附録

1.各Question の投票結果内訳

(1)CQ

Question 情報 投票参加者 行うことを
強く推奨する
行うことを
弱く推奨する
行わないことを
弱く推奨する
行わないことを
強く推奨する
Question
No, (分類)
Question 推奨 推奨の強さ*1 エビデンスの強さ*1 合意率 推奨決定会議参加者 事前投票者 投票
総数
当日 事前 合計
(割合)
当日 事前 合計
(割合)
当日 事前 合計
(割合)
当日 事前 合計
(割合)
対象者 棄権
(COI)
対象者 棄権
(COI)
Q1(CQ) 乳がんのがん薬物療法において,G‒CSF の一次予防投与は有用か? 乳がんのがん薬物療法において,G‒CSF の一次予防投与を行うことを強く推奨する 1 A 90.9% 22 0 0 0 22 20 0 20(90.9%) 2 0 2(9.1%) 0 0 0(0%) 0 0 0(0%)
Q2(CQ) 進行非小細胞肺がんのがん薬物療法において,G‒CSF の一次予防投与は有用か? 進行非小細胞肺がんのがん薬物療法において,G‒CSF の一次予防投与を行うことを弱く推奨する
該当するレジメンは,ドセタキセル+ラムシルマブ療法

2

D 90.9% 22 0 0 0 22 0 0 0(0%) 20 0 20(90.9%) 2 0 2(9.1%) 0 0 0(0%)
Q3(CQ) 進展型小細胞肺がんのがん薬物療法において,G‒CSF の一次予防投与は有用か? 進展型小細胞肺がんのがん薬物療法において,G‒CSF の一次予防投与を行わないことを弱く推奨する 2 D 95.5% 22 0 0 0 22 0 0 0(0%) 1 0 1(4.5%) 21 0 21(95.5%) 0 0 0(0%)
Q8(CQ) 大腸がんのがん薬物療法において,G‒CSF の一次予防投与は有用か? 大腸がんのがん薬物療法において,G‒CSF の一次予防投与を行わないことを弱く推奨する

