治療ガイドライン

子宮頸部前癌病変とⅠA期の主治療

総説

Ⅰ 子宮頸部前癌病変

日本産科婦人科学会(日産婦)臨床進行期分類(日産婦分類)(1997 年)において0 期は上皮内癌として規定されていたが 1),日産婦分類(2011 年)ではInternational Federation of Gynecology and Obstetrics(FIGO)進行期分類(2008 年)に準じ,この0 期は削除された 2)。『子宮頸癌取扱い規約 第3 版』(2012 年)では,扁平上皮癌の前駆病変の組織分類を,軽度異形成,中等度異形成,高度異形成,上皮内癌とする4 分類法から,高度異形成と上皮内癌をCIN 3 に一括した子宮頸部上皮内腫瘍(cervical intraepithelial neoplasia;CIN)1〜3 の3 分類法とし,CIN 3 を臨床的に前癌病変として取り扱うようになった 2)。2014 年に改訂されたWorld Health Organization(WHO)組織分類では,扁平上皮内病変をヒトパピローマウイルス(human papillomavirus;HPV)の感染によるlow-grade squamous intraepithelial lesion(LSIL)と前癌病変としてのhigh-grade squamous intraepithelial lesion(HSIL)の2 つに区分するSIL 分類が採用された 3)。しかし,採用後間もないことから,SIL 分類をこのまま実地医療に持ち込んだ場合には混乱が生じると考えられ,『子宮頸癌取扱い規約 病理編 第4 版』(2017 年)では,CIN 1(LSIL),CIN 2(HSIL),CIN 3(HSIL)として,CIN 分類が残されている 4)。以上のことから,本ガイドラインでは,CIN 3 を子宮頸部扁平上皮癌の前癌病変として取り扱うこととした(CQ01)。また,子宮頸部腺癌の前癌病変は,上皮内腺癌(adenocarcinoma in situ;AIS)であることが国内外で広く認知されており,WHO 組織分類(2014 年)と『子宮頸癌取扱い規約 病理編 第4 版』のいずれにおいても前癌病変として記載されている。また,『子宮頸癌取扱い規約 第3 版』に “腺上皮および関連病変” として記載のある腺異形成(glandular dysplasia)は,その存在が疑問視されており,WHO 組織分類(2014 年)と『子宮頸癌取扱い規約 病理編 第4 版』から削除されていることからも,本ガイドラインでは,AIS を子宮頸部腺癌の前癌病変として取り扱うこととした(CQ01)。

近年の性行動の変化から若年層でのHPV 感染の増加が指摘され,それに伴う子宮頸癌発生の若年化が問題となった。2004 年に老人保健法(現:高齢者の医療の確保に関する法律)が一部改正され,検診の対象が20 歳以上となり,その後の検診の普及もあり,若年で発見される子宮頸部前癌病変が増加してきている。日産婦婦人科腫瘍委員会報告における2008 年度の子宮頸癌患者年報ではCIN 3/子宮頸癌比は1.06 5)であったが,2014 年度の患者年報ではCIN 3/子宮頸癌比は1.85 に達している 6)。また,近年の晩婚化による妊娠出産年齢の上昇傾向が重なり,子宮の温存が求められる機会が増加してきている。日産婦婦人科腫瘍委員会報告によると,子宮頸部前癌病変の治療として子宮頸部円錐切除術(円錐切除術)が行われたものは,子宮頸癌患者年報の1990 年度では33% 7)であったが,2008 年度では79% 5)となり,以降は80%前後 6)を推移している。

子宮頸部前癌病変に対しては,術前の検査でCIN 3 やAIS と診断された場合でも,実際には両者の混在や浸潤癌の併存があるため,確定診断のための円錐切除術をまず行うことが基本となる。円錐切除術が施行され,摘出標本断端陰性のCIN 3 では,治療を終了とすることができる。摘出標本でAIS と診断された場合は,単純子宮全摘出術の選択となる。しかし,妊孕性温存希望例においては,残存病変やskip lesion の存在が否定され,厳密な管理の下であれば,円錐切除術後の子宮温存を選択することも考慮される(CQ01)。なお,本章においては,断端陽性ならびに遺残病変は,CIN 3 ならびにAIS 以上の病変と定めた。

円錐切除術の具体的な方法としては,メスによるcold conization が一般的であったが,最近ではレーザーあるいは高周波電流,超音波などを用いたhot conization が普及してきている。Hot conization では,摘出標本の切断面における挫滅や焼灼などにより診断が困難となることがあり,特にAIS の診断ではその影響が大きいことから,頸管腺領域ではメスによる切断が望ましいことに留意すべきである。

円錐切除術以外にCIN 3 に対する保存療法として,以前は冷凍凝固療法,今日でもレーザー蒸散術が施行されることが少なくない。レーザー蒸散術は,簡便な手技で,一定の治療効果を有し,かつ,円錐切除術と比較して治療に伴う子宮頸部の短縮が軽度で産科的リスクが低いという利点を有する。しかし,蒸散された部分の組織学的な検索ができず,安易な適応は潜在するAIS や微小浸潤癌を看過してしまう危険性を有し,本ガイドラインでは推奨の項目に挙げず,解説の中で記載することとした。

Ⅱ ⅠA 期

日産婦分類(2011 年)ではFIGO 進行期分類(2008 年)に準じ,ⅠA 期は子宮頸部間質浸潤の深さが5 mm 以内で縦軸方向の拡がりが7 mm をこえないものとし,浸潤の深さが3 mm 以内をⅠA 1 期,それをこえるものをⅠA 2 期としている 2)。『子宮頸癌取扱い規約 第2 版』 1)では,腺癌については,正常の子宮内頸管腺領域に限局し,微小浸潤を示す腺癌をⅠA期腺癌とし,かつ細分類を行わないことになっていたが,『子宮頸癌取扱い規約 第3 版』 2)では,扁平上皮癌と同様に腺癌においてもⅠA 1 期とⅠA 2 期に分類することとなった。そして,ⅠA 期の扁平上皮癌と腺癌の診断は,円錐切除術による組織学的検索によって行われる。なお,『子宮頸癌取扱い規約 病理編 第4 版』では,微小浸潤扁平上皮癌や微小浸潤腺癌は,組織型としてではなく進行期で規定されるものとされ,組織分類から削除された 4)

2014 年度の日産婦婦人科腫瘍委員会報告の子宮頸癌患者年報によると,ⅠA 期は子宮頸癌Ⅰ〜Ⅳ期の15%を占め,ⅠA 期のうちの83%がⅠA 1 期である。ⅠA 期の7%が20〜29 歳,31%が30〜39 歳であり,ⅠB 期以上の患者層に比較して若年者が多い 6)

ⅠA 期の治療は,子宮頸部間質浸潤の程度,組織型,脈管侵襲の有無,円錐切除術摘出標本の断端病変の有無,さらには妊孕性温存希望の有無などを考慮して,個別に考える必要がある(CQ03CQ04)。すなわち,円錐切除術から,単純子宮全摘出術,準広汎子宮全摘出術(±骨盤リンパ節郭清),広汎子宮全摘出術まで,その選択肢は多岐にわたる。脈管侵襲のあるものはリンパ節転移のリスクが高いと考えられ,リンパ節郭清を含む子宮全摘出術が行われることもある。子宮を摘出する場合の最適な術式についてのエビデンスは少ない。また,広汎子宮頸部摘出術など妊孕性温存手術も試みられているが,限られた施設で行われているのが実情である。

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CQ01
円錐切除術で診断したCIN 3 とAIS に対して推奨される対応と治療は?

推奨グレードA
  1. 摘出標本断端陰性のCIN 3 には,円錐切除術を最終治療とすることが推奨される。
推奨グレードB
  1. AIS には,単純子宮全摘出術が推奨される。
推奨グレードC1
  1. 摘出標本断端陽性で遺残病変のあるCIN 3 には,再度の円錐切除術もしくは単純子宮全摘出術が考慮される。
推奨グレードC1
  1. 摘出標本断端陰性で遺残病変を認めないAIS で妊孕性温存希望例には,厳密な管理の下で子宮温存が考慮される。

アルゴリズム(フローチャート1)参照

目的

円錐切除術によって診断したCIN 3 とAIS に対する適切な対応と治療法について検討する。

解説

近年の若年CIN 3 症例の増加に伴い,子宮温存術式として円錐切除術が選択されることが多くなっている。日産婦婦人科腫瘍委員会の2014 年度患者年報によると,CIN 3 の治療として,円錐切除術は80%,単純子宮全摘出術は12%であった 1)。術前に生検でCIN 3 と診断されていても,実際にはAIS や浸潤癌が併存していることがあるため,円錐切除術を行って病理組織学的にCIN 3 を確認した上で子宮摘出の要否を決定することを原則とする 2, 3)。しかし,実地医療を鑑み,子宮温存を希望しない,あるいは,高齢のCIN 3 症例の場合は,十分な術前精査を行い浸潤癌の併存がないことを確認した上で,円錐切除術を省略した単純子宮全摘出術を施行することも考慮される。単純子宮全摘出術を施行する際には,侵襲の少ない手術法として鏡視下手術も選択され得る。ただし,手術手技に十分習熟した産婦人科医により子宮頸部を残存なく完全に摘出するように留意すべきである。

円錐切除術の具体的な方法としては,メス(コールドナイフ)によるもの(cold conization),レーザー,高周波電流を用いたloop electrosurgical excision procedure(LEEP),超音波を用いたハーモニックスカルペルなどによるもの(hot conization)がある。レーザーにはCO2 やYAG などの種類がある。それぞれの方法や機器,器具の特長を熟知して円錐切除術の具体的な方法を選択する必要がある。コールドナイフによる円錐切除術は,組織に対する熱変性が加わらないため正確な病理組織学的診断が得られる利点があり,レーザーやLEEP と同等の治療効果が認められるとの報告もある 4, 5)。しかし,術中出血が多く,そのための縫合を行った場合,子宮側の遺残病変が頸管内に埋没しやすく注意を要する。レーザーでは,コールドナイフによる円錐切除術と同様に十分な奥行き幅を有する検体が一塊として摘出可能なことから,病変の局在部位にかかわらずCIN 3 が診断および治療の適応となり得る 2, 3, 6)。また,その治癒率も概ね100%近い成績が報告されている 2, 3, 6)。一方,LEEP では摘出できる検体の奥行き幅が不十分であることから,頸管内深くに病変が存在する可能性がある場合には取り残しの危険性が高い。CIN 3 に対するLEEP の適応は,病変が子宮腟部に限局する場合に限るのが望ましい。しかしながら,LEEP は比較的容易に施行できるという利点があり,しかも病理組織学的診断もある程度可能であることから,適応を明確にすることによりCIN 3 に対する有用な保存療法となり得る 5, 7, 8)

CIN 3 に対して円錐切除術を行う際,コルポスコピーで病変が十分に確認できない例,頸管内病変が疑われる例,細胞診判定により推測される病変が生検組織診断を上回る例などには,術前診断時あるいは円錐切除術施行時に頸管内掻爬組織診を行うことにより,子宮側の遺残病変や予期せぬ浸潤癌の存在を予測できると報告されている 9-11)。円錐切除術後においては,摘出標本断端陽性例でも,子宮側の遺残病変がCIN 2 以下であれば61%は経過観察中に自然消失するとの報告がある 12)。しかし,摘出標本断端陽性例における再発を含めた術後病巣検出のリスクは同断端陰性の6.09 倍と報告されており 13),同断端陽性例では早期に遺残病変を評価し,CIN 3 の遺残病変が確認された場合には,再度円錐切除術を行うか,症例により単純子宮全摘出術を行うべきである。遺残病変がない場合でも,長期的に病変の再評価を行うことが特に重要である 13-16)

AIS においては,頸管内および深部の頸管腺に病巣が局在することがあり,通常の細胞診では偽陰性となることがある。AIS の24〜75%に扁平上皮系の病変を伴うと言われており 17),CIN 3 として行った円錐切除術の摘出標本にAIS が見つかることは少なくない。また,AIS は扁平上皮系のCIN 3 と異なり,特有のコルポスコピー所見を示さない場合もあることから,病変の拡がりや浸潤の深さを評価することが困難である。したがって,子宮頸部細胞診で異型腺細胞(atypical glandular cells;AGC,特に“favor neoplastic” である場合)が検出され,AIS が強く疑われる場合には,生検の結果が陰性であっても,正確な診断を得るために,頸管腺領域を十分に含めた円錐切除術が選択される。AIS はCIN と比較して熱変性の影響を受けやすく診断が困難となりやすいため,hot conization を施行する場合でも,AIS の局在する頸管腺付近ではコールドナイフによる切除が望ましい。

AIS では円錐切除術後,摘出標本断端陽性例の約半数に子宮側の遺残病変が見つかることや 18, 19),頸管腺領域にskip lesion が存在することが指摘されている 20)。また,AIS では摘出標本断端陰性例でも約20%に子宮側の遺残病変が発見されると報告されている 18, 19)。摘出標本断端陽性例に関して,LEEP で治療された31 例では,摘出子宮で4 例の浸潤腺癌を含めて14 例(48%)に遺残病変が認められたとしている 19)。1,278 症例のメタアナリシスで,摘出標本断端陽性例では有意に遺残病変のリスクが高率であり,再発率は同断端陰性例で3%,陽性例で19%であったと報告されている 21)。なお,円錐切除術施行時に頸管内掻爬組織診を行うことにより,子宮側の腺系病変遺残を予測できるとの報告がある 20)。これらのことから,円錐切除術の摘出標本でAIS と診断された症例に対しては,単純子宮全摘出術が推奨される。CIN 3 と同様に,単純子宮全摘出術を施行する際には,侵襲の少ない手術法として,鏡視下手術も考慮され得る。一方で,AIS に対して妊孕性温存希望例に関してコールドナイフを用いた円錐切除術あるいはLEEP を施行した101 例で,術後35 症例に計49 妊娠がみられたとの報告がある 22)。また,円錐切除術後,平均経過観察期間が43 カ月で摘出標本断端陰性の症例で再発はみられなかったとする報告もみられる 23)。このようなことから,AIS であっても,頸管腺領域を十分に含めた摘出標本による病理組織学的検討において,断端陰性で,遺残病変が確認されない妊孕性温存希望例には,厳密な管理の下であれば,円錐切除術による子宮の温存が考慮される。

妊孕性温存の観点で,産科的予後や新生児予後に円錐切除術がどのような影響を与えるかが注目されている 4, 24-28)。近年の報告で,コールドナイフ,レーザー,LEEP のいずれにおいても早産率が有意に増加することが明らかとなってきている 24-28)。早産のリスクはコールドナイフで行った場合は2.59 倍,レーザーの場合は1.71 倍,LEEP の場合は1.70 倍であり,コールドナイフのリスクが最も高くなることが報告されている 25)。また,いずれの切除方法であっても,子宮頸部を深く切除すると早産リスクが高まり,新生児の周産期死亡と密接に関連していることが報告されている 25, 26)。したがって,妊孕性温存希望者に手術のインフォームドコンセントを得る際には,これらのリスクについて十分に説明する必要がある。

円錐切除術によらないCIN 3 に対する保存療法として,レーザー蒸散術や施設によっては低出力レーザー照射による光線力学療法(photodynamic therapy;PDT)29)が行われている。また,古典的な治療として冷凍凝固療法も知られている 30)。こうした保存療法においては,比較的侵襲が少なく,一定の有用性が認められている 7)。なかでも,レーザー蒸散術は円錐切除術と比較し,低侵襲で産科的リスクが低い 25)。しかし,生検でCIN 3 と診断されたものの中に少なからず浸潤癌が含まれることから 2, 3),レーザー蒸散術の適応を判断するためには高度な診断精度が要求される。そのため,十分な経験を有する婦人科腫瘍専門医が,細胞診,コルポスコピー,組織診を総合的に駆使し,適応を決定した上で,病変を可視下に置き,レーザー蒸散術を施行するのであれば,妊孕性温存の有用な保存的治療の一つとなる。一方,AIS に対しては,既存の診断技術では十分な評価ができないため,こうした保存療法の適応とならないことを十分に認識しておくべきである。

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CQ02
子宮温存治療後に再発したCIN 3 に対して,どのような治療が推奨されるか?

推奨グレードB
  1. 円錐切除術を再度施行することが推奨される。
推奨グレードB
  1. 十分な精査の上で浸潤癌が否定される場合には,単純子宮全摘出術も推奨される。

目的

子宮温存治療後のCIN 3 の再発に対する治療について検討する。

解説

円錐切除術後において,摘出標本断端陽性例での再発率は9〜18%,同断端陰性例での再発率は2〜4%と報告されている 1-3)。CIN 3 の再発例では円錐切除術を再施行し,病理組織学的診断を行った上でCQ01 に準じた治療とすることが重要である 4-6)。しかし,再施行においては,子宮頸管狭窄などの術後合併症に留意するとともに,妊孕性温存を希望する症例に手術のインフォームドコンセントを得る際,円錐切除術の再手術により産科的予後と新生児予後に関するリスクがさらに高まることについて説明する必要がある(CQ01 参照)。子宮温存の希望がなく,繰り返しの円錐切除術が困難である場合には,十分な精査の上で,浸潤癌が否定される場合には,単純子宮全摘出術も推奨される。また,精査にて浸潤癌が疑われる場合には,病巣に応じた術式の子宮全摘出術を考慮すべきである 7, 8)

なお,冷凍凝固療法やレーザー蒸散術による子宮温存治療後の再発においては,初回治療時に組織検体が得られていないため,浸潤癌の潜在のないことが確認されていない 7, 8)。長期経過観察された中で,冷凍凝固療法を行った場合に浸潤癌になるリスクが最も高率で 9),レーザー蒸散術後でも浸潤癌の発生がみられる 10)。したがって,こうした凝固や蒸散による子宮温存治療後の再発例では,CQ01 に準じ,円錐切除術を施行して最終組織診断を得ることが肝要である。

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CQ03
ⅠA 1 期に対して推奨される治療は?

推奨グレードB
  1. 脈管侵襲が認められない症例に対しては,単純子宮全摘出術が推奨される。
推奨グレードC1
  1. 脈管侵襲がある場合には,単純子宮全摘出術あるいは準広汎子宮全摘出術に骨盤リンパ節郭清の追加が考慮される。
推奨グレードC1
  1. 妊孕性温存を強く希望する症例に対しては,円錐切除術の摘出標本で脈管侵襲がなく断端が陰性で,かつ子宮頸管内掻爬組織診が陰性であれば,子宮温存も考慮される。

アルゴリズム(フローチャート1)参照

目的

ⅠA 1 期に対する適切な手術方法について検討する。

解説

ⅠA 1 期の診断は原則的には円錐切除術の摘出標本を用いて行うべきである。NCCN ガイドライン2016 年版 1)では,脈管侵襲を認めないⅠA 1 期症例に対しては,妊孕性温存の希望がなければ単純子宮全摘出術が推奨されている。従来,本邦では日産婦臨床進行期分類(1997 年)のⅠA 期 2)の症例に対して準広汎子宮全摘出術が行われてきたが,日産婦婦人科腫瘍委員会による2014 年度の子宮頸癌患者年報では,ⅠA 1 期の40%が円錐切除術を,39%が単純子宮全摘出術を最終治療としている 3)。ⅠA 1 期の骨盤リンパ節への転移の頻度は0〜1%と低いが,脈管侵襲を認める症例では骨盤リンパ節転移率が高くなるとする報告があり,骨盤リンパ節郭清を追加するとともに準広汎子宮全摘出術を行う場合もある 4-6)。NCCN ガイドライン2016 年版でもこの術式が推奨されている 1)。脈管侵襲を認める場合でも,腺癌を含めて,子宮の摘出方法は単純子宮全摘出術で十分とする意見 7, 8)もあるが,症例数が少なく今後の検討が待たれる。ⅠA 1 期に対して鏡視下手術を行う際は,手術手技に十分習熟した婦人科腫瘍専門医により,あるいは内視鏡技術認定医と婦人科腫瘍専門医の協力体制の下で行うことが望ましい。

妊孕性温存を強く希望する症例や子宮全摘出術が困難な症例に対しては,円錐切除術と頸管内掻爬を行い,摘出標本断端が陰性で脈管侵襲がなければ,子宮温存は可能である 1, 9-12)。また,多数例の論文のレビューによる摘出子宮の病理組織学的検索や予後の検討から,ⅠA 期の腺癌と扁平上皮癌は同様に扱うという意見が多い 1, 13-15)。しかし,円錐切除術のみで子宮を温存した腺癌の症例報告数は扁平上皮癌よりも少なく 14, 15),術式の選択には注意を要する。

参考文献

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CQ04
ⅠA 2 期に対して推奨される治療は?

推奨グレードC1
  1. 骨盤リンパ節郭清を含む準広汎子宮全摘出術が考慮される。
推奨グレードC1
  1. 診断的円錐切除術で詳細な病理組織学的検索が行われた結果,脈管侵襲のみられない症例についてはリンパ節郭清の省略を考慮できる。

アルゴリズム(フローチャート1)参照

目的

ⅠA 2 期に対する術式の縮小(リンパ節郭清の省略,広汎子宮全摘出術から準広汎子宮全摘出術あるいは単純子宮全摘出術・円錐切除術への縮小)が安全にできるか,できるとすればそれはどのような条件を満たすものかについて検討する。

解説

ⅠA 2 期の骨盤リンパ節への転移の頻度は0〜10%で,そのリスク因子である脈管侵襲の頻度は2〜30%である。子宮傍(結合)組織への浸潤リスクは非常に低い 1)

子宮の摘出方法については,日産婦婦人科腫瘍委員会による2014 年度子宮頸癌患者年報では,ⅠA 2 期の17%が単純子宮全摘出術を,38%が骨盤リンパ節郭清を含む準広汎子宮全摘出術を,22%が広汎子宮全摘出術を最終治療としている 2)。NCCN ガイドライン2016 年版では,妊孕性温存を希望しない場合は,骨盤リンパ節郭清を含む準広汎子宮全摘出術が推奨されている 3)。ⅠA 2 期における子宮傍(結合)組織への浸潤は,20 論文のレビューでは103 例中1 例も認められず 1),最近の報告でも142 例中1 例も報告されていない 4-6)。腺癌に限定した論文レビューでは広汎子宮全摘出術が行われていることが多いが,子宮傍(結合)組織浸潤は認められていない 7, 8)。以上から,ⅠA 2 期に対しては,骨盤リンパ節郭清を含む準広汎子宮全摘出術が考慮される。現在,ⅠA 2 期の手術術式として,骨盤リンパ節郭清を加えた,広汎子宮全摘出術と単純子宮全摘出術を比較検討する第Ⅲ相ランダム化比較試験(randomized controlled trial;RCT)(NCT01658930)が進行中で,ⅠA 2 期に対する単純子宮全摘出術と骨盤リンパ節郭清の安全性と有効性が検証されている。なお,ⅠA 2 期に対する手術方法として開腹手術が広く施行されているが,鏡視下手術を行う際は,手術手技に十分習熟した婦人科腫瘍専門医により,あるいは内視鏡技術認定医と婦人科腫瘍専門医の協力体制の下で行うことが望ましい。

ⅠA 2 期のリンパ節転移については,20 論文のレビューでは,ⅠA 2 期1,063 例中リンパ節郭清が施行されたのは805 例で,39 例(5%)にリンパ節転移が認められた 1)。しかし,微小な転移は通常の病理組織学的検索(1 リンパ節1 割面)では検出されない可能性もあるため,真のリンパ節転移率はそれよりも高いものと推定される。ⅠA 2 期57 例の報告では,4 例(7%)が再発(うち2 例は腫瘍死)しており,それらはいずれもリンパ節転移のリスク因子である脈管侵襲が認められた 9)。脈管侵襲の有無とリンパ節転移に関しては前述のレビューによると,脈管侵襲は535 例中158 例(30%)に認められ,脈管侵襲陽性の158 例中19 例(12%)にリンパ節転移が認められたのに対して,脈管侵襲陰性の場合は377 例中5 例(1%)とリンパ節転移は低率であった 1)。以上より,円錐切除標本に対して詳細な病理組織学的検索が行われ,その結果,脈管侵襲が認められない症例に限定すれば,リンパ節郭清の省略を考慮できる。リンパ節郭清の合併症であるリンパ浮腫は,術後患者のquality of life(QOL)を損なう。最近の研究によると,脈管侵襲を伴うⅠA 1 期やⅠA 2 期を含む早期子宮頸癌患者における骨盤リンパ節郭清の回避にセンチネルリンパ節生検が有用とする可能性が示唆されている 3, 10)CQ12参照)。

脈管侵襲を伴うⅠA 1 期やⅠA 2 期症例で妊孕性温存希望が強い場合には,NCCN ガイドライン2016 年版では,円錐切除術の摘出標本で3 mm の断端陰性が確保されていれば骨盤リンパ節郭清のみを追加する選択肢 3),もしくは,骨盤リンパ節郭清を含む広汎子宮頸部摘出術が推奨されている 3, 11)。本邦では,広汎子宮頸部摘出術に関しては,妊孕性温存治療の一つの選択肢として限られた施設で行われているのが実情であるが,子宮温存を希望する症例においては考慮してよい術式である(CQ11 参照)。

高齢や合併症のために手術療法を適応できない症例の治療法のオプションとして,放射線治療がある 3)

参考文献

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CQ05
単純子宮全摘出術後にⅠB 期またはそれ以上と診断された場合,推奨される治療は?

