NMIBC の診療上の最重要課題は,TURBT による残存腫瘍を最小限にすることと(膀胱癌診療ガイドライン2015 年版;CQ7:推奨グレードA),膀胱内注入療法によって再発・進展を抑制することである。現在汎用されているいくつかのリスク分類も再発・進展のリスクを予測するためのもので,同時にリスク分類に応じた治療指針を示す内容となっている。

2.TURBT

過去の多数の文献を調査すると初回TURBT 単独治療後の再発率は30〜70%と報告によって大きな幅がある。これはTURBT という内視鏡手術に内在する不確実性とともに,施設間においてTURBT の手技に格差が存在することが推測される。特に初回TURBT でT1 high grade と診断された高リスク群NMIBC では,筋層や周辺粘膜に腫瘍が残存している可能性が高く,治療的意義と診断的意義から2nd TURの実施が推奨されてきた(膀胱癌診療ガイドライン2015 年版;CQ9:推奨グレードA)。文献的に2nd TUR における腫瘍残存率は27〜78%,筋層浸潤と再診断される率も0〜28%と施設間格差は大きい。Anderson ら1)は初回TURBT の質を向上させることが課題としている。本来の2nd TUR とは,初回TURBT において筋層採取が確認されているが,2〜6 週間後に再度TUR 瘢痕部をより広く・深く切除し,残存腫瘍の有無を確認することとDivrik らによって定義されている2)。ただし,その後の臨床研究では,2nd TUR の施行時期を初回TURBT の4〜8 週間後としている報告が多い。したがって,初回TURBT で不完全切除になった腫瘍に対し再切除を行うrepeat TUR や,初回TURBT で筋層が採取されず,再度筋層浸潤の確認のために行うrestaging TUR とは区別されるが,本ガイドラインでは「腎孟・尿管・膀胱癌取扱い規約(第1 版)」3)に従って包括的に2nd TUR という表現で統一する。2nd TURの意義については再発や進展を抑制することが報告されているので,該当するCQ3 をご覧いただきたい。

一方,治療成績の向上のためには見落としやすい微小な乳頭型腫瘍やCIS など平坦型腫瘍,さらには隆起性腫瘍周囲に広がり不完全切除の原因となりやすい病変を確実に検出し,切除することが求められる。TURBT 時の術中補助診断として承認された5-ALA と蛍光膀胱鏡システムによるPDD やNBI は有用で,日本にもすでに導入されており,詳しくはCQ4 をご覧いただきたい。PDD やNBI の使用により癌検出率は向上し45),PDD では特にCIS の検出が増加し,膀胱内再発も減少する4)。CIS の検出が向上すると,よりリスクの高い病理診断が得られ,BCG 膀胱内注入療法や即時膀胱全摘除術など術後補助療法が適切に選択されることになる。

3.NMIBC の病理学的深達度と異型度分類

「腎孟・尿管・膀胱癌取扱い規約(第1 版)」3)では,NMIBC の組織学的深達度をTis(CIS),Ta(乳頭状非浸潤癌)ならびにT1(粘膜上皮下結合組織に浸潤)の3 つのT カテゴリに分類している。一方,リンパ節転移や遠隔転移を伴うNMIBC の症例は稀である。組織学的異型度については,以前はG1(細胞異型度,構造異型度とも1),G2(細胞異型度,構造異型度の少なくとも一方が2),G3(細胞異型度,構造異型度の少なくとも一方が3)の3 段階分類であったが,これは1973 年版のWHO の異型度分類による。2004 年にはInternational Society of Urological Pathology(ISUP)の勧告を受けて,乳頭状病変のG1 を低悪性度乳頭状尿路上皮新生物(papillary urothelial neoplasm of low malignant potential:PUNLMP)とlow grade に分割した。G2 もlow grade とhigh grade に分割され,G3 はすべてhigh grade となった6)。以上のWHO/ISUP 分類は長年の両者の協議の成果であり,日本でも「腎孟・尿管・膀胱癌取扱い規約(第1 版)」においてlow grade とhigh grade の2 段階分類を採用し,Grade 分類も併記することになった。しかし,過去の重要な研究論文は旧分類で記載されており,最近の研究でもPUNLMP とlow grade が明確に区別できていないことが病理診断領域で指摘されている。病理診断上,乳頭腫を含めて癌でないと診断された場合は治療選択や経過観察のあり方にも影響が出るため,再発リスクの低い腫瘍でも異型度の表現には慎重な議論が必要である。

4.NMIBC の再発・進展に関するリスク因子とリスク分類

各種のガイドラインではNMIBC の再発と進展のリスク分類が提唱され,治療指針との関連から重要である。再発と進展のリスクに関係する因子としては,病理学的深達度と異型度(G1-3)ならびに併発CIS の有無に加えて,臨床的因子である再発頻度(初発・再発と再発間隔),腫瘍数,腫瘍サイズなどがある。近年,これらの因子に加えてBCG 膀胱内注入療法の治療歴やBCG 最終投与から再発までの期間も重要なリスク因子と考えられるようになってきている。

EAU ガイドライン7)では,European Organization for Research and Treatment of Cancer(EORTC)が行った抗癌薬膀胱内注入療法が中心となった7 つの臨床試験を基に,上記6 項目(病理学的深達度,異型度(G1-3),併発CIS の有無,再発頻度(初発・再発と再発間隔),腫瘍数,腫瘍サイズ)の各因子別に再発スコアと進展スコアがリスクテーブルに定められており,その合計スコアによって再発率と進展率を提示している(表1)。また,このスコア値によりTURBT 後1〜5 年の再発率と進展率の推定値を自動計算できるシステムもある89)。このスコアリングシステムを基に,低リスク群を,①初発,②単発,③ Ta,④ G1(low grade),⑤ 3cm 以下,⑥併発CIS なしの①〜⑥のすべての因子を満たすもの,高リスク群を,① T1,② G3(high grade),③ CIS(併発CIS を含む),④「多発・再発・3cm を超える・Ta/G1G2」の①〜④のいずれかに該当するもの,中リスク群を低リスク群・高リスク群以外のものと定義している。一方,BCG 膀胱内注入療法が標準治療となるに従い,再発・進展に関する因子は変化してきた。Spanish Urological Oncology Group(Club Urológico Español de Tratamiento Oncológico:CUETO)は,BCG 膀胱内注入療法を実施した4 つの臨床試験データをもとにCUETO スコアリングシステムを作成した。この結果,BCG 膀胱内注入療法後の再発,進展リスクには,性別,年齢,初発/ 再発,腫瘍数, 病理学的深達度, 併発CIS の有無, 異型度(G1-3) が関係していた(表210)

表1 EAU ガイドラインのNMIBC のリスクテーブル7)
表1 EAU ガイドラインのNMIBC のリスクテーブル
表2 CUETOリスク分類のスコアリングシステム10)
表2 CUETOリスク分類のスコアリングシステム

また,EAU ガイドラインにおけるリスク分類別治療指針11)も時代により変化しており,中リスク群のうち「pTa/Low grade・単発・再発・年1 回以下の再発頻度のすべての因子をみたす腫瘍」については,低リスク群と同様に抗癌剤即時単回注入のみでの経過観察が許容されている。また,高リスク群の中でも,特に膀胱全摘除術を考慮すべき症例群として超高リスク群なる分類が提唱されてきた。超高リスク群の定義は,①広範囲な膀胱CIS を併発するT1 high grade 腫瘍,②前立腺部尿道CIS を併発するT1 high grade 腫瘍,③多発かつ/ または3cm 以上かつ/ または再発性であるT1 high grade 腫瘍,④微小乳頭型などの尿路上皮癌亜型(UC variant histology)を有するT1 high grade 腫瘍,⑤脈管浸潤(lymphovascular invasion:LVI)を有するT1 high grade 腫瘍,⑥ BCG unresponsive(BCG 不応性)腫瘍のいずれかに該当するものとしている。治療指針との関係は,リスク分類のみではなく,BCG 膀胱内注入療法の治療歴の有無別にフローチャート形式で示すようになっている。

一方,National Comprehensive Cancer Network(NCCN)のガイドライン12)は病理学的因子のみで,Ta/low grade 群,Ta/high grade 群,T1/low grade 群,T1/high grade 群,Tis 群の5 群に分類し,初発時と再発時に分けてフローチャート形式で治療指針を提示している。またフォローアップスケジュールは,AUA ガイドラインが独自に提唱するリスク分類にしたがって規定している。このように国際的にNMIBC のリスク分類が多様化するなか,International Bladder Cancer Group(IBCG)は2011 年にNMIBC に対する種々のガイドラインを比較し,国際的なコンセンサスとして独自のリスク分類を提唱している。このリスク分類では,低リスク群を初発のTa/low grade,高リスク群をT1,High grade,CIS のいずれか,中リスク群を低リスク群・高リスク群以外と規定している。2019 年現在実施されている高リスク群を対象とした国際共同臨床治験では,このIBCG リスク分類に基づいて高リスク群を定義しているものが増えてきている。

本邦のガイドラインにおけるNMIBC のリスク分類は,初版・第二版においてはEAU ガイドラインのリスク分類を採用してきた。今回の改訂においても海外のガイドラインとの整合性を重視しているが,上述のような国際的・歴史的変化を考慮し,低リスク群は初発,単発,3cm 未満,Ta,low grade,併発CIS なしのすべてを満たすもの,高リスク群はT1,High grade,CIS(併発CIS を含む)のいずれかを満たすもの,そして低・高リスク以外を中リスク群とした(表3)。今回の改訂に伴い,中リスク群の対象が幅広くなるため,「pTa/Low grade・単発・再発・年1 回以下の再発頻度のすべての因子を満たす腫瘍」のように中リスク群の中には低リスク群と同様の治療指針でよいものや,中リスク群ではあるが「再発・多発・Ta・Low grade・3cm 以上のすべてを満たすもの」のようなEORTC リスク因子を複数個有する場合には,高リスク群に準じてBCG 膀胱内注入療法が推奨される症例もあることにも留意していただきたい。また,膀胱全摘除術を考慮すべき超高リスク群としては,T1 high grade 腫瘍のうち,①膀胱CIS または前立腺部尿道CIS を併発する場合,②多発,再発または3cm 以上の場合,③ UC variant histology またはLVI を有する場合のいずれかに該当するもの,およびBCG unresponsive NMIBC/CIS のいずれかに該当するものとした。今回の改訂では上記のリスク分類に基づいてCQ を記載するが,海外文献が多く引用されている以上,日本人の実情と若干の差違が生じることもある1314)。将来的には日本人のデータに基づいたNMIBC の新たなリスク分類を提唱すべきと考えるが,そのためには日本人における多数のRCT の実施も必要であり,病理学的異型度表記の統一などとともに今後の課題とする。

表3 本ガイドラインにおけるNMIBC のリスク分類
表3 本ガイドラインにおけるNMIBC のリスク分類

5.NMIBC の治療指針

NMIBC に対してTURBT 後の再発・進展リスクを下げるために,抗癌剤やBCG の膀胱内注入療法がリスク分類に応じて推奨されている。抗癌剤膀胱内注入療法には,TURBT 術後の抗癌剤術後単回注入と,抗癌剤術後単回注入を行った後に複数回注入する抗癌剤維持注入療法とがある。薬剤については米国ではマイトマイシンC(MMC)が頻用されるのに対し,欧州ではアントラサイクリン系抗癌剤の膀胱内注入の研究が多く,日本ではMMC やアントラサイクリン系抗癌剤が多く用いられており,特に中リスク群に対しては抗癌剤維持注入が推奨されてきた(膀胱癌診療ガイドライン2015 年版;CQ13:推奨グレードA)。しかし,抗癌剤膀胱内注入については,至適な注入薬剤,注入量(濃度)と注入回数や期間,維持注入の要否などのプロトコールに十分なコンセンサスが得られていない。一方,BCG については,世界的にはTice 株,コンノート株,東京(日本)株,ロシア株等の種々の異なった株が使用されている。本邦では,東京(日本)株が使用可能であるが,過去にはコンノート株(現在,製造中止)も使用された歴史がある1516)。BCG の株間の薬効の差異については一定の見解は得られていない。BCG の投与方法としては,TURBT 後に6〜8 回投与するBCG 導入療法と,その後1〜3 年間継続投与するBCG 維持療法とがある。一般に,NMIBC の膀胱内注入療法薬として抗癌剤とBCG を比較すると,BCG の方が治療効果は強い。しかし,BCG 導入療法でも副作用の発現は高率であり,1/2〜1/6 の低用量BCG など投与法が検討されてきた11)(膀胱癌診療ガイドライン2015 年版;CQ14:推奨グレードB)。また,BCG 維持療法は有害事象による完遂率の低さも問題となっており,維持療法の至適投与スケジュールや至適用量などが,導入療法以上にCQ で議論となるところである。

リスク分類別治療指針については,RCT やシステマティックレビューによると低リスク群の再発リスクを下げるため,低リスク群では抗癌剤即時単回注入が推奨されている1718)。中リスク群には抗癌剤あるいはBCG 膀胱内注入の維持療法が推奨される。注入期間が1 年程度になると再発予防効果を認めるが,定型的な維持注入のプロトコールはない1920)。なお,中リスクには「pTa/Low grade,単発,再発,年1 回以下の再発頻度」など,TURBT 後の単回注入のみで許容される群もある。高リスク群にはBCG 膀胱内注入の維持療法が推奨されるが,高リスク群の中でも,超高リスク群に該当する場合には,膀胱全摘術を考慮する必要がある。治療オプションについては後述のCQ78910 を参照いただきたい。

BCG 膀胱内注入療法が標準治療として普及するに伴い治療成績も飛躍的に向上してきた。しかし,BCG 膀胱内注入療法を施行した後に膀胱内再発を認める場合(BCG failure)には,膀胱全摘除術(膀胱癌診療ガイドライン2015 年版;CQ16:推奨グレードB)や2 回目のBCG 膀胱内注入療法(膀胱癌診療ガイドライン2015 年版;CQ17:推奨グレードC1)など,その後の治療に苦慮することが多い。BCG failure には様々な病態が混在するため,Nieder らはT1 症例を対象としてBCG failure をBCG refractory,BCG resistant,BCG relapsing,BCG intolerant の4 つに分類することを提唱した21)。しかし,BCG 膀胱内注入療法には導入療法や維持療法があり,導入療法後の再発と維持療法後の再発では治療指針が異なる。このため,AUA,IBCG,FDA が中心となりBCG failure に対する臨床試験の指針が作成され,その一環としてBCG unresponsive(BCG 不応性)という「十分なBCG 膀胱内注入治療」が無効と考えられる疾患群が提唱された2223)。BCG unresponsive は,BCG refractory と早期のBCG relapsing(BCG 最終投与から12 ヵ月以内の再発)を総称したものと定義されている。BCG failure に関する各用語の本ガイドラインでの定義を表4 に記載するので,CQ910 を参照していただきたい。最近は,この膀胱全摘除術が標準治療とされるBCG unresponsive を対象とした国際的多施設共同臨床治験も行われてきており,今後NMIBC の治療のあり方が変化する可能性がある。

表4 本ガイドラインにおけるBCG-failure に関する用語の定義
表4 本ガイドラインにおけるBCG-failure に関する用語の定義

6.CIS の治療

前述のように,本邦を含めEAU,AUA の各ガイドラインにおいてprimary CIS および併発CIS はともに高リスク群に分類され,治療としてBCG 膀胱内注入療法あるいは膀胱全摘除術が推奨されているが,特にBCG 膀胱内注入療法はその高い奏効率より初期治療として一般的となっている。残念ながらCIS のみを対象としたRCT はほとんどないが,CIS を対象に含むRCT のメタアナリシスではBCG 膀胱内注入療法が抗癌剤注入療法と比較して有意に高い完全奏効(complete response:CR)率を示し,進展リスクを低減することが示されている2425)。BCG 膀胱内注入療法における推奨される用量,スケジュールはCQ78 を参照していただきたい。一方,CIS に対するBCG 膀胱内注入療法は治療的注入であり,他のNMIBC に対する予防的注入とは分けて考える必要がある。すなわち,CIS に対する治療の場合,膀胱生検により治療の奏効を確認する必要があり,腫瘍の残存を認めた場合は次の戦略を考慮する必要がある。どの時点で膀胱生検を行い,どのような治療選択があるかはCQ1213 を参照していただきたい。また,膀胱内にCIS を認める場合,前立腺部尿道にもCIS を認めることがあるが,その場合の治療選択についてはCQ11 に記載した。

BCG 膀胱内注入後にCR を得ても,その後の再発の有無を確認するため経過観察が必要である。通常,膀胱鏡検査,尿細胞診などが用いられるが,最近になりfluorescence in situ hybridization(FISH)法を用いたウロビジョン® が膀胱鏡検査にて明らかな腫瘍を認めない症例において有用であることが示され2627),本邦においてもCIS と診断された症例で経尿道的手術後2 年に2 回に限り算定可能となっている。ただし,尿細胞診と同時には算定できないので注意が必要である。

7.おわりに

海外のガイドラインが推奨する治療指針と本ガイドラインが推奨する治療指針に大きな相違はない。しかしながら,日本人の疾患特性や診療体制による検証が十分できているとは言い難く,あくまでもそのエビデンスの多くは海外データによるものである。日本人のデータによる今後の検討は必要である。

参考文献

1)
Anderson C, Weber R, Patel D, et al:A 10-item checklist improves reporting of critical procedural elements during transurethral resection of bladder tumor. J Urol 196:1014-1020, 2016
2)
Divrik RT, Sahin AF, Yildirim U, Altok M and Zorlu F:Impact of routine second transurethral resection on the long-term outcome of patients with newly diagnosed pT1 urothelial carcinoma with respect to recurrence, progression rate,and disease-specific survival:a prospective randomized clinical trial. Eur Urol 58:185-190, 2010
3)
日本泌尿器科学会,日本病理学会,日本医学放射線学会編:泌尿器科・病理・放射線科腎孟・尿管・膀胱癌取扱い規約(第1 版).金原出版,東京,2011
4)
Kausch I, Sommerauer M, Montorsi F, et al:Photodynamic diagnosis in non-muscle-invasive bladder cancer:a systematic review and cumulative analysis of prospective studies. Eur Urol 57:595-606, 2010
5)
Naito S, Algaba F, Babjuk M, et al:The Clinical Research Office of the Endourological Society(CROES)multicentre randomised trial of narrow band imaging-assisted transurethral resection of bladder tumour(TURBT)versus conventional white light imaging-assisted TURBT in primary non-muscle-invasive bladder cancer patients:trial protocol and 1-year results. Eur Urol 70:506-515, 2016
6)
Epstein JI, Amin MB, Reuter VR, and Mostofi FK: The World Health Organization/International Society of Urological Pathology consensus classification of urothelial(transitional cell)neoplasms of the urinary bladder. Bladder Consensus Conference Committee. Am J Surg Pathol 22:1435-1448, 1998
7)
https://uroweb.org/guideline/non-muscle-invasive-bladder-cancer/
8)
http://www.eortc.be/tools/bladdercalculator/
9)
Sylvester RJ, Van der Maijden APM, Oosterlinck W, et al:Predicting Recurrence and Progression in individual patients with stage Ta T1 bladder cancer using EORTC risk tables :a combined analysis of 2596 patients from seven EORTC trials. Eur Urol 49:466-477, 2006
10)
Fernandez-Gomez J, Madero R, Solsona E, et al:Predicting nonmuscle invasive bladder cancer recurrence and progression in patients treated with bacillus Calmette-Guerin:the CUETO scoring model. J Urol 182:2195-2203, 2009
11)
Oddens J, Brausi M, Sylvester R, et al:Final results of an EORTC-GU cancers group randomized study of maintenance bacillus Calmette-Guérin in intermediate- and high-risk Ta, T1 papillary carcinoma of the urinary bladder:one-third dose versus full dose and 1 year versus 3 years of maintenance. Eur Urol 63:462-472, 2013
12)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30181416
(日本語版www2.tri-kobe.org/nccn/guideline/index.html
13)
Hinotsu S, Akaza H, Naito S, et al:Maintenance therapy with bacillus Calmette-Guérin Connaught strain clearly prolongs recurrence-free survival following transurethral resection of bladder tumour for non-muscle-invasive bladder cancer. BJU Int 108:187-195, 2011
14)
Nakai Y, Anai S, Tanaka N, et al:Insignificant role of bacillus Calmette-Guérin maintenance therapy after complete transurethral resection of bladder tumor for intermediate- and highrisk non-muscle-invasive bladder cancer:Results from a randomized trial. Int J Urol 23:854-860, 2016
15)
Akaza H, Koiso K, Ozono S, et al:A clinical study of PMCJ-9(Bacillus Callmette-Guérin Connaught strain)treatment of superficial bladder cancer and carcinoma in situ of the bladder. Jpn J Clin Oncol 33:382-390, 2003
16)
Akaza H, Hinotsu S, Aso Y, Kakizoe T and Koiso K:Bacillus Calmette-Guérin treatment of existing papillary bladder cancer and carcinoma in situ of the bladder. four-year results. The Bladder Cancer BCG Study Group. Cancer 75:552-559, 1995
17)
Sylvester RJ, Oosterlinck W, Holmang S, et al:Systematic review and individual patient data meta-analysis of randomized trials comparing a single immediate instillation of chemotherapy after transurethral resection with transurethral resection alone in patients with stage pTa-pT1 urothelial carcinoma of the bladder:which patients benefit from the instillation? Eur Urol 69:231-244, 2016
18)
Abern MR, Owusu RA, Anderson MR, Rampersaud EN and Inman BA:Perioperative intravesical chemotherapy in non-muscle-invasive bladder cancer:a systematic review and meta-analysis. J Natl Compr Canc Netw 11:477-484, 2013
19)
Quan Y, Jeong CW, Kwak C, Kim HH, Kim HS and Ku JH:Dose, duration and strain of bacillus Calmette-Guerin in the treatment of nonmuscle invasive bladder cancer:meta-analysis of randomized clinical trials. Medicine(Baltimore)96:e8300, 2017
20)
Zeng S, Yu X, Ma C, et al:Low-dose versus standard dose of bacillus Calmette-Guerin in the treatment of nonmuscle invasive bladder cancer:a systematic review and meta-analysis. Medicine(Baltimore)94:e2176, 2015
21)
Nieder AM, Brausi M, Lamm D, et al:Management of stage T1 tumors of the bladder:International Consensus Panel. Urology 66(6 Suppl 1):108-125, 2005
22)
Li R, Tabayoyong WB, Guo CC, et al:Prognostic implication of the United States Food and Drug Administration-defined BCG-unresponsive disease. Eur Urol 75:8-10, 2019
23)
Duplisea JJ, Mokkapati S, Plote D, et al:The development of interferon-based gene therapy for BCG unresponsive bladder cancer:from bench to bedside. World J Urol:2018(Epub ahead of print)
24)
Sylvester RJ, van der Meijden AP, Witjes JA and Kurth K:Bacillus calmette-guerin versus chemotherapy for the intravesical treatment of patients with carcinoma in situ of the bladder:a meta-analysis of the published results of randomized clinical trials. J Urol 174:86-91, 2005
25)
Sylvester RJ, van der MEIJDEN AP and Lamm DL:Intravesical bacillus Calmette-Guerin reduces the risk of progression in patients with superficial bladder cancer:a meta-analysis of the published results of randomized clinical trials. J Urol 168:1964-1970, 2002
26)
Lotan Y, Bensalah K, Ruddell T, Shariat SF, Sagalowsky AI and Ashfaq R:Prospective evaluation of the clinical usefulness of reflex fluorescence in situ hybridization assay in patients with atypical cytology for the detection of urothelial carcinoma of the bladder. J Urol 179:2164-2169, 2008
27)
Schlomer BJ, Ho R, Sagalowsky A, Ashfaq R and Lotan Y:Prospective validation of the clinical usefulness of reflex fluorescence in situ hybridization assay in patients with atypical cytology for the detection of urothelial carcinoma of the bladder. J Urol 183:62-67, 2010

CQ3
筋層非浸潤性膀胱癌(NMIBC)に対して2nd TUR は推奨されるか?

エビデンスの確実性C
T1 high grade や初回TURBT で筋層が採取されていないTa high grade の場合,2nd TUR を行うことが推奨される(推奨の強さ1)
エビデンスの確実性C
筋層が採取されているTa high grade に対しても,2nd TUR は予後を改善させる可能性があるので,考慮することが推奨される(推奨の強さ2)

解 説

2nd TUR の目的は,1)潜在する残存腫瘍の切除,2)アンダーステージングの発見,3)BCG 膀胱内注入療法の効果改善や予後の改善である。また,初回TURBT で筋層が採取されてない場合も2nd TUR が必要とされる。最近のシステマティックレビューで,残存腫瘍はTa だと17〜67%,T1 であれば20〜71%に認められ,残存腫瘍の36〜86%は初回TUR 部位に認めている。また,T2 以上の筋層浸潤も0〜32%に発見された1)。再発率はTa だと2nd TUR をすることで58%から16%に低下しているが,T1 では報告によって幅があり,2nd TUR を行っても有意差のなかったものもある。しかし,T1 high grade の2nd TUR に関して唯一行われたRCT の結果では,再発率,進展率,癌特異生存率ともに2nd TUR 群が有意に改善している2)

2,451 例のBCG 膀胱内注入療法がなされたT1 high grade のコホート研究では,初回TURBT に筋層が含まれていない場合,2nd TUR を行った方が,再発率,進展率,癌特異生存率,全生存率が良好であったと報告された3)。一方,T1 で膀胱全摘除術を行った279 例の検討で,48%は全摘標本に筋層浸潤があり,2nd TUR を行った症例のみでも46.7%に筋層浸潤を認めたとの報告がある4)

2nd TUR の時期は,初回TUR 後2〜8 週がほとんどであるが,6 週間を超えると予後に影響を与えたという報告もある56)。現在進行中のJapan Clinical Oncology Group(JCOG)臨床試験では3〜8 週間で行うことに定めている7)。また,2nd TUR の方法については,初回TUR の周辺とさらに深部を切除することが一般的である7)

NBI や5-ALA を使用したTURBT の報告があるが,2nd TUR への応用はまだない89)。また,2nd TUR の有害事象は初回TURBT と同じで,危険性が増すことはない。

参考文献

1)
Cumberbatch MGK, Foerster B, Catto JWF, et al:Repeat transurethral resection in non-muscle-invasive bladder cancer:a systematic review. Eur Urol 73:925-933, 2018
2)
Divrik RT, Sahin AF, Yildirim U, Altok M and Zorlu F:Impact of routine second transurethral resection on the long-term outcome of patients with newly diagnosed pT1 urothelial carcinoma with respect to recurrence, progression rate, and disease-specific survival:a prospective randomised clinical trial. Eur Urol 58:185-190, 2010
3)
Gontero P, Sylvester R, Pisano F, et al:The impact of re-transurethral resection on clinical outcomes in a large multicentre cohort of patients with T1 high-grade/Grade 3 bladder cancer treated with bacille Calmette-Guerin. BJU Int 118:44-52, 2016
4)
Ark JT, Keegan KA, Barocas DA, et al:Incidence and predictors of understaging in patients with clinical T1 urothelial carcinoma undergoing radical cystectomy. BJU Int 113:894-899, 2014
5)
Klaassen Z, Kamat AM, Kassouf W, et al:Treatment strategy for newly diagnosed T1 high-grade bladder urothelial carcinoma:new insights and updated recommendations. Eur Urol 74:597-608, 2018
6)
Baltaci S, Bozlu M, Yildirim A, et al:Significance of the interval between first and second transurethral resection on recurrence and progression rates in patients with high-risk non-muscle-invasive bladder cancer treated with maintenance intravesical Bacillus Calmette-Guerin. BJU Int 116:721-726, 2015
7)
Kunieda F, Kitamura H, Niwakawa M, et al:Watchful waiting versus intravesical BCG therapy for high-grade pT1 bladder cancer with pT0 histology after second transurethral resection:Japan Clinical Oncology Group Study JCOG1019. Jpn J Clin Oncol 42:1094-1098, 2012
8)
Schumacher MC, Holmang S, Davidsson T, Friedrich B, Pedersen J and Wiklund NP:Transurethral resection of non-muscle-invasive bladder transitional cell cancers with or without 5-aminolevulinic Acid under visible and fluorescent light:results of a prospective, randomised, multicentre study. Eur Urol 57:293-299, 2010
9)
Naito S, Algaba F, Babjuk M, et al:The Clinical Research Office of the Endourological Society(CROES)multicentre randomised trial of Narrow Band Imaging-assisted transurethral resection of bladder tumour(TURBT)versus conventional white light imaging-assisted TURBT in primary non-muscle-invasive bladder cancer patients:trial protocol and 1-year results. Eur Urol 70:506-515, 2016

CQ4
筋層非浸潤性膀胱癌(NMIBC)の治療の際にPDD やNBI は推奨されるか?

エビデンスの確実性A
PDD は膀胱再発率の低下につながることから推奨される(推奨の強さ1)
エビデンスの確実性B
NBI は癌検出率を改善させるが,膀胱再発率の低下につながるかは未確定である(推奨の強さ2)

解 説

TURBT 時の膀胱鏡による注意深い観察は必須であるが,従来の白色光下の観察(white-light imaging:WLI)では微小な腫瘍やCIS などの平坦型腫瘍,さらには隆起型腫瘍に付随する平坦病変の広がりの同定が困難である。WLI では,小径の腫瘍や平坦型腫瘍のうち10〜20%が見落とされているとの推計がある12)。治療成績の向上のためにはこれらを効率的に検出・切除することが重要であり,TURBT 時補助診断技術として蛍光膀胱鏡を用いたPDD やNBI といった方法が開発されている。

PDD は,5-ALA(経口・膀注ともに可能)やHAL(膀注のみ可能)という蛍光前駆物質をTURBT 術前に投与した後に,腫瘍細胞選択的に蓄積するプロトポルフィリンⅨを標的とした蛍光膀胱鏡を用いて観察し,赤色蛍光を示す病変を検出するものであり,診断精度,特にCIS の検出率を著明に向上させた134)。診断精度にとどまらず,PDD 補助下TURBT(PDD-TURBT)による無再発率の低下はこれまで多くの前向きRCT とそれらを蓄積したメタアナリシスにより検証されてきた125)。また,Geavlete らの報告ではPDD 補助診断に伴う追加病変の検出によりEORTC の再発および進展リスクがアップグレードし,無治療から抗癌剤注入療法やBCG 膀胱内注入療法へ,または抗癌剤注入療法からBCG 膀胱内注入療法へと,術後補助療法が変化している症例があったとしている6)。PDD-TURBT は,確実な病変の切除だけでなくその後の正確なリスク分類と適切な術後補助治療の選択を可能とし,再発率の低下に間接的に寄与していることも推察される。本邦で承認されている5-ALA の20mg/kg 経口投与における有害事象として,グレード4 以上は認めなかったもののグレード3 以下の肝関連酵素上昇,低血圧,蕁麻疹などが報告されている3)

一方,NBI は血中のヘモグロビンに吸収されやすい415nm(青)と540nm(緑)の2 種の波長の光を照射することで,血管による微細模様や色調によって癌粘膜と正常粘膜の違いを強調表示し病変を検出するものである。PDD と異なり蛍光前駆体物質を前投与する必要がなく,蛍光が消退するphotobleaching 現象も問題とならないため,手元のスイッチのみで目的部位を何度も繰り返して観察できる。臨床試験の結果を集積したメタアナリシスによると,従来のWLI で80〜85%程度であった癌検出感度を95%まで改善した7〜9)。多施設共同ランダム化試験において,TURBT 単独とNBI 補助下TURBT の術後12 ヵ月の治療成績を比較している10)。全症例の解析ではNBI 補助の有用性が示されなかった(27.1%vs 25.4%,P=0.585)が,低リスクNMIBC(Ta low grade かつ腫瘍径< 30cm かつCIS なし)を対象としたサブ解析においては無再発率の低下が認められた(27.3% vs 5.6%,P=0.002)。

2019 EAU ガイドライン11)では,膀胱鏡で明らかな病変を認めない尿細胞診陽性の症例や非乳頭状腫瘍のような高リスク症例において,ランダム生検にかわりPDD 補助下ターゲット生検を推奨している(推奨グレード:B)。また,同ガイドラインでは,NBI の使用は癌検出率を改善すると明記されている。一方,NBI 併用TURBT の再発率の低下についての評価は未だ十分ではないものの,低リスクNMIBC に限ると,3 ヵ月と12 ヵ月時点の再発率に改善がみられたことに言及している10)

参考文献

1)
Kausch I, Sommerauer M, Montorsi F, et al:Photodynamic diagnosis in non-muscle-invasive bladder cancer:a systematic review and cumulative analysis of prospective studies. Eur Urol 57:595-606, 2010
2)
Burger M, Grossman HB, Droller M, et al:Photodynamic Diagnosis of Non-muscle-invasive Bladder Cancer with Hexaminolevulinate Cystoscopy:A Meta-analysis of Detection and Recurrence. Based on Raw Data. Eur Urol 64:846-854, 2013
3)
Nakai Y, Inoue K, Tsuzuki T, et al:Oral 5-aminolevulinic acid-mediated photodynamic diagnosis using fluorescence cystoscopy for non-muscle-invasive bladder cancer:A multicenter phase Ⅲ study. Int J Urol 25:723-729, 2018
4)
Inoue K, Fukuhara H, Shimamoto T, et al:Comparison between intravesical and oral administration of 5-aminolevulinic acid in the clinical benefit of photodynamic diagnosis for nonmuscle invasive bladder cancer. Cancer 118:1062-1074, 2012
5)
Mowatt G, N’Dow J, Vale L, et al:Photodynamic diagnosis of bladder cancer compared with white light cystoscopy:Systematic review and meta-analysis. Int J Technol Assess Health Care 27:3-10, 2011
6)
Geavlete B, Multescu R, Georgescu D, Jecu M, Stanescu F and Geavlete P:Treatment changes and long-term recurrence rates after hexaminolevulinate(HAL)fluorescence cystoscopy:does it really make a difference in patients with non-muscle-invasive bladder cancer(NMIBC)? BJU Int 109:549-556, 2012
7)
Zheng C, Lv Y, Zhong Q, Wang R and Jiang Q:Narrow band imaging diagnosis of bladder cancer:systematic review and meta-analysis. BJU Int 110(11 Pt B):E680-687, 2012
8)
Xiong Y, Li J, Ma S, et al:A meta-analysis of narrow band imaging for the diagnosis and therapeutic outcome of non-muscle invasive bladder cancer. PLoS One 12:e0170819, 2017
9)
Lee JY, Cho KS, Kang DH, et al:A network meta-analysis of therapeutic outcomes after new image technology-assisted transurethral resection for non-muscle invasive bladder cancer:5-aminolaevulinic acid fluorescence vs hexylaminolevulinate fluorescence vs narrow band imaging. BMC Cancer 15:566, 2015
10)
Naito S, Algaba F, Babjuk M et al:The Clinical Research Office of the Endourological Society(CROES)Multicentre Randomised Trial of Narrow Band Imaging-Assisted Transurethral Resection of Bladder Tumour(TURBT)Versus Conventional White Light Imaging-Assisted TURBT in Primary Non-Muscle-invasive Bladder Cancer Patients:Trial Protocol and 1-year Results. Eur Urol 70:506-515, 2016
11)
EAU Oncology Guidelines. https://uroweb.org/individual-guidelines/oncology-guidelines/

CQ5
低リスク筋層非浸潤性膀胱癌(NMIBC)に対して抗癌剤即時単回注入は推奨されるか?