2

B 95.5% 22 0 0 0 22 0 0 0(0%) 0 0 0(0%) 21 0 21(95.5%) 1 0 1(4.5%)
Q10(CQ) 頭頸部がんのがん薬物療法において,G‒CSF の一次予防投与は有用か? 頭頸部がんのがん薬物療法において,G‒CSF の一次予防投与を行わないことを弱く推奨する 2 D 100% 22 0 0 0 22 0 0 0(0%) 0 0 0(0%) 22 0 22(100%) 0 0 0(0%)
Q11(CQ) 卵巣がんのがん薬物療法において,G‒CSF の一次予防投与は有用か? 卵巣がんのがん薬物療法において,G‒CSF の一次予防投与を行わないことを弱く推奨する 2 D 95.5% 22 0 0 0 22 0 0 0(0%) 0 0 0(0%) 21 0 21(95.5%) 0 0 1(4.5%)
Q14(CQ) 前立腺がんのがん薬物療法において,G‒CSF の一次予防投与は有用か? 前立腺がんのがん薬物療法において,G‒CSF の一次予防投与を行うことを弱く推奨する
該当するレジメンは,カバジタキセル
2 C 91.3% 23 0 0 0 23 0 0 0(0%) 21 0 21(91.3%) 2 0 2(8.7%) 0 0 0(0%)
Q19(CQ) 古典的ホジキンリンパ腫のがん薬物療法において,G‒CSF の一次予防投与は有用か? 古典的ホジキンリンパ腫のがん薬物療法において,G‒CSF の一次予防投与を行うことを弱く推奨する
該当するレジメンは,BV‒AVD 療法
2 D 95.7% 23 0 0 0 23 0 0 0(0%) 22 0 22(95.7%) 1 0 1(4.3%) 0 0 0(0%)
Q20(CQ) B 細胞リンパ腫のがん薬物療法において,G‒CSF の一次予防投与は有用か? B 細胞リンパ腫のがん薬物療法において,G‒CSF の一次予防投与を行うことを弱く推奨する 2 D 91.3% 23 0 0 0 23 0 0 0(0%) 21 0 21(91.3%) 2 0 2(8.7%) 0 0 0(0%)
Q21(CQ) T/NK 細胞リンパ腫および再発・難治リンパ腫のがん薬物療法において,G‒CSF の一次予防投与は有用か? T/NK 細胞リンパ腫および再発・難治リンパ腫のがん薬物療法において,G‒CSF の一次予防投与を行うことを弱く推奨する 2 D 87% 23 0 0 0 23 0 0 0(0%) 20 0 20(87%) 3 0 3(13%) 0 0 0(0%)
Q22(CQ) 成人急性骨髄性白血病(急性前骨髄球性白血病を除く)の寛解導入療法において,G‒CSF の一次予防投与は有用か? 成人急性骨髄性白血病(急性前骨髄球性白血病を除く)の寛解導入療法において,G‒CSF の一次予防投与を行わないことを弱く推奨する 2 B 100% 23 0 0 0 23 0 0 0(0%) 0 0 0(0%) 23 0 23(100%) 0 0 0(0%)
Q23(CQ) 成人急性リンパ性白血病の治療において,G‒CSF の一次予防投与は有用か? 成人急性リンパ性白血病の治療において,G‒CSF の一次予防投与を行うことを弱く推奨する 2 B 95.7% 23 0 0 0 23 0 0 0(0%) 22 0 22(95.7%) 1 0 1(4.3%) 0 0 0(0%)
Q24(CQ) 好中球減少症が持続する骨髄異形成症候群において,G‒CSF の一次予防投与は有用か? 好中球減少症が持続する骨髄異形成症候群において,G‒CSF の一次予防投与を行うことを弱く推奨する 2 C 100% 23 0 0 0 23 0 0 0(0%) 23 0 23(100%) 0 0 0(0%) 0 0 0(0%)
Q25(CQ) 乳がんにおいて,G‒CSF 一次予防投与を前提に増強したがん薬物療法を行うことは有用か? 乳がんにおいて,G‒CSF 一次予防投与を前提に治療強度を増強したがん薬物療法を行うことを弱く推奨する 2 A 100% 23 0 0 0 23 0 0 0(0%) 23 0 23(100%) 0 0 0(0%) 0 0 0(0%)
Q30(CQ) 卵巣がんにおいて,G‒CSF 一次予防投与を前提に増強したがん薬物療法を行うことは有用か? 卵巣がんの薬物療法において,G‒CSF 一次予防投与を前提に増強したがん薬物療法を行わないことを弱く推奨する 2 D 87% 23 0 0 0 23 0 0 0(0%) 1 0 1(4.3%) 20 0 20(87%) 0 0 2(8.7%)
Q31(CQ) 尿路上皮がんにおいて,G‒CSF 一次予防投与を前提に増強したがん薬物療法を行うことは有用か? 尿路上皮がんにおいて,G‒CSF 一次予防投与を前提に治療強度を増強したがん薬物療法を行うことを弱く推奨する
該当するレジメンは,dose‒dense MVAC 療法