推奨グレードC1
放射線治療あるいは同時化学放射線療法(CCRT)の追加が考慮される。

目的

良性疾患やCIN 3,ⅠA 1 期の診断で単純子宮全摘出術が施行され,術後にⅠB 期以上と診断された場合の治療や予後について検討する。

解説

単純子宮全摘出術後にⅠB 期以上またはそれ以上と診断された場合の取り扱いについては,術後の放射線治療の報告が多数みられ,概ね良好な成績が示されており合併症の頻度も許容範囲内であった 1-5)。さらに,腫瘍径が小さく子宮頸部間質浸潤が浅い症例では,合併症をより軽減するため,外部照射の省略や 1, 2)腔内照射省略の可能性が提唱されている 3)。一方,腫瘍径の大きい症例や脈管侵襲を示す症例などでは予後が悪く,高リスク症例に対しては同時化学放射線療法(concurrent chemoradiotherapy;CCRT)が推奨されている 5, 6)

本邦ではあまり普及していない子宮傍(結合)組織摘出術(parametrectomy)を推奨する報告もある 5, 7-9)。しかしながら,これらの報告はすべて単施設の治療成績であり,一定頻度での術中合併症も存在することが指摘されている 5)。近年,骨盤リンパ節転移陰性で,腫瘍径が小さく,脈管侵襲陰性で,子宮頸部間質浸潤が浅い症例に対する子宮傍(結合)組織摘出の意義を再検討する必要性が提言されており 10-12),本CQ に該当する症例でのparametrectomy の推奨レベルを判断する根拠となる可能性がある。

NCCN ガイドライン2016 年版 6)では,脈管侵襲を伴うⅠA 1 期またはⅠA 2 期以上の症例に対しては,病理組織学的検索,腎機能評価,各種画像検査など症例の再評価を行い,病変を検出できなかった症例には,①骨盤照射と腔内照射併用あるいはCCRT,または② parametrectomy,骨盤リンパ節郭清,上部腟壁切除あるいはそれに加えての傍大動脈リンパ節生検を推奨している。子宮の摘出標本断端に癌病変がみられる,あるいは,肉眼的に(あるいは画像検査上)残存する癌病変が認められる症例に対しては,骨盤照射(傍大動脈リンパ節陽性例には傍大動脈リンパ節領域照射追加)とCCRT,症例により腔内照射併用を推奨している。

参考文献

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ⅠB期とⅡ期の主治療

総説

一般にⅠB 期,Ⅱ期の子宮頸癌に主治療として用いられるのは手術療法と根治的放射線治療〔同時化学放射線療法(concurrent chemoradiotherapy;CCRT)を含む〕である。NCCN ガイドライン2016 年版では,ⅠB・ⅡA 期に対して手術療法と放射線治療が並列した治療オプションとされており,ⅡB 期に対しては手術療法という選択肢は示されていない 1)。これは,欧米における広汎子宮全摘出術が基本的にWertheim 術式であり,局所進行子宮頸癌に対応していないことによる。これに対して,本邦での広汎子宮全摘出術は岡林らによって,より根治性の高い術式として開発され 2),その後の先人たちの工夫・改良の結果,完成度の高い術式として確立されてきたという歴史がある。岡林式広汎子宮全摘出術は膀胱子宮靱帯を前・後層に分離し,これを完全に切断することによって,基靱帯および腟をより広汎に切除することを可能にしたもので,ⅡB 期子宮頸癌における根治性を高めた。すなわち,本邦における広汎子宮全摘出術は欧米のそれとは術式,根治性において異なることに留意する必要がある。以上の理由から,本邦では,ⅡB 期においても手術療法が選択されており(CQ08),本邦でのⅠB 期からⅡB 期の扁平上皮癌に対する標準治療としては,広汎子宮全摘出術および根治的放射線治療(CCRT を含む)の両者が選択可能と考えられる(CQ06〜CQ08)。ただし,本邦での岡林術式による治療成績のデータは乏しく,今後のエビデンスの集積・発信が必要である。

ⅠB 2・ⅡA 2 期,あるいはⅡB 期に対して,術前化学療法(neoadjuvant chemotherapy;NAC)が施行されることもあるが,予後改善効果については未だ明らかではない(CQ09)。子宮頸癌の手術療法では,近年,従来の開腹での岡林式広汎子宮全摘出術に加えて,いくつかの治療選択肢が認められるようになった。まず,低侵襲手術として,腹腔鏡下・ロボット支援下での広汎子宮全摘出術が行われ始めている(CQ10)。またⅠA 2・ⅠB 1 期に対しては妊孕性温存療法としての広汎子宮頸部摘出術が試みられている(CQ11)。さらに,骨盤リンパ節郭清後のリンパ浮腫を回避する目的でのセンチネルリンパ節生検も試みられている(CQ12)。これらは世界的には標準治療として認められつつあり,本邦でも今後,普及が期待される。しかし現状では標準治療とまでは言い難く,婦人科腫瘍専門医によって十分に適応を検討した上で施行されるべきである。これらに関して今回,新たにCQ を設けて詳しく解説した。また,広汎子宮全摘出術時にはquality of life(QOL)の面から症例を選択した上で卵巣温存が推奨される(CQ13)。傍大動脈リンパ節生検・郭清は症例によっては考慮されてもよい(CQ14)。

子宮頸癌の根治的放射線治療では,外部照射に,より線量集中性に優れた腔内照射を加えた治療が標準と考えられる。放射線治療における照射野の設定,腔内照射の線量,治療スケジュールに関しては,海外と本邦での差異もみられ,本邦における標準化が図られている。ⅠB 2〜ⅡB 期子宮頸癌では根治的放射線治療を選択する場合にはCCRT が望ましいと考えられる(CQ07CQ08)。

腺癌は絶対数,相対頻度いずれにおいても増加傾向にあり,現在は子宮頸癌全体の約25%を占める 3)。腺癌に特化したエビデンスレベルの高い治療指針はないが,扁平上皮癌との生物学的・臨床的差異が示されており,治療指針も別個に示すこととした(CQ15)。

参考文献

1)
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CQ06
ⅠB 1・ⅡA 1 期扁平上皮癌に対して推奨される治療は?

推奨グレードB
  1. 広汎子宮全摘出術あるいは根治的放射線治療が推奨される。
推奨グレードC1
  1. 根治性を損なわない範囲内での骨盤神経温存術式が考慮される。

アルゴリズム(フローチャート2)参照

目的

ⅠB 1・ⅡA 1 期に対する適切な治療法について検討する。

解説

ⅠB 1・ⅡA 1 期に対する主治療として,本邦では手術療法を多く選択してきた。これには岡林術式の広汎子宮全摘出術による根治性を保ちつつ,術後の機能温存を図るために手術術式を改善工夫してきた経緯がある。日本産科婦人科学会(日産婦)婦人科腫瘍委員会報告の2014 年度子宮頸癌患者年報 1)によると,ⅠB 1 期において手術療法が施行された症例は90%,手術療法を行わず放射線治療が選択されたものが9%,ⅡA 1 期ではそれぞれ66%,33%であった。

海外における,ⅠB・ⅡA 期子宮頸癌に対して手術療法と根治的放射線治療を比較するランダム化比較試験(randomized controlled trial;RCT)2)では,5 年無病生存率および5 年生存率に有意差は認められなかった。腫瘍径別でのサブグループ解析でも4 cm 以下のグループ(ⅠB 1・ⅡA 1 期に相当)において,5 年無病生存率(手術療法80%,放射線治療82%),5 年生存率(手術療法87%,放射線治療90%)に有意差は認められなかった。NCCN ガイドライン2016 年版 3)では,ⅠB 1・ⅡA 1 期について根治的放射線治療が手術と並列した治療オプションとして提示されている。本邦でも根治的放射線治療は多施設臨床試験の実施やマニュアルの整備 4)を通じて,特に腔内照射の治療手技や治療計画の標準化が進められてきた。子宮頸癌ⅠB 1・ⅡA 1 期に対しては症例の年齢,performance status(PS),合併症の有無などに応じて手術療法か根治的放射線治療かを選択すべきである。

ⅠB 1・ⅡA 1 期に対する主治療として手術療法を選択することのメリットは,①病理組織学的所見に基づいた再発リスクの評価が可能であり,その後の治療において症例ごとの個別化が可能であること,②放射線抵抗性の癌でも治療可能であること,③ⅠB 1・ⅡA 1 期では術後照射を避けられる症例が比較的多いが,その場合には晩期有害事象が少ないこと,である。また,④近年ではがん治療後のQOL が重視されるようになり,若年者における卵巣機能温存の重要性が認識されるようになったことも,手術療法を選択する理由に加わっている(CQ13)。手術療法は,本邦では岡林術式による広汎子宮全摘出術が標準術式とされているが,この術式では骨盤内の自律神経損傷のため,しばしば排尿,排便,性機能などが障害され,術後のQOL が低下するという問題がある。これを軽減するため,自律神経を温存する術式が提唱され,近年では詳細な解剖学的知見を反映した骨盤神経温存術式 5-7)が考案されるとともに,術後のQOL 向上に有用であることが示されている 6-17)。ⅠB 1・ⅡA 1 期に対しては,根治性が保たれる限り骨盤神経温存術式の施行が望ましいと考えられる。

術式の縮小に関しては,ⅠB・Ⅱ期において広汎子宮全摘出術群と準広汎子宮全摘出術群で予後の差はないとする報告があり 18, 19),ⅠB 1 期症例に対して準広汎子宮全摘出術を行った単アームの検討でも,5 年生存率は93%と良好であった 20)。一方でⅠB 1 期のうち術前に腫瘍径が2 cm 以下とされた症例では子宮傍(結合)組織浸潤の頻度は2%に対して,2 cm をこえる症例では13%と有意に頻度が高く,5 年生存率も2 cm をこえる症例で有意に予後不良(96% vs. 92%)との報告がある 21)。準広汎子宮全摘出術の妥当性に関しては,現在,Japan Clinical Oncology Group(JCOG)で,腫瘍径2 cm 以下の子宮頸癌ⅠB 1 期に対する準広汎子宮全摘出術の非ランダム化検証的試験(JCOG1101 試験)が進行中である 22)

ⅠB・ⅡA 期に対する根治的放射線治療について,これまで本邦でも単施設から良好な後方視的解析結果が報告されてきた 23)。2012 年には本邦で行われた多施設前方視的臨床試験の結果が報告された 24)。腫瘍径4 cm 以下(MRI T2 強調画像で計測)のⅠB〜ⅡB 期扁平上皮癌60 例が登録され,観察期間中央値49 カ月で,2 年無再発生存率90%,2 年生存率95%と良好であった。また,Grade 2 の晩期合併症が4 例に認められたが,Grade 3 以上のものは認められなかった。以上より,本邦においても根治的放射線治療は手術療法に劣るものではなく,並列した治療法として選択され得ると考えられる。

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CQ07
ⅠB 2・ⅡA 2 期扁平上皮癌に対して推奨される治療は?

推奨グレードB
広汎子宮全摘出術(+補助療法)あるいは同時化学放射線療法(CCRT)が推奨される。

アルゴリズム(フローチャート2)参照

目的

ⅠB 2・ⅡA 2 期に対する適切な治療法について検討する。

解説

ⅠB 2・ⅡA 2 期扁平上皮癌に対する主治療は手術療法と放射線治療であるが,本邦では欧米に比べて広汎子宮全摘出術を主体とした手術療法が多く選択されてきた。日産婦婦人科腫瘍委員会報告の2014 年度子宮頸癌患者年報 1)によると,ⅠB 2 期において手術療法が施行されたものは79%,手術を行わず放射線治療を選択したものが19%,ⅡA 2 期ではそれぞれ59%,39%であった。近年,本邦ではこのグループに対して放射線を選択する割合が増加傾向にあるが,依然として手術療法を主体とした治療がより多く選択されている。

ⅠB・ⅡA 期に対して手術療法と根治的放射線治療を比較するRCT がイタリアより報告された 2)が,手術療法(±放射線治療)と根治的放射線治療で5 年無病生存率(ともに74%),5 年生存率(ともに83%)に有意差は認められなかった。腫瘍径によるサブグループ解析では,5 年生存率・無病生存率は腫瘍径4 cm をこえると手術・放射線いずれの主治療でも予後不良であることが示された。同様の結果は多くの後方視的解析でも示されており,腫瘍径4 cm をこえる場合(ⅠB 2・ⅡA 2 期)には,主治療に加えた何らかの補助療法を検討する必要がある。NCCN ガイドライン2016 年版では,ⅠB 2・ⅡA 2 期に対する治療法として,CCRT,広汎子宮全摘出術(±術後照射,術後CCRT),CCRT 後の補助化学療法が提示されている 3)

本邦では手術療法として根治性に優れると考えられる岡林術式による広汎子宮全摘出術が広く行われてきた。手術療法の利点としては,病理組織学的所見に基づいた再発リスクの評価が可能であり,その後の治療において症例ごとの個別化が可能であること,卵巣移動術などにより卵巣温存が可能であることが挙げられる。一方,岡林術式による広汎子宮全摘出術では,しばしば骨盤内の自律神経損傷のため,排尿,排便,性機能などが障害され,術後のQOL が低下するという問題がある。近年,ⅠB 2・ⅡA 2 期においても骨盤神経温存術式の有効性が報告されている 4, 5)が,施行においては根治性が保たれることが前提である。ⅠB 2・ⅡA 2 期に広汎子宮全摘出術を行った場合,術後に補助療法が必要となる可能性が高い。術後CCRT と術後放射線治療単独を比較するRCT にて,術後CCRT 群の予後が有意に良好であることが示された 6)。しかしながら,術後補助療法としてCCRT を適用した場合には晩期有害事象の頻度が高まることが危惧される 7)

手術療法を主治療とした場合のオプションとしてNAC があるが,Cochrane systematic review では手術単独と比較して無病生存率,全生存率ともに改善し,子宮傍(結合)組織浸潤やリンパ節転移を減少させると報告された 8)。本邦からの第Ⅱ相試験(JGOG1065 試験)の報告では奏効率は76%,平均1.42 サイクルで縮小効果が得られ,有害事象は許容範囲内であった 9)。一方,BOMP 療法(ブレオマイシン+ビンクリスチン+マイトマイシンC+シスプラチン)を用いたNAC では有用性は認められなかった(JCOG0102 試験:NCT00190528)10)(NAC に関してはCQ09 参照)。

放射線治療を主治療とした場合,CCRT が放射線治療単独と比較して有意に死亡のリスクを減じることが米国における複数のRCT で示された 11-15)。RTOG90-01 試験ではCCRT による予後改善効果はⅢ・ⅣA 期と同様にⅠB 2・ⅡA 2 期においても示され,後者でより上乗せ効果は高いとされた 11, 14)。同様の所見はメタアナリシスでも示されており 16, 17),ⅠB 2・ⅡA 2 期においては放射線治療単独よりもCCRT が標準治療として推奨される。

CCRT の標準化学療法とされるシスプラチン40 mg/m2,weekly,5〜6 週投与が日本人女性に対しても安全に投与可能か否かが問題とされてきた。このため,Ⅲ・ⅣA 期を対象にしたCCRT の多施設共同第Ⅱ相試験(JGOG1066 試験)が行われ,安全性が確認された 18)。今後ⅠB 2・ⅡA 2 期に対するCCRT の有効性に関する本邦でのエビデンスの集積が期待される。CCRT における放射線治療方法は,臨床標的体積(clinical target volume;CTV),線量,照射方法など,放射線治療単独の場合に準じる。

一方,CCRT 後に全身化学療法を追加すると全生存率が改善することがメタアナリシスにて示唆され 19),CCRT 単独とCCRT 後に補助療法としてパクリタキセルとカルボプラチンを4 サイクル追加する治療を比較するRCT が進行中である(OUTBACK 試験:NCT01414608)。また,CCRT 前にNAC を行う治療法の第Ⅱ相試験が行われ,良好な治療成績と安全性が示唆された 20)ことを踏まえて,CCRT 単独とNAC-CCRT のRCT が現在進行中である(INTERLACE 試験:NCT01566240)。

治療の選択にあたり,治療後のQOL の検討は重要である。ⅠB・ⅡA 期について,手術と根治的放射線治療が行われた後の晩期合併症とQOL に関する検討が行われている 21)。手術群では尿路系,放射線治療群では腸管系の晩期合併症の頻度が有意に高いことが示されたが,両者に治療後のQOL の大きな差は認められず,性機能に関しても差はないとされた。治療後のQOL については,年齢などの患者背景,術式,放射線治療方法(特に線量)が大きく影響すると考えられ,本邦におけるデータを収集しエビデンスを得る必要がある。

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CQ08
ⅡB 期扁平上皮癌に対して推奨される治療は?

推奨グレードB
広汎子宮全摘出術(+補助療法)あるいは同時化学放射線療法(CCRT)が推奨される。

アルゴリズム(フローチャート2)参照

目的

ⅡB 期扁平上皮癌に対する適切な治療法とその選択を検討する。

解説

子宮頸癌ⅡB 期に対する主治療は本邦と欧米では大きく異なっている。欧米ではⅡB 期に対してはCCRT が主治療として選択されることが多いのに対して,本邦では広汎子宮全摘出術を含む手術療法が主治療としてより多く選択されてきた。その理由として,本邦においては,より根治性の高いとされる岡林術式が広汎子宮全摘出術の標準術式として行われてきたという歴史がある。2014 年の日産婦婦人科腫瘍委員会の報告では,ⅡB 期で手術を主治療とした症例は44%であり 1),2004 年の60%に比べて減少傾向にあるが,依然,手術療法は主治療として多く行われている 2)。一方で,放射線治療が主治療として選択された症例は2004 年が18%であったのに対し,2014 年には39%と増加している。

手術療法とCCRT の治療成績について直接比較をした臨床試験はこれまで行われておらず,治療成績の点からは治療選択の根拠は十分ではない。海外の放射線を主治療とした報告での5 年生存率66% 3)と比較して,手術を主治療とする症例が多い本邦でのⅡB 期の5 年生存率は2009 年治療患者で75%と良好な治療成績である 4)。一方,本邦で行われた放射線治療の多施設共同観察研究でも,ⅡB 期の5 年生存率は74%であり,限定された施設での報告ではあるが,良好な成績である 5)。NCCN ガイドライン2016 年版では,ⅡB 期に対する主治療はCCRT のみが提示されている 6)。しかし,Surveillance, Epidemiology, and End Results(SEER)Program を用いた2009 年の米国での子宮頸癌10,933 例の治療解析では,ⅡB 期症例の20%,リンパ節転移陽性症例の55%で手術が主治療として選択されており,米国でも症例によっては手術が主治療として選択されていることがわかる 7)

一般に,手術療法と放射線治療を比較した場合,手術療法のメリットは,病理組織学的所見に基づいた再発リスクの評価が可能であり,その後の治療において症例ごとの個別化が可能であること,卵巣移動術などで卵巣機能の温存が可能であることである。しかしⅡB 期の多くの症例では,手術を行っても術後補助療法が必要となる。実際,本邦でも2014 年に手術を主治療とした症例のうち手術療法のみで治療を終了した症例は50 例(9.0%)と少数であった。放射線治療のメリットは,侵襲が少なく高齢者や合併症をもつ症例においても比較的安全に施行し得ること,広汎な切除による排尿障害を避け得ること,広汎子宮全摘出術後に骨盤照射を行わざるを得ない場合と比較して,下肢浮腫などQOL に影響する合併症が少なくて済むことである。現時点では,手術療法あるいは放射線治療のいずれを選択するかは,年齢,performance status(PS),合併症の有無などをもとに,術後補助療法の必要性と影響も考慮しつつ決定されるべきであるが,症例ごとの治療選択についてのエビデンスは非常に少ないのが現状である。

手術を中心とした治療では岡林式の広汎子宮全摘出術が奨められる。また,ⅡB 期では骨盤リンパ節転移が35〜45%と高頻度に認められるため,内腸骨血管周囲のリンパ節を含めた基靱帯リンパ節の十分な郭清が必要と考えられ 8),手術手技に十分習熟した婦人科腫瘍専門医によって施行されるべきである。またⅡB 期症例でも子宮傍(結合)組織浸潤の疑われていない側や,術中所見から判断して浸潤の可能性が少ない症例には骨盤神経温存術式も考慮されるが,術後病理組織診断で約半数に子宮傍(結合)組織浸潤が認められることから 8, 9),十分な根治性が保てるか慎重な判断が必要である 10, 11)。手術を主治療とした場合,治療オプションとしてNAC が考えられる。Cochrane systematic review では,NAC は手術単独と比較して無病生存率・全生存率ともに改善すると報告され 12),本邦での第Ⅱ相試験(JGOG1065 試験)でも良好な奏効率が報告された 13)。一方,別のRCT では,NAC と非施行例で5 年生存率に有意差を認めておらず 14),ⅡB 期に対するNAC の有用性に関しては今後さらなる検討が必要である(NAC に関してはCQ09 参照)。

放射線治療を主治療とした場合に,Cochrane メタアナリシスからは放射線治療単独と比較してCCRT の全生存率が良好と報告され,Ⅲ・Ⅳ期と比較してⅠ・Ⅱ期での予後改善効果が大きいことが示された。これを踏まえてNCCN ガイドライン2016 年版ではCCRT が推奨治療とされている 15)。CCRT 後の広汎子宮全摘出術についてはRCT があるが生存への寄与は明らかではない 16)。一方,メタアナリシスではCCRT に全身化学療法を追加すると全生存率が改善することが示唆され 17),CCRT 単独に対しCCRT 後にパクリタキセルとカルボプラチンを4 サイクル追加することによる予後改善効果を検討するRCT が現在進行中である(OUTBACK 試験:NCT01414608)。また,CCRT 前にNAC を行う治療法の第Ⅱ相試験が行われ,良好な治療成績と安全性が示唆された 18)。これを踏まえてCCRT 単独とNAC-CCRT のRCT が現在進行中である(INTERLACE 試験:NCT01566240)。

以上のように,ⅡB 期扁平上皮癌に対する治療としては,手術を主治療とする方法ではNAC の意義,放射線治療を主治療とする方法ではCCRT を中心に化学療法や手術の追加の意義を検討する方向で臨床試験が行われているのが現状である。さらにⅠB 2〜ⅡB 期に対してNAC とCCRT+手術療法のRCT が行われている(EORTC55994 試験:NCT00193739)。

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CQ09
ⅠB・Ⅱ期扁平上皮癌に対して術前化学療法(NAC)は推奨されるか?

