悪性胸膜中皮腫

総論
悪性胸膜中皮腫診療ガイドライン2018 年版を利用するにあたり

解説

悪性中皮腫は,胸膜,腹膜,心膜,精巣鞘膜に発生する悪性腫瘍であり,胸膜が80~85%,腹膜が10~15%,その他の部位での発生は1%以下とされる。発症原因としては,70~80%の症例においてアスベスト曝露との関連性が疫学的に証明されている。本邦では1980 年代半ばまでアスベストの輸入が行われていた。アスベスト曝露開始から発症までの潜伏期間が25~50 年とされていることから,本邦における今後の悪性中皮腫の発生ピークは2030 年頃で,罹患者数は年間3,000 人に及ぶと予測されている。また悪性中皮腫による死亡者数も2000 年の710 人から,2005 年911 人,2010 年1,209 人,2015 年1,504 人と確実に増加の一途をたどっている1)

しかしながら,悪性中皮腫の診断に際しては存在診断のみならず,質的確定診断にも苦慮することが実地臨床では多い。また悪性中皮腫は反応性中皮過形成,線維性胸膜炎,肺腺癌,肺肉腫様癌,滑膜肉腫などとの鑑別が重要であるが,時に鑑別診断が困難な場合もある。本ガイドラインの「危険因子,臨床症状,血清および胸水中のバイオマーカー,画像診断,検体採取のための検査手技,細胞診および組織診」で取り上げたClinical Question(CQ)が実地臨床の場で,その存在診断および質的確定診断の参考になれば幸いである。

悪性中皮腫の治療は,IMIG(International Mesothelioma Interest Group)分類による病期分類とWHO 分類による組織分類を総合的に評価して決定される。一般に,切除可能症例には手術療法が,切除不可能症例や術後再発症例には化学療法が,それぞれ治療の主体となる。一方,放射線療法は手術療法や化学療法と組み合わせた集学的治療の一環として施行される場合が多く,その他に疼痛コントロール目的の緩和療法として施行される場合もある。本ガイドラインでは,「外科療法,放射線療法,化学療法,および緩和療法」について実地臨床で役立つCQ をそれぞれ念頭において設定したので,ぜひとも参考にしていただきたい。

全国がん(成人病)センター協議会の生存率共同調査(2018 年2 月集計)による病期別5 年生存率は,Ⅰ期14.6%(n=48),Ⅱ期4.5%(n=22),Ⅲ期8.0%(n=50),Ⅳ期0.0%(n=70)といずれも予後不良であることが報告されている2)。このような現況にあって,本来であれば悪性中皮腫では集学的治療をベースとしたランダム化比較試験に基づくエビデンスの構築が不可欠であるが,本疾患の絶対数が決して多くないことからそれが困難となっている。このことは悪性中皮腫における診断のエビデンスについても同様である。したがって,本ガイドラインにおける推奨度の決定に際しては,胸膜中皮腫小委員会(ガイドライン作成班)の投票結果に依存せざるを得ない場合があったことをご了承いただきたい。

悪性胸膜中皮腫の分類
悪性胸膜中皮腫のTNM 分類Ver. 8(IMIG 分類)
胸膜腫瘍の分類(WHO 分類,2015)

参考文献

1)
厚生労働省人口動態統計.都道府県(21 大都市再掲)別にみた中皮腫による死亡数の年次推移(平成7 年~27 年).
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/tokusyu/chuuhisyu15/dl/chuuhisyu.pdf
2)
全がん協生存率調査.全国がん(成人病)センター協議会の生存率共同調査(2018 年2 月集計).
https://kapweb.chiba-cancer-registry.org

Ⅰ.診断

臨床症状,危険因子

CQ1
中皮腫にみられる臨床症状は何か?

胸膜中皮腫の臨床症状として,胸部圧迫感,労作時呼吸困難,咳嗽などが認められる。

解説

悪性胸膜中皮腫は,初期は無症状であるが,胸水の増加に伴い胸部圧迫感や労作時呼吸困難が出現する1)。胸壁に浸潤が始まると胸痛,背部痛を自覚するようになる。疼痛は病期の進行につれて高度になる。中皮腫細胞は胸腔穿刺路や手術創に沿って播種病変を形成することがある。病気が進行すると,体重減少,食欲不振,発熱,寝汗,血小板増多症,低アルブミン血症,貧血などを呈することがある。

CQ2
中皮腫発生の危険因子は何か?

中皮腫の危険因子には,アスベスト曝露歴(職業性曝露,環境曝露),中皮腫の家族歴がある。

解説

中皮腫の発生とアスベスト曝露の関係は明らかである2)。非アスベストであるエリオナイトも中皮腫を発生させるが,国内からの報告はみられない。中皮腫の発生リスクを増加させない安全な累積アスベスト曝露量は明らかではない3)。がんの家族歴を有する中皮腫の6%に,生殖細胞系列(Germline)BAP1 遺伝子変異があり,BAP1 遺伝子変異の保因者は変異のない中皮腫患者よりも若く発症し,腹膜中皮腫の比率が高いとの報告があり,遺伝的素因の可能性が示唆されている4)

放射線治療後に,電離放射線によって中皮腫が引き起こされる可能性を示唆する報告がある。一方,電離放射線と中皮腫発生との関係は明らかではないとの報告5)もあり,両者の因果関係は明らかでない。

引用文献

1)
Lee YC, Light RW, Musk AW. Management of malignant pleural mesothelioma: a critical review. Curr Opin Pulm Med. 2000; 6(4): 267-74.
2)
Wagner JC, Sleggs CA, Marchand P. Diffuse pleural mesothelioma and asbestos exposure in the North Western Cape Province. Br J Ind Med. 1960; 17: 260-71.
3)
Hillerdal G. Mesothelioma: cases associated with non-occupational and low dose exposures. Occup Environ Med. 1999; 56(8): 505-13.
4)
Ohar JA, Cheung M, Talarchek J, et al. Germline BAP1 Mutational Landscape of Asbestos-Exposed Malignant Mesothelioma Patients with Family History of Cancer. Cancer Res. 2016; 76(2): 206-15.
5)
Laurent O, Metz-Flamant C, Rogel A, et al. Relationship between occupational exposure to ionizing radiation and mortality at the French electricity company, period 1961-2003. Int Arch Occup Environ Health. 2010; 83(8): 935-44.

診断方法

CQ3
末梢血中のマーカーによる中皮腫の確定診断は勧められるか?

エビデンスの強さD
末梢血中のマーカー測定をもって,中皮腫の確定診断を行わないよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

解説

血清の可溶性メソテリン関連ペプチド(SMRP)値について16 研究から中皮腫1,026 例および対照症例を含む4,491 例のメタアナリシスで,2.0 nmol/L をカットオフ値とすると,感度は19~68%,特異度は88~100%であった。Ⅰ・Ⅱ期の中皮腫とハイリスク群でのROC 解析では,AUC=0.77(95%CI:0.73-0.8)であった1)2)。中皮腫を疑う症例で高い特異度のレベルで血清メソテリンが陽性であった場合には,次の診断手順に進むことが強く推奨される。しかし,感度が低いことから,早期診断での有用性は限られる。SMRP とオステオポンチンを前方視的に解析した報告では,血清SMRP の変化と化学療法による腫瘍縮小には有意な関連が認められたが,オステオポンチンでは認められなかった2)~4)。血清,胸水中のバイオマーカーだけで中皮腫の診断を行うことは難しい。

以上より,エビデンスの強さはD,また総合的評価では行わないよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:胸膜中皮腫小委員会(患者2 名含む)

CQ4
胸水中の腫瘍マーカーやヒアルロン酸の測定は中皮腫の確定診断に勧められるか?

エビデンスの強さD
胸水中の腫瘍マーカーやヒアルロン酸の測定をもって,中皮腫の確定診断を行わないよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

解説

中皮腫50 例を含む334 例の日本人で胸水ヒアルロン酸について行われた検討では,ROC 解析のAUC=0.832(95%CI:0.765-0.898)で,100,000 ng/mL をカットオフ値としたときの感度は44%,特異度は96.5%であった5)。感度が低いことから,早期診断での有用性は限られるが,中皮腫を疑う症例で高い特異度のレベルで胸水ヒアルロン酸が陽性であった場合には,次の診断手順に進むことが推奨される。

胸水中のバイオマーカーだけで中皮腫の診断を行うことは難しい6)。中皮腫を疑う症例で高い特異度のレベルで胸水メソテリン,ヒアルロン酸が高値であった場合には,次の診断手順に進むことが推奨される。

以上より,エビデンスの強さはD,また総合的評価では行わないよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:胸膜中皮腫小委員会(患者2 名含む)

CQ5
中皮腫を診断するための検体は,どのような検査手技での胸膜の採取が勧められるか?