2 B 100% 23 0 0 0 23 0 0 0(0%) 23 0 23(100%) 0 0 0(0%) 0 0 0(0%)
Q34(CQ) Ewing 肉腫において,G‒CSF 投与を前提に増強したがん薬物療法を行うことは有用か? Ewing 肉腫において,G‒CSF 一次予防投与を前提に増強したがん薬物療法を行うことを弱く推奨する 2 C 96% 25 0 0 0 25 1 0 1(4%) 24 0 24(96%) 0 0 0(0%) 0 0 0(0%)
Q35(CQ) バーキットリンパ腫・マントル細胞リンパ腫において,G‒CSF 一次予防投与を前提に増強したがん薬物療法を行うことは有用か? バーキットリンパ腫・マントル細胞リンパ腫において,G‒CSF 一次予防投与を前提に増強したがん薬物療法を行うことを弱く推奨する 2 D 90.9% 22 0 0 0 22 2 0 2(9.1%) 20 0 20(90.9%) 0 0 0(0%) 0 0 0(0%)
Q37(CQ) 前コースで発熱性好中球減少症を認めた悪性リンパ腫に対してがん薬物療法を継続して行う場合,G‒CSF の二次予防投与は有用か? 前コースで発熱性好中球減少症を認めた悪性リンパ腫に対してがん薬物療法を継続して行う場合,G‒CSF の二次予防投与を行うことを弱く推奨する 2 D 95.7% 23 0 0 0 23 0 0 0(0%) 22 0 22(95.7%) 1 0 1(4.3%) 0 0 0(0%)
Q38(CQ) 成人急性骨髄性白血病(急性前骨髄球性白血病を除く)の治療において,G‒CSF とがん薬物療法の併用投与は有用か? 成人急性骨髄性白血病(急性前骨髄球性白血病を除く)の治療において,G‒CSF とがん薬物療法の併用投与を行わないことを弱く推奨する 2 C 86.4% 22 0 0 0 22 0 0 0(0%) 0 0 0(0%) 19 0 19(86.4%) 3 0 3(13.6%)
Q40(CQ) がん薬物療法を受けて発熱性好中球減少症を発症した固形がん患者において,G‒CSF の二次予防投与は有用か? がん薬物療法を受けて発熱性好中球減少症を発症した固形がん患者において,G‒CSF の二次予防投与を行うことを弱く推奨する
特に治癒を含む十分な効果を期待でき,治療強度を下げない方がよいと考えられる疾患
2 B 100% 23 0 0 0 23 0 0 0(0%) 23 0 23(100%) 0 0 0(0%) 0 0 0(0%)
Q41(CQ) がん薬物療法中の発熱性好中球減少症患者に,G‒CSF の治療投与は有用か? がん薬物療法中の発熱性好中球減少症患者に,G‒CSF の治療投与を行わないことを弱く推奨する 2 C 87% 23 0 0 0 23 0 0 0(0%) 3 0 3(13%) 20 0 20(87%) 0 0 0(0%)
Q42(CQ) がん薬物療法中の無熱性好中球減少症患者に,G‒CSF の治療投与は有用か? がん薬物療法中の無熱性好中球減少症患者に,G‒CSF の治療投与を行わないことを弱く推奨する 2 B 90.9% 22 0 0 0 22 0 0 0(0%) 0 0 0(0%) 20 0 20(90.9%) 2 0 2(9.1%)
Q43(CQ)*2 フィルグラスチムを予防投与で用いるとき,バイオシミラーと先行バイオ医薬品のいずれが推奨されるか? フィルグラスチムを予防投与で用いるとき,バイオシミラーと先行バイオ医薬品のいずれも弱く推奨する 2 D 100% 22 0 0 0 22 0 0 0(0%) 22 0 22(100%) 0 0 0(0%) 0 0 0(0%)
Q44(CQ) がん薬物療法において,ペグ化G‒CSF 単回投与は非ペグ化G‒CSF 連日投与より推奨されるか? がん薬物療法において,ペグ化G‒CSF 単回投与を行うことを強く推奨する 1 A 95.5% 22 0 0 0 22 21 0 21(95.5%) 1 0 1(4.5%) 0 0 0(0%) 0 0 0(0%)
Q45(CQ)*3 がん薬物療法でペグ化G‒CSF を投与するとき,Day 2 とDay 3~Day 5 のいずれが推奨されるか? がん薬物療法でペグ化G‒CSF を投与するとき,Day 2 とDay 3~Day 5 のいずれも弱く推奨する 2 C 100% 20 0 0 0 20 「承認する」が20 名(100%),「承認しない」が0 名(0%)
Q46(CQ) がん薬物療法と同時に放射線療法を行う場合に,G‒CSF の予防投与や治療投与は有用か? がん薬物療法と同時に放射線療法を行う場合に,G‒CSF の予防投与や治療投与を行わないことを弱く推奨する 2 D 95% 20 0 0 0 20 0 0 0(0%) 0 0 0(0%) 19 0 19(95%) 1 0 1(5%)