推奨グレードC1
腫瘍の拡がりや大きさによっては術前化学療法(NAC)を組み合わせた治療が考慮される。
明日への提言

近年,術前化学療法(neoadjuvant chemotherapy;NAC)の再評価が進みつつあり,一部のメタアナリシス等ではQOL の改善を含めたNAC の有用性が示唆されているが,CCRT など標準治療に対して予後改善効果を示すエビデンスは得られていない。NAC 奏効例では予後良好であるという報告が多く,NAC における薬剤選択,投与方法の最適化とともに症例の選別など,より個別化した適応での予後改善を目指す臨床試験が望まれる。

目的

Ⅰ・Ⅱ期扁平上皮癌の中でも特に予後の不良なⅠB 2 期からⅡB 期において,術前化学療法(NAC)を行うことが予後改善に貢献するか否かを検討する。

解説

NAC の目的は,腫瘍のサイズを縮小することにより,手術の根治性や安全性を向上させ,予後改善効果を得ることである。主治療である手術,放射線治療の前に化学療法を行うことは次の点で有利であると考えられる。①手術や放射線治療による腫瘍への血流障害が生じていない,②放射線治療による骨髄障害を受けておらず,造血機能が良好な状態にある。

NAC に伴う不利益としては次の点が考えられる。① NAC が奏効しなかった場合には主治療開始前に腫瘍の進展を来す危険性がある,②手術療法の施行が困難となった場合には放射線治療が選択される場合が多いが,放射線治療の前に行われた化学療法が局所制御や生存に関して不利に働く危険性がある(CQ21 参照),③化学療法による貧血のため自己血貯血ができなくなり,術中・術後に輸血が必要となる危険性が高まる。

NAC と手術を含めた集学的治療が予後を改善するか否かに関しては,試験によってシスプラチン総投与量(150〜300 mg/m2)や生存率(41〜66%)が異なることもあり,見解の一致を見ていない。NAC の優位性を示す研究の一つに,4 群(NAC+手術+放射線治療,手術+放射線治療,放射線治療単独,NAC+放射線治療)の比較試験がある 1)。NAC+手術+放射線治療群(7 年生存率:65%)では,手術+放射線治療群(7 年生存率:41%)および放射線治療単独群(7 年生存率:48%)に比べて有意な生存率の改善が認められた。また,NAC+手術(+放射線治療)と手術(+放射線治療)のRCT では,NAC によりⅠB 2 期の5 年生存率とOS の有意な改善が認められた 2)。放射線治療との比較でも同様に,NAC+手術療法に有意な予後改善効果があることが報告されている 3, 4)。しかし,NAC+手術と手術を比較した別のRCT 5)では7 年生存率(70% vs. 66%)や再発率(32% vs. 37%)に有意な差は認められず,他にもNAC+手術と手術の間に再発率や生存率に差がなくNAC の上積み効果はないとするRCT 6)もある。NAC に関する2 つのメタアナリシスでは,NAC を含めた集学的治療を行うことで子宮傍(結合)組織浸潤やリンパ節転移が減り,手術療法や放射線治療単独と比較して無病生存率・全生存率の改善が期待できるとの結論 7, 8)に至っている。一方,ⅠB 2〜Ⅱ期に対する標準治療の一つであるCCRT との比較では,同等の生存率だったとする後方視的報告 9, 10)があるのみで,まだ結論は得られていない。現在Gynecologic Cancer InterGroup(GCIG)において,ⅡB 期もしくは腫瘍径が4 cm をこえるⅠB 2 期・ⅡA 2 期に対して,NAC+手術療法とCCRT とを比較するRCT(EORTC55994 試験:NCT00193739)が行われており,最終解析結果が待たれる。

本邦の多施設臨床試験としては2 つの研究結果が示されている。BOMP 療法(ブレオマイシン+ビンクリスチン+マイトマイシンC+シスプラチン)4 サイクルによるNAC+広汎子宮全摘出術±放射線治療 vs. 標準治療(広汎子宮全摘出術+放射線治療)のRCT(JCOG0102 試験)ではBOMP 療法の奏効率が66%と低く,両群の5 年生存率に有意差は認められなかった 11)。一方,NAC にイリノテカンとネダプラチンを用いた第Ⅱ相試験(JGOG1065 試験)での奏効率は76%であり,平均1.42 サイクルで縮小効果が得られ,有害事象は許容範囲内であった 12)。いずれの試験もNAC がⅠ・Ⅱ期の予後改善に貢献するという結論を導くには至らず,今後,さらなる検討が必要である。

子宮頸癌に対する妊孕性温存手術(広汎子宮頸部摘出術)や鏡視下手術が広まりつつあり,海外ではこれらとNAC を組み合わせる試験的な試みがある(CQ10CQ11 参照)。腫瘍径が大きい場合でもNAC 後に広汎子宮頸部摘出術を行うことで再発は少なく20〜29%で生児を得たとの報告 13, 14)や,NAC 後に腹腔鏡下手術を行った場合,十分な切除マージンが確保され,合併症が少なく早期退院も可能であったとの報告 15)など,エビデンスが蓄積されつつある。

腺扁平上皮癌を含む腺癌に対するNAC については,試験の数は少ないものの,扁平上皮癌と比較して短期的な奏効率に遜色はないことがメタアナリシスで示されている 16)。本邦の単施設からの報告では,腺癌に対するパクリタキセルないしドセタキセル+カルボプラチンの奏効率は78%であった 17)

NAC の投与経路として経静脈投与(NAC-IV)の他に経子宮動脈投与(NAC-IA)がある。手術,手術+腟腔内照射15 Gy,NAC-IV+手術,NAC-IA+手術の4 群RCT 18)における3 年生存率には差がなく(73% vs. 68% vs. 83% vs. 80%),NAC-IA を選択する意義は乏しい。

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CQ10
ⅠB・Ⅱ期に対して腹腔鏡下手術,ロボット支援下手術は推奨されるか?

推奨グレードC1
腫瘍径の小さなⅠB・Ⅱ期を対象とした腹腔鏡下手術,ロボット支援下手術は,手術手技に十分習熟した婦人科腫瘍専門医により,あるいは内視鏡技術認定医と婦人科腫瘍専門医の協力体制の下で施行されることが考慮される。
明日への提言

海外では子宮頸癌に対する鏡視下手術(腹腔鏡下手術およびロボット支援下手術)が急速に普及しているが,本邦での普及は遅れている。本邦においても患者が海外と同様の医療を受けることができるようにするためには,従来の標準治療に劣らない安全性と治療強度・予後を担保しつつ鏡視下手術の普及を図るための制度・教育法の確立が必要である。また,安全性や有効性に関する本邦からのデータを集積し,検証していくことも重要である。近い将来に本邦でも実地医療での実践が行われることが望ましい。

目的

腫瘍径の小さなⅠB・Ⅱ期を対象とした根治術において腹腔鏡下手術,ロボット支援下手術が推奨されるか否かを検討する。

解説

初期子宮頸癌に対する広汎子宮全摘出術については,2014 年と2016 年に腹腔鏡下手術とロボット支援下手術が相次いで先進医療として一部の国内施設で運用することが認可された。鏡視下手術(腹腔鏡下手術およびロボット支援下手術)が標準術式となり得るかは,従来の標準治療に劣らない治療強度と安全性が担保された上で運用されるかどうかにある。

ⅠB・Ⅱ期に対する標準術式である広汎子宮全摘出術について,腹腔鏡下手術と開腹手術のアウトカムを比較したRCT やメタアナリシス 1-3)に共通する腹腔鏡下手術の利点は次のようにまとめられる。①出血量が減少し輸血例が減少する,②周術期の痛みが少なく術後早期の退院が可能となる,③周術期合併症が少ない,④術後の導尿期間が短く社会復帰が早い。その一方で,腹腔鏡下手術の問題点として,①手術時間が長い,②切除マージン〔腟の長さ,基靱帯や子宮傍(結合)組織の長さ〕が短く治療強度が劣るかもしれないことが指摘され,手技の習熟に時間と経験が必要であることも短所である 1, 3)。しかし,腹腔鏡下手術と開腹手術の間で治療成績について検討した試験の結果を総合すると,切除リンパ節個数,OS,DFS,再発率に明確な差はない 3)。以上の結果を受け,本邦でも2014 年より術前評価で腫瘍の浸潤が子宮頸部にとどまる子宮頸癌ⅠA 2,ⅠB 1,ⅡA 1 期を対象に腹腔鏡下手術が先進医療として行われている。

一方,近年,海外ではロボット支援下手術の普及も著しい。広汎子宮全摘出術における腹腔鏡下手術とロボット支援下手術を比較した直近のメタアナリシスでは,切除リンパ節個数や再発率,術後追加治療の施行率などの成績に差はなく,どちらを選択するかは術者の慣れや患者の意向で選べばよいとされる 4)。ロボット支援下手術は指先での鉗子操作,手ぶれ防止,3D 術野などの機能を有するため細かな操作に長けて学習が早く,腹腔鏡下手術と比較して輸血率や開腹移行率が低く退院までの日数が短いという利点があるが 3),現時点では費用が高いという欠点があり,術者の技術習熟度や施設に合わせていずれかを選択するのが現実的である。先進医療ではⅡB 期までロボット支援下手術を行うことが認められているが,腹腔鏡下手術とロボット支援下手術を比較したレビュー 5)やメタアナリシス 4)は主としてⅡA 期までを対象としており,ⅡB 期に対するロボット支援下手術の妥当性がまだ十分に検証されていないことに留意する必要がある。少なくとも開腹術と同等の治療強度を有する岡林式広汎子宮全摘出術を施行することが必須である。

腹腔鏡下広汎子宮全摘出術においても開腹手術で検討した諸項目(CQ06〜CQ09CQ12)が当てはまる。①神経温存術式により根治性を損なうことなく排尿機能や性機能が保たれる 6-8)。②術前化学療法(NAC)後の広汎子宮全摘出術でも出血・輸血の少なさや早期退院などの腹腔鏡下手術の優位性が示される 9)。③腹腔鏡下手術やロボット支援下手術でも画像検査と組み合わせることで術中にセンチネルリンパ節(sentinel lymph node;SLN)を両側とも同定し得る 10, 11)。さらに,BMI が30 kg/m2 をこえる肥満患者の場合,腹腔鏡下手術では周術期合併症・根治性ともに一般の患者と同等とされている 12)

以上より,ⅠB・Ⅱ期に対する広汎子宮全摘出術において鏡視下手術の利点は多く,海外の一部では標準治療として確立されつつある。NCCN ガイドライン2016 年版でも適切な訓練を受けた経験豊富な術者が施行すれば有益であることが認められ,広汎子宮全摘出術は開腹手術または腹腔鏡下・ロボット支援下手術のいずれかで施行することができるとされている 13)。治療予後については,開腹手術と腹腔鏡下・ロボット支援下手術の間でDFS を比較する大規模RCT(LACC 試験:NCT00614211)が行われており,結果の開示が待たれている。一方,本邦では,まだ確立された標準治療とは言い難く,その施行においては,手術手技に十分習熟した婦人科腫瘍専門医により,あるいは内視鏡技術認定医と婦人科腫瘍専門医の協力体制の下で施行されるべきである。施設ごとに手術適応を判断し最適な術式を選択すべきであり,開腹術と同様の治療成績が担保されることが何よりも重要である。

ⅠB 2 期以上の子宮頸癌で主治療にCCRT を用いる場合,治療前のステージングに鏡視下手術を使用する方法がある。初回治療時に放射線照射部位を骨盤部にとどめるか傍大動脈領域まで拡げるかを決定する際に,CT やFDG-PET/CT などによる傍大動脈リンパ節転移の判定では疑陽性が問題となる 14)。そこで欧米ではCCRT 前にPET/CT 陰性のものに腹腔鏡下傍大動脈リンパ節生検を施行して転移の有無を確認した上で照射野を設定することが広まりつつあり 15),NCCN ガイドライン2016 年版ではⅠB 2 期以上で,腹腔鏡下傍大動脈リンパ節生検によるステージングを組み合わせたCCRT を許容している 13)。また,CCRT を行うにあたって傍大動脈リンパ節転移をPET/CT のみで評価するか,腹腔鏡下生検も行って評価するか,現在,RCT(LiLACS 16))が行われている。本邦の現状を鑑みると,適応と要件を十分に審議することができる施設において,手術手技に十分習熟した婦人科腫瘍専門医により,あるいは内視鏡技術認定医と婦人科腫瘍専門医の協力体制の下で,主治療前に癌の拡がりを把握する目的で腹腔鏡下傍大動脈リンパ節サンプリングを行うことは考慮されてもよいと考えられる。

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CQ11
子宮温存術式の適応は?

推奨グレードC1
ⅠA 2 期または腫瘍径が2 cm 以下のⅠB 1 期症例に対しては,広汎子宮頸部摘出術(radical trachelectomy)が妊孕性温存治療の選択肢として考慮される。
明日への提言

広汎子宮頸部摘出術の施行には,病理医,生殖医療・周産期管理・新生児管理を担当する医師の協力が不可欠であり,その適応運用について慎重な議論が必要である。また,安全性や有効性に関する本邦からのデータを集積し,検証していくことも重要である。

目的

広汎子宮頸部摘出術の適応や治療成績について検討する。

解説

妊孕性温存を希望する浸潤子宮頸癌症例に対する手術方法として広汎子宮頸部摘出術(radical trachelectomy)が提唱され,その治療成績が1990 年代以降報告されるようになった 1, 2)。この術式は,病変が存在する子宮頸部・腟上部・子宮傍(結合)組織を広汎子宮全摘出術と同様の切除範囲で摘出し,あわせて骨盤リンパ節郭清も実施することで,根治性を保ちつつ子宮体部・卵巣・卵管を温存する術式である。大きく分けて腟式と腹式の2 つの方法がある。腟式の場合は,広汎子宮頸部摘出術に先立ち,腹腔鏡下に骨盤リンパ節郭清を行う施設が多い。腹式では,より低侵襲な腹腔鏡下やロボット支援下の手術を行う報告も最近みられる 3-6)。また腫瘍径の小さな症例では,腹式・腟式ともに子宮傍(結合)組織の切除範囲を縮小した,いわゆる準広汎の切除 7)や単純子宮全摘出術と同様の切除の単純子宮頸部切除術の報告 8-11)もみられる。

広汎子宮頸部摘出術の適応に関しては様々な意見があるが,一般的なのは①妊孕性の温存を強く希望している,②ⅠA 2・ⅠB 1 期,または③ⅠA 1 期で脈管侵襲あり,④腫瘍径が2 cm 以下,⑤明らかなリンパ節転移がない,⑥組織型が扁平上皮癌,腺癌,腺扁平上皮癌である,が挙げられる 12-18)。腫瘍径に関しては報告により適格基準が様々であり,NCCN ガイドライン2016 年版においては腫瘍径2 cm 以下が最も妥当性が検証されているため推奨されている 19)

広汎子宮頸部摘出術が,従来の広汎子宮全摘出術と比較して同等の治療効果を有するかを証明した前方視的研究はない。後方視的解析では,腫瘍径が同等であれば広汎子宮頸部摘出術と広汎子宮全摘出術では治療成績が変わらないとする報告が多い 20-22)。再発率は腫瘍径など適応基準によって様々であるが,腟式手術で4.2%,腹式手術で3.8%と報告されている 23, 30)。腫瘍径2 cm 以上の症例においては再発率・死亡率ともに高い報告 23-27)が多くみられ,腫瘍径が大きな症例に腹式手術を適応としている報告 33)や術前化学療法後に行っている報告もある 23, 28, 29)

複数の症例集積研究で腟式手術と腹式手術の治療成績が評価され,文献の系統的レビューも行われている 30-32)。術後の妊娠率は腟式の方が腹式より高い報告が多い。合併症に関しては両者に有意差は認められなかったとする報告がある 33)。一般的に腹式手術の利点としては,腟式手術に比較して子宮傍(結合)組織を幅広く切除可能であることから,より腫瘍径が大きな症例にも適応できること,手術手技を習得しやすいこと,今後より低侵襲な腹腔鏡下やロボット支援下のアプローチに移行しやすいことが挙げられる。一方,腟式手術は,切除範囲が狭くなるものの,子宮の支持組織に対するダメージや術後の腹腔内癒着が少なく,腹式に比べ妊孕性温存には有利であると考えられている。

広汎子宮頸部摘出術を計画しても,手術時の切除断端陽性やリンパ節転移陽性などが理由で約10〜20%が子宮全摘出術に変更になっている 34, 35)。また,術後に摘出標本の病理結果から再発高リスクの因子が認められ,術後にCCRT や化学療法を追加され妊孕性が温存できなかった症例もあることから,実際の妊孕性温存率は約70〜90%と報告されている。術後合併症としては,頸管狭窄,排尿障害,尿路感染,リンパ嚢胞,外陰浮腫,外陰血腫,腹膜貯留嚢胞,骨盤内感染,子宮性無月経等が発生する。なかでも頸管狭窄の発生頻度は10〜15%と高く 17, 36),ときに子宮留血症や月経困難症を生じる場合がある。さらに,頸管狭窄や子宮頸管粘液の減少が不妊の原因となり,妊娠には体外受精などの生殖補助医療が必要となる場合も多い 14)。術後に妊娠を試みた患者を全体とした場合の妊娠率は,約30〜50%との報告が多い。

妊娠した場合も流産や早産のリスクは非常に高く,腟式広汎子宮頸部摘出術後の妊娠例106 例を検討した報告 17)では,1st trimester での流産の割合は20%,2nd trimester は3%,3rd trimester の分娩は73%(32 週未満は4%,32 週〜37 週未満は14%,37 週以降は55%)であった。腹式広汎子宮頸部摘出術の系統的レビューに報告された分娩例65 例の妊娠転帰は,1st trimester の流産は9 例(14%),2nd trimester は9 例(14%),3rd trimester の分娩は47 例(72%)と報告されている 30)。流早産予防に関しては,子宮頸管の短縮による絨毛膜羊膜炎・前期破水が問題となるため,手術時に非吸収糸による頸管縫縮を行う,妊娠管理において,腟や子宮頸管の感染に対するスクリーニング,予防的抗菌薬投与,可能な限りの安静,子宮収縮抑制を推奨する報告があるが,一定の見解は得られていないのが現状である 37)。分娩においては帝王切開術が必要であり,緊急帝王切開術を行う場合も多く,分娩週数によっては低出生体重児に対応できる高度な新生児管理が必要になること,出生児に未熟性に伴う障害が発生する危険性があることまでを患者には説明するべきである。

本邦では,本術式は浸潤子宮頸癌に対する妊孕性温存治療の一つの選択肢として限られた施設で行われているのが実情である 3, 7, 12, 14, 18)。癌に対する根治性や術後管理の問題,体外受精などの生殖補助医療の必要性,妊娠した場合の周産期管理,新生児管理など,まだコンセンサスが得られていない点も多く,手術の適応については慎重な判断が必要である。患者に対しても,上記を含めた十分なインフォームドコンセントを得る必要がある。実施にあたっては,婦人科腫瘍専門医,病理医,生殖医療・周産期管理・新生児管理を担当する医師とも協力体制が不可欠である。

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CQ12
センチネルリンパ節生検によるリンパ節郭清の省略は推奨されるか?

推奨グレードC1
センチネルリンパ節生検は病理医の協力体制の整った施設で,手技に習熟したチームにより試験的位置付けで行われるべきであり,十分に精度と安全性が確認された施設においてはセンチネルリンパ節転移陰性例でのリンパ節郭清の省略が考慮される。
明日への提言

センチネルリンパ節生検による転移陰性例に対する系統的リンパ節郭清の省略は,臨床試験としてバックアップ郭清とともにセンチネルリンパ節生検を十分に行って安全性が担保された施設が倫理審査を受けた上で行うべきである。今後,一般診療となり得るかについては,安全性や有用性に関する各施設のデータの集積,多施設での検証結果を踏まえて議論されるべきである。センチネルリンパ節に対する詳細な病理学的検索の意義を確立するための検証も必要である。

目的

センチネルリンパ節生検が推奨されるか否かを検討する。

解説

子宮頸癌におけるセンチネルリンパ節の生検は,多施設前方視的検討 1)やメタアナリシス 2-4)の結果から,病変が子宮頸部に限局した早期の子宮頸癌患者に対する系統的骨盤リンパ節郭清に代わる有用な方法となり得る可能性が示されてきている。国内からも複数の有用性を示唆する報告がなされている 5-8)

骨盤リンパ節郭清の省略を目的とするセンチネルリンパ節生検の対象としては,メタアナリシス 2)では腫瘍径が2 cm をこえると検出率が低下することが指摘され,全進行期を対象として妥当性を検証した多施設前方視的検討の結果でも腫瘍径2 cm 以下で,両側性にセンチネルリンパ節が同定された症例での有用性が指摘されている 9)

センチネルリンパ節の同定に使用するトレーサーは主として色素あるいは放射性同位元素(radioisotope;RI)で,両者の併用法による検出率が高いとされる 2, 4)

使用される色素としてはパテントブルー,イソスルファンブルーなど,RI では99m-テクネチウム製剤があり,国あるいは施設により厳密には一致していない。国内からの報告 5-8)ではパテントブルーや99m-テクネチウム-フチン酸が用いられている。用いる色素やテクネチウム製剤の種類による成績の差は認められない 3)。インドシアニングリーンを用いた蛍光法によるセンチネルリンパ節の検出 10)は腹腔鏡下手術,ロボット支援下手術で適用しやすく,被曝の問題もないため普及してきているが,色素,RI に比べて新しい方法で,今後さらなる検証が必要と考えられる。

術中迅速診断に関する問題点としてリンパ節転移検出率の低さが指摘されている 11, 12)が,2 mm 程度の連続切片で迅速診断を行えば微小転移を含め80〜90%が検出可能との報告 13-15)もある。センチネルリンパ節に微小転移や孤立性腫瘍細胞が検出された症例に対しては系統的骨盤リンパ節郭清が有効とする多施設後方視的検討 16)もあり,迅速診断での転移陽性例に対する術中の取り扱いに関しては,さらなる検討が必要である。

センチネルリンパ節生検による術中迅速診断で転移陰性であった症例に対して骨盤リンパ節郭清を省略する前方視的検討も行われている 13, 14)。単施設でのものであるが,系統的リンパ節郭清に比してリンパ節転移の発見率が向上し,リンパ浮腫の発生が減少した一方で,再発率は増加しなかったと報告されている。

センチネルリンパ節生検の施行にあたっては,センチネルリンパ節を術中迅速診断で詳細に検索すること,センチネルリンパ節が検出されない側については系統的リンパ節郭清を施行すること,転移の疑わしいリンパ節はセンチネルリンパ節でなくても摘出すること,センチネルリンパ節として評価困難な基靱帯リンパ節は摘出することによって,あらゆるリンパ節転移は検出可能と報告されている 17, 18)

以上のように,センチネルリンパ節生検は症例を的確に選択すれば,センチネルリンパ節に対し多数の切片を検索することでリンパ節転移の発見率が上昇し,治療の個別化に有用で,系統的リンパ節郭清が省略できる可能性がある。しかしながら,標準治療とのRCT で検証された結果は存在せず,まずは臨床試験としてバックアップ郭清とともに行われた後に系統的郭清の省略に取り組む方が安全である。実際に系統的リンパ節郭清を省略するには,婦人科医だけでなく,既にセンチネルリンパ節生検に習熟している他科の医師や放射線科,病理診断科などの協力の下に取り組むべきである。

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CQ13
広汎子宮全摘出術の場合に卵巣温存は推奨されるか?