エビデンスの強さD
  1. a. 可能なかぎり全身麻酔胸腔鏡下胸膜生検を行うよう推奨する。

    〔推奨の強さ:1,合意率:91%〕

エビデンスの強さD
  1. b. PS 不良例で腫瘤形成のある中皮腫症例においては,CT ガイド下針生検も行うよう提案する。

    〔推奨の強さ:2,合意率:64%〕

解説

胸膜中皮腫の確定診断のためには胸膜生検によって確実な組織診断を行い,組織亜型や病変の浸潤度まで診断をつけることが望ましい。

胸膜生検の方法としては,経皮的針生検(盲目的生検,CT や超音波による画像ガイド下生検),内科的(局所麻酔下)胸腔鏡下生検,外科的(胸腔鏡下,開胸)生検などがある。生検のGold standard は胸腔鏡とされ,診断率は95%以上と報告されている7)8)

生検方法の違いによる確定診断率を比較した報告9)では,Abrams 針生検68%,胸腔鏡下生検87%,開胸生検91%であった。

Abrams 針生検とCT ガイド下針生検のランダム化比較試験10)では,前者のsensitivity 47%,negative predictive value 44%に対して後者ではsensitivity 87%,negative predictive value 80%と後者が有意に良好な結果であった。

病理亜型の診断において,内科的胸腔鏡下生検を行った胸膜中皮腫95 例の報告11)では,上皮型の診断でsensitivity 94%,specificity 20%,positive predictive value 86%,negative predictive value 37%であり,二相型ではsensitivity 20%,specificity 98%,positive predictive value 75%,negative predictive value 87%であった。このため,内科的胸腔鏡下生検は胸膜中皮腫の診断には有用であるが,亜型までは診断できないとされた。

以上より,治療可能な症例においては組織亜型情報は必須であるため,全身麻酔可能症例においては全身麻酔下胸腔鏡生検が推奨される。エビデンスの強さはD,総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。また,推奨b についてはエビデンスの強さはD,総合的評価では弱く推奨(2 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:胸膜中皮腫小委員会(患者2 名含む)

CQ6
どのような画像所見のときに中皮腫を疑うのか?

胸水貯留と胸膜肥厚が中皮腫を疑う画像所見である。

解説

胸膜中皮腫において胸水貯留と胸膜肥厚が高頻度に認められる所見である12)13)。早期の中皮腫では,胸水貯留のみか,胸膜肥厚はあっても軽微であり,縦隔側や葉間の胸膜不整像に注目する必要がある14)。典型例では,①肺を取り囲む全周性の胸膜肥厚(pleural rind)がみられる。さらに,②結節状の胸膜肥厚,③厚さが1 cm を越える胸膜肥厚,④縦隔胸膜の肥厚を加えた4 つの所見が胸膜病変の良悪性の鑑別に重要であり,感度はそれぞれ41%,51%,36%,56%であり,特異度はそれぞれ100%,94%,94%,88%と報告されている15)。また,これらの1 つないし複数の所見がある場合,悪性病変である可能性が極めて高い16)17)。しかし,胸膜中皮腫と転移性胸膜腫瘍の画像所見にはオーバーラップがみられ,鑑別は困難である。中皮腫は,単発や多発の胸膜腫瘤,縦隔腫瘍や胸壁腫瘍類似の所見を呈することもある。

CQ7
中皮腫を疑って胸腔鏡下で生検を行う場合の注意点は何か?

エビデンスの強さD
  1. a. One port での胸腔鏡を推奨する。

    〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

エビデンスの強さD
  1. b. 切除可能症例では後日の皮膚切開線上にポートを設定することを推奨する。

    〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

エビデンスの強さD
  1. c. 十分な大きさの胸膜を採取することを推奨する。

    〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

エビデンスの強さD
  1. d. 明らかな腫瘤を形成していない場合は胸膜全層の採取を推奨する。

    〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

解説

播種の発生率は,画像ガイド下針生検4%,外科的生検22%であり,外科的生検による播種発生率の高さが指摘された18)。このため,外科的生検を行う場合は,その必要性を十分に検討し,小切開で行うことが望ましい。

採取組織径10 mm 以上では診断率が75%であったが,10 mm 未満では8%であり,生検標本の大きさは確定診断には重要な要素であるとされた19)

以上より,エビデンスの強さはD,また総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:胸膜中皮腫小委員会(患者2 名含む)

引用文献

1)
Hollevoet K, Reitsma JB, Creaney J, et al. Serum mesothelin for diagnosing malignant pleural mesothelioma: an individual patient data meta-analysis. J Clin Oncol. 2012; 30(13): 1541-9.
2)
Robinson BW, Creaney J, Lake R, et al. Mesothelin-family proteins and diagnosis of mesothelioma. Lancet. 2003; 362(9396): 1612-6.
3)
Wheatley-Price P, Yang B, Patsios D, et al. Soluble mesothelin-related Peptide and osteopontin as markers of response in malignant mesothelioma. J Clin Oncol. 2010; 28(20): 3316-22.
4)
Pass HI, Lott D, Lonardo F, et al. Asbestos exposure, pleural mesothelioma, and serum osteopontin levels. N Engl J Med. 2005; 353(15): 1564-73.
5)
Fujimoto N, Gemba K, Asano M, et al. Hyaluronic acid in the pleural fluid of patients with malignant pleural mesothelioma. Respir Investig. 2013; 51(2): 92-7.
6)
van der Bij S, Schaake E, Koffijberg H, et al. Markers for the non-invasive diagnosis of mesothelioma: a systematic review. Br J Cancer. 2011; 104(8): 1325-33.
7)
Grossebner MW, Arifi AA, Goddard M, et al. Mesothelioma–VATS biopsy and lung mobilization improves diagnosis and palliation. Eur J Cardiothorac Surg. 1999; 16(6): 619-23.
8)
Boutin C, Rey F. Thoracoscopy in pleural malignant mesothelioma: a prospective study of 188 consecutive patients. Part 1: Diagnosis. Cancer. 1993; 72(2): 389-93.
9)
van Gelder T, Hoogsteden HC, Vandenbroucke JP, et al. The influence of the diagnostic technique on the histopathological diagnosis in malignant mesothelioma. Virchows Arch A Pathol Anat Histopathol. 1991; 418(4): 315-7.
10)
Maskell NA, Gleeson FV, Davies RJ. Standard pleural biopsy versus CT-guided cutting-needle biopsy for diagnosis of malignant disease in pleural effusions: a randomised controlled trial. Lancet. 2003; 361(9366): 1326-30.
11)
Greillier L, Cavailles A, Fraticelli A, et al. Accuracy of pleural biopsy using thoracoscopy for the diagnosis of histologic subtype in patients with malignant pleural mesothelioma. Cancer. 2007; 110(10): 2248-52.
12)
Kawashima A, Libshitz HI. Malignant pleural mesothelioma: CT manifestations in 50 cases. AJR Am J Roentgenol. 1990; 155(5): 965-9.
13)
Okten F, Köksal D, Onal M, et al. Computed tomography findings in 66 patients with malignant pleural mesothelioma due to environmental exposure to asbestos. Clin Imaging. 2006; 30(3): 177-80.
14)
Kato K, Gemba K, Fujimoto N, et al. Pleural irregularities and mediastinal pleural involvement in early stages of malignant pleural mesothelioma and benign asbestos pleural effusion. Eur J Radiol. 2016; 85(9): 1594-600.
15)
Leung AN, Müller NL, Miller RR. CT in differential diagnosis of diffuse pleural disease. AJR Am J Roentgenol. 1990; 154(3): 487-92.
16)
Yilmaz U, Polat G, Sahin N, et al. CT in differential diagnosis of benign and malignant pleural disease. Monaldi Arch Chest Dis. 2005; 63(1): 17-22.
17)
Metintas M, Ucgun I, Elbek O, et al. Computed tomography features in malignant pleural mesothelioma and other commonly seen pleural diseases. Eur J Radiol. 2002; 41(1): 1-9.
18)
Agarwal PP, Seely JM, Matzinger FR, et al. Pleural mesothelioma: sensitivity and incidence of needle track seeding after image-guided biopsy versus surgical biopsy. Radiology. 2006; 241(2): 589-94.
19)
Attanoos RL, Gibbs AR. The comparative accuracy of different pleural biopsy techniques in the diagnosis of malignant mesothelioma. Histopathology. 2008; 53(3): 340-4.