*1推奨の強さ・エビデンスの強さは,表3 を参照。特定の診療行為の推奨を意味しない場合は,「-」としている。

*2Q43(CQ)は当初,「フィルグラスチムのバイオシミラーは,先行バイオ医薬品と比べて有用か?」というCQ に対して,「フィルグラスチムのバイオシミラーは,先行バイオ医薬品と比べて有効性および安全性において明らかな差はなく,使用することを弱く推奨する」が推奨草案として提示されていた。初回投票時は「行うことを強く推奨する」が1 名(4.5%),「行うことを弱く推奨する」が16 名(72.7%),「行わないことを弱く推奨する」が0 名(0%),「行わないことを強く推奨する」が0 名(0%),当初推奨草案で投票を行うことに反対の意見が5 名(22.7%)であったが,その後の議論で推奨草案の表現を変更し,2 回目の投票が行われた。表には2 回目投票結果が示されている。

*3Q45(CQ)は「がん薬物療法でペグ化G‒CSF を投与するとき,Day 2 とDay 3~Day 5 のいずれも弱く推奨する」が推奨草案として提示されており,介入間で優劣をつける内容ではなかったため,推奨草案の採否に関する投票を行った。

(2)FQ・BQ

Question 情報 投票参加者 承認する 承認しない
Question
No, (分類)
Question ステートメント 推奨の強さ*1 エビデンスの強さ*1 合意率 推奨決定会議参加者 事前投票者 投票
総数
当日 事前 合計
(割合)
当日 事前 合計
(割合)
対象者 棄権
(COI)
対象者 棄権
(COI)
Q4(FQ) 食道がんのがん薬物療法において,G‒CSF の一次予防投与は有用か? 食道がんにおいて,G‒CSF 一次予防投与の有用性は明らかではない 95.8% 22 0 2 0 24 21 2 23(95.8%) 1 0 1(4.2%)
Q5(FQ) 胃がんのがん薬物療法において,G‒CSF の一次予防投与は有用か? 胃がんにおいて,G‒CSF 一次予防投与の有用性は明らかではない 95.8% 22 0 2 0 24 21 2 23(95.8%) 1 0 1(4.2%)
Q6(FQ) 膵がんのがん薬物療法において,G‒CSF の一次予防投与は有用か? 膵がんにおいて,G‒CSF 一次予防投与の有用性は明らかではない 100% 22 0 2 0 24 22 2 24(100%) 0 0 0(0%)
Q7(FQ) 胆道がんのがん薬物療法において,G‒CSF の一次予防投与は有用か? 胆道がんにおいて,G‒CSF 一次予防投与の有用性は明らかではない 95.7% 21 0 2 0 23 20 2 22(95.7%) 1 0 1(4.3%)
Q9(FQ) 消化器神経内分泌がんのがん薬物療法において,G‒CSF の一次予防投与は有用か? 消化器神経内分泌がんにおいて,G‒CSF 一次予防投与の有用性は明らかではない 100% 21 0 2 0 23 21 2 23(100%) 0 0 0(0%)
Q12(FQ) 子宮頸がんのがん薬物療法において,G‒CSF の一次予防投与は有用か? 子宮頸がんにおいて,G‒CSF 一次予防投与の有用性は明らかではない 100% 22 0 2 0 24 22 2 24(100%) 0 0 0(0%)
Q13(FQ) 子宮体がんのがん薬物療法において,G‒CSF の一次予防投与は有用か? 子宮体がんにおいて,G‒CSF 一次予防投与の有用性は明らかではない 100% 22 0 2 0 24 22 2 24(100%) 0 0 0(0%)
Q15(FQ) 非円形細胞軟部肉腫のがん薬物療法において,G‒CSF の一次予防投与は有用か? 非円形細胞軟部肉腫において,G‒CSF 一次予防投与の有用性は明らかではない 100% 22 0 2 0 24 22 2 24(100%) 0 0 0(0%)
Q16(FQ) 骨肉腫のがん薬物療法において,G‒CSF の一次予防投与は有用か? 小児を除く骨肉腫において,G‒CSF 一次予防投与の有用性は明らかではない 100% 21 0 2 0 23 21 2 23(100%) 0 0 0(0%)
Q17(FQ) 横紋筋肉腫のがん薬物療法において,G‒CSF の一次予防投与は有用か? 小児を除く横紋筋肉腫において,G‒CSF 一次予防投与の有用性は明らかではない 100% 21 0 2 0 23 21 2 23(100%) 0 0 0(0%)
Q18(FQ) Ewing 肉腫のがん薬物療法において,G‒CSF の一次予防投与は有用か? 小児を除くEwing 肉腫において,G‒CSF 一次予防投与の有用性は明らかではないが,根治目的の治療時は行われることが多い 100% 25 0 0 0 25 25 2 25(100%) 0 0 0(0%)
Q26(FQ) 食道がんにおいて,G‒CSF 一次予防投与を前提に増強したがん薬物療法を行うことは有用か? 食道がんにおいて,G‒CSF 一次予防投与を前提に増強したがん薬物療法の有用性は明らかではない 95.8% 22 0 2 0 24 21 2 23(95.8%) 1 0 1(4.2%)
Q27(FQ) 膵がんにおいて,G‒CSF 一次予防投与を前提に増強したがん薬物療法を行うことは有用か? 膵がんにおいて,G‒CSF 一次予防投与を前提に増強したがん薬物療法の有用性は明らかではない 100% 22 0 2 0 24 22 2 24(100%) 0 0 0(0%)
Q28(FQ) 大腸がんにおいて,G‒CSF 一次予防投与を前提に増強したがん薬物療法を行うことは有用か? 大腸がんにおいて,G‒CSF 一次予防投与を前提に増強したがん薬物療法の有用性は明らかではない 100% 22 0 2 0 24 22 2 24(100%) 0 0 0(0%)
Q29(FQ) 頭頸部がんにおいて,G‒CSF 一次予防投与を前提に増強したがん薬物療法を行うことは有用か? 頭頸部がんにおいて,G‒CSF 一次予防投与を前提に増強したがん薬物療法の有用性は明らかではない 100% 22 0 2 0 24 22 2 24(100%) 0 0 0(0%)
Q32(FQ) 非円形細胞軟部肉腫において,G‒CSF 一次予防投与を前提に増強したがん薬物療法を行うことは有用か? 非円形細胞軟部肉腫において,G‒CSF 一次予防投与を前提に増強したがん薬物療法の有用性は明らかではない 100% 20 0 2 0 22 20 2 22(100%) 0 0 0(0%)
Q33(FQ) 横紋筋肉腫において,G‒CSF 一次予防投与を前提に増強したがん薬物療法を行うことは有用か? 小児を除く横紋筋肉腫において,G‒CSF 一次予防投与を前提に増強したがん薬物療法の有用性は明らかではない 100% 20 0 2 0 22 20 2 22(100%) 0 0 0(0%)
Q36(BQ)*2 悪性リンパ腫・多発性骨髄腫の自家末梢血幹細胞採取において,G‒CSF の投与は有用か? 悪性リンパ腫・多発性骨髄腫の自家末梢血幹細胞採取において,G‒CSF の投与が一般的に行われている 100% 21 0 2 0 23 21 2 23(100%) 0 0 0(0%)
Q39(BQ) 発熱性好中球減少症の発症リスクと相関する患者背景因子は何か? 発熱性好中球減少症の発症の背景因子として,高齢,がん薬物療法や放射線療法の既往,performance status 不良や発熱性好中球減少症の既往などが挙げられる 95.7% 23 0 0 0 23 22 0 22(95.7%) 1 0 1(4.3%)