エビデンスの確実性A
低リスクNMIBC に対して抗癌剤即時単回注入を行うことが推奨される(推奨の強さ1)

解 説

Ta およびT1 のNMIBC はTUR で切除可能であるが,再発や進展を起こすことが知られており,術後補助療法が考慮される。最近行われた2,278 例のメタアナリシスでも,抗癌剤単回膀胱内注入は再発リスクを35%低下させた1)。しかし,EORTC の再発スコアが5 以上あるいは1 年間に2 回以上の再発の既往がある症例には単回注入の効果はない1)。使用する薬剤は,MMC,エピルビシン,ピラルビシンのどれも効果があるが,薬剤間を比較した試験はない。ピラルビシンに関しては進展率を低下させた報告もある2)。一方,MMC の単回注入と生理食塩水の持続灌流を比較したRCT があり,再発率に差はなかった3)

抗癌剤単回注入は通常TUR 後24 時間以内に行われる。術後24 時間以内と2 週後に行う単回注入のRCT で術後24 時間以内の方が再発率は低かった4)。また,24 時間以内の注入を手術当日と翌日に分けて検討した試験では,両群間に差はなく,24 時間以内なら有効であることが示された5)。一方で,5-ALA を用いてTUR を行いドキソルビシンの単回注入を比較したRCT では,5-ALA を用いた方が再発率や進展率を低下させたが,術後単回注入の有無は再発率に影響しなかったとの報告もある6)。術後早期単回注入の有害事象はほとんどないが,膀胱外溢流による有害事象報告はあり,安全性には注意すべきである5)

参考文献

1)
Sylvester RJ, Oosterlinck W, Holmang S, et al:Systematic review and individual patient data meta-analysis of randomized trials comparing a single immediate instillation of chemotherapy after transurethral resection with transurethral resection alone in patients with stage pTa-pT1 urothelial carcinoma of the bladder:which patients benefit from the instillation? Eur Urol 69:231-244, 2016
2)
Kang M, Jeong CW, Kwak C, Kim HH and Ku JH:Single, immediate postoperative instillation of chemotherapy in non-muscle invasive bladder cancer:a systematic review and network meta-analysis of randomized clinical trials using different drugs. Oncotarget 7:45479-45488, 2016
3)
Onishi T, Sugino Y, Shibahara T, Masui S, Yabana T and Sasaki T:Randomized controlled study of the efficacy and safety of continuous saline bladder irrigation after transurethral resection for the treatment of non-muscle-invasive bladder cancer. BJU Int 119:276-282, 2017
4)
Bosschieter J, Nieuwenhuijzen JA, van Ginkel T, et al:Value of an immediate intravesical instillation of mitomycin C in patients with non-muscle-invasive bladder cancer:a prospective multicentre randomized study in 2243 patients. Eur Urol 73:226-232, 2018
5)
Bosschieter J, van Moorselaar RJA, Vis AN, et al:The effect of timing of an immediate instillation of mitomycin C after transurethral resection in 941 patients with non-muscle-invasive bladder cancer. BJU Int 122:571-575, 2018
6)
Rolevich AI, Zhegalik AG, Mokhort AA, et al:Results of a prospective randomized study assessing the efficacy of fluorescent cystoscopy-assisted transurethral resection and single instillation of doxorubicin in patients with non-muscle-invasive bladder cancer. World J Urol 35:745-752, 2017

CQ6
中リスク筋層非浸潤性膀胱癌(NMIBC)に対して抗癌剤単回注入療法後の維持注入は,単回注入単独と比べて推奨されるか?

エビデンスの確実性A
中リスクNMIBC に対しては,抗癌剤維持療法を追加することが推奨される(推奨の強さ1)

解 説

中リスク群において抗癌剤術後単回注入後に追加の維持療法(注:BCG 維持療法のことではなく,TURBT 直後の単回注入後に抗癌剤を複数回注入すること)を行うことで再発率を低下させる。メタアナリシスで,維持療法群はTUR 単独と比較し1 年後,3 年後の再発率をそれぞれ38%,65%低下させている1)。ピラルビシンの術後単回注入療法に,8 回の維持療法を追加する試験でも,維持療法の有用性が示されている2)。一方で,エピルビシンを用いたRCT では,維持療法群の方が若干良かったものの,コントロール群と比較し再発率に有意差はなかった3)。この試験のコントロール群は術後6 時間以内の単回注入を含む週1 回6 週間の投与であり,維持療法群はさらに月1 回で10 ヵ月間の追加投与がなされた。

維持療法のスケジュールについては定まったものはなく,期間も3 ヵ月から3年間と幅広い。最近のシステマティックレビューでは,月1 回の投与で7 ヵ月から1 年間の維持療法が最も多く,再発率が有意に良好であったのもこの期間の維持療法群であった4)。一方で,維持療法追加による進展率の低下を認めた試験はなかった。維持療法を追加することによって排尿痛や血尿,膀胱炎などの有害事象は増加するが,重症化することは稀である5)

参考文献

1)
Huncharek M, McGarry R and Kupelnick B:Impact of intravesical chemotherapy on recurrence rate of recurrent superficial transitional cell carcinoma of the bladder:results of a meta-analysis. Anticancer Res 21:765-769, 2001
2)
Naya Y, Mikami K, Takaha N, et al:Randomized study of intravesical pirarubicin chemotherapy with low and intermediate-risk nonmuscle-invasive bladder cancer in Japan:comparison of a single immediate postoperative intravesical instillation with short-term adjuvant intravesical instillations after transurethral resection. Medicine(Baltimore)97:e12740, 2018
3)
Serretta V, Morgia G, Altieri V, et al:A 1-year maintenance after early adjuvant intravesical chemotherapy has a limited efficacy in preventing recurrence of intermediate risk non-muscle-invasive bladder cancer. BJU Int 106:212-217, 2010
4)
Tabayoyong WB, Kamat AM, O’Donnell MA, et al:Systematic review on the utilization of maintenance intravesical chemotherapy in the management of non-muscle-invasive bladder cancer. Eur Urol Focus 4:512-521, 2018
5)
Kuroda M, Niijima T, Kotake T, et al:Effect of prophylactic treatment with intravesical epirubicin on recurrence of superficial bladder cancer––The 6th Trial of the Japanese Urological Cancer Research Group (JUCRG):a randomized trial of intravesical epirubicin at dose of 20mg/40ml, 30mg/40ml, 40mg/40ml. Eur Urol 45:600-605, 2004

CQ7
中・高リスク筋層非浸潤性膀胱癌(NMIBC)に対してBCG 導入療法と比較してBCG 維持療法は推奨されるか?

エビデンスの確実性B
中・高リスクNMIBC に対するBCG 維持療法は,再発予防効果の点から推奨される(推奨の強さ2)

解 説

BCG 維持療法はBCG 導入療法や他の抗癌剤注入療法と比較して,中・高リスクNMIBC に対して膀胱内再発抑制効果1〜5),進展抑制効果16),予後延長効果3)を有することがいくつかの臨床研究で確認されている。

SWOG8507 試験1)では高リスクNMIBC を6 回のBCG 導入療法後に定期的に3 週間のBCG 維持注入を3 年間行うBCG 維持療法群(3,6,12,18,24,30,36 ヵ月目:計27 回投与)とBCG 導入療法単独群にランダム化割り付けされ,BCG 維持療法群では無再発生存期間(5 年無再発生存率;導入療法:41%,維持療法:60%,p < 0.0001),無増悪生存期間(5 年無増悪生存率;導入療法:70%,維持療法:76%,p=0.04)の有意な延長を認めた。しかし,3 年の維持療法完遂率は16%であった。EORTC30911 試験37)では中・高リスクNMIBC に対してSWOG8507 維持療法レジメンを用いてBCG 維持療法群とエピルビシン注入群をランダム化比較検討し,BCG 維持療法群で無再発生存期間(HR:0.62,95% CI:0.50〜0.76),無転移生存期間(HR:0.55,95% CI:0.32〜0.94),癌特異的生存期間(HR:0.47,95 % CI:0.25〜0.89), 全生存期間(overall survival:OS)(HR:0.76,95% CI:0.59〜0.96)の有意な改善が確認された。維持療法群のレジメン間の比較を行ったEORTC30962 試験89)において中・高リスクNMIBC に対してTICE 株通常量と1/3 量,維持療法1 年と3 年が検討され,中リスク群では通常量で1 年間,高リスク群では通常量で3 年間の維持療法が無再発生存期間を低下させ,有害事象は有意な差がなかったと報告された。一方,CUETO98013 試験10)では高リスクNMIBC を6 回のBCG 導入療法後に定期的に3 週間ごとに1 回のBCG 注入を3 年間行うBCG 維持療法群(BCG 注入,計18 回投与)とBCG 導入療法単独群にランダム化割り付けされ,CUETO レジメンではすべての有効性アウトカムで有意な改善が確認されなかった。

本邦においてはBCG 導入療法としては日本株(イムノブラダー膀注用)80mg で週1 回6〜8 週間繰り返すレジメンが標準である。日本株(イムノブラダー膀注用)を使った小規模な臨床試験4)で,8 回のBCG 導入療法後に3 ヵ月ごとに1 回のBCG 注入を9 ヵ月間行う(BCG 注入,計12 回投与)レジメンにおいて,無再発生存期間の改善が示唆されている。現在国内製造中止であるコンノート株(イムシスト膀注用)で6 回のBCG 導入療法後に定期的に3 週間のBCG 維持注入を18 ヵ月行うBCG 維持療法群とBCG 導入療法群,抗癌剤膀注療法とを比較した本邦の試験5)では,BCG 維持療法群で無再発生存率の有意な改善が確認され,完遂率は42%であった。しかしながらコンノート株の維持療法で,完全なTURBT 後に予定された18 ヵ月の維持療法完遂率は23.9%で,維持療法の再発予防効果は確認されなかったとの報告11)も存在する。

メタアナリシスにおいて,TUR 単独に対してBCG 維持療法の再発予防効果,病期進展抑制効果の優位性が示されている612)。BCG 導入療法や他の抗癌剤膀注療法に対する優位性は,再発予防効果で示されているが2612〜14),病期進展抑制効果に関しては肯定的な結果1415)と否定的な結果261213)が報告されている。

中・高リスクNMIBC に対するBCG 維持療法は,BCG 導入療法や他の抗癌剤膀注療法よりも再発予防効果が高いため行うことが推奨される(推奨の強さ:2)。BCG 維持療法はSWOG8507 レジメンを基本とした投与法で12 ヵ月以上行うことが望ましい。しかしながらBCG 維持療法の完遂率の低さ,副作用の問題から具体的な投与スケジュールは定まっておらず,今後さらなる最適なレジメンの確立が望まれる。

参考文献

1)
Lamm DL, Blumenstein BA, Crissman JD, et al:Maintenance bacillus Calmette-Guerin immunotherapy for recurrent TA, T1 and carcinoma in situ transitional cell carcinoma of the bladder:a randomized Southwest Oncology Group Study. J Urol 163:1124-1129, 2000
2)
Malmstrom PU, Sylvester RJ, Crawford DE, et al:An individual patient data meta-analysis of the long-term outcome of randomised studies comparing intravesical mitomycin C versus bacillus Calmette-Guerin for non-muscle-invasive bladder cancer. Eur Urol 56:247-256, 2009
3)
Sylvester RJ, Brausi MA, Kirkels WJ, et al:Long-term efficacy results of EORTC genito-urinary group randomized phase 3 study 30911 comparing intravesical instillations of epirubicin, bacillus Calmette-Guerin, and bacillus Calmette-Guerin plus isoniazid in patients with intermediate-and high-risk stage Ta T1 urothelial carcinoma of the bladder. Eur Urol 57:766-773, 2010
4)
Koga H, Ozono S, Tsushima T, et al:Maintenance intravesical bacillus Calmette-Guerin instillation for Ta, T1 cancer and carcinoma in situ of the bladder:randomized controlled trial by the BCG Tokyo Strain Study Group. Int J Urol 17:759-766, 2010
5)
Hinotsu S, Akaza H, Naito S, et al:Maintenance therapy with bacillus Calmette-Guerin Connaught strain clearly prolongs recurrence-free survival following transurethral resection of bladder tumour for non-muscle-invasive bladder cancer. BJU Int 108:187-195, 2011
6)
Sylvester RJ, van der MA and Lamm DL:Intravesical bacillus Calmette-Guerin reduces the risk of progression in patients with superficial bladder cancer:a meta-analysis of the published results of randomized clinical trials. J Urol 168:1964-1970, 2002
7)
van der Meijden AP, Brausi M, Zambon V, Kirkels W, de Balincourt C and Sylvester R:Intravesical instillation of epirubicin, bacillus Calmette-Guerin and bacillus Calmette-Guerin plus isoniazid for intermediate and high risk Ta, T1 papillary carcinoma of the bladder:a European Organization for Research and Treatment of Cancer genito-urinary group randomized phase Ⅲ trial. J Urol 166:476-481, 2001
8)
Oddens J, Brausi M, Sylvester R, et al:Final results of an EORTC-GU cancers group randomized study of maintenance bacillus Calmette-Guerin in intermediate- and high-risk Ta, T1 papillary carcinoma of the urinary bladder:one-third dose versus full dose and 1 year versus 3 years of maintenance. Eur Urol 63:462-472, 2013
9)
Brausi M, Oddens J, Sylvester R, et al:Side effects of Bacillus Calmette-Guerin(BCG)in the treatment of intermediate- and high-risk Ta, T1 papillary carcinoma of the bladder:results of the EORTC genito-urinary cancers group randomised phase 3 study comparing one-third dose with full dose and 1 year with 3 years of maintenance BCG. Eur Urol 65:69-76, 2014
10)
Martinez-Pineiro L, Portillo JA, Fernandez JM, et al:Maintenance Therapy with 3-monthly Bacillus Calmette-Guerin for 3 Years is Not Superior to Standard Induction Therapy in High-risk Non-muscle-invasive Urothelial Bladder Carcinoma:Final Results of Randomised CUETO Study 98013. Eur Urol 68:256-262, 2015
11)
Nakai Y, Anai S, Tanaka N, et al:Insignificant role of bacillus Calmette-Guerin maintenance therapy after complete transurethral resection of bladder tumor for intermediate- and high-risk non-muscle-invasive bladder cancer:Results from a randomized trial. Int J Urol 23:854-860, 2016
12)
Chou R, Selph S, Buckley DI, et al:Intravesical Therapy for the Treatment of Nonmuscle Invasive Bladder Cancer:A Systematic Review and Meta-Analysis. J Urol 197:1189-1199, 2017
13)
Quan Y, Jeong CW, Kwak C, Kim HH, Kim HS and Ku JH:Dose, duration and strain of bacillus Calmette-Guerin in the treatment of nonmuscle invasive bladder cancer:Meta-analysis of randomized clinical trials. Medicine(Baltimore)96:e8300, 2017
14)
Chen S, Zhang N, Shao J and Wang X:Maintenance versus non-maintenance intravesical Bacillus Calmette-Guerin instillation for non-muscle invasive bladder cancer:A systematic review and meta-analysis of randomized clinical trials. Int J Surg 52:248-257, 2018
15)
Zhu S, Tang Y, Li K, et al:Optimal schedule of bacillus calmette-guerin for non-muscle-invasive bladder cancer:a meta-analysis of comparative studies. BMC Cancer 13:332, 2013

CQ8
中・高リスク筋層非浸潤性膀胱癌(NMIBC)に対して低用量BCG 膀胱内注入療法は推奨されるか?

エビデンスの確実性C
通常量BCG 膀胱内注入療法の副作用が問題となる患者,身体リスクの高い患者,中リスクNMIBC に対しては,低用量BCG 膀胱内注入療法が選択肢の1 つとして推奨される(推奨の強さ2)

解 説

本邦においてはBCG 導入療法としては日本株(イムノブラダー膀注用)80mg で週1 回6〜8 週間繰り返すレジメンが標準であるが,維持療法は定まったレジメンは存在していない。通常量のBCG 膀胱内注入療法では副作用の発現頻度が高く,副作用の軽減を目的に低用量BCG 膀胱内注入療法の有効性,安全性が検証されてきた。

大規模なEORTC30962 試験12)においてTICE 株の通常量と1/3 の低用量,1 年間と3 年間の維持療法がそれぞれ検討され,低用量の膀胱内再発予防効果は通常量より劣性(HR:0.75,95% CI:0.59〜0.94;p=0.01)であり,副作用発現率も低下しなかった(通常量:8.0%,低用量:7.6%)と報告されている。一方,コンノート株でのCUETO 試験34)では,27mg(1/3 量)と81mg(通常量)による半年間維持療法で低用量での再発予防効果の非劣性,副作用発現率の減少を認めているが,高リスク群では再発予防効果が低下する可能性3)や13.5mg(1/6 量)では有効性が低下することが示されている5)。またコンノート株27mg(1/3 量)の3 週間のBCG 維持注入を3 年間行う維持療法レジメンにおいて,3 ヵ月と6 ヵ月間隔での投与を比較したURO-BCG-4 試験6)では,2 群間に有意な有効性の差は認めなかった。また,日本株(イムノブラダー膀注用)40mg(1/2 量)と80mg(通常量)の導入療法78)やDanish 株40mg(1/3 量),80mg(2/3 量),120mg(通常量)による1 年間維持療法での試験9)で低用量BCG 膀胱内注入療法の再発予防効果の非劣性,副作用発現率の減少を認めている試験もある。

メタアナリシスでは,低用量BCG 膀胱内注入療法は通常量と比較し腫瘍進展予防効果は変わらず,有害事象発現率の減少を認めるものの,再発予防効果は低下する1011)とされているが,効果に差がないとする解析結果1213)もある。

日本株(イムノブラダー膀注用)の具体的な維持療法投与スケジュールは定まっておらず,今後低用量BCG 維持療法レジメンでの前向き検証が必要である。低用量BCG 維持療法は副作用発現率の減少が期待される一方,再発予防効果の低下も予測されるため,標準的な治療法としては行わないことを推奨する(推奨の強さ:2)。BCG 注入通常量で局所副作用がある患者,高齢者など身体リスクの高い患者,中リスクNMIBC に対しては,低用量BCG 維持療法は治療選択肢となる(推奨の強さ:2)。

参考文献

1)
Oddens J, Brausi M, Sylvester R, et al:Final results of an EORTC-GU cancers group randomized study of maintenance bacillus Calmette-Guerin in intermediate- and high-risk Ta, T1 papillary carcinoma of the urinary bladder:one-third dose versus full dose and 1 year versus 3 years of maintenance. Eur Urol 63:462-472, 2013
2)
Brausi M, Oddens J, Sylvester R, et al:Side effects of Bacillus Calmette-Guerin(BCG)in the treatment of intermediate- and high-risk Ta, T1 papillary carcinoma of the bladder:results of the EORTC genito-urinary cancers group randomised phase 3 study comparing one-third dose with full dose and 1 year with 3 years of maintenance BCG. Eur Urol 65:69-76, 2014
3)
Martinez-Pineiro JA, Flores N, Isorna S, et al:Long-term follow-up of a randomized prospective trial comparing a standard 81 mg dose of intravesical bacille Calmette-Guerin with a reduced dose of 27 mg in superficial bladder cancer. BJU Int 89:671-680, 2002
4)
Martinez-Pineiro JA, Martinez-Pineiro L, Solsona E, et al:Has a 3-fold decreased dose of bacillus Calmette-Guerin the same efficacy against recurrences and progression of T1G3 and Tis bladder tumors than the standard dose? Results of a prospective randomized trial. J Urol 174:1242-1247, 2005
5)
Ojea A, Nogueira JL, Solsona E, et al:A multicentre, randomised prospective trial comparing three intravesical adjuvant therapies for intermediate-risk superficial bladder cancer:low-dose bacillus Calmette-Guerin(27 mg)versus very low-dose bacillus Calmette-Guerin(13.5 mg)versus mitomycin C. Eur Urol 52:1398-1406, 2007
6)
Pfister C, Kerkeni W, Rigaud J, et al:Efficacy and tolerance of one-third full dose bacillus Calmette-Guerin maintenance therapy every 3 months or 6 months:two-year results of URO-BCG-4 multicenter study. Int J Urol 22:53-60, 2015
7)
Irie A, Uchida T, Yamashita H, et al:Sufficient prophylactic efficacy with minor adverse effects by intravesical instillation of low-dose bacillus Calmette-Guerin for superficial bladder cancer recurrence. Int J Urol 10:183-189, 2003
8)
Yokomizo A, Kanimoto Y, Okamura T, et al:Randomized Controlled Study of the Efficacy, Safety and Quality of Life with Low Dose bacillus Calmette-Guerin Instillation Therapy for Nonmuscle Invasive Bladder Cancer. J Urol 195:41-46, 2016
9)
Agrawal MS, Agrawal M, Bansal S, Agarwal M, Lavania P and Goyal J:The safety and efficacy of different doses of bacillus Calmette Guerin in superficial bladder transitional cell carcinoma. Urology 70:1075-1078, 2007
10)
Quan Y, Jeong CW, Kwak C, Kim HH, Kim HS and Ku JH:Dose, duration and strain of bacillus Calmette-Guerin in the treatment of nonmuscle invasive bladder cancer:Meta-analysis of randomized clinical trials. Medicine(Baltimore)96:e8300, 2017
11)
Zeng S, Yu X, Ma C, et al:Low-Dose Versus Standard Dose of Bacillus Calmette-Guerin in the Treatment of Nonmuscle Invasive Bladder Cancer:A Systematic Review and Meta-Analysis. Medicine(Baltimore)94:e2176, 2015
12)
Wu C, Zhou X, Miao C, et al:Assessing the Feasibility of Replacing Standard-Dose Bacillus Calmette-Guerin Immunotherapy with Other Intravesical Instillation Therapies in Bladder Cancer Patients:A Network Meta-Analysis. Cell Physiol Biochem 41:1298-1312, 2017
13)
Wang Z, Xiao H, Wei G, et al:Low-dose Bacillus Calmette-Guerin versus full-dose for intermediate and high-risk of non-muscle invasive bladder cancer:a Markov model. BMC Cancer 18:1108, 2018

CQ9
BCG 膀胱内注入療法後に腫瘍残存を認める症例や膀胱内再発をきたす症例に対して,BCG 膀胱内注入療法の再導入は推奨されるか?

エビデンスの確実性B
BCG unresponsive には膀胱全摘除術を考慮することが推奨される(推奨の強さ2)
エビデンスの確実性C
1 年以降のBCG relapsing にはBCG 膀胱内注入療法再導入は選択肢の1 つとして推奨される(推奨の強さ2)

解 説

NMIBC のBCG 膀胱内注入療法後の残存・再発癌に対する治療を考える際に,Nieder ら1)はBCG failure を,① BCG-refractory:導入療法後3 ヵ月の時点で再発または腫瘍が残存し,6 ヵ月時点(維持療法を含む)でも消失しない,② BCG-resistant:導入療法後3 ヵ月時点で腫瘍残存も6 ヵ月の時点で消失,③ BCG-relapsing:治療後6 ヵ月時点で消失した腫瘍が再発(再発までの期間をearly:≦ 12 ヵ月,intermediate:12〜24 ヵ月,late:> 24 ヵ月に細分類),④ BCG-intolerant:重篤な有害事象のため十分な注入療法が施行できず再発を繰り返すの4 つに分類した。本邦での検討23)では,BCG failure 症例のうち大半をBCG-relapsing とBCG-refractory が占め,BCG-resistant,BCG-intolerant は少数との報告がある。

SWOG 試験のBCG 注入群でのpost hoc 解析では,BCG-refractory は進展傾向が強く予後不良となりやすいことが示されている4)。BCG-refractory を対象とした小規模の前向き試験では,BCG 膀胱内注入療法再導入の87.5%に再発を認め,2 年無再発生存率は3%で,37.5%に腫瘍進展を認めたと報告されている5)。BCG+IFNα注入療法による前向き試験6)で,BCG-refractory はBCG+IFNα注入療法再導入の効果が悪かったものの,1 年以降に再発したBCG relapsing はBCG 未施行例と比較し,BCG+IFNα膀注導入療法の効果は変わらなかったと報告されている7)。BCG-relapsing を対象としたBCG 膀胱内注入療法再導入の本邦の成績2)では,中および高リスク癌の5 年非再発率はそれぞれ78%および46%と報告されている。本邦のBCG-refractory およびBCG-relapsing に対する膀胱温存療法の5 年癌特異生存割合は74 % および97 % と報告があり3),BCG-refractory は他のBCG failure 様式より病期進展する可能性が高い3)。BCG-refractoryはBCG 膀胱内注入療法再導入にも抵抗性5)であるため,即時膀胱全摘療法が標準治療と考えられ8),BCG 膀胱内注入療法再導入による膀胱温存療法は選択しないことが推奨される(推奨の強さ:2)。

NMIBC のBCG failure は多様であり,Nieder の分類は腫瘍の再発時期に関する代表的な分類であるが,BCG 膀胱内注入療法のスケジュールが加味されたものではなかった8)。そのためAUA,IBCG,FDA が中心となりBCG failure に対する臨床試験指針が作成された。その中でBCG-refractory と早期のBCG-relapsing(BCG 最終投与から12 ヵ月以内の再発) を総称したBCG-unresponsive8〜10)という「十分なBCG 膀胱内注入療法を行ったにもかかわらず再発し,BCG 膀胱内注入療法再導入が無効と考えられる疾患群」が提唱された(各用語の定義は本章の総論,表4 を参照)。また,この指針8)では,BCG-unresponsive に対する新薬開発の際の臨床試験のエンドポイントとしてBCG-unresponsive CIS では6 ヵ月のCR 率が50%,奏効した症例における12,18 ヵ月の持続的な奏効率(Durable response rate)が30%,25%,BCG-unresponsive-papillary disease では12,18 ヵ月の無再発生存割合が30%,25%を臨床的に意義のある有効性の指標とすることが提唱されている。

参考文献

1)
Nieder AM, Brausi M, Lamm D, et al:Management of stage T1 tumors of the bladder:International Consensus Panel. Urology 66:108-125, 2005
2)
Matsumoto K, Kikuchi E, Shirakawa H, et al:Risk of subsequent tumour recurrence and stage progression in bacille Calmette-Guerin relapsing non-muscle-invasive bladder cancer. BJU Int 110:E508-513, 2012
3)
Nishiyama N, Kitamura H, Hotta H, et al:Construction of Predictive Models for Cancer-specific Survival of Patients with Non-muscle-invasive Bladder Cancer Treated with Bacillus Calmette-Guerin:Results from a Multicenter Retrospective Study. Jpn J Clin Oncol 44:1101-1108, 2014
4)
Lerner SP, Tangen CM, Sucharew H, Wood D and Crawford ED:Failure to achieve a complete response to induction BCG therapy is associated with increased risk of disease worsening and death in patients with high risk non-muscle invasive bladder cancer. Urol Oncol 27:155-159, 2009
5)
Di Lorenzo G, Perdona S, Damiano R, et al:Gemcitabine versus bacille Calmette-Guerin after initial bacille Calmette-Guerin failure in non-muscle-invasive bladder cancer:a multicenter prospective randomized trial. Cancer 116:1893-1900, 2010
6)
Steinberg RL, Thomas LJ, Mott SL and O’Donnell MA:Bacillus Calmette-Guerin(BCG)Treatment Failures with Non-Muscle Invasive Bladder Cancer:A Data-Driven Definition for BCG Unresponsive Disease. Bladder cancer(Amsterdam, Netherlands)2:215-224, 2016
7)
Gallagher BL, Joudi FN, Maymi JL and O’Donnell MA:Impact of previous bacille Calmette-Guerin failure pattern on subsequent response to bacille Calmette-Guerin plus interferon intravesical therapy. Urology 71:297-301, 2008
8)
Kamat AM, Sylvester RJ, Böhle A, et al:Definitions, End Points, and Clinical Trial Designs for Non-Muscle-Invasive Bladder Cancer:Recommendations From the International Bladder Cancer Group. J Clin Oncol 34:1935-1944, 2016
9)
Lerner SP, Dinney C, Kamat A, et al:Clarification of Bladder Cancer Disease States Following Treatment of Patients with Intravesical BCG. Bladder cancer 1:29-30, 2015
10)
Li R, Tabayoyong WB, Guo CC, et al:Prognostic Implication of the United States Food and Drug Administration-defined BCG-unresponsive Disease. Eur Urol 75:8-10, 2019

CQ10
超高リスク症例に対して即時膀胱全摘除術は推奨されるか?

エビデンスの確実性C
超高リスク症例では進展リスクが高く,即時膀胱全摘除術を考慮することが推奨される(推奨の強さ2)

解 説

高リスクNMIBC に対する即時膀胱全摘は,結果的に適切な治療と判断されることもある反面,過剰治療と判断されることもあるが,膀胱温存治療とのRCT はなく,議論の多いところである1)。膀胱温存治療として,Sylvester らは中〜高リスクNMIBC やCIS 症例に対してBCG 膀胱内注入療法,特にBCG 維持療法の有用性を強調している2)。しかし,十分なBCG 膀胱内注入療法にもかかわらず早期に再発,BCG 膀胱内注入療法再導入が無効と考えられるBCG unresponsive では膀胱全摘除術の適応となり,EAU とNCCN ガイドラインでは早期の膀胱全摘除術を推奨すべき症例として,BCG 膀胱内注入療法1〜2 コース施行後にT1 high grade 腫瘍が再発した例をあげている34)。このように,高リスク症例のなかには,さらに進展リスクが高いとされる『超高リスク(highest risk)症例』があり,BCG 膀胱内注入療法よりも即時膀胱全摘除術が推奨される。

2016 年にBabjuk ら4)は超高リスク症例として,膀胱および前立腺部尿道CIS 併発T1 high grade,多発かつ/ または3cm 以上かつ/ または再発性のT1 high grade に加え,UC variant-histology やLVI を有するような腫瘍をあげ,これらに対して即時膀胱全摘除術を推奨している。尿路上皮癌に付随するUC variant-histology のうち即時膀胱全摘除術が推奨されるものとしては,micropapillary,sarcomatoid,plasmacytoid variant などがあり,診断時点で筋層浸潤癌である可能性が高く予後不良である5)Ⅷ.希少がん参照)。また,初発のT1,特に,CIS 併発や前立腺浸潤を伴っている場合は,この時点での膀胱全摘除術が奨められる67)。現在,初回TURBT でT1 high grade が検出された場合2nd TUR が実施されるが,この2nd TUR の組織内に再びT1 腫瘍を認めた症例は,その後に筋層浸潤癌に進展する可能性が高く,この時点での膀胱全摘除術が推奨されている8)。一方,NMIBC の膀胱全摘除術に際しては周辺臓器および神経温存を考慮してもよい。

参考文献

1)
Bochner BH:Optimal timing of radical cystectomy for patients with T1 bladder cancer. Urol Oncol 27:329-331, 2009
2)
Sylvester RJ, van der Meijden AP and Lamm DL:Intravesical bacillus Calmette-Guerin reduces the risk of progression in patients with superficial bladder cancer:a meta-analysis of the published results of randomized clinical trials. Urolgy 168:1964-1970, 2002
3)
Clark PE, Agarwal N, Biagioli MC, et al:Bladder cancer. J Natl Compr Canc Netw 11:446-475, 2013
4)
Babjuk M, Böhle A, Burger M, et al:EAU Guidelines on Non-Muscle-invasive Urothelial Carcinoma of the Bladder:Update 2016. Eur Urol 71:447-461, 2017
5)
Wasco MJ, Daignault S, Zhang Y, et al:Urothelial carcinoma with divergent histologic differentiation(mixed histologic features)predicts the presence of locally advanced bladder cancer when detected at transurethral resection. Urology 70:69-74, 2007
6)
Solsona E, Iborra I, Dumont R, Rubio-Briones J, Casanova J and Almenar S:The 3-month clinical response to intravesical therapy as a predictive factor for progression in patients with high risk superficial bladder cancer. J Urol 164:685-689, 2000
7)
Solsona E, Iborra I, Rubio J, Casanova J and Almenar S:The optimum timing of radical cystectomy for patients with recurrent high-risk superficial bladder tumour. BJU Int 94:1258-1262, 2004
8)
Herr HW, Donat SM and Dalbagni G:Can restaging transurethral resection of T1 bladder cancer select patients for immediate cystectomy? J Urol 177:75-79, 200

Ⅳ.上皮内癌(CIS)の治療

CQ11
前立腺部尿道における上皮内癌(CIS)に対してBCG 膀胱内注入療法は推奨されるか?

エビデンスの確実性C
前立腺部CIS 症例のうち前立腺部尿道原発,あるいは併発する膀胱癌がTa 以下の筋層非浸潤性癌である場合,前立腺部尿道の十分な経尿道的切除後にBCG 膀胱内注入療法を行うことが推奨される(推奨の強さ2)
エビデンスの確実性C
併発する膀胱癌がT1 high grade の場合は膀胱全摘除術を考慮することが推奨される(推奨の強さ2)

解 説

膀胱CIS に対する一次治療としてはBCG 膀胱内注入療法,もしくは膀胱全摘除術が推奨されている12)。しかしながら,膀胱CIS 症例を対象とした即時膀胱全摘除術とBCG 注入療法とのRCT はなく,同様により頻度の低い前立腺部尿道CIS 症例に対するRCT は存在しない。

前立腺部尿道に発生する尿路上皮癌の多くは膀胱癌を併発している3)。逆に,NMIBC の16〜39%,膀胱全摘除術を行った症例の12〜48%で前立腺部尿道に尿路上皮癌が検出されたと報告されている34)。膀胱全摘標本を用いた解析により,前立腺部尿道の尿路上皮癌の深達度はCIS(前立腺部尿道および前立腺腺管)が41〜64%,間質浸潤が17〜47%にみられたと報告されている5〜7)。膀胱全摘後の予後は前立腺間質浸潤を認める症例で不良であり,即時膀胱全摘除術の適応と考えられる138)。一方,前立腺部尿道CIS 症例の予後は,前立腺部に尿路上皮癌を伴わない症例と有意差を認めなかったという報告と予後不良であったとする報告が混在する57910)。これらより,一部の前立腺部尿道CIS 症例においては,即時膀胱全摘除術が過剰治療となっている可能性がある。

これまでの少数の症例集積研究では,間質浸潤を伴わない前立腺部尿道進展があるNMIBC 患者に対して,1〜2 コースのBCG 膀胱内注入療法を行い64%〜82%でCR を得たと報告されている1112)。BCG 膀胱内注入療法はその治療効果を発揮するために尿路上皮へのBCG の直接接触が理論上必要とされる。Gofrit らは,間質浸潤を伴わない前立腺部尿道の尿路上皮癌患者に対してBCG 膀胱内注入療法に先立って前立腺部尿道の経尿道的切除(TURP)を行うことにより高いCR 率を達成することが可能であったと報告しており,過去の報告を含めたプール解析ではBCG 注入単独群でCR 率67%に対しTURP 後にBCG 注入した群で95%であったと報告している13)。一方Palou らは,膀胱癌がT1G3 で経尿道的切除後にBCG 導入療法のみ行った146 名を後ろ向きに検討し,女性あるいは前立腺部尿道CIS を伴う男性群がその他と比較して予後不良であったと報告している14)。これらの報告をもとに,EAU ガイドラインでは,前立腺部尿道の非浸潤性尿路上皮癌もしくはCIS の場合,経尿道的切除後のBCG 膀胱内注入療法を選択肢の1 つとしている8)

結論として,前立腺部CIS 症例においては,併存する膀胱癌がTa 以下のNMIBC である場合,前立腺部尿道の十分な経尿道的切除後にBCG 膀胱内注入療法を行うことは選択肢の1 つとなりえる。しかしながら,併存する膀胱癌がT1,high grade あるいは筋層浸潤癌の場合は膀胱全摘除術を考慮すべきである。

参考文献

1)
Babjuk M, Böhle A, Burger M, et al:EAU Guidelines on Non-Muscle-invasive Urothelial Carcinoma of the Bladder:Update 2016. Eur Urol 71:447-461, 2017
2)
Power NE and Izawa J:Comparison of Guidelines on Non-Muscle Invasive Bladder Cancer(EAU, CUA, AUA, NCCN, NICE). Bladder Cancer 2:27-36, 2016
3)
Palou J, Baniel J, Klotz L, et al:Urothelial carcinoma of the prostate. Urology 69:50-61, 2007
4)
Walsh DL and Chang SS:Dilemmas in the treatment of urothelial cancers of the prostate. Urol Oncol 27:352-357, 2009
5)
Barocas DA, Patel SG, Chang SS, Clark PE, Smith JA Jr and Cookson MS:Outcomes of patients undergoing radical cystoprostatectomy for bladder cancer with prostatic involvement on final pathology. BJU Int 104:1091-1097, 2009
6)
Knoedler JJ, Boorjian SA, Tollefson MK, et al:Urothelial carcinoma involving the prostate:the association of revised tumour stage and coexistent bladder cancer with survival after radical cystectomy. BJU Int 114:832-836, 2014
7)
Moschini M, Soria F, Susani M, et al:Impact of the Level of Urothelial Carcinoma Involvement of the Prostate on Survival after Radical Cystectomy. Bladder Cancer 3:161-169, 2017
8)
Gakis G, Witjes JA, Comperat E, et al:EAU guidelines on primary urethral carcinoma. Eur Urol 64:823-830, 2013
9)
Ay. yathurai R, Gomez P, Luongo T, Soloway MS and Manoharan M:Prostatic involvement by urothelial carcinoma of the bladder:clinicopathological features and outcome after radical cystectomy. BJU Int 100:1021-1025, 2007
10)
Kiyoshima K, Kuroiwa K, Uchino H, Yokomizo A and Naito S:Depth and origin of prostatic involvement by urothelial carcinoma:prognostic significance and staging interpretation. Jpn J Clin Oncol 41:642-646, 2011
11)
Palou Redorta J, Schatteman P, Huguet Pérez J, et al:Intravesical instillations with bacillus calmette-guerin for the treatment of carcinoma in situ involving prostatic ducts. Eur Urol 49:834-838; discussion 838, 2006
12)
Taylor JH, Davis J and Schellhammer P:Long-term follow-up of intravesical bacillus Calmette-Guerin treatment for superficial transitional-cell carcinoma of the bladder involving the prostatic urethra. Clin Genitourin Cancer 5:386-389, 2007
13)
Gofrit ON, Pode D, Pizov G, Zorn KC, Katz R and Shapiro A:Prostatic urothelial carcinoma:is transurethral prostatectomy necessary before bacillus Calmette-Guerin immunotherapy? BJU Int 103:905-908, 2009
14)
Palou J, Sylvester RJ, Faba OR, et al:Female gender and carcinoma in situ in the prostatic urethra are prognostic factors for recurrence, progression, and disease-specific mortality in T1G3 bladder cancer patients treated with bacillus Calmette-Guerin. Eur Urol 62:118-125, 2012

CQ12
上皮内癌(CIS)症例に対するBCG 導入療法でCIS が残存する場合,BCG 再導入療法は推奨されるか?

