診療ガイドライン2018 年版 第1部

肺癌の分類

TNM 臨床病期分類(UICC‒7 版,8 版対比表)
TNM 臨床病期分類(UICC‒7 版,8 版対比表)
TNM 分類(8 版,2017 年)
TNM 分類(8 版,2017 年)
TNM 分類(7 版,2009 年)
TNM 分類(7 版,2009 年)

Ⅰ.肺癌の診断

総論
肺癌の診断(病理・細胞診断の総論は後述)

解説

1)危険因子と臨床症状,検出方法について

肺癌は日本人における癌死の第1 位であり,発生率は50 歳以上で急激に増加する。日本人が生涯のうちに肺癌になる割合は男性で7.4%,女性で3.1%である。喫煙は危険因子の1 つであり,非喫煙者に比べて,喫煙者が肺癌になるリスクは男性で4.4 倍,女性で2.8 倍と高い。喫煙開始年齢が若いほど,喫煙量が多いほど,肺癌リスクは高くなる。喫煙の他に慢性閉塞性肺疾患,間質性肺炎,アスベスト症などの吸入性肺疾患,肺癌の既往歴や家族歴,年齢,肺結核なども肺癌リスクを高めると報告されている。肺癌に特徴的な臨床症状はないが,咳嗽,喀痰,血痰,発熱,呼吸困難,胸痛といった呼吸器症状がみられることもある。このような危険因子例・有症状例に対しては,肺癌検出のための検査を行う。

最初に行うべき検査は胸部X 線で,肺癌の検出感度は60~80%程度と報告されている。胸部X 線で異常がある場合は,胸部CT を行う。胸部CT は,肺癌を検出する形態診断法として,現時点で最も有力な検査である。肺癌の検出感度93.3~94.4%,特異度72.6~73.4%であり,胸部X 線(検出感度59.6~73.5%,特異度91.3~94.1%)よりも有用である。特に,早期肺癌においては,CT 検査が最も有用である。肺癌の検出には,胸部X 線写真,胸部CT 以外にも,喀痰細胞診や腫瘍マーカー,FDG-PET などを組み合わせて検出する場合もある。なお,本項で推奨されている検査の中には,施設によっては一部施行不可能なものも存在するが,その場合には近隣施設と連携して行うことが勧められる。

2)質的画像診断

検診などのスクリーニング検査や臨床症状によって撮影された胸部X 線で肺癌を疑う所見を得た場合,CT でその存在の確認と病変の性状を評価しなければならない。

CT にて3 cm を超える肺病変で肺癌を疑う場合には,良悪性の鑑別診断のため必ず確定診断を行う。3 cm 以下の結節では確定診断が不要な良性病変である可能性もあり,良悪性の鑑別を行うために質的画像診断が施行される。質的画像診断として,まず,肺結節部の高分解能CT(薄層CT)を行う。高分解能CT は,病変部を拡大し,高周波強調で再構成した2 mm 以下の薄いスライス厚のCT 画像である。多列検出器型CT 装置が普及した現在では,通常,撮影した画像から再度撮影することなく簡単に高分解能CT が再構成できる。高分解能CT では病理像に対応した特徴的な画像所見がみられ,肺結節の良悪性鑑別に有用な情報を得ることが可能であり,結節の周囲の既存構造も明瞭に描出されることから,結節周囲の血管,小葉間隔壁,胸膜などとの関係も観察することができる1)~4)。充実型結節において,均一あるいは中心部の粗大石灰化,層状の石灰化を伴う場合や,確実な脂肪濃度を認めた場合には,炎症後の肉芽腫や過誤腫などの良性結節と診断できる5)。一方,結節にスピキュラやノッチ,胸膜陥入,辺縁部の境界明瞭なすりガラス部分が認められた場合,あるいは不整な壁を有する空洞性結節の場合には,肺癌を疑って確定診断を行う5)。また,胸膜下の境界明瞭な小さな充実型結節が,peri-fissure nodule と称される一連の性状を呈していれば,肺内リンパ節などの肉芽腫性結節と診断可能である4)

高分解能CT で良性結節と診断できる確実な所見がなく,積極的に肺癌を疑う所見も認められない充実型結節や,肺気腫・肺線維症・担癌患者など肺悪性腫瘍の高危険群に生じた非特異的な充実型結節の場合には,確定診断を行う前に質的画像診断として造影CT やMRI,FDG-PET/CT を行う場合がある。造影CT やFDG-PET/CT は日本でもよく行われているが,MRI 検査は欧米では結節の良悪性の鑑別診断に有効との報告があるものの日本ではこの目的で行っている施設は限られている。これらの検査で肺癌を疑う所見が認められた場合には,確定診断に進む。一方,これらの検査を行っても良性結節と診断できないか,肺癌が否定しきれない充実型結節やすりガラス影を伴う結節では,高分解能CTでの結節の大きさや性状,患者背景の危険因子の有無に応じて,一定間隔での経過観察を行う。

3)確定診断

胸部CT,造影CT,MRI,PET/CT などの画像診断は良悪性の鑑別に有用であるが,肺癌の確定診断には病変部から採取した組織もしくは細胞による病理診断が必要である。肺癌は組織型,ドライバー遺伝子の有無,PD-L1 の発現状況などにより治療方針が異なるため,一部の手術例を除き,治療開始前に確定診断を行う。確定診断のための方法には,気管支鏡検査・生検,経皮針生検,胸腔鏡検査・胸膜生検,外科的肺生検などがあるが,簡便で低侵襲な検査から実施することが原則である。さらに各検査の診断率・感度・特異度や合併症率だけではなく,各施設での普及度や術者の習熟度などの状況も加味したうえで,それぞれの検査の必要性や優先度を検討し,確定診断方法を選択することが必要である。

4)病期診断

肺癌はTNM 分類による病期診断により予後予測が可能で,病期分類に従い治療方針を決するため,肺癌と診断した場合に病期診断は必須である。

従来は胸腹部造影CT に加え,骨シンチグラフィ,頭部MRI などの検査を行い,病期診断を行うことが通常であったが,FDG-PET/CT の急速な普及により,病期診断,特にリンパ節転移(N 因子),遠隔転移(M 因子)はより正確な診断が可能となっている。しかし,FDG 集積の偽陽性,偽陰性も一定数認めるため,結果の解釈には注意が必要で,特に抗酸菌感染症の多い本邦では,肺野の結節や縦隔リンパ節を含め,FDG 集積を認めても偽陽性を念頭に慎重に判断することが求められる。近年はEBUS-TBNA やEUS-FNA など,縦隔リンパ節に対して比較的低侵襲な組織学的検査のエビデンスも蓄積されており,画像診断でリンパ節転移や遠隔転移を疑った症例には,組織学的な診断を追加することも検討すべきである。

一方,いずれの検査も簡便で低侵襲な検査から実施することが原則であり,各施設での検査の普及度や習熟度などの状況も加味して,各検査の必要性や優先度を検討することが必要である。

5)分子診断

キナーゼ阻害剤は癌発生の直接的な原因となるようなドライバー遺伝子の異常に対する阻害薬である。ドライバー遺伝子異常を有する非小細胞肺癌患者に対して,それぞれのキナーゼ阻害剤は,ORR やPFS において有意な改善が示されている。10 種類のドライバー遺伝子について解析した前向き研究では,733 人中466 人(64%)にいずれかのドライバー遺伝子異常を認め,それらを標的とした治療を受けた群で有意に全生存期間(OS)が延長していた6)。以上より,ドライバー遺伝子異常陽性例に対して,それらを標的としたキナーゼ阻害剤の投与機会を逸しないことが重要である。

免疫チェックポイント阻害剤は,腫瘍免疫における調節因子であるPD-1 などの免疫チェックポイント分子を標的とした抗体薬である。PD-L1 陽性細胞50%以上を有する非小細胞肺癌患者に対して,PD-1 阻害剤(ペムブロリズマブ)は,ORR,PFS,OS において有意な改善を示されている。

Ⅳ期非小細胞肺癌の治療方針は,ドライバー遺伝子変異/転座陽性例,PD-L1 陽性細胞50%以上,それ以外,のサブグループ毎に治療内容が提示されている。組織診断が確定した後に,病期診断を考慮して遺伝子異常の有無とPD-L1 の発現状況を確認する必要がある。

各検査の詳細に関しては,日本肺癌学会編「肺癌患者におけるEGFR 遺伝子変異検査の手引き」「肺癌患者におけるALK 融合遺伝子検査の手引き」「肺癌患者におけるPD-L1 検査の手引き」「肺癌患者におけるROS1 融合遺伝子検査の手引き」「肺癌患者におけるBRAF 遺伝子変異検査の手引き」(日本肺癌学会ホームページ:各種ガイドラインhttps://www.haigan.gr.jp)を参照すること。

引用文献

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検出方法

CQ1
ハイリスク群を対象とした肺門部肺癌の検出に,喀痰細胞診は有用か?

エビデンスの強さC
ハイリスク群では肺門部肺癌の検出に喀痰細胞診を行うよう勧められる。

〔推奨の強さ:1,合意率:83%〕

解説

喀痰細胞診は,非侵襲的で簡便に行える肺門部早期肺癌の唯一のスクリーニング法である。肺癌症例における喀痰細胞診の検出感度は約40%にすぎない1)が,喀痰細胞診で発見されたX 線陰性肺癌は長期生存例の割合が高いことも報告されている2)。また,喀痰細胞診を胸部X 線写真に追加するスクリーニング法の有効性を検討したランダム化比較試験であるJohns Hopkins Study3)とMemorial Sloan-Kettering Study4)では,喀痰細胞診を追加したグループにおいて早期癌の割合,切除率,5 年生存率が上昇することが示された。肺癌死亡率の減少効果に関しても,両study を長期追跡した混合解析の結果,有意差はないものの死亡率を12%低下させる傾向が認められた5)

以上より,喀痰細胞診の検出率は低くエビデンスも少ないが,簡便かつ非侵襲的な検査であり,ハイリスク群(50 歳以上で喫煙指数が600 以上)を対象とした肺門部肺癌の検出においては重要と考えられた。エビデンスの強さはC,ただし総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:診断小委員会

CQ2
肺癌の検出に,PET/CT 検査は有用か?

エビデンスの強さC
肺癌の検出にPET/CT 検査は行わないよう提案する。

〔推奨の強さ:2,合意率:94%〕

解説

肺癌のPET/CT による検出感度は約83~96%,特異度78~91%である6)7)が,StageⅠではその検出感度は低下する8)9)。腫瘍径10 mm 未満の小病変や組織学的に低悪性度の病変に対して,PET/CT は偽陰性を呈しやすい。また,PET/CT は非腫瘍性疾患でも偽陽性を呈することが広く知られている8)。一方,肺結節の良悪性鑑別に対するPET/CT の正診率は,メタアナリシスの結果,有意差はないものの,PET/CT が胸部X 線,CT よりも優れる傾向性が認められた10)11)

したがって,PET/CT は肺癌検出の目的ではなく,肺結節の質的診断や病期診断の補助として行う検査である。文献6)は,「2.質的画像診断」のCQ4 でも引用されており,質的画像診断ではCT で肺癌かどうか判断できない結節にPET-CT を行うことが推奨されている(推奨度1C)。しかし,このCQ2 は検出の目的において有用かについて検討しているため,エビデンスの強さはC,また総合的評価では行わないことを弱く推奨(2 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:診断小委員会

CQ3
肺癌の検出に,腫瘍マーカーは有用か?

エビデンスの強さD
肺癌の検出に腫瘍マーカーは行わないよう提案する。

〔推奨の強さ:2,合意率:67%〕

解説

腫瘍マーカーは,偽陰性や偽陽性になることもあり,腫瘍マーカーのみでは肺癌検出率の向上は得られない12)。非小細胞癌症例に対する検出感度はCYFRA21-1 が41~65%であり,CEA,SLX,CA19-9,CA125,SCC,TPA の感度はCYFRA21-1 よりも低いが,組織型や病期によっても異なる13)~15)。また小細胞癌症例に対する検出感度はNSE が47%,ProGRP が45%16)程度である。CEA, CYFRA21-1,ProGRP,NSE などの腫瘍マーカーの変動は腫瘍の病期あるいは治療効果と良好に相関することが報告されている17)~20)

以上より,腫瘍マーカーは肺癌検出の目的ではなく,肺癌の質的診断の補助,治療効果のモニタリング,再発診断の補助として行うよう勧められる。したがって,検出目的に腫瘍マーカーは行わないよう提案する。エビデンスの強さはD,また総合的評価では行わないことを弱く推奨(2 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:診断小委員会

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質的画像診断

CQ4
高分解能CT で肺癌かどうか判断できない結節に,造影CT やMRI,FDG-PET/CT を行うことは有用か?

エビデンスの強さC
  1. a. 造影CT を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,合意率:100%〕

エビデンスの強さC
  1. b. MRI を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,合意率:78%〕

エビデンスの強さC
  1. c. FDG-PET/CT を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:67%〕

解説

  1. a. 悪性の結節は高い造影効果をもつという仮説のもとに,非石灰化肺結節の良悪性の鑑別診断を,CT でヨード造影剤投与後の造影効果から判定する方法がある。多施設研究では,15 HU を超える造影効果を悪性とした場合の感度は98%,特異度は58%という結果が得られた1)。したがって,造影CT で造影効果がほとんどみられない場合(15 HU 以下)には,良性であることが強く示唆されるが,造影された場合には質的診断は困難である1)。多時相撮像(dynamic study)を行う報告では,良性結節を除外診断できる可能性も指摘されている2)3)。しかし,造影CT の正診度や感度,特異度についてエビデンスの質の高い研究はない。

    以上より,エビデンスの強さはC である。その有用性はあるものの本邦では良悪性の鑑別診断として行われていることが少ないことも考慮し,総合的評価では行うことを弱く推奨(2 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

  2. 投票者の所属委員会:診断小委員会
  3. b. MRI については,造影剤を用いた多時相撮像や拡散強調像(DWI:diffusion-weighted magnetic resonance imaging)を用いた方法が孤立性肺結節の良悪性の鑑別診断や精査の必要性の判断に有用との報告がある4)5)。造影CT やFDG-PET/CT と遜色ないMRI の成績も報告されている6)。しかし,それらの報告のエビデンスの強さはC である。研究結果として有用性が高く被曝がない利点はあるが,本邦では肺病変の検査として行っている施設が限られている点も考慮し,総合的評価では行うことを弱く推奨(2 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。
  4. 投票者の所属委員会:診断小委員会
  5. c. FDG-PET やFDG-PET/CT は,多くの研究によって,CT より良悪性の鑑別診断に対して良好な成績が報告されている7)~9)。多時相でstandardized uptake value(SUV)を計測する方法(Dual time point PET/CT)の報告がなされ10),良性結節を除外診断できる可能性も指摘されている。ただし,FDG-PET/CT の定量評価として用いられているSUV に関しては,比較定量性に問題があるとする報告11)も多いので,日常診療で標準的な指標として勧められない。また,1 cm 以下の結節のデータは少なく,診断能が確立していないこと,定型カルチノイドなどの低悪性度腫瘍や上皮内腺癌が偽陰性になる場合が多く,逆に肉芽腫の一部は偽陽性になるため,その診断に注意が必要である12)13)。PET-CT についての報告もエビデンスの強さはC である。また総合的評価では,その高い正診率や感度,特異度,低侵襲性から,コストは高いが良悪性の鑑別診断に使用することを強く推奨する(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。
  6. 投票者の所属委員会:診断小委員会

CQ5
画像診断で肺癌を否定できない結節に,経過観察を行うことは有用か?

エビデンスの強さC
高分解能CT を用いて結節の性状や肺癌の危険因子の有無に基づいて,適切な観察期間で経過観察を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:94%〕

解説

CT 技術の進歩や普及によって,肺癌を否定できない結節が数多く検出されるようになり,その扱いをどのようにすべきかが大きな問題となっている14)~16)。高分解能CT や他の画像検査で良悪性診断が困難な結節に対し,結節の大きさや性状などの変化を経時的(月単位,年単位)に評価する方法が提案されている15)16)

本邦では,日本CT 検診学会が「低線量CT による肺がん検診の肺結節の判定基準と経過観察の考え方」を提案しており15),その中では,高分解能CT で結節を充実型結節と部分充実型結節,すりガラス型結節に分けて,10 mm 未満の小さい充実型結節や15 mm 未満の小さい部分充実型結節,すりガラス型結節で充実部が5 mm 以下の結節では,決められた間隔で高分解能CT による経過観察を行い,増大の有無に応じて経過観察や観察終了,確定診断への移行を勧めている。

欧米でも,Fleishner Society が,高分解能CT での結節の性状によって充実型結節とすりガラス部分を伴う結節に分けて,大きさと肺癌の危険性の程度に応じて,CT での経過観察やFDG-PET/CT を用いた検査法,確定診断を組み合わせた経過観察の方法をガイドラインとして提案している16)

その他,臨床情報と画像所見を併せて肺癌の可能性を予測する試み17)や,CT による3 次元的容量測定などの定量的手法18),また経時的な腫瘍体積計測とPET を併せた所見を用いて良悪性鑑別診断を行う報告19)などがあるが,結節の大きさの測定には誤差もあり慎重な対応が求められる。

高分解能CT による経過観察については,上記のように国際的なガイドラインも提案されているが,その根拠となる文献のエビデンスの強さはC である。しかし,肺癌を否定できない小さい結節に対しては,広く行われている高分解能CT で低侵襲に良悪性診断が可能となるため,総合的評価では行うことを強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:診断小委員会

引用文献

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確定診断

CQ6
中枢気道病変が疑われる症例に,気管支鏡検査は勧められるか?

エビデンスの強さC
中枢気道病変が疑われる症例に,気管支鏡検査を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

解説

中心型肺癌に対する気管支鏡の診断感度は88%で,鉗子生検の感度は74%,洗浄細胞診,ブラシ細胞診の感度は48%,59%と報告されている1)。非侵襲的検査としては喀痰細胞診があるが,細胞診陽性であっても病変部位の確認や進展度の評価,各種遺伝子変異検索などのための組織診断が必要であるため,気管支鏡検査は推奨される。一方,2010 年に日本呼吸器内視鏡学会認定および関連施設で,すべての疾患に診断的に行われた気管支鏡件数は103,978 件で,そのうち中枢気道病変に対する気管支鏡検査は24,283 件で合併症の頻度は1.32%(出血0.89%)であった2)

以上より,エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うことを強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:診断小委員会

CQ7
中枢気道の前浸潤性病変や早期癌が疑われる症例に,自家蛍光(autofluoresense)観察/狭帯域光観察(narrow band imaging)は勧められるか?

エビデンスの強さC
  1. a. 中枢気道の前浸潤性病変や早期癌が疑われる症例に,白色光による気管支鏡検査に自家蛍光観察を併用するよう提案する。

〔推奨の強さ:2,合意率:100%〕

エビデンスの強さC
  1. b. 中枢気道の前浸潤性病変や早期癌が疑われる症例に,白色光による気管支鏡検査に狭帯域光観察を併用するよう提案する。

〔推奨の強さ:2,合意率:89%〕

解説

  1. a. 肺癌診断の内視鏡診断に以下の技術,手技が導入されている。自家蛍光観察は,白色光観察と比較し,前浸潤性病変(扁平上皮異形成,上皮内癌)に対する検出感度が上昇すると報告されている。白色光観察と自家蛍光観察との比較のメタアナリシスでは,前浸潤性病変(扁平上皮異形成,上皮内癌)に対する検出感度がそれぞれ50%と88%で,自家蛍光観察により検出感度が上昇すると報告されている3)。一方,自家蛍光観察の特異度は,白色光単独に比べて低く,メタアナリシスではそれぞれ83%,50%と報告されている。また白色光と,自家蛍光内視鏡併用に関するメタアナリシスでは白色光観察の感度が46%に対して,自家蛍光観察併用の感度は85%である。一方,自家蛍光観察併用の特異度は,白色光単独に比べて低く,メタアナリシスではそれぞれ91%,71%と報告されている3)

    以上より,エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うことを弱く推奨(2 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

  2. 投票者の所属委員会:診断小委員会
  3. b. 同様の目的で白色光観察と狭帯域光観察の比較が行われ,検出感度がそれぞれ62%と100%と狭帯域光観察の感度が優れていると報告されている。一方,狭帯域光観察による検査の特異度は白色光観察と比べて低く,65%と43%と報告されている3)

    以上より,エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うことを弱く推奨(2 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

  4. 投票者の所属委員会:診断小委員会

CQ8
肺癌を疑う肺末梢病変に,経気管支生検は勧められるか?

エビデンスの強さC
経気管支生検を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

解説

末梢病変に対する気管支鏡の診断率に関しては,34 study,5,742 症例の解析がなされ,末梢型肺癌に対する気管支鏡の感度は78%で,鉗子生検の感度は57%,洗浄細胞診,ブラシ細胞診の感度は43%,54%である。さらに診断感度は病変の大きさに依存し,2 cm 以上の病変は63%,2 cm 未満は34%と報告されている1)。末梢病変に対するtransbronchial needle aspiration(TBNA)のメタアナリシスでは,診断率は53%で,3 cm 以上の病変,悪性病変で診断率が高いことが報告されている4)。合併症については,2010 年に日本呼吸器内視鏡学会全国調査で肺末梢病変に対する気管支鏡検査は年間60,275 件が施行され,死亡率は0.003%,合併症率は1.55%(出血0.63%,気胸0.44%の順)であった2)。直接比較した論文はないが,CT ガイド下経皮針生検の全国調査を参考にすると死亡,合併症率はCTガイド経皮針生検(死亡率0.07%,気胸合併症率35%,重症合併症率0.75%)5)よりかなり低いと推測される。

以上より,肺癌を疑い,治療方針決定のために診断が必要な肺末梢病変には,病変の大きさなどにより診断率が異なることを考慮のうえで,経気管支生検を施行するように勧められる。なお経気管支生検で診断がつかず肺癌が否定できない場合は,さらに精査が必要である。エビデンスの強さはC,総合的評価では強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:診断小委員会

CQ9
肺末梢病変の経気管支生検に,ラディアル型EBUS は勧められるか?

エビデンスの強さC
ラディアル型EBUS を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:67%〕

解説

ラディアル型EBUS 下の経気管支生検は末梢病変の診断に有用とされ1),小型病変に対する診断率の向上6)7),経気管支針生検(TBNA)の併用が有効であること8)が報告されている。一方,ガイドシース併用ラディアル型EBUS を使用しても感度が上昇しなかった報告もある9)。CT ガイド下経皮針生検と比較すると,ラディアル型EBUS 下の経気管支生検の診断率は69%でCT ガイド下経皮針生検の94%よりも低かったが,合併症はEBUS で低かったと報告されている10)~12)。メタアナリシスではラディアル型EBUS の肺癌検出の感度は72.4~73%と報告されているが,対象集団の癌の割合,病変のサイズによって異なる13)14)。また肺末梢小型病変に対して,極細径気管支鏡とラディアル型EBUS を組み合わせた方法は,細径気管支鏡とガイドシースを併用したEBUS 下経気管支生検を組み合わせた方法より診断率が向上することが報告された15)。通常の気管支鏡下生検と比較し,診断率の上昇を示したランダム化試験は複数存在するが,いずれも質が高くはない。しかし,これまでのシステマティックレビューから診断率が向上することは明らかと考えられた。

以上より,エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うことを強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:診断小委員会

CQ10
肺末梢小型病変の経気管支生検に,仮想気管支鏡ナビゲーションは勧められるか?

エビデンスの強さB
仮想気管支鏡ナビゲーションを行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,合意率:63%〕

解説

近年,肺末梢病変に対し仮想気管支鏡によるナビゲーション(virtual bronchoscopic navigation,VBN)が行われるようになり診断率は73.8%と報告されている16)。VBN を含めた新規モダリティのメタアナリシスではVBN の診断率は72.0%である17)。肺末梢小型病変(3 cm 以下)に対する有効性については2 つの多施設共同RCT が報告されている。細径気管支鏡とラディアル型EBUS を組み合わせた手法でのRCT(VBN 群102 例,非VBN 群97 例)において,仮想気管支鏡ナビゲーションにより到達率,診断率が向上し,検査時間が短縮された18)。極細径気管支鏡とX 線透視を組み合わせた手法でのRCT(VBN 群167 例,非VBN 群167 例)では,到達率が向上し,CT で肺野外層に存在する病変,右上葉の病変,X 線写真で見えない病変で診断率が向上した19)。これらをメタアナリシスすると,仮想気管支鏡ナビゲーションによる病変への到達率〔VBN 群91.8%,非VBN 群82.2%,RR 1.12(95%CI:1.04-1.19,P=0.001)〕,および診断率の向上〔VBN 群72.1%,非VBN 群62.5%,RR 1.16(95%CI:1.03-1.30,P=0.01)〕を認めた。仮想気管支鏡ナビゲーション自体による合併症は認めず,合併症率(VBN 群1.5%,非VBN 群1.5%)には変化がなかった。

以上の結果より,肺末梢小型病変の経気管支生検に仮想気管支鏡ナビゲーションは病変への到達率,診断率を向上させるので行うように勧められる。エビデンスの強さはB,総合的評価では弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:診断小委員会

CQ11
肺癌を疑う肺末梢病変に,経皮針生検は勧められるか?

エビデンスの強さC
肺癌を疑う肺末梢病変,特に小型病変で経気管支生検による診断が困難な症例に対しては,空気塞栓や胸膜播種などの重篤な合併症の可能性を考慮のうえで,CT ガイド経皮針生検を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,合意率:84%〕

解説

従来,肺末梢病変に対して経皮針生検(percutaneous transthoracic needle biopsy;PTNB)が行われ,その肺癌診断能はメタアナリシスでは感度86.1%,特異度98%と報告されていた20)。吸引細胞診では悪性病変の偽陰性率が高いため21),近年はCT ガイド下に生検を行うことが多く(CT-PTNB),診断精度は従来の経気管支生検やEBUS 下経気管支生検と比較して高く1)12),特に直径2 cm 以下の末梢病変の診断では優れていると報告されている10)22)。肺癌診断における感度は90%以上である1)12)22)23)。一方で,CT-PTNB は,経気管支生検と比較して合併症が多いのが問題であるとされている1)10)~12)22)。PTNB の主たる合併症は気胸と出血で,頻度はCT-PTNB において気胸が1~52%,喀血をきたす出血が0.32~23%5)12)22)24)である。また頻度は少ないが,その他の重篤な合併症として空気塞栓(0.06~0.4%)5)25)26),胸膜播種(0.06~25%)5)25)27)~30)があり,特に胸膜直下病変に対してCT-PTNB を施行した際に胸膜再発が多いとされている27)。これらの合併症は死亡につながる場合もあることが報告されており,実施の際には経気管支生検と比較したリスクの高さに留意する必要がある5)。近年ではground-glass nodule(GGN)に対してもCT-PTNB が有用であるとする報告があり,メタアナリシスでは感度92%,特異度94%とされている24)31)32)。このためGGN に長期にわたる経過観察を実施するのではなく,積極的なCT ガイド組織診による診断を推奨する報告もあるが24),早期肺癌に対する針生検の適応は慎重であるべきと考える。また使用する針は,Tru-cut-type 針のほうが,modified Menghini-type より診断率が高いと報告されている33)

以上より,肺癌を疑う肺末梢病変,特に小型病変で経気管支生検による診断が困難な症例に対しては,空気塞栓や胸膜播種などの重篤な合併症の可能性を考慮のうえで,CT ガイド経皮針生検を行うよう提案する。エビデンスの強さはC,総合的評価では弱く推奨(2 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:診断小委員会

CQ12
肺癌を疑う肺末梢病変に,外科的生検は勧められるか?

エビデンスの強さD
胸腔鏡,開胸による生検は,気管支鏡や経皮針生検と比較して侵襲が大きいため,その必要性を十分に考慮したうえで行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,合意率:95%〕

解説

胸腔鏡による診断のよい適応となるのは胸膜に近い病変である34)。画像診断で悪性が強く疑われ,経気管支肺生検や経皮生検による診断が困難な症例では胸腔鏡による診断を施行される場合もある35)。胸腔鏡は,EBUS による生検が困難な縦隔リンパ節の生検にも適応がある36)37)。胸腔鏡による診断は,ほぼ100%の感度,特異度をもつ。しかし全身麻酔が必要で侵襲が高く,手術による死亡率は0~0.5%,合併症の頻度は3~9.6%で,その内訳は,無気肺,肺炎,エアリークが含まれる38)

以上より,肺癌を疑う肺末梢病変に,外科的生検は必要性を十分に考慮したうえで行うように勧められる。エビデンスの強さはD,総合的評価では弱く推奨(2 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:診断小委員会

引用文献

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4)
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病理・細胞診断

総論
肺癌の病理・細胞診断

解説

2016 年版では肺癌の細胞診断および組織診断の樹形図や鑑別診断,外科的検体の取り扱いについて総論的に記載したが,これらは規約分類1)と重複することから削除し,臨床医の基本的な疑問に答えるべくCQ 形式とした。病理・細胞診領域においては大多数の論文が後顧的な症例集積研究であることから必然的にエビデンスの質が低くなるが,専門家が議論し,すでに実臨床でコンセンサスが十分あると考えられた事柄については強く推奨することとした。進行期非小細胞肺癌症例においては組織・細胞診検体を用いた遺伝子診断が必須であり,検体採取や標本作成に関わる臨床医・病理医・検査士は分子情報が損なわれないよう,検体の取り扱いに十分留意しなければならない。これについて本項でも基本的事項は掲載したが,日本病理学会が策定した「ゲノム診療用病理組織検体取扱い規程」2)日本病理学会ホームページから閲覧可能)で詳しく記載されていることから,これを参照されたい。また,実施については「6.分子診断」の項も参照されたい。

引用文献

1)
日本肺癌学会編,臨床・病理 肺癌取扱い規約 第8 版.金原出版.2017.
2)
日本病理学会編,ゲノム診断用病理組織検体取扱い規程.2018.

CQ13
肺癌の組織診断およびバイオマーカー診断を行ううえで,望ましい検体はどのようなものか?

エビデンスの強さC
肺癌の組織診断およびバイオマーカー診断を行うには,組織量,特に腫瘍(細胞)量と腫瘍(細胞)割合が十分で,かつ腫瘍細胞が挫滅していない検体を用いるよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:94%〕

解説

採取された生検検体,手術検体はプレアナリシス段階で適切な処理がなされなければならない。切除検体に対する組織の取り扱い,固定方法については「肺癌取扱い規約第8 版」に記載されている1)。以下に生検検体の適切な処理について「ゲノム診療用病理組織検体取扱い規程」2)を抜粋して記す。生検により採取された組織は,10%中性緩衝ホルマリンを用いて速やかに固定液に浸漬し固定を行う。固定時間は,6~48 時間が望ましい。なお,気管支腔内超音波断層法(EBUS)等を用いて生検採取される微小な組織検体や細胞検体では,より短い固定時間で処理が完了するため,業務上支障のない範囲で固定時間の短縮化(例えば6~24 時間)に努めることが望ましい。しかしながら,ホルマリン固定標本はDNA の質に関しては凍結標本より劣ることも認識しておくことは必要である3)

またアナリシス段階においてゲノム診断に供する検体は,病理診断時に作製されたHE(Haematoxilin-Eosin)染色標本の観察や病理診断報告書の記載などに基づき,解析に必要な腫瘍(細胞)量と腫瘍(細胞)割合を有するFFPE ブロックを,原則病理医が選択する。このとき出血や壊死,炎症細胞などの非腫瘍細胞が多いブロックの使用は可能なかぎり避ける。

ゲノム診断用に作製した未染色FFPE 標本から,再度HE 染色標本を作製し,原則病理医が標本上にマーキングするとともに腫瘍量(総腫瘍細胞数)や腫瘍割合(標本中の全細胞に占める腫瘍細胞の%)を判定する。

組織診断を行うにはプレパラートとしてHE,組織亜型を鑑別するための免疫染色数枚(4μm 厚),検査会社に依頼する場合(LSI,BML,SRL 各社の規定を参照)非小細胞肺癌であればEGFR(10μm 厚×5~10 枚),ALK(免疫染色4μm 厚×4 枚,FISH 4μm 厚×3~4 枚),ROS1(10μm 厚×5~10 枚),PD-L1(4μm 厚×4 枚),BRAF(10μm 厚×5~10 枚)で概ね350μm 以上の厚さの検体の大きさが必要である。扁平上皮癌であれば少なくともPD-L1 4μm 厚×4 枚で4 枚必要である。検査方法によるがいずれも腫瘍細胞量としては1~10%以上,PD-L1 染色であれば腫瘍細胞100 個以上,ALK FISH であれば腫瘍細胞数最低50 個以上が必要である。またPD-L1 染色の評価の場合,挫滅している腫瘍細胞は評価しない。EBUS-TBNA 検体のほうが気管支鏡下生検より腫瘍細胞の挫滅が少ないとの報告もある4)。さらにPD-L1 染色に関しては腫瘍全体を評価していない可能性が懸念されているが,手術検体と生検検体で差はないという報告もされている5)6)

なお,FFPE の検体を用いる場合,採取した検体のすべてが使用できるとは限らない。パラフィンブロックから検体を薄切する際には検体を覆っているパラフィンを削る作業が必ず入るため,その際に数μm は必ず失う。

今後NGS などによるパネル検査が主流になった場合,サンプルとして腫瘍量に加えDNA,RNAの品質も問われるため,プレアナリシス段階における処理も十分に注意することが望ましい7)

以上より,エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うことを強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:病理委員会,細胞診判定基準改訂委員会

CQ14
原発性肺癌のバイオマーカー検索に,細胞診検体は有用か?

エビデンスの強さD
原発性肺癌のバイオマーカー検索に適した検体として,細胞診検体を使用することを提案する。

〔推奨の強さ:2,合意率:65%〕

解説

原発性肺癌患者のバイオマーカー検索には,生検検体などの組織検体の他,気管支洗浄液,気管支擦過材料,穿刺吸引材料,体腔液などの細胞診検体が用いられる。細胞診標本は,多くの場合,アルコール固定塗抹標本(以下塗抹標本)やセルブロック標本として作製されるが,いずれもEGFR 遺伝子検査においてホルマリン固定・パラフィン包埋(FFPE)組織標本と同等の検出率を示すことが報告されている8)9)

セルブロック標本は,検体の保存性に優れ,繰り返し標本を作製できることや,FFPE 組織標本と同様のプロトコールでの検査が可能である利点があることから,バイオマーカー検索に適している9)~11)。特にALK 遺伝子検査に用いられるIHC 法,FISH 法は,現在本邦の検査会社で施行可能な検査はいずれもFFPE 組織標本用に最適化されたプロトコールを用いていることから,セルブロック標本の作成が推奨される。しかし,PD-L1 IHC 検査においては,細胞診検体でのPD-L1 発現は,FFPE 組織検体での評価と高い一致率を示すとの報告があるものの12),臨床試験での細胞診検体を用いた十分な検証がなされておらず,セルブロック標本を含めた細胞診検体を用いることは現時点では推奨されていない。

塗抹標本は,腫瘍細胞の確認が容易に行えることに加えて,FFPE 組織標本やセルブロック標本の際のようなホルマリン固定を行わないため核酸の質が保持されやすい利点があり,PCR 法を用いた遺伝子検査やNGS 検査において有効に利用できる8)9)11)13)~15)。バイオマーカー検査に関する大規模なシステマティックレビューにおいても,塗抹標本はセルブロック標本と同等の位置付けがなされ,いずれの細胞診検体もバイオマーカー検査に使用することが推奨されている13)

進行肺癌の治療方針決定のためのバイオマーカー検索では,複数のバイオマーカー検査が必要であり,限られた検体を有効利用することが求められる。採取された生検検体が少量であったり,あるいは採取検体が細胞検体のみの場合もあることから,先述の細胞診検体の特性を踏まえたうえで,細胞診検体をバイオマーカー検索に利用することが推奨される。

以上より,エビデンスの強さはD,また総合的評価では行うことを弱く推奨(2 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:病理委員会,細胞診判定基準改訂委員会

CQ15
原発性肺癌の組織型診断に,免疫組織化学的染色(免疫染色)は有用か?

エビデンスの強さD
〈生検検体〉
a. 形態学的に非小細胞癌の場合は,行うことを推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:82%〕

エビデンスの強さD
〈手術検体〉
b. 形態学的に組織型を決定できない場合は,行うことを推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:82%〕

解説

肺癌患者のおよそ2/3 を占める進行癌の治療方針にあたっては,本ガイドライン「Ⅳ期非小細胞肺癌における薬物療法の意義とサブグループ別の治療方針」に示されるようにサブグループ決定に扁平上皮癌と非扁平上皮癌とに分けてバイオマーカー検索が勧められている他,薬剤療法(ペメトレキセド,ベバシズマブ)および免疫チェックポイント阻害剤(ニボルマブ,アテゾリズマブ)では組織型による使い分けがなされている。そのため,組織型は治療方針の決定に重要な意味をもつ16)

組織型の決定はこれまで組織形態学的になされてきたが,明瞭な分化傾向を示さない低分化癌,大細胞癌においても免疫染色によって分けられた生物学的組織型が,分化癌における遺伝子変異の傾向をよく反映することが多数の比較試験によって報告されている17)。特に腺癌のマーカーとしてTTF-1 および扁平上皮癌のマーカーであるp40 は最も組織型をよく分別し,鑑別に有用であることが報告されている16)18)19)。扁平上皮癌のマーカーとしては,より早く開発されたp63 の報告も多いが,腺癌の一部にも反応することが知られており,現在はp40 が推奨されている17)。その他の免疫染色マーカーとして,CK5/6,Napsin A と併用することで鑑別の感度が上がることも報告されている一方で20),バイオマーカー検査のための未染標本を残しておくことも推奨されているため,TTF-1,p63/p40 に加えて鑑別マーカーに入れるべきか状況によって判断する必要がある。

以上より,推奨ab について,エビデンスの強さはD,また総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:病理委員会,細胞診判定基準改訂委員会

CQ16
原発性と転移性の肺癌の鑑別に,免疫組織化学的染色(免疫染色)は有用か?

エビデンスの強さD
原発性と転移性の肺癌の鑑別には,複数の臓器特異的マーカーを用いた免疫組織化学的染色(免疫染色)が有用であることが示されており,また,適切な鑑別による治療方法選択で,予後の改善をきたすことが知られていることから,これを行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,合意率:71%〕

解説

肺は転移の多い臓器であり,原発性と転移性の鑑別は治療方針決定に重要な情報である。病歴聴取,既往腫瘍組織との比較検討に加え,複数の組織型および臓器特異的マーカーを用いる免疫染色の有用性が報告されている。原発性肺癌自体の組織型の決定に関する事項はCQ15 を参照のこと。

免疫染色は有力な補助診断手法である一方で,いずれの抗体も感度,特異度で完璧なマーカーはないため,形態,経過を合わせて総合的に判断する必要がある。

組織型が異なる場合は,一般的には別の腫瘍として取り扱われる21)~24)。ドライバー遺伝子変異陽性肺癌の場合,治療経過中に腺癌から小細胞癌への形質転化をきたす例も知られている25)

1)腺癌の場合

転移の可能性のある場合,CK7,CK20 の染色性である程度の見当を付けることができる22)23)。肺に転移をきたしやすい腫瘍として,大腸,乳腺をはじめ,膵,前立腺,子宮内膜,卵巣,腎などあらゆる臓器癌が鑑別の対象として挙げられる26)。形態学的特徴である程度の鑑別は可能であるが,大腸癌では,CDX-2(+),villin,SATB2,β-catenin が,乳癌では,GATA-3,ER,GCDFP-15,Mammaglobin が,甲状腺癌ではthyroglobulin,PAX8 が,子宮体癌や卵巣癌ではPAX8,WT-1,CA125,ER が,前立腺ではNKX3.1,PSA,AR が,それぞれ臓器特異的マーカーとしての有用性が報告されている22)23)27)~29)

乳癌,甲状腺癌は長期再発例があり,病歴とともに免疫染色は有力な補助診断法である。TTF-1 は肺腺癌で特異性の高いマーカーではあるが,クローンにより感度,特異度が異なること,他臓器の腺癌でも陽性となることに注意が必要である30)31)CQ15参照)。

Napsin A は肺腺癌で特異性が高いが,感度はやや低く,また腎細胞癌,卵巣明細胞腺癌にも陽性になるなど,注意が必要である27)31)~34)

HNF4αは,肺の浸潤性粘液性腺癌で高率に陽性となり良悪の鑑別には有用性が高いが,膵臓,胆道の腺癌でも陽性となるため特異性は低い23)35)36)

2)扁平上皮癌の場合

扁平上皮癌は,臓器特異的マーカーはなく,転移か原発かの鑑別に有用な指標は少ない37)。子宮頸部扁平上皮癌および頭頚部癌の一部ではHPV 感染が関与していることから,HPV 感染の代替指標としてのp16 INK の発現異常が補助的に用いることができる。ただし,稀に肺扁平上皮癌でもp16 INK が過剰発現することもある38)。胸腺癌の場合は,CD5,CD117(c-KIT)が有用であるが,頻度は低いが肺扁平上皮癌でも陽性となる。

3)組織型が不明確な場合

低分化癌や組織採取量が少ない場合,TTF-1,p40 で組織型を推定するとともに,いずれも陰性の場合は,中皮腫(Calretinin,D2-40,WT-1),膀胱癌(GATA-3,Uroplakin-Ⅲ,Uroplakin-Ⅱ),腎癌(PAX-2,PAX8,CD10,RCC Ma),肝細胞癌(AFP,Glypican-3,Hep-par-1,Arginase-1,CD10),胚細胞腫瘍(SALL-4,OCT-4,Glypican-3)などの可能性を考慮して検索してもよい22)23)26)

4)小円形細胞腫瘍の場合

肺の小細胞癌との鑑別として,リンパ腫(CD45/LCA,CD3,CD20 など),円形細胞肉腫,悪性黒色腫(S100,Melan A,HMB45,SOX-10)は重要である。小円形細胞腫瘍では,検体採取による挫滅の影響が大きく,形態学的観察が困難な場合が多いことと,各疾患での治療方針が大きく異なるため,疾患特異的マーカーを用いることが推奨される22)23)26)

5)肉腫あるいは肉腫様腫瘍の場合

軟部腫瘍の肺転移の他に,肉腫様癌,中皮腫を鑑別する必要がある(第2 部.悪性胸膜中皮腫診療ガイドラインを参照)。軟部腫瘍の鑑別は多岐にわたるが,組織型特異的マーカーの有用性が高いため,適切に用いると効果的である。

以上より,エビデンスの強さはD,また総合的評価では行うことを弱く推奨(2 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:病理委員会,細胞診判定基準改訂委員会

CQ17
術前未診断の主病巣に対して,術中迅速診断は有用か?

エビデンスの強さD
腫瘍型や診断の目的によって正診率が異なるが,良悪の判定等には一般に有用であり,行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:71%〕

解説

主病変の診断が術前に得られておらず,手術方針の決定に診断が必要である場合,術中迅速診断を依頼することができる。主病変に対する迅速診断の正診率は一般に高く,良悪性の判定,癌か肉芽腫かといった大まかな区別も含めるなら,永久標本との不一致率は1~3%程度と低く,判定保留率は3~5%程度とする報告が複数ある39)~41)。しかしながら,永久標本における診断と迅速診断との不一致が低率ながらも存在することには十分留意すべきである。また,迅速診断の正診率には腫瘍の種類や大きさなども影響する。例えばカルチノイド腫瘍の迅速診断では永久標本の不一致率が7~8%とやや高く42),1 cm 未満の主病変に対する迅速診断での正診率は大きな病変のものより低いとするデータもある40)。一方で,永久標本での診断と同様の詳細な予後予測因子の判定を迅速診断に期待するのは難しい。例えば,腺癌における浸潤の有無や浸潤の範囲については,正診率が低い傾向があり43)~46),非浸潤性腺癌や微少浸潤腺癌の診断を術中迅速で行うことは容易でない。さらに,腺癌の分類に用いられる浸潤パターンについては,優勢パターンのみに限定しても,迅速・永久標本での評価不一致が30%程度あり47)48),推奨しない。なお,迅速診断検体採取においてはpT 評価に支障をきたさない採取を心がける。また感染症が疑われる場合には新鮮組織検体を用いた培養などの細菌学的検査を行うことが望ましい。

以上より,エビデンスの強さはD,また総合的評価では行うことを強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:病理委員会,細胞診判定基準改訂委員会

CQ18
術中胸腔内洗浄細胞診は有用か?

エビデンスの強さC
術中に胸腔内洗浄細胞診を行うことを提案する。

〔推奨の強さ:2,合意率:65%〕

解説

肺癌取扱い規約第8 版では,胸水細胞診(E)で陽性例はpM1a に相当する。一方,術中の胸腔内洗浄細胞診(pleural lavage cytology;PLC)は,非小細胞肺癌の術中肺切除とリンパ節廓清前の開胸時(PLC-pre)や肺切除後の閉胸時(PLC-post)に行われている49)~59)。PLC 検査は術中に生理食塩水を胸腔内に注入して回収する安全な検査である。また,PLC 時の胸腔内を洗浄する生理食塩水の量は,50 mL,100 mL,200 mL,500 mL,1,000 mL と様々な報告がある49)~54)56)~58)。このPLC 検査は悪性胸水や胸膜播種には至らないpM1a の前段階の状態を把握できる検査であり,患者の予後に大きな影響を及ぼす。

実際に術中非小細胞肺癌の肺切除後に行われるPLC-post の陽性率は,2.5~13.1%49)~54)56)58),肺切除前に行われるPLC-pre の陽性率は,1.5~5.3%53)54)56)57)と報告されている。PLC-post の陽性率はPLC-pre と比較して若干高い傾向が認められる。また,術中PLC を実施した4,171 例の検討では5.2%が陽性59),8,763 例のメタアナリシスの解析では5.8%が陽性55)と類似した結果も報告されている。

予後に関してPLC-post の検討では,PLC 陽性群では5 年生存率22.0~43.0%に対し,PLC 陰性群では58.3~69.0%で,PLC 陽性群は陰性群と比較して有意に予後不良と報告されている49)52)53)56)。10 年生存率でも,PLC 陽性群は25%に対し,PLC 陰性群が58%であり,同様にPLC 陽性群は予後不良である52)。この中でも,特にⅠ期の5 年生存率は,PLC 陽性群が43~60%であるのに対し,PLC 陰性群は81~90%と49)54),有意に予後不良であるが,一方でⅡ-Ⅳ期では予後に関係しないことが報告されている51)52)。PLC-pre の検討でも5 年生存率は,PLC 陽性群で37~44.1%と陰性群と比較して予後不良である53)56)。また,PLC 全体の検討では,PLC 陽性群の5 年生存率が31~44.5%であるのに比し,PLC 陰性群は72.8%であり,PLC 陽性群は予後不良である55)59)

PLC-post 陽性例は, 再発率や死亡率が高く, 多変量解析でも独立した予後不良因子である49)~53)56)。特にⅠ期においてPLC は,独立した予後不良因子である51)52)54)58)。また,PLC-pre やPLC全体の陽性例でも同様の結果である55)57)59)

PLC-post 陽性例は,腺癌49)50)52)58),病期49)50)52)53)58),リンパ管・血管侵襲49)51)~53)56),血清CEA49)56),男性49),胸膜浸潤49)50)52)53)56)58),腫瘍径52)56),リンパ節転移49)52)56),年齢53)56)と相関関係が認められる。一方で,扁平上皮癌との相関はなく52),上皮内腺癌(AIS)や微少浸潤性腺癌(MIA)では全例PLC が陰性である58)。PLC-pre 陽性例は,年齢55),喫煙歴55),血清CEA55),腺癌57),病期57),腫瘍径55)57),リンパ節転移55)57),胸膜浸潤55)57)と相関を認める。また,PLC 陽性例では,年齢55)59),男性55)59),腫瘍径55)59),リンパ節転移55)59),遠隔転移55)59),胸膜浸潤55)59),腺癌59),病期54)59)と相関しており,腺癌では乳頭状腺癌,小乳頭状集塊が多いと報告されている54)

PLC-post 陽性例の再発様式は,局所再発より転移性再発が多いという報告49),胸膜再発率や遠隔転移での再発率が高いという報告53)がある。PLC 陽性例も同様に遠隔転移で再発する54)。また,PLC-post 陽性例は,悪性胸水陽性例と比較して予後が良いが,その大部分は5 年以内に再発することが報告されている56)。そのため,PLC 陽性は,悪性胸水の前段階と考えられる56)

以上より,PLC 検査は予後推定の観点から,行うことを提案する。エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うことを弱く推奨(2 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:病理委員会,細胞診判定基準改訂委員会

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病期診断

CQ19
T 因子診断のために,必要な検査は何か?

エビデンスの強さC
  1. a. 胸部造影CT を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

エビデンスの強さC
  1. b. 縦隔浸潤,胸壁浸潤,腫瘍周囲の無気肺の鑑別が必要な場合,FDG-PET/CT を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

エビデンスの強さC
  1. c. 縦隔浸潤,胸壁浸潤,腫瘍周囲の無気肺の鑑別が必要な場合,胸部MRI を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:79%〕

解説

  1. a. CT では病変の存在,大きさ,広がり,正常構造との関係を正確に捉えることができ,また無気肺や閉塞性肺炎の有無,隣接臓器への浸潤の診断にも有用であり,病期診断において侵襲的検査の前に最初に行うべき基本的な検査である。TNM 分類第8 版においてT 因子は従来より細分化されているが,本邦においても胸部造影CT に高分解能CT を併用することでT 因子の正確な診断が可能との報告がある1)

    以上より,エビデンスの強さはC,総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

  2. 投票者の所属委員会:診断小委員会
  3. b. CT 単独ではT3 およびT4 の診断が困難な場合があり,T3 診断の感度が38~90%,特異度が40~90%2)3),T4 診断の感度が40~84%,特異度が57~94%4)と報告にばらつきがある。一方,FDG-PET/CT は縦隔浸潤,胸壁浸潤,腫瘍周囲の無気肺との鑑別に有用5)で,T 因子の正診率が82%と,FDG-PET 単独の55%,CT 単独の68%と比べて高い6)と報告されており,特にT3 およびT4 の診断には推奨される。

    以上より,エビデンスの強さはC,総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

  4. 投票者の所属委員会:診断小委員会
  5. c. MRI も縦隔浸潤,胸壁浸潤,腫瘍周囲の無気肺との鑑別に有用とされ,T3 の診断率がCT の60%に対してMRI が80%,T4 の診断率がCT の33.3%に対してMRI が100%,無気肺の診断率がCT の61.5%に対しMRI が84.6%との報告7)もあり,胸壁浸潤,腫瘍周囲の無気肺との鑑別が困難な症例には考慮してもよい。ただし,GGN やT1 およびT2 の診断に関しては,FDG-PET/CT やMRI よりもCT のほうが診断率が高く7)8),FDG-PET/CT,MRI がCT に代用されるものではない。

    以上より,エビデンスの強さはC,総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

  6. 投票者の所属委員会:診断小委員会

CQ20
N 因子診断のために,必要な検査は何か?

エビデンスの強さA
  1. a. 胸部造影CT,FDG-PET/CT を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

エビデンスの強さC
  1. b. MRI を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,合意率:95%〕

エビデンスの強さA
  1. c. 縦隔リンパ節転移の有無で治療法が異なる症例において,画像検査で縦隔リンパ節転移を疑う場合,超音波内視鏡検査(EBUS-TBNA,EUS-FNA)による病理学的診断を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:95%〕

エビデンスの強さC
  1. d. 術前の画像検査で縦隔リンパ節転移が疑われ,超音波内視鏡検査では転移を認めなかった場合,縦隔鏡検査などの外科的生検を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,合意率:100%〕

解説

  1. a. 胸部CT は短径1 cm 以上のリンパ節を転移陽性と診断することが多く,メタアナリシスによると,感度は59%,特異度は78%と報告されている9)

    FDG-PET/CT の切除可能な非小細胞肺癌におけるN 因子診断に関するCochrane Library のシステマティックレビューによると,原発巣などの背景臓器における集積を基準としてN 因子を判定した場合,その感度は77.4%,特異度は90.1%とされる10)

    以上より,エビデンスの強さはA,また総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

  2. 投票者の所属委員会:診断小委員会
  3. b. 非小細胞肺癌の縦隔病期診断におけるMRI 拡散強調画像をFDG-PET/CT と比べた43 研究のメタアナリシスによると,10 研究から解析した前者の感度は72%,特異度97%,33 研究から解析した後者の感度は65%,特異度93%と報告されている11)。MRI 拡散強調画像はFDG-PET/CT と同等の診断精度が示されており12)~14),FDG-PET/CT が利用できない場合,MRI を行うよう提案する。

    以上より,エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

  4. 投票者の所属委員会:診断小委員会
  5. c. 前述の画像検査では少なからず偽陽性の結果が存在するため,これらの画像検査の結果だけで治療方針を決定するには,その正確性は不十分である。非小細胞肺癌の縦隔病期診断における超音波気管支鏡ガイド下針生検(endobronchial ultrasound-guided transbronchial needle aspiration;EBUS-TBNA)の診断精度を調べた9 研究1,066 症例のメタアナリシスによると,診断感度は90%,特異度は99%と報告されている15)。非小細胞癌の縦隔病期診断における経食道的超音波内視鏡ガイド下針生検(endoscopic ultrasound-guided fine-needle aspiration;EUS-FNA)の診断精度を調べた18 研究1,201 症例のメタアナリシスによると,感度は90%,特異度は97%と報告されている16)。その他のメタアナリシスにおいても,EBUS-TBNA,EUS-FNA とも感度は概ね90%,特異度100%というデータで一致している17)~19)。合併症は稀であるが,大出血や縦隔炎など重篤な合併症も報告されており注意を要する20)。EBUS-TBNA とEUS-FNA は,両方行ったほうがそれぞれ単独に比べ正確性が上がる19)21)22)ため,必要と判断される症例に対してはEBUS-TBNA とEUS-FNA を両方行うよう提案する。多施設共同ランダム化比較試験において,画像検査で縦隔リンパ節転移が疑われる症例に対し,縦隔鏡検査の前に超音波内視鏡検査を加えることにより,合併症の頻度を上げることなく診断感度が上がり,不要な肺切除を減らすことが報告されており23),画像検査で縦隔リンパ節転移を疑う場合,超音波内視鏡検査による病理学的診断を推奨する。画像検査で縦隔リンパ節転移を疑わない症例に対しては,PET/CT の陰性的中率は高いことから,すべての症例に生検を行うように勧めるだけの根拠は明確ではないが,PET/CT でN2 偽陰性の予測因子となる原発巣が3 cm 以上の症例24),原発巣が中枢に存在する症例25),画像上N1 が疑われる症例26)に対しては,画像上縦隔リンパ節転移を疑わなくとも超音波内視鏡検査により生検を行うことを考慮してもよい。

    以上より,エビデンスの強さはA,また総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

  6. 投票者の所属委員会:診断小委員会
  7. d. 縦隔鏡検査とEBUS-TBNA の非小細胞肺癌の縦隔病期診断に対する効果を比較したメタアナリシスによると縦隔鏡の感度は86%,特異度100%とされ,EBUS-TBNA の感度84%,特異度100%と差はなく,合併症の頻度はEBUS-TBNA のほうが少ないことが示された18)。超音波内視鏡検査後の縦隔鏡検査の必要性に関しては議論があるものの27),超音波内視鏡検査陰性症例に縦隔鏡検査を加えると,縦隔リンパ節転移を診断できる症例が増えることが報告されており23)26),術前の画像検査で縦隔リンパ節転移が疑われ,超音波内視鏡検査では縦隔リンパ節転移を認めなかった場合,必要と判断される症例に対して,縦隔鏡検査等の外科的生検を行うよう提案する。

    以上より,エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

  8. 投票者の所属委員会:診断小委員会

CQ21
M 因子診断のために,必要な検査は何か?