*1推奨の強さ・エビデンスの強さは,表3 を参照。特定の診療行為の推奨を意味しない場合は,「-」としている。

*2Q36(BQ)は当初CQ として設定されており,初回投票時は「行うことを強く推奨する」が12 名(54.5%),「行うことを弱く推奨する」が10 名(45.5%),「行わないことを弱く推奨する」が0 名(0%),「行わないことを強く推奨する」が0 名(0%)であったが,その後の議論でBQ として扱うこととなり,2 回目の投票が行われた。表には2 回目投票結果が示されている。

2.外部評価

本ガイドラインは草案段階で,日本癌治療学会・日本臨床腫瘍学会・日本血液学会の各学会でのパブリックコメント募集,およびがん診療ガイドライン評価委員会によるAGREEⅡ評価を受けた。パブリックコメントをお寄せくださった皆様,および,がん診療ガイドライン評価委員会の皆様には心より感謝したい。

以下,これらの外部評価に対する見解と対応を示す。なお,文言修正の指摘があったものについては,本ガイドライン改訂ワーキンググループで検討した上で適宜修正を行った。

1 パブリックコメントで寄せられた意見とその対応

(1)本ガイドライン作成基本方針について
世界的なガイドラインであるASCO ガイドラインやNCCN ガイドラインにならうべき

ASCO やNCCN のガイドラインが「世界的なガイドライン」であるのは間違いないが,世界的なガイドラインにそう書いてあるからそれにならえばよい,という立場を本ガイドライン改訂ワーキンググループはとらなかった。多くのガイドラインが,FN 発症率20%をカットオフとしてG‒CSF の推奨を行っている中,本ガイドラインでは,あくまでも,科学的な根拠に基づいて,益と害のバランスを判断し,推奨を行う方針とした。この経緯については,「Ⅱ.総論」の「6.発熱性好中球減少症発症率(FN 発症率)のカットオフ」に記載した。

