診療ガイドライン

第1 章 診断およびサーベイランス

はじめに

サーベイランスの有効性が示されるためには,早期発見が根治的な治療を受ける機会を増やし,予後の改善に寄与することが示される必要がある。肝細胞癌は高危険群の設定が容易な癌であり,本邦ではウイルス肝炎合併肝硬変患者を中心とする高危険群を対象に広くサーベイランスが行われてきた。一方で,肝発癌の高危険群はすなわち根治治療後の再発高危険群であり,早期発見,早期治療が必ずしも疾患の治癒に結びつかないという問題がある。実際,超音波検査単独や超音波検査と腫瘍マーカーの併用によるサーベイランスが,肝細胞癌患者の予後改善をもたらすとのエビデンスは現時点でも不十分であり,主に倫理的な観点から今後もランダム化比較試験(RCT)が行われる可能性は低いと考えられている。

2017 年版(第4 版)では,第1 番目に「サーベイランスは,推奨されるか?」という最も本質的な問いを置き,推奨される場合にはどのような方法で行うべきかについて検討することとした。

画像診断機器の進歩によって,現在肝細胞癌の診断は画像診断を中心に腫瘍マーカーを補助的に用いて行われている。最終診断は病理組織学的検査に基づくのが原則であるが,焼灼療法や塞栓療法が行われる症例では,一般に画像診断をもって確定診断としている。「造影早期相の濃染と後期相のwashout」を典型的所見とするという点には異論がなく,典型的な所見を呈さない結節の診断をどのように行うか,腫瘍径の閾値をどこに定めるかという観点から検討を行った。また,腎機能低下例,肝機能低下例など通常の画像検査が行えない場合に推奨される代替画像検査,肝外転移の検索に用いるべき画像診断検査についても検討を加えた。

腫瘍マーカーの利用法は,診断,サーベイランス,治療効果指標の3 つに大別できると考えられる。進行癌が大多数を占めていた時代には,アルファフェトプロテイン(AFP)が,肝細胞癌の確定診断に用いられていた。しかし,画像診断の進歩によって,肝癌の確定診断における腫瘍マーカーの役割は小さくなっている。本邦では,AFP に加えてPIVKA‒II,AFP レクチン分画(AFP‒L3 分画)の3 種の腫瘍マーカーが肝細胞癌診療において保険適用とされ,広く利用されている。カットオフ値を変更しない場合,2 種類以上の腫瘍マーカーを測定すると無条件に感度が向上するが,一方で特異度は低下する。

サーベイランスにおいては,腹部超音波検査で腫瘍が検出されていない場合に,dynamic CT のようなより感度の高い検査を行うべきかどうかの判断に腫瘍マーカーが用いられる。そのような判断に適した腫瘍マーカーには,陽性尤度比〔陽性であった場合に検査後確率を上昇させる割合=感度/(1-特異度)〕が大きいことが求められる。

腫瘍マーカーの絶対値は,肝あるいは全身の腫瘍量の総量を代替していると考えることができる。治療前後の腫瘍マーカーを測定することによって,治療による腫瘍量の減少効果を客観的に評価することが可能である。

以上,診断,サーベイランス,治療効果判定の観点から腫瘍マーカーについて検討を行った。

肝細胞癌サーベイランス・診断アルゴリズムの解説

1.サーベイランスの対象

サーベイランスを開始するかどうかの決定は,対象者のリスク評価から始まる。B 型慢性肝炎,C 型慢性肝炎,肝硬変のいずれかが存在すれば肝細胞癌の高危険群といえる。さらに,年齢,性別,糖尿病の有無,BMI,AST,ALT,血小板,飲酒量,HBV-DNA 量(B 型慢性肝炎患者)などの危険因子を勘案して検査間隔を決定する。なかでもB 型肝硬変,C 型肝硬変患者は,超高危険群に属する。なお,核酸アナログ服用中のB 型慢性肝炎患者,抗HCV 療法によって持続的ウイルス陰性化(SVR)を達成したC 型慢性肝炎患者では,発癌率の低下が認められるが,依然として少なからざる肝発癌リスクが存在するため,サーベイランスを継続する必要がある。

2.サーベイランスの方法

3~6 カ月間隔での腹部超音波検査を主体とし,腫瘍マーカー測定も用いたスクリーニングを軸とする。肝硬変患者などの超高危険群ではdynamic CT または dynamic MRI の併用も考慮する。

サーベイランスの間隔について,間隔をより短くするほど理論的には腫瘍は小さく発見されるはずであるが,費用は上昇する。より精緻なサーベイランスによってもたらされる腫瘍径の差が臨床上意味のある差であるか,その差が増加する費用に見合うかどうかを勘案する必要がある。また,肝硬変の進展度,肥満度,背景肝疾患の違い,検査機器の性能などによって検出できる最小腫瘍径は異なる。ここでは1 つの案として,超高危険群に対しては,3~4 カ月に1 回の超音波検査,高危険群に対しては,6 カ月に1 回の超音波検査を行うことを提案する。肝臓の萎縮,高度肥満,粗糙な肝実質など超音波検査によって肝細胞癌を小さく見つけることが困難であると考えられる例については,dynamic CT あるいはdynamic MRI(Gd-EOB-DTPA 造影MRI を含む)を併用することも許容される。

腫瘍マーカー検査については,AFP,AFP-L3 分画およびPIVKA-II を超高危険群では3~4 カ月に1 回,高危険群では6 カ月に1 回測定することを推奨する。ただし,2017 年現在,上記超高危険群・高危険群に対する月1 回のAFP およびPIVKA-II 測定は保険適用となっているが,AFP-L3 分画の測定は,肝細胞癌が強く疑われる場合にのみ算定できるとされている。

3.超音波検査で結節性病変を指摘

超音波検査で結節性病変が新たに指摘された場合,dynamic CT あるいは,dynamic MRI を撮影し,鑑別診断を行う。dynamic CT およびdynamic MRI の禁忌例では造影超音波が推奨される。超音波の描出不良などを理由にサーベイランスとしてdynamic CT/MRI を撮影し,結節が検出される場合もある。

AFP の持続的上昇あるいは,200 ng/mL 以上の上昇,PIVKA-II の40 mAU/mL 以上の上昇,AFP-L3 分画の15%以上の上昇を認めた場合,超音波検査で腫瘍が検出できなくても,dynamic CT/MRI を撮影することを考慮する。

4.血流診断

多血化すなわち動脈血流が周囲肝実質に比較して増加することが,典型的肝細胞癌の特徴である。多血化は,dynamic CT,Gd-EOB-DTPA 造影MRI を含むdynamic MRI の動脈相(早期相)で検出することができる。

4-1.早期造影効果あり

Dynamic CT,dynamic MRI の動脈相で高吸収(高信号)域として描出され,門脈・平衡相で周囲肝実質と比較して相対的に低吸収(低信号)域(washout)として描出された場合,典型的肝細胞癌として治療方針決定に進む。Gd-EOB-DTPA 造影MRI の場合は,肝細胞相の低信号化をwashout と同様に扱う。ただし,海綿状血管腫は肝細胞相で低信号を示すので同時に施行されるMRI の他の撮像法と併せて除外する。

Dynamic CT およびdynamic MRI の禁忌などでソナゾイド® 造影超音波を行った場合,後血管相(Kupffer 相)の造影欠損をwashout と同様に扱うことも可能である。ただし,high-flow な海綿状血管腫は早期血管相で造影され,Kupffer 相で造影欠損を示す場合があり,肝細胞癌との鑑別が困難であるため,他の画像検査で除外する必要がある。

Dynamic CT の門脈・平衡相でwashout が認められない場合,1 cm 未満の病変かつ超音波で描出可能であれば,3 カ月毎に超音波検査で経過観察を行い,腫瘍径の増大あるいは腫瘍マーカーの上昇を認めた場合,再度dynamic CT あるいはdynamic MRI を撮影する。超音波で描出できない病変の場合,3 カ月毎にdynamic CT あるいはdynamic MRI で経過観察を行う。なお,画像診断で良性であることが確定した病変については経過観察は不要である。

腫瘍径1 cm 以上の場合,Gd-EOB-DTPA 造影MRI を行う。肝細胞癌の確診が得られれば,治療方針決定に進む。他の撮像法も含めて良悪性の鑑別が困難な場合,肝腫瘍生検,造影超音波,超常磁性酸化鉄(SPIO)造影MRI,経動脈性門脈造影下CT(CTAP)/肝動脈造影下CT(CTHA)を考慮する。

4-2.早期造影効果なし

Dynamic CT,dynamic MRI の動脈相で高吸収(高信号)域として描出されない場合,腫瘍径1.5 cm 未満かつ超音波で描出可能であれば,3 カ月毎に超音波検査で経過観察を行い,腫瘍径の増大あるいは腫瘍マーカーの上昇を認めた場合,再度dynamic CT あるいはdynamic MRI を撮影する。超音波で描出されない病変の場合,dynamic CT あるいはdynamic MRI による経過観察も考慮される。画像診断で良性であることが確定した病変について経過観察は不要である。

Dynamic CT 動脈相で高吸収域に描出されずかつ腫瘍径1.5 cm 以上の場合,Gd-EOB-DTPA 造影MRI を撮影する。肝細胞相の低信号化が認められた場合,肝腫瘍生検,造影超音波,SPIO 造影MRI,CTAP/CTHA を考慮する。肝細胞相の低信号化が認められない場合,超音波で描出可能であれば,3 カ月毎に超音波検査で経過観察を行い,腫瘍径の増大あるいは腫瘍マーカーの上昇を認めた場合,再度dynamic CT あるいはdynamic MRI を撮影する。超音波で描出されない病変の場合,dynamic CT あるいはdynamic MRI による経過観察も考慮される。

4-3.他の悪性腫瘍が疑われる場合

動脈相,門脈・平衡相の造影パターンから肝内胆管癌,転移性肝癌などが積極的に疑われる場合,おのおのの精査を行う。

CQ1
サーベイランスは,推奨されるか?

推奨の強さ強い
定期的な肝細胞癌に対するスクリーニングによって,早期に肝細胞癌が検出され,根治療法につながる。また,予後改善効果をもたらす可能性があるので,サーベイランスを推奨する。

背景

肝細胞癌は高危険群の設定が容易な癌であり,本邦では広くサーベイランスが行われている。一方で,肝発癌の高危険群はすなわち根治治療後の再発高危険群であり,原発性肝癌追跡調査によると早期診断例も含めた肝細胞癌患者の死因の大部分は肝関連死である 1)。高危険群を対象とした肝細胞癌サーベイランスが有益かを検討した。

サイエンティフィックステートメント

2013 年版(第3 版)のCQ5 の内容を引き継ぎ,本CQ は作成された。今回の改訂に際し,第3 版検索対象期間以降2012 年1 月1 日から2016 年6 月30 日に発表された論文について検索し,836 篇が抽出された。そのなかから「コントロールスタディのみ,評価項目に全死亡を含むもの,前向きに確定したサーベイランスプロトコールにのっとったもの」という方針の下に一次選択で20 篇,二次選択でそのなかから3 篇の論文を新たに採用とし,第3 版の4 篇と合わせて合計7 篇を採用した。

肝細胞癌に対する定期的なサーベイランスが,予後改善効果をもたらす可能性を示したRCT が1 篇報告されている 2)。B 型肝炎ウイルス(HBV)感染症例において,6 カ月毎にAFP 測定と超音波検査による定期的サーベイランスを行った群では,未施行群と比較してより小結節の段階で発見され,肝切除可能症例が有意に多く,死亡率が37%改善した。一方,HBV 感染症例において,6 カ月毎のAFP 測定のみによるサーベイランスを検討したRCT では,サーベイランスは早期発見に有用であったが死亡率は改善しないという結果であった 3)

サーベイランスの間隔を比較したRCT が2 篇報告されている。肝硬変症例を対象とした超音波検査によるサーベイランスに関し30 mm 以下での肝細胞癌発見率を主要評価項目とし,3 カ月と6 カ月間隔の比較を行った試験では,主要評価項目に有意差は認めず,全生存率にも差はなかった 4)。4 カ月と12 カ月間隔の比較を行った試験も報告されており,4 カ月間隔で2 cm 以下の早期に検出された症例が多かったが,4 年間の生存率には有意差を認めなかった 5)

またRCT ではないが肝硬変症例に限定した前向き研究では,超音波検査とAFP 測定による定期的サーベイランスは生存期間延長効果をもたらした 6)。HBV 感染者を対象にあるクリニックにおいて,サーベイランスで発見された症例と発癌後に受診した症例の予後を比較したところ,lead-time bias を補正することにより予後改善効果が示唆された 7)。HBV 感染のリスクが高い年齢層の地域住民を対象とした超音波検査によるマススクリーニングプログラムの効果を報告した論文が1 篇あり 8),プログラムに参加しなかった住民との比較で肝細胞癌死亡が31%低減したことを示した。

解説

高危険群に対する肝細胞癌サーベイランスを推奨するか否かを決定する最も確かなエビデンスは,対象者をランダムにサーベイランスを行う群と行わない群の2 群に割り付け,全死亡を比較する研究によって得られる。しかし,現在までのところ対象者をクラスター単位にランダム割り付けした2003 年および2004 年の研究がそれぞれ1 篇あるのみで 2, 3),以後この条件に合致する研究は発表されていない。サーベイランスの間隔を長短の2 群に分けたRCT が2 篇報告されているが 4, 5),予想されるハザードは小さくなり,結果として全死亡を見るのには明らかにunderpowered である。次に高いエビデンスを供給するのは,全死亡を比較したランダム化を行わないコホート研究であるが,検索範囲に該当する研究は発見できなかった。発癌者のみを対象とし,発癌後の全死亡を比較する研究は,lead-time bias の問題が生じるため,エビデンスの強さは前2 者に劣る 6-8)。Lead-time の推定は,自然経過での腫瘍の倍加時間とサーベイランスで発見された腫瘍と症状で発見された腫瘍における腫瘍径の差から計算されるが,採用されるパラメータの設定次第で計算結果が大きく異なる。肝細胞癌診断時点でのサーベイランスの有無を比較した論文は,さらに紹介バイアスが生じるため,この第4 版から採用しないことに決定した。これらのことから,定期的な肝細胞癌に対するスクリーニングによって,早期に肝細胞癌が検出され,根治療法につながる。また,予後改善効果をもたらす可能性があるので,サーベイランスを推奨するとし,強い推奨とした。

参考文献

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CQ2
サーベイランスは,どのような対象にどのような方法で行うか?

推奨の強さ強い
C 型慢性肝疾患患者,B 型慢性肝疾患患者,および非ウイルス性の肝硬変患者が肝細胞癌の定期的スクリーニング対象である。
3~6 カ月間隔での腹部超音波検査を主体とし,腫瘍マーカー測定も用いたスクリーニングを軸とする。肝硬変患者などの超高危険群ではdynamic CT またはdynamic MRI の併用も考慮する。

背景

肝細胞癌は,地域集積性の著しい癌であり,HBV およびC 型肝炎ウイルス(HCV)の関与と生活習慣の影響が大きいとされる。本邦においても肝細胞癌患者の約70%は,B 型あるいはC 型慢性肝疾患患者である 1)。ウイルス肝炎以外の肝細胞癌の危険因子は,肝硬変,男性,高齢,アルコール摂取,喫煙,肥満,脂肪肝,糖尿病などである。肝細胞癌サーベイランスの対象と方法について検討した。

サイエンティフィックステートメント

第3 版のCQ4「サーベイランスは,どのような対象に行うか?」およびCQ6「サーベイランスは,どのような方法で行うか?」を合わせて本CQ は設定された。第3 版のCQ4 では,肝細胞癌の危険因子について専用の検索式を設定して検討を行ったが,今回の改訂に際し,採用された研究におけるサーベイランスの対象者を推奨することとした。したがって,第3 版のCQ4 関連の論文は今回採用していない。CQ1 と共通の検索式を用いて2012 年1 月1 日から2016 年6 月30 日に発表された論文について検索し,836 篇が抽出された。そのなかから「コントロールスタディのみ,前向きに確定したサーベイランスプロトコールにのっとったもの」という条件で,第3 版から1 篇,新たに9 篇,計10 篇を採用した。

肝細胞癌サーべイランスに使用するモダリティについて,Singal らは肝硬変症例446 例を対象に調査を行った。41 例が肝細胞癌と診断され,腹部超音波単独,AFP 単独,両者併用で,それぞれ感度44%,66%,90%,特異度92%,91%,83%と腹部超音波とAFP の測定により感度が上昇することを報告している 2)。Chang らも肝硬変症例1,597 例の肝癌サーベイランスにおいてAFP,腹部超音波単独よりも両者によるスクリーニングにより感度が向上(99.2%)することを報告している 3)。また,AFP のカットオフ値に1 年以内の最低の値から2 倍以上の上昇を加えることにより特異度も68.3%から71.5%に向上した。Pocha らは163 例の代償期肝硬変患者を対象に6 カ月毎の腹部超音波と1 年毎の造影CT の有用性を比較すべくRCT を行い,年率6.6%発癌している集団で,感度,特異度は腹部超音波群で71.4%,97.5%,CT 群で66.7%,94.4%と感度において6 カ月毎の腹部超音波群が優れており,検査費用も腹部超音波群で低いことを報告している 4)

定期的検査の間隔の違いによる診断される肝細胞癌の腫瘍径の違いを検討したRCT が2 篇報告されている 5, 6)。肝硬変症例を対象とした腹部超音波によるサーベイランスに関し30 mm 以下での肝細胞癌発見率を主要評価項目とし,3 カ月と6 カ月間隔の比較を行った試験では,主要評価項目に有意差は認めず,全生存率にも差はなかった 4)。4 カ月と12 カ月間隔の比較を行った試験も報告されており,4 カ月間隔で2 cm 以下の早期に検出された症例が多かったが,4 年間の生存率には有意差を認めなかった 5)

Han らは,400 例の肝細胞癌症例において発見時のサーベイランス間隔で予後の比較を行った。6 カ月以内のサーベイランスで発見された腫瘍の方が有意に小さく,lead-time bias を考慮しても有意に予後が良好であったと報告している 7)

サーベイランスにおける腫瘍マーカーの診断能について,Gopal らは,肝硬変合併肝細胞癌452 例と対照676 例を比較したケースコントロール研究にてAFP の診断能に影響を及ぼす臨床因子を検討し,非C 型肝炎症例でAFP の特異度が上がることを報告した 8)。Sterling らは,3 カ月毎にAFP,AFP-L3,PIVKA-II を測定したHALT-C 試験855 例のデータを用いて腫瘍マーカーの値に影響を与える因子を検討し,AFPとPIVKA-II の軽度上昇は癌以外でもC 型肝炎感染や線維化進展によってももたらされることを報告している 9)

また,Wong らとKim らは,ともにB 型肝炎,肝硬変症例を前向きに調査し,核酸アナログ治療時のAFP の診断能を検討し,核酸アナログ投与例ではAFP のカットオフ値を下げることが可能で感度が向上可能であることを報告している 10, 11)

解説

肝細胞癌サーベイランスにおいて超音波検査にAFP を追加することで,より多くの患者がdynamic CT あるいはMRI による精査を受けることとなるため,理論的に感度は上昇するはずであるが,一方で偽陽性例が増加することから費用対効果は低下する。サーベイランスの間隔についても同様で,より短い間隔にするほど理論的には腫瘍は小さく発見されるはずであるが,費用は上昇する。よって,より精緻なサーベイランスによってもたらされる腫瘍径の差が臨床上意味のある差であるか,その差が増加するコストに見合うかどうかが問題となる。また,肝硬変の進展度,肥満度,背景肝疾患の違い,検査機器の性能などによって検出できる最小腫瘍径は異なる。検査コストも国によって大きく異なり,したがって他国で行われた費用対効果分析をそのまま本邦に当てはめることも問題がある。

結果として,推奨は現状を追認する形になりがちである。ただし,肝細胞癌の一般的倍加時間を考慮すると,3 カ月未満のサーベイランス間隔が有効である可能性は理論的にも根拠に乏しい。また,本邦におけるGd-EOB-DTPA を使用したMRI の検査費用が腹部超音波の8~9 倍であることを考慮すると,この増分費用効果が予想される生存期間の延長分と見合う可能性も低いといわざるを得ない。以上,肝細胞癌サーベイランスは本邦で既に確立され,広く行われているため,従来からの方法を踏襲し,強い推奨とすることとした。

B 型肝炎に対する核酸アナログ製剤やC 型肝炎に対する抗ウイルス療法によって高い確率で肝炎ウイルスの抑制あるいは排除が可能になり,このような症例では背景肝のAFP 産生が低下し,AFP の特異度が上昇することがわかってきている。このような患者群に対するサーベイランスにおけるAFP のカットオフ値の変更が必要になると思われるが,適正なカットオフ値に関しては,今後の検討課題である。

参考文献

1)
工藤正俊,泉並木,市田隆文,他.第19 回全国原発性肝癌追跡調査報告(2006~2007)(日本肝癌研究会追跡調査委員会).肝臓2016; 57: 45-73.PMID: 2010320986
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Singal AG, Conjeevaram HS, Volk ML, et al. Effectiveness of hepatocellular carcinoma surveillance in patients with cirrhosis. Cancer Epidemiol Biomarkers Prev 2012; 21: 793-9. PMID: 22374994
3)
Chang TS, Wu YC, Tung SY, et al. Alpha-fetoprotein measurement benefits hepatocellular carcinoma surveillance in patients with cirrhosis. Am J Gastroenterol 2015; 110: 836-44; quiz 845. PMID: 25869392
4)
Pocha C, Dieperink E, McMaken KA, Knott A, Thuras P, Ho SB. Surveillance for hepatocellular cancer with ultrasonography vs. computed tomography––a randomised study. Aliment Pharmacol Ther 2013; 38: 303-12. PMID: 23750991
5)
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CQ3
肝細胞癌の診断に有用な腫瘍マーカーは何か?

推奨の強さ強い
肝細胞癌の補助診断に有用な腫瘍マーカーとして,AFP,PIVKA-II,AFP-L3 分画が推奨される。

背景

本邦では,肝細胞癌の腫瘍マーカーとしてAFP,PIVKA-II,AFP-L3 分画の3 種が保険適用となっている。

診断目的の腫瘍マーカー測定は,確定診断に用いる場合と,サーベイランスにおいて次のプロセスへのトリガーとして用いる場合に分けられる。画像診断が発達した現在,肝細胞癌の腫瘍マーカーは確定診断に必須ではない。一方,サーベイランスに用いられる場合は,ある閾値を超えたときに検査後確率がどのように変化するかが重要であり,陽性尤度比〔positive likelihood ratio=感度/(1-特異度)〕を指標にすることが望ましい。今回,肝細胞癌の補助診断に有用な腫瘍マーカーについて検討した。

サイエンティフィックステートメント

本CQ は,第4 版で新たに設定された。第3 版のCQ8 と同じ検索式を用いて2000 年1 月1 日から2016 年6 月30 日に発表された論文について検索し,820 篇が抽出された。「感度,特異度,腫瘍径の詳細が記載されており,腫瘍径の詳細が記載されているもののみ採用。進行癌を含むコホートでは,2 cm 以下,3 cm 以下あるいは,5 cm 以下などのサブ解析がされていないものは省く」という方針の下に8 篇を採用した。

5 cm 以下の肝細胞癌を対象とした17 篇の論文における感度,特異度,診断オッズ比,陽性尤度比を検討したシステマティックレビューでは,AFP の感度は,カットオフ値20 ng/mL で49~71%,特異度は,49~86%,カットオフ値200 ng/mL で感度8~32%,特異度76~100%であった 1)。統合された診断オッズ比は,カットオフ値は20 ng/mL,200 ng/mL でそれぞれ4.06,6.99,陽性尤度比はそれぞれ2.45,5.85 であった。PIVKA-II の感度は,カットオフ値40 mAU/mL で15~54%,特異度は95~99%,カットオフ値100 mAU/mL で感度7~56%,特異度72~100%であった。統合された診断オッズ比は,カットオフ値40 mAU/mL,100 mAU/mL でそれぞれ21.31,6.70,陽性尤度比はそれぞれ12.60,4.91 であった。AFP-L3 分画の感度は,カットオフ値10%で22~33%,特異度は93~99%,カットオフ値15%で感度21~49%,特異度94~100%であった。統合された診断オッズ比は,カットオフ値10%,15%でそれぞれ6.43,10.50,陽性尤度比はそれぞれ4.89,13.10 であった。

C 型肝炎患者におけるAFP の診断能に関して検討したシステマティックレビューでは,5 篇の論文を採用し,20 ng/mL をカットオフ値とした場合の感度は41~65%,特異度は80~94%,陽性尤度比3.1~6.8,陰性尤度比0.4~0.6 と報告している 2)

一方,より最近行われたシステマティックレビューでは,49 篇の論文を採用し,AFP の感度59%(95%信頼区間:54~63%),特異度86%(同82~89%),PIVKA-II の感度63%(同58~67%),特異度91%(同88~93%),AFP,PIVKA-II のROC 曲線下面積をそれぞれ0.83,0.77 と報告している 3)。ただし,対象を腫瘍径3 cm 以下,腫瘍数3 個以下に限った場合は,AFP の感度48%(同39~57%),特異度89%(同79~95%),PIVKA-II の感度45%(同35~57%),95%(同91~97%),AFP,PIVKA-II のROC 曲線下面積はそれぞれ0.68,0.84 であった。

734 例の慢性肝炎・肝硬変患者を対象としたコホート研究において,平均観察期間374.5 日中に29 例に肝発癌を認めた 4)。AFP のカットオフ値を20 ng/mL とした場合の感度61.2%,特異度78.3%,PIVKA-II のカットオフ値を60 mAU/mL とした場合の感度41.4%,特異度90.9%であった。1,377 例の肝細胞癌患者と355 例の慢性肝炎・肝硬変患者を対象としたケースコントロール研究において,3 cm 未満の腫瘍に関してAFP のカットオフ値を20 ng/mL,100 ng/mL,200 ng/mL とした場合の感度はそれぞれ55%,23%,14%であり,特異度はそれぞれ94%,99%,100%であった。同様にPIVKA-II のカットオフ値を40 mAU/mL,100 mAU/mL とした場合の感度はそれぞれ41%,21%,特異度は97%,100%であった 5)。AFP およびPIVKA-II のROC 曲線下面積は,それぞれ0.887,0.812 であり,腫瘍径で層別化して検討したところ,3 cm 未満の診断能に関してはAFP の方が有意に優れており,5 cm 超の診断能に関してはPIVKA-II の方が有意に優れていた。372 例のC 型肝硬変患者を対象としたコホート研究において,2 年の経過観察中に34 例に肝発癌がみられた。AFP 20 ng/mL,AFP-L3 分画10%,PIVKA-II 7.5 ng/mL のカットオフ値で,感度はそれぞれ61%,36.5%,39.2%,特異度はそれぞれ71.1%,91.6%,89.6%であった 6)。B 型慢性肝炎患者において106 例の肝細胞癌群と100 例の対照群を検討した研究では,カットオフ値AFP 20 ng/mL,PIVKA-II 40 mAU/mL で,感度はそれぞれ57.5%,51.9%,特異度は88.0%,97.0%であった 7)。2,830 例の慢性肝疾患患者が参加した肝細胞癌サーベイランスにおいて,肝発癌が認められた104 例とプロペンシティスコアによってマッチさせた対照104 例を対象とし,高感度AFP-L3 分画のカットオフ値を7%,10%,15%とした際の感度は,それぞれ39.4%,16.3%,11.5%であり,特異度はそれぞれ77.0%,96%,100%であった。AFP のカットオフ値を20 ng/mL,200 ng/mL とした際の感度は41.4%,12.5%,特異度は90.4%,99.0%,PIVKA-II のカットオフ値を40 mAU/mL とした場合の感度は34.6%,特異度は94.0%であった 8)

解説

ベイズの定理によると検査後オッズは,検査前オッズ×尤度比で表される。肝細胞癌の最も高いリスク群の年率発癌率が高々10%であることを考えると,年2 回のサーベイランス検査で肝細胞癌が検出される検査前確率はおおよそ5%,検査前オッズは19 分の1 となる。腹部超音波検査の結果が陰性であった場合は,検査後オッズは,少なくとも40 分の1 程度まで低下するため,腫瘍マーカーが陽性であった場合に肝細胞癌が存在する確率を10%以上にするためには,陽性尤度比5 以上が必要である。これは特異度95%で感度25%以上,特異度90%で感度50%以上に相当する。すなわち,カットオフ値を高めに設定して陽性尤度比を高くしない限り,不必要な確認検査が増加し,費用対効果が低下する。慢性活動性肝炎を合併している患者ではAFP の特異度は低いため,少なくともカットオフ値を100 ng/mL 以上に設定する必要がある。AFP-L3 分画やPIVKA-II は小肝細胞癌における感度がAFP に劣るが,特異度が高いために,陽性尤度比はAFP よりも優れている。近年核酸アナログ投与下のB 型慢性肝炎患者および抗ウイルス療法によってSVR を達成したC 型慢性肝炎患者において,AFP の特異度が向上するという報告がある 9-11)。今後これらの患者群において,新たなカットオフ値を設定すべきと考えられる。

肝細胞癌の腫瘍マーカーとして本邦で最後に認可されたAFP-L3 分画の登場から約20 年が経過した。グリピカン3,ゴルジプロテイン73,オステオポンチン,各種マイクロRNA など新たな腫瘍マーカーについて多数の報告がなされたが,今回の検討でもいまだ実用に耐えうるものは見出せなかった。以上,本邦の肝癌診断において保険適用となっている3 種の腫瘍マーカーの役割は既に確立されており,引き続きこれらを強く推奨することとした。

参考文献

1)
Tateishi R, Yoshida H, Matsuyama Y, Mine N, Kondo Y, Omata M. Diagnostic accuracy of tumor markers for hepatocellular carcinoma: a systematic review. Hepatol Int 2008; 2: 17-30. PMID: 19669276
2)
Gupta S, Bent S, Kohlwes J. Test characteristics of alpha-fetoprotein for detecting hepatocellular carcinoma in patients with hepatitis C. A systematic review and critical analysis. Ann Intern Med 2003; 139: 46-50. PMID: 12834318
3)
Li C, Zhang Z, Zhang P, Liu J. Diagnostic accuracy of des-gamma-carboxy prothrombin versus alpha-fetoprotein for hepatocellular carcinoma: A systematic review. Hepatol Res 2014; 44: E11-25. PMID: 23834468
4)
Ishii M, Gama H, Chida N, et al. Simultaneous measurements of serum alpha-fetoprotein and protein induced by vitamin K absence for detecting hepatocellular carcinoma. South Tohoku District Study Group. Am J Gastroenterol 2000; 95: 1036-40. PMID: 10763956
5)
Nakamura S, Nouso K, Sakaguchi K, et al. Sensitivity and specificity of des-gamma-carboxy prothrombin for diagnosis of patients with hepatocellular carcinomas varies according to tumor size. Am J Gastroenterol 2006; 101: 2038-43. PMID: 16848811
6)
Sterling RK, Jeffers L, Gordon F, et al. Utility of Lens culinaris agglutinin-reactive fraction of alpha-fetoprotein and des-gamma-carboxy prothrombin, alone or in combination, as biomarkers for hepatocellular carcinoma. Clin Gastroenterol Hepatol 2009; 7: 104-13. PMID: 18849011
7)
Yoon YJ, Han KH, Kim DY. Role of serum prothrombin induced by vitamin K absence or antagonist-II in the early detection of hepatocellular carcinoma in patients with chronic hepatitis B virus infection. Scand J Gastroenterol 2009; 44: 861-6. PMID: 19391065
8)
Kumada T, Toyoda H, Tada T, et al. High-sensitivity Lens culinaris agglutinin-reactive alpha-fetoprotein assay predicts early detection of hepatocellular carcinoma. J Gastroenterol 2014; 49: 555-63. PMID: 24057163
9)
Wong GL, Chan HL, Tse YK, et al. On-treatment alpha-fetoprotein is a specific tumor marker for hepatocellular carcinoma in patients with chronic hepatitis B receiving entecavir. Hepatology 2014; 59: 986-95. PMID: 24123097
10)
Kim GA, Seock CH, Park JW, et al. Reappraisal of serum alpha-foetoprotein as a surveillance test for hepatocellular carcinoma during entecavir treatment. Liver Int 2015; 35: 232-9. PMID: 24576055
11)
Minami T, Tateishi R, Kondo M, et al. Serum Alpha-Fetoprotein Has High Specificity for the Early Detection of Hepatocellular Carcinoma After Hepatitis C Virus Eradication in Patients. Medicine (Baltimore) 2015; 94: e901. PMID: 26061310

CQ4
肝細胞癌の診断において2 種以上の腫瘍マーカーを測定することは有用か?

推奨の強さ強い
小肝細胞癌の診断においては2 種以上の腫瘍マーカーを測定することが推奨される。

背景

本邦では,肝細胞癌の腫瘍マーカーとしてAFP,PIVKA-II,AFP-L3 分画の3 種が保険適用となっている。

診断目的の腫瘍マーカー測定は,確定診断に用いる場合と,サーベイランスにおいて次のプロセスへのトリガーとして用いる場合に分けられる。画像診断が発達した現在,肝細胞癌の腫瘍マーカーは確定診断に必須ではない。一方,サーベイランスに用いられる場合は,ある閾値を超えたときに検査後確率がどのように変化するかが重要であり,陽性尤度比〔positive likelihood ratio=感度/(1-特異度)〕を指標にすることが望ましい。2 種類以上の腫瘍マーカー測定が肝細胞癌診断に有用かを検討した。

サイエンティフィックステートメント

本CQ は,第3 版のCQ8 と同一である。今回の改訂に際し,第3 版と同様の検索式を用いて2012 年1 月1 日から2016 年6 月30 日に発表された論文について検索し,688 篇が抽出された。「感度,特異度,腫瘍径の詳細が記載されており,かつ2 つ以上の腫瘍マーカーについて記載されているもののみを採用」という方針の下に新たに4 篇を選択,第3 版の3 篇と合わせて計7 篇を採用した。

5 cm 以下の肝細胞癌を対象とした17 篇の論文における感度,特異度,診断オッズ比,陽性尤度比を検討したシステマティックレビューでは,AFP の感度は,カットオフ値20 ng/mL で49~71%,特異度は,49~86%,カットオフ値200 ng/mL で感度8~32%,特異度76~100%であった 1)。統合された診断オッズ比は,カットオフ値20 ng/mL,200 ng/mL でそれぞれ4.06,6.99,陽性尤度比はそれぞれ2.45,5.85 であった。PIVKA-II の感度は,カットオフ値40 mAU/mL で15~54%,特異度は95~99%,カットオフ値100 mAU/mL で感度7~56%,特異度72~100%であった。統合された診断オッズ比は,カットオフ値40 mAU/mL,100 mAU/mL でそれぞれ21.31,6.70,陽性尤度比はそれぞれ12.60,4.91 であった。AFP-L3 分画の感度は,カットオフ値10%で22~33%,特異度は93~99%,カットオフ値15%で感度21~49%,特異度94~100%であった。統合された診断オッズ比は,カットオフ値10%,15%でそれぞれ6.43,10.50,陽性尤度比はそれぞれ4.89,13.10 であった。2 種類の腫瘍マーカーを組み合わせた場合の診断オッズ比は,6.29~59.81 と1 種類の腫瘍マーカーのみと比較して向上していた。

一方,より最近に行われたシステマティックレビューでは,49 篇の論文を採用し,AFP の感度59%(95%信頼区間:54~63%),特異度86%(同82~89%),PIVKA-II の感度63%(同58~67%),特異度91%(同88~93%),AFP,PIVKA-II および両者を組み合わせた場合のROC 曲線下面積をそれぞれ0.83,0.77,0.88 と両者を組み合わせた方が診断能が優れていると報告している 2)。ただし,対象を腫瘍径3 cm 以下,腫瘍数3 個以下に限った場合は,AFP の感度48%(同39~57%),特異度89%(同79~95%),PIVKA-II の感度45%(同35~57%),95%(同91~97%),AFP,PIVKA-II およびそれらを組み合わせた場合のROC 曲線下面積はそれぞれ0.68,0.84,0.83 であり,組み合わせによる診断能の向上は認められなかった。

734 例の慢性肝炎・肝硬変患者を対象としたコホート研究において,平均観察期間374.5 日中に29 例に肝発癌を認めた 3)。AFP のカットオフ値を40 ng/mL,PIVKA-IIのカットオフ値を80 mAU/mL とし組み合わせた場合の感度は65.5%,特異度は85.5%であった。1,377 例の肝細胞癌患者と355 例の慢性肝炎・肝硬変患者を対象としたケースコントロール研究において,AFP のカットオフ値を20 ng/mL,PIVKA-IIのカットオフ値を40 mAU/mL とし組み合わせた場合の感度は82%,特異度は91%であった 4)。372 例のC 型肝硬変患者を対象としたコホート研究において,2 年の経過観察中に34 例に肝発癌がみられた。AFP 単独の感度はカットオフ値20 ng/mL で61%であったが,AFP-L3 分画(カットオフ値10%),PIVKA-II(カットオフ値7.5 ng/mL)と3 つを組み合わせた場合,77%まで上昇した 5)。B 型慢性肝炎患者において106 例の肝細胞癌群と100 例の対照群を検討した研究では,カットオフ値AFP 20 ng/mL,PIVKA-II 40 mAU/mL で感度はそれぞれ単独では57.5%,51.9%であったが,組み合わせることによって78.3%まで上昇した。一方,特異度は88%,97%から85%への低下にとどまっていた 6)。2,830 例の慢性肝疾患患者が参加した肝細胞癌サーベイランスにおいて,肝発癌が認められた104 例とプロペンシティスコアによってマッチさせた対照104 例を対象とした研究において,高感度AFP-L3 分画のカットオフ値を7%,AFP のカットオフ値を200 ng/mL,PIVKA-II のカットオフ値を40 mAU/mL とし組み合わせた場合の感度は,60.6%,特異度は76%であった 7)

解説

小肝細胞癌において2 種の腫瘍マーカーを測定することは,特異度の低下は最小限に抑えつつ,感度を向上させる。2 つ以上の腫瘍マーカーを組み合わせる場合,通常それぞれのカットオフ値を「どちらか片方が」超えた場合を陽性とする。そのため,組み合わせる腫瘍マーカーの数が増加するに従って無条件に感度も上昇するが,当然のことながら特異度は低下する。陽性尤度比は感度/(1-特異度)で表されるため,特異度の低下の影響の方が大きく,サーベイランスの場合は,無駄な確認検査の増加,診断確定に用いた場合は,陽性でも検査後確率がさほど上昇しないという結果をもたらす。特異度の低下を避けるためには,単独で用いるよりも高いカットオフ値を採用する必要があり,特に特異度の低いAFP のカットオフ値は,20 ng/mL よりも高く設定する必要がある。また,組み合わせる腫瘍マーカーは相補的であることが望ましく,その点AFP とPIVKA-II は相関が低いために理想的な組み合わせといえる。

肝細胞癌の腫瘍マーカーとして本邦で最後に認可されたAFP-L3 分画の登場から約20 年が経過した。グリピカン3,ゴルジプロテイン73,オステオポンチン,各種マイクロRNA など新たな腫瘍マーカーについて多数の報告がなされたが,今回の検討でもいまだ実用に耐えうるものは見出せなかった。以上,本邦の肝癌診断において保険適用となっている3 種の腫瘍マーカーの役割は既に確立されており,引き続き2 種以上の測定を強く推奨することとした。

参考文献

1)
Tateishi R, Yoshida H, Matsuyama Y, Mine N, Kondo Y, Omata M. Diagnostic accuracy of tumor markers for hepatocellular carcinoma: a systematic review. Hepatol Int 2008; 2: 17-30. PMID: 19669276
2)
Li C, Zhang Z, Zhang P, Liu J. Diagnostic accuracy of des-gamma-carboxy prothrombin versus α-fetoprotein for hepatocellular carcinoma: A systematic review. Hepatol Res 2014; 44: E11-25. PMID: 23834468
3)
Ishii M, Gama H, Chida N, et al. Simultaneous measurements of serum alpha-fetoprotein and protein induced by vitamin K absence for detecting hepatocellular carcinoma. South Tohoku District Study Group. Am J Gastroenterol 2000; 95: 1036-40. PMID: 10763956
4)
Nakamura S, Nouso K, Sakaguchi K, et al. Sensitivity and specificity of des-gamma-carboxy prothrombin for diagnosis of patients with hepatocellular carcinomas varies according to tumor size. Am J Gastroenterol 2006; 101: 2038-43. PMID: 16848811
5)
Sterling RK, Jeffers L, Gordon F, et al. Utility of Lens culinaris agglutinin-reactive fraction of alpha-fetoprotein and des-gamma-carboxy prothrombin, alone or in combination, as biomarkers for hepatocellular carcinoma. Clin Gastroenterol Hepatol 2009; 7: 104-13. PMID: 18849011
6)
Yoon YJ, Han KH, Kim DY. Role of serum prothrombin induced by vitamin K absence or antagonist-II in the early detection of hepatocellular carcinoma in patients with chronic hepatitis B virus infection. Scand J Gastroenterol 2009; 44: 861-6. PMID: 19391065
7)
Kumada T, Toyoda H, Tada T, et al. High-sensitivity Lens culinaris agglutinin-reactive alpha-fetoprotein assay predicts early detection of hepatocellular carcinoma. J Gastroenterol 2014; 49: 555-63. PMID: 24057163

CQ5
腫瘍マーカーの測定は,肝細胞癌の治療効果判定の指標として有効か?