推奨グレードB
  1. 年齢,組織型,進行期などにより症例を選択した上で卵巣温存が推奨される。
推奨グレードC1
  1. 卵巣を温存する場合,骨盤照射野外への移動固定が考慮される。
明日への提言

どのような症例において,卵巣温存の有益性が危険性を上回るかは必ずしも明確ではなく,今後,検討すべき課題である。

目的

広汎子宮全摘出術における卵巣温存の意義と根治性との関連について検討する。

解説

広汎子宮全摘出術に伴う卵巣摘出や術後の放射線治療による卵巣機能の廃絶は,患者にとって深刻な問題である。卵巣摘出は,hot flash などの卵巣欠落症状にとどまらず,長期的に様々な健康障害を引き起こす。骨粗鬆症による椎体骨折の頻度は35 歳未満で卵巣摘出を行った症例で5.2 倍,44 歳以下の場合で2.1 倍に増加する 1)。循環器系では,40 歳以下で卵巣摘出を行った症例では45 歳以上での摘出症例に比べて虚血性心疾患の罹患率が8.7 倍に増加する 2)ほか,心血管系が原因の死亡率が1.8 倍に上昇する報告 3)がある。さらに,2 型糖尿病などの代謝性疾患 4),認知症 5)やパーキンソン病 6)のリスクが増すなど,多岐にわたる深刻な影響が報告されている。若年子宮頸癌患者では,がん治療後のQOL を維持するため,卵巣温存を考慮すべきである。

卵巣温存の安全性については,150 組のⅠ期子宮頸癌のマッチドペア分析で卵巣温存例と摘出例の生存率に有意差は認められておらず,根治性を損なうことはないとされている 7)。臨床進行期別に卵巣転移率をみると,扁平上皮癌ではⅠB 期0〜0.5%,ⅡB 期0.6〜2.2%であり 8-13),扁平上皮癌のⅠB 期では卵巣転移の頻度は低く,卵巣温存が可能であると考えられる。一方で,腺癌ではⅠB 期0.8〜3.8%,ⅡB 期7.1〜16%と,扁平上皮癌に比べ卵巣転移率が高い 8-13)。腺癌は,ⅠB 期でも卵巣転移が比較的高率であるため,若年や妊孕性温存を希望する場合など,適応を慎重に考慮した上で,卵巣温存を考慮すべきである。ⅠA 2 期からⅡA 期の子宮頸癌を対象とした解析では腫瘍径4 cm をこえると有意に卵巣転移が増加し,腫瘍径は組織型とともに有意な卵巣転移規定因子である 13)ことから,腫瘍径の大きな症例では卵巣温存は慎重に行うべきである。このほか,卵巣転移のリスク因子として,年齢,子宮傍(結合)組織浸潤,子宮体部への進展,脈管侵襲などが知られており 8, 11, 13),卵巣温存に際してはこれらの点を考慮する必要がある。なお,術中迅速診断の臨床的意義については意見の一致をみていない 14)

術後放射線治療が予想される症例では,被曝を避けるために卵巣を照射野外に移動固定する卵巣移動術を行う必要がある。移動先としては傍結腸溝(上行結腸や下行結腸の外側)15, 16)や腹部の皮下組織 15)がある。移動した卵巣への照射量が3 Gy 以下では9 割の症例で卵巣機能が維持されたが3 Gy をこえると6 割が閉経したとの報告があり 17),2 Gy の照射量で卵巣内の原始卵胞数が減少するとの報告もある 18)。散乱線の影響を考慮すると照射野から4 cm以上離れて固定すべきとされ 19),腸骨稜の上方1.5 cm 以上に固定することで有意に正常の卵巣機能を維持できるとの報告 20)がある。移動後の卵巣機能は術後補助療法が大きく影響するが,卵巣機能維持率(平均観察期間)は,41%(43 カ月)21)から71%(35 カ月)17)とされており,卵巣温存後も定期的に卵巣機能を評価することが重要である。術後補助療法により卵巣機能が低下した場合,ホルモン補充療法は子宮頸癌再発のリスクを上昇させないとされる 22)CQ35 参照)。温存卵巣への再発転移の報告 23, 24)もあるので,術後は,骨盤内のみならず移動温存した卵巣も含めた再発管理が必要である。

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CQ14
ⅠB・Ⅱ期に対する傍大動脈リンパ節郭清・生検の意義は?

推奨グレードC1
傍大動脈リンパ節転移のリスクが高い症例では,傍大動脈リンパ節生検・郭清が考慮される。

目的

ⅠB・Ⅱ期に対する広汎子宮全摘出術の際に,傍大動脈リンパ節生検・郭清を追加する適応を検討する。

解説

傍大動脈リンパ節転移は子宮頸癌の遠隔転移の一つであり,重要な予後因子と考えられている 1-3)。傍大動脈リンパ節生検・郭清を行う目的は,その後の治療方針を決定するための診断的意義と,再発予防や治療成績改善のための治療的な意義の2 つに分けられる。

診断的意義を目的とした傍大動脈リンパ節郭清については,本邦では傍大動脈リンパ節転移陽性症例に対する術後療法は標準治療が明確に定まっていないためにルーチンに行われておらず,症例ごとに個別に対応しているのが現状である。一方,NCCN ガイドライン2016 年版では,脈管侵襲が認められるⅠA 1 期以上の症例では傍大動脈リンパ節生検が推奨されている。また,ⅠB 2 期以上の症例でCCRT が選択される症例では傍大動脈リンパ節のPET/CT を含む画像検査もしくは腹膜外または腹腔鏡下リンパ節郭清が推奨されている。傍大動脈リンパ節生検や画像検査で傍大動脈リンパ節転移陽性の症例では,他の遠隔転移を否定した上で,腹膜外または腹腔鏡下リンパ節郭清と腎血管の高さ(転移リンパ節の分布によってはさらに頭側)までカバーした拡大照射野でのCCRT が予後を改善するとされており推奨治療となっている 4)

さらに,傍大動脈リンパ節の生検ならびに郭清の診断的意義について,術前画像検査との比較検討の報告が散見される。傍大動脈リンパ節転移の画像診断はFDG-PET もしくはPET/CT,MRI とCT でそれぞれ,感度が52〜84%,25〜67%,34〜50%であり,特異度が95〜100%,91〜100%,92〜98%と報告され,NCCN ガイドライン2016 年版でもⅠB 2 期以上の症例にはPET/CT を用いた画像検査が推奨されている 4-6)。一方,PET で傍大動脈リンパ節転移が陰性と診断されたにもかかわらず摘出組織からリンパ節転移が陽性と診断されたⅠB 1〜ⅣA 期462 例の後方視的検討が報告されている。これによると,PET で骨盤リンパ節転移陰性の症例は傍大動脈リンパ節転移が9%であったのに対して,骨盤リンパ節転移が陽性の症例は傍大動脈リンパ節転移が22%に認められたことから,骨盤リンパ節転移陽性例では,画像検査で傍大動脈リンパ節転移が陰性であっても積極的に傍大動脈リンパ節生検を施行すべきとしている 5)

治療的意義を目的とした傍大動脈リンパ節郭清は,生存への寄与が明らかでないために本邦,海外ともにルーチンに行われておらず,個々の症例に応じて行われているのが現状である。傍大動脈リンパ節転移はⅠB 期で2〜4%,ⅡB 期で5.3〜44%の症例で認められ,骨盤リンパ節に多発転移,総腸骨リンパ節転移陽性例や2 cm 以上の原発巣をもつ症例などで傍大動脈リンパ節転移の頻度は高くなる 7, 8)。また,傍大動脈リンパ節への単独転移は極めて稀で,通常骨盤リンパ節転移を伴い,下腸間膜動脈より下部のリンパ節に転移が認められなかった場合,上部のリンパ節には転移は存在しないとされている 7)。これらの報告から,広汎子宮全摘出術の際に傍大動脈リンパ節生検・郭清を考慮すべき症例は,術前の画像検査や術中の触診で傍大動脈リンパ節の有意な腫大が認められる症例に加えて,術前の画像検査や術中迅速病理診断で骨盤リンパ節転移陽性例,ⅡB 期症例やbulky な原発巣をもつ症例などで考慮してもよいと考えられる。Japanese Gynecologic Oncology Group(JGOG)でⅠB 2,ⅡA 2,ⅡB 期症例を対象に行われた調査研究では,166 施設中101 施設(61%)で症例によっては広汎子宮全摘出術に続いて傍大動脈リンパ節郭清を施行している。これらの施設では,総腸骨リンパ節転移陽性例や画像検査での傍大動脈リンパ節腫大例などが傍大動脈リンパ節生検・郭清を追加する主な選択基準とされている 9)

また近年,傍大動脈リンパ節郭清の治療的意義について,PET/CT で傍大動脈リンパ節転移が認められない237 例を対象に腹腔鏡下リンパ節郭清を行った前方視的多施設共同研究が報告された。この試験では29 例(12%)で傍大動脈リンパ節転移が陽性であり,これらに対し拡大照射野でCCRT が施行された結果,傍大動脈リンパ節転移が5 mm 以下の小さなリンパ節転移陽性例では,傍大動脈リンパ節転移陰性例と遜色ない予後が得られている。反対に,5 mm 以上の症例では拡大照射野でのCCRT だけでは不十分とされ,CCRT のレジメン変更やCCRT 後の化学療法が考慮されるべきとしている 10)

現在,欧米では傍大動脈リンパ節生検・郭清は開腹術から腹腔鏡下手術へ,腹腔内アプローチから腹膜外アプローチへと変遷している。開腹での傍大動脈リンパ節郭清では10〜19%の周術期合併症が認められるのに対して腹腔鏡下傍大動脈リンパ節郭清では0〜7%と合併症の頻度は少ない。周術期合併症はリンパ嚢胞が最多であり,小腸通過障害は腹腔鏡下手術が開腹手術より,腹膜外アプローチが腹腔内アプローチより起こりにくいとされている 3, 5)。現在,本邦では腹腔鏡下傍大動脈リンパ節郭清はルーチンでは行われておらず,今後,適応の検討が必要である。

以上のように,傍大動脈リンパ節生検・郭清の意義に関する治療方針についての明確なエビデンスは極めて少ない。現在,PET/CT で骨盤リンパ節転移が疑われ傍大動脈リンパ節転移が陰性の600 症例を対象に傍大動脈リンパ節郭清を行って治療の個別化を図った群と,画像診断のみで骨盤へのCCRT を行った群の3 年生存を比較したRCT を含めて2 つのRCT が行われており(EPLND for cervix 試験:NCT01365156,uterus 11 試験:NCT01049100),その結果によって傍大動脈リンパ節郭清の診断的・治療的意義が証明されることが期待される。

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CQ15
ⅠB・Ⅱ期腺癌に対して推奨される治療は?

推奨グレードC1
  1. 広汎子宮全摘出術(+補助療法)が考慮される。
推奨グレードC1
  1. 同時化学放射線療法(CCRT)も考慮される。

アルゴリズム(フローチャート2)参照

明日への提言

子宮頸部腺癌に関して根治的放射線治療と比較して手術療法の方が予後が良いことを示唆するいくつかの研究がある。しかし,両者を直接比較したRCT はなく,海外のガイドラインでは組織型による治療方針の分別は行われていない。今後,本邦でのエビデンスの蓄積が必要である。さらに,腺癌の亜型である胃型粘液性癌はさらに予後不良との報告があるが取り扱いは個別化されておらず,今後の検討課題である。

目的

腺癌は扁平上皮癌に比べて予後不良で放射線感受性も低いと考えられている。ⅠB・Ⅱ期の腺癌に対する適切な治療法について検討する。

解説

近年,臨床進行期Ⅰ・Ⅱ期においても,腺癌は扁平上皮癌に比べて予後不良であることが報告されている 1, 2)

子宮頸部腺癌に関して手術と根治的放射線治療を比較するデザインのRCT はないが,ⅠB・ⅡA 期を対象としたRCT のサブグループ解析において,腺癌では手術群の予後(生存率,無病生存率)が有意に良好であったことが示された 3)。Ⅰ・Ⅱ期に対しては,手術療法の方が根治的放射線治療よりも予後が良好であるとする後方視的研究の結果が報告されている 4-6)

以上より,ⅠB・Ⅱ期に対しては広汎子宮全摘出術が考慮される。ただし,腫瘍径3 cm未満の小さな腺癌に対しては放射線治療を主治療としても予後良好であるとの報告 7, 8)もあり,高齢や内科合併症などのために手術施行が困難な症例に対しては,扁平上皮癌と同様に根治的放射線治療の適用も考慮される。

NCCN ガイドライン2016 年版やNational Cancer Institute(NCI)ガイドライン,米国産婦人科学会(The American College of Obstetricians and Gynecologists;ACOG)のPractice Bulletin においては,根治的放射線治療の適応に関し,腺癌と扁平上皮癌とで治療方針を明確に分けていない 9-11)が,腺癌でも扁平上皮癌の場合と同様に,Ⅰ・Ⅱ期で腫瘍径の大きい例,Ⅲ期以上の局所進行例に対してはCCRT の適用が考慮される。近年,腺癌に対するCCRT の有効性が報告されつつあるが,十分蓄積されたとは言えない 12)。そのため,現時点でその有効性や最適な薬剤などに言及するまでには至っていない。

腺癌の中には,極めて分化度の高い粘液性癌の亜型として最小偏倚腺癌(minimal deviation adenocarcinoma;MDA),いわゆる悪性腺腫(adenoma malignum)の存在が以前から知られている 13)。近年,MDA の基準を満たさない粘液性癌の中にも胃型形質を有する腫瘍が含まれることが報告され,最小偏倚腺癌を内包する胃型粘液性癌の概念が,『子宮頸癌取扱い規約 病理編 第4 版』(2017 年)にも取り入れられている 14)。MDA を含む胃型粘液性癌はハイリスクヒトパピローマウイルス(human papillomavirus;HPV)陰性であることが多いと報告されており 15),他の子宮頸癌とは発癌分子機構が異なる可能性がある 15)。胃型粘液性癌は子宮頸部腺癌全体の20〜25%を占めていると考えられており 14, 16),予後不良であることが報告されている 16)。胃型粘液性癌に対する臨床試験の報告はなく,今後の検討が期待される。

付記:小細胞癌(神経内分泌腫瘍)の治療法

子宮頸部小細胞癌は稀な疾患で,本邦では子宮頸癌全体の1.6%に過ぎない 17)。『子宮頸癌取扱い規約 病理編 第4 版』(2017 年)では,神経内分泌腫瘍(neuroendocrine tumors)が独立し,以下の4 タイプに分類されている。①低異型度神経内分泌腫瘍(low-grade neuroendocrine tumor)としてカルチノイド腫瘍(carcinoid tumor)と非定型的カルチノイド腫瘍(atypical carcinoid tumor),②高異型度神経内分泌癌(high-grade neuroendocrine carcinoma)として小細胞神経内分泌癌(small cell neuroendocrine carcinoma)と大細胞神経内分泌癌(large cell neuroendocrine carcinoma)がそれである 18, 19)。従来の小細胞癌は小細胞神経内分泌癌に相当すると思われる。稀な腫瘍であるために前方視的研究に基づくエビデンスが皆無であり,確立した治療法がないのが現状である。

ⅡB〜ⅣA 期の188 症例において,術後補助療法もしくはCCRT を施行した群は化学療法なしの群と比較して予後良好であった。しかし,Ⅰ〜ⅡA 期の症例においては,化学療法・放射線治療の有無によって予後に差は認められていない。多変量解析により,早期病変(Ⅰ〜ⅡA 期),化学療法,広汎子宮全摘出術が予後良好因子となっていた 20)。一方,ⅠA〜ⅡB 期の計144 例を対象とした,手術と放射線治療の後方視的比較では,局所再発率は放射線治療が6%と,手術群の27%に比較して優っていた。5 年生存率に関しては,腫瘍径2 cm 未満で脈管侵襲が認められなかった手術群13 例が89%と最も良好であった。この13 例を除くと,放射線治療+最低5 サイクルのプラチナ製剤ベースの化学療法を行った群(14 例)の5 年生存率は78%であり,手術群(97 例)の46%より優っていた 21)。また,プラチナ製剤ベースの化学療法を補助療法として施行した群の3 年生存率65%は,施行しなかった群の25%と比較して有意に良好とする報告もある 22)

本邦からは,52 例(ⅠB 期27 例,ⅡB 期10 例,Ⅲ〜Ⅳ期15 例)の小細胞癌について検討したKansai Clinical Oncology Group(KCOG)の後方視的検討がある。4 年無増悪生存率は,ⅠB 1 期59%,ⅠB 2 期68%,ⅡB 期13%,ⅢB 期17%と早期例でも予後不良としている。ⅠB 期全例,ⅡB 期の80%は手術を行っていた。術後化学療法を施行した群の4 年無増悪生存率65%は,無施行群の14%に比較して良好(p=0.002)であったとしている 23)。本邦でも,手術もしくは放射線治療による局所療法に全身化学療法を組み合わせる治療法が広く行われており,レジメンは各施設で異なっていることが明らかになった。

Society of Gynecologic Oncology(SGO)は,2011 年に婦人科臓器の神経内分泌腫瘍に関するClinical document を発表しており,小細胞癌の治療に関しては以下のように推奨している。すなわち,4 cm 未満の腫瘍に対しては,広汎子宮全摘出術とリンパ節郭清を行い,術後にPE 療法を考慮する。4 cm 以上の腫瘍に対しては,プラチナ製剤ベースのNAC を行い,残存病変が限定している場合には手術を含む局所療法を行う。一方,進行例や手術不能例に対しては,PE 療法と放射線治療の併用を考慮する。総じて,予後改善のためには集学的治療が必要であるとしている 24)。今後の治療法の確立には,前方視的検討や肺小細胞癌の新規治療を参考にした治療戦略の開発が必要である。

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ⅠB期とⅡ期の術後補助療法

総説

補助療法(adjuvant therapy)とは,予定術式完遂例において手術摘出検体の病理組織学的所見に基づいた術後再発リスク因子をもつ症例に対して再発予防目的に行われる術後治療である 1-12)CQ16)。術後補助療法を考慮する因子として,骨盤リンパ節転移,子宮傍(結合)組織浸潤,頸部間質浸潤の深さ,腫瘍径,脈管侵襲(表1 付記参照)などが挙げられる。これらの因子の組み合わせから,低リスク群,中リスク群,高リスク群に分類される。現在は,リンパ節転移および子宮傍(結合)組織浸潤が認められず,深い頸部間質浸潤や脈管侵襲がみられ,腫瘍径が大きい症例が中リスク群とされ 13),リンパ節転移あるいは子宮傍(結合)組織浸潤が認められる症例が高リスク群とされる傾向にある 14, 15)。このような術後再発リスク因子を有するものについては術後補助療法として放射線治療,同時化学放射線療法(concurrent chemoradiotherapy;CCRT)あるいは化学療法が追加されている。一方,低リスク群は経過観察でよいとされている。リスク因子の数による術後補助療法個別化の必要性も指摘されており 16),術後補助療法の決定に際しては,個々の症例に対する十分な検討が必要である(CQ16〜CQ18)。

骨盤リンパ節転移陽性例に関しては,その転移個数・部位により予後に差があり,術後補助療法の個別化が必要であるとの報告 5),腫瘍径に関しても2 cm あるいは4 cm など,様々な基準での治療の個別化が必要であるとの報告 15-19),腫瘍径は独立した予後因子ではなくリンパ節転移の有無のみが独立した予後因子であるとの報告 20-22),頸部間質浸潤についても,様々な基準で浸潤の深さを考慮することで予後に違いが生じるとの報告 23-25)がある。脈管侵襲の有無は議論の多い因子であり,予後に違いがあるとの報告 23, 26),リンパ節転移の予測因子ではあるが予後因子ではないとの報告 24, 26)がある(CQ16)。

骨盤リンパ節転移陽性例等の高リスク症例に対しては従来全骨盤照射が適応とされてきたが,米国で全骨盤照射とCCRT を比較したランダム化比較試験(randomized controlled trial;RCT)の結果,CCRT 群は放射線治療単独群に比較してOS,PFS が有意に優れていた 14)。さらに,この臨床試験を含んだCochrane systematic review でもⅠB 1,ⅡA 期でリスク因子を有する症例は術後CCRT が良好と報告されている 16)。本邦でも複数のリンパ節転移を有する症例に対するCCRT の有用性は認められているが 26),1 個の骨盤リンパ節転移あるいは腫瘍径の小さい症例に対するCCRT のメリットは明らかでなく 27),術後補助療法の個別化を含めた検討が必要である(CQ16)。

術後補助療法として行う傍大動脈リンパ節領域への予防照射に関する大規模なRCT は,これまでのところ見当たらない。NCCN ガイドライン2016 年版では,手術時の病理組織学的検索で傍大動脈リンパ節転移陽性が確認された場合および臨床的に画像検査(CT,MRI,PET)で傍大動脈リンパ節転移陽性と診断された症例では,傍大動脈リンパ節領域を照射範囲に含めたCCRT(±腔内照射)を推奨している。しかし,臨床的に傍大動脈リンパ節転移がなく,病理組織学的な検索がされていない場合は,補助療法における予防照射範囲についての明確な推奨はされていない 28)CQ18)。

再発中・高リスク群例を対象に,術後化学療法を行う試みが本邦を中心になされている。子宮頸癌に対して化学療法単独の術後療法を行う利点として,①遠隔転移の抑制が放射線治療(あるいはCCRT)に優る可能性がある,②放射線治療が発症率を上げる術後有害事象(腸閉塞,下肢リンパ浮腫など)を減少させることができる,などが挙げられる。しかし,術後化学療法の治療効果に関する十分なエビデンスは乏しく,現時点では術後放射線治療に対する優位性は示されていないために,その適応については慎重であるべきである(CQ16)。

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CQ16
推奨される術後補助療法は?