がん種別にQuestion が設定されているが,レジメン別に記述すべきではないか

本ガイドラインでは,がん種別にQuestion を設定し,各レジメンの検討はそのQuestion 内で行う方針とした。レジメン別に細かくQuestion を設定することや,すべてのがん種をまとめてQuestion を設定することも検討したが,本ガイドライン改訂ワーキンググループでの議論の結果,「一次予防投与」と「治療強度増強」については,がん種ごとにQuestion を立てるのが最も適切と判断した。この経緯については,「Ⅰ.本ガイドラインの概要」の「6.診療ガイドライン作成方法(2)作成基本方針」に記載した。CQ の中には,推奨文に注釈をつけ,特定のレジメンに限っての推奨と記載したものや,解説文の中でレジメンごとのエビデンスに言及したものがあり,記載方法が一貫していないことについても指摘があったが,この点については,今後の改訂の際に改善したい。

がん種別のQuestion 設定とした結果,メタアナリシスが可能であったQuestion は限られ,46 個のQuestion のうち,CQ として採用できたのは27 個のみで,そのうち,推奨の強さが1(強い)となっているのはわずか2 個であり,全体を通して,明確な推奨の少ない曖昧なガイドラインとなっている。本ガイドライン2013 年版では,FN 発症率20%をカットオフとする方針で,より明確な推奨がなされており,このカットオフには一定の有用性がある

強い推奨が少なく,曖昧なガイドラインになっているという指摘はその通りだが,科学的根拠に基づいてシステマティックレビューを行った結果がこうなったということであり,この方針自体が間違っていたとは考えていない。本ガイドライン作成の過程で,多くのQuestion について,エビデンスが十分にないという現実が浮き彫りとなり,今後のエビデンス創出の必要性が認識されたが,これが,本ガイドラインの一つの成果なのかもしれない。FN 発症率20%のカットオフを設定することの有用性は本ガイドライン改訂ワーキンググループも理解しているところだが,有用だから科学的根拠に基づいていなくてもそれを利用すればよいとは考えず,あくまでも,科学的根拠を重視する方針を貫いた。今後の改訂の際には,科学的根拠に基づきながら,有用性の高いガイドラインとなるように,よりよい形を検討していきたい。

ペグフィルグラスチムの添付文書には,「がん化学療法剤の投与開始14 日前から投与終了後24 時間以内に本剤を投与した場合の安全性は確立していない」と記載されている中,本ガイドラインでは,2 週毎投与のレジメンも含め,ペグ化G‒CSF による一次予防投与を推奨する記載となっているが,この問題に言及する必要はないか

指摘のあった通り,2 週毎投与のがん薬物療法における予防投与でペグ化G‒CSF を投与する場合,添付文書の記載を逸脱してしまう問題がある。本ガイドラインにおいては,原則として,添付文書の記載は考慮せずに,科学的に評価を行う方針としており,添付文書の記載から逸脱しているとしても,特にそれに言及はしていないことも多い。ワーキンググループとしては,本ガイドラインの発刊をきっかけに,添付文書改訂の機運が高まること,また,本ガイドラインが添付文書改訂の議論に本ガイドラインが利用されることを期待している。

アルゴリズムがあった方が視覚的な理解が深まると思う

本ガイドラインは,多様な疾患の多様な状況を対象にしており,アルゴリズムを用いた解説は困難と判断し,作成しなかった。今後の改訂の際には,その必要性について改めて検討したい。

日本臨床腫瘍学会『発熱性好中球減少症(FN)診療ガイドライン』と整合性をとるべき

FN の治療については本ガイドラインの対象とはしておらず,特に言及はしていないが,FN を発症した際の診療については,最新のFN 診療ガイドラインを参照することが望ましい。FN 診療ガイドライン改訂第2 版(2017 年10 月)においては,「FN の予防」の記載があり,FN の発症頻度のカットオフ10%および20%に基づくG‒CSF 予防投与の推奨が記載されている。同ガイドラインは現在改訂作業中ということであり,本ガイドラインとの整合性をとるためにも,十分な情報共有と意見交換が必要と思われる。

