治療ガイドライン

第2章 初回治療(特殊組織型を含む)

総説

子宮体癌は子宮頸癌に比べ放射線感受性が低いことや,卵巣癌ほど化学療法の効果が高くないことなどから,外科手術が治療法の第一選択で,FIGO(International Federation of Gynecology and Obstetrics)も1988 年から手術進行期分類を採用してきた。本章では術前にⅠ・Ⅱ期と考えられる症例に対する初回治療を中心に解説する。

Ⅰ 子宮摘出術式

子宮体癌の摘出術式を論ずる場合には,①各術式の内容自体に対する施設間差と,②各術式を適応とする症例選択の施設間差を考慮する必要がある。①に関して,本邦の広汎子宮全摘出術はかなり一致した術式で行われているが,拡大単純子宮全摘出術や準広汎子宮全摘出術などの術式は施設間で切除範囲や手技に差があると推測される。加えて,海外からの報告を参考にする場合には,本邦との術式の違いについて考慮する必要がある。欧米では子宮全摘出術をⅠ型からⅤ型に分類することが多い1)が,名称上は同じ術式であっても切除範囲や手技が本邦と異なることがあり,海外のエビデンスをそのまま国内に当てはめることには慎重でなければならない。②に関しては,2005 年に行った婦人科悪性腫瘍研究機構(Japan Gynecologic Oncology Group;JGOG)の調査研究2)で子宮体癌に対する各施設での基本術式を調査したところ,「単純子宮全摘出術を行う」,「拡大単純子宮全摘出術を行う」および「術前の推定進行期により術式を変更する」と答えた施設が,それぞれほぼ1/3 ずつであった。約70%の施設は「子宮体癌に対しては広汎子宮全摘出術を施行しない」と答えた。このように国内でも,どのような症例にどの術式を選択するかに関する施設間差は大きい。

子宮体癌Ⅰ期の再発のリスク因子としては,年齢,筋層浸潤の深さ,脈管侵襲,腫瘍サイズ,子宮頸部間質浸潤34)などがあるが,術前にⅠ期と考えられる症例に対する子宮の摘出術式は,国内外とも筋膜外単純子宮全摘出術が標準とされているのが現状で(CQ01),開腹術式に加えて術後のquality of life(QOL)が良好な鏡視下手術の適用も広まりつつある5)CQ12)。傍大動脈リンパ節の郭清(生検)を必要としない再発低リスクの術前推定Ⅰ期症例を対象に,本邦でも2014 年4 月に腹腔鏡下子宮悪性腫瘍手術が,2018 年4 月にロボット支援下子宮悪性腫瘍手術が保険適用となった。今後は腹腔鏡あるいはロボットによる鏡視下手術6, 7)が急速に増えてくると思われる(CQ12)。

術前にⅡ期と推定される症例の子宮の摘出術式に関しては,術後進行期との不一致例が少なからずあること8)に留意する必要がある(CQ02)。また,推定Ⅱ期症例が子宮傍(結合)組織浸潤を有する率は比較的低く9),子宮傍(結合)組織の十分な切除を特徴とする広汎子宮全摘出術の適用に関しては最近,否定的な報告もある9, 10)。以上から,術前推定Ⅱ期の子宮摘出術式としては準広汎子宮全摘出術を中心として,広汎子宮全摘出術に加え,筋膜外単純子宮全摘出術,拡大単純子宮全摘出術も考慮される(CQ02)。術前推定Ⅱ期に対する鏡視下手術に関してはまだ報告が少ないため,開腹手術と同等の根治性が証明されておらず,今後の検討が待たれる(GOG・LAP2 試験:NCT00002706)11)

Ⅱ リンパ節郭清

子宮体癌の正確な進行期決定のためには後腹膜リンパ節郭清(生検)が必要であるが,その範囲に関して統一した見解は得られていない。米国での婦人科腫瘍専門医に対するアンケート調査12)では,後腹膜リンパ節郭清を施行する割合は69%と推測され,65%の医師がリンパ節郭清は治療的意義があると判断していた。また45%が自分の手技を完全なリンパ節郭清と考えていたが,31%は傍大動脈リンパ節の生検を行っていなかった。欧州では多くの症例でのリンパ節の検索は視診と触診によってなされており13),スコットランドではそのことが患者の予後不良の原因の一つと報告された14)。本邦では前述のJGOG 調査研究2)で,骨盤リンパ節郭清はほぼ全施設で施行されていたが,全例に傍大動脈リンパ節郭清(生検)を施行する施設は13%であり,大多数の施設は条件付きで郭清(生検)を行っていた。このように骨盤リンパ節郭清が比較的行われる本邦においても,傍大動脈リンパ節郭清を併用するか否かに関しては施設間差が大きく,骨盤リンパ節(CQ03)や傍大動脈リンパ節(CQ04)の郭清を省略しうる対象を確立していくためには,リンパ節郭清の範囲や程度に関する施設間差を少なくした臨床試験を行っていく必要があると思われる。

リンパ節郭清の治療的意義に関しても未だ明確でない。米国国立がん研究所(National Cancer Institute;NCI)の多数登録例の解析では,再発中・高リスク群の子宮体癌の場合,郭清されたリンパ節の個数が予後の改善に寄与すると報告された15)が,イタリアと英国のグループによるランダム化比較試験(randomized controlled trial;RCT)では,骨盤リンパ節郭清は全生存期間や無再発生存期間の延長に寄与しないと報告された(ASTEC 試験:NCT00003749, PTC-CBM-15 試験:NCT00482300)16, 17)。ただし,後者の試験は再発低リスク症例を多く含んでおり,このような症例ではリンパ節郭清が省略可能であることを示唆したのかもしれない(CQ03)。一方,最近の本邦における比較的大規模な後方視的検討では,再発中・高リスク症例では傍大動脈リンパ節郭清の追加が予後改善に貢献するとしている18)CQ04)。これを検証するために現在,リンパ節郭清法を多施設間で統一した上で骨盤リンパ節郭清に傍大動脈リンパ節郭清を加えることの意義を検証するランダム化第Ⅲ相試験(JCOG1412 試験)が行われている(CQ04)。このように子宮体癌に対するリンパ節郭清(生検)の意義や方法,範囲については世界的なコンセンサスが得られにくい状況にあり,国内でも議論が尽きない段階である。

Ⅲ 病理組織型

近年,子宮体癌は臨床病理学的,分子病理学的観点からⅠ型とⅡ型に区別されるようになった19)。Ⅰ型はエストロゲン依存性の腫瘍で,類内膜癌と粘液性癌を含むのに対して,Ⅱ型は漿液性癌や明細胞癌に代表されるエストロゲン非依存性の特殊組織型腫瘍で,主に閉経後の高齢者の萎縮内膜を背景にde novo に発生する19)。日本婦人科腫瘍学会ガイドライン検証委員会が2017 年に報告した国内症例の解析によると,特殊組織型の頻度は子宮体癌の10%以上を占め,漿液性癌が4.0%,明細胞癌が2.3%と,いずれも増加傾向を示している20)。G3 の類内膜癌と漿液性癌,明細胞癌はともに悪性度が高く予後不良であるため,同様に扱われる傾向にある。日本産科婦人科学会による報告では,全体の5 年生存率がG1 およびG2 の類内膜癌では95%,90%と良好であるのに対して,G3 では77%,漿液性癌および明細胞癌で60〜65%21)と不良である。

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CQ01
術前にⅠ期と考えられる症例に対する子宮摘出術式は?

推奨グレードB
  1. 単純子宮全摘出術あるいは拡大単純子宮全摘出術(筋膜外術式)を奨める。
推奨グレードC1
  1. 準広汎子宮全摘出術も提案できる。

アルゴリズム(フローチャート1)参照

目的

術前に病変が子宮体部に限局したⅠ期と考えられる症例に対する子宮摘出術式を検討する。

解説

術前推定Ⅰ期症例に対する子宮摘出術式に関しては,筋膜外単純子宮全摘出術が基本とされているのが現状である。子宮体癌における広汎子宮全摘出術の意義を検討したレビューでは,単純子宮全摘出術でも予後は良好なので,侵襲の大きい広汎子宮全摘出術は不要であると結論付けられている1)。実際に単純子宮全摘出術+両側付属器摘出術を施行した術前推定Ⅰ期の5 年生存率は90%をこえることが報告されている2, 3)。筋膜外単純子宮全摘出術を推奨する根拠として,2009 年のILIADE study がある。術前推定Ⅰ期の子宮体癌520 例に対するPiver-Rutledge class Ⅰ(筋膜外術式の単純子宮全摘出術に相当すると考えられる)とclass Ⅱ(拡大単純あるいは準広汎子宮全摘出術に相当すると考えられる)を比較したRCT の報告では,両群間に全生存率や無病生存率の差はなく,再発率も同等であったことから,術式拡大による治療成績の改善はないとしている。しかし,この臨床試験の単純子宮全摘出術は腟壁を中央値で15 mm,子宮傍(結合)組織を中央値で5 mm 切除しているため,本邦の拡大単純または準広汎に相当する可能性がある4)

これら開腹術の報告に対し,海外のLAP2 試験など腹腔鏡下手術と開腹手術との大規模RCT や,ロボット支援下手術の系統的レビューからは,開腹手術と比較し鏡視下手術における入院期間短縮・術中出血量の減少が報告されている5-8)(LAP2 試験:NCT00002706,LACE 試験:NCT00096408)。これらより海外では早期子宮体癌に対する鏡視下筋膜外単純子宮全摘出術が推奨されている。本邦でも2014 年4 月に早期子宮体癌に対する腹腔鏡下子宮悪性腫瘍手術(K-879-2)が保険収載され,術前推定ⅠA 期の類内膜癌(G1 またはG2)を腹腔鏡下で手術する施設が増加している。これら鏡視下手術に関する詳細はCQ12 を参照されたい。

手術に際しては,術前に推定Ⅰ期と診断しても術後進行期分類は15〜20%の頻度で一致しないことを念頭に置かなければならない。術前推定Ⅰ期症例の3.6%に,術後病理組織診断で子宮傍(結合)組織浸潤が認められたとの報告もあるが9),術前推定Ⅰ期(101 例)の術後再発率を検討した研究では10),単純子宮全摘出術(66 例)vs. 拡大・準広汎子宮全摘出術(35 例)後の再発率はそれぞれ,9.1% vs. 2.9%で有意差はなかった。この研究では再発率や無病生存率は拡大・準広汎子宮全摘出術で改善する傾向がみられたが,症例数が少ないため統計学的有意差がなかったのではと考察している。手術進行期Ⅰ期277 例の後方視的検討において,筋層浸潤が浅い症例の場合は単純子宮全摘出術(87 例)に対する準広汎(95 例)・広汎子宮全摘出術(95 例)の予後向上を認めなかったが,筋層浸潤1/2 以上・大きい腫瘍サイズの症例の場合は準広汎子宮全摘出術が単純子宮全摘出術よりも予後を向上させると報告している11)。このように再発中・高リスク群(図1)と術前に推定される症例では,術式拡大により予後が向上する可能性があるものの,未だ十分な根拠となる臨床試験は行われていない。最近の本邦からの報告では,早期子宮体癌Ⅰ/Ⅱ期247 例に対する準広汎子宮全摘出術(201 例)の必要性を後方視的に調査し,単純子宮全摘出術(46 例)と比較すると,全生存率と無病生存率には有意差がなく,手術時間の延長,輸血のリスクおよび合併症・リンパ浮腫が有意に増加したと結論付けている12)。Ⅰb〜Ⅱ期(FIGO 1988 分類)192 例(Ⅰb 期159 例)に対してPiver-Rutledge class Ⅰ(143 例)とclass Ⅱ(46 例)切除後の両群間の腟壁再発率・全生存率・無病生存率を比較した海外の報告13)でも差はなかった。

子宮体癌Ⅰ期の再発リスク因子としては,年齢,筋層浸潤の深さ,脈管侵襲,腫瘍サイズ,子宮頸部間質浸潤14-16)などがある。以上述べてきたように,リスク因子を有する術前推定Ⅰ期に対しては,腟壁部分切除を含めた拡大単純あるいは準広汎子宮全摘出術も選択肢にはなるが,原則として筋膜外単純子宮全摘出術が推奨されるであろう。

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CQ02
術前にⅡ期と考えられる症例に対する子宮摘出術式は?

推奨グレードC1
準広汎子宮全摘出術あるいは広汎子宮全摘出術を提案する。

アルゴリズム(フローチャート1)参照


明日への提言

術前推定Ⅱ期症例に対する子宮摘出術式に関する質の高いエビデンスはなく,後方視的研究のみである。単純子宮全摘出術(筋膜外術式)または拡大単純子宮全摘出術も考慮されうるが,Ⅱ期に対して単純子宮全摘出術を行う海外の施設は,術後に放射線治療を追加することを推奨している。術後放射線治療が0.1%1)の本邦において,広汎,準広汎,拡大単純,筋膜外単純という4 つの子宮摘出法のいずれに優位性があるのか,前方視的研究が今後必要である。


目的

臨床的に病変が子宮頸部間質に浸潤するⅡ期と考えられる症例に対する子宮摘出術式を検討する。

解説

子宮頸部間質浸潤は子宮体癌の予後不良因子の一つとして知られている。手術進行期Ⅱ期を対象にした後方視的研究では,初回治療として単純子宮全摘出術に放射線治療を追加するか,準広汎あるいは広汎子宮全摘出術を行うことを推奨する報告が多い2-8)。その理由の一つに,単純子宮全摘出術と比較して,準広汎あるいは広汎子宮全摘出術の方が有意に無病生存期間を延長する可能性が挙げられている。また,これらの多くは放射線治療を併用しているが,骨盤リンパ節転移のない手術進行期Ⅱ期では広汎子宮全摘出術なら放射線治療を追加しなくても十分であるとし,広汎子宮全摘出術の意義を強調する報告もある3, 4)。一方で,手術進行期Ⅱ期は子宮頸部間質浸潤の程度にかかわらず予後不良であることから,広汎子宮全摘出術による「予後改善は得られない」,「無病生存期間,再発率に差がない」とする報告6, 9)もあり,以前から,術前推定Ⅱ期症例に対する広汎子宮全摘出術に関しては真の有用性があるかが問われていた。

2013 年頃から,術前推定Ⅱ期の子宮体癌に対して,子宮摘出法による予後の差はないとする報告が増えてきた10, 11)。術前推定Ⅱ期症例に対する広汎子宮全摘出術の有用性を後方視的に検討した本邦の報告(GOTIC-005 試験)10)では,1995〜2009 年の7 施設における300 例に関して,広汎子宮全摘出術が74 例,準広汎子宮全摘出術が112 例,単純子宮全摘出術が114 例に施行されていた。追跡期間47 カ月で局所再発までの期間,無病生存および全生存率はすべての群において有意差はなく,広汎子宮全摘出術は合併症のリスクが増加するデメリットのみで,施行する有用性はないと結論付けている10)。同様にⅠ型のⅡ期子宮体癌(FIGO 1988分類)に対して,SEER(Surveillance, Epidemiology, and End Results)を用いて1998〜2012 年の広汎子宮全摘出術(273 例)vs. 単純子宮全摘出術(546 例)を検討した報告11)では,cancer-related survival rate(がん関連生存率)および全生存率に有意差はなかった。術後放射線治療がそれぞれ65%と54%に施行されていたが,population matching 法を用いた3 年生存率においても有意差を認めず,広汎子宮全摘出術に有用性はないとしている11)

一方で術前推定Ⅱ期の術式を決定する場合,手術進行期との不一致も大きな問題である。術前には子宮頸部の生検に加えてMRI が推奨されるが,頸部間質浸潤に関するMRI の正診率は感度69%,特異度96%,陽性的中率69%,陰性的中率95%で,特異度と陰性的中率に関して有用とした報告がある12)。また,他の300 例のMRI の報告では78%の感度であった10)。別の報告では,術前推定Ⅱ期の148 例中,摘出子宮頸部に病理組織学的に浸潤があったのは66 例(45%)のみで,そのうち31 例は子宮外病変も認めたため,結局,手術進行期もⅡ期であったのは35 例(24%)に過ぎなかった13)。さらに考慮を要するのは子宮傍(結合)組織浸潤の問題である。手術進行期(FIGO 1988 分類)別の検討で,子宮傍(結合)組織浸潤の頻度はⅠ期で0〜4%,Ⅱ期で6〜14%,Ⅲ期で17〜53%と報告されている10, 14-16)。つまり,手術進行期Ⅱ期の子宮傍(結合)組織浸潤の頻度はそう高くはないものの,10%前後に子宮傍(結合)組織浸潤が認められるため,広汎子宮全摘出術も考慮されうる。

海外では子宮体癌の術後放射線治療が一般的で,手術進行期Ⅱ期に関しても腔内小線源治療±全骨盤照射を推奨している17)。本邦においては術後放射線治療を選択する施設が少なく,術前に子宮頸部間質浸潤が強く示唆される症例には準広汎あるいは広汎子宮全摘出術を選択し,術後化学療法の追加を検討する施設が多い。日本産科婦人科学会による報告では,子宮体癌症例10,119 例中,Ⅱ期の578 例(5.7%)に対して術後放射線治療を選択したのはわずか12 例(0.1%)1)であった。

以上のように,手術様式を検討した質の高いエビデンスはなく,術前に頸部間質浸潤が疑われる症例には,従来通り準広汎または広汎子宮全摘出術の施行が検討される。しかしながら,術前推定Ⅱ期症例における子宮頸部浸潤と子宮傍(結合)組織浸潤の術前診断の不確実性と,子宮摘出の術式は予後に影響がないとする最近の報告の多さから,筋膜外単純子宮全摘出術あるいは拡大単純子宮全摘出術も選択肢の一つとして考慮されるかもしれない。腹腔鏡下手術に関してはまだ症例数が少ないため,術前推定Ⅱ期に対する腹腔鏡下手術が開腹手術と同等の有効性・安全性を有するかについてはまだ証明されておらず(LAP2 試験:NCT00002706)18),今後の検討が待たれる。

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CQ03
骨盤リンパ節郭清の意義と適応は?

推奨グレードA
  1. 正確な手術進行期決定に必要である。
推奨グレードC1
  1. 再発中・高リスク群と推定される症例では郭清を提案する。
推奨グレードC1
  1. 再発低リスク群と推定される症例の一部では郭清の省略を考慮する。

アルゴリズム(フローチャート1)参照

目的

骨盤リンパ節郭清の診断・治療上の意義と適応について検討する。

解説

骨盤リンパ節郭清は正確な手術進行期の決定と術後療法の要否を決定するために考慮すべきである。骨盤リンパ節転移の頻度は筋層浸潤の深さと組織学的異型度(Grade)で異なり,GOG33 試験は筋層浸潤2/3 未満のG1 とG2 では4%,G3 では7%,筋層浸潤2/3 以上のG1 とG2 では17%,G3 では34%と報告している1)。腫瘍の大きさも重要なリンパ節転移のリスク因子で,2 cm 以上の腫瘍径で15%,2 cm 未満で4〜7%,子宮腔内全体を占める腫瘍で35%のリンパ節転移を認めたと報告されている2, 3)。子宮頸部浸潤があると15%のリンパ節転移を認め3, 4),付属器転移があると32%の骨盤リンパ節転移を認めたとの報告もある4)

一方,G1 かG2 で筋層浸潤1/2 未満かつ腫瘍径が2 cm 以下の例や2),筋層浸潤のない例では1〜2%にしかリンパ節転移はなかったとの報告があり5, 6),このような症例には,骨盤リンパ節郭清を省略することが可能と推定されている。骨盤リンパ節郭清を省略するためには,リンパ節転移リスクの少ない症例を確実に術前診断するシステムの確立が望まれる。近年,リンパ節転移低リスク群を抽出するための術前評価に関して,MRI 所見(筋層浸潤,頸部浸潤,リンパ節腫大,子宮外病変,volume index),CA125,組織学的異型度/組織型の組み合わせが有用であるとの報告が散見される7-10)。今後はこのような術前評価システムを用いてリンパ節転移の低リスク群を的確に抽出することで,リンパ節郭清を省略できると考えられる。また,本邦においても検討が進められているセンチネルリンパ節生検を日常臨床に導入することで,系統的な骨盤リンパ節郭清が省略可能な症例を的確に抽出することも今後期待される。

骨盤リンパ節郭清の治療上の意義に関しては,未だ明確ではない。リンパ節を摘出することによって良好な生存成績が得られたとする多くの報告が過去にあるが,いずれもRCT ではない。手術進行期Ⅰ期9,185 例,Ⅱ期881 例を対象に骨盤リンパ節郭清の意義について検討した報告は,Ⅰ期類内膜癌G3 ではリンパ節郭清が5 年生存率を有意に改善したとしている11)。腫大リンパ節がある場合にリンパ節郭清を行うと,明らかに予後の改善を認めたとする報告もある12)。類内膜癌G1 で筋層浸潤がないか1/2 未満の群に関してはリンパ節郭清の予後改善効果は認められなかったが,筋層浸潤1/2 未満でもG3 の場合や,筋層浸潤1/2 以上またはⅡ期以上の場合(どの組織学的異型度でも)には,リンパ節郭清範囲の拡大が予後を改善するとの報告もある13)。2008 年以降,海外の2 つのグループから骨盤リンパ節郭清の有無に関するRCT の結果が報告された(ASTEC 試験:NCT00003749, PTC-CBM-15 試験:NCT00482300)14, 15)が,低リスク群のリンパ節郭清の治療的意義は見出せなかった。一方,本邦からは,系統的な骨盤リンパ節郭清と傍大動脈リンパ節郭清を行うことで,リンパ節転移の状態に応じた術後化学療法・放射線治療が可能となり,リンパ節転移例の生存率を改善したとの報告がある16)

摘出リンパ節数については,手術進行期Ⅰ・Ⅱ期の類内膜癌G3,明細胞癌や漿液性癌では郭清したリンパ節の個数が重要な予後因子になるとする報告17)や,術前にⅠ期と推定されるか,顕微鏡的頸部間質浸潤を有する症例では,骨盤リンパ節を12 個以上摘出することによって生存率と無増悪生存率を有意に改善できたとし,特に再発高リスク群(筋層浸潤1/2 超,類内膜癌G3,漿液性癌,明細胞癌)において骨盤リンパ節郭清の治療的意義を強調する報告がある18)。最近のSEER データの解析でも,明細胞癌では郭清しない場合に比べると,1〜10 個,11 個以上のリンパ節摘出を行う方が死亡リスクをそれぞれ32%,47%低下させることが示された19)

Cochrane Library のメタアナリシス20)では,骨盤リンパ節郭清について診断的意義は確立しているが,全生存期間と無再発生存期間の延長に寄与するという確証はなく,治療的意義は確立していないとされている。しかし,本邦における子宮体がん治療ガイドラインの検証論文21)によると,再発低リスク群のみならず中・高リスク群においても郭清を省略している症例の割合が本邦で増加しており,安易に骨盤リンパ節郭清を省略している施設の増加が示唆された。リンパ節転移の高リスク症例を確実に術前診断するシステムがない現状では,追加治療が必要な症例を適切に選別する意味でも,明らかにリンパ節転移の低リスク群と術前診断できない場合は,骨盤リンパ節郭清を行うべきであろう。

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CQ04
傍大動脈リンパ節郭清(生検)の意義と適応は?

推奨グレードA
  1. 正確な手術進行期決定に必要である。
推奨グレードC1
  1. 再発中・高リスク群と推定される症例では郭清(生検)を提案する。
推奨グレードC1
  1. 再発低リスク群と推定される症例では郭清(生検)の省略を提案する。

アルゴリズム(フローチャート1)参照

目的

傍大動脈リンパ節郭清(生検)の診断・治療上の意義と適応について検討する。

解説

傍大動脈リンパ節転移は予後を左右する重要な因子であるため1),傍大動脈リンパ節郭清(生検)により正確な手術進行期を決定の上,追加治療の方針を決定することは重要であると考えられる。

米国における281 例(類内膜癌で筋層浸潤なし,G1 またはG2 で筋層浸潤1/2 以下,腫瘍径2 cm 以下を満たす低リスク群を含まない)の検討では,類内膜癌の16%,特殊組織型(82 例)の40%にリンパ節転移を認めた2)。これら転移陽性例の62%(全体の14%)に傍大動脈リンパ節転移がみられ,骨盤および傍大動脈リンパ節の両方に転移のあったものが46%(全体の10%),傍大動脈リンパ節にのみ転移がみられたものは16%(全体の4%)であった。この検討のように,多くの傍大動脈リンパ節転移は骨盤リンパ節転移を伴っているとする報告が多く,骨盤リンパ節転移高リスク群は同時に傍大動脈リンパ節転移高リスク群でもある。最近では,2 個以上の骨盤リンパ節転移陽性を傍大動脈リンパ節転移陽性のリスク因子とする報告がある3)。一方,郭清した骨盤リンパ節に転移がなく腹腔細胞診が陰性であれば,傍大動脈リンパ節郭清は必要ないとする報告4)もある。しかし,傍大動脈リンパ節への単独転移は少ないながらも2〜4%はあるため5),骨盤リンパ節に転移がない場合に傍大動脈リンパ節郭清を省略できるかについては,未だコンセンサスが得られていない。

傍大動脈リンパ節転移のリスク因子に関しては,上記の骨盤リンパ節転移4, 6, 7)をはじめとして筋層浸潤1/2 以上で10〜33%5, 6, 8),子宮頸部浸潤陽性で18〜24%6-8),腹腔細胞診陽性で20〜30%8, 9),組織学的異型度G3 で15〜50%5, 6, 8, 10),リンパ管侵襲陽性で17〜32%6-8)に転移がみられ,それぞれ重要な因子とされた。骨盤リンパ節転移の独立したリスク因子は血清CA125 値とvolume index であり,これらと1/2 以上の筋層浸潤とG3,漿液性癌を再発リスク因子とした場合,再発リスク因子のない症例では傍大動脈リンパ節郭清は不要との意見もある10)。以上の傍大動脈リンパ節転移のリスク因子から考えると,骨盤リンパ節郭清を省略し得る群(CQ03)と同様に,類内膜癌G1 またはG2 で,頸部間質浸潤を伴わない筋層浸潤1/2 未満,術前画像検査や術中の観察で細胞診を含めた子宮外病変を認めない症例では,傍大動脈リンパ節郭清(生検)を省略することは可能かもしれない。

傍大動脈リンパ節転移のあった例のうち77%が下腸間膜動脈レベルより上(腎静脈下)に存在し,46%の例では下腸間膜動脈より下には転移がなかったとの報告をもとに2),傍大動脈リンパ節郭清を施行すると決断した場合は腎静脈下まで行うべきとする論文が散見される3, 11, 12)

現在まで傍大動脈リンパ節郭清(生検)の治療的意義に関して,RCT によるエビデンスは得られていない。12 個以上の骨盤リンパ節の摘出は早期癌の予後を改善するとしながらも,傍大動脈リンパ節郭清を施行することと予後とは関係しなかったとする報告もある13)CQ03 で骨盤リンパ節郭清が不要であると結論付けている論文では,当然,傍大動脈リンパ節郭清(生検)も不要としている。海外の2 つのグループからのリンパ節郭清(生検)の有無に関するRCT(ASTEC 試験:NCT00003749, PTC-CBM-15 試験:NCT00482300)14, 15)では,傍大動脈リンパ節郭清(生検)も行われているがその症例数は少なく,傍大動脈リンパ節郭清(生検)の治療的意義に関して独立した解析はなされていない。再発低リスク群の子宮体癌におけるリンパ節郭清の治療的意義は少ないという結論から,この群では骨盤リンパ節はもとより,傍大動脈リンパ節の郭清(生検)の治療的意義も少ないと考えられる。一方,最近の671 症例に対する比較的大規模な後方視的検討(SEPAL study)では,再発中・高リスク群では傍大動脈リンパ節郭清の追加が予後改善に貢献するとしている16)。別の1,502 例における後方視的検討は,再発高リスク群では傍大動脈リンパ節郭清の追加が予後改善に寄与するが,再発中リスク群では予後改善にはつながらないと報告している17)

以上のことをCQ03 の解説と併せて考えると,再発低リスク群では傍大動脈リンパ節郭清そのものが省略可能であるが,術前に再発リスクが高いと評価された症例は,系統的に傍大動脈リンパ節までの郭清(生検)を考慮すべきであろう。この場合,術前に筋層浸潤,病理組織学的診断,子宮外病変の存在などの再発リスクを正しく評価する診断システムの開発も不可欠である。現在まで,術前にリンパ節転移リスクを評価するための予測モデル10, 18, 19)が報告されているが(CQ03),未だ標準的な方法は確立していない。傍大動脈リンパ節郭清(生検)の治療的意義に関しては,SEPAL study 16)の結果に基づき日本臨床腫瘍研究グループ(Japan Clinical Oncology Group;JCOG)の婦人科腫瘍グループで登録が開始された第Ⅲ相試験(JCOG1412, SEPAL-P3 試験:UMIN000025399)20)で検証されることが期待される(付記)。

付記
リンパ節転移リスクを有する子宮体癌に対する傍大動脈リンパ節郭清の治療的意義に関するランダム化第Ⅲ相試験(JCOG1412 試験)20)

SEPAL study 16)の結果をもとにJCOG 婦人科腫瘍グループにおいてリンパ節転移リスクを有する子宮体癌に対して,骨盤リンパ節郭清のみに比べて骨盤および傍大動脈リンパ節郭清を行うことの優越性を検証するランダム化第Ⅲ相試験(JCOG1412 試験)の登録が2016 年12 月より開始された。術前の画像診断(CT,MRI)でⅠB 期からⅢC1 期(複数部位のリンパ節腫大例を除く)と推定される患者を対象に,骨盤リンパ節郭清のみを行う群と骨盤+傍大動脈リンパ節郭清を行う群のどちらかにランダム割付される。術後再発リスク分類を行い,再発低リスク群では追加治療なし,再発中・高リスク群では化学療法(TC 療法)を6 サイクル行い,終了後は再発まで無治療で経過観察する。primary endpoint は全生存期間である。リンパ節郭清の質を保証するため,術者規定(婦人科腫瘍専門医が責任医師として参加必須)を設け,すべての所属リンパ節郭清を必須とし,摘出リンパ節個数の下限の設定とともに手術終了時に撮影した郭清領域の写真提出を義務付けている。

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CQ05
大網切除術の適応は?