推奨グレードB
  1. 再発高リスク群には同時化学放射線療法(CCRT)が奨められる。
推奨グレードC1
  1. 再発中リスク群にはリスク因子の数・程度によって,放射線治療あるいは同時化学放射線療法(CCRT)が考慮される。

アルゴリズム(フローチャート3)参照

明日への提言

本邦では,術後補助療法として再発中・高リスク群に化学療法が施行されている施設も多い 1)。しかし,術後化学療法はまだ有用性が証明されておらず,今後出されるエビデンスをもとに,化学療法が術後補助療法となり得るかを判断しなければならない。

目的

ⅠB・Ⅱ期子宮頸癌で術後再発リスク因子(表1 参照)を有する症例に対して,術後補助療法の有用性について検討する。

解説

術後再発リスク因子として最も重要なものは,リンパ節転移,子宮傍(結合)組織浸潤,組織型であり,次に,大きな腫瘍径,頸部間質浸潤,脈管侵襲が挙げられる 2-6)。術後,これらのリスク因子の有無によりリスク分類され補助療法が考慮される。

扁平上皮癌では,①骨盤リンパ節転移陽性,②子宮傍(結合)組織浸潤陽性の場合には高リスク群に分類され,従来術後補助療法として全骨盤照射が行われてきた。しかし,2000 年に術後補助療法としての同時化学放射線療法(CCRT)の有用性を示すRCT がSWOG(Southwest Oncology Group)8797 試験として報告された。本試験では,広汎子宮全摘出術が施行されたⅠA 2・ⅠB・ⅡA 期で,骨盤リンパ節転移陽性,子宮傍(結合)組織浸潤陽性,切除断端陽性などが確認された268 例を対象として,全骨盤照射とCCRT(全骨盤照射とシスプラチン+フルオロウラシル,3 週毎,2 サイクルの同時併用,CCRT 後2 サイクル)を比較した。本試験は,対象症例のうち骨盤リンパ節転移陽性例は85%をこえており,骨盤リンパ節転移陽性例に対するCCRT の有効性を検証した臨床試験と考えられる。その結果,CCRT 群は放射線治療単独群に比較してOS,PFS とも有意に優れていた 7)。さらに,この臨床試験を含んだCochrane systematic review でもⅠB 1,ⅡA 期でリスク因子を有する症例では,放射線治療単独に比べCCRT が有効であることが証明された 3)。本邦でも複数のリンパ節転移を有する症例に対するCCRT の有用性は認められているが 8),1 個の骨盤リンパ節転移あるいは腫瘍径2 cm 未満の症例に対して,全骨盤照射に化学療法を加えるメリットは明らかでなく 9),術後補助療法の個別化を含めた検討が必要である。欧米での新しい試みとして,術後再発高リスク群を対象に,CCRT 後にさらにパクリタキセルとカルボプラチンの化学療法を加えることにより,予後の改善を得ることができるかどうかの第Ⅲ相比較試験が進行中である(RTOG0724 試験:NCT00980954)。

再発中リスク群を対象とした試験として,GOG92 試験が挙げられる。本試験では,ⅠB 期骨盤リンパ節転移陰性例の中で,1/3 をこえる間質浸潤,脈管侵襲,頸部腫大の3 因子のうち2 因子以上の術後再発リスク因子を有する症例を対象に,無治療群と術後補助療法として全骨盤照射を受けた群とのRCT が行われており,術後放射線治療群に有意な再発率の低下が認められた 10)。この臨床試験を含んだCochrane systematic review では,再発中リスク群のⅠB 期症例では,術後の放射線治療は再発率を減少させるが,OS に関しては明らかな改善効果が示されなかった。また,放射線治療はリンパ浮腫などの有害事象を増やす可能性もあり,リスクとベネフィットを考慮して選択すべきであるとされている 11)。韓国からの報告で,中リスク群に対して術後放射線治療単独群とCCRT 群を後方視的に検討したところ,血液毒性はCCRT で頻度が高かったものの,OS にてCCRT が良い傾向が示された 12)。しかし,国内での現状も鑑み,現時点では,術後再発中リスク群に分類される症例に対しては,術後補助療法としてリスク因子の数・程度によって全骨盤への放射線治療あるいはCCRT を行うことが考慮される 2, 3, 13)。このような背景の下,Gynecologic Oncology Group(GOG)では術後再発中リスク群を対象とした,放射線治療単独の群とCCRT 群との第Ⅲ相試験が進行中である(GOG263 試験:NCT01101451)。

NCCN ガイドライン2016 年版では,再発低リスク群に対しては術後経過観察でよいとされている。

付記1:術後補助療法としての化学療法

「術後補助療法としての化学療法」の推奨に関して,第58 回日本婦人科腫瘍学会学術講演会・ガイドラインコンセンサスミーティング(2016 年7 月,米子)で,会場からは術後化学療法を推奨に掲載するべきとの多くの意見があった。しかし,ガイドライン作成委員会(2017 年1 月15 日,東京)では掲載しないとの結論に達したので,以下にその経緯を記載する。

「都道府県がん対策推進協議会がん登録部会Quality Indicator 研究中間報告・子宮頸がん」による2013 年全国院内癌登録+DPC(Diagnosis Procedure Combination)データ(主にがん診療拠点病院のデータ)を用いた解析では,再発中リスク群の53.1%,高リスク群の48.1%に術後化学療法が行われていることが判明した。従来,本邦のがん診療拠点病院をはじめとする多数の手術例を扱う施設では,「徹底的な腫瘍の摘出」を目指して広汎子宮全摘出術を行い,再発リスク因子をもつ例には術後に放射線治療が追加されてきた。しかし,術後補助放射線照射を行うことによる腸閉塞,難治性のリンパ浮腫などの重篤な合併症が少なからず起こることから,現在では術後化学療法が選択されている施設も多く見受けられる。このような多数の手術例を扱う単施設ごとの報告では,術後化学療法は術後放射線治療と比較して遜色ない効果が報告されており,術後化学療法の効果は手術の熟練度・完遂度に大きく依存する可能性がある。

一方,第57 回日本婦人科腫瘍学会学術講演会(2015 年8 月,盛岡)で行われたガイドライン委員会検証委員会報告では,日本産科婦人科学会婦人科腫瘍委員会登録データの2004 年より2009 年の子宮頸癌9,565 例(手術療法のみ群4,626 例,術後放射線治療群2,976 例,術後化学療法群1,963 例)を用いて,『子宮頸癌治療ガイドライン2007 年版』導入前後での予後解析を行った結果が示された。すなわち,3 群の治療例についてガイドラインの導入前後での効果は示されなかった。術後補助療法に関しては,『子宮頸癌治療ガイドライン2007 年版』では「術後化学療法の有用性は現時点では不明である」と記載されているにもかかわらず,本検証委員会の検討においては,2007 年以降にリンパ節転移を有する症例では術後化学療法の頻度が増え,術後放射線治療が減少する傾向が示された。そこで,ガイドライン効果と他の因子との二因子間交互作用の検討を行ったところ,治療法に不均一性がみられ,術後化学療法群のみでは有意差はないものの,ガイドライン導入後に死亡リスクが上昇している傾向(HR 1.362, 95%CI 0.876-2.120, p=0.170)が認められた。一方,手術療法のみと術後放射線治療群では死亡リスクは減少傾向を示していた(手術療法のみ:HR 0.935, 95%CI 0.489-1.789, p=0.839,術後放射線治療群:HR 0.920, 95%CI 0.622-1.362, p=0.679)。

以上をまとめると,婦人科腫瘍専門医が在籍して広汎子宮全摘出術を多数例行っている施設では,術後化学療法は術後放射線治療と比べて遜色ない可能性は残されているものの,全国を見渡して考えた場合には術後化学療法群は必ずしも予後改善でなく,死亡リスクの増加がみられる可能性が否定できない。よってガイドライン委員会では,以上の議論をもって現状で多数例に行われているというだけの意味での推奨掲載は選択せず,『子宮頸癌治療ガイドライン2011 年版』に続いて推奨掲載をしない結論を採用した。

付記2:腺癌の術後補助療法

腺癌と扁平上皮癌を比べた場合,腺癌は予後が不良とする報告が多い 4-6, 14)。本邦からの報告で,広汎子宮全摘出術が行われた520 例のうち,補助療法として放射線治療が施行された症例では,腺癌は扁平上皮癌に比べ有意に予後不良であった 6)。また,本邦での多施設による後方視的検討として,広汎子宮全摘出術を行った820 例の解析では,Ⅰ期では扁平上皮癌と腺癌の予後に差は認められなかったが,Ⅱ期では腺癌が有意に予後不良であった 4)。さらに,本試験を含めたⅠB〜ⅡB 期の子宮頸部腺癌321 例が集められ,その中で168 例が術後に放射線治療,CCRT または化学療法が施行されており,治療効果が検討された。その結果,3 群間の生存率に差はなく,術後補助療法として化学療法も有用である可能性が示された 15)。前述のSWOG8797 試験では,腺癌・腺扁平上皮癌が術後放射線治療群に20 例(扁平上皮癌96 例),CCRT 群に30 例(扁平上皮癌97 例)含まれていた。本試験ではCCRT 群で有意に予後良好であったが,その差が腺癌・腺扁平上皮癌においても認められ,腺癌に対する術後CCRT の有効性が示された 7)

以上,欧米のデータでは子宮頸部腺癌の術後にはCCRT が推奨されるものの,本邦では定まった治療法がなく,化学療法の有用性は今後検討すべき課題である。

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CQ17
術後補助放射線治療を施行する場合,推奨される照射方法は?

推奨グレードB
全骨盤照射が推奨される。

アルゴリズム(フローチャート3)参照

目的

広汎子宮全摘出術後の術後補助療法として放射線治療(術後照射)が行われることがあり,適切な照射方法について検討する。

解説

術後照射の照射範囲は通常,全骨盤領域(全骨盤照射:whole pelvic radiotherapy)とされる 1)。全骨盤照射の臨床標的体積(clinical target volume;CTV)は,骨盤リンパ節領域,腟上部(腟断端部から約3 cm 下方まで),子宮傍(結合)組織および腟傍(結合)組織である。術後全骨盤照射におけるCTV の設定については,米国ならびに本邦で既に有識者によるコンセンサスに基づくガイドラインが策定されている 2, 3)。CTV に適切なマージンをつけた領域を計画標的体積(planning target volume;PTV)として,前後左右の4 方向から照射を行う3 次元原体照射(3 dimensional conformal radiotherapy;3D-CRT)が一般的な照射法である。

線量分布が前後左右の4 門照射に劣ること,および腟断端や子宮傍(結合)組織などのCTV を遮蔽する危険があることから,中央遮蔽を挿入した前後対向2 門照射は行うべきではない。また,骨盤リンパ節転移陰性例に対する小骨盤照射の試みがいくつか報告されているが,一般的ではない 4, 5)

全骨盤照射は1.8〜2.0 Gy/回の通常分割照射法で,総線量45〜50 Gy/約5 週間の照射が標準である 1, 6)。総線量50 Gy をこえる照射は小腸の耐容線量をこえるため行うべきでない 7)

広汎子宮全摘出術後の補助療法として全骨盤照射に腟腔内照射を追加する意義は明らかでない 8, 9)。広汎子宮全摘出術で腟上部が切除されていると,腟腔内照射を行っても線量分布の物理学的特性から高線量の届く範囲は腟断端部粘膜面のみで,子宮傍(結合)組織切除断端などの深部組織には十分な線量は照射できない。したがって,術後補助療法として腟腔内照射の追加は一般的に推奨されない 10)。不完全手術例で癌の肉眼的残存が明らかな症例では腟腔内照射や組織内照射の追加が検討されるが,このような症例は術後補助療法の範疇からは逸脱する。

近年,術後照射に強度変調放射線治療(intensity-modulated radiation therapy;IMRT)が用いられるようになってきている。IMRT は通常の前後左右4 門の3D-CRT と比較して,小腸,直腸,膀胱,骨髄などの正常組織の線量を低減することが可能であり,術後照射における合併症の低下につながるものとして期待されている 11-15)。ただしIMRT の治療にあたっては,正常組織の線量制約,治療期間中の膀胱や直腸の体積の変化,治療期間中の腟断端部軟部組織の位置および形状の変化 16, 17)などを考慮した適切な治療計画が必要であり,治療の標準化が重要である。

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CQ18
傍大動脈リンパ節領域への予防照射の適応は?

推奨グレードC1
  1. 画像検査または病理学的検査で傍大動脈リンパ節転移陽性と診断された症例で考慮される。
推奨グレードC2
  1. 画像検査で傍大動脈リンパ節転移を示唆する所見がなく,傍大動脈リンパ節転移に関する病理組織学的検索がなされていない症例では推奨されない。

アルゴリズム(フローチャート3)参照

目的

主治療が手術の場合について,術後補助療法としての傍大動脈リンパ節領域への予防照射の適応について検討する。

解説

傍大動脈リンパ節領域への予防照射に関する大規模なRCT は少なく,いずれも主治療が放射線治療であり術後補助療法を対象としたものではない。その結果についても,生存率が有意に良好であったRTOG79-20 試験 1)と有意差を認めなかったEuropean Organization for Research and Treatment of Cancer(EORTC)の試験 2)があり,傍大動脈リンパ節領域への予防照射が生存率の向上に寄与するか否かについて明確な結論はでていない。

術後再発中・高リスク症例に対する術後補助療法としては,全骨盤照射ないし全骨盤照射とシスプラチンを含む化学療法による同時化学放射線療法(CCRT)が標準治療である(CQ16CQ17 参照)。しかしⅠ・Ⅱ期症例の傍大動脈リンパ節領域への潜在的転移の確率は4〜21%と報告されており 3, 4),全骨盤照射のみでは病変を十分にカバーできない可能性がある。傍大動脈リンパ節転移のリスクは腫瘍径や骨盤リンパ節転移の有無などによって変化し,腫瘍径が4 cm 以上の症例,両側性ないし多発性の骨盤リンパ節転移症例,総腸骨リンパ節転移症例などは傍大動脈リンパ節転移のリスクが高いことが報告されている 3, 4)。したがって術前画像検査(CT,MRI,PET)で傍大動脈リンパ節転移が疑われる症例や,手術時に両側性ないし多発性の骨盤リンパ節転移あるいは総腸骨リンパ節転移が疑われる症例では傍大動脈リンパ節の生検を行い,その結果,転移陽性例では傍大動脈リンパ節への術後予防照射を考慮する。NCCN ガイドライン2016 年版では,傍大動脈リンパ節転移陽性例に対しては,外部照射として全骨盤照射に傍大動脈リンパ節領域を照射範囲に含めた拡大照射野(extended-field)によるCCRT(±腔内照射)を推奨している 5)。この場合,肉眼的に明らかな転移リンパ節および潜在的な転移が疑われるリンパ節を注意深く照射野に含めて,少なくとも45 Gy の線量を照射する。また照射にあたっては腸管,腎,脊髄等の線量制約に十分に配慮する 5, 6)

ただし上記は,画像検査または病理学的検査で転移陽性と診断された症例の対応方法である。術前画像検査(CT,MRI,PET)で傍大動脈リンパ節転移を示唆する所見がなく,かつ生検にて転移陰性,ないし病理学的検索がなされていない症例においては,術後補助療法として傍大動脈リンパ節に対する「予防照射」を支持するエビデンスに乏しく,明確な推奨はなされていない 5)。さらに,術前画像検査で傍大動脈リンパ節転移を示唆する所見がなく,かつ生検にて転移陰性,ないし病理学的検索がなされていない症例で,巨大な腫瘍径,両側性ないし多発性の骨盤リンパ節転移,総腸骨リンパ節転移のいずれかが認められた症例についても傍大動脈リンパ節に対する「予防照射」を支持するエビデンスは乏しく,このような症例に特化した言及はなされていない状況である 5)

傍大動脈リンパ節を照射する場合は,消化管障害や血液毒性などの急性期の有害事象が増加し,また消化管の晩期有害事象の発症率が高くなる。RTOG79-20 試験では,傍大動脈リンパ節照射群で累積10 年合併症の発生率が上昇する傾向(8% vs. 4%)が示された 1)。EORTC の研究でも,Grade 3 またはGrade 4 の重篤な晩期消化管合併症が傍大動脈リンパ節照射群で2.3 倍多いことが示された 2)。全骨盤+傍大動脈リンパ節照射に化学療法を同時併用すると晩期有害事象の発症率はより高くなり 7-9),照射方法を工夫する必要がある。近年では,IMRT による骨盤+傍大動脈リンパ節照射と化学療法の同時併用についての臨床研究が報告されている 10)

参考文献

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Ⅲ期とⅣ期の主治療

総説

同時化学放射線療法(concurrent chemoradiotherapy;CCRT)がⅠB 2〜ⅣA 期を対象とした欧米での複数のランダム化比較試験(randomized controlled trial;RCT)により生存率を改善することが示されたことから,現時点ではシスプラチンを含むレジメンでのCCRTは,局所進行子宮頸癌に対する標準治療の一つと考えられる 1-4)CQ19CQ20CQ24CQ25)。

Ⅲ・Ⅳ期の進行癌に対する標準治療として,一般的に手術療法の適応はないと考えられている。Ⅲ・ⅣA 期にもし手術療法が考慮されるとすれば,骨盤除臓術を施行するか,あるいは化学療法や放射線治療により腫瘍が縮小してから手術を施行することが前提となる(CQ21)。1980 年代より盛んに術前化学療法(neoadjuvant chemotherapy;NAC)後の手術あるいは放射線治療が試みられてきた。しかし,複数のRCT により長期予後改善への寄与は否定されている。NCCN ガイドライン2016 年版 5)やNational Cancer Institute(NCI)ガイドライン 6)では,NAC は標準治療のオプションとして提示されていない(CQ21)。

ⅣB 期には孤立性の転移が認められるものから,全身転移が認められ根治が全く望めない症例まで幅が広い。前者には全身化学療法や転移病巣の手術療法が行われ,これらの治療が有効な場合には局所治療としてCCRT が追加される。一方,後者には症状緩和によるquality of life(QOL)向上が治療の第一選択となる。腫瘍関連合併症に伴う症状が強ければ,その原因病巣に対する緩和的放射線治療が考慮される。全身状態が良好かつ臓器機能が保たれているⅣB 期症例に対しては全身化学療法が選択される。現時点ではパクリタキセルにシスプラチンあるいはカルボプラチンを併用したレジメンが比較的有効と報告されている。なお,ⅣB 期・治療後残存・再発子宮頸癌に対するベバシズマブを用いた臨床第Ⅲ相RCT(GOG240 試験:NCT00803062)が行われ,ベバシズマブ併用群は抗悪性腫瘍薬単独群と比較し PFS および OS の延長を認めている 7)CQ23)。

参考文献

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CQ19
Ⅲ・ⅣA 期に対する初回放射線治療では,放射線治療単独と同時化学放射線療法(CCRT)のいずれが推奨されるか?

推奨グレードB
同時化学放射線療法(CCRT)が推奨される。

アルゴリズム(フローチャート4)参照

目的

Ⅲ・ⅣA 期に対するCCRT の有用性について検討する。

解説

局所進行子宮頸癌に対するCCRT の有用性に関しては,1990 年代に4 つの大規模RCT 1-4)が施行され,そのうち3 つのRCT において,従来の放射線治療単独ないしは放射線治療とhydroxyurea の併用療法と比較して,CCRT では無増悪生存率および全生存率が有意に良好であることが示された 1-3)。これらの結果を踏まえ,1999 年2 月にNCI より「放射線治療を必要とする子宮頸癌患者においては,CCRT の適用を考慮すべきである」という主旨の勧告が出された。またRCT の長期経過観察研究からも,CCRT の予後が有意に良好であることが示された 5, 6)。さらに,これらのRCT を含めて1980 年代から2000 年代初頭に行われた複数のRCT をレビューした3 つのメタアナリシス 7-9)においても,CCRT が局所再発および遠隔転移をともに低下させ,無増悪生存率および全生存率を有意に改善することが示された。以上を踏まえて,NCCN ガイドライン2016 年版やNCI ガイドラインでは局所進行子宮頸癌の標準治療としてCCRT を強く推奨している 10, 11)

これに対して,NCI の勧告の根拠となったCCRT の放射線治療方法(総線量,外部照射における中央遮蔽挿入の有無,総治療期間,腔内照射の線量率など)が本邦のそれと異なるため,勧告をそのまま受け入れるのは慎重であるべきであるという議論があった。このためⅢ・ⅣA 期の子宮頸癌に対して高線量率腔内照射を用いた本邦の放射線治療方法とシスプラチン40 mg/m2 毎週投与の化学療法によるCCRT の国内多施設共同第Ⅱ 相試験(JGOG1066 試験)が行われた。その結果,2 年無増悪生存率は66%(95%CI 0.54-0.76)と過去の大規模RCT 2)とほぼ同等であり,かつ重篤な遅発性有害事象の発生頻度は低いという結果が得られた 12)。また,JGOG1066 試験と同様のプロトコールを用いたCCRT のアジア地域における臨床試験においても,過去の大規模RCT と同等の治療成績が報告された 13)。これらの前方視的試験およびいくつかの遡及的研究 14, 15)の結果から,現時点では本邦の放射線治療方法によるCCRT は,局所進行子宮頸癌に対する標準治療の一つと考えられる。

CCRT の有効性は臨床進行期の進行とともに減少し,Ⅲ・ⅣA 期に限定した場合のCCRT の有効性に関するエビデンスはⅠB・Ⅱ期ほど高くはない。RTOG90-01 試験の臨床進行期によるサブグループ解析では,Ⅲ・ⅣA 期ではCCRT 群の無増悪生存率は放射線治療群に比して有意に良好であったが,全生存率には有意差は認められなかった 5)。一方,GOG120 試験では,Ⅲ期においてもCCRT 群では無増悪生存率,全生存率ともに放射線治療群に比して有意に良好であった 6)。これらを含め複数のRCT をまとめたメタアナリシスでは,CCRT による予後改善効果は,ⅠB・Ⅱ期に比較してⅢ・ⅣA 期では小さいことが示されている 7, 9)。またCCRT の毒性については,急性期では上部消化管障害や血液毒性(白血球減少,血小板減少)が増加することは明らかであるが,遅発性有害事象についてはデータが十分でない 16)

以上のように,複数のRCT と系統的レビューおよびメタアナリシスの結果から,局所進行子宮頸癌に対するCCRT は有用性についての非常に高いエビデンスレベルを有する治療法である。しかし,急性の有害事象は放射線治療単独に比して強く,遅発性有害事象にも注意が必要であり,治療方法を十分に習熟する必要がある。

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CQ20
Ⅲ・ⅣA 期に対して同時化学放射線療法(CCRT)を施行する場合,推奨される薬剤は?

推奨グレードA
シスプラチンを含むレジメンが推奨される。

アルゴリズム(フローチャート4)参照

目的

CCRT における適切な化学療法レジメンについて検討する。

解説

複数のRCT 1-6)とメタアナリシス 7-9)により,局所進行子宮頸癌に対するCCRT の有効性が示された。しかし,メタアナリシスでも指摘されているように,それぞれのRCT の臨床的あるいは統計学的解析の違いからレジメン間の優劣の比較は困難である。メタアナリシスでは,シスプラチンを含まないレジメンも有効とされているが,シスプラチンを含まないレジメンの試験は,いずれも研究デザインに問題があり結果の信頼性はあまり高くない。したがって,一般的にはシスプラチンを使用したレジメンが広く受け入れられている。

代表的なレジメンとしてはシスプラチン単剤,シスプラチン+フルオロウラシル,シスプラチン+パクリタキセルが挙げられる。NCCN ガイドライン2016 年版やNCI ガイドラインでは,週1 回投与のシスプラチン単剤,あるいは3〜4 週毎のシスプラチン+フルオロウラシルを推奨しているが,投与量などの詳細は明示していない 10, 11)。シスプラチン単剤(40 mg/m2/週,6 サイクル)を採用したRCT としては,GOG120 試験 2, 6),GOG123 試験 4)とカナダ国立がん研究所(National Cancer Institute of Canada;NCIC)の研究 12)がある。前二者ではシスプラチンによる生存率の改善効果が認められたのに対して,後者では認められなかった。また,GOG120 試験では遠隔転移の予防効果が示されたが,GOG123 試験では示されていない。次に,シスプラチン+フルオロウラシルを用いたRCT としてGynecologic Oncology Group(GOG)による2 件の臨床研究(GOG120 試験,GOG85 試験) 2, 3, 6)とRTOG90-01 試験 1, 5)があり,3 件すべてで生存率改善効果が認められた。さらに,GOG120 試験およびRTOG90-01 試験では遠隔転移も有意に減少した。また,GOG120 試験ではシスプラチン単剤とシスプラチン+フルオロウラシルの比較が行われ,両者で長期予後に差がなくGrade 3,Grade 4 の急性有害事象(特に血液毒性)が有意に後者で高頻度であった。このような結果より,米国で現在進行中の臨床試験(GOG,RTOG)や実地医療では,シスプラチン単剤(40 mg/m2/週,6 サイクル)が標準治療として用いられている。

本邦では,JGOG1066 試験 13, 14)として局所進行子宮頸癌Ⅲ・ⅣA 期を対象に,日本の標準的な放射線治療スケジュール(骨盤照射+高線量率腔内照射)にシスプラチン単剤(40 mg/m2/週,5 サイクル)を同時併用する多施設共同第Ⅱ相試験が行われた。71 例にプロトコール治療がなされ,2 年生存率が90%,2 年骨盤内制御率が73%と良好な成績が報告された。92%で5 サイクルのシスプラチン投与を完遂し,96%で照射プロトコールを完遂したことより,日本人に対しても同レジメンの認容性と有用性が確認され,本邦においてもCCRT が標準治療と考えられるに至った。

一方,JGOG1066 試験の解析で,腫瘍径が5 cm をこえる症例では効果が十分とは言えず,さらなる治療法の工夫が必要であることが示唆された。JACCRO-GY-01 試験 15)は,Ⅲ・ⅣA 期を対象にシスプラチン30 mg/m2 とパクリタキセル50 mg/m2 を毎週投与する多施設共同第Ⅱ相試験で,68 症例にプロトコール治療がなされ,2 年生存率が93%,2 年無再発生存率が84%,2 年骨盤内制御率が90%と良好な成績が報告された。プロトコール完遂率は94%であり,比較的良好な認容性が示されている。今後,第Ⅲ相試験への展開が期待される。

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CQ21
Ⅲ・ⅣA 期に対して主治療前に施行する化学療法は推奨されるか?

