クリニカルクエスチョン・推奨一覧

悪性胸膜中皮腫診療

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総論.悪性胸膜中皮腫診療ガイドライン2018 年版を利用するにあたり

Ⅰ.診 断

1 臨床症状,危険因子

No. クリニカルクエスチョン 推奨
CQ1 中皮腫にみられる臨床症状は何か? 胸膜中皮腫の臨床症状として,胸部圧迫感,労作時呼吸困難,咳嗽などが認められる。
CQ2 中皮腫発生の危険因子は何か? 中皮腫の危険因子には,アスベスト曝露歴(職業性曝露,環境曝露),中皮腫の家族歴がある。

2 診断方法

No. クリニカルクエスチョン 推奨 エビデンスの強さ
CQ3 末梢血中のマーカーによる中皮腫の確定診断は勧められるか? 末梢血中のマーカー測定をもって,中皮腫の確定診断を行わないよう推奨する。〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕 D
CQ4 胸水中の腫瘍マーカーやヒアルロン酸の測定は中皮腫の確定診断に勧められるか? 胸水中の腫瘍マーカーやヒアルロン酸の測定をもって,中皮腫の確定診断を行わないよう推奨する。〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕 D
CQ5 中皮腫を診断するための検体は,どのような検査手技での胸膜の採取が勧められるか?
  • a . 可能なかぎり全身麻酔胸腔鏡下胸膜生検を行うよう推奨する。〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:D,合意率:91%〕
D
  • b . PS 不良例で腫瘤形成のある中皮腫症例においては,CT ガイド下針生検も行うよう提案する。〔推奨の強さ:2,合意率:64%〕
D
CQ6 どのような画像所見のときに中皮腫を疑うのか? 胸水貯留と胸膜肥厚が中皮腫を疑う画像所見である。
CQ7 中皮腫を疑って胸腔鏡下で生検を行う場合の注意点は何か?
  • a . One port での胸腔鏡を推奨する。〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕
D
  • b . 切除可能症例では後日の皮膚切開線上にポートを設定することを推奨する。〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕
D
  • c . 十分な大きさの胸膜を採取することを推奨する。〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕
D
  • d . 明らかな腫瘤を形成していない場合は胸膜全層の採取を推奨する。〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕
D

3 病理診断

No. クリニカルクエスチョン 推奨 エビデンスの強さ
CQ8 中皮腫の診断に組織診断は必要か? 中皮腫の診断に組織診断を行うよう推奨する。〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕 D
CQ9 迅速組織診で中皮腫の診断をつけることは勧められるか? 迅速組織診で中皮腫の確定診断を行わないよう推奨する。〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕 D
CQ10 体腔液が貯留している場合に,体腔液細胞診を行うことは勧められるか?
  • a . 体腔液が貯留している場合は,体腔液細胞診を行うよう推奨する。〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕
D
  • b . 体腔液細胞診にセルブロック法などによる補助的検査を追加するよう推奨する。〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕
D
CQ11 中皮腫の組織分類にはどのような分類を用いるか? 中皮腫の分類にはWHO 分類を用いるよう推奨する。〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕 D
CQ12 上皮型中皮腫と反応性中皮の過形成はどのように鑑別できるか? 腫瘍細胞の脂肪組織への浸潤があれば中皮腫と診断できる。浸潤がなくても,p16 のホモ接合性欠失あるいはBAP1 loss があれば中皮腫と診断できる。〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕 D
CQ13 線維形成型中皮腫と線維性胸膜炎はどのように鑑別できるか? Zonation と呼ばれる胸膜炎の組織学的特徴に着目して診断する。FISH によるp16 のホモ接合性欠失の証明も鑑別に有用である。〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕 D
CQ14 肉腫型中皮腫と肺肉腫様癌はどのように鑑別できるか? 肉腫型中皮腫と肺肉腫様癌の鑑別は,病理所見だけではなく,臨床情報,画像所見とともに判断するよう提案する。〔推奨の強さ:2,合意率:100%〕 D
CQ15 肉腫型中皮腫と滑膜肉腫はどのように鑑別できるか? 滑膜肉腫の診断にはFISH またはRT-PCR にて染色体相互転座t(X;18)(p11.2;q11.2)による融合遺伝子SS18-SSX の形成を検出するよう推奨する。〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕 C
CQ16 FISH でp16 のホモ接合性欠失がある場合に,中皮腫と診断できるか? p16 のホモ接合性欠失の存在のみによって中皮腫と診断しないよう推奨する。〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕 D
CQ17 免疫染色でBAP1 loss がある場合に,中皮腫と診断できるか? BAP1 loss の存在のみによって中皮腫と診断しないよう推奨する。〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕 D