推奨グレードA
  1. 正確な手術進行期決定のために全例,慎重な大網の術中検索を行う。
推奨グレードA
  1. 術中に大網転移が疑われる場合には大網切除術を強く奨める。
推奨グレードC1
  1. 転移が疑われなくても,特殊組織型や類内膜癌G3,深い筋層浸潤のいずれかが予想される場合,あるいは術中に子宮外病変や腹腔細胞診陽性を認める場合には大網切除術を提案する。

アルゴリズム(フローチャート1)参照

目的

大網切除術の診断的・治療的意義と適応について検討する。

解説

病理組織学的に大網転移が確認された場合は手術進行期ⅣB 期となり,術後の治療法を選択する上で重要な情報となる。このためsurgical staging における大網切除術の重要性に関しては以前より多くの報告があり,近年,比較的多数例についての解析結果も報告されている。

大網切除術を施行した類内膜癌322 例の後方視的検討の結果では,転移頻度は3%(11/322)であり,多変量解析の結果,腹腔細胞診陽性,付属器転移陽性,組織学的異型度G3 が大網転移の有意なリスク因子であったが,脈管侵襲陽性,深い筋層浸潤,リンパ節転移陽性との間には有意な関連はなかったとしている1)。同様に,大網切除術を施行した子宮体癌811 例の後方視的検討の結果では,48 例(6%)に大網転移を認めており(60%が肉眼的転移),26 例が類内膜癌であった。大網転移陽性例の中で,腹腔細胞診陽性は69%,付属器転移陽性は67%,リンパ節転移陽性は61%,頸部間質浸潤陽性は48%,漿膜浸潤陽性は29%,腹膜播種陽性は44%であった。その2 年無病生存率は28%,2 年全生存率は40%と予後不良であり,筋層浸潤,組織学的異型度,腹腔細胞診,リンパ節転移が無病生存に関連し,頸部浸潤,腹腔細胞診が全生存に関連していた2)

一方,肉眼的に大網転移を疑わないⅠ期が想定される症例において,顕微鏡的大網転移の頻度およびリスク因子を明らかにする目的で,2014 年までに発表された10 論文3-12)のメタアナリシスの結果が最近報告された13)。それによると,1,163 名中22 例(2%)に顕微鏡的大網転移を認め,すべての大網転移例に占める割合は27%であった。リンパ節転移陽性,付属器転移陽性,虫垂播種(インプラント)が顕微鏡的な大網転移と強く関連していたことから,これらのリスク因子を有する例には大網切除術が推奨されるとしている。深い筋層浸潤,腹腔細胞診陽性,類内膜癌G3 については顕微鏡的大網転移との関連は認めるものの,有意な因子とはならなかった。そのような症例に対しては個別に大網切除術の適応について検討する必要があろう。一般的に類内膜癌よりも生物学的悪性度が高い漿液性癌,明細胞癌に対して大網切除術が考慮される14, 15)一方で,画像および臨床的に大網転移を疑わない39 例の漿液性癌の症例においては,一例も大網転移を認めなかったとする報告もある16)

大網の検索方法については,肉眼的に大網に異常所見を認めない顕微鏡的転移陽性44 名の婦人科腫瘍患者(子宮体癌16 名,卵巣癌21 名,境界悪性卵巣腫瘍7 名)において,顕微鏡的転移陽性を診断するために必要な切り出し断面数について検討した結果が報告されている。その診断感度について,5 個では82%,10 個で95%であったことから,大網転移の顕微鏡的検索を行う場合には10 個以上を検索する必要があるとしている17)。したがって肉眼的腫瘤のない大網でも,顕微鏡的転移検索を行うためには十分数の組織サンプリングを行うことが重要である。

NCCN ガイドライン2017 年版14)では,臨床的Ⅰ期の漿液性癌,明細胞癌症例に対して大網切除術が推奨されており,ESMO ガイドライン2013 年版15)でも同様の推奨となっている。一方で,ESMO-ESGO-ESTRO コンセンサス・カンファレンス(2016 年報告)18)では,腹膜播種をしばしば認める漿液性癌に対しては大網切除術が推奨されるが,明細胞癌,未分化癌,癌肉腫では必ずしも推奨されないとされた(CQ07)。術前診断で類内膜癌と診断され,最終病理診断で漿液性癌と診断された52 例の検討で,大網切除術を施行した30 例のうち3例しか大網転移を認めず,大網切除術の有無で予後に有意な差異を認めなかったことから,最終病理診断で漿液性癌と判明した場合でも大網切除術を追加する意義は少ないとする報告もある19)

以上の結果をまとめると,肉眼的に大網転移を疑う場合には大網切除術を行って病理学的に確認することで,適切な補助療法を選択すべきと考えられる。肉眼的に大網転移を疑わない場合でも,肉眼的な子宮外病変(付属器転移,リンパ節転移,腹膜播種病変)の存在,術中迅速腹腔細胞診陽性,組織型が特殊組織型(漿液性癌,明細胞癌)や類内膜癌G3,深い筋層浸潤がある場合には,大網切除術を行うことが考慮されるが,大網切除術を子宮体癌のsurgical staging にルーチンに組み入れるべきかについては議論の余地があると考えられる。

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CQ06
卵巣温存は可能か?

推奨グレードA
  1. 初回治療において原則として両側付属器摘出術を行い,手術進行期を決定する。
推奨グレードC1
  1. 類内膜癌(G1 相当)で筋層浸潤の浅い若年症例では,卵巣温存に伴う危険性を十分に説明した上で温存が考慮される。

アルゴリズム(フローチャート1)参照

目的

子宮体癌症例における卵巣温存の問題点と温存の適応について検討する。

解説

卵巣を温存する場合に問題となるのは,卵巣への転移の危険性,卵巣癌重複の危険性などである。若年症例も増加しつつある今日,両側付属器摘出術後の卵巣欠落症状に加え,心血管系疾病,骨粗鬆症などの病態が若年から生じうることを鑑みると,若年症例における卵巣温存の可否は一つの大きな問題である。

術前にⅠ・Ⅱ期と推定された症例の卵巣転移率は,それぞれ5%1, 2),17〜20%3-5)と報告され,臨床的に無視できない頻度である。そのため進行期にかかわらず一般に両側付属器摘出術が選択されているが,早期癌におけるこの治療的意義を前方視的に検討した報告はみられない。術前推定Ⅱ期では卵巣転移の頻度が高いので,両側付属器摘出術が選択されるべきであろう。なお,卵巣温存が問題となる若年症例における卵巣転移については,45 歳以下と46 歳以上の2 群で差がないと報告されている6, 7)。米国SEER のデータベースを用いて,45 歳以下の手術進行期Ⅰ期子宮体癌3,269 例を後方視的に検討した報告が発表された8)。それによると,卵巣温存群と摘出群で生存率に有意差がないこと,最も予後に影響する因子は組織学的異型度と筋層浸潤であることが示された。同じくSEER データベースを用いて 40 歳以下の筋層浸潤のない類内膜癌G1 例489 例に対象を絞って解析した結果,子宮摘出時の卵巣温存の有無にかかわらず,いずれも癌関連死亡例は認められなかった9)。韓国の多施設による後方視的検討では10),卵巣を温存した子宮体癌症例175 例において,中央値55 カ月の観察期間で5 年無再発生存率は94%,5 年全生存率は93%であり,Ⅰ期の類内膜癌症例では再発を認めていない。卵巣温存は再発率上昇に関与しないと結論付け,卵巣温存の条件として,①卵巣機能温存の強い希望,②術中観察にて子宮外進展がない,③肉眼的に両側卵巣が正常である,④転移が疑われるリンパ節が迅速病理組織検査で陰性である,⑤術前の組織学的検索で類内膜癌である,⑥乳癌・卵巣癌の家族歴がない,ことを挙げている。最近,同じ韓国の後方視的研究で,同時期に閉経前で両側付属器摘出術を施行した手術進行期Ⅰ・Ⅱ期類内膜癌319 例と長期予後を比較した結果が報告され11),5 年全生存率は卵巣温存群で95%,切除群で98%であり,10 年時でもそれぞれ95%,91%であった。再発に関しては,卵巣温存群で176 例中4 例(2.3%)に再発し,うちⅠA 期1 例で18 カ月目に両側付属器再発を認めた。一方,切除群での再発率は2.5%であった。全生存率と無再発生存率のいずれも有意差はなかった。なお有意ではないものの,35 歳未満では,41 歳以上に比較して,温存群の方が全生存期間において予後良好な傾向を示していた。

子宮体癌と卵巣癌の重複の頻度については,若年症例では高いとする報告が多い9, 12)。45 歳以下の子宮体癌17 例中5 例(29%)12)に,また閉経前の子宮体癌102 例中26 例(25%)13)に卵巣腫瘍(23 例は重複卵巣癌,3 例は転移,15%は肉眼的異常なし)を認めたという報告がある。スウェーデンでの1961〜1998 年に登録されたほぼすべての子宮体癌(19,128 例)と卵巣癌(19,440 例)における検討14)では,子宮体癌と卵巣癌が強い相関を示すことが明らかにされている。特に,40 歳以下の類内膜癌では卵巣癌を合併する頻度が非常に高くなることが指摘されている。本邦では,子宮体癌における卵巣癌の重複の頻度は2〜10%と報告されている15-17)が,いずれも年齢に関する検討はなされていない。最近,韓国からの多施設後方視的調査研究18)において,少なくとも子宮全摘出術と両側付属器摘出術が施行された子宮体癌3,240 例のうち,卵巣に悪性腫瘍を認め重複癌と判定されたのは40 歳未満では4.5%,40 歳以上では3.7%であり,従来の報告よりは低頻度であると報告された。なお,子宮体癌の組織型は類内膜癌が20 例,漿液性癌が1 例で,全例が術前CA125 値40 IU/mL 以上,画像検査で卵巣に悪性所見を疑う,筋層浸潤が1/2 以上,組織学的異型度がG2 以上のうち,いずれかを満たしていた。術前にこれら4 項目すべてが該当しない低リスク例では摘出卵巣に重複癌を認めなかった。しかしながら,卵巣を温存した後に生じる異時性重複癌については検討されていない。

以上を踏まえると,明らかに類内膜癌G1 で筋層浸潤の浅い若年症例では卵巣温存が考慮されるが,現時点では慎重に対応する必要がある。海外では温存卵巣からの卵子を用いた代理懐胎の選択肢を残すというメリットがあり得るが,日本では代理懐胎は認められていない。卵巣摘出後のホルモン補充療法(hormone replacement therapy;HRT)の安全性と有効性の検討結果(CQ23)は卵巣温存の議論にも影響を与えるであろう。なお,卵巣転移の有無を確認するために施行されることがある卵巣楔状切除術に関しては,その有用性を示す報告はみられない。

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CQ07
漿液性癌または明細胞癌に対して推奨される手術術式は?

推奨グレードA
  1. 子宮全摘出術,両側付属器摘出術を行う。
推奨グレードC1
  1. 上記術式に加えて,骨盤・傍大動脈リンパ節郭清(生検)と大網切除術を提案する。

アルゴリズム(フローチャート1)参照

目的

転移・再発リスクの高い漿液性癌ならびに明細胞癌において推奨される手術術式を検討する。

解説

漿液性癌や明細胞癌は,類内膜癌に比較して予後不良であることが知られている1, 2)。漿液性癌では14〜18%の症例で上腹部に顕微鏡的病巣がみられ3),26〜44%にリンパ節転移が認められる3, 4)。さらに,傍大動脈リンパ節への転移も12〜31%と報告されており3, 4),手術時に高頻度に子宮外病変を認めることが予後不良の原因の一つに挙げられる。子宮筋層浸潤の程度と子宮外病巣の有無の間に相関が強くないことは,漿液性癌のもう一つの特徴である。漿液性癌では病理組織学的に筋層浸潤がない症例であっても,リンパ節転移が6〜36%に,卵巣転移や大網転移を含む腹腔内病巣が19〜43%に認められる35)。また漿液性癌や明細胞癌を含む非類内膜癌では,類内膜癌に比べ大網転移の頻度が高い傾向にあり,大網切除術を含めた手術を行った98 例の報告で,大網転移を認めた9 例中8 例(89%)が非類内膜癌であったとの報告がある6)。手術術式を決定するときには,漿液性癌におけるこれらの臨床的特徴を考慮する必要がある。後方視的に術式を検討している報告に共通した結論として,手術時に子宮外病巣の有無を把握し手術進行期を決定することが追加治療の選択の上でも非常に重要であるという点で,子宮全摘出術,両側付属器摘出術に加え,骨盤・傍大動脈リンパ節郭清(生検),大網切除術を推奨している。

骨盤・傍大動脈リンパ節郭清(生検)ならびに大網切除術の予後への貢献については,今後さらなるエビデンスの集積が必要である。系統的リンパ節郭清施行群においては,未施行群に比較し再発率が低下する傾向がみられ,さらに系統的リンパ節郭清を行った手術進行期Ⅰ期34 例にリンパ節再発を認めなかったこと7),ⅢC 期においてリンパ節の摘出個数が多い症例で生存率の改善がみられたこと8)から,リンパ節郭清には治療的意義があり,予後改善に寄与する可能性が示唆されている。同様に,手術進行期Ⅰ期でリンパ節郭清ならびに大網切除術まで行い完全なステージングが行われた症例の5 年生存率は95%に達したのに対し,不完全なステージング手術例では45%であったという報告があるが9),一方,進行期を限定しない62 例の報告や,Ⅰ期に限った279 例の報告では,完全なステージング手術例と不完全なステージング手術例で生存率に差がなかったとしている10, 11)

大網転移に関して,肉眼的病巣がない症例には顕微鏡的レベルの転移も認められなかったことから,肉眼的播種がない場合の大網切除術は省略してもよいとする意見もある7, 12)。一方で,腹膜転移については肉眼的病巣がない症例でも14%が陽性であったとの報告がある3)。大網切除術が単独で予後を改善させるという明らかなエビデンスは現在までなく,漿液性癌52 例中30 例に大網切除術を行い,施行例と未施行例で全生存率,無再発生存率に有意差を認めなかったとの報告があるが13),Ⅰ期の漿液性癌84 例のうち子宮,付属器摘出に加え骨盤リンパ節(+傍大動脈リンパ節)の摘出と大網切除術が施行された症例では全生存期間の中央値が16.4 年であったのに対し,子宮と付属器のみを摘出した症例では2.8 年であったとの報告もある14)。また,GCIG(Gynecologic Cancer InterGroup)の漿液性癌についてのコンセンサス・レビュー15),ESMO-ESGO-ESTRO コンセンサス・カンファレンス16),NCCN ガイドライン2017 年版17)は漿液性癌に対して大網切除術を推奨している。

大網転移の高い頻度と大網切除術の低侵襲性を考慮すると,手術時に大網を摘出し病理組織学的に転移の有無を検索することは臨床上有用であると考えられる。

特に,進行した漿液性癌では子宮全摘出術,両側付属器摘出術に,骨盤・傍大動脈リンパ節郭清,大網切除術ならびに転移・播種巣の切除を加えて病巣をできるだけ残さないことが重要で,卵巣癌と同様の最大残存腫瘍径を1 cm 未満とするoptimal surgery が予後改善に貢献すると報告されている。漿液性癌119 例の検討では,optimal surgery が施行された症例で未施行例に対し全生存期間におけるハザード比が0.40 であった4)。また別の報告では,Ⅲc〜Ⅳ期(FIGO 1988 分類)の肉眼的に残存のないoptimal surgery 症例で全生存期間中央値52 カ月に対し未施行例は16 カ月との報告がある18)。後者の報告ではⅢ期(FIGO 1988 分類)の 3年生存率も 75% vs. 5%と大きな差があった18)CQ24)。

明細胞癌に関する99 例の報告では,子宮外病巣を有する症例は67%に達しており,術中評価で肉眼的病巣が子宮体部に限局していると判断された症例でもその52%が術後の病理組織学的検索により進行期が上がっている19)。この中には20%のリンパ節転移症例と11%の腹水細胞診陽性例が含まれており,正確な進行期を決定する手術術式が必須であると結論付けている。この文献はGCIG の明細胞癌におけるコンセンサス・レビューでも引用され同様の推奨がなされており20),またNCCN ガイドライン2017 年版17)でも同様の結論となっている。しかしESMO-ESGO-ESTRO コンセンサス・カンファレンスでは,明細胞癌,未分化癌,癌肉腫に対して大網切除術は必ずしも推奨されないとされており16),また大網切除術が生存率を改善させるエビデンスは存在しない。明細胞癌は漿液性癌よりも頻度が少ないために術式と予後に関する報告が限られているが,手術進行期別分布,5 年生存率や子宮外病巣の頻度が両者で類似していることから1, 2),明細胞癌に対しても漿液性癌と同じ手術術式が望ましいと考えられている。ただし,子宮全摘出術の術式については,いずれの組織型においても広汎子宮全摘出術が単純子宮全摘出術に比べて予後を改善するという報告はない。

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CQ08
進行期推定に有用な画像検査は?

推奨グレードA
  1. 筋層浸潤・子宮頸部間質浸潤をMRI で評価することを強く奨める。
推奨グレードA
  1. リンパ節転移・遠隔転移をCT, MRI, PET/CT などで評価することを強く奨める。

アルゴリズム(フローチャート1)参照

目的

術前に画像評価を行い,正確に筋層浸潤,子宮頸部間質浸潤を評価し進行期を推定できれば,手術術式を決定するのに役立つ。経腟超音波断層法検査,CT,MRI,PET/CT について,その有用性と可能性を検討する。

解説

1999 年の47 の論文によるメタアナリシスでは,筋層浸潤の評価に対して造影MRI が単純MRI や経腟超音波断層法検査よりも有意に有用であり,CT に対してもより有用である傾向が示された1)。その後,MRI は深部に及ぶ筋層浸潤に対しては有用であるが,筋層浸潤がないか浅い症例に対しては有用性が低下するという報告2, 3)がなされた。MRI が子宮頸部浸潤に対して有用であるとする報告4)がみられる一方で,その反対を述べた論文5)もある。

ダイナミック造影を加えることでT1 強調画像による筋層浸潤深達度の正診率が78%から92%まで有意に向上したという報告6)もある。最近の前方視的多施設共同研究7)で,1/2 以上の深い筋層浸潤があるか否かの判定について,経腟超音波断層法検査,MRI およびPET/CT で比較検討され,感度はPET/CT とMRI が,特異度は経腟超音波断層法検査が,陽性的中率は経腟超音波断層法検査が,陰性的中率はMRI が,診断精度では経腟超音波断層法検査が,それぞれ最も優れていると報告された。リンパ節郭清の必要性を判断するには術前の感度が最も重要であるが,PET/CT とMRI が89%であるのに対して,経腟超音波断層法検査は70%と低値であった。同じ報告7)は頸部浸潤に対しても検討しており,感度,陽性的中率,陰性的中率,診断精度ではPET/CT が,特異度はMRI と経腟超音波断層法検査が,それぞれ最も優れていた。感度はPET/CT が39%,MRI が27%,経腟超音波断層法検査は19%であり,頸部浸潤については総合的にはPET/CT が最も優れていた。しかしながら比較的少数例の検討であり,3 つの検査法にはそれぞれ一長一短があるため,複合的に用いることが望ましいと思われる。

筋層浸潤評価に関するMRI の有用性について9 文献のメタアナリシスが行われ,拡散強調画像とダイナミック造影MRI 検査において感度と特異度に有意差がなく,ガドリニウムを使用できない症例においてはT2 強調画像と拡散強調画像を併用して判定する方法が代替検査法になりうるとしている8)

経腟超音波断層法検査に関しては検査費用の面からも注目されるが,最近24 文献のメタアナリシスが報告され9),深い筋層浸潤の判定について感度82%,特異度81%であった。前壁と後壁の著明なasymmetry があれば50%以上の筋層浸潤と判定するsubjective な方法およびGordon 法,Karlsson 法という2 種の判定法の間に差異は認められないものの,いずれも深い筋層浸潤の判定に有用であるとしている10)

経腟超音波断層法検査,CT,MRI はリンパ節の腫大を転移の根拠としている。画像上,通常は短径1cm がリンパ節転移の測定限界と考えられているが,1 cm 未満のリンパ節にも組織学的転移が認められることがあり,画像検査でリンパ節転移を評価する限界となっている11)。それに対して,FDG-PET/CT は糖代謝をターゲットにした転移検出法であり,リンパ節転移に対して従来の画像検査より有用とする論文が多い7, 12)。2004 年から2011 年にかけての7 文献のメタアナリシス13)によると,FDG-PET またはPET/CT による後腹膜リンパ節転移診断の感度は63%,特異度95%,正診率90%であった。感度がやや低いため,PET/CT でFDG 異常集積がない場合に系統的リンパ節郭清の省略を保証するものではないと思われる。転移リンパ節の大きさについて,小さな顕微鏡的転移はPET/CT でも検出しにくく,転移リンパ節の転移巣の長径ごとのFDG 異常集積検出率は4 mm 以下では17%,5〜9 mm では67%,10 mm 以上では93%であったと報告されている13)。また,転移を認めたリンパ節の部位別の検討では,FDG 異常集積検出率は,閉鎖リンパ節で41%,総腸骨リンパ節で40%,外腸骨リンパ節で25%に対し,内腸骨リンパ節と基靱帯リンパ節は0%であり,子宮内腔の強いFDG 集積像の影響で内腸骨リンパ節や基靱帯リンパ節のFDG 集積は捉えにくい可能性が指摘されている14)。PET/CT とMRI によるリンパ節転移の診断について,感度,陽性的中率,陰性的中率,診断精度ではPET/CT が,特異度はMRI が,それぞれ優れていた7)。最近の前方視的RCT15)(ACRIN6671/GOG0233試験:NCT01836484)では,造影CT に比較してPET/CT では傍大動脈リンパ節転移に関する感度が50%から65%へ,骨盤リンパ節転移に関する感度は48%から65%へと,ともに有意に上昇した。

遠隔転移に対してもFDG-PET/CT を推奨する論文がある12)。MRI においては増感剤の使用11),機器の性能の向上16)によって診断精度が上がる可能性が示唆される。NCCN ガイドライン2017 年版では,子宮外進展が疑われる場合にMRI,PET/CT 施行を推奨している17)

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CQ09
子宮摘出標本の術中迅速病理組織学的検査は術式決定に有用か?

推奨グレードC1
  1. リンパ節郭清(生検)や大網切除術を考慮する上で有用な場合もある。
推奨グレードC2
  1. 組織型,組織学的異型度,筋層浸潤の確定診断をする目的では奨められない。

目的

術中迅速病理組織学的検査が術式を決定するのに有用か検討する。

解説

術前の病理組織学的診断による組織型,組織学的異型度や画像診断による筋層浸潤の程度を考慮した再発リスク分類で,リンパ節郭清や大網切除術の必要性が判断されているが(CQ03, CQ04, CQ05, CQ07),これらの術前診断は,術後の確定病理診断と完全には一致しない。術前の子宮内膜掻爬も麻酔下で全面掻爬すれば,高い正診率で組織学的診断を得ることは可能であるが,全例に施行することは現実的ではない。そこで,術中迅速病理組織学的検査の有用性が問題となる。術中病理診断による類内膜癌異型度診断の正診率に関する報告1-4)では,G1 で93〜97%,G2 で66〜92%,G3 で40〜86%,全体では84〜92%であり,組織学的異型度が上がるほど正診率が低く,問題が残る。最近の報告でも,類内膜癌G3,明細胞癌,癌肉腫,漿液性癌の術中診断の感度はそれぞれ57%,20%,74%,32%で類内膜癌G1,G2 に比して低く,術前病理診断以上の結果は得られないとしている5)

筋層浸潤診断は術中の肉眼的診断でも64〜90%の正診率で行えるとの報告があるが6-10),類内膜癌G3 では59%と低い。一方,病変が2 cm 以下の類内膜癌G1 の診断は89〜99%と正確性が高いことが報告されている9, 11)。また,肉眼的診断は多発病変や漿液性癌などの特殊組織型の場合には過小評価され,筋層内筋腫や腺筋症の合併時は過大評価される可能性も指摘されている。また,筋層浸潤の程度は,外向(隆起性)発育部分を除いて内向(浸潤性)発育部分の厚さを子宮壁の厚さと比較するが,広範囲に病変が存在する場合は,本来の壁の厚さが明らかでないこともある。術中迅速病理組織学的診断での筋層浸潤程度の正診率は87〜91%(内膜限局,内側1/3,中1/3,外側1/3 に分類した場合)1, 2),95%(1/2 未満,1/2 以上に分類した場合)4)とされる。しかしながら,術中診断によるG3 例の筋層浸潤診断は永久標本を用いた診断と33%で不一致であったとされる12)。35 の研究を対象としたメタアナリシスでは,肉眼的診断よりも術中迅速病理組織学的診断による筋層浸潤の程度の診断の方が正確な診断がなされるとの報告もある13)。また,筋層浸潤の評価に関するMRI の有用性は指摘されているものの14),術中迅速診断に代わりうるか否かについての評価は一定していない。

術前生検のみでの組織学的異型度と,術中の肉眼所見による筋層浸潤の2 点をリンパ節郭清実施の判断基準とした前方視的検討では,11%に誤った判断がなされていたという6)。術前生検での組織学的異型度と,術中の筋層浸潤の肉眼所見は,進行期決定には有用でないとの報告もある15)。診断の不正確さから基準は一定していないものの,術中の組織型,組織学的異型度,筋層浸潤の程度あるいは腫瘍径により,リンパ節郭清の適応を決定する方法の妥当性を検証する報告もみられる。前方視的検討で,術中迅速標本での組織学的異型度と筋層浸潤の診断を,永久標本のそれぞれと比較すると,一致率はそれぞれ58%,67%で,多くは過小評価され,適切な治療が行われない危険性が指摘された16)。術中迅速で組織学的異型度と筋層浸潤を診断して低・中・高リスク群に分類すると,16%が過小評価された17)。一方で,永久標本での診断結果と比較しても不適当な治療が行われた例はわずかで,術中迅速病理組織学的診断に基づいたリスク評価による術式の選択の有用性を示す報告もある18-20)。また,腫瘍径が3 cm をこえると術中迅速病理組織学的診断の精度が落ちることを報告した論文もある21)

婦人科病理に精通する病理医の術中診断によるリスク判定に基づいて系統的にリンパ節郭清をした場合と,系統的郭清および術中迅速診断はせずに術後の病理診断に基づいて術後追加放射線照射を行った場合で,生存率に差はないとする後方視的検討はある22)。しかしながら,術中迅速病理組織学的検査を用いて,予後が改善するか否かを前方視的に検討した研究は未だ報告されていない。

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CQ10
センチネルリンパ節生検結果によるリンパ節郭清の省略は可能か?

推奨グレードC1
病理医の協力体制の整った施設で手技に習熟したチームにより試験的位置付けで行う原則のもと,センチネルリンパ節転移陰性例でのリンパ節郭清の省略を考慮する。

明日への提言

センチネルリンパ節転移陰性例に対する系統的リンパ節郭清の省略は,臨床試験としてバックアップ郭清とともにセンチネルリンパ節生検を十分に行って安全性を確認した施設が,倫理審査を受けた上で行うべきである。今後,一般診療となり得るかについては,安全性や有用性に対する各施設のデータの集積,多施設での検証結果を踏まえて議論されるべきで,センチネルリンパ節に対する詳細な病理学的検索の意義を確立するための検証も必要である。


目的

センチネルリンパ節生検が推奨されるか否かを検討する。

解説

リンパ節転移を含む明らかな子宮外病変を認めず,子宮に病変が限局している症例に対し,系統的リンパ節郭清と比較したセンチネルリンパ節生検の有用性が検証されている。センチネルリンパ節を同定するトレーサーの種類には,パテントブルーなどを用いる色素法1-3)99m テクネチウムなどを用いる RI(radioisotope)法4)があり,それぞれの単独法あるいは併用法5-7)が報告されているが,多施設の前方視的検討(SENTI-ENDO 試験:NCT00987051)でも併用法の方がより高い検出率が得られ,有用であると報告されている8)。近年,インドシアニングリーン(indocyanine green;ICG)による蛍光法でのセンチネルリンパ節検出の有用性が報告されてきている9)。多施設の前方視的検討(FIRES 試験:NCT01673022)でもロボット支援下手術時のICG によるセンチネルリンパ節生検の有用性が報告された10)。ロボット支援下手術や腹腔鏡下手術で使用しやすく,検出率の高さ,簡便性からも今後汎用されていく可能性があるが,十分な習熟まではRI 法との併用を考慮すべきである。

トレーサーをどの部位に投与するかは議論のあるところである。これまでに子宮鏡下に子宮内腔の粘膜下に投与する方法,直視下(または腹腔鏡下)に子宮漿膜下筋層に投与する方法2),直視下(経腟的)に子宮頸部に投与する方法などが報告されている8)。子宮体部の腫瘍周囲内膜にトレーサーを投与することで生理的なリンパ流を検出し得ると考えられ,最初の報告では子宮鏡下に99m テクネチウムを投与する方法が試みられた4)。この報告では28 例中23 例に平均3.1 個のセンチネルリンパ節を同定でき,リンパ節転移に対する感度,特異度ともに100%であったとしている。最近の国内からの報告でも,子宮鏡下のトレーサー投与では下腸間膜動脈より頭側の傍大動脈リンパ節にもセンチネルリンパ節が検出され,検出率,感度,陰性的中率とも100%であったとされる11)。腫瘍周囲に直接投与する方法は傍大動脈リンパ節領域の検出には優れているが,骨盤内のセンチネルリンパ節については子宮頸部への投与でも同様なリンパ節が検出可能であるため,手技の煩雑さや患者への侵襲の点が課題とされる12)。55 の研究を対象としたメタアナリシスでは投与方法による検出率の違いについても検討しているが,子宮体部への投与に比べ子宮頸部へのトレーサー投与は,骨盤領域のセンチネルリンパ節検出率と両側検出率が有意に上昇する一方,傍大動脈領域のセンチネルリンパ節の検出率は有意に低下した13)。フランスで行われた多施設の125 例を対象とした前方視的検討も子宮頸部投与(色素+RI)で実施されており9),簡便で再現性に優れている点が長所であるが,傍大動脈リンパ節領域の検出には適当とは考えられず,骨盤内のセンチネルリンパ節検出に限定した投与方法と考えるべきである。

センチネルリンパ節生検により,リンパ節転移の詳細な検索(ultrastaging)が可能となり,リンパ節転移の発見率が上昇することが期待されるが14),検出したセンチネルリンパ節の病理組織学的評価方法によっても,転移の検出率は大きく異なってくる15)。検索する断面を増やすことにより検出率が上昇し,また,サイトケラチンの免疫組織化学的染色を加えることで微小な転移の検出率が上昇することも報告されている16, 17)。子宮体癌における最初の多施設研究では,陰性的中率97%,感度84%と比較的良好な成績が得られているが,高リスク群における転移の的中率が悪く,術中迅速病理組織学的診断では微小転移(micrometastasis)が検出されにくいなどの問題が指摘されている8)。迅速診断の精度向上や病理医の負担軽減につながる分子生物学的診断法の導入も報告されている18)

子宮体癌に対するセンチネルリンパ節生検の妥当性については多数の報告が蓄積され,多施設前方視的検討の結果も報告される段階にきたが,センチネルリンパ節生検の結果により適切な追加治療が選択できることに起因する予後の改善はまだ示されていない。また,系統的リンパ節郭清を省略したセンチネルリンパ節生検のみによる治療の有用性はRCT では示されていない。他方,センチネルリンパ節が検出されない側についてはリンパ節郭清を施行し,腫大などで転移が疑わしいリンパ節はセンチネルリンパ節と認識されなくても摘出し,センチネルリンパ節についてはultrastaging を施行するというアルゴリズムに従うことで,傍大動脈リンパ節領域のみの単独転移以外のリンパ節転移は検出可能とする報告もある19)。既にNCCN ガイドライン2017 年版においては,明らかに子宮に限局した腫瘍に対する外科的病期診断に,アルゴリズムに従ったセンチネルリンパ節生検が推奨されている20)。治療個別化への可能性を検討していく上でも,トレーサーの種類や投与方法,リンパ節転移の評価方法を統一したプロトコールを作成して,本邦における妥当性の評価が必要である。既に日本婦人科腫瘍学会でセンチネルリンパ節関連委員会が設置され,安定したセンチネルリンパ節の生検と精度の高い病理学的診断のもとでの転移陰性例に対するリンパ節郭清省略の妥当性を検証する多施設前方視的検討が計画されている。

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CQ11
手術に際して腹腔細胞診を行うべきか?