エビデンスの強さA
  1. a. FDG-PET/CT,頭部造影MRI を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

エビデンスの強さB
  1. b. FDG-PET/CT で,単発の遠隔転移が疑われた場合は,可能なかぎり他の画像診断や病理学的診断で転移であることを確認するよう提案する。

〔推奨の強さ:2,合意率:100%〕

解説

  1. a. 遠隔転移の検索において,FDG-PET/CT は造影CT に比べ感度・特異度が高く,FDG-PET/CT による遠隔転移診断の感度が77~100%,特異度が93~100%との報告や28)~31),肝,副腎での陰性的中率が95%,骨では90%との報告がある32)33)

    脳転移の検索において,造影MRI は造影CT や単純CT,MRI に比べて高い感度を示し,腫瘍径の小さな転移を多く検出すると報告されている34)35)が,体内金属などにより造影MRI 撮影できない場合は,造影CT でも代用可能である。脳転移検索におけるFDG-PET/CT については18FDG は正常脳組織への集積がみられるために感度は24~27%36)37)と低く,勧められない。

    ただし,原発巣が2 cm 以下のGGN で充実成分の比率が25%以下の症例は遠隔転移がほとんどないことが報告されており38),このような症例は確定診断を待たずに手術を施行する症例も多く,FDG-PET/CT,頭部造影MRI もしくはCT などによる病期診断は必須ではない。

    コントロール不良の糖尿病,閉所恐怖症,自施設および近隣の施設にPET/CT の設備がない等,FDG-PET/CT が施行し得ない場合,造影CT はFDG-PET/CT に比べると転移巣検索の感度・特異度は劣るものの,転移巣は一般的に血流が豊富で造影CT での造影効果が高いため,肝,副腎,腎などへの転移検索に造影CT は有用である39)

    また,骨転移の検索に関して,複数のメタアナリシスで骨シンチグラフィの感度82~86%,特異度62~88%と報告されており40)41),FDG-PET/CT の感度92%,特異度98%に比べるとやや劣るものの,Schirrmeister らの報告では無症候の肺癌患者に骨シンチグラフィを施行しなかった場合,14~22%の患者が骨転移を見逃されるとされ42),FDG-PET/CT が施行し得ない場合には骨シンチグラフィを施行するように勧められる。しかし,外傷や変形性関節症などでは偽陽性となり得るため注意が必要である。

    以上より,エビデンスの強さはA,また総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

  2. 投票者の所属委員会:診断小委員会
  3. b. 遠隔転移の検索にFDG-PET/CT は有用であるが,感染性疾患,肉芽腫性疾患,副腎腺腫などで偽陽性となることが指摘されており43)44),注意が必要である。

    特に副腎は肺癌の転移先として最も多い臓器の1 つであるが45),副腎腺腫でもFDG 集積がみられるため鑑別は重要である。CT で一側性の副腎腫大がみられた場合に副腎転移の可能性が高いとする報告もあるが28),有意でないとの報告もあり46),それだけで良悪性の判断はできず,MRI の脂肪抑制画像やダイナミックMRI などの検査を組み合わせたり,経皮針生検などが有用であることが指摘されている47)~49)。このように単発の遠隔転移が疑われた場合は,可能なかぎり他の画像診断や病理学的診断で転移であることを確認することが勧められる。

    以上より,エビデンスの強さはB,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

  4. 投票者の所属委員会:診断小委員会

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分子診断

CQ22
治療方針を決めるための,分子診断の項目は何か?

エビデンスの強さA
  1. a. 進行・再発非扁平上皮非小細胞肺癌の場合は,EGFR 遺伝子変異検査,ALK 融合遺伝子検査,ROS1 融合遺伝子検査,BRAF 遺伝子変異検査,PD-L1 免疫組織化学染色検査(IHC)を行い,進行・再発扁平上皮肺癌の場合は,PD-L1 IHC を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

エビデンスの強さB
  1. b. EGFR-TKI に治療抵抗性(耐性)となった進行・再発非扁平上皮非小細胞肺癌の場合は,EGFR 遺伝子変異検査を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

解説

  1. a. EGFR 遺伝子変異,ALK 融合遺伝子を有する症例のみを対象とした第Ⅲ相試験において,いずれもEGFR-TKI 単剤もしくはALK 阻害剤単剤が細胞障害性抗癌剤と比較してPFS の有意な延長をもたらすことが報告された1)2)。ALK 融合遺伝子陽性症例やBRAF 遺伝子変異症例では,患者数が少ないことからそれらのキナーゼ阻害剤と細胞障害性抗癌剤との第Ⅲ相試験は実施されていないが,第Ⅱ相試験でキナーゼ阻害剤の有効性が示されている3)4)。したがって,EGFR 遺伝子変異検査,ALK 融合遺伝子検査,ROS1 融合遺伝子検査,BRAF 遺伝子変異検査は,それぞれのキナーゼ阻害剤の適応を決定するために行うよう勧められる。

    PD-L1 IHC にて腫瘍細胞の50%以上が陽性と判定された非小細胞肺癌患者を対象とした第Ⅲ相試験において,ペムブロリズマブ単剤が細胞障害性抗癌剤と比較してPFS,OS の有意な延長を示した5)。また,PD-L1 IHC にて腫瘍細胞の1%以上が陽性と判定された既治療非小細胞肺癌患者を対象とした第Ⅲ相試験にて,ペムブロリズマブ単剤がドセタキセル単剤と比較してPFS,OS の有意な延長を示した6)。したがって,PD-L1 IHC はペムブロリズマブによる治療の適否を決定するために行うよう勧められる。

    EGFR 遺伝子検査やALK 融合遺伝子検査は,扁平上皮癌をはじめ腺癌成分をまったく含まない症例における陽性頻度は極めて低い7)8)。したがって,腺癌成分をまったく含まない症例におけるEGFR 遺伝子検査は有用でない可能性が高く,腺癌もしくは腺癌組織をわずかでも有する組織型において行うよう勧められる。しかし,生検試料や細胞診試料などの微量なサンプルにおいては,全体像を把握することは困難であり腺癌成分の完全な除外を行うことはできないため,腺癌以外の組織型と診断された症例においても,臨床背景(若年,非喫煙者など)により検査を行うことを考慮してもよい。

    以上より,エビデンスの強さはA,また総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

  2. 投票者の所属委員会:診断小委員会
  3. b. 第一・二世代のEGFR-TKI による治療の後にT790M 変異陽性となった患者を対象とした第Ⅲ相試験において,第Ⅲ世代EGFR-TKI であるオシメルチニブが細胞障害性抗癌剤と比較してPFS の有意な延長をもたらすことが報告された9)。したがって,EGFR 遺伝子変異検査は第一・二世代のEGFR-TKI に治療抵抗性(耐性)となった患者に対するオシメルチニブ治療の適応を決定するために行うよう勧められる。

    以上より,エビデンスの強さはB,また総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

  4. 投票者の所属委員会:診断小委員会

CQ23
非小細胞肺癌の治療方針決定のために行う分子診断は,検査項目に優先順位をつけるか?

エビデンスの強さD
検査項目に優先順位をつけず,同時に行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,合意率:68%〕

解説

EGFR 遺伝子検査,ALK 融合遺伝子検査,ROS1 融合遺伝子検査,BRAF 遺伝子検査,PD-L1 IHC は,いずれもキナーゼ阻害剤や免疫チェックポイント阻害剤選択ために必要な検査である1)~5)

EGFR 遺伝子変異は肺腺癌の約半数に存在するものの,ALK 融合遺伝子,ROS1 融合遺伝子,BRAF 遺伝子変異は,それぞれ非小細胞肺癌の2~5%,2%,1~3%と希少頻度である。またそれぞれのドライバー変異は相互排他的に存在している。しかしながら,治療開始までの時間を短縮するために,初回診断時にこれらのドライバー遺伝子検査とPD-L1 IHC を,同時に測定することが望まれる。

現時点で優先順位をつけるかどうかについて示されたデータはなく,エビデンスの強さはD,また総合的評価では,優先順位をつけないよう弱く推奨(2 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:診断小委員会

引用文献

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Ⅱ.非小細胞肺癌(NSCLC)

外科治療

総論
肺癌に対する外科治療

解説

臨床病期Ⅰ-Ⅱ期非小細胞肺癌に対する標準治療は外科切除である。肺癌に対する外科治療の意義はランダム化比較試験で確認されたものではないが,過去の膨大な予後および合併症の情報から確認されるものである(CQ2)。術前には呼吸機能検査および循環器に関する機能評価は必須であり,手術に対する安全性を評価する(CQ1)。また1995 年に報告された肺癌に対する外科治療における標準術式を問う臨床試験の結果から肺葉切除と肺門・縦隔のリンパ節郭清が標準とされた(CQ3)。一方最近では胸部CT による術前の癌に関する浸潤性の評価が可能となり,肺葉以下の切除で予後を確保できるとする報告も相次いでいる。しかし,いずれも後ろ向きまたは小規模の試験の結果であり,最終的には多施設共同前向き試験として行われた肺葉切除と縮小切除のランダム化比較試験の結果を待たねばならない。したがって現時点では肺葉切除可能な患者に縮小切除を行うことは弱く推奨するにとどめる(CQ4)。肺葉以上の切除が不可能な患者に対する縮小切除に関しては,昨今の放射線治療の進歩があるものの,比較試験に指示されたものではないが,依然として有効性が高いと考えられ,弱く推奨する(CQ5)。

臨床病期Ⅲ期非小細胞肺癌の治療方針は,呼吸器外科医,内科医,放射線治療医を含めた集学的治療グループで検討すべきであり,これを推奨する(CQ6)。臨床病期ⅢA の治療方針は組織学的に縦隔リンパ節転移を確認することを推奨する(CQ7)。

肺癌の外科治療におけるリンパ節郭清の意義は,系統的リンパ節郭清と系統的リンパ節サンプリングをランダムに比較した試験の結果から予後の改善にはつながらないものの,正確な病期診断に資すると解釈されている。一方で致命的合併症は稀である。よって行うことを推奨する(CQ9)。T3 肺癌に対する胸壁または心膜合併切除の必要性に関しては行うことを推奨する(CQ1011)。T4N0-1 肺癌に対する外科治療は,T4 臓器によりその意義は異なるものがあるが,弱く推奨する(CQ8)。気管支・肺動脈形成術は肺全摘術と比較して,局所制御,術後合併症発生割合,術後死亡割合,そして予後の観点から良好であり,肺全摘術を避けるために行うことを推奨する(CQ12)。同一肺葉内結節で肺転移または多発肺癌を疑う場合は臨床病期N0 であれば予後の観点から手術を行うことを推奨する(CQ13)。他肺葉内結節で,多発原発性肺癌を疑う患者に対して手術を行うことを提案する(CQ14)。他肺葉内結節で,肺内転移を疑う患者に対して手術を行わないことを提案する(CQ15)。異時性多発癌に対しては,耐術能があれば手術を行うことを推奨する(CQ16)。臨床病期Ⅰ期非小細胞肺癌に対して胸腔鏡補助下肺葉切除を行うことは大規模な臨床試験に基づくエビデンスは十分ではないものの,日常臨床に十二分に普及しているためにこれを提案する(CQ17)。なお,ロボット手術に関してはエビデンス,実績ともに不十分であるため評価不能とした(CQ18)。術後経過観察を外科切除後に行うことの意義に関しては十分なエビデンスがあるとは言い難いが,日常臨床に浸透しており行うことを推奨する(CQ19)。術後の患者は禁煙するべきである(CQ20)。低悪性度肺腫瘍,つまりカルチノイド,粘表皮癌,腺様嚢胞癌などに対する外科切除は非小細胞肺癌に準じた外科治療を行うよう推奨する(CQ21)。

1-1
手術適応

1-1-1.手術適応(術前呼吸機能・循環機能評価)

CQ1
手術適応決定には,呼吸機能評価(spirometry)や循環機能評価(安静時心電図)をはじめ,血液・生化学所見や年齢などを総合的に評価・検討することが必要か?

エビデンスの強さC
術前呼吸機能・循環機能をはじめ,総合的に評価・検討を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

解説

呼吸機能検査のspirometry は,拘束性障害や閉塞性障害を評価する方法として確立されている。術前肺機能評価と肺切除後のmortality,morbidity の関連については,1986 年の海外からの報告があり1),その他にも術前肺機能評価との関連は検討されているが2),単一の普遍的な指標はない。術後呼吸機能の評価として,術前呼吸機能評価(spirometry)と肺血流シンチグラフィや肺区域数を用いての予測術後肺機能は,術後実測値と良い相関を示したとの報告があり,術後予測1 秒量(predicted postoperative FEV1.0;ppoFEV1.0)≧800 mL などの指標が参考値として用いられている3)4)。さらに,ppo%FEV1.0 およびppo%DLco と術後の長期予後の強い相関を示した報告もある5)。リスク評価としては,①pre%FEV1.0,pre%DLco,②ppo%FEV1.0,ppo%DLco,③運動負荷試験を指標にアルゴリズムを示した報告がある6)。術前の呼吸訓練は呼吸機能を有意に改善させ,肺癌手術後の在院日数,合併症を有意に減少させる7)8)

術前検査としての循環器機能検査,特に安静時心電図については,基本的な機能評価として一般的に行われており,症例に応じて種々の負荷試験や超音波検査(心,血管など)などが行われている。これを推奨する根拠となる臨床試験はないものの,肺癌合同登録委員会の2004 年手術例の調査では,併存疾患として負荷心電図陽性の虚血性心疾患を2.8%に認め,術後合併症として不整脈を3.3%に認めている9)

血液・生化学所見や年齢などの総合的評価は全身状態の把握のために大切であり,明確な臨床試験はないが,手術適応の決定に必須であることは,議論の余地がない。呼吸機能検査と循環機能評価(安静時心電図)をはじめ,血液・生化学所見や年齢などを総合的に評価・検討することは,手術適応の決定において不可欠である。

以上より,エビデンスの強さはC,また総合的評価では術前呼吸機能・循環機能をはじめ総合的に評価・検討は行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:外科療法小委員会

1-1-2.手術適応(臨床病期Ⅰ-Ⅱ期)

CQ2
臨床病期Ⅰ-Ⅱ期非小細胞肺癌で標準手術可能な患者には,外科切除が勧められるか?

エビデンスの強さC
臨床病期Ⅰ-Ⅱ期非小細胞肺癌で外科切除可能な患者には,標準手術を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

解説

臨床病期ⅠまたはⅡ期肺癌に対して外科治療を放射線治療,または化学療法とランダム化比較した臨床試験は報告されていない。外科治療が最も肺癌の治癒をもたらす治療であると考えられているのは,これまでの多くの後方視的研究による1)~3)。肺癌外科切除11,663 例の検討によれば,全体の5 年生存割合は69.6%であり,臨床病期ⅠA,ⅠB,ⅡA,ⅡB 期ではそれぞれ82.0%,66.1%,54.5%,46.1%であった3)

以上より,臨床病期Ⅰ-Ⅱ期非小細胞肺癌で肺葉切除可能な患者に対する外科切除は勧められる。エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:外科療法小委員会

CQ3
臨床病期Ⅰ-Ⅱ期非小細胞肺癌で外科切除可能な患者に対する術式は,肺葉以上の切除を行うべきか?

エビデンスの強さB
臨床病期Ⅰ-Ⅱ期非小細胞肺癌で外科切除可能な患者に対する術式は,肺葉以上の切除を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

解説

米国Lung Cancer Study Group によって臨床病期Ⅰ期肺癌に対する肺葉切除と縮小切除を比較したランダム化比較試験が1995 年に報告された4)。この研究によると肺葉切除に比べて縮小切除は局所再発が3 倍となり,予後不良の傾向が認められた。人工呼吸器を要する呼吸不全などの重症合併症は肺葉切除に多かったものの,結論としては臨床病期Ⅰ期肺癌に対する至適術式は肺葉切除であるとされた。肺葉切除と縮小切除の間で比較された手術死亡率に関する3,270 例の外科切除例の検討では,両者に差は認められなかった5)

以上より,臨床病期Ⅰ-Ⅱ期非小細胞肺癌で外科切除可能な患者に対する術式は,肺葉以上の切除を行うことを推奨する。エビデンスの強さはB,また総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:外科療法小委員会

CQ4
臨床病期ⅠA 期,最大腫瘍径2 cm 以下の非小細胞肺癌に対して,縮小手術(区域切除または楔状切除)を行うよう勧められるか?

エビデンスの強さC
臨床病期ⅠA 期,最大腫瘍径2 cm 以下の非小細胞肺癌に対する縮小手術(区域切除または楔状切除)は行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,合意率:100%〕

解説

臨床病期Ⅰ期肺癌に対する標準術式は肺葉切除であるが,これまでに2 cm 以下の腫瘍径である肺癌に対して縮小切除を行った研究が報告されている。1 つのメタアナリシスでは肺葉切除に対して縮小切除後の予後は劣らないとしているが,それぞれの報告の対象にばらつきがあり,結果に対する解釈に注意するよう結論付けられている6)。2 cm 以下の肺癌に対する区域切除55 例の報告では,5 年生存割合81.8%,局所再発率4%と報告された7)8)。無作為ではないものの大規模な研究として567 例の2 cm 以下の肺癌に対して肺葉切除と縮小切除(主に区域切除)を比較したものがある9)。305 例の縮小切除群のうち術中にリンパ節転移が認められるか,非完全切除に終わるかなどによって一部の症例は肺葉切除に転換され,その結果230 例が縮小切除群に終わった。肺葉切除群と縮小切除群の局所再発と5 年生存割合はそれぞれ6.9%,4.9%,そして89.6%,89.1%とほぼ同等の成績であった。また胸部CT 上,広範囲にすりガラス濃度を呈する肺癌は病理学的に非浸潤癌であることが報告されており10),この対象に縮小切除を適応する研究も報告されている11)12)。これらすりガラス濃度を呈する肺癌は局所浸潤性に乏しく,縮小切除の中でも広範囲楔状切除でも極めて良好な予後が報告されている。一方で手術後5 年以降に局所再発をきたした例も報告されており,現時点ではこれらの対象に縮小切除を適応するに十分な根拠はない13)。米国の807,748 例の肺癌切除例の検討で,1988~97 年,1998~2004 年,そして2005~8 年の3 期間における検討では予後の観点から肺葉切除の縮小切除に対する優位性が薄れているとの報告もある14)

以上より,臨床病期ⅠA 期,最大腫瘍径2 cm 以下の非小細胞肺癌に対する縮小手術(区域切除または楔状切除)は行うことを弱く推奨する。エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:外科療法小委員会

CQ5
臨床病期Ⅰ期非小細胞肺癌で外科治療が可能であるが,肺葉切除以上の切除が不可能な患者に,縮小手術(区域切除または楔状切除)を行ってもよいか?

エビデンスの強さC
臨床病期Ⅰ期非小細胞肺癌で外科治療が可能であるが,肺葉切除以上の切除が不可能な患者に,縮小手術(区域切除または楔状切除)を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,合意率:90%〕

解説

臨床病期Ⅰ期の肺癌で術後1 秒率40%以下である低肺機能患者に対して縮小切除を行った報告によれば,32 例と症例は少ないものの,肺葉切除とほぼ同等の局所再発率と予後であった15)。95 例の肺葉切除不能例に対する非外科治療に関する研究では,縮小切除または放射線治療を行うことで,3 年生存割合65%と報告された16)

以上より,臨床病期Ⅰ期非小細胞肺癌で外科治療が可能であるが,肺葉切除以上の切除が不可能な患者に,縮小手術(区域切除または楔状切除)を行うことを弱く推奨する。エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:外科療法小委員会

1-1-3.手術適応(臨床病期Ⅲ期)

CQ6
臨床病期ⅢA 期非小細胞肺癌の治療方針は,呼吸器外科医,内科医,放射線治療医を含めた集学的治療グループで検討すべきか?

エビデンスの強さC
臨床病期ⅢA 期非小細胞肺癌の治療方針は,呼吸器外科医を含めた集学的治療グループでの検討を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

解説

臨床病期ⅢA は様々な集団に予後の観点から分けることができる母集団であり,その治療方針決定のためには呼吸器外科医を含む集学的治療チームによる治療方針の決定が勧められる1)

以上より,臨床病期ⅢA 期非小細胞肺癌の治療方針は,呼吸器外科医を含めた集学的治療グループでの検討を行うよう推奨する。エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:外科療法小委員会

CQ7
臨床病期ⅢA 期N2 非小細胞肺癌のN2 診断は,組織学的に確認すべきか?

エビデンスの強さC
臨床病期ⅢA 期N2 非小細胞肺癌の診断は,組織学的に確認を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

解説

大規模な後方視的研究で11,663 例の肺癌切除例に関する検討が行われた2)3)。このうち800 例が臨床病期ⅢA 期N2 と診断されたが,病理学的にN2 と診断された症例は436 例(54.5%)にとどまった。病理学的にN0,N1 と診断された症例はそれぞれ271 例(34%),75 例(9%)であった。つまりおよそ44%の症例では臨床病期N2 というのが過大診断であったことになる。cN0-1 であれば遠隔転移がない可能性が高く,少なからず外科切除の恩恵を被る可能性の高い集団である。したがってN2 の組織学的診断をつけることが勧められる。

以上より,臨床病期ⅢA 期N2 非小細胞肺癌の診断は,組織学的に確認を行うよう推奨する。エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:外科療法小委員会

CQ8
臨床病期ⅢA 期T4N0-1 非小細胞肺癌に対して,外科切除を行うよう勧められるか?

エビデンスの強さD
臨床病期ⅢA 期T4N0-1 非小細胞肺癌に対して,外科切除を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,合意率:100%〕

解説

これまで臨床病期ⅢA 期T4N0-1 非小細胞肺癌の切除意義に関する報告については,ランダム化比較試験はなく,症例集積や少数例でのケースコントロール研究しか存在しない。その中で,下記に示すとおり,症例をよく選択した手術結果においては,PS 良好で,N0-1 のケースにおいては,予後と手術の安全性の観点からは手術は選択肢として許容される範疇にあると考えられる。以下に,具体的な報告を示す。

T4N0-1M0 症例の中で,各浸潤臓器別に切除成績をみると,大動脈合併切除では,致命的合併症発生率は0~12%であり,5 年生存割合は37~48%と報告されている4)~6)。なかでも,特にN0-1 では長期予後が期待でき,良い適応とされている。また,近年では大動脈ステントグラフトを術前に挿入し,人工心肺を使用せずに安全に切除する方法も報告されている7)

左房合併切除は,単施設から30 例以上の報告もあり8)~10),T4 肺癌の中では比較的多く行われている術式である。致命的合併症発生率は0~10%,5 年生存割合が16~46%と比較的良好な治療成績が報告されている4)9)~12)。左房においても同様にN0 は予後良好因子である9)10)12)

上大静脈合併切除においては単施設から40 例以上の比較的まとまった症例数での報告が複数ある9)13)14)。致命的合併症発生率は4~10%,5 年生存割合は24~31%であり,やはりN2 は予後不良因子である9)13)~15)。分岐部合併切除の致死的合併症は約3~20%であり,最近の64 例の報告では,5 年生存割合は病理病期により,pN0 で70%,pN1 で35%,pN2 で9%と報告されている16)~20)

横隔膜合併切除では,致死的合併症発生率は1.6~4.4%22)23),5 年生存割合は19~42.6%21)22)24)と報告されている。JCOG 肺癌外科グループの報告では,完全切除例の5 年生存割合は22.6%であったのに対し,非完全切除例では0%,病理病期ではpN0 の5 年生存割合は28%であったのに対し,pN1 で20%,pN2 で0%であった22)

最近の本邦における肺癌登録合同委員会報告では,浸潤するT4 臓器により5 年生存割合に有意差はなく,T4N0 で70 歳未満であれば,5 年生存割合は50%を超えると報告されている25)

以上より,臨床病期ⅢA 期T4N0-1 非小細胞肺癌に対しては外科治療を行うよう提案する。エビデンスの強さはD,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:外科療法小委員会/白票2

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1-2
リンパ節郭清

CQ9
切除可能な非小細胞肺癌に対しては,肺門縦隔リンパ節郭清を行い,病理学的評価を行うべきか?

エビデンスの強さB
肺門縦隔リンパ節郭清を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:80%〕

解説

まずはじめに,リンパ節の評価には,リンパ節を周囲脂肪組織とともに一塊として摘出する系統的リンパ節郭清,原発部位により郭清範囲を省略する選択的リンパ節郭清,任意のリンパ節のみ摘出するサンプリングなどが挙げられるが,本邦での明確な定義はない。

これまでに行われた最大規模のランダム化比較試験であるAmerican College of Surgery Oncology Group(ACOSOG)Z0030 試験1)では,T1-2N0-1(肺門部リンパ節を除く)症例を対象に系統的リンパ節郭清群とサンプリング群の治療成績が比較検討され,系統的リンパ節郭清群と系統的サンプリング群の生存期間中央値,ならびに無再発5 年生存割合はそれぞれ,8.5 年と8.1 年,68%と69%で,系統的リンパ節郭清による有意な治療成績の改善は認められなかった2)。また系統的リンパ節郭清の手術時間はサンプリングに比べ,15 分程度長いに過ぎず,術後の合併症発生率や手術関連死亡率にも差がなかった3)

その他にも肺門縦隔リンパ節郭清が予後に与える影響について検証した,リンパ節郭清とサンプリングとのランダム化比較試験はこれまでに複数の報告があり,予後を改善するという結果4)と予後に影響を与えないとする結果2)5)の双方が存在する。また,これらのランダム化試験を含むメタアナリシス6)~9)も複数報告されているが,同様に結果の一貫性が認められない。

したがって,系統的郭清が予後に与える影響を検証する複数のランダム化比較試験とメタアナリシスはあるもの,結果の一貫性がないこと,また,各ランダム化試験における対象病期や対照・試験アームの手技が異なるなど,試験デザインが異なっており,種々のバイアスが含まれるため,リンパ節郭清の予後に与える影響については科学的根拠が明確であるとはいえない。一方,ACOSOG のランダム化比較試験にてサンプリングではN2 の4%が見落とされており6),正確な病理病期の決定のためにはリンパ節郭清を行うように勧められる。

以上より,切除可能な非小細胞肺癌に対して,肺門縦隔リンパ節郭清を行うことは,少なくとも正確な病理診断のためには推奨されると考えられる。エビデンスの強さはB,また総合的評価では行うよう推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:外科療法小委員会,薬物療法小委員会,放射線治療小委員会

引用文献

1)
Darling GE, Allen MS, Decker PA, et al. Randomized trial of mediastinal lymph node sampling versus complete lymphadenectomy during pulmonary resection in the patient with N0 or N1(less than hilar)non-small cell carcinoma: results of the American College of Surgery Oncology Group Z0030 Trial. J Thorac Cardiovasc Surg. 2011; 141(3): 662-70.
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5)
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1-3
T3 臓器合併切除(肺尖部胸壁浸潤癌以外)

CQ10
臨床病期T3N0-1M0 の胸壁浸潤非小細胞肺癌には,胸壁合併切除を行うよう勧められるか?

エビデンスの強さC
臨床病期T3N0-1M0 の胸壁浸潤非小細胞肺癌には,胸壁合併切除を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

解説

胸壁合併切除術の手術死亡率は0~7.8%で1)~6),合併症発生率は19~44%と報告されている1)~3)。胸壁合併切除術を施行した肺癌の予後因子として,完全切除,リンパ節転移,胸壁浸潤の程度が挙げられている。完全切除症例は不完全切除症例より予後が良好である3)~6)。胸壁浸潤肺癌334 例の検討で,完全切除例(n=175)の5 年生存率が32%であったのに対し,非完全切除例(n=94)では4%と報告されている4)。完全切除可能であれば壁側胸膜切除と骨性胸壁切除の差はないとする報告が多い3)4)7)8)。リンパ節転移に関しては,pN0 症例の5 年生存率は25~67%であるのに対し,pN1 では症例数が少ないものの20~100%,pN2 症例では6.2~20.5%と報告されている1)~8)。本邦における肺癌登録合同委員報告では胸壁浸潤407 例の5 年生存率はpN0 49.1%(n=299),pN1 36.5%(n=43),pN2 20.5%(n=65)で,pN2 がpN0 に比較して有意に予後不良であった8)。胸壁浸潤の程度に関しては,壁側胸膜のみの浸潤例が胸壁軟部組織や骨性胸郭浸潤例より良好であるという報告もあるが1)5),pN0 症例では胸壁浸潤の程度は予後に影響しないと報告されている8)。なお,上記文献はいずれも術後病理病期で記載されており,臨床病期で検討されている論文はない。本症を対象とした手術以外の治療法との直接の比較試験はないが,他の治療法との差異は明らかであるため臨床病期T3N0-1M0 症例の胸壁合併切除術は推奨度1C とした。ただし,縦隔リンパ節転移を有すると考えられる症例,特に術前病理検査にてN2 と判明した症例については,その予後不良が予測されることより,手術単独療法は施行すべきではない。

最近,本邦でのcN0 症例に対する導入化学放射線療法後の胸壁合併切除の前向き試験の報告では,3 年と5 年の全生存率はそれぞれ77%,63%であり,12 例の病理学的完全奏功例の3 年全生存率91.7%と良好であった。一方,pN0 症例に対する補助化学療法に関してはNCDB による824 例の後ろ向き観察研究で,補助化学療法はHR 0.74(95% CI:0.6-0.9)で生存を改善したとの報告がある。

以上より,臨床病期T3N0-1M0 の胸壁浸潤非小細胞肺癌に対しては,胸壁合併切除を行うよう推奨する。エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:外科療法小委員会

CQ11
心膜に浸潤した臨床病期T3N0-1M0 の非小細胞肺癌には,合併切除を行うよう勧められるか?

エビデンスの強さC
心膜に浸潤した臨床病期T3N0-1M0 非小細胞肺癌には合併切除を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

解説

心膜合併切除例の5 年生存率は15.1~54.2%であり8)9)10),pT3 に限れば比較的良好な報告もある。しかし91 例の心膜浸潤症例の後方視的研究では,全体の5 年生存率15.1%と予後不良であった10)。うち32 例が心膜単独浸潤(T3)で59 例は肺静脈,心房浸潤(T4)を伴っていたが,T3,T4 間に予後の差を認めなかった。N0 は12 例(13.2%)N1 は31 例(34.1%),N2 は48 例(52.8%)と,心膜浸潤症例ではリンパ節転移の頻度が極めて高く,肺全摘の頻度も高かった。なお,上記文献はいずれも術後病理病期で記載されており,臨床病期で検討されている論文はない。臨床病期T3N0-1M0 心膜浸潤肺癌切除例の予後は,最近の報告で改善はみられるものの依然不良であり,推奨度は1C とした。ただし,縦隔リンパ節転移を有すると考えられる症例,特に術前病理検査にてN2 と判明した症例については,その予後不良が予測されることより,手術単独療法は施行すべきではない。

以上より,心膜に浸潤した臨床病期T3N0-1M0 非小細胞肺癌に対しては合併切除を行うことを推奨する。エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:外科療法小委員会/白票3

引用文献

1)
Facciolo F, Cardillo G, Lopergolo M, et al. Chest wall invasion in non-small cell lung carcinoma: a rationale for en bloc resection. J Thorac Cardiovasc Surg. 2001; 121(4): 649-56.
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Kawaguchi K, Miyaoka E, Asamura H, et al. Modern surgical results of lung cancer involving neighboring structures: a retrospective analysis of 531 pT3 cases in a Japanese Lung Cancer Registry Study. J Thorac Cardiovasc Surg. 2012; 144(2): 431-7.
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Kawaguchi K, Yokoi K, Niwa H, et al. A prospective, multi-institutional phaseⅡ study of induction chemoradiotherapy followed by surgery in patients with non-small cell lung cancer involving the chest wall(CJLSG0801). Lung Cancer. 2017; 104: 79-84.
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1-4
気管支・肺動脈形成

CQ12
肺全摘を避けて,気管支・肺動脈形成を行うべきか?

エビデンスの強さC
肺全摘を避けて,気管支・肺動脈形成を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

解説

ランダム化比較試験はないが,腫瘍が中枢進展しているか,肺門リンパ節転移のために肺全摘または気管支・肺動脈形成術が可能な場合,気管支・肺動脈形成術後の局所コントロールは肺全摘と同等であり1),かつ予後はⅠ期・Ⅱ期1)2)および,pN01)3) N1 症例について肺全摘術と同等4)かそれ以上1)2)5)と報告されている。気管支形成の手術死亡率は0.9~5.9%1)2)4)6)~8)と報告されている。

Wedge 切除の局所再発率は8.9%,BPF は1.6%,術死は3.7%で管状切除と変わらないとの報告がある9)

肺動脈形成は単独および気管支形成同時であっても,安全性・有効性が報告されている3)5)6)7)10)。最近の報告3)5)11)では,気管支・肺動脈形成術の手術死亡率,術後合併症率は低下している。

肺全摘を避けるために行う複雑気管支形成術の有効性も報告されている12)13)

Induction 後の気管支形成の安全性・有効性が報告されている14)~16)。術前化学療法群と化学放射線療法群と通常の気管支形成群との比較で,術死亡,術後合併症,また吻合部合併症に差がない14)~16)という報告や,術前放射線治療が術死,吻合合併症に影響したという報告もある7)。また予後に関しては,Induction 群で全摘症例やInduction のない症例より良好という報告がある16)17)

以上より,肺全摘を避けて,気管支・肺動脈形成を行うよう推奨する。エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:外科療法小委員会/白票2

引用文献

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Deslauriers J, Grégoire J, Jacques LF, et al. Sleeve lobectomy versus pneumonectomy for lung cancer: a comparative analysis of survival and sites or recurrences. Ann Thorac Surg. 2004; 77(4): 1152-6.
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1-5
同一肺葉内結節

CQ13
同一肺葉内結節で転移(PM1)もしくは多発肺癌を疑うcN0 症例において,手術を行うべきか?

エビデンスの強さD
同一肺葉内結節で転移(PM1)もしくは多発肺癌を疑うcN0 症例において,手術を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

解説

転移を有する非小細胞肺癌に対する手術の有無についての比較臨床試験は行われていない。

IASLC に登録された肺癌症例(1999~2010 年)のうち,同一肺葉内転移(PM1),M0 の臨床病期172 例,病理病期960 例について検討されている1)。組織別での差はなく,多くの症例は,手術時に発見されることが多かった。5 年生存率は,c-N0:59%(110 例),c-N-any:47%(172 例),p-N0:59%(468 例),p-N-any:42%(960 例)であった。ただし,c-N0,M0 症例のうち,切除例68%に対し,非切除例は症例数が少ないが0%であった。またpN0M0 切除例のうち,R0:59%に対し,R-any:42%であり,P-N0M0 R0 であれば,良好な予後が得られている。これは,肺癌登録合同委員会で登録された1994 年の肺癌手術症例の予後と同等かそれ以上であった。この報告でリンパ節転移の有無別に解析すると,N0,N1,N2 症例での5 年生存率は,45.8%,25.3%,11.1%であり,N0 群とN1 群(P=0.0176),N1 群とN2 群(P=0.0114)に有意差が認められた2)。同様に,100 例以上の解析がなされた報告では,PM1 の術後5 年生存率は30~58%と報告され2)~8),特にリンパ節転移陰性症例では概ね50%以上であることが報告され6)~8),比較的予後が期待できる集団と考えられる。

術前検査において同一肺葉内転移が疑われる症例において,手術の結果その結節が転移でない場合も認められ9),正確な診断のためにも手術が勧められる。また,多発癌との鑑別が困難なこともあり,リンパ節転移のない症例においては,手術を行うよう勧められる。なお,リンパ節転移を有すると考えられる症例,特に術前検査にて組織学的N2 と判明した症例については,その予後不良が予測されることより,手術単独療法は施行すべきではない。

以上より,同一肺葉内結節で転移(PM1)もしくは多発肺癌を疑うcN0 症例においては,手術を行うよう推奨する。エビデンスの強さはD,また総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:外科療法小委員会

引用文献

1)
Detterbeck FC, Bolejack V, Arenberg DA, et al. The IASLC Lung Cancer Staging Project: Background Data and Proposals for the Classification of Lung Cancer with Separate Tumor Nodules in the Forthcoming Eighth Edition of the TNM Classification for Lung Cancer. J Thorac Oncol. 2016; 11(5): 681-92.
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Detterbeck FC, Franklin WA, Nicholson AG, et al. The IASLC Lung Cancer Staging Project: Background Data and Proposed Criteria to Distinguish Separate Primary Lung Cancers from Metastatic Foci in Patients with Two Lung Tumors in the Forthcoming Eighth Edition of the TNM Classification for Lung Cancer. J Thorac Oncol. 2016; 11(5): 651-65.

1-6
他肺葉内結節

CQ14
他肺葉内結節で,多発原発性肺癌を疑う症例において,手術を行うべきか?

エビデンスの強さD
他肺葉内結節で,多発原発性肺癌を疑う症例においては,手術を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,合意率:80%〕

解説

多発原発性肺癌と肺内転移の鑑別診断基準には,多くの論文においてMartini and Melamed の基準が用いられている1)。多発原発性肺癌を疑う症例においては,複数の後方視的研究で,5 年生存率が23.4~69.6%と外科治療が良好な成績を得たとの報告もある2)~5)。また,縦隔リンパ節転移がない症例については,5 年生存率が29~69.6%と比較的良好な成績の報告もある3)6)7)。しかしながら,術前診断において特に同じ組織型の場合には,転移との鑑別は必ずしも容易ではない。近年の遺伝子診断技術の向上により,臨床的鑑別診断に加え8)9),分子生物学的診断によるclonality の評価がなされつつあるが,確立するには至っていない10)~14)

以上より,他肺葉内結節で,多発原発性肺癌を疑う症例においては,手術を行うよう提案する。エビデンスの強さはD,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:外科療法小委員会,薬物療法小委員会,放射線治療小委員会

CQ15
他肺葉内結節で,肺内転移(PM2,3)を疑う症例において,手術を行うべきか?

エビデンスの強さD
肺内転移(PM2,3)を疑う症例においては,手術を行わないよう提案する。

〔推奨の強さ:2,合意率:60%〕

解説

肺癌登録合同委員会で登録された1994 年の非小細胞肺癌6,525 例(ver. 6)のうち,他肺葉転移(PM2)128 例の5 年生存率は22.5%で,PM2 を除いたM1 症例の5 年生存率は20.5%であり,PM2 症例と有意差は認められなかった(P=0.434)15)。また,その他の報告においても,他肺葉の肺内転移(PM2,3)の症例に対する切除成績は,PM1 に比較し予後不良である報告が多く16)~19),手術を勧める科学的根拠は明確でない。

以上より,肺内転移(PM2,3)を疑う症例においては,手術を行わないよう提案する。エビデンスの強さはD,また総合的評価では行わないよう弱く推奨(2 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:外科療法小委員会,薬物療法小委員会,放射線治療小委員会

引用文献

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Martini N, Melamed MR. Multiple primary lung cancers. J Thorac Cardiovasc Surg. 1975; 70(4): 606-12.
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Detterbeck FC, Marom EM, Arenberg DA, et al. The IASLC Lung Cancer Staging Project: Background Data and Proposals for the Application of TNM Staging Rules to Lung Cancer Presenting as Multiple Nodules with Ground Glass or Lepidic Features or a Pneumonic Type of Involvement in the Forthcoming Eighth Edition of the TNM Classification. J Thorac Oncol. 2016; 11(5): 666-80.
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Detterbeck FC, Franklin WA, Nicholson AG, et al. The IASLC Lung Cancer Staging Project: Background Data and Proposed Criteria to Distinguish Separate Primary Lung Cancers from Metastatic Foci in Patients with Two Lung Tumors in the Forthcoming Eighth Edition of the TNM Classification for Lung Cancer. J Thorac Oncol. 2016; 11(5): 651-65.
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19)
Detterbeck FC, Bolejack V, Arenberg DA, et al. The IASLC Lung Cancer Staging Project: Background Data and Proposals for the Classification of Lung Cancer with Separate Tumor Nodules in the Forthcoming Eighth Edition of the TNM Classification for Lung Cancer. J Thorac Oncol. 2016; 11(5): 681-92.

1-7
異時性多発癌

CQ16
異時性多発肺癌に対しては,耐術能があれば外科治療を行ってもよいか?

エビデンスの強さD
異時性多発肺癌に対しては,耐術能があれば外科治療を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:60%〕

解説

異時性多発肺癌に対する治療では,外科治療で良好な成績を得たとの報告が多い1)~8)。5 年生存率は一次癌から60.9~79%,二次癌から33.4~46%であり1)8),手術関連死は1.4~7.0%5)8)であった。肺切除法としては,肺機能が許せば肺葉切除が良好であったとの報告があり,5 年生存率は肺葉切除,縮小手術,肺全摘術において,それぞれ57.5,36,20%であった4)。一方,縮小手術でも同等の成績を示したとの報告がある1)3)7)。肺全摘術に関しては,予後不良因子であったとの報告4)5)と他の切除法と同等であったとの報告2)とがある。再発肺内転移との鑑別診断に関しては,同一組織型であっても遺伝子分析にて可能であったとの報告9)~12)もあり,今後さらに臨床応用されることが期待される。耐術能がない異時性多発肺癌患者に対しては,体幹部定位放射線治療(SBRT)により,重篤な有害事象を発症することなく,2 年生存率68.1%13),3 年生存率62%14)と良好な成績を得たとの報告もある。

以上より,異時性多発肺癌に対しては,耐術能があれば外科治療を行うよう推奨する。エビデンスの強さはD,また総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:外科療法小委員会,薬物療法小委員会,放射線治療小委員会

引用文献

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Battafarano RJ, Force SD, Meyers BF, et al. Benefits of resection for metachronous lung cancer. J Thorac Cardiovasc Surg. 2004; 127(3): 836-42.
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1-8
胸腔鏡補助下肺葉切除,ロボット支援下肺葉切除

CQ17
臨床病期Ⅰ期非小細胞肺癌に対して,胸腔鏡補助下肺葉切除を行ってもよいか?

エビデンスの強さB
胸腔鏡補助下肺葉切除を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,合意率:57%〕

解説

胸腔鏡補助下手術(video-assisted thoracic surgery;VATS)の定義には様々な解釈がある。本項ではアプローチ手技を問わず胸腔鏡を用い肺葉切除したものをVATS 肺葉切除術として取り扱った。臨床病期Ⅰ期非小細胞肺癌に対するVATS 肺葉切除術については,小規模ではあるが2 つのランダム化比較試験が報告されている。1 つは臨床病期Ⅰ期の非小細胞肺癌55 例についてランダムに割り付けを行い,標準開胸肺葉切除(n=30),またはVATS 肺葉切除(n=25)を比較したものであるが,手術時間,出血量,ドレーン留置期間,在院日数,術後疼痛に関しては両群間で有意差はなかった1)。他方は臨床病期ⅠA 期非小細胞肺癌100 例を標準開胸肺葉切除(n=52)とVATS 肺葉切除(n=48)に分けて比較したところ,郭清リンパ節個数,リンパ節転移頻度,再発率,5 年全生存率では両群間に差を認めなかったとの報告である2)。この2 つのランダム化比較試験と19 の非ランダム化試験のメタアナリシスの結果が報告され,VATS と開胸手術では手術時間,出血量,ドレーン留置期間,在院日数,肺瘻の遷延,不整脈,肺炎,手術死亡,局所再発の頻度に有意な差はなかった3)。しかしながら,VATS 群のほうが有意に遠隔転移が少なく5 年生存率も良好であったため,早期非小細胞肺癌患者に対してVATS による肺葉切除術は適切な手技であると結論付けた。また別のメタアナリシスではⅠ期非小細胞肺癌の手術例においてはVATS 群は開胸群と比較して5 年生存率でより長い予後,少ない合併症であることが判明し,VATS は早期肺癌に対する治療として効果的で安全なアプローチであると結論された4)。一方で,長期予後に対してVATS 手術は開胸手術と差がなかったというメタアナリシスの報告もある5)

低肺機能の患者の肺葉切除における術後急性期の安全性について検討したメタアナリシスによると,術後30 日死亡や術後合併症発症率は両群で同等であったが,VATS 群で有意に肺合併症が少なかった6)

サンプル例は66 例と少ないが,肺葉切除における系統的リンパ節郭清について開胸とVATS を比較したランダム化比較試験が報告されている7)。2008~11 年に単一施設で臨床Ⅰ期非小細胞肺癌の系統的リンパ節郭清を行い,郭清個数は差がなかったが,手術時間はVATS 187 分,開胸158 分と手術時間はVATS で有意に長かった。これにより縦隔郭清は開胸と同じくVATS でも十分行うことができ,視野はむしろVATS のほうが良好である。術後疼痛とQOL に関してVATS と開胸を比較したランダム化比較試験がLancet Oncology に報告されている8)。臨床病期Ⅰ期非小細胞肺癌における葉切除でVATS 群(102 例)は開胸群(99 例)と比較して術後疼痛が少なく,QOL も良いことが示された。

VATS 手術における術中の重篤な合併症に関して報告がある。ヨーロッパの6 つのセンターでの前方視的研究では3,076 例のVATS 肺切除症例を解析した9)。術死3 例,在院死43 例(1.4%)で,重篤な合併症は46 例(1.5%)認め,気管支血管を誤って切離,消化管損傷,中枢気道損傷,追加の手術を要するような合併症,生命に危険が及ぶ合併症などであった。在院死の23%は術中の重篤な合併症に関連していた。VATS から開胸へのconversion は5.5%(170 例)に認め,その理由としては腫瘍学的(22%),手技的(30%),合併症(49%)であった。血管損傷は2.9%(88 例)あり,そのうち70 例がconversion した。Washington 大学からの報告では2004~12 年の肺癌肺葉切除症例1,227 例のうち,VATS 完遂群517 例(42%),VATS から開胸した群(conversion)87 例(7%),開胸群623 例(51%)となり,3 群間で比較した10)。Conversion の原因は出血(25%),癒着/腫瘍(64%),リンパ節(9%)であった。また韓国からのVATS lobectomy 施行中の予期せぬconversion を要した症例の検討では,conversion の原因はリンパ節の固着(28%),血管損傷(20%),腫瘍の浸潤(11%)であった11)。Conversion を要した69 例とVATS 例を1:3 で割り付けし2 群間を比較,術後合併症や在院死亡に差はなかったが,呼吸器合併症はconversion 群で多く認めた。これらの報告からVATS 手術中に腫瘍学的または手技的に困難であれば開胸へのconversion は躊躇せず,速やかに行うべきである。

臨床病期Ⅰ期非小細胞肺癌に対するVATS 肺葉切除術について混乱を生じているのは,VATS アプローチの定義自体があいまいな点である。そのアプローチにはモニター視のみの完全鏡視下と,直視を併用するもの,いわゆるHybrid VATS がある12)。皮切長,皮切の数,肋間開大(開胸器併用)の有無など様々な方法が施設毎に採用され,完全鏡視下であっても手術の質向上のために直視下触診を用いるものもある。その手術成績などについては,その区別なく論じられている場合がほとんどである。さらにVATS が開胸手術に比較して,予後,侵襲性,安全性に関して,同等ないし優れていると肯定的な研究は多いものの,これらの報告の多くは単施設の後方視的な解析に基づくものであり,十分な症例数を有したランダム化比較試験はなく,確定的な結論は出ていない。VATS アプローチの定義が難しいため,今後も大規模なランダム化比較試験の実施は困難であると予想される。2009 年の日本胸部外科学会年次調査結果によれば,肺癌に対する23,520 例の全肺葉切除術の50%以上,12,008 例にVATS 肺葉切除術が施行されている13)。このように臨床病期Ⅰ期非小細胞肺癌に対するVATS 肺葉切除術は,実地医療の場ではランダム化比較試験を経ずに頻用されている。

以上より,臨床病期Ⅰ期非小細胞肺癌に対して胸腔鏡補助下肺葉切除を行うよう提案する。エビデンスの強さはB,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:外科療法小委員会/白票3

CQ18
臨床病期Ⅰ期非小細胞肺癌に対して,ロボット支援下肺葉切除を行ってもよいか?

臨床病期Ⅰ期非小細胞肺癌に対して,ロボット支援下肺葉切除を推奨するだけの根拠が明確ではない。

〔推奨度決定不能〕

解説

肺癌に対するロボット支援手術(robot-assisted thoracoscopic surgery;RATS)は2002 年の報告に始まり,欧米を中心に広がってきた。本邦では2011 年に最初の手術が報告された。胸腔鏡補助下手術(VATS)が本ガイドラインで推奨度2B となっている(CQ17 参照)中で,RATS は3 次元視野と精緻操作によりVATS の弱点を補う新技術として期待されている。しかしながら,RATS の有用性を示すための前向き研究は現在進行中で,いまだに明らかなエビデンスは得られていない。多くの後方視的な研究がなされる中で,VATS と比較した大規模試験のメタアナリシスをまとめると,根治性,安全性,長期予後には差がなく,操作性,ラーニングカーブではRATS に分がある14)~21)。しかしながら,利用できる器具が限られていることや手術時間が長いこと,コストがかかることがRATS のマイナス要素である14)~21)

手術手技としては,肺葉切除のみならず,小型肺癌に対する区域切除,肺門部肺癌に対する気管支形成などの複雑な手技への応用も報告されている22)。RATS のメリットを考えた場合には,その優れた操作性からリンパ節郭清への有用性が期待されているが,いまだ定まった見解はない。長期成績は症例数や観察期間がまだ十分とはいえないが,開胸,VATS,RATS において有意差のない予後が報告されている23)

一方で,安全性については,RATS では術中の医原性合併症の発生率が高いことも報告されている24)。したがって,RATS のピットフォールやトラブルシュートをよく熟知し,緊急時の対処法を平時から麻酔科医を含めてチームで話し合っておくことが大切と考えられる。

以上より,臨床病期Ⅰ期非小細胞肺癌に対してロボット支援下肺葉切除を推奨するだけの明らかな根拠は乏しい。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:外科療法小委員会

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1-9
術後経過観察

CQ19
外科切除後の非小細胞肺癌に対しては,定期的な経過観察を行うべきか?

エビデンスの強さC
外科切除後の非小細胞肺癌に対しては定期的な経過観察を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:90%〕

解説

肺癌術後経過観察は科学的根拠に則り,経済的影響を十分に考慮しながら行う必要がある。しかし臨床研究の結果に乏しく科学的根拠に基づいた観察法は示されていない。

肺癌術後の予後は経過観察法,すなわちintensive に経過を追うかどうかによっては改善されないとの報告がなされている1)2)。Virgo らの1995 年の論文は単一施設でintensive 群とnonintensive 群を後方視的に解析した研究であるが,intensive 群のほうがnonintensive 群に比べ0.53 年生存期間が延長していたものの有意差はなかった1)。一方でintensive に経過観察した場合,生存率が改善するとの報告3)やintensive な経過観察により他疾患の治療が容易になるとの報告もある2)。しかし無症状症例に積極的なスクリーニングを行うのは,費用対効果の面からも考える必要がある。早期の非小細胞肺癌に対する経過観察間隔に関してはESMO のガイドラインでは,2,3 年までの半年毎の受診(問診・診察)と12 カ月,24 カ月時点でのCT 撮影を推奨している4)

明確に推奨する根拠はないものの術後経過観察は日常診療としてなされ,患者のニーズが明確に存在する。また受診による術後合併症の発見,患者の状態の把握,精神的支援などの側面もある。さらに異時多発癌は病理病期Ⅰ期においても1.99/100 人年で発生し,切除例の予後は非切除例より良好であった(P=0.003)との報告5)があり,この点も考慮する必要がある。経過観察期間に関しては5 年以降では再発は減少6)し,予後は良好7)との報告がある一方で,すりガラス陰影を呈する肺癌でも5 年以降に再発したとの報告8)もあり,今後の検討を要する。

CT については海外の複数のガイドラインではCT を推奨しており4)9)10),経過観察には低線量らせんCT が有用との報告11)や,半年毎に胸部CT を行った群の予後が良好であったとの報告12)があるが,術後経過観察における術後CT の予後に対する影響は明らかではない。PET についても術後再発の検出に有用か否か検討が不十分であり13),また延命効果が示されていないことからESMO のガイドラインではむしろ推奨しないとされている4)

以上より,外科切除後の非小細胞肺癌に対しては定期的な経過観察を行うよう推奨する。エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うよう強く推奨できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会,放射線治療小委員会,外科療法小委員会

CQ20
非小細胞肺癌術後の患者は,禁煙を行うべきか?

エビデンスの強さC
非小細胞肺癌術後の患者に対しては,禁煙を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:90%〕

解説

本ガイドラインの中で数少ない喫煙・禁煙と肺癌の関係を対象としたCQ であるので,喫煙・禁煙に関係する一般的事項に考察を加えながら課題のCQ に答えるようにする。

胃癌とピロリ菌,肝臓癌と肝炎ウイルス,子宮頸癌とヒトパピローマウイルスなどと同様に肺癌も喫煙との因果関係が明らかになっている14)~16)が,あまりにも明らかであるがため逆にランダム化比較試験のようなエビデンスの質の高い報告はみられず,また今後もそのような報告が出てくる可能性もないと考えられる。

肺癌を予防するためには,たばこを吸わないことが最も効果的である。たばこの煙の中には多環芳香族炭化水素類やニトロソアミン類をはじめとする約70 種類の発癌物質が含まれており,これらの発癌物質はDNA 損傷など癌発生メカニズムの様々な段階に関与する。厚生労働省の「喫煙の健康影響に関する検討会(2016 年)」の報告17)では喫煙と疾患の因果関係を以下の4 レベルに分類している。すなわち「レベル1:科学的証拠は因果関係を推定するのに十分である」,「レベル2:科学的証拠は因果関係を示唆しているが十分ではない」,「レベル3:科学的証拠は因果関係の有無を推定するのに不十分である」,「レベル4:科学的証拠は因果関係がないことを示唆している」である。肺癌は従来の疫学的・中毒学的データに加え,分子レベル・細胞レベルでの研究で機序面での基礎が揃ったことからレベル1 に分類されている14)17)

多くの疫学研究で一貫して喫煙は癌患者の全死因死亡リスクを上昇させると報告されており,米国Surgeon General Report15)は「科学的証拠は癌患者における喫煙と全死因死亡との因果関係を推定するのに十分である」と結論付けている。60 歳以上を対象としたシステマティックレビューでは,非喫煙者に対する統合相対死亡リスクは,喫煙者で1.83(95%CI:1.65-2.03),過去喫煙者で1.34(95%CI:1.28-1.40)と算出された18)。本邦における評価も同様にレベル1 である。

喫煙と肺癌の各種治療効果・治療毒性との関係に関してはレベル2(科学的証拠は因果関係を示唆しているが十分ではない)とされている17)が,放射線治療・薬物治療や手術に際して喫煙継続群では禁煙群より有意に合併症が増加したとする報告19)や治療効果が低下したとする報告がみられる20)

術後再発に関しても同様にレベル2 に分類されている17)。喫煙と再発に有意な関係はなかったとする報告もあるが,肺癌術後の患者を喫煙群と禁煙群にランダムに分けることは倫理的にも実施困難であり,必然的にレベルの高い結果は得られていない。しかし,喫煙と二次癌の発生に関してはレベル1(科学的根拠は因果関係を推定するのに十分である)に分類されており17)21)22),喫煙が本人だけでなく周りの人にも伏流煙(フィルターを通しておらず主流煙よりも多くの有害物質を含んでいる)による健康被害を惹起する事実から,肺癌術後の禁煙は強く推奨されるべきものといえる。

以上より,非小細胞肺癌術後の患者に対しては,禁煙を行うよう推奨する。エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会,放射線治療小委員会,外科療法小委員会

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1-10
低悪性度肺腫瘍(カルチノイド,粘表皮癌,腺様嚢胞癌)

CQ21
切除可能な低悪性度腫瘍(カルチノイド,粘表皮癌,腺様嚢胞癌)は,非小細胞肺癌に準じた外科治療を行うべきか?