(2)個別のQuestion について
Q3(CQ)「進展型小細胞肺がんのがん薬物療法において,G‒CSF の一次予防投与は有用か?」
G‒CSF の一次予防投与を行わないことを弱く推奨するとなっているが,アムルビシンについては,FN 発症率が30.1%という報告もあり,一次予防投与が推奨されるのではないか

本ガイドラインではFN 発症率に基づく推奨はしておらず,G‒CSF の一次予防投与が有用か否かを科学的に評価して推奨文を決定した。アムルビシンも含めて,一次予防投与を推奨する根拠は認められず,「行わないことを弱く推奨する」となった。ただし,解説文では,「リスクの高いレジメンを用いる場合や高リスク症例においては,G‒CSF の一次予防投与を行うことも考慮する」と記載しており,個別の状況に応じた判断を妨げるものではない。

Q14(CQ)「前立腺がんのがん薬物療法において,G‒CSF の一次予防投与は有用か?」
カバジタキセル投与時には当然G‒CSF の一次予防投与を行うべきだが,「弱く推奨する」となっているのは,誤解を招くのではないか

「Minds 診療ガイドライン作成の手引き2014」「Minds 診療ガイドライン作成マニュアル2017」に基づき,本ガイドラインでは,推奨を,「推奨の向き」と「推奨の強さ」で表している。CQ14 のシステマティックレビューでは,推奨の向きはG‒CSF 一次予防投与を支持するものの,エビデンスの強さがC(弱)であったため,推奨文は「行うことを弱く推奨する」となった。G‒CSF 一次予防投与の有無を比較した研究が乏しい中,本ガイドラインでは,「弱く推奨する」が頻出する形になってしまったが,「行うことを弱く推奨する」は,「推奨しない」とは異なり,推奨の向きは,「行うこと」に向いている。現在多くのガイドラインで採用されている言葉遣いであるが,医療現場に,誤解なく浸透するような取り組みが必要かもしれない。なお,推奨文のみでは伝わりにくい部分を補足するため,各Question の背景や推奨文決定に至る総合的な判断については,解説文に記載した。エビデンスの強さが十分でないQuestion については,今後のエビデンス創出が求められる。

Q24(CQ)「好中球減少症が持続する骨髄異形成症候群において,G‒CSF の一次予防投与は有用か?」
好中球減少症が持続する骨髄異形成症候群に対するG‒CSF の投与を「一次予防投与」と呼ぶのは適切か

骨髄異形成症候群は,慢性的な好中球減少を呈する疾患で,Q24 は,がん薬物療法を行っていない患者も対象に含まれている。がん薬物療法の際の投与でない場合,総論に記載されている「一次予防投与」の定義(がん薬物療法開始後,好中球数によらず,FN 発症を防ぐ目的で投与を開始する)には厳密には合致しないが,「FN 発症を防ぐ目的で投与を開始する」という点は合致しており,「一次予防投与」に含めることとした。Q24 の解説文に,がん薬物療法施行の有無を問わず,骨髄異形成症候群に対するFN 発症予防でのG‒CSF の使用を「一次予防投与」と定義する旨記載した。

Q42(CQ)「がん薬物療法中の無熱性好中球減少症患者に,G‒CSF の治療投与は有用か?」
実地診療では,無熱性好中球減少症に対してG‒CSF が投与されているケースもあり,『G‒CSF の治療投与を行わないことを弱く推奨する』という推奨文だけでなく,具体的な対応策を示してほしい

Q42 の「5.システマティックレビューの考察・まとめ」に,「FN 発症リスクの高い患者集団の無熱性好中球減少症では,患者がFN を発症した際にすぐ診察を受けられる対策を講じるなどの備えが必要である」という記載を加えた。

Q44(CQ)「がん薬物療法において,ペグ化G‒CSF 単回投与は非ペグ化G‒CSF 連日投与より推奨されるか?」
FN 発症率のメタアナリシス結果に基づき,ペグ化G‒CSF 単回投与を行うことを強く推奨するとしているが,このメタアナリシスのFN 発症率比は,わずか1.18(95%CI:1.03‒1.34)であり,たとえばG‒CSF 連日投与のFN 発症率が30%なら,ペグ化G‒CSF に変えることでFN を避けられるのは約5%にすぎず,臨床的な有用性が大きいとは言えない。コストも考慮すると,『強く推奨する』とするのは不適切ではないか