推奨グレードA
腹腔細胞診を行うことを強く奨める。

アルゴリズム(フローチャート1)参照


明日への提言

術中に腹腔細胞診陽性と診断された場合は,大網転移やリンパ節転移などの子宮外進展の有無を検索し,正確な手術進行期を確定するための手術を考慮すべきと考えられるが,今後,臨床試験で迅速腹腔細胞診の有用性を検証する必要がある。


目的

腹腔細胞診の意義について検討する。

解説

2008 年のFIGO 分類において,子宮体癌の進行期決定から腹腔細胞診が除外され,ⅢA期は子宮漿膜または付属器に進展している症例のみとなり,腹腔細胞診の結果は進行期の決定に考慮されなくなった1)。腹腔細胞診の結果がFIGO 2008 分類の進行期決定から除外された理由は,子宮に限局した症例においては独立した予後因子とはならないとするいくつかの報告が示されたためである。しかし,一方で腹腔細胞診が独立した予後因子になるとする報告もある。予後因子としての検討をさらに継続するため,FIGO 2008 分類に加え,『子宮体癌取扱い規約 病理編 第4 版』やNCCN ガイドライン2017 年版2),WHO 分類 第4 版(2014 年)においても,腹腔細胞診自体は行われるべきであり,陽性例は進行期分類を変更させることなく別に報告すべきとされている。

ある報告では,腹腔細胞診陽性が子宮体癌手術症例の11%にみられた3)。腹腔細胞診は他の予後不良因子(類内膜癌G3・特殊組織型,1/2 以上の筋層浸潤,脈管侵襲,子宮外進展)を認めた場合に陽性率が高くなる4, 5)。特に,後腹膜リンパ節転移,子宮付属器転移,腹腔内転移といった子宮外進展をきたしている進行例における腹腔細胞診陽性率は24〜100%と明らかに高率となる5-7)。こうした進行例において腹腔細胞診陽性は独立した予後不良因子となり8),腹腔内再発や傍大動脈リンパ節転移,遠隔転移と関連し生存期間を短縮させる4, 9)。腹腔細胞診陽性は後腹膜リンパ節転移や大網転移と有意に相関したとするいくつかの報告もみられる10, 11)CQ04, CQ05)。

他方,病変が子宮に限局している症例においては,腹腔細胞診陽性は組織学的異型度や筋層浸潤,脈管侵襲とは関連がなかったとする報告もみられ12, 13),子宮外進展を認めない初期症例における他の予後不良因子との関連は明らかでない。早期症例における腹腔細胞診と予後との関係については結論が得られていない。この理由として,十分な評価が可能な前方視的検討が行われていないこと,ステージング手術が行われている頻度や術後治療の内容や頻度が報告により異なり,正確な答えを出すことが困難であることが挙げられる。後腹膜リンパ節の検索が十分に行われた(十分なステージング手術が行われた)症例の検討では,腫瘍が子宮内に留まっている場合,腹腔細胞診陽性は予後不良因子とならないとする報告14)がある一方で,予後不良因子とする報告もある13, 15-17)。腫瘍が子宮に限局している症例の層別解析を行った報告では,高リスク症例(1/2 以上の筋層浸潤,類内膜癌G3,特殊組織型,脈管侵襲陽性)では予後不良因子となるが,低リスク症例では予後不良因子とはならないとする報告が多い18)。これまでの報告をまとめると,腫瘍が子宮に限局している腹腔細胞診陽性例のうち,高リスク症例における再発率は32%であるが,低リスク症例(1/2 未満の筋層浸潤,類内膜癌G1/G2,脈管侵襲陰性,子宮頸部間質浸潤なし)では4.1%と明らかに低い3)。しかしながら,最近,Ⅰ/Ⅱ期14,704 例のSEER データを用いた後方視的検討における多変量解析で,腹腔細胞診陽性は再発に対して,特殊組織型や類内膜癌G3,進行期(Ⅱ期 vs.Ⅰ期)などとともに独立した予後因子であると報告された16)。また,腹腔細胞診陽性は類内膜癌以外の組織型に対しては進行期に関係なく,再発に対して独立した予後不良因子で19),さらに再発後の生存期間に対しても,進行期(Ⅱ〜Ⅳ期 vs. Ⅰ期),Ⅱ型,多発再発とともに独立した予後不良因子である20)と報告されている。

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CQ12
腹腔鏡下手術の適応は?

推奨グレードB
  1. 子宮内膜異型増殖症や推定Ⅰ期子宮体癌のうち再発低リスク群に対して奨める。
推奨グレードC1
  1. 推定Ⅰ・Ⅱ期症例のうち再発中・高リスク群が疑われる場合にも考慮する。
推奨グレードC2
  1. 進行例に対しては奨めない。

アルゴリズム(フローチャート1)参照

  1. 腹腔鏡下手術は手術手技に十分に習熟した婦人科腫瘍専門医により,あるいは内視鏡技術認定医と婦人科腫瘍専門医の協力体制の下で施行されることが考慮される。
  2. 腹腔鏡下手術の術式決定に際してはCQ01CQ03CQ04 の基本方針に従う。

目的

子宮体癌に対する腹腔鏡下手術の適応について検討する。

解説

子宮内膜異型増殖症に対する治療法は,年齢,合併症,妊孕性温存の希望の有無により異なるが,手術が相対的禁忌である内科的合併症や妊孕性温存の希望がない場合には子宮全摘出術が選択される1, 2)。子宮全摘出術の方法として,腹腔鏡下手術や腟式手術は,腹式手術と比較してより低侵襲な手術として選択されうる。ただし,術前組織診で子宮内膜異型増殖症と診断した症例に行った子宮全摘出術後の最終診断で,癌の共存率は27〜43%であった報告3, 4),そのうち63%は子宮内膜に限局していたが,1/2 以下および1/2 をこえる筋層浸潤を認めた症例がそれぞれ31%,11%あった報告4)もあるので注意が必要である。癌の共存が確認された場合の対応に関しては,卵巣温存に関するCQ06 や初回治療不完全ステージングに関するCQ13, CQ14 を参照されたい。

子宮体癌に対する腹腔鏡下手術は,1992 年に米国アリゾナ大学のグループが初めて報告した5)。その後,欧米では早期子宮体癌において腹腔鏡下手術施行率が増加し6),米国SEER のデータでは2006 年の9%が2011 年には62%となるまで普及した7)。早期子宮体癌に対する腹腔鏡下手術と開腹手術を比較したRCT は,現在までに9 つ報告されている。これらRCT の対象はⅠ・Ⅱ期の早期子宮体癌であるが,低リスク群のみならず中・高リスク群や特殊組織型も含んでいる。腹腔鏡下手術は開腹手術例と比較して術中出血量は有意に少なかった。メタアナリシスの結果では8),手術時間はいずれのstudy においても長い傾向にあったが,入院期間は腹腔鏡下手術で有意に短かった。術後合併症の発症率は腹腔鏡下手術で有意に低かったが,術中合併症の発症率は有意に高かったことには留意する必要がある。

根治性について,骨盤リンパ節摘出個数は腹腔鏡下手術で12〜24 個と,開腹手術の11〜22 個と同等であり,傍大動脈リンパ節郭清については施行率が0〜96%とばらつきがあるものの,摘出リンパ節個数も7〜12 個で開腹手術群と同等という結果であった8)。また,3 年再発率も10〜20%と開腹手術の0〜18%と有意差はなく,3 年生存率においても両群間に差はなかった。本邦における中・高リスクの早期子宮体癌に対する多施設共同後方視的研究で9),腹腔鏡下に傍大動脈リンパ節郭清を施行した群(54 例)と同施設での開腹手術群(99 例)を比較したところ,手術時間は両群間に有意差はなかったが,術中出血量は腹腔鏡群で少なかった。術中合併症は両群間に差はなく,術後合併症のうち腸閉塞は腹腔鏡群で発生せず,有意に低い結果であった。傍大動脈リンパ節摘出数は開腹群の31±13 個に比して,腹腔鏡群の26±11 個と少ない結果であったが,再発率は腹腔鏡下手術群で7.4%,開腹手術群で14%と,観察期間は短いが,両群間に有意差はなかった。以上の結果からも中・高リスクのⅠ・Ⅱ期子宮体癌に対する腹腔鏡下傍大動脈リンパ節郭清は安全に施行することができると考えられ,本邦においても2017 年7 月より先進医療A として,腹腔鏡下傍大動脈リンパ節郭清(付記)が施行できるようになった。今後の症例の蓄積が保険収載につながることを期待したい。

子宮体癌に対して腹腔鏡下手術を行う場合に危惧される問題点として,肥満症例が多いことが挙げられるが,LAP2試験(NCT00002706)によると,body mass index(BMI) 値の増加に伴って周術期合併症と開腹手術へのconversion 率が増加した10)。しかし,開腹手術と比較して腹腔鏡下手術の方が有意に周術期合併症発症率が低いことから,肥満症例に対する腹腔鏡下手術の有用性を示すデータが増えてきている11, 12)

子宮マニピュレーターの使用に関しては,腹腔内への腫瘍細胞の散布などの懸念があるが,腹腔鏡下手術における子宮マニピュレーター使用群と非使用群によるRCT では,腹腔細胞診や脈管侵襲の陽性率を有意に上げることはなく,予後への影響もなかった13)。しかし,このstudy においても子宮マニピュレーターの使用時は経卵管的に腹腔内へ腫瘍細胞を散布する可能性を危惧し,子宮への手術操作前に両側卵管の電気凝固等を行っている。したがって,子宮マニピュレーターを使用する場合には,腫瘍細胞の腹腔内への散布を予防する目的で,手術操作前に卵管へのクリッピングか凝固を行った方が良いと思われる。また,卵巣癌では比較的高率と報告されたトロカー挿入部転移(port-site metastasis)については,子宮体癌においては0.3%と低率であり,腹腔内播種などの転移性病変を有さない症例ではほとんど生じないと報告されている14)

子宮摘出の方法は,これまで行われたRCT において,腹腔鏡補助下腟式子宮全摘出術(laparoscopically-assisted vaginal hysterectomy;LAVH),全腹腔鏡下子宮全摘出術(total laparoscopic hysterectomy;TLH),ロボット支援下手術など報告により異なっており,CQ01 と同じく,どの程度の子宮摘出法が適切かも明確ではないが,LAP2 試験では筋膜外術式による単純子宮全摘出術を推奨している10)。また海外では,早期子宮体癌に対して腹腔鏡下手術とともにロボット支援下手術の有用性が示されてきており7, 15, 16),NCCN ガイドライン2017 年版17)においても,早期子宮体癌に対するminimally invasive surgery の一つとして,ロボット支援下手術が腹腔鏡下手術と同様に選択肢となっている。本邦でも2018 年4 月より再発低リスク体癌に対して保険適用となった。

転移性病変を有するような進行子宮体癌に腹腔鏡下手術を行った大規模報告は存在せず,子宮体癌に対する鏡視下手術の臨床試験は,ほとんどが術前推定Ⅰ期を中心としたものに限られている。LAP2 試験(NCT00002706)によるサブグループ解析において,術後の手術進行期がⅢ,Ⅳ期であっても腹腔鏡下手術と開腹手術の再発リスクに有意差を認めなかった18)が,NCCN ガイドライン2017 年版も,子宮外進展のある進行子宮体癌に対する腹腔鏡下手術は奨めていない17)

腹腔鏡下手術やロボット支援下手術をはじめとする鏡視下手術は,未だ歴史が浅く,手術手技の習熟度や長期予後なども今後評価・検討していく必要がある。しかし,一方で早期子宮体癌に対する鏡視下手術の有用性は明らかであり,手術手技に十分に習熟した婦人科腫瘍専門医により術式の決定と手術を行うことで,安全な普及を図るべきである。

付記
腹腔鏡下傍大動脈リンパ節郭清

先進医療A により腹腔鏡下傍大動脈リンパ節郭清を施行する場合には,実施医師に係る基準として,婦人科腫瘍専門医,腹腔鏡下傍大動脈リンパ節郭清を3 例以上実施した経験,腹腔鏡下手術5年以上の経験を満たすこと。保険医療機関に係る基準として,保険適用下での腹腔鏡下子宮体癌手術が可能な施設認定を持った施設などの条件を満たすことが必要である,詳細については厚生労働省のホームページで確認されたい。

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CQ13
子宮摘出術後に子宮体癌と判明した症例の取り扱いは?

推奨グレードB
  1. 再発中・高リスク群が疑われる症例には,再手術を含む適切な追加治療を奨める。
推奨グレードC1
  1. 再発低リスク群と推定できる症例では,慎重な経過観察も可能である。

アルゴリズム(フローチャート1)参照

目的

子宮筋腫や子宮腺筋症などの良性疾患や子宮内膜異型増殖症の術前診断で単純子宮全摘出術を行い,術後に初めて子宮体癌が発見された症例の取り扱いについて検討する。

解説

本来,術前に子宮体癌と判明していれば,少なくとも筋膜外術式による単純子宮全摘出術以上の腟壁や周囲靱帯をつけた子宮摘出がなされたはずである(CQ01)が,良性子宮疾患を想定した手術の場合,筋膜内術式による単純子宮全摘出術のみが行われていることもありうる。しかし大きな相違点は,体癌と術前診断できていれば行っていたはずの標準的ステージング手術に含まれる両側付属器摘出術(特殊組織型の場合は大網切除術も)を加えた十分な腹腔内検索(腹腔細胞診を含む)とリンパ節郭清が施行されていないことであろう。

リンパ節郭清が行われていない場合に再手術で郭清を追加する治療的意義は明らかではない。摘出子宮の病理組織学的検査の結果,筋層浸潤を認めない類内膜癌G1 またはG2 症例のリンパ節転移頻度は1.3%とされ,1/2 未満の筋層浸潤を認めるG1 またはG2 症例でもリンパ節転移頻度は4.4%であった1)。Korean Gynecologic Oncology Group(KGOG)は術前評価による再発低リスク群を①生検で類内膜癌,② MRI で深い筋層浸潤や短径1 cm 以上のリンパ節腫大がない,子宮体部をこえて病変が拡がらない,③ CA125 が35 U/mL 未満としているが,これら272 例のうちリンパ節転移を認めたのは8 例(2.9%)であった(KGOG2015 試験:NCT01527396)2)。Cochrane Library によるⅠ期症例に対する2 つのRCT のメタアナリシスで,リンパ節郭清(生検)を追加した群と未施行群の5 年無再発生存率と5 年全生存率に有意差はなかった3)。NCCN ガイドライン2017 年版は,脈管侵襲がなく腫瘍径が2cm 未満で筋層浸潤1/2 未満のG1, G2 の低リスクⅠA 期症例の場合には,このまま経過観察が可能としている4)。しかし,前述のKGOG の検討では,術後病理組織学的検査の結果がⅠA 期であっても非類内膜癌であった症例や筋層浸潤1/2 以上のⅠB 期症例などの再発中・高リスク群におけるリンパ節転移頻度は17.5%と高かった(KGOG2015 試験:NCT01527396)。NCCN ガイドライン2017 年版でも4),脈管侵襲陽性,腫瘍径2cm 以上,類内膜癌G3 あるいは特殊組織型に該当するⅠA 期,筋層浸潤1/2 以上のⅠB 期およびⅡ期の再発中・高リスク群では,積極的に再手術を行い,正確な進行期を決定するべきとしている。2013 年版では,推奨はグレードC1 とされていたが,以上のエビデンスをもとに,ガイドライン作成委員会でのコンセンサスを得た上で,グレードB へ変更した。

一方,子宮摘出時に卵巣摘出が行われていない場合に残存卵巣をどのように取り扱うかに関しては,再発低リスク群では,卵巣摘出の有無と予後には影響がなかったとする報告もある。しかし,非類内膜癌症例,筋層浸潤の深い症例,頸部浸潤を認める症例や不十分な追加治療例では再発率が高いことや,子宮体癌と卵巣癌の重複例が5〜29%にみられ,特に若年症例では高率とする報告が多いことに注意が必要である5)

以上のように,摘出子宮による病理組織学的検査と術後の画像検査で再発中・高リスク群が疑われる症例には,ステージング手術を含む標準的治療を行うべきであろう。これに対して,Ⅰ期症例のうち低リスク群と推定される場合には,卵巣温存の有無に関するCQ06 も参考の上,厳重な管理のもと経過観察を行うことが可能であろう。

参考文献

1)
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3)
Frost JA, Webster KE, Bryant A, Morrison J. Lymphadenectomy for the management of endometrial cancer. Cochrane Database Syst Rev 2015;(9):CD007585(レベルⅠ)【検】
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CQ14
再発低リスク群を推定して行われた手術の後に再発中・高リスク群と判明した症例の取り扱いは?

推奨グレードC1
画像検査による転移検索の上,再手術により正確な手術進行期を決定し,適切な追加治療を提案する。

アルゴリズム(フローチャート2)参照

目的

再発低リスク群の術前診断のもと,筋膜外術式による単純子宮全摘出術+両側付属器摘出術(+骨盤リンパ節郭清)のみを施行したが,摘出子宮の病理組織学的検索の結果,再発中・高リスク群と判明した場合の取り扱いについて検討する。

解説

KGOG は術前評価による再発低リスク群を①生検で類内膜癌,② MRI で深い筋層浸潤や短径1 cm 以上のリンパ節腫大がない,子宮体部をこえて病変が拡がらない,③ CA125 が35 U/mL 未満としているが,この群の術後病理組織学的検査の結果が非類内膜癌であったⅠA 期や筋層浸潤1/2 以上のⅠB 期などの再発中・高リスク群におけるリンパ節転移頻度は17.5%と高かった(KGOG2015 試験:NCT01527396)1)。再発低リスク群を想定した手術が行われた症例に対して追加のリンパ節郭清(+大網切除術)が必要か否かに関しては,CQ13 でも述べたようにCochrane Library によるⅠ期症例に対する2 つのRCT のメタアナリシスで,リンパ節郭清(生検)を追加した群と未施行群の5 年無再発生存率と5 年全生存率に有意差はなかった2)。しかし,これらのRCT は,ほとんどが再発低リスク症例を対象としており,再発中・高リスク症例についての結果ではないことに注意が必要である3)。NCCN ガイドライン2017 年版では,ⅠA 期でも脈管侵襲陽性,腫瘍径2 cm 以上,類内膜癌G3 あるいは特殊組織型,筋層浸潤1/2 以上のⅠB 期,Ⅱ期などの再発中・高リスク群では,積極的に再手術を行い,正確な進行期を決定するべきとしている3)

一方,再手術ができない場合には,追加治療として放射線治療(骨盤照射+腟内小線源治療)か化学療法による治療を考慮すべきである3)

参考文献

1)
Kang S, Nam JH, Bae DS, Kim JW, Kim MH, Chen X, et al. Preoperative assessment of lymph node metastasis in endometrial cancer:a Korean Gynecologic Oncology Group study. Cancer 2017;123:263-72(レベルⅢ)【検】
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Frost JA, Webster KE, Bryant A, Morrison J. Lymphadenectomy for the management of endometrial cancer. Cochrane Database Syst Rev 2015;(9):CD007585(レベルⅠ)【検】
3)
Uterine Neoplasms(Version 1. 2017) NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology.
http://www.nccn.org/professionals/physician_gls/f_guidelines.asp(ガイドライン)【委】

CQ15
根治的放射線治療の適応は?

推奨グレードC1
高齢や合併症などの理由で手術適応にならない症例に対して放射線治療を提案する。

アルゴリズム(フローチャート1)参照

目的

初回治療としての放射線治療の有用性について検討する。

解説

子宮体癌は子宮頸癌と異なり,外科手術が治療法の第一選択である。2015 年の日本産科婦人科学会婦人科腫瘍委員会報告では,Ⅰ・Ⅱ期の98%,Ⅲ・Ⅳ期でも89%に対し手術が行われていた1)。子宮体癌は放射線感受性が低いと考えられている腺癌が大部分を占めることや,良好な腔内照射の線量分布が得がたいことから,根治的放射線治療が行われることは少ない。根治的放射線治療の適応は,高齢や合併症等のため手術が望ましくない場合や,切除不能な進行癌である。

術前にⅠ期・Ⅱ期・Ⅲ期と推定された症例の後方視的研究によれば,海外では根治的放射線治療による5 年生存率はそれぞれ55〜80%,35〜74%,0〜37%程度2, 3)であり,本邦ではそれぞれ64〜100%,31〜100%,0〜45%である4-6)。治療成績は一般的に手術成績を下回るが,手術例とは合併症の有無等,症例の背景と進行期の決定法が異なるため,一律に手術成績と比較することは難しい。

根治的放射線治療では基本的に外部照射(全骨盤照射)と腔内照射の組み合わせが適用されるが,子宮頸癌のような標準治療法の指針は確立していない。高齢者や全身状態が不良な症例に対し,照射野を縮小した小骨盤照射が適用されることがある。さらに組織学的異型度G1 7)またはG2 8),MRI 画像診断で子宮筋層浸潤が1/2 未満および腫瘍径2 cm 以下のⅠA 期症例に対し,外部照射を省略し腔内照射単独での治療を検討することがある8)。しかし,画像検査での浸潤度や腫瘍径の判定は困難なため,腔内照射単独での治療は年齢や合併症などの全身状態も考慮に入れ,慎重に検討する。Ⅰ期において,外部照射単独例と外部照射と腔内照射の併用例では,後者の治療成績が有意に良好であったとの報告があり9),早期癌においても腔内照射併用が必要と考えられる。

腔内照射では子宮底部の線量分布を広げ,子宮体部の輪郭に合わせた線量分布を形成することが重要である。欧米では子宮腔内に小型の線源を多数充填する照射法(パッキング法)で良好な線量分布が得られてきたが,日本人女性では子宮が小さいため,子宮腔内に複数本のタンデムを挿入する方法が一般的に行われてきた。高線量が照射される子宮底部は消化管に隣接することがあるため,晩期有害事象への留意が必要である。近年では,改良したパッキング法10)やアプリケータを用いて11, 12),3 次元画像誘導小線源治療(3 dimensional image-guided brachytherapy;3D-IGBT)を施行し,良好な線量分布と良好な局所制御率(91〜100%),およびGrade 2 以下に留まる晩期有害事象が得られている。本邦からはⅠ〜Ⅱ期の比較的小さな腫瘍に対して,タンデム1 本のみを挿入し,CT を用いたIGBT での良好な成績が報告されている5)。一方,重篤な晩期有害事象の報告もある4)

根治照射法についての代表的な治療スケジュールや手技は,放射線治療のガイドライン6, 12, 13)に紹介されている。

参考文献

1)
片渕秀隆. 日本産科婦人科学会婦人科腫瘍委員会報告. 2015 年度患者年報. 日産婦誌 2017;69:1171-216
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12)
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13)
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第3章 術後治療(特殊組織型を含む)

総説

子宮体癌の治療の第一選択は手術療法である。子宮全摘出術,両側付属器摘出術を基本として骨盤および傍大動脈リンパ節郭清(生検),大網切除術,腹腔細胞診などが行われる(CQ01〜CQ05)。手術後は症例の再発リスクの評価に基づいて術後補助療法が決定される。リスク因子は手術進行期,組織型,組織学的異型度,骨盤ならびに傍大動脈リンパ節転移,筋層浸潤,脈管侵襲,子宮頸部間質浸潤,付属器・漿膜・基靱帯進展,腟壁浸潤,膀胱・直腸浸潤,腹腔内播種,遠隔転移などが挙げられ,これらの因子の組み合わせから再発リスクは低リスク群,中リスク群,高リスク群に分類される1)図1)。本ガイドラインでは2013 年版を踏襲した再発リスク分類を用いているが,現時点で完全にコンセンサスを得た分類はない。本邦で行われてきた再発中・高リスク群を対象としたJGOG2033 試験2)や再発高リスク群を対象としたJGOG2043 試験3)でも対象と本ガイドラインの再発リスク分類とは完全には一致せず,臨床試験によって用いる再発リスク分類が異なることにも注意する必要がある。また,再発中リスク群での術後治療の遠隔成績を考慮して,再発中リスク群をさらにlow-intermediate リスク群,high-intermediate リスク群に分類する試みも行われている4, 5)

手術療法のみで治療されたⅠ期子宮体癌の再発率はおよそ10%である。低リスク群では再発率は低く補助療法の有用性は認められないため,再発低リスク群に対する術後補助療法は奨められない。一方,再発中・高リスク群では再発のリスクは高まるため,術後補助療法の適応となる。術後補助療法として化学療法,放射線治療のいずれかを用いるが,本邦と欧米で状況が異なる。欧米では術後補助療法としては放射線治療が主流であるが,本邦では化学療法が広く普及しており6),本ガイドラインでは化学療法を再発高リスク群に推奨し,再発中リスク群には提案するとした(CQ16)。

術後放射線治療(全骨盤照射)は局所再発を減少させるため欧米で広く用いられてきたが,複数のランダム化比較試験(randomized controlled trial;RCT)を含むメタアナリシスの結果より,骨盤内再発を減らすが生存率の向上には寄与しないと結論付けられている7, 8)。本邦では,欧米と比較して骨盤リンパ節の郭清や腟壁切除が十分に行われ,術式の違いを考慮すると,欧米で確立した術後照射に関するエビデンスをそのまま本邦の臨床に適用することはできない。本邦ではほとんどの施設において化学療法を選択している6)ことからも,術後補助療法としての放射線治療を欧米と同様に推奨するのは適切ではないと考えられる。したがって本ガイドラインでは,本邦における術後の放射線治療は,局所再発を減少させるための選択肢の一つと位置付けた(CQ19)。

欧米と異なりリンパ節郭清を十分に行う本邦では,化学療法が術後治療の主体である。これまで術後治療として化学療法と放射線治療を比較した臨床試験によると,Ⅲ・Ⅳ期(FIGO 1988 分類)症例を対象として全腹部照射と化学療法をランダム化比較したGOG122 試験(NCT00002493)の結果は,化学療法が無再発生存期間,全生存期間ともに全腹部照射を上回っていた9)。本邦で実施された,再発中・高リスク群を対象とした全骨盤照射と化学療法をランダム化比較したJGOG2033 試験2)や,同様に再発中・高リスクを対象としたMaggi らによるイタリアの試験10)でも,全骨盤照射と化学療法に有意差はなかった。これらに進行子宮体癌の放射線治療後の追加治療としてAP 療法〔アドリアマイシン(ドキソルビシン塩酸塩)+シスプラチン〕とTAP 療法(パクリタキセル+AP 療法)を比較したGOG184 試験(NCT00006011)の結果11)を加えて解析されたCochrane Library のメタアナリシスでは,高リスク群において化学療法が放射線治療に比較して無増悪生存期間ならびに全生存期間を延長することが示唆されている12)。本ガイドラインではこの結果を踏まえて,再発高リスク群に関しては化学療法を推奨することとした(CQ16)。術後治療に使用される抗悪性腫瘍薬としては,Ⅲ・Ⅳ期(FIGO 1988 分類)の進行子宮体癌を対象にしたGOG122 試験でAP 療法の予後改善効果が示された9)。GOG184 試験では,進行子宮体癌の放射線照射後の追加治療として行うAP 療法6 サイクルと,TAP 療法6 サイクルの効果を比較検討したが,TAP 療法は無再発生存期間を延長することができず11),神経障害を含む毒性が有意に増加した13)。これらのGOG(Gynecologic Oncology Group)の試験からは,術後化学療法としての標準治療はAP 療法とされている。本邦で2005 年に婦人科悪性腫瘍研究機構(Japan Gynecologic Oncology Group;JGOG)が行った全国調査14)では,術後化学療法として過半数の施設がTC 療法(パクリタキセル+カルボプラチン)を第一選択としていた。進行・再発子宮体癌に対するTC 療法の奏効率は50〜60%15-17)と報告されており,その有効性・安全性から実地臨床でのTC 療法の使用は許容されるものと判断される。術後化学療法のレジメンのエビデンスレベルという点ではAP 療法が標準であるが,進行・再発子宮体癌においてTAP 療法に比べてTC 療法が非劣性とされたGOG209 試験(NCT00006399)の中間解析結果18)や,再発中・高リスク群に対してAP 療法とTC 療法,DP 療法(ドセタキセル+シスプラチン)を比較したJGOG2043 試験の結果3)を勘案して,本ガイドラインではTC 療法等のタキサン製剤とプラチナ製剤の併用療法も術後化学療法として考慮されるとした(CQ17)。再発中リスク群に関する術後化学療法については,これまでの臨床試験の対象が再発中・高リスク群とされているものが多く,再発中リスク群に対する有用性が示唆されるものの,エビデンスは不十分である。今後の中リスク群に対する術後補助化学療法の有用性を検証する臨床試験が望まれる。術後の補助療法としてのホルモン療法は,ほぼすべての試験で生存率の改善を認めておらず,本ガイドラインでも推奨されない(CQ18)。

参考文献

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CQ16
術後補助療法の適応と推奨される治療法は?

推奨グレードB
  1. 再発高リスク群に対して術後化学療法を奨める。
推奨グレードC1
  1. 再発中リスク群に対して術後化学療法を提案する。
推奨グレードD
  1. 再発低リスク群に対して術後補助療法は奨めない。

アルゴリズム(フローチャート4)参照

目的

術後補助療法の選択と有用性について検討する。

解説

子宮体癌の術後治療は,個々の症例の再発リスクの評価に基づいて決定される。リスク因子の組み合わせから再発リスクは低リスク群,中リスク群,高リスク群に分類される1)。また,再発中リスク群での術後治療の遠隔成績を考慮して,再発中リスク群をさらにlow-intermediate リスク群,high-intermediate リスク群に分類することも行われている2, 3)。ただし,臨床試験ごとにリスク分類は異なっているのが現状である。なお,本ガイドラインでの再発リスク分類は,図1 を参照されたい。

子宮体癌の術後には,再発リスクに応じて放射線治療や化学療法が補助療法として用いられる。欧米では放射線治療が広く実施されている。一方,本邦では,欧米と比較して骨盤リンパ節の郭清や腟壁切除が十分に行われるため,腟断端再発を含めた局所再発のリスクが少ないと判断されている。そのため,放射線治療はほとんど行われず,主に遠隔転移の予防を目的とした化学療法が積極的に行われている4)

子宮外進展を伴う再発高リスク群の予後は不良である。Ⅲ・Ⅳ期(FIGO 1988 分類)症例を対象として,全腹部照射と化学療法〔AP 療法:アドリアマイシン(ドキソルビシン塩酸塩)+シスプラチン〕をランダム化比較したGOG122 試験(NCT00002493)の結果では,無再発生存期間,全生存期間ともに化学療法群が全腹部照射群を有意に上回っていた5)。しかしこの試験では,全腹部照射の線量に問題があったとの指摘がある6)。術後照射後の化学療法としてAP 療法とさらにパクリタキセルを加えたTAP 療法を比較したGOG184 試験(NCT00006011)では,無再発生存期間の延長は認められなかった7)。本邦で再発中・高リスク群〔Ⅰc〜Ⅲc 期(FIGO 1988 分類)で筋層浸潤1/ 2 以上〕症例を対象として,全骨盤照射と化学療法をランダム化比較したJGOG2033 試験が行われた。その結果,全生存率において両者に有意差はなかったが,high-intermediate リスクに限定したサブセット解析で,化学療法群の無増悪生存期間が全骨盤照射群を有意に上回っていた8)。同様に再発中・高リスク群〔Ⅰc 期G3,Ⅱ期G3 で筋層浸潤1/2 以上,Ⅲ期(FIGO 1988 分類)〕を対象としたイタリアの試験では,全骨盤照射と化学療法に全生存期間と無増悪生存期間で有意差はなかった9)。これら4 つの臨床試験を総合して解析したCochrane Library のメタアナリシスの結果が2014 年に発表された10)。この中で,再発高リスク群においては,化学療法が放射線治療に比較して無増悪生存期間ならびに全生存期間を延長することを示唆する結果が報告された。以上より,再発高リスク群では術後補助療法として化学療法を実施することは合理的と考えられる。一方,手術がより根治を目指して行われる本邦において,化学療法に放射線治療を加えることの意義は不明である。

再発中リスク群に関しては,本邦では局所再発の頻度が7.3%と再発中・高リスク群でも低率であり8),術後補助療法として放射線治療の適応は少ない。一方,化学療法については,中リスク群のみに限定した臨床試験は行われておらず,化学療法の有用性を論じるだけのエビデンスに関しては未だ不十分であると考えられ(CQ17),今後の臨床試験が望まれる。

再発低リスク群では化学療法,放射線治療ともに補助療法の有用性を示唆する報告はない。

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CQ17
術後化学療法に推奨される薬剤は?