推奨の強さ強い
治療前に腫瘍マーカーが上昇している症例において,治療後にその腫瘍マーカーを測定することは,治療効果判定の指標として有効である。

背景

肝移植および肝切除では,目的とした腫瘍が完全に摘除されたかは,病理学的に評価可能であるのに対して,穿刺局所療法,肝動脈化学塞栓療法(TACE),薬物療法,放射線治療では,治療効果判定は画像検査によって行われる。また,肝移植・肝切除においても肝外・切除範囲外の遺残癌の評価には,画像検査が用いられる。画像による治療効果判定は,治療の影響による変化のため(AP シャント,リピオドール沈着など),困難な場合も少なくない。腫瘍マーカーによる治療効果判定が,画像による効果判定を補完しうるかについて検討した。

サイエンティフィックステートメント

本CQ は,第3 版のCQ9 と同一である。今回の改訂に際し,第3 版と同様の検索式(CQ3~5 で共通)を用いて2012 年1 月1 日から2016 年6 月30 日に発表された論文について検索し,688 篇が抽出された。「治療効果判定に腫瘍マーカーを使用しているもののみを採用」という方針の下に新たに3 篇を選択,第3 版の5 篇と合わせて計8 篇を採用した。

根治的穿刺局所療法〔ラジオ波焼灼療法(RFA),70.7%〕を施行された416 例を対象とした研究では,AFP,PIVKA-II,AFP-L3 分画の3 種のマーカーのうち,治療後のAFP およびAFP-L3 分画高値(>100 ng/mL/>15%)が再発を予測する独立した因子であった 1)。RFA で治療された54 例(治療機会72 回)を対象とした研究では,AFP の半減期7 日未満の減少は,画像診断による効果判定と独立した無再発生存の予測因子であった 2)。肝切除が施行された714 例の肝細胞癌患者を対象として行われた研究においてAFP,PIVKA-II のカットオフ値をそれぞれ20 ng/mL,40 mAU/mL とした際の切除後の陰転化率は,それぞれ80.3%,99.6%であった。治療前のAFP,PIVKA-II 値は6 カ月以内の再発に関連していたが,2 年以降の再発には関連していなかった 3)。同様に165 例の肝切除症例を対象とした研究では,再発症例でAFP が陰性化しない症例が有意に多かった。多変量解析で術後最低AFP 値が有意に再発に関与していた 4)

RFA が施行された肝細胞癌患者146 例を対象とした検討では,無再発にもかかわらずAFP が上昇していた症例では,AFP はALT と相関していた。再発もなくAFP も上昇していない症例では,ALT も正常であった。カットオフ値を20 ng/mL とした際の治療前AFP 陽性例の再発時陽性率は72.2%であったのに対して,治療前AFP 陰性例の治療後陽性率は,12.2%であった 5)

TACE あるいは放射線塞栓療法を受けた125 例を対象とした研究では,AFP の50%以上の減少は,画像による効果判定とともに独立した予後因子であった 6)

分子標的治療薬を含む薬物療法を施行された72 例を対象とした研究では,AFP の20%以上の減少で定義されたAFP responder は,画像上stable disease と判定されたなかでも良好な予後を示した 7)。全身化学療法あるいは分子標的治療を受けた107 例を対象とした同様の検討では,50%以上のAFP減少は,良好な予後と関連していた 8)

解説

サーベイランスにおいてしばしば問題となることであるが,AFP 値は背景肝の肝炎の活動性と有意に相関している。そのため,画像上根治的に治療できたと思われる症例においてAFP が陰転化しない場合の多くは背景肝由来のAFP を測定していると想定される。一方,AFP-L3 分画やPIVKA-II のように背景肝の影響を受けにくいため特異度の高い腫瘍マーカーの場合は,治療後の測定値が高い場合に腫瘍の遺残が強く疑われる。

腫瘍の進展度に関して,腫瘍の生物学的悪性度と腫瘍マーカー産生の有無は有意に相関しているとされ,また同一の腫瘍であれば,腫瘍量と腫瘍マーカー値は比例関係にあるため,より進行した肝細胞癌において腫瘍マーカー値の治療効果判定における有用性が高まることが予想される。以上,本邦の肝癌診療において保険適用となっている3 種の腫瘍マーカーの役割は既に確立されており,引き続きこれらを強く推奨することとした。

なお,腫瘍マーカー測定が,治療効果判定において真に有効であるためには,腫瘍マーカー値がCT などの画像検査のタイミング決定や治療法変更などの臨床判断に用いられることが必要であるが,今回の文献検索の範囲では,そのような研究は見出せなかった。

参考文献

1)
Tateishi R, Shiina S, Yoshida H, et al. Prediction of recurrence of hepatocellular carcinoma after curative ablation using three tumor markers. Hepatology 2006; 44: 1518-27. PMID: 17133456
2)
Tsai MC, Wang JH, Hung CH, et al. Favorable alpha-fetoprotein decrease as a prognostic surrogate in patients with hepatocellular carcinoma after radiofrequency ablation. J Gastroenterol Hepatol 2010; 25: 605-12. PMID: 20074164
3)
Yamamoto K, Imamura H, Matsuyama Y, et al. Significance of alpha-fetoprotein and des-gamma-carboxy prothrombin in patients with hepatocellular carcinoma undergoing hepatectomy. Ann Surg Oncol 2009; 16: 2795-804. PMID: 19669841
4)
Nobuoka D, Kato Y, Gotohda N, et al. Postoperative serum alpha-fetoprotein level is a useful predictor of recurrence after hepatectomy for hepatocellular carcinoma. Oncol Rep 2010; 24: 521-8. PMID: 20596642
5)
Siripongsakun S, Wei SH, Lin S, et al. Evaluation of alpha-fetoprotein in detecting hepatocellular carcinoma recurrence after radiofrequency ablation. J Gastroenterol Hepatol 2014; 29: 157-64. PMID: 24354994
6)
Riaz A, Ryu RK, Kulik LM, et al. Alpha-fetoprotein response after locoregional therapy for hepatocellular carcinoma: oncologic marker of radiologic response, progression, and survival. J Clin Oncol 2009; 27: 5734-42. PMID: 19805671
7)
Shao YY, Lin ZZ, Hsu C, Shen YC, Hsu CH, Cheng AL. Early alpha-fetoprotein response predicts treatment efficacy of antiangiogenic systemic therapy in patients with advanced hepatocellular carcinoma. Cancer 2010; 116: 4590-6. PMID: 20572033
8)
Vora SR, Zheng H, Stadler ZK, Fuchs CS, Zhu AX. Serum alpha-fetoprotein response as a surrogate for clinical outcome in patients receiving systemic therapy for advanced hepatocellular carcinoma. Oncologist 2009; 14: 717-25. PMID: 19581525

CQ6
肝細胞癌の高危険群において,典型的肝細胞癌の診断に診断能が高い検査は何か?

推奨の強さ強い
典型的肝細胞癌の診断のためにはdynamic CT,dynamic MRI,造影超音波検査のいずれかが勧められる。

背景

肝細胞癌の多くは,dynamic CT あるいはdynamic MRI の動脈優位相において早期濃染を示し,門脈優位相あるいは平衡相にてwashout を示す。このように画像上,典型的な造影パターンを呈するものを典型的肝細胞癌という。肝硬変患者で1~2 cm の結節が超音波検査で検出されたとき,造影剤を用いた超音波,CT,MRI のうち1 つが肝細胞癌に典型的な造影パターンを示せば肝細胞癌と診断可能である 1)

本CQ では,典型的肝細胞癌の診断における各画像検査の有用性について検討する。

サイエンティフィックステートメント

本CQ は,第3 版のCQ11 およびCQ15 を統合して作成された。今回の改訂に際し,第3 版と同様の検索式を用いて,2012 年1 月1 日から2016 年6 月30 日に発表された論文について検索し,1,193 篇が抽出された。そのなかから「臨床で利用されている検査法を用いた典型的肝細胞癌の診断能について適切に評価している文献を採用する」という方針の下に一次選択で47 篇,二次選択で25 篇の論文を新たに採用し,第3 版の42 篇のうちの,エビデンスレベルの高い21 篇と合わせて計46 篇を最終的に採用した。

MDCT を用いたdynamic CT のスライス厚5 mm における感度は73%,陽性的中率は69%である。2.5 mm 厚を用いてもその検出感度に大きな改善はない 2)

肝細胞特異性造影剤であるガドキセト酸ナトリウム(Gd-EOB-DTPA,商品名:EOB・プリモビスト®)を用いたdynamic MRI による肝細胞癌の診断能については複数のメタアナリシスの結果が報告されており,感度(0.91~0.93),特異度(0.94~0.96)ともに非常に優れている 3-6)。特にGd-EOB-DTPA 造影MRI での肝細胞相が診断能の向上に大きく寄与している 6-10)。ただし,肝機能低下症例あるいは肝移植対象症例においてはGd-EOB-DTPA 造影MRI の診断能は低下する 10-12)

拡散強調MRI 画像による肝細胞癌の検出感度は45~55% 13)あるいは57% 14)である。Gd-EOB-DTPA 造影MRI に拡散強調像を追加することについては有用とするもの 15, 16)と有用でないとするもの 17)がある。

肝細胞癌の検出に関するGd-EOB-DTPA を用いたdynamic MRI とdynamic CT との比較研究では,MRI の方が有意に優れるというものと 18-24),両者で有意差がなかったとするものがある 25-28)が,メタアナリシスではMRI の方が有意に優れるという結果となっている 10, 29)。また,典型的肝細胞癌のみを対象とした比較検討においても,MRI の方が有意に優れるという結果になっている 30)。さらに肝細胞癌のステージングあるいは治療方針の決定においてもMRI は有用である 31-33)

SPIO 造影剤を用いたMRI とdynamic CT との比較では,1.5 テスラMRI 装置を用いた場合は差がない 34, 35)かSPIO 造影MRI がやや優れる 36)。3.0 テスラMRI 装置を用いた場合はSPIO 造影MRI の感度が高く,これは1 cm 以下の小さな肝細胞癌の検出が優れることによる 37)。SPIO 造影MRI とGd-EOB-DTPA 造影MRI を比較すると,1.5 テスラMRI 装置での検討でGd-EOB-DTPA 造影MRI がより感度が高く 38),3.0 テスラMRI 装置を用いた検討では同等 39)である。

一般的な造影超音波による腫瘍径2 cm 以下の肝細胞癌の検出に関するメタアナリシスでは,感度が0.81(95%信頼区間:0.78~0.85),特異度が0.86(同:0.82~0.89),summary ROC のAz 値が0.93 と報告されている 40)

一方でペルフルブタンマイクロバブル(商品名:ソナゾイド®)造影超音波の診断能に関する報告はまだ数が限られており,エビデンスレベルもCT やMRI に関するものと比べて低めである。肝細胞癌を対象としたソナゾイド® 造影超音波とdynamic CT とGd-EOB-DTPA 造影MRI の比較検討において,正診率はそれぞれ72%,74%,86%で有意差は認められなかった 41)。ソナゾイド® 造影超音波の血管早期相で腫瘍血流を検出できるのは,dynamic CT で早期濃染を示す病変の88%,早期濃染を示さない肝細胞癌の28%である。Kupffer イメージングはdynamic CT でwashout を呈した病変の83%を検出しうるが,2 cm 以下の病変や体表から9 cm 以上の位置にある病変の検出率は低下する 42)。一方で,dynamic CT で診断された400 区域中123 区域の138 結節の肝細胞癌を対象とし,ソナゾイド® 造影超音波のKupffer イメージングに限定した検討では,検出感度が73.2~83.1%で非造影のB モード超音波(検出感度83.7~84.6%)より劣る傾向にあったと報告されている 43)

4 列型MDCT 装置によるCTAP+CTHA とGd-EOB-DTPA 造影MRI との比較検討では,治療前の肝細胞癌の診断能においてはMRI の方がCTAP+CTHA より優れていた 44)。また,16 列型MDCT 装置によるCTAP+CTHA とGd-EOB-DTPA 造影MRI との比較検討では,MRI の方が優れていたとするもの 21)と,有意差を認めなかったとするものがあった 45)

解説

Dynamic CT については,現在ほとんどの施設にMDCT が普及していることもあり,MRI と比べて安定した画質が得られ,検査時間も短いなどの優位性がある。また,1 回のスキャンが数秒と短く,呼吸停止ができない症例においても画質の劣化が少ない。診断能についても1 cm 以上の典型的肝細胞癌の診断においては十分なレベルにある 25, 30)

Gd-EOB-DTPA を用いたdynamic MRI は,近年のMRI 装置の性能の飛躍的な向上も伴い,非常に優れた診断能をもたらす。一方でMRI は装置の導入,保守,運用に多大なコストがかかり,1 件あたりの検査時間も長いため,施設によっては肝細胞癌のハイリスク症例を全例MRI で検査することは難しいと考えられる。また,Gd-EOB-DTPA 造影MRI は特異度の高い検査であるが,臨床においては早期に全体が濃染する小さな血管腫や多血性の腫瘤形成型肝内胆管癌などとの鑑別に留意する必要がある 30)

腎機能の低い患者ではヨード造影剤やGd-EOB-DTPA を含むガドリニウム(Gd)造影剤を使用することは困難であるため,そのような症例においてはSPIO 造影MRIにも一定の価値があると考えられる。

造影超音波検査はCT,MRI に比べると客観性には劣るが,血流動態と肝網内系機能を評価することが可能であり,特に第二世代の造影剤が使用できるようになってからはさらに優れた診断能が得られるようになっている。また,ソナゾイド® は腎機能障害の有無にかかわらず使用でき,重篤なアナフィラキシー様反応の頻度もヨード造影剤やGd 造影剤より少ない 46)。ただし,ソナゾイド® 造影超音波の肝細胞癌の診断能に関する比較検討の報告は限られており,今後さらなる検討が必要である。

血管造影は初期の頃より肝細胞癌の診断に用いられてきた検査方法であり,近年では平面検出器型血管撮影装置にMDCT 装置が統合されたIVR-CT システムも臨床で用いられている。CTAP およびCTHA を含む血管造影は典型的肝細胞癌の診断において非常に有用な検査ではあるが,肝動脈あるいは上腸間膜動脈への選択的カテーテル挿入が必要であるため他の検査法と比較して侵襲的である。それゆえ,他の検査法による診断能の向上とともに診断の目的のみでCTHA およびCTAP が施行されることは少なくなってきており,近年ではTACE などの治療手技と併せて施行される場合がほとんどである。

結論としては,ソナゾイド® 造影超音波,dynamic CT,Gd-EOB-DTPA 造影MRI いずれの検査法も典型的肝細胞癌の診断に十分有用であり,施設の状況や患者の状態に応じて適切なものを選択することが求められる。いずれの検査についても十分なエビデンスが構築されており,これらのなかで適切な検査を選択することは本邦の実臨床の状況にも合致しているため,改訂委員会の賛成多数で強い推奨とすることが決定された。

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CQ7
Dynamic CT/MRI で典型的所見を示さない肝結節の精査は,何 cm 以上から行うのが望ましいか?

推奨の強さ強い
多血性の病変に関しては,1 cm 以上から精査を行うことが望ましい。

背景

典型的画像所見を示さない肝細胞癌をより早期に診断することが,全生存率を向上させるというエビデンスは存在しない。一方で,穿刺局所療法を治療法として想定する場合は,腫瘍径が小さいほど局所根治性が高いというエビデンスが存在する。一般に,結節径が小さいほど悪性である可能性は低くなるため,精査の基準を下げると不要な確認検査が増加し,費用対効果は低下する。効率のよい閾値が存在するかを検討した。

サイエンティフィックステートメント

本CQ は,第3 版のCQ7 と同一である。今回の改訂に際し,第3 版と同様の検索式を用いて2012 年1 月1 日から2016 年6 月30 日に発表された論文について検索し,705 篇が抽出された。「非典型的な画像について述べてあり,サイズが記載されており,病理学的に評価されている論文のみを選択」という方針の下に新たに9 篇を選択,第3 版の2 篇と合わせて計11 篇を採用した。

Byrnes らは,肝硬変54 例において,dynamic MRI で早期濃染するが,門脈・平衡相で,周囲肝実質と比較して等~高信号を呈する2 cm 未満の病変161 結節について,病理学的あるいは経過観察によって良悪性を決定した 1)。その結果,肝細胞癌は16 結節(10%)であり,残りは良性と判断された。そのうち1 cm 未満では,肝細胞癌は111 結節中1 結節のみ(0.6%)であったのに対し,1 cm 以上では,50 結節中15 結節(30%)であった。

Haradome らは,3 cm 以下の肝細胞癌52 例60 結節についてdynamic CT とGd-EOB-DTPA 造影MRI を比較した 2)。両者のROC 曲線下面積(AUROC)は同等であったが,1.5 cm 以下の結節ではGd-EOB-DTPA 造影MRI がCT と比較して有意に優れていた。Dynamic CT で偽陰性となった病変は,60 結節中14 結節あり,そのうち,早期濃染するがwashout を認めない結節が,読影者1 で11 結節,読影者2 で10 結節と大半を占めた。そのうち,読影者1・2 ともに3 結節をGd-EOB-DTPA 造影MRI の肝細胞相で低信号と判定した。Gd-EOB-DTPA 造影MRI を行うことによってwashout を示さない多血性の肝細胞癌を診断できる可能性が示唆された。

Sersté らは,慢性肝疾患患者74 例において腹部超音波検査で検出された1~2 cmの結節に対して,dynamic CT,dynamic MRI,腫瘍生検を施行した 3)。うち60 例で結節が描出され,病理結果は肝細胞癌47 例,高度異型結節6 例,軽度異型結節1 例,胆管癌1 例,肝血管筋脂肪腫1 例であった。高度異型結節の6 例全例が経過観察中に腫瘍増大や画像上の変化を生じ,肝細胞癌として治療されている。また,肝細胞癌47例のうち,早期濃染とwashout を認めたのは,CT で37 例(79%),MRI で38 例(81%)であった。後期のwashout を伴わない早期濃染のみを認めたのは,CT で2 例(4%),MRI で6 例(13%)であった。一方,肝細胞癌以外と診断された27 例のうち,早期濃染とwashout を認めたのは,CT で5 例(18%),MRI で4 例(15%)であった。肝細胞癌以外の27 例中,washout を伴わない早期濃染を認めたのは,CT で14 例,MRI で13 例であった。

Golfieri らは,肝硬変患者77 例における典型的所見(早期濃染と門脈・平衡相のwashout)を示さない111 結節に対してGd-EOB-DTPA 造影MRI を施行した 4)。ゴールドスタンダードを病理組織学的診断として,60 結節が良性,51 結節が悪性/境界病変であった。悪性はClass IA(早期濃染なし/肝細胞相で低信号)のうち31 結節(94%),IB(早期濃染なし/肝細胞相で等信号)のうち1 結節(3%)。IC(早期濃染なし/肝細胞相で高信号)は良性結節のみ,IIA(早期濃染あり/washout なし/肝細胞相で低信号)のうち悪性は100%,IIB(早期濃染あり/washout なし/肝細胞相で等信号)のうち悪性は3 結節(37.5%),IIC(早期濃染あり/washout なし/肝細胞相で高信号)では悪性は2 結節(28.5%)であった。「肝細胞相で低信号」のみ(Class I またはIIA)では感度88%,陰性適中率91%,正診率93%で,他のMRI 所見よりも有意に(それぞれ,p<0.05,p<0.006,p<0.05)に高かった。

Iavarone らは,生検で診断された36 例の異型結節を伴う(軽度異型結節21 例,高度異型結節15 例)肝硬変患者を3 カ月毎の腹部超音波検査と6 カ月毎のdynamic CT で経過観察し,中央値36 カ月(範囲:6~128 カ月)の観察期間中,21 例(年間13.8%)に肝細胞癌が生じたと報告している 5)。経過観察した結節の悪性化率8.7%/年に対し,結節外の肝実質に肝細胞癌が生じた頻度は7.1%/年であった。肝細胞癌への進展は軽度異型結節よりも高度異型結節により多く生じていた(32.2% vs. 9.3%/年,p=0.0039)。

Di Martino らは,140 例163 結節の肝細胞癌患者に対して,腹部超音波検査,Gd-BOPTA 造影MRI,dynamic CT を施行し,組織学的診断あるいは5 mm を超える腫瘍径増大をゴールドスタンダードとして,Gd-BOPTA 造影MRI の診断能を検討した 6)。1~2 cm 大の83 結節において,肝細胞相によって悪性の確信度を高められた病変は21 結節(25.3%)あり,肝細胞相でしか悪性所見を示さなかった結節は10 結節(12.0%)あったと報告している。

Choi らは,組織学的に診断された肝細胞癌216 例304 結節に対して,Gd-EOB-DTPA 造影MRI を施行し,非典型的な造影パターンを呈した肝細胞癌はサイズが小さく(<1 cm の肝細胞癌の52.8%),組織学的に高分化で(高分化癌の38.8%),肝機能が悪く(Child-Pugh 分類C の57.1%),肝細胞相で等~高信号を呈した肝細胞癌は,サイズが小さく(<1 cm の肝細胞癌の30.6%),組織学的に高分化で(高分化癌の20.4%),肝機能が悪かった(Child-Pugh 分類C の34.3%)と報告している 7)

Manini らは,腹部超音波検査による肝細胞癌サーベイランス中に指摘された肝硬変患者98 例119 結節(<1 cm 7 結節,1~2 cm 67 結節,>2 cm 45 結節)について,造影超音波,dynamic CT,dynamic MRI を施行した 8)。結果,84 結節(70%)が肝細胞癌と診断された。1~2 cm の肝細胞癌43 結節のうち,造影超音波およびCT の両方で典型的所見を示したのは,23 結節(53%),CT およびMRI の両方で典型的所見を示したのは,5 結節(12%),CT あるいはMRI でのみ典型的所見を示したのは,それぞれ2 結節(5%),4 結節(9%)であった。35 結節(53%)で確定診断のために生検を要した。

Yu らは,肝細胞癌患者60 例146 結節(>1 cm 70 結節,≤1 cm 76 結節)についてGd-EOB-DTPA 造影MRI を施行した。結果,1 cm 以下の肝細胞癌におけるGd-EOB-DTPA 造影MRI の感度は,46%にとどまると報告している 9)

Forner らは,腹部超音波検査による肝細胞癌サーベイランス中に5~20 mm の結節が検出された168 例の肝硬変患者についてdynamic MRI と造影超音波を施行し,画像で確定診断ができない例については生検診断を行った 10)。結果,造影超音波で多血性を検出できなかった55 例のうち,18 例が肝細胞癌であり,造影超音波で多血性が検出できなくても肝細胞癌を除外すべきでないと結論づけている。

Darnell らは,CT およびMRI による肝細胞癌診断を標準化する目的で策定されたLiver Imaging Reporting and Data System(以下LI-RADS)を用いて,腹部超音波検査を用いた肝細胞癌サーベイランス中に20 mm 以下の肝結節が発見された159 例のうちMRI で描出された133 結節について評価を行った 11)。LI-RADS のカテゴリー4/5 は,肝細胞癌確診,カテゴリー1/2 は,良性と診断される。中間のLI-RADS カテゴリ3 結節のうち10 mm 未満のものはすべて良性,10~15 mm のものは59%が肝細胞癌,16~20 mm のものは69%が肝細胞癌であった。

解説

Dynamic CT/MRI における肝細胞癌の典型的所見とは,動脈相で高吸収域として描出され(早期濃染),門脈・平衡相で周囲肝実質よりも相対的に低吸収域として描出される(washout)結節と定義されている。典型的所見を示さない結節とは,動脈相で高吸収域として描出されるが,門脈・平衡相で,周囲肝実質と比較して高吸収あるいは等吸収を呈する病変か,動脈相で等吸収あるいは低吸収を呈し,門脈・平衡相で等吸収あるいは低吸収を呈する病変を指す。前者では,動脈-門脈(AP)シャント,限局性結節性過形成(FNH),肝海綿状血管腫などが主に鑑別にあがり,後者では,再生結節や異型結節と早期肝細胞癌の鑑別が問題となる。多血性の肝細胞癌でも腫瘍径が小さい場合は,washout は明瞭でない場合も多い。これら多血性結節の生物学的悪性度は,典型的な所見を示す肝細胞癌に準じると想定されるため,早期診断の利益が存在する可能性がある。一方,乏血性の早期肝細胞癌の場合は,多血性の肝細胞癌よりも高分化であることが想定され,早期診断の利益はより不明確である。1 cm 未満の結節については,画像検査によって確定診断がつかない場合も多く,生検はサンプリングエラーの確率が高くなる。倍加時間から考えて1 cm 未満の病変が2 cm を超えるまでには十分な時間的余裕があると想定されるため,経過観察が望ましい。以上より,非典型的結節であっても多血性病変については,1 cm 以上のものについては精査を推奨するエビデンスがあると考えられ,改訂委員会において賛成多数で強い推奨とすることが決定された。

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CQ8
肝硬変患者における早期肝細胞癌の検出において,診断能が高い検査は何か?

推奨の強さ強い
早期肝細胞癌検出の診断能は,Gd-EOB-DTPA 造影MRI が高い。

背景

各画像診断装置の性能の向上と造影剤や拡散強調像の普及により,慢性肝障害患者において小結節や乏血性結節が指摘されることも多く,そのなかには早期肝細胞癌が含まれる。境界不明瞭な結節型で乏血性の高分化型肝細胞癌である早期肝細胞癌は,生物学的悪性度が低く,肝内転移や脈管侵襲も極めて稀である。肝細胞癌は多段階発育の過程でさまざまな画像所見を呈するので,早期肝細胞癌の診断能は典型的肝細胞癌と別に取り扱う必要がある。今回,肝硬変患者における早期肝細胞癌の検出において,診断能が高い検査について検討した。

サイエンティフィックステートメント

第3 版のCQ10,15,17 を統合して本CQ は作成された。今回の改訂に際し,第3 版と同様の検索式を用いて,2012 年1 月1 日から2016 年6 月30 日に発表された論文について検索し,467 篇が抽出された。そのなかから「ソナゾイド® 造影超音波,肝細胞癌診断をターゲットとした適切なプロトコールで撮影された造影CT およびGd-EOB-DTPA 造影MRI の早期肝細胞癌の検出,診断能に関してRCT あるいはnon-RCT を主に採用する」という方針の下に一次選択で73 篇,二次選択で15 篇の論文を新たに採用し,第3 版CQ10 の16 篇から残した11 篇と合わせて計26 篇を採用した。

肝硬変患者でAFP が徐々に増加し,超音波で結節を検出された場合に肝細胞癌を疑うが 1),肝硬変を背景とした場合,一般的なスクリーニング検査である非造影超音波による乏血性高分化型肝細胞癌と異型結節の識別感度は低い 2)。ソナゾイド® 造影超音波はスクリーニング目的の非造影超音波に引き続いて極小血管新生やKupffer 相欠損域を評価可能であり 3),早期肝細胞癌と境界病変の鑑別に有用との報告がある 4, 5)

Dynamic CT における小型肝細胞癌の検出には平衡相が重要である 6)。MRI は組織コントラストが高く非造影検査でも高い腫瘍肝コントラストが得られるものの肝腫瘍の質的診断には限界があり,造影剤併用が必要である。Gd-EOB-DTPA 造影MRI は肝細胞癌の診断に優れ 7),dynamic MDCT と比べて肝細胞癌の検出に有利である 8)。肝切除症例において組織学的に早期肝細胞癌と診断された30 結節のdynamic MDCT とGd-EOB-DTPA 造影MRI の診断能に関するROC 解析では,Az 値,感度,陰性的中率においてGd-EOB-DTPA 造影MRI(0.98~0.99,94~97%,96.8~98.1%)は,dynamic MDCT(0.87,58~68%,80.7~84.4%)より有意に高いと報告された 9)。また,病理学的に肝細胞癌と異型結節と診断された86 結節を対象としたdynamic MDCT とGd-EOB-DTPA 造影MRI の画像病理比較研究では,2 cm 以下の多血性肝細胞癌の診断能はGd-EOB-DTPA 造影MRI がdynamic MDCT よりも有意に高く,乏血性の結節の検出感度でもGd-EOB-DTPA 造影MRI(95%)は,MDCT(61%)よりも有意に高かった 10)。この他のdynamic MDCT とGd-EOB-DTPA 造影MRI の診断能に関する検討でも,古典的肝細胞癌の診断能はほぼ同等かGd-EOB-DTPA 造影MRI が高かったが,特に2 cm 以下の小型肝細胞癌や乏血性肝細胞癌や早期肝細胞癌ではGd-EOB-DTPA 造影MRI 肝細胞相の診断能が高いとされている 11-16)

造影超音波とGd-EOB-DTPA 造影MRI の診断能を,病理学的に診断された進行性肝細胞癌40 結節,乏血性高分化型肝細胞癌33 結節,異型結節9 結節について比較した報告では,造影超音波Kupffer 相で低エコーを示した異型結節は0%,乏血性高分化型肝細胞癌は9%であったのに対して,Gd-EOB-DTPA 造影MRI の肝細胞相で低信号を示した異型結節は33%,乏血性高分化型肝細胞癌は94%であり,乏血性高分化型肝細胞癌の検出能はソナゾイド® 造影超音波よりGd-EOB-DTPA 造影MRI が高いとされている 17)

なお,Gd-EOB-DTPA 造影MRI の肝細胞相で低信号を示す小型乏血性結節の一部は多血性肝細胞癌へ移行し 18-20),径1 cm 以上や脂肪を含む結節では多血化のリスクが高い 21)。また早期肝細胞癌と異型結節の鑑別において,Gd-EOB-DTPA 造影MRI は非常に高い診断能を示している 9)との報告がある一方,困難とする報告もある 10)

以上より,早期肝細胞癌検出の診断能は,dynamic MDCT や造影超音波よりもGd-EOB-DTPA 造影MRI が高い。

解説

肝細胞癌サーベイランスの有効性が示されるためには,定期的なスクリーニングで早期肝細胞癌が発見され,その結果としてより根治性の高い治療が施行され,予後の改善がみられることが必要である。早期肝細胞癌は一般的に2 cm 以下の境界不明瞭な結節型の乏血性高分化型肝細胞癌で,組織学的には間質浸潤の有無が重要であるとされている。

肝細胞癌スクリーニングに通常用いられる画像検査としては,超音波,CT,MRI がある。超音波で結節が検出されれば,細胞外液性造影剤を使用したdynamic MDCT により評価が行われる。これは肝細胞癌の多段階発育において肝結節と周囲肝実質の間に動脈血流,門脈血流の供給差が生じることを利用している。ただし,高度異型結節は,部分的に細胞密度が周囲肝の2 倍以上を示すか,わずかな構造異型を有する結節で,結節内血流評価による早期肝細胞癌と異型結節の診断にはオーバーラップが存在し,両者の画像診断における鑑別には限界がある。近年は,ソナゾイド® 造影超音波,Gd-EOB-DTPA 造影MRI による評価が多く行われている。肝結節内の血流評価とKupffer 細胞機能評価を同時に行えるソナゾイド® 造影超音波では,血管相(動脈相)での肝結節内血流動態,後血管相(Kupffer 相)における造影剤取り込み程度を評価でき,鋭敏な血流評価およびKupffer 細胞機能評価をリアルタイムに行える点で有用性が高い。早期肝細胞癌では腫瘍内の門脈および動脈血は減少し乏血性のため,ソナゾイド® 造影超音波の血流イメージでは非腫瘍部と比較して低エコーとなるはずであるが,非常に微妙な血流変化のため画像所見および診断能については一定の見解を得ていない。また,早期肝細胞癌ではKupffer 細胞も非腫瘍部と同程度か軽度減少するのみで,ソナゾイド® 造影超音波のKupffer 相でも欠損域として描出されるものは多くはない。

Gd-EOB-DTPA 造影MRI では,dynamic 検査としては細胞外液性造影剤と同じく動脈相や門脈相の血流情報が得られ,肝細胞相といわれる造影剤注入後10~20 分後の撮像では,肝細胞機能の差による造影能の違いから早期肝細胞癌を含む肝細胞癌の検出にも有用と考えられる。Gd-EOB-DTPA 造影MRI 肝細胞相の信号強度は境界病変の悪性度と相関し,異型結節に比べ早期肝細胞癌でより強い低信号を示し検出率が高かった。Gd-EOB-DTPA 造影MRI の肝細胞相は従来の診断法に比較して,異型結節から早期肝細胞癌などの多段階発癌の初期の段階での変化を極めて鋭敏に描出し,肝細胞癌と境界病変の鑑別診断に有用とのコンセンサスレポートがある 22)。ただし,肝硬変患者で肝細胞機能低下が著明である場合,肝実質造影効果が不十分となり,肝細胞癌の検出が不良(偽陰性)となることがあるため注意が必要である。近年,MRI において質の高い拡散強調像の撮影が可能な施設も増加傾向である。2 cm 以下の肝細胞癌や乏血性肝細胞癌の画像所見,診断能に関する検討で,Gd-EOB-DTPA 造影MRI の肝細胞相での低信号と拡散強調像での高信号で,信頼の高い診断が可能となるとの報告がある 23, 24)が,2 cm 以下の肝細胞癌の診断にGd-EOB-DTPA 造影MRI に拡散強調像追加での正診率改善は認めなかったとの報告 25)もあり,早期肝細胞癌の検出における拡散強調像の有用性は現時点では,十分なエビデンスは存在しない。Gd-EOB-DTPA 造影MRI 肝細胞相での低信号を呈する乏血性結節は,造影超音波を併用することで多血性結節と判定され肝細胞癌と診断されることがあり,造影超音波はGd-EOB-DTPA 造影MRI と相補的に用いられる可能性がある 26)

本CQ の採用論文ではGd-EOB-DTPA 造影MRI の早期肝細胞癌に対する診断能は,dynamic MDCT や造影超音波よりも高い傾向であるものの,この結果は質の高いダイナミック・スタディが施行可能なMRI 装置が使用されることが前提であり,低磁場や十分な診断能を有さないMRI 装置は早期肝細胞癌の診断に適していないことを認識しておく必要がある。このような質の高いダイナミック・スタディが施行可能なMRI 装置は,超音波装置やMDCT 装置と比較して普及率は十分とはいえない。MRI はCT と比べると検査時間が長く,スループットが悪いため,Gd-EOB-DTPA 造影MRI は肝細胞癌スクリーニングプログラムとして多数の患者を検査することに限界がある。造影超音波は煩雑で術者の熟練度を要するため,現時点で施行可能な施設は限られている。慢性肝障害患者が多い本邦においては,肝細胞癌検索の画像診断の主体を通常の超音波やdynamic MDCT とする診療体制が現実的である。

本CQ における推奨については,Gd-EOB-DTPA 造影MRI における小型肝細胞癌や乏血性肝細胞癌の高い診断能が多くの文献により示されていることから,改訂委員会の賛成多数により強い推奨と決定された。

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CQ9
腎機能および肝機能低下患者における肝腫瘍の診断には,どの検査法が有用か?

推奨の強さ弱い
腎機能低下患者における造影CT や造影MRI は,eGFR が30~60 mL/min/1.73 m2 ではGd-EOB-DTPA 造影MRI,30 mL/min/1.73 m2 未満ではSPIO 造影MRI,透析患者ではSPIO 造影MRI やdynamic CT の施行を考慮してもよい。
推奨の強さ弱い
腎機能が低下し造影CT や造影MRI が施行できない患者において,拡散強調像を含めた非造影MRI やソナゾイド® 造影を含めた超音波は,安全に施行でき,有用である。
(Child-Pugh 分類C 相当の肝機能低下患者における造影CT/MRI について,検査や造影剤の適切な選択に関する研究は不十分である。)

背景

腎機能低下患者においてヨード造影剤やGd 造影剤は使用が制限され,肝機能低下患者において肝特異性造影剤の増強効果が低下するため,腎機能や肝機能が低下した患者においては検査の制限や診断能の低下が懸念される。今回,これらの患者に対する肝腫瘍の診断に有用な検査について検討した。

サイエンティフィックステートメント

第3 版のCQ14 を基に本CQ は作成された。今回の改訂に際し,第3 版と同様の検索式を用いて,2012 年1 月1 日から2016 年6 月30 日に発表された論文について検索し,257 篇が抽出された。そのなかから「横断研究以上のエビデンスレベルで多数症例のスタディを採用する」という方針の下に一次選択で31 篇,二次選択でそのなかから9 篇の論文を新たに採用した。第3 版の6 篇については,特殊な手法を用いた1 篇を新たな論文に置き換える形で除外し,5 篇を残した。合計14 篇を採用した。

拡散強調像は造影MRI を凌駕することはできないものの,一定の有用性が示されている 1-5)。超音波用造影剤であるペルフルブタンマイクロバブル(ソナゾイド®)や肝特異性MRI 造影剤であるSPIO(リゾビスト®)は,腎機能に影響を与えず,腎機能低下による副作用増加も知られていない(添付文書参照)。

透析患者におけるGd-EOB-DTPA(EOB・プリモビスト®)のクリアランスは有意に低下するうえに,肝実質の増強効果も低下する 6)ため,投与は勧められない。腎機能低下患者においてdynamic CT やdynamic MRI の施行を考慮する際,適切な造影剤や検査法の選択を推定糸球体濾過量(estimated glomerular filtration rate;eGFR)に応じて検討した研究は不十分である。

肝機能低下患者におけるGd-EOB-DTPA 造影MRI は,一定の有用性が示されている 7)ものの,肝細胞相における増強効果が低下し 8-11),肝機能が悪いほど診断能が低下する 7, 12)。肝機能低下患者ではSPIO のいわゆるKupffer 相の増強効果も低下し 13),造影超音波の解釈も難しくなる 14)。肝機能低下患者では,拡散強調像による肝細胞癌診断能も低下する 7)。Child-Pugh 分類C に相当するような肝機能低下患者における,検査や造影剤の適切な選択に関する研究は不十分であり,暫定的な推奨も困難である。

解説

腎機能低下患者にヨード造影剤やGd 造影剤がもたらすリスクの各論は本ガイドラインの目的から外れるので,他のガイドラインを引用するにとどめる。eGFR が60 mL/min/1.73 m2 未満の腎機能低下患者においてはヨード造影剤投与による造影剤腎症のリスクが上昇する(http://www.esur.org/guidelines/en/index.php)。糖尿病・脱水・うっ血性心不全・痛風・70 歳以上・NSAIDs 服用中などの危険因子が加わると,リスクがさらに高まると考えられている。

腎機能低下患者においては,Gd 造影剤による腎性全身性線維症(nephrogenic systemic fibrosis;NSF)発症リスクが上昇する〔「腎障害患者におけるガドリニウム造影剤使用に関するガイドライン」(http://www.radiology.jp/content/files/649.pdf)〕。このため,透析患者,eGFR が30 mL/min/1.73 m2 未満の慢性腎臓病,急性腎不全の患者では,原則として細胞外液性Gd 造影剤およびGd-EOB-DTPA を投与しない。利益と危険性を検討したうえで,やむを得ずGd 造影剤を使用しなければならない場合には,NSF 発症報告の多いガドジアミド(オムニスキャン®)やガドペンテト酸ジメグルミン(マグネビスト®)を避ける。

腎機能低下患者において,肝臓精査目的のdynamic CT ないしdynamic MRI の施行を考慮する際,適切な造影剤や検査法の選択をeGFR に応じて検討した研究は不十分である。このため,本ガイドラインにおける推奨は暫定的なものにとどまる。eGFR が30~60 mL/min/1.73 m2では,NSF 発症リスクがあまり高くないことを勘案して,診断能の高いGd-EOB-DTPA 造影MRI を推奨する。eGFR が30 mL/min/1.73 m2 未満ではNSF 発症リスクが高まるので,Gd-EOB-DTPA 造影MRI とSPIO 造影MRI のいずれを推奨すべきか判断が難しいが,Gd-EOB-DTPA の添付文書に「本剤の投与を避け」との記載があることや頻回投与の可能性が高いことを勘案し,SPIO 造影MRI を推奨する。透析患者では,Gd 造影剤を避け,SPIO 造影MRI ないしdynamic CT を施設の事情で選択することを推奨する。

肝機能低下患者においてGd-EOB-DTPA 造影MRI は一定の有用性が示されているが,肝細胞相における経時的な肝実質増強効果の上昇が観察されにくく,Child-Pugh 分類C 相当やICG-R15 が高値の場合はその傾向が強いと報告されている 9, 11)

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CQ10
肝細胞癌の病期診断に頭部MRI,胸部CT,骨シンチグラフィー,FDG-PET は必要か?

推奨の強さ弱い
肝外転移の危険因子を有する肝細胞癌患者に対して胸部CT,FDG-PET を施行することは推奨できる。
推奨の強さ弱い
骨シンチグラフィーの施行はFDG-PET が施行できない状況であれば考慮してもよい。
推奨の強さ弱い
神経学的所見や肺転移のある肝細胞癌患者に対して,脳転移検索目的の頭部CT/MRI は,施行することを考慮してもよい。

背景

肝細胞癌に対する局所的な治療の適応において,肝外転移の有無は重要である。肝外転移の危険因子を有する肝細胞癌患者について,頻度の高い転移先を肝内病変の治療の前に検索することは有用と考えられる。本CQ ではどのような患者にどのような方法で肝外転移を検索することが有用か検討する。

サイエンティフィックステートメント

本CQ は第3 版のCQ16 と同じCQ である。今回の改訂では,第3 版と同様の検索式を用いて,2012 年1 月1 日から2016 年6 月30 日に発表された論文について検索し,287 篇の文献が抽出された。そのなかから「肝細胞癌の病期診断において頭部MRI,胸部CT,骨シンチグラフィー,FDG-PET による診断について論じており,症例数が50 以上」の文献を選択する方針の下に一次選択で32 篇,二次選択で9 篇の文献を新たに採用し,第3 版の12 篇と合わせて計21 篇を採用した。

肝細胞癌の肝外転移の頻度は初発時点で1.0~2.3%と低いと考えられているが 1, 2),無症状の肝外転移が15.4%に認められるとした海外からの報告もある 3)。治療後の経過観察中に肝外転移が出現する頻度は21~24%と報告されている 4, 5)。転移先別の頻度は,肺が6~29%,リンパ節が5~20%,骨が2~10%,副腎が1~10%,脳が0.2~0.6%である 2, 5, 6)。肝外転移の危険因子として,肝内病変の進行,門脈腫瘍栓,PIVKA-II≧300 mAU/mL,AFP>100 ng/mL,血小板数≦130×103/μL,食道静脈瘤のないこと,ウイルス性肝炎,が報告されている 6-8)

5 cm 以下単発や3 cm 以下・3 個以下の肝細胞癌について,転移検索目的に胸部CT や骨シンチグラフィーを施行しても新たな転移が見つかることは稀で,むしろ偽陽性による損失が問題となる 9-11)

肝細胞癌の骨転移は一般に溶骨性で,転移先のおよそ半数は椎体である 1)。肝細胞癌骨転移の全身検索には,骨シンチグラフィー 12)およびFDG-PET 13-16)が有用である。肝細胞癌骨転移は骨シンチグラフィーでは偽陰性率が比較的高く 11),骨転移検索に関してはFDG-PET が骨シンチグラフィーに対して感度,特異度とも優れている 15, 16)

肺転移の検出に関しては胸部CT がFDG-PET よりも検出率が高いと報告されている 16)

FDG-PET は,その他の肝外転移の全身検索にも有用である 17)が,脳転移の感度は低い 13, 14)。FDG-PET による肝細胞癌の病期診断では9.8%に肝外転移が発見されたと報告されている 18)。再発肝細胞癌に対するFDG-PET による肝外転移検索で感度76.6%,特異度98.0%としたメタアナリシスが報告されている 19)

また,FDG-PET による肝内病変へのFDG 集積は肝細胞癌の独立した予後因子であるとの報告もある 20)

肝細胞癌の脳転移は頻度が低い 2, 5, 6, 21)うえに,ほとんどの脳転移は肺転移を合併する 1)

解説

肺転移の検索方法としては,胸部CT が標準的に用いられている。腹部dynamic CT に加えて胸部CT を施行すれば,肝内病変の評価に加えて頻度の高い肝外転移のほとんどをカバーすることができる。

肝細胞癌骨転移の全身検索において骨シンチグラフィーは有用だが,肝細胞癌骨転移はときに低集積となる欠点も知られている。FDG-PET は肝細胞癌骨転移の診断において骨シンチグラフィーよりも優れていることが示され,さらにPET/CT のCT 情報による骨折や圧迫骨折の情報も評価可能である。また,骨転移以外の肝外転移の検出も可能であるためFDG-PET が施行可能な状況であれば骨シンチグラフィーよりも優先されると考えられる。FDG-PET は骨転移を含めた肝細胞癌肝外転移の診断能に優れており,腹部病変や肺転移だけでは説明のつかない腫瘍マーカー上昇をみた場合に積極的に施行することは妥当であろう。

ただし,FDG-PET は高額な撮像機器および半減期の短い放射性核種を必要とするため現状では施行可能な施設が限られるため,FDG-PET の施行が難しい場合には骨シンチグラフィーが代替検査として考慮される。

以上より,肝細胞癌の病期診断において胸部CT,骨シンチグラフィー,FDG-PET は有用であると考えられるため,肝外転移を検索する必要がある場合にはこれらの検査が有用であると改訂委員会において決定した。ただし大規模なRCT やメタアナリシスによるエビデンスの構築は十分であるとはいえず,推奨度についてはいずれも弱い推奨とした。また,脳転移検索の有用性に関するエビデンスも乏しい状況であるが,有症状の場合や肺など他臓器転移の状況からリスクの高い症例については脳転移検索が通常行われているという本邦の実情があり,脳転移検索については弱い推奨が妥当であると改訂委員会の賛成多数により決定した。

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第2 章 治療アルゴリズム

はじめに

本ガイドラインで最も多く引用され,臨床的に汎用されてきたのが「エビデンスに基づく治療アルゴリズム」である。2005 年版(初版)で肝障害度,腫瘍数,腫瘍径の3 因子を基に設定され,最新のエビデンスを採用し治療方法が決められてきた。幕内雅敏初代班長の統括の下,治療法は最大2 個までの方針が示され,本邦における肝癌治療の実情に即したものが採択された。初版の基となったエビデンスはわずか3 篇(Arii らの肝切除と経皮的局所療法,Llovet らの経肝動脈塞栓療法,Mazzaferro らの肝移植)の論文であったが,版を重ねるごとに追加され,2013 年版(第3 版)では10 篇が採用された。アルゴリズムの内容では2009 年版(第2 版)で脈管侵襲,肝外転移がある場合の治療方法が付記され,第3 版で治療順位を加えるというマイナーチェンジが行われたが,基本的治療方針に大きな変更はみていない。

一方,本邦の専門家の意見を基にして作成されたアルゴリズムとして「コンセンサスに基づく治療アルゴリズム」が2007 年に発表され,特に多くの内科医に支持されてきた。肝外病変,肝予備能,脈管侵襲,個数,腫瘍径の5 因子によって推奨治療が決定されたが,エビデンスの乏しい治療法であっても先行して採用し,2015 年版(第3 版)までリバイスが加えられた。欧米で発表されたBCLC ステージングシステムの治療アルゴリズムにならい,1 つのカテゴリーに多数の治療法が盛り込まれ,2015 年版では同一の条件で5 種の治療法が併記推奨されている。

今回の改訂では,日本肝臓学会主導により「エビデンスに基づくアルゴリズム」と「コンセンサスに基づくアルゴリズム」を1 本化する方針となった。論文ベースのエビデンス,実臨床で得られたコンセンサスおよびGRADE システムを加えて新規の治療アルゴリズムを作成することとなった。最大変更点はアルゴリズムの基礎となるCQ を設定したことである。CQ11~16 において腫瘍条件,肝機能条件を規定し,過去にさかのぼり文献検索を行った。キーワードを用いた一次選択では各CQ に168~578 篇と大量の文献が候補として挙げられ,最終的に4~19 篇へ絞り込む作業が行われた。

2017 年版アルゴリズムは肝予備能,肝外転移,脈管侵襲,腫瘍数,腫瘍径の5 因子に基づいて推奨治療が選択されている。本治療アルゴリズムが多くの臨床家に使用され,よりよい形にブラッシュアップされていくことが今後の課題である。

肝細胞癌治療アルゴリズムの解説

【推奨】

肝細胞癌の病態に応じた治療法の選択基準として肝癌診療ガイドライン治療アルゴリズムが推奨される。

【解説】

肝細胞癌の治療に関するアルゴリズムを,肝予備能・肝外転移・脈管侵襲・腫瘍数・腫瘍径の5 因子を基に設定した。肝予備能評価はChild-Pugh 分類に基づいて行い,肝切除を考慮する場合はICG 検査を含む肝障害度を用いる。肝外転移,脈管侵襲,腫瘍数,腫瘍径は治療前画像診断に基づいて判定する。

Child-Pugh 分類A またはB の症例においては,肝外転移および脈管侵襲を認めない場合は以下の①~③に示す治療が推奨される。①腫瘍数1~3 個,腫瘍径3 cm 以内ならば肝切除またはラジオ波焼灼療法(RFA)が選択される。個数が1 個ならば腫瘍径にかかわらず第一選択として肝切除が推奨される(CQ11 参照)。②腫瘍数1~3 個で腫瘍径が3 cm 超ならば第一選択として肝切除,第二選択として肝動脈塞栓療法(TACE/TAE)が推奨される(CQ1112 参照)。③腫瘍数が4 個以上ならば第一選択としてTACE,第二選択として肝動注化学療法または分子標的治療薬が推奨される(CQ13 参照)。

次に,Child-Pugh 分類A で肝外転移がある場合は分子標的治療薬が推奨される(CQ15-2 参照)。肝外転移がなく脈管侵襲を伴う場合は肝機能,腫瘍条件,脈管侵襲の程度に応じて,個別に治療戦略が立てられているのが現状である。現在報告されている治療法のなかからエビデンスレベルが高く,本邦で扱いやすいものを採用するのが妥当と考えられ,塞栓療法,肝切除,肝動注化学療法,分子標的治療薬が推奨される(CQ16 参照)。

Child-Pugh 分類C の症例においては,ミラノ基準内(腫瘍数が3 個以下で腫瘍径が3 cm 以内および腫瘍が1 個ならば腫瘍径が5 cm 以内)で,患者年齢が65 歳以下ならば肝移植が推奨される(CQ14 参照)。一方,Child-Pugh 分類C で移植不能ならば緩和ケアが推奨される。なお,移植不能とは腫瘍条件や肝機能条件が不適当なだけではなく,適切なドナーが得られず移植が実施できない場合も含める。また,移植以外の治療については,症例と治療方法は慎重に選択する必要があるが,治療が有効な場合があるという報告もある。現状では移植以外の積極的な治療を推奨するまでには至らないと考えられる。

CQ11
単発肝細胞癌に対し,推奨できる治療法は何か?