本ガイドライン作成にあたって,有用性の程度を判断する基準は定めておらず,個々のQuestion で,益と害のバランスを総合的に判断し,ワーキンググループでの議論を経て推奨文が決定された。当該メタアナリシスでは,結果のばらつきや出版バイアスも認められず,エビデンスの強さはA(強)とされた。FN 発症率の差はわずかとはいえ,ペグ化G‒CSF で確実にFN 発症が減らせること,害の増加は認められていないことを含め,総合的に議論した結果,「ペグ化G‒CSF 単回投与を行うことを強く推奨する」の推奨文で合意に達した。コストについての議論も行ったが,コストに関する明確な根拠を示す文献を検索できなかったことに加え,連日投与G‒CSF の方で薬剤費が低くなるとしても,連日投与に伴う通院や受診費用が高くなる可能性があること,連日投与G‒CSF のみならず,ペグ化G‒CSF についてもバイオシミラーの登場が予測されることなども考慮し,コストについては,今回の推奨を左右する要素にはならないと判断した。

Q46(CQ)「がん薬物療法と同時に放射線療法を行う場合に,G‒CSF の予防投与や治療投与は有用か?」
がん薬物療法と同時に放射線療法を行う場合に,G‒CSF の予防投与や治療投与を行わないことが推奨されているが,G‒CSF 予防投与が推奨されるがん薬物療法実施中に放射線療法が必要になった場合どうすべきか

このような状況では,がん薬物療法を休薬する,放射線療法を避ける,G‒CSF 予防投与を行わずに治療を行う,放射線療法を行いながらG‒CSF 予防投与も行う,などの判断がありうる。いずれも,ガイドラインの推奨に一部反する可能性があるが,関係するガイドラインの記載も参照しながら,個々の状況に応じて,リスクとベネフィットのバランスを慎重に評価し,担当医の裁量で判断することになる。Question の解説文では,特殊な状況への言及はほとんどしていないが,「Ⅰ.本ガイドラインの概要」の「4.利用上の注意」には,「本ガイドラインは,あくまでも,標準的な治療を行うための指針であり,診療方針や治療法を規制したり,医師の裁量権を制限したりするものではなく,患者の状態や希望,施設の状況等によってはガイドラインの記載とは別の選択が行われることがありうる」と記載している。

2 がん診療ガイドライン評価委員会によるAGREEⅡ評価結果とその対応

(1)AGREEⅡ評価結果

(2)AGREEⅡ評価結果への対応
・項目2

パブリックコメントにもあったように,Question の設定については,今後の改訂の際に改めて検討したい。

・項目4

緩和医療の専門家や患者代表の参画について,今後の改訂の際に検討したい。

・項目5

費用対効果や健康効用値のエビデンス等について,今後の改訂の際に検討したい。

・項目7

二次資料を採択しない方針としたことについて,「Ⅰ.本ガイドラインの概要」の「6.診療ガイドラインの作成方法(5)文献検索と採択基準」に,下記記載を追記した。

⑤の二次資料については,スコーピングサーチの際にG‒CSF の一次予防投与の有無を比較する重要な二次資料が検索されなかったこと,および,既存の診療ガイドラインは,FN 発症率に基づいて推奨を決定しているものがほとんどで,本ガイドラインで採用している作成基本方針とは合致しないことから,重要臨床課題1 に対応するQuestion について,二次資料を検索から除外する方針とした。ただし,検索の過程で見つかった二次資料や,既存の診療ガイドラインについて,本ガイドライン作成の際の参考にすることはあった。

・項目9

システマティックレビュー過程で作成されたエビデンス総体の評価シート等の資料は,Web 上で公開する予定である。

・項目10

ご指摘の通り修正した。

・項目18

施設間格差や他科連携などについては,今後の改訂の際に記載を検討したい。

・項目20

コスト・資源の評価について,今後の改訂の際にはより充実させたい。

・項目21

Quality Indicator(QI)を用いた評価は記載通りに進め,その結果を公表していきたい。