推奨グレードB
  1. 再発高リスク群に対してAP 療法を奨める。
推奨グレードC1
  1. 再発高リスク群に対してタキサン製剤とプラチナ製剤の併用療法も提案できる。
推奨グレードC1
  1. 再発中リスク群に対しては再発高リスク群と同様の薬剤を提案する。

アルゴリズム(フローチャート2)参照

目的

術後化学療法の薬剤について検討する。

解説

術後化学療法の適応については,再発リスクを高・中・低リスク群に分けて考えるが,再発高リスク群においては適応が明瞭に示されている。ただし,リスク分類は臨床試験ごとに異なっており,本ガイドラインでの再発リスク分類は,図1 を参照されたい。

進行・再発子宮体癌に対して単剤での奏効率が20%をこえると報告されている抗悪性腫瘍薬は,シスプラチン,カルボプラチン,アドリアマイシン(ドキソルビシン塩酸塩),エピルビシン,パクリタキセル,ドセタキセル,フルオロウラシルなどである1-5)。GOG34 試験は,アドリアマイシン(ドキソルビシン塩酸塩)単剤を,術前推定Ⅰ期症例で筋層浸潤1/2 をこえる,骨盤あるいは傍大動脈リンパ節転移,子宮頸部浸潤,付属器転移の再発リスク因子を少なくとも1 つ有する181 例を対象とした試験である。術後放射線治療にアドリアマイシン(ドキソルビシン塩酸塩)を追加投与する群としない群とにランダム割付して比較したが,化学療法を追加することの有用性は示されなかった6)。GOG122 試験(NCT00002493)は,2 cm 以上の残存腫瘍を有しないⅢ・Ⅳ期(FIGO 1988 分類)の進行子宮体癌を対象にした術後全腹部照射群とAP 療法〔アドリアマイシン(ドキソルビシン塩酸塩)60 mg/m2+シスプラチン50 mg/m2〕とのRCT で,AP 療法の予後改善効果が示された7)。ただし,AP 療法は3 週毎,7 サイクルの後にシスプラチン単剤を追加するデザインであり,有害事象による治療中止例も17%と多く,治療完遂率は63%と低かった。GOG184 試験(NCT00006011)は,進行子宮体癌の放射線照射後の追加治療としてのAP 療法6 サイクルと,AP 療法+パクリタキセル併用(TAP)療法6 サイクルを比較したが,TAP 療法は無再発生存期間を延長せず8),神経障害を含む毒性が有意に増加した9)。これらの試験から,術後化学療法としての標準治療はAP 療法であると考えられる。

再発中リスク群に限定した臨床試験は行われていないが,再発中リスク群を含んだRCT はこれまでに4 つ行われている。その中でJGOG2033 試験は,再発中・高リスク群を対象に,術後全骨盤照射(45〜50 Gy)を標準治療としてCAP 療法〔シクロホスファミド333 mg/m2+アドリアマイシン(ドキソルビシン塩酸塩)40 mg/m2+シスプラチン50 mg/m2〕とランダム化比較した。主要評価項目である5 年生存率は全骨盤照射群で86%,CAP 療法群で87%と有意差はなかった10)。同様のデザインで再発中・高リスク群を対象に,術後全骨盤照射(45〜50 Gy)とCAP 療法〔シクロホスファミド600 mg/m2+アドリアマイシン(ドキソルビシン塩酸塩)45 mg/m2+シスプラチン50 mg/m2〕にランダム割付したイタリアの試験も報告された11)。主要評価項目である5 年生存率は,全骨盤照射群66%,CAP 療法群69%で有意差はなかった11)。NSGO/EORTC グループが発表したNSGO-EC-9501 試験12)は,再発中・高リスク群を対象(傍大動脈リンパ節転移は除外)に全骨盤照射単独と全骨盤照射+化学療法のRCT を行った。化学療法はAP 療法,TC 療法,TAP 療法,TEP 療法(パクリタキセル+エピルビシン+シスプラチン)などが行われた。無増悪生存期間は化学療法追加群が優っていたが,全生存期間では有意差はみられなかった。ほぼ同様のプロトコールで行われたイタリアの試験との統合解析13)でも,生存について有意差は示されなかった。以上より,再発中リスク群に対しても再発高リスク群と同様の薬剤が実地臨床でも考慮される。

一方,本邦で2005 年にJGOG が行った全国調査14)では,術後化学療法において過半数の施設がTC 療法を第一選択としていた。進行・再発子宮体癌に対するTC 療法の奏効率は50〜60%15-17)と報告されており,その有効性・安全性から実地臨床での使用は許容されるものと判断される。本邦で子宮体癌術後再発の中・高リスク群に対する第Ⅲ相JGOG2043 試験{AP 療法〔アドリアマイシン(ドキソルビシン塩酸塩)60 mg/m2+シスプラチン50 mg/m2〕vs. DP 療法(ドセタキセル70 mg/m2+シスプラチン60 mg/m2)vs. TC 療法(パクリタキセル180 mg/m2+カルボプラチンAUC 6)}が行われた。primary endpoint である無増悪生存期間においてDP 療法とTC 療法は,AP 療法に対する優越性を証明できなかった。再発中リスク群,再発高リスク群ごとのサブセット解析でも,DP 療法とTC 療法はAP 療法に対する優越性を証明できなかった18)。しかし,DP 療法は統計学的有意差を認めないものの,AP 療法に比べて良好な傾向にあり,有害事象も管理可能であった。術後化学療法レジメンは,AP 療法が標準治療ではあるが,海外や本邦での実地臨床を勘案すると,TC 療法等のタキサン製剤とプラチナ製剤併用療法も考慮される。

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CQ18
術後補助療法として黄体ホルモン療法は奨められるか?

推奨グレードD
術後補助療法としての黄体ホルモン療法は奨められない。

目的

術後補助療法としてのホルモン療法の有効性を検討する。

解説

術後ホルモン療法として,medroxyprogesterone acetate(MPA)やタモキシフェンなどが1970 年代より試みられてきた。MPA を使用した956 例での成績1)では,MPA 使用群とプラセボ群の生存率の間に差はなかった。英国2)やノルウェー3)からの報告では,黄体ホルモン療法は生存率の改善効果に乏しかった。さらに,1990 年代のイタリアでの検討4)で生存率改善の効果はなかった。また,オーストラリアなどでの1,000 例をこえる症例における術後MPA 補助療法の検討5)でも予後改善効果は乏しかった。2000 年代に入って行われたMPA とタモキシフェンの比較6)では,補助ホルモン療法の効果は乏しいが,タモキシフェンは合併症を有する症例には有用である可能性が報告された。

以上の報告をまとめたものとして,2011 年のCochrane Library のメタアナリシス7)において,子宮体癌における術後再発予防に黄体ホルモン剤投与が有効か否かの評価がなされた。子宮体癌の術後に黄体ホルモン剤の投与をランダム化比較して行われた7 つの臨床試験に含まれた4,556 例(3 試験は進行期Ⅰ期のみ,4 試験は進行癌も含む)を対象に,生存率,死亡原因,再発を評価した。生存率は,6 試験において術後黄体ホルモン療法で改善されなかった。子宮体癌の再発は,Ⅰ〜Ⅲ期を含む1 試験において黄体ホルモン療法で減少傾向はあるものの,子宮体癌による死亡や子宮体癌に関連しない心血管障害等による死亡に差を認めなかった。

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CQ19
術後放射線治療の適応は?

推奨グレードC1
骨盤内再発を減少させるための選択肢の一つとして考慮される。

アルゴリズム(フローチャート2)参照

目的

術後放射線治療の適応について検討する。

解説

子宮体癌に対する術式は欧米と本邦で異なる。本邦では,欧米と比較し骨盤リンパ節の郭清や腟壁切除が十分に行われる。術式の違いを考慮すると,欧米で確立した術後照射のエビデンスを,そのまま本邦の臨床に適用することは適切でないと考えられる。また,本邦での術後補助療法は,ほとんどの施設で化学療法が選択されている1)

子宮体癌の術後照射として全骨盤外部照射と腔内照射が用いられる。術後の再発リスクにより,それぞれ単独あるいは併用で行われる。術後照射は通常,術後1〜2 カ月時に開始される。手術と術後照射の間隔が局所制御率等の治療成績に与える影響について十分なエビデンスはないが,9 週間をこえると局所制御率が低下するとの報告がある2)。外部照射は1 回1.8〜2.0 Gy,45〜50 Gy/5 週が照射される。

GOG では,子宮全摘出術と両側付属器摘出術に骨盤および傍大動脈リンパ節郭清(生検)を施行したⅠb〜Ⅰc,Ⅱa〜Ⅱb 期(FIGO 1988 分類)を対象としたRCT(GOG99 試験)が行われた。全骨盤照射群と非照射群の2 年再発率はそれぞれ3%,12%で,2 年骨盤内単独再発率は1.6%,7.4%,無病生存率は94%と85%で,照射群で有意に良好であったが,生存率に有意差はなかった3)。本試験では,再発中リスク群の中で,G2 またはG3,脈管侵襲,外側1/3 をこえる筋層浸潤の3 因子に注目し,3 因子すべて,50 歳以上で2 因子,あるいは70 歳以上で1 因子の群を中・高リスク群と定義すると,術後照射の再発予防効果は中・高リスク群でより顕著であった。子宮体癌術後照射に関するメタアナリシスの結果が2007 年に報告された4, 5)。術後照射は骨盤内再発を減らすが生存率向上には寄与せず,高リスク群に限って推奨されると結論された。

術後骨盤内再発の好発部位は腟である。リンパ節検索を実施していない中リスク群に対する全骨盤照射の有用性について検討したPORTEC-1 試験では,再発例の73%が腟限局の再発であった6)。骨盤リンパ節再発や遠隔転移のリスクが低い症例では,腔内照射のみで骨盤内再発率の低下が期待される。ただし,腟単独再発は救済率が高いため(CQ26),術後腔内照射の生存率向上への寄与は不明である。以上を踏まえ,術後再発中・高リスク群〔60 歳をこえるⅠc 期(FIGO 1988 分類)でG1・G2 またはⅠb 期でG3,年齢によらずⅡa 期でG1・G2 あるいはG3 で筋層浸潤が1/2 未満〕を対象に,腔内照射と全骨盤照射とを比較するRCT(PORTEC-2 試験:NCT00376844)が行われた。両群で5 年腟再発率(1.8% vs.1.6%),骨盤内再発率(5.1% vs. 2.1%),全生存率(85% vs. 80%)に有意差は認められず,腔内照射は,全骨盤照射と同等の治療成績を得ることが示された。また,Grade 1〜2 の急性消化管有害事象は腔内照射群で有意に少なかった(13% vs. 54%)7)。この結果を踏まえ,低毒性の腔内照射が,術後照射として望ましいとする意見がある8-10)。Ⅰ・Ⅱ期術後再発中・高リスク群に対し,術後の腔内照射に補助化学療法を加えた治療法を全骨盤照射と比較するRCT(GOG249 試験)が行われ,現在経過観察中である。

Ⅰc 期(FIGO1988 分類)やG3 症例,Ⅱ期以上の進行例では,骨盤内再発と遠隔転移の発症率が高いため,化学療法と放射線治療の併用が報告されるようになった11, 12)。このような高リスク群を対象として全骨盤照射単独と同時化学放射線療法および補助化学療法とを比較する臨床試験(PORTEC-3 試験:NCT00411138)が行われ,現在,主たるendpoint に関して経過観察中である13)

欧米の各種ガイドライン(ASTRO, NCCN, ESMO-ESGO-ESTRO)では,術後照射を再発中・高リスク例に対する術後補助療法の推奨として位置付けている。ASTRO ガイドラインにおいて,リンパ節転移陽性例を含む高リスク症例に対する術後補助療法として,同時化学放射線療法とそれに続く化学療法を推奨している14)。NCCN ガイドライン2017 年版では,傍大動脈リンパ節領域を含めたextended field(拡大照射野)の放射線治療(拡大照射)をtumor-directed radiotherapy の一つと位置付け,外科的病期診断によりⅢ期と診断された症例における術後補助療法の選択肢に挙げている15)。拡大照射の報告は,症例の少ない後方視的研究のみ16-18)であることから,有効性と安全性のエビデンスは十分でないと考えられる。本邦では傍大動脈リンパ節領域まで十分な郭清を行うことが多く,拡大照射の適用は,より慎重な姿勢が望まれる。

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第4章 治療後の経過観察

総説

子宮体癌治療後の経過観察の目的は,再発の早期発見による予後の改善と治療により損なわれたQOL(quality of life)の維持・向上にある。前者に関して,本邦では経過観察のルーチン検査として,内診,腟断端細胞診,経腟超音波断層法検査,腫瘍マーカー測定,胸部X 線検査,CT などの画像検査などを組み合わせて行うことが一般的となっている(CQ20〜CQ22)。しかし,これが再発の早期発見や予後の改善に貢献するかどうかに関するエビデンスは少なく,施設ごとの基準や臨床医の判断に従って施行されているのが現状である。欧米の報告では,定期的経過観察による再発診断率よりも患者の自覚症状によって再発と診断される率の方が高く,定期的経過観察の必要性の是非が問われている。自覚症状に加えて,いわゆる身体診察のみで80%以上の再発が発見されると報告されており1),内診については一定の有用性が示されているものの,定期的経過観察および施行される各種検査の臨床的有用性を疑問視する報告が多い。しかし,その多くは後方視的検討であり,背景にバイアスがあることも指摘されている1)。さらに,欧米では本邦よりも費用対効果に重点が置かれるため,腫瘍マーカーやCT,MRI など画像検査も含めたコストのかかる検査は推奨されないことが多い(CQ22)。また腟断端細胞診に関しても,細胞診単独で再発が診断された症例が少ないこと,さらに医療経済的側面から,欧米ではルーチンの検査項目から削除される傾向があり(CQ21),SGO (Society of Gynecologic Oncology) recommendation1),ESMO ガイドライン2013 年版2)やNCCN ガイドライン2017 年版3)では必須項目とはされていない。しかし,欧米でも,再発の高リスク群に関しては身体診察と内診に加え腟断端細胞診,さらに症例によってはCA125 などによる経過観察は必要とする意見もある。以上より,治療後の具体的なフォローアップ,すなわちどの検査をルーチンに,あるいはどの時期に行うかに関しては,レビューや各種ガイドラインでも一定のコンセンサスは得られていない1-7)。今後,本邦においても定期的経過観察を見直し,本邦の医療状況と患者個々の状態に応じた経過観察の個別化が必要であると考えられる。

一方,経過観察のもう一つの目的にはcancer survivors のQOL の維持・向上があり,この観点からの細やかな,しかも長期間のフォローアップはますます重要となっている。しかし,各種治療の有害事象である更年期障害様症状,浮腫,排尿障害,セクシュアリティなどについての実態調査は十分ではなく,具体的サーベイランスに関するコンセンサスは得られていない。子宮体癌は基本的にエストロゲン感受性であるため,治療後の更年期障害様症状に対するホルモン補充療法(hormone replacement therapy;HRT)の施行に関しては過去に議論されてきた。Ⅰ・Ⅱ期(FIGO 1988 分類)症例を対象としたエストロゲン単独療法(estrogen therapy;ET)とプラセボ群を比較検討したランダム化二重盲検試験(GOG137 試験)8)では,ET 施行による再発リスクの上昇は認められていない。また,複数の症例対照研究とそれらのメタアナリシス9)からHRT 施行群の再発リスクは上昇することはないとされ,HRT は有用と思われる(CQ23)。治療後の HRT の施行に関する JGOG(Japanese Gynecologic Oncology Group) サーベイからは,本邦の婦人科医は概ねHRT には好意的であることが示されている10)。HRT の開始時期,黄体ホルモンの併用の必要性,投与期間など不明確な点も多く,今後ランダム化比較試験などでリスクを十分に検討する必要がある。

また,DNA ミスマッチ修復遺伝子の生殖細胞系列変異を原因とし,常染色体優性遺伝形式をとるLynch 症候群関連子宮体癌の頻度は,諸外国のデータからは子宮体癌全体の2〜6%とされており11-13),本邦でも同様の頻度が報告されている14)。Lynch 症候群家系女性の関連腫瘍の累積発生率(70 歳まで)は,子宮体癌28〜60%,大腸癌30〜52%,胃癌6〜13%,卵巣癌6〜14%,小腸癌3〜4%などとされている15)。したがって,Lynch 症候群と診断された患者やその血縁者に対しては,大腸,子宮・卵巣,胃,胆道・膵臓,尿路系の定期的な検診(サーベイランス)が提唱されており15),十分な説明と適切な予防医療や早期診療にも配慮する必要がある(Lynch 症候群のスクリーニング検査や遺伝カウンセリング,遺伝子検査に関しての詳細は他書を参照されたい)。

参考文献

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大腸癌研究会 編.遺伝性大腸癌診療ガイドライン2016 年版.金原出版,2016(ガイドライン)

CQ20
治療後の経過観察の間隔は?

推奨グレードC1
治療後の経過観察の間隔は,初回治療開始日を起点として
 1〜3 年目 :1〜4 カ月ごと
 4〜5 年目 :6 カ月ごと
 6 年目以降 :1 年ごと
を目安とする。

アルゴリズム(フローチャート4)参照

目的

治療後の経過観察の間隔について検討する。

解説

欧米では,再発例の75%以上が3 年以内であるという報告が多数あり1-10),無症状の再発例の早期発見が予後に関連せず,定期的経過観察の有用性が示されないため,経過観察の間隔を延ばすことを推奨する論文も多い1-5)。例えば,子宮体癌治療後の317 例を対象に,1 年目は3 カ月ごと,2 年目は4 カ月ごと,その後は6 カ月ごとに,内診,腟断端細胞診,胸部X 線検査(2 年に1 回の撮影)の定期的経過観察を行った報告では,経過観察で再発を診断された症例は11 例(21%),症状(出血,腹痛,骨盤痛,下肢浮腫,咳嗽,呼吸困難など)により再発を診断された症例は40 例(75%)であり,腟断端細胞診で再発がスクリーニングされた症例は1 例もみられなかった。再発後の生存率は,定期的経過観察で再発を診断された群と,症状により再発を診断された群では有意差はなく,定期的経過観察は再発の早期診断や生存率の向上に寄与しないと結論している2)。さらにI〜Ⅱ期の早期子宮体癌552 例を累積調査したところ81 例に再発が認められたが,無症状で診断されたのは8 例(10%)のみで,定期的経過観察の有用性は認められないとの報告もある11)。本邦の報告でも同様に,無症状再発例と有症状再発例の生存率に有意差は認められていない12)

一方,定期的経過観察が有用であるとの報告もある10, 13, 14)。本邦での子宮体癌の治療後271 症例を対象とした検討では,1 年以内は1 カ月ごと,2 年以内は4〜6 カ月ごと,3 年以内は6 カ月ごと,4〜5 年経過した症例は1 年に1 回の定期的経過観察を行ったところ,29 例(11%)に再発が認められ,そのうち1 年以内の再発が12 例(41%),2 年以内の再発が27 例(93%),3 年以内には全例(100%)が再発し,無症状再発で化学療法を施行した症例の方が,有意差はないが,生存期間は長い傾向があったと報告している13)

経過観察の間隔についてのエビデンスはさらに不明確で,報告によりプロトコールに差異があるため,至適なプロトコールを提示するのは困難である。子宮体癌治療後の経過観察についての12 報告および4 ガイドラインのレビューによれば,1 年以内は2〜3 カ月ごと,2 年以内は3〜6 カ月ごと,3〜5 年以内は6〜12 カ月ごと,5 年以上経過した症例では1 年に1 回の経過観察を行うプロトコールが多くみられた。検査内容として,身体診察,腟断端細胞診が主に行われていた9)。国外のガイドラインをみると,NCCN ガイドライン2017 年版では,2〜3 年以内は3〜6 カ月ごと,それ以降は6〜12 カ月ごとの身体診察と内診による経過観察を推奨している15)。ESMO ガイドライン2013 年版では,治療後2 年以内は3〜4 カ月ごと,3〜5 年は6 カ月ごとの身体診察と内診を推奨している16)

いくつかの論文でも指摘されているように,再発の危険度は主に進行期,組織型,手術の完遂度により異なるため,症例によって再発リスクを考慮した上で患者個々の経過観察計画を考慮する必要がある。また,再発低リスクの症例が1 年以内に再発することも稀ではないため,治療直後の経過観察の間隔は比較的短期間が望ましい。さらに,G1 の再発例の約20%は初回治療後5 年以降に再発するとの報告14)があることから,5 年以上の経過観察も考慮される。

参考文献

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CQ21
治療後の経過観察に内診や腟断端細胞診を行うべきか?

推奨グレードA
  1. 骨盤内再発の診断のために内診を奨める。
推奨グレードC1
  1. 腟断端再発の診断のために細胞診が考慮される。

アルゴリズム(フローチャート4)参照

目的

術後経過観察における内診と細胞診の有用性を検討する。

解説

子宮体癌再発の多くは初回治療から3 年以内に発見され,定期的な受診による再発診断率よりも患者が自覚症状のため受診して再発と診断された率の方が高いとする報告が多い。しかし,再発部位は30〜65%が骨盤内であり,内診・直腸診による通常の婦人科的診察で再発を診断できる症例は少なくないため1-9),内診・直腸診は不可欠である。

一方,定期的経過観察の際に施行される腟断端細胞診については,多くの後方視的研究からその有用性は示されていないか,あるいは極めて限定的とされている6, 7, 10-16)。すなわち腟断端の単独再発はG1 症例では少ないとの報告や10),無症状で腟断端細胞診のみで再発が発見される症例は少数(0.5%)との報告もあり11),さらに再発治療後の局所制御率や予後が比較的良好とされている(CQ29)。

腟断端再発診断を目的とした細胞診は,その診断率のみならず医療経済的な側面からも,欧米では定期的な経過観察時の検査としては否定的な意見が多い7, 10-12, 14)。腟断端細胞診に関しては,ESMO ガイドライン2013 年版16)では推奨されておらず,NCCN ガイドライン2017 年版17)にも必須項目には含まれていない。

海外では術後治療として放射線治療を施行される症例が多いため,腟断端再発症例が減少していることも指摘されており,細胞診の有効性にも影響を与えていることが示されている18)。一方,本邦では術後治療として化学療法が行われることが多く,治療背景が異なるため,海外の後方視的研究の成績をそのままサーベイランスに適用するのは困難である。本邦での腟断端細胞診の診断的,医療経済的有用性に関する調査研究はないことから,現時点では医療状況と患者個々の状態に応じた経過観察の個別化が必要と考えられる。

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CQ22
治療後の経過観察に血清腫瘍マーカーの測定や画像検査を行うべきか?

推奨グレードC1
  1. 血清腫瘍マーカーとしてCA125 やCA19-9 の測定を考慮する。
推奨グレードC1
  1. 個々の症例の再発リスクを勘案した上で,適宜胸部X 線検査やCT などの画像検査を考慮する。
推奨グレードB
  1. 再発が疑われた場合の病巣の検索にはCT,MRI やPET/CT などの画像検査を奨める。

アルゴリズム(フローチャート4)参照

目的

初回治療後の経過観察における血清腫瘍マーカーの測定や画像検査の有用性を検討する。

解説

子宮体癌の腫瘍マーカーとして血清CA125 の陽性率は,腫瘍の子宮外進展や脈管侵襲により上昇する傾向があると報告されている1)。治療後の経過観察においては再発の早期発見にCA125 が有用とされ,主に腹腔内再発時にはその画像検査,細胞診,組織診などによる再発確認診断に数カ月先行して上昇するとの報告がある1-4)。またCA125 とCA19-9 を組み合わせることで診断率が上昇するという報告もある3)。しかし,無症候性再発症例でCA125 値の上昇によって再発が発見された場合には,遠隔転移や腹腔内再発のことが多く,既存の治療法では再発治療後の生存の改善には結び付かないとする報告が多く,医療経済的側面からも症例を選んで行うべきとする文献もある5-9)。NCCN ガイドライン2017 年版では,CA125 の測定は治療前に高値であった症例を適応としている10)

子宮体癌の再発は50〜70%が骨盤外である11-13)。そのうち遠隔転移部位として肺転移は5〜23%と高頻度であり11-14),胸部X 線検査は再発のスクリーニングとして有用であると考えられる。しかし,無症候性再発症例のうち胸部X 線検査でスクリーニングされた頻度は0〜55%で,標準的な検査として採用すべきか否かの結論は報告により様々である4, 6, 14, 15)

経過観察中の諸検査によって無症状で再発が発見される例はごく少数で,大多数の再発は有症状であり6, 16-18),CT,MRI,PET/CT などの画像検査がその検索に用いられるのが欧米では一般的である。さらに,無症状と有症状での再発症例の予後に有意差はないとするデータ6, 12, 17, 18)も画像検査がルーチン化されない一因となっている。

CT は短時間に比較的広い範囲の撮影が可能であるため,腹腔内,骨盤・傍大動脈リンパ節をはじめとする転移巣の検出,再発の有無を検索するには有用である4, 19)。また,PET/CT も再発が疑われた場合には有用な検査方法である20, 21)。しかし,CT などの画像検査で再発が発見されても予後の改善は証明されていないという報告21, 22)もある。

一方,画像検査を含めた定期的経過観察により診断された無症状再発は,有症状再発に比べ,再発後の予後は良好との報告もある15, 23, 24)。画像検査を定期的に行っている本邦から定期的経過観察によって発見された無症状再発は,有症状再発に比べ,有意差はないものの再発後の予後が良好であったことが報告されている15)

NCCN ガイドライン2017 年版では,臨床的に適応がある場合にはCT,MRI,PET を行うとされており10),個々の症例の再発リスクを勘案した上での経過観察の計画と画像診断の施行が実際的と思われる。

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CQ23
治療後のホルモン補充療法(HRT)は奨められるか?

推奨グレードC1
ベネフィットとリスクを十分に説明した上でHRT を行うことを考慮する。

明日への提言

Cancer survivors のQOL の維持・向上のためにはHRT は重要な役割を担うが,HRT のリスクを正確に評価するためのさらなる前方視的試験により,真に恩恵を受ける対象者の選択,標準的な治療方法(開始時期,投与薬剤,投与期間)などが明確になることに期待したい。


目的

治療後のHRT と再発のリスクを検討する。

解説

医原性閉経による更年期障害様症状は自然閉経よりも程度が重いことが知られている1)。米国Nurses’ Health Study では,45 歳未満で卵巣摘出術が行われた場合,乳がんの発症率の減少が認められるものの,心血管系疾患の発症のリスク(ハザード比1.26)と,すべての原因による死亡率が増加することが示されている2)。子宮体癌手術では,若年者であっても卵巣温存には慎重な対応が望まれている。したがって,心血管系イベント以外に脂質異常症や骨塩量の低下など,卵巣摘出によって惹起される様々な事象を理解し適切な対応を行うことがQOL の維持・向上に重要である。

治療後の更年期障害様症状にはHRT が治療の選択肢の一つとなる。Ⅰ・Ⅱ期(FIGO 1988 分類)を対象としたエストロゲン単独療法(estrogen therapy;ET)とプラセボ群を比較検討したランダム化二重盲検試験(GOG137 試験:NCT00002976)では,ET 群の618 例中の再発は14 例(2.3%),対照群では618 例中の再発は12 例(1.9%)であり,ET は少なくとも再発率を増加させないことが示されている3)。その他の症例対照研究でも,術後のET 施行群と非施行群では再発のリスクに有意差は認められていない4, 5)。また,治療後にエストロゲンと黄体ホルモンの併用療法(estrogen progestogen therapy;EPT)施行群と非施行群を比べた症例対照研究でも,EPT 施行群で再発イベントに差がないか,あるいは低下していた6, 7)。治療後のHRT の再発リスクを検討したこれらの報告のメタアナリシスによると,HRT 施行群の再発リスクは上昇することはなく,むしろ低下していた8)

フランスの子宮体癌治療に関するガイドライン(2011 年)では,50 歳未満の女性の治療後にはET は禁忌ではなく更年期障害様症状の治療となり得ること,50 歳以上では一般健常人における適応と禁忌に従うこととされている9)

以上より,子宮体癌治療後のHRT は再発の危険性を高めないと考えられるが,これまでの報告では対象としてⅠ〜Ⅱ期症例が大多数で,年齢,組織学的異型度,HRT の開始時期,エストロゲンの種類・量や黄体ホルモン併用の有無などのレジメン,投与期間,フォローアップ期間など報告によりばらつき(セレクション・バイアス)があり,これら不明確な点に関しては今後,前方視的研究などで検討する必要がある。HRT の施行にあたっては,ベネフィットとリスクについて十分な説明を行い同意を得ることが重要である(HRT の施行に際しては,HRT ガイドライン10)を参照されたい)。

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第5章 進行・再発癌の治療

総説

Ⅰ 進行癌

術前にⅢ・Ⅳ期と考えられる進行子宮体癌症例の治療においては,個々の状況に応じて手術療法,化学療法,放射線治療,あるいはホルモン療法を用いて個別化した治療方針の立案が求められる。治療法の選択は病巣の部位や患者のperformance status(PS),合併症,ホルモン受容体の有無などに基づいて決定される。一般的に腫瘍減量が可能な場合にはまず手術療法が選択される(CQ24)。手術により完全切除が可能であった場合には,術後に化学療法を中心とした追加治療が計画される(CQ16CQ28)。腫瘍減量術が困難な場合や手術後に残存腫瘍がある場合には,化学療法,ホルモン療法,放射線治療のいずれかが状況により選択されるが,基本的に根治が望めないため,治療の選択にあたって患者のquality of life(QOL)に配慮することが重要である。

治療開始前に子宮外進展が判明している場合には,まず,子宮摘出と腫瘍減量術が可能かどうかの判断が必要である。一般的には,Ⅲ期であれば完全切除を目指し子宮全摘出術と両側付属器摘出術を基本に骨盤・傍大動脈リンパ節郭清(生検)や大網切除術を施行する。Ⅳ期に対しては腫瘍減量術が予後を改善することは直接的には証明されていないものの,optimal surgery が施行できた症例では術後に化学療法や放射線治療などの補助療法を行うことにより予後が改善されることが示されている1-6)CQ24)。以上よりⅢ・Ⅳ期の進行子宮体癌には術前に十分な評価を行い,optimal surgery が可能と判断された場合には積極的な手術が考慮される。一方で,遠隔転移などによりoptimal surgery が困難で病巣残存が予想される症例に対して術前の化学療法を行うことは,エビデンスに乏しいものの数少ない治療法の選択肢となる7)CQ25)。術前の放射線治療は,欧米で子宮頸部浸潤や子宮傍(結合)組織浸潤例に施行した報告があるが8),本邦では子宮頸部浸潤のみの場合には手術で切除することが多く,術前照射はほとんど行われていないのが現状である。

進行子宮体癌に対する化学療法としては,現時点ではGOG107 試験(AP vs. A)9),EORTC55872 試験(AP vs. A)10)などの結果からAP 療法〔アドリアマイシン(ドキソルビシン塩酸塩)+シスプラチン〕が標準治療である(CQ28)。また,GOG177 試験でTAP 療法(パクリタキセル+AP 療法)は奏効率,無病生存期間,全生存期間においてAP 療法を上回ることが示されたが,神経障害をはじめとする毒性はTAP 療法でより高率であった点に留意すべきである11)。TC 療法(パクリタキセル+カルボプラチン)は投与が簡便で管理が比較的容易なことから,明確なエビデンスのないまま国内外の実地臨床で広く用いられている。進行・再発子宮体癌を対象とした第Ⅱ相試験でもTC 療法は高い奏効率(50〜78%)が報告されている12, 13)。以上より,本ガイドラインでは進行子宮体癌に対して有効性や安全性を鑑み,標準治療のAP 療法以外に,TAP 療法やTC 療法も考慮するとした(CQ28)。

切除不能の局所進行子宮体癌を対象とした放射線治療単独の効果についてまとめた報告はないが,腫瘍制御を目標にする場合には,外部照射と腔内照射の併用を原則とする(CQ15)。現時点で進行した子宮体癌に対して放射線治療は,単発や限局した残存病巣に対する照射,もしくは症状緩和を目的とした照射に限定して用いられている(CQ29)。化学療法や放射線治療以外にも,エストロゲン受容体(estrogen receptor;ER),プロゲステロン受容体(progesterone receptor;PgR)陽性例においてはmedroxyprogesterone acetate(MPA)によるホルモン療法の効果が期待できる14)CQ30)。

Ⅱ 再発癌

再発例の根治は非常に困難であり,治療の立案にあたっては治療効果のみならずQOL に対する十分な配慮が必要である。患者の状況や再発部位によって適宜,手術療法や放射線治療,ホルモン療法,化学療法,あるいはbest supportive care(BSC)を選択する。

再発癌の中で最も根治が望める可能性があるのは腟断端再発である。治療には放射線治療が推奨され,術後腟断端再発に対する放射線治療症例の解析では,5 年骨盤内制御率は約40〜80%,5 年生存率は約30〜75%と報告されている15-19)。照射の方法としては,外部照射と小線源治療(腔内照射や組織内照射)の併用,またはそれぞれ単独で行われる。腟断端再発に対する手術療法の報告はほとんどないが,完全切除可能な数少ない再発部位であり,切除可能であれば手術療法も考慮する(CQ26)。

腟断端以外の再発部位でも,単発あるいは限局した腫瘍で,手術により残存なく摘出が可能な場合には手術療法も選択肢となる20-26)。この場合にも「根治性」と「侵襲性」のバランスを考慮した患者選択が重要である(CQ27)。腟断端以外の再発癌に対する放射線治療は,初回治療での照射歴や再発部位に応じて考慮される。単発あるいは限局した腫瘍でも,切除不能な部位の再発や,手術が患者のQOL を害すると考えられる場合には,放射線治療も選択肢となる。この場合には,通常は全骨盤照射などの外照射が施行されるが,骨盤内再発に対しては放射線治療単独では予後不良との報告もあり27),化学療法との組み合わせが検討されている。近年では強度変調放射線治療(intensity-modulated radiation therapy;IMRT)や体幹部定位放射線治療(stereotactic body radiation therapy;SBRT)などの高精度放射線治療も再発例の放射線治療として検討されており,傍大動脈リンパ節再発などに対して良好な成績が報告されている28-30)。その他,腟壁再発に対する出血や骨転移に対する疼痛のコントロール,脳転移による急激な症状悪化の予防に放射線治療が有用な場合もある(CQ29)。

多発性の再発や,局所性の再発でも前治療や再発部位によって手術や放射線治療が選択できない場合には,化学療法やホルモン療法が選択される。化学療法を選択する場合,患者のQOL に対する十分な配慮が必要である。メタアナリシスによれば,治療強度が大きいレジメンほど生存期間の延長に貢献するが,毒性も増強することが報告されている31)。本ガイドラインでは再発癌に対する化学療法としてAP 療法やTC 療法の2 剤併用療法あるいは単剤療法が妥当と考えるが,薬剤の選択にあたっては,患者の状態や前治療の内容を考慮する必要がある(CQ28)。特にアドリアマイシン(ドキソルビシン塩酸塩)に関しては,心毒性に対して用量制限(500 mg/m2)があることに注意して化学療法を行う。ER,PgR 陽性例においてはMPA によるホルモン療法の効果が期待できる14)。ホルモン療法は血栓症以外に目立った毒性はなく,高齢者やPS の悪い症例にも使用しやすい(CQ30)。

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CQ24
術前にⅢ・Ⅳ期と考えられる症例に対して手術療法は奨められるか?