エビデンスの確実性C
CIS 症例に対する初回BCG 導入療法でCIS が残存する場合,BCG 再導入療法が推奨される(推奨の強さ2)
エビデンスの確実性C
ただし,BCG 再導入後の初回注入から6 ヵ月時点でも残存する症例は,膀胱全摘除術を考慮する(推奨の強さ2)

解 説

CIS に対する初期治療について,BCG 膀胱内注入療法と即時膀胱全摘除術の無作為化比較試験は存在しないが,その高い奏効率と比較的良好な予後よりBCG 膀胱内注入療法は標準治療となっている12)。Chade らはBCG 膀胱内注入療法開始後6 ヵ月時点でCR にならなかった群はCR 群と比較して有意にその後の進展頻度が高かったと報告しており3),どの時点でBCG の治療効果を判定するかは重要な問題である。

Lamm らは,CIS のあるNMIBC 患者117 名のうち,BCG 導入療法後3 ヵ月時点でのCR を64 名(55%)に認めているが,6 ヵ月時点ではさらに13 名(11%)がCR の判定となり,維持療法としてBCG 注入療法が追加されることでさらに34 名(29%)がCR と判定され,最終的なCR 率は84%であったと報告している4)。この結果は,BCG 膀胱内注入療法による遅延性効果と再導入による奏効の可能性を示している。

Sylvester らは同様の報告をまとめて導入療法1 サイクルにてCR を得られなかった症例のうち,40〜60%は再導入療法に奏効するとしている2)

Herr らは再発リスクの高いNMIBC 患者(78%がCIS を併存)における維持療法と導入療法単独の無作為化比較試験の副次的解析において,6 ヵ月時点でのCR 症例は2 年無再発生存が77%であるのに対して非CR 症例では11%であり,再発の予測因子となることを示している(HR:9.18,p=0.001)。一方,3 ヵ月時点での評価は再発と相関しなかった(HR:1.51,p=0.24)ことより,BCG 抵抗性の判定には少なくとも6 ヵ月が必要と結論づけている5)。これらの報告をもとに,CIS に対するBCG 抵抗性の評価は6 ヵ月が推奨されており6),EAU ガイドラインでも3 ヵ月時点でのCIS 残存症例にはBCG 再導入が推奨されている7)

Zehnder らは膀胱全摘標本にて病理学的にCIS のみを認めた症例の10 年非再発率が90%と非常に良好であることを報告しているが8),一方で臨床的Tis の診断にて膀胱全摘除術が施行された症例の複数の記述研究では約20%に筋層浸潤癌を認めており,治療前,治療効果判定におけるアンダーステージング(過少病期診断)のリスクを常に念頭に置く必要がある1)

結論として,CIS 症例に対する初回BCG 導入療法でCIS が残存する場合,40〜60%でCR が期待できBCG 再導入療法が提案される。一方,BCG 再導入後の初回BCG 注入開始から6 ヵ月の時点でも残存する症例は,即時膀胱全摘除術の適応である。

参考文献

1)
Casey RG, Catto JW, Cheng L, et al:Diagnosis and management of urothelial carcinoma in situ of the lower urinary tract:a systematic review. Eur Urol 67:876-888, 2015
2)
Sylvester RJ, van der Meijden A, Witjes JA, et al:High-grade Ta urothelial carcinoma and carcinoma in situ of the bladder. Urology 66:90-107, 2005
3)
Chade DC, Shariat SF, Godoy G, et al:Clinical outcomes of primary bladder carcinoma in situ in a contemporary series. J Urol 184:74-80, 2010
4)
Lamm DL, Blumenstein BA, Crissman JD, et al:Maintenance bacillus Calmette-Guerin immunotherapy for recurrent TA, T1 and carcinoma in situ transitional cell carcinoma of the bladder:a randomized Southwest Oncology Group Study. J Urol 163:1124-1129, 2000
5)
Herr HW and Dalbagni G:Defining bacillus Calmette-Guerin refractory superficial bladder tumors. J Urol 169:1706-1708, 2003
6)
Kamat AM, Sylvester RJ, Bohle A, et al:Definitions, End Points, and Clinical Trial Designs for Non-Muscle-Invasive Bladder Cancer:Recommendations From the International Bladder Cancer Group. J Clin Oncol 34:1935-1944, 2016
7)
Babjuk M, Böhle A, Burger M, et al:EAU Guidelines on Non-Muscle-invasive Urothelial Carcinoma of the Bladder:Update 2016. Eur Urol 71:447-461, 2017
8)
Zehnder P, Moltzahn F, Daneshmand S, et al:Outcome in patients with exclusive carcinoma in situ(CIS)after radical cystectomy. BJU Int 113:65-69, 2014

CQ13
BCG 膀胱内注入療法後に再発した上皮内癌(CIS)症例に対して膀胱全摘除術は推奨されるか?

エビデンスの確実性C
CIS 症例に対する1〜2 コースのBCG 膀胱内注入療法後にhigh grade 腫瘍が再発した場合,膀胱全摘除術を考慮することが推奨される(推奨の強さ2)

解 説

Tilki らは,膀胱CIS に対してBCG 膀胱内注入療法後に抵抗性となり膀胱全摘除術を行った243 症例について,全摘病理標本におけるアップステージングとその後の予後を検討したところ,22.6%に筋層浸潤,5.8%に所属リンパ節転移を認め,これらの症例が特に予後不良であったことから,必要な患者には早期に膀胱全摘除術を行うことの重要性を強調している1)。また原発性CIS は併発CIS と比較してBCG 導入療法の奏効率は良好であったものの,その後の筋層浸潤癌への進展や膀胱全摘除術に至るリスクが高いとする報告もあり,primary CIS 症例に対する厳重な経過観察と全摘除術のタイミングの重要性が示唆される2)。さらにBCG 膀胱内注入療法後に筋層浸潤癌となった症例の予後は診断時に筋層浸潤癌であった症例より不良であること3),膀胱全摘除術を行ったBCG 抵抗性症例において,BCG 膀胱内注入療法2 年以降の膀胱全摘除術症例は2 年以内の全摘症例より予後不良であること4)も考慮すると,BCG 抵抗例に対しては早期の膀胱全摘除術が必要となる。Andius らは,BCG 膀胱内注入療法後の初回膀胱鏡検査において,肉眼所見陽性(CIS や隆起性病変の存在)がステージ進行,BCG-failure,膀胱癌死の唯一の予測因子であり,治療後早期の検査により膀胱全摘除術の適応を決定すべきと述べている5)

膀胱原発のCIS は膀胱外尿路再発・進展(上部尿路または前立腺部尿道)をきたしやすい。Solsona らは膀胱CIS を有する138 例のうち87 例(63%)に初診時または経過観察中に膀胱外尿路再発・進展を認め,予後不良であったと報告している6)。BCG 膀胱内注入療法は,治療効果を発揮するために尿路上皮に直接BCG 菌体が接触することが必要である。したがってBCG 膀胱内注入療法後の再発様式のうち,前立腺部尿道に病変(特に,前立腺間質組織への浸潤がある場合)を認めた場合は速やかに膀胱全摘除術を考慮すべきである。

EAU ガイドライン7)では膀胱全摘除術を推奨すべき適応として,BCG refractory 症例およびhigh grade 腫瘍が再発した症例をあげており,初発が中リスク筋層非浸潤癌のうちBCG 膀胱内注入療法後に非high grade 腫瘍が再発した場合にも検討すべきとしている。NCCN ガイドラインにおいてもBCG 膀胱内注入療法1〜2 コース施行後の再発症例でT1 high grade 症例は膀胱全摘除術を推奨している8)。その他,BCG failure 症例に対する膀胱温存治療としてゲムシタビン注入療法(本邦では適応外使用)などが試されているが,膀胱全摘除術との比較試験は行われておらず,現時点でのエビデンスは限定的である9)

結論として,① BCG 膀胱内注入療法開始後6 ヵ月でCIS が残存している症例および,② BCG 膀胱内注入療法後再発症例でT1 high grade 腫瘍は,早期に膀胱全摘除術が推奨される。

参考文献

1)
Tilki D, Reich O, Svatek RS, et al:Characteristics and outcomes of patients with clinical carcinoma in situ only treated with radical cystectomy:an international study of 243 patients. J Urol 183:1757-1763, 2010
2)
Chade DC, Shariat SF, Adamy A, et al:Clinical outcome of primary versus secondary bladder carcinoma in situ. J Urol 184:464-469, 2010
3)
Guzzo TJ, Magheli A, Bivalacqua TJ, et al:Pathological upstaging during radical cystectomyis associated with worse recurrence-free survival in patients with bacillus Calmette-Guerin refractory bladder cancer. Urology 74:1276-1280, 2009
4)
Herr HW and Sogani PC:Does early cystectomy improve the survival of patients with high risk superficial bladder tumors? J Urol 166:1296-1299, 2001
5)
Andius P, Damm O and Holmang S:Prognostic factors in patients with carcinoma in situ treated with intravesical bacille Calmette-Guerin. Scand J Urol Nephrol 38:285-290, 2004
6)
Solsona E, Iborra I, Ricós JV, Monrós JL, Dumont R and Almenar S:Extravesical involvement in patients with bladder carcinoma in situ:biological and therapy implications. J Urol 155:895-899, 1996
7)
Babjuk M, Böhle A, Burger M, et al:EAU Guidelines on Non-Muscle-invasive Urothelial Carcinoma of the Bladder:Update 2016. Eur Urol 71:447-461, 2017
8)
Clark PE, Agarwal N, Biagioli MC, et al:Bladder cancer. J Natl Compr Canc Netw 11:446-475, 2013
9)
Shelley MD, Jones G, Cleves A, Wilt TJ, Mason MD and Kynaston HG:Intravesical gemcitabine therapy for non-muscle invasive bladder cancer(NMIBC):a systematic review. BJU Int 109:496-505, 2012

Ⅴ.Stage Ⅱ,Stage Ⅲ 膀胱癌の治療

総論

Stage Ⅱ,Ⅲの筋層浸潤性膀胱癌(muscle invasive bladder cancer:MIBC)の標準治療は膀胱全摘除術である12)。男性の場合,膀胱,前立腺,精囊,遠位尿管を摘除し,骨盤リンパ節郭清を行う。尿道再発のリスクが高い場合には,尿道摘除術も同時に実施する。女性の場合には,膀胱,子宮,膣壁,遠位尿管,尿道を摘除し骨盤リンパ節郭清を行うのが標準術式とされている。

膀胱全摘除術に際して,尿道摘除の適応は議論の多いところである3)。大規模なRCT が存在しない現時点での見解としては,自排尿型新膀胱を考慮しない場合や根治が可能な症例においては尿道摘除を施行し,尿道温存を行う場合には再発の危険性を説明した上で行うことが重要である。尿道再発の腫瘍学的意義と経過観察法も含めて,詳細はCQ14 を参照されたい。

近年,膀胱全摘除術においても根治性を確保しつつ生活の質(quality of life:QOL)を向上させることが求められる状況になってきた。神経温存膀胱全摘除術によって自排尿型新膀胱の尿禁制や性機能が良好に確保されることも報告されており,神経温存膀胱全摘除術の適応と問題点をCQ15 で取り上げた。現時点での結論としては,MIBC において神経温存手術を試みても良いが,その選択基準は未だに確立していない。システマティックレビュー4)は存在するものの未だにエビデンスレベルは低く,性機能温存を希望する症例においては,根治性を考慮した総合的検討により神経温存の可否を判断し,慎重に選択された症例にのみ行うことを推奨する。

女性の標準的膀胱全摘除術と自排尿型尿路再建術後に性機能障害や排尿機能障害を伴うため,婦人科臓器温存手術が考慮されるようになってきた56)。標準術式と婦人科臓器温存術式を比較したRCT は存在しないが,婦人科臓器温存膀胱全摘除術は通常の膀胱全摘除術と治療成績は同等で,性機能や排尿機能の改善を認めるとする後ろ向き研究が多い78)。しかしながら,これらは小規模で評価項目等も統一されていないため,RCT で臨床的意義が証明されるまで婦人科臓器温存膀胱全摘除術は標準治療とはならない。膀胱頸部や尿道に病変を認めないT2 以下の腫瘍で,患者が婦人科臓器温存を希望する場合には考慮しても良いと考える5〜8)。卵巣摘除に関する問題点も存在するので,詳細はCQ16 を参照されたい。

リンパ節郭清の範囲を広げることで,腫瘍学的アウトカム改善効果が期待されるため,至適リンパ節郭清の範囲に関する多くの報告がなされている。拡大郭清の治療意義,特に無再発生存期間の改善効果に関しては,後ろ向き研究から得られたエビデンスが多いが,これらを用いたシステマティックレビュー9)およびメタアナリシス10)では,拡大郭清が標準郭清と比較して無再発生存期間を改善すると結論付けられている。最近,下腸間膜動脈起始部レベルまでの傍大動静脈領域および仙骨前面領域を含めた拡大リンパ節郭清が標準郭清に比して生存率向上に寄与するかを検討したRCT(LEA AUO AB 25/02 試験)の結果が報告された11)。しかし,標準郭清と比較して拡大郭清の優越性は示されなかった。現在,もう1 件のRCT(SWOG1011 試験)が進行中であり,その結果が待たれる。なお,拡大郭清の定義が試験によって様々な状態となっており,統一された定義が存在しないことにも注意が必要である。

従来,膀胱全摘除術は主に開腹膀胱全摘除術(open radical cystectomy:ORC)が実施されてきたが,低侵襲手術の普及に伴い,腹腔鏡下膀胱全摘除術(Laparoscopic radical cystectomy:LRC)とロボット支援腹腔鏡下膀胱全摘除術(Robot-assisted radical cystectomy:RARC)に関するエビデンスが充実してきた。ORC とLRC を比較したRCT が3 報,メタアナリシスが2 報存在する。総じて,周術期死亡率,合併症,短期再発率については,両者ほぼ同等の成績であり,出血量は明らかにLRC の方がORC より少なく,手術時間はLRC の方がORC より長い1213)。RARC とORC を比較したRCT は5 報あり,メタアナリシスも報告されている。RARC はORC と比較して,手術時間が長く,コストが高いが,入院期間が短く,出血量が少なく,高度な術期合併症の頻度が少ないとされている1415)。最近,ORC とRARC を直接比較したRCT RAZOR(randomized open vs robotic cystectomy)study の結果が報告された16)。2 年非再発生存率においてRARC のORC に対する非劣性が明らかになり,これまで不明だったRARC の腫瘍学的意義に関して,1 つのエビデンスが提供された。これら低侵襲膀胱全摘除術に関する最近の臨床研究の概要に関しては,CQ17 を参照されたい。

MIBC の標準治療は膀胱全摘除術とされているが,その5 年全生存率は約50%程度にとどまるため12),治療成績向上の目的で周術期化学療法の検討がされてきた。シスプラチンベースの術前化学療法(ネオアジュバント療法)は複数のRCT において生存期間延長効果を有することが証明されている17〜19)。北村らの報告でも,日本人患者においてその有用性が示されている20)。しかし,腎機能低下などの理由でシスプラチンベースの化学療法が適応とならない症例に対する術前化学療法に関するエビデンスは乏しく,その臨床的意義は確立されていない。術後化学療法(アジュバント療法)に関しては,その有用性を支持するエビデンスが乏しかったが,EORTC 30994 試験21)およびプロペンシティスコア・マッチング法を用いた検討22)から,術前化学療法未施行のpT3-4 and/or pN+に対するシスプラチンベースの術後化学療法の有効性を示唆する報告もなされている。

MIBC のうち,尿路上皮癌に対する術前化学療法のエビデンスは充実しているが,micropapillary,neuroendocrine,squamous cell carcinoma,sarcomatoid,adenocarcinoma などの尿路上皮癌亜型に関するエビデンスは乏しい。米国National Cancer Data Base に登録された症例の中で,膀胱全摘除術を受けた尿路上皮癌亜型2,018 例の検討では,術前化学療法による全生存率改善効果はneuroendocrine 腫瘍にのみ認められたと報告している23)

現在,国内で実施されている主な尿路変向術は,尿管皮膚瘻造設術,回腸導管造設術,新膀胱造設術などである。尿管皮膚瘻造設術は,回腸導管造設術と比較して手術時間と入院期間が短く,合併症発生率が低いため24),高齢者や合併症を有する症例に用いられる傾向がある25)。回腸導管造設術は,安定した転帰が期待できる確立された尿路変向術であるが,経過が長くなるとストーマや上部尿路の合併症が20〜30%程度発生する26)。前部尿道に腫瘍性病変を有する場合や吻合する尿道断端に腫瘍が存在する場合は尿道摘除が必要であり,自排尿型新膀胱造設術の適応とはならない。また,前立腺部尿道に腫瘍性病変が存在する場合も自排尿型新膀胱造設術の適応は慎重に検討すべきである。海外の中核施設では,膀胱全摘除術後の尿路変向術として,男性の80%,女性の50%で自排尿型新膀胱が選択されているが27),最近の米国での傾向は自排尿型新膀胱を選択する頻度は減少傾向とする報告もある。尿路変向術の種類によって腫瘍制御が影響を受けることはないが,二次的な尿道再発率は自排尿型新膀胱で低い傾向であることが報告されている。QOL に関しては,自排尿型新膀胱と回腸導管のRCT は存在せず,21 編の論文のシステマティックレビューではわずかに自排尿型新膀胱が良好であったと報告されている28)。膀胱全摘除術後の尿路変向術の選択に際しては,上記の情報をふまえて,患者の医学的要素,家庭や社会的背景を考慮しながら,患者とその家族,医療スタッフと十分な意見交換をして決定していくことが重要である。

社会の急速な高齢化に対応して,高齢者・フレイル患者に対する膀胱全摘除術の適応も重要な課題である。60 歳以下の患者に対し80 歳以上の患者では膀胱全摘術後90 日以内周術期死亡率が有意に上昇し,全生存率・癌特異的生存率も年齢とともに低下するというシステマティックレビューの結果が報告されている29)。高齢者やフレイル患者の定義に関しても確立されたものはないが,その治療に際しては慎重な配慮が求められる。現時点では,合併症のない全身状態良好な高齢者に対する膀胱全摘除術は推奨されるが,フレイル患者のための術前評価法は確立されておらず,その適応に関しては個々の症例で慎重に検討する必要がある。

高齢者や合併症を有する患者の増加,そしてQOL 重視の治療への関心が高まり,膀胱温存療法のエビデンスも充実してきた。膀胱温存の手法には,TURBT,シスプラチンを中心とした化学療法,および,放射線療法があり,積極的に膀胱温存を図るにはこれらを併用した集学的治療(Multi-, or Tri-modality therapy)を行うのが一般的である3031)。膀胱全摘除術と膀胱温存療法を直接比較したRCT はまだないが,複数の後ろ向き試験やプロペンシティスコア・マッチング法を用いた直接比較解析では5 年生存率に有意差を認めなかった32)。集学的治療による膀胱温存療法は高齢者,肝疾患,呼吸器疾患,心不全などの基礎疾患のため膀胱全摘除術が適応にならない症例,あるいは,本人が希望しない症例には治療選択肢の1 つとして検討されるべきである。現在行われている膀胱温存療法には多くの種類があり,治療法の詳細に関してはCQ18 を参照されたい。

2017 年にAJCC Cancer Staging Manual 第8 版が公表され,膀胱癌の病期分類が改訂された33)。第7 版までのStage Ⅲは新たにⅢA とⅢB に分けられ,ⅢA にはT3a-4aN0M0 およびT1-4aN1M0 が含まれ,ⅢB はT1-T4aN2 or N3M0 と定義されている。Stage Ⅲに骨盤リンパ節転移を有する症例が含まれることになるが,今回の膀胱癌診療ガイドライン改訂版では第7 版の分類に従い骨盤リンパ節転移を有する症例はⅥ.StageⅣ膀胱癌の治療で記述しているのでそちらを参照いただきたい。今後は,骨盤リンパ節転移を有する症例を含めたMIBC に対する標準治療の検討を行う必要がある。

参考文献

1)
Stein JP, Lieskovsky G, Cote R, et al:Radical cystectomy in the treatment of invasive bladder cancer:long-term results in 1,054 patients. J Clin Oncol 19:666–675, 2001
2)
Gore JL, Litwin MS, Lai J, et al:Use of radical cystectomy for patients with invasive bladder cancer. J Natl Cancer Inst 102:802-811, 2010
3)
Gakis G, Black PC, Bochner BH, et al:Systematic Review on the Fate of the Remnant Urothelium after Radical Cystectomy. Eur Urol 71:545-557, 2017
4)
Hernandez V, Espinos EL, Dunn J, et al:Oncological and functional outcomes of sexual function-preserving cystectomy compared with standard radical cystectomy in men:A systematic review. Urol Oncol 35:539.e17-539.e29, 2017
5)
Ali-El-Dein B, Mosbah A, Osman Y, et al:Preservation of the internal genital organs during radical cystectomy in selected women with bladder cancer:a report on 15 cases with long term follow-up. Eur J Surg Oncol 39:358-364, 2013
6)
Smith AB, Crowell K, Woods ME, et al:Functional Outcomes Following Radical Cystectomy in Women with Bladder Cancer:A Systematic Review. Eur Urol Focus 3:136-143, 2017
7)
Niver BE, Daneshmand S and Satkunasivam R:Female reproductive organ-sparing radical cystectomy:contemporary indications, techniques and outcomes. Curr Opin Urol 25:105-110, 2015
8)
Avulova S and Chang SS:Role and Indications of Organ-Sparing “Radical” Cystectomy:The Importance of Careful Patient Selection and Counseling. Urol Clin North Am 45:199-214, 2018
9)
Bruins HM, Veskimae E, Hernandez V, et al:The impact of the extent of lymphadenectomy on oncologic outcomes in patients undergoing radical cystectomy for bladder cancer:a systematic review. Eur Urol 66:1065-1077, 2014
10)
Bi L, Huang H, Fan X, et al:Extended vs non-extended pelvic lymph node dissection and their influence on recurrence-free survival in patients undergoing radical cystectomy for bladder cancer:a systematic review and meta-analysis of comparative studies. BJU int 113:E39-48, 2014
11)
Gschwend JE, Heck MM, Lehmann J, et al:Extended Versus Limited Lymph Node Dissection in Bladder Cancer Patients Undergoing Radical Cystectomy:Survival Results from a Prospective, Randomized Trial. Eur Urol 75:604-611, 2019
12)
Aboumarzouk OM, Hughes O, Narahari K, Drewa T, Chlosta PL and Kynaston H:Safety and feasibility of laparoscopic radical cystectomy for the treatment of bladder cancer. J Endourol 27:1083-1095, 2013
13)
Tang K, Li H, Xia D, et al:Laparoscopic versus open radical cystectomy in bladder cancer:a systematic review and meta-analysis of comparative studies. PLoS One 9:e95667, 2014
14)
Novara G, Catto JW, Wilson T, et al:Systematic review and cumulative analysis of perioperative outcomes and complications after robot-assisted radical cystectomy. Eur Urol 67:376–401, 2015
15)
Sathianathen NJ, Kalapara A, Frydenberg M, et al:Robotic Assisted Radical Cystectomy vs Open Radical Cystectomy:Systematic Review and Meta-Analysis. J Urol 201:715-720, 2019
16)
Parekh DJ, Reis IM, Castle EP, et al:Robot-assisted radical cystectomy versus open radical cystectomy in patients with bladder cancer(RAZOR):an open-label, randomised, phase 3, non-inferiority trial. Lancet 391:2525-2536, 2018
17)
Grossman HB, Natale RB, Tangen CM, et al:Neoadjuvant chemotherapy plus cystectomy compared with cystectomy alone for locally advanced bladder cancer. N Engl J Med 349:859–866, 2003
18)
Griffiths G, Hall R, Sylvester R, et al:International phase Ⅲ trial assessing neoadjuvant cisplatin, methotrexate, and vinblastine chemotherapy for muscle-invasive bladder cancer:long-term results of the BA06 30894 trial. J Clin Oncol 29:2171–2177, 2011
19)
Advanced Bladder Cancer(ABC)Meta-analysis Collaboration:Neoadjuvant chemotherapy in invasive bladder cancer:update of a systematic review and meta-analysis of individual patient data advanced bladder cancer(ABC)meta-analysis collaboration. Eur Urol 48:202–205, 2005
20)
Kitamura H, Tsukamoto T, Shibata T, et al:Randomised phase Ⅲ study of neoadjuvant chemotherapy with methotrexate, doxorubicin, vinblastine and cisplatin followed by radical cystectomy compared with radical cystectomy alone for muscle-invasive bladder cancer:Japan Clinical Oncology Group Study JCOG0209. Ann Oncol 25:1192-1198, 2014
21)
Sternberg CN, Skoneczna I, Kerst JM, et al:Immediate versus deferred chemotherapy after radical cystectomy in patients with pT3-pT4 or N+ M0 urothelial carcinoma of the bladder(EORTC 30994):an intergroup, open-label, randomised phase 3 trial. Lancet Oncol 16:76–86, 2015
22)
Galsky MD, Stensland KD, Moshier E, et al:Effectiveness of Adjuvant Chemotherapy for Locally Advanced Bladder Cancer. J Clin Oncol 34:825-832, 2016
23)
Vetterlein MW, Wankowicz SAM, Seisen T, et al:Neoadjuvant chemotherapy prior to radical cystectomy for muscle-invasive bladder cancer with variant histology. Cancer 123:4346-4355, 2017
24)
Longo N, Imbimbo C, Fusco F, et al:Complications and quality of life in elderly patients with several comorbidities undergoing cutaneous ureterostomy with single stoma or ileal conduit after radical cystectomy. BJU Int 118:521-526, 2016
25)
Kilciler M, Bedir S, Erdemir F, Zeybek N, Erten K and Ozgok Y:Comparison of ileal conduit and transureteroureterostomy with ureterocutaneostomy urinary diversion. Urol Int 77:245-250, 2006
26)
Madersbacher S, Schmidt J, Eberle JM, et al:Long-term outcome of ileal conduit diversion. J Urol 169:985–990, 2003
27)
Hautmann RE, de Petriconi RC, Pfeiffer C and Volkmer BG:Radical cystectomy for urothelial carcinoma of the bladder without neoadjuvant or adjuvant therapy:long-term results in 1100 patients. Eur Urol 61:1039-1047, 2012
28)
Ali AS, Hayes MC, Birch B, Dudderidge T and Somani BK:Health related quality of life(HRQoL)after cystectomy:comparison between orthotopic neobladder and ileal conduit diversion. Eur J Surg Oncol 41:295-299, 2015
29)
Fonteyne V, Ost P, Bellmunt J, et al:Curative Treatment for Muscle Invasive Bladder Cancer in Elderly Patients:A Systematic Review. Eur Urol 73:40-50, 2018
30)
James ND, Hussain SA, Hall E, et al:Radiotherapy with or without chemotherapy in muscle-invasive bladder cancer. N Engl J Med 366:1477-1488, 2012
31)
Ploussard G, Daneshmand S, Efstathiou JA, et al:Critical analysis of bladder sparing with trimodal therapy in muscle-invasive bladder cancer:a systematic review. Eur Urol 66:120-137, 2014
32)
Kulkarni GS, Hermanns T, Wei Y, et al:Propensity Score Analysis of Radical Cystectomy Versus Bladder-Sparing Trimodal Therapy in the Setting of a Multidisciplinary Bladder Cancer Clinic. J Clin Oncol 35:2299-2305, 2017
33)
Brierley JD, Gospodarowicz MK and Wittekind C:TNM Classification of Malignant Tumours. 8th ed, John Wiley & Sons, ltd, 2017

CQ14
膀胱全摘除術における尿道摘除は推奨されるか?

エビデンスの確実性C
新膀胱造設を考慮しない膀胱全摘除術の場合,尿道摘除を考慮することが推奨される(推奨の強さ2)
エビデンスの確実性C
また,新膀胱造設による尿道温存を行う場合,不利益が生じる危険性を説明して行うことが推奨される(推奨の強さ1)

解 説

2016 年EAU ガイドライン1)では,新膀胱造設の禁忌は,術前前立腺部尿道または術中尿道吻合部断端に癌が存在する場合となっている。また尿道摘除を行わず,尿道再発した症例の癌なし生存率は10〜20%と予後は不良である23)。新膀胱造設による尿道温存例またはその他の尿路変向法例の尿道非摘除症例における尿道再発のリスクを検討し,尿道摘除の可否を検討することは臨床上極めて重要である。

システマティックレビューによる検討では,膀胱全摘除術後の尿道再発の頻発時期と頻度はそれぞれ2 年以内,4〜10%程度で,男性は女性に比較して高く,その頻度は約4%と報告されている24)。尿道再発のリスクがあると考えられる場合には尿道を温存しなかったとする報告で,尿道温存をした症例のうち男性は4%程度,平均30 ヵ月程度に尿道再発があるとされている5〜10)。一方,尿道温存の条件が不明確な症例では男性が6%,女性でも2.6%に再発があったと報告されており1112),適応条件を厳しくした報告に比べ明らかに早期,高率に尿道再発を認めている。また新膀胱により尿道温存した場合の尿道再発の頻度は約2%ながら,他の尿路変向法を選択し尿道摘除を行わなかった場合は約6%と明らかに高い61113)

尿道再発のリスクをレビューした文献によると,男性では前立腺部尿道,女性では膀胱頸部に腫瘍が存在,膀胱全摘除術時の遺残尿道(尿道非摘除),術中尿道断端組織での癌陽性,併発CIS の存在,NMIBC の再発による膀胱全摘などがリスク因子であると報告されている241415)。また前立腺部尿道に癌が存在するリスク因子としては多発腫瘍,再発症例16),非乳頭状腫瘍17),膀胱CIS の存在,三角部の腫瘍18)が報告されており,尿道温存を選択する場合には術前の丁寧な評価が必要である。

尿道の評価方法としては術前の精阜付近5 時7 時方向の尿道生検19)や前立腺部尿道の経尿道的切除17),尿道断端の術中迅速病理診断の有用性が報告されている2021)。一方,術前の前立腺部尿道の評価は,同部に発生した癌の診断に優れるものの,膀胱原発尿路上皮癌の浸潤の診断には不適であるという報告19)や術中尿道断端癌陽性に対する術前評価の陽性的中率は,わずか6.9%(陰性的中率は99.5%)であったとの報告もある22)。同様の結果は前回のガイドラインで引用された研究23)にもあり,術前前立腺部尿道に癌が検出されても吻合部尿道断端病理結果とは乖離があり,新膀胱作成をはじめから除外すべきではないという意見123)にも妥当性があると思われる。

また,術中迅速診断結果を最終病理診断と比較した報告では,陰性および陽性的中率はそれぞれ89〜100%,83〜93%であるが2024),術中迅速診断が偽陰性であった症例も尿道再発をきたさなかったとの報告20)もあり,術中迅速診断が陰性であればおおむね問題はないようである202124)

尿道温存または尿道非摘除症例に対する定期的経過観察の是非は,議論の分かれるところであるが,定期的観察により無症候性再発を早期発見することは症候性再発に比べ,予後を改善するとする報告が多い2526)。定期検査の方法としては自然尿細胞診,あるいは洗浄細胞診が最も有用であるとされている32728)

以上より,根治が期待でき,尿道吻合を行わない尿路変向においては尿道摘除が推奨される。また新膀胱造設による尿道温存する場合には,頻度は低いがその不利益の危険性について症例ごとに説明し,適応を考慮する必要がある。

参考文献

1)
Witjes AJ, Lebret T, Compérat EM, et al:Updated 2016 EAU guidelines on muscle-invasive and metastatic bladder cancer. Eur Urol 71:462–475, 2017
2)
Gakis G, Black PC, Bochner BH, et al:Systematic Review on the Fate of the Remnant Urothelium after Radical Cystectomy. Eur Urol 71:545-557, 2017
3)
Pichler R, Tulchiner G, Oberaigner W, et al:Effect of Urinary Cytology for Detecting Recurrence in Remnant Urothelium After Radical Cystectomy:Insights From a 10-year Cytology Database. Clin Genitourin Cancer 15:e783-e791, 2017
4)
Chan Y, Fisher P, Tilki D and Evans CP:Urethral recurrence after cystectomy:current preventative measures, diagnosis and management. BJU Int 117:563-569, 2016
5)
Perlis N, Turker P, Bostrom PJ, et al:Upper urinary tract and urethral recurrences following radical cystectomy:review of risk factors and outcomes between centres with different follow-up protocols. World J Urol 31:161-167, 2013
6)
Huguet J, Monllau V, Sabaté S, et al:Diagnosis, risk factors, and outcome of urethral recurrences following radical cystectomy for bladder cancer in 729 male patients. Eur Urol 53:785-792, 2008
7)
Zhou X, Ji H, Zhang H, Xiong T, Pan J and Chen Z:Treatment and outcomes of urethral recurrence after orthotopic neobladder replacement in patients with bladder cancer – practice in a single centre. J Int Med Res 46:3928-3937, 2018
8)
Stein JP, Penson DF, Lee C, Cai J, Miranda G and Skinner DG:Long-term oncological outcomes in women undergoing radical cystectomy and orthotopic diversion for bladder cancer. J Urol 181:2052-2058, 2009
9)
Gakis G, Ali-El-Dein B, Babjuk M, et al:Urethral recurrence in women with orthotopic bladder substitutes:A multi-institutional study. Urol Oncol 33:204. e17-23, 2015
10)
Ali-El-Dein B:Oncological outcome after radical cystectomy and orthotopic bladder substitution in women. Eur J Surg Oncol 35:320-325, 2009
11)
Boorjian SA, Kim SP, Weight CJ, Cheville JC, Thapa P and Frank I:Risk factors and outcomes of urethral recurrence following radical cystectomy. Eur Urol 60:1266-1272, 2011
12)
Hrbáček J, Macek P, Ali-El-Dein B, et al:Treatment and outcomes of urethral recurrence of urinary bladder cancer in women after radical cystectomy and orthotopic neobladder:a series of 12 cases. Urol Int 94:45-49, 2015
13)
Balci U, Dogantekin E, Özer K, Görgel SN, Girgin C and Dincel C:Patterns, risks and outcomes of urethral recurrence after radical cystectomy for urothelial cancer; over 20 year single center experience. Int J Surg 13:148-151, 2015
14)
Li X, Wang W, Zhu G, He W and Gou X:Risk factors, follow-up, and treatment of urethral recurrence following radical cystectomy and urinary diversion for bladder cancer:a meta-analysis of 9498 patients. Oncotarget 9:2782-2796, 2018
15)
Huguet J:Follow-up after radical cystectomy based on patterns of tumour recurrence and its risk factors. Actas Urol Esp 37:376-382, 2013
16)
Mazzucchelli R, Barbisan F, Santinelli A, et al:Prediction of prostatic involvement by urothelial carcinoma in radical cystoprostatectomy for bladder cancer. Urology 74:385-390, 2009
17)
Ichihara K, Kitamura H, Masumori N, Fukuta F and Tsukamoto T:Transurethral prostate biopsy before radical cystectomy remains clinically relevant for decision-making on urethrectomy in patients with bladder cancer. Int J Clin Oncol 18:75-80, 2013
18)
Patel SG, Cookson MS, Barocas DA, Clark PE, Smith JA Jr and Chang SS:Risk factors for urothelial carcinoma of the prostate in patients undergoing radical cystoprostatectomy for bladder cancer. BJU Int 104:934-937, 2009
19)
von Rundstedt FC, Lerner SP, Godoy G, et al:Usefulness of transurethral biopsy for staging the prostatic urethra before radical cystectomy. J Urol 193:58-63, 2015
20)
Osman Y, Mansour A, El-Tabey N, et al:Value of routine frozen section analysis of urethral margin in male patients undergoing radical cystectomy in predicting prostatic involvement. Int Urol Nephrol 44:1721-1725, 2012
21)
Hautmann RE, Volkmer BG, Schumacher MC, Gschwend JE and Studer UE:Long-term results of standard procedures in urology:the ileal neobladder. World J Urol 24:305-314, 2006
22)
von Rundstedt FC, Mata DA, Shen S, Li Y, Godoy G and Lerner SP:Transurethral biopsy of the prostatic urethra is associated with final apical margin status at radical cystoprostatectomy. J Clin Urol 9:404-408, 2016
23)
Kassouf W, Spiess PE, Brown GA, et al:Prostatic urethral biopsy has limited usefulness in counseling patients regarding final urethral margin status during orthotopic neobladder reconstruction. J Urol 180:164-167, 2008
24)
Kates M, Ball MW, Chappidi MR, et al:Accuracy of urethral frozen section during radical cystectomy for bladder cancer. Urol Oncol 34:532. e1-532, 2016
25)
Stewart-Merrill SB, Alahdab F, Benkhadra K, et al:Oncologic surveillance in bladder cancer following radical cystectomy:A systematic review and meta-analysis. Urol Oncol 34:236. e13-21, 2016
26)
Giannarini G, Kessler TM, Thoeny HC, Nguyen DP, Meissner C and Studer UE:Do patients benefit from routine follow-up to detect recurrences after radical cystectomy and ileal orthotopic bladder substitution? Eur Urol 58:486-494, 2010
27)
Xing J, Roy S, Monaco SE and Pantanowitz L:Cytohistologic correlation of recurrent urothelial carcinoma detected in urinary diversion specimens. Cancer Cytopathol 125:120-127, 2017
28)
Chen H, Liu L, Pambuccian SE, Barkan GA, Quek ML and Wojcik EM:Urine cytology in monitoring recurrence in urothelial carcinoma after radical cystectomy and urinary diversion. Cancer Cytopathol 124:273-278, 2016

CQ15
膀胱全摘除術において神経温存手術は推奨されるか?

