クリニカルクエスチョン・推奨一覧

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1章 口腔再建

No. クリニカルクエスチョン 推奨 グレード
CQ1 舌癌切除後の術後機能は,切除範囲,年齢,放射線治療,再建方法に影響されるか? 舌癌切除後の術後話機能(摂食・会話機能)に影響を及ぼす因子は,切除範囲,術前後の放射線治療である。 B
CQ2 舌半切程度の切除範囲で,適切な再建方法は何か? 舌半切除程度の切除範囲後の再建は,会話機能を考えれば直接縫合,摂食機能を考えれば薄い皮弁で再建するのがよい。 B
CQ3 舌亜全摘以上の喉頭温存症例において,隆起型の舌の再建は術後機能に有効か? 舌亜全摘以上の喉頭温存症例において,隆起型の舌の再建は術後の嚥下および構音機能に有効である。 B
CQ4 舌再建術後の合併症を増加または減少させる因子は何か? 舌再建術後の合併症を増加させる因子として,高いASA(American Society of Anesthesiologists)score と手術時間の延長が挙げられる。 B
年齢,糖尿病,放射線照射の既往が合併症を増加させる因子であるという科学的根拠はない。また, 抗凝固薬・血管拡張薬投与が術後合併症を低下させるという科学的根拠はない。 C2

2章 中咽頭再建

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CQ5 欠損を分類することは有用か? 中咽頭再建術後の構音・嚥下機能はその欠損範囲に大きく影響されるので,術後機能の評価にあたっては欠損を分類することが有用である。これまで報告された分類法としては,三浦分類やKimata 分類がある。 C1
CQ6 皮弁移植は有効か? 皮弁移植は中咽頭再建において,嚥下・構音機能の温存や合併症の減少に有効である。 C1
CQ7 軟口蓋欠損の再建は嚥下・構音機能の温存に有効か? 軟口蓋欠損の皮弁による再建は嚥下構音機能の温存に有効である。 C1
皮弁を用いた再建において,鼻咽腔をなるべく狭小化するように皮弁を縫着することで術後の鼻咽腔 閉鎖機能が温存されやすい。 C1
CQ8 軟口蓋を含む欠損の再建において,術後合併症を増加または減少させる因子は何か? 術前放射線治療,長時間手術は中咽頭再建後の合併症を増加させる因子と考えられる。 C1
CQ9 軟口蓋を含む欠損の再建において,術後機能向上に嚥下訓練は有効か? 中咽頭(軟口蓋を含む)再建において,術後機能向上に嚥下訓練は有効である。 C1

3章 下咽頭頸部食道再建

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CQ10 遊離空腸移植は有効か? この方法は,現在日本で最も用いられている再建法であるが,その有用性を直接明らかにする前向きの研究はほとんどない。施設によっては皮弁や胃管での再建も行われており,欧米では皮弁を多用する施設もある。しかし,実臨床では術後機能や術後合併症などの観点から安全で確立された方法であり,推奨される再建方法と考えられる。 C1
CQ11 皮弁による再建は有効か? 下咽頭癌・頸部食道癌に対する咽頭喉頭頸部食道摘出術後の全周性欠損の皮弁による再建は有効である。 C1
CQ12 再建後の合併症を増加または減少させる因子は何か? 再建方法(材料)によって術後合併症の内容や発生率が異なり,また化学放射線治療後の救済手術では合併症が増える傾向にあるため,症例に応じた再建方法の選択が重要である。 C1
遊離空腸あるいは胃管など消化管を用いる再建では腹部合併症のリスクがある。 C1
CQ13 食道と移植空腸の吻合法により嚥下機能に差はあるか? 食道と移植空腸の吻合法による嚥下機能の差は明らかでない。しかし,嚥下障害は遊離空腸再建術後の重大な合併症であることを認識し,食道断端の血行や愛護的な操作に留意して,吻合を行うべきである。 C1
CQ14 遊離空腸再建後に食道発声は可能か? 下咽頭癌・頸部食道癌に対する咽頭喉頭頸部食道摘出術後の全周性欠損を遊離空腸で再建した場合,食道発声を獲得することは可能であるが,その獲得率は低い。 C1
CQ15 音声再建は有用か? 音声再建により失われた音声を再獲得することは,一部の患者にとって有用である。 C1