推奨グレードB
  1. 推定Ⅲ期症例に対しては,手術療法を奨める。
推奨グレードC1
  1. 推定Ⅳ期症例に対しては,子宮全摘出術と可及的腫瘍減量術が可能であれば,手術療法を提案する。

アルゴリズム(フローチャート3)参照

目的

術前にⅢ・Ⅳ期と考えられる進行癌に対する手術療法の有用性を検討する。

解説

子宮体癌Ⅲ・Ⅳ期に対する手術適応・術式の有用性を検証した前方視的臨床試験は存在しないが,子宮外病変を有する病態であっても初回治療として手術療法が行われることが多く,諸外国のガイドラインもそれを支持している1, 2)

Ⅲ期は完全切除が可能と考えられ,初回治療として手術療法を行うことでコンセンサスが得られている。その場合,基本術式は「子宮全摘出術+両側付属器摘出術±大網切除術±後腹膜リンパ節郭清(生検)」である(CQ01〜CQ05)。一方で,腟壁や子宮傍(結合)組織への進展の程度などにより完全摘出が困難と考えられるⅢB 期や,多様な病態を呈しているⅣ期に対する手術の可否や術式は,その「根治性」と「侵襲性」のバランスから個別に判断される。

子宮外進展を伴うⅢ期症例において,子宮外病変はリンパ節(39〜62%)や卵巣(15%)などにみられることが多い3, 4)。これらⅢA 期およびⅢC 期症例は上記の基本術式で完全切除が可能である。5 年全生存率は,ⅢA 期が85%5),ⅢC 期が56〜65%4, 6, 7)と報告されている。さらにⅢC1 期の5 年生存率66%に対し,ⅢC2 期50%5)と,ⅢA 期と比較してⅢC 期,特にⅢC2 期の成績は不良である。ⅢC 期の重要な独立した予後因子として,筋層浸潤1/2 以上,非類内膜癌,骨盤リンパ節転移部位の数と術後化学療法の有無が指摘されている8-10)。肉眼的に転移と判断されるリンパ節の摘出は,遠隔転移再発のリスクを考慮した術後化学療法とともにⅢC 期の生存率の改善に寄与するという報告がある7, 11)。複数の骨盤リンパ節転移を有する症例においては傍大動脈リンパ節郭清(生検)が予後に寄与するという報告もある10)。骨盤腹膜播種巣の切除などの拡大術式によって,肉眼的残存病巣をなくすことができた症例の生存期間は有意に延長すると報告されている12)。しかし,腟転移や子宮傍(結合)組織浸潤を認めるⅢB 期については,しばしば術中に診断され,また症例数が少ないため(0.2〜0.6%),まとまった報告はないが5, 13),NCCN ガイドライン2017 年版では1),放射線治療または全身療法が推奨されている。しかし,5 年全生存率は67%と成績は不良であり,切除可能であれば手術を行うことが望ましいとされている5, 13)

膀胱・直腸粘膜浸潤のあるⅣA 期の治療成績に関しても,詳細な報告はない。NCCN ガイドライン2017 年版では1),膀胱・直腸浸潤例には放射線治療が選択され,症例によって化学療法や手術療法の併用が推奨されている。子宮外進展を伴う症例において,子宮摘出が困難な症例を除き,子宮摘出術後に可及的な腫瘍減量術が可能であれば手術療法を検討する1, 14, 15)。子宮体癌Ⅳ期に対する腫瘍減量術が予後を改善することを証明したランダム化比較試験(randomized controlled trial;RCT)の報告はないが,従来の文献を検討すると,腫瘍減量を図ることにより有意に予後が改善したという報告が多い16-22)。その中で,optimal surgery を施行できたものが予後良好とされているが,optimal の定義は,完全切除から,残存腫瘍径1 cm 以下,2 cm 以下と様々である。これらの文献の中で,optimal な腫瘍減量術を施行し得た頻度は35〜69%と高率であり,1 つの報告21)を除いてoptimal surgery 施行例が有意に良好な予後を示している。しかし,いずれの報告も後方視的研究の結果であり,大半の症例で術後に化学療法あるいは放射線治療が併用されており,手術のみの有用性は不明であるが,腫瘍減量術は,術後補助療法を組み合わせることにより予後を改善する可能性がある。本邦で行われた,初回治療として手術療法が施行されたⅣB 期248 例を対象とした多施設共同調査研究では,PS,組織型,術後補助療法の有無および残存腫瘍径が,独立した予後因子として抽出されている22)

FIGO 進行期分類では,鼠径リンパ節転移を有する症例はⅣB 期に相当する。しかし鼠径リンパ節転移の頻度はⅣB 期症例のうち4%程度22)であり,子宮体癌症例全体を対象とした場合,その発生頻度は極めて稀と言える。そのため,鼠径リンパ節生検を日常診療として行うことは奨められないが,術前の画像診断などで腫大したリンパ節が認められた場合には診断的意義があると考えられる。

子宮体癌の骨盤外腹腔内進展に対する腫瘍減量術は有用である可能性が高く,本術式を行う場合,目指すべきは完全切除である。しかし,全例に腫瘍減量術が適応となるわけではなく,子宮全摘出術が可能な症例であっても,PS や合併症などを十分に検討した上で,腹腔内腫瘍の減量手術,あるいは化学療法,放射線治療,対症療法などを選択すべきである。

参考文献

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CQ25
切除困難または病巣残存が予想される進行癌に対して術前治療は奨められるか?

推奨グレードC1
周辺臓器への浸潤があり切除困難な症例や,遠隔転移があり病巣残存が予想される症例に対して,術前化学療法を提案する。

アルゴリズム(フローチャート3)参照

目的

切除困難または病巣残存が予想される進行癌に対する術前治療の意義について検討する。

解説

切除困難または病巣残存が予想される進行癌に対する術前化学療法は,症例報告とケースシリーズが多く1-4),有用性を示すエビデンスは乏しいのが実情である。

単施設において,Ⅳ期の漿液性癌(混合癌を含む)に対して,化学療法先行群34 例と手術先行群10 例を後方視的に検討した研究では,両群で無増悪生存期間(progression-free survival;PFS),全生存期間(overall survival;OS)に有意差を認めなかったという報告がある5)。また,多施設において,ⅣB 期に対して化学療法先行群125 例と手術先行群279 例を後方視的に検討した研究では,手術先行群においてOS が良好であったが,化学療法後に手術可能であった症例群においては,手術先行群と同程度のOS が得られたと報告されている6)。一方,唯一の前方視的研究として腹腔鏡で確認した腹腔内播種のⅣ期(FIGO 2008 分類)30 例(90%が漿液性癌)に対して,3〜4 サイクルの化学療法(83%がTC 療法)を施行後,腫瘍摘出術を行った結果,24 例(80%)は残存腫瘍1 cm 以下(22 例は残存腫瘍なし)になったとする報告がある7)。NCCN ガイドライン2017 年版においても,初回の臨床所見で切除不能の子宮外骨盤内病変を有する場合の初回治療として,化学療法および反応に基づいて外科的切除(または放射線治療の再評価)と記載され,化学療法が選択肢とされている8)

以上より,未だエビデンスレベルは十分ではないものの,周辺臓器への直接浸潤をきたしている症例や,画像上明らかな遠隔転移が示唆され完全切除困難で病巣残存が予想される進行癌に対して,術前化学療法を選択することは考慮される。本邦においても,ⅣB 期の症例に対する寛解導入化学療法後の腫瘍摘出術に関するfeasibility study としてJGOG2046 試験(UMIN000012805)が行われ,現在追跡調査期間中である。

術前放射線治療9-11)も術前化学療法同様,有効性を示すだけのエビデンスはほとんどない。

頸部浸潤あるいは子宮傍(結合)組織への浸潤を伴う子宮体癌36 例に対して,放射線治療もしくは同時化学放射線療法を行った後に筋膜外術式で子宮摘出を行った報告において,33 例(92%)が予定治療を完遂し,手術を施行した全例において切除断端陰性で子宮摘出が可能であったとされている12)。なお,NCCN ガイドライン2017 年版においては,頸部浸潤の疑いまたは肉眼的頸部浸潤例で初回手術が適切ではない症例に対して術前放射線治療(あるいは化学療法の併用)が選択肢となりうるとされている8)。一方で,本邦では頸部浸潤例のみであれば準広汎子宮全摘出術あるいは広汎子宮全摘出術を選択し根治手術を行うことが多く(CQ02),一般に術前の放射線治療は行われていないのが現状である。

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CQ26
腟断端再発に対する治療法は?

推奨グレードB
  1. 放射線治療を奨める。
推奨グレードC1
  1. 手術療法も考慮できる。

アルゴリズム(フローチャート5)参照

目的

腟断端再発に対する適切な治療法について検討する。

解説

子宮体癌の再発部位としては,腟を含めた骨盤内のみならず,癌性腹膜炎を伴った腹腔内,肺,肝,リンパ節などの遠隔部位の再発も多い。また,多くは多発性であることから,根治的な治療を行える場合は少ないが,そのうち,腟断端再発は適切な治療により二次的な治癒が期待できる。他部位に病変を有さない術後腟断端再発例に対しては,根治的意図を持った治療方針で臨むべきであると考えられる。

術後腟断端再発に対する放射線治療症例の遡及解析で,5 年骨盤内制御率は約40〜80%,5 年生存率は約30〜75%と報告されている1-5)。放射線治療の方法としては,外部照射と小線源治療(腔内照射や組織内照射)の併用,またはそれぞれの単独として治療される。比較的多数例の検討で,外部照射と小線源治療の併用療法の骨盤内制御率が良好と報告されている4)。これらの報告はいずれも症例集積研究結果であるが,American College of Radiology(ACR)では,腟断端部の孤発性の再発に対する治療として,外部照射と小線源治療の併用を推奨している6)。小線源治療として,本邦では腔内照射が実施されることが多いが,再発腫瘍が大きい場合には組織内照射の適用が考慮される7)。腟断端再発に対する放射線治療では,膀胱や腸管(直腸・小腸)の晩期有害事象の発生率が約10%と報告されている1, 4)。術後の腟断端部には小腸が近接し,癒着の可能性もあることが一因と考えられる。小線源治療の実施にあたっては,3 次元画像誘導小線源治療(3 dimensional image-guided brachytherapy;3D-IGBT)で腸管への照射線量を確認し調整した上で行うことが望ましく6, 7),特に組織内照射では3 次元治療計画は必須である7)。3D-IGBT で治療を実施した場合,術後照射未施行例では重篤な有害事象は1/31 例(3%)のみであったと報告されている8)

局所制御に関わる因子としては,初発病期(low stage の方が予後良好)1, 6, 9),再発腫瘍のサイズ(小さいほうが予後良好)1, 2),部位(遠位側断端の方が予後良好)2, 6),再発までの期間(長ければ予後良好)1, 2, 9)などの腫瘍因子のほか,線量4)や放射線治療方法1, 4)などの治療因子が挙げられている。

本邦では術後補助療法として放射線治療が用いられることが少ないため,腟断端再発に対する初回治療として放射線治療を適用しやすいと考えられる。一方,術後照射施行後の再発では十分量の照射は困難であり,術後照射未施行例と比較して治療成績は不良である10)ため,手術の選択を考慮する。

腟断端再発に対する手術療法の報告はほとんどない。一般的に再発癌に対する手術では,術後に腫瘍の遺残がないことが予後改善のための条件である11, 12)が,腟断端は完全切除可能な数少ない再発部位であり,手術療法も十分に考慮される。単施設において腟断端単独再発を対象とした後方視的検討において,手術療法の良好な成績を示す報告がある13)

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CQ27
腟断端以外に再発した症例に対して手術療法は奨められるか?

推奨グレードC1
  1. 孤発再発症例で完全切除が可能であれば,手術療法を提案する。
推奨グレードC1
  1. 肺転移症例に対しては,腫瘍径が小さく,転移数が少数であれば,手術療法を提案する。

アルゴリズム(フローチャート5)参照

目的

腟断端部以外に発生した再発腫瘍に対する手術療法の意義について検討する。

解説

子宮体癌の再発治療について,NCCN ガイドライン2017 年版では孤発再発例に対し「手術療法または放射線治療を考慮する」とあり,多発性再発の場合は,化学療法またはホルモン療法などによる全身療法の適応とされている1)。再発癌に対する手術療法は,完全切除が可能であることが予後改善のための条件となり2-8),症例の選択が重要である。手術療法あるいは放射線治療の選択,手術療法を適用する場合の術式は,その「根治性」と「侵襲性」のバランスから個別に判断される(CQ29)。

骨盤内再発の頻度は,再発低リスク群において8 年で5%,再発高リスク群において3 年で26%と報告されている9)。再発病巣が骨盤内に限局している場合(腟断端再発を除く),骨盤除臓術により良好な予後が得られるとの報告がある2, 3, 10-13)。しかし,骨盤除臓術は非常に侵襲の大きな手術であり,腸管・尿路系の瘻孔形成,感染症,深部静脈血栓症など周術期に重篤な合併症のリスクがある。術後放射線治療を施行した範囲内の再発であればもちろんのこと,一般的に化学療法施行後の再発腫瘍は化学療法に抵抗性であることを考えた場合,再発巣の完全切除が可能な症例に限り骨盤除臓術が適応となる。当然,手術手技を十分に習得した婦人科腫瘍専門医が常勤し,集中治療室での管理を含めた術後管理が可能で,他科との連携が万全な施設であることが必要である。

肺転移に関しては,単発であればその切除は予後に貢献すると報告されている4, 5)。片側肺でかつ再発病巣が5 個以内の症例や,腫瘍径4 cm 未満の単発肺転移例では肺の部分切除が有用であるとする報告がみられる14, 15)。また肺の転移数が3 個以下,腫瘍径が3 cm 未満の症例で肺の部分切除を行った結果,無病期間が12 カ月以上で予後が良いとする報告16)もある。子宮体癌の転移に限定した報告は少ないが,体幹部定位放射線治療(stereotactic body radiation therapy;SBRT)が単発あるいは少数の転移に対し有効であることが示されており,治療選択肢の一つと考えられる(CQ29)。以上のことから,肺転移の症例について手術の適応を考える場合には,それぞれの症例においてSBRT との比較を含め十分な検討が必要である。

2014 年4 月から早期子宮体癌に対する腹腔鏡下子宮悪性腫瘍手術が保険収載されるようになり,その手術件数は増加傾向にある。そのため,他領域における腹腔鏡下手術でしばしば報告のあるトロカー挿入部転移(port-site metastasis)が子宮体癌手術でも報告されている17, 18)。手術創への再発という定義で観察した場合,その発症頻度は開腹手術0.11%に対し,腹腔鏡下手術0.2%,ロボット支援下手術0.57%と鏡視下手術に多い傾向があった17)。孤発性のトロカー挿入部転移に対しては,手術や放射線治療などの局所治療が選択される報告が多い17, 18)

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CQ28
切除不能または残存病巣を有する進行・再発癌に対して化学療法は奨められるか?

推奨グレードB
  1. 進行症例にはAP 療法を奨める。
推奨グレードC1
  1. 進行症例には有効性・安全性からはTAP 療法,あるいはTC 療法も考慮する。
推奨グレードC1
  1. 再発癌には,患者の状況および前治療で用いられた薬剤を勘案して,AP 療法,TC 療法あるいは単剤療法を提案する。

アルゴリズム(フローチャート5)参照

目的

進行・再発子宮体癌に対する化学療法の有用性を検討し,推奨されるレジメンを検討する。

解説

進行・再発癌に対して,単剤で有効性が確認されている薬剤は,シスプラチン(奏効率20〜42%)1),カルボプラチン(同24〜33%)1-3)などのプラチナ製剤,アドリアマイシン(ドキソルビシン塩酸塩)(同17〜37%)1, 4, 5),エピルビシン(同26%)1)などのアントラサイクリン系薬剤,そしてパクリタキセル(同27〜36%)1, 6-8),ドセタキセル(同21〜31%)1, 9)などのタキサン製剤が挙げられる。

GOG107 試験は計測可能病変を有する進行・再発例に対するアドリアマイシン(ドキソルビシン塩酸塩)単剤療法(60 mg/m2,3 週毎)とAP 療法〔アドリアマイシン(ドキソルビシン塩酸塩)60 mg/m2+シスプラチン50 mg/m2,3 週毎〕を比較する第Ⅲ相試験である10)。その結果,奏効率(25% vs. 42%),無増悪生存期間(中央値3.8 カ月 vs. 5.7 カ月)でAP 療法が有意に優れていることが示された。また同様の第Ⅲ相試験であるEORTC55872 試験でも,奏効率で17% vs. 43%とAP 療法が上回った5)。これらの結果からAP 療法が標準治療となった。その後,計測可能病変を有する進行・再発例を対象にAP 療法とTAP 療法〔パクリタキセル160 mg/m2 +アドリアマイシン(ドキソルビシン塩酸塩)45 mg/m2 +シスプラチン50 mg/m2,3 週毎+G-CSF 製剤予防投与〕を比較する第Ⅲ相試験(GOG177 試験)が行われた11)。奏効率(34% vs. 57%),無増悪生存期間(中央値5.3 カ月 vs. 8.3 カ月),全生存期間(中央値12.3 カ月 vs. 15.3 カ月)においてTAP 療法が有意に上回ることが示された。しかし,末梢神経障害(Grade 2 以上:5% vs. 39%)をはじめとする毒性はTAP 療法で高率に発生し,毒性による中止も高率であった(9% vs. 24%)。

明確なエビデンスのないまま広く用いられているTC 療法は,進行・再発例を対象とした第Ⅱ相試験で高い奏効率(50〜78%)が報告されている12, 13)。本邦では,進行・再発例に対するDP 療法(ドセタキセル70 mg/m2 +シスプラチン60 mg/m2,3 週毎),DC 療法(ドセタキセル60 mg/m2 +カルボプラチンAUC=6,3 週毎),TC 療法(パクリタキセル180 mg/m2 +カルボプラチンAUC=6,3 週毎)のランダム化第Ⅱ 相試験(JGOG2041 試験:UMINC 000000170)が行われ,奏効率はそれぞれ52%,48%,60%,毒性は各アーム間で有意差を認めなかった13)。しかし,現在までこれらのレジメンとAP 療法を直接比較したデータはない。GOG では,進行・再発例におけるTC 療法(パクリタキセル175 mg/m2 +カルボプラチンAUC=6,3 週毎)のTAP 療法〔パクリタキセル160 mg/m2 +アドリアマイシン(ドキソルビシン塩酸塩)45 mg/m2 +シスプラチン50 mg/m2,3 週毎+G-CSF 製剤予防投与〕に対する非劣性(マージン:ハザード比=1.2)を確認する第Ⅲ相試験(GOG209 試験:NCT 00063999)を行った14)。中間解析の結果では,無増悪生存期間,全生存期間ともTC 療法のハザード比は非劣性マージンをこえず,Grade 2 以上の末梢神経障害は19% vs. 26%とTAP 療法で高率に発生した。

本邦では,再発例の多くは化学療法の既往があるため,薬剤の選択には前治療を考慮する必要がある。しかし,欧米の臨床試験には化学療法既往例は含まれておらず5, 10, 11),エビデンスをそのまま当てはめることはできない。化学療法後の再発例に対して様々な単剤化学療法の第Ⅱ相試験が行われたが,いずれも奏効率は10%程度と低く,有効性は示されていない。再発後に再度プラチナ併用化学療法を施行した262 例の検討では(SGSG-012/GOTIC-004 試験:UMIN000005051)15),プラチナフリー期間(platinum free interval;PFI)が長いほど有用性が高いことが示唆された。しかし,これは後方視的調査研究であり,セカンドラインレジメンの選択に有用なエビデンスは存在しない。再発例の多くは治癒を望めないため,患者の全身状態や合併症,QOL に対する配慮が必要である。メタアナリシスの結果,治療強度が大きいレジメンほど無再発生存期間や全生存期間の延長に貢献する一方で毒性が増強することが示されている16)

以上より,進行癌に対してはAP 療法が奨められ,有効性や安全性を勘案しTAP 療法,TC 療法も考慮される。再発癌に対しては,初回治療での化学療法の有無や使用薬剤,再発までの期間を考慮して,AP 療法やTC 療法の再投与や,単剤療法を考慮するのが妥当である。ただし,アドリアマイシン(ドキソルビシン塩酸塩)は総投与量500 mg/m2 をこえると心毒性発現のリスクが上昇するとされ17),注意が必要である。

付記
進行・再発子宮体癌に対する分子標的治療薬

現在,子宮体癌に対して保険承認されている分子標的治療薬はまだないが,現在までに多くの第Ⅰ相試験や第Ⅱ相試験が行われている。その中で最も期待されているのは,血管新生阻害薬のベバシズマブである。GOG において再発・再燃子宮体癌を対象とした第Ⅱ相試験を行ったところ,奏効率14%,6 カ月での無増悪生存率40%と良好な成績であった(GOG229E 試験:NCT00301964)18)。さらにその後,測定可能病変を有する進行・再発子宮体癌を対象にTC+Bev 療法の第Ⅱ相試験が行われ,奏効率73%,全生存期間中央値58 カ月の結果が得られた19)。現在,進行・再発子宮体癌を対象として,2 つの多施設ランダム化第Ⅱ 相試験(GOG86P 試験:NCT00977574,MITOBEVAEND2 試験:NCT01770171)が終了しており,2015 年のASCO(American Society of Clinical Oncology)ではTC+Bev 療法の極めて良好な成績が報告されている。しかし,現時点で化学療法にベバシズマブの上乗せ効果を検証する第Ⅲ相試験は実施されておらず,他の薬剤も含め,子宮体癌治療における分子標的治療薬の導入の見込みはまだない。

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CQ29
切除不能または残存病巣を有する進行癌,腟断端以外の再発癌に対して放射線治療は奨められるか?

推奨グレードC1
  1. 切除不能または残存病巣を有する進行癌に対し,局所制御あるいは症状緩和を目的として考慮する。
推奨グレードC1
  1. 腟断端以外の再発癌に対し,局所制御あるいは症状緩和を目的として考慮する。

アルゴリズム(フローチャート5)参照

目的

切除不能または残存病巣を有する進行癌,腟断端以外の再発癌・転移癌に対して放射線治療の効果と適応,方法について検討する。

解説

切除不能局所進行子宮体癌の放射線治療単独の効果をまとめた報告はないが,腫瘍制御を目標とする場合は,外部照射と腔内照射の併用が原則で,方法はCQ15 に準じる。また,代表的な治療スケジュールは放射線治療ガイドラインに紹介されている1, 2)

一方,手術後残存病巣を有する進行癌に対する放射線治療の報告は少ない。Ⅲ・Ⅳ期(FIGO 1988 分類)症例を対象に,全腹部照射と化学療法をランダム化比較したGOG122 試験(NCT00002493)で,手術後に肉眼的残存腫瘍を認めた56 症例(全腹部照射群26 例,化学療法群30 例)において全腹部照射の効果は化学療法に比べ不十分であった3)。同じ対象群に対し,化学療法(TC 療法6 サイクル)と同時化学放射線療法(シスプラチン)+化学療法(TC 療法4 サイクル)をランダム化比較するGOG258 試験(NCT00942357)が行われている。現在までのところ,手術での残存病巣を有する進行癌に対する放射線治療についての明確なエビデンスはない。

再発癌に対する放射線治療は,初回治療での照射歴の有無や再発部位に応じて考慮される。特に,止血や骨転移による疼痛の軽減など緩和目的の放射線治療は有用である。2014 年にESMO-ESGO-ESTRO コンセンサス・カンファレンスが開催され,ガイドラインが作成された4)。再発子宮体癌に対する放射線治療の項では,「腟あるいは骨盤リンパ節の限局再発(特に放射線治療歴のない場合)には放射線治療に加え化学療法の併用が考慮される」,「疼痛を伴う骨転移などに対しては緩和目的の照射が推奨される」,などが記載されている。

放射線治療歴のない腟断端部以外の骨盤内再発病巣に対しては,手術,あるいは放射線治療の適応を検討する(CQ27)。術後照射の有効性を検討したPORTEC-1 試験5)で,再発症例の解析が行われた6)。この中で骨盤内再発13 例中,術後照射が行われなかった9 例に対し放射線治療が行われ,4 例にCR(complete response)が得られた。しかし,手術例も含めた骨盤内再発群の再発後3 年生存率は8%と極めて不良であり,骨盤内再発に対し手術あるいは放射線治療単独のみでは不十分である可能性がある。現在GOG では,前治療に放射線治療歴のない子宮体癌の腟・骨盤に限局する再発例を対象に,放射線治療単独と同時化学放射線療法(シスプラチン40 mg/m2,毎週投与)とを比較する多施設ランダム化第Ⅱ相試験(GOG238 試験:NCT00492778)が行われている。近年では放射線治療において,強度変調放射線治療(intensity-modulated radiation therapy;IMRT)や体幹部定位放射線治療(stereotactic body radiation therapy;SBRT)などの高精度放射線治療の適用が検討されており,傍大動脈リンパ節再発などに対して良好な成績が報告されている7-9)

肺転移に対しては,手術とともにSBRT の適応も考慮する。腫瘍最大径が5cm 以内で3 個以内,原発巣が制御され,かつ他臓器転移のない転移性肺癌に対してはSBRT が保険承認されている。子宮体癌の転移に限定した報告は少ないが,SBRT が単発あるいは少数の転移に対し有効であることが示されており,治療選択肢の一つと考えられる9-11)

骨転移に対しては,放射線治療は短期間で高率(約80〜90%)に疼痛の緩和が得られ有用である12-14)。照射により融解性骨転移部位に高率に再石灰化が起こるとされている。総線量30 Gy/10 回/2 週が一般的であるが,患者の予後や全身状態など,種々の背景を勘案し症例ごとに検討する。

脳転移は稀であるが,原則として治療の適応である。手術適応とならない場合,脳転移に対する放射線治療は有用であり,治療により60〜80%で症状の改善がみられる15)。放射線治療としては全脳照射,定位(的)放射線照射(stereotactic irradiation;STI),その併用などが行われている。全脳照射は30Gy/10 回/2 週が標準的である。単発性または少数個の転移で,比較的長期の予後が期待できる場合はSTI を考慮する。STI 単独とSTI+全脳照射を比較したランダム化試験(JROSG99-1 試験:NCT00406835)16)では,STI 単独群では有意に頭蓋内再発が多かったが,その後報告されたRCT と同様,3 個までの転移についてはSTI に全脳照射を加えても全生存率の改善はみられなかった17, 18)。治療法の選択には年齢,全身状態,転移病巣の大きさ,個数等を考慮の上,症例ごとに検討が必要である。

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CQ30
進行・再発癌に対してホルモン療法は奨められるか?