4 画像診断

No. クリニカルクエスチョン 推奨 エビデンスの強さ
CQ18 中皮腫のCT 診断に造影剤使用は勧められるか? 存在診断時,病期診断時には,CT 撮像時に造影剤を使用するよう推奨する。〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕 D
CQ19 中皮腫の診断にFDG-PET/CT は勧められるか?
  • a . FDG-PET/CT は,胸膜病変の良悪性鑑別の確定診断として行わないよう推奨する。〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕
A
  • b . FDG-PET/CT は,存在診断,病期診断において行うよう推奨する。〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕
C
CQ20 中皮腫の診断にMRI は勧められるか? 中皮腫の確定診断にMRI を行わないよう推奨する。〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕 D
CQ21 中皮腫の病期診断に頭部造影MRI は勧められるか? 頭部造影MRI はルーチンには行わないよう提案する。〔推奨の強さ:2,合意率:82%〕 D

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Ⅱ.治 療

1 外科治療

No. クリニカルクエスチョン 推奨 エビデンスの強さ
CQ1 臨床病期Ⅰ-Ⅲ期に手術を行うことは勧められるか?
  • a . 臨床病期Ⅰ-Ⅲ期で術後に肉眼的完全切除を得られると考えられる症例に対して手術を行うよう提案する。〔推奨の強さ:2,合意率:100%〕
C
  • b . 手術適応は呼吸器外科医を含む集学的治療チームにより判定するよう推奨する。〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕
D
CQ2 耐術能のある切除可能中皮腫には,胸膜肺全摘術(EPP)と胸膜切除/肺剝皮術(P/D)いずれの術式が勧められるか? EPP とP/D のいずれかの術式を勧めるだけの根拠が明確ではない。
CQ3 肉腫型および二相型中皮腫に外科療法は勧められるか?
  • a . 肉腫型中皮腫に外科療法を行わないよう提案する。〔推奨の強さ:2,合意率:100%〕
D
  • b . 二相型中皮腫に外科療法を行うよう提案する。〔推奨の強さ:2,合意率:100%〕
D
CQ4 手術中の局所療法併用は勧められるか? 手術に併用する治療法選択として様々な術中局所療法が報告されるが,これらの局所療法を勧めるだけの根拠が明確ではない。

2 放射線療法

No. クリニカルクエスチョン 推奨 エビデンスの強さ
CQ5 胸膜肺全摘術(EPP)の術後に片側胸郭照射を行うことは勧められるか? EPP の術後に片側胸郭照射を行うよう提案する。〔推奨の強さ:2,合意率:91%〕 D
CQ6 胸膜切除/ 肺剝皮術(P/D)の術後または手術非適応症例に放射線療法は勧められるか? P/D の術後または手術非適応症例に放射線療法を行うことを勧めるだけの根拠が明確ではない。
CQ7 EPP 後放射線治療として3 次元原体放射線治療(3D-CRT)や強度変調放射線治療(IMRT)は勧められるか? EPP 後放射線治療として,3D-CRT やIMRT を行うよう提案する。〔推奨の強さ:2,合意率:91%〕 C

3 化学療法

No. クリニカルクエスチョン 推奨 エビデンスの強さ
CQ8 術前・術後の化学療法は勧められるか? 術前あるいは術後の化学療法を行うよう推奨する。〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕 C
CQ9 PS 0-2 に勧められる一次治療は何か? シスプラチン+ペメトレキセド併用療法を行うよう推奨する。〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕 B
CQ10 PS 3-4 に勧められる一次治療は何か? PS 3-4 に対し化学療法を行うよう勧めるだけの根拠が明確ではない。
CQ11 75 歳以上に勧められる一次治療は何か? PS 0-2 であれば化学療法を行うよう提案する。〔推奨の強さ:2,合意率:100%〕 D
CQ12 組織型別で殺細胞性抗癌剤の治療選択に相違はあるか? 未治療切除不能悪性胸膜中皮腫に対する一次治療としての化学療法では,組織型別に治療選択を行うよう勧めるだけの根拠が明確ではない。
CQ13 プラチナ製剤併用化学療法で勧められる投与コース数は? 4~6 コースを行うよう提案する。〔推奨の強さ:2,合意率:100%〕 C
CQ14 プラチナ製剤併用化学療法後の維持療法は勧められるか? 維持療法を行うよう勧めるだけの根拠が明確ではない。
CQ15 二次治療は勧められるか? PS 0-2 で臓器機能が保たれている切除不能悪性胸膜中皮腫に対して,二次治療を行うよう提案する。〔推奨の強さ:2,合意率:100%〕 C
CQ16 免疫チェックポイント阻害剤は勧められるか? ECOG PS 0-1 で臓器機能が保たれている切除不能悪性胸膜中皮腫に対して,ニボルマブを二次治療以降で行うよう提案する。〔推奨の強さ:2,合意率:100%〕 C

4 緩和医療

No. クリニカルクエスチョン 推奨 エビデンスの強さ
CQ17 疼痛緩和目的の放射線治療は勧められるか? 疼痛緩和目的の放射線治療を行うよう推奨する。〔推奨の強さ:1,合意率:91%〕 C
CQ18 症状緩和目的の胸膜癒着術は勧められるか? 胸水制御と胸水貯留による症状の軽減を目的とした緩和療法として,薬剤による胸膜癒着術を行うよう提案する。〔推奨の強さ:2,合意率:73%〕 C