推奨グレードC2
  1. 放射線治療前に施行する化学療法は推奨されない。
推奨グレードC2
  1. 手術療法前に施行する化学療法は推奨されない。

アルゴリズム(フローチャート4)参照

目的

Ⅲ・ⅣA 期などの局所進行例に対して主治療を行う前に化学療法を施行することの有用性について検討する。

解説

現在,Ⅲ・ⅣA 期に対する標準治療は同時化学放射線療法(CCRT)と考えられる。一方で,化学療法により腫瘍の縮小を図った後に主治療として放射線治療あるいは手術療法を行うという治療戦略の可能性も残されている。放射線治療の前に行う化学療法の有用性を検討したRCT は1980 年代から1990 年代前半まで数多く行われたが,1970〜96 年に発表された子宮頸癌に対する術前化学療法(NAC)後の放射線治療に関する臨床試験についての系統的レビューでは,放射線治療前のNAC は局所制御および生存率に対し有益性がないと報告されている 1)。同様に,Neoadjuvant Chemotherapy for Locally Advanced Cervical Cancer Meta-analysis Collaboration(NCCCM)は1975〜2002 年に症例登録が終了した試験のうち,根治治療前に化学療法を施行すべきか否かを検討したRCT についてメタアナリシスを行った 2, 3)。化学療法後に放射線治療を施行した群と放射線治療単独群を比較したRCT を集めた解析では,化学療法を放射線治療前に追加しても,OS,DFS,局所再発,遠隔転移のいずれの改善効果も認めなかった。近年,第Ⅱ相試験では,パクリタキセル+プラチナ製剤併用のNAC で好成績が示されており 4, 5),現在シスプラチン併用のCCRT に対し,NAC としてのパクリタキセル+カルボプラチン6 サイクル毎週投与の上乗せ効果を検証する第Ⅲ相試験が行われている(INTERLACE 試験:NCT01566240)。

以上のように,放射線治療を前提とした化学療法は,臨床試験においてCCRT 単独との比較試験が進められつつあるものの,実地医療においては現在のところ世界的に推奨されていないことから 6, 7),本邦もこれに準じるのが適切と考えられる。

手術療法を施行する前に行う化学療法の有用性を検討したRCT の報告としては,ⅢB 期を対象としてシスプラチン+ブレオマイシン+マイトマイシンC による動注化学療法後に広汎子宮全摘出術を行った群と放射線治療単独群を比較したところ効果が同等であったとするもの 8)や,ⅠB 2〜Ⅲ期を対象としてNAC+手術療法群と放射線治療単独群とを比較したRCT において,Ⅲ期のサブグループ解析では両群間に差は認められなかったとするものがある 9)。一方,ⅢB 期におけるNAC+手術療法群とNAC+放射線治療群および放射線治療単独を比較したRCT では,放射線治療単独群に対しNAC+手術療法群およびNAC+放射線治療群においてOS およびDFS の改善が認められたと報告されているが 10),いずれにおいても症例数が少ないという点や,現在の標準治療であるCCRT を対照群としていないという点などが問題点として指摘されている。ⅣA 期症例に対しては,パクリタキセル+シスプラチン併用のNAC とそれに引き続き手術療法を行うというプロトコールでの解析において,これまでのCCRT と同等の成績が得られ,特に手術施行例では3 年生存率が78%と極めて良好であったとする報告もある 11)

腫瘍が骨盤壁に達する腫瘍では,化学療法が無効であった場合にはその後に手術を行うことは難しく,放射線治療が選択されることが多くなるが,その際には初めから放射線治療が選択された場合よりも生存率が不良であるとするいくつかの報告がある 3, 4)。したがって,実地医療においてはⅢ・ⅣA 期に対し手術療法や放射線治療など主治療の前に化学療法を施行することは現時点では推奨されない。また,もし臨床試験などでⅢ・ⅣA 期に主治療前の化学療法を施行する場合には,上記の点を認識し,十分なインフォームドコンセントを得ながら,細心の注意を払って治療に臨むことが重要である。

腺癌(腺扁平上皮癌を含む)に対して個別に手術療法やNAC の有用性を検討した報告は少ない。その中で,主に局所進行子宮頸部腺癌に対するNAC としての奏効率はシスプラチンと種々の薬剤との併用療法により50〜100%であったと報告されている 12-18)が,いずれにおいても,Ⅲ・ⅣA 期のみに対する奏効率を示したものではない。また,NAC により腫瘍が縮小し根治手術を施行できた症例の予後は良好であるが,NAC が無効な症例では逆に予後が不良であることから,全体として予後が改善されるか否かについては,結論は得られていない。

腺癌に対する放射線治療前の化学療法については,パクリタキセル+シスプラチン投与をCCRT 前後に追加することにより,CCRT 単独に比して無病生存率,全生存率,局所制御率のいずれも化学療法追加群が上回ったとの報告がある 5)。しかし,単施設からの報告であることや,CCRT 前後の治療いずれに効果があったかが不明瞭などの問題もあり,今後の臨床試験の結果が待たれる。

以上を踏まえ,現状では,局所進行子宮頸部腺癌に対しても扁平上皮癌と同様にCCRTが第一選択と考えるべきであろう。

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CQ22
Ⅲ・ⅣA 期に対して初回手術療法は推奨されるか?

推奨グレードC2
手術療法は推奨されない。

アルゴリズム(フローチャート4)参照

目的

Ⅲ期やⅣA 期に対する手術療法の意義について検討する。

解説

Ⅲ期以上で腫瘍の子宮傍(結合)組織浸潤が骨盤壁に達している場合は,一般に,初回治療としての手術療法の適応はないと考えられている 1, 2)。このようなⅢB 期の腫瘍をもし初回手術で摘出するならば,浸潤した骨盤壁を切除しなければならない。ドイツからlaterally extended endopelvic resection(LEER)という骨盤底筋群を一部合併切除して腫瘍を完全切除する方法が考案され,良好なOS が報告されている 3)。しかし,本術式は合併症の頻度も高く,近年の化学療法や放射線治療の進歩と相まって標準治療とはなっていない。

進行子宮頸癌に対する初回治療として,骨盤除臓術を行ったいくつかの後方視的検討が報告されている 4-8)。これらの手術適応となった症例は,腫瘍は骨盤壁に達せず,遠隔転移が認められないⅣA 期症例とされ,5 年生存率は40〜53%と良好な成績が報告されている。このような条件に合うⅣA 期症例は,骨盤除臓術も一つのオプションとして考慮されるが,適応症例はほとんど限られるものと考えられる。骨盤除臓術の際にリンパ節郭清を行っているものも多いが,骨盤リンパ節転移は予後不良という報告 6, 7)と,制御可能であり予後に影響しないとの報告がある 9)。また,リンパ節転移を認めた症例は,術後補助療法としてCCRT が用いられることが多い。さらに,傍大動脈リンパ節転移は予後不良であり 9),術前に傍大動脈リンパ節転移の疑われる症例では,その手術適応については慎重に判断しなければならない。骨盤除臓術の術後合併症としては,直腸瘻,敗血症,腸管吻合部縫合不全などの重篤なものや尿路感染症,腸閉塞,不明熱などの頻度が高く,厳重な術後管理が必要である。

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CQ23
ⅣB 期に対して推奨される治療は?

推奨グレードC1
  1. 全身状態が良好かつ臓器機能が保たれている症例に対しては,全身化学療法が考慮される。
推奨グレードB
  1. 全身化学療法を行う際には,ベバシズマブの併用が推奨される。
推奨グレードB
  1. 腫瘍関連合併症に伴う症状が強ければ,その原因となる病巣に対する緩和的放射線治療が推奨される。

アルゴリズム(フローチャート4)参照

目的

ⅣB 期に対する治療について検討する。

解説

ⅣB 期の割合は本邦では8.4%(7,436 例中625 例)であり 1),胸部や骨の単純X 線検査にて明らかな肺・骨転移を認めた,もしくは表在リンパ節の明らかな腫脹が認められ組織診で転移が確認された,といった症例が大多数を占めると推測される。このように,病巣が既に局所にとどまっていないⅣB 期に対する積極的治療には全身治療である化学療法を用いることが多い。しかし,2009 年に治療を開始した本邦の子宮頸癌症例の病期別の5 年生存率においては,ⅣB 期は19.5%と明らかに予後不良である 2)。よって,ⅣB 期子宮頸癌に対する治療戦略は,根治を望み難い再発子宮頸癌と同様,症状緩和とそれによるQOL 向上を治療の第一目的とし,次いで生存期間を延長させることである。一方,種々の方法で治療した36 例のⅣB 期症例の多変量解析で,化学療法が生存期間を延長させる可能性があるとの報告もある 3)

全身状態が良好かつ臓器機能が保たれているⅣB 期症例に対する治療の第一選択は,原則として全身化学療法となる。しかし,毒性を有する全身化学療法とbest supportive care(BSC)を比較した試験は過去に存在しない。よって化学療法の有用性はまだ証明されていないが 4),倫理的観点からこのような試験は今後も行われないであろう。すなわち,全身化学療法がⅣB 期に対する標準治療であるとは言い切れず,BSC と比較した生存期間延長の有用性も確立していない。これを十分に説明し,BSC という治療の選択肢も提示した上で,希望した患者にのみ全身化学療法を行うことが望ましい。

扁平上皮癌に対する化学療法のレジメンは後述するが,腺癌などの非扁平上皮癌であればCQ24 を参照されたい。現時点ではパクリタキセルにシスプラチンあるいはカルボプラチンを併用したレジメンが比較的有効であると報告されている 5, 6)。Japan Clinical Oncology Group(JCOG)のJCOG0505 試験:NCT00295789 では,転移性もしくは再発子宮頸癌に対して,パクリタキセル+シスプラチン療法とパクリタキセル+カルボプラチン療法の第Ⅲ相試験が行われ,OS におけるパクリタキセル+カルボプラチン療法の非劣性が示された 7)

2014 年にGOG において行われたⅣB 期・治療後残存・再発子宮頸癌に対するベバシズマブを用いた臨床第Ⅲ相RCT(GOG240 試験:NCT00803062)の結果が報告された 8)。この試験は評価可能病変を有するⅣB 期あるいは治療後残存・再発子宮頸癌452 例を対象として行われ,症例の内訳はⅣB 期が17%,治療後残存が11%,再発が72%であった。同時化学放射線療法(CCRT)歴を有する症例は75%であった。本試験は以下のA からD までの4 群に均等ランダム割付けを行い,増悪(PD),または許容できない毒性の出現,完全寛解(CR)となるまで,3 週毎に投与が行われた。

  1. A プラチナ含有化学療法群:
    パクリタキセル135 mg または175 mg/m2 iv+シスプラチン50 mg/m2 iv
  2. B プラチナ含有化学療法+ベバシズマブ併用群:
    パクリタキセル135 mg または175 mg/m2 iv+シスプラチン50 mg/m2 iv+ベバシズマブ15 mg/kg iv
  3. C 非プラチナ製剤化学療法群:
    パクリタキセル175 mg/m2 iv+トポテカン(ノギテカン)0.75 mg/m2 day 1-3
  4. D 非プラチナ製剤化学療法+ベバシズマブ併用群:
    パクリタキセル175 mg/m2 iv+トポテカン(ノギテカン)0.75 mg/m2 day 1-3+ベバシズマブ15 mg/kg iv

この試験の結果,ベバシズマブ併用群(B+D:227 例)は抗悪性腫瘍薬単独群(A+C:225 例)と比較し良好な奏効率を示した(48% vs. 36%,p=0.008)。CR はベバシズマブ併用群の28 例(12%)に対し抗悪性腫瘍薬単独群では14 例(6%)であった。また,PFS はベバシズマブ併用群で8.2 カ月,抗悪性腫瘍薬単独群で5.9 カ月でありベバシズマブ併用により2.3 カ月のPFS 延長が認められた(p=0.002)。OS はベバシズマブ併用群で17.0 カ月,抗悪性腫瘍薬単独群で13.3 カ月であり,ベバシズマブ併用により3.7 カ月のOS 延長が認められた(p=0.004)。4 群のうちOS はB(17.5 カ月),D(16.2 カ月),A(14.3 カ月),C(12.7 カ月)の順に良好であった。有害事象に関してベバシズマブ併用群は抗悪性腫瘍薬単独群と比較してGrade 2 以上の高血圧(25% vs. 1%),およびGrade 2 以上の血栓症(8% vs. 1%),腸管穿孔(2% vs. 0%)が多く認められた。直腸腟瘻等の瘻孔(全Grade)はベバシズマブ併用群の11%に認められ,抗悪性腫瘍薬単独群の2%と比較し高頻度に発現している。これら瘻孔が認められた患者のほとんどは治療後残存・再発子宮頸癌症例で骨盤部への放射線の治療歴を有していたことから,放射線治療歴を有する患者に対するベバシズマブの使用には慎重を要する。また,致死的な毒性は両群ともに2%に認められた。ただし,GOG240 試験の付随研究においては,ベバシズマブ併用はQOL の低下を伴わないことが示されている 9)

この結果から進行・再発子宮頸癌に対する効能・効果の追加が承認された。ただし,前述のデータはすべて欧米からのものであり,放射線治療方法(総線量,外部照射における中央遮蔽挿入の有無,総治療期間,腔内照射の線量率など)が本邦とは異なることから,これらのデータのすべてが本邦での有効性・安全性を保証するものではないことに留意する必要がある。

ⅣB 期では骨盤内に広汎な病巣を有することも多く,それによる腫瘍関連合併症の頻度も高くなる。腫瘍関連合併症としては,子宮傍(結合)組織浸潤に伴う水腎症・水尿管症,子宮頸部局所からの出血,直腸浸潤部位からの消化管出血,膀胱浸潤部位からの血尿,リンパ節転移に伴う下肢・外陰の浮腫やリンパ管炎,下腹部や下肢の癌性疼痛,骨転移に伴う骨痛・骨折,脳転移に伴う頭蓋内圧亢進症状がある。このような症状が強い場合には,尿管ステント留置,腎瘻造設,疼痛管理などを行ってから治療を開始することになる。36 例のⅣB 期症例の多変量解析では,患者のperformance status(PS)は独立した予後因子であった 3)。また,化学療法が開始できても奏効するとは限らず,症状の持続・悪化により治療継続が不可能となることがある。このような場合には,全身化学療法より局所効果の高い緩和的放射線治療(小線源照射を含む)を行い,症状が軽減した後に残った病巣に対する化学療法を行うことが望ましい 10, 11)。一般に,骨転移に伴う疼痛,脳転移の随伴症状には放射線治療が行われることが多い 12, 13)CQ28 参照)。ただし,骨盤への放射線治療後は骨髄の予備能が低下し,その後の化学療法の骨髄抑制が予想以上に強くなることに注意する必要がある。

全身化学療法が奏効すれば,引き続き子宮全摘出術や骨盤への放射線治療単独もしくはCCRT を行うということも選択肢の一つである。予後の改善を期待できる症例には化学療法が考慮されるべきである。

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CQ24
Ⅲ・Ⅳ期腺癌に対して推奨される治療は?

推奨グレードB
  1. Ⅲ・ⅣA 期腺癌に対しては同時化学放射線療法(CCRT)が推奨される。
推奨グレードC1
  1. 主要臓器機能が保持されているⅣB 期腺癌に対し化学療法を施行する場合には,プラチナ製剤単剤もしくは同剤を含む併用療法が考慮される。

アルゴリズム(フローチャート4)参照

目的

Ⅲ・ⅣA 期腺癌に対するCCRT の有用性,およびⅣB 期腺癌に対する適切な化学療法レジメンについて検討する。

解説

1999 年にNCI から出されたCCRT に関する勧告により,Ⅲ・ⅣA 期に対する標準治療としてCCRT が推奨されている。NCI 勧告の根拠となった複数のRCT は主として扁平上皮癌を対象とした試験であり,腺癌は3.8〜6.2%,腺扁平上皮癌は3.6〜7.3%を占め,腺癌に限定した解析結果は示されていない 1-3)。また,15 の比較試験,3,452 例(扁平上皮癌89%,腺癌5%,腺扁平上皮癌2%)を対象としたCCRT に関する系統的レビューとメタアナリシスの結果によると,CCRT はⅠB(bulky)〜ⅣA 期の5 年生存率を有意に改善し,局所再発および遠隔転移の減少,DFS の延長に寄与したが,組織型による治療効果の差は認められなかった 4)。ⅠB 2〜ⅣA 期の腺癌182 例と扁平上皮癌1,489 例を対象に,組織型別の放射線治療単独とシスプラチンを含むCCRT の2 者間の効果を比較する後方視的検討が報告された。その結果では,放射線治療単独では,腺癌が扁平上皮癌に比べOS が短いのに対し,CCRT では組織型での差は認められなかった 5)。ゆえに,CCRT は,腺癌にも効果が期待できることが示唆された。32 例のⅡB〜ⅣA 期の腺癌を放射線治療単独,シスプラチンを使用したCCRT,シスプラチンとパクリタキセルを使用したCCRT の3 者を後方視的に比較検討した結果では,シスプラチンとパクリタキセルを使用したCCRT に局所再発を減らす効果が示された 6)。880 例のⅡB〜ⅣA 期(Ⅲ期258 例とⅣA 期70 例)の腺癌と腺扁平上皮癌に対し,シスプラチンを使用したCCRT 群と,CCRT 前に1 サイクル,CCRT 後に2 サイクルのシスプラチンとパクリタキセルによる抗悪性腫瘍薬治療を加えた群とのRCT が行われた。結果は,OS とDFS のどちらにおいても後者の方に有意に延長が認められた。有害事象は,骨髄抑制と脱毛の頻度が後者の方が有意に高かった 7)

したがって,Ⅲ・ⅣA 期腺癌の標準治療としてCCRT を推奨するが,扁平上皮癌に比べCCRT が腺癌に対してどれほどの効果があるのか,最適薬剤に相違はあるのかなどについては,これらを証明する大規模RCT がないため明らかではない。

本邦で進行中の新たな試験治療として重粒子線(炭素イオン線)治療が注目される。炭素イオン線はX 線に比べて高い生物学的効果を呈し,通常の放射線治療では難治性の局所進行子宮頸部腺癌で局所制御率の向上が期待される。1998 年から2009 年まで放射線医学総合研究所重粒子医科学センターにおいて主として局所進行子宮頸部腺癌を対象とした第Ⅰ/Ⅱ相試験(protocol 9704 試験)が行われ,重度の有害事象がないことが証明された 8)。症例数を増やし効果についての公表が待たれている。

腺癌に対するシスプラチン,イホスファミド,フルオロウラシル(+ロイコボリン)および経口エトポシドの単剤での奏効率は各々20% 9),15% 10),14% 11),12% 12)であり,扁平上皮癌に比してやや低い。腺癌に対する併用療法の第Ⅱ相試験は極めて少なく,これまでに行われたRCT のほとんどが扁平上皮癌を対象としたものであるため,腺癌に対する標準化学療法レジメンは確立されておらず,現在報告されている臨床試験の多くは,分子標的治療薬を含んだものになっている(CQ23 参照)。

TEP 療法はエピルビシンに引き続き,パクリタキセル+シスプラチンを3 週毎に投与する併用療法で,局所進行子宮頸部腺癌に対し62%の奏効率が示された 13)。本邦から報告されたMEP 療法は,シスプラチン+エトポシド+マイトマイシンC の3 剤併用療法であり,ⅣB 期・再発腺癌に対して全体で16%,化学療法の既往がない症例に限れば27%の奏効率が示された 14)。しかしながら,毒性の増強を考慮すると,3 剤併用療法の選択には慎重を要する。また,ネダプラチン+イリノテカン併用療法で7 例中5 例に奏効が認められたという報告もあり 15),本邦での保険適用の事情を鑑みると,ネダプラチン+イリノテカン併用療法も腺癌に対するレジメンの一つとなる。

パクリタキセルは腺癌に対して単剤で31%と他の薬剤に比して高い奏効率が報告されている 16)。放射線治療後の扁平上皮癌23 例と腺癌5 例に対して,パクリタキセル+カルボプラチン併用療法は扁平上皮癌65%,腺癌80%の奏効率が示された 17)。同じタキサン製剤であるドセタキセルも注目されており,腺癌6 例,腺扁平上皮癌1 例を含む17 例の進行・再発子宮頸癌を対象としてドセタキセル+カルボプラチン併用療法の有効性を検討した結果,腺扁平上皮癌を含む腺癌7 例中6 例に有効で,奏効率86%が示された 18)

腺癌54 例,腺扁平上皮癌36 例を含むⅣB 期および再発子宮頸癌435 例を対象としたRCT(GOG204 試験)の結果,ビノレルビン+シスプラチン併用療法,ゲムシタビン+シスプラチン併用療法およびトポテカン(ノギテカン)+シスプラチン併用療法は,標準治療として設定されたパクリタキセル+シスプラチン併用療法を上回る治療効果を示さなかった 19)。したがって,プラチナ製剤とタキサン製剤との併用化学療法がⅣB 期腺癌に対する有効なレジメンの一つとして考慮される(ドセタキセルは子宮頸癌に対する保険適用承認は得られていない)。

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CQ25
TNM 分類のT3, T4 で傍大動脈リンパ節転移のある症例の治療は?

推奨グレードC1
年齢,全身状態,臓器機能,既往歴,予測される有害事象等を検討し拡大照射を用いた同時化学放射線療法(CCRT)が考慮される。

アルゴリズム(フローチャート4)参照

目的

TNM 分類のT3,T4 で傍大動脈リンパ節転移のある(画像検査もしくは病理診断)症例の治療について検討する。

解説

ⅠB 期以上の進行癌における画像検査は,腫瘍の局所進展,遠隔転移を評価するため推奨され 1),リンパ節腫大の有無の評価にも有用と位置付けられている。NCCN ガイドライン2016 年版においてもリンパ節腫大の有無を評価するため画像検査(CT,MRI,PET)が推奨されており,画像検査で傍大動脈リンパ節腫大が認められた場合,腹膜外または腹腔鏡によるリンパ節摘出を考慮することが記載されている 2)。傍大動脈リンパ節転移陽性と判断された場合の治療は,シスプラチンを含んだ化学療法(シスプラチンまたはシスプラチン+フルオロウラシル)と,傍大動脈リンパ節領域まで照射野を拡大した拡大照射野(extended-field)による外部照射と腔内照射でCCRT を行うことが推奨されている 2)。本邦では傍大動脈リンパ節転移の有無についてsurgical staging で判断している施設は極めて少なく,ほとんどの施設が画像検査(CT,MRI,PET)で判断している現状と考えられる。

傍大動脈リンパ節転移は,他の遠隔転移がない場合,放射線治療を中心とした治療で根治の可能性がある病態と考えられる。傍大動脈リンパ節転移のある症例を対象とした大規模なRCT は見当たらない。T1/2 の症例も含まれた検討であるが,画像検査により傍大動脈リンパ節転移陽性と判断された症例に対し拡大照射によるCCRT の治療成績が,5 年生存率 47〜63%,5 年無病生存率 42〜44%として報告されている 3-7)

再発に関して傍大動脈リンパ節陽性例では,照射野外の遠隔再発が36〜50%と多いことが報告されている 3-8)。そのため新たな治療戦略として,CCRT 後の補助化学療法追加や,CCRT の併用薬剤追加に期待がもたれている 7, 10)

拡大照射のCCRT と全骨盤照射のCCRT の有害事象を直接比較した研究は見当たらないが,拡大照射のCCRT は照射野が広いため急性期,晩期有害事象が強くなる可能性がある。拡大照射のCCRT でGrade 3 以上の晩期有害事象が6〜21%に認められたと報告されている 4, 5, 8, 9)。拡大照射のCCRT による急性期,晩期有害事象の軽減のため,強度変調放射線治療(intensity-modulated radiation therapy;IMRT)を用いた拡大照射のCCRT が期待されている 7, 11)

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再発癌の主治療

総説

再発子宮頸癌に対する治療戦略は,再発部位(局所再発か遠隔再発か),前治療としての放射線治療の有無,年齢や全身状態などにより大きく異なるので個別化が重要となる。また,不完全手術例で癌の残存が明らかな症例の治療は,残存再発例の放射線治療として本章の対象と同様の治療が推奨されると考えてよい 1-3)

一般的には,放射線治療が行われていない場合の骨盤内再発例や孤立性の照射野外の局在性再発では放射線治療が主たる選択肢となる 2-4)CQ26)。特に,傍大動脈リンパ節転移に対しては救済治療の一定の有効性が報告されている 5)。肺・脳・骨転移などでは,転移部位・個数・患者背景により,化学療法・手術・放射線治療を個別に検討する必要がある 6-10)CQ28)。孤立性の遠隔転移や局所再発などに対して手術療法を施行する場合,合併症も考慮し,適応は慎重に考慮すべきである 11-13)

放射線治療が行われている場合の照射野内の再発や,多臓器への転移には化学療法が選択肢となるが,放射線照射後の再発例では化学療法の奏効率は低く,放射線治療後の再発例は予後不良とされている 14-16)CQ27)。

孤立性の遠隔転移や照射野外の局所再発などには手術療法や放射線治療も考慮される。放射線治療や化学療法の効果,全身状態,あるいは癌の拡がりなどを総合的に考え,best supportive care(BSC)を考慮する場合もある。骨転移のBSC には,鎮痛薬の使用や放射線治療が推奨されるが 10),最近ではビスホスホネート製剤や塩化ストロンチウム(89Sr)に一定の有効性が認められている 17-19)CQ28)。また,2016 年5 月に本邦でも分子標的治療薬であるベバシズマブが進行・再発子宮頸癌に保険適用になり,併用療法としての効果が期待される 20)CQ29)。

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CQ26
前治療として放射線治療が施行されていない場合,骨盤内に限局した再発に対して放射線治療は推奨されるか?