4章 上顎再建

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CQ16 再建に有用な上顎欠損の分類法は何か? 上顎を六面体とみなして分類したCordeiro らの分類がわかりやすく,現在最も用いられている。 C1
CQ17 術前の放射線照射・化学療法は上顎再建に影響するか? 術前の放射線・化学療法は遊離皮弁の生着率には影響が少ない,ただし合併症全体の増加には影響する。 C1
CQ18 硬性(骨性)再建は必要か? 上顎再建に硬性(骨性)再建は必要ではないが,機能的には望ましい。 C1
CQ19 血管柄付き骨皮弁は有効か? 欠損の大きさによるが,硬性再建を必要とする場合,血管柄付き骨皮弁は有効である。特に補綴の安定と整容に寄与する。ただし,これを裏付けるエビデンスのレベルは高くない。 C1
CQ20 義顎などの補綴治療は有効か? 考慮された上顎再建において,義顎などの補綴は発語,咀嚼,整容面などで有効と考える。 C1

5章 下顎再建

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CQ21 下顎骨欠損に対してどの分類が有用か? 下顎骨欠損の分類法には以下のものがある。下顎骨欠損の他に,軟組織の欠損分類を含むものも挙げている。
1)David 分類 C2
2)HCL 分類 C1
3)Urken 分類 C1
4)CAT 分類 B
CQ22 金属プレートは硬性(骨)再建の材料として有効か?

金属プレートと皮弁による下顎再建は,予後不良例や全身状態不良例などにおいて有効である。

C1
CQ23 軟部組織のみの再建は有効か? 後側方下顎区域切除などにおいて,遊離骨性再建と比較して嚥下や会話機能面において劣ることなく再建することができうる。特に高齢者や予後不良症例では有効な選択肢である。 C1
CQ24 血管柄付き骨移植による下顎再建は有効か? 血管柄付き骨移植による下顎再建は有効である。 B
CQ25 下顎骨の骨性再建術後に顎間固定は必要か? 骨性再建術後の顎間固定は必要である。 C1
CQ26 下顎骨性再建後の義歯装着は機能回復に有効か? 下顎骨性再建後の義歯装着は機能回復に有効である。 C1

6章 頭蓋底再建

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CQ27 頭蓋底手術で汎用されているIrish の腫瘍の局在分類は,欠損分類としても有用か? Irish の腫瘍の局在分類は欠損分類としては有用とはいえない。 C2
CQ28 頭蓋底欠損に対して硬性再建は必要か? 頭蓋底欠損に対する硬性再建は必ずしも行う必要はない。 C2
CQ29 Pericranial flap(頭蓋骨膜弁)は有効か? Pericranial flap は頭蓋底再建に有効であると考えられる。 C1
CQ30 遊離組織弁は有効か? 遊離組織弁は頭蓋底および隣接組織の切除に伴う組織欠損が大きい症例において特に有効である。 C1

7章 頭蓋再建

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CQ31 硬膜再建に人工材料は有効か? 自家組織が採取不能な場合において人工材料(またはAllograft)は有効な再建材料である。 C1
CQ32 頭皮の再建で局所皮弁・有茎皮弁は有効か?

頭皮の欠損が大きくない場合,かつ頭皮手術の既往や放射線照射の既往・感染がない場合は,局所皮弁・有茎皮弁は有効である。

C1
CQ33 頭皮の再建で遊離皮弁は有効か? 頭皮の欠損が大きい場合,過去に頭皮手術の既往がある場合,感染を伴った場合,放射線照射の既往がある場合は,遊離皮弁は有効である(背筋(皮)弁,前腕皮弁,大網弁,腹直筋弁,肩甲皮弁,前外側大腿皮弁など)。 C1
CQ34 頭蓋骨の再建で,自家骨移植は人工物(骨)に比べて有効か?
硬膜再建に人工材料は有効か?
頭蓋骨の全層欠損例において,小児,手術既往がある場合,放射線照射例,頭皮の血行が不安定な場合には自家骨移植を考慮してもよい。 C1
CQ35 頭蓋骨の再建は機能レベルの維持に有効か? 頭蓋骨の広範囲欠損症例においては機能レベル維持のために再建を考慮してもよい。 C1