推奨の強さ強い
第一選択として肝切除が推奨される。腫瘍径3 cm 以内では,第二選択として焼灼療法も推奨される。

背景

いくつかのアルゴリズムで単発肝細胞癌に対する推奨治療が示されている。これまでのエビデンスを基にどのような治療法が有効であるか検討した。

サイエンティフィックステートメント

1982 年1 月から2016 年6 月までに報告された論文について,肝切除,外科切除,RFA,単発,腫瘍数,腫瘍径,Child-Pugh 分類,肝障害度をキーワードとして検索し,単発肝細胞癌に対する治療成績を含む論文227 篇のなかから15 篇を一次選択した。これらのなかから結論が明確でないものを11 篇除外し,検索ワードに該当しないが本邦の実情に即するものを6 篇ハンドサーチで追加した10 篇を採用した。

肝機能が良好で遠隔転移,脈管侵襲を伴っていない肝細胞癌であれば根治的治療の適応となる。肝機能不良例は移植または緩和ケアの適応となる。

これまで本ガイドラインでは肝機能評価として肝障害度A およびB の一部症例では肝切除,RFA が施行可能と推奨してきた。一方,欧米ではChild-Pugh 分類のB,C および門脈圧亢進症を伴った症例では肝切除を除外し 1),BCLC システムでも肝切除以外の治療を推奨している 2)。本邦のIshizawa らは門脈圧亢進症を伴った肝細胞癌に対しては小領域肝切除術により安全に施行できることを報告している 3)

腫瘍個数については単発と多発との治療成績を比較した報告では単発における肝切除の有用性が報告されている 4)。Arii らは日本肝癌研究会データを用いて検討し,肝障害度A,B 症例における肝切除とエタノール注入療法の成績を比較検討し肝切除の有用性を報告している 5)。さらにHasegawa らも同様に日本肝癌研究会データを用いて単発症例における肝切除とRFA とを比較検討し3 cm 以内ならば有意に肝切除後の予後が良好であることを報告している。したがって単発症例に対する治療選択として,第一選択として肝切除,第二選択としてRFA も選択されると報告している 6)

肝切除とRFA を比較したランダム化比較試験(RCT)論文は4 篇報告されており 7-10),2 篇では肝切除が有意に予後良好であったが,2 篇では両群に有意差を認めなかった。いずれも研究デザインや背景因子に問題があり,本邦の実情と乖離している。

解説

肝細胞癌の治療方針を選択するにあたり肝予備能評価はChild-Pugh 分類に基づいて行い,肝切除を考慮する場合はICG 検査を含む肝障害度を用いる。肝機能良好ならば肝切除を推奨している。しかし,本邦と欧米では門脈圧亢進症例(食道静脈瘤の存在または血小板数10 万/μL 以下)に対する治療方針が異なっている。すなわち,欧米のBCLC システムでは門脈圧亢進症例の肝切除を避け,移植やRFA を選択するよう推奨している 2)。本邦では術前の内視鏡的食道静脈瘤治療や系統的亜区域切除などを組み合わせることで安全に肝切除が施行されている。

Hasegawa らは肝切除5,361 例,RFA 5,548 例,エタノール注入2,059 例を後ろ向きに検討し前述の推奨を報告している 6)。しかし,手術と手術以外の治療法のどちらが有用かについては,いまだ明確な前向きな検討によるエビデンスは得られていない。このことから,単発肝細胞癌に対して第一選択として肝切除,3 cm 以下のものに関しては第二選択として焼灼療法という推奨とした。また,上記Hasegawa らの報告は日本肝癌研究会データに基づく大規模解析でありエビデンスレベルも高いことから,推奨度は「強い推奨」とした。一方,既報のRCT は本邦の実情にそぐわず,肝切除とRFA の有効性に関するRCT であるSURF 試験(UMIN000001795)の結果に期待が寄せられている。

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SURF 試験:Efficacy of Surgery vs. Radio-frequency ablation on primary hepatocellular carcinoma trial

CQ12
2,3 個肝細胞癌に対し,推奨できる治療法は何か?

推奨の強さ強い
腫瘍径3 cm 以内では肝切除または焼灼療法が推奨される。3 cm 超では第一選択として肝切除,第二選択として塞栓療法が推奨される。

背景

いくつかのアルゴリズムで2 個および3 個の肝細胞癌に対する推奨治療が示されている。これまでのエビデンスを基にどのような治療法が有効であるか検討した。

サイエンティフィックステートメント

1982 年1 月から2016 年6 月までに報告された論文を対象に肝切除,外科切除,RFA,治療アルゴリズム,腫瘍数,腫瘍径,Child-Pugh 分類,肝障害度をキーワードとして検索,2 個および3 個の肝細胞癌に対する治療成績を含む論文532 篇のなかから13 篇を一次選択した。これらのなかから結論が明確でないものを8 篇除外し,検索ワードに該当しないが本邦の実情に即するものを4 篇ハンドサーチで追加した9 篇を採用した。

CQ11 と同様にChild-Pugh 分類A(および一部B)で脈管侵襲,肝外転移のない症例が根治的治療の対象となる。

腫瘍径10 cm 以上の肝細胞癌に対する肝切除では5 年生存率は20~30%と報告され,腫瘍の大きさによる手術適応の制限はないものと考えられる 1-3)。腫瘍数2 個以上の症例に対する肝切除と単発症例に対する肝切除を比較した検討では,単発の長期成績が良好であるが複数個に対する切除禁忌となる要素は認められない 4)

一方,RFA の治療適応は3 cm 以下,3 個以下とする報告が多い。すなわちMurakami らは3 cm 以下,3 個以下あるいは5 cm 以下単発の肝細胞癌患者に対してRFA あるいは肝動脈化学塞栓療法(TACE)で治療された症例について局所再発率はRFA が有意に優れていた 5)。この結果をもとに3 cm 以下,3 個以下をRFA の適応としている。Hasegawa らは2,3 個の肝癌を2 cm 未満と2~3 cm に分類し肝障害度A,B 別の8 群間で予後を比較した。肝障害度A,2~3 cm 群のみにおいて肝切除の無再発生存率が有意に良好であったが,他の群では差を認めなかった 6)。以上の根拠に基づいて2~3 cm,3 cm 以内では肝切除またはRFA が推奨治療である。

Huang らはミラノ基準内の肝細胞癌について肝切除とRFA の成績をRCT により検討しており,肝切除が有意に予後良好であった 7)。さらに3 cm 以上でも2~3 個の肝機能良好な症例は肝切除の適応であり,第一選択となる。一方,Llovet らはChild-Pugh 分類A,B 症例の多発肝細胞癌に対してTACE を用いたRCT を実施し有効性を示している 8)。したがって,肝切除困難な症例ではTACE が推奨される。

解説

3 個以内の肝細胞癌に対して最も局所コントロールに優れる方法は肝切除であり肝機能が許す範囲内で第一選択となる。一方,3 cm 以下の小型肝細胞癌の場合はRFA も局所コントロールに優れており,現時点では肝切除とRFA との間に長期成績の明確な有意差は認められない。肝切除とRFA に関するメタアナリシスでは肝切除後の生存率が有意に良好であったが 9),本邦の患者背景や医療現状にそぐわない内容であり,さらに検討が必要と考えられる。現在,初発肝細胞癌に対する治療選択の根拠となるエビデンスを確立することを目的とし,肝機能良好(Child-Pugh スコア7 点以下)かつ3 cm 以下,3 個以下の腫瘍条件を満たす初発症例を対象として,肝切除とRFA とのRCT が実施されている(SURF 試験)。2015 年8 月に308 例の登録が終了し症例の追跡中である。

以上より,現時点で得られるエビデンスを基に腫瘍径3 cm 以内では肝切除またはRFA を推奨し,3 cm 超では第一選択として肝切除,第二選択として塞栓療法を推奨する。いずれも大規模データに基づいており臨床的にも普及していることから,強い推奨とした。

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CQ13
4 個以上肝細胞癌に対し,推奨できる治療法は何か?

推奨の強さ強い
第一選択として塞栓療法が推奨される。第二選択として肝動注化学療法または分子標的治療薬が推奨される。

背景

いくつかのアルゴリズムで多発肝細胞癌に対する推奨治療が示されており,本ガイドライン2013年版発行後に新たな知見も散見される。これまでのエビデンスを基にどのような治療法が有効であるか検討した。

サイエンティフィックステートメント

1982 年1 月から2016 年6 月までに報告された論文のなかからTAE,TACE,TAI,ソラフェニブ,治療アルゴリズム,treatment allocation をキーワードとして検索,多発肝細胞癌に対する治療成績を含む論文497 篇のなかから10 篇を一次選択した。これらのなかから結論が明確でないものを7 篇除外し,検索ワードに該当しないが本邦の実情に即するものを2 篇ハンドサーチで追加した5 篇を採用した。

腫瘍数と肝切除後の成績とを検討した報告では複数個切除で長期成績は低下するが,肝予備能と切除範囲を適切に判断することで安全に肝切除を施行できる 1)。しかし,腫瘍数に基づく切除限界に関する明確なエビデンスは見当たらず,一般的に局所治療で推奨されている3 個以下を肝切除適応としている。したがって4 個以上の場合は肝切除,RFA 以外の治療法が推奨される。

Llovet らはChild-Pugh 分類C を除く多発肝細胞癌112 例を肝動脈塞栓療法(TAE)37 例,TACE 40 例,対症療法35 例に群分けし予後を比較したところ,TACE 群は有意に予後良好であった 2)。Takayasu らはTACE を施行された4,966 例の肝細胞癌患者を腫瘍数,腫瘍径,肝機能で層別化し比較したところ,本ガイドライン第3 版の適応は妥当であると報告している 3)。一方,Nouso らは進行肝細胞癌に対して5-FU とシスプラチンを用いた肝動注化学療法の有効性を検討し,プロペンシティスコアでマッチさせた比較で,肝動注化学療法群は未治療群に比較して有意に良好な生存が得られたと報告している 4)。また,Sorafenib Hepatocellular Carcinoma Assessment Randomized Protocol(SHARP)試験では切除不能およびTACE 不応進行症例についてソラフェニブ投与群とプラセボ投与群の二重盲検ランダム化比較試験が行われ,ソラフェニブ投与群の有効性が示された 5)。これらの結果から4 個以上の症例には第一選択としてTACE/TAE が推奨され,TACE/TAE 不応の場合は第二選択として肝動注化学療法または分子標的治療薬が有効であると考えられる。

解説

多発肝細胞癌に対して肝切除,化学療法併用肝切除,TACE などが有効という報告は散見されるがいずれも少数のケースレポートであったり対照群の設定が不明確であったりする。腫瘍数に基づいた治療限界に関するエビデンスレベルの高い報告はいまだ見当たらない。一般的に肝切除やRFA では3 個以下が妥当な治療限界と認識されている。多数症例を層別化した比較試験により腫瘍数が4 個以上ならばTACE/TAE を第一選択とするのが妥当と考えられる。また,TACE/TAE 不応の症例では肝動注化学療法や分子標的治療薬を採用するのが適当である。以上のエビデンスに基づいて,4 個以上肝細胞癌に対しては第一選択としてTACE/TAE を推奨し,第二選択として肝動注化学療法または分子標的治療薬を推奨した。いずれの治療法も臨床的に汎用され十分なコンセンサスが得られており強い推奨とした。一方,肝外転移を有する場合や門脈腫瘍栓を有する場合には,これらの治療法は妥当とはいえず,他CQ を参照されたい。

参考文献

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CQ14
肝障害度C(Child-Pugh 分類C)の肝細胞癌に対し,推奨できる治療法は何か?

推奨の強さ強い
肝障害度C(Child-Pugh 分類C)の肝細胞癌は,ミラノ基準内であれば肝移植が推奨される。

背景

肝障害度C(Child-Pugh 分類C)の肝硬変は,予後不良の末期肝臓病であり,各種治療への忍容性も低い。このため,肝細胞癌合併のいかんによらず,肝移植のみが予後に貢献できる治療とされている。しかし,実際の臨床現場では,近年著しく進歩した低侵襲な治療が,肝障害度C(Child-Pugh 分類C)の肝細胞癌に対して行われている場合も少なくない。そのため,肝障害度C(Child-Pugh 分類C)の肝細胞癌に対して推奨できる治療について検討した。

サイエンティフィックステートメント

1982 年1 月から2016 年6 月までに報告された肝障害度C(Child-Pugh 分類C)または末期肝硬変に合併した肝細胞癌の治療成績を含む論文409篇のなかから47篇を一次選択した。このうち症例数の少ない報告を除外し,治療の対象と選択基準が明確な4 篇を採用した。

Mazzaferro らはミラノ基準内(脈管侵襲と肝外転移なし,単発では腫瘍径5 cm 以下,多発では腫瘍数3 個以下で腫瘍径が3 cm 以下)の肝細胞癌を対象に肝移植を行い,Child-Pugh 分類C 15 例の移植後生存率が1 年:93%,3 年:93%,4 年:80%,また無再発生存率が1 年:93%,3 年:86%,4 年:86%と,Child-Pugh 分類A/B の移植成績と同等であったことを報告している 1)。また,本邦の多施設での肝細胞癌に対する生体肝移植施行例をまとめた報告では,Child-Pugh 分類C 156 例の移植後生存率が1 年:75.1%,3 年:68.7%,再発率が1 年:9.9%,3 年:16.1%であり,Child-Pugh 分類A/B と同等の成績が示されている 2)。一方,ミラノ基準内の肝細胞癌に対する経皮的エタノール注入(PEI)と肝移植の成績を多施設共同で後ろ向きに調査した報告では,Child-Pugh 分類C では,平均生存期間が肝移植群95.3 カ月に対してPEI 群31.5 カ月,無再発期間が肝移植群139.0 カ月に対してPEI 群34.8 カ月であり,PEIに比べて肝移植の成績が優れていた 3)。また,塞栓療法に関する443 例の肝細胞癌に対する後ろ向きの検討では,Child-Pugh 分類C では塞栓療法後6 週以内の死亡および緊急肝移植の危険性がChild-Pugh 分類A の5.4 倍,不可逆的な肝障害が出現する危険性が59 倍であったと報告されている 4)

解説

肝細胞癌に対する肝移植は,腫瘍進行度がミラノ基準内であれば良好な予後が期待できる。欧米での肝細胞癌に対する移植は,背景肝の状態を問わないため,代償期肝硬変の患者が一定数含まれた報告である。しかし,非代償性肝硬変に合併した肝細胞癌に対する本邦の移植成績も欧米からの報告と同様に良好であり,肝障害度C(Child-Pugh 分類C)の肝細胞癌は,ミラノ基準内であれば肝移植が推奨されると結論した。

その他の既存の治療については,肝障害度C(Child-Pugh 分類C)の肝細胞癌に対して安全に行い得るかどうか,また予後に貢献できるかが問題となる。肝障害度C(Child-Pugh 分類C)の肝細胞癌に対する肝切除は,まとまった報告がなく,一般に適応外として取り扱われていると考えられる。局所療法のなかでPEI に関しては,治療後短期の生存曲線は肝移植を若干上回るものの,最終的な予後は肝移植と比較して不良であった。この結果からは,短期的な治療安全性は問題ないものの,長期的な治療効果には乏しいと判断した。近年局所療法の主体となっている焼灼療法に関するまとまった報告は,今回の検索範囲では認められなかった。塞栓療法の長期生存に関する報告はなかったが,今回検索した論文の結果から,肝障害度C(Child-Pugh 分類C)の肝細胞癌に対する施行は合併症の危険性が高いと判断した。分子標的治療薬に関する報告は限られたものしか認められなかった。以上から,肝移植以外の治療を肝障害度C(Child-Pugh 分類C)の肝細胞癌に推奨するだけの根拠は得られなかった。また,無治療と比較して,肝移植以外の何らかの治療を行った場合に予後改善効果を認めたとする報告も少数認められ,これらを根拠にChild-Pugh 分類C において,肝移植以外の治療選択肢をガイドラインとして示すべきという意見もあった。改訂委員会内で慎重に検討したところ,ほとんどが患者選択バイアスを否定できない報告であり,治療による肝不全や合併症のリスクを考慮すると,移植以外の積極的な治療を推奨するまでには至らないと判断した。Child-Pugh 分類C の移植以外の治療については,症例と治療方法を慎重に選択する必要がある。

参考文献

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CQ15-1
肝細胞癌の骨転移・脳転移に対して放射線治療は有効か?

推奨の強さ強い
骨転移に対して疼痛緩和目的の放射線治療を行うよう推奨される。
推奨の強さ強い
脳転移に対しては全脳照射と定位照射の両方あるいは一方を用いて治療を行うよう推奨される。

背景

転移性脳腫瘍および転移性骨腫瘍に関しては,原発臓器を限定しないで行われたRCT が多数報告されており,放射線治療が標準的に行われている。固形癌に関する限り一般的には,原発臓器や病理組織型によって放射線治療の方針を変えることのエビデンスは確立していない。骨転移・脳転移に対する放射線治療の有効性および意義について,肝細胞癌に限定した特定の治療方針の必要性を検討した。

サイエンティフィックステートメント

第3 版のCQ51 を引き継いで本CQ は作成された。今回の改訂に際し,第3 版と同様の検索式を用いて2012 年から2016 年6 月の文献を検索したところ,168 篇の文献が該当した。これらのなかからタイトルおよび抄録に基づいて52 篇を一次選択し,その後,一次選択した文献の本文の内容を検討した。肝細胞癌の骨転移もしくは脳転移に対する放射線治療成績に関する文献を後ろ向き研究を含めて選択し,また,原発臓器を限定しない骨転移もしくは脳転移を対象としたRCT,システマティックレビューおよびメタアナリシスを選択した結果,12 篇が二次選択され,前版で採択された7 篇と合わせて合計19 篇を採用した。

肝細胞癌のみの骨転移を対象としたエビデンスレベルの高い臨床試験は行われていないが,他臓器原発の癌からの骨転移患者を対象にしたRCT およびそれらの研究を対象としたメタアナリシスから,骨転移による疼痛緩和に対する放射線治療の有効性は一貫して示されている 1-3)。しかし,これらのRCT に肝細胞癌症例が含まれているものはほとんどない。肝細胞癌の骨転移症例に放射線治療を行った後ろ向き解析でも,疼痛緩和の効果は報告されているものの 4-7),他臓器の癌からの骨転移に対する放射線治療と比較して,治療効果が低い傾向や高線量投与での有効性を指摘する報告も複数あり 8-11),一般的な骨転移とは異なる線量分割法での放射線治療が望ましい可能性も示唆されている。

転移性脳腫瘍についても,肝細胞癌のみを対象としたエビデンスレベルの高い臨床試験は行われていない。他臓器原発の癌からの脳転移患者を対象にしたRCT およびメタアナリシスに基づき,全脳照射および定位放射線治療を適切に組み合わせた治療が標準治療として確立している 12-16)。肝細胞癌の脳転移症例を対象にした文献は後ろ向き解析のみしかみられないものの,放射線治療を行うことによって無治療の場合よりも生存期間が延長するとの報告が複数みられる 17-19)

解説

遠隔転移に対する治療に際して重要な点は,腫瘍による症状の緩和および予防である。特に,脳転移例では腫瘍制御が生存に直結することとなるため,適切な治療方針の選択は極めて重要である。原発臓器を限定することなく骨転移・脳転移を組み込んだ放射線治療についてのRCT は多数行われており,それらの結果はほぼ一貫している。一般には放射線治療の適応や線量分割法を,原発臓器や病理組織型によって調整することのエビデンスは乏しく,その点では治療方針に関してのエビデンスは十分に確立していると考えられる。ただしサイエンティフィックステートメントにも示したとおり,肝細胞癌の遠隔転移例を組み込んで行われているエビデンスレベルの高い研究はほとんどなく,肝細胞癌の遠隔転移に対してこれらの記載が当てはまるか否かはわからない。

肝細胞癌のみの骨転移もしくは脳転移を対象とした報告は後ろ向き研究がいくつかみられるのみで,エビデンスは限られているが,放射線治療の意義を否定する文献はみられず,他の臓器の癌の骨転移・脳転移と同様の基準で適応を決めてかまわないと考えられる。ただし,ほかの原発臓器の癌を対象とした放射線治療よりもその成績が低い傾向を示し,治療強度を上げることを提唱する文献が複数みられる。しかし,特定の線量分割法が優れるとする報告も認められない。

これらのことから,骨転移に対して疼痛緩和目的の放射線治療を行うよう推奨される,脳転移に対しては全脳照射と定位照射の両方あるいは一方を用いて治療を行うよう推奨されるとした。これらの推奨度は,肝癌診療ガイドライン改訂委員会の推奨決定会議にて,高いエビデンスはないものの,臨床的な妥当性やメリットを考慮され全員一致で,「強い推奨」となった。

参考文献

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CQ15-2
肝細胞癌の肝外転移(肺転移,副腎転移,リンパ節転移,播種)に対する有効な治療法は何か?

推奨の強さ強い
肝外転移を伴う進行肝細胞癌に対する標準治療は分子標的治療薬である。
推奨の強さ弱い
肝内病変がない,もしくは良好にコントロールされている場合には,肺転移,副腎転移,リンパ節転移,播種病変に対して局所療法(切除を含む)が選択されることがある。

背景

肝外転移を伴う肝細胞癌は一般には肝内病変も進行していることが多い。このような進行肝細胞癌に対する治療方針はCQ43 で検討されているが,肝内病変が制御可能かつ肝外転移に局所治療を検討しうるような状況もしばしば認められる。本CQ では主にこのような場合における局所治療を念頭に肝外転移(肺転移,副腎転移,リンパ節転移,播種)に対する有効な治療方針を検討した。

サイエンティフィックステートメント

1982 年1 月1 日より2016 年6 月30 日の間に発表された肝細胞癌の肝外転移,肺転移,リンパ節転移,副腎転移,播種についての英文論文のうち,治療に関するもので,放射線治療ないしIVR(interventional radiology),化学療法,切除,塞栓療法,TACE,RFA,凍結融解療法,HIFU(high‒intensity focused ultrasound)を主題とする論文473 篇を検索,そのうち症例報告ならびに症例数5 例以下の論文,システマティックレビューではないレビューを除く68 篇を一次選択として抽出し内容を検討した。二次選択として,肺転移,リンパ節転移,播種の切除についての論文については症例数30 例以上,副腎転移については比較的症例数が少ないため20 例以上のものを選択し,ガイドラインで扱うのに十分なデータであるかを検討し,肝外病変を有する進行肝細胞癌に対する全身化学療法に関する文献,ならびに肝外病変の治療が明確に述べられていない文献を除き,最終的に17 篇を採用した。

肝外転移を伴う進行肝細胞癌に対する標準治療は,CQ43 で検討されているとおり分子標的治療薬であり,本CQ は肝外転移に対する局所療法に焦点をあてて検討した。

肺転移の切除治療については比較的多く報告されており,症例数30例以上の報告が7 篇あり,肝移植後の肺転移治療を除くと,切除後の5 年生存率は27.5 から66.9%と報告されている 1‒6)。肝移植後の肺転移切除も報告されており,切除後の2 年生存率30.6%と悪いが,非切除は2 年生存率0%であり,切除で長期予後が得られる可能性が述べられている 7)。また,肺切除と異なり一般的な治療ではないが,32 例の肝細胞癌肺転移患者にRFA を施行し生存期間中央値37.7 カ月,気胸など合併症率25%との報告もあった 8)

副腎転移の治療に関しては少数だが肝内病変がコントロールされていれば切除の方が他治療より予後良好であるとの報告 9),肝移植後の再発も含めた異時性の副腎転移26 例に対して副腎摘出を行い,長期予後を得る可能性があるとの報告がある 10)

リンパ節転移に関しては,非切除と比べ切除が 11),ないしは肝内病変のみに対してTACE を行った群に比べリンパ節転移に対してもTACE を行った群の方が予後良好である 12)と報告されている。日本肝癌研究会の全国調査における112 例のリンパ節転移切除症例では,5 年生存率が29.5%であったと報告されている 13)

播種の治療については,2 篇の論文が採択され,肝機能が保たれている場合には播種切除が非切除と比べ予後が良好であること 14),播種切除後39%の5 年生存率を得られ,肝内病変がない,もしくは良好にコントロールされている場合は播種切除の意義があると報告されている 15)

その他の局所療法としては,多発肺転移および副腎・リンパ節転移に対する強度変調放射線治療のひとつであるhelical tomotherapy の緩和治療効果が報告されている 16)

これらの肝外転移の局所療法の報告には,肝内病変のコントロールが重要であることを述べた報告が多く 3, 9, 15),また,肝外転移を有する肝細胞癌342 例の報告でも,予後を規定するのはperformance status(PS)と肝内病変の脈管侵襲であるとされている 17)

解説

本CQ は,肝細胞癌の肝外病変の治療に焦点をあてて文献が検討されたが,この分野においては対象が非常に限られてしまうため,RCT やメタアナリシスはなく,検索・検討されたのは後ろ向き研究の結果のみであり,エビデンスレベルの高い論文はない。進行肝細胞癌に対する分子標的治療薬の生存期間延長効果のエビデンスを示した論文における肝外転移を有する症例のサブグループ解析では生存期間延長効果が統計学的有意差をもたなかった 18, 19)が,研究の主目的ではないサブグループ解析の結果のもつ意義は少なく,症例数が増えれば有意に生存期間を延長する結果を得たであろうとの解釈のもと,CQ43 に準じPS 良好かつ肝機能が良好なChild-Pugh 分類A 症例において,肝外転移を伴う進行肝細胞癌に対する標準治療は分子標的治療薬であると強く推奨された。

ただし,肝内病変が良好にコントロールされている場合に限り,肝細胞癌肝外転移(肺転移,副腎転移,リンパ節転移,播種)治療の一つの選択肢として,複数の後ろ向き研究の結果をもとに,肝内病変の治療とともに肝外転移に対する局所療法(切除を含む)が選択されることもあると弱く推奨された。

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CQ16
脈管侵襲陽性肝細胞癌に対する有効な治療は何か?

推奨の強さ強い
塞栓療法,肝切除,肝動注化学療法または分子標的治療薬が推奨される。
ただし,各症例の条件を考慮して選択する(以下詳述)。

背景

本ガイドラインでは脈管侵襲陽性肝細胞癌に対して,限定的なCQ は記載されていなかった。今回の改訂において新たなCQ として脈管侵襲陽性肝細胞癌を設定し,特に門脈腫瘍栓陽性例について有効な治療法を検討した。

サイエンティフィックステートメント

1982 年1 月から2016 年6 月までに報告された論文のなかから門脈腫瘍栓,外科切除,化学療法,治療アルゴリズム,treatment allocation をキーワードとして検索,脈管侵襲陽性肝細胞癌に対する治療に関する578 編のなかから35 編を一次選択した。これらのなかから結論が明確でないもの26篇を除外し,検索ワードに該当しないが本邦の実情に即するもの3 篇をハンドサーチで追加した12 編を採用した。

前向き試験(nonrandomized)による脈管侵襲陽性肝細胞癌に対するTACE(84 例)と対症療法(80 例)の長期成績比較では,1 年生存率は30.9% vs. 9.2%とTACE の有効性が報告されている 1)

門脈腫瘍栓を伴った症例に対する肝切除の5 年生存率は10~38%と報告され,外科治療により一定の延命効果が得られている 2, 3)。Kokudo らは門脈腫瘍栓合併肝細胞癌患者の肝切除群(2,093 例)と他治療群(4,381 例)を解析,背景がマッチした1,058 例について比較した。Child-Pugh 分類A で肝切除群は有意に予後良好であり,腫瘍栓が門脈一次分枝に限局していれば肝切除は効果的であると報告している 4)。また,Ku らは肝切除にドキソルビシンを用いた肝灌流療法を組み合わせた治療の報告を行っているが,効果は限定的であった 5)

Nouso らは進行肝細胞癌の門脈腫瘍栓症例に対する肝動注化学療法の有用性を検討している。背景をマッチさせた門脈腫瘍栓を伴う群で5-FU とシスプラチンを用いた肝動注化学療法により延命効果(動注群 vs. 未治療,生存期間中央値7.9 カ月 vs. 3.1 カ月)があることを報告している 6)

分子標的治療薬に関しては,SHARP 試験のサブグループ解析が行われている。脈管侵襲を伴った肝細胞癌231 例についてソラフェニブ群(108 例)とプラセボ群(123 例)の累積生存を比較すると,ソラフェニブ群で3.2 カ月の延命効果が得られた 7)

肝静脈腫瘍栓合併肝細胞癌について,日本肝癌研究会の全国データを用いた大規模コホート研究の結果が本ガイドライン公聴会後に公表されたが,それによると,Child-Pugh 分類A の肝機能で下大静脈腫瘍栓合併例を除く肝静脈腫瘍栓合併肝細胞癌1,021 例で,切除群(540 例)と非切除群(481 例)の生存期間を比較すると,中央値で4.47 年/1.58 年と前者が有意に良好で,背景をそろえた解析でも有意な差がみられた 8)

解説

進行肝細胞癌では門脈内へ進展しやすく門脈腫瘍栓は最も重要な予後規定因子である。術前画像診断可能な門脈腫瘍栓は一般にVp2,Vp3,Vp4 であり,そのような肝細胞癌に対する効果的治療法に関する高エビデンスレベルの報告は乏しく少数の経験から試験的治療まで多岐にわたり散見される。すなわち肝機能,腫瘍条件,脈管侵襲の程度に応じて,個別に治療戦略が立てられているのが現状である。『原発性肝癌取扱い規約第6 版』ではVp3,Vp4 の大脈管に腫瘍栓がある場合は肉眼的にすべて切除されても根治度C として扱うと規定されている。したがって,現在報告されている治療法のなかからエビデンスレベルが高く,本邦で扱いやすいものを採用するのが妥当と考えられる。

推奨で示した4 種の治療法についてどれを強く推奨するかというデータはなく,Vp の状況によっては禁忌といえる場合もある。たとえば推奨する治療選択の一つに挙げてはいるが,Vp3,Vp4 に対する塞栓療法は肝梗塞や肝膿瘍のリスクがあり,慎重に行うべきである。Vp2 に限局した単発肝癌は良い手術適応であり,Vp3 でも比較的肝機能が保たれていて(Child-Pugh 分類A),肉眼的に切除できれば,他治療法では得がたい良好な成績が報告されており,肝切除を第一に考慮してもよい。多発例で広範囲に脈管侵襲が存在するなど,TACE や切除の適応外となる場合は文献67 のデータを根拠に肝動注化学療法や分子標的治療薬も推奨される。

一方,海外では90Yttrium を用いた放射線治療の有効性 9),3 次元原体照射法による延命効果 10)90Yttrium Resin Microspheres による塞栓療法の有効性 11)など放射線治療に関する報告も散見されるが,効果が不確実であり,本邦で施行できないという現実的な問題がある。また全身化学療法の報告もみられるがいまだ一定の効果が得られていない 12)

また,一般的に脈管侵襲とは門脈腫瘍栓のことを意味し,肝静脈腫瘍栓や胆管腫瘍栓に限定した治療成績に関するまとまった報告は皆無だった。しかし,文献8 を根拠に肝静脈腫瘍栓合併肝細胞癌については,門脈腫瘍栓同様,比較的肝機能が保たれ,かつ肉眼的に切除可能であれば,肝切除の適応を考慮してよい。他治療に関する十分なエビデンスを有する報告はなく,肝静脈腫瘍栓に特化した推奨には至らない。

推奨決定会議では本CQ の推奨に関しては意見が分かれ,他のCQ に比して長時間を割き,徹底的に議論がなされた。その結果,期待される治療効果を鑑み,塞栓療法/肝切除を第一選択,肝動注化学療法/分子標的治療薬を第二選択として推奨することになり,いったん公聴会およびパブリックコメントにて供覧された。しかし,Vp3,Vp4 に対するTACE のリスクからこれを第一選択と扱うことに対する慎重意見や,本邦における肝動注化学療法や分子標的治療薬の実施頻度からこれらを第二選択とすることによる日常臨床との解離の懸念が複数の専門医から示された。そこで,あらためて改訂委員会で検討したが,本CQ の推奨の根拠として取り上げた論文は,いずれもある選択基準によって症例を絞って検討されており,脈管侵襲症例全般をカバーする十分なエビデンスとはいえないという反論もあり,意見の一致は得られなかった。4 つの治療選択肢に対し,現時点で普遍的に順位をつけることは困難と考え,委員長判断として,あえて順位をつけずに4 選択肢を並列に推奨することに決定した。今後,本CQ に答えるエビデンスレベルの高いデータが報告され,より具体的で明確な推奨を示せるようになることを期待したい。

以上より,脈管侵襲陽性肝細胞癌に対しては,塞栓療法,肝切除,肝動注化学療法,分子標的治療薬を推奨する。腫瘍・肝機能を含めた諸条件を総合的に考慮し,個々の症例で慎重に治療法を選択するのが望ましい。

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第3 章 予防

はじめに

肝細胞癌は正常肝にみられることは少なく,ウイルス性やアルコール性肝障害,最近では脂肪肝炎に合併することが多い。そこで,予防することがある程度可能であるという,他の癌腫との相違がある。予防のためには,肝発癌リスクが高い症例を同定することが必要であり,肝炎ウイルス感染以外に新たなバイオマーカーが検索されている。

近年,最も進歩が著しいのは,C 型肝炎ウイルス(HCV)に対する抗ウイルス療法である。12 週間の直接作用型抗ウイルス薬(direct acting antiviral;DAA) の内服によって,ほぼすべての感染者で持続的ウイルス陰性化(sustained virologic response;SVR)が得られる。合併する併存疾患や,治療前に存在する薬剤耐性変異を調べた後に内服を行えば,SVR が得られる可能性が極めて高い。しかし,問題はインターフェロンを含む治療では,SVR 後の肝発癌が抑制され,生命予後の改善が証明されているが,DAA のみによる治療を行った場合の長期経過観察がなされていないことであり,今後の重要な課題である。

B 型肝炎ウイルス(HBV)感染に関しては,本邦では肝発癌例が減少していないため,さまざまな対策が講じられている。核酸アナログ治療の適応の見直しや,さらなる肝発癌抑制を目指した策が講じられており,今後のエビデンスの集積が期待される。さらに,長期の核酸アナログ内服による腎臓や骨に対する有害事象を防止する新たな内服薬が用いられている。

近年は,成因不明に分類されるアルコール性肝障害と脂肪肝由来と考えられる肝細胞癌が増加してきている。リスク因子が明確になっていないため,サーベイランスが行われておらず,肝細胞癌が発見された場合には進行癌である場合が多い。さらに,肝発癌を予防するためのエビデンスレベルが高い論文が少ない。そこで,これらの成因不明の肝細胞癌に関する囲い込みのためのバイオマーカーを見出していくことが重要である。これらの症例を経過観察することによって,肝発癌を防止するための有効な方法を解析していく必要がある。前向き試験を行うことが困難な領域であるため,現時点では多数例による精度の高い疫学研究が重要である。

ウイルスが消えた後の肝発癌については,今後の重要な課題であるため,これらの症例の経過観察を含めて,肝細胞癌の予防に有効な方法に関するエビデンスの構築が重要である。

CQ17
B 型慢性肝疾患からの肝発癌予防として推奨できる治療法は何か?

推奨の強さ強い
HBV-DNA 陽性B 型慢性肝炎・肝硬変の肝発癌予防に核酸アナログ製剤が推奨される。

背景

B 型慢性肝疾患に対する核酸アナログ製剤投与やインターフェロン投与は,HBV の増殖を抑制し,肝の炎症を沈静化させる。抗ウイルス療法が肝発癌予防として推奨される治療かを検討した。

サイエンティフィックステートメント

本CQ は2013 年版(第3 版)のCQ3 を基に作成された。第3 版と同様の検索式を用い,2012 年1 月1 日から2016 年6 月30 日に発表された論文について検索し,95 篇が抽出された。「対照群を伴う発癌をエンドポイントとした検討を採用する」という方針の下に,一次選択で18 篇,二次選択で11 篇が採用された。第3 版にて採用された8 篇のうち3 篇を不採用とし,第3 版の期間に含まれるランダム化比較試験(RCT)1 篇 1)をハンドサーチで追加した計17 篇を採用した。

B 型慢性肝炎・肝硬変に対する核酸アナログ製剤投与は,1 つのメタアナリシスにおいて78%発癌リスクを減少させ〔リスク比:0.22,95%信頼区間(CI):0.10~0.50〕 2),また後ろ向きコホート研究では,核酸アナログ製剤(ラミブジン,エンテカビル,テノホビル)を内服することでB 型肝炎患者はコントロール群に比べ累積発癌率が低下した 3-11)。現在,本邦で第一選択とされている核酸アナログ製剤はエンテカビル,テノホビルであり,Yokosuka らの報告 12)ではエンテカビルの3 年間での耐性ウイルス出現は3.3%,96 週時点でのHBV-DNA 抑制効果(HBV-DNA<400 copies/mL)は83%とウイルス増殖抑制効果は良好である。インターフェロンについては,3 つのメタアナリシスの結果では発癌抑制効果が報告されているが,1 つのメタアナリシスでは効果は認められておらず,人種・HBe 抗原陽性の有無・肝硬変の有無などに強く影響され,普遍的な発癌抑制効果を示す結果は得られていない。

核酸アナログ製剤投与による肝発癌抑制効果を示したRCT は,現在までにラミブジンを使用したもの1 篇のみが報告されている 1)。メタアナリシスについてもラミブジンについての1 篇のみであり,第3 版に引き続き採用した 2)。ただし,ラミブジンは現在本邦では耐性の問題から第一選択とはなっていない。また,エンテカビルの発癌抑制効果を無治療と比較した報告は,最も症例数が多いWong らによる1,870 例の後ろ向きコホート研究 6)をはじめ5 篇を採用した。Wong らは肝硬変例に限ってエンテカビルの発癌抑制効果が得られた(リスク比:0.55,95%CI:0.31~0.99)としており,一方Hosaka らは核酸アナログ製剤内服例では肝硬変に限定しない全例での解析で発癌抑制効果が得られた(ハザード比:0.37,95%CI:0.09~0.55,p=0.03)としている 4)。核酸アナログ製剤投与が肝硬変に限らず慢性肝炎例の発癌抑制にも効果があるかどうかはさらなる検証が必要だが,日本肝臓学会B 型肝炎ガイドラインでは①組織学的進展度,②ALT 値,③HBV-DNA 量を核酸アナログ製剤投与基準としており,必ずしもすべての対象が発癌予防のみを目的として核酸アナログ製剤を投与するとは限らない。エンテカビル=2,000 例,ラミブジン=3,347 例を比較した後ろ向きコホート研究では,核酸アナログ製剤の投与は死亡・移植のリスクを有意に低下(ハザード比:0.49,95%CI:0.38~0.64)させたが,発癌のリスクは同等(ハザード比:1.08,95%CI:0.80~1.27)であった 13)。同様にエンテカビルとラミブジンの発癌率比較を行った検討では,多変量解析で年齢・肝硬変が有意なリスク因子であり,薬剤による有意差なしとの結果であった 14)。テノホビルの発癌抑制効果についてはB 型慢性肝炎における肝癌発症リスク評価モデル(Risk Estimation for Hepatocellular Carcinoma in Chronic Hepatitis B;REACH-B)の発症率と比較した報告において 10),非肝硬変群では予測より発癌率低下が得られ,肝硬変群では有意差なしとの結果であった。テノホビルについてはさらなる大規模スタディの結果がまたれる。核酸アナログ製剤投与は上記の通り発癌予防に有効であるが,投与例においても少なからず発癌しており,肝細胞癌サーベイランスは核酸アナログ製剤投与例においても重要である。

解説

インターフェロン療法については第3 版までに4 つのメタアナリシスが報告されており,今回の検索期間においてもインターフェロン群が核酸アナログ群と比較して発癌率が有意に低下するとするマッチングスタディが抽出されたものの 15),普遍的な発癌抑制効果は認められていないため推奨には含めなかった。

インターフェロンについては今回の検索期間ではメタアナリシスはなく,第3 版に続き3 つのメタアナリシスを採用した。Miyake らは,B 型慢性肝炎におけるインターフェロン療法は発癌抑制効果を認める(risk difference:-5.0%,95%CI:-9.4~-0.5,p=0.028)がインターフェロンによる治療効果は人種やHBe 抗原の状態により異なり,特にアジア人のHBe 抗原陽性B 型慢性肝炎で発癌抑制効果が高いことを報告した 16)。Sung らも,インターフェロンによる発癌抑制効果(リスク比:0.66,95%CI:0.48~0.89)を報告し,特に肝硬変初期で有用であるとした 2)。Yang らは,11 論文・計2,082 例(観察期間4~7 年)のメタアナリシスの結果として,インターフェロン療法は有意に発癌を抑制する(リスク比:0.59,95%CI:0.43,0.81,p=0.001,p<0.05)と報告した 17)。インターフェロン治療については,肝硬変例は対象とならない点,発癌抑制効果のエビデンスがいまだ十分とはいえない点に留意する必要がある。

B 型慢性肝炎の抗ウイルス療法は第3 版から核酸アナログ製剤投与による発癌抑制のエビデンスが積み重ねられており,今後はテノホビルやテノホビルアラフェナミド(TAF)などの新薬についてもコホート研究でのさらなる検証が期待される。今回の改訂では改訂委員会で議論した結果,第3 版同様B 型肝炎に対する核酸アナログ製剤投与の発癌予防効果について全会一致で強い推奨とした。

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CQ18
C 型慢性肝疾患からの肝発癌予防として推奨できる治療法は何か?