エビデンスの確実性D
神経温存手術の適応基準はなく,選択された症例に対して行うことが推奨される(推奨の強さ2)

解 説

根治的膀胱摘除術における神経温存手術の目的は,癌に対する手術の根治性を損なうことなく,性機能温存や尿道吻合を行う尿路変向術の尿禁制の改善に寄与し,QOL の向上に資することである。実際,従来の神経血管束を温存する方が非温存より性機能の回復がよいとされてきた1)。また尿道吻合を行う尿路変向術においては男女とも尿禁制が良好であることが報告されている23)。したがって,根治的摘除が担保されれば神経温存手術が適応になる場合があると考えられる。NMIBC において膀胱全摘除術を行う場合には神経温存術式は適応を検討できると思われるが,MIBC に対して温存して問題ないとされる基準があるか検討した。また近年報告が多い,前立腺,あるいは前立腺被膜,精囊,婦人科臓器を温存する手術が適応できるかも検討した。

神経温存手術についてSchoenberg4)らは,T1〜T3b を対象とし術前の検査で神経浸潤が疑われる症例を除き,側方に肉眼的な浸潤がない101 例の患者に神経温存を行ったが,5 年局所再発率は5%,5 年および10 年全生存率はそれぞれ67%,54%と非温存手術の場合とは遜色がなかったと報告している。Kessler ら2)も根治性を損なわなければ適応があるとし,331 人に対して,膀胱癌が頂部,前壁にある場合,あるいはNMIBC で多発する症例に対して両側の神経温存,片側に癌が認められる場合には対側の神経温存のみを行った。その結果,両側温存では6 割,片側で温存は3 割が,術後勃起機能が回復し,良好な術後,尿禁制が得られた。局所再発率はpT2 以下N0 では3%,pT3-4N0 で11%,pN+で13%とこれまでの非温存と違いがないと報告している。

しかし,これらの選択基準についての妥当性に関する検討は報告されていない。前述の文献1 では神経温存をしなかった症例の選択基準は様々で,術者の判断,大きな腫瘍,膀胱頸部の浸潤癌,骨盤内の癒着,神経血管束を温存することを妨げる術中のトラブルなどとしている。臨床的に膀胱頂部,あるいは前壁にMIBCの存在が疑われる場合,肉眼的な浸潤の有無などの条件で,温存の有無を比較した文献は報告されていない。

女性において神経血管束温存,非温存のランダム化試験が報告されているが,温存が7 人,非温存が6 人という少数例の検討で,女性の性機能改善のため温存手術を推奨しているが,症例数が少なすぎて結論を導くとこは不可能と思われる5)

根治的膀胱全摘除術が必要な病態においては神経温存部位による癌の取り残し以上に,原発巣での深達度やリンパ節転移の方が予後に関与するとも考えられる。したがって性機能温存を望む症例で尿道吻合を予定する場合には神経温存を意図しても良いのかもしれない。しかし神経温存を前向きに検討したランダム化試験はなく根治性を損なわないとする適応基準は確立していない。

一方で従来の神経温存術式ではなく,前立腺,前立腺被膜,精囊,婦人科臓器を温存する手術法の報告が近年,散見される。これに対して2016 年のEAU ガイドライン6)では,膀胱頸部浸潤,前立腺部尿道浸潤,尿道に腫瘍がないT2 以下の症例に対して適応があるものの,注意深い選択が必要であり標準治療ではないとしている。また女性では男性よりさらにエビデンスが不足しており,神経温存に関する成績は不明である。これらの文献の多くは性機能,排尿機能の温存は良好で,腫瘍学的アウトカムに遜色がないとしているが,一部には劣るとの報告78)もあり,それらをレビューした文献910)では,いずれも選択基準にバイアスがあり,数も少なく,成績も短期であり,結論は限局性でよく選択された症例のみにすべきとしている。中にはランダム化試験の報告11)もあるが40 人をランダム化したに過ぎず,結論は限定的である。筋層浸潤癌を含む症例で実施した報告もあるがやはり少数例で,選択基準には強いバイアスがあると思われ12〜15),結論を導くことは困難である。

また近年ロボット支援と腹腔鏡下と開腹手術による治療成績の違いが報告されるようになっているが,現状ではロボット支援手術はまだエビデンスが不足している1617)

結論として,筋層浸潤癌において神経温存手術を試みても良いが,その選択基準は未だに確立していないといえる。前立腺や婦人科臓器を温存する方法についても筋層浸潤癌での適応を推奨するエビデンスはない。

参考文献

1)
Hekal IA, El-Bahnasawy MS, Mosbah A, El-Assmy A and Shaaban A:Recoverability of erectile function in post-radical cystectomy patients:subjective and objective evaluations. Eur Urol 55:275-283, 2009
2)
Kessler TM, Burkhard FC, Perimenis P, et al:Attemted nerve sparing surgery and age have a significant effect on urinary continence and erectile function after radical cystoprostatectomy and ileal orthotopic bladder substitution. J Urol 172:1323-1327, 2004
3)
Stenzl A, Jarolin L, Coloby P, et al:Urethra-sparing cystectomy and orthotopic urinary diversion in women with malignant pelvic tumors. Cancer 92:1864-1871, 2001
4)
Schoenberg MP, Walsh PC, Breazeale DR, Marshall FF, Mostwin JL and Brendler CB:Local recurrence and survival following nerve sparing radical cystoprostatectomy for bladder cancer:10-year follow up. J Urol 155:490-494, 1996
5)
Bhatt A, Nandipati K, Dhar N, et al:Neurovascular preservation in orthotopic cystectomy:impact on female sexual function. Urology 67:742-745, 2006
6)
Witjes AJ, Lebret T, Compérat EM, et al:Updated 2016 EAU guidelines on muscle-invasive and metastatic bladder cancer. Eur Urol 71:462–475, 2017
7)
Simone G, Papalia R, Leonardo C, et al:Prostatic capsule and seminal vesicle-sparing cystectomy:improved functional results, inferior oncologic outcome. Urology 72:162-166, 2008
8)
Stein JP, Hautmann RE, Penson D and Skinner DG:Prostate-sparing cystectomy:a review of the oncologic and functional outcomes. Contraindicated in patients with bladder cancer. Urol Oncol 27:466-472, 2009
9)
Hernandez V, Espinos EL, Dunn J, et al:Oncological and functional outcomes of sexual function-preserving cystectomy compared with standard radical cystectomy in men:A systematic review. Urol Oncol 35:539.e17-539.e29, 2017
10)
Veskimäe E, Neuzillet Y, Rouanne M, et al:Systematic review of the oncological and functional outcomes of pelvic organ-preserving radical cystectomy(RC)compared with standard RC in women who undergo curative surgery and orthotopic neobladder substitution for bladder cancer. BJU Int 120:12-24, 2017
11)
Jacobs BL, Daignault S, Lee CT, et al:Prostate capsule sparing versus nerve sparing radical cystectomy for bladder cancer:results of a randomized, controlled trial. J Urol 193:64-70, 2015
12)
Voskuilen CS, Fransen van de Putte EE, Perez-Reggeti JI, et al:Prostate sparing cystectomy for bladder cancer:A two-center study. Eur J Surg Oncol 44:1446-1452, 2018
13)
Wishahi M and Elganozoury H:Survival up to 5-15 years in young women following genital sparing radical cystectomy and neobladder:oncological outcome and quality of life. Single-surgeon and single-institution experience. Cent European J Urol 68:141-145, 2015
14)
Muto G, Collura D, Rosso R, Giacobbe A, Muto GL and Castelli E:Seminal-sparing cystectomy:technical evolution and results over a 20-year period. Urology 83:856-861, 2014
15)
Dall’Oglio MF, Antunes AA, Crippa A, Nesrallah AJ and Srougi M:Long-term outcomes of radical cystectomy with preservation of prostatic capsule. Int Urol Nephrol 42:951-957, 2010
16)
Yuh B, Wilson T, Bochner B, et al:Systematic review and cumulative analysis of oncologic and functional outcomes after robot-assisted radical cystectomy. Eur Urol 67:402-422, 2015
17)
Orvieto MA, DeCastro GJ, Trinh QD, et al:Oncological and functional outcomes after robot-assisted radical cystectomy:critical review of current status. Urology 78:977-984, 2011

CQ16
女性の膀胱全摘除術において婦人科臓器温存手術は推奨されるか?

エビデンスの確実性C
T2 以下で,膀胱頸部や尿道に腫瘍を認めない場合,婦人科臓器温存手術を考慮することが推奨される(推奨の強さ2)

解 説

女性の膀胱全摘除術は原則として,膀胱・子宮・膣前壁を一塊に摘除することが推奨されてきたが,女性生殖器を温存しても予後に影響しないとする報告もある1〜7)。根治的膀胱全摘除と新膀胱造設術後の性機能や排尿機能障害の改善を目的として,婦人科臓器温存手術が考慮されるようになってきた1〜15)

婦人科臓器温存膀胱全摘除術後の性機能を評価した論文は少ないが,術後性機能の満足度スコアの中央値は88.5(80〜100)% で,通常の膀胱全摘除術と比較して良好との報告がある2〜613)。さらに,日中および夜間の尿禁制率はそれぞれ58〜100%,42〜100%,自己導尿率は9.5〜78%と,比較的良好な排尿機能が報告されている2〜711)。また,婦人科臓器温存が尿閉の予防となったという報告や10),子宮温存と神経温存を行った方が非温存と比較して有意に尿禁制率が高率であったという報告もある15)

治療成績に関しては,3〜5 年の癌特異的生存率は70〜100%,全生存率は65〜100%と報告され2〜7)。摘出標本の病理組織学的断端陽性率は0〜13.7%,局所再発は0〜13%,遠隔転移は0〜16.7%と比較的良好な成績であった2〜7)。周術期成績に関しては,75 歳以上の患者での傾向スコアマッチング解析で,婦人科臓器温存膀胱全摘除術の方が通常の膀胱全摘に比べて手術時間が短く,出血量が少なく,腸管の回復が早かったという報告もある1)

以上の結果より,婦人科臓器温存膀胱全摘除術は通常の膀胱全摘除術と比較して治療成績は同等で,性機能や排尿機能は良好である可能性が推定される211)。しかし,これらの報告は後ろ向きの観察研究であり,症例数も少なく,評価項目等も論文間で同一でないため,前向きの大規模比較試験の結果が出るまでは標準治療とはいえない2111314)。婦人科臓器温存手術は標準治療外であることを了承した上で,深達度T2 以下の限局癌で,膀胱頸部や尿道に腫瘍を認めず,婦人科臓器温存を希望される症例に対しては考慮してもよいと思われる914)

根治的膀胱全摘除術時の卵巣摘除は,卵巣疾患のリスクを低下させ,卵巣への膀胱癌の転移の予防となり,高齢者の場合はQOL への影響が比較的少ないため合理的である12)ものの,卵巣摘除による骨粗鬆症,心臓血管疾患等のリスク上昇や,卵巣を温存しても卵管のみ切除することで卵巣癌の発生のリスクを下げるとの報告もあり8),さらなる今後の検討が必要である。

参考文献

1)
Bai S, Yao Z, Zhu X, et al:The Feasibility and Safety of Reproductive Organ Preserving Radical Cystectomy for Elderly Female Patients With Muscle-Invasive Bladder Cancer:A Retrospective Propensity Score-matched Study. Urology 125:138-145, 2019
2)
Veskimäe E, Neuzillet Y, Rouanne M, et al:Systematic review of the oncological and functional outcomes of pelvic organ-preserving radical cystectomy(RC)compared with standard RC in women who undergo curative surgery and orthotopic neobladder substitution for bladder cancer. BJU Int 120:12-24, 2017
3)
Moursy EE, Eldahshoursy MZ, Gamal WM and Badawy AA:Orthotopic genital sparing radical cystectomy in pre-menopausal women with muscle-invasive bladder carcinoma:A prospective study. Indian J Urol 32:65-70, 2016
4)
Roshdy S, Senbel A, Khater A, et al:Genital Sparing Cystectomy for Female Bladder Cancer and its Functional Outcome; a Seven Years’ Experience with 24 Cases. Indian J Surg Oncol 7:307-311, 2016
5)
Wishahi M and Elganozoury H:Survival up to 5-15 years in young women following genital sparing radical cystectomy and neobladder:oncological outcome and quality of life. Single-surgeon and single-institution experience. Cent European J Urol 68:141-145, 2015
6)
Ali-El-Dein B, Mosbah A, Osman Y, et al:Preservation of the internal genital organs during radical cystectomy in selected women with bladder cancer:a report on 15 cases with long term follow-up. Eur J Surg Oncol 39:358-364, 2013
7)
Koie T, Hatakeyama S, Yoneyama T, Hashimoto Y, Kamimura N and Ohyama C:Uterus-, fallopian tube-, ovary-, and vagina-sparing cystectomy followed by U-shaped ileal neobladder construction for female bladder cancer patients:oncological and functional outcomes. Urology 75:1499-1503, 2010
8)
Sussman RD, Han CJ, Marchalik D, et al:To oophorectomy or not to oophorectomy:Practice patterns among urologists treating bladder cancer. Urol Oncol 36:90.e1-90.e7, 2018
9)
Avulova S and Chang SS:Role and Indications of Organ-Sparing “Radical” Cystectomy:The Importance of Careful Patient Selection and Counseling. Urol Clin North Am 45:199-214, 2018
10)
Zahran MH, Eldemerdash Y, Taha DE, Sheir K, Shaaban AA and Ali-El-Dein B:Chronic urinary retention after radical cystectomy and orthotopic neobladder in women:Risk factors and relation to time. Urol Oncol 35:671.e11-671.e16, 2017
11)
Smith AB, Crowell K, Woods ME, et al:Functional Outcomes Following Radical Cystectomy in Women with Bladder Cancer:A Systematic Review. Eur Urol Focus 3:136-143, 2017
12)
Liedberg F, Jancke G, Sörenby A and Kannisto P:Should we Refrain from Performing Oophorectomy in Conjunction with Radical Cystectomy for Bladder Cancer? Eur Urol 71:851-853, 2017
13)
Zahran MH, Fahmy O, El-Hefnawy AS and Ali-El-Dein B:Female sexual dysfunction post radical cystectomy and urinary diversion. Climacteric 19:546-550, 2016
14)
Niver BE, Daneshmand S and Satkunasivam R:Female reproductive organ-sparing radical cystectomy:contemporary indications, techniques and outcomes. Curr Opin Urol 25:105-110, 2015
15)
Gross T, Meierhans Ruf SD, Meissner C, Ochsner K and Studer UE:Orthotopic ileal bladder substitution in women:factors influencing urinary incontinence and hypercontinence. Eur Urol 68:664-671, 2015

CQ17
腹腔鏡下/ ロボット支援腹腔鏡下膀胱全摘除術は推奨されるか?

エビデンスの確実性B
腹腔鏡下/ ロボット支援腹腔鏡下膀胱全摘除術は開放膀胱全摘除術よりも低侵襲で,同等の制癌効果が報告されており,考慮することが推奨される(推奨の強さ2)

解 説

MIBC に対する標準治療として,従来ORC が行われてきたが,低侵襲手術としてLRC とRARC に関する報告が増えてきた。ORC とLRC を比較したRCT が3 報1〜3),メタアナリシスが2 報45)存在する。総じて,周術期死亡率,合併症,短期再発率については,両者ほぼ同等の成績であり,出血量は明らかにLRC の方がORC より少なく,手術時間はLRC の方がORC より長いとされている。本邦でも2018 年4 月よりRARC が保険収載となり,急速に普及している。ORC は侵襲の大きい手術であり,周術期合併症や死亡率が高い。またMIBC も悪性度の高い疾患であるため,RARC の安全性と有効性を検証する複数のRCT の結果が報告されている。

RARC(21 例)とORC(20 例)を比較したRCT ではRARC はORC に比べ手術時間が長くなるものの,出血量の減少,消化管の早期回復,在院日数の短縮,鎮痛剤使用量の減少が認められたと報告されている6)。また前向き観察試験でもRARC(83 例)はORC(104 例)と比較し,グレード3 以上の合併症が少なかったと報告されている7)。しかし,データベースから多数症例をマッチングしてRARC(2,101 例)とORC(34,672 例)を比較した後ろ向き報告では,RARC はグレード2 以下の合併症や在院日数の短縮には寄与するものの,グレード3 以上の合併症は同等であり,手術時間とコスト面ではORC に劣ると報告された8)。さらに手術件数が多い施設(年間19 例以上),もしくは年間7 例以上膀胱全摘除術を行う術者ではRARC もORC も合併症は同等と報告している8)。RARC とORC 各群150 例を比較したRCT(RAZOR study)9)では,全グレードの合併症がRARC で67%,ORC で69%と同等であった。また,5 つのRCT から540 名を集め解析したメタアナリシス10)では,再発,グレード3 以上の合併症,QOL は両術式間に有意差はないが,輸血率の低さと在院日数に関してはRARC に優位性があると報告している。

制癌効果に関しては,RAZOR study において2 年の非再発生存率がRARC,ORC ともに72%と同等であったことからRARC のORC に対する非劣勢が明らかになり,これまで不明だったRARC の腫瘍学的意義に関して,1 つのエビデンスが提供された。

しかし,RARC とORC の再発形式に関してはさまざまな報告があり,一定の見解を提示するにはさらなるエビデンスの蓄積が必要である。したがって症例ごとに慎重に術式を検討する必要があると思われる。また,導入初期は合併症が増える可能性もあるため,年間症例数の少ない施設ではその導入には慎重に対応する必要があると思われる。

膀胱全摘除術後の尿路変向術を体腔内で行う術式(intracorporeal urinary diversion:ICUD) も行われているが, 体腔外で尿路変向を行う術式(extracorporeal urinary diversion:ECUD)との比較はまだ十分な検討がなされておらず,その有用性については明らかになっていない。ICUD の技術的高難度を指摘する報告が多いが,ICUD とECUD の手術成績や合併症を比較したRCT はなく,今後のエビデンスが待たれるところである。また,ORC におけるリンパ節郭清についても至適郭清範囲が定まっていないことから,RARC におけるリンパ節郭清の範囲に関しても今後の検討課題である。

参考文献

1)
Lin T, Fan X, Zhang C, et al:A prospective randomised controlled trial of laparoscopic vs open radical cystectomy for bladder cancer:perioperative and oncologic outcomes with 5-year follow-upT Lin et al. Br J Cancer 110:842-849, 2014
2)
Khan MS, Gan C, Ahmed K, et al:A Single-centre Early Phase Randomised Controlled Three-arm Trial of Open, Robotic, and Laparoscopic Radical Cystectomy(CORAL). Eur Urol 69:613-621, 2016
3)
Yong C, Daihui C and Bo Z:Laparoscopic versus open radical cystectomy for patients with bladder cancer over 75-year-old:a prospective randomized controlled trial. Oncotarget 8:26565-26572, 2017
4)
Aboumarzouk OM, Hughes O, Narahari K, Drewa T, Chlosta PL and Kynaston H:Safety and feasibility of laparoscopic radical cystectomy for the treatment of bladder cancer. J Endourol 27:1083-1095, 2013
5)
Tang K, Li H, Xia D, et al:Laparoscopic versus open radical cystectomy in bladder cancer:a systematic review and meta-analysis of comparative studies. PLoS One 9:e95667, 2014
6)
Nix J, Smith A, Kurpad R, Nielsen ME, Wallen EM and Pruthi RS:Prospective randomized controlled trial of robotic versus open radical cystectomy for bladder cancer:perioperative and pathologic results. Eur Urol 57:196-201, 2010
7)
Ng CK, Kauffman EC, Lee MM, et al:A comparison of postoperative complications in open versus robotic cystectomy. Eur Urol 57:274-281, 2010
8)
Leow JJ, Reese SW, Jiang W, et al:Propensity-matched comparison of morbidity and costs of open and robot-assisted radical cystectomies:a contemporary population-based analysis in the United States. Eur Urol 66:569-576, 2014
9)
Parekh DJ, Reis IM, Castle EP, et al:Robot-assisted radical cystectomy versus open radical cystectomy in patients with bladder cancer(RAZOR):an open-label, randomised, phase 3, non-inferiority trial. Lancet 391:2525-2536, 2018
10)
Sathianathen NJ, Kalapara A, Frydenberg M, et al:Robotic Assisted Radical Cystectomy vs Open Radical Cystectomy:Systematic Review and Meta-Analysis. J Urol 201:715-720, 2019

CQ18
筋層浸潤性膀胱癌(MIBC)に対して膀胱温存集学的治療は推奨されるか?

エビデンスの確実性C
選択された症例に対する治療として考慮することが推奨される(推奨の強さ2)

解 説

高齢化社会が進む中,年齢,パフォーマンスステータス(performance status:PS)低下,あるいは,心疾患などの基礎疾患がある症例,あるいは,身体的に問題がなくても本人・家族が膀胱全摘除術を拒否する場合もあり,膀胱温存療法のニーズは広がりつつある。膀胱温存の手法には,TURBT,シスプラチンを中心とした化学療法,および,放射線療法があり,積極的に膀胱温存を図るにはこれらを併用した集学的治療を行うのが一般的である1〜5)。適応に関しては,腫瘍深達度,悪性度,腫瘍径,腫瘍数,CIS の有無,および,水腎症の有無が治療成績において重要な因子で,深達度T3a 以下の限局癌(できればT2 以下),腫瘍径3cm 以下,そして,CIS や水腎症のない症例が望ましいとされている1〜5)

化学放射線治療は,米国放射線腫瘍研究グループ(Radiation Therapy Oncology Group:RTOG)による大規模臨床試験をはじめ,これまで多くの施設で施行されてきた治療法で6〜11),その治療成績はタキサン系薬剤やゲムシタビンあるいは5-FU を併用した多剤併用療法の導入によって徐々に向上し41011),2014 年に報告されたRTOG 前向き研究(8802,8903,9506,9706,9906,0233)の長期治療成績では5 年生存率は57% 12)と,膀胱全摘除術の治療成績とほぼ同等の結果であった13〜15)。また,膀胱全摘除術との優劣に関して直接比較した前向き臨床試験はないが,Zlotta らのプロペンシティ・マッチング法を用いた直接比較解析では5 年生存率に有意差を認めず(p=0.49)16),これまでに施行された複数の後ろ向き比較研究でも有意差を認めなかった1417)

さらに,近年本邦ではいくつかの施設が特殊な技術を駆使した治療法を用いて高いCR 誘導率(80%以上)と膀胱温存症例における長期生存率(5 年癌特異生存率70%以上)を報告しており18〜20)表1 に治療の概要と適応を示す),これらを総合的に考慮すれば,高齢者,肝・呼吸器・心不全などの基礎疾患のため膀胱全摘除術が適応にならない症例,あるいは,本人が希望しない症例には治療選択肢の1 つとして検討されるべきであると思われる。ただし,これらの治療は標準治療とは異なるため,適用する際にはそれぞれの治療法の特徴を理解し,十分なインフォームドコンセントを得て治療を決定することが肝要である。

表1
表1

18) 19) 19)

参考文献

1)
Munro NP, Sundaram SK, Weston PM, et al:A 10-year retrospective review of a nonrandomized cohort of 458 patients undergoing radical radiotherapy or cystectomy in Yorkshire, UK. Int J Radiat Oncol Biol Phys 77:119-124, 2010
2)
James ND, Hussain SA, Hall E, et al:Radiotherapy with or without chemotherapy in muscle-invasive bladder cancer. N Engl J Med 366:1477-1488, 2012
3)
Smith ZL, Christodouleas JP, Keefe SM, Malkowicz SB and Guzzo TJ:Bladder preservation in the treatment of muscle-invasive bladder cancer(MIBC):a review of the literature and a practical approach to therapy. BJU Int 112:13-25, 2013
4)
Ploussard G, Daneshmand S, Efstathiou JA, et al:Critical analysis of bladder sparing with trimodal therapy in muscle-invasive bladder cancer:a systematic review. Eur Urol 66:120-137, 2014
5)
Efstathiou JA, Spiegel DY, Shipley WU, et al:Long-term outcomes of selective bladder preservation by combined-modality therapy for invasive bladder cancer:the MGH experience. Eur Urol 61:705-711, 2012
6)
Tester W, Porter A, Asbell S, et al:Combined modality program with possible organ preservation for invasive bladder carcinoma:results of RTOG protocol 85-12. Int J Radiat Oncol Biol Phys 25:783-790, 1993
7)
Shipley WU, Winter KA, Kaufman DS, et al:Phase Ⅲ trial of neoadjuvant chemotherapy in patients with invasive bladder cancer treated with selective bladder preservation by combined radiation therapy and chemotherapy:initial results of Radiation Therapy Oncology Group 89-03. J Clin Oncol 16:3576-3583, 1998
8)
Kaufman DS, Winter KA, Shipley WU, et al:The initial results in muscle-invading bladder cancer of RTOG 95-06:phase I/Ⅱ trial of transurethral surgery plus radiation therapy with concurrent cisplatin and 5-fluorouracil followed by selective bladder preservation or cystectomy depending on the initial response. Oncologist 5:471-476, 2000
9)
Hagan MP, Winter KA, Kaufman DS, et al:RTOG 97-06:initial report of a phase I-Ⅱ trial of selective bladder conservation using TURBT, twice-daily accelerated irradiation sensitized with cisplatin, and adjuvant MCV combination chemotherapy. Int J Radiat Oncol Biol Phys 57:665-672, 2003
10)
Kaufman DS, Winter KA, Shipley WU, et al:Phase I-Ⅱ RTOG study(99-06)of patients with muscle-invasive bladder cancer undergoing transurethral surgery, paclitaxel, cisplatin, and twice-daily radiotherapy followed by selective bladder preservation or radical cystectomy and adjuvant chemotherapy. Urology 73:833-837, 2009
11)
Mitin T, Hunt D, Shipley WU, et al:Transurethral surgery and twice-daily radiation plus paclitaxel-cisplatin or fluorouracil-cisplatin with selective bladder preservation and adjuvant chemotherapy for patients with muscle invasive bladder cancer(RTOG 0233):a randomised multicentre phase 2 trial. Lancet Oncol 14:863-872, 2013
12)
Mak RH, Hunt D, Shipley WU, et al:Long-term outcomes in patients with muscle-invasive bladder cancer after selective bladder-preserving combined-modality therapy:a pooled analysis of Radiation Therapy Oncology Group protocols 8802, 8903, 9506, 9706, 9906, and 0233. J Clin Oncol 32:3801-3809, 2014
13)
Grossman HB, Natale RB, Tangen CM, et al:Neoadjuvant chemotherapy plus cystectomy compared with cystectomy alone for locally advanced bladder cancer. N Engl J Med 349:859-866, 2003
14)
Hautmann RE, Gschwend JE, de Petriconi RC, Kron M and Volkmer BG:Cystectomy for transitional cell carcinoma of the bladder:results of a surgery only series in the neobladder era. J Urol 176:486-492; discussion 491-492, 2006
15)
Ploussard G, Shariat SF, Dragomir A, et al:Conditional survival after radical cystectomy for bladder cancer:evidence for a patient changing risk profile over time. Eur Urol 66:361-370, 2014
16)
Kulkarni GS, Hermanns T, Wei Y, et al:Propensity Score Analysis of Radical Cystectomy Versus Bladder-Sparing Trimodal Therapy in the Setting of a Multidisciplinary Bladder Cancer Clinic. J Clin Oncol 35:2299-2305, 2017
17)
Kotwal S, Choudhury A, Johnston C, Paul AB, Whelan P and Kiltie AE:Similar treatment outcomes for radical cystectomy and radical radiotherapy in invasive bladder cancer treated at a United Kingdom specialist treatment center. Int J Radiat Oncol Biol Phys 70:456-463, 2008
18)
Koga F, Kihara K, Yoshida S, et al:Selective bladder-sparing protocol consisting of induction low-dose chemoradiotherapy plus partial cystectomy with pelvic lymph node dissection against muscle-invasive bladder cancer:oncological outcomes of the initial 46 patients. BJU Int 109:860-866, 2012
19)
Miyanaga N, Akaza H, Hinotsu S, et al:Background Variables for the Patients with Invasive Bladder Cancer Suitable for Bladder-preserving Therapy. Jpn J Clin Oncol 37:852-857, 2007
20)
Azuma H, Inamoto T, Takahara K, et al:Novel bladder preservation therapy with Osaka Medical College regimen. J Urol 193:443-450, 2015

Ⅵ.Stage Ⅳ 膀胱癌の治療

総論

1.はじめに

Stage Ⅳ膀胱癌の治療として,全身化学療法,癌免疫療法,緩和療法に分けて概説する。またStage Ⅳ膀胱癌に対する外科治療(外科処置)としての膀胱全摘除術,転移巣切除の臨床的意義に関してはそれぞれCQ1920 に取り上げており,そちらを参照されたい。

2.全身化学療法

(1)Stage IV に使用されるレジメンの実際

切除不能または転移を有する膀胱癌に対する標準レジメンはメソトレキセート+ビンブラスチン+ドキソルビシン+シスプラチン(M-VAC)療法(表1)であった。M-VAC 療法は大規模第Ⅲ相試験を経て標準治療になったわけではなく,現在の臨床試験デザインからはかけ離れたシングルアーム試験の結果により登場した12)。その後少数例のランダム化試験によりシスプラチン単剤3)やシスプラチン+シクロホスファミド+ドキソルビシン(CISCA)療法4)より生存期間を有意に延長することが示され,2000 年にゲムシタビン+シスプラチン(GC)療法が登場するまで,唯一無二の一次化学療法レジメンとして普及した。

表1 M-VAC 療法のスケジュール2)
表1 M-VAC 療法のスケジュール

GC 療法(表2)は臨床第Ⅲ相試験においてM-VAC 療法と同等のOS を示し,M-VAC 療法と比較してグレード3 以上の好中球数減少,発熱性好中球減少症,粘膜炎などの有害事象や治療関連死の割合が低いことが示された5)。この結果を受けて,現在はM-VAC 療法よりもGC 療法が選択されることが多い(詳細はCQ21 を参照いただきたい)。GC 療法の原法は4 週1 サイクルであるが,Day 15 のゲムシタビンを省略して3 週1 サイクルとして実施する変法の報告67)もある。臨床第Ⅱ相試験6)や後ろ向き研究7)の結果からは原法と変法の治療成績に大きな差はなさそうであるが,ランダム化第Ⅲ相試験で検証したエビデンスはなく,標準レジメンはGC 療法原法である。

表2 GC 療法のスケジュール5)
表2 GC 療法のスケジュール

M-VAC 療法におけるシスプラチンの治療強度を高めたdose-dense M-VAC 療法(表3)は,M-VAC 原法との比較試験でOS における統計学的優越性を示すことができなかった8)。しかし長期観察後の解析で統計学的有意差が認められた9)ため,この結果を根拠にdose-dense M-VAC を施行することは許容される。

表3 dose-dense M-VAC 療法のスケジュール8)
表3 dose-dense M-VAC 療法のスケジュール

8) 9)

二次化学療法に関して実施された臨床第Ⅲ相試験は非常に少ない。微小管阻害薬ビンフルニン+ベスト・サポーティブ・ケア(best supportive care:BSC)とBSC のランダム化試験では,intent-to-treat 解析でビンフルニン+BSC 群のOS 中央値は6.9 ヵ月で,BSC 群のOS 中央値(4.6 ヵ月)と比較して有意な差を認めなかった(HR:0.88,95% CI:0.69〜1.12)10)。抗VEGFR-2 抗体ラムシルマブ+ドセタキセルとドセタキセル単独を比較した第Ⅲ相試験では,主要評価項目の無増悪生存期間において,それぞれの中央値が4.07 ヵ月および2.76 ヵ月で,統計学的にラムシルマブ+ドセタキセル群で有意に長かった(HR:0.757,95% CI:0.607〜0.943,p=0.0118)11)。しかしOSに関しては,ラムシルマブ+ドセタキセル群の中央値が9.40 ヵ月,ドセタキセル単独群の中央値が7.85 ヵ月で統計学的有意差に至らなかった(HR:0.887,95% CI:0.724〜1.086,p=0.2461)12)。臨床第Ⅱ相試験では,ペメトレキセド1314),nab-paclitaxel(nab-パクリタキセル;ナノ粒子アルブミン結合パクリタキセル)15),パクリタキセル1617),ドセタキセル18),ゲムシタビン19),イホスファミド2021),などの薬剤が一定の治療効果を示しているものの,BSC に対するOS 延長効果の十分なエビデンスはない。本邦では腎機能障害がある場合または二次化学療法として使用される場合に限り,パクリタキセルおよびドセタキセルの使用は保険審査上認められている。臨床第Ⅱ相試験の統合解析22)によれば,タキサン系抗癌薬は2 剤以上の併用療法として使用した方が単剤使用よりもOS が良好であったが,ランダム化第Ⅲ相試験によるエビデンスは存在しない。

(2)全身化学療法が施行されたStage Ⅳ膀胱癌に対する予後因子

一次化学療法前の評価では,Bajorin23)のリスク分類が有名である。M-VAC またはdose-dense M-VAC を受けた203 例におけるOS に関連する因子を多変量解析し,Karnofsky performance status(KPS)< 80%と内臓転移(肺,肝または骨)の存在が独立因子として算出された。これらの因子を0,1 および2 個有する患者のOS 中央値はそれぞれ33.0,13.4 および9.3 ヵ月であった(p=0.0001)。一方,プラチナ含有レジメンによる一次治療後の時点では,Bellmunt24)の分類が知られている。多変量解析によりEastern Cooperative Oncology Group(ECOG)PS > 0,ヘモグロビン < 10 g/dL および肝転移の存在がOS と関連した独立因子であり,これらを0,1,2,3 個有する患者のOS 中央値はそれぞれ14.2,7.3,3.8,1.7 ヵ月であった(p < 0.001)。ただしこの研究のコホートはビンフルニン+BSC とBSC 単独のランダム化第Ⅲ相試験であり,実地診療を反映しているかどうかは賛否両論があった。その後二次治療におけるゲムシタビン+パクリタキセル療法など7 つの臨床第Ⅱ相試験が統合解析され,ECOG PS > 0,ヘモグロビン < 10 g/dL,肝転移の存在に加えて,前化学療法からの期間 < 3 ヵ月の4 因子がOS およびprogression-free survival(PFS)と関連することが示された25)。さらに好中球数,リンパ球数,血小板数,アルブミンといった固形癌の一般的予後不良因子を加えた研究では,多変量解析にて先述の4 因子とアルブミン(正常下限未満)の5 因子がOS と相関する独立因子として同定された26)。これら5 因子のうち,0,1 または2 因子,3 因子以上を有する患者のOS 中央値はそれぞれ8.9,6.4,4.5 ヵ月であり(p < 0.001),validation set ではそれぞれ10.6,10.0,7.0 ヵ月であった(p=0.014)。日本人患者を対象とした研究では,性別(男性)27),ECOG PS ≥127)または≥228),ヘモグロビン < 10 g/dL27),白血球数 ≥8,000/μL28),肝転移28),他臓器転移27)が一次治療前における予後因子として報告されている。