エビデンスの強さC
切除可能な低悪性度腫瘍(カルチノイド,粘表皮癌,腺様嚢胞癌)に対しては,非小細胞肺癌に準じた外科治療を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

解説

カルチノイドについてはIASLC のデータベースから集積した513 例の手術症例で,5 年,10 年生存率が各々pN0 で92%,84%,pN1 で68%,54%,pN2 で64%,0%であった1)。またSEER のデータベースから集積した1,437 例の手術症例では,5 年生存率がpN0 で92%,pN1 で81%,pN2 で74%であった1)。カルチノイドに対する手術療法は,非小細胞肺癌の同じ病期のものと比較しても成績が良好である。Garcia-Yuste らの手術症例の報告2)では,定型的カルチノイド569 例の5 年生存率は,pN0 で97%,pN1 で100%,pN2 で100%,非定型カルチノイド92 例での5 年生存率は,pN0 で83%,pN1 で61%,pN2 で60%でカルチノイドに比し非定型カルチノイドの予後は不良であった。術式については,1973~2006 年までに集積した3,478 例の後方視的研究で中間生存期間は,肺葉切除以上群で84 カ月,縮小手術群で67 カ月で,propensity score を用いた解析では定型的カルチノイドであれば縮小手術も許容できるとの報告もある3)。また2000~7 年までの3,270 例の解析によれば,定型的カルチノイド3,084 例,非定型カルチノイド186 例に対し肺葉切除1,669 例,縮小手術784 例が行われ,多変量解析で疾患特異的生存において縮小手術は肺葉切除に対して非劣性が示された4)。カルチノイドにおける縮小手術の有用性を示す前方視的研究はない。

非定型カルチノイドのみを集積した検討では,浸潤性が高いため標準切除とリンパ節郭清が重要とする報告や5)~7),335 例の手術で3 年生存率までは肺葉切除と縮小手術との差がない一方で,放射線照射は死亡率が高いとする報告もあり8),手術が一般的に推奨されている。

最近のSEER データベースでは,生検でカルチノイドとされたN0 症例4,110 例において,全5 年生存率が肺葉切除で93%,縮小手術で92%,非切除で69%,疾患特異的生存率は肺葉切除で97%,縮小手術で98%,非切除で88%であった。非切除群の疾患特異的生存率も良かったため,高リスク患者では,無症状例の経過観察や,中枢発生有症状例の気管支鏡処置は考慮してよいと報告されている9)。気管支カルチノイドでは112 例の初回経気管支鏡的処置例(全例観察期間5 年以上)において,42%の患者が再発を認めず手術を回避し得たとの報告がある10)

粘表皮癌は肺癌全体の0.1~0.2%を占める稀な腫瘍である。組織学的に低悪性度腫瘍,高悪性度腫瘍に分類される11)。一般的に低悪性度のものは予後良好で,高悪性度のものは予後不良とされている。Vadasz らは低悪性度腫瘍5 例の5 年生存率は80%,高悪性度腫瘍では44%にリンパ節転移が認められ,5 年生存率は31%であったと報告している12)。またChin らは完全切除症例の10 年生存率は87.5%であったのに対し,不完全切除症例では長期生存は認められなかったと報告している13)

腺様嚢胞癌は完全切除での5 年生存率が73~91%と報告され14)~16),後方視的研究ではあるが手術例は非切除例よりも良好な成績で報告されている。

以上より,切除可能な低悪性度腫瘍(カルチノイド,粘表皮癌,腺様嚢胞癌)に対しては,非小細胞肺癌に準じた外科治療を行うよう推奨する。エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会,放射線治療小委員会,外科療法小委員会

引用文献

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光線力学的治療法

CQ22
中心型早期肺癌に光線力学的治療法(PDT)は勧められるか?

エビデンスの強さC
中心型早期肺癌の中で,腫瘍全体にレーザー照射が可能な長径1.0 cm 以下の病巣を対象に行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:64%〕

解説

光線力学的治療法(photodynamic therapy:PDT)は従来,主に耐術能のない症例に対し探索的に行われていたが,中心型早期肺癌に対する良好な成績を評価され,本邦ではポルフィマーナトリウムとエキシマ・ダイ・レーザーを用いた第一世代のPDT が1996 年に,タラポルフィンナトリウムと小型のダイオードレーザーを用いた第二世代のPDT が2004 年に保険収載されている。欧米のガイドラインにおいても腫瘍径1.0 cm 以下の中心型早期肺癌に対してPDT が推奨されている1)~4)。内視鏡的に腫瘍の全範囲を確認し得る(レーザー照射可能である)ことが前提であり,特に腫瘍径1.0 cm 以下の症例に対する完全寛解率は83~100%と極めて良好である5)~16)

局所再発率は,8.5~33.3%と報告されているが6)8)11)12)15)16),腫瘍の末梢側が内視鏡で確認不十分な症例や腫瘍径が大きくなるほど治療後の局所再発率は増加する。また,レーザー光が気管支軟骨で遮断されることにより,適応が軟骨を超えない病巣までとされているため,注意深い適応選択が必要である3)5)10)14)

腫瘍親和性物質の副作用として日光過敏症があるので,第一世代のポルフィマーナトリウムでは,少なくとも投与後2 週間程度は直射日光を避ける必要があったが5)6)9)13)15)17)18),第二世代のタラポルフィンナトリウムは代謝が早く日光過敏症の心配が少ない7)14)。前向き臨床第Ⅱ相試験において,ポルフィマーナトリウムおよびタラポルフィンナトリウムの日光過敏症の合併率は,各々Grade 1 が28.8%,5.0%,Grade 2 が1.9%,0%と報告されている6)16)。PDT によるその他の合併症は少ないが,肺炎や無気肺を予防する目的のため治療部位の壊死物質を複数回の気管支鏡により除去することが必要である。ポルフィマーナトリウムに比べてタラポルフィンナトリウムでは壊死物質が少ないため,気管支鏡施行回数は少なくてよいとされる14)

PDT 後の5 年生存率は72~81%と良好であり10)12)13)15),心肺機能の低下した手術困難例では,他病死を含めると57.9%との報告もある16)。侵襲も手術に比べはるかに軽微であるため,患者のQOL に明らかに寄与する。また,多発肺癌に対してPDT と手術の併用が有用との報告もある11)。手術可能症例を対照とした検討で,PDT が手術の代替療法になり得る可能性があるとの報告もあるが8)12),PDT と手術療法を比較するRCT を行い非劣性や有意性を示すことは早期癌の特性からも困難であるため,ランダム化比較試験の報告は存在しない。ただ,多くの観察研究においてはPDT に肯定的なものがほとんどであり,有効性を示す十分な症例数を有していると思われる。今後は他の局所療法である気管支鏡下治療法との比較などによりPDT の有用性を客観的に立証するエビデンスの質の高い臨床研究の実施が期待される。

以上より,中心型早期肺癌,特に腫瘍径1.0 cm 以下に対してはPDT を推奨する。エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:気管支鏡委員会

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放射線治療基本的事項

総論
放射線治療における基本的事項の推奨にあたって

解説

肺癌における放射線治療の役割は根治目的胸部放射線療法,術前術後照射,再発転移に対する緩和照射等多岐にわたる。いずれの場合にも,放射線治療の精度・品質管理が重要であることはいうまでもなく,特に近年発展している強度変調放射線治療(intensity modulated radiotherapy;IMRT)や定位放射線治療(stereotactic radiotherapy;SRT)等の高精度治療においては,その重要性が増している。また特に肺においては呼吸性の動きがあることから,その対策も必要である。本項において記載している放射線治療装置,治療計画法,品質管理については,放射線治療を施行するうえで基本となる事項であり,ランダム化比較試験等の結果によってその重要性が変化する性質のものでもなく,推奨度を付与するべきものではない。よって,各推奨文における推奨の強さや引用文献のエビデンスの強さは記載しないこととした。また,今回の改訂より,GRADE 方式を採用し,CQ 形式で表示のうえで推奨文を記載するとともに,呼吸移動対策についての推奨文とその解説を追加した。以下各CQ を要約する。

CQ23.肺癌に対する放射線治療において,適切な放射線治療装置・治療計画法は何か?

直線加速器による6~10 MV X 線を用い,CT シミュレーションによる3 次元治療計画を不均質補正を用いて行い,必要に応じて適切な呼吸性移動対策も行う。

CQ24.放射線治療の品質管理は勧められるか?

放射線治療の品質が治療成績と相関する報告があり,安全面からも照射野設定・線量計算などの品質管理を適切に行うよう勧められる。

CQ23
肺癌に対する放射線治療において,適切な放射線治療装置・治療計画法は何か?

  1. a. 肺癌に対する胸部放射線治療には直線加速器による6~10 MV X 線を用いるよう勧められる。
  1. b. 放射線治療計画には,少なくともCTを用いた3次元治療計画を行い,3次元的な線量分布図およびDVHを常に検討するよう勧められる。
  1. c. 線量計算ではできるかぎり実測値に近い計算アルゴリズムを用いた不均質補正を行うよう勧められる。
  1. d. 腫瘍の呼吸による動きを評価し,その程度に応じて適切な呼吸移動対策を行うよう勧められる。

解説

  1. a. 肺癌の胸部放射線治療では直線加速器による高エネルギーX 線が用いられるが,エネルギーが低いと照射範囲内の線量不均一性が高度となり,逆にエネルギーが高すぎても標的辺縁ではビルドアップ効果により線量の低下を招く1)~4)。このようにX 線の物理的特性から至適エネルギーとして6~10 MV X 線の使用が推奨される。ただし,定位放射線照射の場合には4~6 MV X 線が望ましい。
  2. b. 3 次元治療計画により,ターゲットの線量を低下させることなく正常肺と心臓の平均線量を有意に減少できることが示されている5)~7)。また,放射線治療単独例に対し,肺のDVH と放射線肺臓炎の関係について検討され,Grade 2(RTOG の基準)以上の放射線肺臓炎の発症リスクを低下させるには,V20が40%を超えないようにすることが重要であると報告されている8)。また,化学療法併用例では,V20が25~30%以下で放射線肺臓炎の発症リスクが低いと報告されている9)。さらに,全肺のV20 だけではなくV5 やMLD などのパラメーターと放射線肺臓炎の発生との相関についても報告されている10)~12)。根治目的の同時化学放射線療法の場合は,軽症の放射線肺臓炎発症は許容し重症肺炎の発症を軽減するためにV20≦35%を目標とする場合が多い。その他,放射線食道炎と関連する食道のパラメーター13)14),心毒性と相関する心臓のパラメーター15)などについても報告され,リスク評価における有用性が示唆されており,放射線治療計画には,CT シミュレーションによる3 次元治療計画において,DVH による標的体積および正常組織の線量評価16)を行うよう勧められる。近年,強度変調放射線治療(intensity modulated radiotherapy : IMRT)も有力な治療として注目されている。IMRT は腫瘍やリスク臓器の形状に合わせた複雑な線量分布を作成できる高精度治療である。しかしその分布を実現するためには呼吸性移動対策が重要であり,また標的体積の周囲に低線量域が広がることで副作用がより多く出現する懸念がある。米国での局所進行肺癌に対する線量増加第Ⅲ相試験の二次解析においては,IMRT 治療症例で3 次元放射線治療よりも放射線肺臓炎の発症率が低かったと報告されている17)。しかしこれ以外に十分解析された報告は乏しく,さらに本邦においてはまだ施行率は低いため,慎重な導入が必要である。
  3. c. ファントムを用いた線量測定実験で,肺内孤立性腫瘍を10 MV X 線で照射した場合,不均質補正なしでは,線量は10~20%の過線量となる。一方,不均質補正を行うと線量計算アルゴリズムによって8~18%の線量不足となる18)。臨床例での検討では,不均質補正を行わないと5~28%の過線量となると報告されている18)~20)。また,肺野型腫瘍に対してはエネルギーの低いX 線を用いたほうが良好な線量分布を得られると報告されている21)。計算アルゴリズム精度も向上しており,実地医療において不均質補正を行うよう勧められる。
  4. d. 肺腫瘍には呼吸性移動があるため,それを個別に評価せずに治療計画を行うと腫瘍に対する線量不足や正常組織に対する不要な線量増加をきたすおそれがある。4D-CT により呼吸性移動を加味し特定の位相での同期治療を行った治療計画のほうが一律なマージン設定と比較し標的体積の減少と正常組織への有意な線量低下が得られたという報告22)や,非ランダム化前向き比較試験において息止めや呼吸性移動対策を行ったほうが有意に肺障害・食道炎が少なかったという報告23)がある。呼吸性移動対策法としては透視確認・4D-CT 等の画像確認,息止め,腹部圧迫,追尾,同期など種々の方法が開発されており24),日本のガイドラインも発刊されている25)。各施設において可能な方法で呼吸性移動を確認し,移動量が大きい場合には呼吸性移動対策を行うことを推奨する。

CQ24
放射線治療の品質管理は勧められるか?

放射線療法では,照射野設定,線量計算などの品質管理を適切に行うよう勧められる。

解説

放射線療法では,品質管理は重要である。小細胞肺癌を対象にしたランダム化比較試験においてプロトコール違反症例の生存率は有意に不良であった26)。非小細胞肺癌を対象とした化学放射線療法のランダム化比較試験ではプロトコール違反が20%程度起こっており,品質管理モニターの必要性が示されている27)。同様の報告は他のグループからもなされ28)29),最近の放射線治療品質管理を全例に行った肺癌臨床試験においてもプロトコール違反の多い施設で成績不良であった30)

一般臨床においても2000 年前後に不十分な品質管理に起因する過剰照射や過少照射の報告が相次ぎ,品質管理の重要性が再認識された。したがって,肺癌におけるすべての放射線療法では,照射野設定,線量計算などの品質管理を適切に行うよう勧められる。

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周術期

総論
周術期における治療方針

解説

外科切除可能なⅠ-Ⅲ期非小細胞肺癌に対しては,外科切除に加えて,術前あるいは術後に化学療法または放射線療法を追加することで,治療成績のさらなる改善を目指す試みが検討されてきた。化学療法に関しては,外科治療単独に対して術前補助化学療法,術後補助化学療法を追加する意義が,それぞれ臨床試験により検証された。一方,放射線療法に関しては外科切除後の術後放射線療法の意義が検証された。また,縦隔リンパ節転移を有する切除可能なⅢA 期(N2)非小細胞肺癌に対しては,術前化学放射線療法後の外科切除の有用性を問う臨床試験が行われた。

これらの周術期の治療に関する推奨,治療方針決定に関しては,病期診断に関する評価が大きく関連している。術前治療に関する臨床試験は,主に画像診断による臨床病期(clinical stage)に基づいた集団を対象としており,一方,術後治療に関する臨床試験は,外科切除検体の病理学的評価による術後病理病期(pathological stage)に基づいた集団を対象として行われた結果であることを理解することが重要である。また,本ガイドラインにおける治療推奨は肺癌取扱い規約第8 版に準じている。しかし,周術期領域の臨床試験に関しては試験が実施された時期における病期分類に基づいており,第7 版以前の病期分類が採用されていることに留意されたい。

以下に,術前および術後化学療法(CQ25CQ27~30),術前化学放射線療法(CQ26),術後放射線療法(CQ3132)について解説する。

1)術前および術後化学療法:CQ25CQ27~30

1980 年代後半から2000 年代を中心に,外科切除単独に対して,それぞれ術前補助化学療法あるいは術後補助化学療法を追加する意義を検証する臨床試験が行われた1)~3)。術後補助化学療法のエビデンスが術前補助化学療法よりも早く確立したことから,術前補助化学療法の第Ⅲ相試験が早期中止され,エビデンスの質・量ともに術後補助化学療法のものと比較すると十分ではない。

臨床病期Ⅰ-Ⅱ期非小細胞肺癌で外科切除可能な患者には外科切除が勧められるため,臨床病期Ⅰ-Ⅱ期に対して外科切除に先行する術前補助化学療法は行わないよう勧められる(CQ25)。

術後補助化学療法については,術後病理病期Ⅰ期に対するテガフール・ウラシル配合剤療法(CQ2728),術後病理病期Ⅱ-ⅢA 期に対するシスプラチン併用療法(CQ29)が,それぞれ外科治療単独に対して生存の改善を示しエビデンスが確立されている2)3)。術後補助化学療法のこれらの薬剤選択に関して,術後病理病期の評価が重要であるが,特に肺癌取扱い規約第8 版ⅡA 期T2b(T 分類>4-5 cm)N0M0 に関しては,旧7 版ではⅠB 期の分類に相当する。第8 版ⅡA 期はテガフール・ウラシル配合剤療法,シスプラチン併用化学療法の術後補助化学療法の有用性を検証する臨床試験に関して,いずれにも対象となったサブセットである。なお,EGFR 遺伝子変異陽性非小細胞肺癌に対するEGFR チロシンキナーゼ阻害剤による術後補助化学療法は生存の延長効果が現時点で示されておらず,本邦では保険適用外であることから,行わないよう推奨される(CQ30)。

2)術前化学放射線療法:CQ26

臨床病期ⅢA 期(N2)については,外科切除を行う意義を問う臨床試験が行われた4)~6)。なかでも同時化学放射線療法を対照として同時化学放射線療法後に外科切除を追加する意義を問う臨床試験では全体の生存割合に改善が認められなかったものの,無再発生存割合では外科切除を加えた群で改善を認めた4)。また肺葉切除が行われた群においては外科切除を加える意義があると報告された。また術前化学療法と術前化学放射線療法を比較した臨床試験では明らかな差を認めなかった7)8)。切除可能な臨床病期ⅢA 期(N2)に対しては,術前化学放射線療法を行うことを提案する(CQ26)。

3)術後放射線療法:CQ3132

外科切除後の術後放射線療法の意義については,メタアナリシスでの検証がなされている9)10)。術後病理病期Ⅰ-Ⅱ期に対する術後放射線療法は生存を増悪することが明確に示されており,行わないよう勧められる(CQ31)。術後病理病期Ⅲ期(N2)に対する術後放射線療法については,有望な可能性があるものの十分なエビデンスは得られていない(CQ32)。

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4-1
術前治療

CQ25
臨床病期Ⅰ-ⅢA 期に対して,術前プラチナ製剤併用療法は勧められるか?

エビデンスの強さC
  1. a. 臨床病期Ⅰ-Ⅱ期(第8 版)に対して,術前プラチナ併用化学療法を行わないよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:74%〕

エビデンスの強さC
  1. b. 臨床病期ⅢA 期(第8 版)に対して,術前プラチナ併用化学療法を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,合意率:65%〕

解説

  1. a. 術前補助化学療法については,臨床病期Ⅰ-ⅢA 期を対象としたメタアナリシスによって外科治療単独と比べ,OS を延長することが示されており1),薬物療法のレジメンはこれまで多くの試験でプラチナ製剤併用療法が採用されている。しかし,術後補助化学療法のエビデンスが術前補助化学療法よりも早く確立したことから,複数の術前補助化学療法の第Ⅲ相試験が早期中止され,エビデンスの質・量ともに術後補助化学療法のものと比較して十分でない。また,CDDP+GEM療法を用いた第Ⅲ相試験(ChEST 試験)における臨床病期ⅠB-ⅡA 期のサブグループ解析では,OS におけるHR 1.02(OS 中央値7.8 年vs未到達,95%CI:0.58-1.19,P=0.94)と外科治療単独と比較して生存を延長しなかった2)。CBDCA+PTX 療法を用いた第Ⅲ相試験でも,DFS におけるHR 0.92(95%CI:0.81-1.04,P=0.176)と術前化学療法は外科治療単独と比較してDFS を延長しなかった3)。N2 が除外されたこの試験で有効性が示されなかったことから,N0/N1 の病期における術前化学療法の意義は乏しいと考えられ,臨床病期Ⅰ-Ⅱ期に対しての生存に対する有効性も低いと考えられる。現在,術後補助化学療法のエビデンスが確立しており,術前臨床病期診断に基づく術前化学療法よりも,術後病期診断に基づく術後補助化学療法が選択されるべきである。

    以上より,臨床病期Ⅰ-Ⅱ期(第8 版)に対しては,術前プラチナ併用化学療法を行わないよう推奨する。エビデンスの強さはC,また総合的評価では行わないよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

  2. 投票者の所属委員会:薬物療法小委員会,放射線治療小委員会,外科療法小委員会/白票1
  3. b. 前述のように術前補助化学療法について,臨床病期Ⅰ-ⅢA 期を対象としたメタアナリシスによって外科治療単独と比べ,OS を延長することが示されている1)。薬物療法のレジメンはこれまで多くの試験でプラチナ併用療法が採用されており,化学療法の時期について,術前補助化学療法と術後補助化学療法を比較したメタアナリシスでは同等の有効性が示されている4)。しかし,術後補助化学療法のエビデンスが術前補助化学療法よりも早く確立したことから,術前補助化学療法の第Ⅲ相試験の多くが早期中止され,エビデンスの質・量ともに術後補助化学療法のものと比較して十分でない。一方で,CDDP+GEM 療法を用いた第Ⅲ相試験における臨床病期ⅡB-ⅢA 期のサブグループ解析において,OS におけるHR は0.42(OS 中央値 未到達 vs 2.1 年,95%CI:0.25-0.71,P<0.001)と術前プラチナ併用化学療法は,外科治療単独と比較してOS の延長を示した2)

    以上より,術後補助化学療法と比較して術前補助化学療法のエビデンスの質・量は十分でないことに留意する必要があるものの臨床病期ⅢA 期(第8 版)に対しては,切除可能性を鑑み,術前プラチナ製剤併用療法を行うよう提案する。エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

    なお,臨床病期ⅢA 期(N2)(第8 版)については,同時化学放射線療法および外科切除後の術後病期診断に基づく術後補助化学療法のエビデンスが確立されていること,また術前化学放射線療法後の外科切除(CQ26 参照)の選択肢があることを踏まえて,治療選択を検討する必要がある。

  4. 投票者の所属委員会:薬物療法小委員会,放射線治療小委員会,外科療法小委員会

CQ26
切除可能な臨床病期ⅢA 期(N2)に対して,術前化学放射線療法は勧められるか?

エビデンスの強さC
切除可能な臨床病期ⅢA 期(N2)に対しては,術前化学放射線療法を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,合意率:68%〕

解説

切除可能・病理学的に確認されたN2 例に対し,化学放射線療法と術前化学放射線療法後の外科切除を比較した第Ⅲ相試験(INT0139 試験)では,外科切除によるOS の延長は示されなかった5)。サブグループ解析では肺葉切除された症例では外科切除追加の有用性が示唆されているが,事後解析であるため,解釈には注意が必要である。北米,欧州でも術前化学放射線療法を介入群とした複数のランダム化比較試験が報告されているが,いずれの試験も早期中止などにより検出力が十分ではなく,生存に対するベネフィットが示されなかった6)7)。本邦でも同様の対象について,術前化学療法と術前化学放射線療法を比較する第Ⅲ相試験が行われたものの,同様に症例集積が進まなかったため有効性を十分に評価できなかった8)

これらの結果より,肺葉切除可能かつ病理学的に確認されたN2 の臨床病期ⅢA 期に対して術前化学放射線療法の忍容性は示されている。また有効性に関するエビデンスの質が不十分であるものの,前述のように1 つの第Ⅲ相試験で切除可能性と有用性を示されている。

以上より,肺葉切除可能な臨床病期ⅢA 期(N2)に対しては,術前化学放射線療法を行うことを提案する。エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会,放射線治療小委員会,外科療法小委員会

4-2
術後補助化学療法

CQ27
病変全体径>2 cm の術後病理病期ⅠA/ⅠB/ⅡA 期(第8 版)完全切除,腺癌症例に対して,テガフール・ウラシル配合剤療法は勧められるか?

エビデンスの強さA
病変全体径>2 cm の術後病理病期ⅠA/ⅠB/ⅡA 期(第8 版)完全切除,腺癌症例に対して,テガフール・ウラシル配合剤療法を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:85%〕

解説

Ⅰ-Ⅲ期を対象にCDDP+VDS+テガフール・ウラシル配合剤(UFT)とUFT,手術単独の3 群についての比較試験を行い,5 年生存割合でUFT 群は64%と,手術単独群の49%と比し有意に良好であった9)。その後,Ⅰ期肺腺癌に対するUFT の効果を検討する第Ⅲ相試験が行われ,全体では3%(85%→88%),ⅠB 期(T>3 cm)においては11%(74%→85%)の上乗せ効果が認められた10)。これらに,4 つの臨床試験を加えて行われたメタアナリシス(2,003 症例;腺癌84%,非腺癌16%)の結果,全体で5%(77%→82%)の5 年生存割合の改善を認め,UFT の有効性が確認された。組織型別にみると,腺癌においてHR 0.69(95%CI:0.56-0.85)に対し,扁平上皮癌においてはHR 0.82(95%CI:0.57-1.19)であった11)。TNM 分類の第7 版への改訂に伴い,腫瘍径が2 cm 以下の患者群と>2 cm かつ3 cm 以下の患者群に分けてサブグループ解析が実施され,腫瘍径>2 cm かつ3 cm 以下の患者群において6%(82%→88%)の5 年生存割合の改善,HR 0.62(95%CI:0.42-0.90)と良好な結果を示した12)。なお,肺癌取扱い規約第8 版では,「病変全体径」とは高分解能CT によるすりガラス成分と充実成分を合わせた最大径を,「充実成分径」とは充実成分の最大径を表し,pT 分類では浸潤性増殖を示す部分の最大径を「充実成分径」に置き換えて分類を行う。しかし,上記の臨床試験におけるpT 分類は浸潤部分の最大径ではなく,非浸潤部分を含めた腫瘍径で評価されていることに留意する必要がある。これらの臨床試験の登録期間である1985~1995 年には,高分化能CT の普及が一様ではなく,TNM 分類第8 版におけるT1mi のように,主に肺胞置換型増殖を示す症例の多くは臨床試験に組み入れられていないと考えられ,この群については術後補助化学療法の意義は不明である。なお,TNM 分類第8 版におけるⅡA 期は,第7 版以前の分類ではⅠ期またはⅠB 期に相当する。

以上より,病変全体径>2 cm の術後病理病期ⅠA/ⅠB/ⅡA 期(第8 版)の完全切除,腺癌症例に対してUFT 療法を行うよう勧められる。エビデンスの強さはA,また総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。なお,術後病理病期Ⅰ期(腺癌)の完全切除例では手術単独でも74%が無再発であり,化学療法の安全性を十分考慮すべきである。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会,放射線治療小委員会,外科療法小委員会

CQ28
病変全体径>2 cm の術後病理病期ⅠA/ⅠB/ⅡA 期(第8 版)完全切除,非腺癌症例に対してテガフール・ウラシル配合剤療法は勧められるか?

エビデンスの強さC
病変全体径>2 cm の術後病理病期ⅠA/ⅠB/ⅡA 期(第8 版)完全切除,非腺癌症例に対してテガフール・ウラシル配合剤療法を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,合意率:100%〕

解説

Ⅰ-Ⅲ期を対象にCDDP+VDS+テガフール・ウラシル配合剤(UFT)とUFT,手術単独の3 群についての比較試験を行い,5 年生存割合でUFT 群は64%と,手術単独群の49%と比し有意に良好であった9)。その後,他の臨床試験を加えて行われたメタアナリシス(2,003 症例;腺癌84%,非腺癌16%)の結果,全体で5%(77%→82%)の5 年生存割合の改善を認め,UFT の有効性が確認された。組織型別にみると,腺癌においてHR 0.69(95%CI:0.56-0.85)に対し,扁平上皮癌においてはHR 0.82(95%CI:0.57-1.19)であった11)。TNM 分類の第7 版への改訂に伴い腫瘍径2 cm 以下の患者群と>2 cm かつ3 cm 以下の患者群に分けてサブグループ解析が実施され,腫瘍径>2 cm かつ3 cm 以下の患者群において6%(82%→88%)の5 年生存割合の改善,HR 0.62(95%CI:0.42-0.90)と良好な結果を示した12)。しかしながら,扁平上皮癌患者に限定した解析ではHR 0.93(95%CI:0.38-2.27)であった12)。なお,TNM 分類第8 版におけるⅡA 期は,第7 版以前の分類ではⅠ期またはⅠB 期に相当する。

以上より,病変全体径>2 cm の術後病理病期ⅠA/ⅠB/ⅡA 期(第8 版)の完全切除,非腺癌症例に対してUFT 療法を行うよう勧められる。エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2 で推奨)できると判断した。ただし,前述のように腺癌を中心としてUFT の有効性が証明されているが,非腺癌では検討症例数が少数であることなどから,そのエビデンスは十分とはいえない。また,非小細胞肺癌(非腺癌)の完全切除例で手術単独でも57.1%が無再発であり,化学療法の安全性を十分考慮すべきである。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会,放射線治療小委員会,外科療法小委員会

CQ29
術後病理病期Ⅱ-ⅢA 期(第8 版)完全切除例に対して,シスプラチン併用化学療法は勧められるか?

エビデンスの強さA
術後病理病期Ⅱ-ⅢA 期(第8 版)完全切除例に対して,シスプラチン併用化学療法を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:95%〕

解説

1995 年にNon-small Cell Lung Cancer Collaborative Group より手術単独群と術後補助化学療法群のランダム化比較試験のメタアナリシスが報告され,CDDP 併用療法の術後補助化学療法で相対死亡危険率を13%減少し,有意差は認めないが5 年生存率を5%改善するとの結果であった13)。その後,International Adjuvant Lung Cancer Trial Collaborative Group(IALT),JBR.10 およびAdjuvant Navelbine International Trial Association(ANITA)などの比較試験が行われ,いずれもCDDP 併用療法を術後補助化学療法として行うことで無病生存率および5 年生存率の向上が得られた14)~16)。長期フォローアップの結果においても術後補助化学療法の有用性が再確認されたが17)18),術後5 年を超えるとその差が縮まることも示された17)。これらの比較試験に,Adjuvant Lung Cancer Project Italy(ALPI)19),Big Lung Trial(BLT)20)を加えた5 つの比較試験について,4,584症例の個々のデータに基づくメタアナリシスが行われた(Lung Adjuvant Cisplatin Evaluation;LACE)。その結果,術後生存に対するHR 0.89(95%CI:0.82-0.96)と,術後補助化学療法による有意な延命効果が示された。病期別のHR では,ⅠA 期で1.40(95%CI:0.95-2.06),ⅠB 期で0.93(95%CI:0.78-1.10),Ⅱ期で0.83(95%CI:0.73-0.95),Ⅲ期で0.83(95%CI:0.72-0.94)という結果であった21)。サブグループ解析として,CDDP+VNR に限ったメタアナリシスもなされ,HR 0.80(95%CI:0.70-0.91),手術単独に対するCDDP+VNR の生存率向上は,Ⅱ期で43%が54%,Ⅲ期で25%が40%と,生存率向上効果が顕著であった22)。これまでの34 の臨床試験,8,447 症例を集めたメタアナリシスでも同様の結果が示された23)。これらのメタアナリシスに含まれるエビデンスはすべて国外からの報告であり,化学療法のレジメンや投与方法が本邦と異なるものが多く含まれている。なお,第8 版におけるⅡA 期は,第7 版以前の分類ではⅠ期またはⅠB 期に相当する。ⅡA(第8 版)の患者群は,JBR.10 のサブセット解析でOS の延長を示された集団(腫瘍径4 cm 以上のⅠB 期)に含まれていた。

以上より,術後病理病期Ⅱ-ⅢA 期(第8 版)完全切除例に対してCDDP 併用化学療法を行うよう勧められる。エビデンスの強さはA,また総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会,放射線治療小委員会,外科療法小委員会

CQ30
EGFR 遺伝子変異陽性の術後病理病期ⅠB-ⅢA 期完全切除例に対してEGFR チロシンキナーゼ阻害剤による治療は勧められるか?

エビデンスの強さC
EGFR 遺伝子変異陽性の術後病理病期ⅠB-ⅢA 期完全切除例に対してEGFR チロシンキナーゼ阻害剤による治療を行わないよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

解説

完全切除されたⅠB-ⅢA 期非小細胞肺癌に対し,術後補助化学療法としてゲフィチニブを投与した第Ⅲ相試験が本邦で行われた。しかし,試験に登録された38 例(ゲフィチニブ群18 例)のうち,ゲフィチニブ群で肺臓炎による死亡が1 例認められたこと,および同時期に報告された進行非小細胞肺癌における本邦での肺臓炎の頻度を考慮し,試験が途中で中止された24)。また,同様の患者集団に対して海外で行われた第Ⅲ相試験ではゲフィチニブ群は,対照群と比較しHR 1.24(95%CI:0.94-1.64,P=0.14)とOS の延長は示さなかった25)。術後補助化学療法としてエルロチニブを投与したRADIANT 試験でも無病生存期間はエルロチニブ群と対照群で有意な差を認めず(50.5 カ月 vs 48.2 カ月,HR 0.90,95%CI:0.74-1.10,P=0.324),OS の延長も示さなかった(両群とも中央値に到達せず,HR 1.13,95%CI:0.88-1.45)。RADIANT 試験においてEGFR 遺伝子変異陽性患者に限定したサブグループ解析が公表されており,エルロチニブ群は,対照群と比較し無病生存期間(46.4 カ月 vs 28.5 カ月,HR 0.61,95%CI:0.38-0.98)の延長を示したものの,OS の延長は示さなかった(両群とも中央値に到達せず,HR 1.09,95%CI:0.55-2.16)26)。術後の明らかな再発病変のない患者については,EGFR チロシンキナーゼ阻害剤を投与すべきではないと考える。

以上より,EGFR 遺伝子変異陽性の術後病理病期ⅠB-ⅢA 期完全切除例に対するEGFR チロシンキナーゼ阻害剤による術後補助化学療法は,行わないよう勧められる。エビデンスの強さはC,ただし総合的評価では行わないよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会,放射線治療小委員会,外科療法小委員

引用文献

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NSCLC Meta-analysis Collaborative Group. Preoperative chemotherapy for non-small-cell lung cancer: a systematic review and meta-analysis of individual participant data. Lancet. 2014; 383(9928): 1561-71.
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3)
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4-3
術後放射線療法

CQ31
術後病理病期Ⅰ-Ⅱ期完全切除例に対して,術後放射線療法は勧められるか?

エビデンスの強さA
術後病理病期Ⅰ-Ⅱ期完全切除例に対して,術後放射線療法は行わないよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

解説

PORT Meta-analysis Trialists Group によるメタアナリシスは2016 年に改訂版が報告され,術後放射線療法によりむしろ予後は悪化し(HR 1.18,95%CI:1.07-1.31,P=0.001),2 年生存率を58%から53%に5%引き下げる結果であった1)。無再発生存率は術後放射線療法群で悪い傾向があり(HR 1.10,95%CI:0.99-1.21,P=0.07),局所無再発生存率は有意に悪かった(HR 1.12,95%CI:1.01-1.24,P=0.03)。術後病理病期について,2005 年版のメタアナリシスでは術後放射線療法の予後増悪効果はⅠ-Ⅱ期において明確であった2)。2016 年版では解析方法が変更されたものの,やはり早期症例で予後増悪効果が顕著である可能性が示唆されている。

以上より,メタアナリシスによって生存に対する悪影響が明確に示されていることから,術後病理病期Ⅰ-Ⅱ期完全切除例に対する術後放射線療法は行わないよう勧められる。エビデンスの強さはA,また総合的評価では行わないよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会,放射線治療小委員会,外科療法小委員会

CQ32
術後病理病期Ⅲ期(N2)完全切除例に対して,術後放射線療法は勧められるか?

術後病理病期Ⅲ期(N2)完全切除例に対して,術後放射線療法は考慮してもよいが,行うよう勧めるだけの根拠が明確ではない。

〔推奨度決定不能〕

解説

前述のPORT Meta-analysis Trialists Group によるメタアナリシスについて,2005 年版のメタアナリシスでは術後放射線療法の予後増悪効果はⅠ-Ⅱ期N0-1 において明確である一方,Ⅲ期N2 においては明確ではないとされた1)2)。2016 年版では解析方法が変更され,N 因子による影響は乏しいと報告されたものの,早期よりは局所進行期において予後増悪の効果は少ない可能性が示唆されている(局所進行期の早期に対するHR 0.87,95%CI:0.72-1.04,P=0.12)。これに加えて,不完全ではあるもののⅢ期N2 症例に対する術後化学放射線療法の有効性を示す前向き試験の報告が複数ある。非小細胞肺癌完全切除例に対する術後補助化学療法の有効性を示した第Ⅲ相試験(ANITA 試験)で,術後放射線療法に関するサブセット解析が報告されており,pN2 症例に限れば術後放射線療法による予後改善の可能性が示唆された(術後補助化学療法群:47.4 カ月 vs 23.8 カ月,経過観察群:22.7 カ月 vs 12.7 カ月)。ただし,この試験において術後放射線療法を行うか否かは施設毎の判断であり,実際に放射線治療を受けたpN2 症例は全体の半数であった3)。また,症例集積不良のため途中中止となった試験ではあるが,Ⅲ期N2 症例に対する術後化学療法と術後化学放射線療法とのランダム化比較試験の結果,無再発生存期間は後者で有意に長く(18 カ月 vs 28 カ月,前者の後者に対するHR 1.49,95%CI:1.01-2.20,P=0.04),生存期間中央値も同様に後者で長い傾向が示された(28 カ月 vs 40 カ月,後者の前者に対するHR 0.69,95%CI:0.46-1.04,P=0.07)。一方で,この試験で術後に化学放射線療法を完遂できたものは2/3 にとどまっていた4)

以上より,Ⅲ期N2 症例に対する術後放射線療法は有望な可能性があり,術後化学療法後に考慮してもよいが,十分に質の高い有効性が示されているわけではないことから,エビデンスの強さはC,また,その毒性も十分考慮する必要があることから,総合的評価では行うよう勧めるだけの根拠が明確ではないと判断し,推奨度決定不能とした。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会,放射線治療小委員会,外科療法小委員会

引用文献

1)
Burdett S, Rydzewska L, Tierney J, et al. Postoperative radiotherapy for non-small cell lung cancer. Cochrane Database Syst Rev. 2016; 10: CD002142.
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PORT Meta-analysis Trialists Group. Postoperative radiotherapy for non-small cell lung cancer. Cochrane Database Syst Rev. 2005;(2): CD002142.
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4)
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レジメン
非小細胞肺癌の術後補助化学療法

術後テガフール・ウラシル配合剤療法
術後シスプラチン併用療法(本邦での投与量)

Ⅰ-Ⅱ期非小細胞肺癌の放射線療法

総論
Ⅰ-Ⅱ期非小細胞肺癌における放射線治療

解説

Ⅰ-Ⅱ期非小細胞肺癌の標準治療は外科切除(肺葉以上の切除)である。この中で医学的な理由で手術できない場合は,根治的放射線治療が第一選択であることは異論がなく,従来と同様である。一方,切除可能な場合については,最近,後方視的に傾向スコアを用いた様々な比較がなされているが,現時点で手術と根治的放射線治療を比較したランダム化試験の報告はないため,従来のエビデンスを覆すには至っていない。根治的放射線治療の方法としては,体幹部定位放射線治療(SBRT)が広く普及している現状からも,線量の集中性を高める高精度放射線治療が勧められることに異論はない。粒子線治療も同様に高精度放射線治療の1 つであるが,現時点では肺癌に対して保険診療としては認められておらず,先進医療として行われている状況である。

以下,各CQ について概説する。

CQ33.医学的な理由で手術できないⅠ-Ⅱ期非小細胞肺癌に対して,根治的放射線治療は勧められるか?

前版から新たなエビデンスの質の高い報告はないが,経過観察ではなく根治的放射線治療が強く推奨される。

CQ34.切除可能なⅠ-Ⅱ期非小細胞肺癌に対して,根治的放射線治療は勧められるか?

切除以外の選択肢を示す目的で,肺葉以上の切除が可能であるが,外科切除を希望しない場合についての推奨を新たに追加した。ただし,あくまで標準治療が肺葉以上の切除であることを十分に説明することが重要である。

肺葉以上の切除が不可能な場合は,標準治療が定まっておらず,区域切除または楔状切除といった縮小手術とSBRT をはじめとする根治的放射線治療がいずれも選択肢となり得る。ただし,縮小手術でも,楔状切除より区域切除のほうがより根治性が高いという意見もあり,手術方法も含めた十分な説明が必要である。

CQ35.Ⅰ期非小細胞肺癌の根治的放射線治療における適切な照射法は何か?

前版から新たに,通常分割照射とSBRT を比較したCHISEL 試験の結果を追記し,根治的放射線治療としてのSBRT の有用性を改めて明記した。また粒子線治療についても,多施設共同研究の結果を追記し,局所制御を高める治療法の1 つであることを示した。

CQ33
医学的な理由で手術できないⅠ-Ⅱ期非小細胞肺癌に対して,根治的放射線治療は勧められるか?

エビデンスの強さC
医学的な理由で手術できないⅠ-Ⅱ期非小細胞肺癌には,根治的放射線治療の適応があり,行うよう勧められる。

〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

解説

26 の非ランダム化試験から集めた手術不能Ⅰ-Ⅱ期非小細胞肺癌2,003 人の治療成績を比較すると,2 年生存率22~72%,5 年生存率0~42%であった1)。肺癌以外で他病死する患者が11~43%あり,原病2 年生存率は54~93%,原病5 年生存率は13~39%,また局所再発は6~70%にみられた。また,Ⅰ期非小細胞肺癌に対する根治的放射線療法の80~90 年代の報告では,5 年生存率,原病生存率はそれぞれ13~29%,20~32%であった2)~4)。Ⅱ期非小細胞肺癌に対する根治的放射線療法の後方視的解析では,158 例の根治的放射線治療(通常照射,線量中央値60 Gy)の成績が報告されており,OS 中央値は22.9 カ月であり,化学療法併用群で有意なOS の延長を認めた5)。これらに加え,ガイドライン8 件のレビューでも,「Ⅰ-Ⅱ期非小細胞肺癌の非手術症例は放射線治療の適応がある」としたガイドラインがⅠ期で6 件,Ⅱ期で5 件であった6)

医学的な理由で手術できないⅠ-Ⅱ期非小細胞肺癌に対して経過観察と根治的放射線治療とのランダム化比較試験はないが,複数の報告があり,エビデンスの強さはC である。いずれのレビューにおいても医学的な理由で手術不能なⅠ-Ⅱ期非小細胞肺癌に対しては,経過観察より根治的放射線療法を行うべきと結論されているので,総合的評価では強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:放射線治療小委員会,薬物療法小委員会,外科療法小委員会

CQ34
切除可能なⅠ-Ⅱ期非小細胞肺癌に対して,根治的放射線治療は勧められるか?

エビデンスの強さC
  1. a. 肺葉切除可能なⅠ-Ⅱ期非小細胞肺癌で手術を希望しない場合は,根治的放射線治療を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:83%〕

エビデンスの強さC
  1. b. 外科切除が可能であるが肺葉以上の切除が不可能なⅠ-Ⅱ期非小細胞肺癌患者には,根治的放射線治療を行うことを考慮してもよい。

〔推奨の強さ:2,合意率:91%〕

解説

  1. a. 肺葉切除可能な臨床病期Ⅰ-Ⅱ期非小細胞肺癌に対して,根治的放射線治療(主にSBRT)と肺葉切除をランダムに比較した臨床試験は報告されていない。完遂不能であったランダム化比較試験の統合解析や傾向スコアを用いたSBRT と肺葉切除との比較が報告されているが,一定の見解を得るには至っていない7)~10)。標準治療が肺葉切除であることを十分に説明したうえで,手術自体を希望しない場合には,その根治療法として,手術不可能な対象に対する場合と同様に放射線治療が選択肢となり得る。比較試験ではないものの,このような対象に対する複数の報告があるため,エビデンスの強さはC であるが,また総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。
  2. 投票者の所属委員会:放射線治療小委員会,薬物療法小委員会,外科療法小委員会
  3. b. 肺葉切除不能な臨床病期Ⅰ-Ⅱ期非小細胞肺癌に対しては,縮小手術(区域切除または楔状切除)と根治的放射線治療(主にSBRT)が考慮される。傾向スコアを用いた縮小手術とSBRT との53 例の比較では,5 年生存割合が縮小手術で55.6%,SBRT で40.4%と,縮小手術で良好な傾向ではあるものの有意差は認めず(P=0.124)11),両者で治療成績に有意な差を認めなかったという別の報告もある12)。現状で,縮小手術とSBRT をランダムに比較した臨床試験は報告されていないが,このような対象に関する複数の報告があることから,エビデンスの強さはC とした。肺葉切除不能の場合は縮小手術と同様にSBRT を中心とした根治的放射線治療を考慮してもよく,総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。
  4. 投票者の所属委員会:放射線治療小委員会,薬物療法小委員会,外科療法小委員会

CQ35
Ⅰ期非小細胞肺癌の根治的放射線治療における適切な照射法は何か?

エビデンスの強さB
線量の集中性を高める高精度放射線照射技術を用いることが勧められる。

〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

解説

Ⅰ期非小細胞肺癌の放射線治療において肺門および縦隔に単独再発する確率は低いため1)2),肺門・縦隔への予防照射の意義は乏しく,SBRT や陽子線・炭素線照射などを用いて線量を局所に集中し,従来法より高い線量を照射する高精度放射線治療が一般的である。

末梢型Ⅰ期肺癌に対する48 Gy/4 分割のSBRT ではⅠA,ⅠB 期(第7 版)の3 年生存率は各々83%,72%と報告されており13),国内14 施設のSBRT 症例の解析では,BED10>100 Gy の照射を行い,かつ手術可能であった症例の5 年生存率は70.8%と良好であった14)。本邦で行われた前向き試験(JCOG0403)では,ⅠA 期に対する48 Gy/4 分割のSBRT を行い,手術可能例,不能例の3 年生存率はそれぞれ76.5%,59.9%で,Grade 5 の有害事象は認めなかったとしている15)。RTOG0236 による60 Gy/3 分割のSBRT では,局所制御率が98%と極めて高値であり,かつ致死的な有害事象もなかったとしている16)。中枢型肺癌の定義については未だ議論があるが,中枢型肺癌に対するSBRT の局所制御率は85%以上,BED3<210 Gy では治療関連死は1%以下,Grade 3~4 の有害事象も9%以下と報告されている17)

SBRT と通常分割照射を比較したランダム化比較試験として,SPACE 試験とCHISEL 試験の結果が報告されている。SPACE 試験は,手術不能または手術拒否のⅠ期非小細胞肺癌患者を対象に,通常分割照射(70 Gy/35 分割)とSBRT(66 Gy/3 分割)を比較した。3 年無病生存率は42%,3 年生存率はそれぞれ59%,54%と有意差は認めなかったが,SBRT のほうが局所制御される傾向にあること,照射回数の少なさ,低い毒性により標準治療と考えるべきと結論付けられている18)。CHISEL 試験では手術不能・拒否のⅠ期非小細胞肺癌において,通常分割照射(66 Gy/33 分割または50 Gy/20 分割)とSBRT(54 Gy/3 分割または48 Gy/4 分割)を比較し,SBRT のほうが良好な局所無再発率であった(HR 0.29)。OS もSBRT で有意に良好であった(HR 0.51)19)

長期観察結果では,炭素線照射の局所制御率は94.7%であった20)。原病5 年生存率,全生存率はそれぞれ75.7%,50%で,Grade 3 以上の有害事象はなかったとしている。また,陽子線照射による治療成績の報告では,24 カ月の平均観察期間で,2 年の局所無再発生存率が80%で,全生存率が84%であり,晩期有害事象も軽度であったとしている21)。2004~13 年に国内の陽子線治療全施設で施行した669 例(手術可能351 例,不適応294 例,不明24 例)について解析した結果,3 年の全生存率,無増悪生存率,局所制御率はそれぞれ,79.5%,64.1%,89.8%であった22)。また,手術可能例の3 年全生存率は86.7%であったが,手術不適応症例は70.6%と予後不良であった。同様に,重粒子線治療に関しては手術不適応の139 例を含む306 例に関する遡及的解析では,3 年の全生存率,無増悪生存率,局所制御率はそれぞれ,83.6%,69.4%,88.6%であり23),手術可能例の3 年全生存率が90%,手術不適応症例が76%であった(P<0.01)。一方,Ⅰ期非小細胞肺癌に対して粒子線治療(炭素線・陽子線治療)による線量増加や線量の集中性を高めた照射法はSBRT と同等の治療成績であったという報告があり24),X 線治療に対する優位性についてのエビデンスは乏しいが,局所制御率を高める方法として検討されるべき治療法と考えられる。ただし,本邦では肺癌に対する粒子線治療は保険診療としては認められておらず,先進医療として行われている。

以上より,Ⅰ期非小細胞肺癌の照射法として,従来の通常分割照射と比較し,線量を局所に集中し高い線量を照射する高精度放射線治療に有用性があり,総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。エビデンスの強さはB とした。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:放射線治療小委員会

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Ⅲ期非小細胞肺癌・肺尖部胸壁浸潤癌

根治照射可能症例の定義

根治照射とは治癒を目指す照射のことである。根治照射可能症例とは,病巣部(原発巣およびリンパ節転移)すべてに対して根治線量を照射可能で,かつ正常組織障害を最小限に抑えることができる症例のことである。Ⅲ期の中で,対側肺門リンパ節転移を有する症例は根治照射不能例となる。根治照射が可能か否かは,腫瘍の大きさや腫瘍の部位,肺機能や既存肺の状態などから放射線腫瘍医とともに総合的に判断する。

総論
Ⅲ期非小細胞肺癌・肺尖部胸壁浸潤癌における治療方針

解説

1)Ⅲ期非小細胞肺癌における治療方針

Ⅲ期非小細胞肺癌には種々の病態が含まれるため,呼吸器外科,内科医,放射線治療医を含めた集学的治療チームで切除可能かどうか,放射線照射可能かどうかについて検討したうえで治療方針を決定することが重要である(CQ6)。切除不能Ⅲ期N2 症例に対する標準的治療は化学放射線療法であるが(CQ36),切除可能なⅢ期N2症例に対する導入療法後の外科切除も提案されている(CQ26)。

1980 年代前半の切除不能Ⅲ期非小細胞肺癌における標準治療は,放射線治療単独であったが治療成績は不良であった。

そこで,1980 年代後半に,放射線単独療法と化学療法後に胸部放射線治療を行う逐次併用療法の比較試験が行われ,併用療法の有用性が複数の第Ⅲ相試験において証明された1)2)。その後メタアナリシスでも放射線単独治療に対して化学放射線療法がOS を改善することが示された3)4)。これらのエビデンスから臨床病期Ⅲ期を中心とする切除不能局所進行非小細胞肺癌で,全身状態が良好な患者に対する標準治療として化学放射線療法が確立された。

1990 年代に入り,化学療法と放射線療法の併用時期に関する検討が行われた。すなわち,標準治療として確立された逐次併用療法に対して,化学療法と放射線療法を同時併用する治療の優越性を検証する第Ⅲ相試験が日米の2 つのグループで実施された5)6)。これらの臨床試験から,同時併用の化学放射線療法の5 年生存割合は,逐次併用療法を上回り15%程度であることが報告された。

さらに2000 年代には,Ⅳ期非小細胞肺癌の標準治療においてキードラッグとなった第三世代細胞障害性抗癌剤を同時併用の化学放射線療法レジメンとして用いる有用性が検証された。CBDCA+weekly PTX,CDDP+DTX 療法については,いずれも従来の標準治療であったMVP 療法と比較する第Ⅲ相試験が本邦で行われ,現在の標準治療に位置付けられている7)8)

一方,胸部放射線治療について多くの臨床試験で60 Gy が用いられてきたが,近年のCT 治療計画による3 次元放射線治療の普及により,予防的リンパ節照射(ENI)を省いた高線量照射が試みられるようになった。しかし,病巣部照射野(IF)を用いた標準線量60 Gy と高線量74 Gy の生存延長効果を比較した第Ⅲ相試験で,高線量74 Gy による同時化学放射線療法では,標準線量60 Gy の場合よりも局所再発リスクが37%,死亡リスクが56%上昇すると報告された。したがって,化学放射線療法においては少なくとも60 Gyの胸部照射線量が推奨されている。

2015 年以降,Ⅳ期非小細胞肺癌においては免疫チェックポイント阻害剤が本邦でも使用可能となっている。切除不能Ⅲ期非小細胞肺癌においても同時化学放射線療法後の抗PD-L1 抗体であるデュルバルマブによる地固め療法が,プラセボ群に対してPFS,OS ともに有意に延長したと報告されたため,PS 0 および1 の局所進行非小細胞肺癌に対し,根治的同時化学放射線治療を受けた患者については標準治療と考えられる。今後,長期の安全性に関する検討が重要である。

化学放射線療法,放射線治療単独療法:CQ36~3941~43

切除不能Ⅲ期非小細胞肺癌において,前述のように全身状態良好な患者では化学放射線療法が勧められ,併用時期としては同時併用が推奨される(CQ363741)。選択されるレジメンについては,CQ3839 を参照のこと。一方,化学療法併用不能な患者に対しては,放射線単独療法が勧められる(CQ4243)。

化学放射線療法後の地固め療法:CQ40

化学放射線療法後の薬剤を変更しての細胞障害性抗癌剤による地固め療法は,勧められない(CQ40-1)。デュルバルマブによる地固め療法については,CQ40-2 を参照のこと。

2)肺尖部胸壁浸潤癌における治療方針

切除可能な肺尖部胸壁浸潤癌(SST)は,術前化学放射線療法後に外科治療を実施する集学的治療が勧められるため,病期別の項目とは別に記載している。

SST では外科治療を基本とした治療が行われ,術後30 日以内の死亡率は4~8.9%である9)~11)。Paulson の報告以来,放射線治療あるいは化学放射線療法を外科治療に組み合わせた集学的治療が行われてきた12)。しかし,SST は稀な疾患であり,大規模な術前化学放射線療法あるいは術後化学放射線療法に関するランダム化比較試験やメタアナリシスは報告されていない。

肺尖部胸壁浸潤癌:CQ44

切除可能な肺尖部胸壁浸潤癌(臨床病期T3-4N0-1)は,これまでのエビデンスをもとに,臨床的な有用性を考慮し術前化学放射線療法後に外科治療を実施する集学的治療が勧められる(CQ44)。

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6-1
Ⅲ期非小細胞肺癌

6-1-1.化学放射線療法

CQ36
切除不能局所進行非小細胞肺癌,全身状態良好(PS 0-1)の患者に対して,化学放射線療法は勧められるか?

エビデンスの強さA
切除不能局所進行非小細胞肺癌,全身状態良好(PS 0-1)の患者に対して,化学放射線療法を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

解説

切除不能局所進行非小細胞肺癌に対する放射線単独療法と化学放射線療法の比較試験をまとめたメタアナリシスの結果,CDDP を含む化学療法と放射線療法の併用群の生存率が放射線単独群の生存率に比して有意に良好であった(HR 0.87,P=0.0052,2 年時点での死亡リスクを15~30%減少)1)2)。ただし,これらの比較試験では,PS が良好な症例を対象にしており,化学療法によりOS の延長効果が得られる対象もPS 0-1 である1)~3)。また,これらのメタアナリシスには年齢上限のない比較試験も含まれるが70 歳以上の高齢者の割合は低く,高齢者に対する有用性は不明確である。本邦においては71 歳以上のPS 0-1 の高齢者を対象とした第Ⅲ相試験の結果でも,化学放射線療法群(低用量CBDCA 30 mg/m2/日,週5 回,計20 日間投与+同時胸部放射線照射60 Gy)は放射線単独療法群(胸部放射線照射60 Gy)に比べて,主要評価項目であるOS を有意に延長することが示されている(中央値 22.4 カ月 vs 16.9 カ月,HR 0.68,95%CI:0.47-0.98,P=0.0179)4)

以上より,切除不能局所進行非小細胞肺癌,全身状態良好(PS 0-1)の患者に対して化学放射線療法を行うよう勧められる。エビデンスの強さはA,また総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。ただし,化学放射線療法の有害事象発生頻度は,放射線単独療法のそれより高いため,十分な配慮が必要である。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会,放射線治療小委員会,外科療法小委員会

CQ37
切除不能局所進行非小細胞肺癌,全身状態が良好(PS 0-1)な患者の化学放射線療法における放射線療法の最適なタイミングとしては,化学療法との同時併用が勧められるか?