病理診断

CQ8
中皮腫の診断に組織診断は必要か?

エビデンスの強さD
中皮腫の診断に組織診断を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

解説

中皮腫以外の腫瘍でも画像上中皮腫のように発育することがあり1),また,早期の中皮腫は胸水のみを認めるため,反応性病変と鑑別することができない。したがって,組織診断を行い,病理学的に中皮腫であることを確認する必要がある2)

以上より,エビデンスの強さはD,また総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:胸膜中皮腫小委員会(患者2 名含む)

CQ9
迅速組織診で中皮腫の診断をつけることは勧められるか?

エビデンスの強さD
迅速組織診で中皮腫の確定診断を行わないよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

解説

154 例の胸膜病変の迅速診断を固定標本で診断した結果と比較した論文3)によると,確定診断された症例のうち,1 例は迅速組織診で悪性と診断されたが,永久標本による診断は胸膜炎であった。4 例は迅速組織診で良性と診断されたが,永久標本による診断は悪性であった。これらの誤診例のうち,3 例は迅速時のサンプリングエラーであった。その組織型は扁平上皮癌1 例,腺癌1 例,二相型中皮腫1 例であった。1 例は腺腔形成を認めたが少量であり脂肪組織への浸潤もなく,悪性とは診断できなかった。迅速組織診では7 例(4.5%)で診断が確定できなかった。診断が確定できなかった7 例のうち,4 例は中皮腫であった(上皮型2 例,肉腫型1 例,線維形成性1 例)。線維形成型中皮腫は膠原線維の増生が強く細胞密度が低い部分が採取され,他の中皮腫は表面のみの病変で浸潤を評価できなかった。2 例は転移性癌,1 例は胸膜炎であった。この検討は中皮腫を31 例含むため,26 例(84%)は悪性と診断できたと考えられる。

以上より,エビデンスの強さはD,また総合的評価では行わないよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:胸膜中皮腫小委員会(患者2 名含む)

CQ10
体腔液が貯留している場合に,体腔液細胞診を行うことは勧められるか?

エビデンスの強さD
  1. a. 体腔液が貯留している場合は,体腔液細胞診を行うよう推奨する。

    〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

エビデンスの強さD
  1. b. 体腔液細胞診にセルブロック法などによる補助的検査を追加するよう推奨する。

    〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

解説

  1. a. 中皮腫の71%の症例が体腔液細胞診で診断できたが,生検のほうが体腔液の細胞診による診断より診断率が高かったとの報告がある4)。腹水細胞診で診断がつかず,病理解剖で腹膜中皮腫の診断がついたとの報告もある5)。一方,体腔液細胞診にBAP16),EZH2 などの免疫染色7)を応用し,癌腫や中皮腫の診断が可能であったとする論文もある。

    細胞診で中皮腫と診断された場合,上皮型中皮腫と二相型中皮腫が含まれる。二相型中皮腫は上皮型中皮腫に比べると予後が不良である。しかし,細胞診だけで中皮腫と診断された症例は組織診で上皮型中皮腫と診断された症例と同様の予後で,組織診で二相型中皮腫や肉腫型中皮腫と診断された症例よりも予後が良好であった8)

    しかし,2018 年に発表されたASCO のガイドラインによると,胸水を認めて症状がある場合には,胸水細胞診を行うべきであるが,化学療法が行われる場合は,胸腔鏡により生検を行うことが強く推奨されると記載されている9)。2018 年に発表されたBTS のガイドラインによると,中皮腫において体腔液細胞診で診断できる割合は16~73%と幅があり,これは細胞診断医の経験による。

  2. b. 施設によっては,セルブロックでp16 のホモ接合性欠失を検討しており,このことにより診断精度が向上すると記載されている10)。IMIG の中皮腫病理診断ガイドラインにも細胞診スメアあるいはセルブロックに免疫染色と分子生物学的技法を加えることにより診断精度が向上すると記載されている2)

    体腔液における中皮腫の細胞診所見に関しては,Hjerpe A らの報告がある11)

    したがって,体腔液細胞診により中皮腫と診断するためには,セルブロック法などにより,p16 のホモ接合性欠失の検討やBAP1 loss の検討を追加することが推奨される。

    以上より,エビデンスの強さはD,また総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:胸膜中皮腫小委員会(患者2 名含む)

CQ11
中皮腫の組織分類にはどのような分類を用いるか?

エビデンスの強さD
中皮腫の分類にはWHO 分類を用いるよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

解説

WHO 分類は中皮腫を上皮型中皮腫,二相型中皮腫,肉腫型中皮腫に分類する。組織型により予後が異なる12)13)

また,上皮型胸膜中皮腫でMyxoid/microcystic subtype は予後が良好である14)。上皮型腹膜中皮腫をsolid pattern とそれ以外に分けると,solid pattern は予後が不良である15)

以上より,エビデンスの強さはD,また総合的評価では中皮腫の分類にWHO 分類を用いることを強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:胸膜中皮腫小委員会(患者2 名含む)

CQ12
上皮型中皮腫と反応性中皮の過形成はどのように鑑別できるか?

エビデンスの強さD
腫瘍細胞の脂肪組織への浸潤があれば中皮腫と診断できる。浸潤がなくても,p16 のホモ接合性欠失あるいはBAP1 loss があれば中皮腫と診断できる。

〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

解説

組織学的に,上皮型中皮腫と反応性中皮過形成の鑑別は,腫瘍細胞による壁側胸膜・胸壁の脂肪組織や骨格筋層への浸潤または臓側胸膜・肺への浸潤が確認された場合にのみ可能だとされてきた2)。両者の細胞異型の程度は時に類似し,過形成においても表層部では間質浸潤様所見を呈し得るからである。しかし,近年の分子生物学的検討から,FISH によるp16 のホモ接合性欠失の検出と,免疫組織化学によるBAP1 蛋白の核からの消失(BAP1 loss)の検出は,上皮型中皮腫と反応性中皮過形成の鑑別において特異度100%である2)16)。また両者の併用により診断感度が上がる10)16)17)。この考えに基づいてmesothelioma in situ の概念も見直されつつあり,表面を覆う1 層の中皮細胞に上記のいずれかの変化が確認された場合には,病変をmesothelioma in situ として捉えることが提唱されている18)

以上より,エビデンスの強さはD,また総合的評価では腫瘍細胞の脂肪組織への浸潤,あるいはp16 ホモ接合性欠失,BAP1 loss の有無を検討することを強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:胸膜中皮腫小委員会(患者2 名含む)

CQ13
線維形成型中皮腫と線維性胸膜炎はどのように鑑別できるか?

エビデンスの強さD
Zonation と呼ばれる胸膜炎の組織学的特徴に着目して診断する。FISH によるp16 のホモ接合性欠失の証明も鑑別に有用である。

〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

解説

線維形成型中皮腫は,密な膠原線維性組織とその線維間に疎に存在する紡錘形の中皮腫細胞が特徴である。異型はあっても弱いのが一般的で,線維性胸膜炎(特に表層で器質化を伴う炎症)では核がやや腫大した紡錘形の反応性中皮細胞を伴うことが多いので,鑑別が難しい。胸膜炎ではzonation と呼ばれる所見〔胸膜の胸腔側(特に炎症性滲出物直下)では肉芽組織形成を伴って細胞密度が高く,深部(胸壁側)にいくにしたがって線維化が優勢となり細胞密度が低くなる〕が特徴的だが,線維形成型中皮腫では認められない2)。また,胸膜炎では特に胸腔側で,毛細血管の発達がよく,胸膜表面に対して直交するように増生するが,線維形成型中皮腫では毛細血管の増生はさほど目立たない。一方で,線維形成型中皮腫では一部に細胞密度の高い部分が結節様に認められることがあるが(cellular stromal nodules),胸膜炎ではみられない2)。脂肪組織まで浸潤する紡錘形中皮細胞が認められれば,線維形成型中皮腫の診断を支持するが,この際には,サイトケラチンの免疫染色が有用である。ただし,いわゆるfake fat と呼ばれるアーチファクトへの注意も必要である。これは線維成分の固定時の収縮のために,脂肪細胞様の空隙が線維間に生じてしまうことを指す。これを脂肪浸潤と間違わないようにしなければならない。一般的に,真の脂肪浸潤の際には腫瘍細胞は多少なりとも下向きに増殖するが,fake fat の際には細胞は胸膜表面と平行に分布する2)

線維形成型中皮腫を含む肉腫型中皮腫においてはp16 のホモ接合性欠失が高頻度(90~100%)に認められるが,線維性胸膜炎では認められず(特異度100%),両者の鑑別にp16 FISH は有用である2)19)

以上より,エビデンスの強さはD,また総合的評価ではZonation やp16 ホモ接合性欠失の有無を検討することを強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:胸膜中皮腫小委員会(患者2 名含む)

CQ14
肉腫型中皮腫と肺肉腫様癌はどのように鑑別できるか?