(3)高齢者(または超高齢者)のStage Ⅳ膀胱癌に対する全身化学療法

高齢者(WHO では65 歳以上と定義)へのシスプラチン投与を考慮する際には,まず高齢者機能評価を行うべきである。代表的なスクリーニングツールとしてG829)があり(表430),簡便で有用なツールとして国際老年腫瘍学会(Société Internationale d’Oncologie Gériatrique:SIOG)で推奨されている31)。G8 で14 点未満は異常,すなわちvulnerable またはfrail となり,原則としてシスプラチン治療は勧められない。ただし日本人患者においては,欧米人と比較して肥満患者が少なく(質問F),保険制度の充実により複数の処方薬を内服していることが多く(質問H),謙遜することが美徳とされる(質問P)ため,低得点になりやすい可能性があることを念頭に置いて評価すべきである。

表4 G8 質問票30)
表4 G8 質問票

次に非高齢者と同様に,シスプラチンfit かunfit かの判断を行う。シスプラチンunfit の定義に関しては,EORTC がシスプラチンunfit 患者を対象としたゲムシタビン+カルボプラチン療法とメソトレキセート+カルボプラチン+ビンブラスチン療法のランダム化第Ⅱ/Ⅲ相試験32)を実施した際に用いた『GFR 60mL/min 未満かつ/ またはECOG PS ≥2』が普及している。さらにGalsky ら33)はシスプラチンunfit 患者を対象として実施された臨床第Ⅱ相試験および第Ⅲ相試験をレビューし,① GFR60mL/min 未満と,② ECOG PS ≥2 に加え,③グレード2 以上の聴覚障害,④グレード2 以上のニューロパチー,⑤ New York Heart Association Class Ⅲの心不全を加えた5 項目のうち1 つでも該当するものがあればシスプラチンunfit と提唱した。これは臨床試験のエビデンスに基づくものではないが,尿路上皮癌の臨床研究に従事している120 名の腫瘍内科医をサーベイし,文献的考察を加えてエキスパートのコンセンサスを得たものとなっている34)

(4) シスプラチンfit(eligible)のStage Ⅳ膀胱癌に対するカルボプラチン・ベース・レジメンの全身化学療法

シスプラチン・ベースとカルボプラチン・ベースのレジメンを直接比較した第Ⅲ相試験として,M-VAC 療法とカルボプラチン+パクリタキセル(CP)療法のランダム化試験35)がある。ただしこの試験では症例登録数が予定の4 分の1 程度と極めて悪く,主要評価項目のOS 中央値はM-VAC 15.4 ヵ月,CP 13.8 ヵ月で,統計学的有意差に至らなかった。他にはメソトレキセート+ビンブラスチン+エピルビシン+シスプラチン(M-VEC)療法とメソトレキセート+ビンブラスチン+エピルビシン+カルボプラチン(M-VECa)療法のランダム化第Ⅱ相試験36),M-VAC 療法とメソトレキセート+カルボプラチン+ビンブラスチン(M-CAVI)療法のランダム化第Ⅱ相試験37),GC 療法とゲムシタビン+カルボプラチン(GCarbo)療法のランダム化第Ⅱ相試験38)が存在する。これらの3 試験においては,奏効率,OS ともにシスプラチン・ベースのレジメンがカルボプラチン・ベースのレジメンよりも優れていた。以上の4 試験に関してメタアナリシスを行ったところ,シスプラチン・ベースのレジメンはCR 率[リスク比(RR)3.54,95% CI 1.48〜8.49,p=0.005],全奏効率(RR 1.34,95% CI 1.04〜1.71,p=0.02)において,カルボプラチン・ベースのレジメンよりも優れていた(OSはデータ不整合のため未解析)39)。毒性に関しては,GC とGCarbo に差はなく38),M-VAC,M-VEC はM-CAVI,M-VECa と比較して悪心・嘔吐3637),腎毒性36),脱毛37)の頻度が高かった。

制吐療法の発達によりシスプラチンに起因する悪心・嘔吐の頻度やグレードが低くなっていることや,一次治療でM-VAC よりもGC が選択される場合が多いことを勘案すると,シスプラチンfit(eligible)患者に対してはカルボプラチンではなく,シスプラチン・ベースのレジメンが推奨される。なお腎機能障害を有するStage Ⅳ膀胱癌に対するGCarbo の臨床的意義に関してはCQ22 を参照されたい。

3.癌免疫療法

近年,癌免疫療法の中で免疫チェックポイント阻害薬の開発が成功し,膀胱癌を含む各種腫瘍に臨床導入が進みつつあり大きく変化してきている。免疫チェックポイント阻害薬は,T 細胞上に発現する免疫チェックポイント分子と呼ばれる抑制性受容体,もしくは,そのリガンドに結合して,抑制性シグナルを遮断することによって免疫系のブレーキを解除し,腫瘍に対する免疫応答を高める薬剤であり,従来の癌薬物療法とは異なる作用機序をもつ。特有の有害事象として,免疫関連有害事象(immune-related adverse events:irAE)が出現する。特徴としてはおのおのの有害事象は頻度が低いものがほとんどであるが,全身多岐にわたり出現し,その発現時期を予測することが難しく,時に適切な対応や対処の遅れが致命的となることもありうるため,その管理にあたっては注意が必要である。

(1)免疫チェックポイント分子

癌に対する免疫反応の中心的役割を担うT 細胞において,その活性化を調節する機構が解明されてきた。T 細胞受容体(T cell receptor:TCR)が,癌抗原ペプチドと主要組織適合遺伝子複合体(major histocompatibility complex:MHC)を認識してT 細胞は活性化されるが,その活性化にはTCR からのシグナルだけでは不十分であり,免疫反応を活性化する分子(co-stimulatory molecule:共刺激分子)からのシグナルも必要である。一方,自己への不適切な免疫応答や過剰な炎症反応を抑制する働きを有する因子(co-inhibitory molecule:共抑制分子)も存在し,免疫チェックポイントと呼ばれ免疫反応を抑制している40)。代表的な免疫チェックポイント分子としてcytotoxic T-lymphocyte associated antigen 4(CTLA-4) やprogrammed cell death 1(PD-1)などの抑制性の受容体があり,主に活性化したT 細胞上に発現する。これらの抑制性受容体に生理的なリガンドが結合すると,T 細胞の増殖やエフェクター機能(サイトカイン産生や細胞傷害活性など)が抑制される。癌はこの抑制機構を利用して宿主の免疫監視から逃れている。

(2)免疫チェックポイント阻害薬

免疫チェックポイント阻害薬は主な作用機序として,T 細胞などに発現する免疫チェックポイント分子である抑制性受容体,もしくは,そのリガンドに結合して,抑制性シグナルを遮断することによってT 細胞などの免疫系細胞のブレーキを解除することで,腫瘍に対する免疫応答を高める薬剤である。現在,わが国で膀胱癌に対して承認され実地臨床で使用可能な免疫チェックポイント阻害薬にペムブロリズマブがある(詳細はCQ23 を参照されたい)。

(3)有害事象の種類とその対応(副作用マネージメント)

免疫チェックポイント分子は免疫反応の恒常性維持に関与しており,自己抗原に対する末梢性免疫寛容の成立とその破綻の結果生じる自己免疫疾患の発症に深く関わっている41)。そのため,CTLA-4 やPD-1 などのco-inhibitory molecules をブロックする抗体である免疫チェックポイント阻害薬を投与すると,免疫調整が正常に機能せず,自己免疫疾患・炎症性疾患様の副作用が発現することがある。これらの免疫に関与した副作用はirAE と呼ばれている。irAE は主にT 細胞が関与すると考えられているが,抗体を作るB 細胞系や炎症性サイトカインを産生する顆粒球なども関与すると考えられている42)。従来の細胞傷害性化学療法に対する対症療法とは異なり,irAE に対してはステロイドなどの免疫抑制剤で対処する。重症度に応じて速やかに,適切な治療を行うことで多くのirAE をコントロールすることが可能である。おのおのの有害事象は頻度が低いものがほとんどであるが,全身多岐にわたり多彩な形で出現し,その発現時期を予測することも難しい。ほとんどの症例で投与中に生じるが,稀ではあるものの投与を止めてから数ヵ月以上経過してから出現することもある。適切な対応や対処の遅れが致命的となることがありうるため,注意深く経過観察を行い早期発見に努めることが重要である。

(4)Pseudoprogression とHyperprogression

① Pseudoprogression

癌免疫療法中,腫瘍の増大や新病変が出現して疾患が進行しているように見えても,後から遅れて臨床効果が表れてくる現象が報告されており,pseudoprogression と呼ばれている43)。Pseudoprogression は腫瘍自体の増悪を表すものではないが,疾患の進行として誤って評価されてしまう可能性がある。癌免疫療法は,作用機序として宿主の免疫系を介して抗腫瘍効果を発揮させるために,治療を開始してから抗腫瘍免疫応答が発揮するまでの期間に個人差があると考えられる。したがって,pseudoprogression の機序として,①免疫細胞が腫瘍部位に浸潤することにより見かけ上腫瘍が増悪(腫瘍の増大や新病変が出現)していると評価される場合,②抗腫瘍免疫応答を発揮するまでの期間に実際に一過性に腫瘍が増悪している場合があると考えられている4344)。実地臨床において腫瘍増大時に組織学的に腫瘍局所の免疫状態を確認できる場面は限られるため,pseudoprogression と真の増悪(true progression)を見分けるのは困難である。したがって,実地臨床においても,一旦腫瘍が増大した段階で治療を継続する場合は,①患者の全身状態が治療開始と同程度であること,②病変が生命を脅かす状態(life threatening)でないと判断されること,③患者に発生した有害事象が治療薬の継続投与の際に許容できると判断したうえで,患者に対して病状悪化のリスク,および,継続により全身状態が悪化した場合に後治療を受ける機会を失うリスクがあることについてのインフォームドコンセントを得ることが必要である45)

② Hyperprogression

近年,癌免疫療法を開始後,ごく短期間の間に急速な進行を認める症例が存在するとの報告が増えており,癌免疫療法が契機となって急速に腫瘍を進行させてしまうhyperprogression という概念が提唱されている46)。進行期の癌患者においては,臨床経過のどこかの時点で腫瘍が急速に悪化しはじめることもあり,hyperprogression の存在および機序についての報告は増えつつあるが未解明の部分が多くコンセンサスは得られていない状況である。治療開始後に短期間で全身状態の悪化,転移部位の急速な増悪を反映しうる検査値の上昇(例えば腫瘍マーカーの急激な上昇,肝機能検査値の急激な上昇[肝転移症例]など)を認めた際は,ただちに画像評価等で治療効果判定を行い,診断を確定させて即座に治療を中止する必要があると考える。

現在,pseudoprogression やhyperprogression を見分ける方法を特定するための研究が進められている。

4.緩和療法

現在,膀胱癌にかかわらず癌と診断された時からの緩和ケアが必要とされている。患者や家族の苦痛や気がかりを可能な限り取り除くことが求められるが,進行した膀胱癌の症状緩和は必ずしも容易ではない。膀胱癌には他臓器の進行癌とは違った対応を求められることが多い。進行した膀胱癌は膀胱が残存している場合,膀胱機能を障害し排尿時痛や頻尿,排出障害といった排尿に関する症状,膀胱そのものの痛みや深刻な肉眼的血尿により起こる膀胱タンポナーデ,上部尿路の閉塞による腎機能障害や痛みなどを引き起こすことが考えられる。さらにリンパ節転移や肺転移などの遠隔転移,局所の浸潤といった症例ごとの進展の程度や範囲により浮腫や呼吸困難なども出現する。進行した膀胱癌の上述した症状緩和に特化したエビデンスレベルの高い研究は検索した範囲では認められず,小規模の後ろ向き観察研究やレビューを認めるのみである。

(1)膀胱癌局所進行に伴う血尿の対処

肉眼的血尿に対して,一般的には用手的膀胱洗浄による凝血塊除去ののち膀胱灌流を行うが,血尿の制御は容易でない場合が多い。腫瘍切除が可能な身体状況であれば,TURBT は選択肢であるが,事実上困難であることも多い。海外のレビュー文献によれば4748),局所進行性膀胱癌の血尿に対する治療法として,イプシロンアミノカプロン酸内服やホルマリン膀胱内注入,ミョウバン膀胱灌流,プロスタグランジン膀胱灌流,水圧療法,尿路変向,小分割放射線療法,動脈塞栓術,ミトキサントロン動脈注入,姑息的膀胱全摘除術があげられている。IVR 治療や放射線照射による血尿制御については,複数の症例報告や症例集積の報告がされている49〜52)。膀胱癌の血尿制御を目的とした膀胱全摘除術および尿路変向についての文献は少ない53)。血尿の制御を目的とした膀胱全摘除術は合併症が少ないとは言えないとして,終末期で状態が悪い症例の場合は推奨できないと,癌患者の泌尿器症状の緩和に関するガイドライン54)には記載がある。膀胱局所コントロール目的に経皮的腎瘻,尿管皮膚瘻等の尿路変向が難治例では選択肢となる55)。また尿路変向は尿管閉塞に伴う水腎症,腎後性腎不全,引き続く電解質異常への対処として施行され,尿路変向術として経皮的腎瘻が選択される場合が多いと考えられる5657)。腎機能の改善後に救済化学療法を選択できる状況もあろう。尿路変向の実施にあたっては患者の意向,全身状態,期待生命予後を総合的に考慮する必要がある。

(2)膀胱癌局所進行に伴う膀胱痛,膀胱痙攣の対処

膀胱癌による刺激や癌治療に伴う炎症などは膀胱の痛みの原因となり,肉眼的血尿と同様にQOL を低下させる。血尿以外の膀胱の症状緩和に対しても放射線治療が有効との報告がある。詳細は,次項の「(3)緩和目的の放射線照射 」およびCQ24 を参照されたい。膀胱痙攣に伴う痛みは突出痛として現れ,癌病変そのものにより引き起こされる持続痛とは異なる。これらの痛みは痛みの神経学的分類では内臓痛に分類される。痛みの治療にはNSAIDs やアセトアミノフェンを開始し,改善しない痛みに対してはトラマドールやコデインなどの軽度から中等度の強さの痛みに用いるオピオイドやモルヒネ,オキシコドン,ヒドロモルフォン,フェンタニル,タペンタドールなどの中等度から高度の強さに用いるオピオイドに変更,もしくは追加を行い対応する。本邦で使用できるいわゆる強オピオイド製剤は増えてきているがそれぞれの特徴を把握した上で薬剤を選択する。これらの薬物治療で制御の難しい痛みの場合には直腸,前立腺,膀胱後半部,子宮頸部,膣円蓋部などの求心性線維を受けている上下腹神経叢ブロックが適応になることがある。その他にクモ膜下鎮痛法や硬膜外鎮痛法があるがカテーテル感染などのトラブルや尿閉や筋力低下などの症状出現に留意が必要である58)

膀胱癌により引き起こされる身体症状は非特異的症状を含めると多岐にわたるが,これらの苦痛に対処するには患者・家族の辛さを包括的に評価し全人的に捉え,医師のみならず,看護師やその他の職種と協働して臨むことが重要である。

(3)緩和目的の放射線照射

緩和的放射線治療においては,対象患者の状態・予後を鑑み,総治療期間が短期間で比較的早い時期に治療効果出現が期待できる寡分割照射が主流となっている。各種緩和的放射線治療における放射線外照射の具体的なレジメンについては,CQ24 ならびに放射線治療計画ガイドラインを参照されたい59)

骨転移に起因する疼痛に対して多くのRI 治療製剤の開発が行われており60),そのうちのいくつかはすでに市販製剤として利用可能となっている。本邦においては,89SrCl2(メタストロン)が2007 年に保険収載されて使用可能であったが,2019 年1 月に製造が終了されてしまったため,本ガイドライン作成時点において国内で使用可能な製剤はない。

参考文献

1)
Sternberg CN, Yagoda A, Scher HI, et al:Preliminary results of M-VAC(methotrexate, vinblastine, doxorubicin and cisplatin)for transitional cell carcinoma of the urothelium. J Urol 133:403-407, 1985
2)
Sternberg CN, Yagoda A, Scher HI, et al:Methotrexate, vinblastine, doxorubicin, and cisplatin for advanced transitional cell carcinoma of the urothelium. Efficacy and patterns of response and relapse. Cancer 64:2448-2458, 1989
3)
Loehrer PJ, Sr., Einhorn LH, Elson PJ, et al:A randomized comparison of cisplatin alone or in combination with methotrexate, vinblastine, and doxorubicin in patients with metastatic urothelial carcinoma:a cooperative group study. J Clin Oncol 10:1066-1073, 1992
4)
Logothetis CJ, Dexeus FH, Finn L, et al:A prospective randomized trial comparing MVAC and CISCA chemotherapy for patients with metastatic urothelial tumors. J Clin Oncol 8:1050-1055, 1990
5)
von der Maase H, Hansen SW, Roberts JT, et al:Gemcitabine and cisplatin versus methotrexate, vinblastine, doxorubicin, and cisplatin in advanced or metastatic bladder cancer:results of a large, randomized, multinational, multicenter, phase Ⅲ study. J Clin Oncol 18:3068-3077, 2000
6)
Adamo V, Magno C, Spitaleri G, et al:Phase Ⅱ study of gemcitabine and cisplatin in patients with advanced or metastatic bladder cancer:long-term follow-up of a 3-week regimen. Oncology 69:391-398, 2005
7)
Als AB, Sengelov L and Von Der Maase H:Gemcitabine and cisplatin in locally advanced and metastatic bladder cancer; 3- or 4-week schedule? Acta Oncol 47:110-119, 2008
8)
Sternberg CN, de Mulder PH, Schornagel JH, et al:Randomized phase Ⅲ trial of high-dose-intensity methotrexate, vinblastine, doxorubicin, and cisplatin(MVAC)chemotherapy and recombinant human granulocyte colony-stimulating factor versus classic MVAC in advanced urothelial tract tumors:European Organization for Research and Treatment of Cancer Protocol no. 30924. J Clin Oncol 19:2638-2646, 2001
9)
Sternberg CN, de Mulder P, Schornagel JH, et al:Seven year update of an EORTC phase Ⅲ trial of high-dose intensity M-VAC chemotherapy and G-CSF versus classic M-VAC in advanced urothelial tract tumours. Eur J Cancer 42:50-54, 2006
10)
Bellmunt J, Theodore C, Demkov T, et al:Phase Ⅲ trial of vinflunine plus best supportive care compared with best supportive care alone after a platinum-containing regimen in patients with advanced transitional cell carcinoma of the urothelial tract. J Clin Oncol 27:4454-4461, 2009
11)
Petrylak DP, de Wit R, Chi KN, et al:Ramucirumab plus docetaxel versus placebo plus docetaxel in patients with locally advanced or metastatic urothelial carcinoma after platinum-based therapy(RANGE):a randomised, double-blind, phase 3 trial. Lancet 390:2266-2277, 2017
12)
European society for medical oncology(ESMO)2018 congress. Munich, Germany, October, 2018
13)
Galsky MD, Mironov S, Iasonos A, Scattergood J, Boyle MG and Bajorin DF:Phase Ⅱ trial of pemetrexed as second-line therapy in patients with metastatic urothelial carcinoma. Invest New Drugs 25:265-270, 2007
14)
Sweeney CJ, Roth BJ, Kabbinavar FF, et al:Phase Ⅱ study of pemetrexed for second-line treatment of transitional cell cancer of the urothelium. J Clin Oncol 24:3451-3457, 2006
15)
Ko YJ, Canil CM, Mukherjee SD, et al:Nanoparticle albumin-bound paclitaxel for second-line treatment of metastatic urothelial carcinoma:a single group, multicentre, phase 2 study. Lancet Oncol 14:769-776, 2013
16)
Papamichael D, Gallagher CJ, Oliver RT, Johnson PW and Waxman J:Phase Ⅱ study of paclitaxel in pretreated patients with locally advanced/metastatic cancer of the bladder and ureter. Br J Cancer 75:606-607, 1997
17)
Vaughn DJ, Broome CM, Hussain M, Gutheil JC and Markowitz AB:Phase Ⅱ trial of weekly paclitaxel in patients with previously treated advanced urothelial cancer. J Clin Oncol 20:937-940, 2002
18)
McCaffrey JA, Hilton S, Mazumdar M, et al:Phase Ⅱ trial of docetaxel in patients with advanced or metastatic transitional-cell carcinoma. J Clin Oncol 15:1853-1857, 1997
19)
Stadler WM, Kuzel T, Roth B, Raghavan D and Dorr FA:Phase Ⅱ study of single-agent gemcitabine in previously untreated patients with metastatic urothelial cancer. J Clin Oncol 15:3394-3398, 1997
20)
Pronzato P, Vigani A, Pensa F, Vanoli M, Tani F and Vaira F:Second line chemotherapy with ifosfamide as outpatient treatment for advanced bladder cancer. Am J Clin Oncol 20:519-521, 1997
21)
Witte RS, Elson P, Bono B, et al:Eastern Cooperative Oncology Group phase Ⅱ trial of ifosfamide in the treatment of previously treated advanced urothelial carcinoma. J Clin Oncol 15:589-593, 1997
22)
Sonpavde G, Pond GR, Choueiri TK, et al:Single-agent Taxane Versus Taxane-containing Combination Chemotherapy as Salvage Therapy for Advanced Urothelial Carcinoma. Eur Urol 69:634-641, 2016
23)
Bajorin DF, Dodd PM, Mazumdar M, et al:Long-term survival in metastatic transitional-cell carcinoma and prognostic factors predicting outcome of therapy. J Clin Oncol 17:3173-3181, 1999
24)
Bellmunt J, Choueiri TK, Fougeray R, et al:Prognostic factors in patients with advanced transitional cell carcinoma of the urothelial tract experiencing treatment failure with platinum-containing regimens. J Clin Oncol 28:1850-1855, 2010
25)
Sonpavde G, Pond GR, Fougeray R, et al:Time from prior chemotherapy enhances prognostic risk grouping in the second-line setting of advanced urothelial carcinoma:a retrospective analysis of pooled, prospective phase 2 trials. Eur Urol 63:717-723, 2013
26)
Sonpavde G, Pond GR, Rosenberg JE, et al:Improved 5-Factor Prognostic Classification of Patients Receiving Salvage Systemic Therapy for Advanced Urothelial Carcinoma. J Urol 195:277-282, 2016
27)
Abe T, Ishizaki J, Kikuchi H, et al:Outcome of metastatic urothelial carcinoma treated by systemic chemotherapy:Prognostic factors based on real-world clinical practice in Japan. Urol Oncol 35:38. e1- 38. e8, 2017
28)
Taguchi S, Nakagawa T, Hattori M, et al:Prognostic factors for metastatic urothelial carcinoma undergoing cisplatin-based salvage chemotherapy. Jpn J Clin Oncol 43:923-928, 2013
29)
Bellera CA, Rainfray M, Mathoulin-Pelissier S, et al:Screening older cancer patients:first evaluation of the G-8 geriatric screening tool. Ann Oncol 23:2166-2172, 2012
30)
JCOG 高齢者研究ポリシー「推奨高齢者機能評価ツール」. http://www.jcog.jp/basic/org/committee/A_040_gsc_20170530.pdf
31)
Decoster L, Van Puyvelde K, Mohile S, et al:Screening tools for multidimensional health problems warranting a geriatric assessment in older cancer patients:an update on SIOG recommendations. Ann Oncol 26:288-300, 2015
32)
De Santis M, Bellmunt J, Mead G, et al:Randomized phase Ⅱ/Ⅲ trial assessing gemcitabine/carboplatin and methotrexate/carboplatin/vinblastine in patients with advanced urothelial cancer “unfit” for cisplatin-based chemotherapy:phase Ⅱ––results of EORTC study 30986. J Clin Oncol 27:5634-5639, 2009
33)
Galsky MD, Hahn NM, Rosenberg J, et al:Treatment of patients with metastatic urothelial cancer “unfit” for Cisplatin-based chemotherapy. J Clin Oncol 29:2432-2438, 2011
34)
Galsky MD, Hahn NM, Rosenberg J, et al:A consensus definition of patients with metastatic urothelial carcinoma who are unfit for cisplatin-based chemotherapy. Lancet Oncol 12:211-214, 2011
35)
Dreicer R, Manola J, Roth BJ, et al:Phase Ⅲ trial of methotrexate, vinblastine, doxorubicin, and cisplatin versus carboplatin and paclitaxel in patients with advanced carcinoma of the urothelium. Cancer 100:1639-1645, 2004
36)
Petrioli R, Frediani B, Manganelli A, et al:Comparison between a cisplatin-containing regimen and a carboplatin-containing regimen for recurrent or metastatic bladder cancer patients. A randomized phase Ⅱ study. Cancer 77:344-351, 1996
37)
Bellmunt J, Ribas A, Eres N, et al:Carboplatin-based versus cisplatin-based chemotherapy in the treatment of surgically incurable advanced bladder carcinoma. Cancer 80:1966-1972, 1997
38)
Dogliotti L, Carteni G, Siena S, et al:Gemcitabine plus cisplatin versus gemcitabine plus carboplatin as first-line chemotherapy in advanced transitional cell carcinoma of the urothelium:Results of a randomized phase 2 trial. European Urology 52:134-141, 2007
39)
Galsky MD, Chen GJ, Oh WK, et al:Comparative effectiveness of cisplatin-based and carboplatin-based chemotherapy for treatment of advanced urothelial carcinoma. Ann Oncol 23:406-410, 2012
40)
Pardoll DM:The blockade of immune checkpoints in cancer immunotherapy. Nat Rev Cancer 12:252-264, 2012
41)
Haanen JB, Thienen H and Blank CU:Toxicity patterns with immunomodulating antibodies and their combinations. Semin Oncol 42:423-428, 2015
42)
Postow MA and Hellmann MD:Adverse Events Associated with Immune Checkpoint Blockade. N Engl J Med 378:1165, 2018
43)
Wolchok JD, Hoos A, O’Day S, et al:Guidelines for the evaluation of immune therapy activity in solid tumors:immune-related response criteria. Clin Cancer Res 15:7412-7420, 2009
44)
Chiou VL and Burotto M:Pseudoprogression and Immune-Related Response in Solid Tumors. J Clin Oncol 33:3541-3543, 2015
45)
Guidance Development Review Committee, Working Group for Clinical Studies of Cancer Immunotherapy, Working Group for Effector Cell Therapy, et al:2015 Guidance on cancer immunotherapy development in early-phase clinical studies. Cancer Sci 106:1761-1771, 2015
46)
Champiat S, Ferrara R, Massard C, et al:Hyperprogressive disease:recognizing a novel pattern to improve patient management. Nat Rev Clin Oncol 15:748-762, 2018
47)
Abt D, Bywater M, Engeler DS and Schmid HP:Therapeutic options for intractable hematuria in advanced bladder cancer. Int J Urol 20:651-660, 2013
48)
Ghahestani SM and Shakhssalim N:Palliative treatment of intractable hematuria in context of advanced bladder cancer:a systematic review. Urol J 6:149-156, 2009
49)
El-Assmy A and Mohsen T:Internal iliac artery embolization for the control of severe bladder hemorrhage secondary to carcinoma:long-term follow-up. ScientificWorldJournal 7:1567-1574, 2007
50)
Halpenny D, Salati U, Torregiani WC and Browne R:Selective arterial embolization for control of haematuria secondary to advanced or recurrent transitional cell carcinoma of the bladder. JBR-BTR 96:282-285, 2013
51)
Kouloulias V, Tolia M, Kolliarakis N, Siatelis A and Kelekis N:Evaluation of acute toxicity and symptoms palliation in a hypofractionated weekly schedule of external radiotherapy for elderly patients with muscular invasive bladder cancer. Int Braz J Urol 39:77-82, 2013
52)
Lacarriere E, Smaali C, Benyoucef A, Pfister C and Grise P:The efficacy of hemostatic radiotherapy for bladder cancer-related hematuria in patients unfit for surgery. Int Braz J Urol 39:808-816, 2013
53)
Zebic N, Weinknecht S and Kroepfl D:Radical cystectomy in patients aged > or = 75 years:an updated review of patients treated with curative and palliative intent. BJU Int 95:1211-1214, 2005
54)
日本緩和医療学会,緩和医療ガイドライン委員会編:がん患者の泌尿器症状の緩和に関するガイドライン 2016 年版.金原出版,東京,2016
55)
Pomer S, Karcher G and Simon W:Cutaneous ureterostomy as last resort treatment of intractable haemorrhagic cystitis following radiation. Br J Urol 55:392-394, 1983
56)
Harrington KJ, Pandha HS, Kelly SA, Lambert HE, Jackson JE and Waxman J:Palliation of obstructive nephropathy due to malignancy. Br J Urol 76:101-107, 1995
57)
Ishioka J, Kageyama Y, Inoue M, Higashi Y and Kihara K:Prognostic model for predicting survival after palliative urinary diversion for ureteral obstruction:analysis of 140 cases. J Urol 180:618-621; discussion 21, 2008
58)
日本緩和医療学会,緩和医療ガイドライン委員会編:がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン 2014 年版.金原出版,東京,2014
59)
日本放射線腫瘍学会編:放射線治療計画ガイドライン 2016 年版.金原出版,東京,2016
60)
Das T and Banerjee S:Radiopharmaceuticals for metastatic bone pain palliation:available options in the clinical domain and their comparisons. Clin Exp Metastasis 34:1-10, 2017

CQ19
局所進展例または骨盤内リンパ節転移を有する症例に対して膀胱全摘除術は推奨されるか?

エビデンスの確実性C
化学療法が有効であった症例には膀胱全摘除術を考慮することが推奨される(推奨の強さ2)

解 説

以下,本解説では,AJCC 第7 版でStage Ⅳとして扱われたcTanyN1-3M0 症例に関しては,AJCC 第8 版に準拠し,Stage ⅢA,B と記載する。

Stage ⅢA およびB(AJCC 第8 版),言い換えれば明らかに骨盤内リンパ節腫大を伴う膀胱癌に対しては,導入全身化学療法後に腫瘍の縮小が得られた時点で,膀胱全摘除術および骨盤内リンパ節郭清を追加する集学的アプローチが行われてきた。前向き試験による化学療法単独や放射線治療など他の治療法との比較試験はないが,化学療法著効後の再発部位の検討において,もともと腫瘍を認めた部位の再増大の頻度が高いことが手術追加の理論的根拠とされている。Dimopolous らは,遠隔転移を有する症例に対する化学療法でCR,部分奏効(partial response:PR)が得られた後に再発を生じた症例の再発部位を検討した後ろ向き研究において,治療前に局所進展と判定された42 例においては,74%(31/42)が術後遠隔転移を生じることなく,まず局所再発を生じたと報告している1)

Herr らは,cT4bNxM0/cT3-4N2-3M0 症例207 例のうち,M-VAC 療法後に膀胱全摘除術が施行された60 例の成績を報告している。術後5 年の時点で19 例(32%)が生存し,その内訳は病理にて残存癌を認めなかったpCR 19 例中9 例(41%),残存癌が完全切除されたsCR 34 例中10 例(29%)で,切除不能例での長期生存例はなかった。また,化学療法に良好な反応を示したが,その後の膀胱全摘除術を拒否した12 例(CR 10,PR 2)では,3 年時点で生存していたのは1 例のみに過ぎなかった2)。この報告は,化学療法の反応性が良好であること,完全切除が可能であることが長期生存に関わる予後因子であることを示唆している。Ho らは,MD Anderson Cancer Center において,1995 年から2010 年の間に,骨盤内・後腹膜リンパ節(所属外リンパ節を含む)の腫大を伴う膀胱癌に対して,導入全身化学療法後に膀胱全摘除術が施行された55 例の治療成績を報告している。病理所見上,ypN0が55%を占め,全体での癌特異的生存期間中央値は26 ヵ月であったが,ypN0 であった症例の5 年生存率が66%であったのに対し,ypN+症例では12%であった3)

最近,Zargar-Shoshtari らが,北米および欧州の19 施設を含む多施設共同研究の結果を報告した。2000 年から2013 年の間に,cT1-4aN1-3 症例に対し,導入全身化学療法(M-VAC 42%,GC 43%)後に膀胱全摘除術が施行された304 例での検討の結果,病理所見上ypN0 は48%の症例で認め,全体でのOS 中央値は22 ヵ月であった。多変量解析では,病理所見がypN0 であること,摘除リンパ節個数が15 個以上であること,切除断端陰性であること,シスプラチンを含む多剤併用レジメンの使用が長期生存に関連する予後予測因子であった4)

このように局所進行例あるいはリンパ節転移を有する症例でも,導入全身化学療法の反応がよければ長期生存が期待できるが,膀胱全摘除術前に最終病理結果を予想することは困難であり,半数近い症例は導入全身化学療法後に膀胱全摘除術を実施しても長期生存は期待できないことも事実である。

遠隔転移を有する膀胱癌において,局所治療追加により予後を改善するか,という疑問があるが,この点についてSeisen らは,米国National Cancer Data Base を用いた後ろ向き研究で,遠隔転移を有する膀胱癌3,753 例を対象に,膀胱全摘除術もしくは50Gy 以上の膀胱への放射線照射が施行された297 例とそれ以外の3,456 例で予後を比較している。Inverse probability of treatment weighting(IPTW)法を用いた調整を行った結果,OS 中央値は局所治療群14.92 ヵ月,なし群は9.95 ヵ月で有意差を認めた。IPTW 調整後の多変量解析でも局所治療は長期生存に関する予後予測因子であったと報告している5)。本研究の問題点として転移の範囲,個数等は調整できていないことがあげられ,局所治療が施行されたコホートは,極めて選択された患者群であることは容易に予想される。遠隔転移を有する症例に対する局所治療は,現時点ではあくまで緩和的位置づけであり,予後改善の可能性に関しては,今後の報告を含めて検討していく必要がある。
y:既治療例を再分類した場合の前頭語。

参考文献

1)
Dimopoulos MA, Finn L and Logothetis CJ:Pattern of failure and survival of patients with metastatic urothelial tumors relapsing after cis-platinum-based chemotherapy. J Urol 151:598-600, 1994
2)
Herr HW, Donat SM and Bajorin DF:Post-chemotherapy surgery in patients with unresectable or regionally metastatic bladder cancer. J Urol 165:811-814, 2001
3)
Ho PL, Willis DL, Patil J, et al:Outcome of patients with clinically node-positive bladder cancer undergoing consolidative surgery after preoperative chemotherapy:The M.D. Anderson Cancer Center Experience. Urol Oncol 34:59. e1-8, 2016
4)
Zargar-Shoshtari K, Zargar H, Lotan Y, et al:A Multi-Institutional Analysis of Outcomes of Patients with Clinically Node Positive Urothelial Bladder Cancer Treated with Induction Chemotherapy and Radical Cystectomy. J Urol 195:53-59, 2016
5)
Seisen T, Sun M, Leow JJ, et al:Efficacy of High-Intensity Local Treatment for Metastatic Urothelial Carcinoma of the Bladder:A Propensity Score-Weighted Analysis From the National Cancer Data Base. J Clin Oncol 34:3529-3536, 2016

CQ20
転移を有する膀胱癌に対する転移巣切除は推奨されるか?