エビデンスの強さA
切除不能局所進行非小細胞肺癌,全身状態が良好(PS 0-1)な患者の化学療法と放射線療法の併用時期は,同時併用を行うことを推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

解説

化学療法と放射線療法の併用時期は同時のほうが併用効果は高い5)6)。CDDP+VDS+MMC 併用(MVP)療法下に放射線療法の同時併用と逐次併用を比較した第Ⅲ相試験では,同時併用群においてOS の有意な延長(16.5 カ月 vs 13.3 カ月,P=0.03998)を認めた5)。同様に,CDDP,VBL 併用下に放射線療法の同時併用と逐次併用を比較した結果,同時併用群においてOS の有意な延長(17.0 カ月vs14.6 カ月,HR 0.812,95%CI:0.663-0.996,P=0.046)を認めた。しかし,同時併用群では急性期のGrade 3 以上の好中球減少(88% vs 77%),血小板減少(9% vs 5%),食道炎(23% vs 4%)と有害事象の頻度が高かった。一方,同時併用では急性の有害事象の頻度が高く注意が必要であるが,慢性の有害事象は逐次併用と同等であることが示されている6)。また,最近の同時併用と逐次併用の臨床比較試験をまとめたメタアナリシスにおいても,同時併用群は,逐次併用群に比してOS の有意な延長を示した(HR 0.84,95%CI:0.74-0.95,P=0.004)7)

以上より,切除不能局所進行非小細胞肺癌,全身状態が良好(PS 0-1)な患者の化学放射線療法における放射線療法の最適なタイミングとして化学療法との同時併用が勧められる。エビデンスの強さはA,また総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会,放射線治療小委員会,外科療法小委員会

CQ38
化学放射線療法においてプラチナ製剤と第三世代以降の細胞障害性抗癌剤併用を勧められるか?

エビデンスの強さA
化学放射線療法においてプラチナ製剤と第三世代以降の細胞障害性抗癌剤併用を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:94%〕

解説

現在までに本邦においてMVP 療法に対するCBDCA+CPT-11 併用療法,CBDCA+PTX 併用(CP)療法,CDDP+DTX 併用(CD)療法が比較検討され,OS ではMVP 療法に対するCP 療法(CP 22.0 カ月 vs MVP 20.5 カ月,HR 0.876,P=0.876)の非劣性やCD 療法(CD 26.7 カ月 vs MVP 23.7 カ月,P>0.05)の優越性は証明されなかった。しかし,CP 療法の生存曲線は密に重なっており,有害事象が軽微であることからCP 療法が標準治療の1 つと結論された8)。CD 療法は主要評価項目である2 年生存率でMVP 療法に対する優越性は証明された(CD 60.3% vs MVP 48.1%,P=0.044)が,OS での優越性は前述のように証明されなかった9)。海外において,CP 療法に対するCDDP+ETP 併用(PE)療法が比較検討され,主要評価項目であるOS でPE 療法の優越性は証明できなかった(PE 23.3 カ月vs. CP 20.7 カ月,HR 0.76,95%CI:0.55-1.05,P=0.095)10)。また,同じく海外において非扁平上皮癌を対象にPE 療法に対するCDDP+PEM 併用(PP)療法が比較検討された。OS ではPP 療法はPE療法に対する優越性を示せなかったが(PE 26.8 カ月 vs PP 25.0 カ月,HR 0.98,95%CI:0.79-1.20,P=0.831),骨髄抑制はPE 療法に比較し軽微であった11)。ただし,この比較試験には日本人は含まれておらず,日本人における安全性,有効性のデータは十分ではない。したがって,レジメンとしてはCP 療法あるいはCD 療法が日本人における十分なエビデンスを有している。

一方,海外では標準治療の1 つであるPE 療法に関して,前述のとおりCP 療法,PP 療法と比較する2 本の第Ⅲ相試験10)11)が実施され,PE 療法の効果はCP 療法,PP 療法と同等であり,Grade 3 以上の肺臓炎はPE 療法2.6~7.4%,CP 療法8.3%,PP 療法1.8%,Grade 3 以上の食道炎はPE 療法15.5~20.0%,CP 療法6.3%,PP 療法15.5%であった。ただし,PE 療法は現状本邦では保険適用外である。

以上より,化学放射線療法においてプラチナ製剤と第三世代以降の細胞障害性抗癌剤併用を行うよう勧められる。エビデンスの強さはA,また総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会,放射線治療小委員会,外科療法小委員会

CQ39
切除不能局所進行非小細胞肺癌,シスプラチン一括投与が不適な高齢者に対して,連日カルボプラチン投与による化学放射線療法は勧められるか?

エビデンスの強さB
切除不能局所進行非小細胞肺癌,シスプラチン一括投与が不適な高齢者に対して,連日カルボプラチン投与による化学放射線療法を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,合意率:62%〕

解説

本邦において,71 歳以上の高齢者を対象とし化学放射線療法群(低用量CBDCA 30 mg/m2/日,週5 回,計20 日間投与+同時胸部放射線照射60 Gy)を放射線単独療法群(胸部放射線照射60 Gy)と比較した第Ⅲ相試験では,主要評価項目であるOS を有意に延長することが示された(中央値 22.4 カ月vs16.9 カ月,HR 0.68,95%CI:0.47-0.98,P=0.0179)4)。一方で,血液学的毒性に関しては化学放射線療法群で,放射線単独療法群に比較し高い頻度で認められ(Grade 3,4 好中球減少:57.3% vs 0%,Grade 3,4 血小板減少:22.9% vs 2.0%),重篤な感染症も化学放射線療法群で多く認められた(Grade 3,4 感染症:12.5% vs 4.1%)。

以上より,切除不能局所進行非小細胞肺癌,シスプラチン一括投与が不適な高齢者に対して,連日CBDCA 投与による化学放射線療法を行うよう勧められる。エビデンスの強さはB,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会,放射線治療小委員会,外科療法小委員会/白票6

CQ40-1
同時化学放射線療法後に異なる細胞障害性抗癌剤に変更して地固め化学療法を行うよう勧められるか?

エビデンスの強さB
同時化学放射線療法後に異なる細胞障害性抗癌剤に変更しての地固め化学療法は行わないよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

解説

CDDP+ETP と胸部放射線同時併用療法後にDTX を3 サイクル実施する地固め化学療法の意義を検証する第Ⅲ相試験が行われた。予定されていた中間解析の結果,DTX による地固め化学療法によりOS の延長効果は得られず(中央値 21.2 カ月 vs 23.2 カ月,P=0.883),Grade 3~5 の有害事象(発熱性好中球減少症10.9%,感染症11.0%,肺臓炎9.6%)の有意な増加および5.5%の治療関連死亡が報告され,試験は早期無効中止となった12)

以上より,同時化学放射線療法後に異なる細胞障害性抗癌剤に変更しての地固め化学療法は行わないよう勧められる。エビデンスの強さはB,また総合的評価では行わないよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会,放射線治療小委員会,外科療法小委員会/白票11

CQ40-2
同時化学放射線療法後に免疫チェックポイント阻害剤による地固め療法を行うよう勧められるか?

エビデンスの強さB
同時化学放射線療法後にデュルバルマブによる地固め療法を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:1,合意率:75%〕

解説

同時化学放射線療法後,病勢がコントロールされている切除不能Ⅲ期非小細胞肺癌を対象として,デュルバルマブによる地固め療法(デュルバルマブ群)を,プラセボ群と比較する第Ⅲ相試験が行われた。主要評価項目は,PFS,OS であった。初期報告から更新された報告によると,25.2 カ月の観察期間中央値におけるPFS はHR 0.51(17.2 カ月 vs 5.6 カ月,95%CI:0.41-0.63)およびOS はHR 0.68(99.73%CI:0.47-0.997,P=0.0025)で,デュルバルマブ群はプラセボ群に対してPFS およびOS をともに有意に延長した13)。従来,weekly CBDCA+PTX, CDDP+PEM 等を用いた同時化学放射線療法では同じ薬剤を用いた地固め療法が実施されている。本試験では放射線治療の終了後デュルバルマブまたはプラセボを42 日以内に投与する試験デザインで実施されたため,同じ薬剤を用いた地固め療法は行わずに,デュルバルマブ群またはプラセボ群に割り付けられている。

なお,PD-L1 発現別の解析も報告されており,PD-L1 陰性例のPFSはHR 0.73(95%CI:0.48-1.11)であり,OS のHR は1.36(95%CI:0.79-2.34)であった。しかしこの結果は,事前に予定されていなかった少数例(29.2%)の探索的な事後解析結果であり,PD-L1 発現毎による効果の違いは明らかでない。

毒性に関して,放射線肺臓炎/肺炎はデュルバルマブ群32.8%,プラセボ群23.5%で認められ,Grade 3 以上の放射線肺臓炎/肺炎については,デュルバルマブ群4.4%,プラセボ群4.3%で認められた13)。また,Grade 3 以上の免疫学的有害事象についてはデュルバルマブ群3.4%,プラセボ群2.6%であった14)

上記試験における日本人サブグループの毒性解析も報告されている15)。日本人集団における放射線肺臓炎は,デュルバルマブ群73.6%,プラセボ群60.0%であった。そのうち,Grade 3~4 の放射線肺臓炎は,デュルバルマブ群5.6%,プラセボ群2.5%であった。Grade 5 の放射線肺臓炎については,デュルバルマブ群1.4%,プラセボ群2.5%で認められた15)

以上のように,デュルバルマブによる地固め療法は,PFS,OS ともにプラセボに対して優越性を示しており,同時化学放射線療法後,病勢がコントロールされている切除不能Ⅲ期非小細胞肺癌を対象としたデュルバルマブによる地固め療法を行うよう推奨する。エビデンスの強さはB,また総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会,放射線治療小委員会,外科療法小委員会/白票3

CQ41
化学療法併用時の適切な照射法は何か?

エビデンスの強さA
  1. a. 総線量は通常分割で少なくとも60 Gy を用いるよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

エビデンスの強さB
  1. b. 74 Gy の高線量照射は行わないよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

エビデンスの強さB
  1. c. 標的病変に十分な線量を投与し,かつ正常臓器の毒性を低減するような照射野の設定を推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

解説

  1. a. 化学療法に放射線療法を併用する場合の照射方法は,化学療法と放射線を併用するタイミングを検討する試験,同時化学放射線療法における化学療法の比較や地固め化学療法を比較した試験に用いられた放射線療法の分割照射法・投与線量がすべて1 回1.8~2 Gy で週5 回,計59.4~66 Gy であったことを元としている。CDDP+VBL 同時併用放射線療法,遂時放射線照射,CDDP+ETP と同時過分割照射(計69.6 Gy)を比較した試験でも,過分割照射の有用性は証明されていない6)。また,本邦で行われた第三世代以降の細胞障害性抗癌剤を併用した化学放射線療法に関する比較第Ⅲ相試験で用いられた放射線治療は1 回2 Gy で週5 回,計30 回,総線量60 Gy である8)9)。化学療法に放射線治療を併用する場合においても,放射線単独療法と同じ最低推奨照射線量は安全性の観点から同時に照射が可能であり,通常分割で60 Gy を最低総線量とするよう勧められる。エビデンスの強さはA,また総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。
  2. 投票者の所属委員会:薬物療法小委員会,放射線治療小委員会,外科療法小委員会/白票4
  3. b. 近年のCT 治療計画による3D-CRT の普及により,予防的リンパ節照射(ENI)を省く病巣部照射野(IF)を用いた高線量照射が試みられるようになった16)17)。米国で施行されたIF を用いた標準線量60 Gy と高線量74 Gy を比較した第Ⅲ相試験で,高線量74 Gy による同時化学放射線療法では,標準線量60 Gy の場合よりも局所再発リスクが37%,死亡リスクが56%上昇すると報告された17)

    以上より,化学放射線療法において74 Gy の高線量照射は行わないよう勧められる。エビデンスの強さはB,また総合的評価では行わないよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

  4. 投票者の所属委員会:薬物療法小委員会,放射線治療小委員会,外科療法小委員会/白票6
  5. c. 照射野の設定法に関する臨床試験は乏しく,領域リンパ節転移を評価項目とした遡及的な検討を含めたメタアナリシスが1つ報告されているのみである18)。米国内で過去に施行された臨床試験のプール解析ではIF を用いて治療が施行された症例のほうが,ENI で治療が施行された症例よりも生存率が有意に良好であった19)。しかしながら,この解析では年代によって照射野が異なり,IF およびENI の照射野の設定法も一定ではない。一方,前述の第Ⅲ相試験結果とその二次解析を含めた検討では,心臓への照射線量や食道炎の重症度と予後との相関が報告された17)20)

    以上より,化学放射線療法における照射野は標的病変に十分な線量を投与し,かつ正常臓器の毒性を低減するような照射野とし治療を行うことが勧められる。エビデンスの強さはB,また総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

  6. 投票者の所属委員会:薬物療法小委員会,放射線治療小委員会(看護師2名,薬剤師1名,患者2名を含む)/実施年度:2019年

引用文献

1)
Pritchard RS, Anthony SP. Chemotherapy plus radiotherapy compared with radiotherapy alone in the treatment of locally advanced, unresectable, non-small-cell lung cancer. A meta-analysis. Ann Intern Med. 1996; 125(9): 723-9.
2)
Marino P, Preatoni A, Cantoni A. Randomized trials of radiotherapy alone versus combined chemotherapy and radiotherapy in stages IIIa and IIIb nonsmall cell lung cancer. A meta-analysis. Cancer. 1995; 76(4): 593-601.
3)
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4)
Atagi S, Kawahara M, Yokoyama A, et al. Thoracic radiotherapy with or without daily low-dose carboplatin in elderly patients with non-small-cell lung cancer: a randomised, controlled, phase 3 trial by the Japan Clinical Oncology Group(JCOG0301). Lancet Oncol. 2012; 13(7): 671-8.
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6)
Curran WJ Jr, Paulus R, Langer CJ, et al. Sequential vs. concurrent chemoradiation for stage III non-small cell lung cancer: randomized phase III trial RTOG 9410. J Natl Cancer Inst. 2011; 103(19): 1452-60.
7)
Aupérin A, Le Péchoux C, Rolland E, et al. Meta-analysis of concomitant versus sequential radiochemotherapy in locally advanced non-small-cell lung cancer. J Clin Oncol. 2010; 28(13): 2181-90.
8)
Yamamoto N, Nakagawa K, Nishimura Y, et al. Phase III study comparing second- and third-generation regimens with concurrent thoracic radiotherapy in patients with unresectable stage III non-small-cell lung cancer: West Japan Thoracic Oncology Group WJTOG0105. J Clin Oncol. 2010; 28(23): 3739-45.
9)
Segawa Y, Kiura K, Takigawa N, et al. Phase III trial comparing docetaxel and cisplatin combination chemotherapy with mitomycin, vindesine, and cisplatin combination chemotherapy with concurrent thoracic radiotherapy in locally advanced non-small-cell lung cancer: OLCSG 0007. J Clin Oncol. 2010; 28(20): 3299-306.
10)
Liang J, Bi N, Wu S, et al. Etoposide and cisplatin versus paclitaxel and carboplatin with concurrent thoracic radiotherapy in unresectable stage III non-small cell lung cancer: a multicenter randomized phase III trial. Ann Oncol. 2017; 28(4): 777-83.
11)
Senan S, Brade A, Wang LH, et al. PROCLAIM: Randomized Phase III Trial of Pemetrexed-Cisplatin or Etoposide-Cisplatin Plus Thoracic Radiation Therapy Followed by Consolidation Chemotherapy in Locally Advanced Nonsquamous Non-Small-Cell Lung Cancer. J Clin Oncol. 2016; 34(9): 953-62.
12)
Hanna N, Neubauer M, Yiannoutsos C, et al. Phase III study of cisplatin, etoposide, and concurrent chest radiation with or without consolidation docetaxel in patients with inoperable stage III non-small-cell lung cancer: the Hoosier Oncology Group and U. S. Oncology. J Clin Oncol. 2008; 26(35): 5755-60.
13)
Antonia SJ, Villegas A, Daniel D, et al. Overall survival with durvalumab after chemoradiotherapy in stage III NSCLC. N Engl J Med. 2018; 379(24): 2342-50.
14)
Antonia SJ, Villegas A, Daniel D, et al; PACIFIC Investigators. Durvalumab after Chemoradiotherapy in Stage III Non-Small-Cell Lung Cancer. N Engl J Med. 2017; 377(20): 1919-29.
15)
Murakami S, Özgüroğlu M, Villegas A, et al. PACIFIC: A double-blind, placebo-controlled Phase III study of durvalumab as consolidation therapy after chemoradiation in patients with locally advanced, unresectable NSCLC(ESMO Asia 2017 Congress, 403O). Ann oncol. 2017; 28(suppl_10). mdx670.
16)
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17)
Bradley JD, Paulus R, Komaki R, et al. Standard-dose versus high-dose conformal radiotherapy with concurrent and consolidation carboplatin plus paclitaxel with or without cetuximab for patients with stage IIIA or IIIB non-small-cell lung cancer(RTOG 0617): a randomised, two-by-two factorial phase 3 study. Lancet Oncol. 2015; 16(2): 187-99.
18)
Li R, Yu L, Lin S, et al. Involved field radiotherapy(IFRT)versus elective nodal irradiation(ENI)for locally advanced non-small cell lung cancer: a meta-analysis of incidence of elective nodal failure(ENF). Radiat Oncol. 2016; 11(1):124.
19)
Schild SE, Pang HH, Fan W, et al. Exploring radiotherapy targeting strategy and dose: a pooled analysis of cooperative group trials of combined modality therapy for stage III NSCLC. J Thorac Oncol. 2018; 13(8):1171-82.
20)
Chun SG, Hu C, Choy H, et al. Impact of Intensity-Modulated Radiation Therapy Technique for Locally Advanced Non-Small-Cell Lung Cancer: A Secondary Analysis of the NRG Oncology RTOG 0617 Randomized Clinical Trial. J Clin Oncol. 2017; 35(1): 56-62.

6-1-2.放射線単独療法

CQ42
切除不能のⅢ期非小細胞肺癌で化学療法併用不能なものに対して,放射線単独療法は勧められるか?

エビデンスの強さC
放射線単独療法を行うよう勧められる。

〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

解説

無症状のⅢ期非小細胞肺癌240 人を対象に,A 群:通常照射(50 Gy/25 回/5 週),B 群:小分割照射(40 Gy/10 回/5 週,3 週間の休止期間を含む),C 群:症状が出るまで無治療で,症状が出たら姑息照射を行う3 群のランダム化比較試験が行われ,2 年生存率は,A 群18%,B 群6%,C 群0%と通常照射群の生存率が有意に良好であった1)

以上より,切除不能のⅢ期非小細胞肺癌で化学療法併用不能なものに対する放射線単独療法は1 本のランダム化比較試験の結果のみではあるが,すでにコンセンサスとして標準的に行われており勧められる。エビデンスの強さはC,ただし総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:放射線治療小委員会

CQ43
放射線治療単独時の適切な照射法は何か?

エビデンスの強さA
通常分割照射で少なくとも60 Gy を用いるよう勧められる。

〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

解説

照射線量別の有効性に関する臨床試験では60 Gy 照射された症例において低い線量が照射された症例(40 Gy あるいは50 Gy)よりも照射野内再発が有意に低率であった。さらに,3 年生存率は有意な差とはならなかったものの,60 Gy 照射例で良好な結果であった2)。また,放射線単独で線量分割をランダム化比較した英国の4 つの臨床試験と,米国の第Ⅲ相試験との検討では3),放射線単独治療では,線量が正常組織反応および局所制御率と相関していた。一方,線量が70 Gy を超える領域に関して,T1-3N2M0 のⅢ期非小細胞肺癌を対象とした60 Gy から79.2 Gy までの過分割照射のランダム化比較試験では,OS 中央値や年次生存率は60 Gy から69.6 Gy まで線量が増加するほど改善する傾向にあったが,70 Gy 以上では改善は認められず,有害事象によっては線量増加に従って増える傾向が認められた4)

通常分割以外の照射方法に関しては,1 日に複数回照射する過分割照射や照射期間を短縮する加速照射に関する試験が行われた5)~7)。扁平上皮癌における連続加速過分割照射の優位性が報告されたが,それ以外の組織型における有効性は示されなかった6)。この試験を含め,他の報告はいずれも海外のデータであり,有意なOS の延長は示されていない。また,本邦において土日も含めて1 日3 回照射する連続加速過分割照射は汎用性に乏しいと考えられる。

以上より,化学放射線療法の適応とならない切除不能のⅢ期非小細胞肺癌に放射線単独療法を行う際には通常分割で少なくとも60 Gy/30 回を行うよう勧められる。エビデンスの強さはA,また総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:放射線治療小委員会/実施年度2018年

引用文献

1)
Reinfuss M, Glinski B, Kowalska T, et al. Radiotherapy for stage III, inoperable, asymptomatic small cell lung cancer. Final results of a prospective randomized study(240 patients). Cancer Radiother. 1999; 3(6): 475-9.
2)
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3)
Singer JM, Price P, Dale RG. Radiobiological prediction of normal tissue toxicities and tumour response in the radiotherapy of advanced non-small-cell lung cancer. Br J Cancer. 1998; 78(12): 1629-33.
4)
Cox JD, Azarnia N, Byhardt RW, et al. A randomized phase I/II trial of hyperfractionated radiation therapy with total doses of 60.0 Gy to 79.2 Gy: possible survival benefit with greater than or equal to 69.6 Gy in favorable patients with Radiation Therapy Oncology Group stage III non-small-cell lung carcinoma: report of Radiation Therapy Oncology Group 83-11. J Clin Oncol. 1990; 8(9): 1543-55.
5)
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6)
Saunders M, Dische S, Barrett A, et al. Continuous, hyperfractionated, accelerated radiotherapy(CHART)versus conventional radiotherapy in non-small cell lung cancer: mature data from the randomized multicentre trial. CHART Steering committee. Radiother Oncol. 1999; 52(2): 137-48.
7)
Bonner JA, McGinnis WL, Stella PJ, et al. The possible advantage of hyperfractionated thoracic radiotherapy in the treatment of locally advanced nonsmall cell lung carcinoma: results of a North Central Cancer Treatment Group Phase III Study. Cancer. 1998; 82(6): 1037-48.

6-2
肺尖部胸壁浸潤癌

CQ44
切除可能な肺尖部胸壁浸潤癌(臨床病期T3-4N0-1)に対して,どのような治療が勧められるか?

エビデンスの強さC
術前化学放射線療法後に外科治療を実施する集学的治療を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:92%〕

解説

肺尖部胸壁浸潤癌(SST)に対する術前化学放射線療法+手術治療の第Ⅱ相試験では1),術前治療のnon PD 率は86%,完全切除割合が75%であり,長期経過観察によるOS 中央値は36 カ月で5 年生存割合は44%であった。また,国内でもSST に対する術前化学放射線療法+手術治療の第Ⅱ相試験が行われ,術前治療のORR は61%で完全切除割合は68%,全例の5 年生存割合が56%であった2)。放射線治療についてはいずれの試験においても,原発巣および同側の鎖骨上窩に限局した照射野で行われ総線量は45 Gy/25 回であった。併用した化学療法はCDDP+ETP,MVP 療法であり,第三世代の細胞障害性抗癌剤は用いられていない。一方,国内で胸壁浸潤癌に対する術前化学放射線療法後+外科切除の第Ⅱ相試験が行われた。この試験では,第三世代細胞障害性抗癌剤を用いたCDDP+VNR が化学療法として併用され,登録された48 例中16 例がSST であった。全体集団における術前治療のORR 51%,完全切除割合は92%であり,5年生存割合は62.6%であった3)

SST に対する術後化学放射線療法に関して,手術治療+術後化学放射線療法の第Ⅱ相試験が実施され,完全切除割合は72%で全例の5 年生存割合が50%であった4)。しかしながら,本試験では,エントリー時の手術の可否基準が不明確であることに加え,登録期間が1994~2007 年までと長く,症例数も少ないため,研究の質に問題があると考えられる。

以上より,切除可能な肺尖部胸壁浸潤癌(臨床病期T3-4N0-1)に対して術前化学放射線療法後に外科治療を実施する集学的治療を行うよう勧められる。エビデンスの強さはC,ただし総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。なお,術前化学放射線療法後に外科治療を実施する集学的治療については実施可能性の検討を含め専門医施設で行うことを考慮する。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会,放射線治療小委員会,外科療法小委員会/白票1

引用文献

1)
Rusch VW, Giroux DJ, Kraut MJ, et al. Induction chemoradiation and surgical resection for superior sulcus non-small-cell lung carcinomas: long-term results of Southwest Oncology Group Trial 9416(Intergroup Trial 0160). J Clin Oncol. 2007; 25(3): 313-8.
2)
Kunitoh H, Kato H, Tsuboi M, et al. Phase II trial of preoperative chemoradiotherapy followed by surgical resection in patients with superior sulcus non-small-cell lung cancers: report of Japan Clinical Oncology Group trial 9806. J Clin Oncol. 2008; 26(4): 644-9.
3)
Kawaguchi K, Yokoi K, Niwa H, et al; Central Japan Lung Study Group. A prospective, multi-institutional phase II study of induction chemoradiotherapy followed by surgery in patients with non-small cell lung cancer involving the chest wall(CJLSG0801). Lung Cancer. 2017; 104: 79-84.
4)
Gomez DR, Cox JD, Roth JA, et al. A prospective phase 2 study of surgery followed by chemotherapy and radiation for superior sulcus tumors. Cancer. 2012; 118(2): 444-51.

レジメン
Ⅲ期非小細胞肺癌の同時併用

Ⅳ期非小細胞肺癌

ECOG(Eastern Cooperative Oncology Group)Performance Status

http://www.jcog.jp/
高齢者の定義

日本における高齢者の定義は70~75 歳以上とされており,2010 年版の肺癌診療ガイドラインでは70 歳以上を高齢者と定義していた。

しかしながら,日本の臨床試験においては75 歳以上の患者が除外されていることが多く,75 歳以上の高齢者のデータは少ない。また,近年の70 歳以上の高齢者を対象とした第三世代細胞障害性抗癌剤単剤とプラチナ製剤併用療法を比較した2 編の第Ⅲ相試験において両試験とも登録された患者の多くが75 歳以上であった。

以上より,本ガイドラインでは非小細胞肺癌において「75歳以上」を高齢者と定義する。

維持療法(Maintenance)の定義
  • Switch maintenance:プラチナ製剤併用療法による導入療法後,導入療法で使用した薬剤とは別の薬剤に切り替えて投与する方法。
  • Continuation maintenance:プラチナ製剤併用療法による導入療法後,プラチナ製剤と併用した薬剤を継続して投与する方法。

総論
Ⅳ期非小細胞肺癌における薬物療法の意義とサブグループ別の治療方針

解説

Ⅳ期非小細胞肺癌で用いられる薬物療法においては長らく細胞障害性抗癌剤がその中心を担ってきた。細胞障害性抗癌剤と緩和治療を比較したメタアナリシスによって,細胞障害性抗癌剤が有意に生存を延長させることが示されている1)。これは1 年生存率にして9%(20%から29%)の改善,もしくは約1.5 カ月のOS 延長に相当する。第三世代細胞障害性抗癌剤を用いた検討では,第三世代細胞障害性抗癌剤単剤療法でも緩和治療に比して1 年生存率で約7%の改善がみられたことが示されている2)。毒性については,別のメタアナリシスで進行非小細胞肺癌における細胞障害性抗癌剤の治療関連死が1.26%であったと報告されており,その内訳は発熱性好中球減少,虚血や血栓などの心血管系の毒性,肺炎や間質性肺障害などの肺毒性であった3)。QOL に関しては,第三世代細胞障害性抗癌剤単剤は緩和治療と比較してQOL を改善させることが報告されている4)。また,第三世代細胞障害性抗癌剤にプラチナ製剤を追加することの意義を評価した第Ⅲ相試験では,プラチナ製剤と第三世代細胞障害性抗癌剤の併用がOS・PFS 延長を示すと同時にQOL は同等であったと報告されている5)

一方,2000 年代以降になって分子標的治療薬・免疫チェックポイント阻害剤といった新規治療が登場し,これらは細胞障害性抗癌剤との比較によってその有効性を示している。

分子標的治療薬の多くはEGFR 遺伝子変異,ALK 遺伝子転座などといった癌発生の直接的な原因となるようなドライバーと称される遺伝子変異/転座に対する阻害剤である。全身状態良好で,これらドライバー遺伝子の変異/転座を有する患者に対して,それぞれのキナーゼ阻害剤を投与することでORR の増加,PFS の延長などの有効性が報告されている。EGFR 遺伝子変異,ALK 遺伝子転座では細胞障害性抗癌剤と比較した第Ⅲ相試験が実施され,キナーゼ阻害剤のほうが細胞障害性抗癌剤に比して有効であることが報告されている(CQ45)。頻度の少ないEGFRのuncommon mutation,その他のドライバー遺伝子(ROS1,BRAF)変異/転座陽性例では細胞障害性抗癌剤と比較した第Ⅲ相試験が実施されていないが,第Ⅱ相試験や第Ⅲ相試験のサブセットではそれぞれの阻害剤によって同程度の高い有効性が報告されている(CQ545960)。また多くの分子標的治療薬は一般的に細胞障害性抗癌剤よりも毒性が軽度であることが多く,少数例の検討ながらPS 不良例における前向き試験での有効性が報告されている点も重要である(CQ46)。

2015 年以降,本邦で使用可能となった免疫チェックポイント阻害剤は,細胞障害性抗癌剤や分子標的治療薬と異なる作用機序を有する新規薬剤で,腫瘍免疫における負の調節因子であるPD-1 などの免疫チェックポイント分子を標的とした抗体薬である。PS 0-1 でEGFR 遺伝子変異,ALK 遺伝子転座を有さない,PD-L1 陽性腫瘍細胞(TPS)が50%以上の非小細胞肺癌を対象としたPD-1 阻害剤(ペムブロリズマブ)とプラチナ製剤併用療法の第Ⅲ相試験(KEYNOTE-024 試験)では,ペムブロリズマブ群においてORR,PFS,OS の有意な改善が示され,毒性も忍容可能であった(CQ63)。さらに,進行非小細胞肺癌を対象として細胞障害性抗癌剤(プラチナ製剤併用療法)にPD-1/PD-L1 阻害剤の上乗せを評価した複数の第Ⅲ相試験(CQ68)が報告されており,PD-1/PD-L1 阻害剤の上乗せの高い有効性が示されている。

以上,全身状態良好なⅣ期非小細胞肺癌患者に対しては薬物療法(細胞障害性抗癌剤,分子標的治療薬,免疫チェックポイント阻害剤)が緩和治療に比してOS を延長し,QOL も改善することが示されている。治療方針の決定に際して,分子標的治療薬では腫瘍におけるドライバー遺伝子の変異/転座の有無を,ペムブロリズマブではPD-L1 の発現状態を確認する必要があり,これらの薬剤を適切なタイミングで使用するためには組織,病期診断と並行して目の前の患者が1)ドライバー遺伝子変異/転座陽性例,2)ドライバー遺伝子変異/転座陰性のPD-L1 陽性細胞50%以上,3)それ以外,のいずれのサブグループに属するのかを診断することが重要である。以下に各サブグループにおける治療方針を述べる。

1)ドライバー遺伝子変異/転座陽性例:CQ45~62

ドライバー遺伝子変異/転座陽性例では前述したようにそれぞれのキナーゼ阻害剤によってORR,PFS の改善が報告されている。なおこれらの第Ⅲ相試験では,プラチナ製剤併用療法の後治療としてキナーゼ阻害剤へのクロスオーバーが高率に行われたために,OS の有意な差は示されていない。EGFR 遺伝子変異陽性例の大規模研究において,一次から三次治療のエルロチニブ単剤のPFS に有意差を認めないことが報告されており6),キナーゼ阻害剤と細胞障害性抗癌剤の投与順序に関して,現時点で明確な結論はない。しかしながら,米国で行われた前向き観察研究では,733 例を対象に10 遺伝子について解析し,466 例(64%)にドライバー遺伝子変異/転座を認めたが,ドライバー遺伝子変異/転座があり,それを標的とした治療薬を使用した260 例のOS 中央値は3.5 年であったのに対し,ドライバー遺伝子変異/転座があったにもかかわらず,それを標的とした治療をしていない患者のOS 中央値は2.4 年であった(propensity score-adjusted hazard ratio:0.69,95%CI:0.53-0.9,P=0.006)7)

以上より,ドライバー遺伝子変異/転座陽性例に対してキナーゼ阻害剤の投与機会を逸しないことは重要であり,細胞障害性抗癌剤よりも優先して投与することを推奨する。増悪後の二次治療としては全身状態に応じて細胞障害性抗癌剤が勧められる(CQ65~67)。ドライバー遺伝子変異/転座陽性例に対する免疫チェックポイント阻害剤についてはCQ4950 を参照のこと。また,扁平上皮癌でドライバー遺伝子変異/転座陽性であった場合についてはCQ62 を参照のこと。

2)ドライバー遺伝子変異/転座陰性のPD-L1 陽性細胞50%以上:CQ6364

PD-1/PD-L1 阻害剤の高い臨床効果が期待できるサブグループであり,初回治療としてペムブロリズマブ単剤療法を行うよう勧められる。また,細胞障害性抗癌剤(プラチナ製剤併用療法)+PD-1/PD-L1 阻害剤治療も勧められる。上記の治療増悪後の二次治療としては,全身状態に応じて細胞障害性抗癌剤を行うよう勧められる。なお,ドライバー遺伝子変異/転座陽性例は前項1)に準じる。

3)ドライバー遺伝子変異/転座陰性,PD-L1 陽性細胞50%未満,もしくは不明:CQ65~78

このサブグループに対する一次治療として,分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害剤が細胞障害性抗癌剤よりも有効であることは示されていない。一方で,プラチナ製剤併用療法+PD-1/PD-L1 阻害剤治療は,プラチナ製剤併用療法のみと比較し有意な生存延長効果を示しており,プラチナ製剤併用療法の対象で,かつPD-1/PD-L1 阻害剤の上乗せが可能な症例はこれらの多剤併用療法が勧められる。

引用文献

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7-1
ドライバー遺伝子変異/転座陽性

7-1-1.遺伝子変異陽性の治療方針(非扁平上皮癌)

CQ45
全身状態良好(PS 0-1)なドライバー遺伝子変異/転座陽性例に対する最適な一次治療は何か?

エビデンスの強さA
ドライバー遺伝子(EGFR,ALK,ROS1,BRAF)変異/転座を有するPS 0-1 の患者に,それぞれの遺伝子変異/転座を標的とするキナーゼ阻害剤を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

解説

EGFR 遺伝子変異,ALK 遺伝子転座,ROS1 遺伝子転座,BRAF 遺伝子変異は癌発生の直接的な原因となるような遺伝子変異/転座であり,本ガイドラインではこれらの遺伝子をドライバー遺伝子と総称する。全身状態良好で,これらドライバー遺伝子の変異/転座を有する患者に対して,それぞれの遺伝子変異/転座を標的とするキナーゼ阻害剤によるORR の増加,PFS の延長などの有効性が報告されている。EGFR 遺伝子変異,ALK 遺伝子転座では細胞障害性抗癌剤との比較試験が実施され,キナーゼ阻害剤のほうが有効性が明らかに高いことが報告されている1)~8)。EGFR のuncommon mutation(CQ54),ROS1 遺伝子転座(CQ59),BRAF 遺伝子変異陽性(CQ60)では患者数が少ないために,細胞障害性抗癌剤との第Ⅲ相試験は実施されていないが,第Ⅱ相試験や第Ⅲ相試験のサブセットではそれぞれの遺伝子変異/転座に応じたキナーゼ阻害剤によって高い有効性を示している9)~14)。米国で行われた前向き観察研究では,733 例を対象に10 遺伝子について解析し,466 例(64%)にドライバー遺伝子変異/転座を認めたが,ドライバー遺伝子変異/転座があり,それを標的としたキナーゼ阻害剤を使用した260 例のOS 中央値は3.5 年であったのに対し,ドライバー遺伝子変異/転座があったにもかかわらず,それを標的とした治療をしていない患者のOS 中央値は2.4 年であった(propensity score-adjusted HR 0.69,95%CI:0.53-0.9,P=0.006)15)。ドライバー遺伝子変異/転座に対する免疫チェックポイント阻害剤のデータは乏しいが,現時点でキナーゼ阻害剤の効果を上回るものではない(CQ50)。

なお,これらの試験では後治療としてクロスオーバーが認められていることから,OS の差は示されておらず優先順位を付けることはできない。EGFR 遺伝子変異陽性例の大規模研究において,一次から三次治療のエルロチニブ単剤のPFS に有意差を認めないことが報告されており16),EGFR-TKI 単剤と細胞障害性抗癌剤の投与順序に関しては,現時点で明確な結論はない。ALK 遺伝子転座陽性に対するALK-TKI(クリゾチニブ)単剤と細胞障害性抗癌剤を比較した第Ⅲ相試験では,長期OS データの生存曲線においてALK-TKI 群が上回っているものの有意差は示されなかった(HR 0.760,95%CI:0.548-1.053)17)。毒性についてはキナーゼ阻害剤で軽い傾向にあるものの,薬剤により毒性のプロファイルおよび程度が異なる。

以上より,ドライバー遺伝子変異/転座を有するPS 0-1 の患者には,それぞれの遺伝子変異/転座を標的とするキナーゼ阻害剤が勧められる。エビデンスの強さはA,また総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会

CQ46
PS 2-4 のドライバー遺伝子変異/転座陽性例に対する最適な一次治療は何か?

エビデンスの強さC
  1. a. ドライバー遺伝子(EGFR,ALK,ROS1,BRAF)変異/転座を有するPS 2 の患者に,それぞれの遺伝子変異/転座を標的とするキナーゼ阻害剤を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:96%〕

エビデンスの強さC
  1. b. ドライバー遺伝子(EGFR,ALK,ROS1,BRAF)変異/転座を有するPS 3-4 の患者に,それぞれの遺伝子変異/転座を標的とするキナーゼ阻害剤を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,合意率:93%〕

解説

  1. a. EGFR 遺伝子変異陽性やALK 遺伝子転座陽性の患者を対象とした細胞障害性抗癌剤との比較試験にもPS 2 の患者が5~10%程度含まれており,PS 0-1 と同等の有効性が示されている3)4)7)8)。また,EGFR 遺伝子変異陽性の患者に対するゲフィチニブや,ALK 遺伝子転座陽性の患者に対するアレクチニブはPS 不良例に対する有効性が報告されている18)19)

    PS 2 のEGFR のuncommon mutation,ROS1 遺伝子転座,BRAF 遺伝子変異陽性に関するデータは患者数が少ないために限られているが,EGFR やALK の結果を鑑みて,キナーゼ阻害剤による治療を行うよう推奨される。

    以上より,ドライバー遺伝子変異/転座を有するPS 2 の患者には,それぞれの遺伝子変異/転座を標的とするキナーゼ阻害剤が勧められる。エビデンスの強さはC,ただし総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

  2. 投票者の所属委員会:薬物療法小委員会
  3. b. PS 3-4 のEGFR 遺伝子変異陽性の患者を対象としたゲフィチニブや,ALK 遺伝子転座陽性の患者を対象としたアレクチニブはPS 不良例に対する有効性が報告されており,患者数はそれぞれ22 例,6 例と少ないが,安全性について大きな問題は認められなかった18)19)。なお,ゲフィチニブの検討ではORR が66%,79%の患者でPS の改善を認めており,アレクチニブの検討では6例中のすべての症例でPS の改善を認めている。

    PS 3-4 のROS1 遺伝子転座,EGFRのuncommon mutation,BRAF 遺伝子変異陽性に関するデータはPS 2 よりもさらに限られていたり,データがないものもあるが,PS 2 と同様に有効性が期待され得る。

    一方,キナーゼ阻害剤によって有害事象の頻度やプロファイルは様々であり,全身状態良好例においてさえも高い頻度で休薬・減量を必要とする薬剤が存在するため,PS 3-4 で用いる場合はより一層の注意が必要である。

    以上より,ドライバー遺伝子変異/転座を有するPS 3-4 の患者には,それぞれの遺伝子変異/転座を標的とするキナーゼ阻害剤が勧められる。エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

  4. 投票者の所属委員会:薬物療法小委員会

CQ47
75 歳以上のドライバー遺伝子変異/転座陽性例に対する最適な一次治療は何か?

エビデンスの強さC
ドライバー遺伝子(EGFR,ALK,ROS1,BRAF)変異/転座を有する75 歳以上の患者に,それぞれの遺伝子変異/転座を標的とするキナーゼ阻害剤を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:96%〕

解説

75 歳以上のEGFR 遺伝子変異陽性進行非小細胞肺癌を対象とした国内でのゲフィチニブ単剤の第Ⅱ相試験において,ORR 74%,PFS 中央値12.3 カ月と若年者と同等の有効性と安全性が報告されている20)。エルロチニブ単剤については国内での第Ⅱ相試験において,75 歳超と75 歳以下で同等の有効性が示されている21)

EGFR のuncommon mutation,ALK 遺伝子転座,ROS1 遺伝子転座,BRAF 遺伝子変異に関して,75 歳以上に対する有効性を示したサブグループのデータはないが,一般にキナーゼ阻害剤は毒性が細胞障害性抗癌剤と比べて軽いため,高齢者に対しても比較的安全に使用できると想定される。EGFR-TKI の研究結果を鑑みて,ALK 遺伝子転座,ROS1 遺伝子転座,BRAF 遺伝子変異に対しては75歳以上でもキナーゼ阻害剤を行うことを考慮し得る。

以上より,ドライバー遺伝子変異/転座を有する75 歳以上の患者には,それぞれの遺伝子変異/転座を標的とするキナーゼ阻害剤が勧められる。エビデンスの強さはC,ただし総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。ただし,薬剤による毒性には若年者より一層の注意が必要である。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会

CQ48
ドライバー遺伝子変異/転座陽性例に細胞障害性抗癌剤は勧められるか?

エビデンスの強さA
ドライバー遺伝子変異/転座陽性例の患者においても,ドライバー遺伝子変異/転座のない患者で推奨される細胞障害性抗癌剤を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

解説

ドライバー遺伝子変異/転座のある患者におけるキードラッグはキナーゼ阻害剤であるが,これまでに行われた第Ⅲ相試験では,多くの症例がキナーゼ阻害剤の前後で細胞障害性抗癌剤の投与を受けている。後解析ではあるが,これらの第Ⅲ相試験にて細胞障害性抗癌剤を投与されている患者の予後が良い傾向にあり23)24),日本の大規模観察研究においても同様の傾向が認められている25)。ドライバー遺伝子変異/転座陽性例のみを対象として細胞障害性抗癌剤とベストサポーティブケアを比較した試験は存在しないが,ドライバー遺伝子変異/転座陽性例は陰性例と比較して細胞障害性抗癌剤の効果が明らかに劣ることを示唆するデータはないため,ドライバー遺伝子変異/転座不明例やドライバー遺伝子変異/転座陽性例を含む非小細胞肺癌患者を対象とした過去の細胞障害性抗癌剤のエビデンスは本対象に適応できると考える(CQ65~67 参照。ただし細胞障害性抗癌剤と免疫チェックポイント阻害剤の併用についてはCQ49 参照)。

以上より,ドライバー遺伝子変異/転座のある患者においても,いずれかのタイミングで細胞障害性抗癌剤を行うことが勧められる。エビデンスの強さはA,また総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会

CQ49
ドライバー遺伝子変異/転座陽性例に細胞障害性抗癌剤と免疫チェックポイント阻害剤の併用は勧められるか?

ドライバー遺伝子変異/転座陽性の患者にプラチナ製剤併用療法と免疫チェックポイント阻害剤の併用療法を行うよう勧めるだけの根拠が明確ではない。

〔推奨度決定不能〕

解説

一次治療における非扁平上皮非小細胞肺癌に対する,CBDCA+PTX+ベバシズマブ+アテゾリズマブ療法とCBDCA+PTX+ベバシズマブ療法を比較した第Ⅲ相試験(IMpower150 試験)のEGFR 遺伝子変異もしくはALK 遺伝子転座陽性のサブグループ解析において,PFS 中央値9.7 カ月vs 6.1 カ月(HR 0.59,95%CI:0.37-0.94)とアテゾリズマブ併用群が有意に延長を示したが26),OS の中間解析の時点では有意な延長を認めなかった(未到達vs 17.5 カ月,HR 0.54,95%CI:0.29-1.03)27)。しかし,このサブグループ解析はプロトコールであらかじめ予定されていた解析ではなく,また前述した遺伝子変異/転座の有無は割付調整因子にも設定されておらず,解釈には注意が必要である。またGrade 3 以上の有害事象はアテゾリズマブ併用群58.5% vs 非併用群50.0%であり,下痢(20.6% vs 15.2%)や皮疹(13.3% vs 5.1%)など免疫関連有害事象を含めた毒性がアテゾリズマブ併用群で多い傾向にあった。1 つの第Ⅲ相試験の探索的なサブグループ解析のみであり,現時点では,ドライバー遺伝子変異/転座陽性例にプラチナ製剤併用療法と免疫チェックポイント阻害剤の併用療法を勧めるだけの根拠が明確でないと判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会

CQ50
ドライバー遺伝子変異/転座陽性例に免疫チェックポイント阻害剤単独療法は勧められるか?

ドライバー遺伝子変異/転座陽性例の患者に免疫チェックポイント阻害剤単独療法を勧めるだけの根拠が明確ではない。

〔推奨度決定不能〕

解説

一次治療におけるPD-L1陽性細胞50%以上の非小細胞肺癌に対するペムブロリズマブとプラチナ製剤併用療法の第Ⅲ相試験(KEYNOTE-024 試験)において,EGFR 遺伝子変異陽性,ALK 遺伝子転座陽性の患者は除外されていた。二次治療において,免疫チェックポイント阻害剤(ニボルマブ,ペムブロリズマブ,アテゾリズマブ)とDTX の第Ⅲ相試験を統合解析した報告の中で,EGFR 遺伝子変異陽性例における免疫チェックポイント阻害剤のDTX に対するOS はHR 1.11(95%CI:0.80-1.53,P=0.54)であり,免疫チェックポイント阻害剤は全体集団では有効性が示されているもののEGFR 遺伝子変異陽性例において優れているという結果は示されていない28)。単施設の報告では,EGFR 遺伝子変異陽性もしくはALK 遺伝子転座陽性例における免疫チェックポイント阻害剤のORR は3.6%と低かった29)。このため,ドライバー遺伝子変異/転座陽性の患者に対する免疫チェックポイント阻害剤の効果は,ドライバー遺伝子変異/転座陰性の患者と比べて低い可能性がある。しかし,これらの報告は対象となった症例数の少ないサブグループの結果であることに加え,EGFR/ALK 以外のドライバー遺伝子変異/転座陽性例の報告は少ない。

以上より,ドライバー遺伝子変異/転座陽性例における免疫チェックポイント阻害剤の投与の可否を判断するだけの根拠が明確でないと判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会

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7-1-2.EGFR 遺伝子変異陽性(非扁平上皮癌)

EGFR 遺伝子変異陽性の一次治療:エクソン19 欠失またはL858R 変異陽性

CQ51
PS 0-1 の場合,一次治療としてどの治療法が勧められるか?

エビデンスの強さB
  1. a. オシメルチニブを行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:83%〕

エビデンスの強さB
  1. b. ダコミチニブを行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,合意率:83%〕

エビデンスの強さA
  1. c. ゲフィチニブ,エルロチニブ,アファチニブを行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,合意率:100%〕

エビデンスの強さB
  1. d. エルロチニブ+ベバシズマブを行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,合意率:92%〕

エビデンスの強さB
  1. e.ゲフィチニブ+カルボプラチン+ペメトレキセドを行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,合意率:92%〕

解説

EGFR 遺伝子変異の約90%を占めるエクソン19 の欠失変異とエクソン21 のL858R 変異は,EGFR-TKI の感受性を高める。進行非小細胞肺癌を対象にした EGFR-TKI(ゲフィチニブ,エルロチニブ,アファチニブ)とプラチナ製剤併用療法の第Ⅲ相試験におけるEGFR 遺伝子変異の患者はエクソン19 の欠失変異とL858R 変異に限定されているか1)~3),大部分を占めていた4)~6)。すべての試験において一貫してEGFR-TKI のプラチナ製剤併用療法に対するPFS の有意な延長が報告され,QOL 指標の一部が改善することも示されている7)8)

  1. a. EGFR 遺伝子変異(エクソン19 欠失またはL858R 変異陽性)陽性,PS 0-1 のⅣ期非小細胞肺癌患者を対象として,オシメルチニブ単剤と第一世代EGFR-TKI 単剤(ゲフィチニブまたはエルロチニブ)を比較する第Ⅲ相試験(FLAURA 試験)が行われ,主要評価項目であるPFS はHR 0.46(18.9 カ月 vs 10.2 カ月,95%CI:0.37-0.57,P<0.001)と有意に延長することが示された9)。また,毒性においても,第一世代EGFR-TKI 単剤では下痢57%,ざ瘡用皮疹48%,AST 上昇25%,間質性肺疾患2%に対し,オシメルチニブでは下痢58%,ざ瘡用皮疹25%,AST 上昇9%,間質性肺疾患4%であり,皮疹,肝機能障害に関してはオシメルチニブのほうが軽い傾向であった。

    以上より,治療効果と毒性のバランスを考慮し,EGFR 遺伝子変異(エクソン19欠失またはL858R 変異)陽性例の一次治療としてはオシメルチニブを行うよう推奨する。エビデンスの強さはB,また総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

  2. 投票者の所属委員会:薬物療法小委員会
  3. b. EGFR 遺伝子変異(エクソン19欠失またはL858R変異)陽性,PS 0-1 のⅣ期非小細胞肺癌患者を対象として,ダコミチニブ単剤とゲフィチニブ単剤を比較する第Ⅲ相試験(ARCHER1050 試験)が行われ,主要評価項目であるPFS はHR 0.59(14.7 カ月vs 9.2 カ月,95%CI:0.47-0.74,P<0.0001)と,ダコミチニブ単剤はゲフィチニブ単剤に対しPFS を有意に延長することが示された10)。副次評価項目であるOS は,HR 0.760(34.1 カ月vs 26.8 カ月,95%CI:0.582-0.993)という結果であった11)。しかし,ゲフィチニブでは下痢56%,爪囲炎20%,ざ瘡用皮疹29%に対し,ダコミチニブでは下痢87%,爪囲炎62%,ざ瘡用皮疹49%であり,毒性においてはダコミチニブが強かった。

    以上より,効果と毒性のバランスを考慮し,EGFR 遺伝子変異(エクソン19 欠失またはL858R 変異)陽性例の一次治療としてはダコミチニブを行うよう提案する。エビデンスの強さはB,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

  4. 投票者の所属委員会:薬物療法小委員会
  5. c. 第一世代のEGFR-TKI 同士を直接比較した第Ⅲ相試験で優越性が示されたものはない12)。また,ランダム化第Ⅱ相試験(LUX-Lung7 試験)では,アファチニブがゲフィチニブに対して,PFSの延長を示したものの,毒性はより高度であった13)

    以上より,EGFR遺伝子変異(エクソン19 欠失またはL858R 変異)陽性例の一次治療としてはゲフィチニブ,エルロチニブ,アファチニブを行うよう提案する。エビデンスの強さはA,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

  6. 投票者の所属委員会:薬物療法小委員会
  7. d. エルロチニブ+ベバシズマブは,国内で行われた第Ⅲ相試験(NEJ026 試験)で,主要評価項目であるPFS のHR 0.605(16.9 カ月vs 13.3 カ月,95%CI:0.417-0.877,P=0.01573)であり,エルロチニブ単剤に対しPFS を有意に延長することが示された14)。毒性については,併用群でベバシズマブ関連の有害事象が認められている(Grade 3 以上の高血圧が9%,蛋白尿が32%,出血性事象が26%など)。また同様のデザインで行われたランダム化第Ⅱ相試験(JO25567 試験)では,PFS がHR 0.54(16.0 カ月vs 9.7 カ月,95%CI:0.36-0.79)と有意差が認められたが,OS においては有意差を認めなかった15)16)

    以上より,EGFR 遺伝子変異(エクソン19 欠失またはL858R 変異)陽性例の一次治療としてはエルロチニブ+ベバシズマブを行うよう提案する。エビデンスの強さはB,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

  8. 投票者の所属委員会:薬物療法小委員会
  9. e. ゲフィチニブ+CBDCA+PEM 併用療法とゲフィチニブ単剤療法の第Ⅲ相試験(NEJ009 試験)で,主要評価項目の1つであるPFS のHR 0.484(20.9 カ月vs 11.2 カ月,95%CI:0.391-0.625,P<0.010)であったが,PFS2においてはHR 0.966(20.9 カ月vs 20.7 カ月,95%CI:0.766-1.220,P=0.774)と両群間で有意差を認めなかった。OS の解析においてはHR 0.695(52.2カ月vs 38.8カ月)という結果であった。毒性については,併用群でGrade 3以上の血液毒性の頻度が高い結果であった17)。(*PFS2 は,ゲフィチニブ単剤療法群において,ゲフィチニブでPD になった後の次治療でPDになるまでの期間と,ゲフィチニブ+CBDCA+PEM 併用療法でPDになるまでの期間の比較)

    以上より,EGFR 遺伝子変異(エクソン19欠失またはL858R 変異)陽性例の一次治療としてはゲフィチニブ+CBDCA+PEM を行うよう提案する。エビデンスの強さはB,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

  10. 投票者の所属委員会:薬物療法小委員会

CQ52
PS 2 の場合,一次治療としてどのEGFR-TKI が勧められるか?

エビデンスの強さC
EGFR-TKI(ゲフィチニブ,エルロチニブのいずれか)を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

解説

EGFR 遺伝子変異陽性の進行非小細胞肺癌を対象としたエルロチニブとプラチナ製剤併用療法の2 つの第Ⅲ相試験において,PS 2 は各々7%,14%含まれておりPS 0-1 と同等の有効性が示されている2)3)。また,ゲフィチニブはPS 不良例に対する有効性が報告されている18)19)。アファチニブ,ダコミチニブに関しては,PS 2 に対する安全性と有効性の検討は十分ではない5)6)10)。オシメルチニブについても,PS 2 に対する有効性の検討は十分でないが,ゲフィチニブやエルロチニブと比較しても間質性肺疾患以外の毒性は軽度であり,使用を考慮し得る9)

以上より,PS 2 の場合,EGFR 遺伝子変異(エクソン19 欠失またはL858R 変異)陽性例の一次治療としては,毒性を考慮したうえで,ゲフィチニブまたはエルロチニブのいずれかのEGFR-TKI が勧められる。エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会/実施年度2018年

CQ53
PS 3-4 の場合,一次治療としてどのEGFR-TKI が勧められるか?