推奨グレードB
  1. 放射線治療が推奨される。
推奨グレードC1
  1. 同時化学放射線療法(CCRT)も考慮される。

アルゴリズム(フローチャート5)参照

目的

放射線治療が施行されていない場合の骨盤内再発に対する放射線治療について検討する。

解説

術後の骨盤内再発で放射線治療が施行されていない場合には,放射線治療(外部照射単独あるいは腔内照射との併用)の適応となる。腫瘍の再発部位,大きさ,進展範囲によって治療成績は異なるが,中心部再発症例,特に腟粘膜に限局した症例,腟傍(結合)組織に浸潤はあるが骨盤壁に達していない症例,腫瘍サイズの比較的小さな症例(3 cm 以下)などでは良好な局所制御率と無病生存率が得られている 1-5)。腫瘍が大きく進展範囲が広い場合には,腔内照射では腫瘍を高線量で十分にカバーできず,組織内照射の適応となる。組織内照射に関しては少数例の後方視的な報告にとどまるものの,比較的良好な成績が報告されている 6-8)。本治療では合併症が多いとも報告されているため 7, 8),治療法として選択する場合,必ず3 次元画像誘導小線源治療(3 dimensional image-guided brachytherapy;3D- IGBT)を行い,経験豊富な施設での実施が望ましい。

骨盤内再発症例に対する同時化学放射線療法(CCRT)を用いた第Ⅱ相試験の成績からは,historical control としての放射線治療単独の成績と同等あるいはやや良好な奏効率と無病生存率が示されているが 9-12),CCRT の優位性を証明するランダム化比較試験(randomized controlled trial;RCT)はない。しかし,ⅠB 2〜ⅣA 期の子宮頸癌に対する初回治療として放射線治療単独とCCRT を比較したRCT の成績から,CCRT の優位性(CQ07CQ08CQ19 参照)が示されていることを加味すると,放射線治療未施行の骨盤内再発に対しても,シスプラチンを含むレジメンでのCCRT が選択肢の一つと考えられる。腫瘍が周囲臓器に浸潤している場合には,膀胱腟瘻や直腸腟瘻,それに伴う感染などの合併症に注意を要する 12)

腟断端の中央再発例で膀胱腟瘻や直腸腟瘻などの瘻孔を形成している症例などに対しては手術療法も考慮される。しかし,骨盤中央再発例に対する骨盤除臓術の報告は,主として放射線治療後に病巣のコントロールができない再発例に対するもので,術後合併症(感染,吻合部縫合不全・狭窄,腸閉塞など)の頻度も高いことから,適応を慎重に検討すべきである 13)

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CQ27
照射野内再発に対して推奨される治療は?

推奨グレードC1
  1. Best supportive care(BSC)を考慮する。
推奨グレードC1
  1. 症状緩和を目的とした化学療法も考慮される。
推奨グレードC1
  1. 腟断端,子宮頸部の中央再発に対しては,骨盤除臓術や子宮全摘出術も考慮される。
推奨グレードC2
  1. 再照射は推奨されない。

アルゴリズム(フローチャート5)参照

目的

難治性とされる照射野内再発に対する治療法の選択と予後,および合併症について検討する。

解説

放射線照射歴のある局所再発に対しては,後述する骨盤除臓術などの手術療法や放射線再照射が行われることもある。しかし,病巣の根絶は困難なことが多く,手術侵襲および合併症とquality of life(QOL)低下が著しい場合もあるため,得失を十分に検討するとともに,施設の実施可能性にも配慮する必要がある。症状緩和によるQOL 向上を目的とした化学療法も考慮されるが,照射野内再発に対する化学療法の奏効率は30〜33%と,照射野外再発の奏効率が60〜75%であるのに比較して低いと報告されている 1-3)。このようなことから,化学療法を選択する場合でも,best supportive care(BSC)も重要な選択肢としながらインフォームドコンセントを得る必要がある(CQ29 参照)。

照射野内再発に対する手術療法として,骨盤除臓術,(広汎)子宮全摘出術,laterally extended endopelvic resection(LEER)がある。

骨盤内局所再発,特に腟断端の中央再発例に対する骨盤除臓術の治療成績は,5 年生存率が37〜66%と報告されており,最も長期生存が期待できる治療法の一つである 4-8)。骨盤除臓術を施行した症例の解析からは,腫瘍径が小さい例,骨盤壁に達しない中央再発例,初回治療後の無病期間が2 年以上の例,完全切除可能であった例は予後良好とされ 4-8),これらの因子を満たす症例が本術式の良い適応となる。Vesicovaginal space やrectovaginal space に限局した再発巣に対しては,それぞれ前方除臓術(anterior pelvic exenteration)あるいは後方除臓術(posterior pelvic exenteration)を適応としてもよいが,術前に完全摘出できるか否かをMRI やPET/CT で予測することは困難とされる 9)

骨盤除臓術を施行した症例では,心血管系,呼吸器系,尿路系,消化器系などの合併症の頻度が45〜65%とされ,周術期死亡率も2〜14%と比較的高い 4-7, 10, 11)。術式や周術期管理の改良・向上,種々の再建法(尿路,腟,骨盤底)の工夫,腹腔鏡下手術の導入 12),リハビリテーションプログラムの充実化などにより,合併症の発生率も死亡率も近年低下してきたとはいえ,各診療科との連携,患者や家族への十分なインフォームドコンセント,社会心理学的あるいは精神心理学的なカウンセリングなどが不可欠である。

放射線治療後の局所再発で,遠隔転移がなく骨盤壁への浸潤がない症例に対して広汎子宮全摘出術が試みられている。5 年生存率は49〜72%と比較的良好であるが,重篤な術後合併症も40%以上と高率に認められており 13, 14),骨盤除臓術よりは非侵襲的ではあるものの,術前の十分なインフォームドコンセントが必要である。また,骨盤リンパ節郭清を行わず単純子宮全摘出術だけでも良好な成績が報告されており,腸管や尿路の重篤な合併症も14%と低く,症例によっては有用な方法となる可能性がある 15)

側方断端から骨盤壁にかけての再発例は骨盤除臓術の適応にならず予後不良とされてきた。しかし最近,内腸骨血管系,内閉鎖筋,尾骨筋,腸骨尾骨筋および恥骨尾骨筋を含め,より広範囲に切除するLEER により,あるいはそれに組織内照射を併用したcombined operative and radiotherapeutic treatment(CORT)により,5 年生存率がそれぞれ 44%および46%と報告されている 16, 17)。しかし,その適応に関しては骨盤除臓術以上に厳格な基準と評価が要求され,まだ一般には受け入れられておらず,側方再発には化学療法が考慮される。

放射線治療について,照射野内再発に対する放射線再照射は現状では第一選択とはならない。

外部照射単独および腔内や組織内照射単独あるいは併用により,64〜92%の局所制御率 18, 19)と4〜40%の5 年生存率が報告 19-22)されているが,尿路系,消化器系の副障害の頻度も38〜66%と高率 18, 20, 22)である。合併症などの医学的理由により骨盤除臓術が不可能な症例で,腟壁限局例や腟断端の中央再発例あるいは腫瘍サイズの比較的小さな再発例や無病期間が5 年以上の晩期再発例に対しては,組織内照射を主体とした治療が選択肢になるとの報告 20-23)がある。しかし,対象症例が限定され治療にある程度の侵襲を伴い,熟練した手技が必要とされるため,組織内照射を治療選択肢の一つとして考慮する場合,治療症例数の多い施設での検討が必要である。また,症状緩和として用いる場合にも,適応に関して十分な検討が必要である。

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CQ28
照射野外再発,あるいは放射線治療を施行していない場合の骨盤外再発に対して推奨される治療は?

傍大動脈リンパ節転移
推奨グレードC1
傍大動脈リンパ節に限局した再発に対しては,放射線治療あるいは同時化学放射線療法(CCRT)が考慮される。
脳転移
推奨グレードB
  1. 単発性脳転移に対しては,定位放射線照射±全脳照射,あるいは腫瘍摘出術+全脳照射が推奨される。
推奨グレードB
  1. 2〜4 個の多発性脳転移に対しては,定位放射線照射±全脳照射,あるいは全脳照射が推奨される。
推奨グレードB
  1. 5 個以上の多発性脳転移に対しては,全脳照射が推奨される。
骨転移
推奨グレードB
  1. 疼痛除去目的に,単回あるいは分割照射法による放射線治療が推奨される。
推奨グレードB
  1. 症状緩和にビスホスホネート製剤の使用が推奨される。
推奨グレードC1
  1. 塩化ストロンチウムは,薬物療法による症状緩和が無効な多発転移に対して考慮される。
肺転移
推奨グレードC1
肺に限局した1〜3 個の転移巣に対しては,手術あるいは定位放射線治療が考慮される。

アルゴリズム(フローチャート5)参照

目的

照射野外あるいは骨盤外再発として代表的な傍大動脈リンパ節,脳,骨,肺転移に対する治療法について検討する。

解説

傍大動脈リンパ節に限局した再発例に対する治療法に関しては,これまで高いエビデンスレベルの臨床試験は行われていない。このような症例に対しては従来より放射線治療±化学療法が行われてきた 1)。本邦における傍大動脈リンパ節の孤発転移84 例の後方視的調査では,放射線治療±化学療法を行った結果,5 年生存率が31%であったと報告されている 2)。また同時化学放射線療法(CCRT)の少数例の後方視的報告がいくつかあり,比較的良好な中長期成績が報告されている 1, 3, 4)。ただし放射線治療単独とCCRT の優劣は明らかでない。また化学療法単独の治療を支持する明らかなエビデンスはない。以上のように傍大動脈リンパ節に限局した転移の場合,病変が制御され長期生存する症例が含まれていることから,このような症例においては放射線治療またはCCRT を考慮する価値がある。

脳転移症例の治療方針は,performance status(PS),年齢,頭蓋外病変の有無,脳転移個数,腫瘍の大きさ,部位,および組織型,神経症状の有無等によって異なる。単発性および多発性脳転移の治療方法に関しては,複数のRCT,系統的レビューおよびメタアナリシスによって検討され,治療方法についてのガイドラインも出されている 5)

単発性ないし4 個までの多発性脳転移に対しては,定位放射線照射(stereotactic irradiation;STI)±全脳照射(whole brain radiation therapy;WBRT)が推奨される 5)。2〜4 個の脳転移に対するWBRT 単独 vs. WBRT+STI についての2 つのRCT とメタアナリシスの結果,WBRT 単独に比して定位手術的照射(stereotactic radiosurgery;SRS)を加えても全生存率の向上は得られないが,頭蓋内病変の制御は向上することが示されている 6, 7)。また1〜4 個の脳転移に対するSTI 単独 vs. STI+WBRT を比較した3 つのRCT とそのメタアナリシスの結果から,STI 単独に比してWBRT を加えても全生存率の向上は得られないが,頭蓋内病変の制御は向上することが示されている 6-9)。WBRT の追加による神経認知機能やQOL への影響に関してはRCTによって異なる結果が出ており 10, 11)(NCT00548756),系統的レビューやメタアナリシスでも明確な結論は出ていない 6-9)。本邦の実地医療ではWBRT による神経認知機能やQOL への影響を懸念してSTI 治療単独+MRI での定期的な経過観察が行われることが多い。

1〜3 個の脳転移で,全身状態が良好で頭蓋外病変が制御されており,切除可能病変であれば,手術も治療法の選択肢となり得る。しかしSTI に比較して侵襲が大きいため適応には制限がある。腫瘍の大きさが3〜4 cm 以上あるいは著明な圧迫症状を呈している場合には手術の方が適している 5)。単発性脳転移に対する手術単独 vs. 手術+WBRT についての2 つのRCT およびメタアナリシスの結果,WBRT を追加しても生存率の向上は得られないが,頭蓋内病変の制御は向上することが示されている 6, 8)。また近年では,単発性脳転移に対して手術+摘出腔へのSRS が行われるようになってきている 12)

多発性脳転移症例には一般的にWBRT が行われる 5, 13)。4 個以上の脳転移で何個までがSRS の適応となるかは議論がある 5, 13)。また,脳転移に対する化学療法の意義に関しては明確に支持する根拠に乏しい。

限局した有痛性の骨転移に対しては,放射線治療による除痛効果が期待できる 14)。除痛目的の放射線治療方法として代表的なものに,8 Gy/1 回,20 Gy/5 回,30 Gy/10 回の方法があるが,複数のRCT とメタアナリシスの結果では,単回照射と分割照射との間に除痛効果に関する差は認められていない 15, 16)。ただし,疼痛の再燃による再照射率は単回照射で有意に高い 15, 16)。病的骨折や脊髄圧迫症状の発生リスクは単回照射の方が高いというRCT もあるが,近年のメタアナリシスの結果では,両者の間に有意差は認められていない 16)。照射後の疼痛再燃に対する再照射は有効で,初回治療時とほぼ同等の除痛効果が期待できるため,正常組織の耐容線量を考慮しつつ試みる価値がある 17)

ビスホスホネート製剤は転移性骨腫瘍の症状改善やイベント抑制に有効というメタアナリシスの結果が報告されている 18, 19)。しかしながら,子宮頸癌の骨転移に関しての有効性については未だ十分に検証されていない。

塩化ストロンチウム(89Sr)による骨転移の治療に関しては,RCT およびメタアナリシスの結果,短期的に一定の除痛効果が確認された 20)。ただし,造骨性の骨転移に適応が限られることや,骨髄抑制や腎機能障害のある症例では適応外になることなどから臨床的有効性は限定される。近年,receptor activator of nuclear factor kappa-B ligand(RANKL)を標的としたヒト型モノクローナル抗体である骨吸収抑制剤デノスマブが固形癌骨転移の治療に使用されているが,子宮頸癌に対する有用性については未だエビデンスに乏しく,今後の検討が待たれる。

肺転移に関しては,単発ないし少数の転移に対して手術 21-23),および体幹部定位放射線治療(stereotactic body radiation therapy;SBRT)によって比較的良好な治療成績の報告がある 24-26)。これまでの報告のレビューからは予後良好となる因子として,初回治療から肺転移までの期間(1 年以上),肺転移の個数(3 個以下),手術では完全摘出の有無,SBRT では投与線量〔100 Gy 以上(α/β=10 Gy)〕などが挙げられる 26, 27)。しかし,これまでに質の高いRCT は行われておらず,本疾患に関する手術やSBRT による局所療法の明確な指標は現時点では未だ定まっていない。局所療法の適応に際しては,肺高分解能CT での転移数確認やPET/CT による全身検索などの精査を考慮する。多発肺転移や肺外病変を伴う場合には,一般的に薬物療法の適応となる。

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CQ29
再発癌に対して全身化学療法を行う場合,推奨されるレジメンは?

推奨グレードB
  1. プラチナ製剤もしくは同剤を含む2 剤併用療法が推奨される。
推奨グレードB
  1. ベバシズマブを含むレジメンが推奨される。
推奨グレードC1
  1. 再発腺癌に対し化学療法を施行する場合,プラチナ製剤単剤もしくは同剤を含む併用療法が考慮される。

アルゴリズム(フローチャート5)参照

目的

再発癌に対し,どのような薬剤を用いるのが適切かについて検討する。

解説

再発癌に対する化学療法の目的は,現在のところ症状緩和とそれによるQOL 向上である。再発癌の化学療法の奏効は,前治療内容,再発部位と拡がり,無治療期間,患者のperformance status(PS)によるところが大きい。化学療法として奏効率とともにQOL も考慮すべき重要事項であることから,毒性の少ない単剤療法も選択肢とされてきた。最近はパクリタキセルやトポテカン(ノギテカン)の保険適用が認められ,薬剤選択の幅が広がった。またベバシズマブなど分子標的治療薬の導入により,より効果的で毒性の少ない治療の開発が進められている。

単剤療法としては,シスプラチンが20〜30%の奏効率 1)を示すことから20 年以上にわたりキードラッグとして用いられている。Gynecologic Oncology Group(GOG)はシスプラチンの単剤投与における投与量と投与スケジュールを検討したRCT の結果より,50 mg/m2 の3 週毎,1 回投与を標準とした 2)。しかし,シスプラチン単剤でのOS の中央値が約7 カ月と短いため,多剤併用療法に毒性の増強を上回る予後改善効果が期待された。多くの第Ⅱ相試験にて,フルオロウラシル,ブレオマイシン,イホスファミド,ゲムシタビン,ビノレルビン,パクリタキセル,トポテカン(ノギテカン)などの薬剤がシスプラチンとの併用にて,シスプラチン単剤より奏効率で優ることが報告されたが,生存期間の延長を認めるものは限られている。

シスプラチンに次いで奏効率の高いイホスファミドの追加効果を検討したRCT の結果では,イホスファミド併用群(IP 療法)において奏効率とPFS の有意な改善を認めた。しかし,OS に有意差は認められず,白血球減少などの毒性も有意に増強した 3)

パクリタキセル単剤の奏効率は17%である 4)が,シスプラチンとの併用療法(TP 療法)における第Ⅱ相試験において,対象の91%が放射線治療の既往を有しながら46%と高い奏効率を示し有望視された 5)。シスプラチン単剤とのRCT では,OS では有意差はないものの奏効率の上昇とPFS の有意な延長がみられた。さらに治療関連死に結び付くような毒性の増強がほとんどみられず,多剤併用によるQOL 低下は避けられた 6)。この結果より,TP 療法が再発・転移例に対する化学療法として推奨されるレジメンとされてきた。

さらに,トポテカン(ノギテカン)とシスプラチンとの併用療法とシスプラチン単剤とのRCT では,奏効率,PFS,OS のすべてにおいて併用群が優っているという結果が報告された 7)。この結果より,トポテカン(ノギテカン)+シスプラチン療法は進行・再発子宮頸癌の第一選択薬として2006 年にFood and Drug Administration(FDA)から認可された。しかし,この検討ではシスプラチン治療既往の有無でOS 中央値が8 カ月と15 カ月の大きな差があるため,既往治療によるシスプラチン耐性を反映しているのではとの疑問が挙がった。そこでGOG はⅣB 期・再発癌に対し,TP 療法を標準治療として,ビノレルビン+シスプラチン,ゲムシタビン+シスプラチン,トポテカン(ノギテカン)+シスプラチンを比較したRCT を行ったが,奏効率,PFS,OS ともTP 療法に優るものはなく,TP 療法を標準治療とする考えを裏付ける結果となった 8)

トポテカン(ノギテカン)と同じトポイソメラーゼⅠ阻害薬であるイリノテカンは本邦で開発された薬剤であり,シスプラチンとの2 剤併用療法では59%という良好な奏効率が示され,毒性も管理可能なものであった 9)。この報告における放射線治療の既往症例は21%と少ないために,奏効率が高くなり有害事象の発現頻度も低くなった可能性はあるが,本邦で投与できる有効な治療法の一つと考えられる。

進行・再発癌症例では水腎症や水尿管症を伴うことが多く,そのような症例ではシスプラチン投与が難しい。カルボプラチンはシスプラチンと同じプラチナ製剤であるが,腎毒性が低く腎機能に応じて投与量を決定できるため使いやすい。ⅣB 期・再発癌に対する単剤での奏効率は15%と決して良好とは言えない 10, 11)が,パクリタキセルとの併用療法による後方視的検討では60〜68%という良好な奏効率が報告された 12, 13)。さらに,第Ⅱ相試験では奏効率が59%,PFS の中央値が5 カ月,OS の中央値が10 カ月であり,骨髄抑制以外では重篤な有害事象も認められなかったという良好な成績であった 14)。これらの結果を受け,Japan Clinical Oncology Group(JCOG)でTC 療法とTP 療法のRCT が実施された(JCOG0505 試験:NCT00295789)。この試験ではTC 療法のTP 療法に対する非劣性が検証され,TC 療法のTP 療法に対する非劣性が有意に示された。またサブグループ解析ではあるが,プラチナ投与既往のない対象ではTP 療法が,プラチナ投与既往(ほとんどがシスプラチン)のある対象ではTC 療法が良好な予後を示していた 15)。再発を来す多くの子宮頸癌には,初回治療でCCRT や術後補助療法としてシスプラチンが使用されていることを考えると,TC 療法は考慮すべきレジメンの一つと考えられる。

本邦で開発されたネダプラチンもプラチナ製剤の一つであるが,子宮頸癌に対する単剤での奏効率が34〜41%と高い 16, 17)。海外での評価が不十分ではあるが,本邦からはイリノテカンやパクリタキセルなどとの併用療法による臨床試験成績も報告されており,腎機能障害を有する症例に対しては有用な薬剤と考えられる 18, 19)

プラチナ製剤を用いない治療としては,イリノテカンとマイトマイシンC の併用が国内で検討され,51%という良好な奏効率が報告されている 20)が,RCT の成績がないため有用性は十分に確かめられていない。

昨今モノクローナル抗体や低分子薬などの分子標的治療薬と既存薬剤を組み合わせた臨床試験が行われている。ベバシズマブは,海外第Ⅲ相臨床試験(GOG240 試験:NCT00803062)にてTP 療法,トポテカン(ノギテカン)+パクリタキセル療法などの標準療法にベバシズマブを加えることによって,OS の中央値が3.7 カ月延長し,死亡リスクも29%軽減し,有意な腫瘍縮小率の改善,PFS の延長も認められた。国内でも第Ⅱ相臨床試験(JO29569 試験)が実施され,その結果をもって2016 年5 月に「進行・再発の子宮頸癌」に対する効能・効果が追加となった。しかしながら,GOG240 試験では放射線治療歴を有する症例が75%含まれ,8%に腸管腟瘻が発生している 21)ので,注意を要する。

再発子宮頸癌に対するRCT のほとんどが扁平上皮癌を対象としたものであり,再発腺癌に対する標準化学療法は確立されていない。その中で,非扁平上皮癌に対するパクリタキセルの単剤奏効率は31% と報告され 22),ⅣB 期・再発癌435 例(腺癌52 例,腺扁平上皮癌36 例を含む)を対象としたGOG204 試験の結果でも,標準治療としてのパクリタキセル+シスプラチンを上回る治療法は示されなかった 8)。PhaseⅡレベルでは,再発・転移腺癌に対するパクリタキセル+カルボプラチン併用療法 13, 14)やS-1+オキサリプラチン併用療法 23),再発・進行腺癌,腺扁平上皮癌に対するドセタキセル+カルボプラチン併用療法 24)などの成績が報告されている。

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妊娠合併子宮頸癌の治療

総説

妊娠に合併した子宮頸癌の頻度は明らかにされていないが,1980 年代の米国での調査で,前癌病変を含めた子宮頸癌の約3%が妊娠中に診断されたとしている 1)。妊娠中の子宮頸部細胞診異常は妊娠女性の1〜5%と推測され,組織学的にはCIN 3 や微小浸潤癌が多く,浸潤癌の頻度は妊娠10,000 当たり1〜12 であると報告されている 2-4)

本邦では,近年,子宮頸癌の若年化と女性の晩婚化・晩産化により,妊娠年齢と子宮頸癌発症の年齢のピークが重なる傾向にある。このため,妊娠中の子宮頸部細胞診異常は,しばしば経験され,また,妊娠中のスクリーニング細胞診を契機に子宮頸癌と診断されることも少なくない。本邦における最近の妊娠に合併した子宮頸癌やその前癌病変の頻度は明らかにされていないが,日本産科婦人科学会研修施設と全国のがんセンター122 施設を対象に実施された悪性腫瘍合併妊娠に関する調査 5)によると,2008 年1 年間の妊娠および分娩後5 カ月以内に診断された悪性腫瘍は225 例で,前癌病変を含めた子宮頸癌が162 例(CIN 3 が62%を占める)と最多で,卵巣癌が16 例,乳癌が14 例,その他が33 例であった。

過去において,妊娠は子宮頸癌の自然経過に悪影響を及ぼすのではないかと考えられてきたが,予後からみると非妊娠時の子宮頸癌と同等とした報告が多い 4, 6-8)。初期の子宮頸癌は無症状であることが多く,妊娠初期検査として子宮頸部細胞診が含まれている現在では 9),妊娠が初期子宮頸癌の発見の契機ともなっている。子宮頸部病変の診断は,細胞診でスクリーニングを行い,異常があれば,コルポスコピーと組織生検を行う。さらに,組織診の結果によっては,子宮頸部円錐切除術(円錐切除術)へと診断を進めていくのが一般的である(CQ30)。しかしながら,妊娠成立前に行った円錐切除術も,loop electrosurgical excision procedure(LEEP)とコールドナイフなど手技により妊娠の成立および継続へのリスクの違いがあるとの報告 10, 11),切除した組織が大きい(深い)ほど早産率が高いとの報告 12-14),子宮頸部上皮内腫瘍(cervical intraepithelial neoplasia;CIN)自体が早産のリスク因子となり妊娠中の円錐切除術はさらにそのリスクを増加させるとの報告 15)もある。このように侵襲的検査の妊娠への影響を考えると,治療法はもちろんのこと,診断方法についても個別に取り扱う必要がある(CQ30CQ31)。

妊娠に合併した浸潤子宮頸癌の治療に関して,腹式または腟式広汎子宮頸部摘出術が施行され 16),本邦においても複数の施設で手術が実施 17)されてきているが,妊娠中の手術自体の安全性が十分に確立されているとは言えない。また,妊娠中の化学療法については,シスプラチン単剤やシスプラチンを含む併用療法の報告 18)がみられるが,本ガイドラインとして推奨できる段階ではない(CQ32)。ただし,本邦の乳癌や造血器腫瘍のガイドラインでは,「妊娠期乳癌に対して薬物療法は勧められるか」19)「妊娠中に発症した急性前骨髄球性白血病をどのように治療すべきか」20)と,CQ として妊娠中の化学療法が紹介されていることを産婦人科専門医,婦人科腫瘍専門医としては認識しておく必要がある。

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CQ30
妊娠中のCIN 3・AIS に対して推奨される対応は?