エビデンスの確実性C
全身状態が良好な症例,病巣が単発で完全切除が可能な症例,化学療法が有効であった症例,病勢の進行が急速ではない症例等で転移巣切除を考慮することが推奨される(推奨の強さ2)

解 説

転移性尿路上皮癌における転移巣切除術は,古くはCowles らが単発肺転移症例6 例に対して肺転移切除術を施行し,生存期間中央値5 年の成績を報告したことにはじまる1)。実臨床において選択された症例で転移巣切除術が施行されることがあり,その治療成績が蓄積されている。

Siefker-Radtke らは,1985〜2001 年にM.D. Anderson Cancer Center で転移巣切除が施行された31 例の治療成績を報告した。切除された転移巣は,肺(77%,24/31),遠隔リンパ節(13%,4/31),脳(7%,2/31),皮膚(3%,1/31)で,30 例で完全切除が可能であった。OS 中央値は23 ヵ月,5 年生存率は33%であった2)。また,Lehmann らは,ドイツの多施設共同研究において,1991〜2008 年の間に転移巣切除術が施行された44 例の治療成績を報告した。周術期化学療法は80%(35/44)で施行,切除対象はすべて単一臓器,切除部位は後腹膜リンパ節(56.8%,25/44),肺(18.2%,8/44),遠隔リンパ節(11.4%,5/44),骨(4.5%,2/44),副腎(2.3%,1/44),脳(2.3%,1/44),小腸(2.3%,1/44),皮膚(2.3%,1/44)で,転移巣切除術からのOS 中央値は27 ヵ月,5 年全生存率は28%であった3)

最近,米国SEER データベースを用いた研究結果が報告された。70,648 例の尿路上皮癌症例中,497 例で治療経過中に転移巣切除術が施行されており,転移巣切除術からのOS 中央値は19 ヵ月,3 年全生存率は38%であった4)

本邦からは,Abe らが1989〜2012 年に国内4 施設において,1989〜2012 年の間に転移巣切除術が施行された42 例の治療成績を報告した。周術期化学療法は98%(41/42)で施行され,切除部位は,後腹膜/ 遠隔リンパ節(47.6%,20/42),肺(28.6%,12/42),局所再発(11.9%,5/42,骨盤内臓全摘:3,再発腫瘍切除術:2), 皮膚(4.8 %,2/42), 肝臓(2.4 %,1/42), 下肢(2.4 %,1/42),副腎(2.4%,1/42)で,転移巣切除術からのOS 中央値は26 ヵ月,5 年全生存率は31%であった。特に単発の肺転移,リンパ節転移例で,転移巣切除術後の長期生存が得られたと報告している5)。Matsuguma らは肺転移切除32 例の検討において5 年全生存率50%の成績を報告している6)。Kanzaki らも18 例の検討において,5 年全生存率46.5%の成績を報告し,単発の肺転移が長期生存と関わっていたと報告している7)。一方,Otto らはM-VAC 抵抗例であった70 例に転移巣切除術を施行した結果,摘除後の生存期間中央値は7 ヵ月に過ぎず,4%の症例で周術期死亡があったと報告している8)

以上,これまでの報告を総括すると,転移巣切除(特に単発の肺転移症例)により,長期生存が得られる可能性がある。適応に関して高いエビデンスは存在しないが,Herr らは,①化学療法を先行し症例を選択する,②化学療法に対する良好な反応性,③限局するリンパ節転移・単発の肺転移・単一の臓器転移,④治癒切除が可能であること,⑤良好な全身状態と手術に向かう高いモチベーションを指摘9)しており,各症例について,患者の全身状態,化学療法の反応性,病勢進行の程度を十分に見極め,手術適応を検討することが重要であると思われる。

なお,同様の患者群において,化学療法後の残存病変に対する放射線照射に関しては,病勢コントロールに有益な可能性があるが,現時点では報告が限られており治療的意義に関して一定の見解は出ていない。今後のデータ集積が必要である。

参考文献

1)
Cowles RS, Johnson DE and McMurtrey MJ:Long-term results following thoracotomy for metastatic bladder cancer. Urology 20:390-392, 1982
2)
Siefker-Radtke AO, Walsh GL, Pisters LL, et al:Is there a role for surgery in the management of metastatic urothelial cancer? The M. D. Anderson experience. J Urol 171:145-148, 2004
3)
Lehmann J, Suttmann H, Albers P, et al:Surgery for metastatic urothelial carcinoma with curative intent:the German experience(AUO AB 30/05). Eur Urol 55:1293-1299, 2009
4)
Faltas BM, Gennarelli RL, Elkin E, et al:Metastasectomy in older adults with urothelial carcinoma:Population-based analysis of use and outcomes. Urol Oncol 36:9. e11-9. e7, 2018
5)
Abe T, Kitamura H, Obara W, et al:Outcome of metastasectomy for urothelial carcinoma: a multi-institutional retrospective study in Japan. J Urol 191:932-936, 2014
6)
Matsuguma H, Yoshino I, Ito H, et al:Is there a role for pulmonary metastasectomy with a curative intent in patients with metastatic urinary transitional cell carcinoma? Ann Thorac Surg 92:449-453, 2011
7)
Kanzaki R, Higashiyama M, Fujiwara A, et al:Outcome of surgical resection of pulmonary metastasis from urinary tract transitional cell carcinoma. Interact Cardiovasc Thorac Surg 11:60-64, 2010
8)
Otto T, Krege S, Suhr J and Rübben H:Impact of surgical resection of bladder cancer metastases refractory to systemic therapy on performance score:a phase Ⅱ trial. Urology 57:55-59, 2001
9)
Herr HW:Is metastasectomy for urothelial carcinoma worthwhile? Eur Urol 55:1300-1301, 2009

CQ21
切除不能または転移を有する症例の一次治療としてGC 療法は推奨されるか?

エビデンスの確実性A
切除不能または転移を有する症例の一次治療として,GC 療法を行うことが推奨される(推奨の強さ1)

解 説

切除不能または転移を有する膀胱癌に対する治療の原則は薬物療法である。GC 療法は,それまで標準治療とされていたM-VAC 療法とのランダム化第Ⅲ相試験において,同等の治療成績を示し,有害事象が軽微であった12)。しかし本試験はGC のM-VAC に対する優越性を検証するデザインとなっており,主要評価項目のOS 中央値がGC 群14.8 ヵ月,M-VAC 群13.8 ヵ月(HR:1.04, 95 %CI:0.82〜1.32)と,GC の優越性を示すことができなかったという解釈が正しい。ただし,好中球数減少や発熱性好中球減少,粘膜炎,脱毛といった有害事象や治療関連死の割合はGC の方がM-VAC よりも低く,NCCN ガイドライン3)ではcategory 1 として,EAU ガイドライン4)ではstrong としてGC が推奨されている。

シスプラチンfit 患者に対するGC と並ぶ一次化学療法として,EAU ガイドライン4)ではM-VAC およびdose-dense(またはhigh-dose intensity)M-VAC がstrong として,NCCN ガイドライン3)ではdose-dense M-VAC がcategory 1 として推奨されている。dose-dense M-VAC はM-VAC 原法における15 日目および22 日目のメソトレキセートおよびビンブラスチンをスキップし,2 週間を1 サイクルとしてシスプラチンの治療強度を高めたレジメンで,G-CSF をDay 4 からDay 10 まで投与する5)。EORTC によりM-VAC とdose-dense M-VAC を比較するランダム化第Ⅲ相試験が実施され,主要評価項目のOS 中央値はdose-dense M-VAC 群で15.5 ヵ月,M-VAC 群で14.1 ヵ月と統計学的有意差を認めなかった(HR:0.80,95% CI:0.60〜1.06)5)。ただし毒性はG-CSF をルーチンに使用するためdose-dense M-VAC の方が軽微であり,7.3 年のフォローアップ後の解析6)では,HR:0.76, 95% CI:0.58〜0.99 と統計学的にdose-dense M-VAC 群が優れていた。このことより,NCCN ガイドライン3)では従来のM-VAC は推奨されていない。

なおGC のDay 1 にパクリタキセルを追加したPGC とGC のランダム化第Ⅲ相試験7)において,PGC 群およびGC 群のOS はそれぞれ15.8 ヵ月および12.7 ヵ月であったが,統計学的な有意差には至らなかった(HR:0.85,95% CI:0.72〜1.02)。PGC はGC と比較して好中球数減少と発熱性好中球減少の頻度が高くなるが,非血液毒性には差がなく,奏効率はPGC 群が有意に優れていた(56% vs. 44% , p=0.0031)ことから,EAU ガイドライン4)ではPGC もstrong として推奨されている。しかしNCCN ガイドライン3)では推奨されておらず,わが国では保険診療上の制約がある(パクリタキセルの使用は腎障害がある場合または二次化学療法に限る)ため,本ガイドラインでは推奨しない。

参考文献

1)
von der Maase H, Hansen SW, Roberts JT, et al:Gemcitabine and Cisplatin Versus Methotrexate, Vinblastine, Doxorubicin, and Cisplatin in Advanced or Metastatic Bladder Cancer:Results of a Large, Randomized, Multinational, Multicenter, Phase Ⅲ Study. J Clin Oncol 17:3068-3077, 2000
2)
von der Maase H, Sengelov L, Roberts JT, et al:Long-Term Survival Results of a Randomized Trial Comparing Gemcitabine Plus Cisplatin, With Methotrexate, Vinblastine, Doxorubicin, Plus Cisplatin in Patients With Bladder Cancer. J Clin Oncol 23:4602-4608, 2005
3)
Flaig TW, Spiess PE, Agarwal N, et al:Bladder cancer. J Natl Compr Canc Netw 2019 Version 1. https://www.nccn.org/home
4)
European Association of Urology:Guideline on Muscle-invasive and Metastatic Bladder Cancer. http://uroweb.org/wp-content/uploads/EAU-MIBC-Guidelines-2018V2.pdf
5)
Sternberg CN, de Mulder PHM, Schornagel JH, et al:Randomized Phase Ⅲ Trial of High-Dose-Intensity Methotrexate, Vinblastine, Doxorubicin, and Cisplatin(MVAC)Chemotherapy and Recombinant Human Granulocyte Colony-Stimulating Factor Versus Classic MVAC in Advanced Urothelial Tract Tumors:European Organization for research and Treatment of Cancer Protocol No. 32924. J Clin Oncol 19:2638-2646, 2001
6)
Sternberg CN, de Mulder P, Schornagel JH, et al:Seven year update of an EORTC phase Ⅲ trial of high-dose intensity M-VAC chemotherapy and G-CSF versus classic M-VAC in advanced urothelial tract tumours. Eur J Cancer 42:50-54, 2006
7)
Bellmunt J, von der Maase H, Mead GM, et al:Randomized Phase Ⅲ Study Comparing Paclitaxel/Cisplatin/Gemcitabine and Gemcitabine/Cisplatin in Patients With Locally Advanced or Metastatic Urothelial Cancer Without Prior Systemic Therapy:EORTC Intergroup Study 30987. J Clin Oncol 30:1107-1113, 2012

CQ22
腎機能障害を伴う切除不能または有転移症例に対するGCarbo 療法は推奨されるか?

エビデンスの確実性B
腎機能障害以外の予後不良因子がない症例にはGCarbo 療法を考慮することが推奨される(推奨の強さ2)

解 説

シスプラチン(CDDP)を含む化学療法はStageⅣ膀胱癌の第一選択の治療として確立している。しかしながら,進行膀胱癌症例は高齢者が多く,腎機能が障害されていることが多い1)。Dash ら2)によれば,Cockroft-Gault の算出式を用いた場合,アジュバント化学療法の適応と判断されたT3 以上あるいはN+の膀胱全摘症例では28%,このうち70 歳以上に限ると40%の症例でクレアチニンクリアランス(CCr)が60mL/ 分未満であった。このような,腎機能障害を有するunfit for CDDP 症例に対しては,CDDP を腎機能障害が少ないカルボプラチン(CBDCA)に変更したゲムシタビン+CBDCA(GCarbo)が用いられるが,他にCDDP+メトトレキサート+ビンブラスチン(CMV)をCBDCA に変更したM-CAVI や,CDDP を減量あるいは分割投与するGC・M-VAC,白金製剤を含まないゲムシタビン+パクリタキセル(GP)などのレジメンも選択される。他のレジメンと比較しGCarbo の副作用の発現程度,治療的優位性は定まっていない。今までに腎機能障害を有するStage Ⅳ膀胱癌におけるGCarbo とM-CAVI を比較した第Ⅱ-Ⅲ相試験が報告されている。De Santis ら3)は第Ⅱ相RCT を行い,30 < CCr < 60,またはPS 2 に該当する患者(unfit for CDDP)をGCarbo(n=88),またはM-CAVI(n=87)に割り付け,Overall response rate(ORR)とsevere acute toxicity(SAT)を比較した。その結果ORR はGCarbo で42%,M-CAVI で30%,SAT はGCarbo で13.6%,M-CAVI で23%と2 つのレジメンはどちらも有効と判断され,OS を比較検討する第Ⅲ相試験に進んだ。第Ⅲ相試験では症例が追加され,GCarbo とM-CAVI にそれぞれ119 例が割り付けられた4)。OS はGCarbo で9.3 ヵ月,M-CAVI で8.1 ヵ月と有意差を認めなかった。ORR はそれぞれ41.2 %,30.3 % であった。SAT はそれぞれ9.3 %,21.2 % とM-CAVI でより多く認められた。以上の結果から,GCarbo はM-CAVI と比較して効果が同等であり,重篤な副作用の発現頻度が低いことから,unfit for CDDP 症例において,より有用な治療法と結論された。なお,CCr < 60mL/ 分のみの症例と比較して,CCr < 60mL/ 分かつPS 2 の群の予後は不良であり,SAT の頻度も高かった。PS と内臓転移の有無によるBajorin リスクグループ5)では,グループ2の予後は不良であった。したがって,腎機能障害に加えてPS 2 あるいは内臓転移などの予後不良因子を有する症例では,副作用が強く発現するため,GCarbo の有効性は限定的である。

以上より,腎機能障害を有するStageⅣの膀胱癌に対して,GCarbo 療法は腎機能障害以外の予後不良因子がない症例には考慮することが推奨される。
KPS 80%未満かつ臓器転移(肺,肝,または骨)を有するグループ。

参考文献

1)
Galsky MD, Hahn NM, Rosenberg J, et al:Treatment of Patients With Metastatic Urothelial Cancer “Unfit” for Cisplatin-Based Chemotherapy. J Clin Oncol 29:2432-2438, 2011
2)
Dash A, Galsky MD, Vickers AJ, et al:Impact of renal impairment on eligibility for adjuvant cisplatin-based chemotherapy in patients with urothelial carcinoma of the bladder. Cancer 107:506-513, 2006
3)
De Santis M, Bellmunt J, Mead G, et al:Randomized phase Ⅱ/Ⅲ trial assessing gemcitabine/carboplatin and methotrexate/carboplatin/vinblastine in patients with advanced urothelial cancer “unfit” for cisplatin-based chemotherapy:phase Ⅱ-results of EORTC study 30986. J Clin Oncol 27:5634-5639, 2009
4)
De Santis M, Bellmunt J, Mead G, et al:Randomized phase Ⅱ/Ⅲ trial assessing gemcitabine/carboplatin and methotrexate/carboplatin/vinblastine in patients with advanced urothelial cancer who are unfit for cisplatin-based chemotherapy:EORTC study 30986. J Clin Oncol 30:191-199, 2012
5)
Bajorin DF, Dodd PM, Mazumdar M, et al:Long-term survival in metastatic transitional-cell carcinoma and prognostic factors predicting outcome of therapy. J Clin Oncol 17:3173-3181, 1999

CQ23
一次抗癌化学療法後に再発または進行した局所進行性または転移性膀胱癌に対する免疫チェックポイント阻害薬使用は推奨されるか?

エビデンスの確実性A
一次治療のプラチナ製剤併用化学療法後に再発または進行した,あるいはプラチナ製剤併用化学療法による術前もしくは術後補助化学療法の治療終了後12 ヵ月以内に再発または転移した膀胱癌に対して,ぺムブロリズマブを使用することが推奨される(推奨の強さ1)

解 説

従来,プラチナ製剤併用化学療法後に再発または進行した局所進行性または転移性の膀胱癌に対して定まった二次治療は存在せず,タキサン系抗癌薬(パクリタキセルあるいはドセタキセル)等を単剤あるいは併用した多剤化学療法が適宜用いられていた1)。2017 年12 月に一次治療のプラチナ製剤併用化学療法後に再発または進行した,あるいはプラチナ製剤併用化学療法による術前もしくは術後補助化学療法の治療終了後12 ヵ月以内に再発または転移した膀胱癌に対して,ヒト化抗ヒトPD-1 モノクローナル抗体であるぺムブロリズマブの使用が本邦で承認された。ぺムブロリズマブが使用されるエビデンスとなったKEYNOTE-045 試験では,日本人52 例を含む542 例を,ぺムブロリズマブ群または化学療法群に1:1 で無作為に割付し,有効性・安全性が検討されている2)。OS の中央値はぺムブロリズマブ群で10.3 ヵ月,化学療法群で7.4 ヵ月であり,ぺムブロリズマブ群で有意な延長が確認され,奏効率はぺムブロリズマブ群で21.1%,化学療法群で11.4%であり,ぺムブロリズマブ群で有意に高い値であった。なお奏効が確定した患者においては奏効期間の明らかな延長が認められ,いわゆるdurable response が得られている。健康関連QOL 調査においてもぺムブロリズマブ群の良好なQOL スコアが示されている3)。ぺムブロリズマブ群の主な副作用はそう痒症(19.5%),疲労(13.9%),悪心(10.9%)で,irAE は16.9%に認められ,主なものは甲状腺機能低下症(6.4%)であった。免疫チェックポイント阻害薬に起因するirAE の発症は比較的稀であるものの重篤化しやすく,早期発見と十分な管理が必要で,可能なら他診療部門を含めたチーム医療により慎重に対応することが望ましい。

2018 年版EAU ガイドラインでは,プラチナ製剤併用化学療法施行中あるいは施行後に進行する転移性膀胱癌に対してぺムブロリズマブ,アテゾリズマブ,ニボルマブをstrong として推奨している4)。2019 年版 version 1 のNCCN ガイドラインでは,プラチナ製剤使用後の局所進行性あるいは転移性膀胱癌(Stage Ⅳ)に対してぺムブロリズマブをpreferred regimen として,アテゾリズマブ,ニボルマブ,デュルバルマブ,アベルマブをalternative preferred regimen として取り上げている5)

転移性膀胱癌に対する二次治療としての免疫チェックポイント阻害薬の使用に際し,治療効果が不十分である症例に対する治療の切り替えのタイミング6),有用な治療効果予測マーカー,有効例に対する治療継続期間などは定まっていない。また免疫チェックポイント阻害薬が無効の場合の三次治療も確立されていない7)。今後,より高い有効性・安全性を有する,転移性膀胱癌に対する二次,および三次治療の確立が望まれる。

参考文献

1)
Sonpavde G, Pond GR, Choueiri TK, et al:Single-agent Taxane Versus Taxane-containing Combination Chemotherapy as Salvage Therapy for Advanced Urothelial Carcinoma. Eur Urol 69:634-641, 2016
2)
Bellmunt J, de Wit R, Vaughn DJ, et al:Pembrolizumab as Second-Line Therapy for Advanced Urothelial Carcinoma. N Engl J Med 376:1015-1026, 2017
3)
Vaughn DJ, Bellmunt J, Fradet Y, et al:Health-Related Quality-of-Life Analysis From KEYNOTE-045:A Phase Ⅲ Study of Pembrolizumab Versus Chemotherapy for Previously Treated Advanced Urothelial Cancer. J Clin Oncol 36:1579-1587, 2018
4)
European Association of Urology:Guideline on Muscle-invasive and Metastatic Bladder Cancer. http://uroweb.org/wp-content/uploads/EAU-MIBC-Guidelines-2018V2.pdf
5)
Flaig TW, Spiess PE, Agarwal N, et al:Bladder cancer. J Natl Compr Canc Netw 2019 Version 1. https://www.nccn.org/home
6)
Necchi A, Joseph RW, Loriot Y, et al:Atezolizumab in platinum-treated locally advanced or metastatic urothelial carcinoma:post-progression outcomes from the phase Ⅱ IMvigor210 study. Ann Oncol 28:3044-3050, 2017
7)
Szabados B, van Dijk N, Tang YZ, et al:Response Rate to Chemotherapy After Immune Checkpoint Inhibition in Metastatic Urothelial Cancer. Eur Urol 73:149-152, 2018

CQ24
局所進行性あるいは転移性の膀胱癌に対する緩和目的の放射線外照射療法は推奨されるか?

エビデンスの確実性B
局所進行性膀胱癌に起因する局所症状の軽減および遠隔転移に起因する症状緩和目的で放射線外照射療法を行うことが推奨される(推奨の強さ1)

解 説

放射線外照射療法は,多くの癌種において,根治療法としてだけでなく症状緩和を目的としても有効であり広く用いられている。膀胱癌においては,原発腫瘍の局所進展による局所症状(主として膀胱出血)と遠隔転移(主として骨転移,脳転移)による症状の改善を目的に加療が行われることが多い。第Ⅲ相試験は少ないものの,大多数の研究において放射線治療による高い症状緩和効果と低い有害事象発生頻度が一致して報告されている。加えて,約70%の患者において治療後3 ヵ月の時点でのQOL は改善または維持されることから12),緩和目的の放射線外照射療法は推奨できると判断される。

根治的治療が困難な手術不能例や高度の局所進展例においては,病勢の進行抑制に有効である。特に,原発巣に起因する膀胱出血に対する緩和効果は高く,おおむね70〜90%の患者に有意な出血緩和効果が得られ,50〜60%に完全緩解が得られると報告されている1〜8)。ただし,初期効果は高いものの,6 ヵ月目の評価で69%の患者に再出血が認められ7),症状改善後の再増悪までの期間は中央値で6 ヵ月と報告されており2),長期制御は期待し難いことが課題である。放射線照射方法としては,寡分割照射が主流である1〜8)

骨転移に起因する疼痛に対しては,おおむね60〜80%の患者に症状緩和効果が得られる13〜5910)。放射線照射方法としては,1 回照射を含む寡分割照射が主流となっている11)。骨転移に起因する疼痛緩和効果に関する1 回照射と分割照射を比較した25 のRCT のシステマティックレビューでは,有効率,完全緩解率はともに分割方法間に有意差を認めなかったが,再治療率は1 回照射群が分割照射群の2.6 倍と有意に多かった(95% CI:1.92〜3.67,p < 0.00001)10)。したがって,患者の全身状態や予後に応じて,適切な線量分割を選択することが重要と考えられる。

頻度は低いものの,膀胱癌の脳転移に対しても放射線外照射は有効である。照射方法としては,脳照射と定位放射線照射が広く用いられており,膀胱癌においても手術例と比較して遜色のない成績が報告されている12)。また,脳転移に対する全脳照射においても,4Gy×5 回の寡分割照射が試みられている13)。脳転移の治療については,脳腫瘍診療ガイドラインを参照されたい14)

参考文献

1)
Fletcher A, Choudhury A and Alam N:Metastatic bladder cancer:a review of current management. ISRN Urol 2011:545241, 2011
2)
Duchesne GM, Bolger JJ, Griffiths GO, et al:A randomized trial of hypofractionated schedules of palliative radiotherapy in the management of bladder carcinoma:results of medical research council trial BA09. International journal of radiation oncology, biology, physics 47:379-388, 2000
3)
Lutz ST, Chow EL, Hartsell WF and Konski AA:A review of hypofractionated palliative radiotherapy. Cancer 109:1462-1470, 2007
4)
Coen JJ, Zietman AL, Kaufman DS and Shipley WU:Benchmarks achieved in the delivery of radiation therapy for muscle-invasive bladder cancer. Urol Oncol 25:76-84, 2007
5)
Caravatta L, Padula GD, Macchia G, et al:Short-course accelerated radiotherapy in palliative treatment of advanced pelvic malignancies:a phase I study. Int J Radiat Oncol Biol Phys 83:e627-631, 2012
6)
Abt D, Bywater M, Engeler DS and Schmid HP:Therapeutic options for intractable hematuria in advanced bladder cancer. Int J Urol 20:651-660, 2013
7)
Lacarriere E, Smaali C, Benyoucef A, Pfister C and Grise P:The efficacy of hemostatic radiotherapy for bladder cancer-related hematuria in patients unfit for surgery. Int Braz J Urol 39:808-816, 2013
8)
Shuja M, Nazli S, Mansha MA, et al:Bleeding in Locally Invasive Pelvic Malignancies:Is Hypofractionated Radiation Therapy a Safe and Effective Non-Invasive Option for Securing Hemostasis? A Single Institution Perspective. Cureus 10:e2137, 2018
9)
Froehner M, Holscher T, Hakenberg OW and Wirth MP:Treatment of bone metastases in urologic malignancies. Urol Int 93:249-256, 2014
10)
Chow E, Zeng L, Salvo N, Dennis K, Tsao M and Lutz S:Update on the systematic review of palliative radiotherapy trials for bone metastases. Clin Oncol 24:112-124, 2012
11)
公益社団法人日本放射線腫瘍学会編:放射線治療計画ガイドライン 2016 年版.金原出版,東京,2016
12)
Fokas E, Henzel M and Engenhart-Cabillic R:A comparison of radiotherapy with radiotherapy plus surgery for brain metastases from urinary bladder cancer:analysis of 62 patients. Strahlenther Onkol 186:565-571, 2010
13)
Rades D, Meyners T, Veninga T, Stalpers LJ and Schild SE:Hypofractionated whole-brain radiotherapy for multiple brain metastases from transitional cell carcinoma of the bladder. Int J Radiat Oncol Biol Phys 78:404-408, 2010
14)
特定非営利活動法人日本脳腫瘍学会編集, 一般社団法人日本脳神経外科学会監修:脳腫瘍診療ガイドライン 2016. http://www.jsn-o.com/guideline/index.html

Ⅶ.膀胱癌の経過観察

総論

1.膀胱癌の経過観察について

膀胱癌の経過観察では膀胱が温存されているNMIBC 患者と膀胱が摘除された患者では大きな違いがある。MIBC に対して放射線療法+化学療法により膀胱が温存された場合の詳細は省くが,基本的にはMIBC の膀胱全摘除後の経過観察項目にハイリスクNMIBC の膀胱に対する経過観察項目を組み合わせたものと考えるのが妥当であろう。

2.NMIBC の経過観察

NMIBC に対する経過観察の目的は,膀胱内再発の早期発見による侵襲度の高い治療の回避,MIBC への進展を含むリスクの高い再発の早期発見による膀胱温存維持あるいは生存率の改善,上部尿路病変の早期発見による生存率向上にあると言える。NMIBC に対してBCG 膀胱内注入療法を行わない場合,5 年膀胱内再発率は31〜78%,5 年筋層進展率は0.8〜45%とされている1)。BCG の導入により,5 年晩期再発率は25.9〜55.4%に,5 年(筋層)進展率は2.4〜18.9%程度に低下するとされている2)。このように,再発率,MIBC への進展率に大きな違いがあるのは,NMIBC が非常に多様性のある疾患群であるためである。したがって,NMIBC を妥当性のあるリスク分類のもとに経過観察法を修正することは当然と言える。

3.経過観察の視点からのNMIBC のリスク分類について

リスク分類についての詳細は他項に譲るが,経過観察について注意すべきことがある。例えばEAU のNMIBC リスク分類においては,代表的なSylvester らの研究をもとにしているが,本研究自体はEORTC の7 つのRCT における2,596 名のNMIBC 患者を対象としたデータを基に作成されたものである1)。結果は,再発,進展ともに,腫瘍数,腫瘍サイズ,再発歴,T 病期,異型度,CIS の有無がリスク因子とされるが,対象患者は70 歳以下が67.4%,80 歳を超えた患者が4.5%を占め,BCG 膀胱内注入療法は全員受けていなかった集団のデータを基にしている1)。一方,同グループはBCG の導入療法と1〜3 年の維持療法を行った集団でのリスク因子の解析結果も報告しており,再発に寄与する因子は,異型度,再発歴,腫瘍数であり,進展や疾患特異的生存に関与する因子はT 病期と異型度であった2)。このように,再発率,再発パターン,時期などは,治療介入や患者背景により変化していく可能性があり,最新のデータも加味しながら実臨床では応用していくべきであり,日本の現在の実臨床とは違いがあることに注意が必要である。

4.NMIBC 患者の上部尿路の経過観察は?

一般にNMIBC の患者に同時性の上部尿路腫瘍が見つかる割合は1.8%であり,膀胱三角部に腫瘍があるとそのリスクは6 倍になる3)。8 年間の経過観察で膀胱CIS の患者では24.6%に上部尿路に腫瘍病変が生じるが,CIS を伴わないNMIBC の場合は2.3%であった4)。他の研究ではNMIBC に対する2 年ごとの観察で上部尿路腫瘍が2.6%に認められたが,低リスクでは0.6%であったのに対し,高リスクでは4.1%と高い5)。上部尿路腫瘍の発症リスクとしては膀胱腫瘍の多発性が唯一の有意なリスク因子であったという5)。全体として,NMIBC の経過観察中の上部尿路腫瘍の頻度は低く,例えばNMIBC 患者にCT urography(CTU)で定期経過観察を行ってもNMIBC 治療後の上部尿路再発の25〜27%程度しか検出できなかったとの報告もあり6),全てのNMIBC 患者への上部尿路の画像診断による定期経過観察には疑問が残る。超音波検査は容易に施行可能であるが,定期診察時における超音波検査が上部尿路再発の早期発見と結果的に尿路上皮癌による死亡を減らせるかのエビデンスはない。

5.リスク分類に応じたNMIBC の経過観察

現時点ではNMIBC の経過観察において,リスク分類に応じて方法や頻度,期間を修正した結果が,最終的な膀胱温存率,進展率,癌死率,経済的効果にどの程度寄与できるかを検証した前向きの研究や前向きRCT はない。しかしながら過去のデータからリスクごとの再発率,進展率の大きな違いは明らかであり,既存のリスク分類に沿って経過観察のプロトコールを修正することは妥当といえる。ここでは海外の主要機関(AUA,EAU,NCCN)によるガイドライン7〜9),および本ガイドライン委員会の経過観察プロトコールの一案を提示する(表1)。経過観察における尿中分子マーカーの応用についてはCQ26 に記載するが,保険承認上の制約もあり,表1 には明記していない。表1 にあげた経過観察については,上述してきた内容の他に以下の後方視的なデータが,主な根拠となっている。
ⅰ)初回治療後3 ヵ月目の所見がその後の再発や進展の重要な指標となる1011)
ⅱ)低リスク膀胱癌の再発はほとんどが低異型度のTa である。したがって経過観察における尿細胞診の有用性は極めて低い1213)
ⅲ)低リスク膀胱癌が5 年間再発なければその後の再発の確率は低い14)
ⅳ)中・高リスク膀胱癌では10 年以降の再発もありうる15)

表1 NMIBC の経過観察* 1
表1 NMIBC の経過観察

7) 8) 9)

6.膀胱全摘除術後の経過観察〜特に筋層浸潤癌

CQ2728 の解説でも記載されているように,膀胱全摘除術後の経過観察は,①癌の再発(局所・尿路再発,遠隔転移),②上部尿路の変化と腎機能,③代謝異常が重要観察項目である。

(1)癌の再発に関する経過観察について

再発の早期発見が経過観察の重要な目的であるが,現在まで,膀胱全摘除術後に早期発見することにより生存率や生存期間の延長が得られることを示した前向き研究はない16)。これは,これまで膀胱全摘除術後の再発に対する治療がプラチナ製剤を中心とする化学療法に限られていたためにも起因する。

しかし,免疫チェックポイント阻害薬に代表される免疫療法の進歩や新規薬剤開発が進んでおり,再発の早期発見の意義は今後高まる可能性がある。しかしながら,膀胱癌患者はPS や年齢,全身状態などの点で再発時の積極的治療が困難な場合や積極的治療を希望されない場合も多く,そのような患者を綿密な経過観察プロトコールに縛らないように配慮することも必要である。

①局所再発

局所再発の定義は膀胱が位置した箇所,あるいは骨盤リンパ節の郭清された範囲内とする場合が多い。その頻度は5〜16.5%とされており1718),多くは2 年以内に起こる。局所再発の危険因子としては,病期,リンパ節転移の存在,骨盤リンパ節郭清の質,断端陽性,周術期化学療法などがあげられる1819)

②遠隔転移

遠隔転移再発の80〜90%は3 年以内,特に2 年以内にきたすことが多いが2021),周術期化学療法を施行された患者では異なる可能性がある。遠隔転移の好発部位としてはリンパ節,肺,肝臓,骨などがあげられ2223),遠隔転移再発のリスク因子としてはT 病期(T3/4)やリンパ節転移があげられる24)

③上部尿路再発

上部尿路再発は膀胱全摘術後で1.8〜6.0%とされているが81725),3 年以降の再発部位としてはその頻度は高く18),3 年で4%,5 年で7%との報告もある26)。膀胱全摘除術後の上部尿路再発リスクとしては,膀胱癌の多発性,CIS の合併,尿管の断端陽性などがあげられている25)。また術前に尿管ステントが留置されていた患者では膀胱全摘除術後の上部尿路再発率が高いとの報告もあり,注意が必要である27)

④尿道再発

膀胱全摘除術後の尿道再発に関しては,その頻度は男性で1.5〜6.0%,女性で0.83〜4.3%とされ17),3 年以内の再発が多いという。尿道再発の危険因子として,男性ではNMIBC に対する膀胱全摘,前立腺の病変,再発性NMIBC の既往等があげられており,女性では膀胱頸部病変があげられている17)。禁制型尿路変向(新膀胱)より非禁制型尿路変向の方が尿道再発率は高い(0.9〜4.0% vs 6.4〜11.1%)との報告が多く18),特に理由がない限り,基本的には非禁制型尿路変向の場合は膀胱全摘除術時には尿道全摘を行うべきであろう。最近のメタアナリシス研究でも,尿道再発のリスク因子として,男性,非禁制型尿路変向,CIS,表在性を含む膀胱癌の既往,前立腺部尿道や膀胱頸部の腫瘍,多発膀胱腫瘍や尿道断端陽性等があげられている28)。また,無症候性で発見された尿道再発の方が症状発現後より予後が良いことから洗浄尿細胞診による経過観察が重要であるとされているが1628),前述したように非禁制型の尿路変向の場合には尿道全摘を行うべきであろう。

(2)機能的経過観察について

上部尿路の変化と腎機能,ならびに代謝異常に関しては尿路変向による変化と加齢や併存疾患による機能低下の経過観察が重要である891629)。また,非禁制型尿路変向ではストーマの,禁制型の場合には排尿状態の観察や管理も生涯必要となる。腎機能に関しては禁制型か非禁制型の尿路変向の方法による腎機能低下の差はないとされるが30〜32),非禁制型でも尿管皮膚瘻では腎機能低下が高度となる傾向が指摘されている32)。いずれにしても,上部尿路の形態と腎機能の経過観察は癌の再発の経過観察が終了した後も必要と考えられる891617)。特に術後の水腎症,腸管利用の尿路変向における尿管腸管吻合部狭窄が腎機能低下に有意に影響することから33),これらのモニタリングは重要である。回腸導管に限った研究であるが,最初の5 年に45%の患者に尿路変向に起因した合併症が起こり,10 年,15 年,15 年を超えると,それぞれ50%,54%,94%の生存患者に合併症が起こるとの報告もあり33),生涯の経過観察の必要性が支持されている891629)

代謝異常に関しては,特にビタミンB12 欠乏症,高クロール性代謝性アシドーシスが重要である。ビタミンB12 欠乏症は回腸終末部を利用する尿路変向に特異的で,発生率は0.2〜33%とされている34〜36)。ビタミンB12 は肝臓に貯蔵されているため欠乏症が出現するのは多くは術後3 年以降であり,この時期より毎年のビタミンB12 測定を行うことが肝要である。

尿路変向や再建に回腸を用いた場合,尿中のCl,NH3,Hを再吸収し,HCO3を排出するため,しばしば高クロール性代謝性アシドーシスをきたす3536)。代謝性アシドーシスは骨塩量低下を招き,病的骨折のリスクを21%上げ,尿路結石の原因になる可能性がある37)。膀胱全摘除術に伴う回腸利用の代用膀胱では術後90 日を超えて観察できた923 名中307 名(33%)に長期の重曹の投与が必要であったという35)。アシドーシスの頻度は回腸導管で15%程度であるが,利用腸管の長い禁制型で頻度は上昇(50%程度まで)するという38)。このように機能的な経過観察は尿路上皮癌再発の経過観察必要性が終了したとしても続けられるべきである。