推奨グレードC1
黄体ホルモン療法は,類内膜癌G1 あるいはエストロゲン受容体・プロゲステロン受容体陽性の進行・再発癌に対し考慮する。

アルゴリズム(フローチャート5)参照

目的

進行・再発子宮体癌に対する黄体ホルモン療法の意義を検討する。

解説

エストロゲンによる長期で過剰な刺激が子宮体癌の発生や発育に密接に関連していると考えられていることから,黄体ホルモン療法が古くから行われていた。しかし,その有用性に関しては多くの疑問が投げかけられている。

エストロゲン受容体(estrogen receptor;ER)・プロゲステロン受容体(progesterone receptor;PgR)陽性の症例が黄体ホルモン療法に最もよく反応する。黄体ホルモン療法を受けた115 例の進行子宮体癌のうち,腫瘍のPgR が陽性であった場合の奏効率は75%(42/56)であり,PgR 陰性であった場合の奏効率はわずかに7%(4/59)であった1)。一方,標準的黄体ホルモン療法に反応しない子宮体癌症例の20%がタモキシフェンに反応することが示されている2, 3)。また,タモキシフェンと黄体ホルモン剤の併用療法も試みられており,GOG の報告では30%前後の奏効率が得られている4-6)。しかし,Grade 3 やGrade 4 の血栓塞栓症を発症した症例もみられており注意が必要である4, 5)

アロマターゼ阻害薬〔アナストロゾール(anastrozole)やエキセメスタン(exemestane)やレトロゾール(letrozole)〕や選択的ER 調整薬〔フルベストラント(fulvestrant)やアルゾキシフェン(arzoxifene)〕を用いた有用性の検討も行われ,プロゲステロンやタモキシフェンの代わりに使用し得る可能性はあるが,今後さらに検討が必要である7-10)。mTOR 阻害薬であるエベロリムス(10 mg/日・経口)とレトロゾール(2.5 mg/日・経口)の両剤の4 週間連日内服を1 サイクルとした第Ⅱ相試験では,35 例中9 例にCR(complete response),2 例にPR(partial response)を認め奏効率は32%,臨床効果率(clinical benefit ratio;CBR)は40%であった。本試験では腫瘍組織のPIK3CA, KRAS, CTNNB 遺伝子解析が行われ,CTNNB1 遺伝子異常を有する患者において治療反応性が良好であった11)

GOG は,進行・再発子宮体癌でのmedroxyprogesterone acetate(MPA)の有効用量の検討を行い12),経口MPA は子宮体癌に有効で,高分化型,PgR 陽性症例に奏効率が高く,また1,000 mg 投与が200 mg 投与に比べて高い有効性は示さなかったことから,MPA 200 mg 投与が妥当であると報告した。NCCN ガイドライン2017 年版では,播種や転移を認めるが,無症候性でER, PgR 陽性であれば,増悪するまでホルモン療法を勧めている13)。現在,本邦において子宮体癌のホルモン療法として認められているのはMPA のみである。

進行・再発子宮体癌に対するCAP 療法〔シクロホスファミド+アドリアマイシン(ドキソルビシン塩酸塩)+シスプラチン〕やAP 療法,TC 療法に,各種ホルモン剤を追加投与する試みも行われたが,十分な奏効率は得られず,その有用性についてのエビデンスは乏しい14-18)。今後,化学療法とホルモン療法を組み合わせた治療のさらなる検討が必要である19)

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第6章 妊孕性温存療法(子宮内膜異型増殖症または類内膜癌G1相当)

総説

妊孕性温存療法が考慮されるのは,子宮内膜異型増殖症と子宮内膜に限局する類内膜癌G1 相当である(CQ31)。妊孕性温存療法を希望する患者に対しては,病理組織学的診断,画像検査所見(MRI による筋層浸潤の有無,CT による卵巣を含めた遠隔転移の有無など),臨床所見,安全性について婦人科腫瘍を専門とする医師が総合的に評価した上で適応を慎重に検討し,十分な説明と同意を得る必要がある(CQ31CQ32)。

妊孕性温存療法としては黄体ホルモン療法が有用とされているが,治療適応の判断・根拠となる画像診断や病理組織学的診断の問題,至適な使用薬剤・投与内容が不明確であること,比較的高い再発率や治療に伴う有害事象(付記)など,本療法に内在する限界や問題点を熟知する必要がある。

子宮内膜増殖症が癌と併存,あるいは癌に進展する頻度は,以前のWHO 分類 第3 版(2003 年)1)に準拠すると,異型を伴わない増殖症で1〜3%,単純型子宮内膜異型増殖症で8%,複雑型子宮内膜異型増殖症で29%と報告されており2),本邦女性でも同様の成績が示されている3)。子宮内膜異型増殖症は類内膜癌への進展あるいは併存のリスクが高いことを念頭に置いて治療方針を決定する必要がある。文献的には,子宮内膜生検で子宮内膜異型増殖症と診断され,子宮全摘出術が施行された症例における癌の併存率は17〜50%である4, 5)。GOG(Gynecologic Oncology Group)による前方視的研究(GOG167 試験)によると,生検で子宮内膜異型増殖症と診断された289 症例中,子宮全摘出後の最終診断における癌の併存率は43%であった6, 7)。したがって,挙児希望がある患者に妊孕性温存療法を考慮する際には必ず子宮内膜全面掻爬を行い,癌の併存の有無を確認する必要がある。

2004〜2011 年に報告された子宮内膜異型増殖症と子宮内膜に限局した類内膜癌G1 相当を対象とした妊孕性温存療法に関する45 報告,391 症例(国内10 報告,125 例を含む)を対象としたレビューでは,年齢中央値は32 歳で,使用薬剤は,medroxyprogesterone acetate(MPA):49%,megestrol acetate(MA):25%,levonorgestrel-releasing intrauterine system(LNG-IUS):19%,hydroxyprogesterone caproate:0.8%,unspecified/miscellaneous progestins:14%であった。奏効率は全体で78%(304 例),子宮内膜異型増殖症(111 例)と類内膜癌(280 例)の奏効率はそれぞれ86%と75%,病理組織学的な病変消失率(CR 率)は66%と48%であった。病変遺残率はそれぞれ14%と25%で,いずれも類内膜癌に比較して子宮内膜異型増殖症で良好な成績であった8)

使用薬剤・投与量と投与期間に関しては明確なコンセンサスはないが,ESMO-ESGO-ESTRO コンセンサス・カンファレンス2016 からは,MPA(400〜600 mg/日)あるいはMA(160〜320 mg/日)が推奨されている9)

近年,後方視的研究により妊孕性温存療法が奏効しない原因および再発のリスク因子として肥満が挙げられており,代謝的要因が治療成績に影響するとの報告がある10)。そこで,MPA とインスリン抵抗性改善作用を有するメトホルミンの併用療法の第Ⅱ相試験11)が試みられ,奏効率は過去の治療成績と同等ながら,メトホルミン併用による再発抑制効果が示唆されている。さらに,有害事象の軽減と,子宮内膜局所での高濃度の黄体ホルモンの効果を期待したLNG-IUS の単独あるいは他の薬剤との併用使用が試みられている。類内膜癌に対してLNG-IUS にMPA を併用する前方視的試験が行われ,良好な成績と安全性が報告されている12)CQ31)。

以上のように,メトホルミンやLNG-IUS など,将来的には使用可能な薬剤の選択肢が増え,治療成績の向上が期待されるものの,両薬剤とも現時点では子宮内膜増殖症や子宮体癌には保険適用はない。その適応と至適投与法を明確にするためには,さらに多数例での検証が必要である。

一方,妊孕性温存療法後の再発率は子宮内膜異型増殖症で23%,類内膜癌G1 相当で35%と比較的高いことも問題とされている8)。再発例に対しては,あくまで子宮全摘出術が原則と考えられ,再発例に再度の黄体ホルモン療法を行うことに関する有効性のエビデンスは十分ではない。しかし,再度の黄体ホルモン療法により初回治療とほぼ同等の成績が得られたとの報告があり13),ESGO(European Society of Gynaecological Oncology)のclinical recommendation では,再発時の黄体ホルモンの再投与を許容している14)。妊孕性温存希望が強く,子宮内再発時の組織が子宮内膜異型増殖症または子宮内膜限局の類内膜癌G1 相当の場合には,初回治療以上にリスクを十分に説明し理解を得た上で再度,黄体ホルモン療法を施行することも考慮される(CQ33)。

また,妊孕性温存療法の主目的は妊娠・分娩であるため,治療後の排卵誘発や不妊治療が必要となる場合も少なくない。未だエビデンスは限られるが,不妊治療施行例の妊娠率が有意に高率であったとの報告15)や不妊治療による再発リスクの上昇は認められないとの報告16)もあり,必要な排卵誘発や不妊治療は十分考慮されてよい(CQ34)。

付記
黄体ホルモン投与上の注意点

黄体ホルモン療法を行う上でのリスクとしては,脳梗塞,心筋梗塞,肺塞栓症などの重篤な血栓症が起こることがあると警告されている。禁忌として,血栓症を起こすリスクの高い次の患者が挙げられている。

  • 手術後1 週間以内の患者
  • 脳梗塞,心筋梗塞,血栓静脈炎等の血栓性疾患,またはその既往歴のある患者
  • 動脈硬化症の患者
  • 心臓弁膜症,心房細動,心内膜炎,重篤な心不全等の心疾患のある患者
  • ホルモン剤(黄体ホルモン,卵胞ホルモン,副腎皮質ホルモン)を投与中の患者
  • 重篤な肝障害のある患者

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CQ31
子宮内膜異型増殖症または類内膜癌G1 相当で妊孕性温存を希望する場合の治療は?

推奨グレードC1
  1. 子宮内膜異型増殖症には黄体ホルモン療法を提案する。
推奨グレードC1
  1. 子宮内膜に限局した類内膜癌G1 相当の症例には黄体ホルモン療法を提案する。

アルゴリズム(フローチャート6)参照

目的

妊孕性温存としての黄体ホルモンの有用性およびリスク,経過観察における注意点について検討する。

解説

子宮内膜異型増殖症または類内膜癌G1 相当に対して黄体ホルモン療法が有用であるとする報告が多く,いずれも良好な奏効率を示しているが,一定の再発のリスクが存在する1-5)。黄体ホルモン療法にあたっては,子宮内膜全面掻爬にて子宮内膜異型増殖症または類内膜癌G1 相当と組織学的に診断され,かつ類内膜癌の場合には筋層浸潤および子宮外進展がないことが基本となる。子宮内膜異型増殖症および子宮体癌の診断に際しては,病理組織学的診断の難しさが指摘されている。病理医による子宮内膜異型増殖症と子宮体癌の診断の再現性の低さ6)や,子宮内膜異型増殖症と診断された症例に高率に子宮体癌が併存するとの報告7)がなされている。そのため,子宮内膜異型増殖症と診断され黄体ホルモン療法を行う場合でも,癌を念頭に置いた注意深い経過観察が望ましいことから,治療開始前にMRI による筋層浸潤の否定や適宜CT による全身検索が必要と考えられる。また,子宮外進展に関しては,若年子宮体癌では卵巣癌の重複の頻度が高いとの報告があり,注意が必要である8)

2004〜2011 年に報告された子宮内膜異型増殖症と子宮内膜限局の類内膜癌G1 相当を対象とした妊孕性温存療法に関する国内外の45 報告,391 症例を対象としたレビューでは,子宮内膜異型増殖症(111 例)と類内膜癌(280 例)の奏効率はそれぞれ86%と75%,病理組織学的な病変消失率(CR 率)は66%と48%であった。また,病変遺残率はそれぞれ14%と25%,再発率は23%と35%であった9)。使用薬剤・投与量と投与期間に関しては報告により差異があり,明確なコンセンサスはない10)。内服によるMPA 以外に,諸外国ではMA やLNG-IUS なども選択肢に含まれているが,本邦では,MPA 400〜600 mg/日投与の報告2-5, 9)が多くを占めている。ESMO-ESGO-ESTRO コンセンサス・カンファレンス2016 からは,MPA(400〜600 mg/日)あるいはMA(160〜320 mg/日)が推奨されている11)

本邦のMPA を用いた多施設共同第Ⅱ相試験4)では,39 歳以下の妊孕性温存希望のある子宮内膜異型増殖症17 例と子宮内膜限局の類内膜癌G1 相当28 例を対象として,子宮内膜全面掻爬により診断確定後,26 週間MPA 600 mg/日とアスピリン81 mg/日が投与された。その間,8 週目と16 週目に子宮内膜全面掻爬を行い治療効果が確認された。治療を完遂できた子宮内膜異型増殖症の82%(14/17 例),類内膜癌の55%(12/22 例)で26 週時にCR(complete response)が得られ,類内膜癌の32%がPR(partial response)であった。なお,26 週時にPR であったが,MPA 治療続行を希望した6 例中4 例(うち類内膜癌症例は3 例中2 例)は,3〜6 カ月の追加投与によりCR に至っている。3 年の観察期間中に妊娠希望者20 例中11 例(55%)に12 妊娠が成立し,7 例(うち類内膜癌症例は4 例)に生児が得られた。また,観察期間(中央値48 カ月)における再発率は子宮内膜異型増殖症で38%,類内膜癌で57%であり,無増悪期間の中央値は子宮内膜異型増殖症で44 カ月,類内膜癌で35 カ月であった。子宮内膜と腹膜・卵巣に癌が同時発生したと考えられる1 例が,初回MPA 投与から2 年4 カ月後に原病死している。

このように,黄体ホルモン療法は子宮内膜異型増殖症および類内膜癌G1 相当で妊孕性温存を希望する場合には有効なことがある反面,再発のリスクも存在する。特に類内膜癌では比較的高い再発率を認めており,用法・用量や治療期間などについても確立されたとは言い難い。また黄体ホルモン療法の効果を判定するためには,治療中に繰り返して子宮内膜全面掻爬を行い,組織学的に癌の消失の有無を確認する必要がある。以上を勘案した場合,妊孕性温存療法としての黄体ホルモン療法は,治療経験が十分にある施設で行われるべきである。

黄体ホルモン療法による妊孕性温存療法でCR が得られないリスク因子としては,肥満が指摘されている12, 13)。さらに,肥満は再発のリスク因子であるとの報告もあり12, 13),代謝的要因が黄体ホルモン療法の治療成績に影響する因子である可能性が指摘された。このような背景のもと,黄体ホルモン療法にインスリン抵抗性改善作用を有するメトホルミンを併用する試みがなされ,良好な結果が報告された14)。妊孕性温存希望のある子宮内膜異型増殖症と類内膜癌G1 相当の患者に,MPA 400mg/日にメトホルミン(750 mg/日で開始し,その後2,250 mg/日まで1 週ごとに増量)を併用し,MPA 終了後も再発あるいは妊娠まで継続するプロトコールで行われた。類内膜癌では68%(13/19 例)でCR が得られ,過去の国内外の報告と大きな差はなかったが,再発率は23%(3/13 例)と比較的低値であった。子宮内膜異型増殖症では94%(16/17 例)でCR が得られ,再発は1 例も認めなかったことから,メトホルミンの再発抑制効果が示唆されているため14),さらに多数例での検証が必要である。

また,MPA による体重増加や肝機能異常などの有害事象の軽減と,子宮内膜局所での高濃度の黄体ホルモンの効果を期待したLNG-IUS の報告があり,子宮内膜異型増殖症に対してはMPA と同等かそれ以上の治療成績が示されている15)。しかし,子宮内膜異型増殖症と異なり,類内膜癌に対するLNG-IUS の治療効果は良好とは言えないとの報告もある16)。そのため,LNG-IUS にMPA を併用する前方視的試験が行われ,観察期間の中央値31.1 カ月(11〜50 カ月)でCR 87.5%(14/16 例)と良好な成績と安全性が報告された17)。その適応と至適方法を明確にするためには,さらに多数例での前方視的試験が必要である。しかし,国内では子宮内膜異型増殖症や子宮体癌には未承認であることから,第一選択での使用はできない。

治療対象患者の年齢の上限については,明確な基準は示されていない18)。45 歳までを対象としている前方視的検討19)もあるが,大多数の報告では40 歳未満の患者を対象としている。治療後の妊娠に関する国内外の22 報告(351 例)のレビューでは,妊娠例の年齢中央値は自然妊娠例(29 例)で31.5 歳(22〜42 歳),不妊治療による妊娠例(111 例)で32.5 歳(20〜40 歳)と報告されている18)。年齢の上昇に伴う妊娠率の低下や治療開始から妊娠に至るまでの期間を考慮すると,治療対象の年齢は40 歳未満が望ましい。

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CQ32
妊孕性温存療法後の経過観察の間隔と検査は?

推奨グレードC1
3 カ月に一度の子宮内膜組織検査や経腟超音波断層法検査を行うことを提案する。

アルゴリズム(フローチャート6)参照

目的

妊孕性温存を目的として黄体ホルモン療法を施行した場合,治療後の適切な検査項目と経過観察の間隔について検討する。

解説

妊孕性温存療法後の再発例を多数例検討した報告はないため,推奨するに足るエビデンスはない。妊孕性温存療法を行った133 症例のレビューでは,黄体ホルモンによる治療期間は平均6 カ月,黄体ホルモン療法奏効までの平均期間は3 カ月とされている1)。これを基準として,治療開始後3 カ月で子宮内膜組織検査(あるいは子宮鏡検査併用)を行い,もし組織学的に異常があれば,さらに3 カ月間黄体ホルモン療法を考慮し,平均治療期間である6 カ月の時点で治療を終了し,再度内膜組織検査(あるいは子宮鏡検査併用)による効果確認を推奨している1)。もし6 カ月の時点で組織学的に異常があれば手術療法を行い,組織学的に異常がなければ妊娠を許可するとしている1)。その後,妊娠成立まで,子宮内膜組織検査の施行間隔についての明らかなコンセンサスはないが,3〜4 月経周期ごとの排卵前に子宮内膜組織検査を行うことを推奨している1)

国内のMPA を用いた多施設共同第Ⅱ相試験では,MPA 600 mg/日が26 週間投与された。治療開始後8 週,必要ならさらに16 週で子宮内膜組織検査を行い,26 週終了時に子宮鏡検査と病理組織学的診断を行い,CR が得られたらMPA 投与を終了し,エストロゲンと黄体ホルモンの併用療法(estrogen progestogen therapy;EPT)を6 サイクル追加,妊娠の希望があれば排卵誘発を行い,なければEPT を継続するプロトコールで行われた2)。この検討では,治療後2 年間は3 カ月ごとに子宮内膜組織検査を行い,経過観察するとしている2)

一方で,子宮内膜組織検査や子宮内膜全面掻爬は子宮内膜の癒着による妊孕性の低下につながるとして,3〜6 カ月ごとの問診,内診,経腟超音波断層法検査,腫瘍マーカー検査をルーチンとし,再発が疑われる症例に子宮内膜全面掻爬や子宮鏡下内膜組織検査を行うとの報告もある3-5)。内膜吸引組織診は低侵襲な検査法とされているが,LNG-IUS を挿入中の患者に対して内膜吸引組織診を行った場合は,LNG-IUS 抜去後の子宮内膜全面掻爬との診断の一致率は32%であり,また,61%で診断に不十分な検体しか採取できないという報告があり,LNG-IUS 挿入中は推奨されない6)

妊孕性温存療法後の経過観察の期間についてもコンセンサスはない。再発までの中央値が15 カ月(4〜66 カ月)であったという報告3)や,累積再発率は6 カ月,12 カ月,18 カ月,24 カ月の時点でそれぞれ10%,17%,26%,29%と上昇し,少なくとも5 年間は増加するという報告7)がある。さらに13 年目に再発したという報告5)もあり,子宮摘出を行わない限りは長期のフォローアップを考慮すべきである。妊孕性温存療法後に卵巣転移や卵巣への重複癌が4%に認められたという報告8)や,腹膜癌発症例の報告もある2)。このことから,経腟超音波断層法検査の際は,子宮内膜肥厚の有無だけでなく,子宮と付属器の異常および腹水の有無などの観察も必要であろう。

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CQ33
妊孕性温存療法施行時の病変遺残例あるいは再発例に推奨される治療法は?

推奨グレードB
  1. 子宮全摘出術を奨める。
推奨グレードC1
  1. 再発例で妊孕性温存を強く希望する場合には,厳重な管理のもとに再度の黄体ホルモン療法を考慮する。

アルゴリズム(フローチャート6)参照


明日への提言

妊孕性温存の希望が強い再発例に対して再度の黄体ホルモン療法を行うことは,一定のリスクを有することは明らかであり,安易に施行すべきではない。しかし,再発に対しての黄体ホルモン療法が奏効している症例も報告されている。再発例に対する黄体ホルモン療法のリスクを正確に評価するために,本邦での妊孕性温存療法例を集積し,真に恩恵を受ける症例の選択基準,あるいはリスクの高い症例の抽出基準などが明確になることを期待したい。


目的

妊孕性温存療法を施行しても病理組織学的に遺残病変が認められる例,あるいは病変が消失(complete response;CR)した後の再発例に対する治療法について検討する。

解説

再発例に再度の黄体ホルモン療法を行うことに関する有効性のエビデンスは十分ではない。妊孕性温存療法後の再発率は,子宮内膜異型増殖症と子宮内膜限局の類内膜癌G1 相当391 例を対象とした45 報告では,子宮内膜異型増殖症で23%,類内膜癌で35%で,CR から再発までの期間は中央値24 カ月(4〜72 カ月)とされている1)。国内のMPA を用いた多施設共同第Ⅱ相試験では,再発を起こした14 例中8 例に再度MPA 投与が行われ,6 例(75%)に病変の消失を認めたと報告されている2)。しかし,その中の1 例では,2 回目のMPA 投与で病変が消失するも,わずか3 カ月で大量の癌性腹水貯留を伴う腹膜癌が発症し,化学療法などにも反応せず死亡に至っている。また,黄体ホルモン療法が奏効しなかった症例に新たに卵巣腫瘍が発生した3, 4),子宮外に進展した症例が8%認められた5),3〜6 カ月の治療中に卵巣癌が発見された6, 7),などの報告もある。卵巣転移率は,子宮体癌Ⅰ期(FIGO 1988 分類)では5%程度だが,若年体癌では7〜30%であり,重複癌もみられ,卵巣が腫大しない症例も存在する。妊孕性温存に固執すると外科的切除が遅れるとの報告もある8)

一方で,45 例の再発症例のうち,再発病変が子宮内膜異型増殖症または子宮内膜に限局した類内膜癌G1 で,妊孕性温存を希望した33 例に対して,再度の高用量黄体ホルモン療法を施行したところ,28 例(85%)で病変が消失し,その後の再発は5 例(18%)で,初回治療の成績と遜色がなかったとの報告もある9)。他の報告でも,再発への黄体ホルモン再投与の成績は概ね良好で2, 7, 10),5 文献のレビューでは,27 例の再発例は再度の黄体ホルモン療法により24 例(89%)にCR が得られ,その後の再発は10 例(42%)であったと報告されている9)。これらを受けてESGO のclinical recommendation では,再発時の黄体ホルモンの再投与を許容している11)

本来,子宮体癌に対しては子宮全摘出術が原則であり,妊孕性温存療法はオプションである。したがって,再発例に対しては子宮全摘出術が原則である(卵巣温存に関してはCQ06 参照)。このため,黄体ホルモンが奏効し,妊娠・分娩が終了した後は,再発徴候がなくとも計画的に子宮全摘出術を行うべきという意見もある12-14)

しかし,妊孕性温存希望が強く,再発時の組織が子宮内膜異型増殖症または子宮内膜限局の類内膜癌G1 相当であることを子宮内膜全面掻爬で確認し,さらに画像検査で筋層浸潤を認めず,子宮外進展がない症例に限り,厳重な管理のもとに,再度黄体ホルモン療法を施行することも考慮される。しかしながら,黄体ホルモン療法は手術療法に比べて治療成績が劣ることは明らかであり,また十分なエビデンスが蓄積されているわけではない。したがって,本来の妊孕性温存の主目的とは異なる,子宮摘出を回避したいとの理由のみでの安直な再発治療は厳に慎み,また本治療に精熟した臨床医により行われる必要がある。

参考文献

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CQ34
妊孕性温存例に対して排卵誘発を行ってもよいか?

推奨グレードC1
妊娠成立のために必要な排卵誘発を考慮する。

アルゴリズム(フローチャート6)参照

目的

妊孕性温存例における排卵誘発の問題点と安全性について検討する。

解説

妊孕性温存療法後の不妊治療や排卵誘発が再発リスクに影響するかについては,まとまった報告や比較試験はない。

子宮体癌,特に若年者に多くみられるエストロゲンに依存して発症するタイプの類内膜癌では,未経産,肥満などとともに,黄体ホルモンを併用しないエストロゲン投与がリスク因子である1)。一般的な不妊症患者の多くは,薬物治療開始以前から内因性のホルモン分泌異常が既に存在することも多い。不妊症患者,特に無排卵患者では子宮体癌発症のリスクが増加するとの報告が多い2-7)一方で,十分なフォローアップ期間や大規模な検討では有意な増加を認めなかったとの報告もある8, 9)。不妊症患者に対してクロミフェンやhMG-hCG 療法による排卵誘発を行った場合,血中エストロゲン値は正常排卵周期の約2〜5 倍10)と高値になり,子宮体癌の発症リスクを増大させる可能性が危惧される。

しかし,排卵誘発が子宮体癌発症を有意に増加させるとの報告はない3, 6, 8, 11-15)。クロミフェンやhMG-hCG により排卵誘発を行った患者を平均26 年フォローアップした検討では,子宮体癌発症のリスクは変わらないと報告されている15)。その一方で,多数例,長期間のコホート研究では,クロミフェン使用により,有意差はないものの子宮体癌発症が増加し,その影響はクロミフェンの用量や投与回数と比例したという報告7)もある。また,クロミフェンはヒト子宮体癌培養細胞の増殖を促進するとの報告もある16)

妊孕性温存療法例は,背景に排卵障害を伴うことも多く,再発リスクを下げる目的からも積極的に不妊治療を行うべきとの意見もある17)。本邦で行われたMPA を用いた多施設共同第Ⅱ相試験では,妊娠例11 例中10 例が不妊治療によるもので,7 例がhMG-hCG による排卵誘発例,さらにそのうち5 例が体外受精-胚移植により妊娠に至っている18)。妊孕性温存療法後の妊娠例を解析したレビューでは,挙児希望があった451 例中,生児が得られた例は,不妊治療が施行された142 例では56 例(39%),不妊治療が行われなかった309 例では46 例(15%)であり,不妊治療施行例の妊娠率が有意に高率であった19)。また,MPA 投与で完全寛解が得られた子宮内膜異型増殖症および子宮体癌36 例に対し不妊治療を行った国内の報告では,不妊治療の有無によって再発リスクに有意差は認められていない20)

妊孕性温存療法の主目的は生児を得ることであり,必要に応じて不妊治療や排卵誘発を行うべきであるが,少なくとも中長期的には,排卵誘発,特にクロミフェン使用により再発リスクが増加する可能性も念頭に置く必要がある。

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第7章 癌肉腫・肉腫の治療

総説

子宮肉腫は婦人科腫瘍の中でも特に予後不良の腫瘍であり,標準的治療法が確立していない。その大きな理由として,発生頻度が低いために臨床試験の実施が困難であることが挙げられる。肉腫の大部分は子宮体部に発生し,子宮体部悪性腫瘍全体の4〜9%と報告されている1)。子宮肉腫は上皮性・間葉性混合腫瘍(癌肉腫carcinosarcoma や腺肉腫adenosarcoma)と間葉性腫瘍(平滑筋肉腫leiomyosarcoma,子宮内膜間質肉腫endometrial stromal sarcoma など)に大別される。発症年齢のピークは,平滑筋肉腫と子宮内膜間質肉腫が50 歳前後であるのに対して,癌肉腫は60 歳以降で,比較的高齢である2-4)。全生存期間中央値は子宮内膜間質肉腫では76 カ月であるのに対して,癌肉腫と平滑筋肉腫はそれぞれ28 カ月,31 カ月である2)

子宮肉腫の病理組織学的診断は,頻度が低く,同一組織型であっても多彩な形態を示すため,しばしば大きな困難を伴う。しかし,治療方針の決定と予後予測は組織学的診断に負うところが大きいため,婦人科医,放射線科医と病理医間の情報の共有により診断を確定することが重要である。

癌肉腫は癌腫成分と肉腫成分から構成される腫瘍で,悪性ミュラー管(中胚葉)混合腫瘍malignant müllerian(mesodermal) mixed tumorとよばれていた。肉腫成分が子宮に存在する間葉系組織に分化している場合には同所性homologous,軟骨,横紋筋や骨など,本来子宮に存在しない間葉系組織への分化を示す場合には異所性heterologous とよぶ。いずれの場合も肉眼的には子宮内腔へ突出するポリープ状の隆起を形成することが多い。組織発生についてはcombination tumor theory,collision tumor theory,composition tumor theory の3 つの説がこれまで提唱されてきた。クロナリティー解析によって,癌肉腫のほとんどが単一細胞由来で,腫瘍発生の過程で上皮様形態を示す部分と間質様形態を示す部分に分化するというcombination tumor theory を支持する結果が示された5)。臨床病理学的には,共通するリスク因子,リンパ行性転移が多いなどの知見から,癌肉腫は肉腫よりはむしろ癌腫に近い性格を有していることが示されている。したがって,手術や術後治療は高悪性度の子宮体癌に準じて行われる(CQ35〜CQ37)。

平滑筋肉腫の病理組織学的診断にはHendrickson とKempson のグループによって提唱された診断基準6)が広く用いられている。すなわち,①細胞異型,②核分裂(指数),③凝固壊死を総合的に評価する。平滑筋肉腫の初回治療は,摘出可能な症例では腹式単純子宮全摘出術と両側付属器摘出術が基本で(CQ38),拡大手術やリンパ節郭清の追加が予後を改善することを示す明確なエビデンスがない。術後治療としての放射線治療や化学療法の有効性も,第Ⅲ相試験による明確なエビデンスとして示されていないのが現状である。

子宮内膜間質肉腫はもともと低悪性度と高悪性度に分類されていたが,WHO 分類 第3 版(2003 年)では,高悪性度子宮内膜間質肉腫が,子宮内膜間質との類似性が必ずしも認められないとの理由で,未分化子宮内膜肉腫undifferentiated endometrial sarcoma とよばれることとなった7)。その後,子宮内膜間質に似た細胞形態を示し,異型が目立つ腫瘍,あるいは未分化子宮内膜肉腫とされていた腫瘍のうち比較的均一な細胞からなる腫瘍は,低悪性度子宮内膜間質肉腫にみられるJAZF1-SUZ12(JJAZ1) の融合遺伝子はみられないが,cyclin D1 の発現やYWHAE-NUT2A/B (FAM22A/B) の融合遺伝子が再現性を持ってみられることから,WHO 分類 第4 版(2014 年)では高異型度子宮内膜間質肉腫として独立した疾患単位とされた(CQ39)。この名称はWHO 分類 第3 版(2003 年)より前の高悪性度子宮内膜間質肉腫とは定義が若干異なっており,文献を読むときには注意が必要である。また,未分化子宮内膜肉腫とされていた腫瘍のうち高異型度子宮内膜間質肉腫を除いたものは極めて高度な細胞異型を示し,子宮内膜間質細胞との類似性がみられないため,名称から「内膜」がはずされ,未分化子宮肉腫と名称が変更された。なお,WHO 分類 第4 版(2014 年)に基づき改訂された本邦の『子宮体癌取扱い規約 病理編 第4 版』(2017 年7 月発行)8)では,「悪性度」という用語から「異型度」に変更となった。よって現行のWHO 分類 第4 版(2014 年)では,低異型度子宮内膜間質肉腫,高異型度子宮内膜間質肉腫,未分化子宮肉腫の3 つに分類されており9),本稿ではWHO 分類 第4 版(2014 年)以降のものは,これに倣い「異型度」と表記する(CQ39)。

子宮内膜間質肉腫の治療も平滑筋肉腫と同様に,腹式単純子宮全摘出術と両側付属器摘出術による手術が基本であるが(CQ39),低悪性度子宮内膜間質肉腫で9〜33%,高悪性度子宮内膜間質肉腫(旧分類)で15〜18%の骨盤内や傍大動脈のリンパ節への転移が認められるため10, 11),リンパ節郭清(生検)が必要であるとの見解がある。悪性度にかかわらず放射線照射および化学療法の有効性は明らかではなく,第Ⅱ相試験相当の臨床試験の結果を待つ必要がある。

腺肉腫は良性腺上皮と肉腫成分から構成される混合腫瘍で,葉状のポリープ様隆起性病変を形成することで知られている。頻度は癌肉腫の1/9 に過ぎない12)。発症年齢は癌肉腫よりも若く,100 例を対象とした検討では患者の年齢分布は14〜89 歳,中央値は58 歳である13)。腫瘍の発生部位は76%が子宮内膜,6%が子宮頸部内膜,4%が筋層である。肉腫成分の異型は必ずしも明瞭ではないため,内膜ポリープあるいは頸管ポリープと診断され,再発を繰り返すことがあるため注意を要する。腺肉腫の治療は他の肉腫と同様に腹式単純子宮全摘出術と両側付属器摘出術による手術が基本で,リンパ節郭清や術後治療の有効性は明らかでない。腺肉腫は他の肉腫と比較して予後良好で,5 年生存率は,術前にⅠ期と考えられる症例で79%,Ⅲ期と考えられる症例で48%であることが報告されている12)。腺肉腫の病理組織学的予後不良因子として,脈管侵襲,横紋筋肉腫への分化,肉腫成分の過剰増殖(adenosarcoma with sarcomatous overgrowth)が指摘されている14)

最後に,『子宮体癌取扱い規約 第3 版』15)から子宮肉腫のみを対象としたFIGO 2008 進行期分類16)が採用された(参照)。この分類は平滑筋肉腫,子宮内膜間質肉腫,腺肉腫を対象としており,癌肉腫の分類は子宮体癌に準じる。子宮肉腫の進行期の決定にあたっては,開腹所見による腫瘍の進行度の把握と組織型の確定が必須となっている。平滑筋肉腫および子宮内膜間質肉腫と腺肉腫ではT1 分類が異なっているので注意が必要である。

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CQ35
子宮癌肉腫に対して推奨される手術術式は?