推奨の強さ強い
C 型慢性肝炎・代償性C 型肝硬変患者の肝発癌予防にHCV 排除を目的とした抗ウイルス療法が推奨される。

背景

C 型慢性肝炎・肝硬変は,本邦における肝細胞癌の最大の高危険群である。抗ウイルス療法がC 型慢性肝疾患からの肝発癌を減少させるかを検討した。

サイエンティフィックステートメント

本CQ は第3 版のCQ1 を基に作成された。第3 版と同様の検索式を用い,2012 年1 月1 日から2016 年6 月30 日に発表された論文について検索し,383 篇が抽出された。「発癌をエンドポイントとした検討を採用する」という方針の下に,一次選択で25 篇,二次選択で15 篇が採用された。第3 版にて採用された10 篇と合わせ,計25 篇を採用した。

インターフェロン療法は,C 型慢性肝炎・代償性C 型肝硬変からの発癌リスクを減少させる。3 つのメタアナリシスにおいてC 型慢性肝炎・代償性C 型肝硬変に対するインターフェロン療法は,有意に発癌リスクを減少させた 1-3)。Miyake らは,3 篇のRCT と6 篇の前向きコホート研究についてメタアナリシスを行い,C 型慢性肝疾患に対するインターフェロン療法は発癌リスクをリスク比0.45(95%CI:0.31~0.65)減少させると報告している(p<0.00001) 1)。また,Messori らは25 篇の観察研究をもとにしたメタアナリシスにおいて,SVR 例が非SVR 例と比較して有意に発癌抑制効果を得られたことを報告している 3)。Maruoka らによる無治療群を対照とした比較研究ではSVR が発癌(ハザード比:0.139,95%CI:0.046~0.422,p=0.001),全生存(ハザード比:0.173,95%CI:0.075~0.402,p<0.001)双方のリスクを有意に低下させたと報告されている 4)。抗ウイルス療法後にウイルス陰性化が得られたSVR 例と非SVR 例を比較した報告では,いずれもSVR 例において有意に発癌率が低下することが報告されている 5-20)。Oze らはインターフェロン治療を行った2,659 例の検討において,治療前の発癌予測因子である年齢・性別・血小板値とともにSVR が有意な発癌低リスク因子(ハザード比:0.368,95%CI:0.183~0.737,p=0.005)であり,治療後因子を含めると年齢およびアルファフェトプロテイン(AFP)5 ng/mL 以上(ハザード比:8.096,95%CI:2.738~23.942,p<0.001)が有意な因子であることを報告した 17)。また,Asahina らの報告では年齢,男性,高度線維化(F3~4)などとともに,治療後AFP(ハザード比:1.06,95%CI:1.02~1.10,p=0.007),非SVR(ハザード比:1.58,95%CI:1.01~2.48,p=0.044)が発癌予測因子であった 11)

ペグインターフェロン・リバビリン併用療法無効例に対するペグインターフェロン少量長期療法についてRCT 2 篇はいずれも欧米からの報告であり,Lok らはペグインターフェロン+リバビリンによってSVR が得られなかった患者を対象としたThe Hepatitis C Antiviral Long-term Treatment against Cirrhosis(HALT-C)試験の観察期間を延長した結果(観察期間中央値6.1 年),肝硬変ではペグインターフェロン少量長期投与群はコントロール群に比して発癌が有意に抑制された(ハザード比:0.45,95%CI:0.24~0.83)と報告している 21)。一方,非肝硬変症例ではペグインターフェロンによる発癌抑制効果は認められなかった。Bruix らの報告では,C 型肝硬変626 例(インターフェロン投与群311 例,コントロール群315 例,観察期間中央値2.5 年,発癌例63 例)の同様なRCT の結果としてペグインターフェロン・リバビリン併用療法無効例に対するペグインターフェロン少量長期投与は発癌抑制効果を認めなかった 22)。ペグインターフェロン少量長期投与の報告は2 篇の後ろ向きコホート研究があり,494 例を対象としたTakeyasu ら,594 例を対象としたIzumi ら,いずれもペグインターフェロン少量長期投与が発癌率低下に寄与しているとの報告であった 23, 24)。Shiffman らは,HALT-C 試験の導入部であるペグインターフェロン・リバビリン併用療法において4 log 以上HCV-RNA が減少した症例は肝発癌を含む肝疾患イベントが有意に抑制されたが(p=0.003),その効果はペグインターフェロン・リバビリン併用療法後のペグインターフェロン少量長期療法の施行の有無には関係しなかったと報告している 25)

解説

第3 版の推奨はグレードB であったが,今回の改訂においては「HCV 排除を目的とした抗ウイルス療法」について強い推奨とした。第3 版に引き続き,多くの報告でSVR が得られれば発癌率が低下し生存率が向上することが明らかとなり,ウイルス背景(genotype・ウイルス量・ウイルス遺伝子変異)や宿主因子(IL-28B など)の条件が良い場合は,SVRを目指し積極的に抗ウイルス療法を施行することが推奨される。

なお,これらの研究は,C 型慢性肝炎および代償性C 型肝硬変患者を対象に行われており,非代償性C 型肝硬変患者に対してインターフェロンが発癌を抑制するというエビデンスはない。

近年,抗ウイルス療法の進歩によりC 型肝疾患に対する治療の中心はインターフェロンフリーのDAA 療法へと移っている。DAA 療法の肝発癌抑制効果について現時点で十分なエビデンスはないが,SVR が得られれば発癌率が低下するという,インターフェロンを基盤としたエビデンスに外挿可能であると判断し,推奨を抗ウイルス療法全般とした。

なお,SVR が達成された例においても少なからず肝発癌の報告がある。特に非若年者や肝硬変例,AFP 高値例ではSVR 後も長期間の肝癌サーベイランスが必要である。

SVR が得られない症例でのペグインターフェロン少量長期療法の肝発癌抑制効果については現時点では一貫したエビデンスはなく,推奨されない。

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CQ19
ウイルス性・非ウイルス性を問わず慢性肝疾患からの肝発癌予防法として推奨できるのは何か?

推奨の強さ弱い
コーヒー摂取は,肝発癌リスクを減少させる可能性がある。
推奨の強さ弱い
多価不飽和脂肪酸の摂取は,肝発癌リスクを減少させる可能性がある。

背景

本CQ は第3 版で「肝庇護療法の肝発癌予防効果」として記載されたCQ2 を統合し新設されたCQ である。近年,非B 非C 型肝疾患からの発癌が増加しており,これら非ウイルス性肝炎に対する肝発癌予防法にも注目が集まっている。しかし実際の検討では,ウイルス性肝疾患も含めた検討も多く,本CQ では「ウイルス性・非ウイルス性」を問わない肝発癌予防として有効な方法を検討した。

サイエンティフィックステートメント

「肝細胞癌予防」をキーワードに2012 年1 月1 日から2016 年6 月30 日までの間に報告された文献を検索し,284 篇が抽出された。一次選択で10 篇を抽出し,二次選択にて3 篇を採用した。第3 版においてC 型肝疾患患者に対するグリチルリチン製剤を中心とした肝庇護療法がグレードB の推奨であったが,DAA 療法が中心となっている現在,グリチルリチン製剤が使用される機会は減少しており,今回の推奨文からは除外して,第3 版CQ2 で採用された4 篇は不採用とした。

コーヒー摂取に関する横断研究では,600 mL 以上のコーヒー摂取例において肝発癌リスクが低下している(リスク比:0.25,95%CI:0.011~0.62)ことが報告されている 1)。また,大規模疫学調査研究において,多価不飽和脂肪酸の摂取は用量依存的に肝発癌リスクを低減することが報告された 2)。この報告では,高用量摂取群から低用量摂取群まで5 群に分けた比較を行い,最低量9.6 g/day に比較して最高量70.6 g/day であり,多価不飽和脂肪酸は用量依存性に肝発癌リスクと関連した〔最も高用量群のハザード比:0.64(95%CI:0.42~0.96),最も低用量群を1,p=0.03〕。なお,この報告ではエイコサペンタエン酸(EPA)摂取量で5 群に分けても同様〔最も高用量群のハザード比:0.56(95%CI 0.36~0.85)〕であると報告しており,多価不飽和脂肪酸のうちEPA の有意性を示している。しかし,HBV・HCV 感染で調整を行った後は同様の傾向は得られたものの有意差はなかった。類似の食習慣に関する報告として,欧州から地中海食と肝発癌の関連が報告されており,地中海食のスコアが高いほど発癌リスクが低下することが示された 3)

解説

コーヒー摂取については肝細胞癌に限定しない発癌率の減少を論じた疫学研究が複数報告されており,今回の検索期間に含まれたコーヒー摂取に関する肝発癌リスクについての横断研究を採用した。その他の肝発癌予防法として,糖尿病例に対するメトホルミン 4-6)・脂質異常症に対するスタチン 7-9)の有用性が報告されている。このうち4 篇は台湾のナショナルデータベースを用いた疫学研究であった。メトホルミン・スタチンいずれの報告も,肝発癌リスクを低減するとの結果であり,糖尿病症例や脂質異常症を有する症例に限定されるが,これらの投薬治療が肝発癌リスクを低下させる可能性がある。また,Kawaguchi らは分岐鎖アミノ酸製剤(BCAA)内服群と非内服群の前向き比較試験を行った 10)。BCAA 内服群と非内服群にはアルブミン・アンモニア・BTR・Child-Pugh スコア・フェリチンに有意差があったものの,共変量による調整後の多変量解析で,BCAA 内服は肝発癌(リスク比:0.45,95%CI 0.24~0.88,p=0.019),全死亡(リスク比:0.009,95%CI:0.0002~0.365,p=0.015)に有意に関与していた(Fine and Gray analysis)と結論づけている。

非ウイルス性肝癌はウイルス性肝癌と異なり,背景肝疾患に対する介入方法が明確ではない。今後は非ウイルス性肝癌の中心を占める非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)に対する治療で,発癌予防効果が得られるかどうかという点についての前向き検証が期待される。

本CQ は対象を限定しない肝発癌予防法に関するCQ として新設されたため,改訂委員会での討議の結果,コーヒー摂取・多価不飽和脂肪酸を推奨の対象とした。比較対照試験ではなく疫学研究が根拠となっていることから推奨は弱い推奨となった。メトホルミン,スタチン,BCAA については対象を限定した検討であったため,今回の推奨には含めず解説に含める方針となった。

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第4 章 手術

はじめに

肝切除術は肝癌に対して最も根治的な治療であり,近年,その安全性は飛躍的に向上している。しかし,National Clinical Database(NCD)の解析によると,肝切除全体の手術関連死亡率は2.4%と報告されており,さらに安全性を向上させる必要がある。そのためには,肝切除の適応となる肝癌進行度,肝機能や肝予備力の正確な評価およびそれらに基づいた安全で合理的な手術術式の選択が必要となる。

肝切除に関する最近の大きな変化は種々の手術機器と手術手技の改良と進歩による腹腔鏡下肝切除術の普及である。本邦においては,2005 年に高度先進医療として認可され,2010 年に肝部分切除術と肝外側区域切除術が,さらに2016 年には血行再建や胆道再建を伴わないすべての肝切除術式が保険収載され,その手術患者数も急速に増加している。しかし,腹腔鏡下肝切除術は,特に広範囲切除において完全に確立された手術手技ではなく,そのリスクも否定できない。

ここ数年の安全性に対する懸念などにより,本ガイドラインへの掲載に関してもさまざまな議論があったが,腹腔鏡下肝切除術の短期および長期成績などのエビデンスが報告され,国際コンセンサス会議においても推奨術式が提示されてきている経緯を踏まえ,今回の改訂では,腹腔鏡下肝切除術の適応についてのCQ を加えることとなった。ただし,これは腹腔鏡下肝切除術をやみくもに推奨するものではなく,むしろ慎重な導入,確実な実施とその結果に対する対応の重要性を強調する推奨や解説としている。

肝切除術の有効性と安全性向上のための予後因子の同定,切除断端距離,肝流入血流遮断や中心静脈圧低下による肝切離中出血量の減少,腹腔ドレーンの必要性については,従来からのCQ を採用した。また,肝切除後の補助療法などに関しては,「第9 章 治療後のサーベイランス・再発予防・再発治療」に記載することとなり,今回は肝切除前の補助療法についてのみ記載した。

肝移植は肝細胞癌のみならず発生母地である硬変肝も対処する治療法であるが,従来と同様に適応基準とダウンステージングに関して記載した。

なお,今回の改訂では,前回の改訂よりこれまでの,2012 年1 月1 日から2016 年6 月30 日までに発表された論文について検索し,新たなCQ については2016 年6 月30 日までのすべての論文について検索した。

CQ20
肝切除はどのような患者に行うのが適切か?

推奨の強さ強い
肝切除が行われるべき患者は,肝臓に腫瘍が限局しており,個数が3 個以下である場合が望ましい。腫瘍の大きさについては制限がない。一次分枝までの門脈侵襲例は手術適応としてよい。

背景

2013 年版(第3 版)までは“腫瘍条件からみた肝切除の適応は?”というCQ であったが,高齢者やperformance status(PS)についての観点も取り入れることなどより名称が変更となった。

サイエンティフィックステートメント

前回の改訂よりこれまでの,2012 年1 月1 日から2016 年6 月30 日に発表された論文について検索し,556 篇の論文が抽出され,これらより146 篇が一次選択された。そのなかから,エビデンスレベルの高い論文や重要論文計14 篇を二次選択した。

肝切除の適応について,主に腫瘍条件から検討したが,その際,肝細胞癌の進展度については日本肝癌研究会の提唱する原発性肝癌取扱い規約に記載されている腫瘍の大きさ,個数,脈管侵襲,およびその程度に従って記載する。

腫瘍径については10 cm 以上の腫瘍に対する肝切除後5 年生存率は20~30%程度と報告されている。この成績を他の治療法(経動脈的治療や化学療法)や自然経過と比較した検討はないが,推定される自然経過よりも明らかに優れていることから,腫瘍の大きさに適応の制限はないと考えられる。しかし,肝切除術後早期に再発する症例も少なくない。Lim ら 1)は,10 cm 以上の肝癌切除後の1 年以内の再発リスク因子として,術前総ビリルビン高値,血小板数低値と門脈腫瘍栓陽性をあげており,慎重な症例選択も重要である。

腫瘍数については,腫瘍数2 個以上の症例に対する肝切除の成績と単発症例に対する肝切除成績を比較した検討,あるいは,他の治療法の成績と比較した検討が報告されている。複数個になると単発症例に比較して長期成績が低下するが,複数の多中心性発癌症例での切除成績は単発症例のそれらと同等との報告もみられる 2)。多発症例に対する肝切除の成績とソラフェニブによる治療成績は明確ではない現在,複数個の肝細胞癌は切除の適応外ではない。腫瘍数の上限について,2 個までで同じ区域に存在する症例は,3 個以上,異なる区域に存在する症例,顕微鏡的脈管侵襲がみられる症例に比較し,再発リスクが低いとの報告 3, 4)や4 個以上の症例でも門脈浸潤がなく,肝予備能が良好であれば肝切除の適応となるという報告 5)もある。しかし,腫瘍数の上限についてのエビデンスレベルの高い報告はない現在,肝切除も局所療法と考えると,ラジオ波焼灼療法(RFA)などで受け入れられている3 個までが良い適応となる。

門脈侵襲は肝細胞癌の最も強力な予後因子であることは多くの研究から明らかになっている。このなかで,腫瘍栓の門脈内の伸展に伴い予後は不良となるが,門脈一次分枝までにとどまる場合(Vp3まで)の術後5 年生存率は10~40%と報告されている。門脈腫瘍栓を伴う肝細胞癌にはソラフェニブが適応となるが,Vp3 症例に対するソラフェニブの長期予後が明らかでない現在,手術適応となると考えられる。門脈本幹まで腫瘍栓が伸展している場合(Vp4)は,予後不良で一般的には手術適応外とされるが,その程度が軽度である場合には切除成績がVp3 症例と同等であり,手術適応であるとする報告もある 6)

門脈浸潤の他にも肝細胞癌は肝静脈や胆管内に進展し,腫瘍栓を形成することがあり,一般に予後不良と報告されている。しかし,肝切除により予後を改善しうる症例も報告されてきており,下大静脈腫瘍栓を有する症例においても安全に施行可能な症例が少なくなく,根治切除後の生存期間の中央値が18 カ月との報告 7, 8)がある。

胆管内腫瘍栓併存例は,脈管侵襲や低分化型の頻度が高く,肝切除後に早期に高率に再発がみられるため,肝切除に否定的な報告 9)が多いが,門脈侵襲を伴わない症例や根治切除可能な症例では,長期生存例を得られることもある 10)。報告例の成績が一定ではなく,今後の検討が必要である。

解説

肝切除の適応について肝細胞癌の進展度の観点から記載した。複数の肝細胞癌がみられる場合,主腫瘍と肝内転移,多中心性発癌,およびその両者の場合がある。これらの病態によっても同じ個数の症例でも治療成績は異なると考えられる。肝切除も局所療法ではあるものの,主腫瘍と肝内転移の場合,肝細胞癌の経門脈性転移と絡んで,部分切除に比較して系統的肝切除の優位性と関連する。一方,多中心性発癌の場合,背景肝の発癌ポテンシャルと絡んで,RFA などの局所療法との同様の適応基準となる。また,個数が増加してくると,肝動脈化学塞栓療法(TACE)に適応が移行していくと考えられる。腫瘍数に関して,Yangら 11)は多発症例に対する肝切除後の予後予測式を提唱しており,多発症例に対する肝切除の適応をより層別化して検討する必要がある。

80 歳を超える超高齢者においても80 歳未満の症例と比較し,全生存率や無再発生存率に差はみられないとの報告 12)もある。また,70 歳以上の高齢者に対する肝切除では術中出血量と併存疾患が術後合併症を増加させるとの報告 13)がある。超高齢者における手術適応に関する検討は,超高齢者と対照群の背景因子が異なるため正確には困難であり,個々の症例に応じて手術適応を決定することとなる。また,PS については,小型肝細胞癌症例での検討で,PS 0 の症例における肝切除はRFA に比べて予後が良好であったものの,PS 1 以上の症例については差がなかったとの報告 14)や,ミラノ基準超えの肝細胞癌に対して,肝切除はPS にかかわらずTACE より長期成績が良好であったとの報告 15)がみられるが,エビデンスレベルが高くなく明確な推奨はできなかった。患者因子である年齢やPS の面からの手術適応について,今後検討を進める必要がある。

今回の検索の結果からも高齢者やPS を含めた新たな推奨項目はなく,改訂委員会において議論した結果,「肝切除が行われるべき患者は,肝臓に腫瘍が限局しており,個数が3 個以下である場合が望ましい。腫瘍の大きさについては制限がない。一次分枝までの門脈侵襲例は手術適応としてよい」を強く推奨することになった。

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CQ21
肝切除前肝機能の適切な評価法は?

推奨の強さ強い
一般肝機能検査に加えICG 15 分停滞率を測定することを推奨する。手術適応は,これらの値と予定肝切除量とのバランスから決定するのが妥当である。

背景

肝切除を行う際の術前肝機能評価因子は何を用いるのが適当か? という第3 版にあったCQ を引き継ぐかたちでエビデンスレベルの高い新たな指標の探索を含め,今回もCQ が設定された。

サイエンティフィックステートメント

今回の改訂に際し,第3 版と同様の検索式を用いて,2012 年1 月1 日から2016 年6 月30 日に発表された論文について検索し,284 篇が抽出された。そのなかから,肝切除術前の肝機能評価として有用性が示されている論文を絞り込み,一次選択では25 篇,二次選択では6 篇を新たに採用し,第3 版の18 篇から残した17 篇と合わせて計23 篇を採用した。

術前肝機能評価としての肝予備能分類として,従来からChild 分類および,その変法であるChild-Pugh 分類が世界的に汎用されている。特に腹水は門脈圧亢進症の程度の指標とされ,コントロール不良であれば手術適応とはならない。欧米では,従来からChild-Pugh 分類のB,C 症例は手術適応としないのが一般的で,Child-Pugh 分類A の症例でも門脈圧亢進症を併存する場合は肝切除の適応外とする基準を採用している。なお,この基準は欧米の肝癌治療ガイドラインに採用されている 1)。一方で,門脈圧亢進症は2 区域以上の肝切除の禁忌とはならないとの欧米からの報告 2)や,門脈圧亢進症を有する症例でも,ある程度縮小した肝切除術式を選択すれば術後合併症の増加は認めず適応禁忌ではないとの本邦の報告がある 3)

主な肝切除の定量的な術前肝機能評価法としてICG 負荷試験,99mTc-GSA 肝シンチグラフィーが挙げられる。ICG 負荷試験に関する検討では,術後死亡の予測因子として有用であるとする報告がこれまで数多くなされている 4, 5)。ICG 15 分停滞率は,日本肝癌研究会による肝障害度評価の際の一因子 6)として採用されており,術前肝機能評価法の標準的な検査となっている。

手術適応基準としてYamanaka らは,ICG 15 分停滞率,肝切除量,年齢から構成される肝不全のprediction score を考案し 7),術後死亡を正確に予測しえたと報告している 8)。またTakasaki らは,ICG 負荷試験の値ごとに異なる許容肝切除量を設定した基準を提唱し 9),基準内の肝切除術後の肝不全と死亡は2%および0%であったのに対して,基準外の肝切除では,これらはそれぞれ23%および1%であったと,その有用性を報告している 10)。本邦で広く使用されている幕内基準 11)は腹水,血清総ビリルビン値,ICG 15 分停滞率から肝切除の適応・非適応,さらには切除許容範囲を明示しており,この基準を遵守した1,056 例の肝切除では手術死亡0%と報告されている 12)

99mTc-GSA 肝シンチグラフィーについては,組織学的肝障害の評価においてICG 15 分停滞率よりも優れているとの報告 13)や,単純な術後残肝容積評価よりも99mTc-GSA 肝シンチグラフィーから算出した機能的残肝容積の評価が背景肝障害を伴う症例の術後合併症,手術関連死亡の予測に有用であるとの報告がある 14)。しかしながら99mTc-GSA 肝シンチグラフィーは核種の使用による施設制限があり一般化していない。

手術適応を決定する際の術前肝機能評価法としては,血液検査を含め日常臨床上得られるChild-Pugh 分類などの情報に加え,定量的な検査法としてICG 負荷試験に関する報告が多い。実際の肝切除に際しては,こうした評価から推定される肝障害の程度と,肝切除の範囲(肝切除量)のバランスから適応を決定するのが妥当と考えられ,本邦を中心に肝予備能と許容肝切除量の関係を示した基準の提案がされている。

解説

ガラクトース負荷試験,アミノ酸クリアランス試験,アミノピリン呼気試験は前回まではサイエンティフィックステートメントにその有用性について言及されていたが,現在は行われておらず,今回の改訂では記載しなかった。

その他の指標として,門脈圧亢進症の指標とされる血小板数が術後の合併症や肝不全,術後死亡を予測する危険因子であるとの報告がある 15)。肝切除量にかかわらず血小板数は術後肝不全の予測に有用であり,特に小範囲切除(切除肝重量<100 g)の場合ではICG 15 分停滞率よりも有用な予測因子であるとのTomimaru らの報告がある 16)

閉塞肝静脈圧から肝静脈圧を減じた肝静脈圧格差(hepatic venous pressure gradient;HVPG)の術前測定は,侵襲的ではあるが,術後肝不全予測に有用であるとの報告が散見される 17, 18)。しかしながら,実臨床として術前肝機能評価としてHVPG を測定している施設はほとんどない。

近年,肝切除前に肝硬度を測定し,肝硬度と予後との関係を検討した報告が散見され,多くは術前肝硬度測定が術後合併症や術後肝不全の予測に有用であるという内容の報告である 19-21)。肝硬度測定に関しては,今後術前肝機能評価として有用な可能性がある。

本邦の肝癌切除術の手術死亡が3%以下である 22, 23)状況において,術後死亡を評価項目として肝機能からみた適応基準を評価・検証することは実務的・倫理的には現実的ではない。施設の経験症例数(hospital volume)による在院死亡率の差もあり,high-volume hospital の死亡率1.55%に対しlow-volume hospital では4.04%と高い結果を報告しており,施設の経験値も手術適応を考慮する際には加味する必要が考えられる 23)

今回,検索論文のなかにエビデンスレベルの高い新たな肝機能指標はなかったため,第3 版の推奨内容をそのまま採用した。現在でも最も広く行われている肝切除前肝機能評価法はICG 15 分停滞率であることに関して,改訂委員会で議論した結果,強い推奨とした。


: Child 分類と一般にいわれているものは,もともとはChild-Turcotte 分類が正式な名称である。また,Pugh がChild-Turcotte 分類を改訂したものは,Child-Turcotte-Pugh 分類(CTP 分類)が正式な名称であるが,本書では『原発性肝癌取扱い規約』との統一を図るため,Child-Pugh 分類という名称を用いることとした。

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CQ22
安全で合理的な手術術式とは?

推奨の強さ強い
小型の肝細胞癌(5 cm 以下)に対しては,小範囲の系統的切除,あるいは縮小手術としての部分切除(特に肝機能不良例)が選択される。大型の肝細胞癌に対しては2 区域以上の拡大切除(片肝切除を含む)が選択される。

背景

肝切除に関するCQ は第3 版では「標準的な肝切除術式とは?」というCQ があった。しかし,「標準的な」という表現が適切かどうかの議論もあり,今回の改訂では「安全で合理的な手術術式とは?」とし,高いエビデンスを検索することとした。

サイエンティフィックステートメント

今回の改訂に際し,第3 版と同様の検索式を用いて,2012 年1 月1 日から2016 年6 月30 日に発表された論文について検索し,556 篇が抽出された。そのなかから,手術術式あるいは術中操作について安全性,合理性が示されている論文を絞り込み,一次選択では40 篇,二次選択では12 篇を新たに採用し,第3 版の18 篇から残した14 篇と合わせて計26 篇を採用した。

肝細胞癌の多くは,慢性肝疾患を背景としているため,許容肝切除量は正常肝の場合に比べて少なくならざるを得ず,拡大肝切除は施行できない場合が多い。これを鑑み,肝部分切除(腫瘍核出術を含む)による肝細胞癌の肝切除方法が提唱された 1)。また,肝硬変症例では肝臓が硬く,肝表からの触診では腫瘍が同定できないことが多いため,術中超音波を使用して,肝内の腫瘍の位置を同定しながら肝切除を行う方法が考案され行われてきた 2)

肝細胞癌では,経門脈的に腫瘍が肝内転移することが知られており,理論的な根治の観点からは,当該の門脈支配領域を超音波ガイド下に色素で染色して系統的に切除することが望ましい 3)。動脈-門脈(AP)シャントや門脈腫瘍栓の存在などにより担癌領域の門脈に対する穿刺・染色が不可能な場合に,隣接する領域を染色(counterstaining)することにより担癌領域を同定して切除する方法 4)も考案された。また,担癌領域の門脈・動脈・胆管枝を含むグリソン鞘を一括して処理してこの領域を同定し,系統切除を行う方法も考案・施行されている 5, 6)

系統的切除が肝切除後の予後において非系統的切除より良好であるとされ,最近の報告でも系統的切除の方が予後を改善するという内容の論文がある 7-11)一方で,系統的切除と非系統的切除をプロペンシティスコアを用いてマッチさせた2 群で比較すると,累積生存率,無再発生存率には差がないという報告もあり 12-14),今回はこの点に関しては言及しなかった。

解説

肝切除は,他の臓器の手術に比べて,切除する肝区域,領域の大きさにより,その術式は多岐にわたり,また,内部の構造が直接見えない実質を術中超音波を駆使しながら切除するという,技術的に高度な手術が多い。しかしながら,肝切除術の死亡率,出血量は過去20~30 で大きく減少しており,手術の技術が確立され安定してきたことを示している。

肝実質を可能な限り温存する術式として,下大静脈に直接流入するS6 の肝静脈枝(下右肝静脈)が存在する場合にはこの領域を温存しかつ右肝静脈を根部で処理をする肝切除術 15),あるいはS2 を温存してS3/4 を切除する術式 16)も報告され行われてきている。

尾状葉は肝門板の背側に存在し,ここに存在する腫瘍に対しては通常は腹側の肝実質とともに拡大肝切除をする方法が採用されてきたが,大半の肝細胞癌症例では肝障害を伴うため,この方法は採用できない。これに対して,counterstaining 法を駆使して背側から尾状葉を単独切除する高位背方切除 17, 18)や前方から中肝静脈に沿って肝離断を行い単独切除する経肝前方切除 19)が考案されてきた。

右肝切除を施行する際には右肝を脱転した後に肝切除を行うのが通例であるが,腫瘍が大きい場合には脱転を行うことが困難な場合が多い。このような場合に前方(腹側)からの肝切除を先行させる方法(前方アプローチ)も提唱され,通常の脱転先行の方法よりも短期・長期成績とも良好であったと報告されている 20)。また,肝臓の深部は肝静脈からの出血のコントロールが困難であるが,下大静脈前面の肝裏面にテープを通して肝を挙上させながら肝切離を行う方法が考案され,広く応用されている 21)。さらにこの方法を,前方アプローチによる右肝切除と組み合わせる術式の有効性も主張されている 22)

肝細胞癌は,進展するにつれて主要門脈枝に腫瘍栓を形成することが多い。このような場合に,腫瘍栓を含む門脈を合併切除して当該の肝領域を切除するのが通例であったが 23, 24),この方法は拡大肝切除あるいは全肝切除(理論上の)を必要とし障害肝での施行は困難であることが多い。これに対して門脈内壁から腫瘍栓のみを除去する肝切除の方法も報告され,通常の方法と長期成績に差がなかったとその有効性が主張されている 25)

腹腔鏡下肝切除術に関しては,術式の安全性や有用性に関する報告が増えてきている。先進的な施設からの報告ではあるが,開腹肝切除症例とプロペンシティスコアを用いてマッチさせた2 群での検討で,短期成績は腹腔鏡下群が良好であり,長期成績では両群間に差を認めなかったという報告もある 26)。本ガイドラインでも新しく「腹腔鏡下肝切除術の手術適応は?」というCQ が創設された。

安全で合理的な手術術式に関して新たな知見を検索したが,検索論文のなかにエビデンスレベルの高い手術術式の報告はなかったため,第3 版の同内容のCQ に対する推奨内容をそのまま採用した。肝細胞癌に対する拡大切除の意義は少なく,肝機能,腫瘍径を考慮したうえで治癒切除が可能であれば小範囲切除が妥当とする現状を考え,推奨の強さについて改訂委員会で議論した結果,強い推奨とした。

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CQ23
腹腔鏡下肝切除術の手術適応は?

推奨の強さ強い
肝部分切除術や肝外側区域切除術が可能な肝前下領域(S2,3,4,5,6)の末梢に存在する5 cm 以下の単発腫瘍が良い適応である。

背景

腹腔鏡下肝切除術はここ数年の安全性に対する懸念などより肝癌診療ガイドライン掲載に関しても議論があったが,保険収載後の急速な症例数の増加とともにさまざまなエビデンスが報告されるようになり,国際コンセンサス会議においても推奨術式が提示されてきている経緯を踏まえ,今回の改訂で腹腔鏡下肝切除術の適応についてのCQ を新たに加えることとなった。

サイエンティフィックステートメント

腹腔鏡下肝切除術に関する1991 年の最初の報告例から2016 年6 月末までの560 篇の論文が抽出され,これらより75 篇が一次選択された。そのなかから,肝細胞癌に対する至適な適応を推奨するため,エビデンスレベルの高い論文や重要論文計15 篇を二次選択した。

腹腔鏡下肝切除術と開腹下肝切除術の比較において,腹腔鏡下肝切除術では拡大視効果と気腹圧による肝静脈からの出血量低減効果があり,開腹下肝切除術に比較して術中出血量が少ないと報告されている 1-3)。また,肝硬変などの慢性肝疾患を併存することが多い肝細胞癌症例に対する腹腔鏡下肝切除術において腹水などの術後合併症が開腹下肝切除術のそれより低いことが報告されている 4-6)。肝細胞癌に対する長期成績は開腹下肝切除術と同等との報告が多く 7-10),肝表面に存在する小型肝細胞癌に対してはRFA に比較して局所制御能が優れていると報告 11)されている。しかし,腹腔鏡下肝切除術の難易度は切除部位,腫瘍径や肝硬変などの併存肝疾患等によって異なる。すなわち,肝後上領域(segment 7 および8)の切除では,肝前下領域(segment 2~6)に比較して,手術時間,出血量,開腹移行例が多かったと報告 12)されており,開腹下肝切除術より厳しい手術適応決定の重要性が認識されている 13)。これらの結果を踏まえて,2014 年の盛岡での腹腔鏡下肝切除術の国際コンセンサス会議では,腹腔鏡下肝切除術の至適な手術適応として,開腹下肝切除術に耐えうる肝予備力を有する患者で,肝前下領域(segment 2~6)に存在する単発5 cm 以下の腫瘍に対する肝部分切除術や肝外側区域切除術が望ましい適応であると確認された 14)

解説

腹腔鏡下肝切除術は1991 年,Reich らが報告して以来,種々の手術機器の進歩に伴い各国で行われるようになった。本邦においては2005年に高度先進医療として認可され,2010 年に肝部分切除術と肝外側区域切除術が,さらに2016 年には血行再建や胆道再建を伴わないすべての肝切除術式が保険収載され,急速に普及してきた。しかし,腹腔鏡下肝切除術は,特に広範囲切除において完全に確立した手術手技ではなく,そのリスクも否定できないことなどより,推奨決定会議でも推奨文や推奨の強さについて意見が分かれた。最終的にコンセンサス会議や最近のメタアナリシスの結果などを勘案し,適応を“肝部分切除術や肝外側区域切除術が可能な肝前下領域(S2,3,4,5,6)の末梢に存在する5 cm 以下の単発腫瘍”に限定することで強い推奨とすることとなった。もちろん腹腔鏡下肝切除術は十分な開腹下肝切除術と高難度の内視鏡手術の経験を有するチームのある施設においてのみ行われるべき手術であるのは言うまでもない。さらに,昨年追加で保険収載された肝部分切除術や肝外側区域切除術を超える術式の施行にあたっては,十分な腹腔鏡下肝切除術の経験とlearning curve を踏まえて,術前の難易度評価 15)などを考慮した慎重な導入が強く求められ,肝臓内視鏡外科研究会およびNCD への前向き登録が義務づけられている。

参考文献

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CQ24
肝切除後の予後因子は何か?

推奨の強さなし
肝切除後の主な予後因子は腫瘍径,腫瘍数,脈管侵襲,肝機能である。

背景

肝切除後の予後因子に関するCQ は,2013 年版(第3 版)での推奨内容は「Stage 分類,脈管侵襲,肝機能,腫瘍数が肝切除後の予後因子である」であり,2009 年版(第2 版)から推奨内容は変わっていなかった。今回は,肝切除後の予後因子に関して新たな高いエビデンスを検索することとした。

サイエンティフィックステートメント

今回の改訂に際し,第3 版と同様の検索式を用いて,2012 年1 月1 日から2016 年6 月30 日に発表された論文について検索し,301 篇が抽出された。そのなかから,肝細胞癌切除後の予後因子,予後予測因子について明らかにした論文を絞り込み,一次選択では42 篇,二次選択ではハンドサーチにて採用した1 篇を加えた10 篇を新たに採用し,第3 版からの10 篇と合わせて計20 篇を採用した。

肝切除後の生存率の検討では,腫瘍径5 cm 以上,多発,被膜形成なし,脈管侵襲あり,肝機能(血清アルブミン値40 g/L 未満),pTNM Stage III・IV,アルファフェトプロテイン(AFP)32 ng/mL 以上などが予後因子として知られている 1-3)。一方,腫瘍径に関しては予後に影響しないとする論文 4-6)もあり,一概に巨大肝細胞癌であるというだけで予後不良とは断定できない。また,2 cm 以下の早期肝細胞癌では生存率が良好であり 7),Shindoh らは,2 cm 以下の早期肝癌においては組織学的脈管侵襲の有無によって予後に差はなかったと報告している 8)

解説

分子生物学的なマーカーとしては,PIVKA-II やAFP,AFP レクチン分画(AFP-L3 分画),alpha-1-fucosidase(AFC)が再発予測因子であるとする報告 9)やcytochrome P450 1A2(CYP1A2)遺伝子が再発関連遺伝子であるとする報告 10),循環腫瘍細胞(circulating tumor cells)の測定や推移は再発予測に有用なマーカーとなり得るという報告 11)などがある。

門脈本幹または第一次分枝に腫瘍栓を伴う症例は予後不良であることが知られているが,切除例のなかには予後の良好な患者集団が存在するとの報告がある 12, 13)

肝細胞癌術後の予後予測因子としてGlasgow Prognostic Score(GPS)は累積生存率において重要な予測因子であり,Cancer of the Italian Program(CLIP)スコア0~1 の肝細胞癌症例の予後をより明確に階層化できると報告されている 14)。また,術前の末梢血好中球リンパ球比(NLR)が肝細胞癌術後の独立した予後不良因子であったという報告もある 15)

近年,サルコペニアと癌に関する報告が増えているが,肝細胞癌においてもサルコペニアは独立した予後危険因子であったという報告がある 16, 17)

非B 非C 肝細胞癌は,B 型肝炎ウイルス(HBV)関連肝細胞癌,C 型肝炎ウイルス(HCV)関連肝細胞癌と比べ,ステージ別の累積生存率で有意に予後が良好であり,再発リスクも非B 非C 肝細胞癌が有意に低かったという本邦のnationwide study がある 18)

肝切除後の再発時期と予後との関連について,Cheng らは,単発肝細胞癌症例を対象に検討し,2 年以降の晩期再発,再発病変に対する根治治療施行の有無が予後と関連すると報告した 19)

手術手技に関しては,出血量,非系統的切除,輸血が有意な予後因子であるという報告もあった 20)

第3 版では第2 版からの推奨内容に変更がなかったが,Stage 分類は腫瘍径,腫瘍数,脈管侵襲により決まるため,Stage 分類は削除して,腫瘍径,腫瘍数,脈管侵襲,肝機能の4 つを肝切除後の主な予後因子とした。ただし,予後因子は臨床上重要であるが,推奨の対象外との意見が改訂委員会で出され,「推奨なし」となった。

参考文献

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CQ25
切除断端距離は予後に寄与するか?

推奨の強さ強い
肝細胞癌に対する肝切除では切除断端距離は必要最低限でよい。

背景

肝切除後の予後に切除断端距離の及ぼす影響についてのCQ であり,その推奨内容は第2 版から変わっていなかった。今回は,より新たな高いエビデンスを検索することとした。

サイエンティフィックステートメント

前回の改訂よりこれまでの,2012 年1 月1 日から2016 年6 月30 日に発表された論文について検索し,269 篇の論文が抽出され,これらより29 篇が一次選択された。そのなかから,エビデンスレベルの高い論文や重要論文計2 篇を二次選択した。また1 篇はハンドサーチで選択した。第3 版の7 篇から重要論文である6 篇を引き続き採用し,合わせて計9 篇を採用した。

肝細胞癌に対する肝切除の際に,切除断端が1 cm 以上と1 cm 未満の2 群において,術後再発率に有意差がみられないと報告されている 1-3)。切除断端距離を5 mm 以上と未満で分けた検討でも術後累積生存率や無再発生存率に有意差は認められていない 4-6)。肝細胞癌の進行度をミラノ基準内とミラノ基準外で分類し,切除断端距離を1 mm 以下,1 mm から9 mm 以下,10 mm 以上で比較した検討では,ミラノ基準内の場合,切除断端距離が長いほど無再発生存率が良好で,逆にミラノ基準外では1 mm 以下より1 mm から9 mm 以下の症例の成績がよかったものの,1 mm から9 mm 以下と10 mm 以上では差はみられなかったと報告 7)されている。また,腫瘍が主要脈管と隣接しており,断端距離がほとんど確保できない肝切除においても無再発生存率や累積生存率に有意差は認められない 8)。一方,切除断端距離を2 cm 確保した方が1 cm よりも予後はよいとのランダム化比較試験(RCT) 9)がみられるものの,最も適切な距離は不明である。

解説

これまで5 mm から1 cm の切除断端距離は予後に寄与しないとの報告が多くみられた。また,腫瘍が主要脈管と隣接しており,断端距離がほとんど確保できない肝切除においても予後に影響しないと報告されてきた。一方,単発で脈管侵襲のない肝細胞癌を切除断端1 cm と2 cm に割り付けたRCT において,2 cm 群が予後良好であると報告されている。しかし,この報告では患者の平均年齢が51 歳以下,ICG 15 分停滞率10%未満,B 型肝炎が80%以上と本邦の状況とは大きく異なっていた。さらに,一般的に切除断端は肝機能や腫瘍の位置,大きさにより制限され,2 cm 以上の断端確保は困難なことが少なくない。最近,肝細胞癌の進行度をミラノ基準に従って分類した場合,ミラノ基準内では切除断端を長く確保された症例の成績が良好であった。これらの報告を考え合わせると,比較的早期の肝細胞癌では切除断端距離を長く保つことが望ましい可能性はあるものの,基本的には切除断端距離が予後に寄与する可能性は低く,切除断端距離は必要最低限でよいと考えられる。今回の検索の結果からも,第2 版からの推奨内容に変更がなく,改訂委員会において議論した結果,「肝細胞癌に対する肝切除では切除断端距離は必要最低限でよい」を強く推奨することになった。

参考文献

1)
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CQ26
肝流入血流遮断や中心静脈圧低下は,肝切離中出血量を減少させるか?

推奨の強さ強い
肝流入血流遮断は肝切離中の出血量減少に有効である。
推奨の強さ強い
中心静脈圧(CVP)低下は肝切離中出血量減少に有効である。

背景

肝流入血流遮断や中心静脈圧(CVP)低下の肝切離中出血量低減効果についてのCQ であり,その推奨内容は第2 版から変わっていなかった。今回は,より新たな高いエビデンスを検索することとした。

サイエンティフィックステートメント

前回の改訂よりこれまでの,2012 年1 月1 日から2016 年6 月30 日に発表された論文について検索し,103 篇の論文が抽出され,これらより39 篇が一次選択された。そのなかから,エビデンスレベルの高い論文や重要論文計5 篇を二次選択し,第3 版の8 篇から選択したエビデンスレベルが高い7 篇と合わせて,計12 篇を採用した。

肝流入血遮断に関するRCT によって,間欠的肝流入血流遮断法(Pringle 法)は,肝機能に影響を与えずに肝切離中出血量を減少させることが示されている 1, 2)。また,片葉流入血流遮断法の有効性を示す報告 3, 4)や,15 分間と30 分間の間欠的肝流入血流遮断法ではprotease inhibitor の投与により肝機能に対する影響に差がないとの報告 5)がみられる。肝下部下大静脈(IVC)遮断や薬剤などを用いて肝切離中のCVP を低下させることにより,出血量が減少することがRCT を含むメタアナリシスによって示されている 6-9)。その際,2.1~3 mmHg がCVP 圧として適切であること 10)や薬剤などによるCVP 低下法よりIVC 遮断が有効であったことも示されている 11)。ただし,CVP 低下によっても出血量が減少しなかったとの報告 12)もある。なお,IVC 遮断により肺塞栓が発症したとの報告もあり,注意を要する。

解説

肝切離中の出血を減少させるためにPringle 法が広く行われており,その安全性も確認されている。近年の肝切離手技や機器の進歩により出血量自体が大幅に減少したことなどから,Pringle 法をルーチンに行うことに否定的な論文も散見されたが,その安全性,有用性を減弱させるようなエビデンスはなく,改訂委員会で議論した結果,これまで通り強く推奨することとした。切除範囲が片葉内に限局される場合は,片葉流入血流遮断法も勧められる。

Pringle 下の肝切離中の出血の多くは肝静脈由来であるため,出血量低下や輸血回避におけるCVP 低下の有用性は示されており,肝機能や術後短期成績への影響も少ないと報告されている。よってCVP 低下は強い推奨とした。しかし,長期成績への影響についての検討はみられず,肝切除部位などによるCVP 低下法の適応についての検討も必要である。

参考文献

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CQ27
肝切除において腹腔ドレーン留置は必要か?