エビデンスの強さD
肉腫型中皮腫と肺肉腫様癌の鑑別は,病理所見だけではなく,臨床情報,画像所見とともに判断するよう提案する。

〔推奨の強さ:2,合意率:100%〕

解説

肉腫型中皮腫と肉腫様癌は組織像が類似しているため,病理所見だけで診断することはできず,免疫組織化学的染色を検討する。胸膜病変であり,サイトケラチンが陽性で,中皮マーカーが2 種以上陽性,癌腫マーカーが2 種以上陰性ならば肉腫型中皮腫と診断する20)。CAM5.2,CK AE1/AE3 などのサイトケラチンが陽性で,中皮マーカー,癌腫マーカーのいずれも陰性である場合は,免疫組織化学的染色でも鑑別はできない21)。この場合,病変の主座が胸膜にあれば肉腫型中皮腫,肺内にあれば紡錘細胞癌あるいは多形癌の可能性がある。CAM5.2,CK AE1/AE3 などのサイトケラチンも陰性で,中皮マーカー,癌腫マーカーも陰性である場合は,肉腫の可能性もあり,その鑑別が必要である。

以上より,エビデンスの強さはD,また総合的評価では病理所見のみならず,臨床情報や画像所見とともに判断することを弱く推奨(2 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:胸膜中皮腫小委員会(患者2 名含む)

CQ15
肉腫型中皮腫と滑膜肉腫はどのように鑑別できるか?

エビデンスの強さC
滑膜肉腫の診断にはFISH またはRT-PCR にて染色体相互転座 t(X;18)(p11.2;q11.2)による融合遺伝子SS18-SSX の形成を検出するよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

解説

滑膜肉腫 synovial sarcoma は,特異的な染色体相互転座 t(X;18)(p11.2;q11.2)によって融合遺伝子SS18-SSX を形成する間葉系紡錘形細胞肉腫であると定義される。胸膜に生じるものは単相型が多く,その組織学的パターンは肉腫型中皮腫と時に類似し,免疫組織化学も共通点が多い22)。滑膜肉腫の診断にとって,FISH または RT-PCR にて t(X;18)(p11.2;q11.2)を検出することがいわゆるゴールドスタンダード23)であり,肉腫型中皮腫においてはこの転座は認められない24)。肉腫型中皮腫ではp16 のホモ接合性欠失が高頻度(90~100%)に認められるが2)19),一方,滑膜肉腫ではみられない25)

以上より,エビデンスの強さはC,また総合的評価ではFISH またはRT-PCR で融合遺伝子SS18-SSX の形成を検出することを強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:胸膜中皮腫小委員会(患者2 名含む)

CQ16
FISH でp16 のホモ接合性欠失がある場合に,中皮腫と診断できるか?

エビデンスの強さD
p16 のホモ接合性欠失の存在のみによって中皮腫と診断しないよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

解説

基本的にp16 のホモ接合性欠失の存在は,腫瘍の中皮細胞起源が確認された際には,その良悪性の鑑別(悪性中皮腫vs 反応性中皮過形成)に有効で,その際の特異度は100%である2)16)。一方,中皮腫に限らず種々の悪性腫瘍でp16 のホモ接合性欠失が認められるので,腫瘍間の鑑別診断には(ごく限られた場合を除けば)有効ではない。例えば中皮腫と最も鑑別すべき非小細胞肺癌においても30~60%にp16 のホモ接合性欠失が認められる26)

以上より,エビデンスの強さはD,また総合的評価ではFISH によるp16 のホモ接合性欠失の存在のみで診断しないよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:胸膜中皮腫小委員会(患者2 名含む)

CQ17
免疫染色でBAP1 loss がある場合に,中皮腫と診断できるか?

エビデンスの強さD
BAP1 loss の存在のみによって中皮腫と診断しないよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

解説

BAP1 loss は,p16 のホモ接合性欠失と同様に,腫瘍の中皮細胞起源が確認された際には,その良悪性の鑑別(悪性中皮腫vs 反応性中皮過形成)に有効で,その際の特異度は100%である16)27)。さらにp16 のホモ接合性欠失とは違って,他臓器の癌から胸膜への転移と中皮腫との鑑別においても有用である28)。胸膜中皮腫では60%前後にBAP1 loss を認めるが,肺癌ではわずか2%程度しかみられない28)。しかし,淡明細胞型腎細胞癌やぶどう膜メラノーマ,管内胆管癌では比較的高率にBAP1 lossが認められるので,このような領域に腫瘍が存在する場合には注意を要する29)~31)。肉腫におけるBAP1 loss に関しては,現時点ではまとまった報告がない。

以上より,エビデンスの強さはD,また総合的評価ではBAP1 loss の存在のみで診断しないよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:胸膜中皮腫小委員会(患者2 名含む)

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画像診断

CQ18
中皮腫のCT 診断に造影剤使用は勧められるか?

エビデンスの強さD
存在診断時,病期診断時には,CT 撮像時に造影剤を使用するよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

解説

存在診断時には,胸膜不整所見の有無が重要な所見となるが,造影剤を使用することにより胸膜不整のより詳細な描出が可能となる1)2)

中皮腫が存在する際には血性胸水を伴うことが多く,漏出性胸水に比し高吸収化する。その場合単純CT のみでは,胸膜と胸水のコントラストがつきづらい場合がある。造影剤を使用することにより中皮腫病変は造影され,より詳細な胸膜所見の描出が可能となる3)

また胸膜プラークが同時に存在する場合に中皮腫は造影効果を有するのに対し胸膜プラークは造影効果を認めず,その鑑別が容易となる4)

病期診断の際にも造影剤を使用することで,中皮腫病変が造影効果を有することから,胸壁や内胸筋群への浸潤や横隔膜浸潤が明瞭化する5)6)

以上より,エビデンスの強さはD,また総合的評価では造影剤の使用を強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:胸膜中皮腫小委員会(患者2 名含む)

CQ19
中皮腫の診断にFDG-PET/CT は勧められるか?

エビデンスの強さA
  1. a. FDG-PET/CT は,胸膜病変の良悪性鑑別の確定診断として行わないよう推奨する。

    〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

エビデンスの強さC
  1. b. FDG-PET/CT は,存在診断,病期診断において行うよう推奨する。

    〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

解説

FDG-PET によるグルコース代謝情報とCT による解剖学的情報を同一画像内に描出するFDG-PET/CT は,病変の存在診断において有用である。病期診断においては,一般にやや過小評価されるものの7)8),ステージⅡおよびⅢに対する正診率はCT やMRI よりも高い9)。局所浸潤の評価には向かないが,無症状あるいは他の画像診断で発見されていない胸郭外遠隔転移の検出に優れている4)8)10)

FDG-PET は,胸膜病変の良悪性の鑑別においてもその有用性が報告されている11)~14)。多時相で,定量評価として用いられているstandardized uptake value(SUV)を計測する方法において,悪性病変では遅延相での集積の増加が認められる13)14)。しかし,半定量的評価によるFDG-PET/CT の診断能は中等度であり,鑑別のためのルーチンの検査としては推奨できないとするメタアナリシスの論文もある15)

以上より,推奨a についてはエビデンスの強さがA,総合的評価では行わないよう強く推奨(1 で推奨)でき,また,推奨b についてはエビデンスの強さがC,総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:胸膜中皮腫小委員会(患者2 名含む)

CQ20
中皮腫の診断にMRI は勧められるか?