推奨グレードB
  1. 子宮体癌に準じて子宮全摘出術および両側付属器摘出術を奨める。
推奨グレードC1
  1. 上記術式に加えて,骨盤・傍大動脈リンパ節郭清(生検),大網切除術を行うことを提案する。

アルゴリズム(フローチャート7)参照

目的

術前診断で子宮癌肉腫とされた場合に推奨される手術術式について検討する。

解説

子宮癌肉腫は腫瘍病態的に子宮体癌に近似する腫瘍であると考えられ,NCCN ガイドライン2017 年版では子宮体癌の高悪性度に分類され,類内膜癌G3 と同様に治療されるべきとしている1)

癌肉腫は子宮内腔に向かって隆起性病変を形成することが多いため,比較的早期より性器出血をきたし,子宮内膜生検で癌肉腫との診断は確定しないことがあっても,平滑筋肉腫や子宮内膜間質肉腫とは異なり,術前に90%以上の症例で悪性腫瘍の診断が得られる2)。癌肉腫は通常の子宮体癌よりも悪性度の高い組織型で,類内膜癌G3 症例と比較しても,診断時から子宮外病変を伴っている場合が多く,進行期別の比較でもⅠa〜Ⅳ期(FIGO 1988 分類)のいずれの進行期においても有意に予後不良である3)。子宮内膜生検で子宮体癌と診断された場合でも,画像検査上,子宮内腔への隆起性病変が認められれば,癌肉腫を疑って注意深い病理組織学的検討を行い,必要であれば免疫組織化学的染色を併用する。

術前に癌肉腫の診断が確定している場合で,完全摘出が見込まれる症例に対しては,腹式単純子宮全摘出術+両側付属器摘出術を基本として,さらに骨盤・傍大動脈リンパ節郭清(生検)および大網切除術を行うことを考慮する。これに腹腔細胞診も行う。術中に子宮外病変が判明した場合は,最大限の腫瘍減量術を行う。本邦で行われた多施設共同後方視的研究において,進行期子宮癌肉腫症例でoptimal debulking surgery(最大残存腫瘍径1 cm 以下)が行われた症例は,suboptimal surgery(最大残存腫瘍径1 cm をこえる)であった症例に比較して全生存期間が有意に良好であった4)。子宮頸部間質浸潤が明らかで完全切除が見込まれる症例に対しては,広汎子宮全摘出術あるいは準広汎子宮全摘出術が考慮されてよいが,その治療的意義は確立されていない5)

骨盤および傍大動脈リンパ節への転移は,平滑筋肉腫に比較すると高率で6),転移部には癌腫成分が組織学的に認められることが多い7)。リンパ節郭清の是非を確かめた前方視的臨床試験はないものの,これまでにいくつかの後方視的研究で,リンパ節郭清による予後の改善が認められている8-11)。NCI(National Cancer Institute)のSEER(Surveillance, Epidemiology, and End Results)データベースに基づく後方視的検討では,骨盤腔内に腫瘍が限局していた癌肉腫1,855 例の中で所属リンパ節郭清が行われた965 例のリンパ節転移率は14%で,リンパ節郭清を行った症例の方が行わなかった症例よりも,いずれの進行期の比較においても全生存期間が延長した11)。また,本邦で行われた多施設共同後方視的研究においても,骨盤リンパ節郭清が予後改善に寄与する可能性が示唆されている8)

参考文献

1)
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CQ36
子宮癌肉腫に対して推奨される術後治療は?

推奨グレードC1
  1. 術後化学療法を選択する場合は,イホスファミド,プラチナ製剤,パクリタキセルなどを含む治療を提案する。
推奨グレードC1
  1. 放射線治療(全骨盤照射)も提案できる。

アルゴリズム(フローチャート7)参照

目的

子宮癌肉腫に対する術後化学療法や放射線治療の有用性について検討する。

解説

子宮癌肉腫の完全摘出症例においても骨盤内外再発が多く認められることから,術後治療の検討が必要であるが,術後治療に関するランダム化比較試験(randomized controlled trial;RCT)はわずかにあるのみである。

子宮癌肉腫における術後化学療法のRCT は,1980 年代に行われた当初の試験では子宮肉腫として取り扱われており,癌肉腫,平滑筋肉腫が混在して治療されていた経緯がある。癌肉腫のみに層別化した解析では,CYVADIC 療法〔シクロホスファミド+ビンクリスチン+アドリアマイシン(ドキソルビシン塩酸塩)+ダカルバジン〕により約63〜70%の5 年生存率を得ている1-4)。その後,子宮癌肉腫を対象とした臨床試験が行われるようになった。GOG150 試験において全腹腔照射(whole abdominal irradiation;WAI)とイホスファミド+シスプラチン療法(IP 療法)の比較試験が行われ,5 年再発率はWAI 58%,IP 療法52%と差を認めず,5 年生存率はWAI 35%,IP 療法45%であり,進行期と年齢で調整したところ,WAI に比べIP 療法の方が死亡率が29%低かった5)。これは統計的に有意ではなかったものの,放射線治療に比較し,化学療法がより有用である傾向を示した。この結果から,米国では,術後補助療法としてIP 療法が現在のところ標準治療と考えられている。

子宮癌肉腫に対する新たな治療戦略として,近年TC 療法(パクリタキセル+カルボプラチン)が注目されている。本邦で行われた第Ⅱ相試験で,腫瘍が完全摘出もしくはoptimal cytoreduction(最大残存腫瘍径1cm 未満)された症例を対象としてTC 療法を術後補助療法として試みたところ,2 年無増悪生存率,2 年全生存率がそれぞれ78%,88%であり,TC療法の有用性が示唆された6)。現在,GOG(Gynecologic Oncology Group)ではTC 療法とイホスファミド+パクリタキセル療法の有効性を比較する臨床試験が進行中(NCT00954174)である。

放射線治療単独による術後治療の有用性も報告されている7)。最大規模の後方視的検討として,米国NCI のデータベースから得られた2,461 例の子宮癌肉腫に関する解析がある。その結果は,初回手術後に放射線治療を施行した群の5 年生存率が42%で,施行しなかった群の33%に比べて予後に有意差が認められている8)。しかし,Ⅰ・Ⅱ期症例の放射線照射に関するRCT の報告はなく,予後改善への寄与は未だ不明である。

参考文献

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CQ37
子宮癌肉腫の進行・再発例に対する治療法は?

推奨グレードC1
  1. 進行例に対しては,子宮全摘出術と可及的腫瘍減量術が可能であれば,手術療法を提案する。
推奨グレードC1
  1. 進行・再発例の化学療法としては,イホスファミド,プラチナ製剤,パクリタキセルなどを含む薬剤を提案する。
推奨グレードC1
  1. 孤発再発例で完全切除が可能であれば,手術療法を提案する。

アルゴリズム(フローチャート7)参照

目的

子宮癌肉腫の進行・再発例に対する治療法について検討する。

解説

子宮癌肉腫では,開腹時に既に進行した状態にあることがしばしばである。したがって,進行した癌肉腫ではCQ35 で述べた術式を標準とし,可能な限りの腫瘍摘出を行うことが重要で,残存腫瘍が少ないほど予後が改善するとされている。

子宮癌肉腫に対する化学療法について,単剤での奏効率はイホスファミド32%1),パクリタキセル18%2),シスプラチン18%3-5),アドリアマイシン(ドキソルビシン塩酸塩)10%6)程度などの第Ⅱ相試験の結果が報告されている。

GOG108 試験において,進行・再発子宮癌肉腫194 例に対し,イホスファミド単剤投与群(1.5 g/m2 ×5 日間)102 例とイホスファミド(1.5 g/m2 ×5 日間)+シスプラチン(20 mg/m2×5 日間)併用群92 例の両者間で,治療成績と有害事象が比較された7)。奏効率はイホスファミド単剤投与群で36%,2 剤併用群で54%,無増悪期間中央値はそれぞれ4.0 カ月,6.0 カ月と有意差が認められたが,全生存期間中央値はそれぞれ7.6 カ月と9.4 カ月で有意差はみられていなかった。併用群では単剤群と比べ有害事象の頻度が有意に増加することから十分な注意が必要であり,減量投与となることも多い7, 8)

44 例の子宮癌肉腫に対しパクリタキセル(170 mg/m2,放射線治療既往症例は135 mg/m2)を3 週間隔で投与することの有効性が検討された第Ⅱ相試験では,奏効率が18%であった2)。この結果から,パクリタキセルは子宮癌肉腫に対して有効性があると考えられた。GOG161 試験では,子宮癌肉腫のⅢ・Ⅳ期および再発例179 例に対してイホスファミド単独療法(2.0 g/m2 ×3 日間)とイホスファミド(1.6 g/m2 ×3 日間)+パクリタキセル(135 mg/m2)併用療法との比較が行われた9)。奏効率は単独群が29%,併用群が45%で,無増悪期間中央値は単独群3.6 カ月,併用群5.8 カ月,全生存期間中央値は単独群8.4 カ月,併用群13.5 カ月で,パクリタキセル併用群の有用性が認められた。以上より,イホスファミド+シスプラチン療法,イホスファミド+パクリタキセル療法いずれも奏効率でイホスファミド単独療法を上回ったが,米国では現在,毒性の少ないイホスファミド+パクリタキセルが標準療法と位置付けられている。

一方,パクリタキセル(175 mg/m2)とカルボプラチン(AUC 5〜6)との併用療法(TC 療法)を行い,その後,可能な症例では全骨盤照射45Gy+腔内照射を追加し,奏効率が初回治療例で60%,再発例で55%,無増悪生存期間中央値は初回治療例で16 カ月,再発例で12 カ月であったとの報告がある10)。したがって,TC 療法はイホスファミドとパクリタキセルの併用療法と同じく,子宮癌肉腫に有効と期待されている。GOG232B 試験としてTC 療法が進行・再発子宮癌肉腫を対象に検討され,奏効率54%,無増悪生存期間中央値7.6 カ月,全生存期間中央値14.7 カ月という良好な成績を示した11)。また,本邦で行われたTC 療法の第Ⅱ相試験では,進行・再発子宮癌肉腫6 例に対しTC 療法が試みられ,奏効率66.7%,無増悪生存期間中央値9.1 カ月という結果であった12)。現在GOG261 試験としてイホスファミド+パクリタキセル療法とTC 療法とを比較する第Ⅲ相試験が進行中である(NCT00954174)。

子宮癌肉腫の化学療法や放射線治療以外の治療として,ホルモン療法が奏効する可能性は高くはないと考えられる。その理由の一つとして,エストロゲンならびにプロゲステロンの受容体の発現頻度が子宮体癌に比較して低いことが挙げられる13)。一方,再発病巣に対する手術療法の有効性に関する報告は少ないが,子宮体癌と同様に,局所的に切除可能で他に転移病巣を認めない症例に関しては手術療法を考慮してもよい。また,症例数は少ないが,肺または腹腔内の転移病巣の切除によって生存期間の延長がみられた報告もある14)。分子標的治療薬に関しては,現在のところ有効なものは示されていない。

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CQ38
子宮平滑筋肉腫に対して推奨される手術術式と術後治療は?

推奨グレードB
  1. 腹式単純子宮全摘出術および両側付属器摘出術を含めた完全摘出を目的とした手術を奨める。
推奨グレードC1
  1. 追加治療が必要と考えられる場合には,化学療法を提案する。

アルゴリズム(フローチャート8)参照

目的

子宮平滑筋肉腫に対する手術術式および術後治療に関して,十分な症例数で行われた前方視的研究はこれまでにみられないため,後方視的研究と限られた症例数での臨床試験をもとに検討する。

解説

子宮平滑筋肉腫は稀な悪性腫瘍で,症状・所見が子宮筋腫と類似し,子宮筋層内に限局している症例では術前の診断確定が困難なことが多い。実際,半数以上は子宮筋腫として手術を受け,術後の病理組織学的検査により初めて本腫瘍と判明する(付記)。

子宮平滑筋肉腫は予後不良で,唯一有効な治療は早期の完全摘出とされている。術前あるいは術中に平滑筋肉腫の診断が確定している場合で,完全摘出が見込まれる症例に対しては,単純子宮全摘出術+両側付属器摘出術を標準術式とする。平滑筋肉腫の卵巣への転移率は約4%で,逆に卵巣に転移をきたしている場合は既に肉眼的にも卵巣以外の子宮外進展を伴う進行症例が多い1-3)。一方で,卵巣摘出に関しては,予後にほとんど影響しないとする後方視的研究が多数あり1-3),平滑筋肉腫は若年者の方が予後良好との報告3)から,閉経までに相当の期間がある若年者で,腫瘍が画像検査ならびに術中肉眼所見で子宮に限局している早期症例の場合は卵巣温存を考慮できる。また,同じ理由で,子宮筋腫の診断で卵巣を温存した子宮全摘出術を受け,術後に平滑筋肉腫と判明した場合,再開腹による両側卵巣摘出の有用性は低いと考えられる。なお,卵巣温存に関しては,危険性を十分に説明した上で,早期症例の若年者に対して卵巣温存が考慮できる旨を「推奨」に入れることがガイドライン委員会で議論されたが,現時点では解説としての記載にとどめた。

平滑筋肉腫は比較的早期より肺,肝に血行性に転移しやすいが,後腹膜リンパ節への転移は6〜11%と低率である3-5)。リンパ節に転移をきたしている場合は既に肺,肝への血行性転移や腹腔内播種がみられる進行症例が多く3),腫瘍が肉眼的に子宮に限局している症例のリンパ節転移率は0〜4%と低率である4)。Ⅰ・Ⅱ期症例の後腹膜リンパ節郭清の意義は他の子宮体部悪性腫瘍に比較すると限定的で2, 4, 6),画像検査にて後腹膜リンパ節の腫大が確認された場合に郭清(生検)を考慮する4)

子宮平滑筋肉腫の摘出は子宮と一塊で切除されるべきであり,細切による摘出は禁忌である7, 8)。筋腫核出術後に平滑筋肉腫と診断された場合は,残存病巣の可能性を考え再開腹による標準術式を行う9)。臨床経過やMRI 検査で術前に平滑筋肉腫がある程度疑われている場合で,肉腫でなければ子宮温存の希望があり筋腫核出術を行おうとする症例に対しては,術中に迅速病理組織学的検査を行うことが望ましい。この場合,術中の限られた切片数での迅速病理組織学的検査では過小評価になりやすく,その時点で肉腫ではないと診断された場合でも術後の永久標本での詳細な検索の結果から平滑筋肉腫が判明することもあること,結果として平滑筋肉腫であった場合は,最初から子宮全摘出術を行うより有意に再発リスクが高く予後も不良であること10)を説明しておく必要がある。

術後治療に関してのメタアナリシスでは,早期症例(Ⅰ・Ⅱ期)に対する術後化学療法の意義は明らかでない11)。NCCN ガイドライン2017 年版では,平滑筋肉腫のⅠ期に対しては経過観察または化学療法を考慮するとしているが,Ⅱ・Ⅲ期の平滑筋肉腫完全切除後の術後治療の選択肢としては化学療法および/または放射線治療を提案している12)。術後化学療法に関する数少ない第Ⅲ相試験として,手術進行期Ⅰ・Ⅱ期の完全摘出例(平滑筋肉腫だけでなく癌肉腫も含まれている)に対して無治療群とアドリアマイシン(ドキソルビシン塩酸塩)単剤投与群を比較した結果,無再発期間中央値は延長されたものの,全生存期間中央値は改善されなかった13)。しかし,Ⅰ期の完全摘出例に対するアドリアマイシン(ドキソルビシン塩酸塩)単剤投与群あるいはCYVADIC〔シクロホスファミド+ビンクリスチン+アドリアマイシン(ドキソルビシン塩酸塩)+ダカルバジン〕治療群の比較検討では,無治療群に対していずれも有意に無再発期間を改善している14)。第Ⅱ相試験としては,ドセタキセルとゲムシタビンを併用したDG 療法が行われ,2 年生存率で59%という良好な成績を示している15)

子宮平滑筋肉腫に対する術後照射の有用性は否定的である。Ⅰ・Ⅱ期の完全摘出例に術後照射を行ったものの,生存率も局所制御率も改善しなかった16)。平滑筋肉腫103 例を含むⅠ・Ⅱ期の肉腫224 例に対する第Ⅲ相試験で,術後照射は予後を改善せず,平滑筋肉腫症例のみに限ると局所制御効果もなかった17)。子宮外病変を有するⅢ期以上の症例に行った術後照射も予後に寄与しなかった18)

ホルモン療法については,平滑筋肉腫の6 割がエストロゲンおよびプロゲステロンの受容体を発現すると報告され,エストロゲン受容体が発現している腫瘍に対するアロマターゼ阻害薬の効果が報告されてはいるが19),RCT のデータはない。

付記
悪性度不明な平滑筋腫瘍

子宮平滑筋腫瘍の良性・悪性の病理組織学的鑑別は,①細胞異型,②核分裂(指数),③凝固壊死などの所見によって総合的になされる。これらの所見の一部が認められるものの平滑筋肉腫の診断基準を満たさず,悪性とも良性とも断定できない場合を,「悪性度不明な平滑筋腫瘍」とよぶ20)。「悪性度不明な平滑筋腫瘍」とされた場合,その一部に転移・再発をきたす症例が含まれる21, 22)。子宮全摘出術が行われており病巣の残存がない症例では,平滑筋肉腫よりは悪性度が低いため,術後治療は不要であるが23),肺・肝・腹腔内等の転移しやすい部位の画像検査を術後定期的に行う。筋腫核出術あるいは子宮腟上部切断術が行われている症例では,年齢,挙児希望の有無,手術時の腫瘍残存の可能性などの因子を考慮し,子宮全摘出術・残存子宮頸部摘出術の追加手術について個別化して検討する。追加手術を行わない場合は,より慎重に定期管理を行う。

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CQ39
子宮内膜間質肉腫に対して推奨される手術術式と術後治療は?

推奨グレードB
  1. 腹式単純子宮全摘出術および両側付属器摘出術を奨める。
推奨グレードC1
  1. 骨盤・傍大動脈リンパ節郭清(生検)や腫瘍減量術も提案する。
推奨グレードD
  1. Ⅰ期の低異型度子宮内膜間質肉腫では術後治療を奨めない。
推奨グレードC1
  1. 未分化子宮肉腫・高異型度子宮内膜間質肉腫に対して追加治療が必要と考えられる場合には,化学療法を提案する。

アルゴリズム(フローチャート8)参照

目的

子宮内膜間質肉腫の診断が得られた場合,推奨される基本術式について後方視的研究をもとに検討する。さらに,術後治療としてのホルモン療法,化学療法および放射線治療について検討する。

解説

子宮内膜間質肉腫は,その稀な発生頻度のために治療法に関する前方視的研究はほとんどみられず,標準治療法は未だ確立していない。子宮筋腫,子宮腺筋症として手術され,術後初めて本腫瘍の診断に至ることも多い1)

2014 年のWHO 分類の改訂により,2003 年より低悪性度子宮内膜間質肉腫と未分化子宮内膜肉腫に分類されていた子宮内膜間質肉腫は,再び低異型度と高異型度の子宮内膜間質肉腫と未分化子宮肉腫に細分類された1, 2)。JAZF1-SUZ12 融合遺伝子を有する比較的低悪性度の腫瘍とYWHAE-FAM22A/B の遺伝子再構成を有する進行性で予後不良の組織型が同定され,それぞれの病理学的性質や臨床的悪性度の違いより,低異型度と高異型度の子宮内膜間質肉腫と未分化子宮肉腫に細分類された1, 2)。もともと希少疾患である上,新しい疾患概念である高異型度子宮内膜間質肉腫と未分化子宮肉腫については,現在のところ臨床像を含め治療法に関するエビデンスは乏しい。また高異型度子宮内膜間質肉腫の名称はWHO 分類第3 版(2003 年)より前の高悪性度子宮内膜間質肉腫とは定義が若干異なっており,文献を読むときには注意が必要である。

NCCN ガイドライン2017 年版では,低異型度子宮内膜間質肉腫と高異型度子宮内膜間質肉腫,平滑筋肉腫,未分化子宮肉腫の治療について,別個に記述している3)

子宮内膜間質肉腫に対する標準術式は,単純子宮全摘出術および両側付属器摘出術である。その他,腹水細胞診,播種病巣のサンプリングを行う。それ以上の拡大術式に治療的効果は証明されていない。また,比較的若年者に発症が多く,Ⅰ期の低異型度症例で両側付属器摘出術の有無が再発や生存に差をもたらさなかったことから,卵巣温存が検討されつつある4, 5)。WHO 分類 第3 版(2003 年)以前の高悪性度子宮内膜間質肉腫(旧分類)の場合は,骨盤あるいは傍大動脈のリンパ節転移がそれぞれ18%(2/11 例),15%(2/13 例)にみられていることから6),リンパ節郭清(生検)が考慮されることがある7)。さらに,高悪性度子宮内膜間質肉腫(旧分類)では子宮外病巣を伴うことが多く,残存なく摘出し得た症例の全生存期間が52 カ月であるのに対して,病巣を十分に摘出し得なかった症例は2 カ月であったとする報告6)を考慮すると,大網の切除を含めた腫瘍減量術を考慮する必要がある。一方,低異型度子宮内膜間質肉腫においても,骨盤リンパ節転移が9%(2/23 例)〜33%(5/15 例)であるとの報告から6, 8),リンパ節郭清(生検)は検討されるべきであろう。ただし,低悪性度の場合,骨盤リンパ節郭清4)も子宮外病巣の切除6)も,ともに予後に相関しないとの報告もある。

低異型度子宮内膜間質肉腫の術後治療に関しては,手術で病巣が完全摘出できれば経過観察を考慮することができるとされているが9),NCCN ガイドライン2017 年版では,Ⅱ〜Ⅳ期症例には術後ホルモン療法が推奨されている3)。実際,エストロゲンおよびプロゲステロンの受容体を発現することが多く,medroxyprogesterone acetate(MPA),GnRHa,アロマターゼ阻害薬であるレトロゾールなどホルモン療法が中心となるが9, 10),ホルモン受容体の有無や卵巣温存により適応,使用方法を十分に考慮する必要がある。また,低異型度子宮内膜間質肉腫Ⅲ・Ⅳ期症例の術後にホルモン療法を行い予後が改善したとの報告もある4)。低異型度子宮内膜間質肉腫に対する術後照射に関しては,高度の筋層浸潤や骨盤内に病巣が残存した症例などに術後照射が試みられ局所再発が減少したとの報告もあるが,生命予後に寄与するかは不明であり,症状緩和目的以外の放射線治療の実施については疑問視されている9)

NCCN ガイドライン2017 年版では,Ⅰ期で完全摘出された未分化子宮肉腫に対する補助療法として,経過観察と化学療法の両者が提示されている3)。完全摘出されたⅡ期およびⅢ期では,再発のリスクを考慮して術後補助化学療法および/または放射線治療が記載されている。不完全摘出に終わった症例では,基本的に化学療法と緩和的放射線治療の併用もしくは化学療法単独が推奨される3)。低異型度子宮内膜間質肉腫に比し,エストロゲンおよびプロゲステロンの受容体の発現が低いため11),ホルモン療法は推奨されず,むしろ化学療法あるいは放射線治療が中心となる9)。化学療法のレジメンとしては術後治療に特化した報告はないが,パクリタキセルとカルボプラチンの併用療法(TC 療法)もしくはCQ40 の進行・再発子宮内膜間質肉腫に対する化学療法で述べるレジメンが主体となると考えられる。放射線治療に関しては,21 例の子宮内膜間質肉腫(15 例の術後照射を含む)に対し良好な局所制御効果を示したとする報告12)がある一方で,子宮内膜間質肉腫28 例を含む手術進行期Ⅰ・Ⅱ期肉腫224 例に対する第Ⅲ相RCT では,術後照射は予後の改善に寄与していない13)

参考文献

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CQ40
子宮平滑筋肉腫・子宮内膜間質肉腫の切除不能進行例や再発例に対して推奨される治療法は?

推奨グレードC1
  1. 再発例で完全切除が可能な場合は手術療法を提案する。
推奨グレードC1
  1. 化学療法も考慮する。
推奨グレードC1
  1. 低異型度子宮内膜間質肉腫ではホルモン療法を提案する。
推奨グレードC1
  1. 症状緩和を目的とする放射線治療も考慮する。

アルゴリズム(フローチャート8)参照

目的

予後の厳しい子宮肉腫の進行・再発例に対して期待できる治療法について検討する。

解説

子宮肉腫の切除不能進行例や再発例の治療方針は全く確立されていない。また,発生頻度も低いため,十分な症例数で行われた前方視的研究がほとんどない。

切除不能な初発症例に対しては化学療法や放射線治療が治療の中心となり,低異型度子宮内膜間質肉腫に対しては,これにホルモン療法が加わる。現時点でいずれの治療も十分な効果が期待できないため,孤発症例など許容できる侵襲の範囲で摘出が可能ならば手術療法を,局所の対症療法として放射線治療を考慮すべきである。

化学療法では,単剤の奏効率として,アドリアマイシン(ドキソルビシン塩酸塩)で25%1),ゲムシタビンで21%2),イホスファミドで17%3)と報告されている。一方,シスプラチンは無効とされ4, 5),エトポシド注射剤は11%6),経口剤で7%7),パクリタキセルでは9%8)と,いずれも満足できる奏効率ではない。多剤併用療法では,アドリアマイシン(ドキソルビシン塩酸塩)に併用する薬剤としてダカルバジン1)とイホスファミド9)を用いたレジメンがいずれも30%と良好な奏効率を示しているが,同時に毒性も増強している。一方,シクロホスファミドを併用するレジメンでは,シクロホスファミドとの併用効果が認められなかった10)。手術切除不能な平滑筋肉腫の初回治療として,ゲムシタビンとドセタキセルの併用療法(DG 療法)が53%もの高い奏効率を示したことより11),GOG によって追試が行われた。その結果,切除不能の進行平滑筋肉腫の初回化学療法としての奏効率は36%12),化学療法後の再発症例を対象としたセカンドライン化学療法の奏効率は27%13)と良好な結果であった。その後,DG 療法にベバシズマブの上乗せ効果を検討したGOG250 試験の結果が報告されたが14),ベバシズマブの追加により無増悪生存期間(progression-free survival;PFS),奏効期間とも延長は認められず,依然DG 療法が標準的な化学療法と結論している。しかし,2017 年に発表されたDG 療法とアドリアマイシン(ドキソルビシン塩酸塩)を比較した第Ⅲ相試験(GeDDis 試験)では,PFS,全生存期間(overall survival;OS)の有意差はないもののQOL の観点からアドリアマイシン(ドキソルビシン塩酸塩)単剤の優位性が報告された15)。よって現時点では,依然としてファーストラインの標準治療はアドリアマイシン(ドキソルビシン塩酸塩)であり,セカンドライン以降の選択肢としてDG 療法があると位置付けられる。またDG 療法について,本邦では強い骨髄抑制や間質性肺炎などの有害事象に対する懸念があり,使用にあたり投与量や投与方法についての工夫も検討されている16)

最近,進行・再発の悪性軟部腫瘍に対するセカンドライン以降の薬剤選択として,パゾパニブ,トラベクテジン,エリブリンが承認された。承認となった試験では,いずれもアントラサイクリンを含む前治療後に単剤で投与され,対象例には平滑筋肉腫が含まれている。マルチチロシンキナーゼ阻害薬の一つであるパゾパニブの有効性を検討するRCT では,平滑筋肉腫においても有効性が示唆された17)。AGO(Arbeitsgemeinschaft Gynäkologische Onkologie)では現在,進行・再発癌肉腫,子宮平滑筋肉腫を対象とし,パゾパニブ±ゲムシタビンの効果,安全性をみる第Ⅱ相試験(PazoDoble)が進行中である。

トラベクテジンはアントラサイクリン系薬剤を含むレジメンによる治療を受けたことのある切除不能あるいは転移性の子宮平滑筋肉腫患者に対する選択肢としてNCCN ガイドライン2017 年版に掲載されている18)。518 例(平滑筋肉腫378 例,うち子宮原発212 例)に対してダカルバジン単剤と比較し,1.5 カ月のPFS 中央値を4.2 カ月と延長させた(ハザード比0.55)19)

エリブリンは,アントラサイクリン系薬剤の治療を含む少なくとも2 レジメンの前治療後に増悪した進行または再発の軟部肉腫(平滑筋肉腫または脂肪肉腫)を対象とし,ダカルバジンを標準治療として比較検討された第Ⅲ相試験で,主要評価項目であるOS において,対照薬であるダカルバジン投与群(OS 中央値11.5 カ月)に比較して13.5 カ月と統計学的に有意な延長を示した(ハザード比0.77)20)

これらの薬剤について,投与の優先順位などは確定しておらず,病状やそれぞれの薬剤の投与方法や有害事象を考慮して投与されているのが現状である。

進行・再発平滑筋肉腫に対する放射線治療は効果に乏しく21),化学療法と緩和的放射線治療の併用,または化学療法単独が主体である18)。ホルモン療法の有効性に関するエビデンスは少ないが,エストロゲン受容体陽性かつ,もしくはプロゲステロン受容体陽性の子宮平滑筋肉腫にはアロマターゼ阻害薬を考慮することができる22)