推奨の強さ強い
待機的肝切除において腹腔ドレーンは必ずしも必要としない。

背景

第3 版と同様のCQ である。

サイエンティフィックステートメント

前回の改訂よりこれまでの,2012 年1 月1 日から2016 年6 月30 日に発表された論文について検索し,144 篇の論文が抽出され,これらより5 篇が一次選択された。そのなかから,エビデンスレベルの高い論文や重要論文2 篇を二次選択した。また1 篇はハンドサーチで選択し,第3 版のエビデンスレベルが高い9 篇と合わせて計12 篇を採用した。

待機的肝切除術の際の腹腔ドレーン留置のRCT によると,ルーチンのドレーン留置は不必要であるか,禁忌であるとの報告がある。ドレーン留置により,ドレーン関連合併症,創部合併症,敗血症や感染性液体貯留の頻度が高くなり,在院日数が有意に増加する 1-4)ことが理由として挙げられている。一方,門脈圧亢進症を伴う肝硬変症例においては腹腔ドレーン留置により,術後腹水に関連した合併症が減少し,在院日数が短くなるため,ドレーン留置を勧める報告もある 5)。また,ドレーン留置による胆汁漏や腹腔内液体貯留に対する治療上の有用性 6, 7),ドレーン排液中のビリルビン濃度モニタリングによる胆汁漏予測の可能性 7, 8)や,胆道再建症例や主要グリソン鞘露出例,術中胆汁漏確認例など胆汁漏の高危険群に限っての留置を勧める報告 9)もある。また,生体肝移植ドナー肝切除では,腹腔ドレナージは必須でないとの報告 10)がある。

ドレーンの抜去時期に関して,排液の性状などに問題がなければ,術後2 ないし3 日以内の抜去が望ましいとの報告 7, 11)がみられる。

解説

CDC(Center for Disease Control and Prevention;米国疾病管理予防センター)の手術部位感染予防のガイドラインでは,「もしドレーンが必要なら,閉鎖式ドレーンを使用し,できるだけ早期に抜去する」ことが推奨されている 12)。しかし,肝切除術は他の腹腔臓器の手術と異なり,慢性肝障害を伴っていることが多く,胆汁漏や難治性腹水に留意する必要がある。待機的肝切除術の際のドレーン留置の是非については,1990 年代からRCT が施行されているが,症例数が少ないことや評価法に問題がみられる報告があり,併存する肝障害の程度や切除術式を考慮した検証が必要である。健康人に施行される生体肝移植ドナー手術にはより慎重な対応が求められ,また近年増加している腹腔鏡下肝切除術においても,ドレーン留置の是非を検討する必要がある。

上記留意点はあるものの,複数のRCT の結果を根拠に待機的肝切除においてルーチンのドレーン留置は必要でないという強い推奨になった。

参考文献

1)
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CQ28
肝切除前に補助療法を行うか?

推奨の強さ弱い
肝細胞癌肝切除後の予後改善を目的とした術前補助療法として推奨できるものはない。

背景

第3 版の「術前補助化学療法は肝切除後の予後を改善するか?」(第2 版では術前補助療法)を引き継いだCQ となっている。第3 版でも,肝切除後の予後改善を目的とした術前補助化学療法として推奨できるものはなかった。

サイエンティフィックステートメント

今回の改訂に際し,第3 版と同様の検索式を用いて,2012 年1 月1 日から2016 年6 月30 日に発表された論文について検索し,105 篇が抽出された。そのなかから,肝切除前の補助療法の有用性を検討した論文を絞り込み,一次選択では22 篇,二次選択では4 篇を新たに採用し,第3 版からの12 篇と合わせて計16 篇を採用した。

全身化学療法を術前補助化学療法として施行し,その有効性を検証したエビデンスレベルの高い報告はほとんど認めない。術前補助化学療法として肝動脈塞栓療法(TAE)/肝動脈化学塞栓療法(TACE)を施行した場合,単回では肝機能の低下もわずかで合併症罹患率も低く,腫瘍壊死や縮小効果により,進行肝細胞癌で切除率を向上させる可能性はあるが,予後改善効果については一定の見解は得られていない(文献1~4:有効,文献5~14:無効) 1-14)。術前肝動注化学療法についても,再発抑制や生存率の改善に対する有効性は認められていない 15)

またLi らは,門脈本幹に腫瘍栓を有する肝細胞癌に対する術前放射線治療の有効性を検討し,術前放射線治療施行群で肝切除後の再発率および肝細胞癌関連死亡率は低く,門脈本幹に腫瘍栓を有する進行肝細胞癌に対する放射線治療+肝切除の可能性を報告している 16)

解説

TAE/TACE を術前補助化学療法として有効とする論文のほとんどが2000 年前後までに発表されているが,エビデンスレベルの高い論文は少ない。一方,無効とする論文には,2000 年以降のエビデンスを伴ったRCT やメタアナリシスが含まれており,一定の見解は得られていないものの術前補助化学療法としては推奨しなかった。

参考文献

1)
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9)
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11)
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12)
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CQ29
肝細胞癌に対する肝移植の適応基準は何か?

推奨の強さ強い
非代償性肝硬変を伴うミラノ基準内の肝細胞癌に対し肝移植が考慮される。

背景

肝細胞癌に対する肝移植は,腫瘍そのものの摘出と同時に発癌母地となっている肝硬変を治療することが可能な,理論的に優れた治療法である。しかし,肝移植が臨床応用された初期の症例では,肝細胞癌に対する肝移植は高率に移植後再発を来し,その移植成績は不良であり,積極的な移植適応疾患から除外されていた。1996 年にMazzaferro らは,術前画像検査における肝細胞癌の大きさと病変数に一定の基準(脈管侵襲と肝外転移なし,単発では腫瘍径5 cm 以下,多発では腫瘍数3 個以下で腫瘍径が3 cm 以下)を設けることで,肝細胞癌を合併していない患者と同等の移植成績が得られることを明らかにした 1)。この基準はミラノ基準と呼ばれ,現在では肝細胞癌における移植適応のゴールドスタンダードとなっている。本邦でも肝細胞癌合併非代償性肝硬変は,ミラノ基準に合致した症例に限り肝移植が保険認可を受けている。ミラノ基準は,肝細胞癌の大きさと病変数という単純な要素を評価することにより,その生物学的悪性度が類推できることを示した点で,臨床的に有用な基準であった。しかし一方で,肝画像診断機器や造影剤などが進歩した現在の臨床現場において,1990 年代と同様の基準をそのまま当てはめてよいかという問題点や,腫瘍径と腫瘍数に別の因子を組み合わせることによりさらに予後予測精度の高い移植適応基準を作成できるのではないかという期待から,肝細胞癌に対する新しい移植適応基準が模索されている。

サイエンティフィックステートメント

検索式を用い,2012 年1 月1 日から2016 年6 月30 日までに公表された462 篇の論文を選択した。術前に評価可能な因子を用いた基準である点と,ミラノ基準との比較成績が記載されているという観点から,一次選択で4 篇の論文を選択し,二次選択で最終的に3 篇を採用した。また,第3 版に採用されていた29 篇の論文から,同様な観点で13 篇を選び,計16 篇を採用した。

ミラノ基準同様に腫瘍径と腫瘍数に基づいた基準として,6.5 cm 以下単発もしくは3 cm 以下3 個以下で腫瘍径の和が8 cm 以下(UCSF 基準) 2),最大径5 cm 以下かつ腫瘍数5 個以内(Tokyo 基準) 3),最大径7 cm 以下かつ腫瘍数7 個以内(up-to seven 基準) 4), 6 cm 以下単発もしくは5 cm 以下3 個以下で腫瘍径の和が9 cm 以下 5)などの拡大基準で,ミラノ基準と同等の移植成績が報告されていた。また,腫瘍径と腫瘍数以外の因子として,血中AFP 値やPIVKA-II 値が肝移植後の予後因子となることから 6-10),腫瘍径と腫瘍数にAFP 値あるいはPIVKA-II 値を組み合わせた移植適応基準が報告されていた。このような基準として,最大径5 cm 以下,腫瘍数10 個以内かつPIVKA-II 値400 mAU/mL 以下(Kyoto 基準) 11, 12),総腫瘍体積115 cm3以下かつAFP 値400 ng/mL 以下(TTV/AFP 基準) 13-15),腫瘍径と腫瘍数およびAFP 値を各々スコア化する方法 16)などがあり,ミラノ基準と比較した予後予測能の向上が示されていた。

解説

肝細胞癌に対する移植成績を左右する最も重要な要因は,移植後の肝細胞癌再発である。このため,移植後再発危険性の高い症例を移植適応から除外することが必要となる。現在のゴールドスタンダードとなっているミラノ基準は,一定の腫瘍径と腫瘍数の肝細胞癌を対象とすれば,良好な移植成績が得られることを明らかにした点で重要である。しかし,20 年前の基準を現在の画像診断に用いることで,本来移植可能な症例が適応外となってしまっている可能性も考えられる。このため,基準となる腫瘍最大径と腫瘍数に関して複数の拡大基準が報告され,ミラノ基準と遜色のない成績が報告されている。これらの結果を総合すると,ミラノ基準に用いられた5 cm 以下単発もしくは3 cm 以下3 個以下の基準をある程度まで拡大しても,同等の移植成績が得られる可能性は高い。しかし,どの程度まで腫瘍径と腫瘍数を拡大できるかについては,報告により相違があり,いまだに意見は一致していない。一方では,いずれの報告でも対照となっているミラノ基準の移植成績は良好であり,その有用性が改めて確認されている。このような点をふまえて,現時点での最大腫瘍径と腫瘍数に関する移植適応基準としてはミラノ基準が推奨されると結論した。

術前のAFP 値やPIVKA-II 値は肝移植の予後規定因子として多数の報告がある。このため,これら腫瘍マーカーを腫瘍径や腫瘍数との組み合わせることにより,さらに精度の高い移植適応基準の作成が試みられている。特にAFP 値に関しては,腫瘍径や腫瘍数との組み合わせにより,ミラノ基準と比較して予後予測能が向上することが,前向き試験を含めて複数報告され,その有用性に期待が持たれる。ただし,各報告における移植適応として用いるAFP のカットオフ値の決定方法は一律ではなく,一致した基準値もない。また,PIVKA-II 値に関しては,欧米で測定している国が少ないためか,本邦からの報告が大部分で,AFP に関する報告と比較して数がやや少ない。以上の結果から,AFP 値もしくはPIVKA-II 値を移植基準に加えることで精度の高い移植適応基準を作成しうる可能性はあるものの,ガイドラインに加えるには時期尚早と判断した。

なお,欧米での肝細胞癌肝移植適応は,背景肝の状態にかかわらず腫瘍進行度のみで決定される。一方,本邦では肝細胞癌に対する治療として肝切除や焼灼療法,塞栓療法などが広く施行されている反面,脳死ドナー数は依然として少なく,肝移植は主に生体ドナーを用いて行われている。このような本邦の臨床現場の実情を考えた場合,非代償性肝硬変を伴い肝移植以外に有効な治療を施行し得ない症例を適応とすることが妥当と考えられ,第3 版に引き続き非代償性肝硬変をガイドラインの文言として取り入れた。

参考文献

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CQ30
肝移植前のダウンステージングは肝移植の予後を改善するか?

推奨の強さ弱い
肝移植前の肝細胞癌に対するダウンステージングが予後を改善する十分な科学的根拠はない。

背景

肝細胞癌に対する肝移植は,移植後再発のリスクを規定する主要因である腫瘍進行度により適応が決定される。一方で,適応基準を超えた進行度の肝細胞癌に対し肝移植以外の治療を行い,移植適応内まで進行度を下げた(ダウンステージング)後に移植した場合にも同等の移植成績が得られるのであれば,肝細胞癌に対する肝移植の適応が広がる可能性がある。

サイエンティフィックステートメント

検索式を用い,2012 年1 月1 日から2016 年6 月30 日までに公表された112 篇の論文を選択した。ダウンステージングの適応と成功率,およびダウンステージング後の移植成績が明記されているという観点から,一次選択,二次選択を通じて1 篇を採用した。また,第3 版に採用されていた6 篇の論文から同様の観点で1 篇を選び,計2 篇を採用した。

両論文とも同一の施設からの報告であった 1, 2)。単発で腫瘍径8 cm 以下,2~3 病変で各腫瘍径5 cm 以下,もしくは4~5 病変で各腫瘍径3 cm 以下かつ腫瘍径の総和が8 cm 以下の症例を対象に塞栓療法,焼灼療法などの方法でダウンステージングを行った結果,65.3%の患者がミラノ基準内へのダウンステージングに成功した。ダウンステージング後肝移植を受けた症例と,同時期にミラノ基準内で移植を受けた症例の移植成績を比較した結果,全生存率および無再発生存率ともに両群間に差は認められなかった。また,ダウンステージングを企図した患者全体と,ミラノ基準内で待機登録した患者全体の生存にも差は認められなかった。

解説

単一の施設からの報告であるが,前向きの検討で肝移植前のダウンステージングの適応,成功率,患者生存が示され,ダウンステージング後肝移植まで完遂した症例ばかりでなく(per protocol 解析),ダウンステージングを企図した患者全体の生存率も対照群と同等であった(intention-to-treat 解析)。この結果は,①ミラノ基準外であるものの一定の腫瘍進行度の範囲にとどまる肝細胞癌であれば,既存の治療により一定数をミラノ基準内にダウンステージングすることが可能である,②ダウンステージング成功例ではミラノ基準内の症例と同等の移植成績が期待できる,③ダウンステージングを企図すること自体が患者の予後を短くするものではない,という事実を示している。すなわち,ダウンステージング後の肝移植は,肝細胞癌に対する治療戦略として成立しうると考えることができる。一方で,この報告を解釈するにあたっては,対象患者が本邦の実状と異なることに注意が必要である。報告施設のある米国では,肝細胞癌は背景肝の状態にかかわらず,腫瘍進行度のみで移植適応が決定される。本報告でも,対象患者の半数以上はChild-Pugh 分類A の代償性肝硬変の患者である。一方,ドナー肝の不足している本邦では,肝細胞癌の移植適応はミラノ基準内かつ非代償性肝硬変を伴っている症例である。この点から,非代償性肝硬変を伴う本邦の肝細胞癌患者を対象として,同様のダウンステージングが安全かつ効果的に行い得るか否かについては不明である。以上の考察から,本邦においてダウンステージングが肝移植の予後を改善すると結論する十分な科学的根拠はないと結論した。

参考文献

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第5 章 穿刺局所療法

はじめに

肝細胞癌の局所療法は,1970 年代よりさまざまな治療法が本邦より開発・報告されてきた。当時は,CT/MRI や超音波検査はまだ臨床現場に登場しておらず,もっぱら触診・アルファフェトプロテイン(AFP)値・肝シンチグラム・腹部血管造影検査で肝細胞癌が診断されていた。そういった状況のなかで血管造影手技の治療への応用が試みられた。1979 年に山田ら 1)によって報告された肝動脈塞栓療法(transcatheter arterial embolization;TAE)は,肝細胞癌の局所療法の有効性が明らかにされた最初の治療法といえる。

その後は,超音波診断装置の普及と進歩によって発見される最小肝癌の大きさが5 cm から2 cm へと診断精度が向上した時期であり,超音波を駆使した診断と治療法の開発が行われた。1983 年に杉浦ら 2)は経皮経肝門脈造影での食道静脈瘤治療から着想を得て,純エタノールを腫瘍内に注入する治療法(percutaneous ethanol injection;PEI)を報告した。PEI はその後に登場する超音波ガイドによる穿刺治療の原点といえる治療法である。また,手技が比較的簡便で局注針やエタノールも安価であったため,本邦のみならず世界中に瞬く間に広まり,高い評価を受ける治療法となった。しかし,隔壁が存在する肝細胞癌では,腫瘍内にエタノールが均一に拡散せずに腫瘍残存や局所再発を来す問題点があった。

こうしたPEI の欠点を克服するべく,穿刺した電極針から通電により腫瘍を熱凝固させる治療法が開発された。当時,外科領域で使用されていたマイクロ波を経皮的に応用したマイクロ波凝固療法(microwave coagulation therapy;MCT)を1994 年にSeki ら 3)が発表した。ただMCT によって均一な凝固壊死が得られるようになったものの,獲得しうる壊死範囲が小さいことや胆管損傷などの合併症も多かったことがMCT の難点であった。

1995 年にRossi ら 4)が小肝細胞癌に対してラジオ波焼灼療法(radiofrequency ablation;RFA)を行い,良好な治療成績を報告した。本邦では1999 年以降にRFA が導入され,1 回焼灼あたりの壊死範囲が大きいこと,MCT に比べて合併症が少ないことから多くの施設に急速に広まった。2004 年4 月からはRFA も保険適用となり,現在ではRFA が穿刺局所療法の標準的治療とされるに至っている。

また,医療機器や造影剤などの画像技術の進歩はRFA の治療効果の向上に大きく貢献している。造影超音波検査については,1999 年にレボビスト®,2007 年にソナゾイド® が超音波造影剤として認可され,超音波ガイド下で行われるRFA において病変の視認性の向上がもたらされた。Fusion imaging については,2003 年に日立メディコ(現・日立製作所)から市販されたReal-time Virtual Sonography(RVS)® が先駆けのイメージング・テクノロジーである。それまで別々の画像情報であった超音波とCT/MRI のvolume data の情報が双方向性のsynchronized image として臨床応用可能となり,穿刺局所治療の支援画像としてなくてはならない技術となっている。また,マイクロカテーテルとガイドワイヤーの進歩によって,腫瘍の栄養血管のみを超選択的に塞栓するsuperselective TACE が可能となり,RFA との併用療法でさらなる相乗効果と少ない合併症が達成されるようになった。今回の改訂では,TACE と穿刺局所療法の組み合わせにより,大型肝癌の予後が改善することも最新のエビデンスとして追加された。

穿刺局所療法は治療デバイスの開発とガイドとなる画像技術の進歩などと相まって日々進歩を遂げている。今後も穿刺局所療法における新知見の登場が期待される。

参考文献

1)
山田龍作, 中塚春樹, 中村建治, 他. 肝細胞癌に対するTranscatheter arterial embolization therapy―15 例の経験―. 肝臓 1979; 20: 595-602.
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CQ31
穿刺局所療法はどのような患者に行うのが適切か?

推奨の強さ強い
穿刺局所療法の適応はChild-Pugh 分類A あるいはB の症例で,腫瘍径3 cm 以下,腫瘍数3 個以下である。

背景

肝切除,穿刺局所療法,肝動脈化学塞栓療法(TACE)のいずれもが施行可能な患者が存在した場合,治療アルゴリズムでは原則として,肝切除,穿刺局所療法,TACE の順に推奨されている。セカンドラインとしての穿刺局所療法の位置づけは,ファーストラインである肝切除,サードラインであるTACE との推定される予後の差によって決定されるが,その予後の差は肝機能と腫瘍条件によって変化することが推定される。穿刺局所療法の適応を他治療との比較から設定可能か検討した。

サイエンティフィックステートメント

本CQ は2013 年版(第3 版)のCQ32 の引き継ぎであるため,第3 版と同じ検索式を用いて2012 年1 月から2016 年6 月までに発表された論文を追加検索した。636 篇の論文から85 篇を一次選択として抽出した。次に「他治療〔切除,TACE,best supportive care(BSC)〕との比較試験〔ランダム化比較試験(RCT),non-RCT〕を採用する」との判断基準から27 篇を二次選択で抽出し,第3 版の12 篇と合わせて計39 篇を採用した。この39 篇のなかから,さらに「高いエビデンスレベル」「症例数の多さ」という基準から最終的に12 篇を採択した 1-12)

RFA と外科切除の治療比較を行ったRCT 4 篇 1-4)に示す。腫瘍条件が論文によって異なるものの,3 篇の論文では生存に関して有意差を認めないとする一方で,Huang 2)らの検討では外科切除の方が生存率が有意に良好であった。

 肝細胞癌に対するRFA と肝切除の生存率の比較

1) 2) 3) 4)

2012 年以降におけるRFA と外科切除に対するメタアナリシスについて4 篇 5, 10-12)の論文が抽出された。その代表的な論文としてQi ら 5)による3 件のRCT の解析では外科切除が生存率において有意に良好であった〔ハザード比:1.41,95%信頼区間(CI):1.06~1.89,p=0.02〕。しかし,腫瘍径を3 cm 未満と3~5 cm にサブグループ解析をしていないことが結果に影響した可能性が指摘されている。

肝切除と穿刺局所療法を比較したnon-RCT について,Zhang ら 6)は単発3 cm 以下の肝細胞癌に対して経皮的マイクロ波凝固療法(PMCT)と外科切除(PMCT:n=68,外科切除:n=122)を比較し,全生存率は同等であったが,外科切除では無再発生存が有意に良好であった(p=0.006)と報告している。また,日本人を対象としたHasegawa らのコホート研究においてChild-Pugh 分類A・B,3 cm 以下,3 個以下の肝細胞癌(RFA:n=5,548,外科切除:n=5,361)を対象としたところ,生存率は外科切除で有意に良好であった 7)

RFA とTACE の比較について,Murakami ら 8)が単発5 cm 以下あるいは3 cm 以下・3 個以下の肝細胞癌(RFA:n=105,TACE: n=133)を対象に局所再発率の検討をしたところ,RFA が有意に優れていた(p=0.013)。また,Kim ら 9)は単発・2 cm 以下の肝細胞癌(RFA:n=165,TACE:n=122)について検討したところ,全生存率について有意差は示されなかった(p=0.079)が,無再発生存率についてはRFA で有意に良好であった(p=0.034)。

解説

第3 版のガイドラインにおいて,「Child-Pugh 分類A あるいはB の肝機能の症例で,腫瘍径3 cm 以下,腫瘍数3 個以下」が穿刺局所療法の適応であった。

3 cm を超える腫瘍に対する適応に関して,長年にわたり穿刺局所療法の中心的治療法であったPEI では治療対象の多くが「3 cm 以下・3 個以下」であった。また,3 cm を超える場合ではPEI の局所再発率は高くなると報告された。一方で熱凝固療法であるRFA については穿刺回数を増やすことで理論上は焼灼範囲の拡大が可能であるが,穿刺回数の増加や広範な焼灼は合併症のリスクになる。また,多くのRFA 電極針の焼灼範囲が3 cm 程度とされていることを考慮して,RFA も含めた穿刺局所療法の適応について引き続き「3 cm 以下,3 個以下」を踏襲することとした。

外科切除とRFA の治療目的は「局所コントロールを得る」という意味で同じである。しかし,穿刺局所療法は腫瘍径が大きくなると焼灼マージンを十分確保することが難しくなることから,腫瘍条件,症例背景,術者自身の技量を鑑みてRFA の適応を考慮すべきである。そのうえで,「穿刺局所療法が肝切除に代わって第一選択の治療となり得るか?」との問いかけについて,(症例条件が異なるが)4 篇のRCT の結論は一致していない。さらに,2012 年以降におけるRFA と外科切除に対する4 篇のメタアナリシスについて,3 篇は外科切除が有意に良好な治療効果が得られ,1 篇は治療効果について有意差がなかった。いくつかの報告では,Child-Pugh 分類A,単発の2 cm 以下と条件を限定すると治療成績は良好(5 年生存率:60~74%)であるとされる 6, 7)。しかし,肝予備能が良好で早期の肝細胞癌を対象とした場合でも,穿刺局所療法が肝切除に代わって第一選択の治療となり得るかとの問いの結論は出ていない。

第3 版でも採用したMurakami ら 8)の研究以降で,ミラノ基準内におけるRFA 単独とTACE 単独の生存率を比較したエビデンスレベルの高い論文は検出されなかった。そのため,第3 版と同様に「3 cm 以下・3 個以下の切除不能肝細胞癌の治療法としてTACE 単独と比べてRFA が望ましい」と判断する。これらのことから,推奨決定会議では,特に反対意見はなく「強い推奨」と決定した。

初発肝細胞癌に対する治療法選択の根拠となるエビデンス確立の必要性から,本邦で多施設共同によるSURF 試験が実施されている。SURF 試験とは肝機能良好(Child-Pugh スコア7 点以下)かつ3 cm,3 個以下の腫瘍条件を満たす初発症例を対象として,肝切除とRFA の有効性を検証するRCT である。2009 年4 月から開始されたSURF 試験は現時点では症例登録を終え観察期間中である。これまでの研究はいずれも海外のデータであることから本邦の実臨床を反映したものではないため,本邦発のエビデンスとしてSURF 試験の結果がまたれる。


SURF 試験:Efficacy of Surgery vs. Radio-frequency ablation on primary hepatocellular carcinoma trial

参考文献

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CQ32
各穿刺療法の選択は,どのように行うのが適切か?

推奨の強さ強い
穿刺局所療法としてRFA が推奨される。
推奨の強さ弱い
消化管穿孔が危惧される場合には人工腹水下RFA やPEI は選択の一つである。

背景

穿刺局所療法は1980 年代のPEI から始まり経皮的酢酸注入(PAI)やPMCT を経て,現在ではRFA がその代表的治療と位置づけられている。今回これら穿刺治療の選択について検討した。また,穿刺局所療法の新しい潮流として,治療機器の進歩によるデバイスの多様性〔バイポーラーRFA(CelonPOWER®),可変型電極針(VIVA RF system®,次世代MCT)や凍結融解壊死療法(Cryoablation),不可逆電気穿孔法(irreversible electroporation;IRE)〕が挙げられる。

サイエンティフィックステートメント

本CQ は第3 版のCQ33 の引き継ぎであるため,第3 版の検索に2012 年1 月から2016 年6 月までに発表された論文を検索し追加した。検索式については第3 版と同一のものを用い,636 篇の論文から10 篇を一次選択として抽出し,統計手法を用いてデータ比較を行っている5 篇を二次選択で採用し,第3 版の14 篇と合わせて計19 篇を採用した 1-19)

RFA とPEI の治療比較

メタアナリシスを行った論文2 篇 1, 2)を新たに採用した。Shen ら 1)は生存と局所再発ともにRFA で優れていたと報告している。また,Yang ら 2)の検討ではEuropean study 3 件,Asian study 4 件,African study 1 件に分けてメタアナリシスにて検討したところ,RFA の生存と局所再発の両方について有意性が示されたのはAsian Study であった。

RFA とMCT の治療比較

Facciorusso ら 3)のメタアナリシスによる検討では,完全焼灼率について有意差は認めなかった(オッズ比:1.12,95%CI:0.67~1.88,p=0.67)。局所再発率についても有意差はなかった(オッズ比:1.01,95%CI:0.53~1.87,p=0.98)ものの,比較的大きな結節の場合ではMCT がRFA より優れていた(ハザード比:0.46,95%CI:0.24~0.89,p=0.02)。3 年生存率でも有意差はない(オッズ比:0.95,95%CI:0.58~1.57,p=0.85)が,RFA で高い傾向であった。また,合併症については,有意でないがMCT でやや多かった(オッズ比:1.63,95%CI:0.88~3.03,p=0.12)。

RFA とCryoablation の治療比較

全生存期間について,Huang らのメタアナリシス 4)とWang らのRCT 5)によると両治療間で有意差は認めなかった。しかし,局所再発に関して,Huang ら 4)ではRFA で有意に少なかったが,Wang ら 5)はRFA で有意に高かったと報告している。

合併症について

Bertot ら 6)によるメタアナリシスでは,穿刺局所療法全体の死亡率は0.16%(95%CI:0.10~0.24)であり,治療法別ではRFA,MCT およびPEI について,それぞれ0.16%(0.10~0.24),0.15%(0.08~0.23),0.23%(0.0~0.58)であった。重篤な合併症の発生は全体で3.29%(2.43~4.28)であり,治療法別での重篤な合併症の頻度はRFA 4.1%(3.3~5.1),MCT 4.6%(0.7~11.8),PEI 2.7%(0.28~7.4)であった。また,Germani ら 7)のメタアナリシスでは,RFA とPEI の合併症の頻度に差はない(オッズ比:1.21,95%CI:0.89~1.63,p=0.22)。一方,Shen ら 1)よるとPEI と比較し有意差はないが,RFA で合併症が多い傾向であった(ハザード比:2.04,95%CI:0.81~5.15,p=0.059)。

解説

PEI に関して腫瘍内の線維性隔壁や被膜がエタノールの拡散を障害することはよく知られており,そのため腫瘍径が大きくなるに従ってPEI の根治性が低下する傾向にある。一方でMCT やRFA では衛星結節が存在する腫瘍周囲を含めて壊死を誘導できることは大きな利点である。RFA とPEI と治療比較したところ,局所再発および生存に関してRFA の優位性を強く示唆する論文 5-10)が多く抽出される。さらにサブグループ解析では2 cm 以上の腫瘍径で治療成績の差が大きい傾向であった 1, 7)。また,RFA とMCT のメタアナリシスでは同等の治療効果であったと報告 3)しているが,採用されたRCT が1 篇のみであることと出版が2002 年と古いことがこの論文の難点である。そのため,MCT がRFA を凌駕する治療法と結論づけるには根拠に乏しいと判断する。また,本邦では肝細胞癌への治療として保険収載されていないCryoablation やIRE に関しては,いずれもまだ新しい治療法であり引き続きエビデンスの蓄積が必要と考える。さらに,今回の検索ではRFA のデバイス間での治療成績を比較した研究は抽出されておらず,この件に関しても今後の検討課題であろう。これらのことから,穿刺治療としてRFA を推奨し十分なエビデンスがあるために強い推奨とした。

合併症については,第3 版CQ での検討に加えGermani ら 7)とShen ら 1)の報告でも各穿刺治療(RFA,MCT,PEI)間において合併症全体の発生に差を認めなかった。しかし,肝門部近傍や肝外臓器と接するような部位は一般的に合併症が起こりやすく 9),特に,消化管穿孔はPEI と比べてRFA に多く報告されており 6),術後の癒着が存在する症例では消化管穿孔の危険性が高い 9)。そのため,本邦から報告される多くの後ろ向き試験 8, 10, 11)では,このような条件において人工腹水下RFA やPEI を行うことで良好な治療成績を挙げている。そのため消化管穿孔が危惧される部位に対しては人工腹水とPEI を推奨するとし,エビデンスは高くないために弱い推奨とした。

参考文献

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CQ33
穿刺局所療法にTACE を併用することで予後を改善できるか?

推奨の強さ弱い
比較的大型の腫瘍に焼灼療法を適用する場合には,TACE との併用で予後改善が期待できる。

背景

焼灼療法の施行前にTACE を行うことは,血流によるcooling effect を減弱させ,焼灼範囲を拡大することができる。焼灼療法にTACE を併用することが肝細胞癌患者の予後を改善するかについて検討した。

サイエンティフィックステートメント

本CQ は第3 版のCQ34 の引き継ぎであるため,第3 版の検索に2012 年1 月から2016 年6 月までに発表された論文を検索し追加した。検索式については第3 版と同一のものを用い,636 篇の論文から17 篇を一次選択として抽出し,統計手法を用いてデータ比較を行っている11 篇を二次選択で採用し,第3 版の5 篇と合わせて計16 篇を採用した 1-16)

焼灼範囲について

Kitamoto らの報告 1)では,TACE+RFA 群がRFA 単独群と比べて有意に大きな壊死がみられた(TACE+RFA 群,RFA 単独群の焼灼範囲の長径と短径平均値:39.9 mm,32.3 mm vs. 34.6 mm,26.0 mm;p<0.05)。

Morimoto ら 2)によれば,TACE+RFA 群およびRFA 単独群で焼灼範囲の長径と短径の平均値がそれぞれ50 mm,41 mm と58 mm,50 mm(p=0.012)とTACE+RFA 群でRFA 単独群に比較して有意に焼灼範囲の増大がみられた。

生存について

2012 年以降TACE+RFA 治療とRFA 治療単独を比較した研究 3-6)に示す。患者背景が異なるものの,TACE+RFA 治療がRFA 単独治療と比べて有意に生存率が良好であったとする報告が3 篇と良好なものの差を認めなかったとする報告が1 篇であった。また,7 篇のメタアナリシス論文 7-13)のすべてにおいてTACE+RFA 群で有意に良好な生存であったと報告されている。

 肝細胞癌に対するTACE+RFA 治療とRFA 単独治療の比較(2012 年以降)
表 肝細胞癌に対するTACE+RFA 治療とRFA 単独治療の比較(2012 年以降)

3) 4) 5) 6)

解説

先行するTACE の施行時期については同日から2 カ月以内とさまざまであるが,本邦からの報告では1 カ月以内とするものが多い。

RFA にTACE を先行することで焼灼範囲の拡大がもたらされることは各報告の一致した見解であり,その焼灼域の拡大によって治療回数や局所再発の減少に寄与すると期待される。特にMorimoto ら 2)の報告によると,治療セッション数(TACE+RFA vs. RFA:1.1 vs. 1.4,p<0.01)と局所再発(TACE+RFA vs. RFA:6% vs. 39%,p=0.012)が有意に少なかった。

第3 版の推奨として「先行するTACE によってRFA の予後向上に寄与するかについては十分なエビデンスはない」としていたが,今回の検索ではTACE+RFA が生存に寄与することを支持する論文が明らかに増えている。Jiang ら 11)のメタアナリシス(RCT 8 件と後ろ向きコホート11 件)を例に挙げると,1 年生存率に対するオッズ比が2.14(95%CI:1.57~2.91,p<0.001),3 年生存率のオッズ比が1.98(95%CI:1.28~3.07,p=0.001),5 年生存率のオッズ比が2.70(95%CI:1.42~5.14,p<0.001)とTACE+RFA 治療に対する強い優位性があることが報告された。また,サブグループ解析では腫瘍径の大きい条件でより生存に寄与するとの報告もあることから,推奨を「比較的大型の腫瘍に焼灼療法を適用する場合には,TACE との併用で予後改善が期待できる」とした。また,採用論文には2 篇のRCT が含まれるものの,症例数が100 例未満と少ないことから「弱い推奨」とした。

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CQ34
造影超音波やfusion imaging は局所治療の治療ガイドとして有用か?

推奨の強さ弱い
造影超音波やfusion imaging はB モードで描出が困難な肝細胞癌に対する治療ガイドとして有用である。

背景

腫瘍の境界を正しく把握することは,RFA 治療での焼灼マージンを設定するうえで必要不可欠である。そのため,超音波ガイドで行われる穿刺局所療法では,超音波で肝細胞癌を明瞭に描出できることが治療成功を左右する。しかしながら,①不十分な被膜形成などにより腫瘍自体の境界が不明瞭,②複数の大きな再生結節に小肝癌が紛れている,③局所再発が前回治療による壊死領域と同様のエコーパターンを呈する,などの条件では超音波B モードによる肝癌結節の描出が困難となり得る。このようなB モードで描出不良な肝細胞癌に対する穿刺局所療法の工夫として,造影超音波ガイドやfusion imaging ガイドがなされている。これらの治療ガイドの有用性について検討した。

サイエンティフィックステートメント

本CQ は第3 版のCQ35 の引き継ぎであるため,第3 版の検索に2012 年1 月から2016 年6 月までに発表された論文を検索し追加した。検索式については第3 版と同一のものを用い,636 篇の論文から152 篇を一次選択として抽出し,造影超音波ガイドもしくはfusion imaging ガイド治療についてデータ比較を行っている3 篇を二次選択で採用した。また,ハンドサーチとして造影超音波とfusion imaging を組み合わせて治療ガイドを行った2 篇の論文も採用し,第3 版の7 篇と合わせて計12 篇を採用した 1-12)

造影超音波ガイド

Minami ら 1)は,B モードで描出不良な肝癌108 結節について,ソナゾイド® 造影超音波ガイドにてRFA を行ったところ,平均治療セッションは1.1±0.3 であったと報告している。

Masuzaki ら 2)は,ソナゾイド® 造影超音波ガイドでRFA を行った291 例について類似対照群2,261 例と比較し,治療セッションが有意に少なかった(1.33 vs. 1.49,p=0.0019)と報告している。

Fusion imaging ガイド

Minami ら 3)は,B モードで描出不良な肝細胞癌について,Real-time Virtual Sonography(RVS)® ガイドでのRFA がB モードガイドと比べてより効果的に治療できたと報告している(平均治療セッション:1.1 vs. 1.3,p=0.021)。

Lee ら 4)は,B モードとfusion imaging での病変指摘における陽性的中率を比較したところ,B モードが78.8%でfusion imaging が90.5%(p=0.0003)であったと報告している。

造影超音波とfusion imaging の組み合わせ

Min ら 5)は,B モードで不明瞭な肝細胞癌について造影超音波とfusion imaging の組み合わせで治療を行ったところ手技成功率92.0%であったと報告している。

Minami ら 6)は造影超音波ガイドやfusion imaging ガイドと組み合わせガイドで3 年局所再発率を比較したところ,それぞれ4.9%,7.2%,5.9%で有意差を認めなかったと報告している。

解説

超音波造影剤ペルフルブタンマイクロバブル(ソナゾイド®)により,①どの時相でも連続観察ができるため安定的な病変の描出,②post vascular phase での欠損像をターゲットにすることで病変の視認性の向上,③Defect Re-perfusion imaging によってB モードで描出不良な肝細胞癌の局在および質的診断,などがもたらされた。そのため,ガラクトース・パルミチン酸(レボビスト®)使用では煩雑であった造影超音波ガイドのRFA 手技がより簡便に改善された。しかし,深部病変や硬変肝の進行した症例では病変の描出が難しい場合があるので注意が必要である。

Fusion imaging とは,あらかじめ取得されたCT やMRI のボリュームデータについて磁気センサーを装着した超音波プローブと位置情報を同期することで,B モード画像と近似のmulti planar reconstruction(MPR)画像をリアルタイムに表示する画像技術である。特に,造影超音波では描出が難しい条件でも参照画像を表示できることはfusion imaging のメリットの一つである。さらに,機器の進歩(位置センサーの追加やアクティブ・トラッカー® など)により画像調整の精度の向上と手間の軽減が図られている。ただし,肝臓のねじれや呼吸性移動などによりfusion imaging も必ずしも実像に完全一致するわけではないことは念頭に置かなければならない。

両ガイドを併用した治療報告に関して,Minami ら 6)によると,「B モードで不明瞭に加えて,造影超音波もしくはfusion imaging で同定困難」と他群と比べて条件が厳しいにも関わらず組み合わせガイドの局所再発率に差がなかった。造影超音波とfusion imaging は競合するものでなく,状況に合わせて選択もしくは併用することで局所コントロールを目指すことが治療において肝心と思われる。

推奨は第3 版と同様に「造影超音波とfusion imaging ともに治療ガイドとして有用」と判断する。ただし,採用論文はいずれも後ろ向きの調査研究であるため「弱い推奨」とした。

参考文献

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Lee MW, Rhim H, Cha DI, Kim YJ, Lim HK. Planning US for percutaneous radiofrequency ablation of small hepatocellular carcinomas (1-3 cm): value of fusion imaging with conventional US and CT/MR images. J Vasc Interv Radiol 2013; 24: 958-65. PMID: 23796082

CQ35
穿刺局所療法の効果判定に有用な画像診断は何か?

推奨の強さ強い
穿刺局所療法の効果判定には,dynamic CT/MRI を推奨する。

背景

固形癌の治療効果判定基準としてRECIST 1)が広く用いられている。しかし,肝細胞癌に対する穿刺局所療法においては根治的治療後も病変部が残存することから治療効果をRECIST で正しく判定することは難しい。そのため,肝細胞癌治療の効果判定については腫瘍の壊死効果を評価に取り入れたmRECIST 2, 3)が欧米で提唱された。また,本邦では『原発性肝癌取扱い規約第5 版』に合わせて肝癌治療効果判定基準(2015 年改訂版) 4)がRECICL 5)として発表されている。今回穿刺局所療法の効果判定に有用な画像診断に関して検討した。

サイエンティフィックステートメント

本CQ は第3 版のCQ36 の引き継ぎであるため,第3 版の検索に2012 年1 月から2016 年6 月までに発表された論文を検索し追加した。検索式については第3 版と同一のものを用い,636 篇の論文から141 篇を一次選択として抽出し,穿刺局所療法の治療効果判定について比較を行っている2 篇を二次選択で採用し,第3 版の7 篇と合わせて計9 篇を採用した。

単純MRI

Koda らの報告 6)では,86%の結節においてRFA 後にablative margin がT1WI で高信号rim として描出された。また,単純MRI とdynamic CT を比較したところ,ablative margin 評価について良好な相関を認めた(κ係数=0.716)。

Gd-EOB-DTPA 造影MRI(EOB-MRI)

Granata ら 7)は,病理学的に証明されたRFA 後の残存病変(n=42)評価についてEOB-MRI とdynamic CT を比較したところ,EOB-MRI(RFA 後1 カ月)では感度92%,特異度97%,陽性的中率92%,陰性的中率97%であり,EOB-MRI が有意にdynamic CT と比べて良好であった(p<0.05)。

造影超音波

Kudo らの報告 8)によるとDefect Re-perfusion imaging の手技を用いれば癌遺残部の指摘が容易であり,造影CT で指摘できなかった小結節についても肝細胞癌との診断ができた。

Zhou らによるRFA 後のB モード像における腫瘍境界の経時的変化の研究 9)では,RFA 翌日,3 日後,4 日後,5 日後の腫瘍境界の描出率はそれぞれ65.2%,54.3%,43.5%,39.1%であった。

解説

焼灼療法後の治療効果判定では焼灼マージンを含む画像評価における客観性や複数の結節を判定する必要性からdynamic CT/MRI を基本的検査として推奨する。また,推奨度はエビデンスの大きな内容変更がないため,旧版と同様に「強い推奨」である。多くの研究ではdynamic CT がゴールドスタンダードとして用いられていることや本邦での検査機器の普及状況からdynamic CT が標準検査として位置づけられるが,Granata ら 7)によって遺残病変の検出にはdynamic CT よりEOB-MRI が優れていることが示された。ただし,検討した件数が少ないことからさらなるエビデンスの集積は必要である。

焼灼療法後の治療効果判定には造影所見が非常に重要である。しかし,ヨードアレルギーや喘息などのアレルギー疾患の既往,腎機能障害のある症例ではCT/MRI での造影検査を回避しなければならない。特に,腎性全身性線維症(nephrogenic systemic fibrosis;NFS)はMRI のガドリニウム造影剤に起因する重篤な遅発性合併症である。腎機能障害が危険因子であり,GFR(糸球体濾過量)30 未満では原則として造影検査は禁忌とされる。上記のように造影検査が難しい条件での代替検査として,単純MRI や造影超音波は考慮される。単純MRI では組織性状のコントラスト分解能から腫瘍と焼灼域がそれぞれ明瞭に描出される場合も多い。また,造影超音波では造影剤における合併症リスクが少なく,優れた空間・コントラスト・時間分解能を有している。そのため,CT/MRI ではpartial volume effect によって指摘できない小病変を造影超音波では検出できたとする報告が多い。ただし,Zhou らが報告 9)するようにRFA で焼灼された腫瘍はB モード像で経時的に不明瞭になる傾向がある。RFA 後翌日では腫瘍境界が1/3 の結節で不明瞭であり,造影超音波を組み合わせたとしても焼灼マージンの評価という点では制限がある。

参考文献

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Granata V, Petrillo M, Fusco R, et al. Surveillance of HCC patients after liver RFA: role of MRI with hepatospecific contrast versus three-phase CT scan-experience of high volume oncologic institute. Gastroenterol Res Pract 2013; 2013: 469097. PMID: 24324487
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Kudo M, Hatanaka K, Maekawa K. Newly developed novel ultrasound technique, defect reperfusion ultrasound imaging, using sonazoid in the management of hepatocellular carcinoma. Oncology 2010; 78 (Suppl 1): 40-5. PMID: 20616583
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Zhou P, Kudo M, Minami Y, et al. What is the best time to evaluate treatment response after radiofrequency ablation of hepatocellular carcinoma using contrast-enhanced sonography? Oncology 2007; 72 (Suppl 1): 92-7. PMID: 18087188

CQ36
穿刺局所療法の治療効果予測因子は何か?