7.経過観察のタイムテーブルと方法

膀胱全摘除術を受けた患者の経過観察において,海外のデータではあるが,ほとんどの再発は症状を伴っており,50%を超える遠隔(転移)再発が症状ありとの報告もある16)。また,症状ありと症状なしで発見された再発は,その後の生存率の差がないとの報告39)もみられる一方,症状なしの発見は生存率が上昇する(特に肺転移の早期発見40))との報告2041)もあるが全て後方視的研究である42)。今後,免疫チェックポイント阻害薬に代表される新規の再発性,転移性の尿路上皮癌に対する薬剤が使用できるようになり,再発の早期発見の意義や重要性が変わる可能性があり,経過観察の方法や時期,期間も変わる可能性がある。EAU やAUA,NCCN によるガイドラインでは病期や再発リスクにあわせた明確な経過観察のタイムテーブルや方法を提示しておらず7〜9),International Bladder Cancer Network は,全摘時病理所見に沿った一定の経過観察法が提示されているが,周術期化学療法施行の有無などを加味したり確固たるエビデンスに基づいたものではない16)。また全身状態や年齢を加味すべきとの見解もある43)。本ガイドライン作成委員会の推奨する膀胱全摘除術後の経過観察を,① pT2 以下かつpN0 と,② pT3 以上あるいはany pT N1〜3 の2 分類として表2 に提示する。全摘標本でpT1 以下かつpN0 の症例はpT2N0 より再発リスクは低いことから,①をさらに2 グループに分類して経過観察のプロトコールを変えているものもある4244)。明確なエビデンスに基づいたものではないが,腎上部尿路の形態変化や上部尿路再発の観察については造影CT で行うこととしている7〜916)

表2 膀胱全摘除術後の経過観察*1, 2
表2 膀胱全摘除術後の経過観察

参考文献

1)
Sylvester RJ, van der Meijden AP, Oosterlinck W, et al:Predicting recurrence and progression in individual patients with stage Ta T1 bladder cancer using EORTC risk tables:a combined analysis of 2596 patients from seven EORTC trials. Eur Urol 49:466-465, 2006
2)
Cambier S, Sylvester RJ, Collette L, et al:EORTC Nomograms and Risk Groups for Predicting Recurrence, Progression, and Disease-specific and Overall Survival in Non-Muscle-invasive Stage Ta-T1 Urothelial Bladder Cancer Patients Treated with 1-3 Years of Maintenance Bacillus Calmette-Guérin. Eur Urol 69:60-69, 2016
3)
Palou J, Rodríguez-Rubio F, Huguet J, et al:Multivariate analysis of clinical parameters of synchronous primary superficial bladder cancer and upper urinary tract tumor. J Urol 174:859-861, 2005
4)
Solsona E, Iborra I, Ricós JV, Dumont R, Casanova JL and Calabuig C:Upper urinary tract involvement in patients with bladder carcinoma in situ(Tis):its impact on management. Urology 49:347-352, 1997
5)
Millán-Rodríguez F, Chéchile-Toniolo G, Salvador-Bayarri J, Huguet-Pérez J and Vicente-Rodríguez J:Upper urinary tract tumors after primary superficial bladder tumors:prognostic factors and risk groups. J Urol 164:1183-1187, 2000
6)
Sternberg IA, Keren Paz GE, Chen LY, et al:Upper tract imaging surveillance is not effective in diagnosing upper tract recurrence in patients followed for nonmuscle invasive bladder cancer. J Urol 190:1187-1191, 2013
7)
Chang SS, Boorjian SA, Chou R, et al:Diagnosis and Treatment of Non-Muscle Invasive Bladder Cancer:AUA/SUO Guideline. J Urol 196:1021-1029, 2016
8)
EAU Oncology Guidelines. https://uroweb.org/individual-guidelines/oncology-guidelines/
9)
NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology(NCCN Gguiedlines), Bladder Cancer.
https://www.nccn.org/home
10)
Solsona E, Iborra I, Dumont R, Rubio-Briones J, Casanova J and Almenar S:The 3-month clinical response to intravesical therapy as a predictive factor for progression in patients with high risk superficial bladder cancer. J Urol 164:685-689, 2000
11)
Palou J, Rodríguez-Rubio F, Millán F, et al:Recurrence at three months and high-grade recurrence as prognostic factor of progression in multivariate analysis of T1G2 bladder tumors. Urology 73:1313-1317, 2009
12)
Holmäng S, Andius P, Hedelin H, Wester K, Busch C and Johansson SL:Stage progression in Ta papillary urothelial tumors:relationship to grade, immunohistochemical expression of tumor markers, mitotic frequency and DNA ploidy. J Urol 165:1124-1128, 2001
13)
Gofrit ON, Pode D, Lazar A, Katz R and Shapiro A:Watchful waiting policy in recurrent Ta G1 bladder tumors. Eur Urol 49:303-306; discussion 306-307, 2006
14)
Mariappan P and Smith G:A surveillance schedule for G1Ta bladder cancer allowing efficient use of check cystoscopy and safe discharge at 5 years based on a 25-year prospective database. J Urol 173:1108-1111, 2005
15)
Holmäng S and Ströck V:Should follow-up cystoscopy in bacillus Calmette-Guérin-treated patients continue after five tumour-free years? Eur Urol 61:503-507, 2012
16)
Zuiverloon TCM, van Kessel KEM, Bivalacqua TJ, et al:Recommendations for follow-up of muscle-invasive bladder cancer patients:A consensus by the international bladder cancer network. Urol Oncol 36:423-431, 2018
17)
Soukup V, Babjuk M, Bellmunt J, et al:Follow-up after surgical treatment of bladder cancer:a critical analysis of the literature. Eur Urol 62:290-302, 2012
18)
Huguet J:Follow-up after radical cystectomy based on patterns of tumour recurrence and its risk factors. Actas Urol Esp 37:376-382, 2013
19)
Herr HW, Faulkner JR, Grossman HB, et al:Surgical factors influence bladder cancer outcomes:a cooperative group report. J Clin Oncol 22:2781-2789, 2004
20)
Nieuwenhuijzen JA, de Vries RR, van Tinteren H, et al:Follow-up after cystectomy:regularly scheduled, risk adjusted, or symptom guided? Patterns of recurrence, relapse presentation, and survival after cystectomy. Eur J Surg Oncol 40:1677-1685, 2014
21)
Cagiannos I and Morash C:Surveillance strategies after definitive therapy of invasive bladder cancer. Can Urol Assoc J 3:S237-242, 2009
22)
Ghoneim MA, Abdel-Latif M, el-Mekresh M, et al:Radical cystectomy for carcinoma of the bladder:2,720 consecutive cases 5 years later. J Urol 180:121-127, 2008
23)
Bochner BH, Montie JE and Lee CT:Follow-up strategies and management of recurrence in urologic oncology bladder cancer:invasive bladder cancer. Urol Clin North Am 30:777-789, 2003
24)
Donat SM:Staged based directed surveillance of invasive bladder cancer following radical cystectomy:valuable and effective? World J Urol 24:557-564, 2006
25)
Picozzi S, Ricci C, Gaeta M, et al:Upper urinary tract recurrence following radical cystectomy for bladder cancer:a meta-analysis on 13,185 patients. J Urol 188:2046-2054, 2012
26)
Tran W, Serio AM, Raj GV, et al:Longitudinal risk of upper tract recurrence following radical cystectomy for urothelial cancer and the potential implications for long-term surveillance. J Urol 179:96-100, 2008
27)
Kiss B, Furrer MA, Wuethrich PY, Burkhard FC, Thalmann GN and Roth B:Stenting Prior to Cystectomy is an Independent Risk Factor for Upper Urinary Tract Recurrence. J Urol 198:1263-1268, 2017
28)
Li X, Wang W, Zhu G, He W and Gou X:Risk factors, follow-up, and treatment of urethral recurrence following radical cystectomy and urinary diversion for bladder cancer:a meta-analysis of 9498 patients. Oncotarget 9:2782-2796, 2017
29)
Faba OR, Tyson MD, Artibani W, et al:Update of the ICUD-SIU International Consultation on Bladder Cancer 2018:urinary diversion. World J Urol 37:85-93, 2019
30)
Jin XD, Roethlisberger S, Burkhard FC, Birkhaeuser F, Thoeny HC and Stider UE:Longterm renal function after urinary diversion by ileal conduit or orthotopic ileal bladder substitution. Eur Urol 61:491-497, 2012
31)
Eisenberg MS, Thompson RH, Frank I, et al:Long-term renal function outcomes after radical cystectomy. J Urol 191:619-625, 2014
32)
Hatakeyama S, Koie T, Narita T, et al:Renal Function Outcomes and Risk Factors for Stage 3B Chronic Kidney Disease after Urinary Diversion in Patients with Muscle Invasive Bladder Cancer. PLoS One 11:e0149544, 2016
33)
Madersbacher S, Schmidt J, Eberle JM, et al:Long-term outcome of ileal conduit diversion. J Urol 169:985-990, 2003
34)
Shimko MS, Tollefson MK, Umbreit EC, Farmer SA, Blute ML and Frank I:Long-term complications of conduit urinary diversion. J Urol 185:562-567, 2011
35)
Hautmann RE, de Petriconi RC and Volkmer BG:25 years of experience with 1,000 neobladders:long-term complications. J Urol 185:2207-2212, 2011
36)
Steven K and Poulsen AL:The orthotopic Kock ileal neobladder:functional results, urodynamic features, complications and survival in 166 men. J Urol 164:288-295, 2000
37)
Gupta A, Atoria CL, Ehdaie B, et al:Risk of fracture after radical cystectomy and urinary diversion for bladder cancer. J Clin Oncol 32:3291-3298, 2014
38)
Mills RD and Studer UE:Metabolic consequences of continent urinary diversion. J Urol 161:1057-1066, 1999
39)
Volkmer BG, Kuefer R, Bartsch GC Jr, Gust K and Hautmann RE:Oncological followup after radical cystectomy for bladder cancer-is there any benefit? J Urol 181:1587-1593; discussion 1593, 2009
40)
Giannarini G, Kessler TM, Thoeny HC, Nguyer DP, Meissner C and Studer UE:Do patients benefit from routine follow-up to detect recurrences after radical cystectomy and ileal orthotopic bladder substitution? Eur Urol 58:486-494, 2010
41)
Boorjian SA, Tollefson MK, Cheville JC, Costello BA, Thapa P and Frank I:Detection of asymptomatic recurrence during routine oncological followup after radical cystectomy is associated with improved patient survival. J Urol 186:1796-1802, 2011
42)
Stewart-Merrill SB, Alahdab F, Benkhadra K, et al:Oncologic surveillance in bladder cancer following radical cystectomy:A systematic review and meta-analysis. Urol Oncol 34:236. e13-21, 2016
43)
Stewart-Merrill SB, Boorjian SA, Thompson RH, et al:Evaluation of current surveillance guidelines following radical cystectomy and proposal of a novel risk-based approach. Urol Oncol 33:339.e1-8, 2015
44)
Slaton JW, Swanson DA, Grossman HB and Dinney CP:A stage specific approach to tumor surveillance after radical cystectomy for transitional cell carcinoma of the bladder. J Urol 162:710-714, 1999

CQ25
筋層非浸潤性膀胱癌(NMIBC)の患者にリスク分類に沿った経過観察は推奨されるか?

エビデンスの確実性C
初回治療後3 ヵ月目に膀胱鏡検査を行い,その後はリスク分類に基づいた経過観察が推奨される(推奨の強さ1)

解 説

NMIBC は再発率が高く,進行の危険性もあるため治療後の経過観察が必須である。特に,MIBC やhigh grade 腫瘍の出現はその後の治療選択や予後に大きく影響するため注意が必要である。EAU およびNCCN いずれのガイドラインでもNMIBC 初期治療後はリスク分類に基づいた経過観察プロトコールが推奨されている12)。しかし,これまでにリスク分類に基づいた経過観察の有用性や安全性を証明するRCT は行われていない。

TURBT 後3 ヵ月の膀胱鏡検査は再発,進行の重要な予測因子であるため,通常すべてのNMIBC 患者の経過観察として行われるべきと考える34)。TaG1 腫瘍の前向き経過観察試験では3 ヵ月目の再発および非再発症例のその後1 年の再発率がそれぞれ55.8%,17.8%であり,3 ヵ月目の再発症例で有意に多かったと報告されている4)。また,Solsona らは膀胱注入療法を施行したCIS またはT1G3 において,3 ヵ月目の膀胱鏡所見がMIBC 移行の独立した危険因子であると報告している3)。以上より高低リスク腫瘍のいずれにおいても3 ヵ月目の膀胱鏡検査の重要性が示唆されている。

EAU ガイドラインでは,腫瘍個数,腫瘍径,再発回数,深達度,CIS 併発,grade に基づいた再発および進行リスクスコアが提唱されている15)。低リスク腫瘍(初発,単発,Ta low grade,3cm 未満,CIS 併発なしをすべて満たす)は術後3 ヵ月の膀胱鏡検査で陰性なら12 ヵ月目に膀胱鏡検査を施行し,以降5 年まで年1 回膀胱鏡検査を行うことが推奨されている。逆に高リスク腫瘍(T1,high grade,CIS,3cm より大きい多発再発のT1 low grade のいずれか)では,2 年間3 ヵ月ごと,5 年まで6 ヵ月ごと,その後は年1 回の膀胱鏡と尿細胞診を行うことが推奨されている。中リスクでは3 ヵ月目に尿細胞診と膀胱鏡検査を行い,もし陰性なら5 年まで個々の症例に応じ3〜6 ヵ月の間隔で尿細胞診と膀胱鏡検査を行うとされている。低リスク腫瘍では5 年以降の再発が低いため経過観察は5 年とされているが,中・高リスク腫瘍では5 年以降の再発の可能性があるため,永続的な経過観察が推奨されている146)

NCCN ガイドラインでは,AUA リスクカテゴリーに基づいた経過観察が推奨されている2)。低リスク腫瘍(単発3cm 以下のlow grade)は3 ヵ月,12 ヵ月で膀胱鏡を施行し,その後5 年まで1 年ごとの膀胱鏡が推奨されている。中リスク腫瘍(1 年以内の再発のTa low grade,3cm を越えるlow grade 単発腫瘍,low grade 多発腫瘍,3cm 以下のTa high grade,T1 low grade)では治療後1 年目は3,6,12 ヵ月目に,2 年目は6 ヵ月ごとに,その後5 年までは1 年ごとの尿細胞診と膀胱鏡検査が推奨されている。高リスク腫瘍(T1 high grade,再発Ta high grade,CIS,high grade のBCG 後再発,組織学的亜型,脈管侵襲あり,前立腺部尿道進展のいずれか)でははじめの2 年間は3 ヵ月ごと,5 年まで半年ごと,10 年まで1 年ごとの膀胱鏡検査と尿細胞診が推奨されている。それ以外の経過観察に関しては臨床的必要性を考慮し決定するとされている2)

以上より,現時点ではリスク分類に基づいた経過観察の有効性および安全性を証明した前向きなエビデンスは十分でないものの,治療後3 ヵ月目にすべてのNMIBC に膀胱鏡検査を施行し,その後はリスク分類に基づいた経過観察が推奨される。

参考文献

1)
http://uroweb.org/guideline/bladder-cancer-muscle-invasive-and-metastatic/
2)
https://www.nccn.org/home
3)
Solsona E, Iborra I, Dumont R, Rubio-Briones J, Casanova J and Almenar S:The 3-month clinical response to intravesical therapy as a predictive factor for progression in patients with high risk superficial bladder cancer. J Urol 164:685-689, 2000
4)
Mariappan P and Smith G:A surveillance schedule for G1Ta bladder cancer allowing efficient use of check cystoscopy and safe discharge at 5 years based on a 25-year prospective database. J Urol 173:1108-1111, 2005
5)
Sylvester RJ, van der Meijden AP, Oosterlinck W, et al:Predicting recurrence and progression in individual patients with stage Ta T1 bladder cancer using EORTC risk tables:a combined analysis of 2596 patients from seven EORTC trials. Eur Urol 49:466-465;discussion 475-477, 2006
6)
Holmäng S and Ströck V:Should follow-up cystoscopy in bacillus Calmette-Guérin-treated patients continue after five tumour-free years? Eur Urol 61:503-507, 2012

CQ26
筋層非浸潤性膀胱癌(NMIBC)の患者の経過観察において尿中分子マーカーや腫瘍可視化技術の使用は推奨されるか?

エビデンスの確実性C
再発高リスクの症例では膀胱鏡と尿細胞診による従来の経過観察に加えて,尿中分子マーカーやNBI は選択された症例に対して考慮することが推奨される(推奨の強さ2)

解 説

NMIBC に対する初期治療後の経過観察は,侵襲的な膀胱鏡検査がその中心となる。そのため,より非侵襲的な検査による膀胱鏡の回避や新規検査による診断率向上,予後改善が期待される。非侵襲的検査として,尿中分子マーカーや腫瘍可視化技術(PDD,NBI 等)の有用性が複数報告されている12)が,その経過観察における有用性を証明したRCT は存在しない。

尿中マーカーとして特異度の高い尿細胞診が広く用いられているが,診断が病理医の経験や検体の採取・処理法に依存するなどの問題がある1)。また尿細胞診の感度は35〜70%と一般的に高くなく,特に低異型度および再発腫瘍では感度が低下すると報告されている3)。NMIBC の診断や経過観察に用いられる尿中分子マーカーとして,NMP22,BTA,FISH 法による膀胱癌関連遺伝子検査(ウロビジョン)など複数の尿中分子マーカーの有用性が報告されており,その多くは尿細胞診より感度が高く,特異度が低いとされる34)。Yoder らは膀胱癌の経過観察において尿細胞診陰性例の26%が尿中FISH 検査陽性で,そのうちの62.5%に癌が発見されたと報告している5)。Kamat らはTURBT 後BCG 膀胱内注入療法を施行するNMIBC 患者に対するFISH を用いた経過観察の有用性を検討する前向き試験で,TURBT 後6 週目のFISH 陽性は3 ヵ月もしくは6 ヵ月後の再発リスクが3〜5 倍,進行が5〜13 倍となると報告している6)。Shariat らは尿細胞診陰性のNMIBC において尿中NMP22 陽性は再発および進行に有意に関連し,NMP22 を用いた経過観察を行うと3%の進行見逃しで不要な膀胱鏡検査を12%回避できると報告している7)。しかし,前向き試験やエキスパートオピニオンにおいても膀胱鏡検査および尿細胞診に代わる十分な尿中分子マーカーは今のところないと結論づけられている1289)

膀胱鏡検査は膀胱癌の診断および経過観察の中心的検査であるが,通常の膀胱鏡検査では10〜20%の腫瘍の見逃しがあると報告されている1)。NBI や5-ALA またはHAL を用いたPDD といった腫瘍可視化技術のNMIBC の診断や治療における有用性が報告されているが,経過観察における有用性を検討した報告は少ない1011)。NMIBC 治療歴のある患者を含む膀胱癌患者の検討でHAL を用いたPDD は硬性鏡,軟性鏡どちらでも通常の膀胱鏡検査に比較し腫瘍検出率が向上した9)。Herr らはlow grade の再発膀胱癌患者において通常の膀胱鏡に比較しNBI を用いた経過観察は再発回数が少なく,非再発生存期間が有意に延長することを報告した11)。上述のように,腫瘍可視化技術を用いた経過観察の有用性に期待が高まるが,経過観察における有用性および安全性を比較した前向きRCT はない。

以上より,現時点では有用性が証明された尿中分子マーカーや腫瘍可視化技術等の非侵襲検査は存在しないため,通常の膀胱鏡検査が経過観察の軸となる。しかし,通常の膀胱鏡検査ができない症例や膀胱鏡検査および尿細胞診の補助検査として上記の非侵襲検査法が考慮されうる。なお日本では2019 年1 月現在,膀胱癌の経過観察において保険承認されている尿中分子マーカーは尿中BTA が再発診断目的に,FISH 法がCIS と診断された患者に経尿道的手術後2 年を限度として2 回に限り認められているのみである。よって,診断率の向上や膀胱鏡検査回避のための非侵襲検査を用いた経過観察に関するさらなる検討が待たれるところである。

参考文献

1)
Kassouf W, Traboulsi SL, Schmitz-Dräger B, et al:Follow-up in non-muscle-invasive bladder cancer-International Bladder Cancer Network recommendations. Urol Oncol 34:460-468, 2016
2)
Soukup V, Babjuk M, Bellmunt J, et al:Follow-up after surgical treatment of bladder cancer:a critical analysis of the literature. Eur Urol 62:290-302, 2012
3)
van Rhijn BW, van der Poel HG and van der Kwast TH:Urine markers for bladder cancer surveillance:a systematic review. Eur Urol 47:736-748, 2005
4)
Babjuk M, Soukup V, Pesl M, et al:Urinary cytology and quantitative BTA and UBC tests in surveillance of patients with pTapT1 bladder urothelial carcinoma. Urology 71:718-722, 2008
5)
Yoder BJ, Skacel M, Hedgepeth R, et al:Reflex UroVysion testing of bladder cancer surveillance patients with equivocal or negative urine cytology:a prospective study with focus on the natural history of anticipatory positive findings. Am J Clin Pathol 127:295-301, 2007
6)
Kamat AM, Dickstein RJ, Messetti F, et al:Use of fluorescence in situ hybridization to predict response to bacillus Calmette-Guérin therapy for bladder cancer:results of a prospective trial. J Urol 187:862-867, 2012
7)
Shariat SF, Savage C, Chromecki TF, et al:Assessing the clinical benefit of nuclear matrix protein 22 in the surveillance of patients with non-muscle-invasive bladder cancer and negative cytology:a decision-curve analysis. Cancer 117:2892-2897, 2011
8)
Tilki D, Burger M, Dalbagni G, et al:Urine markers for detection and surveillance of nonmuscle-invasive bladder cancer. Eur Urol 60:484-492, 2011
9)
Kamat AM, Karam JA, Grossman HB, Kader AK, Munsell M and Dinney CP:Prospective trial to identify optimal bladder cancer surveillance protocol:reducing costs while maximizing sensitivity. BJU Int 108:1119-1123, 2011
10)
Loidl W, Schmidbauer J, Susani M and Marberger M:Flexible cystoscopy assisted by hexaminolevulinate induced fluorescence:a new approach for bladder cancer detection and surveillance? Eur Urol 47:323-326, 2005
11)
Herr HW and Donat SM:Reduced bladder tumour recurrence rate associated with narrow-band imaging surveillance cystoscopy. BJU Int 107:396-398, 2011

CQ27
筋層非浸潤性膀胱癌(NMIBC)ならびに膀胱全摘除術後の経過観察において,上部尿路の評価は推奨されるか?

エビデンスの確実性C
上部尿路の評価を行い,無症候性再発を早期発見することは推奨される(推奨の強さ2)。ただし,現時点で明確な上部尿路経過観察プロトコールは確立されていない。

解 説

NMIBC 治療後の上部尿路再発率は,低リスク癌では0.7%程度であるが高リスク癌では20〜25%とされる1)。EAU およびNCCN いずれのガイドラインでもNMIBC 初期治療後はリスク分類に基づいた経過観察が推奨され,その中で上部尿路経過観察に関しては,EAU では進展高リスク症例において1 年ごとの画像検索が推奨されており(期間は明記なし),NCCN ガイドラインではAUA が定義する高リスク症例に対しては術後1 年目,以後1〜2 年ごとに10 年目までの上部尿路検索が推奨されている23)。International Bladder Cancer Network が2016 年に発表した推奨プロトコールもNCCN 同様である4)。上部尿路癌に対する細胞診の感度は膀胱癌より低いとされており,画像検査としてCTU(CT 造影剤が使用不可の場合はMR urography(MRU)での代用)の併用が推奨される。

ただし,これらはすべて後ろ向き研究から導き出されたものである。Sternberg らは,935 例のNMIBC の経過観察において51 例に上部尿路再発を認め,そのうち定期画像検査で同定された症例は15 例(29%)に留まり,延べ3,074 件の画像検査の有効率はわずか0.49%であったことからCTU による経過観察に疑問を呈している1)。T1G3 ハイリスク癌でもBCG 膀胱内注入療法を行い5 年間膀胱内無再発の場合,その後の上部尿路再発リスクは非常に低くなるとの報告もあり5),NMIBC 治療後の上部尿路経過観察の頻度や期間に関しては議論が必要と考えられる。

一方,膀胱全摘除術後では上部尿路再発は1.8〜6.0%と比較的稀なものの,術後3 年目以後の晩期再発部位としては頻度が高い6)。上部尿路再発症例は遠隔転移を伴うことは稀で,再発した場合,生存期間中央値は10〜55 ヵ月,60〜67%の症例は癌死すると報告されている78)。Picozzi らのメタアナリシスでは上部尿路再発のうち38%は無症候性で,定期検査が発見の契機となっている9)。無症候性での早期発見にて癌死率・全死亡率が30%低下するとの報告もあり定期的な経過観察が臨床的に有意義な可能性があるが,この点に関しては議論の余地がある10)。経過観察法としては尿細胞診のみではなくCTU を用いることで,手術合併症(水腎症・傍ストーマヘルニア)や遠隔転移再発・リンパ節再発のチェックを同時に行うことが勧められる11)。尿細胞診以外にFISH 法(ウロビジョン®)など新たな診断技術の併用も試みられているが,現状では偽陽性率が高く,今後診断率の向上が求められる12)

膀胱全摘除術後の経過観察として,EAU ガイドラインでは,1 年目は4 ヵ月ごと,2〜3 年目は6 ヵ月ごと,以後は1 年ごとの術後画像検索が推奨されており,その中に上部尿路画像検査も含まれるものと考えられる。NCCN ガイドラインでは上部尿路および腹部・骨盤部画像を術後2 年は3〜6 ヵ月ごと,5 年目までは1 年ごとを推奨している。

膀胱全摘除術後の上部尿路再発リスクは,MIBC よりもNMIBC 症例の方が高く,その他のリスク因子としては多発・CIS・遠位尿管断端陽性があげられる1314)。膀胱全摘除術時尿管断端CIS 陽性例に対して,6 ヵ月ごとの尿管鏡検査を用いた経過観察が上部尿路再発早期発見に有用であったとの報告もあるが15),リスク・ベネフィットを考え,このようなリスク因子を持つ尿路再発高リスク症例においてはより入念な上部尿路経過観察が有効かもしれない。

参考文献

1)
Sternberg IA, Keren Paz GE, Chen LY, et al:Upper tract imaging surveillance is not effective in diagnosing upper tract recurrence in patients followed for nonmuscle invasive bladder cancer. J Urol 190:1187-1191, 2013
2)
http://uroweb.org/guideline/non-muscle-invasive-bladder-cancer/
3)
https://www.nccn.org/home
4)
Kassouf W, Traboulsi SL, Schmitz-Dräger B, et al:Follow-up in non-muscle-invasive bladder cancer-International Bladder Cancer Network recommendations. Urol Oncol 34:460-468, 2016
5)
Golabek T, Palou J, Rodriguez O, Gaya JM, Breda A and Villavicencio H:Is it possible to stop follow-up of patients with primary T1G3 urothelial carcinoma of the bladder managed with intravesical bacille Calmette-Guerin immunotherapy? World J Urol 35:237-243, 2017
6)
Huguet J:Follow-up after radical cystectomy based on patterns of tumour recurrence and its risk factors. Actas Urol Esp 37:376-382, 2013
7)
Tran W, Serio AM, Raj GV, et al:Longitudinal risk of upper tract recurrence following radical cystectomy for urothelial cancer and the potential implications for long-term surveillance. J Urol 179:96-100, 2008
8)
Soukup V, Babjuk M, Bellmunt J, et al:Follow-up after surgical treatment of bladder cancer:a critical analysis of the literature. Eur Urol 62:290-302, 2012
9)
Picozzi S, Ricci C, Gaeta M, et al:Upper urinary tract recurrence following radical cystectomy for bladder cancer:a meta-analysis on 13,185 patients. J Urol 188:2046-2054, 2012
10)
Gakis G, Black PC, Bochner BH, et al:Systematic Review on the Fate of the Remnant Urothelium after Radical Cystectomy. Eur Urol 71:545-557, 2017
11)
Shinagare AB, Sadow CA and Silverman SG:Surveillance of patients with bladder cancer following cystectomy:yield of CT urography. Abdom Imaging 38:1415-1421, 2013
12)
Fernandez MI, Parikh S, Grossman HB, et al:The role of FISH and cytology in upper urinary tract surveillance after radical cystectomy for bladder cancer. Urol Oncol 30:821-824, 2012
13)
Takayanagi A, Masumori N, Takahashi A, Takagi Y and Tsukamoto T:Upper urinary tract recurrence after radical cystectomy for bladder cancer:incidence and risk factors. Int J Urol 19:229-233, 2012
14)
Sanderson KM, Cai J, Miranda G, Skinner DG and Stein JP:Upper tract urothelial recurrence following radical cystectomy for transitional cell carcinoma of the bladder:an analysis of 1,069 patients with 10-year followup. J Urol 177:2088-2094, 2007
15)
Wagner KR, Schoenberg MP, Bianco FJ Jr and Jarrett TW:Prospective intermediate follow-up of carcinoma in situ involving the distal ureter at cystectomy:is there a role for ureteroscopy? J Endourol 22:1241-1246, 2008

CQ28
膀胱全摘除術後は摘出病理組織所見や再発リスクに沿った経過観察が推奨されるか?

エビデンスの確実性C
再発リスクに沿った経過観察を行うことが推奨される(推奨の強さ2)。ただし,現時点で摘出病理組織所見や再発リスクに沿った明確な経過観察プロトコールは確立されていない。

解 説

MIBC に対する膀胱全摘除術後の経過観察は,①癌の再発(局所・尿路再発,遠隔転移),②尿路変向に関連した上部尿路の変化,③腎機能,および,④代謝異常が観察項目である。②〜④に関しては,非禁制型尿路変向時の水腎症の有無,腎機能モニタリング,禁制型尿路変向時の代謝性アシドーシスやビタミンB12モニタリング等が重要となる1)

①に関して,局所再発は5〜15%の症例に認められ,術後2 年以内に多い。リスク因子としては膀胱壁外浸潤,リンパ節転移,断端陽性,摘出リンパ節数,リンパ節郭清範囲,周術期化学療法の有無があげられる23)。遠隔転移は50%の症例で認められ,高ステージ,リンパ節転移がリスク因子となる。転移部位としてはリンパ節,肺,肝,骨が主で,術後2 年以内が多く,10 年以上経過するとほとんど認めない45)。尿道再発は男性患者の1.5〜6.0%,女性患者の0.8〜4.3%で認められ,再発までの期間は平均13.5〜39 ヵ月と報告されている1)。リスク因子としては,男性では(再発)筋層非浸潤癌,前立腺部尿道浸潤,女性では膀胱頸部浸潤があげられ,非失禁型代用膀胱が造設された症例は失禁型尿路変向症例と比較して有意に再発率が低いとされる4)。上部尿路再発は1.8〜6.0%の症例で認められ,晩期再発症例の中では最も頻度が高い。メタアナリシスでは38%の上部尿路再発は無症候性で発見され,多発病巣,尿管断端陽性がリスク因子とされている6)

上記②〜④の項目は通常定期的な経過観察が施行されることとなるが,①については経過観察によって無症候性のうちに転移・再発を発見することが予後改善に有効なのか最終的な結論は出ていない。膀胱全摘除1,270 例中再発を認めた444 例を解析し,無症状・有症状の両群間で再発後生存率に有意差を認めなかったとの報告もあるが7),この解析は尿路再発が含まれておらず,20 年にもおよぶ症例集積のため再発後の治療選択肢が現在と異なる可能性がある。対して,無症候性での尿道再発早期発見が生存期間延長に寄与するとする報告や8),新膀胱造設後の経過観察において,尿道CIS の発見および肺・遠隔リンパ節転移の無症候性再発の早期発見は予後改善に有効であるとの報告もある9)。Stewart-Merrill らのシステマティックレビューにおいても,尿路再発まで含めた解析では無症候性再発の早期発見は有意に死亡率を低下させる結果であった10)。ただし現状では定期経過観察頻度・期間に関しての明確なエビデンスはなく,3 年目以後の全体的な再発率が低下することから,それ以後の画像検査による経過観察の有効性に関しては今後の検討が必要との意見もある11)

以上をふまえ,NCCN ガイドラインでは膀胱全摘除術後2 年はCT(もしくはMRI, PET-CT)による腹部骨盤部画像検査と胸部単純X 線検査(もしくはCT,PET-CT)による胸部画像検査を3〜6 ヵ月ごと,血液検査を3〜12 ヵ月ごと,尿細胞診を6〜12 ヵ月ごと,以後は5 年目まで1 年ごとの経過観察を推奨している。EAU ガイドラインでは,膀胱全摘除術後1 年は4 ヵ月ごと,2〜3 年目は半年ごと,それ以後は1 年ごとのCT 検査を推奨している1213)。しかし両ガイドラインの経過観察での再発発見率は低く,摘出病理組織所見,再発リスク,年齢などを考慮し患者ごとに経過観察頻度や期間を調整すべきとの報告もある14)。その他にも病理ステージ,リンパ節転移,切除断端の状態,術前水腎症の有無をリスク因子として再発リスクを分類し経過観察様式を変える方法15)や,病理ステージ,年齢,チャールソン併存疾患指数(CCI)から再発部位(尿路,腹部骨盤部,肺,その他)ごとの再発リスクと他因死のバランスを検討し経過観察様式を決定する方法16)などが報告されている。脈管浸潤,壁外浸潤もしくは断端陽性,リンパ節転移,慢性腎疾患,心血管疾患,失禁型尿路変向等のリスク因子による分類を使用した方が病理因子のみの分類よりもコスト面でも効率の良い5 年経過観察方法となる可能性があるとの研究もある17)

参考文献

1)
Soukup V, Babjuk M, Bellmunt J, et al:Follow-up after surgical treatment of bladder cancer:a critical analysis of the literature. Eur Urol 62:290-302, 2012
2)
Novotny V, Froehner M, May M, et al:Risk stratification for locoregional recurrence after radical cystectomy for urothelial carcinoma of the bladder. World J Urol 33:1753-1761, 2015
3)
Cornu JN, Neuzillet Y, Hervé JM, Yonneau L, Botto H and Lebret T:Patterns of local recurrence after radical cystectomy in a contemporary series of patients with muscle-invasive bladder cancer. World J Urol 30:821-826, 2012
4)
Huguet J:Follow-up after radical cystectomy based on patterns of tumour recurrence and its risk factors. Actas Urol Esp 37:376-382, 2013
5)
Yafi FA, Aprikian AG, Fradet Y, et al:Surveillance guidelines based on recurrence patterns after radical cystectomy for bladder cancer:the Canadian Bladder Cancer Network experience. BJU Int 110:1317-1323, 2012
6)
Picozzi S, Ricci C, Gaeta M, et al:Upper urinary tract recurrence following radical cystectomy for bladder cancer:a meta-analysis on 13,185 patients. J Urol 188:2046-2054, 2012
7)
Volkmer BG, Kuefer R, Bartsch GC Jr, Gust K and Hautmann RE:Oncological followup after radical cystectomy for bladder cancer-is there any benefit? J Urol 181:1587-1593, 2009
8)
Gakis G, Black PC, Bochner BH, et al:Systematic Review on the Fate of the Remnant Urothelium after Radical Cystectomy. Eur Urol 71:545-557, 2017
9)
Giannarini G, Kessler TM, Thoeny HC, Nguyen DP, Meissner C and Studer UE:Do patients benefit from routine follow-up to detect recurrences after radical cystectomy and ileal orthotopic bladder substitution? Eur Urol 58:486-494, 2010
10)
Stewart-Merrill SB, Alahdab F, Benkhadra K, et al:Oncologic surveillance in bladder cancer following radical cystectomy:A systematic review and meta-analysis. Urol Oncol 34:236. e13-21, 2016
11)
Alimi Q, Verhoest G, Kammerer-Jacquet SF, et al:Role of routine computed tomography scan in the oncological follow up of patients treated by radical cystectomy for bladder cancer. Int J Urol 23:840-846, 2016
12)
http://uroweb.org/guideline/bladder-cancer-muscle-invasive-and-metastatic/
13)
https://www.nccn.org/home
14)
Stewart-Merrill SB, Boorjian SA, Thompson RH, et al:Evaluation of current surveillance guidelines following radical cystectomy and proposal of a novel risk-based approach. Urol Oncol 33:339.e1-8, 2015
15)
Nieuwenhuijzen JA, de Vries RR, van Tinteren H, et al:Follow-up after cystectomy:regularly scheduled, risk adjusted, or symptom guided? Patterns of recurrence, relapse presentation, and survival after cystectomy. Eur J Surg Oncol 40:1677-1685, 2014
16)
Merrill SB, Boorjian SA, Thompson RH, et al:Oncologic surveillance following radical cystectomy:an individualized risk-based approach. World J Urol 35:1863-1869, 2017
17)
Kusaka A, Hatakeyama S, Hosogoe S, et al:Risk-stratified surveillance and cost effectiveness of follow-up after radical cystectomy in patients with muscle-invasive bladder cancer. Oncotarget 8:65492-65505, 2017