推奨グレードB
  1. 生検組織診がCIN 3 であり,細胞診とコルポスコピー所見が一致している場合は,分娩後まで円錐切除術を延期することが推奨される。
推奨グレードC1
  1. 生検組織診が上皮内腺癌(AIS)の場合は,妊娠中に診断を目的とした円錐切除術が考慮される。

目的

妊娠中に診断されたCIN 3・上皮内腺癌(adenocarcinoma in situ;AIS)の診断や治療,予後について検討した。

解説

子宮頸部細胞診は妊娠初期等に行われるべき検査である 1)。子宮頸部細胞診でCIN を疑う判定が認められた場合は,コルポスコピーで慎重に評価し必要に応じて組織診を行う。頸管内掻爬は行わない 2-4)。妊娠中のコルポスコピーは,腟壁の膨隆や浮腫,子宮頸部の脆弱性ならびに頸管粘液の産生から,十分な視野確保が難しい。さらに酢酸加工をすると,生理的血管増生ならびに間質の脱落膜変化のために正常な扁平上皮化生を異形成と,また,初期病変を正常な扁平・円柱上皮境界(squamo-columnar junction;SCJ)と誤認しやすく,非妊婦と比べて正確な診断が困難となる。妊娠初期に行ったコルポスコピーで明らかな所見が認められない場合は,妊娠の経過とともにSCJ の外反が進むので,時間をおいての再評価が重要である 3, 5-7)

細胞診,コルポスコピー,組織診でCIN 3 までの病変であれば経過観察を行い,分娩後に再評価を行う 1, 2, 8)。CIN 3 の病変が妊娠中に浸潤癌に進展する頻度は低く,分娩後に自然退縮する場合も報告されている 3-5, 7, 8)。経腟分娩と帝王切開術による病変の自然退縮の頻度の相違については議論があり,CIN では選択的帝王切開術の適応とはならない 1, 3, 8, 9)。この場合,細胞診,コルポスコピー,生検組織診が適切に行える施設での総合的診断および分娩後までの厳重な経過観察が不可欠である。分娩法は,通常の産科的適応に従い,産後4〜8 週に再評価を行い 1, 7),CIN 3 の病変が存続する場合にはCQ01 に準じる。一方で,組織診でCIN 3 以下と診断した場合であっても,細胞診で浸潤癌を疑う所見がある場合には,非妊時と同様に診断的円錐切除術を行うことを考慮する。また,組織診でAIS と診断された場合,コルポスコピーだけでは病変の局在や浸潤の深さの評価が困難であり,正確な診断のために円錐切除術が必要となる 10-12)

診断的円錐切除術の結果,病変がCIN 3 で摘出標本断端陰性であれば,円錐切除術を最終治療としてよい。病変がAIS であるか,もしくはCIN 3 の摘出標本断端陽性のときは個別に取り扱うが,細胞診やコルポスコピーで,病変の遺残あるいは病変が進行するかどうか,分娩まで十分注意して経過を観察し,産後4〜8 週で再評価し,CQ01 に準じることが合理的である。

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CQ31
妊娠中にⅠA 期が疑われる場合の対応は?

推奨グレードB
ⅠA 期が疑われる場合は,診断確定のために妊娠中に子宮頸部円錐切除術が推奨される。

目的

妊娠中に診断されたⅠA 期の診断,治療や対応について検討した。

解説

生検組織診でⅠA 期の病変が疑われる場合(少しでも微小浸潤癌以上の病変が疑われる場合)は診断確定のために,子宮頸部円錐切除術を行う 1)。妊娠中の診断的円錐切除術は,扁平・円柱上皮境界(SCJ)が外反していること,出血や流早産のリスクがあることを考慮して,円錐状ではなく浅く硬貨状に切除するcoin-biopsy を行う 2, 3)。ただし,切除後の断端病巣残存の頻度は高い。同時に頸管縫縮術を施行することもあるが,その効果に関する一定の見解はない。その時期は妊娠14〜15 週前後が望ましい 4, 5)。その他の合併症として早期施行例に流産の報告が,また早産や絨毛膜羊膜炎による子宮内胎児死亡がわずかながら報告されている。

円錐切除術の結果,子宮の温存が可能な場合,すなわち,ⅠA 1 期の扁平上皮癌で脈管侵襲がなく摘出標本断端に少なくとも浸潤性の病変がない場合は妊娠を継続し,産科的適応がない限り自然経腟分娩が可能である 6)。摘出標本断端に病変がない場合は円錐切除術を最終治療とするが,摘出標本断端にCIN 2 もしくはCIN 3 の病変がある場合は,産後4〜8 週の間に再評価が必要である 3-4)。ⅠA 1 期の扁平上皮癌で,摘出標本断端に微小浸潤癌が認められ,子宮側に遺残がある場合,脈管侵襲が認められる場合,ⅠA 2 期の扁平上皮癌の場合,また,ⅠA 1 期ならびにⅠA 2 期の腺癌の場合は,子宮の温存の可否について個別に取り扱う必要がある。すなわち,挙児希望の意思が強い場合は,診断された妊娠週数を基本に母体の予後,胎児や新生児の予後について検討を行い,十分な説明の上に治療方針を選択する。妊娠時の浸潤癌の取り扱いは,非妊娠時と同じとするのが一般的である 6)。ⅠA 2 期の骨盤リンパ節転移は0〜10%と報告 7)されているので,妊娠を継続する場合,このリスクを負うことになる。胎児が成熟するまで治療を延期する必要があるが,3〜6 週間程度(非妊娠時であっても初診から手術までにかかる時間)をこえる延期には慎重であるべきである 2)。その一方で,治療開始を6〜15 週間延期しても胎児ともに良好な予後を得たとする報告もある 8)

ⅠA 2 期における分娩様式は,浸潤癌と同様,古典的帝王切開術を行った後に,(準)広汎子宮全摘出術を推奨するものもある 9)。近年,妊娠中の広汎子宮頸部摘出術の少数の報告も認められる 10-12)。その取り扱いには,いずれもガイドラインとして推奨されるほどのコンセンサスは得られていない。

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CQ32
妊娠中のⅠB・Ⅱ期に対して推奨される治療は?

推奨グレードC1
  1. 胎児の子宮外生存が可能な妊娠週数に診断された場合には,胎児娩出後に標準治療を行うことが考慮される。
推奨グレードC1
  1. 胎児の子宮外生存が不可能な妊娠週数に診断された場合には,進行期・妊娠週数等を加味した上で,患者や家族の意向を踏まえて症例ごとに検討する。
推奨グレードC1
  1. リンパ節転移陽性例やⅡ期以上の進行症例では速やかに妊娠を終了し標準治療を行うことが考慮される。
推奨グレードD
  1. 抗悪性腫瘍薬は胎盤を通過するため,1st trimester での投与は奨められない。

目的

妊娠中に診断されたⅠB・Ⅱ期の治療方針について検討する。

解説

浸潤子宮頸癌合併妊娠の治療に関するランダム化比較試験(randomized controlled trial;RCT)は倫理的な側面から実施困難であるが,各国のガイドラインや国際的な検討により推奨される治療方針が公開されている 1-6)

浸潤子宮頸癌合併妊娠の治療方針は,診断された妊娠時期により異なる。妊娠合併自体により治療成績は変化しないことから,妊娠終了後,速やかに標準治療に移行することで,通常の子宮頸癌に対する治療と同等の治療成績が期待できるとされる 7)。このため,子宮頸癌と診断された時期が既に胎児の子宮外生存可能な時期になっていれば,原則的には胎児を娩出させた後,速やかに子宮頸癌の標準治療を行うことになる。

一方,胎児の子宮外生存が不可能な時期に診断された場合は,病状などに応じて,①妊娠を継続しないで治療,②子宮外生存可能な時期まで胎児発育を待ってから児娩出後に治療,③妊娠を継続したまま治療,の3 つのアプローチが考慮される。

子宮外生存可能な時期まで胎児発育を待ってから児娩出後に治療を行う場合には,ⅠB 1 期までであれば,比較的安全に治療を延期できるという見解もある 5, 6)が,その安全性や期間に関する明確な根拠はなく,十分に同意を得る必要がある。特に本邦では妊娠の比較的早期に診断されることが多く,海外よりも待機期間が長くなる傾向があることにも留意すべきである。海外のガイドライン等では,ⅠB 1 期で腫瘍径2 cm 未満であれば,治療待機の可能性を検討する目的で開腹や腹腔鏡下で骨盤リンパ節郭清のみを施行し,予後因子として最も重要なリンパ節転移が認められなければ胎児が成熟するまで治療開始を延期する選択が示されている。しかし,その安全性は確立されておらず,本邦においては適応に関して慎重な検討が必要である 2, 5, 6, 8, 9)。リンパ節転移陽性例やⅡ期以上の進行症例では母体の予後が不良であることから,原則として速やかに妊娠を終了し標準治療を行うのが望ましい 4, 5)

海外のガイドライン等では,進行例や腫瘍径の大きい症例に対し,妊娠を継続したままで化学療法を行うという方法も選択肢として挙げられている 5, 6, 10, 11)が,妊娠終了後の標準治療と比較した有効性や安全性は証明されてはいない。化学療法のレジメンとしては,一般にシスプラチン単剤やパクリタキセルとの併用療法が奨められる 6)。抗悪性腫瘍薬は少なからず胎盤を通過し,一部は臍帯血のDNA と結合するという報告もあり 11),胎児にも脱毛や骨髄抑制などの有害事象が認められたり,胎児機能障害や子宮内胎児死亡が起こる危険性もある。このため,重大な奇形が生じる可能性が高い1st trimester での抗悪性腫瘍薬の投与は避け,2nd,3rd trimester に投与する方が望ましいと考えられている。妊娠中に化学療法を受けた出生児の知的発達は一般児と変わらないとの報告もあるが,早産に起因する後遺障害も含め,長期的な影響はまだ不明である 12, 13)

妊娠中の手術療法に関しては,妊娠を継続したまま腟式あるいは腹式の広汎子宮頸部摘出術や子宮頸部円錐切除術と骨盤リンパ節郭清を施行し,生児を得たとの報告もみられるが,手術後の胎児死亡もあり,症例数が少なくまだ十分な根拠があるとは言えない 14)CQ11 参照)。本邦からも妊娠中の広汎子宮頸部摘出術による出産例が報告されているが,妊娠中の手術自体の安全性が十分に確立されているとは言えない 15-17)

以上のように,胎児の子宮外生存が不可能な時期に診断された場合,様々な治療選択が考えられるが,いずれも明確な有効性・安全性は示されていないのが現状である。方針決定には,腫瘍の大きさ,進行期,リンパ節転移の有無,組織型など子宮頸癌の進展状況とともに,妊娠週数や発育度など胎児の子宮外生存の可能性を加味した上で,患者や家族の挙児希望の意向を踏まえて症例ごとに検討する必要がある。

浸潤子宮頸癌を合併した妊娠の場合の胎児娩出方法に関する一定の見解は得られていないが,経腟分娩では会陰切開部や裂傷部の再発など,予後に悪影響を与える可能性が報告されている 18, 19)。このため,胎児娩出は子宮頸部の腫瘍にできるだけ影響を与えない帝王切開術が望ましいと考えられる。児の娩出後に同時に広汎子宮全摘出術を実施することも考慮される。

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治療後の経過観察

総説

子宮頸癌の治療後の経過観察方法については,信頼性の高い研究はなく,また統一された見解がないのが現状である 1)。経過観察の目的は,従来は再発の早期発見による早期治療と予後改善に主眼が置かれてきたが,同時に治療に伴う有害事象による合併症のためquality of life(QOL)が損なわれないように注意を払うことも必要である 2)

一般的に子宮頸癌の再発例の約75%は初回治療から2〜3 年以内に再発すると言われており,この期間ではサーベイランスは特に重要である 3)CQ33CQ34)。その一方で,子宮頸癌の治療後5 年 4)あるいはより長期の生存者で,治療に伴う合併症のためQOL が損なわれている場合があり 5, 6)長期間の観察が必要である。特に子宮頸癌患者は,他の婦人科がんと比較して罹患年齢が若く,治療による閉経はQOL 低下を来す。ホルモン補充療法は子宮頸癌の予後に影響を与えないとする報告は多く 7),『ホルモン補充療法ガイドライン』8)に従ってホルモン補充療法を施行することが望ましい(CQ35)。

本章では,ガイドライン作成委員会でコンセンサスの得られた経過観察の間隔と検査項目,そしてホルモン補充療法についての検討結果を推奨として挙げた。なお,経過観察の間隔や検査項目は,再発のリスクや有害事象による合併症の程度,患者の心理的問題等を踏まえながら,ある程度の幅をもたせて設定する必要があると考えられる。また,腫瘍マーカーの測定については組織型をもとに個別に考慮すべきである。

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日本産科婦人科学会,日本女性医学学会 編.ホルモン補充療法ガイドライン2012 年度版.日本産科婦人科学会,東京,2012(ガイドライン)

CQ33
治療後の経過観察として推奨される間隔は?

推奨グレードC1
標準的な経過観察間隔の目安を以下に示す。

1〜2 年目 :1〜3 カ月ごと
3 年目 :3〜6 カ月ごと
4〜5 年目 :6 カ月ごと
6 年目以降 :1 年ごと

目的

再発と治療に伴う合併症を早期に発見するための適切な経過観察間隔について検討する。

解説

2013 年に発表されたCochrane systematic review にも記載がある通り 1),治療後の経過観察の効果などに関するランダム化比較試験(randomized controlled trial;RCT)は検索されない。エビデンスとしては,経過観察方法ごとの有用性と有害性は不明であり,各学会がそれぞれの推奨を提案している。

NCCN ガイドライン2016 年版では,治療終了後の経過観察の間隔として,2 年目までは3〜6 カ月ごと,3〜5 年目は6 カ月ごと,その後は年1 回を推奨している 2)。一方,Society of Gynecologic Oncology(SGO)では,初期癌で外科的治療された症例では2 年間は6 カ月ごと,その後は年1 回,また,進行期が進んだもので,手術に加えて化学療法や放射線治療を行った症例では,2 年間は3 カ月ごと,その後3 年間は6 カ月ごと,その後は年1 回を推奨している 3)。本ガイドラインでは従来,本邦において標準的に行われてきたと考えられている観察間隔を示した。

このような定期的な経過観察により予後を改善できるかどうかはまだ明らかではないが,定期検診の副次的効用として患者への精神的支援を与えやすいという点がある。すなわち,異常がないことを確認することにより患者が受けるポジティブな心理的側面も十分に認識する必要がある。また,欧米においてはコストという観点も判断理由に含まれていることも注意が必要である。

観察年数については,89〜99%が5 年以内の再発であるものの,5 年以降の再発も認められる 4)ので長期間の観察が必要である。さらに,子宮頸癌の治療後5 年 5)あるいはより長期の間,治療に伴う合併症によりQOL が損なわれる場合がある 6, 7)ことからも,長期間の観察が必要である。

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CQ34
治療後の経過観察において留意すべき項目は?

推奨グレードC1
  1. 触診・内診・直腸診,細胞診,血液・生化学検査,腫瘍マーカーや,画像検査などを適宜行うことを考慮する。
推奨グレードC1
  1. 手術療法や放射線治療,化学療法に伴う合併症の発生も考慮する。

目的

再発の早期発見,治療に伴う合併症の早期発見に役立つ検査項目について検討する。

解説

治療後の定期的な経過観察時の検査項目には,診察(内診・直腸診を含め),細胞診,胸部単純X 線検査,血液・生化学検査などが適宜行われる。子宮頸癌再発の大半が骨盤内であることから,内診および直腸診が最も有効な再発検出方法である 1-3)。CT,MRI,骨シンチグラム,ガリウムシンチグラムなどはすべて再発を疑ったときの精査として行われるべきで,ルーチンの検査には適切ではない 4)という意見もある。PET/CT についても,系統的レビューとメタアナリシスにおいて,CT で発見されない場合には有効ではあるものの,限界があるとされており,有用性は高くないとされている 5, 6)。同様に,再発の早期発見という点で腟断端細胞診(放射線治療後の子宮頸部細胞診)の有用性に関しては疑問視するデータが海外から出されている 1, 2)。NCCN ガイドライン2016 年版では,細胞診による再発発見の効果は限られているとしながら,年に1 回の細胞診を推奨している。画像検査については,同時化学放射線療法(concurrent chemoradiotherapy;CCRT)後の3〜6 カ月のPET/CT は局所再発の無症候再発の発見に有用であるとしているが,他の画像検査(胸部単純X 線検査,CT,MRI やそれに続くPET/CT など)は再発を疑った時以外の定期的な施行は推奨しないとしている 4)。一方,Society of Gynecologic Oncology(SGO)では,年に1 回の細胞診は奨めているものの,定期的な画像検査については,十分なエビデンスはないとしている 3)。しかし,その有用性に関してまだ十分に検討されていないが,本邦を含めて,CT や胸部単純X 線検査などの画像検査や細胞診がルーチン検査として一般的に行われているのが現状と言える 2)

腫瘍マーカーとしては,SCC 抗原,CA125 やCEA などが代表的であるが,術前の検査値や再発の危険性,治療終了後の期間などを考慮して個別に検査する 7)。SCC 抗原の測定は再発の早期発見には重要な検査として実施されているが 8, 9),予後の改善には寄与しないと考えられてきた 7, 10)。また,子宮頸部腺癌においてはCA125 やCEA が有用という文献もあるが 7),予後の改善効果についてはまだ十分に検討されていない。

治療に伴う合併症については,リンパ浮腫,排尿・排便障害,放射線性腸炎,放射線性膀胱炎,腟壁の癒着・閉鎖,性交障害,外科的閉経に伴う卵巣欠落症状,脂質異常症,骨粗鬆症など,手術療法や放射線治療・化学療法に伴う合併症の発生にも留意する 4, 11)。また,ボディーイメージの変化や女性特有の性の喪失感に伴う心理的な影響の拾い上げと観察が必要である 12)

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CQ35
治療後のホルモン補充療法は推奨されるか?

推奨グレードC1
個々の症例において,そのメリット・デメリットを十分に説明した上で行うことを考慮する。
明日への提言

子宮頸癌の治療により外科的閉経となった若年患者にとって,ホルモン補充療法(hormone replacement therapy;HRT)を行わないデメリットが大きいことは明らかである。本CQ では,HRT が再発リスクを上昇させないというエビデンスが少ないためこのような推奨の記載をせざるを得なかった。今後,HRT が予後に及ぼす影響に関する新たなエビデンスの蓄積が必要である。

目的

治療後のホルモン補充療法がQOL 維持・向上へ与える効果と再発リスクに及ぼす影響について検討する。

解説

子宮頸癌では,他の婦人科がんと比較して罹患年齢が若いため,治療によって外科的閉経となる場合が少なくない。このため,エストロゲンレベルの低下によるQOL 阻害への対応が必要となる症例が多いと考えられる。一方,エストロゲンレベルの低下による諸症状・疾患に対してHRT が有用であることはよく知られており 1),婦人科がん治療後についても同様に有用性が高いことが報告されている 2)

正常の子宮頸部の上皮にはエストロゲン受容体(estrogen receptor;ER)が発現しているが 3),癌化に伴いその発現は低下する 4)。また,HRT はヒトパピローマウイルス(human papillomavirus;HPV)への感染や複製には関係ないという報告もあり 5),子宮頸部の扁平上皮癌はエストロゲン反応性の悪性腫瘍ではないと考えられている 6)。したがって,子宮頸癌において多数を占める扁平上皮癌の治療後の再発リスクにHRT が影響を与えないと考えられている 6, 7)。一方,健常女性における子宮頸部腺癌の発症リスクに関して,エストロゲン単独療法(estrogen therapy;ET)によりリスクの有意な上昇が認められたケースコントロール研究の報告 8)があり,子宮頸部腺癌がエストロゲン反応性である可能性は否定されてはいない。エストロゲン+黄体ホルモン併用療法(estrogen-progestogen therapy;EPT)については子宮頸癌発症リスクの有意な上昇は認められていないというRCT の報告があるが 9),一般統計から予測されるデータと比較した比である標準化罹患比(standardized incidence ratio;SIR)が有意に上昇したという報告もあり 10),エストロゲンの子宮頸部腺癌の発症への影響については,子宮内膜癌と同様に考えるべきであるという意見もある 7)

治療後のHRT による再発リスクの検討については,これまで組織型別の検討はなされてはいないが,臨床進行期Ⅰ・Ⅱ期の子宮頸癌の治療後における再発率がHRT 群で20%,対象群で32%と有意差がなかったというRCT の報告がある 11)。この報告以降の文献検索においては,現在までのところ子宮頸癌治療後のHRT が再発リスクを上昇させるという報告はなく,子宮頸部腺癌治療後についても同様である 12)。また,経腟投与のエストロゲンについても子宮頸癌の予後に影響を与えるというエビデンスはない 6)

欧米では婦人科がんの治療後にHRT を奨めており 13),スウェーデンでは子宮頸癌治療後の卵巣欠落症状に対して全体で67%,40 歳未満では79%にHRT の処方歴があったと報告されている 14)

以上のことから,治療の選択肢の一つとして提示することは少なくとも必要であると考えられる。実際の施行にあたっては,『ホルモン補充療法ガイドライン2012 年度版』1)に従って施行することが望ましい。なお,放射線治療や化学療法後など子宮が摘出されていない場合には子宮内膜がエストロゲンに反応する可能性があるため,EPT が奨められている 6)

参考文献

1)
日本産科婦人科学会,日本女性医学学会 編.ホルモン補充療法ガイドライン2012 年度版.日本産科婦人科学会,東京,2012(ガイドライン)【委】
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Everhov ÅH, Nyberg T, Bergmark K, Citarella A, Rådestad AF, Hirschberg AL, et al. Hormone therapy after uterine cervical cancer treatment:a Swedish population-based study. Menopause 2015;22:633-9(レベルⅢ)【検】