推奨の強さなし
腫瘍径,腫瘍マーカー値,焼灼マージンが穿刺局所療法の治療効果予測因子である。

背景

穿刺局所療法の短期成績は治療部位周囲の局所再発が規定する。局所再発を予測する因子について検討した。

サイエンティフィックステートメント

本CQ は新設であることから新たに検索式を設定し,過去10 年間について検索したところ612 篇が抽出され,一次選択で103 篇,治療効果因子について統計手法を用いてデータ解析が行われている40 篇の論文を二次選択として抽出した。この40 篇から,さらに各因子について症例数が比較的多い論文の10 篇を選択した 1-10)。そのうち,エビデンスとして採用する8 篇を示す 1-8)

Murakami ら 1)の検討では,RFA で治療した肝細胞癌(n=109)について,局所再発が優位に少ない因子は「腫瘍径2cm 以下」であった(p<0.01)。

Kim ら 2)はRFA で治療した4 cm 以下の肝細胞癌(n=62)について検討し,多変量解析から腫瘍径3 cm 超,不十分な焼灼マージンが局所再発に関連する有意な因子であったと報告している。また,AFP 高値について肝内他部位再発と有意な関連性も認めた(p<0.05)。

Nouso ら 3)はRFA を施行した肝細胞癌(n=621)について検討し,局所再発について腫瘍径3 cm 超(リスク比:2.80,95%CI:1.77~4.45,p<0.0001),腫瘍個数(リスク比:1.74,95%CI:1.23~2.47,p=0.002),AFP 値100 ng/mL 超(リスク比:1.62,95%CI:1.09~2.41,p=0.014)が有意に関連する因子であった。

Suh ら 4)の報告では,RFA を施行した肝細胞癌(n=201)についてAFP 値×PIVKA 値>1600 がRFA 後の早期再発に関連していた(p=0.008)。

Tamura ら 5)の報告では,RFA を施行した肝細胞癌(n=138)についてAFP-L3≥15%が無再発生存と関連していた(p=0.006)。

Zytoon ら 6)はRFA を施行した肝細胞癌(n=48)について多変量解析したところ,腫瘍径2.3 cm 以上,不十分な焼灼マージン,多発(p<0.05)が局所再発に関連する因子であったと報告した。

Chuma ら 7)は,RFA および肝切除が施行されたB 型肝炎関連肝細胞癌(n=103)について抗ウイルス薬によって治療時点のHBV-DNA がより少ない群で再発が抑制されたと報告し,多変量解析からHBV-DNA 高値(ハザード比:2.67,95% CI:1.31 ~5.47,p=0.007)および未治療(ハザード比:2.57,95% CI:1.34 ~ 4.94,p=0.005)が再発の独立危険因子であった。

Hosaka ら 8)は,RFA および肝切除が施行されたB 型肝炎関連肝細胞癌(n=55)について,HBcr 抗原量高値(ハザード比:8.96,95% CI:1.94 ~ 41.4)が再発の独立危険因子であったと報告した。

解説

二次選択で抽出した論文を横断的に見比べると,局所再発に関する治療効果関連因子として「腫瘍径」「不十分な焼灼マージン」「腫瘍マーカー高値」を挙げた論文が多い(75%:30/40)。ちなみに,腫瘍マーカーについてはAFP を扱っている論文が多かったが,PIVKA-II,AFP レクチン分画(AFP-L3 分画)に関する研究もあった。また,B 型肝炎に起因する肝癌では,ウイルス量やHBcr 抗原量(B 型肝炎ウイルスコア関連抗原)との相関も示された 7, 8)

その他の因子として,Hosokawa ら 9)の検討では,糖尿病コントロール不良例での1,2,3 年の再発率がそれぞれ50.6%,83.5%,93.8%であり,血糖コントロール不良が初回再発に関連する因子(オッズ比:1.97,95%CI:1.33~2.91,p=0.0007)であった。また,Chen ら 10)は糖尿病治療によって血糖が改善した群では改善しなかった群と比べてRFA 後の生存より良好であったと報告している。ただし,RFA の治療効果と糖尿病(血糖コントロール不良)との関連性についてエビデンスはまだ少なく,引き続き検討が必要である。

同様にエビデンスが不足しているとの判断から採用を見送った因子は,「組織分化度・肉眼分類」「腫瘍占拠部位」「腫瘍濃染パターン」「血清アルブミン値」「血清VEGF 値」「APRI(aspartate aminotransferase-to-platelet ratio index)」「NLR(neutrophilto-lymphocyte ratio)」「PLR(platelet-to-lymphocyte ratio)」である。なお,インターフェロンやビタミンK 製剤,分岐鎖アミノ酸製剤の投与における「再発抑制効果」を検証した研究については,それらが治療効果予測因子とは異なると判断したため採択しなかった。

参考文献

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第6 章 肝動脈(化学)塞栓療法TA(C)E

はじめに

肝癌診療ガイドライン2017 年版の肝動脈化学塞栓療法(TACE)は,2009 年版(第2 版),2013 年版(第3 版)から少しずつCQ が変わってきている。第2 版のCQ には,「CQ41:どのような症例がTACE/TAE のよい適応か?」「CQ42:TACE/TAE に使用する塞栓物質は何を用いるべきか?」「CQ43:TACE/TAE で(化学)塞栓すべき脈管は?」「CQ44:肝動脈化学塞栓療法(TACE)にイオダイズドオイル(リピオドール)と抗癌剤のエマルジョン注入は必要か?」「CQ45: リピオドールと抗癌剤の混合液(リピオドールエマルジョン)に使用する抗癌剤は何が選択されるべきか?」「CQ46:再TACE/TAE の時期の選択は?」「CQ47:TACE/TAE と他治療法の併用療法は有効か?」の7つが採用されていた。2013 年の改訂では,第2 版のCQ41 は「CQ37:どのような症例がTACE/TAE のよい適応か?」としてそのまま残り,第2 版のCQ42 からCQ45 は1 つのCQ「CQ38: TACE/TAE において塞栓物質や抗癌剤は何を用いるべきか?」に統一された。第2 版のCQ46 は「CQ39:再TACE/TAE の時期の選択は?」となり,第2 版の「CQ47:TACE/TAE と他治療法〔ラジオ波焼灼療法(RFA),手術,動注〕の併用療法は有効か?」は他の治療法の章に吸収させることで第5 章からは削除された。第3 版には新たに「CQ40: TACE の効果判定に有用な画像診断は何か?」が新設された。

今回の改訂では,第3 版のCQ37 からCQ40 の表現は少し変わったが,「CQ37:TACE/TAE はどのような患者に行うのが適切か?」「CQ38:TACE/TAE において塞栓物質や抗癌剤の選択はどのように行うのが適切か?」「CQ39:再塞栓療法の時期を決定する因子は何か?」「CQ40: TACE の効果判定に有用な画像診断は何か?」として残り,新たに「CQ41: 塞栓療法と分子標的治療薬を併用するのは適切か?」「CQ42: どのような場合にTACE 不応と考えるか?」が新設された。

今版のCQ37 の内容は第2 版,第3 版とほぼ同じではあるが,世界的に利用されているBCLC Stage を引用している点が新しい。CQ38 では,第3 版ではまだデータが少なくあまり触れられていなかったDEB-TACE やミリプラチンについての言及がなされている。CQ39 の内容は第3 版とほぼ同じではあるが,「腫瘍マーカー上昇」のみは再塞栓療法の時期決定の因子から外された。CQ40 も第3 版と内容は同じであるが,必須検査法であるdynamic MRI の造影剤にはGd-EOB-DTPA も含まれている点に留意していただきたい。CQ4142 は前述のように新設されたCQ である。これらは,第3 版までには触れられていなかった分子標的治療薬が臨床応用可能となったために,その使用法や使用タイミングを示したものである。

今回のガイドラインはエビデンスのみでなく,専門家のコンセンサスも反映されているが,門脈腫瘍栓症例に対する治療法,TACE に用いる抗癌剤,TACE と分子標的治療薬との併用,分子標的治療薬使用開始の時期を決定するTACE 不応の概念など,まだエビデンス,コンセンサスともに十分でないものがあり,それらの推奨度は依然として弱い。今後,レベルの高い前向き研究によるデータの蓄積によって,それらも解決されていくと思われる。

CQ37
TACE/TAE はどのような患者に行うのが適切か?

推奨の強さ強い
腫瘍個数4 個以上,Child-Pugh 分類のA~B,PS 0 のBCLC Stage B(intermediate stage)の手術不能でかつ穿刺局所療法の対象とならない多血性肝細胞癌に対する治療法として推奨される。
推奨の強さ弱い
門脈腫瘍栓を有するBCLC Stage C(advanced stage)の手術不能である多血性肝細胞癌に対する治療法として考慮されうる。

背景

本CQ は第3 版のCQ37 の文言を軽微に改変したものである。今回の改訂に際し,前版と同様の検索式を用いて,2012 年1 月1 日から2016 年6 月30 日に発表された論文について検索し,254 篇が抽出された。そのなかから「TACE/肝動脈塞栓療法(TAE)の適応について議論した論文を採用する」という方針の下に一次選択で37 篇,「エビデンスレベルの高い論文を採用する」という方針の下に二次選択で6 篇の論文を新たに採用し,第3 版で採用した21 篇からは,今回エビデンスレベルの高い10 篇のみを採用し,合わせて16 篇を採用した。

TACE/TAE は手術療法,RFA とともに有効な治療選択肢の一つである。一般にTACE/TAE の治療対象となるのは肝動脈造影像で腫瘍濃染像を有する,いわゆる古典的肝細胞癌(中分化型,低分化型肝細胞癌)もしくは一部の早期肝細胞癌であるが,腫瘍因子のみでなく患者因子を含めたステージングシステムに沿った治療選択を行うべきである。現状でのTACE/TAE の治療選択について検討する。

サイエンティフィックステートメント

TACE/TAE の治療対象となる肝細胞癌は肝動脈造影像で腫瘍濃染像を有する,いわゆる古典的肝細胞癌(中分化型,低分化型肝細胞癌)もしくは一部の早期肝細胞癌である 1-3)。海外で広く使われるBCLC ステージングシステムではTACE/TAE の適応は,腫瘍数4 個以上,Child-Pugh 分類のA~B,performance status(PS)0 のStage B(intermediate stage)のみとされた 4)。本邦での第3 版のガイドラインでは,肝障害度A もしくはB(Child-Pugh 分類に対応)で3 cm を超えた2~3 個の肝細胞癌および4 個以上(大きさを問わない)の多発肝細胞癌が適応とされた。

解説

手術不能かつ穿刺局所療法の対象とならない進行肝細胞癌,特に肝動脈造影像で腫瘍濃染像を有する,いわゆる多血性肝細胞癌に対するTACE/TAE は必要不可欠で,欧米を含め標準的な治療法となっている 1, 2)

2000 年代に入り,進行肝細胞癌に対するTACE/TAE は予後向上に寄与するとのRCT が2 篇報告された 5, 6)。いずれもOkuda 分類III,Child-Pugh 分類C は対象外とした論文であり,これらのRCT は選択的カテーテル挿入下に,非癌部肝組織の障害の少ない化学塞栓が施行されている点で本邦でのTACE/TAE の方法と変わらないと思われる。Cammà らの18 篇のメタアナリシス 7)でも,全体の2 年死亡率は無治療群と比べ有意にTACE/TAE 群の方が少ない(オッズ比:0.54,95%信頼区間:0.33,0.89,p=0.015)と報告されている。さらにCammà らは,RCT においては可能な範囲でTACE/TAE の方法(定期的か否か,カテーテルの選択性,使用薬剤)や腫瘍進展度(腫瘍数と腫瘍径など)を統一して行うべきであるとも述べている 7)

2005 年以降も均質な対象症例に対して行われた適応基準に関するエビデンスレベルの高い論文は出ていないため,前述の進行肝細胞癌に対するTACE/TAE は予後向上に寄与するとのRCT の除外基準からも,Okuda 分類III,Child‒Pugh 分類C といった肝機能不良例や非選択的TACE/TAE は避けることが推奨される。

2008 年の切除不能進行肝細胞癌を対象とした大規模なSHARP 試験 8)の結果を受け,ソラフェニブが進行肝細胞癌に対する標準治療として位置づけられたため,Society of Interventional Radiology(SIR)のガイドラインや改訂されたBCLC group による米国肝臓病学会(AASLD)のガイドラインにおいてTACE/TAE の適応は,腫瘍数4 個以上,Child‒Pugh 分類A~B,PS 0 のStage B(intermediate stage)のみとされた 4)。これは本邦の第3 版のガイドラインにおける肝障害度A もしくはB(Child‒Pugh 分類に対応)で3 cm を超えた2~3 個の肝細胞癌および4 個以上(大きさを問わない)の多発肝細胞癌とほぼ同様であった 2)

Takayasu らにより,肝切除不能肝細胞癌に対するLip‒TACE(リピオドールエマルジョンとゼラチンスポンジ使用)の予後向上に寄与する因子に関する,日本肝癌研究会全国集計の極めて大規模な前向きコホート研究が2 篇報告されている 9, 10)。1994~2001 年の8,510 症例の検討が行われた論文では,①本法は切除不能肝細胞癌に対する安全な治療法であり,5 年生存率は25%である,②同治療法による独立した予後因子は,i)肝障害度,ii)Stage 分類,iii)アルファフェトプロテイン(AFP)値(401 ng/mL 以上or 未満)であることが判明した。最も新しい2000~2005 年の4,966 症例の検討が行われた論文では,①5 年生存率は34%と上昇した,②同治療法による独立した予後因子は肝障害度,Stage 分類,AFP 値に加え,PIVKA‒II が加わった。この報告では,2005 年版(初版)の治療選択肢におけるTACE の治療成績が明らかとなり,TACE 群と非TACE 群(外科切除や局所療法)で有意な治療成績の差を認め,ガイドラインのTACE 推奨が妥当な治療アルゴリズムであることが示された。よって強い推奨とした。

一方,BCLC Stage B (intermediate stage)は腫瘍因子,肝予備能とも病態は広い範囲を含む。ゆえにより具体的なTACE/TAE の適応を決定するため,いくつかのサブグループ化の試みが報告されてきているが,エビデンスレベルの高い検証研究はまだない 11, 12)

脈管内腫瘍栓(特に門脈腫瘍栓)を有する症例は禁忌とする報告が多い 2)ものの,肝機能障害が軽度の高度進行症例(脈管内腫瘍栓を有する症例や10 cm 以上の巨大肝細胞癌症例)でもTACE/TAE を中心とした他治療法との併用療法で長期生存可能症例も存在する 13)。また,前述の進行肝細胞癌に対するTACE/TAE は予後向上に寄与するとしたメタアナリシスが数篇存在し 14-16),Stage C(advanced stage)でも肝外転移のない脈管内腫瘍栓(特に門脈腫瘍栓)症例に対するTACE/TAE の有用性は否定できない。しかしながら,海外で広く標準的治療とされるソラフェニブとの比較でエビデンスレベルの高い論文は存在せず,現状では脈管内腫瘍栓に対するTACE/TAE の有用性は十分な科学的根拠がないので,現時点では弱い推奨にとどめた。

進行肝細胞癌に対するTACE/TAE の今後の課題としては,前述したように,BCLC ステージングにおけるStage B のサブグループ化の検証,およびStage C(advanced stage)でも肝外転移のない脈管内腫瘍栓(特に門脈腫瘍栓)症例に対するTACE/TAE の有用性の検討とソラフェニブを中心とした分子標的治療薬との併用療法の有用性の検討が必要である。

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CQ38
TACE/TAE において塞栓物質や抗癌剤の選択はどのように行うのが適切か?

推奨の強さ強い
TACE/TAE においては,リピオドール® と多孔性ゼラチン粒(本邦ではジェルパート®)を使用したconventional TACE(cTACE)あるいは,薬剤溶出性の球状塞栓物質を用いたTACE(DEB-TACE)が推奨される。
推奨の強さ弱い
抗癌剤を併用する場合は,推奨される特定の抗癌剤はない。

背景

本ガイドラインの治療アルゴリズムにおいて,TACE/TAE は切除不能肝細胞癌に対して行われる治療である。本治療法は比較的長い期間に複数回にわたって行われることが多く,肝細胞癌患者の経過中において選択される頻度の高い治療法である。使用可能な塞栓物質や抗癌剤も複数あり,それらの組み合わせはさらに多様となる。このように多種の治療選択肢があるなかで,塞栓物質や抗癌剤の選択をどのように行うのがよいか検討する。

サイエンティフィックステートメント

本CQ は第3 版のCQ38 の文言を軽微に変更したものの,内容的には同意のCQ である。したがって今回の改訂に際し,第3 版と同様の検索式を用いて,2012 年1 月1 日から2016 年6 月30 日に発表された論文について検索し,143 篇が抽出された。そのなかから「異なる塞栓物質あるいは抗癌剤使用の有無における治療成績の比較を行っている論文や,使用した抗癌剤の違いによる治療効果の比較を行っている論文を採用する」という方針の下に一次選択で15 篇の論文を採択した。さらに,二次選択で症例研究や症例数が30 例以下の前向き試験を除いて10 篇を採択し,最終的には第3 版の37 篇と合わせて47 篇を採択した。

イオダイズドオイル(リピオドール®)は,腫瘍血管および類洞にトラップされ停滞するため,抗癌剤を混合したリピオドールエマルジョンはドラッグデリバリーシステムにおける担体の役目を果たしている 1, 2)。一方で,球状塞栓物質のうち塞栓物質内に薬剤を含浸することができるものは,薬剤溶出性球状塞栓物質(drug-eluting beads;DEB)とよばれ,同様に担体としての役割を果たしている。

2008 年に発表された本邦におけるアンケート結果報告では,リピオドール® はTACE 例の90%以上で使用されており,本邦ではTACE 時にリピオドール® を使用するのが一般的といえる 3)が,第3 版の刊行時点では,まだ球状塞栓物質は本邦に導入されていなかった。その後,本邦でも特定保険医療材料として球状塞栓物質が保険適用となり,欧米同様,DEB を用いたTACE(DEB-TACE)あるいは球状塞栓物質のみでのTAE(bland TAE)が可能となった。

DEB-TACE とbland TACE 比較試験では,有効性と有害事象発現の比較において明らかな有意差は見出せなかったとの報告 4)もあるが,bland TAE と比較してDEB-TACE では有意に腫瘍壊死率が高いとの報告があり 5)球状塞栓物質を用いたTACE においてはDEB-TACE の方が一般的である。また,cTACE とDEB-TACE の比較試験では明らかな有効性の違いは見出せていない 6-9)ものの,cTACE の方が血中に放出される抗癌剤量が多いとされ 10),有害事象はcTACE においてより高度である 7, 8)とされている。欧州におけるコスト面の比較では,明らかな差はみられていない 11)

さらにDEB-TACE については,当初販売されていた製品よりも一回り小さいサイズの球状塞栓物質が追加された。ディーシービーズ® におけるサイズの違いによる比較試験では,100~300μm と300~500μm の比較において奏効率に差はないものの,小径の100~300μm で塞栓後症候群が少なかった 12)と報告されている。しかしながら,さらに小径の75~150μm と100~300μm の比較では,奏効率に差はないものの,より小径の粒子で胆道系の合併症が多くみられたと報告 13)されている。一方,ヘパスフィア® についてはcTACE に比べると血中への抗癌剤の漏出は少ないが,従来品である50~100μm とより小径の30~60μm の粒子間の比較はなされていない 10)

薬剤の比較においてはcTACE に際し,リピオドールエマルジョンとして使用される抗癌剤はエピルビシン,ドキソルビシン,マイトマイシンC,シスプラチン,ネオカルチノスタチンなどの使用が報告されている 2, 14-19)

2 種類の異なる抗癌剤(エピルビシンvs. ドキソルビシン)を使用したリピオドールエマルジョン注入後,ゼラチンスポンジ細片で塞栓療法を行った生存率のランダム化比較試験(RCT)では 20),両者間に副作用の差は認めず,低リスク群では後者の生存率が良好であった(p=0.018)が全体では両者間に差は認めていない。Low dose シスプラチンとドキソルビシンを用いたリピオドールエマルジョン注入後,塞栓(ゼラチンスポンジ細片使用,前者31%,後者50%)した症例での生存率比較では,前者が後者に比して有意に良好であった(p<0.05) 21)との報告や,切除不能進行肝細胞癌に対するシスプラチン製剤(アイエーコール®)を用いたシスプラチン・リピオドールサスペンジョンの肝動注化学療法の有用性に関する報告 22, 23)も多いが,いずれもエビデンスレベルの高いものはない。

シスプラチン・リピオドールサスペンジョンに多孔性ゼラチン粒などゼラチンスポンジによる塞栓を追加したTACE では,塞栓なしの肝動注化学療法の場合に比べて治療効果が優れるという報告がある 24)。また,シスプラチン・リピオドールサスペンジョンによるTACE とドキソルビシン・リピオドールサスペンジョンによるTACEの比較では,シスプラチンの治療効果が有意に高いとする報告 25, 26)と有意差はないとする報告 27)がある。

親油性でリピオドール® に懸濁しやすいプラチナ製剤であるミリプラチン(ミリプラ®)の有用性に関する報告 28, 29)もみられるが,いまだエビデンスレベルの高い臨床試験の報告はみられない。

リピオドール® とゼラチンスポンジ細片を併用したcTACE と,リピオドール® を用いるがゼラチンスポンジ細片を使用しない肝動注化学療法の比較では,cTACE が生存率を有意に向上させるという報告 30),生存率を向上させないという報告 31)があり意見が分かれる。

本邦では,肝細胞癌ではなく転移性肝癌治療において使用できる微小デンプン球を用いた肝細胞癌に対するTACE とcTACE の比較では有効性,安全性は同等であった 32)

本邦では未承認のため使用できないが,ベータ線放出核種であるイットリウム90(Y-90)を利用した球状塞栓物質による塞栓療法とcTACE との比較においては,有効性は同等であったものの,治療回数や有害事象発現率に優れており,入院日数も少なかったと報告 33)されている。

解説

近年のカテーテル,ガイドワイヤーシステムや血管造影下CT などの撮影機器の進歩により,腫瘍を栄養する動脈枝の同定支援および超選択的カテーテル挿入が可能となった。その結果,超選択的に大量の化学塞栓物質を肝動脈のみならず腫瘍周囲の門脈枝へも注入することが可能となった 1, 34)。これらのカテーテル挿入技術の進歩は腫瘍部への高濃度の抗癌剤の注入と動脈・門脈の両方の阻血により,カテーテルアブレーションともいうべき局所効果が期待できる状況となっている。その結果,抗腫瘍効果の向上と,非癌部肝組織の機能温存をもたらし,TACE/TAE による予後向上は著しいものがある 1, 18, 35, 36)。しかしながら,肝区域間や肝表面に位置する肝細胞癌では,肝外からの側副血行路を含めた複数の栄養血管が存在し,局所再発する頻度も高い 34, 37)。超選択的カテーテル挿入下TACE/TAE の生存率は良好な成績が多数報告されているが,エビデンスレベルの高い論文はいまだ認められていない 38, 39)

肝機能の良い進行肝細胞癌や小型肝細胞癌症例でのcTACE 施行後の予後は良好で,同法施行後切除標本の病理学的検討では抗腫瘍効果も高い 40, 41)。Cox’s proportional hazard model を用いた生存率では,cTACE とTAE 間に有意差を認めている(p<0.01) 41)。メタアナリシスでは,進行肝細胞癌に対するTACE がTAE に比して生存率が良好であるとの成績は得られていない 29)。その原因として,RCT のcTACE は,ほぼ全肝に施行されており,非癌部肝組織の障害が生存率低下の一大原因となっている可能性があり,そのような技術的側面が関与している点が示唆される 42)

従来より本邦で行われている,肝細胞癌に対するTACE/TAE に使用されてきた塞栓物質はゼラチンスポンジ細片であった 43)。2006 年には,無菌で,ある程度規格化された球形の塞栓物質である多孔性ゼラチン粒(粒子径1 mm と2 mm:ジェルパート®)が保険適用となり,ゼラチンスポンジ(スポンゼル®,ゼルフォーム®)の血管内投与は同年10 月に禁忌とされた。なお,多孔性ゼラチン粒は肝細胞癌に対するTACE/TAE には使用してよいが,他臓器や肝細胞癌以外の他疾患に対するTACE/TAE は適応となっていない 44, 45)。この多孔性ゼラチン粒の治療効果や副作用の発現率はかつて使用されてきたゼラチンスポンジ細片を用いたTACE/TAE と大差がないという短期間での成績が報告されている 45)したがって,現時点での本邦におけるcTACE とは,抗癌剤を混合したリピオドールエマルジョンと多孔性ゼラチン粒を使用したTACE を意味する。

球状塞栓物質においては,海外を中心にアクリル,ポリビニルアルコール,ゼラチンなど,各種の素材からなるものが多種類開発されている 20, 46, 47)。本邦では,球状塞栓物質が2014 年初頭より特定保険医療材料として保険適用となり,3 種類の球状塞栓物質が使用可能となっている。薬剤溶出能をもたないものはbland beads,薬剤溶出能をもつものはDEB と呼称されることが多く,薬剤溶出性球状塞栓物質は血管を塞栓するだけではなく,塞栓物質に薬剤をあらかじめ含浸し,塞栓後に周囲に徐放する性質をもっている。DEB はロードされた抗癌剤が腫瘍内に高濃度に残り,末梢血に流出しないことが薬物動態学的にも証明されている。したがって,抗癌剤による全身性の副作用が少なく治療効果の高い治療法であるとの短期成績が出ている 47)。肝細胞癌に対する肝移植後の摘出標本による両者の比較検討では,bland TAE よりもDEB-TACE で有意に腫瘍壊死率が高く 5),欧米においてはDEB-TACE の方がより標準的に行われている。

本邦で使用可能な薬剤溶出性球状塞栓物質はディーシービーズ® とヘパスフィア®の2 種類であり,これらは粒子径の調整された球状の永久塞栓物質で,そのサイズにより数規格導入されており,小径の製品が使用される頻度が高い。欧米では,同種のさらに小径の製品も販売されているものの,その有用性については明確には示されてはいない。技術的な側面から,本邦では欧米よりもより少ない量の抗癌剤を使用し,超選択的なTACE を行うことが一般的であるが,このような塞栓方法を行ったDEB-TACE とcTACE の有効性の比較においては,いまだそれぞれの優劣は明らかとはなっていない。

また,本邦には導入されていないものの,放射性核種であるY-90 を利用した球状塞栓物質による塞栓療法は放射線塞栓療法(transarterial radioembolization;TARE)とよばれ,塞栓効果と腫瘍内からの放射線照射を組み合わせた新たな塞栓療法 33)として主に欧米で確立しつつある。cTACE との比較では,有効性は同等であったものの,より多血性の性質が少ない腫瘍や脈管侵襲を伴った進行例での治療効果が期待される。

現時点でも本邦ではcTACE が主であり,欧米はDEB-TACE が主であるが,それぞれの有効性に明らかな違いは見出せていないので,肝動脈塞栓療法については両者の優劣がない状況として,両者のいずれかでの治療を行うことを強い推奨とした。

リピオドールエマルジョンとして使用される抗癌剤はエピルビシン,ドキソルビシン,マイトマイシンC,シスプラチン,ネオカルチノスタチン 2, 14-19)など,さまざまな薬剤が使用されている。さらに本邦では水溶性を高めた動注用シスプラチン製剤であるアイエーコール® が2004 年から,親リピオドール® に懸濁しやすいプラチナ製剤であるミリプラチンが2010 年より使用されているが,それらの違いによる有効性や安全性についてはエビデンスの高い報告がなされておらず,推奨される特定の抗癌剤はないとし,弱い推奨とした。

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CQ39
再塞栓療法の時期を決定する因子は何か?

推奨の強さ強い
多血性の局所再発の出現,他部位の新たな多血性肝細胞癌の出現が再塞栓療法の時期を決定する因子である。

背景

かつては繰り返し塞栓療法の有用性が注目されたが,使用するデバイスや塞栓物質が現在とは異なることもあるため,再塞栓療法を行う際,定期的な繰り返し塞栓療法を行うべきか,あるいは腫瘍増大時にon-demand で再塞栓療法を行うべきか明らかにする必要がある。そこで定期的再塞栓療法とon-demand に行う再塞栓療法の治療成績の比較を行い,再塞栓療法の時期を決定する因子について検討した。

サイエンティフィックステートメント

本CQ は第3 版のCQ39 の文言を軽微に改変したものである。今回の改訂に際し,前版と同様の検索式を用いて,2012 年1 月1 日から2016 年6 月30 日に発表された論文について検索し,234 篇が抽出された。そのなかから「再塞栓療法の時期を決定する因子について議論した論文,およびscheduled TACE とon-demand TACE の成績の比較を行っている論文を採用する」という方針の下に一次選択で28 篇,二次選択で1 篇の論文を新たに採用し,前版の17 篇と合わせて計18 篇を採用した。

1991 年,3 カ月に1 回の定期的塞栓療法が有効で,繰り返し塞栓療法を続行することで完全壊死症例が出現することをIkeda らが報告した 1)。その後,海外で進行肝細胞癌に対する2~3 カ月毎の定期的再塞栓療法と対症療法のRCT がなされたが,抗腫瘍効果は認めるも,生命予後の向上には寄与しないという結論であった 2-6)

一方,腫瘍増大時にon-demand で超選択的に再塞栓療法を行った場合,3 年生存率78%,77.1%という報告がある 7, 8)。根治治療後の再発腫瘍に対しての検討でも繰り返し塞栓療法が生存期間延長をもたらすとされている 9)。また,肝予備能が保たれた門脈腫瘍栓例に対する放射線併用繰り返し塞栓療法が生存期間延長をもたらすという報告もある 10)

一方,腫瘍増大もしくは腫瘍マーカー上昇時にon-demand で再塞栓療法を施行した施設の生存率が良好な報告が多い 11, 12)。しかしながら,2~3 カ月毎の短期間での定期的再塞栓療法と腫瘍増大時にon-demand で行う再塞栓療法間の成績を比較したRCT はなされていない 13)

Ernst らは,2 カ月に1 回,少なくとも3 回の定期的再塞栓療法と腫瘍が増大した時点でのon-demand で行う再塞栓療法を後ろ向きに比較検討し,定期的再塞栓療法はon-demand で行う再塞栓療法と比較して合併症が多く(p<0.001),累積生存率が悪い(p<0.001)との成績を得ており,できるだけ腫瘍増大時にon-demand で超選択的に再塞栓療法を施行することが重要であると述べている 11)。2002 年以降のレビュー論文でも,腫瘍増大時のon-demand な再塞栓療法を推奨する意見が多かった 12-16)。なお,繰り返し塞栓療法時の危険因子から予後推定スコアリングシステムを作成し,繰り返し塞栓療法の可否を判断する試みもある 17)

最近の論文では,初回治療として塞栓療法を行った連続症例に対してon-demand で塞栓療法を追加した場合の完全奏効率は初回塞栓療法48%,2 回目塞栓療法52%,3 回目塞栓療法55%であり,6 カ月後の再発率は初回塞栓療法37%,2 回目塞栓療法40%と報告されている。また,全生存期間は32 カ月であり,追加塞栓療法をon-demand で行った場合,2 回目の塞栓療法後の完全奏効率,再発率は初回塞栓療法後と同程度であることが示されている 18)

解説

定期的再塞栓療法と腫瘍増大時にon-demand で行う再塞栓療法間の治療成績を比較したRCT はなされていないが,後方視的な検討結果や近年のレビュー論文の趨勢からは,再塞栓療法は画像診断で多血性の肝細胞癌の局所再発あるいは他部位での新規発生が確認された時点で背景肝の状態などを考慮したうえで施行の可否を決定されるべきといえる。

なお,第3 版までは腫瘍マーカー上昇も再塞栓時期決定の因子として含まれていたが,腫瘍マーカー上昇だけで再塞栓療法を行うことはほとんどなく,通常は画像で再発の確証を得たうえで治療を開始することから,推奨決定会議で議論のうえ今版では腫瘍マーカーの上昇という文言は推奨文から除外し,多血性の局所再発の出現,他部位の新たな多血性肝細胞癌の出現を再塞栓療法の時期を決定する因子として,強い推奨とした。

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CQ40
TACE の効果判定に有用な画像診断は何か?

推奨の強さ強い
Dynamic CT もしくはdynamic MRI が推奨される。

背景

TACE の効果判定にさまざまなモダリティが用いられており,高いエビデンスレベルで推奨される画像診断の検討が必要である。TACE の効果判定に有用な画像診断について検討した。

サイエンティフィックステートメント

今回の改訂に際し,第3 版と同様の検索式を用いて,2012 年1 月1 日から2016 年6 月30 日に発表された論文について検索し,247 篇が抽出された。そのなかから「TACE の効果判定について適切な手法により検討されているものを採用する」という方針の下に一次選択で35 篇,二次選択で9 篇の論文を新たに採用し,第3 版の11 篇と合わせて計20 篇を採用した。

CT がTACE の効果判定の第一選択であることは,広く一般的な見解である。リピオドール CT において病変に完全にリピオドール® が集積した場合は病変の98%,集積が不完全な場合は病変の64%に壊死がみられ,集積パターンにより治療効果判定が可能とされている 1)。腫瘍内のリピオドール® 集積が不完全であると,造影剤による濃染と不均一なリピオドール® 集積の区別が困難になり,さらにリピオドール® 集積が病変部の血流動態に影響を与えると腫瘍濃染の判定が難しくなるが 2),dual-energy CT を用いたヨードマップによりリピオドール® の集積を有する症例における再発を描出する試みが第3 版の発刊以降に報告されている 3)

造影超音波によるTACE 治療効果判定の報告では,残存腫瘍の診断能の検討において造影CT よりも優れており 4),TACE 施行翌日の造影超音波がTACE 施行1 カ月の造影CT よりも残存病変の検出において高い感度を示したとされている 5)

TACE 手技中に施行するコーンビームCT についての報告では,腫瘍の辺縁にそってみられる造影剤貯留がTACE 治療効果と関連があること 6),コーンビームCT による灌流画像により残存病変の評価が可能であること 7)などが報告されているが,現時点ではTACE 治療効果判定についてのまとまった報告はまだない。

Dynamic MRI のTACE 後治療効果判定における有用性については1990 年代より報告されている 8, 9)。Dynamic CT とdynamic MRI の比較において,残存病変を過小評価する傾向がCT にみられ 10),移植肝を用いた検討ではMRI はCT よりも高い感度および特異度を示したとされている 11)。リピオドールCT,パワードプラー超音波,dynamic MRI の比較においてはMRI が感度,特異度,正診率において優れていたとされている 12)。TACE 施行1 カ月後のdynamic MRI においてみられる腫瘍濃染がTACE施行6 カ月後の再発巣と高い一致を示し,再発予測の可能性も示されている 13)

MRI の拡散強調像による報告では,肝移植での検討で病変部の完全な壊死の評価においてdynamic MRI の方が優れており 14),TACE 後の再発予測の検討ではリピオドールCT と有意差はみられなかったとされている 15)。Dynamic MRI に拡散強調像を付加することによりTACE 施行後の再発病変の検索において感度は上昇するが,特異度は低下して正診率は変わらないとされており 16),拡散強調像の顕著な有用性は示されていない。拡散強調像で得られるパラメータであるapparent diffusion coefficient(ADC)によるTACE 治療効果判定を検討する報告がいくつかある。TACE 治療後早期のADC がTACE の治療効果判定に有用であり 17),またTACE 治療前後においてADC が低い症例ではTACE 治療効果が不良であったとされている 18)

FDG-PET を用いたTACE 治療効果判定が前版以降にあり,TACE 治療後早期でのFDG-PET による治療効果判定が生存期間と関連がみられたとされており 19),リピオドール® が高度に集積している症例においてCT よりもTACE 後の残存病変の判定に有用であったとされている 20)

解説

TACE の治療効果判定は,病変の治療効果評価のみならず,治療方針の決定にも関わる。血中AFP は肝細胞癌のマーカーであるが,TACE 後の再発において異常値とならない症例もしばしばあり,画像が治療効果判定において重要である。TACE の治療効果判定としてdynamic CT が一般的に用いられているが,リピオドール® 集積そのものの高い吸収値やビームハードニング効果などにより局所再発の評価が困難な場合がある。リピオドール® 集積に対するdual-energy CT の有用性について検討が今後続けられると考えられる。MRI においてリピオドール® による病変描出の妨げはなく,造影剤を用いることにより残存病変を濃染像として描出することが可能である。また,高速3D dynamic 撮影法によりCT にも匹敵する薄いスライスでの撮影が可能になり,部分容積効果の影響を受けることなく,微小な濃染を捉えることが可能である。電離放射線被曝がないことも利点の一つである。ADC の利用も含め検討が進められると考えられる。コーンビームCT,FDG-PET,造影超音波による検討も出てきており,補助的な運用が想定される。TACE 直後の評価により最終的な治療効果判定を予測する方向もあり,今後のTACE 治療後判定の方向性の一つと考える。

検査費用や検査時間の観点より,すべての症例の治療効果判定にMRI を利用することは現実的ではなく,またCT を用いた治療効果判定も臨床的には十分な有用性がある。よって,dynamic CT とdynamic MRI の双方を本ガイドラインでは強く推奨する。

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CQ41
塞栓療法と分子標的治療薬を併用するのは適切か?

推奨の強さ弱い
塞栓療法と分子標的治療の併用は,生存期間延長の効果を示す十分な科学的根拠がないので推奨しない。

背景

本CQ は,分子標的治療薬であるソラフェニブが広く用いられるようになり,局所療法との併用療法の成績も報告されてきたなかで,今版で新規に設定されたCQ である。

サイエンティフィックステートメント

論文選択として,1982 年1 月1 日から2016 年6 月30 日に発表された論文について検索し,105 篇が抽出された。そのなかから「分子標的治療薬として肝細胞癌に保険適用となっているソラフェニブと塞栓療法の併用療法の論文を採用する」という方針の下に一次選択で45 篇,二次選択で15 篇の論文を採用した。

TACE とソラフェニブの併用療法の成績は近年数多く報告されている。前向き研究では,第II 相試験として切除不能例に対するDEB-TACE とソラフェニブの併用療法が2011 年に報告されており,安全性には問題がなく,忍容性があるという結果であったが,症例数が少ない 1)。またChao らが多施設共同第II 相試験として,切除不能例に対するcTACE とソラフェニブの併用療法を報告しており,3 年生存率は86.1%であった 2)。他にもDEB-TACE/cTACE との併用療法の第II 相試験が複数報告されており,概ね安全に施行可能であり,有効性が期待される結果であった 3-5)

RCT としては,Lencioni らのBCLC Stage B(intermediate stage)に対するDEB-TACE とソラフェニブ(プラセボ対照)併用療法の第II 相試験であるSorafenib or Placebo in Combination with TACE for Intermediate Stage HCC(SPACE)試験が報告されているが,無増悪期間において臨床的に意味のあるソラフェニブの上乗せ効果は証明できなかった 6)。他にも同様の対象でcTACE とソラフェニブ(プラセボ対照)併用療法の単一施設での試験が実施されており,ソラフェニブ併用群で無増悪期間の有意な延長が得られたと報告された 7)。また日韓で行われたcTACE 後のソラフェニブ(プラセボ対照)併用の第III 相試験では,無増悪期間の有意な延長を得ることができなかったが,TACE 後のソラフェニブ開始時期など試験デザインが影響した可能性があるとされた 8)

大規模レジストリー観察研究であるGlobal Investigation of Therapeutic Decisions in Hepatocellular Carcinoma and of its Treatment with Sorafenib(GIDEON)では,TACE とソラフェニブの併用療法は有効な可能性があると報告しているが,ソラフェニブ単独群とは患者背景が異なり十分な根拠とは言い難い 9)。本来のソラフェニブの適応とされるBCLC Stage C(advanced stage)に対してのTACE とソラフェニブの併用療法の有効性を示唆する報告もあるが,ほとんどが後ろ向きコホート研究であり,RCT の報告はない 10-13)。メタアナリシスも報告されているが,採用された文献のうちRCT のものは限られており,エビデンスレベルは決して高くない 14, 15)

解説

塞栓療法とソラフェニブの併用療法は,安全性については問題がなく忍容性があり,有効性が期待されるという報告が多いが,多くは後ろ向きコホート研究か単一アームの第II 相試験相当であり,大規模な第III 相試験でのソラフェニブ単独療法に対する併用療法の有効性を示した報告はない。したがって,塞栓療法と分子標的治療の併用は,生存期間延長の効果を示す十分な科学的根拠がないので,現時点では推奨はできない。ただし,今後有効性を示唆する報告が新たに出てくる可能性もあり,推奨度は「弱い推奨」とした。

参考文献

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CQ42
どのような場合にTACE 不応と考えるか?