エビデンスの強さD
中皮腫の確定診断にMRI を行わないよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

解説

MRI は,胸壁や内胸筋膜への局所浸潤や横隔膜浸潤の診断能はCT より高い5)。同様に葉間裂への広がり,骨への局所浸潤の評価においてもCT より有用との報告がある16)。しかし,近年のmultidetector CT の発達に伴い任意の方向で再構成できるようになり,CT でも局所の広がりに関してかなり正確に評価可能である17)

また,胸膜病変の良悪性の鑑別において,MRI による病変の信号強度18)19)や造影剤を用いたT1 強調画像の所見20)21),拡散強調画像22)が有用であるとする報告がある。しかし,MRI は常にCT に付加する情報が得られるわけではなく,実臨床において多くの施設でルーチンに用いられていない23)

以上より,エビデンスの強さはD,また総合的評価では行わないよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:胸膜中皮腫小委員会(患者2 名含む)

CQ21
中皮腫の病期診断に頭部造影MRI は勧められるか?

エビデンスの強さD
頭部造影MRI はルーチンには行わないよう提案する。

〔推奨の強さ:2,合意率:82%〕

解説

中皮腫における脳転移の頻度に関しては種々の報告があるが,病期全体を通じて3%以下と低頻度である24)~30)。中皮腫診断時に脳転移が存在する頻度はさらに低いと考えられる。したがって,病期診断に際し,全例に脳転移診断のための頭部造影MRI を施行する必要はない。ただし,手術治療を検討する際にはこのかぎりではなく,造影MRI による脳転移診断を行ってもよい。

以上より,エビデンスの強さはD,また総合的評価では行わないよう弱く推奨(2 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:胸膜中皮腫小委員会(患者2 名含む)

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Ⅱ.治療

外科治療

CQ1
臨床病期Ⅰ-Ⅲ期に手術を行うことは勧められるか?

エビデンスの強さC
  1. a. 臨床病期Ⅰ-Ⅲ期で術後に肉眼的完全切除を得られると考えられる症例に対して手術を行うよう提案する。

    〔推奨の強さ:2,合意率:100%〕

エビデンスの強さD
  1. b. 手術適応は呼吸器外科医を含む集学的治療チームにより判定するよう推奨する。

    〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

解説

  1. a. システマティックレビューでは,組織型が上皮型の場合には胸膜肺全摘術(EPP)施行群とベストサポーティブケア群で生存中央値がそれぞれ19 カ月,7 カ月であり手術の生存率への寄与が認められた1)

    129 人の手術を受けた症例において,術前CT 画像から計測された腫瘍量によって3 群に分けたところ,腫瘍量の少ない群にて有意に生存率が延長した2, 3)

    1,365 人の中皮腫患者において,手術に加え化学療法を施行した群と化学療法単独群では手術+化学療法群で有意な延長を認めた4)

    5,937 人の中皮腫患者の背景因子を補正しても手術を受けた患者が有意に非手術患者より良好な予後を得た5)

    945 人の中皮腫患者の後ろ向き研究において,手術例が予後良好であった6)

    以上のように,十分に選択された症例群においては中皮腫に対する集学的治療の1 つとして外科治療が予後改善に貢献すると推定される。

  2. a.  本邦におけるEPP を含む集学的治療に関する第Ⅱ相臨床試験において42 例の登録患者におけるMST は19.9 カ月,治療関連死亡は9.5%であった7)

    単一施設におけるradical pleurectomy において,肉眼的腫瘍遺残(R2 切除)群が肉眼的完全切除(R1 切除)群より予後不良であった8)

    大規模国際登録の解析調査においてpalliative surgery 群がcurative-intent surgery 群より予後不良であることが明らかにされている9)

    ランダム化比較試験において,胸腔鏡下胸膜腫瘍部分切除術とタルクによる胸膜癒着術を比較したところ,前者による生存延長は認めず,後者のほうが合併症率の低下および入院期間の短縮を認めた10)

    以上より,手術を行う場合には術後に肉眼的完全切除を得られることが重要と考えられ,当該手術に対する耐術能があるかどうか呼吸機能・心機能などを十分に評価する必要がある。

    34 の非ランダム化試験をまとめたメタアナリシスにおいて,手術を含む集学的治療が生存率に寄与する可能性が指摘されている11)

    手術単独での治療成績が十分でないことや胸膜切除術では顕微鏡的完全切除が難しいことを考慮すれば,治療戦略を構築するうえで,呼吸器外科医を含む集学的治療チームでの治療が望ましいと考えられる。

    以上より,推奨a についてはエビデンスの強さがC,総合的評価では行うよう弱く推奨(2 で推奨)でき,また,推奨b についてはエビデンスの強さがD,総合的評価では集学的治療チームによる判定を強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:胸膜中皮腫小委員会(患者2 名含む)

CQ2
耐術能のある切除可能中皮腫には,胸膜肺全摘術(EPP)と胸膜切除/肺剝皮術(P/D)いずれの術式が勧められるか?

EPP とP/D のいずれかの術式を勧めるだけの根拠が明確ではない。

解説

システマティックレビューによれば,EPP の手術死亡率は0~11.8%,生存期間中央値(MST)は9.4~27.5 カ月であり11),P/D の手術死亡率は0~11%,MST は7.1~31.7 カ月であった12)

EPP とP/D を比較するシステマティックレビューによれば,手術死亡率(6.8% vs 2.9%,P=0.02)および有害事象発生率(62.0% vs 27.9%,P<0.0001)において有意にP/D が良好で,MST は同等(12~22 カ月vs 13~29 カ月)であった13)

EPP とP/D を比較する別のメタアナリシスで,術後短期死亡率がEPP で有意に高いが(4.4% vs 1.7%,P<0.05)長期予後は同等14),あるいは手術死亡率に差がなく,MST(16 カ月vs 19 カ月,n.s.)が同等とされた15)

EPP とP/D を比較する相応しいランダム化前向き試験が存在せず,後ろ向き解析報告16)しかないため,EPP とP/D のいずれの術式を勧めるかの根拠がない。

CQ3
肉腫型および二相型中皮腫に外科療法は勧められるか?

エビデンスの強さD
  1. a. 肉腫型中皮腫に外科療法を行わないよう提案する。

    〔推奨の強さ:2,合意率:100%〕

エビデンスの強さD
  1. b. 二相型中皮腫に外科療法を行うよう提案する。

    〔推奨の強さ:2,合意率:100%〕

解説

症例数が少ないので,特に外科治療に関する大規模ランダム化試験が欠如している。したがって,提案およびエビデンスのレベルは非常に弱い17)。外科治療は,化学療法または化学療法と放射線療法を伴う集学的治療として実施される17)。治療開始前に組織型の確定診断が行われるべきである18)

胸膜生検による非上皮型の病理診断は正確性に欠けるので19),適切な生検検体の採取が重要である。

胸膜肺全摘術を受けた患者の予後因子に関するシステマティックレビューにおいて,非上皮型は17論文中11 論文で有意な予後不良因子であった20)

SEER データベースの1,183 人の検討で,外科治療を受けた上皮型,二相型,肉腫型患者の生存期間中央値(MST)は,19 カ月,12 カ月,4 カ月であった(P<0.01)21)

二相型中皮腫において,上皮型の割合が独立した予後予測因子である。したがって,二相型中皮腫患者に手術を勧めるときには,この点を慎重に検討すべきである。144 人で,上皮型の割合が100%,51~99%,50%以下の患者のMST は20.1 カ月,11.8 カ月,6.62 カ月であった22)

以上より,推奨a についてはエビデンスの強さがD,総合的評価では行わないよう弱く推奨(2 で推奨)でき,また,推奨b についてはエビデンスの強さがD,総合的評価では行うよう弱く推奨(2 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:胸膜中皮腫小委員会(患者2 名含む)

CQ4
手術中の局所療法併用は勧められるか?

手術に併用する治療法選択として様々な術中局所療法が報告されるが,これらの局所療法を勧めるだけの根拠が明確ではない。

解説

悪性胸膜中皮腫に対して外科治療を企図するには他療法を組み合わせる集学的治療が必須である9)23)

術前・術後治療の他に術中治療が複数報告される。胸腔内抗癌剤投与24)・胸腔内温熱療法25)26)・光線力学療法(PDT)27)・ポビドンヨード洗浄療法28)などで,それぞれ良好とする治療成績が報告されるが,前向き試験で有効性を検証されたものはない。

引用文献

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放射線療法

CQ5
胸膜肺全摘術(EPP)の術後に片側胸郭照射を行うことは勧められるか?