Ⅷ.希少がん

尿路上皮癌亜型および特殊型総論

1.疫学,病理所見

尿路上皮癌,特に浸潤性尿路上皮癌には様々な亜型が存在しており1〜5),その多くは診断時に進行している。最も頻度が高い亜型は扁平上皮への分化を示す尿路上皮癌で,組織学的に腫瘍細胞が扁平上皮化生を示すことが特徴であり,全浸潤性尿路上皮癌の20〜40%に存在するとされる。次いで腺上皮への分化を示す尿路上皮癌で,組織学的に腫瘍細胞が腺管を形成することが特徴であり,全浸潤性尿路上皮癌の6〜18%に存在するとされる。その他の亜型の頻度は低く,具体的な頻度は不明な点が多い。微小乳頭型は腫瘍細胞が小胞巣を形成しその周囲に裂隙形成を伴うことが特徴であり,診断時に進行している症例が多い。リンパ腫様型/ 形質細胞様型は浸潤傾向が強い亜型で,肉眼的に腫瘍形成が不明瞭であることが特徴的である。組織学的には小型腫瘍細胞が高度な浸潤性増殖形式を示すことを特徴とする。肉眼および組織学的には胃癌および乳腺の小葉癌の膀胱への転移症例との類似性が高いことから,原発性と転移性との鑑別が非常に重要な問題となる。胞巣型および微小囊胞型は,腫瘍細胞が正常の尿路上皮に類似した形態を示すことが特徴で,病理診断に難渋することが少なくない。肉腫型は通常の尿路上皮癌の脱分化した組織型であり,尿路上皮癌の経過観察中もしくは通常型尿路上皮癌を伴うことが一般的である。リンパ上皮腫様型は腫瘍内に顕著なリンパ球浸潤を伴うことが特徴で,咽頭部に好発する同名の病名と同様の組織像を示す。巨細胞型は腫瘍内に多数の破骨型巨細胞を認めることが特徴で,骨に好発する同名の病名と同様の組織像を示す。明細胞型は腫瘍細胞が淡明な所見を示すのが特徴で,胞体内に多量のグリコーゲンを認める。脂肪細胞型は腫瘍細胞が脂肪細胞への分化を示すことが特徴とされ,皮膚等の発生する脂腺系腫瘍に類似した所見を示す。いずれの亜型に関しても,特定の成因は不明である。

尿路上皮癌以外にも,扁平上皮癌,腺癌,神経内分泌腫瘍,軟部腫瘍および造血器系腫瘍が膀胱に発生するが,いずれも頻度は低い1245)。最も多い組織型は扁平上皮癌で,角化を伴うことが多い。成因としてビルハルツ住血吸虫感染関連がよく知られているが,本邦ではその頻度は極めて稀である。その他には扁平上皮化生を伴った尿路上皮からの由来が推定されている。次に多い組織型は腺癌で,大腸癌に類似する組織像を示し,時に顕著な粘液産生を伴う。成因として尿膜管由来が最も多く,次いで腺様化生を伴った尿路上皮からの由来が推定されている。神経内分泌癌の多くは小細胞癌であり,肺に発生する同名の腫瘍と同じ組織像を示す。小細胞癌の多くは通常型尿路上皮癌を合併もしくはその経過観察中に発生することから,その発生由来は通常型尿路上皮癌脱分化と推定されている。その他の神経内分泌腫瘍としてはカルチノイドがあげられるが,その頻度は極めて稀である。その他の組織型としては,血液造血器系および軟部腫瘍系があげられる。他臓器の同名症例と同様の組織像を呈する。いずれもその頻度は極めて稀であり,特定の成因は知られていない(表1)。

表1 病理組織学的分類
表1 

2.治療・予後

(1)Stage I

これらの亜型や特殊型は,純粋な尿路上皮癌と比べて病期は進行していることが多い。形質細胞様型や肉腫型では,TURBT にてcT1 と診断された場合でも筋層浸潤を過小評価している可能性が高い。BCG 膀胱内注入療法による膀胱温存は全摘除と比べて予後が不良になることから,これらの症例には即時膀胱全摘除術が推奨される67)。微小乳頭型においては,cT1 症例において即時全摘除術の有用性の報告がある一方で,BCG 膀胱内注入療法と同等であるという報告もあることから結論については議論がある8)。扁平上皮または腺上皮への分化を示すcT1 症例においては,BCG 注入療法にて良好な成績が報告されている9)。これらの症例には綿密な病期診断のもとBCG 膀胱内注入療法が推奨される10)。EAU ガイドラインでは超高リスクとして“some forms of variant histology of urothelial carcinoma”を定義しており,即時膀胱全摘除術を推奨している11)。NCCN ガイドラインでは微小乳頭型,形質細胞様型,肉腫型は筋層浸潤の危険性が高いために,即時膀胱全摘除術を推奨している12)

一方,特殊型である扁平上皮癌や腺癌においても,多くの症例が進行例で見つかることから,cT1 であっても即時膀胱全摘除術を含むより強力な局所治療が推奨される10)。小細胞癌成分を含む場合には,術前化学療法の有用性が病期に関わらず認められることから,術前化学療法とその後の局所治療(膀胱全摘除術または放射線療法)が推奨される10)

(2)Stage Ⅱ – Ⅲ

MIBC の治療においては,National Cancer Data Base のデータを用いて術前化学療法の有用性が検討されている13)。微小乳頭型,肉腫型,神経内分泌腫瘍では,術前化学療法により有意にdownstaging したが,全生存率の改善は神経内分泌腫瘍のみに認められた。扁平上皮または腺上皮への分化を示す症例では,純粋な尿路上皮癌と比較して膀胱全摘除術の成績は同等であり,さらに術前化学療法による予後改善も認められた1415)。以上より,術前化学療法は,小細胞癌を有する症例には考慮すべきであり,扁平上皮または腺上皮への分化を示す症例においても考慮してよい。一方,他の亜型や特殊型における意義は不明である。Trimodality による膀胱温存の成績も報告されている16)。単一施設にて施行された膀胱温存療法303 例のうち,22%がunusual histology であった(扁平上皮または腺上皮への分化を示す腫瘍が74%)。これらの治療成績(CR 率,癌特異的生存率,全生存率)は,純粋な尿路上皮癌と同等であった。

MIBC の予後においては,小細胞癌は通常の尿路上皮癌に比べて不良である。その他の亜型や特殊型においては,純粋な尿路上皮癌と比べて病期は進行している傾向があるが,背景因子を調整すれば予後に変わりがないと考えられている17)

(3)Stage Ⅳ

転移性病期の治療においては,亜型を伴う尿路上皮癌の場合には,純粋な尿路上皮癌と同様に行う。特殊型では,それぞれの組織型に基づいた治療を行うことが推奨される。扁平上皮癌においては臨床試験への参加が推奨されるが,パクリタキセル+イホスファミド+シスプラチン(ITP)による併用化学療法が前向き試験として唯一検討されており考慮してもよい18)。腺癌においても臨床試験への参加が推奨されるが,5-FU ベースのレジメンであるFOLFOX またはGemFLP(5-FU, ロイコボリン, ゲムシタビン, シスプラチン)やITP による併用化学療法を考慮してもよい12)。現在,腺癌においてGemFLP による第Ⅱ相試験が行われている(NCT00082706)。小細胞癌成分を含む場合には,シスプラチンに適格であればエトポシド+シスプラチンが,シスプラチンが不適格の場合にはエトポシド+カルボプラチンが推奨される12)。KEYNOTE-045 試験では約30%が組織学的亜型を含む尿路上皮癌が対象となっていた。全生存における層別化解析では,亜型を有する症例では,ペムブロリズマブの有用性がより高い可能性が示唆された(亜型ありHR:0.58,亜型なしHR:0.80)19)。特殊型における免疫チェックポイント阻害薬の有用性については明らかになっていない。

参考文献

1)
Moch H, Humphrey PA and Ulbright TM:WHO Classification of Tumours of the Urinary System and Male Genital Organs. IARC, Lyon, 2016
2)
日本泌尿器科学会, 日本病理学会, 日本医学放射線学会:腎盂・尿管・膀胱癌取扱い規約 第1 版.金原出版,東京,2011
3)
Lopez-Beltran A, Cheng L, Raspollini MR, et al:Variants of Bladder Cancer The Pathologist’s Point of View. Eur Urol supplement 16:210-222, 2017
4)
Moschini M, D’Andrea D, Korn S, et al:Characteristics and clinical significance of histological variants of bladder cancer. Nat Rev Urol 14:651-668, 2017
5)
Lopez-Beltran A, Henriques V, Montironi R, Cimadamore A, Raspollini MR and Cheng L:Variants and new entities of bladder cancer. Histopathology 74:77-96, 2019
6)
Kaimakliotis HZ, Monn MF, Cary KC, et al:Plasmacytoid variant urothelial bladder cancer:is it time to update the treatment paradigm? Urol Oncol 32:833-838, 2014
7)
Malla M, Wang JF, Trepeta R, Feng A and Wang J:Sarcomatoid Carcinoma of the Urinary Bladder. Clin Genitourin Cancer 14:366-372, 2016
8)
Abufaraj M, Foerster B, Schernhammer E, et al:Micropapillary Urothelial Carcinoma of the Bladder:A Systematic Review and Meta-analysis of Disease Characteristics and Treatment Outcomes. Eur Urol 75:649-658, 2019
9)
Yorozuya W, Nishiyama N, Shindo T, et al:Bacillus Calmette-Guérin may have clinical benefit for glandular or squamous differentiation in non-muscle invasive bladder cancer patients:retrospective multicenter study. Jpn J Clin Oncol 48:661-666, 2018
10)
Warrick JI:Clinical Significance of Histologic Variants of Bladder Cancer. J Natl Compr Canc Netw 15:1268-1274, 2017
11)
EAU Oncology Guidelines. https://uroweb.org/guideline/non-muscle-invasive-bladder-cancer/
12)
NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology(NCCN Gguiedlines), Bladder Cancer.
https://www.nccn.org/home
13)
Vetterlein MW, Wankowicz SAM, Seisen T, et al:Neoadjuvant chemotherapy prior to radical cystectomy for muscle-invasive bladder cancer with variant histology. Cancer 123:4346-4355, 2017
14)
Kim SP, Frank I, Cheville JC, et al:The impact of squamous and glandular differentiation on survival after radical cystectomy for urothelial carcinoma. J Urol 188:405-409, 2012
15)
Scosyrev E, Ely BW, Messing EM, et al:Do mixed histological features affect survival benefit from neoadjuvant platinum-based combination chemotherapy in patients with locally advanced bladder cancer? A secondary analysis of Southwest Oncology Group-Directed Intergroup Study(S8710). BJU Int 108:693-699, 2011
16)
Krasnow RE, Drumm M, Roberts HJ, et al:Clinical Outcomes of Patients with Histologic Variants of Urothelial Cancer Treated with Trimodality Bladder-sparing Therapy. Eur Urol 72:54-60, 2017
17)
Moschini M, Dell’Oglio P, Luciano’ R, et al:Incidence and effect of variant histology on oncological outcomes in patients with bladder cancer treated with radical cystectomy. Urol Oncol 35:335-341, 2017
18)
Galsky MD, Iasonos A, Mironov S, et al:Prospective trial of ifosfamide, paclitaxel, and cisplatin in patients with advanced non-transitional cell carcinoma of the urothelial tract. Urology 69:255-259, 2007
19)
Bellmunt J, de Wit R, Vaughn DJ, et al:Pembrolizumab as Second-Line Therapy for Advanced Urothelial Carcinoma. N Engl J Med 376:1015-1026, 2017

尿道癌総論

1.疫学

原発性尿道癌は非常に稀な腫瘍で,人口100 万人あたり1.1〜1.5 人の発生数である。65 歳以上の発症が多く,男女比は1:1.5〜2.9 と女性において高頻度である1〜5)。発生原因として尿道狭窄,尿道カテーテルもしくは尿道形成術後の慢性刺激,放射線外照射,放射線シード挿入,性感染症後(ヒトパピローマウイルス)の慢性尿道炎などがあげられる467)。女性例では尿道憩室や反復性尿路感染も発生原因となる。現時点では尿道癌の発生と地域性もしくは人種差との関係を示す証拠はない。

2.病理所見

肉眼的には,尿道癌は外方向性乳頭状もしくは結節状腫瘍を形成することが多く,紅斑もしくは白斑状の平坦病変を形成することもある8)。尿道癌の組織型については男女差が存在し,男女とも最も多い組織型は尿路上皮癌で(45〜77%),男性では次いで扁平上皮癌(10〜35%),腺癌(5〜12%)の順となる23910)。女性では腺癌の比率が29〜40%と高い傾向にあり,扁平上皮癌の比率は5〜19%程度である310)。女性の腺癌では特に明細胞腺癌の発生頻度が高く,その多くは尿道憩室から発生する11)。男女とも尿路上皮癌と扁平上皮癌との鑑別が困難な低分化な組織型が多い4)。稀な組織型8)としては腺様囊胞癌,粘液癌,癌肉腫,悪性黒色腫などがあげられる。尿道癌には明確な分化度分類は存在しないが,一般的には高・中・低の三段階分化度評価方法が用いられる。病理学的病期はUICC TNM 分類12)によって判定され,第8 版(2017)では本邦の腎盂・尿管・膀胱癌取扱い規約第1 版で付記されている第7 版から,N 分類の層別で大きさ2cm から個数に変更されている(N1:単発,N2:多発)。

3.予後

予後に関して多くは病期が進行して発見される不良例が多い2〜5913〜15)が,本邦の大規模な報告はない。米国National Cancer Database(2004〜2013 年)の2,137 例の解析において,5 年,10 年全生存率はそれぞれ46%,31%であり,病期別の5年全生存率は,≦ CT1,CT2 および≧ CT3 について63%,38%および29%と報告されている5)。男女別では米国SEER データベース登録で5 年,10 年全生存率は男性2,065 例(1988〜2006 年) で46 %,29 % 9), 女性722 例(1983〜2008 年) で43%,32%と報告されている15)。EU 圏の340 例のRARECARE データベース(1995〜2002 年)では1 年,5 年相対生存率は72%,54%と報告されている2)。組織別に扁平上皮癌は予後不良の傾向を示すが結論は得られていない3〜5914)

4.診断

診断には膀胱尿道鏡検査,身体所見(鼠径部リンパ節触診,男性では直腸診,女性では外陰部視診,膣内診,双手診)が重要である。症状としては,排尿障害,出血(外陰部出血,尿道出血,血尿),膀胱炎様症状,陰部腫瘤などがあるが,男性では尿道狭窄症状や腫瘤触知,女性では尿道出血の頻度が多い。局所進展により皮膚潰瘍を形成することもある。外尿道口付近に発生した癌では視診により発見される場合が多いが,後部尿道に発生した癌では膀胱尿道鏡検査,尿道造影,膣内診が必要であり,発見時にすでに進行している癌も多く,女性では膣癌との鑑別が困難となる場合もある。確定診断は生検による病理診断で行われる。画像検査としてはMRI で原発巣の局所浸潤の程度,CT でリンパ節転移や遠隔転移を確認することが多い16)。腫瘍内部はCT で軟部濃度,MRI のT1 強調画像で低信号,T2 強調画像で低〜やや高信号と非特異的で(図1),尿道造影では局所の不整な狭窄像を示すことが多い。尿道憩室に癌が発生することもあり,尿道造影やCT・MRI での憩室の確認が有効とされ,尿道を取り囲むようなU 字型や馬蹄形の囊胞構造に出現し,T2 強調画像で中等度信号を呈する隆起性病変を示すことが多い17)。尿細胞診の陽性率は約6 割で,扁平上皮癌で高く(77%),尿路上皮癌で低い(50%)と報告され18),尿道憩室癌では特に高い陽性率19)が報告されている。腫瘍マーカーとしてはPSA,SCC,CEA,CA19-9 の上昇も報告されているが,多数の症例では上昇を認めない。

図1 MRI T2 強調画像
図1 MRI T2 強調画像

5.治療法

治療法は性別,癌発生部位,組織型,浸潤範囲,転移部位などの多様な因子に基づき個々の症例によって推奨されるが標準治療は定まっていない16)。治療法に関しての前向き研究はなく,後ろ向き研究や陰茎癌,外陰癌などの他癌腫治療の外挿化に基づく経験的治療が中心であるため,いずれも治療推奨度は低い。過去の報告では,限局性病変では外科的切除が推奨され620),放射線治療単独療法での報告は極めて少ない。

(1)外科的治療

術式は経尿道的内視鏡切除,尿道部分切除,尿道全摘除,陰茎全摘除,膀胱前立腺尿道全摘除,前方骨盤除臓術,骨盤内臓全摘除,恥骨合併切除と浸潤に伴い切除範囲が拡大する。低悪性度で小範囲の非浸潤癌(Ta)は経尿道的内視鏡切除で尿道機能温存可能であり,まず検討されるべき治療法である。限局浸潤癌(T1)の男性では数mm から2cm のマージンを確保した遠位尿道切除および尿道口形成が行われている一方21),女性では環状切除が行われるが,短い尿道長や尿道括約筋損傷のため技術的に困難なことが多い。尿道海綿体浸潤(T2)の男性では尿道亜全摘および会陰部尿道口形成が可能であるが,女性では尿道の温存は困難であり,膀胱瘻造設や尿路変向が必要なことが多い。陰茎海綿体(T3)以上の男性では陰茎全摘除および膀胱前立腺全摘除が必要な症例が多く,周囲浸潤傾向のある腫瘍(T4)では,恥骨合併切除も必要な症例もある。女性では外陰部癌に準じた婦人科領域の合併切除が必要であり,膣前壁合併切除を含む前方骨盤除臓術や広汎外陰切除術が必要になる。広範囲の会陰部手術で欠損部が大きい時は,形成外科的再建術を取り入れることが必要である。治療成績として多施設共同研究154 例(pT1 以下:44%, pT2:24%, pT3 以上32%,cN+:16%)の報告では,53%に治療後再発を認め,再発部位は尿道再発(31%),鼠径リンパ節(29%),遠隔転移(20%)と報告されている13)

鼠径および骨盤内所属リンパ節転移は全体の14〜22% 91315)で認め,特に局所進行例で高頻度にリンパ節転移を認める。陰茎癌とは異なり炎症の影響を受けにくく,リンパ節転移の術前予測精度は92.4%と報告されている13)。系統的リンパ節郭清の予防的22),治療的意義13)は明確ではない。各ガイドラインではリンパ節腫大症例や浸潤癌に対し手術時の郭清を推奨しているものや6),鼠径リンパ節生検後の放射線化学療法を推奨しているものもある20)

(2)放射線治療

局所進行例では手術療法と並んで放射線治療が用いられてきたものの,放射線単独療法の治療成績は手術療法単独と同様に不良である23)。そのため手術療法,化学療法,放射線療法の集学的治療が試みられている61624)。多施設共同研究39 例の報告では,術前化学療法および化学放射線療法に対する奏効率は25%および33%と報告され,奏効例では良好な生存が報告されている24)。また症例報告レベルではあるが外照射,小線源治療と化学療法併用により良好な局所制御が得られることが報告されており2526),本アプローチの有効性の検証が望まれる。

(3)化学療法

遠隔転移例は一般的に全身化学療法が行われているが,3 年全生存率10〜25%程度と予後不良である39)。M.D. Anderson Cancer Center による化学療法の報告(2005〜2009 年)では,組織型別に化学療法レジメンが選択される傾向があり,扁平上皮癌でCGI 療法(シスプラチン, ゲムシタビン, イホスファミド),腺癌でGemFLP 療法(シスプラチン, ゲムシタビン, 5-FU, ロイコボリン),尿路上皮癌でM-VAC やCGI 療法が主に使用され,奏効率はCGI 療法(74%),GemFLP 療法(67%)と良好な成績も報告されている27)。近年免疫チェクポイント阻害薬やプレシジョン・メディシンによる新たな治療方法が試みられており,原発性尿道癌に対してのPD-L1 発現28)やEGF レセプター発現に基づいた治療による奏効例29)の報告がなされている。

参考文献

1)
Swartz MA, Porter MP, Lin DW and Weiss NS:Incidence of primary urethral carcinoma in the United States. Urology 68:1164-1168, 2006
2)
Visser O, Adolfsson J, Rossi S, et al:Incidence and survival of rare urogenital cancers in Europe. European Journal of Cancer 48:456-464, 2012
3)
Aleksic I, Rais-Bahrami S, Daugherty M, Agarwal PK, Vourganti S and Bratslavsky G:Primary urethral carcinoma:A Surveillance, Epidemiology, and End Results data analysis identifying prediCTors of cancer-specific survival. Urol Ann 10:170-174, 2018
4)
Zhang M, Adeniran AJ, Vikram R, et al:Carcinoma of the urethra. Hum Pathol 72:35-44, 2018
5)
Sui W, RoyChoudhury A, Wenske S, Decastro GJ, Mckiernan JM and Anderson CB:Outcomes and Prognostic Factors of Primary Urethral Cancer. Urology 100:180-186, 2017
6)
Gakis G, Witjes JA, Compérat E, et al:EAU guidelines on primary urethral carcinoma. Eur Urol 64:823-830, 2013
7)
Grivas PD, Davenport M, Montie JE, Kunju LP, Feng F and Weizer AZ:Urethral cancer. Hematol Oncol Clin North Am 26:1291-1314, 2012
8)
Moch H, Humphrey PA, Ulbright TM and Reuter VE:WHO Classification of Tumours of the Urinary System and Male Genital Organs. IARC, Lyon, 2016
9)
Rabbani F:Prognostic factors in male urethral cancer. Cancer 117:2426-2434, 2011
10)
Derksen JW, Visser O, de la Rivière GB, Meuleman EJ, Heldeweg EA and Lagerveld BW:Primary urethral carcinoma in females:an epidemiologic study on demographical factors, histological types, tumour stage and survival. World J Urol 31:147-153, 2013
11)
Oliva E and Young RH:Clear cell adenocarcinoma of the urethra:a clinicopathologic analysis of 19 cases. Mod Pathol 9:513-520, 1996
12)
Brierley JD, Gospodarowicz MK and Wittekind C:TNM Classification of Malignant Tumours. Wiley-Blackwell, London, 2017
13)
Gakis G, Morgan TM, Efstathiou JA, et al:Prognostic factors and outcomes in primary urethral cancer:results from the international collaboration on primary urethral carcinoma. World J Urol 34:97-103, 2016
14)
Cahn DB, Handorf E, Ristau BT, et al:Contemporary practice patterns and survival outcomes for locally advanced urethral malignancies:A National Cancer Database Analysis. Urol Oncol 35:670. e15-670. e21, 2017
15)
Champ CE, Hegarty SE, Shen X, et al:Prognostic factors and outcomes after definitive treatment of female urethral cancer:a population-based analysis. Urology 80:374-381, 2012
16)
Dell’Atti L and Galosi AB:Female Urethra Adenocarcinoma. Clinical genitourinary cancer 16:e263-e267, 2018
17)
Hahn WY, Israel GM and Lee VS:MRI of female urethral and periurethral disorders. AJR American journal of roentgenology 182:677-682, 2004
18)
Touijer AK and Dalbagni G:Role of voided urine cytology in diagnosing primary urethral carcinoma. Urology 63:33-35, 2004
19)
O’Connor E, Iatropoulou D, Hashimoto S, Takahashi S, Ho DH and Greenwell T:Urethral diverticulum carcinoma in females-a case series and review of the English and Japanese literature. Transl Androl Urol 7:703-729, 2018
20)
Spiess PE, Agarwal N, Bangs R, et al:Bladder Cancer, Version 5.2017, NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology. J Natl Compr Canc Netw 15:1240-1267, 2017
21)
Smith Y, Hadway P, Ahmed S, Perry MJ, Corbishley CM and Watkin NA:Penile-preserving surgery for male distal urethral carcinoma. BJU international 100:82-87, 2007
22)
Werntz R, Smith Z, Packiam V, et al:Mp37-12 the Role of Inguinal Lymph Node Dissection in Men with Urethral Squamous Cell Carcinoma. Journal of Urology 199:e496, 2018
23)
Garden AS, Zagars GK and Delclos L:Primary carcinoma of the female urethra. Results of radiation therapy. Cancer 71:3102-3108, 1993
24)
Gakis G, Morgan TM, Daneshmand S, et al:Impact of perioperative chemotherapy on survival in patients with advanced primary urethral cancer:results of the international collaboration on primary urethral carcinoma. Ann Oncol 26:1754-1759, 2015
25)
Libby B, Chao D and Schneider BF:Non-surgical treatment of primary female urethral cancer. Rare Tumors 2:e55, 2010
26)
Bagshaw HP, Williams NL, Huang YJ, Tward JD and Gaffney DK:Palladium interstitial implant in combination with external beam radiotherapy and chemotherapy for the definitive treatment of a female urethral carcinoma. Gynecol Oncol Rep 13:40-43, 2015
27)
Dayyani F, Pettaway CA, Kamat AM, Munsell MF, Sircar K and Pagliaro LC:Retrospective analysis of survival outcomes and the role of cisplatin-based chemotherapy in patients with urethral carcinomas referred to medical oncologists. Urol Oncol 31:1171-1177, 2013
28)
Ninomiya S, Kawahara T, Mochizuki T, et al:Expression of PD-L1 and CTLA-4 in female urethral carcinoma. IJU Case Reports 2:23-26, 2019
29)
Bryce AH, Borad MJ, Egan JB, et al:Comprehensive Genomic Analysis of Metastatic Mucinous Urethral Adenocarcinoma Guides Precision Oncology Treatment:Targetable EGFR Amplification Leading to Successful Treatment With Erlotinib. Clinical genitourinary cancer 15:e727-e734, 2017

尿膜管癌総論

1.疫学

尿膜管癌は尿膜管を発生母地とする稀な腫瘍で,発生頻度は全膀胱悪性腫瘍の0.17〜0.7%とされている1〜3)。尿膜管は出生後にその多くは索状化するが,一部は内腔が開存した状態で遺残し,内腔は円柱上皮もしくは尿路上皮で被覆される4)。尿膜管癌で腺癌の発症年齢は20〜90 歳(平均50 歳台),男女比1.4〜2:1 である5〜8),非腺癌の発症年齢は45〜85,男女比6:1 である9)

2.病理所見

組織学的には腺癌の頻度が最も高く5〜8),それらは非囊胞型と囊胞型とに大別されるが,前者の頻度が高い10)。囊胞型では大腸癌に類似した腸型の頻度が最も多く,その他には粘液癌,印環細胞癌,その他の腺癌が発生する。腸型は大腸癌との鑑別が病理学的に問題となることが多く,特に進行癌では大腸癌の膀胱への直接浸潤との鑑別が問題となる。したがって,尿膜管癌には以下の厳密な診断基準が存在する。1)膀胱頂部もしくは前壁に位置する,2)膀胱壁に腫瘍の主座がある,3)膀胱頂部および前壁の膀胱粘膜に広範な腺様化生を認めない,4)他部位に同様の腫瘍を認めない,尿膜管癌の診断には以上の4 つを満たす必要がある2)。上述の診断基準および免疫染色による鑑別が重要である1112)。非囊胞型は粘液産生性の高分化癌が多く,予後は良好である。腺癌以外では,尿路上皮癌,小細胞癌,扁平上皮癌の順の頻度で発生する579)。尿膜管癌の標準的な組織学的分化度評価はないが,高分化,中分化,低分化の三段階評価方法が一般的には用いられている13)

3.診断

尿膜管癌は,尿膜管が存在する膀胱頂部もしくは膀胱前壁の固有筋層内に主座を有することが一般的で,腫瘍は尿膜管に沿って発育することが多い。進行した場合には,レチウス腔や腹直筋に進展することもある。膀胱壁側に突出すると腫瘍状の形態を呈し,画像にて膀胱癌との鑑別が困難となる場合もある。発見時にすでに遠隔転移や腹膜播種を有していることも少なくなく,腹膜偽粘液腫を合併した報告も散見される14)。症状としては肉眼的血尿が最も多く,その他では疼痛や腫瘤触知,粘液尿などがあるが,腹膜外に発生するため無症状のことも多い。腫瘍マーカーとしてCEA,TPA,CA19-9,CA125 などが高値となるが特異的なものではない。腫瘤内部は充実性・囊胞性・両者が混在した形態のいずれも呈しうる。CT では約60%で粘液貯留を反映した低濃度域が出現し,50〜70%で石灰化を含有すると報告されている15)図1)。粘液を反映してMRI のT2 強調画像で内部が高信号主体となることも多い。尿膜管癌の術前診断の精度に関して,尿細胞診,画像検査(CT,MRI),麻酔下での触診,TURBT を比較した検討が報告されている16)。TURBT が最も診断精度が良好であった(感度93%,特異度100%)が,陰性適中率が50%でありTURBT での過小評価には注意が必要である。

図1 単純CT
図1 単純CT

尿膜管癌ではAJCC/UICC によるTNM 分類が存在しておらず,統一した病期分類はない。代表的な病期分類として,尿膜管癌の膀胱壁内での深達度,リンパ節転移,遠隔転移を考慮したSheldon 分類3)およびMayo clinic 分類1)がある(表1)が,前者が最も広く用いられている13)。Sheldon 分類,Mayo 分類ともに予後の層別化が可能であるが,Sheldon 分類は項目が細分化されており煩雑性がある。さらにSheldon分類においてはStage ⅢA 以上の患者が大部分を占めることから,患者分布の不均衡が問題となる。実臨床においてはSheldon 分類が広く用いられているが,その簡便性からMayo 分類を推奨する報告もある6)

表1 尿膜管癌における病期分類13)
表1 尿膜管癌における病期分類

4.予後

尿膜管癌の予後については,腫瘍が尿膜管または膀胱に限局するSheldon 分類Stage ⅢA 以下またはMayo 分類Stage I である患者においては,5 年癌特異的生存率は80%以上と良好である。一方,リンパ節転移や遠隔転移を有する場合は,20%以下と予後は不良である16)

5.治療

(1)外科的治療

病変が限局している尿膜管癌では,尿膜管靭帯と臍部の一塊切除を伴う膀胱部分切除術とリンパ節郭清術が推奨される617)。膀胱全摘除術は,後ろ向き研究において部分切除術と比較して予後に差を認めないことから,侵襲性を考慮してすべての患者には推奨されない。腫瘍が大きく切除断端の確保が困難な場合や膀胱機能の温存が困難な場合には考慮すべきである617)。切除断端の陽性は予後不良因子であることから,尿膜管靭帯,臍部の一塊切除を行い,切除断端を陰性にすることが重要である。臨床学的にリンパ節転移を認めない患者におけるリンパ節郭清が予後に与える影響は明らかになっていない。郭清が施行された17%に転移を認めたと報告されていることから診断的な意義はあると考えられる6)。尿膜管癌に対する術前,術後補助化学療法の役割は証明されていない。臨床学的にリンパ節転移がなく原発腫瘍の切除が可能である場合には,術前化学療法は一般的に行われない。術前にリンパ節転移を有する患者においては,大腸癌に準じた化学療法を行い奏効した場合に地固め療法として外科的な切除を考慮する17)。術後補助療法は,病理結果にて断端陽性,リンパ節転移陽性,腹膜浸潤などの予後不良因子を認めた場合には考慮してもよい17)

(2)化学療法

尿膜管癌の進行例における化学療法では,臨床試験において有効性が証明されたものはなく,症例報告や少数例の観察研究のみでの報告がなされている。尿路上皮癌に準じたM-VAC 療法やGC 療法の治療効果は限られている。その一方,尿膜管癌と大腸癌の遺伝子異常には高い類似性が認められ,大腸癌と同様の治療の有効性が示唆されている1819)。メタアナリシスによると,CDDP と5-FU の使用が最も報告が多く,5-FU ベースやCDDP と5-FU 併用の奏効率は,40%程度と有効性が高い6)。国内からもTS-1 とCDDP の併用で33%の奏効率が報告されている8)。現在,尿膜管癌を含む腺癌においてGemFLP(5-FU, ロイコボリン, ゲムシタビン, シスプラチン)による第Ⅱ相試験が行われており(NCT00082706),その結果が待たれるところである。尿膜管癌の遺伝子異常においては,TP53 変異が最も高頻度にみられ(66〜80%),次に,KRAS,NRAS,BRAF,APC など大腸癌に類似した変異が多くみられる1819)

参考文献

1)
Ashley RA, Inman BA, Sebo TJ, et al:Urachal carcinoma:clinicopathologic features and long-term outcomes of an aggressive malignancy. Cancer 107:712-720, 2006
2)
Gopalan A, Sharp DS, Fine SW, et al:Urachal carcinoma:a clinicopathologic analysis of 24 cases with outcome correlation. Am J Surg Pathol 33:659-668, 2009
3)
Sheldon CA, Clayman RV, Gonzalez R, Williams RD and Fraley EE:Malignant urachal lesions. J Urol 131:1-8, 1984
4)
Upadhyay V and Kukkady A:Urachal remnants:an enigma. Eur J Pediatr Surg 13:372-376, 2003
5)
Mylonas KS, O Malley P, Ziogas IA, El-Kabab L and Nasioudis D:Malignant urachal neoplasms:A population-based study and systematic review of literature. Urol Oncol 35:33. e11-33. e19, 2017
6)
Szarvas T, Modos O, Niedworok C, et al:Clinical, prognostic, and therapeutic aspects of urachal carcinoma ─ A comprehensive review with meta-analysis of 1,010 cases. Urol Oncol 34:388-398, 2016
7)
Collins DC, Velazquez-Kennedy K, Deady S, Brady AP, Sweeney P and Power DG:National Incidence, Management and Survival of Urachal Carcinoma. Rare Tumors 8:6257, 2016
8)
Hayashi T, Yuasa T, Uehara S, et al:Clinical outcome of urachal cancer in Japanese patients. Int J Clin Oncol 21:133-138, 2016
9)
Paner GP, Barkan GA, Mehta V, et al:Urachal carcinomas of the nonglandular type:salient features and considerations in pathologic diagnosis. Am J Surg Pathol 36:432-442, 2012
10)
Amin MB, Smith SC, Eble JN, et al:Glandular neoplasms of the urachus:a report of 55 cases emphasizing mucinous cystic tumors with proposed classification. Am J Surg Pathol 38:1033-1045, 2014
11)
Paner GP, McKenney JK, Barkan GA, et al:Immunohistochemical analysis in a morphologic spectrum of urachal epithelial neoplasms:diagnostic implications and pitfalls. Am J Surg Pathol 35:787-798, 2011
12)
Riva G, Mian C, Luchini C, et al:Urachal carcinoma:from gross specimen to morphologic, immunohistochemical, and molecular analysis. Virchows Arch 474:13-20, 2019
13)
Moch H, Humphrey PA, Ulbright TM, et al:WHO Classification of Tumours of the Urinary System and Male Genital Organs. IARC, Lyon, 2016
14)
村木俊夫,島本 大,日高 啓,他:腹膜偽粘液腫を合併した尿膜管癌の1 例.臨床放射線 57:1085-1087, 2012
15)
Monteiro V and Cunha TM:Urachal carcinoma:imaging findings. Acta Radiol Short Rep 1:4, 2012
16)
Meeks JJ, Herr HW, Bernstein M, Al-Ahmadie HA and Dalbagni G:Preoperative Accuracy of Diagnostic Evaluation of the Urachal Mass. J Urol 189:1260–1262, 2013
17)
Siefker-Radtke A:Urachal adenocarcinoma:a clinician’s guide for treatment. Semin Oncol 39:619-624, 2012
18)
Collazo-Lorduy A, Castillo-Martin M, Wang L, et al:Urachal Carcinoma Shares Genomic Alterations with Colorectal Carcinoma and May Respond to Epidermal Growth Factor Inhibition. Eur Urol 70:771-775, 2016
19)
Reis H, van der Vos KE, Niedworok C, et al:Pathogenic and targetable genetic alterations in 70 urachal adenocarcinomas. Int J Cancer:2018(Epub ahead of print)