推奨の強さ弱い
暫定的に以下の3 条件のいずれかを満たした場合をTACE 不応とみなしてもよい。
①2 回のTACE を行っても標的病変の治療効果が不十分か,新たな肝内病変の出現
②脈管侵襲,肝外転移の出現
③腫瘍マーカーの持続的な上昇

背景

肝機能がChild-Pugh 分類A またはB で,脈管侵襲がなく,肝内に多発肝細胞癌を認め,そのうち1 病変は3 cm を超える病変であるか,4 個以上の病変が認められる場合にTACE が推奨される。TACE は有効な治療法で肝細胞癌患者の予後に貢献する。しかし,再発病変に対して治療を重ねていくうちに腫瘍制御が困難となったり,肝機能の悪化を招くこともしばしば経験する。2009 年から分子標的治療薬が導入された。TACE 不応となった症例に対し,TACE を繰り返すよりも分子標的治療に切り替えた方が患者予後延長に貢献するといった報告もみられる。したがって,適切な時期にセカンドラインの治療に切り替えるうえで,TACE 不応を定義することは重要である。このCQ は今回第4 版で新たに設定されたものである。

サイエンティフィックステートメント

「hepatocellular carcinoma」,「TACE・embolization」,「refractory・failure」をキーワードとして,1982 年1 月1 日から2016 年6 月30 日に発表された論文を検索し,113 篇が抽出された。そのなかから「TACE 不応の定義について言及している論文,TACE 不応後の治療や予後,TACE 不応の予測因子について議論している論文を採択する」方針の下に一次選択で43 篇,二次選択で11 篇の論文を採用した。

2012 年に本邦から以下のTACE 不応の定義が専門家のコンセンサスとして提唱された 1)。①TACE を適正に施行したにもかかわらず直後の治療効果判定CT にて標的病変のリピオドール沈着が不良(50%以下)の場合,あるいは肝内新病変が多数出現する場合が2 回以上続く,②脈管侵襲の出現,③遠隔転移の出現,④TACE 施行直後にもかかわらず,腫瘍マーカーの一過性の低下のみで上昇傾向が続く。2014 年には,球状塞栓物質の導入や判定時期も考慮され,①の肝内病変に対する記載が次のように改定された 2)。「①薬剤変更や選択血管の再検討を考慮したTACE 施行1~3 カ月後の治療効果判定のCT/MRI にて,治療結節の造影効果(50%以上)が残存する場合が2 回以上続くか,あるいは肝内腫瘍個数が増加している場合が2 回以上続く」。2 回のTACE の根拠として,栄養動脈が異なる場合や薬剤変更によって効果が異なることが想定されている。

TACE 不応の判断時期に関する明確な科学的根拠はないが,1 回のTACE で治療効果が得られなくても2 回目のTACE で良好な治療効果が得られれば予後が延長するという報告から,2 回以上の治療後にTACE 不応を判断することは適当であると考えられる 3)。上記定義によりTACE 不応と判定された後もTACE を続けた場合の予後は,11.5 カ月から15.3 カ月と報告されている 4-6)。後ろ向き研究ではあるが,TACE 不応後,TACE を繰り返すよりもソラフェニブ投与を行った方が予後の延長が得られるという報告や 4, 5),TACE 単独よりTACE とソラフェニブ投与の併用療法を行った方が良好な予後が得られるといった報告も散見され 6),TACE 不応後も適切なセカンドラインの治療へ移行することにより患者の予後延長が得られる可能性が示されている。TACE 不応後にソラフェニブ治療に移行した症例では,24.7 カ月から25.4 カ月の生存期間中央値が報告されている 4, 5)。ソラフェニブ治療の他にも,TACE に用いる薬剤をエピルビシンからプラチナ製剤へ変更したり 7),塞栓物質を球状塞栓物質に変更したりすることで 8)良好な奏効率が得られるとの報告もある。

TACE 不応にはHIF-1αやVEGF,C-Met が関与するとの研究も進んでいる 9, 10)。また,IL-8 などのバイオマーカーを術前に測定することでTACE 不応を予測するといった試みも始まっている 11)

解説

現在使われているTACE 不応の定義は専門家のコンセンサスから暫定的に決定されたものである。いくつかの検証で一定の妥当性は認められており,TACE 不応後にセカンドラインの治療へ移行する際の一助となることが示されているが,科学的根拠がいまだ十分であるとはいえない。

推奨決定会議においては,現在用いられているTACE 不応の定義は一定の妥当性は認められるものの,これまでこの定義を検証した報告は後ろ向き研究のみであるとの討議がなされた。このため,推奨は弱い推奨と決定された。

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第7 章 薬物療法

はじめに

肝細胞癌に関しても,他の癌腫と同じように分子標的治療薬が用いられるようになり,最近は免疫チェックポイント阻害薬の効果が検討されている。これまで本章は「化学療法」としていたが,今回の改訂から「薬物療法」と改めることになった。

肝細胞癌に対する薬物療法は,2008 年に進行肝細胞癌に対してソラフェニブとプラセボを比較した二重盲検ランダム化比較試験(SHARP 試験)の報告で,ソラフェニブがプラセボと比較して生命予後を改善することが示されたことから始まる。これまでの肝細胞癌に対する薬物療法の報告には,このような大規模な二重盲検ランダム化比較試験で生命予後を改善することを示した報告はなく,このSHARP 試験が薬物療法により予後改善を示した最初のエビデンスレベルの高い結果であった。この結果からソラフェニブが進行肝細胞癌に対する薬物療法の標準的治療となった。この後,進行肝細胞癌に対する薬物療法の開発試験が次々と行われ報告されている。

一次治療として分子標的治療薬などさまざまな薬物がソラフェニブと比較されたが,ソラフェニブと比較し優越性または非劣性を示すことができた薬剤はなく,2017 年6 月の米国臨床腫瘍学会(ASCO)にてレンバチニブが初めて非劣性を示すことが報告されている。現在,免疫チェックポイント阻害薬の一つであるニボルマブとソラフェニブを比較する臨床第III 相試験が行われている。

また,ソラフェニブ治療後の二次治療としてもさまざまな薬物がプラセボを対照として検討されたが,優越性を示すことのできた薬剤はなかった。しかし,2017 年1 月にソラフェニブにて進行のあった症例に対して,レゴラフェニブの生存期間延長が報告された。これはソラフェニブ治療後の二次治療として初めて優越性を示すことができた結果であり,本邦でも2017 年6 月より肝細胞癌に使用が承認された。また一次治療と同じように,免疫チェックポイント阻害薬の一つであるペムブロリズマブがプラセボを対象としてソラフェニブ後の二次治療として臨床第III 相試験で検討されている。

一方,本邦では以前から肝内進行例に対して肝動注化学療法が行われてきているが,本邦でソラフェニブが用いられるようになった以降も,主要脈管侵襲例を中心に実臨床では依然として行われている。

今回CQ を見直し,2013 年版(第3 版)のCQ44「ホルモン療法は有効か?」は,本邦では肝細胞癌の治療としてホルモン療法を用いることはないために削除した。また,CQ41「全身化学療法はどのような症例に行われるか?」とCQ43「化学療法(薬物療法)で有効な治療は何か?」を統合して,今版ではCQ43「切除不能進行肝細胞癌に分子標的治療を行うか?」とした。

今回の改訂では,2016 年6 月までの英文論文に対して,各CQ に設定した検索式により該当した論文について独立した2 名により検索し,abstract を評価し,論文形式,症例数,研究デザインを基に選択を行った。意見の不一致については議論のうえ解決した。これまでと同様,塞栓を含む治療,手術前後の薬物療法,臨床第I 相第II 相レベルの開発中の薬剤やすでに使用されなくなった薬剤を用いたものは除外し,さらに抗腫瘍効果判定があいまいなものも除外した。記載不十分やデータ抽出の重複のあるシステマティックレビューも除外した。

また,今回から検索期限の2016 年6 月以降に発表または報告された大規模ランダム化比較試験の結果に関する論文および学会報告についてもできるだけ取り上げることにした。

推奨は推奨決定会議にて決定し,本文は論文を抽出した2 名のうち1 名が作成し,もう1 名がレビューを行い完成した。

薬物療法の章では,肝細胞癌に対する薬物療法の開発試験が現在も多く行われている。そのため,次の改訂までにいくつかの新しいエビデンスが発表され,これらの薬剤が保険収載されることが予想される。これらの新規薬剤に関しては,学会発表や論文発表された時点ではなく,保険収載となった時点で,すみやかにエビデンスを評価し推奨に正式に反映し,日本肝臓学会ホームページなどにて公開していく方針となった。

CQ43
切除不能進行肝細胞癌に分子標的治療を行うか?

推奨の強さ強い

外科切除や肝移植,局所療法,TACE が適応とならない切除不能進行肝細胞癌で,PS 良好かつ肝予備能が良好なChild-Pugh 分類A 症例に,一次治療としてソラフェニブまたはレンバチニブによる治療を推奨する。

推奨の強さ強い
二次治療として,ソラフェニブ治療後画像進行を認め,ソラフェニブに忍容性を示したChild-Pugh 分類A の症例にレゴラフェニブによる治療を推奨する。

背景

肝細胞癌は高頻度に再発を繰り返し,最終的に外科切除や肝移植,局所療法,肝動脈化学塞栓療法(TACE)の適応とならない進行肝細胞癌に進展することが多い。このような切除不能肝細胞癌に対して分子標的治療薬であるソラフェニブの有効性が2008 年に報告された。この報告は薬物療法とプラセボを比較した最初の報告である。その後分子標的治療薬の多くの開発治験が行われている。進行肝細胞癌症例に対する分子標的治療法について推奨を検討する。

サイエンティフィックステートメント

今回のCQ は,第3 版のCQ41「全身化学療法はどのような症例に行われるか?」とCQ43「化学療法(薬物療法)で有効な治療は何か?」を統合して作成した。第3 版の検索式を変更し,2012 年1 月1 日から2016 年6 月30 日に発表された論文について検索し,95 篇が抽出された。そのなかより,ランダム化比較試験(RCT)とサブグループ解析,システマティックレビューを一次選択で18 篇を選択し,さらに二次選択で11 篇を新たに採用した。重要論文として,2017 年7 月以降に発表された論文2 篇,学会報告2 篇を採用し,第4 版では新たに計15 篇を採用した。第3 版で採用した16 篇からは,今回の論文選択基準に合致した2 篇のみを採用し,合わせて17 篇を採用した。

ソラフェニブは,外科切除や肝移植,局所療法,TACE が適応とならない症例のうち,performance status(PS)が良好で,肝機能がChild-Pugh 分類A 症例を対象として,プラセボと比較して有意に生存期間延長を示した 1, 2)。サブグループ解析でもどのサブグループにおいてもソラフェニブの有効性が示された 3-5)。また,システマティックレビューにてもソラフェニブの効果と安全性が報告された 6)

一次治療として,ソラフェニブとスニチニブ,brivanib,linifanib を比較するRCT が行われたが優越性または非劣性を示す有意な結果はみられなかった 7-9)。ソラフェニブとレンバチニブを比較したRCT にて生存期間延長における非劣性が報告された 10)

二次治療として,ソラフェニブ治療後の症例に対して,プラセボとbrivanib,エベロリムス,ラムシルマブ,S-1,tivantinib を比較するRCT が行われたが生存期間を延長する結果はみられなかった 11-15)。ソラフェニブ治療後画像進行を認め,ソラフェニブに忍容性のある(治療終了前28 日間で20 日以上の期間400 mg 以上の内服が可能)Child-Pugh 分類A の症例に対してプラセボとレゴラフェニブを比較したRCT ではレゴラフェニブは有意な生存期間延長を示した 16)

ソラフェニブに対するエルロチニブの併用効果を検討するRCT が行われたが有意な生存期間延長を示さなかった 17)

解説

今回のCQ では,RCT が多く報告されており,第3 版で採択された全身化学療法の効果因子に関する報告はCQ の内容と異なるために削除した。またChild-Pugh 分類B に関するソラフェニブの報告も今回採用したRCT と比較するとエビデンスレベルが高くないために削除した。TACE 後やTACE の補助,他の抗癌剤や局所療法との併用として採択されていた報告もRCT はなかったために削除した。

ソラフェニブは2008 年にSHARP 試験としてプラセボと比較して生存期間延長を示し,その後2009 年にAsia-Pacific 試験として同じく生存期間延長を示した 1, 2)。これらの報告では,外科切除や肝移植,局所療法,TACE が適応とならない切除不能進行肝細胞癌で,PS 良好かつ肝予備能が良好なChild-Pugh 分類A 症例を対象としており,ソラフェニブの治療対象もこの適応を対象とした。これらの報告のサブグループ解析や既報のシステマティックレビューでもソラフェニブの有効性が示されており 3-6),切除不能肝細胞癌に対するソラフェニブの有効性に関して十分に高いエビデンスがあるため,強い推奨とした。本邦では2009 年5 月よりソラフェニブは肝細胞癌に保険適用され,すでに8 年以上の間に多くの症例に用いられている。

進行肝細胞癌に対するソラフェニブの有効性の報告をきっかけに,ソラフェニブをコントロールとして,スニチニブ,brivanib,linifanib といった分子標的治療薬,ソラフェニブとエルロチニブの併用療法が検討されたがいずれのRCT も主要評価項目である生存期間に対する優位性または非劣性を示すことができなかった 7-9, 17)。しかし,2017 年のASCO annual meeting でレンバチニブがソラフェニブと比較して主要評価項目である非劣性を示すことが報告された 10)。本薬剤は2018 年3 月に保険適用され,一次治療の選択肢として推奨される。

ソラフェニブ治療後の二次化学療法では分子標的治療薬brivanib,エベロリムス,ラムシルマブ,殺細胞性抗癌剤のS-1 がプラセボと比較検討されたが,主要評価項目である生存期間に対する優位性を示すことができなかった 11-14)。肝細胞癌腫瘍組織中のMET 高発現症例のみを対象としてtivantinib をプラセボと比較検討されたが生存期間に対する優位性を示さなかった 15)。ソラフェニブ治療後画像進行を認め,ソラフェニブに忍容性のある(治療終了前28 日間で20 日以上の期間400 mg 以上の内服が可能)Child-Pugh 分類A の症例に対して,レゴラフェニブとプラセボを比較したRegorafenib after Sorafenib in Patients with Hepatocellular Carcinoma(RESORCE)試験では,レゴラフェニブは初めてソラフェニブ治療後の二次化学療法として生存期間に対する優位性を示した 16)。この報告からソラフェニブ治療後の二次化学療法としてレゴラフェニブを推奨に加えた。ただし,二次化学療法を検討した他の報告と比較して,対象症例の選択基準に特徴があるため,ソラフェニブ治療後画像進行を認め,ソラフェニブに忍容性を示したChild-Pugh 分類A の症例に推奨するとし,強い推奨とした。会議では強い推奨とすることに慎重であるべきという意見もあった。

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CQ44
切除不能進行肝細胞癌に肝動注化学療法は推奨されるか?

推奨の強さ弱い
外科切除や肝移植,局所療法,TACE が適応とならない肝内病変進行肝細胞癌では,肝動注化学療法による治療を行ってよい。

背景

肝動注化学療法は,その手技の特殊性はあるものの国内では多数例を対象に実施されてきた。高濃度の抗癌剤を肝細胞癌に直接投与することが可能であり,また結果として全身の抗癌剤の濃度も低く抑えられ,全身への副作用の頻度は低くなると考えられている。切除不能進行肝細胞癌に対する肝動注化学療法の推奨について検討する。

サイエンティフィックステートメント

第3 版までの論文に加え,新たに設定した検索式を用い,2012 年1 月1 日から2016 年6 月30 日まで66 篇が抽出された,一次選択で14 篇の論文を選択した。肝動注化学療法が50 例以上施行された試験結果を中心に,二次選択で10 篇の論文を採用し,さらに2016 年7 月以降に発表された論文を含む2 篇の論文をハンドサーチにて加え,最終的に12 篇の論文を採用した。第3 版の論文14 篇と合わせ,26 篇を採用した。

肝細胞癌に対する肝動注化学療法をbest supportive care(BSC)あるいはソラフェニブと比較し,予後改善を証明した大規模比較試験はなかった。

インターフェロン全身投与とシスプラチン肝動注を併用したインターフェロン・シスプラチン併用肝動注群を,シスプラチン単独肝動注群,BSC 群と比較した小規模のRCT 1)で,インターフェロン・シスプラチン併用肝動注群で生存期間中央値はシスプラチン単独肝動注群,BSC に比較して有意に延長がみられた。インターフェロン併用5-FU 肝動注化学療法の成績をヒストリカルコントロールと比較した報告 2)では,生存率の有意な改善がみられた。日本肝癌研究会のデータベースに登録された初発肝細胞癌症例を対象とした検討にて,5-FU とシスプラチンを用いた肝動注化学療法施行群とBSC 群をプロペンシティスコアを用いてマッチさせた解析 3)では,BSC に比較して肝動注化学療法施行群では予後が良好(ハザード比:0.60,p<0.0001)であり,4 結節以上,または門脈腫瘍栓例でも同様に肝動注化学療法施行群では予後が良好であった。

肝動注化学療法とソラフェニブをプロペンシティスコアを用いてマッチさせた後ろ向きコホート研究の結果 4, 5)では,5-FU とシスプラチンを用いた肝動注化学療法は,ソラフェニブと比較し予後に有意差を認めなかった。

シスプラチン肝動注化学療法のソラフェニブへの上乗せ効果を検討した第II 相試験 6)では,シスプラチン肝動注化学療法併用がソラフェニブ単独より予後が良好であった。

5-FU をベースとする肝動注化学療法の治療成績を肝予備能別に検証した検討 7)では,Child-Pugh スコア5~7 点と比較し,Child-Pugh スコア8/9 点では,奏効率,予後ともに不良であった。

解説

肝動注化学療法の奏効率は0~71%と腫瘍縮小効果はみられるもののばらつきも大きく,また生存期間延長を十分に証明した報告はない(付表)。上記のインターフェロン・シスプラチン併用肝動注化学療法の報告はRCT であるが,症例数などの設定根拠は記載されずRCT としてのデザインに問題がある。肝動注化学療法の生存期間については,生存期間中央値で2.6~17.6 カ月と報告されておりばらつきがみられている(付表)。これは対象症例の腫瘍進展度や肝予備能の違いによるものと考えられる。ヒストリカルコントロールとの比較 2)や,プロペンシティスコアを用いてマッチさせた後ろ向き研究にてBSC と比較し予後改善があったという報告 3)があり,予後改善の可能性があると考えられるが,大規模なRCT にて比較した報告はなくエビデンスレベルは高くない。しかし,本邦では分子標的治療薬であるソラフェニブによる治療ができるようになっても,主要門脈侵襲症例や肝内多発例など肝内進展例に依然として行われていることから,肝内病変進行肝細胞癌の治療として行ってよいとして,弱い推奨とした。

肝動注化学療法の予後改善を証明するにはソラフェニブなどの分子標的治療薬との質の高い比較試験が望ましいが,現実的には難しく,行われていない。また臨床第II相試験では肝動注化学療法と分子標的治療薬の併用療法が有効との報告 6, 8)があったが,臨床第III 相試験 9)では再現されなかった。

参考文献

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CQ45
薬物療法の治療効果予測因子は何か?

推奨の強さなし
薬物療法において,科学的根拠のある治療効果予測因子はない。

背景

薬物療法は奏効などの治療薬剤に対して有効性を示した場合には治療により,より大きなベネフィットを得ることができる。そのため,薬物療法における治療効果を予測する因子について推奨を検討した。

サイエンティフィックステートメント

第3 版において,肝細胞癌の標準治療薬であるソラフェニブを用いた治療効果予測因子・予後因子について検討した報告は5 篇あった。今回の改訂で新たに設定した検索式により検索した結果,2012 年1 月から2016 年6 月までの期間において,肝細胞癌・薬物療法・治療効果予測に関する論文は69 篇が抽出された。そのなかから一次選択で17 篇を選択し,二次選択で治療前予測因子の解析や根治術後の解析に関する報告を省き,かつ信頼度の高い論文として9 篇を採用した。最終的に第3 版の5 篇と合わせ14 篇を採用した。

治療効果予測因子として皮膚毒性 1)やAFP 値の低下 2-4)が示され,複数の血清マーカーの組み合わせによる治療効果予測も多数報告された 5-10)。また,治療中の肝予備能の変化が予後と相関することも示唆された 4, 11)。治療による有害事象での中止群,肝外転移のない群,脈管侵襲のない群,PS が良好な群は長期生存が期待できるとの報告もあった 12)。一方,予後不良因子として肺転移の存在が示された 13)。また,画像関連ではCT を用いて治療前後の腫瘍の血流を評価することや 4),MRI での治療前後での変化〔Ktrans の変化とapparent diffusion coefficient(ADC)の増加〕が予後予測に有用であることが示唆された 14)

解説

薬物療法の治療効果予測因子はFDA(Food and Drug Administration;米国食品医薬品局)により確実性のエビデンスレベルに応じてknown valid,probable valid,exploratory のクラスに分けられている。肝細胞癌に対するソラフェニブ治療の効果予測因子として現在まで確立されたものはなく,その候補としては,治療前および治療後でのAFP 低値 2-4),治療前のIGF-1 9),Angiopoietin 2 やVEGF の低値 7, 10),Child-Pugh スコアが低いこと 4, 11)などが予後良好の予測因子として挙げられていたが,いずれの報告も大規模で前向きに検討したものではなかった。よって,「薬物療法において,科学的根拠のある治療効果予測因子はない」とし,推奨の強さは「推奨なし」と判断した。

参考文献

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CQ46
薬物療法の治療効果判定はどのようにするか?

推奨の強さ強い
分子標的治療の効果判定においては,壊死部分と生存腫瘍部分を正しく評価する必要があるため,腫瘍内血流を考慮した基準を用いる。

背景

一般的な化学療法の治療効果判定にはこれまで腫瘍の縮小を評価したWHO 基準やRECIST が用いられてきた。典型的な肝細胞癌は多血性であり,ソラフェニブのエビデンスが登場してから腫瘍内血流の低下も注目されるようになった。肝細胞癌に対する薬物療法の治療効果判定に関する推奨を検討する。

サイエンティフィックステートメント

第3 版に加えて,2012 年1 月から2016 年6 月30 日までの期間の論文に対して,新たに設定した検索式にて,肝細胞癌の効果判定に関係する論文を141 篇抽出した。そのなかから一次選択として24 篇を選択し,二次選択にて総説や少数例の臨床試験を除く2 篇を採用した。2016 年7 月以降の重要な論文として大規模治験データベースを用いたmodified RECIST(mRECIST)の妥当性を検討したLencioni らの論文 1)を採用し,最終的に今回3 篇を採用し,第3 版の7 篇と合わせて10 篇を採用した。

WHO 基準 2)に始まる各種治療効果判定基準は,臨床試験,治験を行う場合の共通言語として設定された判定基準である。RECIST1.1 は現在最も汎用されている基準であるが,肝細胞癌においては,腫瘍内血流を考慮したmRECIST,EASL 基準,RECICL,Choi 基準などが用いられている 1, 3-8)

ソラフェニブの治療効果を,RECIST1.1,mRECIST,Choi 基準で比較するとChoi 基準がソラフェニブの治療効果を反映していた 9)。ソラフェニブの治療効果をdual-energy CT でのvolumetric iodine uptake の変化で検討し腫瘍生存部を明確に評価することができた 10)。ソラフェニブ治療後のbrivanib とプラセボの比較試験症例でmRECIST による奏効割合は生存期間の代替指標となり得ると報告された 1)

解説

肝細胞癌治療においては,通常の殺細胞性抗癌剤を用いた化学療法とは異なり,焼灼療法,塞栓療法など,必ずしも腫瘍の縮小を伴わない治療が行われる。また,ソラフェニブに代表される血管新生抑制作用をもった分子標的治療薬の場合も,腫瘍縮小を伴わない腫瘍壊死がみられることが多いことから,生存腫瘍部位と壊死部位を判定項目に入れた効果判定基準が提唱されている。すなわちmRECIST 6)や日本肝癌研究会の効果判定基準であるRECICL 7),欧州肝臓学会の基準であるEASL 基準 8)が肝細胞癌治療効果判定において用いられている。ただしこれらの判定基準における問題点としては,いずれも壊死部分の客観的判断が難しい場合があることが挙げられる。いずれにせよ肝細胞癌に対する分子標的治療においては壊死部分,生存腫瘍部分を正しく評価する必要があるため,腫瘍内血流を考慮した基準を用いることを強く推奨することにした。

一方で,現在の評価基準は2D 評価であり,複雑な形態をとる腫瘍をどこまで正しく評価できるかどうかという点においては限界がある。近年の技術の進歩により3D のvolume 評価が可能となってきており,3D による腫瘍評価の報告もある 10)

参考文献

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CQ47
薬物療法の副作用とその対策は何か?

推奨の強さ強い
汎血球減少を合併していることが多いため,殺細胞性抗癌剤の使用にあたっては,血液毒性に十分注意する必要がある。
分子標的治療では,各薬剤に固有の高頻度または重篤な副作用が報告されており,慎重に経過観察し,減量・休薬を含め適切に対処する必要がある。

背景

肝細胞癌は背景に慢性肝疾患を有するため,汎血球減少や肝機能低下を合併していることが多い。このため薬物療法を行うにあたり細心の注意が必要である。肝細胞癌に対する薬物療法における副作用とその推奨について検討する。

サイエンティフィックステートメント

第3 版に加え,2012 年1 月から2016 年6 月30 日までの肝細胞癌の副作用に関係する論文を新しく設定した検索し抽出した153 篇のなかから,一次選択として140 篇を選択し,二次選択として総説や症例数の少ない臨床試験を除く18 篇を今回採用した。第3 版までの7 篇と合わせ25 篇を採用した。

解説

肝細胞癌のほとんどが慢性肝炎や肝硬変などの慢性肝疾患を背景に有するため,治療前から白血球,赤血球,血小板などの血球減少がみられることが多い。殺細胞性抗癌剤には副作用として骨髄抑制があるので,血液毒性に十分注意する必要がある 1)。このため殺細胞性抗癌剤の使用にあたっては,血液毒性に十分注意することを強く推奨した。

一方,ソラフェニブをはじめとする分子標的治療薬においては,薬剤固有の副作用がある。ソラフェニブにおいては,約80%程度に何らかの副作用がみられ,頻度の高いものは,手足症候群,皮疹・落屑,下痢,食欲不振,高血圧症,疲労,脱毛,悪心であった 2, 3)。ほかにもさまざまな分子標的治療薬の大規模臨床試験が行われ,各薬剤固有の副作用が報告されている 4-12)

ソラフェニブによる手足症候群は治療継続に関わる重要な副作用で治療開始後早期にみられることが多いが 13),尿素配合剤により重篤化を予防可能であるという結果も報告されている 14)

ソラフェニブ治療において肝予備能の低下したChild-Pugh 分類B 症例では,高ビリルビン血症,腹水,肝性脳症の頻度がChild-Pugh 分類A 症例に比較して多いという報告 15)や,年齢と性別,腫瘍進展度をマッチさせて比較すると副作用は差がなかったという報告がある 16)。また,ベースラインの肝機能に関係なく安全で忍容性があるという報告もあった 17-20)。また,ソラフェニブの開始用量による副作用の差はないという報告もあった 21)

また,本邦では既報と比べ,手足症候群,皮疹,肝不全の副作用が多く,治療中は副作用の管理に注意を払う必要がある 22)。手足症候群を含む皮膚毒性を認めた群では皮膚毒性がなかった群と比較して生存期間が長い傾向があり,副作用が治療効果の代替指標となる可能性も報告されていた 23)。一方,副作用により治療中止が余儀なくされた場合でも肝予備能が良好であれば二次治療へ移行することが可能である 24)

このように分子標的治療薬の使用にあたっては,慎重に経過観察し,減量・休薬を含め適切に対処することを強く推奨した。

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付表 肝動注化学療法・薬剤別奏効率・生存期間(50 例以上)
付表 肝動注化学療法・薬剤別奏効率・生存期間(50 例以上)

1) 2) 3) 4) 5) 6) 7) 8) 9) 10) 11) 12) 13) 14) 15) 16) 17) 18) 19) 20) 21) 22) 23)

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第8 章 放射線治療

はじめに

X 線透視を用いた2 次元照射法が一般に行われていた1970 年代頃までは,肝細胞癌に対する放射線治療はほとんど行われてこなかった。当時の技術では,肝内の腫瘍を正確に同定することが困難であり,腫瘍を確実に照射するには広い照射範囲を設定せざるを得ず,治癒を目指した高線量を照射すると肝障害に陥るリスクが懸念されたためである。

1980 年代頃から,CT 画像を用いた3 次元原体照射法が普及したことによって,不必要に照射される正常肝体積が減少し,同時に線量容積ヒストグラム(dose-volume histogram;DVH)を用いた肝障害リスクの定量的な評価・予測が可能となった。また,肝内の腫瘍を3 次元的に正確に同定することが可能となったため,門脈腫瘍栓など,他の治療が適応困難な症例を主な対象として放射線治療が行われるようになった。 しかし,放射線治療のみで局所の治癒を目指すことは,この段階でもまだ困難であった。

近年の高精度放射線治療技術の進歩により,正常組織に投与される不必要な線量を減らしつつ腫瘍へ線量を集中するために,体幹部定位放射線治療や粒子線治療(陽子線治療,重粒子線治療),強度変調放射線治療(IMRT)などの技術が開発され,本邦でもさまざまな疾患・病態に対して利用されている。肝細胞癌に対しては,線量分布と肝障害のバランスの観点から体幹部定位放射線治療および粒子線治療が用いられ,これらの放射線治療では局所の治癒を目指した治療が可能となってきた。一方,IMRT に関しては,近年ほかの臓器の悪性腫瘍に対して一般的に行われる機会が増えてきている。理論的には,消化管や正常肝組織の線量低減に有効な手段で,今後普及が期待されるが,現時点では肝細胞癌に対するIMRT の有効性,安全性に関する検証結果はいまだ乏しい。

なお,今回の改訂に際しての文献検索範囲には,放射線治療のモダリティとして従来法の放射線治療,体幹部定位放射線治療,粒子線治療の3 つを比較したメタアナリシスがあった。CQ50 では引用してその結果を記述したものの,比較対照群のない観察研究を対象に行われたメタアナリシスであること,従来法放射線治療群には緩和的治療症例が含まれていること,報告されている症例の重複を考慮していないなど,解析手法には大いに問題があり,結果の解釈には注意が必要で,適正に結果を導くことは困難と考えられた。このため,各CQ に対する推奨を決定するに際して用いる文献としては不適切と判断した。

現在の肝細胞癌治療における放射線治療は,局所の治癒を目指したablative なモダリティとしての体幹部定位放射線治療および粒子線治療と,手術や肝動脈化学塞栓療法(TACE)などに対する補助療法としての3 次元原体照射法とに区分してゆくのが適切と考えられる。今回の改訂では,このような現状をふまえ,体幹部定位放射線治療と粒子線治療〔陽子線治療,重粒子(炭素イオン)線治療〕,3 次元原体照射法についての CQ を2013 年版(第3 版)から引き続き掲載したが,3 次元原体照射法については,他治療(主にTACE)に対する補助療法としての位置づけでの記載を充実させ,全体としては放射線治療における多様な選択肢を検討できるようにした。また,骨転移および脳転移についての CQ は第2 章に移して引き続き掲載した。

システマティックレビューにあたり,放射線治療技術に関わる文献を精査する際の問題点として,3 次元原体照射法や体幹部定位放射線治療などの各照射技術の定義が文献により異なっている場合があり,解釈に注意が必要であった。全体として,放射線治療の適応を判断するためのエビデンスレベルの高い報告は多くはなく,他の局所療法と比較するランダム化比較試験(RCT)は少数である。このため,肝細胞癌に対する放射線治療の治療適応基準および線量分割法については十分なエビデンスは構築されていないと考えられる。しかし一方で,放射線治療は侵襲性が低いため,高齢や合併症を理由として,体幹部定位放射線治療や粒子線治療による加療を希望して受診してくる患者が徐々に増加する傾向にあり,その需要は増加しつつあるのが放射線治療診療現場の実情である。

CQ48
肝細胞癌に対する体幹部定位放射線治療は推奨されるか?

推奨の強さ弱い
他の局所療法の適応困難な肝細胞癌,およびTACE 不応例を含むさまざまな局所治療後再発例に対して,体幹部定位放射線治療を行ってよい。

背景

早期肝細胞癌に対する根治治療は肝切除,移植,穿刺局所療法とされている。しかし,孤立性の小肝細胞癌でさえも,腫瘍位置や治療後残肝機能の不足により根治治療が適応とならないことがある。そのような場合はTACE が推奨されているが,TACE では選択的に塞栓を行っても十分な局所制御を得られないことが多い。

体幹部定位放射線治療は,今日のコンピュータ技術やテクノロジーの進歩により可能となった高精度放射線治療である。病巣に対して高精度かつピンポイントに照射する技術であり,1 回大線量にて少数分割で短期間に行われ,高い局所制御と安全性の両立が報告されている。肝細胞癌に対する体幹部定位放射線治療の成績と役割を検討した。

サイエンティフィックステートメント

第3 版のCQ49 を引き継いで本CQ は作成された。今回の改訂に際し,第3 版と同様の検索式を用いて2012 年から2016 年6 月の文献を検索したところ,164 篇の文献が該当した。これらのなかからタイトルおよび抄録に基づいて38 篇を一次選択した。その後,文献の本文の内容を検討し,体幹部定位放射線治療を用いた治療成績に関する前向き試験と症例数の多い後ろ向き研究を選択し,肝細胞癌の進行度が混在している研究を削除した結果,13 篇が二次選択された。選択された研究には,RCT をはじめとするエビデンスレベルの高い報告はない。このため,肝細胞癌に対する体幹部定位放射線治療の成績を報告した第I/II 相試験相当の前向き研究および後ろ向き研究の結果から,その意義を検討した。第3 版で採択された文献の内容も合わせて検討したが,今回の改訂に際して選択された文献に対して新たな知見を加えるデータやエビデンスレベルの高い報告は第3 版での文献にはみられなかった。このため,第3 版で採択されたいずれの文献も,今回採択するものには含めなかった。

ほとんどの報告では,手術および穿刺治療適応が困難なものを治療対象としていた。また,TACE 不応例 1)やさまざまな局所治療後再発例 2, 3)も対象としていた。治療法,治療成績,有害事象の頻度は対象となる腫瘍のサイズ,個数,進行度,肝機能に大きく依存していた。肝機能の点では,多くの第I/II 相試験および後ろ向き研究の報告において,Child-Pugh 分類A またはB を治療対象としていた 1-9)

BCLC Stage 0~B を主に対象とした報告 1-5, 7-9)では,多くの施設で正常肝に対する線量制約を規定しており 1, 2, 5),放射線治療による重篤な肝障害の発生頻度は比較的少ない。しかし,BCLC Stage B では低線量領域が肝毒性に影響を与える可能性が報告されている 5)。ラジオ波焼灼療法(RFA)と体幹部定位放射線治療の治療成績を比較したプロペンシティスコアを用いた報告では,局所制御率,全生存率では同等であったが,2 cm を超える肝細胞癌では体幹部定位放射線治療の良好な局所制御率が示された 7)。治療方法では,総線量27~60 Gy,分割方法3~10 回,線量処方部位や標的腫瘍への線量不均一性も一定ではなく,推奨可能な放射線治療方法は定まっていない。治療成績は1,2,3 年局所制御率が91~100%,84~95%,92~96%,1,2,3 年生存率が74~100%,46~87%,54~74%と報告されている 1-5, 7-10)。TACE 不応例を対象とした報告でも2 年局所制御率は95%と高い 1)。生存率は対象症例に大きく依存するが,初発孤立性肝細胞癌を対象とした報告では3 年生存率で73%と報告されている 10)。いずれも対照群のない報告であるため,科学的根拠をもって体幹部定位放射線治療による生存期間延長効果を示すことは困難であるが,90%を超える高い局所制御率と3 年生存率で70%を超える比較的良い成績も報告されていることから,他の局所療法が適応困難な症例に対して,体幹部定位放射線治療を検討してもよいと考えられる。

BCLC Stage B~C を主に対象とした報告 6, 11-13)では,治療対象となる患者の腫瘍のサイズ,個数,進行度,肝機能は不均一であり,患者個々に応じて多様な治療法が行われている。治療方法では,総線量24~55 Gy,分割方法6~15 回と,推奨可能な放射線治療方法は定まっていない。治療成績は1 年局所制御率80~87%,1 年生存率49~50%,生存期間中央値8~17 カ月と報告されている。

解説

体幹部定位放射線治療による生存期間延長の効果を示す十分な科学的根拠はない。しかし手術,RFA に匹敵する高い局所制御率が報告されており,TACE のそれより高い。対象患者が高齢,再発症例を多く含むにもかかわらず,小さな肝細胞癌に対する体幹部定位放射線治療後の3 年生存率は54~74%と良好な成績が報告されている。体幹部定位放射線治療は比較的新しい治療法であるため,手術,穿刺治療の適応外患者のなかから,体幹部定位放射線治療の適応患者が選択される。また,RFA やTACE 後残存腫瘍や再発治療に対する救済治療として行われることもあった。体幹部定位放射線治療は無血,無痛の治療法であり,肝門部やドーム直下に存在する腫瘍でも安全に治療可能である。また,穿刺治療が困難である,血管や胆管に近接もしくは浸潤する腫瘍にも安全に治療可能である。腫瘍の血流にも依存しない。このような,他の治療法にない特徴が肝細胞癌治療において有効であることが示唆される。

体幹部定位放射線治療の適応となる肝細胞癌の病巣サイズおよび進行度には地域依存性がある。体幹部定位放射線治療が,既存のモダリティを補完する役割を求められているためと予想される。本邦のように早期肝細胞癌が発見されやすい環境では小さな腫瘍が対象となることが多い。その場合,肝臓の耐容性より腫瘍制御が重視され,多くの報告において高い線量が投与されていた。一方,欧米や中国からの報告では,比較的進行した肝細胞癌に対する体幹部定位放射線治療の報告が多かった。大きな腫瘍では,放射線治療により肝機能低下が懸念される。そのため線量を下げざるを得ない場合もあり,線量分割方法は腫瘍サイズと肝体積,肝予備能に応じて変化させている。対象となる肝細胞癌の腫瘍サイズ,個数,進行度,肝機能が異なることもあり,体幹部定位放射線治療の分割方法や総線量,治療適応可能な肝機能の基準について科学的根拠がある推奨はない。なお,肝細胞癌に対して2017 年時点の本邦で体幹部定位放射線治療が保険適用になるのは「原発病巣の直径5 cm 以下で転移病巣のない原発性肝癌」とされており,これに該当しない肝細胞癌症例に放射線治療を行う場合には,CQ49 に示した粒子線治療またはCQ50 に示した3 次元原体照射法による放射線治療を検討することになる。推奨度は,肝癌診療ガイドライン改訂委員会の推奨決定会議にて全会一致で「弱い推奨」となった。

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CQ49
肝細胞癌に対する,粒子線治療〔陽子線治療,重粒子(炭素イオン)線治療〕は有効か?

推奨の強さ弱い
他の局所療法の適応が困難な肝細胞癌に対して,粒子線治療〔陽子線治療,重粒子(炭素イオン)線治療〕を行ってよい。

背景

荷電粒子線は有限の飛程を持ち,その線量集中性に優れる物理学的特性から,X 線と比較して肝機能を温存しつつ病巣に高線量を照射することが容易である。治療可能な施設数も増加しつつあり,肝細胞癌に対する局所治療の新たな選択肢として,その有用性評価が求められてきている。

サイエンティフィックステートメント

当CQ49 は第3 版CQ50 を引き継いで作成された。今回の改訂に際し,第3 版と同様の検索式を用いて2012 年1 月1 日から2016 年6 月30 日に発表された文献を検索し,29 篇の文献が抽出された。そのなかから「エンドポイントを無再発生存率か全生存率に設定したコントロール群を伴うRCT あるいはnon-RCT を採用する」という方針の下に一次選択で9 篇,二次選択で9 篇の論文を新たに採用し,第3 版の13 篇および後述の理由による1 篇のレビュー論文 1)と合わせて23 篇を検討し,内容に重複のあるものを整理して18 篇を採用した。

肝細胞癌に対する陽子線治療と現在の標準治療とを比較したRCT が1 篇抽出された。ミラノ基準もしくはUCSF 基準で肝移植の適応とされる症例に対する,陽子線治療とTACE の第III 相比較試験である。69 症例の中間解析において陽子線治療群〔70.2 Gy(RBE)/15 回/3 週間〕とTACE 群で比較した結果,2 年生存率に差は認めなかったが,2 年局所制御率は陽子線治療群88%,TACE 群45%と陽子線治療が良好であった。また,有害事象による治療後30 日以内の合計入院日数は,陽子線治療群24 日,TACE 群113 日であり,陽子線治療群で有意な入院期間の短縮が報告されている 2)

前向き試験としては,陽子線治療の有効性については6 つの,重粒子線については2 つの研究が抽出された。それらの文献において局所制御率は陽子線で2 年88~96% 2-4),5 年で87.8~90.2% 5, 6)であった。一方,重粒子線では3 年81%,5 年93%と報告されている 6, 7)。局所効果の線量依存性については陽子線第I 相試験において60 Gy(RBE)/20 回,66 Gy(RBE)/22 回,72 Gy(RBE)/24 回と線量を増加するにつれ有意(p=0.039)に腫瘍の完全消失率が高くなったとの報告がある 8)。全生存率に関しては,陽子線の2 年全生存率は59~66% 2, 4),3 年で33% 9),5 年で38.7~42.3% 5, 8)などの報告があり,重粒子線では5 年25~36.3% 6, 7)であった。単一施設における陽子線と重粒子線の比較では,局所制御,全生存率ともに有意差を認めなかったとの報告がある 6)

肝細胞癌が肝門部や消化管に近接して存在する場合,粒子線治療による有害事象が懸念される。観察研究ではあるが,陽子線治療の線量や照射範囲を調整することにより,これらの病変に対しても3 年,5 年の局所制御率で87%,81%,全生存率では61%,48%が得られ,線量分割の差による局所制御率や生存率に有意差はないとされる 10)。また,さまざまな病態に対する治療効果の報告も認められ,門脈腫瘍栓を伴う例の生存期間中央値は13.2~22 カ月11, 12),10 cm を超える巨大肝細胞癌の1 年無再発生存率は64% 13)などの報告がある。これらはすべて後ろ向き解析であるものの一定の役割が期待され,他の治療法の選択に難渋する病態に対しては,粒子線治療を検討してよいと考えられる。

有害事象については極めて低率で,肝細胞癌に対する粒子線治療は安全に施行できることが報告されている 3, 4, 7-9, 14-16)。また予後予測因子として,ICG 15 分停滞率が特にChild-Pugh 分類A の症例について有用であることが示されている 17)

粒子線治療を用いた前向き試験および主な後ろ向き解析の結果をに示す。文献18はレビュー論文であるが,現在までに原著論文として報告されていない前向き試験の成績が記載されていることから,本CQ においては特別に採用した。

解説

1980 年代より肝細胞癌に対する粒子線治療が行われるようになった。当初は後ろ向き観察研究を中心に良好な局所制御が得られる報告が中心であったが,近年は前向き研究によっても同様な結果が報告されている。TACE と比較したRCT において局所療法困難な肝細胞癌に対する陽子線治療の有効性・安全性が示されつつあるが,標準的な局所療法である外科的切除や穿刺局所療法と比較したRCT は行われておらず,局所療法としての位置づけについて,より高いレベルでの研究が必要であると考えられる。これまでの後ろ向き観察研究から,門脈腫瘍栓や下大静脈腫瘍栓を有する病態や巨大肝細胞癌に対しても有効な治療手段の選択肢となり得ると考えられる。また,肝細胞癌に対しては陽子線治療と重粒子線治療との治療成績は同等と考えられる。

現時点では,肝細胞癌に対する粒子線治療(陽子線治療,重粒子線治療)はおおよそ有効で安全に施行可能で,標準的な局所療法が困難である肝細胞癌に対して有効な治療選択肢と考えられる。治療に用いられる線量は,X 線治療と比べて高線量が投与されているが,報告により異なるため,科学的根拠をもって推奨可能な粒子線治療の分割方法や総線量は定まっていない。なお2017 年現在,本邦では,粒子線治療は限局性の肝細胞癌に対して主に先進医療として実施されている。推奨度は,肝癌診療ガイドライン改訂委員会の推奨決定会議にて全会一致で「弱い推奨」となった。

 肝細胞癌に対する粒子線治療の前向き試験および後ろ向き観察研究の主な結果
表 肝細胞癌に対する粒子線治療の前き試験および後ろ向き観察研究の主な結果

2) 15) 3) 5) 4) 8) 18) 11) 7) 1) 6)

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CQ50
肝細胞癌に対する,3次元原体照射法による放射線治療はどのような場合に推奨されるか?