エビデンスの強さD
EPP の術後に片側胸郭照射を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,合意率:91%〕

解説

放射線治療は集学的治療の1 つとして,EPP 後の片側胸郭照射として用いられてきた。Memorial Sloan-Kettering Cancer Center(MSKCC)のグループは通常照射による54 Gy の片側胸郭へのEPP 後の照射を行い,1993~95 年の55 例の報告では,局所領域再発を13%に認め,4%は局所領域再発のみであったとしている1)。一方,Harvard 大学のグループは低線量(30.6 Gy)の片側胸郭照射を行い,局所領域再発率が高いことを報告2, 3)し,1993~2008 年に行われた78 例の解析において,局所領域制御が約40%に上ったと報告している(局所領域再発:41%,局所領域再発のみ:19%)4)。以上から,線量増加による局所領域制御の改善の可能性が示唆される。

2000~13 年のSEER データベースからの傾向スコアマッチング2,166 例を対象とした研究では469 例で術後放射線治療が行われ,術後放射線治療群で生存期間の延長がみられた。しかし,conditional survival analysis では生存率改善は確認できなかった。この報告では,肉腫型,リンパ節転移陽性,70 歳以上が予後不良因子であったとしている5)。また,Milano 大学のグループは,2003~15 年に三者併用療法(導入化学療法,EPP,術後放射線治療)を行った83 例について,完遂率が45%と低かったが,完遂できた症例では局所制御が良好で,粗生存率も良好であったと報告している6)

2005~12 年に151 例を対象として,導入化学療法+EPP 後に片側胸郭照射の有無によるランダム化前向き第Ⅱ相試験(SAKK 17/04)が行われたが,片側胸郭照射の有効性を確認することはできなかった7)

悪性胸膜中皮腫に対するEPP 後の局所制御改善には片側胸郭照射は有効であるとされながらも,完遂率の低さや,生存率向上への寄与が低いことが指摘されている。ただし,いずれの報告も単施設からの後方視的観察もしくは第Ⅱ相試験であり,片側胸郭照射の可否を目的とした第Ⅲ相試験は現在のところ存在しない。

以上より,エビデンスの強さはD,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:胸膜中皮腫小委員会(患者2 名含む)

CQ6
胸膜切除/肺剝皮術(P/D)の術後または手術非適応症例に放射線療法は勧められるか?

P/D の術後または手術非適応症例に放射線療法を行うことを勧めるだけの根拠が明確ではない。

解説

MSKCC のグループは,P/D 後に通常照射での片側胸郭照射(median 42.5 Gy)を施行した123 例について,2 年全生存率23%,1 年局所制御割合42%で,Grade 3 以上放射線肺臓炎が10.6%(Grade 5:1 例)と報告し,P/D 後の片側胸郭照射は有効な治療選択肢ではないとしている8)。一方,P/D 施行後および非切除例に対してIMRT を用いた片側胸郭照射を行った36 症例について2 年生存率がそれぞれ53%,28%であったが,Grade 3 以上の放射線肺臓炎を20%(Grade 5:1 例)であり実行可能と報告している9)。その後,P/D 後の209 例について,hemithoracic intensity-modulated pleural radiation therapy(IMPRINT)を行った131 例とconventional RT(CONV)を行った78 例の結果について報告している。この結果,生存期間中央値(MST)と2 年生存率は,IMPRINT 群で20.2 カ月と42%,CONV 群で12.3 カ月と20%であった。KPS が高いこと,上皮型,顕微鏡的完全切除,化学療法の併用,IMPRINT の使用が生存期間延長の因子とされた。有害事象については,食道炎がIMPRINT 群で有意に少ないが,Grade 2 以上の放射線性肺臓炎は両群で有意差を認めなかった10)

MD Anderson Cancer Center(MDACC)のグループは,P/D 施行後,IMRT にて45 Gy の片側胸郭照射を行った24 症例(P/D-IMRT 群)とEPP 施行後にIMRT を行った24 例(EPP-IMRT 群)とのマッチング比較を行い,MST は28.4 カ月と14.2 カ月(P=0.04)でP/D-IMRT 群でやや良好で,Grade 4~5 の有害事象に有意差は認めなかった(0% vs 12.5%,P=0.23)と報告している11)

米国のNCCN12)および欧州のERS/ESTS からのガイドライン13)においても,毒性の観点からP/D 後に放射線治療を行うことは推奨していない。一方,MSKCC とMDACC によるIMPRINT の前向き第Ⅱ相試験が行われ,放射線性肺臓炎については27 例中Grade 2/3 が8 例で,Grade 4/5 はみられなかった。この結果,P/D 後のIMPRINT は安全で,許容できる放射線性肺臓炎発生率と結論している14)。IMPRINT の導入により有害事象の低減が期待できるようになっているが,P/D 術後または手術非適応症例に対して放射線療法を行う場合には,臨床試験として行われるべきである。

現時点では,P/D 後に片側胸郭照射を行うよう勧められるだけの科学的根拠は明確ではない。

CQ7
EPP 後放射線治療として3 次元原体放射線治療(3D-CRT)や強度変調放射線治療(IMRT)は勧められるか?

エビデンスの強さC
EPP 後放射線治療として,3D-CRT やIMRT を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,合意率:91%〕

解説

EPP 後の片側胸郭照射の方法としてX 線と電子線を組み合わせた3 次元原体放射線療法(3-dimensional conformal radiotherapy;3D-CRT)が行われてきた15)。標的体積が胸腔から腹腔を含む広範囲かつ複雑な形状を呈している片側胸郭照射の場合,強度変調放射線治療(intensity-modulated radiotherapy;IMRT)は3D-CRT よりも標的体積への線量分布の改善が期待できる16)

EPP 後に3D-CRT を行った場合に局所再発が50%に上ると報告されている15)。一方,EPP 後にIMRT を用いた治療成績として,63 例において照射野内再発がわずか5%と良好な成績が報告されている17)。さらに3D-CRT を施行した24 例とIMRT を施行した14 例の比較では,IMRT 群で有意に局所再発が低かったとの報告がある(41.7% vs 14.3%,P=0.03)18)。IMRT に関するレビューでもIMRT を施行することで従来の成績を超える可能性はあるとしている19)20)。国内からの報告では,前向き第Ⅱ相試験であるJMIG0601 試験の結果,三者併用療法の完遂率の低さには課題があるが,EPP 後の3D-CRT は19 例中17 例で完遂(有害事象による中止1 例)でき,術後放射線治療を行った群で生存率が良好であった21)。また,京都大学のグループはEPP 後にIMRT を行った21 例について,17 例で完遂でき,良好な局所制御(3 年局所再発率12.3%)が得られたとしている22)

ただし,Harvard 大学からのEPP 後のIMRT に関する初期報告で13 例中6 例に致死的な放射線肺臓炎を生じ,対側健常肺への照射線量が問題とされ23),EPP 後のIMRT による有害事象として放射線肺臓炎に留意する必要がある。特に低線量域の拡大を示すパラメータを抑制することが重要であることが示された。IMRT を施行した63 例の報告では6 例(9.5%)の呼吸器関連死を認めており,肺のV20 Gy(20 Gy 以上照射される肺野の体積の割合)は多変量解析にて有意な因子であったとしている24)。以上の報告から,IMRT による放射線肺臓炎は対側健常肺への照射線量に依存する傾向にあり,MDACC のグループからは厳格な線量制約(V5 Gy<60%,V20 Gy<20%,MLD<8.5 Gy)を守ることで肺毒性を低減できる可能性を示唆している19)

このように胸膜中皮腫に対する術後IMRT は,局所制御やリスク臓器保護の面で期待されるものの,重篤な放射線肺臓炎などの有害事象を引き起こす可能性があるため,症例数が見込める経験のある施設またはプロトコールを確立した状態で行うべきである。

現時点では,いずれの報告も後方視的観察もしくは第Ⅱ相試験であり,IMRT と3D-CRT を比較した第Ⅲ相試験は現在のところ存在しないことから,放射線治療の方法として3D-CRT またはIMRT を行うことを考慮してもよい。

以上より,エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:胸膜中皮腫小委員会(患者2 名含む)

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化学療法

3-1
周術期

CQ8
術前・術後の化学療法は勧められるか?