エビデンスの強さC
ゲフィチニブを行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:75%〕

解説

EGFR遺伝子高感受性変異陽性でPS 3-4 が大多数を占める予後不良群を対象としてゲフィチニブの投与を評価する第Ⅱ相試験(NEJ001 試験)が行われ,約80%の患者でPS が改善し,ORR 66%,OS 17.8 カ月,PFS 中央値6.5 カ月と極めて良好な治療効果が得られた18)。一方,PS 不良,男性,喫煙歴,既存の間質性肺炎,正常肺領域が少ない患者,心疾患を合併した患者などで間質性肺障害発症のリスクが高いことが報告されており20)21),慎重な検討も必要である。なお,ガイドライン検討委員会薬物療法及び集学的治療小委員会では,特にPS 4 に対する投与の是非について議論がなされた。このような集団においては益の評価項目としてPS や症状の改善は重要であり,EGFR-TKI によってこれらの改善が期待されるものであるのかを十分吟味する必要がある。

以上より,PS 3-4 の場合,EGFR 遺伝子変異(エクソン19 欠失またはL858R 変異)陽性例の一次治療としては,ゲフィチニブが勧められる。エビデンスの強さはC,ただし総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会

EGFR 遺伝子変異陽性の一次治療:エクソン18-21 変異(エクソン19 欠失・L858R 変異を除く)

CQ54
PS 0-1 の場合,一次治療としてどのEGFR-TKI が勧められるか?

エビデンスの強さC
  1. a.エクソン18-21 の遺伝子変異(エクソン19 欠失・L858R 変異・エクソン20 の挿入変異・T790M変異以外)には EGFR-TKI(ゲフィチニブ,エルロチニブ,アファチニブ)による治療を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,合意率:87%〕

エビデンスの強さC
  1. b.エクソン20 の挿入変異にはEGFR-TKI を行わないよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:70%〕

エビデンスの強さD
  1. c.EGFR-TKI 未治療のT790M 変異にオシメルチニブを行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,合意率:67%〕

*EGFR 遺伝子変異の種類,検査法などの詳細については「肺癌患者におけるEGFR 遺伝変異検査の手引き」(日本肺癌学会)を参照

*Uncommon mutation がある場合は,エクソン19 の欠失とL858R 変異が同時にあったとしても,uncommon mutation に分類する。

解説

  1. a. EGFR 遺伝子変異の約90%をエクソン19 の欠失変異,エクソン21のL858R 変異が占める22)。その他の遺伝子変異はuncommon mutation と称され,エクソン18-21 にわたり(E709X,G719X,S768I,P848L,L861Q,エクソン19 の挿入変異など)が報告されている。これらの変異でもEGFR-TKI の感受性はあるがORRはやや劣ると報告されている23)。第Ⅲ相試験の多くは,これらの変異が除外されているが1)~3),含まれたとしても全体の1割程度にすぎない4)~6)

    T790Mとエクソン20の挿入変異以外のuncommon mutation では,EGFR-TKI にて48~71%のORR が得られている23)24)。なかでもアファチニブのORR は71.1%であり,ゲフィチニブやエルロチニブより高い傾向にあった24)。アファチニブのデータは前向き試験の結果ではあるものの少数のサブセットであり,他のEGFR-TKI と差を付けるだけの根拠に乏しいと考えられた。

    以上より,エクソン18-21 の遺伝子変異(エクソン19 欠失・L858R 変異・エクソン20 の挿入変異・T790M 変異以外)陽性例に対しては,ゲフィチニブ,エルロチニブ,アファチニブのいずれかのEGFR-TKIが勧められる。エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

  2. 投票者の所属委員会:薬物療法小委員会
  3. b. エクソン20 の挿入変異の報告は少なくEGFR-TKI のORR も10%弱であることから,一次治療としてEGFR-TKIが有効とは判断できない24)25)

    以上より,エクソン20 の挿入変異陽性例に対しては,EGFR-TKI は勧められない。エビデンスの強さはC,また総合的評価では行わないよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

  4. 投票者の所属委員会:薬物療法小委員会
  5. c. EGFR-TKI(ゲフィチニブ,エルロチニブ,アファチニブ)による治療の前にT790M 変異陽性の患者の報告は少なく,前述のFLAURA 試験でもT790M 変異を認めたのは556 例中5 例のみであった。また,オシメルチニブの第Ⅰ相試験では未治療のT790M 変異陽性の患者7例中6例でPRを認めている26)。EGFR-TKI 未治療のT790M 変異に対するデータは限られているが,既治療のT790M 変異陽性に対するオシメルチニブの効果は第Ⅲ相試験でも示されており,未治療例においても効果が期待できると考えられる。

    以上より,EGFR-TKI 未治療のT790M 変異陽性例に対しては,オシメルチニブが勧められる。エビデンスの強さはD,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

  6. 投票者の所属委員会:薬物療法小委員会

EGFR 遺伝子変異陽性の二次治療以降

CQ55
一次治療EGFR-TKI 耐性または増悪後のT790M 変異陽性例に対する最適な二次治療は何か?

エビデンスの強さB
一次治療EGFR-TKI 耐性または増悪後のT790M 変異陽性例に対するオシメルチニブによる治療を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

解説

オシメルチニブは,活性型EGFR 遺伝子変異と耐性変異であるEGFR T790M 変異の両方を阻害する第三世代 EGFR-TKI である。第一・二世代の EGFR-TKI(ゲフィチニブ,エルロチニブ,アファチニブ)による治療の後にT790M 変異陽性となった患者を対象にオシメルチニブとプラチナ製剤併用療法(CDDP またはCBDCA+PEM)を比較した第Ⅲ相試験(AURA3 試験)が報告された27)。主要評価項目であるPFS の中央値は,オシメルチニブ群が10.1 カ月,プラチナ製剤併用療法群が4.4 カ月(HR 0.30,95%CI:0.23-0.41,P<0.001)であった。Grade 3 以上の毒性もオシメルチニブ群が低かった(6% vs 34%)。

以上より,一次治療EGFR-TKI 耐性または増悪後のT790M 変異陽性例に対しては,オシメルチニブが勧められる。エビデンスの強さはB,また総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会

引用文献

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7-1-3.ALK 遺伝子転座陽性(非扁平上皮癌)

ALK 遺伝子転座陽性の一次治療

CQ56
PS 0-1 の場合,一次治療としてどのALK-TKI が勧められるか?

エビデンスの強さA
a. アレクチニブを行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

エビデンスの強さA
b. クリゾチニブを行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,合意率:96%〕

エビデンスの強さB
c. セリチニブを行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,合意率:96%〕

解説

ALK-TKI とプラチナ製剤併用療法を比較した第Ⅲ相試験では,すべての試験において一貫してALK-TKI のプラチナ製剤併用療法に対するPFSの有意な延長が報告され,QOL 指標の一部においてALK-TKI のほうがプラチナ製剤併用療法より優れることが示されている1)~3)。なお,ALK-TKI 同士を比較した試験でOS の有意な延長効果を示した薬剤は現時点ではない。

  1. a. ALK 遺伝子転座陽性,PS 0-1 のⅣ期非小細胞肺癌を対象として,アレクチニブとクリゾチニブを比較した第Ⅲ相試験が2 編報告され,国内で実施された試験(J-ALEX 試験)ではPFS のHR が0.38(25.9 カ月 vs 10.2 カ月,95%CI:0.26-0.55,P<0.0001),海外で行われた試験(ALEX 試験)では,PFS のHR が0.47(未到達 vs 11.1 カ月,95%CI:0.34-0.65,P<0.001)と,ともにPFS を有意に延長することが示されている4)5)。またGrade 3 以上の有害事象は,J-ALEX 試験においてアレクチニブで32%,クリゾチニブで57%とアレクチニブのほうが低頻度であった6)。アレクチニブの主な毒性は,味覚障害,筋肉痛,皮疹であり,また他のキナーゼ阻害剤と同様に間質性肺炎に注意が必要である。

    以上より,治療効果と毒性のバランスを考慮し,ALK 遺伝子転座陽性例の一次治療としてはアレクチニブを行うよう推奨する。エビデンスの強さはA,また総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

  2. 投票者の所属委員会:薬物療法小委員会/実施年度:2018年
  3. b. ALK 遺伝子転座陽性,PS 0-1 のⅣ期非小細胞肺癌を対象として,クリゾチニブとプラチナ製剤併用療法を比較した2 つの第Ⅲ相試験が行われ,PROFILE1014 試験ではPFS のHR 0.45(10.9 カ月 vs 7.0 カ月,95%CI:0.35-0.60,P<0.0001),PROFILE1029 試験ではPFS のHR 0.402(11.1 カ月 vs 6.8 カ月,95%CI:0.286-0.565,P<0.001)であり,ともにクリゾチニブのプラチナ製剤併用療法に対する有意な延長が報告されている1)3)。クリゾチニブの主な毒性は,視覚障害,下痢や悪心などの消化器毒性,肝機能障害が挙げられる。

    以上より,治療効果と毒性のバランスを考慮し,ALK 遺伝子転座陽性例の一次治療としてはクリゾチニブを行うよう提案する。エビデンスの強さはA,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

  4. 投票者の所属委員会:薬物療法小委員会/実施年度:2018年
  5. c. ALK 遺伝子転座陽性,PS 0-1 のⅣ期非小細胞肺癌を対象として,セリチニブとプラチナ製剤併用療法を比較した第Ⅲ相試験(ASCEND-4 試験)が行われ,主要評価項目であるPFS はHR 0.55(16.6 カ月 vs 8.1 カ月,95%CI:0.42-0.73,P<0.0001)であり,セリチニブのプラチナ製剤併用療法に対する有意な延長が認められた。しかしGrade 3 以上の有害事象は,セリチニブで65%,プラチナ製剤併用療法で49%とセリチニブのほうが高頻度であった。セリチニブの主な毒性は,下痢,悪心,嘔吐などの消化器毒性,肝機能障害,食思不振が認められている2)

    以上より,治療効果と毒性のバランスを考慮し,ALK 遺伝子転座陽性例の一次治療としてはセリチニブを行うよう提案する。エビデンスの強さはB,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

  6. 投票者の所属委員会:薬物療法小委員会/実施年度:2018年

CQ57
PS 2-4 の場合,一次治療としてどのALK-TKI が勧められるか?

エビデンスの強さC
アレクチニブを行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

解説

ALK 遺伝子転座陽性の患者に対するアレクチニブは,PS 不良例に対する有効性が報告されている7)。患者数はPS 2:12 例,PS 3:5 例,PS 4:1 例であるが,安全性に大きな問題はなかった。主要評価項目であるORR は72.2%,PFS 中央値は10.1 カ月であり,さらに83.3%の患者でPS の改善を認めた。

以上より,PS 2-4 の場合,ALK 遺伝子転座陽性例の一次治療としては,アレクチニブが勧められる。エビデンスの強さはC,ただし総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会/実施年度2018年

ALK 遺伝子転座陽性の二次治療以降

CQ58
一次治療ALK-TKI 耐性または増悪後のPS 0-2 に対する最適なALK-TKI は何か?

エビデンスの強さC
  1. a. 初回ALK-TKI がクリゾチニブの場合は,アレクチニブを行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

エビデンスの強さC
  1. b. ロルラチニブを行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,合意率:79%〕

エビデンスの強さC
  1. c. セリチニブを行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,合意率:100%〕

解説

  1. a. クリゾチニブ耐性後のALK 遺伝子転座陽性進行非小細胞肺癌を対象とし,アレクチニブを投与する第Ⅱ相試験が行われ,ORR 48~50%,PFS 中央値8.1~8.9カ月の良好な成績が報告されている8)9)。本邦で行われたクリゾチニブ既治療の23 例に対しアレクチニブを投与した試験では,ORR 65%,PFS 中央値は12.9 カ月であった10)。また,クリゾチニブならびにプラチナ製剤併用療法施行後の症例に対し,アレクチニブと標準化学療法を比較する第Ⅲ相試験(ALUR 試験)が行われ,主要評価項目であるPFS はHR 0.15(9.6 カ月 vs 1.4 カ月,95%CI:0.08-0.29,P<0.001)であり,細胞障害性抗癌剤(DTX 単剤またはPEM 単剤)に対し,PFS を有意に延長することが示された11)

    以上より,一次治療ALK-TKI 耐性または増悪後のPS 0-2 の患者には,初回ALK-TKI がクリゾチニブの場合,アレクチニブによる治療が勧められる。エビデンスの強さはC,ただし総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

  2. 投票者の所属委員会:薬物療法小委員会
  3. b. ALK 遺伝子転座陽性例を対象としたロルラチニブの第Ⅱ相試験が行われ,クリゾチニブ治療後に増悪した症例(59 例)においては,ORR 69.5%,PFS 中央値は未到達(95%CI:12.5 カ月-未到達),クリゾチニブ以外のALK-TKI 治療後に増悪した症例(28例)においては,ORR 32.1%,PFS 中央値は5.5 カ月,2 レジメン以上のALK-TKI 治療後に増悪した症例(111 例)においては,ORR 38.7%,PFS 中央値は6.9 カ月,とそれぞれ成績が示されている。主な毒性は,高コレステロール血症,高トリグリセラロイド血症,浮腫であり,重篤な有害事象として認知機能障害(1%)が報告されている12)

    以上より,一次治療ALK-TKI 耐性または増悪後のPS 0-2 の患者には,ロルラチニブによる治療が勧められる。エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うことを弱く推奨(2 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

  4. 投票者の所属委員会:薬物療法小委員会
  5. c. クリゾチニブならびにプラチナ製剤併用療法後に増悪したALK 遺伝子転座陽性例を対象とした第Ⅱ相試験(ASCEND-2 試験)が行われ,ORR 38.6%,PFS 中央値5.7 カ月の成績が示されている13)。また同様の症例を対象に,セリチニブと標準化学療法を比較した第Ⅲ相試験(ASCEND-5 試験)においては,主要評価項目であるPFSのHR 0.49(5.4 カ月 vs 1.6 カ月,95%CI:0.36-0.67,P<0.001)であり,細胞障害性抗癌剤(DTX 単剤またはPEM単剤)に対しPFS を有意に延長することが示された14)。さらに,前治療でアレクチニブ使用歴のある20 症例に対するセリチニブの第Ⅱ相試験(ASCEND-9 試験)が本邦で行われ,ORR 25%,PFS 中央値 3.7 カ月であった15)

    以上より,一次治療ALK-TKI 耐性または増悪後のPS 0-2 の患者には,セリチニブによる治療が勧められる。エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

  6. 投票者の所属委員会:薬物療法小委員会

引用文献

1)
Solomon BJ, Mok T, Kim DW, et al; PROFILE 1014 Investigators. First-line crizotinib versus chemotherapy in ALK-positive lung cancer. N Engl J Med. 2014; 371(23): 2167-77.
2)
Soria JC, Tan DSW, Chiari R, et al. First-line ceritinib versus platinum-based chemotherapy in advanced ALK-rearranged non-small-cell lung cancer(ASCEND-4): a randomised, open-label, phase 3 study. Lancet. 2017; 389(10072): 917-29.
3)
Wu YL, Lu S, Lu Y, et al. Results of PROFILE 1029, a phase III comparison of first-line crizotinib versus chemotherapy in East Asian patients with ALK-positive advanced non-small cell lung cancer. J Thorac Oncol. 2018; 13(10): 1539-48.
4)
Hida T, Nokihara H, Kondo M, et al. Alectinib versus crizotinib in patients with ALK-positive non-small-cell lung cancer(J-ALEX): an open-label, randomised phase 3 trial. Lancet. 2017; 390(10089): 29-39.
5)
Takiguchi Y, Hida T, Nokihara H, et al. Updated efficacy and safety of the j-alex study comparing alectinib(ALC)with crizotinib(CRZ)in ALK-inhibitor naïve ALK fusion positive non-small cell lung cancer(ALK+NSCLC). J Clin Oncol. 2017; 35(15 suppl 9064).
6)
Peters S, Camidge DR, Shaw AT, et al. Alectinib versus Crizotinib in Untreated ALK-Positive Non-Small-Cell Lung Cancer. N Engl J Med. 2017; 377(9): 829-38.
7)
Iwama E, Goto Y, Murakami H, et al. Alectinib for Patients with ALK Rearrangement-Positive Non-Small Cell Lung Cancer and a Poor Performance Status(Lung Oncology Group in Kyushu 1401). J Thorac Oncol. 2017; 12(7): 1161-6.
8)
Ou SH, Ahn JS, De Petris L, et al. Alectinib in Crizotinib-Refractory ALK-Rearranged Non-Small-Cell Lung Cancer: A Phase Ⅱ Global Study. J Clin Oncol. 2016; 34(7): 661-8.
9)
Shaw AT, Gandhi L, Gadgeel S, et al. Alectinib in ALK-positive, crizotinib-resistant, non-small-cell lung cancer: a single-group, multicentre, phase 2 trial. Lancet Oncol. 2016; 17(2): 234-42.
10)
Hida T, Nakagawa K, Seto T, et al. Pharmacologic study(JP28927)of alectinib in Japanese patients with ALK+ non-small-cell lung cancer with or without prior crizotinib therapy. Cancer Sci. 2016; 107(11): 1642-6.
11)
Novello S, Mazières J, Oh IJ, et al. Alectinib versus chemotherapy in crizotinib-pretreated anaplastic lymphoma kinase(ALK)-positive non-small-cell lung cancer: results from the phase III ALUR study. Ann Oncol. 2018; 29(6): 1409-16.
12)
Solomon BJ, Besse B, Bauer TM, et al. Lorlatinib in patients with ALK-positive non-small-cell lung cancer: results from a global phase 2 study. Lancet Oncol. 2018; 19(12): 1654-67.
13)
Crinò L, Ahn MJ, De Marinis F, et al. Multicenter PhaseⅡ Study of Whole-Body and Intracranial Activity With Ceritinib in Patients With ALK-Rearranged Non-Small-Cell Lung Cancer Previously Treated With Chemotherapy and Crizotinib: Results From ASCEND-2. J Clin Oncol. 2016; 34(24): 2866-73.
14)
Shaw AT, Kim TM, Crinò L, et al. Ceritinib versus chemotherapy in patients with ALK-rearranged non-small-cell lung cancer previously given chemotherapy and crizotinib(ASCEND-5): a randomised, controlled, open-label, phase 3 trial. Lancet Oncol. 2017; 18(7): 874-86.
15)
Hida T, Seto T, Horinouchi H, et al. Phase II study of ceritinib in alectinib-pretreated patients with anaplastic lymphoma kinase-rearranged metastatic non-small-cell lung cancer in Japan: ASCEND-9. Cancer Sci. 2018; 109(9): 2863-72.

7-1-4.ROS1 遺伝子転座陽性(非扁平上皮癌)

CQ59
ROS1 遺伝子転座陽性にクリゾチニブは勧められるか?

エビデンスの強さC
クリゾチニブを行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

解説

ROS1 遺伝子転座陽性の肺癌ではクリゾチニブの効果が複数報告されている。米国を中心とした試験では50 例が参加し,ORR は72%,PFS 中央値19.2 カ月であった1)。東アジアで実施された試験では,127 例が登録され,ORR 71.7%,PFS 中央値15.9 カ月であった2)。これらはクリゾチニブのALK 阻害剤に対する効果と同等以上である。

以上より,ROS1 遺伝子転座陽性例に対しては,クリゾチニブが勧められる。エビデンスの強さはC,総合的評価ではドライバー遺伝子に対する分子標的薬の他剤の効果と併せて行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した(CQ45 も参照のこと)。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会

引用文献

1)
Shaw AT, Ou SH, Bang YJ, et al. Crizotinib in ROS1-rearranged non-small-cell lung cancer. N Engl J Med. 2014; 371(21): 1963-71.
2)
Wu YL, Yang JC, Kim DW, et al. Phase II study of crizotinib in East Asian patients with ROS1-positive advanced non-small-cell lung cancer. J Clin Oncol. 2018; 36(14): 1405-11.

7-1-5.BRAF 遺伝子変異陽性(非扁平上皮癌)

CQ60
BRAF 遺伝子変異陽性にダブラフェニブ+トラメチニブは勧められるか?

エビデンスの強さC
ダブラフェニブ+トラメチニブを行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:69%〕

解説

BRAF 遺伝子変異陽性の肺癌ではダブラフェニブ単剤や,ダブラフェニブ+トラメチニブ併用療法の効果が複数報告されている。Ⅳ期非小細胞肺癌のBRAF V600E 遺伝子変異陽性の既治療例57 例を対象とした,ダブラフェニブとトラメチニブの併用療法の第Ⅱ相試験が行われ,主要評価項目のORR は66.7%,PFS 中央値は9.7 カ月であった1)。Ⅳ期非小細胞肺癌のBRAF V600E 遺伝子変異陽性の未治療例36 例を対象とした,ダブラフェニブとトラメチニブの併用療法の第Ⅱ相試験では,主要評価項目のORR は64%,PFS 中央値は10.9 カ月であった2)。ただし両試験に登録された日本人の症例数が限られている。ダブラフェニブとトラメチニブの併用療法では,主な毒性として発熱,肝機能障害,心駆出率減少が認められている。

以上より,BRAF 遺伝子変異陽性例に対しては,ダブラフェニブ+トラメチニブが勧められる。エビデンスの強さはC,総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会

引用文献

1)
Planchard D, Besse B, Groen HJM, et al. Dabrafenib plus trametinib in patients with previously treated BRAF(V600E)-mutant metastatic non-small cell lung cancer: an open-label, multicentre phase 2 trial. Lancet Oncol. 2016; 17(7): 984-93.
2)
Planchard D, Smit EF, Groen HJM, et al. Dabrafenib plus trametinib in patients with previously untreated BRAF(V600E)-mutant metastatic non-small-cell lung cancer: an open-label, phase 2 trial. Lancet Oncol. 2017; 18(10):1307-16.

7-1-6.NTRK遺伝子転座陽性

CQ61
NTRK 遺伝子転座陽性*にエヌトレクチニブは勧められるか?

エビデンスの強さD
エヌトレクチニブを行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:97%〕

*主にがんの網羅的遺伝子検査で検索されるため,実施可能な施設は限られる(2019年10月時点)。

解説

NTRK 遺伝子転座陽性の固形癌に対して,エヌトレクチニブを評価する試験が癌腫横断的に行われた。2 つの第Ⅰ相試験(ALKA-372-001 試験,STARTRK-1 試験)では,有効性評価が可能な症例のうちNTRK 遺伝子転座陽性例の3 例中1 例にNSCLC が含まれており,奏効が得られている1)。前述した第Ⅰ相試験および第Ⅱ相試験(STARTRK-2 試験)の統合解析では,全体で54 例のNTRK 遺伝子転座陽性固形癌が登録され,主要評価項目であるORR は57.4%,PFS 中央値は11.2 カ月であった2)。そのうちNSCLC は10 例(19%)含まれており,ORR は70%,PFS 中央値は14.9 カ月であった3)。ただし,前述した臨床試験における日本人の登録症例数は限られている。エヌトレクチニブの主な毒性は,味覚障害,便秘,下痢などの消化器毒性,倦怠感,浮腫,クレアチニン上昇,ヘモグロビン低下が挙げられる。

以上より,NTRK遺伝子変異陽性例に対しては,エヌトレクチニブが勧められる。エビデンスの強さはD,また総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会

引用文献

1)
Drilon A, Siena S, Ou SI, et al. Safety and antitumor activity of the multitargeted pan-TRK, ROS1, and ALK inhibitor entrectinib: combined results from two phase I trials(ALKA-372-001 and STARTRK-1). Cancer Discov. 2017; 7(4): 400-9.
2)
Demetri GD, Paz-Ares L, Farago AF, et al. LBA17: Efficacy and safety of entrectinib in patients with NTRK fusion-positive(NTRK-fp)tumors: pooled analysis of STARTRK-2, STARTRK-1 and ALKA-372-001. Ann Oncol. 2018; 29(suppl_8): viii713.
3)
Paz-Ares L, Doebele RC, Farago AF, et al. 113O: Entrectinib in NTRK fusion-positive non-small cell lung cancer(NSCLC): Integrated analysis of patients(pts)enrolled in STARTRK-2, STARTRK-1 and ALKA-372-00. Annals of Oncology, 2019; 30(suppl 2): mdz063.011

7-1-7.遺伝子変異/転座陽性(扁平上皮癌)

CQ62
扁平上皮癌で遺伝子変異/転座陽性であった場合に,チロシンキナーゼ阻害剤は推奨できるか?

エビデンスの強さD
遺伝子変異陽性の扁平上皮癌患者に対して,それぞれのキナーゼ阻害剤を使用するよう提案する。

〔推奨の強さ:2,合意率:85%〕

解説

EGFR 遺伝子変異陽性の扁平上皮癌患者を対象としたEGFR-TKI を用いた比較試験は存在せず,非小細胞癌患者を対象とした前向き試験のサブグループ,それらを集めたpooled analysis のみ存在する。前向き試験から治療成績を確認できた11 例のORR は9.1%であり,その効果は限定的であったが,エクソン18-21 の遺伝子変異(エクソン19 欠損・L858R 変異)以外の変異症例が3 例以上は含まれているため,有効性の解釈に注意が必要である1)~3)。後ろ向き研究からはORR 25~32%,PFS は1.4~3.9 カ月と報告されているが症例数は少ない1)4)5)。また,扁平上皮癌患者のEGFR uncommon mutation,ALK 遺伝子転座陽性,ROS1 遺伝子転座陽性,BRAF 遺伝子変異陽性患者を対象とした臨床試験は存在しない。

以上より,ドライバー遺伝子変異/転座陽性の扁平上皮癌患者に対する,それぞれのキナーゼ阻害剤の効果は限定的であるが,奏効例も存在するため行うことが勧められる。エビデンスの強さはD,ただし総合的評価では行うよう弱く推奨(2 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会

引用文献

1)
Shukuya T, Takahashi T, Kaira R, et al. Efficacy of gefitinib for non-adenocarcinoma non-small-cell lung cancer patients harboring epidermal growth factor receptor mutations: a pooled analysis of published reports. Cancer Sci. 2011; 102(5): 1032-7.
2)
Yamada K, Takayama K, Kawakami S, et al. PhaseⅡ trial of erlotinib for Japanese patients with previously treated non-small-cell lung cancer harboring EGFR mutations: results of Lung Oncology Group in Kyushu(LOGiK0803). Jpn J Clin Oncol. 2013; 43(6): 629-35.
3)
Yamada K, Aono H, Hosomi Y, et al. A prospective, multicentre phaseⅡ trial of low-dose erlotinib in non-small cell lung cancer patients with EGFR mutations pretreated with chemotherapy: Thoracic Oncology Research Group 0911. Eur J Cancer. 2015; 51(14): 1904-10..
4)
Hata A, Katakami N, Yoshioka H. How sensitive are epidermal growth factor receptor-tyrosine kinase inhibitors for squamous cell carcinoma of the lung harboring EGFR gene-sensitive mutations? J Thorac Oncol. 2013; 8(1): 89-95.
5)
Xu J, Zhang Y, Jin B, et al. Efficacy of EGFR tyrosine kinase inhibitors for non-adenocarcinoma lung cancer patients harboring EGFR-sensitizing mutations in China. J Cancer Res Clin Oncol. 2016; 142(6): 1325-30.

7-2
PD-L1 陽性細胞 50%以上

CQ63
全身状態良好(PS 0-1)なPD-L1 陽性細胞50%以上に対する一次治療において薬物療法は勧められるか?

エビデンスの強さA
  1. a. ペムブロリズマブ単剤療法を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:96%〕

エビデンスの強さB
  1. b. プラチナ製剤併用療法+PD-1/PD-L1 阻害剤を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:69%〕

解説

  1. a. EGFR 遺伝子変異やALK 遺伝子転座のない,PD-L1 陽性細胞50%以上のPS 0-1 のⅣ期非小細胞肺癌患者を対象として,ペムブロリズマブ単剤とプラチナ製剤併用療法を比較する第Ⅲ相試験(KEYNOTE-024 試験)が行われた1)。中間解析において,主要評価項目であるPFS はHR 0.50(10.3 カ月 vs 6.0 カ月,95%CI:0.37-0.68,P<0.001),OS は更新された報告において,HR 0.63(30.0 カ月 vs 14.2 カ月,95%CI:0.47-0.86,P=0.002)であり2),ペムブロリズマブ単剤はプラチナ製剤併用療法に対しPFS,OS を有意に延長することが示された。また,ORRは44.8% vs 27.8%であり,ペムブロリズマブ単剤が有意に優れていた。主な毒性は,ペムブロリズマブ群で下痢や倦怠感,発熱,プラチナ製剤併用療法群で貧血,悪心,倦怠感などであり,Grade 3 以上の毒性はペムブロリズマブ群で有意に少なかった(26.6% vs 53.3%)。一方,ペムブロリズマブ群で甲状腺機能障害,肺臓炎,皮疹,大腸炎などの免疫関連の毒性が報告されGrade 3 以上は9.7%と報告されており,それらの毒性管理には注意が必要である。またQOL において,ペムブロリズマブ群がプラチナ製剤併用療法に比べて有意に肺癌による症状が悪化するまでの期間を遅らせることが報告されている3)

    さらに,前述した試験と同様のデザインで,PD-L1 陽性細胞1%以上を対象として,ペムブロリズマブ単剤とプラチナ製剤併用療法を比較する第Ⅲ相試験(KEYNOTE-042 試験)が行われた4)。PD-L1陽性細胞50%以上のサブグループにおける解析では,主要評価項目であるOSはHR 0.69(20.0 カ月 vs 12.2 カ月,95%CI:0.56-0.85,P=0.0003)とペムブロリズマブ単剤はプラチナ製剤併用療法に対しOSを有意に延長することが示され, また, PFS はHR 0.81(7.1 カ月 vs 6.4 カ月,95%CI:0.67-0.99)であり,PFS も延長することが示された。また,ORRは39% vs 32%であった。主な毒性は,前述するKEYNOTE-024 試験と同様であり,これらの毒性管理には注意が必要である。

    なお,75 歳以上の症例において,有効性,安全性に関する報告は少ない。

    以上より,PD-L1 陽性細胞50%以上のⅣ期非小細胞肺癌(EGFR 遺伝子変異陰性およびALK 遺伝子転座陰性),PS 0-1 症例に対してペムブロリズマブ単剤療法を行うよう勧められる。エビデンスの強さはA,また総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

  2. 投票者の所属委員会:薬物療法小委員会(看護師1 名,薬剤師2 名,患者2 名を含む)
  3. b-1. 非扁平上皮癌

    EGFR EGFR 遺伝子変異やALK遺伝子転座のない,PS 0-1 のⅣ期非小細胞肺癌(非扁平上皮癌)患者を対象として,プラチナ製剤併用療法に対しペムブロリズマブを追加することの有効性を評価した第Ⅲ相試験(KEYNOTE-189 試験)が行われた5)。中間解析において,主要評価項目であるPFS およびOS は,それぞれHR 0.52(8.8 カ月 vs 4.9 カ月,95%CI:0.43-0.64,P<0.0001),HR 0.49(中央値に到達せず vs 11.3 カ月,95%CI:0.38-0.64,P<0.0001)であり,プラチナ製剤併用療法に対するペムブロリズマブの上乗せはPFS,OS を有意に延長することが示された。また,PD-L1 陽性細胞50%以上のサブグループ解析においても,PFS はHR 0.36(9.4 カ月 vs 4.7 カ月,95%CI:0.25-0.52,P<0.0001),OS はHR 0.42(中央値に到達せず vs 10.0 カ月,95%CI:0.26-0.68,P=0.0001)と有意に生存を延長した。主な毒性は,ペムブロリズマブ併用群で悪心,貧血,倦怠感,便秘などであり,Grade 3 以上の毒性はプラチナ製剤併用療法群と比較し頻度は同等であった(67.2% vs 65.8%)。ただし,ペムブロリズマブ併用群で急性腎障害が5.2%にみられることに加え,Grade 3 以上の免疫関連の毒性が8.9%と報告され,そのうち肺臓炎により3 例の治療関連死が報告されており,それらの毒性管理には注意が必要である。

    PS 0-1 のⅣ期非小細胞肺癌(非扁平上皮癌)患者を対象として,プラチナ製剤併用療法に対しアテゾリズマブを追加することの有効性を評価した第Ⅲ相試験(IMpower150 試験)が行われ,CBDCA/PTX/ベバシズマブ+アテゾリズマブ併用療法(B 群)とCBDCA/PTX/ベバシズマブ療法(C 群)の比較結果が報告された6)。主要評価項目はドライバー遺伝子変異/転座陰性集団におけるPFS およびOS であった。なお,本試験におけるPD-L1 発現は,TC に加え,ICをそれぞれ0~3 の4 段階で測定し評価している。C 群に対するB 群のPFS は,HR 0.62(8.3カ月 vs 6.8カ月,95%CI:0.52-0.74,P<0.001),OS はHR 0.78(19.2 カ月 vs 14.7 カ月,95%CI:0.64-0.96,P=0.02)であり,プラチナ製剤+ベバシズマブ併用療法に対するアテゾリズマブの上乗せはPFS,OS を有意に延長することが示された。また,PD-L1 発現が「TC3 or IC3」のサブグループ解析においても,PFS はHR 0.39(12.6 カ月 vs 6.8 カ月,95%CI:0.25-0.60,P<0.0001),OS はHR 0.70(25.2 カ月 vs 15.0 カ月,95%CI:0.43-1.13)と,PD-L1 が高発現症例において良好な結果を示した。主な毒性は,アテゾリズマブ併用群で食思不振,末梢神経障害,悪心,倦怠感などであり,Grade 3 以上の毒性はプラチナ製剤+ベバシズマブ併用療法群と比較し頻度は高い傾向を認めた(58.5% vs 50.0%)。また免疫関連毒性として,アテゾリズマブ併用群で皮疹,肝機能障害,甲状腺機能障害,肺臓炎,大腸炎が報告されており,免疫関連の毒性管理には注意が必要である。

  4. b-2. 扁平上皮癌

    PS 0-1 のⅣ期非小細胞肺癌(扁平上皮癌)患者を対象として,プラチナ製剤併用療法に対しペムブロリズマブを追加することの有効性を評価した第Ⅲ相試験(KEYNOTE-407 試験)が行われた7)。559 例が1:1 でランダム化され,主要評価項目であるPFS の332 例のイベントが確認された時点の中間解析が報告された。PFS はHR 0.56(6.4 カ月 vs 4.8 カ月,95%CI:0.45-0.70,P<0.0001)と,プラチナ製剤併用療法に対するペムブロリズマブの上乗せはPFS を有意に延長することが示された。もう1 つの主要評価項目であるOS は,観察期間中央値が7.8 カ月と不十分な観察期間ではあるがHR 0.64(15.9 カ月 vs 11.3 カ月,95%CI:0.49-0.85,P=0.0008)と,OS もまた有意に延長することが示された。PD-L1 陽性細胞50%以上のサブグループ解析においても,PFS はHR 0.37(8.0 カ月 vs 4.2 カ月,95%CI:0.24-0.58),OS はHR 0.64(中央値に到達せずvs中央値に到達せず,95%CI:0.37-1.10)と良好な傾向がみられた。主な毒性は,ペムブロリズマブ併用群で貧血,食思不振,好中球減少,悪心などであり,Grade 3 以上の毒性はプラチナ製剤群と比較し頻度は同等であった(69.8% vs 68.2%)。ただし,ペムブロリズマブ併用群で肺臓炎の発症率(6.5% vs 2.1%)と治療関連死亡(3.6% vs 2.1%)は高い傾向を認めており,毒性管理には注意が必要である。

    PS 0-1 のⅣ期非小細胞肺癌(扁平上皮癌)患者を対象として,プラチナ製剤併用療法に対しアテゾリズマブを追加することの有効性を評価した第Ⅲ相試験(IMpower131 試験)が行われ,CBDCA/nab-PTX+アテゾリズマブ併用療法(B 群)とCBDCA/nab-PTX 療法(C 群)の比較結果が報告された8)。主要評価項目であるC 群に対するB群のPFSは,HR 0.71(6.3 カ月 vs 5.6 カ月,95%CI:0.60-0.85,P=0.001)であり,プラチナ製剤併用療法に対するアテゾリズマブの上乗せはPFS を有意に延長することが示された。ただし,もう1つの主要評価項目であるOS は,中間解析においてHR 0.96(14.0 カ月 vs 13.9 カ月,95%CI:0.78-1.18,P=0.6931)と,OS の延長は示されなかった。またPD-L1 発現が「TC3 or IC3」のサブグループ解析において,PFSはHR 0.44(10.1 カ月 vs 5.5 カ月,95%CI:0.27-0.71),OS はHR 0.56(23.6 カ月 vs 14.1 カ月,95%CI:0.32-0.99)と,PD-L1 が高発現症例において良好な結果を示した。Grade 3 以上の毒性は,プラチナ製剤群と比較し頻度は高い傾向が認められた(69% vs 58%)(2019 年10 月時点において扁平上皮癌に対するCBDCA/nab-PTX+アテゾリズマブ併用療法は,本邦で保険適用となっていない)。

    75 歳以上の症例においては,前述する4 つの第Ⅲ相試験5)~8)においてある一定数が登録されているが,安全性のデータは示されていないためその投与には慎重を期すべきである。なお,アテゾリズマブの上乗せを評価した2 試験においては,75 歳以上のサブグループ解析が報告されている。IMpower150 試験(非扁平上皮癌)では,75歳以上においてPFS:HR 0.78(9.7 カ月 vs 6.8 カ月)6),IMpower131 試験(扁平上皮癌)では,75 歳以上においてPFS:HR 0.51(7.0 カ月 vs 5.6 カ月,95%CI:0.30-0.84)8)と,ともに併用療法が有効である傾向が示されているが,OS の結果は示されていない。

    以上より,PD-L1 陽性細胞50%以上のⅣ期非小細胞肺癌(EGFR 遺伝子変異陰性およびALK 遺伝子転座陰性),PS 0-1 症例に対してプラチナ製剤併用療法+PD-1/PD-L1 阻害剤を行うよう勧められる。ただし,ペムブロリズマブ単剤と比較したデータはなく,プラチナ製剤併用療法+PD-1/PD-L1 阻害剤がペムブロリズマブ単剤より優れているかどうかは明らかでない。エビデンスの強さはB,また総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

    投票者の所属委員会:薬物療法小委員会(看護師1 名,薬剤師2 名,患者2 名を含む)

    なお,プラチナ製剤併用療法+PD-1/PD-L1 阻害剤の治療レジメンは有効性および安全性の観点から非扁平上皮癌においてはCDDP/CBDCA+PEM+ペムブロリズマブもしくはCBDCA+PTX+ベバシズマブ+アテゾリズマブ,扁平上皮癌においてはCBDCA+PTX/nab-PTX+ペムブロリズマブが推奨される。詳細については,項末のレジメンを参照のこと。

CQ64
PS 2 のPD-L1 陽性細胞50%以上に対する一次治療において薬物療法は勧められるか?

エビデンスの強さA
  1. a. 細胞障害性抗癌剤を行うよう推奨もしくは提案する。

〔単剤/推奨の強さ:1,合意率:100%〕

エビデンスの強さB
  1. a. 細胞障害性抗癌剤を行うよう推奨もしくは提案する。

〔カルボプラチン併用療法/推奨の強さ:2,合意率:100%〕

エビデンスの強さD
  1. b. ペムブロリズマブ単剤療法を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,合意率:85%〕

  1. c. プラチナ製剤併用療法+PD-1/PD-L1 阻害剤を行うよう推奨するだけの根拠が明確ではない。

〔推奨度決定不能〕

解説

  1. a.CQ67 参照
  2. b. KEYNOTE-024 試験では,適格基準としてPS 0-1 を満たす患者のみが登録されており1),PS 2 のⅣ期非小細胞肺癌の一次治療でペムブロリズマブ単剤療法を投与した際の臨床成績,安全性は不明である。そのため,ペムブロリズマブ単剤療法を一次治療において推奨するだけの根拠が明確ではない。一方でPS 2 に対する細胞障害性抗癌剤のエビデンスも十分とはいえず,有効性は限定的で毒性も懸念される。ガイドライン検討委員会薬物療法及び集学的治療小委員会では,PD-1/PD-L1 阻害剤は細胞障害性抗癌剤と比較して重篤な毒性の頻度が低いことから,益と害のバランスを考慮し治療選択肢として加えてよいという意見が多くみられた。

    以上より,PS 2 のPD-L1 陽性細胞50%以上のⅣ期非小細胞肺癌に対し投与の是非を慎重に検討したうえで,一次治療においてペムブロリズマブ単剤療法の投与を行うことをエキスパートオピニオンとして提案する。エビデンスの強さはD,ただし総合的評価では行うよう弱く推奨(2 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

  3. 投票者の所属委員会:薬物療法小委員会(看護師1 名,薬剤師2 名,患者2 名を含む)
  4. c. プラチナ製剤併用療法に対しPD-1/PD-L1 阻害剤の上乗せを評価した4 つの第Ⅲ相試験5)~8)では,適格基準としてPS 0-1 を満たす患者のみが登録されており,PS 2 のⅣ期非小細胞肺癌の一次治療でプラチナ製剤併用療法+PD-1/PD-L1 阻害剤を投与した際の臨床成績および安全性は不明である。また,PS 2 症例は細胞障害性抗癌剤の毒性も懸念される患者群であり,さらにPD-1/PD-L1 阻害剤を上乗せすることについては安全性における懸念を払拭できない。

    以上より,PS 2 のPD-L1 陽性細胞50%以上のⅣ期非小細胞肺癌に対し一次治療においてプラチナ製剤併用療法+PD-1/PD-L1 阻害剤を推奨するだけの根拠が明確ではなく,推奨度決定不能とした。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

  5. 投票者の所属委員会:薬物療法小委員会(看護師1 名,薬剤師2 名,患者2 名を含む)

引用文献

1)
Reck M, Rodríguez-Abreu D, Robinson AG, et al. Pembrolizumab versus Chemotherapy for PD-L1-Positive Non-Small-Cell Lung Cancer. N Engl J Med. 2016; 375(19): 1823-33.
2)
Reck M, Rodríguez-Abreu D, Robinson AG, et al. Updated Analysis of KEYNOTE-024: pembrolizumab versus platinum-based chemotherapy for advanced non-small-cell lung cancer with PD-L1 tumor proportion score of 50% or greater. J Clin Oncol. 2019; 37(7): 537-46.
3)
Brahmer JR, Rodríguez-Abreu D, Robinson AG, et al. Health-related quality-of-life results for pembrolizumab versus chemotherapy in advanced, PD-L1-positive NSCLC(KEYNOTE-024): a multicentre, international, randomised, open-label phase 3 trial. Lancet Oncol. 2017; 18(12): 1600-9.
4)
Mok TSK, Wu YL, Kudaba I, et al. Pembrolizumab versus chemotherapy for previously untreated, PD-L1-expressing, locally advanced or metastatic non-small-cell lung cancer(KEYNOTE-042): a randomised, open-label, controlled, phase 3 trial. Lancet. 2019; 393(10183): 1819-30.
5)
Gandhi L, Rodríguez-Abreu D, Gadgeel S, et al; KEYNOTE-189 Investigators. Pembrolizumab plus Chemotherapy in Metastatic Non-Small-Cell Lung Cancer. N Engl J Med. 2018; 378(22): 2078-92.
6)
Socinski MA, Jotte RM, Cappuzzo F, et al; IMpower150 Study Group. Atezolizumab for First-Line Treatment of Metastatic Nonsquamous NSCLC. N Engl J Med. 2018; 378(24): 2288-301.
7)
Paz-Ares LG, Luft A, Tafreshi A, et al. Phase 3 study of carboplatin-paclitaxel/nab-paclitaxel(Chemo)with or without pembrolizumab(Pembro)for patients(Pts)with metastatic squamous(Sq)non-small cell lung cancer(NSCLC). 2018 ASCO Annual Meeting. J Clin Oncol. 2018; 36(suppl; abstr 105).
8)
Jotte RM, Cappuzzo F, Vynnychenko I, et al. IMpower131: Primary PFS and safety analysis of a randomized phaseⅢ study of atezolizumab+carboplatin+paclitaxel or nab-paclitaxel vs carboplatin+nab-paclitaxel as 1L therapy in advanced squamous NSCLC. 2018 ASCO Annual Meeting. J Clin Oncol. 2018; 36(suppl; abstr LBA9000).

7-3
ドライバー遺伝子変異/転座陰性,
PD-L1陽性細胞50%未満,もしくは不明

7-3-1. ドライバー遺伝子変異/転座陰性,PD-L1 陽性細胞50%未満,もしくは不明の一次治療

CQ65
ドライバー遺伝子変異/転座陰性,PD-L1 陽性細胞50%未満,もしくは不明のPS 0-1,75 歳未満に対する一次治療において細胞障害性抗癌剤は勧められるか?

エビデンスの強さA
プラチナ製剤と第三世代以降の細胞障害性抗癌剤併用を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:93%〕

*PEM は非扁平上皮癌への投与が推奨される。

*ネダプラチン(NDP)は扁平上皮癌への投与が推奨される。

 

解説

メタアナリシスによってプラチナ製剤(CDDP もしくはCBDCA)を含む治療が緩和治療に対して有意にOS の延長に寄与していることが示されている1)。また,プラチナ製剤併用の薬剤を第二世代と第三世代細胞障害性抗癌剤で比較したメタアナリシスにおいて,後者がORR で12%,1 年生存率で6%優ると報告されている2)。本邦では,4 種類の第三世代細胞障害性抗癌剤とプラチナ製剤併用の第Ⅲ相試験(FACS 試験)の結果が報告されており,いずれの効果も同等であった3)

新規薬剤においても,複数の第Ⅲ相試験によって有効性が示されているが,いくつかの薬剤は特定の組織型に対してのみ有効性が示されている。PEM はそのような薬剤の1 つであり,非扁平上皮癌に対して用いられる。CDDP+PEM とCDDP+GEM の第Ⅲ相試験(JMDB 試験)が行われ,全体では同等の効果であったが組織型による差が認められ,非扁平上皮癌においてはCDDP+PEM 群でOS の有意な延長(11.8 カ月 vs 10.4 カ月,HR 0.81,95%CI:0.70-0.94,P=0.005)を認めた一方で,扁平上皮癌においてはCDDP+PEM 群でPFS(4.4 カ月 vs 5.5 カ月,HR 1.36,95%CI:1.12-1.65,P=0.002),OS(9.4 カ月 vs 10.8 カ月,HR 1.23,95%CI:1.00-1.51,P=0.05)ともに劣っていた4)。サブグループ解析ではあるが,有効性ならびに毒性の観点から非扁平上皮癌に対するCDDP+PEM は至適レジメンの1 つである。また,CBDCA+PEM はOS を主要評価項目とした比較試験がないものの,患者が自覚する毒性がCDDP よりも軽度であることから実地臨床では頻用されている。CBDCA+PEM とCBDCA+GEM,CBDCA+DTX やCBDCA+PTX+ベバシズマブとの比較試験では,OS や主要評価項目であった有害事象などで優越性を示せていない5)~7)。しかしながら,CBDCA+PTX+ベバシズマブと比較しても生存曲線に大きな差はなく7),ベバシズマブを併用した試験ではCBDCA+PTX+ベバシズマブよりPFS が上回る傾向にある8)。以上より,CBDCA+PEM を行うことは許容される。

扁平上皮癌に対しては,ネダプラチン(NDP)+DTX とCDDP+DTX の比較第Ⅲ相試験が本邦で実施され,OS の有意な延長が認められた(13.6 カ月 vs 11.4 カ月,HR 0.81,95%CI:0.65-1.02,P=0.037)。毒性はプロファイルが異なり,NDP 群では白血球減少,好中球減少,血小板減少が多く,CDDP群では悪心,倦怠感,低ナトリウム血症,低カリウム血症が多かった。本邦において第三世代以降の細胞障害性抗癌剤併用で唯一の優越性が示された有望なレジメンである9)

その他,S-1 の有効性を評価した2 編の第Ⅲ相試験(LETS 試験,CATS 試験)では,CBDCA+S-1 はCBDCA+PTX に対して,CDDP+S-1 はCDDP+DTX に対して非劣性が示された10)11)。ヒト血清アルブミンとPTX を結合させたナノ粒子製剤であるnab-PTX とCBDCA の併用療法はCBDCA+PTX との第Ⅲ相試験において,有意にORR の上昇を認めた(33.0% vs 25.0%)12)。これらのレジメンは組織型にかかわらず使用可能である。

以上より,75 歳未満,PS 0-1 症例に対して,プラチナ製剤と第三世代以降の細胞障害性抗癌剤併用を行うよう勧められる。エビデンスの強さはA,また総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。各レジメンに固有の毒性プロファイルが報告されており,これらも踏まえて選択するべきと考えられる。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会(看護師1 名,薬剤師2 名,患者2 名を含む)

CQ66
ドライバー遺伝子変異/転座陰性,PD-L1 陽性細胞50%未満,もしくは不明のPS 0-1,75 歳以上に対する一次治療において細胞障害性抗癌剤は勧められるか?

エビデンスの強さA
    〈非扁平上皮癌〉

  1. a. カルボプラチン併用療法を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:85%〕

エビデンスの強さA
  1. b. 第三世代細胞障害性抗癌剤単剤を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,合意率:85%〕

エビデンスの強さA
    〈扁平上皮癌〉

  1. c. 第三世代細胞障害性抗癌剤単剤を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:63%〕

エビデンスの強さB
  1. d. カルボプラチン併用療法を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,合意率:78%〕

*PEM は非扁平上皮癌への投与が推奨される。

解説

一次薬物療法の第Ⅲ相試験と術後補助療法を対象とした検討では,65 歳以上と以下で治療効果の差は認めず,暦年齢よりも日常生活自立度が予後に関係していた13)。また,80 歳以上でもPS 0-1 と良好なものは80 歳以下と比べて,OS において80 歳以上で7カ月,80 歳未満で11 カ月(P=0.20)とOS に有意な差がなく,毒性についても明らかな差を認めなかったと報告されている14)。以上より,暦年齢のみで薬物療法の対象外とするべきではない。

非扁平上皮癌
  1. a. 高齢者を対象とした第三世代細胞障害性抗癌剤単剤とプラチナ製剤併用を比較した第Ⅲ相試験が2 編報告され,両試験とも登録された患者の多くが75 歳以上であった。本邦では第Ⅲ相試験(JCOG0803/WJOG4307L 試験)が行われ,weekly CDDP+DTX とDTX 単剤が比較された。この試験では,中間解析において併用療法が単剤療法の成績を上回らないことが示され(OS 13.3 カ月 vs 14.8 カ月,HR 1.18,95%CI:0.83-1.69),試験中止となった15)。この試験のサブグループ解析では,腺癌でもOS の延長(HR 1.24,95%CI:0.78-1.97)は示されなかった。その後さらに本邦において,75 歳以上,PS 0-1 のⅣ期非小細胞肺癌(非扁平上皮癌)患者を対象とした第Ⅲ相試験(JCOG1210/WJOG7813L 試験)が行われ16),CBDCA+PEM 併用群(PEM の維持療法あり)とDTX 群の比較結果が報告された。主要評価項目はCBDCA+PEM 群のDTX 群に対するOS(非劣性)であり,OS のHR は 0.850(18.7 カ月 vs 15.5 カ月,95%CI:0.684-1.056)であったことから非劣性が証明された。しかしながら,CBDCA+PEM 群のDTX 群に対する優越性は示されなかった。またPFS においては,HR 0.739(95%CI:0.609-0.896,P<0.01)とCBDCA+PEM 群で有意に延長させることが示された。Grade 3 以上の毒性は,CBDCA+PEM 群で血小板減少と貧血が多く,DTX 群で好中球減少と発熱性好中球減少が多かった。治療関連死は各群2 例ずつで頻度は1%以下であった。さらに海外で行われた第Ⅲ相試験(IFCT0501 試験)では,CBDCA+weekly PTX とGEM 単剤もしくはVNR 単剤の比較が行われ,併用療法でPFS の有意な延長(6.0 カ月 vs 2.8 カ月,HR 0.51,95%CI:0.42-0.62,P<0.0001),OS の有意な延長(10.3 カ月 vs 6.2 カ月,HR 0.64,95%CI:0.52-0.78,P<0.0001)が示された17)。この試験のサブグループ解析では,腺癌においてもOS の有意な延長(HR 0.73,95%CI:0.55-0.99)が示されている。しかし,この試験においては併用群における治療関連死が4.4%と高いなどの問題点が指摘されている。

    以上より,PS 0-1,75 歳以上の非扁平上皮癌症例に対しては,CBDCA 併用療法を行うよう勧められる。エビデンスの強さはA,また総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

  2. 投票者の所属委員会:薬物療法小委員会(看護師1 名,薬剤師2 名,患者2 名を含む)
  3. b. 高齢者においては,緩和治療に対してVNR 単剤が有意にOS を延長し薬物療法が有効であること,VNR 単剤と比較してGEM 単剤が同様の有効性を示していることが確認されている18)19)。その後,本邦で行われた第Ⅲ相試験(WJTOG9904 試験)において,DTX 単剤はVNR 単剤に対して,PFS で5.5 カ月 vs 3.1 カ月(HR 0.61,95%CI:0.45-0.82,P<0.001)と有意な延長を認め,OS で有意差は認めなかったものの14.3 カ月 vs 9.9 カ月(HR 0.78,95%CI:0.56-1.09,P=0.138)と良好な成績を示した20)

    以上より,PS 0-1,75 歳以上の非扁平上皮癌症例に対して,DTX をはじめとした第三世代細胞障害性抗癌剤単剤を行うよう勧められる。エビデンスの強さはA,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

  4. 投票者の所属委員会:薬物療法小委員会(看護師1 名,薬剤師2 名,患者2 名を含む)
扁平上皮癌
  1. c. 前述のbを参照。

    以上より,PS 0-1,75 歳以上の扁平上皮癌症例に対して,DTX をはじめとした第三世代細胞障害性抗癌剤単剤を行うよう勧められる。エビデンスの強さはA,また総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

  2. 投票者の所属委員会:薬物療法小委員会(看護師2,薬剤師1名,患者2名を含む)(白票1)/実施年度:2019年
  3. d. 高齢者を対象とした第三世代細胞障害性抗癌剤単剤とプラチナ製剤併用を比較した第Ⅲ相試験が2 編報告され,両試験とも登録された患者の多くが75歳以上であった。本邦では第Ⅲ相試験(JCOG0803/WJOG4307L 試験)が行われ,weekly CDDP+DTX とDTX 単剤が比較された。この試験では,中間解析において併用療法が単剤療法の成績を上回らないことが示され(OS 13.3 カ月 vs 14.8 カ月,HR 1.18,95%CI:0.83-1.69),試験中止となった15)。この試験のサブグループ解析では,扁平上皮癌でもOS の延長(HR 0.92,95%CI:0.49-1.72)は示されなかった。また,第Ⅲ相試験(IFCT0501 試験)では,CBDCA+weekly PTX とGEM 単剤もしくはVNR単剤の比較が行われ,併用療法でPFS の有意な延長(6.0 カ月 vs 2.8 カ月,HR 0.51,95%CI:0.42-0.62,P<0.0001),OS の有意な延長(10.3 カ月 vs 6.2 カ月,HR 0.64,95%CI:0.52-0.78,P<0.0001)が示された17)。この試験のサブグループ解析では,扁平上皮癌(非腺癌の組織型含む)においてもOS の有意な延長(HR 0.52,95%CI:0.39-0.69)が示されている。しかしながらこの成績は,高齢者に対して本邦で行われた単剤療法の成績を大きく上回っているとはいえず,併用群における治療関連死が4.4%と高いなどの問題点として指摘されている。また,投与量も本邦における標準的なものとは異なっており,データの解釈には注意を要する。

    以上より,PS 0-1,75 歳以上の扁平上皮癌症例に対して,CBDCA 併用療法は選択肢の1 つと考えられる。エビデンスの強さはB,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

  4. 投票者の所属委員会:薬物療法小委員会(看護師2名,薬剤師1名,患者2名を含む)(白票1)/実施年度:2019年

CQ67
ドライバー遺伝子変異/転座陰性,PD-L1 陽性細胞50%未満,もしくは不明のPS 2 に対する一次治療において細胞障害性抗癌剤は勧められるか?