進行・再発子宮内膜間質肉腫のうち,低異型度症例に対してはホルモン療法をまず検討すべきである18)。その根拠として,肺転移を有する進行例と術後再発例に対して,MPA23, 24)やアロマターゼ阻害薬であるレトロゾール25)が良好な効果を示している。ホルモン療法無効例や高異型度子宮内膜間質肉腫,未分化子宮肉腫に対しては,低異型度症例よりホルモン感受性が低いこと26),および病勢進行が速いことより,化学療法もしくは放射線治療を検討すべきである27)

進行・再発子宮内膜間質肉腫への化学療法に関するエビデンスは平滑筋肉腫に比して非常に少なく,臨床試験も他の肉腫とともに行われたものがほとんどである。唯一,子宮内膜間質肉腫に対する単剤の効果を報告した臨床試験では,進行・再発例を対象にイホスファミド単剤投与が33%の奏効率を示している9)。子宮内膜間質肉腫の後方視的検討では,単剤および一部多剤併用においてアドリアマイシン(ドキソルビシン塩酸塩)が比較的良好な効果を示したという報告もある28)。多剤併用療法に関しては,シスプラチンをアドリアマイシン(ドキソルビシン塩酸塩)に併用し有効であった報告や29),多発肺転移を伴うⅣ期の高悪性度子宮内膜間質肉腫にイホスファミド,アドリアマイシン(ドキソルビシン塩酸塩),シスプラチンを併用し著効した報告もみられる30)。WHO 分類 第4 版(2014 年)で定義されたYWHAE の遺伝子再構成を有する高異型度子宮内膜間質肉腫に対し,アドリアマイシン(ドキソルビシン塩酸塩)を含むレジメンで効果が認められたとする7 例の後方視的な症例報告31)があるが,エビデンスの高い化学療法の報告はなく,今後の検証が必要である。

進行・再発子宮内膜間質肉腫に対する放射線治療のエビデンスは少ない。進行・再発例に症状緩和を目的とした照射を行い,全例がPR(partial response)となった報告32)があるが,延命効果を示した報告はない。ホルモン療法や化学療法との併用を含めて,症状緩和を目的とした照射は考慮される。

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第8章 絨毛性疾患の治療

総説

絨毛性疾患とは胎盤栄養膜細胞(トロホブラスト)の異常増殖をきたす疾患の総称であり,『絨毛性疾患取扱い規約 第3 版』1)において,胞状奇胎hydatidiform mole,侵入胞状奇胎(侵入奇胎)invasive mole,絨毛癌choriocarcinoma,胎盤部トロホブラスト腫瘍placental site trophoblastic tumor(PSTT),類上皮性トロホブラスト腫瘍epithelioid trophoblastic tumor(ETT),存続絨毛症persistent trophoblastic disease の6 つに分類されている。病理学的には,胞状奇胎(全胞状奇胎,部分胞状奇胎,侵入奇胎),絨毛癌,中間型トロホブラスト腫瘍(PSTT,ETT)に分類される(表3)。本ガイドラインでは胞状奇胎の治療・管理については扱わないが,侵入奇胎,絨毛癌,PSTT,ETT,存続絨毛症はいずれも化学療法や病巣の摘出手術を必要とし,臨床的に腫瘍として捉えられており,それらの治療について解説する。

表3 病理学的分類
表3 病理学的分類

侵入奇胎は胞状奇胎絨毛が子宮筋層内へ浸潤したものであり,全胞状奇胎の10〜20%,部分胞状奇胎の1〜2%に続発する2)。約1/3 の症例に肺転移を認める。一方,絨毛癌は全胞状奇胎の1〜2%に続発するとともに,分娩・流産などあらゆる妊娠に続発し得る。病理組織学的には合胞体・細胞性栄養膜細胞類似の異型細胞がtwo cell pattern を形成し,中間型栄養膜細胞類似の腫瘍細胞も混在し,出血・壊死を伴って増殖・浸潤する。絨毛形態を認めない点で侵入奇胎と区別される。肺,脳,肝など全身に血行性転移を起こしやすい。

絨毛癌と侵入奇胎はともにhCG という特異的腫瘍マーカーが存在し,化学療法が著効するという共通点を有するが,絨毛癌は侵入奇胎に比べて予後不良であるため,治療開始前に両者を判別し,適切な治療方針と化学療法レジメンを選択することが重要である。本来,両者の鑑別には病理組織学的診断が必要だが,妊孕性温存などの理由から化学療法のみで治療を開始し,組織学的所見が得られない場合が多い。このようにhCG 値(mIU/mL の単位の系)の測定や画像検査により,侵入奇胎または絨毛癌などが臨床的に疑われるが,病巣の組織学的確認が得られない場合を存続絨毛症と総称し,臨床的侵入奇胎,臨床的絨毛癌,奇胎後hCG 存続症の3 つに細分類されている。画像で病巣が確認できる場合には絨毛癌診断スコア(表4)を用いて,合計4 点以下を臨床的侵入奇胎,5 点以上を臨床的絨毛癌と診断する1)。胞状奇胎後hCG 値の下降が非順調型であるが,画像で病巣が確認できない場合には奇胎後hCG 存続症と診断する。FIGO 2000 分類3)では,これらを妊娠性絨毛性腫瘍(gestational trophoblastic neoplasia;GTN)と称して包括的に捉え,FIGO staging and risk factor scoring system(表5)を用いて,合計スコア6 点以下をlow risk,7 点以上をhigh risk に分類している。本邦における臨床的侵入奇胎および奇胎後hCG 存続症はFIGO 分類のlow risk GTN に,臨床的絨毛癌はhigh risk GTN に概ね相当するが,両者の間で診断が異なる場合は,本邦では絨毛癌診断スコアを優先していることが多い。

表4 絨毛癌診断スコア1)
表4 絨毛癌診断スコア
表5 FIGO2000 staging and risk factor scoring system for gestational trophoblastic neoplasia(GTN)
表5 FIGO2000 staging and risk factor scoring system for gestational trophoblastic neoplasia(GTN)

侵入奇胎(low risk GTN)に対する初回治療はメトトレキサートまたはアクチノマイシンD の単剤投与が基本である4, 5)CQ41)。初回治療による寛解率は60〜90%であるが,その後の治療を含めての寛解率は,ほぼ100%である。絨毛癌(high risk GTN)に対してはメトトレキサート,アクチノマイシンD,エトポシドの3 剤を含む多剤併用療法が初回治療として選択され , 寛解率は80%程度である6-8)CQ42)。化学療法抵抗性病変や制御困難な出血などに対して,子宮全摘出術や転移巣の外科的切除が行われる9)CQ43)。脳転移に対する放射線治療も適応は限定的であるが有用である(CQ44)。これらの化学療法を中心とした集学的治療により,絨毛癌の生存率は84〜86%と報告されている6-8)が,肺以外の遠隔転移や初回化学療法抵抗性は予後不良となるリスク因子であり10),10%前後の難治性絨毛癌症例に対する治療法の確立は重要な検討課題である。

PSTT およびETT は稀な絨毛性疾患であり,中間型栄養膜細胞類似の腫瘍に分類される11)。両者とも診断には病理組織学的検査が必要であり,前述のスコアリングによる臨床診断は適用されない1, 3)。PSTT は胎盤着床部の中間型栄養膜細胞に類似した腫瘍細胞が子宮平滑筋束や平滑筋線維を押し分けるように増殖する像が特徴的で,通常,絨毛形態は存在しない。免疫組織化学的に腫瘍細胞はhPL 陽性,一部にhCG 陽性である。PSTT は化学療法に対する感受性が一般に低く,治療は病巣が子宮に限局した症例では子宮全摘出術が第一選択であり,4 年生存率は 90%以上と良好である12)CQ45)。子宮外病変や転移を有する症例では手術に加えて多剤併用化学療法が行われているが,4 年生存率は30〜50%と低い12)。一方,ETT は絨毛膜無毛部の中間型栄養膜細胞に類似する細胞からなり11),単核の腫瘍細胞が巣状・索状・地図状に増殖し,中央部に硝子様変化や壊死を伴うことが多い。免疫組織化学的にはサイトケラチン陽性で,一部の腫瘍細胞にhPL とhCG が陽性である。30〜50%が子宮頸部に発生し,扁平上皮癌との鑑別を要する。ETT に対しては主に手術療法が行われているが13),多数の症例を検討した報告はなく治療法は確立していない。

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CQ41
侵入奇胎,臨床的侵入奇胎,および奇胎後hCG 存続症に対して推奨される化学療法は?

推奨グレードB
メトトレキサートあるいはアクチノマイシンD による単剤療法を奨める。

目的

low risk GTN に相当する侵入奇胎,臨床的侵入奇胎,および奇胎後hCG 存続症に対する化学療法について検討する。

解説

侵入奇胎,臨床的侵入奇胎,および奇胎後hCG 存続症に対して汎用される薬剤は,メトトレキサートあるいはアクチノマイシンD の2 剤であり,投与方法の異なる複数のレジメンが存在する。いずれのレジメンを使用しても,ファーストラインあるいはセカンドラインにより,ほぼ100%の寛解率を達成することが可能である。このため,レジメンの選択は効果,有害事象,利便性,コストの面から施設ごとに設定される傾向にある。

メトトレキサートは1956 年の報告以来,最も汎用される薬剤である。主な有害事象は肝機能障害,口内炎,皮疹であり,骨髄抑制,脱毛,悪心・嘔吐の有害事象は比較的少ない。アクチノマイシンD は1962 年の報告以降汎用され,有害事象は悪心・嘔吐,脱毛,骨髄抑制,血管外漏出による皮膚壊死などである。エトポシドの使用は1979 年に報告され1),効果はメトトレキサート,アクチノマイシンD と同等あるいはそれ以上とされたが,エトポシド投与後の二次性発がん(白血病)の問題があり,予後良好な侵入奇胎に対する初回化学療法としては原則として使用されていない。

初回化学療法として使用されるレジメンのうち,5-day メトトレキサート療法(0.4 mg/kgを5 日間筋肉内投与)は,国内では最も汎用されており,初回治療による寛解率は60〜85%と報告されている2-5)。メトトレキサート-ホリナートカルシウム療法は5-day メトトレキサート療法の効果増強と有害事象軽減を目的としてメトトレキサート1 mg/kg をDay 1, 3, 5, 7 に筋肉内投与し,Day 2, 4, 6, 8 にホリナートカルシウム(ロイコボリン)0.1 mg/kg を投与する。初回治療による寛解率は60〜70%と報告されている6-8)。メトトレキサート30〜50 mg/m2 を毎週1 回筋肉内投与するweekly メトトレキサート療法9, 10)や1 回投与量を100〜200 mg/m2 に増加する治療も試みられているが11),初回治療による寛解率は65〜74%程度である。一方,5-day アクチノマイシンD 療法(10μg/kg を5 日間静注)による初回治療寛解率は84〜88%と報告されている5, 12)。アクチノマイシンD パルス療法は,5-day アクチノマイシンD 療法の有害事象軽減のためにアクチノマイシンD(40μg/kg または1.25 mg/m2)を2 週間に1 回静注する方法である13, 14)。2011 年に報告されたランダム化比較試験(randomized controlled trial;RCT)(GOG174 試験:NCT00003702)においては,アクチノマイシンD パルス療法の初回治療寛解率は70%であり,weekly メトトレキサート療法より有意に高かった14)。投与方法は様々であるが,メトトレキサートとアクチノマイシンD を初回治療とする7 つのRCT を総合的に解析したメタアナリシス15)では,初回治療寛解率はアクチノマイシンD の方が高く,メトトレキサートは,ファーストラインのレジメンとしてはアクチノマイシンD に劣ることが示唆された。しかし,メトトレキサートは有害事象が少なく,特に脱毛や嘔気をほとんど認めないため,初回治療のレジメンにはメトトレキサートとアクチノマイシンD のどちらも推奨される。

これらのいずれのレジメンによっても20〜30%程度が薬剤抵抗性あるいは重篤な有害事象のため薬剤変更を必要とし,2〜6%は再発する。化学療法を施行するもhCG 値が上昇する場合,あるいは2〜3 サイクルで十分なhCG 値の下降が得られない場合に薬剤抵抗性と判定し,投与薬剤あるいは投与法の変更を考慮する必要がある。

セカンドラインのレジメンとしては,ファーストラインがメトトレキサートであればアクチノマイシンD に,アクチノマイシンD であればメトトレキサートに変更する。また,投与法を変更することも考慮すべきと報告されている16)。メトトレキサート治療後薬剤抵抗性となった38 例をアクチノマイシンD パルス療法で治療し,28 例(74%)が寛解したとの報告がある17)。さらに,薬剤抵抗性あるいは有害事象のため再度薬剤変更を必要とする場合には,エトポシド単剤療法,エトポシドとアクチノマイシンD の2 剤併用療法18),あるいは絨毛癌の項(CQ42)で述べる多剤併用療法を施行すべきである。また,寛解後再発した場合も,絨毛癌に対する治療を行う。

追加化学療法に関しては,化学療法によりhCG が正常値(測定単位はmIU/mL)に下降した後,1〜3 サイクル程度の追加化学療法を行うことが一般的である14, 19)

侵入奇胎においては,ほとんどが化学療法のみで治療されるため,手術療法の役割は少ないが,制御困難な性器出血や腹腔内出血では子宮全摘出術や腫瘍核出術,腟転移切除等の手術療法が必要とされる場合がある。さらに,子宮内に病巣があり,転移のない場合には手術療法により化学療法のサイクル数を減少できる可能性が示唆されており,挙児希望がない症例では子宮全摘出術を行うこともある20)。子宮全摘出術を行った場合でも術後の化学療法は必要と考えられている。

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CQ42
絨毛癌に対して推奨される化学療法は?

推奨グレードB
メトトレキサート,アクチノマイシンD,エトポシドを含む多剤併用療法を奨める。

アルゴリズム(フローチャート9)参照

目的

病理組織学的に診断された絨毛癌および臨床的絨毛癌(high risk GTN)に対する化学療法について検討する(レジメンの詳細)。

解説

絨毛癌および臨床的絨毛癌(high risk GTN)に対する治療の中心は化学療法であり,メトトレキサート,アクチノマイシンD,エトポシドの3 剤を含む多剤併用療法が初回治療の第一選択となる。2013 年版では,推奨はグレードC1 とされていたが,世界的なコンセンサスに基づきグレードB へ変更した1)

EMA/CO 療法はエトポシド,メトトレキサート,アクチノマイシンD,シクロホスファミド,ビンクリスチンの5 剤併用療法であり,初回治療として最も汎用されている2-7)。初回寛解率は報告全体として71〜86%であり,20%程度の症例は薬剤抵抗性のために,薬剤変更を要している。また,再発をきたす症例も4〜35%と報告されている。MEA 療法はメトトレキサート,エトポシド,アクチノマイシンD の3 剤併用療法であり,報告により投与量や投与法に若干の違いがあるが,初回寛解率は約75%であり8, 9),治療成績・有害事象発生頻度もEMA/CO 療法と同程度である。

EMA/CO,MEA など多剤併用療法では悪心・嘔吐,脱毛,口内炎,骨髄抑制などの頻度はメトトレキサートやアクチノマイシンD 単剤療法に比較して高頻度にまた重症化することがある。また,早発閉経リスクの上昇が報告された10)。エトポシドを含む治療法であるため,二次性発がん(白血病)リスク上昇の可能性がある2, 10)

絨毛癌の化学療法においては,hCG が正常範囲内(測定単位はmIU/mL)に下降後,追加化学療法を行うことが必須であり,侵入奇胎に比較して再発率も高いことから,少なくとも3〜4 サイクル程度の追加化学療法が推奨されている2, 3, 5, 8)

絨毛癌の20%前後はEMA/CO 療法,MEA 療法に抵抗性を示し,また治療後再発をきたすこともある。これら難治性絨毛癌に対して,以下に述べる化学療法が推奨されている。

EP/EMA 療法はエトポシド,メトトレキサート,アクチノマイシンD にシスプラチンを加えた4 剤併用療法であり,EMA/CO 抵抗性となった34 例を治療し88%が寛解したと報告されている11)。有害事象としては,Grade 3,Grade 4 の骨髄抑制が60%以上にみられ,BUN 上昇などの腎毒性も40%程度で認められている11)。FA 療法はフルオロウラシル(5-FU)とアクチノマイシンD の2 剤併用療法である。症例数は少ないが,MEA 抵抗性症例10 例中8 例が寛解,有害事象はEP/EMA 療法に比較すると比較的軽微であった12)

これらの初回および二次化学療法により,絨毛癌全体の生存率は86〜91%と報告されている。二次または三次化学療法としてパクリタキセルとエトポシド,シスプラチンを併用したTP/TE 療法13)や胚細胞腫瘍に行われる BEP療法14, 15)(ブレオマイシン+エトポシド+シスプラチン)なども試みられているが,化学療法抵抗性症例の予後は依然として不良である。化学療法抵抗性で病巣が確認できれば,手術療法も検討する必要がある(CQ43)。

癌死例の35%(11/34)が治療開始直後の早期死亡であったことから1),全身状態不良例に対して,低用量のエトポシド,シスプラチン療法(low dose EP 療法)で化学療法を開始し1〜4 サイクル施行後にEMA/CO 療法に移行した結果,早期死亡が7.3%(11/151)から0.7%(1/146)に減少したと報告された16)。呼吸不全や播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation;DIC)を呈している患者に対しては,low dose EP 療法による化学療法導入も選択肢となる。

参考文献

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CQ43
絨毛癌に対する手術療法の適応は?

推奨グレードC1
  1. 化学療法抵抗性の子宮病巣や転移病巣に対して,手術療法を提案する。
推奨グレードC1
  1. 出血の制御が困難な子宮病巣,あるいは脳圧亢進症状を伴う脳転移に対しては,手術療法を提案する。

アルゴリズム(フローチャート9)参照

目的

絨毛癌に対する手術療法に関する報告は少なく,これまで後方視的研究のみである。絨毛癌に対する手術療法について,子宮全摘出術,肺転移巣摘出術および開頭術を中心に,その適応を検討する。

解説

絨毛癌の治療は化学療法が中心であり,その初回治療による寛解率は80%前後と高い。このため,手術療法の適応は限定的である。しかしながら,化学療法に抵抗性の病巣が存在する場合や,制御困難な出血,脳圧亢進による意識障害など救命を必要とする場合には手術療法も考慮される。

子宮全摘出術の適応は,①化学療法抵抗性の子宮病変,②緊急性のある大量子宮出血,③妊孕性温存希望のない症例に対する選択的治療とされている1-4)。最近では化学療法の進歩により子宮摘出術の頻度は減少しているが5),摘出子宮の病理組織検査で胎盤部トロホブラスト腫瘍(PSTT)と診断された症例が7〜16%存在するため診断的意義もある1, 2)。子宮病巣の腫瘍核出術は,妊孕性温存を強く希望する患者に対して,化学療法抵抗病巣の摘出,子宮破裂・穿孔の止血・修復などのために施行する場合がある6)。遠隔病変・効果不良の既往化学療法が多いと,子宮摘出の治療的効果は不良であると報告されている1, 7)。子宮全摘出術後の化学療法は必要である。

絨毛癌の肺転移病巣に対する手術療法は,下記に示す条件を満たす場合に考慮される8-10)。①手術可能症例である,②子宮病変が制御可能である,③他の転移巣がない,④片肺の孤立性病巣である,⑤術前hCG 値が1,000〜1,500 mIU/mL 以下である。これらの条件を満たした場合の寛解率は90%以上であったと報告されている8-11)。なお,化学療法にてhCG が正常値化し寛解した後に,画像上残存する肺病変に対する手術療法は不要である12)

絨毛癌の脳転移に対する開頭術は,意識障害などの脳圧亢進症状や重篤な神経症状がある場合に,化学療法に先行もしくは並行して行われる13)。多剤併用化学療法が導入された1990 年代以降の報告では,脳転移をきたした症例の開頭術の頻度は9〜22%である14-16)。脳転移を認めたhigh risk GTN 101 症例の解析では,24 例で開頭術が施行された。うち15 例は生命にかかわる頭蓋内圧上昇による緊急開頭術であったが,14 例は寛解した15)。脳転移により急速な神経症状の増悪がみられる場合には,開頭術を行うことが望ましい。緊急開頭術以外には,薬剤抵抗性病変に対する腫瘍摘出が行われるが,近年は脳転移に対する脳神経外科手術はルーチンでは行われなくなった14-16)

腟転移や肝転移あるいは他の遠隔転移(脾,腎,腸管など)に対する手術療法の適応は,肺転移や脳転移と同様に,多量出血を認める場合や化学療法抵抗性の場合である。近年,血管塞栓術などの進歩に伴い,手術療法の適応はより限定的となっている17, 18)。子宮病巣ならびに腟転移病巣からの多量出血に対し血管塞栓術を施行したGTN 8 症例の報告では,内腸骨動脈および子宮動脈の塞栓術が施行され,成功率は75%であった17)

参考文献

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CQ44
絨毛癌に対して放射線治療は有用か?

推奨グレードC1
脳転移例に対しては,適応を慎重に検討し放射線治療を提案する。

アルゴリズム(フローチャート9)参照

目的

絨毛癌に対する放射線治療の有用性について,脳転移を中心に検討する。

解説

絨毛癌の脳転移の頻度は10%程度であり,予後不良因子の一つである1)。絨毛癌の脳転移巣は血行が豊富であることから,神経学的機能障害や治療前・早期の急死につながる脳出血や頭蓋内圧上昇をきたしやすい。脳転移症例の約90%は肺転移など他臓器転移を併発している1, 2)。このため脳転移の個数や大きさ,場所,症状の有無,他臓器病変の状態等に基づき,脳転移に対しては多剤併用化学療法を中心に,手術療法や放射線治療などを組み合わせた集学的治療が施行されている1-4)

多剤併用化学療法が導入された1990 年代以降の報告をまとめると,絨毛癌脳転移症例の寛解率は,初回治療例では80〜85%2-4)であり,再発や薬剤抵抗性で治療中に脳転移が見つかった症例では約50%であった3, 4)

英国からの報告では2),初発時脳転移例27 例に対して,高用量メトトレキサート(MTX)-EMA/CO(またはEP/EMA)に髄腔内MTX 投与を併用し85%(23/27)の寛解率であった。ルーチンで全脳照射・開頭術は行わず,緊急性のあった5 例で開頭術が行われた。残存病変に対して5 例で定位照射が行われた。中国からの報告では3),初発時脳転移例に対して多剤併用化学療法(FAEV:Floxuridine,国内未承認),髄腔内MTX 投与および選択的開頭術併用により85%(53/62)の寛解率であったが,再発治療中の脳転移例では寛解率は51%(24/47)であった。本報告では,放射線治療は原則行われず,2 例で定位照射が行われている。米国からの報告では4),初発時脳転移例5 例に対して,高用量MTX-EMA/CO(髄腔内MTX 併用なし)に,2 例には全脳照射,3 例には定位照射が併用され,4 例が生存した。一方,再発治療中の脳転移例6 例に対しては,全脳照射と定位照射が併用されたが,寛解率は50%(3/6)であった。

これらの報告をまとめると,絨毛癌脳転移例では,初回治療例では多剤併用化学療法を優先し,緊急時には開頭術を行う(CQ43)。難治例に対しては,適応を慎重に検討し放射線治療も考慮する。近年,全脳照射は回避される傾向にある。絨毛癌脳転移症例全体としての寛解率は64〜85%2-4)程度であり長期生存も十分に見込めるため,照射晩期合併症にも配慮する必要がある。国内では髄腔内MTX 投与に関しては治療実績に乏しい。

多剤併用化学療法導入後,脳転移以外の絨毛癌病巣に対する放射線治療の有効性を示すエビデンスは認められない。

参考文献

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Neubauer NL, Latif N, Kalakota K, Marymont M, Small W Jr, Schink JC, et al. Brain metastasis in gestational trophoblastic neoplasia:an update. J Reprod Med 2012;57:288-92(レベルⅢ)【委】

CQ45
PSTT,ETT に対して推奨される治療法は?

推奨グレードC1
  1. 病巣が子宮に限局した症例に対しては,子宮全摘出術を提案する。
推奨グレードC1
  1. 転移のある症例では,子宮全摘出術を含む手術療法および化学療法の併用を提案する。

目的

絨毛性疾患の中では比較的新しく稀な疾患であるPSTT およびETT について,その治療法を検討する。

解説

胎盤部トロホブラスト腫瘍(PSTT)および類上皮性トロホブラスト腫瘍(ETT)は中間型栄養膜細胞類似の稀な腫瘍であり,両者とも診断には病理組織学的検査が必要である。臨床所見としては,血中hCG は比較的低値であるが,画像検査や臨床経過においては絨毛癌や侵入奇胎,あるいは過大着床部や胎盤遺残などの非腫瘍性病変とも類似していることがあり,子宮全摘出術後に初めて本疾患と診断されることもある。本項では,子宮内掻爬物や切除された原発病巣・転移病巣の病理組織学的所見などから,PSTT あるいはETT と診断された場合の治療について検討する。

両者とも絨毛癌や侵入奇胎と比較して,一般に化学療法の感受性は低く,手術療法が治療の中心となる。

PSTT 62 症例の後方視的検討1)では,34 例(55%)がⅠ期であり,このうち手術療法(子宮全摘出術)のみを施行した17 例と,手術に化学療法を併用した16 例では,10 年生存率は91%と93%で差は認められなかった。すなわち,術後化学療法の有効性を示すエビデンスは認められなかった。他の報告においても,Ⅰ期で手術療法のみを行った症例では4 年生存率は94%であり2),生存率および再発率は術後化学療法を併用した症例との差は認められなかった3)。これらの結果より,Ⅰ期に対しては子宮全摘出術が推奨される。

一方,子宮外病変や転移を有するⅡ〜Ⅳ期の症例においては,手術と化学療法を併用した17 症例中,再発は6 例(35%)であったのに対して,手術のみでは3 例中,再発は2 例(67%),化学療法のみを施行した8 例で長期生存できたのは2 例のみであった1)。PSTT の化学療法に対する感受性は絨毛癌や侵入奇胎のように高くはなく,また,一定の評価が得られていないが,Ⅱ期以上の症例に対しては有効である可能性が示唆されている。化学療法のレジメンは,絨毛癌に使用されるEMA/CO 療法あるいはEP/EMA 療法(CQ42)が用いられた報告が多いが1, 2, 4),レジメンを詳細に比較検討した報告は認められない。

妊孕性温存のために子宮内容除去術や子宮部分切除術を施行し,化学療法を併用して治癒した報告も認められるが,子宮温存療法としては確立していない2, 3, 5)。リンパ節転移を3.2〜5.9%に認める1, 6)が,後腹膜リンパ節郭清の有効性は検討されていない。

ETT はPSTT よりさらに稀な疾患であり報告も少ない。単一施設からの報告は14 例の解析7)が最大である。病変が子宮に限局し予後が明らかな10 例において子宮全摘出術を行った8 例はすべて治癒し,子宮内容除去術と化学療法を併用した1 例のみが再発を認めた。同様に1989 年以降の報告を集積した52 例についての検討8)においては,Ⅰ期の29 例における生存率(追跡期間1〜192 カ月)は手術療法のみでは93%,手術と化学療法の併用では92%と差を認めなかった。すなわち,Ⅰ期症例に対する子宮全摘出術の有用性を示唆している。Ⅱ〜Ⅳ期の23 例では,2 例を除いて手術と化学療法を併用しており,死亡はⅢ期の1 例とⅣ期の4 例の計5 例であった。化学療法はEMA/CO 療法あるいはEP/EMA 療法が用いられた報告が多いが,PSTT と同様,レジメンを詳細に比較検討した報告は認められない8, 9)

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CQ46
hCG 低単位持続例の取り扱いは?

推奨グレードB
  1. 病巣検索およびreal hCG であることの確認を奨める。
推奨グレードC1
  1. 検索の結果,病巣を認めず,低単位real hCG が長期間にわたり持続する場合,厳重な経過観察を提案する。

目的

胞状奇胎を含むすべての妊娠後や絨毛性疾患治療後に,血中または尿中のhCG が検出されるが,新しい妊娠ではなく,画像上,腫瘍性病変が検出されない場合の対処法について検討する。

解説

胞状奇胎娩出術後は定期的(1〜2 週間隔)に血中hCG を測定し,本邦においては5 週1,000 mIU/mL,8 週100 mIU/mL,24 週正常値の3 点を結ぶ判別線1)を用いて管理する(原則としてmIU/mL 表示のhCG 測定法を使用する)。hCG 値が経過非順調型で,画像検査により病巣が確認できない場合は奇胎後hCG 存続症と診断され,侵入奇胎と同様の化学療法(CQ41)が奨められる。しかし,6 カ月経過後にhCG が正常値に至らない症例でも自然寛解が期待できる可能性が示されている。胞状奇胎の後方視的研究において,奇胎娩出後6 カ月の時点においてもhCG が正常値に至らない症例は1%以下であり,その中でhCG の低下を認める症例を経過観察したところ,約80%が自然寛解に至った2-4)。奇胎娩出後6 カ月以降に自然寛解した症例では,8 カ月までに50〜67%,12 カ月までに80〜91%の症例が,自然にhCG が正常値まで低下した2, 3)。また,経過観察のみで寛解した群は化学療法が必要となった群に比較して,hCG の中央値が有意に低かった(13 mIU/mL vs. 157mIU/mL)2)。以上より,胞状奇胎娩出後のhCG 値が24 週までに正常値に至らない経過非順調型の症例でも,病巣が検出されず,hCG 値が低値で自然下降を認めている場合には,経過観察も考慮できる。

胞状奇胎を含むすべての妊娠後あるいは妊娠性絨毛性腫瘍(GTN)治療後に,低単位のhCG が増加することなく持続するが,画像診断により病巣が確認されない症例では,まずは下垂体性 hCG および false-positive(phantom) hCG との鑑別が必要である。下垂体性hCG は,閉経や化学療法による卵巣機能抑制に伴い上昇するが,エストロゲンとプロゲステロンの合剤投与により抑制される1)。false-positive hCG は,hCG 測定に用いる抗体と誤って結合する血清中の抗体が原因で検出されるが,同一検体を別のキットで測定した場合に両者間に5 倍以上の測定値の差があり,また尿中hCG を測定するとhCG が検出されない1)。これらの鑑別を行った後,両者とも否定された場合にreal hCG と診断する。低単位のreal hCG の検出が3 カ月以上にわたって持続する状態を,絨毛癌や胎盤部トロホブラスト腫瘍(PSTT)の前癌状態(非活動的な状態)の可能性が考えられる症候群として “quiescent GTD”と称することが提唱された5-7)。quiescent GTD の6〜22%の症例において,3 カ月〜4 年後にhCG の上昇や病巣が確認でき,PSTT やGTN として治療を行った後,hCG の正常化を認めたとの報告がある5-8)

低単位real hCG 持続分泌症例に対する検査法や経過観察方法としては,超音波カラードプラおよび骨盤MRI による子宮・付属器病変の有無,および胸腹部CT・頭部MRI による病変の有無を確認し,病変が検出できなかった場合にはquiescent GTD と診断する。その後は定期的なhCG 測定(1 回/1〜2 カ月)による厳重な経過観察を行うことが推奨され,むやみな化学療法や手術は控え,少なくとも2 種類の検査法によりhCG 上昇を連続して認めた場合あるいは画像による病巣検出ができた場合にのみ治療を行うことが提案されている9)。しかし,quiescent GTD の病態や管理・治療法についてはエビデンスが確立しておらず,本邦での取り扱いについては今後の検討課題である。

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