推奨の強さ弱い
門脈腫瘍栓症例や切除不能症例,内科的合併症などの理由で,他の標準的な治療法が適応とならない病態で,体幹部定位放射線治療や粒子線治療の適応が困難な場合には,3 次元原体照射法などによる放射線治療を行ってよい。

背景

肝細胞癌に対する放射線治療を行う場合,可能であれば体幹部定位放射線治療や粒子線治療が選択され,十分な局所制御が期待できる線量が投与されることが近年は多くなっている。しかし,体幹部定位放射線治療や粒子線治療が施行可能な施設は限られていることもあり,これらの治療が適応できない場合もある。その場合には,どこの施設でも比較的行いやすい3 次元原体照射法による放射線治療が行われている。3次元原体照射法による放射線治療では,根治的放射線量を投与することができない場合が多いが,そのような場合の放射線治療の役割について検討した。

サイエンティフィックステートメント

第3 版のCQ48 を引き継いで本CQ は作成された。今回の改訂に際し,第3 版と同様の検索式を用いて2012 年から2016 年6 月の文献を検索したところ,334 篇の文献が該当した。これらのなかからタイトルおよび抄録に基づいて55 篇を一次選択した。その後,文献の本文の内容を検討し,3 次元原体照射法による放射線治療を用いた治療成績に関する前向き試験,システマティックレビューおよびメタアナリシス,ほかの治療モダリティとの治療成績比較をした後ろ向き研究を選択した結果,15 篇が二次選択され,第3 版以前で採択された1 篇と合わせて合計16 篇を採用した。

放射線治療単独での役割をRCT で直接示した報告はみられないが,切除不能肝細胞癌に対するTACE に放射線治療を追加することによる予後の改善を示唆するデータが,複数の前向き研究および後ろ向き研究で報告されており,これらをまとめたメタアナリシスも複数報告されている 1-5)。いずれのメタアナリシスでもTACE+放射線治療による生存率がTACE 単独と比較して有意に優れていると報告されているものの,ランダム割付されていない比較臨床試験(CCT)を多数含んで解析しており,この報告の結果を解釈するにあたっては注意を要する。これらのメタアナリシスのなかで,Huo らの報告 2)でもCCT が解析対象として含まれているものの,RCT のみを対象としたサブグループ解析も行っている。この報告によると,CCT も含めた22 報告のpooled 解析では,1,2,3,5 年生存率に対するオッズ比はそれぞれ1.36〔95%信頼区間(CI):1.19~1.54,p<0.001〕,1.55(95%CI:1.31~1.85,p<0.001),1.91(95%CI:1.55~2.35,p<0.001),3.98(95%CI:1.89~8.51,p<0.001)で,RCT のみのサブグループ解析でも1,2,3,5 年生存率に対するオッズ比もそれぞれ1.36(95%CI:1.12~1.66,p<0.001),1.79(95%CI:1.33~2.40,p<0.001),2.32(95%CI:1.64~3.28,p<0.001),6.32(95%CI:1.58~25.30,p=0.01)といずれも有意差をもって放射線併用群が良好であることが報告されており,RCT のみの解析でもCCT を含んだ解析でも,いずれも観察期間が長くなるにしたがってオッズ比が高くなる傾向が示されている。また,有害事象に関しては,TACE+放射線治療例でTACE 単独治療例と比較して胃十二指腸潰瘍(オッズ比:12.8,95%CI:1.57~104.34,p=0.02),ALT 上昇(オッズ比:2.46,95%CI:1.30~4.65,p=0.01),総ビリルビン値上昇(オッズ比:2.16,95%CI:1.05~4.45,p=0.04)が有意に高頻度であったが,食道十二指腸炎,白血球減少症,発熱,嘔気嘔吐,血小板減少症の有害事象については有意な差はみられなかったと報告している。近年に報告されている後ろ向き研究でも,同様の傾向が示されている 6, 7)

TACE にRFA,経皮的エタノール注入(PEI),high-intensity focused ultrasound(HIFU),放射線治療を併用する意義についてのメタアナリシスも報告されている 8)。放射線治療については照射技法を特定していない放射線治療と3 次元原体照射法による放射線治療の2 群が設定されているものの,いずれの群でもRCT のみを対象とした解析で1 年生存率がオッズ比1.37~1.48,3 年生存率がオッズ比2.32~2.88 と,いずれもTACE 単独に比較して有意に良好な治療成績となっている。RFA についてはRCT が1 報のみで有意差がなく(1 年生存率でオッズ比1.25,95%CI:0.68~2.30),HIFU では3 年生存率の,PEI では1 年生存率の有意差が認められなかったことからも,TACE に併用する補助療法としては放射線治療が優れている可能性が報告されている。

手術に対する補助療法としての放射線治療の役割を調べる報告も複数みられた 9, 10)。中心性肝細胞癌で術後断端が1 cm 以下の症例に対してRCT で補助療法無群と術後照射群に割り付けした結果,無再発生存率と全生存率は両群で同等だったが,5 cm 以下の肝細胞癌の場合には5 年術後無再発生存率が42.9%対21.5%と術後照射群で有意に長かったとYu らは報告している 10)。また,門脈本幹腫瘍栓症例に対する術前放射線治療の役割を検討する比較研究では,2 年全生存率が術前放射線治療群20.4%対手術単独治療群0%と術前放射線治療群が有意に良好な結果が報告されている 9)

放射線治療単独の治療でも生存期間の延長を示唆する報告も後ろ向き研究ではみられる。進行肝細胞癌に対する,放射線治療群29 例と緩和ケア群18 例を比較すると,放射線治療群にはTACE,肝切除,化学療法などを併用している患者が含まれているものの,平均生存期間が45.9 カ月(95%CI:32.0~59.8 カ月)対4.8 カ月(95%CI:2.0~7.6 カ月)と有意な差が認められたと報告されている(p<0.001) 11)。切除可能な門脈腫瘍栓に対する治療として,手術186 症例と3 次元原体照射+TACE 185 症例とを比較した後ろ向きの解析では,3 年生存率が13.6%対19.9%で3 次元原体照射+TACE 群で有意に成績が良好(p=0.029)だったとの報告もある 12)

また,門脈腫瘍栓を有する切除不能肝細胞癌に対する,ソラフェニブ治療36 例と放射線治療28 例の結果を後ろ向きに解析した報告では,全コホートでの生存期間は4.4 カ月(95%CI:0.7~17.5 カ月)対5.9 カ月(95%CI:0.6~103 カ月)で有意差はみられなかった(p=0.115)が,全身状態を補正したプロペンシティスコア解析を行うと4.8 カ月(95%CI:0.7~17.3 カ月)対10.9 カ月(95%CI:2.8~103 カ月)で有意に放射線治療で予後が良好であった(p=0.002) 13)。さらに,門脈腫瘍栓を有する切除不能肝細胞癌症例に対しては,TACE+放射線治療がソラフェニブ治療よりも生存期間に関して有意に優れるとする後ろ向きの報告も複数みられる 14, 15)

ただし,治療モダリティとして3 次元原体照射法による放射線治療を,体幹部定位放射線治療や粒子線治療と比較した場合には,生存率の点で体幹部定位放射線治療や粒子線治療の方が優れていることがメタアナリシスで示されている 16)。比較対照群のない観察研究70 篇から得られた73 コホートを対象としたメタアナリシスの結果,従来法(体幹部定位放射線治療以外のX 線治療に相当し,主に3 次元原体照射法による治療を意味している)による放射線治療の粒子線治療に対する1 年生存率および3 年生存率の相対リスクはそれぞれ1.68(95%CI:1.22~2.31,p<0.001)および2.46(95%CI:1.72~3.51,p<0.001)であり,粒子線治療の方が有意に生存率が高かったのに対して,体幹部放射線治療の粒子線治療に対する1 年生存率および3 年生存率の相対リスクはそれぞれ0.98(95%CI:0.83~1.18,p=0.44)および1.02(95%CI:0.73~1.42,p=0.46)と同等の成績であったと報告されている 16)

解説

放射線治療単独での有効性を見たエビデンスレベルの高い報告はみられないものの,TACE に放射線治療を併用することによる生存期間の改善を示す結果が,複数のメタアナリシスで一貫して報告されている。ただし,いずれのメタアナリシスもRCT以外のCCT を含んだ解析で,かつ,報告されているRCT は中国で行われたものが大半であり,本邦や欧米で行われたRCT の報告は皆無である。本邦ではTACE との併用で放射線治療が行われる機会も少なく,国内での日常診療におけるTACE+3 次元原体照射法という治療方針の選択にあたっては十分な検討が必要と考えられる。このため,エビデンスレベルは高いと考えられるものの,本邦の肝細胞癌診療の現状には適切に当てはめることが困難であるため,TACE+3 次元原体照射法に関する推奨を行わないこととした。TACE 以外でも,手術に対する補助療法としての放射線治療の役割を検証する報告もみられたが,まだ報告が少なく,その結果も一貫しているとはいえない。今後,同様の研究が複数報告されるようになるのを待ちたい。

一方,他の局所療法の選択肢が限られている症例に対しては,後ろ向き研究ではあるものの,3 次元原体照射法による放射線治療単独でも生存期間の延長を示唆するデータが報告されている。近年の放射線治療技術の進歩により,体幹部定位放射線治療や粒子線治療が急速に普及してきていることから,3 次元原体照射法よりも高線量投与が可能であり,その結果として高い抗腫瘍効果や生存率が期待できる体幹部定位放射線治療や粒子線治療を優先して検討するのが妥当かもしれない。Qi らのメタアナリシスでは,従来法の放射線治療と比較すると体幹部定位放射線治療や粒子線治療の方が生存割合が有意に高いことが示されている 16)。ただし,このメタアナリシスは比較対照群のない観察研究を対象に行われたメタアナリシスであること,従来法放射線治療群には緩和的治療症例が含まれていること,報告されている症例の重複を考慮していないなど,解析手法には大いに問題があり,結果の解釈には注意が必要である。また,体幹部定位放射線治療や粒子線治療が施行可能な施設が限られており,腫瘍状態や全身状態などの医学的理由だけでなく,地理的要因などによってこのような治療を受けることが困難な場合もある。そういった場合に3 次元原体照射法による放射線治療を行うことで,エビデンスレベルは高くないものの,緩和ケアやソラフェニブ治療と比較して生存期間が長かったとする報告もあり,放射線治療による生存期間の延長が期待できると考えられる。以上より,他の治療法が適応にならない病態に対しては,生存期間の延長を期待して3 次元原体照射法による放射線治療を行うことが推奨される。推奨度は,肝癌診療ガイドライン改訂委員会の推奨決定会議にて全会一致で「弱い推奨」となった。

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第9 章 治療後のサーベイランス・再発予防・再発治療

はじめに

肝細胞癌の治療は非常に進歩したとはいえ,根治的に治療が行われた後であっても,再発率は依然高く,未解決の問題点である。一方,再発しても,初発と同様の治療法選択が可能であり,治療効果も一定以上期待できる点がほかの癌腫にはない特徴といえる。すなわち肝細胞癌の治療を考えるうえで,再発に対する治療戦略は初発同様に重要であり,この点は本ガイドライン発刊以降変わっていない。

初版(2005 年版)および第2 版(2009 年版)は,再発治療に関するエビデンスが十分でなかったため,基本的に初発肝細胞癌を対象に策定されてきた。再発治療に関するclinical question(以下CQ,初版ではresearch question に相当)は,手術を扱う第3 章における「再発肝細胞癌に対する有効な治療は?」のみで,これに対する推奨(第2 版)は「再発肝細胞癌に対しては,初回肝細胞癌に対するのと同じ基準で治療方針を決定することが推奨される。すなわち肝切除が標準治療であり,特に肝機能良好例(非硬変肝症例またはChild 分類のA 症例)における単発症例では再切除が推奨される」(推奨グレードB)となっていた。

しかし,再発に対する診療に関するエビデンスの蓄積を受け,初回根治治療後の対応についても,ガイドラインとしてまとめることになり,第3 版(2013 年版)ではこれらを一括して「第8 章 治療後のサーベイランス,再発予防,再発治療」として扱われた。根治治療法として,肝切除,局所療法,肝移植を選び,それぞれ治療後のフォローアップ(再発を拾い上げるサーベイランス),再発予防法,再発時の治療法選択の3 つの命題をかかげた。すなわち,計9 つのCQ を新設し,いずれも2007 年6 月以前の論文まで対象を広げて検討した。検討の過程でいくつかの理由により,これら9 つのCQ は統廃合され,第3 版では最終的に6 つとなった。

今回,第4 版(2017 年版)ではこれら6 つのCQ につき,第3 版以降に新たなエビデンスが得られたか,検討を加えた。根治治療後のフォローアップ法については,強いエビデンスの追加はなく,第3 版とほぼ同じ内容となった。根治治療後の再発予防については,殺細胞性抗腫瘍薬の意義がほぼ否定され,またSorafenib as Adjuvant Treatment in the Prevention of Recurrence of Hepatocellular Carcinoma(STORM)試験により分子標的治療薬の再発予防効果も否定されたことから,積極的な抗腫瘍治療は推奨されない。一方,第3 版発刊時にはインターフェロンが主たる役割を担っていたウイルス肝炎の治療は,直接作用型抗ウイルス薬(DAA)の登場により,長足の進歩を遂げた。DAA による肝炎コントロールにより,直接肝細胞癌の再発を抑えられるかどうかはまだ十分なエビデンスがないものの,少なくとも肝機能の維持・改善を介した間接的な予後改善効果が期待されている。肝移植後の再発予防に関しては,mTOR(mammalian target of rapamycin)阻害薬による術後管理の有効性を示唆する報告が出たため,それを反映させた推奨となった。再発に対する治療選択については,第3 版で切除と局所療法でCQ を分けていたのを,結局は初回治療と同じstrategy で適応を検討するという点では同じということでCQ を1 つにまとめた。移植後再発については,第3 版で切除可能であれば切除を,という推奨であったが,分子標的治療薬を使用した報告が出たことを反映し,切除不能であれば,分子標的治療薬を考慮,という微修正となった。

本章で扱った5 つのCQ はいずれもいまだエビデンスが十分とはいえない状況だが,第3 版発刊時から比べると,少しずつながら考慮に値するデータが出始めている。今後のさらなるエビデンスの蓄積を待って,次回改訂につなげたい。

CQ51
肝切除後・穿刺局所療法後,どのようにフォローアップするか?

推奨の強さ強い
初発時の超高危険群に対するサーベイランスと同様に腫瘍マーカーと画像検査の併用によるフォローアップが推奨される。

背景

肝細胞癌は根治的治療を行っても高率に再発を認めることから,肝切除後・穿刺局所療法後のフォローアップおよび再発後の治療の選択が重要である。

サイエンティフィックステートメント

第3 版のCQ52 に基づいて本CQ51 は作成された。今回の改訂に際し,第3 版と同様の検索式を用いて,2012 年1 月1 日から2016 年6 月30 日に発表された論文について検索し,612 篇が抽出された。そのなかから「エンドポイントを無再発生存率か全生存率に設定したコントロール群を伴うランダム化比較試験(RCT)あるいはnon-RCT を採用する」という方針の下に一次選択で33 篇,二次選択で9 篇の論文を新たに採用し,第3 版の3 篇と合わせて計12 篇を採用した。初発時の肝細胞癌サーベイランスと異なり,肝切除後や穿刺局所療法後の再発を検知する高い感度,特異度を有する単独の検査方法やその間隔を比較検討したエビデンスレベルの高い論文は存在しなかった 1-12)

解説

肝細胞癌発症の超高危険群であるC 型肝硬変患者の発癌率が年率約8% 1)であるのに対し,肝細胞癌の肝切除後の再発率は年率10%以上で5 年後には70~80%に達する。また,穿刺局所療法後,超音波検査とdynamic CT を4 カ月間隔で行った報告 2)では,肝細胞癌累積再発率は1 年18.6%,5 年72.0%である。肝切除後ならびに穿刺局所療法後の再発の早期発見が予後を改善するというエビデンスは十分ではないが,肝切除あるいは穿刺局所療法の長期予後を報告した論文では,再発に対する再肝切除,繰り返す穿刺局所療法の施行が通常記載されていることを考慮すると,根治治療の機会をもたらす点では,治療後のサーベイランスは初発同様に重要であると考えられる。したがって,治療後には最低でも超高危険群に準じた厳密なサーベイランスが必要である。

本ガイドラインのサーベイランスアルゴリズムでは,肝細胞癌発症の超高危険群に対して3~6 カ月間隔の超音波検査と腫瘍マーカー測定を軸に,dynamic CT/MRI を併用した定期的スクリーニングを推奨している。ラジオ波焼灼療法(RFA)3,6,12,24 カ月後に超音波検査を用いたフォローアップ法 3)では,肝細胞癌再発の78%が検出可能であったとの報告がある。また,造影超音波検査はRFA 後の肝内再発に対して造影CT に比べて正診率は劣るとの報告 4)があるものの,造影超音波検査によるフォローアップはCT/MRI の施行回数を減らせる可能性があるとの報告 5)がある。したがって,治療後のフォローアップ法の一案として3~4 カ月毎の腫瘍マーカー測定,ならびに(造影)超音波検査のみならずdynamic CT,dynamic MRI(Gd-EOB-DTPA 造影MRI 含む)の併用による画像検査を提案する。初発時の肝細胞癌のstage や背景肝の線維化により術後再発率の上昇が予測されるが,検査コストや放射線被曝の観点から,これ以上の厳密なスクリーニングは非現実的と考える。肝外再発も早期発見により治療の選択肢を拡大し予後を改善する可能性を有するが,臨床症状を認めない場合,肝臓以外の再発に対しどのような画像検査を行うかの推奨はない。実際に,四肢の疼痛や神経症状などの臨床症状を認めた場合,また腫瘍マーカーが再上昇したにもかかわらず肝臓に再発を認めない場合は肝外転移を疑い,CT/MRI やFDG-PET,骨シンチグラフィーなどを考慮する。なお,米国肝臓病学会(AASLD),欧州肝臓学会(EASL)のガイドラインでも,局所療法後の再発に対するサーベイランス法に関する記載があるが,その根拠となる論文は示されていない。AASLD のガイドラインでは,3~4 カ月間隔でのdynamic CT またはMRI でのフォローアップが一案として提示され,2 年無再発ならば検査間隔の延長も検討するとしている。またEASL では,超音波検査を3~4 カ月間隔で行う案が提案されている。長期フォローアップにおいて,肝切除治療後の5 年目以降,6 カ月毎にCT を行った患者は12 カ月毎にCT を行った患者に比べ,再発時の腫瘍の大きさが有意に小さかった(1.1 cm vs. 3 cm,p=0.045)との報告 6)もあり,最長6 カ月までの検査間隔の延長も考慮に入れる。したがって,初発時の超高危険群に対するサーベイランスと同様に腫瘍マーカーと画像検査の併用のフォローアップ法が強く推奨される。

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CQ52
肝切除後・穿刺局所療法後の有効な再発予防法は何か?

推奨の強さ弱い
ウイルス肝炎に起因する肝細胞癌において,肝切除後や穿刺局所療法後の抗ウイルス療法は,再発抑制や生存率の向上に寄与する可能性がある。

背景

肝細胞癌は,局所根治的に治療が行われても高率に再発を来す。再発を抑制することによって生存率の改善が期待される。有効な再発予防策について検討した。

サイエンティフィックステートメント

本CQ は第3 版のCQ29 とCQ53 を統合して作成された。新たに設定した検索式を用いて,2012 年1 月1 日から2016 年6 月30 日に発表された論文について検索し,949 篇が抽出された。そのなかから「RCT あるいはメタアナリシスを採用する」という方針の下に一次選択で29 篇,二次選択で12 篇の論文を新たに採用した。前版の34 篇から残した26 篇と合わせて計38 篇を採用した。

根治肝切除後の術後補助化学療法(殺細胞性)については,いくつかのRCT が報告され,1 篇のみ無再発生存改善効果を示しているが 1),その他は否定的な評価であり,逆に肝機能を悪化させて予後不良になるとの報告もある 2-4)。同じく肝切除に限定した術後補助療法として,経肝動脈的治療〔肝動注化学療法や肝動脈化学塞栓療法(TACE)など〕を評価するRCT がみられるが,無再発生存では有意差を認めるものの累積生存では差がなかったとする報告が多い 3, 5, 6)。補助的な経肝動脈的治療のメタアナリシスが行われ累積生存率改善効果も報告しているが,投与薬剤や方法がすべて異なっており慎重な評価が必要である 7)。特殊な例では,門脈腫瘍栓合併例では術後の経門脈的治療やTACE が有効であったとする報告が認められる 8)131I-リピオドールの肝動脈内投与については短期予後の改善が報告されたが 9),続報で長期予後に対する効果は否定された 10)

インターフェロン療法(αもしくはβ)は,B 型肝炎ウイルス(HBV)陽性やC 型肝炎ウイルス(HCV)陽性肝細胞癌の肝切除や穿刺局所療法後の補助療法として,再発抑制や生存率の改善がいくつかのRCT によって示されてきた 11-14)。一方,生存率の改善や再発抑制効果が一定のサブグループのみにとどまったとの報告もある 15, 16)。少数例のRCT の結果を統合するメタアナリシスの結果が3 篇報告されており 17-19),いずれもインターフェロンαの有効性を支持している。その他,HBV 陽性肝患者でのアデフォビル投与についてのRCT が報告され,R0 切除を行った200 例を2 群に割付けた結果,アデフォビル投与が無再発生存(ハザード比:0.651),累積生存(ハザード比: 0.420)低下に寄与した 20)

分子標的治療の補助療法への応用が期待されるなか,世界202 施設,1,114 人の患者を対象に肝細胞癌に対する肝切除あるいは穿刺局所療法後のソラフェニブ内服の再発抑制効果を検討した大規模RCT(STORM 試験)の結果が2015 年に報告されたが,主要評価項目である無再発生存期間中央値が33.3カ月 vs. 33.7カ月で効果は示されず,累積生存でも有意差はなかった 21)

根治治療後再発予防としての養子免疫療法 22)により再発が抑制されたとの報告があるが,生存率を有意に改善するまでには至っていない。また,acyclic retinoid により無再発生存も累積生存も改善したとの1996 年の報告 23)を受けて401 人の患者をperetinoin 300 mg/日投与群,600 mg/日投与群,プラセボ群の3 群に分けたRCT が報告され,peretinoin 600 mg 群とプラセボ群との間に無再発生存で有意差を認めた 24)。治療後補助療法としてのビタミンK については4 篇のRCT があるが,有効性は否定的である 25-27)。ビタミンアナログ製剤として,acyclic retinoid とビタミンK を統合解析したメタアナリシスが1 篇あるが,前者で有効,後者で無効という結果であった 28)。分岐鎖アミノ酸単独の長期投与の生存率の改善効果は明らかではない 29)。分岐鎖アミノ酸+ACE(angiotensin converting enzyme)阻害薬併用療法による再発抑制効果を示す1 篇のRCT が報告されたが,治療群の患者数が少数であった 30)。最近,COX2(cyclooxygenase 2)阻害薬であるメロキシカム内服による再発抑制効果が1 篇のRCT で示されたが累積生存率は不変であった 31)。この他,125I 密封小線源療法を3 cm 以下の小肝細胞癌の治療後に用いることで無再発生存も生存も改善することを示した2 篇のRCT が報告された 32, 33)。さらに術後補助療法としての漢方薬(Cinobufacini+Jiedu 顆粒) 34),サイトカイン誘導キラー細胞 35)131I 標識metuximab 36)の使用が無再発生存,生存ともに改善することを示すRCT が各々1 篇ずつ報告されたが単報である。術後治療ではないが,肝切除術前TACE 37)と肝切除に伴うリンパ節郭清 38)の予後改善効果を検討するRCT が各々1 篇ずつ報告され,いずれも無再発生存・生存ともに改善効果を認めなかった。

解説

肝細胞癌に対し切除あるいは穿刺局所療法が根治的に行えた場合でも再発率は極めて高く,再発予防が長期生存には重要である。以前より,B 型やC 型肝炎ウイルス関連の肝細胞癌では抗ウイルス療法が試されてきた。術後インターフェロン療法は,HBV 陽性肝細胞癌,HCV 陽性肝細胞癌においていくつかのRCT で肯定,否定さまざまな結果が報告されてきたが,3 篇のメタアナリシスすべてで肝切除後あるいは穿刺局所療法後のインターフェロン治療が無再発生存あるいは累積生存の延長に寄与することが示されており,重要視せざるを得ない。ただし,これらメタアナリシスでもRCT だけでなく前向きコホート研究の結果が含まれているものがあり 18, 19),第3 版でも推奨グレードC1 となっていることを踏襲し,弱い推奨とした。第3 版ではインターフェロンPEG 製剤やインターフェロン長期少量投与法に関するRCT の結果を期待する旨を記したが,その後DAA が登場したためか,今回の検索では新たなRCT は見当たらなかった。

肝切除に限った(穿刺局所療法を含まない)文献検索を行うと,エビデンスのほとんどない術前補助療法に比較して術後補助療法については,TACE などの経肝動脈的治療を含めて複数のRCT が報告されているが,投与経路・方法にかかわらず標準的なプロトコールは確立しておらず,有効とするプロトコールのさらなる検証が必要である。

これまでHBV 陽性肝細胞癌患者での治療後補助としての核酸アナログ投与を検証するRCT がないなか,初めてアデフォビルの有用性が示されたが,いまだ単報であり続報が待たれる。この他にも,ビタミンK,養子免疫療法,acyclic retinoid,COX2 阻害薬,分岐鎖アミノ酸,125I 密封小線源療法などについてRCT が見られたが,結果が否定的であったり単報であったりしたために推奨文には反映しなかった。

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CQ53
肝移植後の有効な再発予防法は何か?

推奨の強さ弱い
肝移植後のmTOR 阻害薬による管理は肝細胞癌の再発を抑制する可能性がある。

背景

肝癌診療ガイドライン第3 版のCQ54 と同様のCQ である。肝細胞癌合併肝硬変肝不全に対する肝移植後の問題点の一つは肝細胞癌の再発である。肝移植後の免疫抑制は拒絶反応の予防のため必須であるが,同時に腫瘍の進展に寄与する可能性がある。以下のステートメントは肝移植後の免疫抑制剤の管理の違いによって再発が予防されるか,という観点で論じた。

サイエンティフィックステートメント

今回の改訂に際し,第3 版と同様の検索式を用いて,2012 年1 月1 日から2016 年6 月30 日までの間に発表された論文について検索し,116 篇が抽出された。そのなかから21 篇の論文が一次選択され,そこから2 篇のRCT,2 篇のメタアナリシス,4 篇の後ろ向きコホートの計8 篇の論文を採択した。また,第3 版で選択されていた8 篇の論文のうち,6 篇はそのまま採用とし2 篇を不採用とした。

近年,免疫抑制と抗腫瘍効果を併せ持つmTOR(mammalian target of rapamycin)阻害薬による肝細胞癌に対する肝移植後の管理について報告が蓄積されている。Geissler らはmTOR 阻害薬であるシロリムス(SRL)の使用について多施設共同ランダム化比較試験を行った 1)。肝移植525 例についてSRL 使用群261 例,未使用群264 例の移植後3 年無再発生存率はそれぞれ80.6%,72.3%,5 年生存率はそれぞれ79.4%,70.3%と有意差を認めた。ただし全期間での無再発生存率,全生存率には差を認めなかった。ミラノ基準外の症例では1 年生存率のみ97.2%,90.0%と有意差を認めた。Toso らは脳死肝移植70 例に対しSRL を使用し,ミラノ基準内の34 例と基準外の36 例で4 年無再発生存率がそれぞれ73%,75%と差がないことを示し,また,副作用の観点からもSRL は肝移植において有用である可能性を報告した 2)。Vivarelli らのSRL の使用の有無によるそれぞれ31 例のmatched cohort study では,SRL 使用群の3 年無再発生存率86%に対し,SRL 未使用群では56%であり,再発率の低下にSRL の使用が有意に寄与する可能性を示した 3)。米国の大規模なデータベースを用いた肝細胞癌に対する肝移植単独症例2,491 例を含む解析では,SRL を使用した109 例の5 年生存率83.1%に対し,使用していない2,382 例の5 年生存率は68.7%であり,多変量解析では抗CD25 モノクローナル抗体を用いた抗体導入療法とともに再発抑制に対し好ましい影響をもつ独立した因子であることが示されている 4)。Álamo らはmTOR 阻害薬を使用した16 例はカルシニューリン阻害薬(CNI)を使用した89 例に比べて有意に再発率が低く(6.2% vs. 19.1%),拒絶反応もなく,重篤な有害事象,死亡もなかったとしている 5)。また,上記を含むメタアナリシスでは,SRL 使用例は非使用例に比べ1 年〔オッズ比:4.53,95%信頼区間(CI):2.31~8.89〕,3 年(オッズ比:1.97,95%CI 1.29~3.00),5 年(オッズ比:2.47,95%CI:1.72~3.55)の生存率が改善され,さらにSRL 使用例は非使用例に比べ再発率が減じられる(オッズ比:0.42,95%CI:0.21~0.83)としている。また,SRL 使用の有無による急性細胞性拒絶や肝動脈血栓症などの移植後合併症の差はないとしている 6)。同様のメタアナリシスでもSRL使用例はCNI 使用例に比べ再発率(オッズ比:0.30,95%CI:0.16~0.55),再発関連死亡(オッズ比:0.29,95%CI:0.12~0.70),全死亡(オッズ比:0.35,95%CI:0.20~0.61)は有意に低かった 7)

CNI については以前から使用量と再発の関連について報告がある。Vivarelli らはシクロスポリンA(CyA)を基にした免疫抑制を行った脳死肝移植70 例(7 例で再発)について後ろ向きに検討を加え,ミラノ基準内外,病理学的脈管侵襲の有無,肝細胞癌の組織学的分化度などの因子を含めて検討を行ったところ,多変量解析でCyA に対する曝露が高い場合,再発の可能性が上昇すると報告した。曝露量は,測定ポイントにおけるCyA の血中濃度と結果時間から台形公式(trapezoidal rule)により,血中濃度の時間曲線下面積(area under the blood concentration time curve;AUC)を求め,経過観察時間で除したものと本報告中では定義されている 8)。同グループは,CyA(79 例)とタクロリムス(Tac)(60 例)を合わせた後報にて,CyA 220 ng/mL そしてTac 10 ng/mL を閾値とした同様の解析を行い,CNI に対する過度の曝露が再発率と関連があるとしている 9)。血中濃度の測定方法は統一され,諸因子を含めた多変量解析がなされているものの他病死は除外されており,拒絶反応に関する詳述はない。Rodríguez-Perálvarez らはミラノ基準内における5 年再発率はCNI 高用量曝露(Tac 平均トラフ>10 ng/mL もしくはCyA 平均トラフ>300 ng/mL)36 例は22.0%であり,低用量曝露106 例の7.0%と比べ有意に高率であったと報告している 10)

解説

第3 版では,CNI に対する過度の曝露が肝移植後の再発と関連するという結果を基に推奨文が作成された。今回mTOR 阻害薬の有無によるRCT が報告されSRL の有用性が示されたので推奨文を変更した。

免疫抑制剤は移植後の拒絶反応を抑制するために必須である。免疫抑制剤の種類の選択,維持レベルの血中濃度の調整は病態に応じて行われている。また,終生におよぶ免疫抑制による感染症のリスクや,腎機能障害などの副作用の蓄積を極力避けるため,過度の投与は回避するのが通常である。しかし再発を抑制する意図で過度に低用量での投与を試み,拒絶反応により移植片を失ってしまっては元も子もないため,濃度の調節のみに再発抑制効果を期待する戦略は好ましいとはいえない。mTOR 阻害薬は免疫抑制,抗癌作用の両者を併せ持つため肝細胞癌に対する肝移植後の管理としてはより可能性のある薬剤である。Cytotoxic agent を用いた肝細胞癌に対する肝移植後の術後補助療法のRCT,システマティックレビューでその有用性も報告されていたが,本邦では肝細胞癌に対する術後補助療法のエビデンスもなく今回の推奨文には反映しなかった 11, 12)。また,HCV 関連肝細胞癌に対する肝移植後のインターフェロン治療 13),周術期のプロスタグランディンE1 使用 14)についても報告があったがいずれも後ろ向きの検討であり単一施設からの報告であったため推奨文には反映しなかった。今回,有用性が示されたmTOR 阻害薬であるが,本邦では保険適用がなく使用経験が限られるため,その点を考慮し「弱い推奨」とした。

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CQ54
肝切除後・穿刺局所療法後の再発に対する有効な治療法は何か?

推奨の強さ強い
肝切除後・穿刺局所療法後の再発に対しては,初回治療時と同じ治療アルゴリズムの適応である。

背景

肝細胞癌に対する肝切除後の治療成績について,1980 年代に比べ1990 年代の累積生存率は著明な改善を認めるものの,切除後の無再発生存率には差はないことから,初回治療後の再発治療の進歩が長期予後の改善に寄与するとされる 1)

サイエンティフィックステートメント

第3 版のCQ55 およびCQ56 を統合して本CQ54 は作成された。今回の改訂に際し,第3 版と同様の検索式を用いて,2012 年1 月1 日から2016 年6 月30 日に発表された論文について検索し,148 篇が抽出された。そのなかから「エンドポイントを無再発生存率か全生存率に設定したコントロール群を伴うRCT あるいはnon-RCT を採用する」という方針の下に一次選択で32 篇,二次選択で13 篇の論文を新たに採用し,第3 版の11 篇と合わせて計24 篇を採用した。また,第3 版で引用された再発肝細胞癌に対する穿刺局所療法に関する論文(1 篇)と切除不能の初発肝細胞癌に対するTACE に関する論文(1 篇)は,対象がワンアームであることから今回は除外した。肝細胞癌に対する肝切除後の治療成績について初回治療後の再発治療の進歩が長期予後の改善に寄与することを報告した論文を1 篇追加した 1)。肝外病変に対する治療に関しては新たな予後予測因子について言及されていることから2016年9月に発表された文献を1 篇追加した 2)

肝切除後の再発肝細胞癌(肝単独再発)に対する再切除例と非切除治療例の成績の比較では,切除群が予後良好と報告されている 3, 4)。ただし,再発例のうち実際に切除の適応となった症例は11~30%程度にとどまる。再肝切除後の予後因子としては初回肝切除時と同様に,脈管侵襲,残肝機能,腫瘍数が挙げられているが 3-7),さらに再発までの期間が短いと予後不良であると一貫して報告されている 3, 4, 6, 7)

肝切除後の再発肝細胞癌に対する治療法と予後との関係を報告した論文は2 篇みられ,2 篇とも再発に対する治療法自体が予後規定因子であると報告している 8, 9)

Kishi らは,肝切除後の再発肝細胞癌に対して肝切除とTACE,経皮的エタノール注入(PEI)/RFA とその他の治療を受けた患者を比較し,肝切除とTACE,PEI/RFA を受けた患者はその他の治療を受けた患者に比べ予後が良く,特に小型腫瘍,再発までの期間が長い,肝外転移なしの再発症例において,治療の意義ありと報告した 10)。肝切除後の再発肝細胞癌に対して肝切除と穿刺局所療法を比較した論文では,同等の成績であるとの報告がある 11, 12)。一方,肝切除,穿刺局所療法,TACE を比較した論文では肝切除および穿刺局所療法は同等の成績でTACE はそれらより劣る 13)との報告や,肝切除とTACE を比較したメタアナリシスでは肝切除はTACE より予後が良い 14)との報告がある。また,術後早期の再発であればTACE は肝切除や穿刺局所療法と同等の成績であるとの報告 15)もある。切除後の再発肝細胞癌に対する肝移植の是非については,初回治療時に切除と移植のいずれの治療を選択すべきであるかという問題に帰着するので他項に譲る。しかし,肝切除後の再発肝細胞癌に対して肝切除,肝移植,RFA,TACE,化学療法を比較した結果,肝切除と肝移植は同等の成績であったと報告されている 16)

穿刺局所療法後の再発肝細胞癌に関してRossi らが,肝細胞癌にRFA を繰り返した696 例について検討したところ,初回治療の3 年および5 年再発率は70.8%,81.7%(年率について,局所再発6.2%,他部位再発35%)であった。3 年および5 年の全生存率と無病生存率は,それぞれ67.0%,40.1%および68.0%,38.0%であった 17)。Portolani らが,Group 1:穿刺局所療法(PEI:24 例,RFA:12 例)後再発に肝切除(36 例),Group 2:肝切除後再発で再切除(26 例),Group 3:肝切除後再発で穿刺局所療法(31 例)について検討したところ,1,3,5 年生存率についてグループ間で有意差はなかった(Group 1:92%,73%,43%,Group 2:95%,73%,31%,Group 3:96%,78%,41%) 18)。Okuwaki らによると,肝細胞癌にRFA を行った115 例の他部位再発は59 例(51.3%)に認め,他部位再発後における1,3,5 年生存率はそれぞれ92.7%,55.4%,43.7%であった。また,他部位再発に対してRFA を行った群ではTACEを行った群に比べて有意に生存率が高かった(3年生存率:77.2% vs. 28.5%) 19)

Imai らは,RFA 後の再発肝細胞癌に対して肝切除とRFA を比較したところ,無病生存率,累積生存率ともに有意な差を認めず,局所再発に対して一部の症例では切除が推奨されるが,RFA も許容範囲内の長期予後であった 20)。Xie らは,RFA 後の再発肝細胞癌に対して外科的切除(移植を含む)とRFA を比較したところ,無病生存率,累積生存率ともに有意な差を認めず,RFA 後局所再発に対してはRFA が第一選択で適応外であれば切除を検討すべきと結論づけている 21)

肝細胞癌に対して肝切除もしくはRFA 後の肝内再発をまとめて報告した論文は2 篇みられた。Eisele らは,肝内再発に対してRFA と再肝切除を行った2 群を比較し,予後に差はないと報告した 22)。Chan らは,肝移植,肝切除,RFA を行った3 群を比較し,移植または肝切除が予後良好で肝切除が不可能であれば肝移植が有用であると報告した 23)

解説

肝細胞癌に対する肝切除後,おおよそ2 年で50%,5 年で80%の症例に再発を認めるとされている。肝細胞癌に対する肝切除後再発の特徴は肝内再発の頻度が高いことであり,初回再発の90%以上が肝内再発で,またそのほとんどが肝単独再発であるとされる。肝切除後の肝再発については,転移によるものに加え,切除後の残存肝からの新しい肝細胞癌の発生(異時多中心性再発)が寄与するとされている。異時多中心性再発に対する治療方針は,理論的には初発時のそれと同じになる(背景肝の発癌リスクの経時的な変化がないと仮定した場合)。しかし,日常の臨床病理学的な検討からは,これらと肝内転移による再発の鑑別は困難であるため,初発の肝細胞癌に対する治療方針とどのように異なる態度をとるべきかが問題となる。

肝単独再発に対して治療群と未治療群,あるいは肝切除と他の治療を比較した検討は後ろ向きのコホート研究にとどまり,したがって各治療の適応症例の選択というバイアスがかかっている。これらの背景因子を考慮して多変量解析を行った報告はいくつかあり,いずれも再切除が非切除に対する独立した予後良好因子であったとしている 3, 4)が,publication bias の可能性については考慮が必要である。再発肝細胞癌に対する再肝切除症例の予後因子の検討については,40~80 例程度の報告(後ろ向きのコホート研究,または治療前後の比較のみ)がある。これらの報告では,再肝切除後の生存予後は,同じ施設の初発肝細胞癌に対する切除後のそれとほぼ同等である。初回切除から再肝切除までの期間がこれらの比較では無視されていることを考慮すると,再肝切除後の良好な結果は再切除症例の選択バイアスを反映したものと考えられる。おそらく,初発時と同様の適応基準により症例選択をすることにより,事実上,異時多中心性発生による再発症例に対して選択的に切除を施行していると考えられる。切除後の予後因子としては,初回切除時と同様に脈管侵襲の有無が共通して挙げられており,また初回切除から再発までの期間(1 年未満と以上で区分)が予後因子となっているとする報告が多いのも,前述の推測の傍証と考えられる。以上より,再発肝細胞癌に対する治療方針としては,初発肝細胞癌と同様の基準を用いて決定すべきであると記載した。ただし,切除後に短期間で再発した場合は,初回時とは異なる治療方針で臨むのが妥当であるかもしれない。

初回切除後の再発肝細胞癌に対する穿刺局所療法の検討はいくつかあり,予後因子の検討では腫瘍径やAFP 値,また再肝切除症例と同様に初回切除から再発までの期間により予後が左右されるとするものが多い 24)

切除後再発に対する肝切除,RFA,TACE を比較した報告がある。肝切除,RFA とTACE 群との間に予後の差はないとの報告 25)もあるが,肝切除とRFA が同等の成績でTACE がそれより劣るという報告が多い 11-13)。いずれもエビデンスレベルの高いものではなく,初回肝細胞癌と同様の基準を用いて選択すべきであると考えられた。

肝移植における脳死肝ドナーの圧倒的な不足という事情を鑑みて,初発肝細胞癌に対しては肝切除を行い,その後の経過中に再発を認め腫瘍が移植の適応基準内(ミラノ基準)の場合に移植を行うという方針も主張されており,salvage transplantation とよばれている。しかし,この方針の是非は,初発の肝細胞癌に対して切除と肝移植の双方が適応であった場合に,最初から肝移植を行うか,初回は肝切除を行うかという議論であり,他項に譲った。一方,初回肝切除時には肝移植の適応外であったが,再発時の腫瘍条件が適応基準内であった症例に対しての肝移植の是非は議論すべき問題である。これについては1 篇の報告があり,5 例に肝移植を行い18 カ月の追跡期間で,全員生存(4 例無再発,1 例16 カ月後に再発)していると報告している 26)。今後の検討課題である。

肝外再発に関しては,今版で新たに肝外転移に関するCQ15-2 が作成されたので,そちらを参照されたい。

今回,穿刺局所療法後の再発に対する治療法として外科的治療(移植を含む)と穿刺局所療法が比較検討された報告が新たに2 篇みられた 20, 21)。いずれの論文でも,穿刺局所療法は外科的切除と同等の成績を示したことから,穿刺局所療法後の肝細胞癌再発に対して穿刺局所療法は根治性と肝予備能を考慮して検討するべきと考えられる。

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CQ55
肝移植後の再発に対する有効な治療法は何か?

推奨の強さ弱い
肝移植後の再発に対しては可能であれば再発病巣の切除を,不可能であれば分子標的治療薬を考慮してもよい。

背景

第3 版のCQ57 と同様のCQ である。肝細胞癌合併肝硬変肝不全に対する肝移植後の再発は一定の確率で存在するがその治療法について示されたものはない。再発時の患者の状態と再発部位で治療方針が決定される。以下のステートメントは肝移植後の再発に対する有効な治療法は何か,という観点で論じた。

サイエンティフィックステートメント

今回の改訂に際し,第3 版と同様の検索式を用いて,2012 年1 月1 日から2016 年6 月30 日までの間に発表された論文について検索し,127 篇が抽出された。そのなかから21 篇の論文を一次選択し,最終的に2 篇のメタアナリシスを採択した。一次選択された21 篇の論文のうち16 篇はすべて後ろ向きの報告であり,採択したメタアナリシスでの解析対象となっており,また第3 版で選択されていた5 篇の論文もすべて同様であったため不採用とした。

de’Angelis らのメタアナリシスでは,肝移植後の再発肝細胞癌に対する治療法の安全性と有効性について61 件の研究について解析されている 1)。移植後の肝細胞癌の平均再発率は16%,移植から再発までの期間の中央値は13 カ月(2 カ月~132 カ月),67%が肝外再発で,再発後の生存期間中央値(MST)は12.97 カ月であった。肝内外の限局した再発に対する切除27 例のMST は42 カ月で,重篤な術後合併症もなく,術後死亡もなかったとしている。また,切除の対象とならない全身性の転移に対してソラフェニブ単剤で治療された76 例もしくはmTOR(mammalian target of rapamycin)阻害薬が併用された68 例のMST はそれぞれ12.1 カ月,18.2 カ月であった。主な副作用は,消化器症状,手足症候群,高血圧,倦怠感などで,副作用のため42.1%は減量が必要とされ9.6%は治療が中断されている。ソラフェニブとmTOR 阻害薬の併用についての23 件の研究のうち6 件は重篤な副作用が出現したと報告しており4 例が死亡していた。他の治療によるMST はTACE(40 例)で11.2 カ月,全身化学療法(35 例)で5.79 カ月,best supportive care(54 例)で3.3 カ月と報告している。

Mancuso らのメタアナリシスでは,移植後の再発肝細胞癌に対するソラフェニブの安全性と生存について17 件の研究が選択され解析されている 2)。移植から再発までの期間は中央値で13.6 カ月(7 カ月~38.1 カ月),肝内再発,肝内外再発,肝外再発は中央値でそれぞれ14.5%,26.2%,56.8%であった。ソラフェニブのGrade 3 以上の副作用発生頻度(中央値)は倦怠感16.1%,消化管毒性18%,皮膚障害22.5%で,心血管系は0%であった。副作用のため,42.8%は減量が必要とされ,31.9%は中断されていた。113 例はmTOR 阻害薬と併用されており,2 例(1.8%)が消化管出血で死亡しているため,その併用に対しては注意を喚起している。生存について記載のあった8 件で解析された1 年生存率は63%(18%~90%)と報告している。

解説

肝移植は,癌病巣のみならず癌発生の母地である病的肝を含めた全肝を摘出した後に同所性に置換する。その後に認められる再発病巣は,すでに血中に存在していた癌細胞の播種性の病変であると考えられている。ただし肝内再発はその播種性病変の一環か,グラフトにおける肝炎の再燃,肝硬変への進行に伴うde novo 発癌の可能性も否定しえない。近年,肝移植後の再発に対する治療報告も蓄積しつつあるが,RCT や大規模前向き研究はない。以上より,今回の採択論文は後ろ向き報告をまとめたメタアナリシスのみとし「弱い推奨」とした。

治療別に見ると肝内もしくは肝外の孤立性病変に対する切除成績が最も優れていたが,再発形式,再発部位,患者背景など相応のバイアスを考慮し,推奨文では「可能であれば」と付記した。肝内転移巣に対してはTACE の治療報告が多く,また近年ではRFA の報告も蓄積しつつある。いずれも重篤な合併症の報告はないが,肝移植における胆道再建法は,胆管胆管吻合のみならず胆管空腸吻合が行われている症例も少なくないことより,TACE,RFA は胆管炎や肝膿瘍などの重篤な合併症を招く可能性も否定できないため,その点を考慮し推奨とはしなかった。

転移が全身に広がっている場合,cytotoxic agent による全身化学療法よりも分子標的薬であるソラフェニブの方がMST が良好であったが,副作用のために減量もしくは中止せざるを得ない症例も報告されている。また,免疫抑制剤としてmTOR 阻害薬を併用した場合,MST は良好だが死亡例の報告もあるため,保険適用ではない本邦では,現時点での使用は限定されるべきである。なお,これら薬物治療においては,今後の症例の蓄積が期待される。

参考文献

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