エビデンスの強さA
  1. a. 第三世代細胞障害性抗癌剤単剤を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

エビデンスの強さB
  1. b. プラチナ製剤併用療法を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,合意率:100%〕

*PEM は非扁平上皮癌への投与が推奨される。

解説

PS 2 は多様な集団であり,標準治療は定まっていない。しかし,薬物療法と緩和治療を比較したメタアナリシスのサブグループにおいて,PS にかかわらず薬物療法によるOS の延長が認められている〔PS 2 以上の場合,薬物療法によって1 年生存率にして6%(8%から14%)の改善〕1)

  1. a. メタアナリシスにおいて第三世代細胞障害性抗癌剤(DTX,PTX,VNR,GEM)単剤療法は緩和治療に比して1 年生存率約7%の改善が示されているが,この中にPS 2 以上は約30%含まれていた2)。また,この解析でも取り上げられた3 編の試験においてPS 2 のサブグループの治療成績が明らかになっており,いずれもOS が延長する傾向が確認されている21)

    以上より,PS 2 症例において,第三世代細胞障害性抗癌剤単剤を行うよう勧められる。エビデンスの強さはA,また総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

  2. 投票者の所属委員会:薬物療法小委員会(看護師1名,薬剤師2名,患者2名を含む)
  3. b. PTX 単剤とCBDCA+PTX とを比較した第Ⅲ相試験(CALGB9730 試験)においてPS 2 のサブグループが報告されており,CBDCA+PTX はPTX 単剤に対して1 年生存率で優位に上回っていた(18% vs 10%,HR 0.60,95%CI:0.40-0.91,P=0.016)22)。PS 2 に対するCBDCA+PTX とCDDP+GEM とを比較した試験(ECOG1599 試験)では,OS は各6.2 カ月,6.9 カ月と報告され,毒性に関しても忍容可能と考えられた23)。また,CBDCA+GEM とGEM 単剤の比較試験が行われ,有意差が認められなかったものの,併用群でOS が6.7 カ月 vs 4.8 カ月(P=0.49),PFS が4.1 カ月 vs 3.0 カ月(P=0.36)の延長傾向が示された24)。さらに,PS 2 症例を対象としたCBDCA+PEM とPEM 単剤の第Ⅲ相試験が報告されている。この試験では第Ⅲ相試験としては登録数が205 例と小規模で,扁平上皮癌を含む患者を対象としているなど問題があるが,併用群でPFS の有意な延長(5.8 カ月vs2.8 カ月,HR 0.46,95%CI:0.35-0.63,P<0.001),OS の有意な延長(9.3 カ月 vs 5.3 カ月,HR 0.62,95%CI:0.46-0.83,P=0.001)が示されている。毒性に関しては,併用群で貧血や好中球減少が高く,3.9%の治療関連死が認められた25)

    以上より,毒性が忍容可能と思われるPS 2 症例に対してはプラチナ製剤併用療法を考慮してもよいと考えられる。エビデンスの強さはB,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2 で推奨)できると判断した。ただし,PS 2 症例に関するエビデンスは限られており,そのほとんどはCBDCA 併用レジメン,もしくは通常より減量した用量が用いられていることに注意が必要である。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

  4. 投票者の所属委員会:薬物療法小委員会(看護師1名,薬剤師2名,患者2名を含む)

CQ68
プラチナ製剤併用療法を受ける場合にPD-1/PD-L1 阻害剤の上乗せは勧められるか?

エビデンスの強さB
  1. a. PS 0-1 症例に対して,プラチナ製剤併用療法にPD-1/PD-L1 阻害剤を併用するよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:78%〕

  1. b. PS 2 症例に対して,プラチナ製剤併用療法+PD-1/PD-L1 阻害剤を行うよう推奨するだけの根拠が明確ではない。

〔推奨度決定不能〕

解説

  1. a-1. 非扁平上皮癌

    EGFR 遺伝子変異やALK 遺伝子転座のない,PS 0-1 のⅣ期非小細胞肺癌(非扁平上皮癌)患者を対象として,プラチナ製剤併用療法に対しペムブロリズマブを追加することの有効性を評価した第Ⅲ相試験(KEYNOTE-189 試験)が行われた26)。中間解析において,主要評価項目であるPFS およびOS は,それぞれHR 0.52(8.8 カ月 vs 4.9 カ月,95%CI:0.43-0.64,P<0.0001),HR 0.49(中央値に到達せず vs 11.3 カ月,95%CI:0.38-0.64,P<0.0001)であり,プラチナ製剤併用療法に対するペムブロリズマブの上乗せはPFS,OS を有意に延長することが示された。また,PD-L1 発現別のサブグループ解析においても,PD-L1 1~49%のPFS はHR 0.55(95%CI:0.37-0.81,P=0.0010),OS はHR 0.55(95%CI:0.34-0.90,P=0.0081),PD-L1 1%未満のPFS はHR 0.75(95%CI:0.53-1.05,P=0.0476),OS はHR 0.59(95%CI:0.38-0.92,P=0.0095)と,いずれの集団においてもOS は有意に延長した。主な毒性は,ペムブロリズマブ併用群で悪心,貧血,倦怠感,便秘などであり,Grade 3 以上の毒性はプラチナ製剤群と比較し頻度は同等であった(67.2% vs 65.8%)。ただし,ペムブロリズマブ併用群で急性腎障害が5.2%にみられることに加え,Grade 3 以上の免疫関連毒性が8.9%と報告され,そのうち肺臓炎により3 例の治療関連死が報告されており,それらの毒性管理には注意が必要である。

    PS 0-1 のⅣ期非小細胞肺癌(非扁平上皮癌)患者を対象として,プラチナ製剤併用療法に対しアテゾリズマブを追加することの有効性を評価した第Ⅲ相試験(IMpower150 試験)が行われ,CBDCA/PTX/ベバシズマブ+アテゾリズマブ併用療法(B 群)とCBDCA/PTX/ベバシズマブ療法(C 群)の比較結果が報告された27)。主要評価項目はドライバー遺伝子変異/転座陰性集団におけるPFS およびOS であった。なお,本試験におけるPD-L1発現は,TCに加え,ICをそれぞれ0~3 の4 段階で測定し評価している。C 群に対するB 群のPFS は,HR 0.62(8.3 カ月 vs 6.8 カ月,95%CI:0.52-0.74,P<0.001),OS はHR 0.78(19.2 カ月 vs 14.7 カ月,95%CI:0.64-0.96,P=0.02)であり,プラチナ製剤+ベバシズマブ併用療法に対するアテゾリズマブの上乗せはPFS,OS を有意に延長することが示された。また,PD-L1 発現別のサブグループ解析において,「TC1/2 or IC1/2」のPFS はHR 0.56(95%CI:0.41-0.77,P=0.0003),OS はHR 0.80(95%CI:0.55-1.15),「TC0 and IC0」のPFS はHR 0.77(95%CI:0.61-0.99,P=0.039),OS はHR 0.82(95%CI:0.62-1.08)と,PD-L1 が低発現および発現がみられない症例においても良好な結果を示した。主な毒性は,アテゾリズマブ併用群で食思不振,末梢神経障害,悪心,倦怠感などであり,Grade 3以上の毒性はプラチナ製剤+ベバシズマブ併用療法群と比較し頻度は高い傾向を認めた(58.5% vs 50.0%)。また免疫関連毒性として,アテゾリズマブ併用群で皮疹,肝機能障害,甲状腺機能障害,肺臓炎,大腸炎が報告されており,免疫関連の毒性管理には注意が必要である。

  2. a-2. 扁平上皮癌

    PS 0-1 のⅣ期非小細胞肺癌(扁平上皮癌)患者を対象として,プラチナ製剤併用療法に対しペムブロリズマブを追加することの有効性を評価した第Ⅲ相試験(KEYNOTE-407 試験)が行われた28)。559 例が1:1 でランダム化され,主要評価項目であるPFS の332 例のイベントが確認された時点の中間解析が報告された。PFS はHR 0.56(6.4 カ月 vs 4.8 カ月,95%CI:0.45-0.70,P<0.0001)と,プラチナ製剤併用療法に対するペムブロリズマブの上乗せはPFSを有意に延長することが示された。もう1つの主要評価項目であるOS は,観察期間中央値が7.8 カ月と不十分な観察期間ではあるがHR 0.64(15.9 カ月 vs 11.3 カ月,95%CI:0.49-0.85,P=0.0008)と,OS もまた有意に延長することが示された。PD-L1 発現別のサブグループ解析においても,PD-L1 1~49%のPFS はHR 0.56(95%CI:0.39-0.80),OS はHR 0.57(95%CI:0.57-0.90),PD-L1 1%未満のPFS はHR 0.68(95%CI:0.47-0.98),OS はHR 0.61(95%CI:0.38-0.98)と,いずれの集団においても良好な傾向がみられた。主な毒性は,ペムブロリズマブ併用群で貧血,食思不振,好中球減少,悪心などであり,Grade 3 以上の毒性はプラチナ製剤群と比較し頻度は同等であった(69.8% vs 68.2%)。ただし,ペムブロリズマブ併用群で肺臓炎の発症率(6.5% vs 2.1%)と治療関連死亡(3.6% vs 2.1%)は高い傾向を認めており,毒性管理には注意が必要である。

    PS 0-1 のⅣ期非小細胞肺癌(扁平上皮癌)患者を対象として,プラチナ製剤併用療法に対しアテゾリズマブを追加することの有効性を評価した第Ⅲ相試験(IMpower131 試験)が行われ,CBDCA/nab-PTX+アテゾリズマブ併用療法(B 群)とCBDCA/nab-PTX 療法(C 群)の比較結果が報告された29)。主要評価項目であるC群に対するB 群のPFS は,HR 0.71(6.3 カ月 vs 5.6 カ月,95%CI:0.60-0.85,P=0.001)であり,プラチナ製剤併用療法に対するアテゾリズマブの上乗せはPFS を有意に延長することが示された。ただし,もう1 つの主要評価項目であるOS は,中間解析においてHR 0.96(14.0 カ月 vs 13.9 カ月,95%CI:0.78-1.18,P=0.6931)と,OS の延長は示されなかった。また,PD-L1 発現別のサブグループ解析においては,「TC1/2 or IC1/2」のPFS はHR 0.70(95%CI:0.53-0.92),OS はHR 1.34(95%CI:0.95-1.90),「TC0 and IC0」のPFS はHR 0.81(95%CI:0.64-1.03),OS はHR 0.86(95%CI:0.65-1.15)と,PD-L1 発現によらずPFS は良い傾向にあるものの,PD-L1 低発現群においてOS の延長を示せなかった。Grade 3 以上の毒性は,プラチナ製剤群と比較し頻度は高い傾向が認められた(69% vs 58%)(2019 年10 月時点において扁平上皮癌に対するCBDCA/nab-PTX+アテゾリズマブ併用療法は,本邦で保険適用となっていない)。

75 歳以上の症例においては,前述の4 つの第Ⅲ相試験においてある一定数が登録されているが,安全性のデータは示されていないため,その投与には慎重を期すべきである。なお,アテゾリズマブの上乗せを評価した2 試験においては,75 歳以上のサブグループ解析が報告されている。IMpower150 試験(非扁平上皮癌)では,75歳以上においてPFS:HR 0.78(9.7 カ月 vs 6.8 カ月)27),IMpower131 試験(扁平上皮癌)では,75 歳以上においてPFS:HR 0.51(7.0 カ月 vs 5.6 カ月,95%CI:0.30-0.84)29)と,ともに併用療法が有効である傾向が示されているが,OS の結果は示されていない。

以上より,PD-L1 陽性細胞<50%,もしくは不明のⅣ期非小細胞肺癌(EGFR 遺伝子変異陰性およびALK 遺伝子転座陰性),PS 0-1 症例に対してプラチナ製剤併用療法+PD-1/PD-L1 阻害剤を行うよう勧められる。エビデンスの強さはB,また総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会(看護師1 名,薬剤師2 名,患者2 名を含む)

なお,プラチナ製剤併用療法+PD-1/PD-L1 阻害剤の治療レジメンは,有効性と安全性の観点から非扁平上皮癌においてはCDDP/CBDCA+PEM+ペムブロリズマブもしくはCBDCA+PTX+ベバシズマブ+アテゾリズマブ,扁平上皮癌においてはCBDCA+PTX/nab-PTX+ペムブロリズマブが推奨される。詳細については,項末のレジメンを参照のこと。

  1. b. プラチナ製剤併用療法に対しPD-1/PD-L1 阻害剤の上乗せを評価した4 つの第Ⅲ相試験26)~29)では,適格基準としてPS 0-1 を満たす患者のみが登録されており,PS 2 のⅣ期非小細胞肺癌の一次治療でプラチナ製剤併用療法+PD-1/PD-L1 阻害剤を投与した際の臨床成績および安全性は不明である。また,PS 2 に対しては細胞障害性抗癌剤の毒性も懸念されており,さらにPD-1/PD-L1 阻害剤を上乗せする治療法は安全性において看過できない可能性がある。

    以上より,PS 2 のPD-L1 陽性細胞<50%,もしくは不明のⅣ期非小細胞肺癌に対し一次治療においてプラチナ製剤併用療法+PD-1/PD-L1 阻害剤を推奨するだけの根拠が明確でなく,推奨度決定不能とした。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

  2. 投票者の所属委員会:薬物療法小委員会(看護師1 名,薬剤師2 名,患者2 名を含む)

CQ69
ドライバー遺伝子変異/転座陰性, PD-L1陽性細胞1-49%,PS 0-1に対する一次治療においてペムブロリズマブは勧められるか?

エビデンスの強さC
ペムブロリズマブ単剤療法を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,合意率:93%〕

解説

EGFR 遺伝子変異やALK 遺伝子転座のない,PD-L1 陽性細胞1%以上のPS 0-1 のⅣ期非小細胞肺癌患者を対象として,ペムブロリズマブ単剤とプラチナ製剤併用療法を比較する第Ⅲ相試験(KEYNOTE-042 試験)が行われた30)。探索的評価項目であるPD-L1 陽性細胞1-49%のサブグループ解析において,OS はHR 0.92(13.4 カ月 vs 12.1 カ月,95%CI:0.77-1.11)であり,その生存曲線はクロスしていた。また,PD-L1 陽性細胞1-49%のPFS は報告されていない。毒性においては前述するKEYNOTE-024 試験の有害事象と同様であり,これらの毒性管理には注意が必要である。

なお75 歳以上の症例においては,前述する試験のみのサブグループ解析や前向きなデータともに報告はなく,有効性に関しては明らかになっていない。またPS 2 の症例についても試験の対象に含まれておらず,有効性および安全性は不明である。

以上より,PD-L1 陽性細胞1-49%のⅣ期非小細胞肺癌(EGFR 遺伝子変異陰性およびALK 遺伝子転座陰性),PS 0-1 症例に対して,プラチナ製剤併用療法やプラチナ製剤併用療法+PD-1/PD-L1 阻害剤との検討の中で,益と害のバランスを鑑みてペムブロリズマブ単剤療法を考慮してもよい。エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会(看護師2 名,薬剤師1 名,患者2 名を含む)/実施年度:2019年

CQ70
プラチナ製剤併用療法を受ける場合の推奨される投与期間は?

エビデンスの強さC
プラチナ製剤併用療法のプラチナ製剤投与期間を6 サイクル以下とするよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

解説

第三世代細胞障害性抗癌剤とプラチナ製剤との併用について,3 サイクルもしくは4 サイクルを6サイクルと比較した試験によると,いずれにおいても1 年生存率やOS は同等で毒性は前者が軽いと報告された31)32)。前述の2 編の試験を含む,6 サイクルとそれ以下のサイクルを比較した試験の個票データを利用したメタアナリシスでは,6 サイクル群で有意なPFS の延長を認めたがOS は同等であった33)

一方,近年行われた第Ⅲ相試験では,一次治療におけるプラチナ製剤の投与サイクル数を4 もしくは6 サイクルと規定しているものがほとんどであり,CDDP+PEM とCDDP+GEM を比較した第Ⅲ相試験(JMDB 試験)では,プラチナ製剤併用療法の投与中央値はどちらも5 サイクルであった4)

以上より,プラチナ製剤併用療法の投与期間は4~6 サイクルとするよう勧められる。エビデンスの強さはC,ただし総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。効果および毒性の観点から,6 サイクルを超えるプラチナ製剤の投与は推奨されない。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会(看護師1 名,薬剤師2 名,患者2 名を含む)

CQ71
プラチナ製剤併用療法を受ける場合にベバシズマブの上乗せは勧められるか?

エビデンスの強さA
  1. a. ベバシズマブの適応となる75 歳未満,PS 0-1 症例に対して,プラチナ製剤併用療法にベバシズマブを併用するよう提案する。

〔推奨の強さ:2,合意率:73%〕

エビデンスの強さC
  1. b. 75 歳以上の症例に対して,ベバシズマブを併用しないよう提案する。

〔推奨の強さ:2,合意率:96%〕

エビデンスの強さD
  1. c. PS 2 症例に対して,ベバシズマブを併用しないよう提案する。

〔推奨の強さ:2,合意率:92%〕

*ベバシズマブは扁平上皮癌への投与は行わない。

解説

  1. a. メタアナリシスでは,プラチナ製剤併用療法にベバシズマブを追加することでORR の上昇,PFS の延長が示されており,OS についても延長が認められたとする報告がある34)35)。一方で,ベバシズマブの併用でGrade 3 以上の毒性(蛋白尿,高血圧,出血性イベント,好中球減少,発熱性好中球減少,治療関連死)の有意な増加が報告されている34)~36)

    出血リスクに関しては,扁平上皮癌や空洞を有する症例,大血管への浸潤や隣接を認めるもの,その他,喀血,コントロール不能な高血圧,重篤な大血管病変や消化管における活動性出血の既往があるものなどが高リスク群と考えられており,ベバシズマブの投与に際してはその適応を十分に検討する必要がある36)

    CBDCA+PTX にベバシズマブを追加することの有効性を評価した第Ⅲ相試験(ECOG4599 試験)では,ベバシズマブ併用群でORR の上昇,PFS の有意な延長(6.2 カ月 vs 4.5 カ月,HR 0.66,95%CI:0.57-0.77,P<0.001)ならびにOS の有意な延長(12.3 カ月 vs 10.3 カ月,HR 0.79,95%CI:0.67-0.92,P=0.003)を認めた37)。一方,CDDP+GEM にベバシズマブを追加した第Ⅲ相試験(AVAiL 試験)においては,PFS は有意に延長したがOS では有意な延長を認めなかった38)。本邦ではCBDCA+PTX にベバシズマブを追加するランダム化第Ⅱ相試験(JO19907 試験)が行われ,併用群においてORR の上昇(60.7% vs 31.0%,P=0.0013),PFS の延長(6.9 カ月 vs 5.9 カ月,HR 0.61,95%CI:0.42-0.89,P=0.0090)を認め,新たな毒性を認めなかったが,OS については有意な延長を認めなかった(22.8 カ月 vs 23.4 カ月,HR 0.99,95%CI:0.65-1.50,P=0.9526)39)。中国において同じレジメンを比較した第Ⅲ相試験(BEYOND 試験)では,ベバシズマブを一次治療以後も継続することが可能なデザインであったが,PFS の有意な延長(9.2 カ月 vs 6.5 カ月,HR 0.40,95%CI:0.29-0.54,P<0.001)と,OS の有意な延長(24.3 カ月 vs 17.7 カ月,HR 0.68,95%CI:0.50-0.93,P=0.0154)が認められた40)

    以上より,ベバシズマブの適応となる75 歳未満,PS 0-1 症例に対してプラチナ製剤併用療法を用いる際にはベバシズマブを追加することが勧められる。エビデンスの強さはA,ただし総合的評価では行うよう弱く推奨(2 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

    ベバシズマブの投与については,その薬剤の特性からプラチナ製剤併用療法の終了後,病勢進行もしくは毒性中止まで投与を継続する方法が一般的である37)~40)

  2. 投票者の所属委員会:薬物療法小委員会(看護師1 名,薬剤師2 名,患者2 名を含む)
  3. b. 75 歳以上

    高齢者におけるプラチナ製剤併用療法+ベバシズマブについて,ECOG4599 試験におけるサブグループ解析で70 歳以上の高齢者では効果の上乗せは認められず,若年に比してGrade 3 以上の好中球減少,出血,蛋白尿が多かったとされている41)。その後に報告されたECOG4599 試験とPoint Break 試験を統合したサブグループ解析では,OS およびPFS において75 歳以上で特にベバシズマブの上乗せ効果に乏しい傾向がみられた42)。米国におけるベバシズマブ併用療法の後方視的研究(ARIES)では,65 歳未満と65 歳以上,および75 歳未満と75 歳以上のサブグループ解析でどちらも有効性は同等であったが,毒性の面において高齢者群でGrade 3 以上の動脈血栓塞栓症が増える傾向にあり,75 歳以上ではさらに高かった(65 歳未満1.5%,65 歳以上2.9%,75 歳以上3.5%)43)。また,欧州を中心に施行されたベバシズマブ併用療法のコホート研究(SAiL 試験)では,70 歳未満と70 歳以上で有効性は同等であったが,高齢者群でGrade 3 以上の出血の有害事象が増える傾向がみられた(70 歳未満3.5%,70 歳以上5.3%)44)。ただし,後者に示す2 試験はいずれも非ランダム化試験でありエビデンスは低い。

    本邦においては75 歳以上の高齢者におけるベバシズマブ併用療法の十分なデータはなく,有効性や安全性は確認されていない。以上より,高齢者に対するベバシズマブ併用を行うよう勧めるだけの根拠が明確ではなく,現時点では行わないよう勧められる。エビデンスの強さはC,また総合的評価では行わないよう弱く推奨(2 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

  4. 投票者の所属委員会:薬物療法小委員会(看護師1 名,薬剤師2 名,患者2 名を含む)
  5. c. PS 2

    ベバシズマブ併用の臨床試験ならびに観察研究においてその大半がPS 0-1 であり,PS 2 に対するベバシズマブの安全性や有効性に関してのデータは少ない43)44)。よって,PS 2 に対するベバシズマブは行うよう勧めるだけの根拠が明確ではない。ベバシズマブを併用することにより毒性の頻度は有意に増加することから,益と害のバランスを考慮し現時点では行わないよう勧められる。エビデンスの強さはD,ただし総合的評価では行わないよう弱く推奨(2 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

  6. 投票者の所属委員会:薬物療法小委員会(看護師1 名,薬剤師2 名,患者2 名を含む)

*CBDCA+PTX+ベバシズマブの第Ⅱ相試験においてGrade 3 以上の肺出血が9.1%に認められ,扁平上皮癌では4/13 例(31%)で重篤な肺出血をきたした45)。その後,出血リスクに関する検討が行われ,扁平上皮癌や空洞を有する症例,大血管への浸潤や隣接を認めるもの,その他,喀血・コントロール不能な高血圧,重篤な大血管病変や消化管における活動性出血の既往があるものなどが高リスク群と考えられた36)。以上より,ベバシズマブは扁平上皮癌に対して用いない。

CQ72
プラチナ製剤併用療法を受ける場合にネシツムマブの上乗せは勧められるか?

エビデンスの強さB
扁平上皮癌のPS 0-1症例に対して,シスプラチン+ゲムシタビンにネシツムマブを併用するよう提案する。

〔推奨の強さ:2,合意率:96%〕

解説

PS 0-2 のⅣ期非小細胞肺癌(扁平上皮癌)患者を対象として,プラチナ製剤併用療法(CDDP+GEM)に対しネシツムマブを追加することの有効性を評価した第Ⅲ相試験(SQUIRE 試験)が行われた46)。主要評価項目であるOS はHR 0.84(11.5 カ月 vs 9.9 カ月,95%CI:0.74-0.96,P=0.01)と,プラチナ製剤併用療法に対するネシツムマブの上乗せはOS を有意に延長することが示された。またPFS においても,HR 0.85(5.7 カ月 vs 5.5 カ月,95%CI:0.74-0.98,P=0.006)と,有意に延長することが示された。さらに,PS0-1 のサブグループ解析においても,OS はHR 0.85(95%CI:0.72-1.01),PFS はHR 0.86(95%CI:0.73-1.02)と良好な傾向がみられた。また,PS 0-1 のⅣ期非小細胞肺癌(扁平上皮癌)の日本人患者を対象として,プラチナ製剤併用療法(CDDP+GEM)に対しネシツムマブを追加することの有効性を評価したランダム化第Ⅱ相試験が行われた47)。主要評価項目であるORR は,ネシツムマブ併用群で有意に高い(51.1% vs 20.9%)ことが示された。さらにOS およびPFSは,それぞれHR 0.66(14.9 カ月 vs 10.8 カ月,95%CI:0.47-0.93,P=0.0161),HR 0.56(4.2 カ月 vs 4.0 カ月,95%CI:0.41-0.78,P=0.0004)であり,ネシツムマブの上乗せによりOS,PFS を有意に延長させることが示された。

75 歳以上の症例においては,前述する2 つの試験46)47)においてある一定数が登録されているが,サブグループ解析の成績は示されていない。PS 2 症例においては,SQUIRE 試験のサブグループ解析でOS はHR 0.78(95%CI:0.51-1.21),PFS はHR 0.79(95%CI:0.50-1.24)と全体集団に劣らない傾向が示されている一方で,PS 2 の日本人症例に対する投与経験はなく,有効性および安全性は不明である。

主な毒性は,ネシツムマブ併用群で骨髄抑制,食思不振,倦怠感に加えてネシツムマブに特徴的な皮疹,低マグネシウム血症などであり,Grade 3~4 の毒性が併用群で高い傾向であった。日本で行われた第Ⅱ相試験では,発熱性好中球減少症の頻度がプラチナ製剤群と比較し高かった(12% vs 3%)。また,SQUIRE試験における治療関連死亡は3% vs 2%であった。

以上より,Ⅳ期非小細胞肺癌(扁平上皮癌),PS 0-1 症例に対してプラチナ製剤併用療法にネシツムマブを追加することが勧められる。ただし,プラチナ製剤併用療法+PD-1/PD-L1 阻害剤と比較したデータはなく,プラチナ製剤併用療法+ネシツムマブがプラチナ製剤併用療法+PD-1/PD-L1 阻害剤より優れているかどうかは明らかでない。エビデンスの強さはB,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会(看護師 2名,薬剤師 1名,患者 2名を含む)/実施年度:2019年

ネシツムマブの投与については,前述した試験によるとプラチナ製剤併用療法の終了後,病勢進行もしくは毒性中止まで投与を継続する方法がとられている。また,プラチナ製剤併用療法+ネシツムマブの治療レジメンは前述した試験で用いられたCDDP+GEM が推奨され,安全性の観点からそれ以外の細胞障害性抗癌剤とネシツムマブの併用は勧められない。詳細については,項末のレジメンを参照のこと。

CQ73
プラチナ製剤併用療法を受ける場合に維持療法は勧められるか?

エビデンスの強さB
〈非扁平上皮癌〉

  1. a. シスプラチン+ペメトレキセド併用療法4 サイクル後,病勢進行を認めず毒性も忍容可能な症例に対してペメトレキセドによるcontinuation maintenance を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

エビデンスの強さB
  1. b. プラチナ製剤併用療法4 サイクル後,病勢進行を認めず毒性も忍容可能な症例に対してペメトレキセドによるswitch maintenance を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,合意率:88%〕

エビデンスの強さC
〈扁平上皮癌〉

  1. c. プラチナ製剤併用療法4 サイクル後,病勢進行を認めず毒性も忍容可能な症例に対してswitch maintenance,continuation maintenance を行わないよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

維持療法の定義

解説

  1. a. CDDP+PEM 併用療法後のPEM を用いたcontinuation maintenance の第Ⅲ相試験(PARAMOUNT 試験)で,PFS の有意な延長(4.1 カ月 vs 2.8 カ月,HR 0.62,95%CI:0.50-0.73,P<0.0001),OS の有意な延長(13.9 カ月 vs 11.0 カ月,HR 0.78,95%CI:0.64-0.96,P=0.0195)が示された48)。QOL の低下は認めず,維持療法群において毒性の増強はみられたものの許容範囲内であった。ベバシズマブの併用に関しては,CDDP+PEM+ベバシズマブ併用療法後にPEM+ベバシズマブ群とベバシズマブ単独群の第Ⅲ相試験(AVAPERL 試験)が行われ,前者でPFS の有意な延長(7.4 カ月 vs 3.7 カ月,HR 0.48,95%CI:0.44-0.75,P<0.0001)を認めたが,OS の有意な延長は認めなかった49)

    以上より,CDDP+PEM 併用療法4 サイクル後,病勢進行を認めず毒性も忍容可能な症例に対するPEM のcontinuation maintenance は行うよう勧められる。エビデンスの強さはB,また総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

  2. 投票者の所属委員会:薬物療法小委員会(看護師1名,薬剤師2名,患者2名を含む)/実施年度2018年
  3. b. プラチナ製剤併用療法後のPEM を用いたswitch maintenance の第Ⅲ相試験で,PFS の有意な延長(4.3 カ月 vs 2.6 カ月,HR 0.50,95%CI:0.42-0.61,P<0.0001),OS の有意な延長(13.4 カ月 vs 10.6 カ月,HR 0.79,95%CI:0.65-0.95,P=0.012)が示された50)。しかしながら,プラセボ群において二次治療以降に有効とされているPEM が投与されていない(クロスオーバー率が18%と少ない)ことが問題とされている。

    以上より,プラチナ製剤併用療法4 サイクル後,病勢進行を認めず毒性も忍容可能な症例に対するPEM によるswitch maintenance は選択肢の1 つと考えられる。エビデンスの強さはB,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

  4. 投票者の所属委員会:薬物療法小委員会(看護師1名,薬剤師2名,患者2名を含む)/実施年度2018年
  5. c. プラチナ製剤併用療法後のPEM,エルロチニブを用いたswitch maintenance の第Ⅲ相試験でPFS,OS の延長が示されたが,扁平上皮癌のサブグループにおいてはOSにおける有意差が消失していた50)51)。さらに,早期からエルロチニブ維持療法を行う群とPD 後にエルロチニブ療法を行う群を比較した第Ⅲ相試験(IUNO 試験)が行われたが,前述の試験と同様に扁平上皮癌のサブグループにおいてもOS の延長は示されなかった(9.7 カ月 vs 9.5 カ月,HR 1.00,95%CI:0.74-1.35,P=0.82)52)

    以上より,扁平上皮癌に対するswitch maintenance は推奨するだけの根拠に乏しい。また,continuation maintenance についても扁平上皮癌に対する有効性は示されていない。維持療法において毒性が増強する点も考慮すると,プラチナ製剤併用療法4 サイクル後,病勢進行を認めず毒性も忍容可能な扁平上皮癌に対してswitch maintenance,continuation maintenance ともに行わないよう勧められる。エビデンスの強さはC,ただし総合的評価では行わないよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

  6. 投票者の所属委員会:薬物療法小委員会(看護師1 名,薬剤師2 名,患者2 名を含む)

CQ74
PS 3-4 の患者(ドライバー遺伝子変異/転座陰性もしくは不明,PD-L1 発現は問わない)に薬物療法は勧められるか?

エビデンスの強さD
薬物療法を行わないよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

解説

PS 3-4 症例(ドライバー遺伝子変異/転座陰性もしくは不明,PD-L1 発現は問わない)に対する細胞障害性抗癌剤は,一般に適応がない。PD-1/PD-L1 阻害剤はPS 良好例(PS 0-1)を中心に臨床試験が行われているため,PS 不良例のエビデンスは乏しく,安全性も不明であることから細胞障害性抗癌剤と同様にPS 3-4 についてのPD-1/PD-L1 阻害剤も推奨されない。エルロチニブについて,PS 不良や合併症のため細胞障害性抗癌剤の適応とならない進行非小細胞肺癌に対してエルロチニブ単剤と緩和治療の第Ⅲ相試験(TOPICAL 試験)が行われた53)。患者背景として,年齢中央値77 歳,PS 3 が30%を占め,EGFR 遺伝子変異については陰性,不明がそれぞれ52%,46%であった。組織型では,扁平上皮癌と非扁平上皮癌が各40%,60%含まれていた。この試験において,主要評価項目であるOS の延長は認められなかった(エルロチニブ単剤3.7 カ月 vs プラセボ群3.6 カ月,HR 0.94,95%CI:0.81-1.10,P=0.46)。

以上より,PS 3-4 の患者(ドライバー遺伝子変異/転座陰性もしくは不明,PD-L1 発現は問わない)に対する薬物療法は行わないよう推奨される。エビデンスの強さはD,ただし総合的評価では行わないよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会(看護師1名,薬剤師2名,患者2名を含む)/実施年度2018年

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7-3-2.ドライバー遺伝子変異/転座陰性の二次治療以降

CQ75
一次治療耐性または進行例,PS 0-2,免疫チェックポイント阻害剤未使用例に対する二次治療において薬物療法は勧められるか?

エビデンスの強さA
  1. a. PD-1 阻害剤またはPD-L1 阻害剤を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

エビデンスの強さA
  1. b. 細胞障害性抗癌剤を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,合意率:96%〕

*ペムブロリズマブの適応症は,(腫瘍細胞上の)PD-L1 陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌に限られる。

*PEM は非扁平上皮癌への投与が推奨される。

解説

  1. a. ドライバー遺伝子変異/転座陰性例の二次治療では,複数の第Ⅲ相試験においてDTX 単剤療法と比較してPD-1/PD-L1 阻害剤が有意にOS を延長することが証明されている。いずれの試験もDTX 単剤を対照としており,ニボルマブおよびアテゾリズマブはPD-L1 の発現を問わず行われ(CheckMate017 試験1),CheckMate057 試験2),OAK 試験3)),ペムブロリズマブはPD-L1 陽性細胞1%以上の非小細胞肺癌を対象として行われた(KEYNOTE-010 試験4))。

    上記の第Ⅲ相試験はいずれもPS 0-1 の症例を対象として実施しており,PS 2 の一次治療耐性または進行後のⅣ期非小細胞肺癌症例に対するPD-1/PD-L1 阻害剤の有用性は効果,安全性ともに現時点で不明である。そのため,PS 2 に対してPD-1/PD-L1 阻害剤の使用を推奨するだけの根拠は十分でない。ただしガイドライン検討委員会薬物療法及び集学的治療小委員会では,PD-1/PD-L1 阻害剤は細胞障害性抗癌剤と比較して重篤な毒性の頻度は低いことから,投与の是非を慎重に検討したうえでPD-1/PD-L1 阻害剤の投与を考慮してもよいという意見が多くみられた。ただし,PD-1/PD-L1 阻害剤のORR はいずれの試験においても10~20%程度と報告されており,本薬剤が無効と判断された場合には速やかに細胞障害性抗癌剤に切り替えることを推奨する。

    以上より,一次治療耐性または進行後,ドライバー遺伝子変異/転座陰性,免疫チェックポイント阻害剤未使用例のⅣ期非小細胞肺癌に対してはPD-1/PD-L1 阻害剤を行うよう推奨する。エビデンスの強さはA,また総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

    投票者の所属委員会:薬物療法小委員会(看護師1 名,薬剤師2 名,患者2 名を含む)
    〈ニボルマブ〉

    ニボルマブは再発非小細胞肺癌の標準治療であるDTX単剤との比較において,扁平上皮癌を対象としたCheckMate017試験と非扁平上皮癌を対象としたCheckMate057試験の2つの第Ⅲ相試験が報告されている。

    プラチナ併用療法の治療歴を有する進行扁平上皮癌を対象としたCheckMate017 試験では,ニボルマブは主要評価項目であるOSにおいてHR 0.59(9.2 カ月 vs 6.0 カ月,95%CI:0.4-0.79,P<0.001)とDTX 単剤と比較し有意な延長を示し,PD-L1 発現率に基づくサブグループ解析でも,PD-L1 の発現によらずニボルマブの有効性が示されている1)。主な毒性は,ニボルマブ群で倦怠感や食思不振,DTX 群で好中球減少,倦怠感,脱毛などであり,Grade 3 以上の毒性はニボルマブ群で有意に少なかった(7% vs 55%)。一方,ニボルマブ群で肺臓炎,甲状腺機能障害,大腸炎,肝機能障害,皮疹,Ⅰ 型糖尿病などの免疫関連の毒性が報告されており,免疫関連の毒性管理には注意が必要である。

    プラチナ併用療法の治療歴を有する進行非扁平上皮癌を対象としたCheckMate057 試験でも,主要評価項目であるOSにおいてHR 0.73(12.2 カ月 vs 9.4 カ月,95%CI:0.59-0.79,P=0.002)とDTX 単剤と比較しニボルマブの有意な延長が示されている2)。特にPD-L1陽性細胞1%以上のサブグループにおいてはOS がHR 0.58(95%CI:0.43-0.79),PFS がHR 0.70(95%CI:0.53-0.94)と有意にOS を延長することが示されている。また,CheckMate057 試験におけるQOL の比較において,ニボルマブ群がDTX 群と比較して有意に肺癌症状の悪化を遅らせることが示された5)。主な毒性としてニボルマブ群で倦怠感,吐き気,食思不振,DTX群で好中球減少,倦怠感,脱毛などであり,Grade 3 以上の毒性はニボルマブ群で有意に少なかった(10% vs 54%)。一方,ニボルマブ群で肺臓炎,甲状腺機能障害,大腸炎,肝機能障害,皮疹,Ⅰ 型糖尿病などの免疫関連の毒性が報告されており,CheckMate017 試験同様,免疫関連の毒性管理には注意が必要である。PD-L1 発現率に基づくサブグループ解析においてはCheckMate017 試験と異なり,PD-L1 発現率による有効性の違いが示唆されている。

    なお,CheckMat017/057 試験ではPD-L1 のカットオフが1%,5%,10%,50%などでの有効性解析はなされているが各カットオフ値未満における解析は報告されていない。非扁平上皮癌を対象としたCheckMate057 試験において,PD-L1 陽性細胞1%未満群におけるORR はDTX 群で15%,ニボルマブ群で9%,PFS はHR 1.19(95%CI:0.88-1.61)とDTX 群で良い傾向があった。一方でOS では,有意差はないもののHR 0.90(95%CI:0.66-1.24)とニボルマブ群で良い傾向が示されている。ニボルマブの投与にあたっては,厚生労働省による最適使用推進ガイドラインも参照のこと6)

    〈ペムブロリズマブ〉

    プラチナ併用療法を含む治療歴を有するPD-L1発現率陽性細胞1%以上の進行非小細胞肺癌を対象とした第Ⅱ-Ⅲ相試験(KEYNOTE-010 試験)では,DTX 単剤に対するペムブロリズマブ(2 mg/kg群と10 mg/kg群の2 群統合)のOS はHR 0.67(95%CI:0.56-0.80),PFS はHR 0.85(95%CI:0.73-0.98)であり,OS の延長効果が示されている4)。PD-L1 陽性細胞が1~49%および50%以上のサブグループ解析においては,統合したOS でのHR がそれぞれ0.76(95%CI:0.60-0.96),0.53(95%CI:0.40-0.70)であり,PD-L1 の低発現例,高発現例のどちらもペムブロリズマブが有意にOS を延長することが示されている。Grade 3 以上の毒性はペムブロリズマブ2 mg/kg 群で13%,10 mg/kg 群で16%,DTX 群で35%とペムブロリズマブ群で頻度が低く,ペムブロリズマブの免疫関連の毒性として甲状腺機能障害,肺臓炎,皮膚障害などが認められた。また,この試験においてペムブロリズマブ2 mg/kg 群と10 mg/kg 群での有効性や毒性の差は認めなかったことが報告されている。

    PD-L1 陽性の切除不能な進行・再発非小細胞肺癌に対する本邦におけるペムブロリズマブの投与量は,添付文書により200 mg/body の3 週毎投与と規定されている。

    〈アテゾリズマブ〉

    アテゾリズマブはプラチナ併用療法の治療歴を有する非小細胞肺癌を対象として,DTX 単剤と比較したランダム化第Ⅱ相試験(POPLAR 試験)と第Ⅲ相試験(OAK 試験)がそれぞれ報告されている3)7)。前記の2試験では,前述したPD-1 阻害剤を評価した比較試験と異なり,腫瘍細胞(TC:tumor cells)に加え,腫瘍浸潤免疫細胞(IC:tumor-infiltrating immune cells)のPD-L1 発現をそれぞれ0~3 の4 段階で測定し評価している。

    POPLAR 試験では,主要評価項目であるOSはHR 0.73(12.6 カ月 vs 9.7 カ月,95%CI:0.53-0.99,P=0.040)とアテゾリズマブがDTX 単剤と比較し有意にOS を延長した結果が示されている7)。OAK 試験においても,主要評価項目であるOS はHR が0.73(13.8 カ月 vs 9.6 カ月,95%CI:0.62-0.87,P=0.0003)とアテゾリズマブがDTX 単剤と比較し有意にOS を延長した3)。組織型別のサブグループ解析では,非扁平上皮癌患者ではOS がHR 0.73(95%CI:0.60-0.89),扁平上皮癌患者ではOSがHR 0.73(95%CI:0.54-0.98)と組織型別効果の差は認められなかった。PD-L1 発現のサブグループ解析では,「TC 0 and IC 0」群でOS がHR 0.75(95%CI:0.59-0.96,P=0.0215),「TC 1/2/3 or IC 1/2/3」群でOS がHR 0.74(95%CI:0.58-0.93,P=0.0102)といずれのサブグループでも有意にOS を延長する結果であった。また,OAK 試験におけるQOL の比較において,アテゾリズマブ群がDTX 群と比較して有意に肺癌症状の悪化を遅らせることが示された8)。OAK 試験における主な毒性は,アテゾリズマブ群で倦怠感や悪心,下痢などであり,Grade 3 以上の毒性(治療関連)はアテゾリズマブ群で15%,DTX 群で43%とアテゾリズマブ群が少なかった。一方,アテゾリズマブ群の免疫関連の毒性として肺臓炎,肝炎,大腸炎が報告されており,毒性による投与中止例は8%(DTX 群は19%)であった。アテゾリズマブの投与にあたっては,厚生労働省による最適使用推進ガイドラインも参照のこと9)

  2. b. PD-1/PD-L1 阻害剤と細胞障害性抗癌剤(DTX)単剤を比較した前述の5 つのランダム化比較試験1)~4)7)において,一部の試験でPFS およびOS の生存曲線が交差するなど,細胞障害性抗癌剤のほうが臨床的に有意義であった可能性のある症例が存在する。また,DTX 単剤 よりも生存延長効果に勝るDTX+ラムシルマブ併用療法とPD-1/PD-L1 阻害剤とを比較した臨床試験は存在しない。

    以上より,一次治療耐性または進行後,ドライバー遺伝子変異/転座陰性,免疫チェックポイント阻害剤未使用例のⅣ期非小細胞肺癌に対して細胞障害性抗癌剤を行うよう提案する。エビデンスの強さはA,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

  3. 投票者の所属委員会:薬物療法小委員会(看護師1 名,薬剤師2 名,患者2 名を含む)

CQ76
PS 0-2 に対して二次治療以降で推奨される細胞障害性抗癌剤は何か?

エビデンスの強さA
ドセタキセル±ラムシルマブ,ペメトレキセド単剤,S-1 単剤を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

*PEM は非扁平上皮癌への投与に限定。

解説

〈ドセタキセル単剤〉

プラチナ製剤を含む薬物療法無効または奏効後に再発した非小細胞肺癌患者を対象としたDTX 単剤の第Ⅲ相試験が2 編報告されている。1 つはDTX(100 mg/m2 or 75 mg/m2) vs VNR or IFM の比較試験(TAX320 試験)でMOS では有意差を認めないもののDTX 75 mg/m2群で対照群と比較してORR,26 週PFS 率,1 年生存率の有意な改善を認めた10)。また,DTX(100 mg/m2or 75 mg/m2)と緩和治療の比較ではOS 中央値と1 年生存率は,DTX 75 mg/m2群,緩和治療群でそれぞれ7.5 カ月と37%,4.6 カ月と19%で,DTX 群で有意に優れ(P=0.010,P=0.003),QOL の改善も認められた11)。いずれの試験においても,DTX 75 mg/m2群が最も治療成績が優れており,プラチナ製剤を含む治療後の不応ないし再発例に対する非小細胞肺癌の薬物療法としてはDTX 75 mg/m2の有用性が確立された。本邦における推奨用量は60 mg/m2であるが,本邦で行われたこの用量における第Ⅱ相試験でORR 18.2%,OS 中央値7.8 カ月と上記2 編の第Ⅲ相試験のDTX 75 mg/m2と同等の効果を有する結果を報告した12)

〈ドセタキセル+ラムシルマブ〉

CQ77 参照

〈ペメトレキセド単剤〉

Ⅳ期非小細胞肺癌の二次治療におけるPEM 単剤とDTX 単剤の第Ⅲ相試験が報告され,ORR,OS 中央値はPEM 群で9.1%,8.3 カ月,DTX 単剤群で8.8%,7.9 カ月であり,主要評価項目であるOS で非劣性は証明されなかったが同等の効果HR 0.99(95%CI:0.80-1.20,P=0.226)が報告された。毒性に関しては,Grade 3/4 の好中球減少,発熱性好中球減少,全Grade の脱毛の発現率がDTX 群で有意に高かった13)。同試験を組織学的に後方視的解析した結果,OS は非扁平上皮癌でそれぞれ9.3 カ月と8.0 カ月(HR 0.78,95%CI:0.61-1.00,P=0.047)と有意差を認めた。また,PFS においても非扁平上皮癌でそれぞれ3.1 カ月と3.0 カ月(HR 0.82,95%CI:0.66-1.02,P=0.076)と有意差を認めなかったが,効果はほぼ同等であった14)。一方,毒性に関しては,Grade 3 以上の発熱性好中球減少(1.9% vs 12.7%),好中球減少(5.3% vs 40.2%),好中球減少に伴った感染(0.0% vs 3.3%)の発現頻度は有意に少なく,ALT 上昇(1.9% vs 0.0%)の頻度は有意に高いと違いを認めたが,QOL に関しては差を認めなかった。

〈S-1 単剤〉

プラチナ既治療のⅣ期非小細胞肺癌,PS 0-2 の二次もしくは三次治療例を対象とし,S-1 単剤とDTX 単剤を比較する第Ⅲ相試験が本邦を含むアジアで行われた。主要評価項目であるOS は非劣性を示すことが目的であり,S-1 群で12.75 カ月,DTX 群で12.52 カ月(HR 0.945,95%CI:0.833-1.073)で,DTX 単剤に対するS-1 単剤の非劣性が示された。またPFS はS-1 群2.9 カ月,DTX 群2.9 カ月(HR 1.03,95%CI:0.91-1.17)で両群に差を認めず,ORR はS-1 群8.3%,DTX 群9.9%であった。毒性に関しては,発熱性好中球減少ならびにGrade 3 以上の好中球減少の頻度はDTX 群で高く(0.9% vs 13.6%,5.4% vs 47.7%),全Grade の下痢と口腔粘膜障害の頻度はS-1 群で高かったが(37.2% vs 18.2%,23.9% vs 14.5%),Grade 3 以上の頻度は低く忍容性は良好であった15)

以上より,一次治療耐性または進行後のⅣ期非小細胞肺癌症例に対してDTX±ラムシルマブ,S-1 単剤,(非扁平上皮癌の場合)PEM 単剤の投与を行うよう勧められる。エビデンスの強さはA,また総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会(看護師1 名,薬剤師2 名,患者2 名を含む)

CQ77
二次治療でドセタキセルを用いる場合にラムシルマブの併用は推奨されるか?

エビデンスの強さB
  1. a. ラムシルマブの適応となるPS 0-1 症例に対して,ドセタキセルにラムシルマブを併用するよう提案する。

〔推奨の強さ:2,合意率:74%〕

エビデンスの強さD
  1. b. 75 歳以上の症例に対して,ドセタキセルにラムシルマブを併用しないよう提案する。

〔推奨の強さ:2,合意率:78%〕

エビデンスの強さD
  1. c. PS 2 症例に対して,ドセタキセルにラムシルマブを併用しないよう提案する。

〔PS 2/推奨の強さ:2,合意率:87%〕

解説

  1. a. プラチナ製剤併用療法後に進行したPS 0-1 の進行非小細胞肺癌症例を対象とし,DTX+ラムシルマブ併用療法とDTX 単剤を比較する第Ⅲ相試験(REVEL 試験)が行われ,主要評価項目であるOS は,ラムシルマブ併用群で有意な延長を認めた(10.5 カ月 vs 9.1 カ月,HR 0.86,95%CI:0.75-0.98,P=0.023)。また,ラムシルマブ併用群において,PFS(4.5 カ月 vs 3.0 カ月,HR 0.76,95%CI:0.68-0.86,P<0.0001),ORR(23% vs 14%,P<0.0001)も有意に良好であった。毒性に関しては,ラムシルマブ併用群でGrade 3/4 の好中球減少,発熱性好中球減少,全Grade の血小板減少,口内炎がより高頻度であったが,Grade 3 以上の高血圧は6%で出血性イベントの多くはGrade 1/2 であった16)

    また本邦において,DTX+ラムシルマブ併用療法とDTX 単剤のランダム化比較第Ⅱ相試験(JVCG 試験)が行われ,ラムシルマブ併用群においてPFS(5.2 カ月 vs 4.2 カ月,HR 0.83,95%CI:0.59-1.16),OS(15.2 カ月 vs 13.9 カ月,HR 0.77,95%CI:0.56-1.32),ORR(28.9% vs 18.5%)ともに良好な結果が示された。毒性に関しては,ラムシルマブ併用群において発熱性好中球減少の頻度が高く(34% vs 19%),低アルブミン血症,血小板減少,口内炎,鼻出血,蛋白尿などもDTX 単剤よりも高頻度であったが,ほとんどはGrade 1/2 であった17)。ラムシルマブにおいてもベバシズマブと同様に出血リスクには注意が必要であり,投与に際してはその適応を十分検討する必要がある。

    以上より,ラムシルマブは適応と考えられる症例においてDTX に追加するよう勧められる。エビデンスの強さはB,ただし総合的評価では行うよう弱く推奨(2 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

  2. 投票者の所属委員会:薬物療法小委員会(看護師1 名,薬剤師2 名,患者2 名を含む)
  3. b.75 歳以上

    前述の第Ⅲ相試験(REVEL 試験)における75 歳以上のサブグループは不明である。また,本邦において実施された第Ⅱ相試験(JVCG 試験)でも75 歳以上の症例は10 例と少数であるため75 歳以上の高齢者に対するラムシルマブの安全性や有効性に関してのデータは十分ではない。一方,本ガイドラインの一次治療では,エビデンスの質は低いものの骨髄抑制などの毒性増加への懸念から,75 歳以上に対してプラチナ製剤併用療法にラムシルマブと同じ血管新生阻害剤であるベバシズマブの併用を勧める根拠が乏しく,行わないよう提案されている(CQ71 参照)。ラムシルマブについても若年者を中心とした本邦の第Ⅱ相試験において発熱性好中球減少をはじめとした毒性の増強が懸念されることを考えると,現時点で高齢者にラムシルマブを併用する根拠は明確ではない。エビデンスの強さはD,また総合的評価では行わないよう弱く推奨(2 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

  4. 投票者の所属委員会:薬物療法小委員会(看護師1 名,薬剤師2 名,患者2 名を含む)
  5. c.PS 2

    前述のREVEL 試験,JVCG 試験においては対象症例がPS 0-1 であり16)17),PS 2 に対するラムシルマブの安全性や有効性に関してのデータはない。よって,PS 2 に対するラムシルマブは行うよう勧めるだけの根拠が明確ではない。PS 0-1 を対象とした試験では,ラムシルマブ併用群で発熱性好中球減少の発現頻度が高く,PS 不良例においてはラムシルマブの併用により毒性の悪化が懸念される。

    以上より,益と害のバランスを考慮し現時点では行わないよう勧められる。エビデンスの強さはD,ただし総合的評価では行わないよう弱く推奨(2 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

  6. 投票者の所属委員会:薬物療法小委員会(看護師1 名,薬剤師2 名,患者2 名を含む)

CQ78
二次治療以降でエルロチニブは推奨されるか?