エビデンスの強さC
術前あるいは術後の化学療法を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

解説

医学的に手術可能なⅠ-Ⅲ期の悪性胸膜中皮腫症例には,術前または術後のどちらかに集学的治療の一環として化学療法を施行することができる。Sugarbaker らの報告以来,手術(胸膜肺全摘術),全身化学療法,片側胸郭照射を併用する三者併用療法(trimodality therapy),または,手術(胸膜切除/肺剝皮術)と全身化学療法の二者併用療法(bimodality therapy)の一環として施行されてきた1)2)。術前化学療法,手術,術後片側胸郭照射による三者併用療法の安全性および忍容性については一定の評価が得られているが3)~8),周術期化学療法を術前または術後のどちらに行うべきかの前向き比較試験の報告はない。

現時点での多剤併用レジメンのゴールドスタンダードはCDDP+PEM であり3)~5),他にCDDP+GEM7),CBDCA+GEM8)などの報告もある。CDDP+PEM による術前化学療法を用いた三者併用療法を完遂した患者のMST は29.1 カ月,2 年生存率は61.2%と報告されており,化学療法に対する良好な反応がその後の手術適応決定を左右する因子となる可能性が指摘されている3)

三者併用療法の付加的療法として術中胸腔内温熱化学療法が有効との報告もある9)

以上より,エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:胸膜中皮腫小委員会(患者2 名含む)

引用文献

1)
Sugarbaker DJ, Flores RM, Jaklitsch MT, et al. Resection margins, extrapleural nodal status, and cell type determine postoperative long-term survival in trimodality therapy of malignant pleural mesothelioma: results in 183 patients. J Thorac Cardiovasc Surg. 1999; 117(1): 54-63; discussion 63-5.
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4)
Van Schil PE, Baas P, Gaafar R, et al; European Organisation for Research and Treatment of Cancer(EORTC)Lung Cancer Group. Trimodality therapy for malignant pleural mesothelioma: results from an EORTC phaseⅡ multicentre trial. Eur Respir J. 2010; 36(6): 1362-9.
5)
Hasegawa S, Okada M, Tanaka F, et al. Trimodality strategy for treating malignant pleural mesothelioma: results of a feasibility study of induction pemetrexed plus cisplatin followed by extrapleural pneumonectomy and postoperative hemithoracic radiation(Japan Mesothelioma Interest Group 0601 Trial). Int J Clin Oncol. 2016; 21(3): 523-30.
6)
Okubo K, Sonobe M, Fujinaga T, et al. Survival and relapse pattern after trimodality therapy for malignant pleural mesothelioma. Gen Thorac Cardiovasc Surg. 2009; 57(11): 585-90.
7)
Weder W, Stahel RA, Bernhard J, et al; Swiss Group for Clinical Cancer Research. Multicenter trial of neo-adjuvant chemotherapy followed by extrapleural pneumonectomy in malignant pleural mesothelioma. Ann Oncol. 2007; 18(7): 1196-202.
8)
Rea F, Marulli G, Bortolotti L, et al. Induction chemotherapy, extrapleural pneumonectomy(EPP)and adjuvant hemi-thoracic radiation in malignant pleural mesothelioma(MPM): Feasibility and results. Lung Cancer. 2007; 57(1): 89-95.
9)
Sugarbaker DJ, Gill RR, Yeap BY, et al. Hyperthermic intraoperative pleural cisplatin chemotherapy extends interval to recurrence and survival among low-risk patients with malignant pleural mesothelioma undergoing surgical macroscopic complete resection. J Thorac Cardiovasc Surg. 2013; 145(4): 955-63.

3-2
進行期

CQ9
PS 0-2 に勧められる一次治療は何か?

エビデンスの強さB
シスプラチン+ペメトレキセド併用療法を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

解説

未治療切除不能悪性胸膜中皮腫に対し,CDDP+PEM 併用療法4~6 コースを行うよう勧められる。CDDP 単剤との第Ⅲ相比較試験で,OS,PFS,ORR で有意に良好であった(MST 12.1 カ月 vs 9.3 カ月,mPFS 5.7 カ月 vs 3.9 カ月,ORR 41.3% vs 16.7%)1)

CBDCA+PEM 併用療法については2 つの第Ⅱ相試験があり,既報のCDDP 併用療法と比べ奏効割合はやや劣るが,ORR(18.6%,25%),TTP(6.5 カ月,8.0 カ月),OS(12.7 カ月,14 カ月)はほぼ同等の結果であり,毒性は好中球減少,貧血を除き軽度であったため2)3),CDDP 投与困難例では考慮してもよいと考える。ただし,CBDCA は悪性中皮腫に対し承認されていない。

PEM を用いた維持療法の有効性については検証されていない。

なお,化学療法と対症療法のランダム化試験では,化学療法の有意な生存期間延長効果は認めなかった(8.5 カ月 vs 7.6 カ月,HR 0.89,P=0.29)が,化学療法はMVP(MMC+VBL+CDDP)で設定されていたため,この結果で化学療法の有用性を否定することは困難である。別試験ではあるが,CDDP+PEM 併用療法の結果を考慮すると化学療法は行うよう推奨する4)

以上より,エビデンスの強さはB,また総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:胸膜中皮腫小委員会(患者2 名含む)

CQ10
PS 3-4 に勧められる一次治療は何か?

PS 3-4 に対し化学療法を行うよう勧めるだけの根拠が明確ではない。

解説

CQ9 で記述した中で,いずれの臨床試験においても対象症例はPS 0-2 であり,PS 3-4 に対し化学療法を勧める根拠が明確ではない。

CQ11
75 歳以上に勧められる一次治療は何か?

エビデンスの強さD
PS 0-2 であれば化学療法を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,合意率:100%〕

解説

高齢者に対する効果,安全性を目的とした比較試験はない。CDDP+PEM 併用療法とCDDP 単剤の第Ⅲ相比較試験では,登録年齢の上限を設けていない1)。CBDCA+PEM 併用療法の2 つの試験の後方視的統合解析では,70 歳未満と比較し70 歳以上でG3~4 の血液毒性がわずかに増加していたが,非血液毒性は同程度であった5)

以上より,PS が良好であれば,75 歳未満と同様の治療を考慮してもよい。エビデンスの強さはD,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:胸膜中皮腫小委員会(患者2 名含む)

CQ12
組織型別で殺細胞性抗癌剤の治療選択に相違はあるか?

未治療切除不能悪性胸膜中皮腫に対する一次治療としての化学療法では,組織型別に治療選択を行うよう勧めるだけの根拠が明確ではない。

解説

CDDP+PEM 併用療法とCDDP 単剤の第Ⅲ相比較試験では,組織型別効果については言及されていない1)。CBDCA+PEM 併用療法についての第Ⅱ相試験で,上皮型,二相型では奏効例を認め,肉腫型では奏効例はなかったという報告がみられたが2),他の試験では組織型に言及されていない3)

CQ13
プラチナ製剤併用化学療法で勧められる投与コース数は?

エビデンスの強さC
4~6 コースを行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,合意率:100%〕

解説

至適投与法に関する前向きな検討はない。しかし,CDDP+PEM vs PEM 単剤の第Ⅲ相試験において,併用群の中央値は6 コースであるが,8 コース以上投与可能であったのは,わずか7.1%に過ぎなかった。原則はPD もしくは忍容不能な毒性が発現するまで投与を継続することが推奨されるが,4~6 コースの投与でも十分な可能性がある1)

以上より,エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:胸膜中皮腫小委員会(患者2 名含む)

CQ14
プラチナ製剤併用化学療法後の維持療法は勧められるか?

維持療法を行うよう勧めるだけの根拠が明確ではない。

解説

維持療法に関する前向きな検討はなく,推奨する根拠は明らかではない。

CQ15
二次治療は勧められるか?

エビデンスの強さC
PS 0-2 で臓器機能が保たれている切除不能悪性胸膜中皮腫に対して,二次治療を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,合意率:100%〕

解説

① 一次治療としてPEM が投与される以前に行われた二次治療の第Ⅲ相比較試験において,PEM+BSC 群はBSC 群に比べてOS の延長効果は認めなかったものの,PFS(3.6 カ月vs 1.6 カ月,P=0.0148)の延長効果を認めた6)。したがって,一次治療でPEM が投与されていない場合,PEM の投与を行うよう提案する。

② 後方視的な解析ではあるが,一次治療でPEM の最良効果がnon-PD であった症例が経過観察中にPD となった場合,二次治療としてPEM を投与した際のORR は17~19%,PFS は2.4~4.0 カ月,OS は4.2~13.6 カ月であった7)~9)。したがって,一次治療でPEM がnon-PD で終了していた場合,PEM の再投与を考慮するよう提案する。

③ 二次治療におけるVNR またはGEM は,いずれも第Ⅱ相試験において限定的な効果ではあるが,ORR は7~24%,OS は8.0~10.6 カ月であった10)~12)。したがって,二次治療においてはVNR またはGEM の投与を考慮するよう提案する。なお,二次治療におけるVNR+GEM 併用療法は,第Ⅱ相試験においてORR が10~18%,OS が10.9~11.2 カ月と単剤療法を超える成績が報告されておらず,一方で血液毒性が増加することから行わないよう提案する13)14)

④ 免疫チェックポイント阻害剤の適応については,CQ16 を参照されたい。

以上より,エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:胸膜中皮腫小委員会(患者2 名含む)

CQ16
免疫チェックポイント阻害剤は勧められるか?