エビデンスの強さC
EGFR 遺伝子変異陰性もしくは不明の患者に対して,エルロチニブ投与を行わないよう提案する。

〔推奨の強さ:2,合意率:65%〕

解説

二次治療以降のⅣ期非小細胞肺癌を対象としたエルロチニブ単剤とプラセボとを比較する第Ⅲ相試験(BR21 試験)において,ORR がそれぞれ8.9%と1%(P<0.001),PFS がそれぞれ2.2 カ月と1.8 カ月(HR 0.61,95%CI:0.51-0.74,P<0.001),主要評価項目であるOS が6.7 カ月と4.7 カ月(HR 0.70,95%CI:0.58-0.85,P<0.001)でいずれもエルロチニブ単剤群が有意に優れており,エルロチニブ単剤はⅣ期非小細胞肺癌に対する二次治療以降の治療選択肢の1 つとなった18)

その後,プラチナ製剤治療歴のあるEGFR 遺伝子変異野生型症例を対象とし,二次治療としてDTX 単剤とエルロチニブ単剤を比較する第Ⅲ相試験(TAILOR 試験)が報告され,OS はDTX 群が8.2 カ月に対して,エルロチニブ群が5.4 カ月(HR 0.73,95%CI:0.53-1.00,P=0.05)とDTX 群が有意に良好であった19)。また本邦においても,主要評価項目をPFS としてプラチナ製剤治療歴のある二次もしくは三次治療例を対象に,DTX 単剤とエルロチニブ単剤を比較する第Ⅲ相試験(DELTA 試験)が報告され,EGFR 遺伝子変異陰性例におけるエルロチニブ群のPFS は1.3 カ月,DTX 群は2.9 カ月(HR 1.57,95%CI:1.18-2.11,P<0.01)とエルロチニブ群で劣る結果であり,扁平上皮癌を含むEGFR 遺伝子変異陰性非小細胞肺癌におけるエルロチニブ単剤の有効性はDTX 単剤より低いことが示された20)

近年,Ⅳ期非小細胞肺癌の二次治療においては,PD-1 阻害剤であるニボルマブ単剤やペムブロリズマブ単剤,PD-L1 阻害剤であるアテゾリズマブ単剤,DTX+ラムシルマブ療法は,DTX 単剤との比較試験において有意なOS の延長を認めⅣ期非小細胞肺癌の標準治療となり,S-1 単剤もDTX 単剤に対する非劣性が示され標準治療の1 つとなった。新たに標準治療となったこれらの薬剤の治療成績と前述のDTX 単剤との比較試験の結果を考慮するとエルロチニブ単剤は有効性が低く,EGFR 遺伝子変異陰性例においてはEGFR-TKI の間質性肺障害発症のリスク因子と報告されている臨床的背景をもつことが多く,間質性肺障害発症のリスクが高いとされる。

以上より,ドライバー遺伝子変異/転座陰性もしくは不明におけるエルロチニブ単剤は有効性と間質性肺障害のリスクなどから,現時点では行わないよう勧められる。エビデンスの強さはC,総合的評価では行わないよう弱く推奨(2 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会(看護師1 名,薬剤師2 名,患者2 名を含む)

引用文献

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レジメン
Ⅳ期非小細胞肺癌

ドライバー遺伝子変異/転座陽性
PD-L1 陽性細胞50%以上
すべてのサブグループ:プラチナ製剤と第三世代以降の細胞障害性抗癌剤のレジメン
細胞障害性抗癌剤と免疫チェックポイント阻害剤の併用レジメン
すべてのサブグループ:分子標的治療薬併用レジメン
すべてのサブグループ:単剤療法

転移など各病態に対する治療

総論
転移など各病態に対する治療方針

解説

進行期の非小細胞肺癌では脳・骨など遠隔転移の頻度が高く,これらの制御は予後のみならず全身状態に大きな影響を与える。本項では日常臨床で多く遭遇する骨転移・脳転移・胸部緩和照射・癌性胸膜炎・癌性心膜炎についてクリニカルクエスチョン(CQ)を設定した。

いずれの病態においても共通する基本的な考え方としては,無症状であれば全身化学療法を優先,有症状例もしくは近いうちに有症状・機能低下をきたす可能性が高い症例に対しては局所治療を優先する,となる。また,その時点で使用可能な化学療法レジメンの効果(特にORR・PFSなどの短期指標)も治療選択における重要な情報である。各治療法の決定においては呼吸器内科医・呼吸器外科医・腫瘍内科医・放射線腫瘍医・整形外科医・脳神経外科医・緩和治療医などとの緊密な連携,キャンサーボードなど多職種での検討が重要である。

近年の肺癌薬物療法の進歩は局所療法の選択にも少なからず影響を与えている。特にドライバー遺伝子変異/転座陽性例においては,分子標的治療薬によって短期間で良好な腫瘍縮小が期待できることが多い(Ⅱ.7.Ⅳ期非小細胞肺癌:総論の項参照)。また予後についても長期成績が期待できるようになってきたため,このような症例に対する局所治療を導入するにあたっては,効果のみならず侵襲度や晩期毒性も含めた検討がこれまで以上に重要となっている。

以下,局所治療の中ではエビデンスが比較的豊富な骨転移・脳転移病態における治療方針ならびに胸部緩和照射について概説する。

1)骨転移

有症状例では局所治療の適応となる。多くは放射線治療が選択されるが(CQ7980),oncologic emergencyである脊髄圧迫に対しては外科治療も選択肢となる(CQ81)。局所治療を要する骨転移は多くの場合で生命予後に直結することは少ないものの,生活の質(QOL)に与える影響は大きい。このため治療選択には予後との兼ね合いも重要となる。こうした観点から,放射線治療については単回照射の選択肢があることはより知られてよい(CQ80)。

2)脳転移

有症状例を中心として放射線治療や摘出術などが局所治療の対象となるが(CQ85~88),無症状でも局所治療を選択する場合がある(CQ84878890)。放射線治療の選択については,4 個以下で腫瘍径3 cm 程度までであれば定位照射,それ以外の多発脳転移については全脳照射を行うのが基本的な考え方であるが,近年,5~10 個以上の多発脳転移に対する定位照射の前向きな観察研究の結果も報告されており,全脳照射による認知低下が危惧される場合の治療選択肢として提案し得る(CQ87)。

薬物療法においては特にドライバー遺伝子変異/転座陽性例で分子標的治療薬により長期の局所制御が得られる症例も経験される(CQ90)。これらの症例では数年以上の長期生存が得られる可能性があることから,局所治療を行う場合は晩期毒性に今まで以上の注意を払う必要がある。

3)胸部緩和照射

肺癌局所に対する放射線治療の役割は,局所制御を目的とした根治照射以外に,症状の軽減を目的とした緩和照射も重要である。特に肺癌患者では,QOL や生命予後に影響を及ぼす重篤な症状も多い(CQ91)。根治照射と緩和照射の間に位置する放射線治療の役割として,「根治照射の適応とならない肺癌症例に対して症状がなくても姑息的胸部照射は勧められるか?」,「Ⅳ期非小細胞肺癌の化学療法後の残存または増悪病巣が1 カ所のみの場合に放射線療法は勧められるか?」などのCQ も検討されたが,エビデンスが十分ではなく,本年度のCQ 作成は見送った。

8-1
骨転移

CQ79
症状を有する骨転移に対して,放射線治療が勧められるか?

エビデンスの強さA
放射線治療を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

解説

肺癌の骨転移は進行非小細胞肺癌では約30~40%に生じるとされ,OS 中央値は1 年にも満たないとされる。本邦における259 人の非小細胞肺癌での後方視的な解析1)では,その経過で70 人(30.4%)に骨転移が認められている。そのうち46 人(65.7%)は初回Staging 時で認められ,また35 人(50%)は骨関連事象(SRE)をその経過で認めた。特に疼痛は最も多い症状であり,肺癌の骨転移症例の約80%に認められるという報告もある。

未治療の骨転移合併非小細胞肺癌では,可能なら全身治療としての薬物療法を導入すべきであるが,症状を有する,または病的骨折の危険性が高い,または脊椎転移が脊髄圧迫を生じている場合は放射線治療が優先されることがある。

16 のランダム化比較試験のメタアナリシス2)によると,放射線治療による痛みの改善は50~80%と高率に得られ,有害事象の頻度も少なかった(病的骨折2.8~3.2%,脊髄圧迫1.9~2.8%)。

以上より,放射線治療によって高い局所制御率と臨床的有効性がメタアナリシスにて確認されている。エビデンスの強さはA,また総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:放射線治療小委員会,薬物療法小委員会,外科療法小委員会

CQ80
症状を有する骨転移に対する適切な照射法は何か?

エビデンスの強さA
a. 分割照射を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

エビデンスの強さA
b. 単回照射を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,合意率:97%〕

解説

従来,骨転移に対する放射線治療としては総線量20~30 Gy の分割照射が行われてきた。8 Gy 単回照射については,総線量20~30 Gy の分割照射との比較を行った前向き試験がいくつかあり,これら16 のランダム化比較試験に関するメタアナリシスが報告されている2)。これによると痛みの改善は単回照射群58% vs 分割照射群59%と同等であった(HR 0.99,95%CI:0.95-1.03)。有害事象も病的骨折3.2% vs 2.8%(P=0.75),脊髄圧迫2.8% vs 1.9%(P=0.13)と有意差を認めなかったが,再照射率は20% vs 8%と単回照射群で有意に高かった(HR 2.5,95%CI:1.76-3.56)。このメタアナリシスに含まれる試験で照射後の長期フォローアップを行った研究3)でも,有害事象は両群で有意差を認めず,再照射率は単回照射群で有意に高かった(27% vs 9%,P=0.002)。

以上より,骨転移に対する標準的な照射方法としては,20 Gy/5 回,30 Gy/10 回などの分割照射が勧められる。エビデンスの強さはA,また総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。一方,期待生存期間3 カ月以内,連日の治療が困難,原腫瘍が増悪しているなど,症例によっては8 Gy 単回照射が選択肢と考えられる。エビデンスの強さはA,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:放射線治療小委員会,薬物療法小委員会,外科療法小委員会

CQ81
病的骨折の危険性の高い骨転移,または脊椎転移が脊髄圧迫を生じている骨転移に対して,外科治療が勧められるか?

エビデンスの強さC
外科治療を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,合意率:100%〕

解説

病変が2.5 cm 以上,もしくは荷重骨で皮質の50%以上に破壊がみられる場合は病的骨折のリスクが高いとされている。病的骨折の危険性の高い骨転移に対し外科治療の意義や術式に関するランダム化比較試験はない。切迫骨折または病的骨折の状態にある四肢長管骨を対象とした前向き観察研究4)では,術後6 週と3 か月の両評価点において重篤な合併症なく,疼痛や機能面(MSTS1987, MSTS1993, TESS)での有意な改善が認められた。しかし,健康関連QOL(SF-36)においては有意な改善が得られなかった。多くの後方視的報告においても,疼痛や機能の維持・改善は示されているものの,QOL に関しては予後や全身状態による影響も大きく,明らかな益は示されていない5)

脊髄圧迫を呈する転移性骨腫瘍に対して除圧術+放射線治療と放射線治療単独のランダム化比較試験において6),治療後の歩行可能者割合は84% vs 57%(オッズ比6.2,95%CI:2.0-19.8,P=0.001)と手術群で良好で,歩行を維持できた期間も前者で長かった(122 日間 vs 13 日間,P=0.003)ことから,試験は早期中止となった。しかし,この試験は100 例の集積に10 年を要するなど,患者選択にバイアスがかかっている可能性や放射線治療単独群における歩行維持期間が短すぎることなど,いくつかの問題が指摘されている。そこで,この試験の患者と予後因子を合わせたペアマッチ解析が検討されたが7),治療後の歩行可能者割合は69% vs 68%と有意差を認めず,単変量解析でも治療内容は予後に影響しなかった。

以上より,病的骨折のリスクが高い骨転移では,外科治療を行うことで術後早期より疼痛緩和や機能面での改善が期待できる。しかし,その適応や術式には病勢や予後,全身状態など総合的な判断を要し,多職種からなる集学的な検討が望ましい。脊椎転移が脊髄圧迫を生じている骨転移に対する外科治療は少数の比較試験で有効性が示唆されているものの,相反する報告も存在している。エビデンスの強さはC,ただし総合的評価では行うよう弱く推奨(2 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:放射線治療小委員会,薬物療法小委員会,外科療法小委員会

CQ82
病的骨折の危険性が高い骨転移,または脊椎転移が脊髄圧迫を生じている骨転移に対して,放射線治療が勧められるか?

エビデンスの強さC
放射線治療を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

解説

従来,病変が2.5 cm 以上,もしくは荷重骨で皮質の50%以上に破壊がみられる場合は病的骨折のリスクが高いとされ,固定と放射線治療の適応がある8)。脊髄圧迫については,単群第Ⅱ相試験ではあるが,放射線治療によって82%で除痛が得られ,76%で歩行機能が回復または維持していたと報告されている9)。また,この中で画像上圧迫を認めるものの症状が顕在化していない時期に放射線治療をすることで,全例にその後の歩行能力が保持されていたとも報告されている。

以上より,病的骨折の危険性が高い,または脊椎転移による脊髄圧迫が切迫していると判断される場合には,明らかな神経症状がなくても放射線治療を行うよう勧められる。単群試験やこれまでのコンセンサスによる部分が多いため,エビデンスの強さはC,ただし総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:放射線治療小委員会,薬物療法小委員会

CQ83
骨転移を有する症例に対して,骨関連事象の抑制(発現率を軽減し,発現までの時期を延長させる)に骨修飾薬(ゾレドロン酸またはデノスマブ)は勧められるか?

エビデンスの強さB
骨修飾薬(ゾレドロン酸またはデノスマブ)による治療を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

解説

乳癌および前立腺癌以外の肺癌を中心とした固形癌の骨転移患者(非小細胞肺癌50%,小細胞肺癌8%)を対象に,ビスフォスフォネート(BP)製剤であるゾレドロン酸とプラセボを,骨関連事象(SRE)の発症率および発症までの期間で比較した第Ⅲ相試験が行われた10)。21 カ月までのSRE 発現割合は,ゾレドロン酸4 mg 投与群が38.9%,プラセボ投与群が48.0%とゾレドロン酸投与群が有意に低く,発症時期を2 カ月以上延長させた(236 日 vs 155 日)。疼痛スコアや鎮痛剤の使用およびPS の変化に関しても,有意ではないものの改善傾向であった。

乳癌,前立腺癌を除く,進行癌と多発性骨髄腫患者(非小細胞肺癌40%)を対象に,デノスマブとゾレドロン酸を,SRE 発症までの期間で比較した第Ⅲ相試験が行われた。初回SRE 発症までの期間は,デノスマブ群20.6 カ月,ゾレドロン酸群16.3 カ月で,非劣性が証明されたが,優越性は証明されなかった。一方で,疼痛スコアの増悪や骨病変に対する放射線治療のリスクは,デノスマブ群が有意に少なかった11)12)

以上より,骨転移を有する症例では,SRE の発現率の軽減とSRE 発現までの期間を延長させることが複数の研究で示されているため,ゾレドロン酸またはデノスマブの投与は勧められる。エビデンスの強さはB,また総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。

BP 製剤とデノスマブの重要な有害事象に顎骨壊死と腎機能障害が報告されている。顎骨壊死のリスク因子は,直近の歯科的処置やBP 製剤の36 カ月以上の長期投与が挙げられている13)。そのため,日常診療におけるBP 製剤の長期使用では,顎骨壊死は十分に注意すべき有害事象である。デノスマブとゾレドロン酸の比較試験の統合解析では,両薬剤で,顎骨壊死の頻度に有意差を認めず14),デノスマブもBP 製剤と同様な対応が必要である( 参考資料:http://jsbmr.umin.jp/guide/pdf/bronjpositionpaper2012.pdf)。

BP 製剤の腎障害は,BP 製剤を使用した症例の4%に報告されている15)。一方,デノスマブは,海外第Ⅲ相試験14)において,クレアチニンクリアランス値が30 mL/min 未満の重度腎疾患患者および透析の必要な末期腎不全患者は対象から除外されており,慎重投与となっている。

デノスマブで注意すべき有害事象は,低カルシウム(Ca)血症である。低Ca 血症の頻度がBP 製剤と比較して有意に多いという報告(ゾレドロン酸投与群5.8%,デノスマブ投与群10.8%)があり,予防のためにCa 製剤,ビタミンD 製剤の内服,定期的な血清Ca の測定が推奨されている14)。エビデンスの強さはB,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会

引用文献

1)
Tsuya A, Kurata T, Tamura K, et al. Skeletal metastases in non-small cell lung cancer: a retrospective study. Lung Cancer. 2007; 57(2): 229-32.
2)
Chow E, Harris K, Fan G, et al. Palliative radiotherapy trials for bone metastases: a systematic review. J Clin Oncol. 2007; 25(11): 1423-36.
3)
Sande TA, Ruenes R, Lund JA, et al. Long-term follow-up of cancer patients receiving radiotherapy for bone metastases:results from a randomised multicentre trial. Radiother Oncol. 2009; 91(2): 261-6.
4)
Talbot M, Turcotte RE, Isler M, et al. Function and health status in surgically treated bone metastases. Clin Orthop Relat Res. 2005; 438: 215-20.
5)
Errani C, Mavrogenis AF, Cevolani L, et al. Treatment for long bone metastases based on a systematic literature review. Eur J Orthop Surg Traumatol. 2017; 27(2): 205-11.
6)
Patchell RA, Tibbs PA, Regine WF, et al. Direct decompressive surgical resection in the treatment of spinal cord compression caused by metastatic cancer: a randomised trial. Lancet. 2005; 366(9486): 643-8.
7)
Rades D, Huttenlocher S, Dunst J, et al. Matched pair analysis comparing surgery followed by radiotherapy and radiotherapy alone for metastatic spinal cord compression. J Clin Oncol. 2010; 28(22): 3597-604.
8)
Harrington KD. New trends in the management of lower extremity metastases. Clin Orthop Relat Res. 1982;(169): 53-61.
9)
Maranzano E, Latini P. Effectiveness of radiation therapy without surgery in metastatic spinal cord compression: final results from a prospective trial. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 1995; 32(4): 959-67.
10)
Rosen LS, Gordon D, Tchekmedyian NS, et al. Long-term efficacy and safety of zoledronic acid in the treatment of skeletal metastases in patients with nonsmall cell lung carcinoma and other solid tumors: a randomized, Phase Ⅲ, double-blind, placebo-controlled trial. Cancer. 2004; 100(12): 2613-21.
11)
Henry DH, Costa L, Goldwasser F, et al. Randomized, double-blind study of denosumab versus zoledronic acid in the treatment of bone metastases in patients with advanced cancer(excluding breast and prostate cancer)or multiple myeloma. J Clin Oncol. 2011; 29(9): 1125-32.
12)
Vadhan-Raj S, von Moos R, Fallowfield LJ, et al. Clinical benefit in patients with metastatic bone disease: results of a phase 3 study of denosumab versus zoledronic acid. Ann Oncol. 2012; 23(12): 3045-51.
13)
Migliorati CA, Siegel MA, Elting LS. Bisphosphonate-associated osteonecrosis: a long-term complication of bisphosphonate treatment. Lancet Oncol. 2006; 7(6): 508-14.
14)
Saad F, Brown JE, Van Poznak C, et al. Incidence, risk factors, and outcomes of osteonecrosis of the jaw: integrated analysis from three blinded active-controlled phaseⅢ trials in cancer patients with bone metastases. Ann Oncol. 2012; 23(5): 1341-7.
15)
Bonomi M, Nortilli R, Molino A, et al. Renal toxicity and osteonecrosis of the jaw in cancer patients treated with bisphosphonates: a long-term retrospective analysis. Med Oncol. 2010; 27(2): 224-9.

8-2
脳転移

CQ84
遠隔転移が単発の脳転移のみのⅣ期症例に対して,定位手術的照射や外科治療は勧められるか?

エビデンスの強さC
脳以外の病巣がコントロールされており,かつ単発の脳転移に対して,定位手術的照射*や外科治療を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:85%〕

*定位放射線照射(STI)は,線量分割の違いにより,1 回照射の場合を定位手術的照射(SRS),分割照射の場合を定位放射線治療(SRT)と定義されている。ガンマナイフ,サイバーナイフやリニアックによる1 回照射はSRS に含まれる。脳幹など重要組織が近接している場合や大きい腫瘍にはSRT で治療を行うことがある。

解説

全身コントロール良好な単発性脳転移を有する症例を対象とした,SRS と手術+全脳照射の比較試験において,SRS 単独群のOS 中央値は約10 カ月と報告されている1)。またPS 良好な単発性脳転移を有する症例を対象とした手術と手術+全脳照射の比較試験において,手術単独群のOS 中央値は約10 カ月と報告されている(全脳照射の追加によるOS の延長はなし:CQ882)。これらはいずれも他癌腫を含んだデータで,肺癌患者は3~6 割程度を占めていた。近年報告された,非小細胞肺癌患者を対象とした観察研究のシステマティックレビューでは,原発巣がコントロールされ,脳転移に対してSRS や手術などの局所治療を行った患者のOS 中央値19.7 カ月(範囲6.8-52 カ月)と報告されている3)

以上より,脳以外の病巣がコントロールされており,かつ単発の脳転移に対して,SRS や外科治療を行う妥当性はあると考えられる。エビデンスの強さはC,ただし総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:放射線治療小委員会,薬物療法小委員会,外科療法小委員会

CQ85
症状を有する脳転移に対して,外科治療は勧められるか?

エビデンスの強さC
症状を有する単発性脳転移に対して,腫瘍摘出術を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,合意率:100%〕

解説

肺癌は脳転移を生じる頻度が高く,これによって生じた様々な神経症状はQOL を低下させる。このため,QOL 改善を目的とした手術が治療選択肢の1 つとして汎用されてきた。単発性脳転移を有する固形癌患者を対象とした手術と手術+全脳照射とのランダム化比較試験において,手術単独群のOS 中央値は約10 カ月,頭蓋内無増悪期間中央値は約6 カ月であった(全脳照射の追加によるOS の延長はなし:CQ882)。疾患の性質からBSC との比較試験は存在しないが,症状を有する単発性脳転移に対する手術については治療選択肢として提案可能である。一方,定位照射の有効性が期待できる場合には手術より優先されることが考えられる。エビデンスの強さはC,ただし総合的評価では行うよう弱く推奨(2 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:放射線治療小委員会

CQ86
症状を有する脳転移に対して,放射線治療は勧められるか?

エビデンスの強さC
症状を有する脳転移に対して,放射線治療を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

解説

肺癌は脳転移を生じる頻度が高く,これによって生じた様々な神経症状はQOL を低下させる。2 つの前向き試験では放射線治療によって70~90%の患者に症状の寛解が得られたと報告されており4)CQ87 に示すように全脳照射やSRS のいずれにおいても良好な頭蓋内無増悪期間およびOS が報告されている。

以上より,エビデンスの強さはC,ただし総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

なお,ステロイド+全脳照射とステロイド単独療法の非劣性を検討した第Ⅲ相試験において,OS とQOL の指標である質調整生存期間(QALY)の非劣性は証明されなかったものの,OS ・QOL に有意差はなかった5)。本試験の患者背景はKarnofsky performance status 70 未満の割合が約4 割と多く,RPA・GPA などの予後予測因子も不良なものが大多数を占めていた。またOS 中央値は両群とも8~9 週程度と非常に短く,このために全脳照射の有用性が認められなかったと考えられている。よって予後不良と考えられる場合はステロイド単独治療も選択肢である。

投票者の所属委員会:放射線治療小委員会

CQ87
多発性脳転移に対して,放射線治療は勧められるか?

エビデンスの強さC
  1. a. 多発性脳転移に対して,全脳照射を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:84%〕

エビデンスの強さC
  1. b. 4 個以下で腫瘍径3 cm 程度までであれば定位手術的照射*を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:97%〕

エビデンスの強さC
  1. c. 5~10 個の脳転移に対して,定位手術的照射を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,合意率:61%〕

*定位放射線照射(STI)は,線量分割の違いにより,1 回照射の場合を定位手術的照射(SRS),分割照射の場合を定位放射線治療(SRT)と定義されている。ガンマナイフ,サイバーナイフやリニアックによる1 回照射はSRS に含まれる。脳幹など重要組織が近接している場合や大きい腫瘍にはSRT で治療を行うことがある。

解説

  1. a・b. 従来,多発性脳転移に対しては全脳照射が行われてきた。疾患の性質からBSC との比較試験は存在しないが,2 つの前向き試験では放射線治療によって70~90% の患者に症状の寛解が得られたと報告されている。それらの前向き試験ではそのOS 中央値は3.5~7.5 カ月程度であり,頭蓋内無増悪期間は中央値約6 カ月程度と報告されている6)~10)

    4 個以下,3 cm 程度の脳転移に対してはSRS のエビデンスも蓄積されており,前向き試験のデータではOS 中央値は約8~15 カ月,照射1 年後の局所コントロール率は6~9 割程度と報告されている11)12)

    脳腫瘍に対する放射線照射の有害事象として治療後のQOL の低下が問題となることがある。手術やSRS に全脳照射を追加することで,活動性の低下や認知機能障害が生じることを示す報告12)~14)がある一方で,評価の方法や時期の違いの影響から差がなかったとする報告もある11)。一方,全脳照射を省くことで脳内再発によって認知機能の悪化がみられることがある。

    以上より,多発性脳転移に対する全脳照射,4 個以下で腫瘍径3 cm 程度までに対するSRS は複数の前向き試験でその有効性が示唆されている。エビデンスの強さはC,ただし総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

  2. 投票者の所属委員会:放射線治療小委員会,薬物療法小委員会,外科療法小委員会
  3. c. 5 個以上の脳転移に対するSRS の有効性については,前向き観察研究で5~10 個の脳転移と2~4 個の脳転移に対する治療成績の比較によって,生存率に差がなかったとする結果が本邦から報告されており,有害事象の出現率にも差を認めなかった(9% vs 9%,P=0.89)15)。ただし,本研究の適格基準として最大経3 cm 未満,最大腫瘍体積10 mL 未満,合計体積15 mL などが挙げられており,この結果を適応できる患者は限られる可能性がある。一方で,全脳照射後の認知機能低下について複数の報告がされていることから13)14),この対象に対して定位照射も治療選択肢として提案できる。エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2 で推奨)できると判断した(合意率61%)。また個数にかかわらず定位照射を選択した場合にはしばしば後発転移が生じることから定期的な画像診断を継続することが必要である。
  4. 投票者の所属委員会:放射線治療小委員会,薬物療法小委員会/白票1

CQ88
手術や定位手術的照射に,全脳照射の追加は勧められるか?

エビデンスの強さA
手術や定位手術的照射に,全脳照射の併用を行わないよう提案する。

〔推奨の強さ:2,合意率:100%〕

解説

症状を有する脳単発の脳転移を要する患者に対しての手術と,手術+全脳照射との併用療法を比較したランダム化比較試験は1 つあり,OS に有意差は認められなかったが(43 週 vs 48 週,RR 0.91,95%CI:0.59-1.40,P=0.39),局所再発は有意に減少した(46% vs 10%,P<0.001)2)

4 個以下の脳転移に対するSRS と,SRS+全脳照射との併用療法を比較した試験は複数あり,ランダム化比較試験のメタアナリシスで局所制御率については併用群で有意に良好であった(HR 2.61,95%CI:1.68-4.06,P<0.0001)が,OS に有意差を認めなかった(HR 0.98,95%CI:0.71-1.35,P=0.88)16)。4 個以下脳転移に対して,3 cm を超える病変に対して手術が行われ,手術後残存腫瘍に対して全脳照射または再発時SRS を比較したランダム化比較試験が行われた17)。OS は両群で15.6 カ月で,非劣性仮説に対する片側P 値=0.0266(HR 1.05,90%CI:0.83-1.33)であり,SRS 群の全脳照射群に対する非劣性が証明された。

認知機能に関しては1 つのランダム化比較試験ではSRS 群とSRS+全脳照射群間でMini Mental State Examination の結果に有意差は認められなかったが11),もう1 つのランダム化比較試験ではHopkins Verbal Learning Test-Revised を用いて評価を行ったところ,記憶学習能力が併用群で有意に低下したため早期中止となっている12)。同じく,複数の認知機能検査を用いて評価したランダム化比較試験でもSRS 群と比較してSRS+全脳照射群で3 カ月後の評価で有意に低下がみられた14)

また,手術もしくはSRS を行った患者に対して全脳照射の追加を検討したランダム化比較試験において,全脳照射併用群は健康関連QOL が悪い傾向にあった13)

以上より,脳転移に対する手術やSRS に全脳照射を追加すると,局所制御には有効であると考えられるが,一方では生存には寄与せず,認知機能低下などの有害事象も懸念されることが複数の臨床試験で示されている。このため手術やSRS 後に全脳照射を追加するかしないかは,腫瘍サイズや性状,手術所見などを踏まえて総合的に判断すべきである。エビデンスの強さはA,また総合的評価では行わないよう弱く推奨(2 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:放射線治療小委員会

CQ89
髄膜癌腫症に対する適切な治療法は何か?

髄膜癌腫症に対して,薬物療法・放射線治療を行うよう勧めるだけの根拠が明確ではない。

〔推奨度決定不能〕

解説

髄膜癌腫症に対する薬物療法の有効性は,本邦で承認された薬剤・用量に限った場合,いくつかの後方視的研究での報告に限られている18)。また,髄膜癌腫症に対する放射線治療(全脳照射)の有用性を検討した前向き臨床試験は存在しない。後方視的研究では,髄膜癌腫症での全脳照射の有用性は認められていないが19),中には症状緩和が得られる症例が経験されることもある。

以上より,髄膜癌腫症に薬物療法・放射線治療について勧めるだけの根拠が明確ではなく,推奨度決定不能とした。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会(看護師1 名,薬剤師1 名,患者1 名を含む)

CQ90
無症候性脳転移に対して,薬物療法は勧められるか?

エビデンスの強さC
薬物療法を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

解説

無症候性脳転移に対しては全身治療として薬物療法が治療の中心となるものの,放射線治療も高い局所制御を示すことからその時期を逸さないことは重要である。一方で近年,新規薬物療法の登場によって進行非小細胞肺癌の予後は延長しており,治療方針を決定する際の評価項目として,OS・脳転移制御率だけではなく神経学的予後に対する配慮もより重要となっている。

無症候性脳転移に対して薬物療法・放射線治療のどちらを先行させるかという重要なクリニカルクエスチョンが生じるが,現時点で明確なエビデンスは乏しいことから,脳転移巣のサイズ・個数・部位,医療状況などをもとに放射線腫瘍医と十分検討のうえで判断されるべきである。

放射線治療に関しては,CQ87 を参照すること。

<分子標的治療>

遺伝子変異を有する無症候性脳転移患者に対する分子標的治療薬の有効性は,多くが第Ⅲ相試験のサブグループ解析もしくは単群試験における少数例の報告である。TKI 未治療の脳転移症例に対する各TKIの全身における有効性はORR 53-83%,PFS 中央値 6.6カ月-未到達と良好である20)~24)

EGFR 遺伝子変異陽性

本邦のEGFR 遺伝子変異陽性患者41 例を対象にゲフィチニブ単剤を行った単群第Ⅱ相試験では,頭蓋内病変のORR は87.8%,頭蓋内病変のPFS 中央値は14.5 カ月(95%CI:10.2 カ月-18.3 カ月)であった25)。FLAURA 試験のサブグループ解析では,脳転移を有する128 例における頭蓋内病変のPFS 中央値はオシメルチニブ群未到達に対して第一世代EGFR-TKI 群13.9 カ月(HR 0.48,95%CI:0.26-0.86)とオシメルチニブ群で有意に延長していた。頭蓋内病変のORR も91%,68%とオシメルチニブ群で良好であった26)。T790M 変異陽性を対象としたAURA3 試験のサブグループ解析では,頭蓋内病変のPFS中央値はオシメルチニブ群11.7 カ月に対して細胞障害性抗癌剤群5.6 カ月(HR 0.32,95%CI:0.15-0.69)とオシメルチニブ群で有意に延長していた。測定可能病変を有する46例の頭蓋内病変のORR も70%,31%とオシメルチニブ群で良好であった27)

ALK 遺伝子転座陽性

クリゾチニブを投与した第Ⅱ相試験と第Ⅲ相試験の統合解析に未治療脳転移症例が109 例含まれ,全身のORR が53%であるのに対して頭蓋内病変のORR は18%と高くはないものの,頭蓋内病変増悪までの期間の中央値は7.0 カ月(95%CI:6.7 カ月-16.4 カ月)であった22)。ALEX 試験において,測定可能な未治療の脳転移を有する29 例における頭蓋内病変のORRは,クリゾチニブ群 40.0%に対して,78.6%とアレクチニブ群で良好であった24)。セリチニブの第Ⅲ相試験におけるサブグループ解析では,22 例における頭蓋内病変のORR は72.7%と報告された23)。ロルラチニブの第Ⅱ相試験におけるサブグループ解析では,頭蓋内病変のORR はALK-TKI 未治療例(3例)で66.7%,少なくとも1つのALK阻害剤既治療例(81 例)で63.0%と報告された28)

<細胞障害性抗癌剤/血管新生阻害剤>

無症候性脳転移患者に対する細胞障害性抗癌剤の有効性が複数の試験で検討されている。非扁平上皮非小細胞肺癌43 例を対象としてCDDP+PEM 療法を行った第Ⅱ相試験では,頭蓋内病変のORR は41.9%で,頭蓋内病変のPFS 中央値は5.7 カ月(95%CI:4.0 カ月-7.6 カ月)であった29)。同様に非扁平上皮非小細胞肺癌67 例を対象にCBDCA+PTX+ベバシズマブ療法を行った第Ⅱ相試験では,頭蓋内病変のORR は61.2%で,頭蓋内病変のPFS 中央値は8.1 カ月(95%CI:5.5 カ月-11.3 カ月)であった30)

<免疫チェックポイント阻害剤>

悪性黒色腫もしくはPD-L1 陽性細胞1%以上の非小細胞肺癌を対象としたペムブロリズマブの第Ⅱ相試験において,10 mg/kgと承認用量とは異なるが,非小細胞肺癌18 例における頭蓋内病変のORR は33%と報告された。神経障害としてGrade1~2 の認知機能障害,頭痛,めまい,脳梗塞が報告されたが,治療関連死亡は認められず,免疫関連有害事象は既知のものと変わりなかった31)

以上より,無症候性脳転移に対する薬物療法については,有効性を示唆するデータが複数報告されているものの,いずれも単群第Ⅱ相試験や第Ⅲ相試験のサブグループ解析である。エビデンスの強さはC,ただし総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会(看護師1 名,薬剤師1 名を含む)

引用文献

1)
Muacevic A, Wowra B, Siefert A, et al. Microsurgery plus whole brain irradiation versus Gamma Knife surgery alone for treatment of single metastases to the brain: a randomized controlled multicentre phaseⅢ trial. J Neurooncol. 2008; 87(3): 299-307.
2)
Patchell RA, Tibbs PA, Regine WF, et al. Postoperative radiotherapy in the treatment of single metastases to the brain: a randomized trial. JAMA. 1998; 280(17): 1485-9.
3)
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4)
Borgelt B, Gelber R, Kramer S, et al. The palliation of brain metastases: final results of the first two studies by the Radiation Therapy Oncology Group. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 1980; 6(1): 1-9.
5)
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6)
Coia LR. The role of radiation therapy in the treatment of brain metastases. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 1992; 23(1): 229-38.
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10)
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13)
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14)
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19)
Morris PG, Reiner AS, Szenberg OR, et al. Leptomeningeal metastasis from non-small cell lung cancer: survival and the impact of whole brain radiotherapy. J Thorac Oncol. 2012; 7(2): 382-5.
20)
Park SJ, Kim HT, Lee DH, et al. Efficacy of epidermal growth factor receptor tyrosine kinase inhibitors for brain metastasis in non-small cell lung cancer patients harboring either exon 19 or 21 mutation. Lung Cancer. 2012; 77(3): 556-60.
21)
Schuler M, Wu YL, Hirsh V, et al. First-Line Afatinib versus Chemotherapy in Patients with Non-Small Cell Lung Cancer and Common Epidermal Growth Factor Receptor Gene Mutations and Brain Metastases. J Thorac Oncol. 2016; 11(3): 380-90.
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24)
Gadgeel S, Peters S, Mok T, et al. Alectinib versus crizotinib in treatment-naive anaplastic lymphoma kinase-positive(ALK+)non-small-cell lung cancer: CNS efficacy results from the ALEX study. Ann Oncol. 2018; 29(11): 2214-22.
25)
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26)
Reungwetwattana T, Nakagawa K, Cho BC, et al. CNS response to osimertinib versus standard epidermal growth factor receptor tyrosine kinase inhibitors in patients with untreated EGFR-mutated advanced non-small-cell lung cancer. J Clin Oncol. 2018.[Epub ahead of print]
27)
Wu YL, Ahn MJ, Garassino MC, et al. CNS efficacy of osimertinib in patients with T790M-positive advanced non-small-cell lung cancer: data from a randomized phase III trial(AURA3). J Clin Oncol. 2018; 36(26): 2702-9.
28)
Solomon BJ, Besse B, Bauer TM, et al. Lorlatinib in patients with ALK-positive non-small-cell lung cancer: results from a global phase 2 study. Lancet Oncol. 2018; 19(12): 1654-67.
29)
Barlesi F, Gervais R, Lena H, et al. Pemetrexed and cisplatin as first-line chemotherapy for advanced non-small-cell lung cancer(NSCLC)with asymptomatic inoperable brain metastases: a multicenter phaseⅡ trial(GFPC 07-01). Ann Oncol. 2011; 22(11): 2466-70.
30)
Besse B, Le Moulec S, Mazières J, et al. Bevacizumab in Patients with Nonsquamous Non-Small Cell Lung Cancer and Asymptomatic, Untreated Brain Metastases(BRAIN): A Nonrandomized, PhaseⅡ Study. Clin Cancer Res. 2015; 21(8): 1896-903.
31)
Goldberg SB, Gettinger SN, Mahajan A, et al. Pembrolizumab for patients with melanoma or non-small-cell lung cancer and untreated brain metastases: early analysis of a non-randomised, open-label, phase 2 trial. Lancet Oncol. 2016; 17(7): 976-83.

8-3
胸部病変に対する緩和的放射線治療

CQ91
縦隔・肺門病変による気道狭窄,上大静脈狭窄など胸郭内の腫瘍増大に伴う症状の緩和を目的とした胸部放射線治療は,行うよう勧められるか?

エビデンスの強さA
放射線治療を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:94%〕

解説

肺癌治療においては根治治療を行うことが難しい場合でも,症状の緩和や延命を目的とした胸部への放射線治療の役割は大きく,対症的に放射線治療を行うよう勧められる。照射線量に関するシステマティックレビューでは,総合的な症状緩和効果は高線量分割照射のほうが低線量照射より優れ(77.1% vs 65.4%,P=0.003),1 年生存割合も良好であった1)。ただし,治療による食道炎の頻度は高線量分割照射のほうが高かった(20.5% vs 14.9%,P=0.01)。一方,30 Gy/10 回と同等あるいはそれ以上の高線量分割照射と,より少ない総線量での照射とを比較した5 つの臨床試験のメタアナリシスでは,症状改善率(咳嗽:約50%,胸痛:50~86%,血痰:75~97%)や1 年および2 年生存割合に差は認められなかった2)。以上,緩和的胸部照射については,いずれの報告においても高い割合で症状緩和が得られており,有効性がメタアナリシスで示されている。エビデンスの強さはA,また総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。一方で患者背景などが様々であり,最適な線量を明示するだけの根拠は不足している。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会,放射線治療小委員会,外部委員/白票1

引用文献

1)
Fairchild A, Harris K, Barnes E, et al. Palliative thoracic radiotherapy for lung cancer: a systematic review. J Clin Oncol. 2008; 26(24): 4001-11.
2)
Ma JT, Zheng JH, Han CB, et al. Meta-analysis comparing higher and lower dose radiotherapy for palliation in locally advanced lung cancer. Cancer Sci. 2014; 105(8): 1015-22.

8-4
癌性胸膜炎

CQ92
胸腔穿刺・ドレナージを行った癌性胸膜炎に対して,どのような治療が勧められるか?

エビデンスの強さA
  1. a. 胸腔ドレナージ後の症例には,胸膜癒着術を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:92%〕

エビデンスの強さC
  1. b. 薬物療法未治療例には,胸膜癒着術の代わりに薬物療法を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,合意率:88%〕

解説

  1. a. 胸膜癒着術の使用薬剤としては抗菌薬(TC,DOXY,MINO など),抗癌剤(BLM,CDDP など),鉱物(Talc),溶連菌製剤(OK-432)などが報告されている。

    本邦でTalc が承認される前に行われたBLM,OK-432,CDDP+ETP(PE)胸腔内投与のランダム化比較第Ⅱ相試験では,4 週間後の胸水コントロール率は,BLM(68.6%),OK-432(75.8%),PE(70.6%)であった。PE では消化器毒性の頻度が多く,治療効果に有意差は認めなかったものの胸水コントロール率の高いOK-432 が汎用される根拠となった1)

    各薬剤を比較したメタアナリシスでは,Talc 噴霧法による胸水制御が良好で,BLM,DOXY,TC などより優れていた2)。Talc 噴霧法とTalc 懸濁法を比較した第Ⅲ相試験では,78%と71%で胸水制御が得られ,有意差は認めなかった3)。重篤な副作用として急性呼吸促迫症候群があるが,粒子径の大きいもの(平均24.5μm)では低頻度であった(558 例中0 例)4)。よって,2013 年に本邦でもTalc 懸濁法が承認されてから,胸水制御のエビデンスのあるTalc が汎用されるようになった。胸腔ドレナージ後の胸膜癒着術は,ドレナージ単独より胸水コントロール率に優れていることがエビデンスの質の高い研究で示されている。

    以上より,エビデンスの強さはA,また総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

  2. 投票者の所属委員会:薬物療法小委員会(看護師1 名,薬剤師1 名を含む)
  3. b. 分子標的治療薬による胸水制御を前向きに検討した報告はなかったが,日常臨床において,ドライバー遺伝子変異/転座陽性例では,胸水に対しても分子標的治療薬が有効であることはしばしば経験される。一方,胸水に対して胸膜癒着術を行わずに,細胞障害性抗癌剤の投与を行うことが有効であると示した報告が2 つある。CBDCA+PEM+ベバシズマブ療法を行った第Ⅱ相試験では,28 例の胸水コントロール率は92.9%で5),CBDCA+PTX+ベバシズマブ療法を行った第Ⅱ相試験では,23 例の胸水コントロール率は86.9%であった6)。前者では貧血(CTCAE Grade 3 以上)が25%,後者では発熱性好中球減少症が26.1%で報告され,POINTBREAK 試験やECOG4599 試験より有害事象の頻度が高い傾向にあった。

    胸膜癒着術を行わずに全身薬物療法を導入することで,長期の持続ドレナージに伴うPS の増悪や全身薬物療法導入時期の遅れを回避できる可能性がある。一方で,前述の報告はドライバー遺伝子変異/転座陽性例や扁平上皮癌を対象としておらず,限られた患者集団およびレジメンでの単群の第Ⅱ相試験であり,十分なエビデンスがあるとは言い難い。

    以上より,エビデンスの強さはC,ただし総合的評価では行うよう弱く推奨(2 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

  4. 投票者の所属委員会:薬物療法小委員会(看護師1 名,薬剤師1 名を含む)

引用文献

1)
Yoshida K, Sugiura T, Takifuji N, et al. Randomized phaseⅡ trial of three intrapleural therapy regimens for the management of malignant pleural effusion in previously untreated non-small cell lung cancer: JCOG 9515. Lung Cancer. 2007; 58(3): 362-8.
2)
Clive AO, Jones HE, Bhatnagar R, et al. Interventions for the management of malignant pleural effusions: a network meta-analysis. Cochrane Database Syst Rev. 2016;(5): CD010529.
3)
Dresler CM, Olak J, Herndon JE 2nd, et al. PhaseⅢ intergroup study of talc poudrage vs talc slurry sclerosis for malignant pleural effusion. Chest. 2005; 127(3): 909-15.
4)
Janssen JP, Collier G, Astoul P, et al. Safety of pleurodesis with talc poudrage in malignant pleural effusion: a prospective cohort study. Lancet. 2007; 369(9572): 1535-9.
5)
Usui K, Sugawara S, Nishitsuji M, et al. A phaseⅡ study of bevacizumab with carboplatin-pemetrexed in non-squamous non-small cell lung carcinoma patients with malignant pleural effusions: North East Japan Study Group Trial NEJ013A. Lung Cancer. 2016; 99: 131-6.
6)
Tamiya M, Tamiya A, Yamadori T, et al. Phase 2 study of bevacizumab with carboplatin-paclitaxel for non-small cell lung cancer with malignant pleural effusion. Med Oncol. 2013; 30(3): 676.

8-5
癌性心膜炎

CQ93
心嚢穿刺・ドレナージを要する癌性心膜炎に対して,どのような治療が勧められるか?

エビデンスの強さC
心膜癒着術を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,合意率:79%〕

解説

心嚢水は単回穿刺では再貯留率が高いため,長期的な心嚢水制御のためにはドレナージが推奨される。BLM による心膜癒着術についての79 例を対象としたランダム化比較試験では,主要評価項目であったドレナージ後2 カ月時点での心嚢液の増悪を伴わない生存割合に有意差はないもののBLM 群でよい傾向があり(ドレナージ単独群29% vs BLM 群46%,P=0.086),OS の延長傾向(中央値79 日 vs 119 日)もみられた1)。心膜癒着術の使用薬剤としては,各種薬剤について少数例で検討されており,30 日後の心嚢水コントロール率,OS 中央値はそれぞれ,BLM(46~95%,119~125日)1)2),MMC(75%,80 日)3),CBDCA(80%,69 日)4)と報告されている。

なお,血行動態が不安定な場合は心膜開窓術などの手術も治療選択肢であるが,心嚢水制御について前向きに検討した文献はなく,各施設の医療状況や経験をもとに判断されるべきである。

以上より,対象集団が少ないことからランダム化比較試験が施行しにくく,十分なエビデンスがないものの,短期の症状緩和に関する益と害のバランスを考慮した場合,心嚢ドレナージ後の心膜癒着術を考慮してよいと考えられる。エビデンスの強さはC,ただし総合的評価では行うよう弱く推奨(2 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会(看護師1 名,薬剤師1 名を含む)

引用文献

1)
Kunitoh H, Tamura T, Shibata T, et al. A randomised trial of intrapericardial bleomycin for malignant pericardial effusion with lung cancer(JCOG9811). Br J Cancer. 2009; 100(3): 464-9.
2)
Maruyama R, Yokoyama H, Seto T, et al. Catheter drainage followed by the instillation of bleomycin to manage malignant pericardial effusion in non-small cell lung cancer: a multi-institutional phaseⅡ trial. J Thorac Oncol. 2007; 2(1): 65-8.
3)
Kaira K, Takise A, Kobayashi G, et al. Management of malignant pericardial effusion with instillation of mitomycin C in non-small cell lung cancer. Jpn J Clin Oncol. 2005; 35(2): 57-60.
4)
Moriya T, Takiguchi Y, Tabeta H, et al. Controlling malignant pericardial effusion by intrapericardial carboplatin administration in patients with primary non-small-cell lung cancer. Br J Cancer. 2000; 83(7): 858-62.

レジメン
転移など各病態に対する治療

転移性骨腫瘍
転移性脳腫瘍
胸部病変

Ⅲ.小細胞肺癌(SCLC)

総論
小細胞肺癌の治療方針

解説

小細胞肺癌は肺癌全体の約10~15%を占める癌であり,増殖速度が速く早期にリンパ節転移や遠隔転移を認める悪性度の高い腫瘍であるが,放射線治療や薬物療法に対する感受性が高いことが特徴である。

小細胞肺癌においても外科切除の適応にあたってはUICC-TNM 分類が重要視されているが,内科治療(化学放射線療法もしくは薬物療法)の選択の面からは,限局型(limited disease:LD)と進展型(extensive disease:ED)の分類が汎用されている。LD は定まった定義はないものの,多くの臨床試験において「病変が同側胸郭内に加え,対側縦隔,対側鎖骨上窩リンパ節までに限られており,悪性胸水,心嚢水を有さないもの」が採用されており,本ガイドラインでもこれに基づいた定義を行っている(小細胞肺癌の限局型および進展型の定義,参照)。

以下,小細胞肺癌の治療についてLD,ED,予防的全脳照射(PCI),再発に大別して治療法を述べる。

1)限局型小細胞肺癌(LD)

LD の治療の主体は薬物療法と放射線治療の併用療法であるが,臨床病期Ⅰ,ⅡA 期(第8 版)においては外科治療を含む治療により,5 年生存率が40~70%の良好な成績が報告されており(CQ1),外科治療+術後薬物療法〔CDDP+ETP(PE)療法4 コース〕が標準治療とされている(CQ2)。なお,医学的な理由で手術ができない臨床病期Ⅰ,ⅡA 期症例に対しては,選択肢の1 つとして定位照射が勧められる(CQ3)。

臨床病期Ⅰ,ⅡA 期以外のLDの治療は,薬物療法と放射線治療の併用が複数の比較試験やメタアナリシスから標準治療と考えられている(CQ4)。薬物療法と併用する際の放射線治療のタイミングは早期同時併用療法が推奨され(CQ5),放射線の照射方法に関しては1 日2 回照射を行う加速過分割照射が推奨される(CQ6)。近年行われた加速過分割照射法45 Gy と通常照射法66 Gy の比較試験において,通常照射法の優越性は示せなかったがOS に差を認めなかったことから,加速過分割照射が困難な場合は通常照射法も選択肢となる。放射線治療と併用する薬物療法は,今までの比較試験の結果などからPE療法4コースが標準である(CQ7)。

2)進展型小細胞肺癌(ED)

ED における治療の主体は薬物療法であるが,今までの比較試験の結果から,PS や年齢で推奨されるレジメンが異なっている。PS 0-2,70 歳以下においては,本邦で行われたPE 療法とCDDP+CPT-11(PI)療法の比較試験の結果からPI 療法が推奨される。海外にて行われたPE 療法とPI 療法の比較試験の追試では,本邦で行われた試験の結果を再現することはできなかったが,プラチナ製剤+ETP とプラチナ製剤+CPT-11 の比較試験のメタアナリシスではCPT-11 併用群で有意にOS を延長し,PFS やORR も改善する傾向にあることが示されている(CQ9)。なお,本邦で行われた比較試験は70 歳以下を対象としているため,71 歳以上におけるPI 療法のエビデンスは乏しく,PS 0-2 の71 歳以上75 歳未満およびCPT-11の毒性(下痢や間質性肺炎の併存など)が懸念される症例にはPE 療法が推奨される(CQ10)。また,PS 0-1 のED 症例にはCBDCA+ETP(CE)+アテゾリズマブ(PD-L1 阻害剤)療法のCE 療法に対する比較試験の結果から,CE+アテゾリズマブ療法も推奨される(CQ11)。PS 3 および75 歳以上に関しては,本邦で行われた比較試験の結果から分割PE 療法とCE療法が標準治療とされている(CQ12)。一方で,PS 4 では毒性の増強や治療関連死の危険性を十分考慮する必要があり,薬物療法の適応は困難と考えられる(CQ13)。

3)予防的全脳照射(PCI)

小細胞肺癌は初回治療の感受性が良好であり,一部では完全奏効が得られるものの,初再発として脳転移を呈することが多いため,PCI の有効性を検証するいくつかの比較試験が行われている。LD が大部分を占めるメタアナリシスにおいてPCI 施行により脳転移再発の抑制とOS の有意な延長が示されており,LD で初回治療により CR が得られた症例に対しては PCI(25 Gy/10 回)は標準治療となっている(CQ14)。一方,ED においては,海外で行われたPCI の有効性を検証する比較試験でPCI 施行群で生存期間の延長が示されたが,ランダム化時点で画像検査による脳転移の否定が必須でないなどの試験デザインの問題が指摘されていた。本邦においてプラチナ製剤併用療法に奏効し,脳転移のないED に対するPCI 施行群と非施行群の第Ⅲ相試験が行われ,PCI 施行群で脳再発率は少なかったもののOS の延長は示されなかった。この結果から本邦においてED 症例に対するPCI は推奨されない(CQ16)。

4)再発小細胞肺癌

小細胞肺癌は,初回治療にいったん奏効しても大部分で再発,増悪をきたす。再発小細胞肺癌は,初回治療が奏効し初回治療終了から再発までが60~90 日以上のsensitive relapse とそれ以外のrefractory relapse に分類され,sensitive relapse では薬物療法の効果が期待できる(再発小細胞肺癌におけるsensitive relapse とrefractory relapse の分類,参照)。Sensitive relapseに対しては,いくつかの比較試験の結果からノギテカン(NGT)単剤,PEI(CDDP+ETP+CPT-11)療法が標準治療となっている。PEI 療法に関しては比較試験においてNGT療法と比較し有意なOSの延長が示されたが,予防的G-CSF 投与下においても発熱性好中球減少症を約30%に認めており,毒性の面などからその適応に関しては検討する必要がある。アムルビシン塩酸塩(AMR)はNGTの比較試験において,OS の優越性を示すことができなかったものの,サブセット解析でsensitive relapse において同等のOS が示され,9 つの試験のシステマティックレビューからも良好な成績が示されており,治療の選択肢と考えられる(CQ17)。Refractory relapse に対しては,海外で行われたAMRとNGTの比較試験のサブセット解析でrefractory relapseにおいてAMR によるOS の有意な延長が示され,本邦で行われたrefractory relapse に対するAMR の単群第Ⅱ相試験においてもORR 32.9%,OS 中央値8.9 カ月と良好な治療成績が示されており,AMR 単剤が推奨される(CQ18)。

5)高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する小細胞肺癌

がん化学療法後に増悪した進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する固形癌を対象として,ペムブロリズマブの有効性,安全性を評価する第Ⅱ相試験が行われ,ORR は37%,PFS 中央値5.4 カ月であった。その結果,MSI-High を有する固形癌に対してペムブロリズマブが承認されている。本試験に登録された患者の癌腫としては,大腸癌(36%),子宮内膜癌(15%),小腸癌(8%),膵癌(8%)の順に多く,小細胞肺癌も少数例であるが含まれていた(2%)1)

6)神経内分泌腫瘍(Neuroendocrine tumors)

肺腫瘍の組織型分類に関する国際的な規約「WHO 分類」が,2015 年に第4 版へ改訂されたことを受け,WHO 分類に準拠した肺癌取扱い規約第8 版による組織分類(日本肺癌学会編)が公表されている。これによると,それまで大細胞癌の亜型に含まれていた大細胞神経内分泌癌(Large cell neuroendocrine carcinoma,LCNEC)は,小細胞癌,カルチノイド腫瘍とともに,独立したカテゴリーである神経内分泌腫瘍(Neuroendocrine tumors)として集約された。LCNEC に対して,小細胞癌と同様に治療を行っていくべきかの結論は明らかになっていないが,小細胞癌に準じて治療選択がなされることも多い。

なお,肺あるいは消化管原発の再発低悪性度神経内分泌腫瘍(いわゆるカルチノイド腫瘍)を対象とした第Ⅲ相試験が行われた。その結果,エベロリムスがプラセボに比較してPFS の延長効果を示し,肺神経内分泌腫瘍に対してエベロリムスが承認されている2)。

小細胞肺癌の限局型(Limited disease;LD)および進展型(Extensive disease;ED)の定義

肺癌取扱い規約第8 版(日本肺癌学会編)では小細胞肺癌について,「limited disease」(限局型)と「extensive disease」(進展型)の分類には意見の一致が得られておらず,「limited」と「extensive」の定義が確立していない現状では,TNM の記載は重要であるとしている。

しかし,小細胞肺癌の治療選択の面からは,限局型と進展型の区分は重要と考えられるため,本ガイドラインでは多くの第Ⅲ相臨床試験で採用されている定義,すなわち病変が同側胸郭内に加え,対側縦隔,対側鎖骨上窩リンパ節までに限られており悪性胸水,心嚢水を有さないものを限局型小細胞肺癌と定義付けた。

限局型小細胞肺癌(LD-SCLC)

CQ1
臨床病期Ⅰ–ⅡA 期(第8 版)の小細胞肺癌に外科治療は勧められるか?

エビデンスの強さC
臨床病期Ⅰ-ⅡA 期(第8 版)の小細胞肺癌に対して,外科治療を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:90%〕

解説

LD に対する標準治療は化学放射線療法とされているが,なかでも臨床病期Ⅰ-ⅡA 期(第8 版),特にcT1N0M0 については,外科治療を含む治療法により,治癒や長期生存が期待できる症例があることが報告されており1)2),外科治療単独あるいはこれに薬物療法や放射線治療を加えることで,5 年生存率が40~70%に達することが報告されている3)~6)。術式では,肺葉切除以上の術式が,部分切除術と比較してOS が良好であると報告されており7),また薬物療法単独群や化学放射線療法群よりは,外科治療に薬物療法を加えた群での局所制御率とOS 中央値が有意に良好であることが報告されている8)9)

しかしながら,外科治療の対象となる症例数は少ないため,外科治療を含む治療法とこれ以外の治療法の比較試験は存在せず,今後も施行の可能性は極めて乏しいことが予想される。臨床病期Ⅰ-ⅡA 期(第8 版)の小細胞肺癌に対する外科治療を含む治療は治癒が得られる可能性があり,切除後に小細胞肺癌の診断が得られるケースも存在することから,すでに実地臨床においてもこの方針が踏襲されつつある10)。エビデンスの質の高い研究を列挙することは困難であるが,治療法の選択肢の1 つとして推奨され得る治療法であると考えられる。

以上より,臨床病期Ⅰ-ⅡA 期(第8 版)の小細胞肺癌に対して手術療法を行うよう推奨する。エビデンスの強さはC,ただし総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会,放射線治療小委員会,外科療法小委員会

一方,リンパ節転移を認めるLD における外科治療の有用性は明らかではない。IASLC による小細胞肺癌患者5,002 例のデータベースから,577 例に外科治療が施行された結果が報告されており,病理病期N0 症例ではOS 中央値が未到達(2 年生存率80%)であったのに対し,N1 症例では28 カ月(2 年生存率55%)と低下することが示されている11)

CQ2
小細胞肺癌の手術後の治療は何が勧められるか?