エビデンスの強さC
ECOG PS 0-1 で臓器機能が保たれている切除不能悪性胸膜中皮腫に対して,ニボルマブを二次治療以降で行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,合意率:100%〕

解説

ニボルマブは既治療の日本人(一次治療後24 人,および二次治療後10 人)を対象にしたMERIT 第Ⅱ相試験において,組織型にかかわらずORR 29%,PFS 中央値 6.1 カ月,6 カ月生存率85%であった15)。また,ニボルマブは海外の既治療例(一次治療後33 人,および二次治療後1 人)を対象にしたNivoMes 第Ⅱ相試験において,組織型にかかわらずORR 24%,PFS 中央値 2.6 カ月,6 カ月生存率74%であった16)。さらに,海外の既治療例を対象にしてニボルマブとニボルマブ+イピリムマブを比較したMAPS2 ランダム化第Ⅱ相試験において,ニボルマブ群(一次治療後44 人,および二次治療以降19 人)は,組織型にかかわらずORR 18%,PFS 中央値4.0 カ月,MST 13.6 カ月であった17)

以上より,エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:胸膜中皮腫小委員会(患者2 名含む)

引用文献

1)
Vogelzang NJ, Rusthoven JJ, Symanowski J, et al. Phase Ⅲ study of pemetrexed in combination with cisplatin versus cisplatin alone in patients with malignant pleural mesothelioma. J Clin Oncol. 2003; 21(14): 2636-44.
2)
Ceresoli GL, Zucali PA, Favaretto AG, et al. PhaseⅡ study of pemetrexed plus carboplatin in malignant pleural mesothelioma. J Clin Oncol. 2006; 24(9): 1443-8.
3)
Castagneto B, Botta M, Aitini E, et al. PhaseⅡ study of pemetrexed in combination with carboplatin in patients with malignant pleural mesothelioma(MPM). Ann Oncol. 2008; 19(2): 370-3.
4)
Muers MF, Stephens RJ, Fisher P, et al; MS01 Trial Management Group. Active symptom control with or without chemotherapy in the treatment of patients with malignant pleural mesothelioma(MS01): a multicentre randomised trial. Lancet. 2008; 371(9625): 1685-94.
5)
Ceresoli GL, Castagneto B, Zucali PA, et al. Pemetrexed plus carboplatin in elderly patients with malignant pleural mesothelioma: combined analysis of two phaseⅡ trials. Br J Cancer. 2008; 99(1): 51-6.
6)
Jassem J, Ramlau R, Santoro A, et al. Phase Ⅲ trial of pemetrexed plus best supportive care compared with best supportive care in previously treated patients with advanced malignant pleural mesothelioma. J Clin Oncol. 2008; 26(10): 1698-704.
7)
Zucali PA, Simonelli M, Michetti G, et al. Second-line chemotherapy in malignant pleural mesothelioma: results of a retrospective multicenter survey. Lung Cancer. 2012; 75(3): 360-7.
8)
Ceresoli GL, Zucali PA, De Vincenzo F, et al. Retreatment with pemetrexed-based chemotherapy in patients with malignant pleural mesothelioma. Lung Cancer. 2011; 72(1): 73-7.
9)
Bearz A, Talamini R, Rossoni G, et al. Re-challenge with pemetrexed in advanced mesothelioma: a multi-institutional experience. BMC Res Notes. 2012; 5: 482.
10)
Steele JP, Shamash J, Evans MT, et al. PhaseⅡ study of vinorelbine in patients with malignant pleural mesothelioma. J Clin Oncol. 2000; 18(23): 3912-7.
11)
Stebbing J, Powles T, McPherson K, et al. The efficacy and safety of weekly vinorelbine in relapsed malignant pleural mesothelioma. Lung Cancer. 2009; 63(1): 94-7.
12)
van Meerbeeck JP, Baas P, Debruyne C, et al. A PhaseⅡ study of gemcitabine in patients with malignant pleural mesothelioma. European Organization for Research and Treatment of Cancer Lung Cancer Cooperative Group. Cancer. 1999; 85(12): 2577-82.
13)
Zucali PA, Ceresoli GL, Garassino I, et al. Gemcitabine and vinorelbine in pemetrexed-pretreated patients with malignant pleural mesothelioma. Cancer. 2008(7): 1555-61.
14)
Toyokawa G, Takenoyama M, Hirai F, et al. Gemcitabine and vinorelbine as second-line or beyond treatment in patients with malignant pleural mesothelioma pretreated with platinum plus pemetrexed chemotherapy. Int J Clin Oncol. 2014; 19(4): 601-6.
15)
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16)
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17)
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緩和医療

CQ17
疼痛緩和目的の放射線治療は勧められるか?

エビデンスの強さC
疼痛緩和目的の放射線治療を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:91%〕

解説

進行した胸膜中皮腫では,圧迫や浸潤により疼痛をきたすことが多い。緩和目的で放射線治療を施行した報告では,約60%の症例に疼痛緩和が得られたとされている1)2)。これらの報告では,主として40 Gy/20 回または36 Gy/13 回が用いられていた。また,単施設で189 症例,227 コースの緩和照射例を検討した報告で,1 回線量4 Gy の症例のほうが,1 回線量4 Gy 未満の症例よりも緩和効果が高かった(50% vs 39%)3)。20 Gy/5 回の多施設第Ⅱ相試験の報告で,35%の症例で疼痛緩和効果があったとの報告もある4)。一方,Austin Health のグループによる報告で,45 Gy 以上の高線量でGrade 3 以上の重症な有害事象の発現率が3D-CRT で53%,IMRT で78%と高率に認められたとされている。緩和照射の際には,低線量で小さな範囲での照射が有用と考えられる5)

現在のところ最適な分割方法や至適線量は不明であるが,胸膜中皮腫の疼痛に対して緩和照射は有効であり行うよう勧められる。

以上より,エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:胸膜中皮腫小委員会(患者2 名含む)

CQ18
症状緩和目的の胸膜癒着術は勧められるか?

エビデンスの強さC
胸水制御と胸水貯留による症状の軽減を目的とした緩和療法として,薬剤による胸膜癒着術を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,合意率:73%〕

解説

胸膜中皮腫を臨床的に診断し得る最も早期の病態は胸水貯留であり,発見の動機になることが多い。縦隔を変位させるほど,大量に貯留することもある。胸水による症状は,労作時呼吸困難,胸部圧迫感などがある。

胸水制御と症状軽減を目的とした胸膜癒着術は,外科治療などの積極的な治療の適応の有無にかかわらず施行することができる。硬化剤にはタルク(含水珪酸マグネシウム)またはOK432 を用いる。

タルクを用いた172 人の前向き観察研究では,胸水コントロール率は3 カ月時点で49%(85/172 例),1 年生存者においては93%(79/85 例)であった6)。また,タルクによる胸膜癒着術88 例とVATS による胸膜部分切除87 例とのランダム化比較試験では,1 年生存率は前者が57%,後者が52%であり,1 年生存者の胸水コントロール率はそれぞれ77%(27/35 例)と70%(23/33 例)であった。一方,合併症はそれぞれ14%と31%であり,胸水貯留のある中皮腫に対する胸膜部分切除の有用性は示されなかった7)

以上より,胸水制御と胸水貯留による症状の軽減を目的とした緩和療法として,薬剤による胸膜癒着術を行うよう提案するが,生検を予定する場合は生検後に行うことを提案する。エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:胸膜中皮腫小委員会(患者2 名含む)

引用文献

1)
Akmansu M, Erpolat OP, Goksel F, et al. Radiotherapy applications of patients with malignant mesothelioma: A single center experience. Rep Pract Oncol Radiother. 2012; 18(2): 82-6.
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7)
Rintoul RC, Ritchie AJ, Edwards JG, et al; MesoVATS Collaborators. Efficacy and cost of video-assisted thoracoscopic partial pleurectomy versus talc pleurodesis in patients with malignant pleural mesothelioma(MesoVATS): an open-label, randomised, controlled trial. Lancet. 2014; 384(9948): 1118-27.