エビデンスの強さC
小細胞肺癌の手術後の治療として,薬物療法を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

解説

外科治療と併用される治療法として,どのタイミングでどの治療法を組み合わせるのがよいかということに関しては,推奨の根拠となる十分なエビデンスは存在しない。主として術前,術後の全身薬物療法が併用された報告が多く5)6)18),術後の放射線治療については報告が少ない19)20)。本邦で行われた,外科治療後にCDDP+ETP による薬物療法の有用性を検証する第Ⅱ相試験の報告では,臨床病期Ⅰ期の44 症例では3 年生存率68%であり,病理病期ⅠA 期症例では5 年生存率73%,局所再発率10%と良好な成績であった21)

Ⅰ期の完全切除例の術後治療に関するコホート研究では,術後に薬物療法を施行した群で,外科治療単独群と比較しOS は有意に良好であり,生存に関する多変量解析では,術後薬物療法または術後薬物療法+予防的全脳照射(PCI)で有意に良好な結果であった22)

術後の放射線治療に関しては,完全切除されたLD 3,017 例の後ろ向き研究において,放射線治療施行群の5 年生存率は,放射線治療非施行群に比べて有意に劣っていたことが報告されている。一方,この研究におけるサブグループ解析で,pN0 群の5 年生存率は放射線治療施行群で劣っていたが,pN2 症例では,放射線治療施行群で有意に良好であった23)

外科治療の対象となるLD の症例数が極めて少ないことを考えると,外科治療に付加する併用療法の意義を検証する比較試験は,今後も実現不可能と考えられる。小細胞肺癌は薬物療法に対する感受性が高いこと,また術後の薬物療法に対する良好な治療成績が報告されていること,さらに実地臨床においては切除して初めて小細胞肺癌と診断される症例も存在することなどを考慮に入れると,エビデンスの質の高い研究を列挙することは困難であるが,外科治療後の薬物療法は行うよう勧められる選択肢と考えられる。

以上より,小細胞肺癌の手術後の治療として薬物療法を行うよう推奨する。エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会,放射線治療小委員会

CQ3
医学的な理由で手術ができない臨床病期Ⅰ–ⅡA 期(第8 版)の小細胞肺癌の放射線照射法として,定位照射は勧められるか?

エビデンスの強さD
医学的な理由で手術ができない臨床病期Ⅰ-ⅡA 期(第8 版)の小細胞肺癌の放射線照射法として,定位照射を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,合意率:89%〕

解説

LD に対する標準治療は化学放射線療法とされているが,臨床病期Ⅰ-ⅡA 期(第8 版),特にcT1N0M0 については,治癒や長期生存が期待できる症例が存在することが報告されており,外科治療を含む治療法が選択される。しかしながら,切除不能症例に対する標準治療は定まっていない。これらの中で,臨床病期Ⅰ-ⅡA 期の非小細胞肺癌に対する根治療法として,SBRT が局所制御の向上と毒性の軽減の点で代表的な治療法として行われているが,2012 年以降,小細胞肺癌に対するSBRT の安全性と良好な局所制御に関する成績が国内外から報告されている18)~23)。日本放射線腫瘍学研究機構が行った本邦の遡及的調査の結果,64 例(手術不能66%)に35~60 Gy/3-19 Fr の寡分割照射が行われ,OS 中央値が23.5 カ月,2 年の全生存率,局所制御率はそれぞれ76.3%,89.3%であった21)。米国の多施設コホート研究では,2005~15 年に74 例(手術不能88%)に48~60 Gy/3-5 Fr のSBRT が施行され,OS 中央値が17.8 カ月,3 年の全生存率,局所制御率はそれぞれ34.6%,96.1%であった22)。いずれの研究でも再発形式として遠隔転移の頻度が高く,化学療法併用の症例のOS が良好であった。また,米国のNCDB 調査報告として,2004~13 年にT1-T2N0M0 でSBRT を施行した症例は285 例であり,OS 中央値23.5 カ月,3 年生存率35.2%であった。また,Ⅰ期小細胞肺癌にSBRT が用いられる割合は,2004 年の0.4%に対し,2013 年には6.4%と10 倍以上に増加していた24)。NCDBを用いた治療法別の成績を検討した別の報告では,縮小手術例と比べてSBRTのOSは有意な差を認めなかった(HR 1.24, 95%CI:0.95-1.61, P=0.11)。また非手術例に限るとSBRTは従来照射法より良好なOSであった(HR 1.30, 95%CI:1.02-1.66, P=0.04)25)

SBRT の報告数は少なく,それぞれの症例数も十分ではないが,いずれも安全で良好な局所制御が報告されている。Ⅰ-ⅡA 期の小細胞肺癌はLD に含まれており,切除不能の場合,加速過分割照射法を用いた化学放射線療法が標準治療であるため,放射線治療法にSBRT を採用することは肺毒性の軽減,利便性,コスト削減の点からは有利な点も多い。

以上より,医学的な理由で手術ができない臨床病期Ⅰ-ⅡA 期(第8 版)の小細胞肺癌の放射線照射法として定位照射を行うよう提案する。エビデンスの強さはD,ただし総合的評価では行うことを弱く推奨(2 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会,放射線治療小委員会,外科療法小委員会

CQ4
限局型小細胞肺癌(PS 0–2)において,化学放射線療法は勧められるか?

エビデンスの強さA
限局型小細胞肺癌(PS 0-2)に対して,化学放射線療法を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

解説

LD に対して薬物療法と胸部放射線治療の併用は,薬物療法単独に比べて生存を改善することが2つのメタアナリシスにより明らかにされている。13 の比較試験のメタアナリシスでは,薬物療法に胸部放射線治療を併用すると,死亡の絶対リスクが14%減少し,3 年生存率が5.4±1.4%改善することが報告されている26)。11 の比較試験のメタアナリシスでは,薬物療法に胸部放射線治療を併用すると,2 年生存率が5.4%,局所制御率が25.3%改善することが報告されている27)。有害事象に関しては,薬物療法と胸部放射線治療の併用により治療関連死が1.2%増加することが報告されており,併用の際には有害事象の発生について十分に注意する必要がある。

以上より,限局型小細胞肺癌(PS 0-2)に対して化学放射線療法を行うよう推奨する。エビデンスの強さはA,また総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会,放射線治療小委員会,外科療法小委員会

CQ5
限局型小細胞肺癌(PS 0–2)の化学放射線療法における放射線治療のタイミングは,早期同時併用が勧められるか?

エビデンスの強さB
限局型小細胞肺癌(PS 0-2)の化学放射線療法における放射線治療は,早期同時併用を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

解説

薬物療法に胸部放射線治療を併用する場合のタイミングとして,主に同時併用(早期・後期)と逐次併用が挙げられる。CDDP+ETP 療法に過分割照射を用いた放射線同時併用と逐次併用の比較試験では,前者において良好なOS 中央値が得られ(27.2 カ月 vs 19.7 カ月,P=0.097),毒性も認容可能であった28)。同時併用における放射線療法の時期を検討する比較試験においては,いくつかの試験で早期同時併用することにより生存が改善することが示されている29)~34)。放射線治療のタイミングを検討したこれらの試験のメタアナリシスでは,早期同時併用の2 年生存率の有意な改善35),プラチナ製剤併用療法を用いた場合の早期同時併用の2 年生存率の有意な改善36),治療開始(放射線治療もしくは薬物療法)から放射線治療の終了日までの期間が30 日以内であった場合の5 年生存率の有意な改善37),薬物療法のコンプライアンスが同様であった場合に早期もしくは短期間の放射線併用療法でOS の有意な改善38)などが報告されている。これらの結果は早期の放射線治療の施行と照射期間の短縮が独立した因子あるいは相互的に影響して予後を改善する可能性を支持している。

一方,有害事象に関しては,同時併用や早期同時併用において食道炎や肺臓炎,骨髄抑制(白血球減少,好中球減少,貧血)の頻度が増加することが報告されている。

以上より,限局型小細胞肺癌(PS 0-2)の化学放射線療法における放射線治療は早期同時併用を行うよう推奨する。エビデンスの強さはB,また総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会,放射線治療小委員会,外科療法小委員会

CQ6
限局型小細胞肺癌(PS 0–2)に対する放射線照射法は,通常照射法と加速過分割照射法のどちらが勧められるか?

エビデンスの強さB
限局型小細胞肺癌(PS 0-2)に対する放射線照射法は,加速過分割照射法を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

解説

化学療法と放射線療法を併用する際の放射線照射方法に関しては,過分割照射法と通常照射法を比較した3 つのランダム化試験が報告されている。通常照射法45 Gy/25 回/5 週と加速過分割照射法45 Gy/30 回/3 週の比較試験では,加速過分割照射法群で有意にOS を延長した39)。一方,通常照射法50.4 Gy/28 回/6 週と2.5 週間の休止期間を含む過分割照射48 Gy/32 回/6 週の比較試験ではOS,局所制御率,無再発生存期間において両群間で差がなかった40)。有害事象に関しては,加速過分割照射法で通常照射法より食道炎の頻度が高かった。上記2 試験が異なる結果となった理由として,全照射期間の違いや通常照射法の線量の違いが挙げられる。全照射期間の延長は照射中の腫瘍の加速再増殖を促す可能性があるため,全照射期間の短縮は治療成績の向上につながると考えられ,照射期間の違いが治療成績に影響した可能性がある。また,通常照射法45 Gy/25 回/5 週と加速過分割照射法45 Gy/30 回/3 週を用いた試験では,総線量は同じであるものの生物学的な効果を示す線量として加速過分割照射法が高い線量となっており,通常照射法の線量の違いが治療成績に影響した可能性も指摘されている。その後,加速過分割照射法45 Gy/30 回/19 日に対する通常照射法66 Gy/33 回/45 日の優越性を検証する比較試験が行われ,主要評価項目であるOS に差を認めず,通常照射法の加速過分割照射法に対する優越性は示されなかった。無増悪生存期間,局所制御率にも差を認めず,有害事象に関しては,加速過分割照射法群でGrade 4 の好中球減少の頻度が高かったがその他の有害事象には差を認めなかった41)

以上より,限局型小細胞肺癌(PS 0-2)に対する放射線照射法は,加速過分割照射法を行うよう推奨する。エビデンスの強さはB,また総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会,放射線治療小委員会,外科療法小委員会

なお,加速過分割照射による有害事象の増強が懸念される場合や,加速過分割照射が困難な場合は,通常照射でも同程度の治療効果が得られるという報告から,通常照射法も選択肢となる。

CQ7
限局型小細胞肺癌(PS 0–2)に対する化学放射線療法に併用する最適な薬物療法は何か?

エビデンスの強さC
  1. a. 限局型小細胞肺癌(PS 0-2)に対する放射線治療と同時併用する際の薬物療法は,シスプラチン+エトポシド療法を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

エビデンスの強さD
  1. b. シスプラチン+エトポシド療法の投与が困難な場合,カルボプラチン+エトポシド療法後に逐次放射線療法を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,合意率:100%〕

解説

  1. a. 化学放射線療法に併用する薬物療法のレジメンに関しては,放射線治療の照射方法を一定にして薬物療法のレジメンを比較検討した臨床試験はない。薬物療法と過分割照射による放射線治療の同時併用の比較試験においてCDDP+ETP(PE)療法が多く用いられており28),39)~41),本邦で行われたPE 療法(1 サイクル)と過分割照射同時併用療法後にCDDP+CPT-11(PI)療法へ変更する群(3 サイクル)とPE 療法を継続する群(3 サイクル)を比較した第Ⅲ相試験において,PI 群におけるOS の延長効果を認めなかった42)

    以上より,限局型小細胞肺癌(PS 0-2)に対する放射線療法と同時併用する際の薬物療法は,CDDP+ETP 療法を行うよう推奨する。エビデンスの強さはC,ただし総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

  2. 投票者の所属委員会:薬物療法小委員会,放射線治療小委員会,外科療法小委員会
  3. b. CDDP+ETP 療法以外の化学放射線療法に併用するレジメンとしては,CBDCA+ETP 療法などが検討されているが,エビデンスは少なく骨髄抑制の頻度が高いことが報告されている43)44)。高齢者に関しては,LD に対する化学放射線療法を評価する多くの臨床試験において対象が75 歳以下に限定されておりデータは少ない。一部の臨床試験では年齢制限を設けておらず,少数ではあるが75 歳以上の患者も登録されており,70 歳以上と70 歳以下のサブグループ解析では,毒性は有意に増すもののOS などの治療成績は同等と報告されている45)。また,70 歳以上のLD 症例における8,637 例のコホート研究では,薬物療法と放射線治療(同時併用もしくは遂時併用)を施行した群で,薬物療法単独群よりOS の有意な延長を認めたことが報告されている46)。LD の治療目標は治癒であることから,高齢であることのみを理由に治療強度を減弱させるのは好ましくないが,化学放射線療法の同時併用療法は,その毒性を鑑みると慎重に行う必要がある。実臨床においてはCDDP+ETP 療法の投与が困難な症例,高齢者,PS 不良例においては毒性を考慮し薬物療法+遂時放射線療法が選択されることが多い。

    以上より,CDDP+ETP 療法の投与が困難な場合には,CBDCA+ETP 療法後に逐次放射線療法を行うよう提案する。エビデンスの強さはD,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

  4. 投票者の所属委員会:薬物療法小委員会,放射線治療小委員会,外科療法小委員会

CQ8
PS 3–4 の限局型小細胞肺癌に対して,薬物療法は勧められるか?

エビデンスの強さC
  1. a. PS 3 の限局型小細胞肺癌に対して,薬物療法を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,合意率:100%〕

  1. b. PS 4 の限局型小細胞肺癌に対して,薬物療法は行うよう勧めるだけの根拠が明確ではない。

〔推奨度決定不能〕

解説

  1. a. PS 3 のLD に対する化学放射線療法のデータはない。進展型小細胞肺癌ではPS 不良例に対しても至適な薬物療法を検討する臨床試験がいくつか行われており47)48),PS 悪化の原因が小細胞肺癌によるものであり,小細胞肺癌に対する治療効果によってPS の改善が得られる可能性があれば薬物療法単独治療の対象になり得る。また,薬物療法中もしくは薬物療法後にPS が0-2に改善した場合,LD に対して薬物療法と放射線治療の併用が薬物療法単独に比べて生存を改善することが2 つのメタアナリシスにより明らかにされており26)27),同時併用でなくとも放射線治療を追加することでOS が延長する可能性があることから,薬物療法施行後にPS の改善が得られれば放射線治療の追加も検討する。

    以上より,PS 3 の限局型小細胞肺癌に対して薬物療法を行うよう提案する。エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

  2. 投票者の所属委員会:薬物療法小委員会,放射線治療小委員会,外科療法小委員会
  3. b. PS 4 に対する薬物療法の有効性や安全性のデータは極めて少ない47)。小細胞肺癌に対する薬物療法の有効性を考慮すると,PS の悪化の原因が小細胞肺癌によるもので小細胞肺癌に対する治療効果によってPS の改善が得られる可能性があれば,薬物療法の対象になり得ると考えられるが,PS 4 に対しては毒性を考慮する必要がある。

    以上より,PS 4 の限局型小細胞肺癌に対して薬物療法を行うよう勧めるだけの根拠が明確ではなく,推奨度決定不能とした。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

  4. 投票者の所属委員会:薬物療法小委員会,放射線治療小委員会,外科療法小委員会

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レジメン
限局型小細胞肺癌

進展型小細胞肺癌(ED-SCLC)

CQ9
進展型小細胞肺癌(PS 0-2,70 歳以下)における最適な一次治療は何か?

エビデンスの強さA
  1. a. 進展型小細胞肺癌(PS 0-2,70 歳以下)にはシスプラチン+イリノテカン療法を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

エビデンスの強さA
  1. b. 進展型小細胞肺癌(PS 0-2,70 歳以下)にはシスプラチン+エトポシド療法を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,合意率:100%〕

解説

  1. a. EDに対して,1980 年代以降CDDP+ETP(PE)療法とのランダム化比較試験が行われた。2000 年に報告されたCDDP を含む薬物療法とそれ以外との比較試験のメタアナリシスでは,CDDP を含むレジメンがORRおよび1年生存率が有意に高く,治療関連死には差を認めなかったとしている1)。2000 年以降,PS 0-2 を対象とした,PE とDXR+CPA+ETP(ACE)療法との比較試験が実施され,ORR,OS に有意差はなく,ACE が有意に好中球減少,敗血症の割合が高かったことが示されていることから2),世界的にはPEが標準治療と考えられてきた。

    本邦で70 歳以下のPS 0-2 を対象とした,PEとCDDP+CTP-11(PI)療法とのランダム化比較試験(JCOG9511 試験)が行われ,PI が有意にOSを延長することが示された(中央値9.4 カ月vs 12.8 カ月,P=0.002)3)。その後,北米を中心にPE とPI との第Ⅲ相試験による追試が行われたが,各試験単独では両群間でOS に有意差を認めず,JCOG9511 試験の結果を再現することはできなかった4)~7)。しかしながら,これら第Ⅲ相試験を含むプラチナ製剤+ETP とプラチナ製剤+CPT-11 とのランダム化比較試験のメタアナリシスでは,CPT-11 群が有意にOS を延長し,PFS およびORR もCPT-11 群で改善する傾向にあることが示された8)~10)

    また,PI もしくはPEとCDDP+AMR(PA)療法とのランダム化比較試験が,本邦および中国で非劣性のデザインで行われ,PI に対してPA はOS の非劣性を証明することはできなかった(PI vs PA:中央値17.7 カ月 vs 15.0 カ月,HR 1.43,95%CI:1.10-1.85)11)。一方,PE に対しては,非劣性は証明されたものの両群のOS に有意差はなかった(PE vs PA:中央値10.3 カ月 vs 11.8 カ月,HR 0.81,95%CI:0.63-1.03)12)

    PI の特徴として血液毒性が軽度な一方,嘔吐,下痢の頻度が高いことが示されている8)~10)13)。また,間質性肺炎を有する患者には禁忌とされている。そのため,下痢の発症が懸念される患者,間質性肺炎の発症が懸念される,もしくは間質性肺炎を合併している患者にはPE を行うよう勧められる。

    以上より,進展型小細胞肺癌(PS 0-2,70 歳以下)にはPI 療法を行うよう推奨する。エビデンスの強さはA,また総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

  2. 投票者の所属委員会:薬物療法小委員会
  3. b. 一方,PE は世界的に標準とされるレジメンであるが,JCOG9511 試験においてPI に劣り,複数のメタアナリシスでも同様の結果が認められている。

    以上より,進展型小細胞肺癌(PS 0-2,70 歳以下)にはPE 療法を行うよう提案する。エビデンスの強さはA,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

  4. 投票者の所属委員会:薬物療法小委員会

CQ10
進展型小細胞肺癌(PS 0-2,71 歳以上)における最適な一次治療は何か?

エビデンスの強さB
  1. a. 進展型小細胞肺癌(PS 0-2,71 歳以上)に対してシスプラチンの一括投与が可能な場合にはシスプラチン+エトポシド療法を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:95%〕

エビデンスの強さC
  1. b. 進展型小細胞肺癌(PS 0-2,71 歳以上)に対してシスプラチンの一括投与が困難な場合にはカルボプラチン+エトポシド療法あるいはsplit PE 療法を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:95%〕

解説

  1. a. 1980 年代以降CDDP+ETP(PE)療法は小細胞肺癌の治療に頻用され,海外の第Ⅲ相試験では年齢制限なく臨床試験が行われていることが多い。本邦では75 歳未満のPS 0-3 の小細胞肺癌(LD,ED を含む)に対しPE とCPA+DXR+VCR(CAV)とCAV/PE 交代療法を比較する第Ⅲ相試験が行われ,PE 療法とCAV/PE 療法のORR がCAV より有意に高く(PE 78%,CAV/PE 76%,CAV 55%,P<0.005),毒性は許容範囲であった14)

    以上より,進展型小細胞肺癌(PS 0-2,71 歳以上)に対して,CDDP の一括投与が可能な場合にはPE 療法を行うよう推奨する。エビデンスの強さはB,また総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

    投票者の所属委員会:薬物療法小委員会

    なお,CDDP+CPT-11(PI)療法に関して,71 歳以上の高齢者の小細胞肺癌に対する本邦のエビデンスは現時点では存在しない。しかしながら,本邦で行われたPS 0-2 のED に対する第Ⅲ相試験の結果,PI がPE に比べ有意にOS を延長することが示されたこと3),ならびに本邦で行われた74 歳までのPS 0-1 の進行非小細胞肺癌を対象にCDDP+CPT-11,CDDP+GEM,CDDP+VNR,CBDCA+PTX の4 群を比較する第Ⅲ相試験15)の結果より毒性は許容範囲であることから,実地臨床ではPI が74 歳までのEDに使用されることもある。

  2. b. 本邦で,70 歳以上のPS 0-2 の高齢者および70 歳未満のPS 3 の患者を対象としたCBDCA+ETP(CE)療法とsplit PE(SPE 療法:CDDP 3 日間分割投与)との第Ⅲ相試験が行われ,CE 群でGrade 3/4 の血小板減少がより多く認められた(CE 56% vs SPE 16%,P<0.01)が,ORR(73% vs 73%),70 歳以上かつPS 0-2 のサブグループにおけるOS(中央値10.8 カ月vs 10.1 カ月)はほぼ同様であった16)

    以上より,進展型小細胞肺癌(PS 0-2,71 歳以上)に対して,CDDP の一括投与が困難な場合にはCE あるいはSPE を推奨する。エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

  3. 投票者の所属委員会:薬物療法小委員会

CQ11
進展型小細胞肺癌(PS 0-1)に対して,プラチナ製剤併用療法にアテゾリズマブの上乗せは勧められるか?

エビデンスの強さB
進展型小細胞肺癌(PS 0-1)には,カルボプラチン+エトポシド+アテゾリズマブ療法を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:71%〕

解説

PS 0-1 のED 症例を対象に,CBDCA+ETP(CE 療法)+アテゾリズマブ(PD-L1 阻害剤)後にアテゾリズマブ単剤での維持療法を行う群(併用群)とCE療法+プラセボ(プラセボ群)を比較する第Ⅲ相試験(IMpower133 試験)が行われた 17)。併用群はプラセボ群に対して,主要評価項目であるOS の有意な延長を認めた(12.3 カ月 vs 10.3 カ月,HR 0.70,95%CI:0.54-0.91,P=0.007)。また,副次評価項目であるPFS についても有意な延長を認めた(5.2 カ月 vs 4.3 カ月,HR 0.77,95%CI:0.62-0.96,P=0.02)。

なお,本試験において用いられたプラチナ製剤はCBDCA であるが,プラセボ群のOS 中央値は,既報告のCDDP+ETP(PE 療法)における9.1 カ月~10.3 カ月3)~6)に劣らない結果であった。

毒性についてGrade 3 以上の皮疹(2% vs 0%)やインフュージョンリアクション(2% vs 0.5%)などの免疫関連の毒性が併用群において増加する傾向であることには留意する必要があるものの,肺臓炎(0.5% vs 1%)を含め,全体として併用群におけるGrade 3以上の毒性の増加は認められなかった(56.6% vs 56.1%)。

以上より,進展型小細胞肺癌(PS 0-1)にはCE+アテゾリズマブ療法を行うよう推奨する。エビデンスの強さはB,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で 推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会(看護師2名,薬剤師1名,患者2名を含む)

なお,安全性の観点から現時点で前述したレジメン以外の併用療法は勧められない。詳細については,項末のレジメンを参照のこと。

CQ12
進展型小細胞肺癌(PS 3)に対して,薬物療法は勧められるか?

エビデンスの強さC
進展型小細胞肺癌(PS 3)に対して,カルボプラチン+エトポシド療法あるいはsplit PE療法を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,合意率:91%〕

解説

海外で行われた,PS 3を含めた 2つの第Ⅲ相試験18)19)(ただし,いずれも WHO PS 3)があり,PS 3 に関しては小細胞肺癌に対する治療効果によってPS の改善が得られる可能性があれば薬物療法の対象になり得る。

本邦で,70 歳以上のPS 0-2 の高齢者および70歳未満のPS 3 の患者を対象としたCBDCA+ETP(CE)療法とsplit PE(SPE 療法:CDDP 3 日間分割投与)との第Ⅲ相試験が行われ,CE 群でGrade 3/4 の血小板減少がより多く認められた(CE 56% vs SPE 16%,P<0.01)が,ORR(73% vs 73%),70 歳未満のPS 3 のサブグループにおけるOS(中央値7.1 カ月vs 6.9 カ月)はほぼ同様であった16)。しかし,この試験におけるPS 3 の登録は8%(18/220 例)にとどまることは留意すべきである。

以上より,進展型小細胞肺癌(PS 3)に対してCE 療法もしくはsplit PE 療法を行うよう提案する。エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会

CQ13
進展型小細胞肺癌(PS 4)に対して,薬物療法は勧められるか?

エビデンスの強さD
進展型小細胞肺癌(PS 4)に対して,薬物療法は行わないよう提案する。

〔推奨の強さ:2,合意率:70%〕

解説

PS 4 を含めた第Ⅲ相試験19)はあるが,PS 4 の割合は3%(9/339 例)とごくわずかであり,かつ薬物療法同士の比較試験でありBSC との比較試験ではない。したがって,この試験では薬物療法を勧められるかどうかのエビデンスにはならない。その他にPS 4 を主たる対象とした前向き試験は行われておらず,むしろ毒性を考慮すべきPS 4 に関するエビデンスはないのが現状である。

以上より,進展型小細胞肺癌(PS 4)に対して薬物療法は行わないよう提案する。エビデンスの強さはD,ただし総合的評価では行わないよう弱く推奨(2 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会

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レジメン
進展型小細胞肺癌

予防的全脳照射(PCI)

CQ14
限局型小細胞肺癌の初回治療で完全寛解が得られた症例に対して,予防的全脳照射は勧められるか?

エビデンスの強さB
予防的全脳照射を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:83%〕

解説

メタアナリシスでは,予防的全脳照射(PCI)は完全寛解(CR)例(CR の判定には胸部単純X 線撮影によるものも含まれていた)に限れば3 年脳転移再発率を58.6%から33.3%へと有意に低下させ,3 年生存率を15.3%から20.7%へと有意に向上させることが報告1)されている。そのうちの大多数をLD 例が占めており,LD 例では小細胞癌の初期治療でCR が得られた症例には,PCI を行うことが標準治療として推奨される。

毒性に関しては,PCI の脳に対する毒性の評価を加えたランダム化比較試験が行われ,PCI による精神症状や脳萎縮の発現などの有意な増強は認められなかったとの報告2)があり,また,他のランダム化比較試験においても,PCI による明らかな脳への毒性の増強は認められなかったとの報告3)がある。いずれの試験においてもPCI の開始前にすでに40~60%の症例で精神神経症状が認められていたが,その原因として喫煙,腫瘍随伴症候群(paraneoplastic syndrome),あるいは薬物療法の影響などが挙げられ,PCI による毒性の増強に否定的な見解が示されているが,観察期間も1~2 年と短く,長期生存例における晩期の神経毒性については明らかとなっていない。

以上より,LD の初回治療でCR が得られた症例に対してPCI を行うよう推奨される。エビデンスの強さはB,また総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:放射線治療小委員会,薬物療法小委員会

CQ15
予防的全脳照射の勧められる線量は何か?

エビデンスの強さB
25 Gy/10 回相当を行うよう提案する。

〔推奨の強さ:2,合意率:82%〕

解説

予防的全脳照射(PCI)の線量についてはこれまで24~36 Gy/8~18 回が用いられ,線量が多いほど効果が高い傾向が示唆されていたが1),25 Gy/10 回と36 Gy/18 回あるいは36 Gy/24 回(1 日2 回)の第Ⅲ相試験4)が行われ,主要評価項目である2 年での脳転移の発生率に高線量群29%,標準線量群23%(HR 0.80,95%CI:0.57-1.11,P=0.18)と有意差を認めないだけではなく,2年生存率が高線量群37%,標準線量群42%(HR 1.20,95%CI:1.00-1.44,P=0.05)と高線量群において悪いことが報告された。また,3 年以上の経過観察の結果では,遅発性有害反応の出現が線量によって差がないとの報告5)がある一方で,他の評価法では,認知機能障害が高線量群に多いとの報告6)もある。軽度の会話能力の低下や下肢の筋力低下,知的障害や記銘力の低下は両群ともに報告されている5)。また,1 回線量については,遅発性有害反応軽減のため,1 回2.5 Gy を超えないことが望ましい6)

なお,PCI の施行時期については,メタアナリシスにおいて,化学放射線療法終了後6 カ月以上経ってからのPCI は有意に脳転移を抑制しないことが示されており1),化学放射線療法終了後に良好な治療効果が確認され次第,できるだけ早期(治療開始から6 カ月以内)に行うことを提案する。

以上より,PCI の線量分割法は25 Gy/10 回相当を行うことが提案される。エビデンスの強さはB,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:放射線治療小委員会,薬物療法小委員会

CQ16
進展型小細胞肺癌における薬物療法後の予防的全脳照射は勧められるか?

エビデンスの強さB
予防的全脳照射を行わないよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:89%〕

解説

ED で初期治療に反応したもの(PR 症例が87%)に対する第Ⅲ相試験が行われ,予防的全脳照射(PCI)によりOS 中央値が約1 カ月延長すること(6.7 カ月vs 5.4 カ月,HR 0.68,95%CI:0.52-0.88,P=0.003)を報告7)しているが,登録前に脳転移の有無が画像診断により確認されていたものが29%にとどまっているなど,試験デザインの問題が指摘されている。

プラチナ製剤併用初回薬物療法後に奏効した脳転移のないEDに対するPCI 施行群とPCI 未施行群との第Ⅲ相試験の結果が本邦より報告8)され,12 カ月時点で脳転移の出現頻度は,PCI 施行により有意に減少したが(32.4% vs 58.0%,P<0.001),主要評価項目であるOSは中間解析の結果,10.1 カ月と15.1 カ月(HR 1.38,95%CI:0.95-2.02,P=0.091)であり,早期無効中止の結果であった。ただし本試験は初回薬物療法直後とその後の定期的な脳MRI検査(1 年間は3 カ月おき、その後半年おき)を前提としたことに留意すべきである。

以上より,ED の初回薬物療法奏効後に脳転移の認められない症例に対してPCI は行わないよう推奨する。エビデンスの強さはB,また総合的評価では行わないよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:放射線治療小委員会,薬物療法小委員会

引用文献

1)
Aupérin A, Arriagada R, Pignon JP, et al. Prophylactic cranial irradiation for patients with small-cell lung cancer in complete remission. Prophylactic Cranial Irradiation Overview Collaborative Group. N Engl J Med. 1999; 341(7): 476-84.
2)
Arriagada R, Le Chevalier T, Borie F, et al. Prophylactic cranial irradiation for patients with small-cell lung cancer in complete remission. J Natl Cancer Inst. 1995; 87(3): 183-90.
3)
Gregor A, Cull A, Stephens RJ, et al. Prophylactic cranial irradiation is indicated following complete response to induction therapy in small cell lung cancer: results of a multicentre randomised trial. United Kingdom Coordinating Committee for Cancer Research(UKCCCR)and the European Organization for Research and Treatment of Cancer(EORTC). Eur J Cancer. 1997; 33(11): 1752-8.
4)
Le Péchoux C, Dunant A, Senan S, et al; Prophylactic Cranial Irradiation(PCI)Collaborative Group. Standard-dose versus higher-dose prophylactic cranial irradiation(PCI)in patients with limited-stage small-cell lung cancer in complete remission after chemotherapy and thoracic radiotherapy(PCI 99-01, EORTC 22003-08004, RTOG 0212, and IFCT 99-01): a randomised clinical trial. Lancet Oncol. 2009; 10(5): 467-74.
5)
Le Péchoux C, Laplanche A, Faivre-Finn C, et al; Prophylactic Cranial Irradiation(PCI)Collaborative Group. Clinical neurological outcome and quality of life among patients with limited small-cell cancer treated with two different doses of prophylactic cranial irradiation in the intergroup phase III trial(PCI99-01, EORTC 22003-08004, RTOG 0212 and IFCT 99-01). Ann Oncol. 2011; 22(5): 1154-63.
6)
Wolfson AH, Bae K, Komaki R, et al. Primary analysis of a phase II randomized trial Radiation Therapy Oncology Group(RTOG)0212: impact of different total doses and schedules of prophylactic cranial irradiation on chronic neurotoxicity and quality of life for patients with limited-disease small-cell lung cancer. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2011; 81(1): 77-84.
7)
Slotman B, Faivre-Finn C, Kramer G, et al; EORTC Radiation Oncology Group and Lung Cancer Group. Prophylactic cranial irradiation in extensive small-cell lung cancer. N Engl J Med. 2007; 357(7): 664-72.
8)
Takahashi T, Yamanaka T, Seto T, et al. Prophylactic cranial irradiation versus observation in patients with extensive-disease small-cell lung cancer: a multicentre, randomised, open-label, phase 3 trial. Lancet Oncol. 2017; 18(5): 663-71.

レジメン
予防的全脳照射(PCI)

再発小細胞肺癌

再発小細胞肺癌におけるsensitive relapse とrefractory relapse の分類

再発小細胞肺癌に対するCDDP+ETP1),ETP2),teniposide(本邦未承認)3)など多くの第Ⅱ相試験において,初回薬物療法終了後から再発までの期間が長い患者は,再発後の薬物療法の奏効率が高いことが報告されている。このため,初回薬物療法が奏効し,かつ初回治療終了後から再発までの期間が長い患者(60~90 日以上の場合が多い)は「sensitive relapse」,それ以外は「refractory relapse」と定義されることが多く,sensitive relapse のほうが再発時の薬物療法の効果が高く,生存期間が長い4)5)

CQ17
再発小細胞肺癌(sensitive relapse)に対する最適な薬物療法は何か?

エビデンスの強さA
再発小細胞肺癌(sensitive relapse)に対してノギテカン単剤,シスプラチン+エトポシド+イリノテカン(PEI)療法,アムルビシン単剤を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

解説

〈NGT 単剤〉

Sensitive relapse を含む再燃小細胞肺癌を対象としたBSC と内服NGT を比較する第Ⅲ相試験において,内服NGT 群の生存期間の優越性が示された(MST 13.9 週 vs 25.9 週,HR 0.64,95%CI:0.45-0.90,P=0.01)1)。また,sensitive relapse を対象としたNGT とCPA+DXR+VCR(CPA)療法を比較する第Ⅲ相試験では,NGT 単剤とCPA 療法の生存期間は同等であり,NGT 単剤群で症状改善の優越性が示された2)。また,sensitive relapse を対象としたNGT 単剤と内服NGT 単剤を比較する第Ⅲ相試験では,生存期間は同等であった(MST 35.0 週 vs 33.0 週,HR 0.98,95%CI:0.77-1.25)3)。これらの結果より,NGT 単剤がsensitive relapse に対する標準治療とみなされている。

〈PEI 療法〉

本邦で,NGT 単剤とCDDP+ETP+CPT-11(PEI)療法を比較する第Ⅲ相試験が行われ,PEI 療法の生存期間の優越性が証明された(MST 18.2 カ月 vs 12.5 カ月,HR 0.67,95%CI:0.51-0.88,P=0.0079)4)。しかしながら,PEI 療法はG-CSF 製剤の予防投与を行っているにもかかわらずGrade 3 以上の発熱性好中球減少の発現頻度31%(NGT 群で7%)と報告されており,PEI 療法は患者の条件が許す場合のオプションの1 つと考えられる。

〈AMR 単剤〉

AMR とNGT を比較する3 つの試験が行われ5)~7),sensitive relapse のみを対象とした第Ⅱ相試験においてはMST 9.2 カ月 vs 7.6 カ月と同等であり5),第Ⅲ相試験のサブグループ解析においてもsensitive relapse のOS はMST 9.2 カ月 vs 9.9 カ月,HR 0.936,95%CI:0.724-1.211,P=0.615 とAMR のNGT に対する優越性は示されなかった6)。9 つの試験のシステマティックレビューが行われた結果,日本人のsensitive relapse に対するAMR の効果は奏効率61%,1 年生存率51%と報告されている8)

以上より,再発小細胞肺癌(sensitive relapse)に対してNGT 単剤,PEI 療法,AMR 単剤を行うよう推奨する。エビデンスの強さはA,また総合的評価では行うよう強く推奨できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会

なお,sensitive relapse に対するETP9),CPT-1110),初回化学療法と同じレジメンの再投与(re-challenge)の有効性も報告されているが11)12),その後の前向き比較試験で有効性は確認されておらず,標準治療とはいえない。

CQ18
再発小細胞肺癌(refractory relapse)に対する最適な薬物療法は何か?

エビデンスの強さC
再発小細胞肺癌(refractory relapse)に対して,アムルビシン単剤を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:96%〕

解説

BSC とNGT を比較する第Ⅲ相試験において,NGT の生存期間の優越性が証明された(MST 13.9 週 vs 25.9 週,HR 0.64,95%CI:0.45-0.90,P=0.01)ものの,refractory relapse に対する生存期間の優越性は示されなかった1)。Refractory relapse に対する薬物療法の意義は確立されていないと考えられるが,AMR のシステマティックレビューが行われた結果,日本人のrefractory relapse に対するAMR の効果は奏効率38%,1 年生存率34%と報告されており8),sensitive relapse を含むBSC とNGT を比較する第Ⅲ相試験のBSC 群の6 カ月生存率26%より優れていると判断される。

再発小細胞肺癌に対するNGT とAMR の第Ⅲ相試験のサブグループ解析では,refractory relapse において,OS はMST 5.7 カ月 vs 6.2 カ月,HR 0.776,95%CI:0.589-0.997,P=0.047 とAMR による生存期間の有意な延長効果を認められている6)。また,本邦においてもrefractory relapse 症例に対するAMR の第Ⅱ相試験が行われ,奏効率は32.9%,MST は8.9 カ月であった14)。9 つの試験のシステマティックレビューが行われた結果,日本人のrefractory relapse に対するAMR の効果は奏効率38%,1 年生存率34%と報告されている9)

以上より,再発小細胞肺癌(refractory relapse)に対してAMR 単剤を行うよう推奨する。エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:薬物療法小委員会

引用文献

1)
O’Brien ME, Ciuleanu TE, Tsekov H, et al. Phase III trial comparing supportive care alone with supportive care with oral topotecan in patients with relapsed small-cell lung cancer. J Clin Oncol. 2006; 24(34): 5441-7.
2)
von Pawel J, Schiller JH, Shepherd FA, et al. Topotecan versus cyclophosphamide, doxorubicin, and vincristine for the treatment of recurrent small-cell lung cancer. J Clin Oncol. 1999; 17(2): 658-67.
3)
Eckardt JR, von Pawel J, Pujol JL, et al. Phase III study of oral compared with intravenous topotecan as second-line therapy in small-cell lung cancer. J Clin Oncol. 2007; 25(15): 2086-92.
4)
Goto K, Ohe Y, Shibata T, et al. Combined chemotherapy with cisplatin, etoposide, and irinotecan versus topotecan alone as second-line treatment for patients with sensitive relapsed small-cell lung cancer(JCOG0605): a multicentre, open-label, randomised phase 3 trial. Lancet Oncol. 2016; 17(8): 1147-57.
5)
Jotte R, Conkling P, Reynolds C, et al. Randomized phase II trial of single-agent amrubicin or topotecan as second-line treatment in patients with small-cell lung cancer sensitive to first-line platinum-based chemotherapy. J Clin Oncol. 2011; 29(3): 287-93.
6)
von Pawel J, Jotte R, Spigel DR, et al. Randomized phase III trial of amrubicin versus topotecan as second-line treatment for patients with small-cell lung cancer. J Clin Oncol. 2014; 32(35): 4012-9.
7)
Inoue A, Sugawara S, Yamazaki K, et al. Randomized phase II trial comparing amrubicin with topotecan in patients with previously treated small-cell lung cancer: North Japan Lung Cancer Study Group Trial 0402. J Clin Oncol. 2008; 26(33): 5401-6.
8)
Horita N, Yamamoto M, Sato T, et al. Amrubicin for relapsed small-cell lung cancer: a systematic review and meta-analysis of 803 patients. Sci Rep. 2016; 6: 18999.
9)
Johnson DH, Greco FA, Strupp J, et al. Prolonged administration of oral etoposide in patients with relapsed or refractory small-cell lung cancer: a phase II trial. J Clin Oncol. 1990; 8(10): 1613-7.
10)
Masuda N, Fukuoka M, Kusunoki Y, et al. CPT-11: a new derivative of camptothecin for the treatment of refractory or relapsed small-cell lung cancer. J Clin Oncol. 1992; 10(8): 1225-9.
11)
Postmus PE, Berendsen HH, van Zandwijk N, et al. Retreatment with the induction regimen in small cell lung cancer relapsing after an initial response to short term chemotherapy. Eur J Cancer Clin Oncol. 1987; 23(9): 1409-11.
12)
Giaccone G, Ferrati P, Donadio M, et al. Reinduction chemotherapy in small cell lung cancer. Eur J Cancer Clin Oncol. 1987; 23(11): 1697-9.
13)
O’Bryan RM, Crowley JJ, Kim PN, et al. Comparison of etoposide and cisplatin with bis-chloro-ethylnitrosourea, thiotepa, vincristine, and cyclophosphamide for salvage treatment in small cell lung cancer. A Southwest Oncology Group Study. Cancer. 1990; 65(4): 856-60.
14)
Murakami H, Yamamoto N, Shibata T, et al. A single-arm confirmatory study of amrubicin therapy in patients with refractory small-cell lung cancer: Japan Clinical Oncology Group Study(JCOG0901). Lung Cancer. 2014; 84(1): 67-72.

レジメン
再発小細胞肺癌

Ⅳ.緩和ケア

総論
肺癌の緩和ケアについて

解説

進行期肺癌などの胸部悪性腫瘍では,一般的な悪性腫瘍の全身症状に加えて,呼吸困難などの特徴的な呼吸器症状が出現しやすい。さらに,転移や浸潤部位による痛みや神経症状など,様々な苦痛症状が生じ得る。

現在,特に肺癌領域の治療としては,従来の細胞障害性抗癌剤に加えて,分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤が導入されてその進歩は目覚ましい。しかしながら,それらの新規治療によっても症状や苦痛が速やかに,またすべて緩和されることは難しく,ここに緩和ケアの介入が必要である。

WHO(世界保健機構)は,「緩和ケアとは,生命を脅かす病に関連する問題に直面している患者とその家族のQOL を,痛みやその他の身体的・心理社会的・スピリチュアルな問題を早期に見出し的確に評価を行い対応することで,苦痛を予防し和らげることを通して向上させるアプローチである」と定義している1)。また,本邦でも平成28 年末に改正された「がん対策基本法」において,手術,放射線治療,がん薬物療法と同じように,「がん治療の柱」に位置付けられている。

本邦における緩和ケアの実情としては,まずはがん治療に携わる医療者(がん治療チーム)が初期対応として「基本的緩和ケア」を担当し,必要に応じてまたはスクリーニングにより抽出された緩和ケアニードにあわせて,緩和ケア専門スタッフ(緩和ケア専門の医師や看護師)あるいは専門チームが介入して「専門的緩和ケア」に進むことが勧められている。

肺癌の領域においては,緩和ケアの有用性に関するエビデンスを構築すべく多くの臨床研究がこれまで行われてきた。特に,2010 年にTemel らが,肺癌の標準治療に診断早期からの専門的な緩和ケアを組み合わることによってQOL に有意な改善がもたらされ,さらにはOS を延長させる可能性を示した2)。本研究は大きな注目を集め,以降,「早期からの緩和ケア」の有用性を検証する追試が数多く行われ3)4),ASCOなど主要学会からのガイドラインでも,肺癌をはじめとした進行癌において診断後早期から専門的な緩和ケアを導入することが推奨されている5)〜7)

また,全人的苦痛に対処するために,緩和ケアの専門医,専門看護師,ソーシャルワーカー,リハビリの専門家(リハビリテーション科医,理学療法士,作業療法士),精神科医,心理士,宗教家等が協働包括的緩和ケアチームを作って情報を共有し連携しながら,患者・家族の療養生活をサポートしていくべきことが提唱されている2)〜7)

このように,肺癌などの胸部悪性腫瘍を担当する医療者は,がん薬物療法などの癌治療と早期緩和ケアの融合がQOLや予後を改善することを十分に認識し,多職種チームで常に情報を共有し協働しながら,患者と家族の意向を尊重した療養生活を支援する役割を担っている。

このような背景のもと,肺癌診療ガイドラインの新規項目として,2019年版より緩和ケアガイドラインを掲載した。

引用文献

1)
日本緩和医療学会.「WHO(世界保健機関)による緩和ケアの定義(2002)」定訳.https://www.jspm.ne.jp/proposal/proposal.html
2)
Temel JS, Greer JA, Muzikansky A, et al. Early palliative care for patients with metastatic non-small-cell lung cancer. N Engl J Med. 2010; 363(8): 733-42.
3)
Zimmermann C, Swami N, Krzyzanowska M, et al. Early palliative care for patients with advanced cancer: a cluster-randomized controlled trial. Lancet. 2014; 383(9930): 1721-30.
4)
Bakitas MA, Tosteson TD, Li Z, et al. Early versus delayed initiation of concurrent palliative oncology care: patient outcomes in the ENABLE III randomized controlled trial. J Clin Oncol. 2015; 33(13): 1438-45.
5)
Shin J, Temel J. Integrating palliative care: when and how? Curr Opin Pulm Med. 2013; 19(4): 344-9.
6)
Isenberg SR, Aslakson RA, Smith TJ. Implementing evidence-based palliative care programs and policy for cancer patients: epidemiologic and policy implications of the 2016 American Society of Clinical Oncology Clinical Practice Guideline update. Epidemiol Rev. 2017; 39(1): 123-31.
7)
Ferrell BR, Temel JS, Temin S, et al. Integration of palliative care into standard oncology care: American Society of Clinical Oncology Clinical Practice Guideline update. J Clin Oncol. 2017; 35(1): 96-112.

緩和ケア

CQ1
進行・再発肺癌患者に対して,診断早期からの専門的な緩和ケアの提供は勧められるか?

エビデンスの強さB
進行・再発肺癌患者に対して,診断早期からの専門的な緩和ケアの提供を行うよう推奨する。

〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕

解説

進行・再発肺癌患者に対して,診断から治療開始後の早期に,専門的な緩和ケアの提供が有用であることが,複数のRCT で示されている。

Bakitas らは,進行癌患者332 人(うち肺癌117 人)を対象にRCT(ENABLEⅡ)を行い,特別に訓練された専門看護師による緩和ケア介入(心理・社会・身体に関する教育指導と,毎月の電話によるニードのフォロー)併用群では,死亡前1~3 週間のQOL(FACT-L),抑うつ(Epidemiological Studies Depression Scale)が対照群に比し有意に改善することを報告した1)

Temel らは,“early palliative care;early PC” を「診断早期(診断から8週間以内)に緩和ケア専門医と専門看護師からなるチームが月1 回以上関わること」としたうえで,新たに診断された進行非小細胞肺癌患者151 人を対象としたRCT を実施した。本試験対象患者の約半数はプラチナ製剤併用療法を,それ以外の患者も何らかの薬物療法を受けていた。Early PC 併用群では主要評価項目である12 週後のQOL(FACT-L),抑うつ (HADS-D, PHQ-9)が対照群に比較し有意に良好であり,OS が延長していた2)

Bakitas らは,進行癌患者207 人(うち肺癌88 人)を対象に,緩和ケア介入(ENABLEⅡと同様の介入)のタイミングを比較するRCT(ENABLEⅢ)を行った。本試験では進行癌の診断から30~60 日に介入する群を早期介入群,診断後3 カ月以降に介入する群を晩期介入群とした。主要評価項目であるQOL(FACIT-Pal), symptom impact(QUAL-E), mood(CES-D)のPROは両群間で有意差を認めなかったが,副次評価項目の1つである1年生存率は有意に早期介入群で良好であった3)

Temel らのRCT はその後二次解析が行われ,early PC 群の介入内容に関する質的解析では,主に症状マネジメント,コーピング(個人がもつストレス対処法)の支援・強化,病状理解や生命予後についての認識の啓発支援が行われたことが示された4)。また,early PC 群では,大うつ病が改善し5),終末期緩和ケアへの移行の割合が高く6),治療の目標や予後についての理解が良好であることが7),対照群との違いとして挙げられた。これらから,専門家によるearly PC は,苦痛症状の緩和,適切なコーピング,腫瘍医との率直なコミュニケーションと適切な治療選択に好影響を与えて,健康行動を促すことなどが,有用性の理論的根拠として考えられている。

海外のガイドラインをみると,ESMO の進行非小細胞肺癌に対する臨床ガイドラインでは,「早期からの専門的な緩和ケアは標準的な腫瘍学的ケアと併用される」ことが推奨(IA)されており8),ASCO の臨床ガイドラインでも,「進行癌患者に対して早期の段階で “interdisciplinary palliative care;interdisciplinary PC”(協働包括的緩和ケア)を積極的治療と同時に提供する」ことが推奨(エビデンスレベル:中,推奨レベル:強)されている9)

一方で,肺癌患者を含む進行癌患者を対象としたRCT では,早期からの専門的な緩和ケア群でQOL 改善傾向は認めたものの有意差は示さなかった10)11)。さらに,専門的な緩和ケアがすべての患者に有用かどうか,専門的な緩和ケアを誰がどのように行うかについては様々な議論があり,費用対効果のある緩和ケア提供モデルの確立,患者・家族に利益をもたらすメカニズムの解明とそれに基づく具体的な方法論の確立が必要である12)

以上より,進行・再発肺癌患者に対して,診断から治療開始後の早期に専門的な緩和ケアの提供を行うことを推奨する。エビデンスの強さはB,また総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:緩和医療小委員会/実施年度:2019年

引用文献

1)
Bakitas M, Lyons KD, Hegel MT, et al. Effects of a palliative care intervention on clinical outcomes in patients with advanced cancer: the Project ENABLE II randomized controlled trial. JAMA. 2009; 302(7): 741-9.
2)
Temel JS, Greer JA, Muzikansky A, et al. Early palliative care for patients with metastatic non-small-cell lung cancer. N Engl J Med. 2010; 363(8): 733-42.
3)
Bakitas MA, Tosteson TD, Li Z, et al. Early versus delayed initiation of concurrent palliative oncology care: patient outcomes in the ENABLE III randomized controlled trial. J Clin Oncol. 2015; 33(13): 1438-45.
4)
Yoong J, Park ER, Greer JA, et al. Early palliative care in advanced lung cancer: a qualitative study. JAMA Intern Med. 2013; 173(4): 283-90.
5)
Pirl WF, Greer JA, Traeger L, et al. Depression and survival in metastatic non-small-cell lung cancer: effects of early palliative care. J Clin Oncol. 2012; 30(12): 1310-5.
6)
Greer JA, Pirl WF, Jackson VA, et al. Effect of early palliative care on chemotherapy use and end-of-life care in patients with metastatic non-small-cell lung cancer. J Clin Oncol. 2012; 30(4): 394-400.
7)
Temel JS, Greer JA, Admane S, et al. Longitudinal perceptions of prognosis and goals of therapy in patients with metastatic non-small-cell lung cancer: results of a randomized study of early palliative care. J Clin Oncol. 2011; 29(17): 2319-26.
8)
Planchard D, Popat S, Kerr K, et al. Metastatic non-small cell lung cancer: ESMO Clinical Practice Guidelines for diagnosis, treatment and follow-up. Ann Oncol. 2019 May 1; 30(5): 863-70.
9)
Ferrell BR, Temel JS, Temin S, et al. Integration of palliative care into standard oncology care: American Society of Clinical Oncology Clinical Practice Guideline update. J Clin Oncol. 2017; 35(1): 96-112.
10)
Franciosi V, Maglietta G, Degli Esposti C, et al. Early palliative care and quality of life of advanced cancer patients-a multicenter randomized clinical trial. Ann Palliat Med. 2019; pii: apm.2019.02.07.
11)
Zimmermann C, Swami N, Krzyzanowska M, et al. Early palliative care for patients with advanced cancer: a cluster-randomized controlled trial. Lancet. 2014; 383(9930): 1721-30.
12)
Greer JA, Jackson VA, Meier DE, et al. Early integration of palliative care services with standard oncology care for patients with advanced cancer. CA Cancer J Clin. 2013; 63(5): 349-63.

CQ2
進行・再発肺癌患者に対して,提供すべき診断早期の専門的な緩和ケアはどのようなものか?

エビデンスの強さC
Interdisciplinary PC(協働包括的緩和ケア)チームにより,以下の内容が実践されることが推奨される。

  1. 患者および家族を含む患者の生活支援者と医療スタッフとの間の意思疎通をはかり信頼関係を構築する
  2. 患者の身体的苦痛,心理・社会的苦痛などトータルペインを評価し緩和する
  3. 疾患と予後についての理解度を評価し,正確な理解を促す
  4. 治療の目標を明確にする
  5. 患者のコーピングを評価し,支援・強化する
  6. 医学的な意思決定をする際の支援を行う
  7. 他の医療・ケア提供者との協調が保てるようにする
  8. 必要時は他の医療・ケア提供者に紹介を行う

〔推奨の強さ:1,合意率:78%〕

解説

診断早期の専門的な緩和ケアは,患者の状態や状況にあわせて患者個々の希望や意向を最大限に叶えることができるように提供すべきである1)。 この理念に基づき施行され,実際にQOL の改善を認めた複数の第Ⅲ相試験から,提供する緩和ケアの内容はいずれも上記推奨文中に記載された8 項目に集約された2)~4)。ASCO の臨床ガイドラインにおいても同8項目が挙げられている5)。なお,ここでいうコーピングとは,がん患者および家族が抱える不安やストレスへの対処法のことを指す。

臨床試験の中で構築されたこれらの8 項目を実践するための協働包括的緩和ケアチームには,緩和ケアの専門医,専門看護師,ソーシャルワーカー,リハビリの専門家(リハビリテーション科医,理学療法士,作業療法士),精神科医,心理士,宗教家等が含まれていた2)~4)。がん治療に携わる医療者(がん治療チーム)自らも緩和ケアの提供者となることが理想的であるが,身体的苦痛・精神的苦痛・霊的苦痛などのトータルペインのアセスメントや,予後についてのできるだけ早い対話など,がん治療チームが実施するのに難渋する内容も提供すべき早期の緩和ケアに含まれており,これを協働包括的緩和ケアチームを介して提供することに臨床的意義があると考えられる。

診断早期の専門的な緩和ケアの8項目については,ほぼすべてが欧米での臨床研究に基づくものであり,医療者と患者家族の関係性の違い,本邦におけるがん診療の状況(現場),臨床への宗教の関与や保険制度の違いなどと,かなり異なることは認識しておく必要がある。したがって,本邦における協働包括的緩和ケアチームの具体的なメンバーや,早期の緩和ケアとして提供すべき内容については,本邦での検証を含め今後さらなる検討が必要である。

以上より,進行・再発肺癌患者に対して,提供すべき診断早期の専門的な緩和ケアについては,多職種で構成された協働包括的緩和ケアチームによる上述8項目の実践が推奨される。エビデンスの強さはC,また総合的評価では行うよう強く推奨(1 で推奨)できると判断した。下記に,推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。

投票者の所属委員会:緩和医療小委員会/実施年度:2019年

引用文献

1)
Isenberg SR, Aslakson RA, Smith TJ. Implementing evidence-based palliative care programs and policy for cancer patients: epidemiologic and policy implications of the 2016 American Society of Clinical Oncology Clinical Practice Guideline update. Epidemiol Rev. 2017; 39(1): 123-31.
2)
Bakitas MA, Tosteson TD, Li Z, et al. Early versus delayed initiation of concurrent palliative oncology care: patient outcomes in the ENABLE III randomized controlled trial. J Clin Oncol. 2015; 33(13): 1438-45.
3)
Zimmermann C, Swami N, Krzyzanowska M, et al. Early palliative care for patients with advanced cancer: a cluster-randomized controlled trial. Lancet. 2014; 383(9930): 1721-30.
4)
Temel JS, Greer JA, Muzikansky A, et al. Early palliative care for patients with metastatic non-small-cell lung cancer. N Engl J Med. 2010; 363(8): 733-42.
5)
Ferrell BR, Temel JS, Temin S, et al. Integration of palliative care into standard oncology care: American Society of Clinical Oncology Clinical Practice Guideline update. J Clin Oncol. 2017; 35(1): 96-112.